判例検索β > 平成29年(ワ)第10716号
特許権侵害差止等請求事件 特許権
事件番号平成29(ワ)10716
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日令和3年2月18日
裁判所名大阪地方裁判所
権利種別特許権
裁判日:西暦2021-02-18
情報公開日2021-03-10 12:00:43
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令和3年2月18日判決言渡
平成29年(ワ)第10716号
口頭弁論終結の日

同日判決原本交付

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

令和2年12月7日
判決
原告

雨宮沙耶花


野中啓孝

同補佐人弁理士

正木裕士

被告

井上商事株式会社

同訴訟代理人弁護士

山崎邦夫


石川直基


山根睦弘


寺西慶晃


笠井計志


渡邊麻衣

同訴訟代理人弁理士

稗苗秀三

同補佐人弁理士

藤川義人


株式会社サンレール

同訴訟代理人弁護士

藤原清隆

主1文
被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,又は
譲渡の申出をしてはならない。

23
被告は,別紙方法目録記載の方法を使用してはならない。

4
被告は,別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。

被告は,原告に対し,5481万9267円及びうち以下
の各金員につき,これに対する各記載の日から各支払済みま
で年5分の割合による金員を支払え。

(1)957万0761円につき,平成29年11月16日
(2)1334万2478円につき,平成30年5月23日
(3)2066万1600円につき,同年12月27日
(4)1124万4428円につき,令和元年6月5日
5
原告のその余の請求を棄却する。

6
訴訟費用は,これを10分し,その2を原告の負担とし,
その余を被告の負担とする。

7
この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

1
主文第1項~第3項と同旨

2
被告は,原告に対し,7341万3015円及びうち1273万7186円
に対する訴状送達の日の翌日(平成29年11月16日)から,うち1772万9552円に対する平成30年5月23日から,うち2775万9663円に対する同年12月27日から,うち1518万6614円に対する令和元年6月5日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要
本件は,発明の名称を手摺の取付装置と取付方法とする特許(以下本件特許といい,本件特許に係る特許権を本件特許権という。また,本件特許に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明を本件発明という。)に係る特許権を有する原告が,被告の製造,販売する別紙物件目録記載の製品(以下被告製品という。)に係る別紙方法目録記載の方法(以下被告方法という。)は本件発明の技術的範囲に属し,被告による被告製品の製造,販売及び販売の申出は本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当し,また,被告による被告方
法の使用は本件特許権の直接侵害に該当するとして,被告に対し,本件特許権に基づき被告製品の製造,譲渡,譲渡の申出及び被告方法の使用の差止(同法100条
1項)並びに被告製品の廃棄(同条2項)を求めると共に,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として7341万3015円及びうち1273万7186円に対する訴状送達の日の翌日(平成29年11月16日)から,うち1772万9552円に対する平成30年5月23日から,うち2775万9663円に対する同年12月27日から,うち1518万6614円に対する令和元年6月5日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2
前提事実(証拠を掲げていない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実である。)
(1)当事者

原告は,アルミ製手摺の製造販売等を業とする株式会社である。


被告は,アルミ製手摺などアルミ製外装建材の製造販売及び施工等を業とす
る株式会社である。
(2)本件特許権
原告は,以下の特許権(本件特許権)を有する(以下,本件特許に係る明細書及び図面を本件明細書という。)。本件明細書の記載は,別紙特許公報のとおりである(甲2)。
特許番号
発明の名称

手摺の取付装置と取付方法

出願日

平成21年3月11日

登録日

平成25年8月2日

特許請求の範囲

特許第5330032号

別紙特許公報の特許請求の範囲請求項1記載のとおり

(3)構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
A
ベランダのパラペットP上にその長手方向に所定間隔おきに手摺支柱1を立
設し,これら手摺支柱1の上端部に手摺笠木2を架け渡すことによって手摺本体3
を形成してなる手摺の取付方法において,
B
手摺本体3の室外側に,手摺本体3の長手方向略全域にわたってガラス上縁
部嵌合溝4が連通形成されるガラス用上枠5と,手摺本体3の長手方向略全域にわたって前記ガラス上縁部嵌合溝4に対応するガラス下縁部嵌合溝6が連通形成されたガラス用下枠7と,上下枠5,7間に,ガラス側縁部嵌合溝8,9が形成されてなる左右側枠10,11とからなるガラス取付枠14が一体又は一体的に設けられ,C
このガラス取付枠14に複数のガラス板12と各ガラス板12間に目地材を取り
付けるにあたって,目地材としてアルミ製目地枠13を用い,
D
また手摺支柱1の室外側側面には,アルミ製目地枠13を係止するための係止
爪15が突設され,
E
アルミ製目地枠13の室内側側面には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長
手方向の一方側から摺動させることによって前記係止爪15に係止される被係止爪16が突設され,
F
しかして,まず最初のガラス板12を室内側からその上縁部12aをガラス上縁
部嵌合溝4に嵌合し,
G
次にその下縁部12bをガラス下縁部嵌合溝6に落し込むように嵌合する所謂
倹鈍式によってガラス板12を上下枠5,7間に嵌め込み,
H
次にそのガラス板12を上下縁部嵌合溝4,6に沿って一方側から摺動させて,
該ガラス板12の側縁部12cをガラス取付枠14の他方側の側枠10のガラス側縁部嵌合溝8に嵌合し,
I
次にアルミ製目地枠13を上下枠5,7間を一方側から摺動させて,その被係
止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させ,これによって該目地枠13を最初のガラス板12の側縁部12dに係合保持させ,
J
そして次のガラス板12を同様にして室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌
め込み,これも同様に一方側から摺動させて,該ガラス板12の側縁部12cを先の
アルミ製目地枠13に係合保持させ,
K
このようにして複数のガラス板12とアルミ製目地枠13を交互にガラス取付
枠14に室内側から取り付けることによって,手摺本体3の室外側長手方向略全域に複数のガラス板12が連続して手摺本体3とアルミ製目地枠13に囲繞されるようにして取り付けられる
L
手摺の取付方法。

(4)被告の行為等

被告による被告製品の製造販売

被告は,平成29年1月13日~令和元年6月5日の間,被告製品を製造,販売したところ,その総販売数は1万8606.3mである。
なお,被告が被告製品のみを販売した12件の工事における被告製品合計1480.6mの売上金額(税別)は,合計997万7918円であり,1m当たりの売上金額は6739円である。

被告方法の構成

被告製品は,別紙被告製品説明書のとおりの構成を有するものであるところ,被告方法により取り付けられるものである。
被告製品の取付けに当たり,被告は,別紙方法目録記載3の構成a~kのうち,手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工(構成a及びb)までを行い,その後のガラス取付作業(構成c~k)は,別の施工業者によって施工されている。
被告方法の構成のうち,構成a~c,g,h及びlは,本件発明の構成要件A~C,G,H及びLをそれぞれ充足する。
3
争点

(1)本件発明の技術的範囲への属否(争点1)
(2)直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)
(3)無効理由の有無(争点3)

特開2004-256993号公報に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)

サポート要件違反の有無(争点3-2)

(4)原告の損害額(争点4)
第3
1
当事者の主張
本件発明の技術的範囲への属否(争点1)

(原告の主張)
(1)被告方法は,以下のとおり,本件発明の構成要件A~C,G,H及びLのほか,D~F及びI~Kをも充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。(2)係止(構成要件D,E,I)の意義
係止とは,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動さ
せるという手段を介して,アルミ製目地枠13を手摺支柱1にその室内外方向に移動するのを規制するように被係止爪16を係止爪15に係り止めすることであり,アルミ製目地枠13を手摺本体の長手方向に移動自在とすることを条件とするものではない。
(3)係合保持(構成要件I,J)の意義

係合保持とは,ガラス板が風圧により,その板面と直交する方向に動かない程度にガラス板の側縁部がアルミ製目地枠に保持される状態を示すものである。(4)室内側から(構成要件F,J,K)の意義
本件明細書によれば,本件発明においては,足場を組む必要がないという点が重要であるから,室内側からとは,作業者の位置を示すものであり,手摺本体側
からガラス板を室外側の手摺表面側に持ち出し,その後の操作を全て室内側から行うことを意味する。
(5)構成要件の充足

構成d

係止とは,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させるという手段を介して,アルミ製目地枠13を手摺支柱1にその室内外方向に移動するのを規制するように被係止爪16を係止爪15に係り止めすることを意味する
ことから,被告方法の構成dは,本件発明の構成要件Dを充足する。イ
構成e

被告方法において,縦枠突起部を押縁の係合用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れ,この位置より縦枠突起部をスライドさせれば,押縁の係合用突起部に当たることなく支柱突起部に嵌め合わすことができる。たとえ縦枠突起部を押縁の係合用突起部の手前からスライドさせ,その途中で縦枠突起部を押縁の係合用突起部を乗り越えてスライドさせることがあっても,縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わすためには縦枠突起部を支柱突起部の方向に向かってスライドさせなければ嵌め合わすことができない。

また,被告方法の支柱突起部が本件発明の係止爪15に,縦枠突起部が被係止爪16に該当するのであって,押縁の係合用突起部は付加手段に過ぎない。そうすると,被告方法の構成eは,本件発明の構成要件Eを充足する。ウ
構成f

室内側からとは,手摺本体側からガラス板を室外側の手摺表面側に持ち出し,その後の操作を全て室内側から行うことを意味する。
被告方法の構成fも,室内側から室外側に持ち出して最初のガラスの上側をガラス上弦材の溝に嵌合するというものであるから,室内側からに該当する。したがって,被告方法の構成fは,本件発明の構成要件Fを充足する。エ
構成i

被告方法においては,構成iのうち,次にアルミ製の縦枠S22をガラス上弦材Sとガラス下弦材Sとの間を一方側からスライドさせて,その縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせることによって,アルミ製の縦枠S22は,支柱Sにその室内外方向に移動するのを規制するように縦枠突起部が支柱突起部に係り止めされる。このため,被告方法の縦枠突起部は本件発明の被係止爪に相当し,支柱突起部は係止
爪に相当する。被告方法においては,さらに,縦枠突起部の支柱突起部に対する係り止め状態を確実にするために,さらに,押縁及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させることによって,縦枠突起部の支柱突起部に対する係り止め状態を補強するようになっているが,縦枠突起部と支柱突起部のみでも前後方向に規制されており,十分に係止されているといえるのであって,これは単なる付加手段に過ぎない。
また,係合保持とは,ガラス板が風圧により,その板面と直交する方向に動かない程度に保持される状態を示すところ,ガラスの側縁部がアルミ製目地枠に挟持されることで足りるのであり,側縁部の端縁が接触している必要はない。しかも,この挟持は目地枠や縦枠の部材そのものに直接挟持されるだけではなく,パッキン等を介してもよい。そもそも,ガラス板の側縁部の端縁を目地枠や縦枠に当接
させる構造や図面であっても,実際には少し隙間が空くものであるし,ガラスの破損を防止するためにガラス板の厚み程度のエッジクリアランスを要することは,当業者にとって技術常識である。そうすると,被告方法においても,ガラスの側縁部が縦枠S22の部材に挟持され,ガラス板面と直交する方向に動かない程度に保持されているといえる。これは,係合保持に該当する。

したがって,被告方法の構成iは,本件発明の構成要件Iを充足する。オ
構成j

室内側から室外側に持ち出してが室内側からに該当すること,隙間があっても係合保持に該当することは,前記ウ及びエのとおりである。したがって,被告方法の構成jは,本件発明の構成要件Jを充足する。カ
構成k

室内側から室外側に持ち出してが室内側からに該当することは,前記ウのとおりである。
個別に…取り付けられる点については,本件発明は,アルミ製目地枠の長手方向の移動を規制しながら取り付けることを排除するものではない。また,本件明細書の記載から,構成要件Kの連続してとは,外観上の問題をいうものと理解される。したがって,外観上は連続するようにして取り付けられるものである
以上,この点でも,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kに含まれる。さらに,被告方法は,足場を設けることなくガラス板を取り付ける手摺の取付方法である。
したがって,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kを充足する。(被告の主張)
(1)被告方法の構成d~f及びi~kは,本件発明の構成要件D~F及びI~Kを充足しない。
(2)係止(構成要件D,E,I)の意義
本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,係止(構成要件D,E及び
I)とは,室内側から見て前後方向の移動を規制し,かつ手摺本体3の長手方向に移動自在とすることを意味するものと理解される。
また,本件明細書の記載によれば,係止爪15と被係止爪16との間には隙間があり,係止爪15及び被係止爪16は,それ自体でアルミ製目地枠13が手摺本体3の長手方向に移動するのを規制する構造とはなっていない。手摺本体3の長手方向に
おけるアルミ製目地枠13の移動を規制するのは,アルミ製目地枠13の連結片30と,ガラス板12の側縁部12dの端縁との当接である。
さらに,本件明細書には,目地枠について手摺の長手方向の移動を規制する手段は開示されておらず,目地枠がガラス板に当接ないし接触できるように長手方向への移動が自由である必要があるから,目地枠の長手方向の移動を規制する手段を付
加することはできない。
本件特許の出願当初の請求項1は取付装置に関する発明であったところ,本件特許出願前において,ガラス板とは独立して,それ自体が固定された左右の縦枠でガラス板の長手方向の移動を規制する方法は,広く一般的に用いられていたため,当初の請求項1については拡大先願,新規性及び進歩性の規定により拒絶理由通知を
受け,原告は,これを削除する補正を行った。このような出願経過から,本件特許は,縦枠について手摺の長手方向への移動を自在とする点に技術的意義を有する取
付方法として認められたものと理解される。
したがって,係止(構成要件D,E及びI)とは,室内側から見て前後方向の移動を規制し,かつ手摺本体3の長手方向に移動自在とすることである。(3)係合保持(構成要件I,J)の意義
本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,係合保持(構成要件I,J)とは,接触して手摺本体3の長手方向における移動を規制することを意味すると理解される。
また,本件明細書の記載においても,アルミ製目地枠13の連結片30とガラス板12の側縁部12dの端縁とが当接されることによって,手摺本体3の長手方向におけ
るアルミ製目地枠13及びガラス板12の摺動を規制しているといえる。本件発明に係る請求項において,ガラス板については,係合保持の主体とアルミ製目地枠によって係合保持される被体のいずれにも該当する旨の記載があることから,係合保持は,ガラス板が板面と直交する方向に動かない程度の作用のみではなく,接触して手摺の長手方向における移動を規制するという意義を有する。
したがって,係合保持(構成要件I,J)とは,接触して手摺本体3の長手方向における移動を規制することをいう。
(4)室内側から(構成要件F,J,K)の意義
室内側から(構成要件F,J,K)とは,その文言のとおり,ガラス板12が室内側にある状態で取り付けることをいう。本件明細書には,作業者の位置につい
ての記載はないから,作業者が室内側にいてガラス板が室外側にある状態で取り付けることを含まない。
(5)構成要件の非充足

構成dについて

被告方法の構成dは,支柱Sの室外側側面に,縦枠S22と嵌め合わせるための支柱突起部を設けているものの,縦枠S22を係止するための係止爪を突設したものではない。このため,同構成は,本件発明の構成要件Dを充足しない。イ
構成eについて

被告方法の構成eでは,アルミ製の縦枠は,スライドさせるのみでは支柱突起部に嵌め合わせることはできず,押縁の係合用突起部を乗り越えさせるよう回転させた後に縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わすことになる。このため,同構成は,縦枠S22の室内側側面に,支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部を設けているものの,支柱突起部に係止される被係止爪を突設したものではなく,本件発明の構成要件Eを充足しない。

構成fについて

被告方法の構成fでは,ガラスを上弦材の溝に嵌合するのは室外側からであり,室内側からではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Fを充足しない。エ
構成iについて

被告方法の構成iは,縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせ,さらに,押縁S22及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制することによって,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定するものである。このため,同構成は,縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせることによってアルミ製の縦枠S22を支柱Sに係止させるのではなく,本件発明の構成要件Iを充足しない。
また,同構成は,アルミ製の縦枠S22をガラスの側縁部との間に隙間を空けて位置させるものである。このため,同構成は,アルミ製の縦枠S22をガラスの側縁部に係合保持させるのではないという点でも,本件発明の構成要件Iを充足しない。

構成jについて

被告方法の構成jでは,ガラスを上弦材に嵌め込むのは室外側からであり,室内側からではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Jを充足しない。また,同構成は,ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間を空けて位置させるものである。このため,同構成は,ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22に係合保持させるのではないという点でも,本件発明の構成要件Jを充足しない。

構成kについて

被告方法の構成kでは,ガラスを取り付けるのは室外側からであり,室内側からではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Kを充足しない。また,同構成は,複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられるものである。このため,同構成は,複数のガラスが連続して手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられるのではないという点でも,本件発明の構成要件Kを充足しない。
さらに,本件発明の作用効果として足場が不要であることが挙げられていることから,本件発明の構成要件Kは,…室内側から取り付けることによって,足場を設けることなく,手摺本体3の室外側長手方向略全域に…と理解されるべきであるところ,被告方法が足場を設けることなく手摺を取り付ける方法であることの立証はない。
2
直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)

(原告の主張)

直接侵害

被告は,被告製品の販売に当たり,被告方法を自ら使用し,又はその下請事業者である施工業者に指示して自らの手足として同方法を使用させている。イ
間接侵害

(ア)被告は,被告製品の販売に当たり,その施工業者等に対して,被告製品の取付方法として被告方法を使用することを説明している。このため,被告製品は,被告方法の使用にのみ用いられる物といえる。
したがって,被告による被告製品の製造,販売及び販売の申出は,被告方法の使用にのみ用いる物の生産,譲渡及び譲渡の申出をする行為として,間接侵害(特許法101条4号)に該当する。

(イ)被告製品は,被告方法の使用に用いる物であり,本件発明による課題の解決に不可欠なものである。また,被告は,本件発明が特許発明であること及び被告製品が本件発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その製造,販売及び販売の申出をしている。
したがって,被告の行為は間接侵害(同条5号)に該当する。
(被告の主張)

直接侵害

前記第2の2(4)イのとおり,被告は,ガラスの製造,販売及び販売の申出は行っておらず,被告方法のうち,手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工までを行っているにとどまる。

間接侵害

仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属することがあり得るとしても,建物前に足場を組んで室外側から被告製品を取り付ける場合は,室内側から(構成要件F,J,K)を充足しない。このため,被告製品は,本件発明の方法の使用にのみ用いられる物とはいえない。
また,被告は,被告製品は本件発明の実施に用いられるものでないことを確信し
ている。
したがって,被告の行為は,本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当しない。
3
特開2004-256993号公報に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)
(被告の主張)
(1)

特開2004-256993号公報記載の発明の構成

特開2004-256993号公報(乙3。以下乙3文献という。)の記載によれば,同文献には,以下の発明(以下乙3発明という。)が記載されている。A’

複数の柱を立設し,これら柱に取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹込
みを防止すべく使用される建築用サイドパネルの取付方法において,B’

長手方向略全域にわたって枠付きパネルを嵌め込むための溝が形成された上
枠と,長手方向略全域にわたって枠付きパネルを嵌め込むための溝が形成された下枠と,上下枠間に,枠付きパネルの縦枠材を嵌め込むための溝が形成されてなる端面縦枠とからなる取付枠が一体又は一体的に設けられ,
この取付枠に複数の枠付きパネルと各枠付きパネル間に中間縦枠取付金具で
C’

一対の中間縦枠を取り付けるにあたって,中間縦枠としてアルミ製中間縦枠を用い,E’

一対の中間縦枠を取り付ける中間縦枠取付金具には,止め具で上下枠に取り
付けるための貫通孔が形成され,
F’

しかして,まず最初の枠付きパネルを上下枠の他端側から上下枠の溝に嵌め
込み,
次にその枠付きパネルを上下枠の溝に沿ってスライドさせて,該枠付きパネ
H’
ルの縦枠材を取付枠の端面縦枠の溝に嵌合し,
I’

次に一対の中間縦枠を取り付ける中間縦枠取付金具を上下枠に取り付け,こ
れによって該中間縦枠取付金具を最初の枠付きパネルの縦枠材の近傍に位置させ,J’

そして次の枠付きパネルを同様にして上下枠間に嵌め込み,これも同様にス
ライドさせて,該枠付きパネルの縦枠材を先の中間縦枠取付金具と当たるよう位置させ,
J’-2
K’

さらに,一対の中間縦枠を中間縦枠取付金具に取り付け,
このようにして複数の枠付きパネルと中間縦枠及び中間縦枠取付金具を交互
に取付枠に取り付けることによって,長手方向略全域に複数の枠付きパネルが連続して取付枠と中間縦枠及び中間縦枠取付金具に囲繞されるようにして取り付けられる
L’

建築用サイドパネルの取付方法。

(2)

他の文献記載の技術


特開2002-89004号公報記載の発明等

特開2002-89004号公報(乙4。以下乙4文献という。)には,以下の発明(以下乙4発明という。)が記載されている。
手摺本体にパネルを取り付けるパネルの取付方法において,手摺本体の複数の支柱を立設し,パネル間に配置する支持部材を,ボルト,ビス等の固定手段を用いて,支柱に固定するパネルの取付方法。

特開2005-163354号公報記載の発明

特開2005-163354号公報(乙5。以下乙5公報という。)には,以下の発明(以下乙5発明という。)が記載されている。
ガラス持ち出し手摺の組み立て方法において,複数の支柱を立設し,板ガラス間に配置する竪枠をビスで支柱に固定するガラス持ち出し手摺の組み立て方法。ウ
特開2006-316481号公報記載の発明

特開2006-316481号公報(乙6。以下乙6公報という。)には,以下の発明(以下乙6発明という)が記載されている。
ファブリックフェンスの設置方法において,複数の支柱を立設し,ファブリックの端部の係止バーを支柱に係止するファブリックフェンスの設置方法。エ
特開2007-198074号公報記載の発明

特開2007-198074号公報(乙7。以下乙7公報という。)には,以下の発明(以下乙7発明という。)が記載されている。
スレート被覆構造において,凹溝を有する取付部材にカバー部材を倹鈍方式で取り付けたスレート被覆構造。

特開2003-74212号公報記載の発明

特開2003-74212号公報(乙8。以下乙8公報という。)には,以下の発明(以下乙8発明という。)が記載されている。
組立式囲いにおいて,支柱間の区画部を覆う覆板の上下の端部分を倹鈍方式で上下の条溝に挿入した組立式囲い。

特開平8-135054号公報記載の発明

特開平8-135054号公報(乙9。以下乙9公報という。)には,以下の発明(以下乙9発明という。)が記載されている。
間仕切面部において,複数の単位仕切パネルを上下ランナーに倹鈍式で取り付けた間仕切面部。

特開平7-217143号公報,特開2004-332537号公報,特開2010-48023号公報
記載の各技術
特開平7-217143号公報(乙10。以下乙10文献という。),特開2004-332537号公報(乙11。以下乙11文献という。),特開2010-48023号公報(乙12。以下乙12文献という。)の各記載によれば,単に部材を引っ掛けて留めるという意味での係止は周知慣用技術であるといえる。すなわち,乙10文献には,手摺において,枠材2に押縁3を取り付けるのに,内向鈎条(係止爪)21,22及び外向鈎条(被係止爪)31,32,41,42を用いている例が,乙11文献
には,手摺において,ファスナー3を介してパラペットPに手摺支柱2を取り付けるのに,掛止部(係止爪)11,13及び係合部(被係止爪)12,14を用いている例が,乙12文献には,手摺において,ブラケット7及び持出し部20を介して支柱1に竪枠(目地枠)13を取り付けるのに,被係合部(係止爪)19b及び係合部(被係止爪)19aを用いている例が,それぞれ記載されている。
(3)

本件発明と乙3発明との対比及び相違点


技術分野及び解決課題

本件発明は,風雨時においても室内を開放しておくことができる手摺の取付方法であり,乙3発明は,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される建築用サイドパネルに関するものであるから,その技術分野は一致する。手摺であるか建築用サイドパネルであるかは,設置個所に合わせて名称を変えているだけであり,内外を仕切るものである点で一致する。
また,本件発明と乙3発明とは,手摺又は建築用サイドパネルの取付けを容易にするという自明の課題が共通する。

対比

(ア)本件発明の構成要件Aと乙3発明の構成A’
乙3発明の建築用サイドパネル及び柱は,本件発明の手摺及び手摺支柱に,それぞれ相当する。手摺又は建築用サイドパネルを取り付ける場所がベランダのパラペット上であるか,手摺支柱の上端部に手摺笠木を架け渡すか否かは,いずれも設計的事項である。
(イ)本件発明の構成要件Bと乙3発明の構成B’
乙3発明の枠付きパネルを嵌め込むための溝,上枠,下枠,枠付きパネルの縦枠材を嵌め込むための溝,端面縦枠は,本件発明のガラス上縁部嵌合溝4又はガラス下縁部嵌合溝6,ガラス用上枠5,ガラス用下枠7,ガラス側縁部嵌合溝8,9,左右側枠10,11に,それぞれ相当する。ガラス取付枠14を手摺本体3の室外側に設けるか否かは,設計的事項で
ある。
(ウ)本件発明の構成要件Cと乙3発明の構成C’
乙3発明の枠付きパネル,中間縦枠及び中間縦枠取付金具は,本件発明のガラス板12,アルミ製目地枠13に,それぞれ相当する。
(エ)本件発明の構成要件D及びEと乙3発明の構成E’

乙3発明の貫通孔と本件発明の係止爪15及び被係止爪16とは,中間縦枠及び中間縦枠取付金具又はアルミ製目地枠13を留める手段であるという概念で共通する。
(オ)本件発明の構成要件F及びGと乙3発明の構成F’
乙3発明の構成F’と本件発明の構成要件F及びGとは,枠付きパネル又は
ガラス板12を上下枠の溝に嵌め込む工程であるという概念で共通する。(カ)本件発明の構成要件Hと乙3発明の構成H’
乙3発明の枠付きパネル,上下枠の溝,枠付きパネルの縦枠材,
端面縦枠の溝は,本件発明のガラス板12,上下縁部嵌合溝4,6,ガラス板12の側縁部12c,側枠10のガラス側縁部嵌合溝8に,それぞれ
相当する。
(キ)本件発明の構成要件Iと乙3発明の構成I’
乙3発明の構成I’と本件発明の構成要件Iとは,中間縦枠及び中間縦枠取付金具又はアルミ製目地枠13の少なくとも一部を留めて,最初の枠付きパネルの縦枠材又はガラス板12の側縁部12dの近傍に位置させる工程であるという概念で共通する。
(ク)本件発明の構成要件Jと乙3発明の構成J’
乙3発明の構成J’と本件発明の構成要件Jとは,枠付きパネル又はガラス板12を上下枠の溝に嵌め込んで摺動させて,枠付きパネルの縦枠材又はガラス板12の側縁部12cを先の中間縦枠及び中間縦枠取付金具又はアルミ製目地枠13の少なくとも一部と当たるよう位置させる工程であるという概念
で共通する。
(ケ)本件発明の構成要件Kと乙3発明の構成K’
乙3発明の枠付きパネル,中間縦枠及び中間縦枠取付金具は,本件発明のガラス板12,アルミ製目地枠13に,それぞれ相当する。
(コ)構成要件L

乙3発明の建築用サイドパネルの取付方法は,本件発明の手摺の取付方法に相当する。

相違点

(ア)

相違点1(構成要件D,E)

アルミ製目地枠13又は中間縦枠及び中間縦枠取付金具を留める手段に関して,本件発明では,手摺支柱1の室外側側面に突設された係止爪15と,アルミ製目地枠13の室内側側面に突設された被係止爪16とであるのに対し,乙3発明では,止め具で上下枠に取り付けるよう中間縦枠取付金具に形成された貫通孔である点。
(イ)

相違点2(構成要件F,G)

ガラス板12又は枠付きパネルを上下枠の溝に嵌め込む工程に関して,本件発明では,倹鈍式によって嵌め込んでいるのに対し,乙3発明では,上下枠の端から嵌め込んでいる点。
(ウ)

相違点3(構成要件I)

アルミ製目地枠13又は中間縦枠及び中間縦枠取付金具の少なくとも一部を留める工程に関し,本件発明では,アルミ製目地枠13を摺動させて,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させるのに対し,乙3発明では,中間縦枠取付金具を上下枠に取り付ける点。(エ)

相違点4(構成要件I)

相違点3の工程により,アルミ製目地枠13又は中間縦枠及び中間縦枠取付金具の少なくとも一部が最初のガラス板12の側縁部12d又は枠付きパネルの縦枠材の近傍に位置するという点に関し,本件発明では,目地枠13が最初のガラス板12の側縁部12dに係合保持されるのに対し,乙3発明では,単に,中間縦枠取付金具が最初の枠付きパネルの縦枠材の近傍に位置する点。(オ)

相違点5(構成要件J)

ガラス板12又は枠付きパネルを上下枠の溝に嵌め込んで摺動させて,ガラス板12の側縁部12c又は枠付きパネルの縦枠材を先のアルミ製目地枠13又は中間縦枠及び中間縦枠取付金具の少なくとも一部と当たるよう位置させる工程に関し,本件発明では,ガラス板12を摺動させて側縁部12cを先のアルミ製目地枠13に係合保持させるのに対し,乙3発明では,枠付きパネルをスライドさせて縦枠材を先の中間縦枠及び中間縦枠取付金具のうちの中間縦枠取
付金具と当たるよう位置させる点。
(カ)

相違点6

本件発明には,相違点5の工程の後に,一対の中間縦枠を中間縦枠取付金具に取り付けるという工程がないのに対し,乙3発明は,そのような工程(構成J’-2)がある点。
(4)

相違点の容易想到性


相違点1及び3について
係止につき,仮に,単に部材を留めることを意味するものとすると,アルミ製目地枠13や中間縦枠及び中間縦枠取付金具のようなパネル間の目地枠を支柱に留めることは,乙4発明~乙6発明にあるように,本件発明の属する技術分野における周知技術といえる。
しかも,乙3発明における中間縦枠取付金具の取付けと,乙4発明~乙6発明における目地枠の固定又は係止とは,目地枠を支柱や上下枠などの固定部材に留めるという共通の解決課題を有するものであるから,乙3発明に,乙4発明~乙6発明を適用する動機付けがあるといえる。
したがって,乙3発明において,乙4発明~乙6発明を適用することにより,相
違点1及び相違点3に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。
また,部材を留める手段としては,いわゆる係止のほか,ねじ止めなど種々の手段があるところ,係止が単に部材を引っ掛けて留めることを意味するものとすると,手摺支柱1の室外側側面に係止爪を突設することは,乙10文献~乙12文
献に示されているとおり,周知慣用技術の中から1つの手段を選択したに過ぎない。イ
相違点2について

乙7発明~乙9発明にあるように,パネルを倹鈍式によって両側の溝に嵌め込むことは,周知技術といえる。
したがって,乙3発明において,乙7発明~乙9発明を適用することにより,相違点2に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。

相違点4について

係合保持につき,仮に,単に係合保持される部材を近傍に位置させることを意味するものとすると,本件発明及び乙3発明は,目地枠が最初のパネルの側縁部の近傍に位置するという点で一致し,相違点4は相違点ではなくなる。エ
相違点5及び相違点6について
乙3文献【0036】の記載は,あらかじめ中間縦枠及び中間縦枠取付金具を組み立てておき,この組み立てた完成品に枠付きパネルを係合保持させてもよいことを示唆しているといえる。
したがって,乙3発明において,乙3文献の示唆に基づき,相違点5及び相違点6に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。

以上のとおり,仮に係止が単に部材を留めることを,係合保持が

単に係合保持される部材を近傍に位置させることをそれぞれ意味するものとすると,本件発明は,当業者が乙3発明~乙9発明に基づき容易に発明をすることができたものであり,特許を受けることができないものである(特許法29条2項)。
(5)小括
したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項2号),原告は,被告に対し,これを行使できない(同法10
4条の3第1項)。
(原告の主張)
(1)乙3発明について
本件発明は,ベランダのパラペットに設置される手摺の取付方法を技術分野とし,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放し
ておくことができ,かつ,手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにした手摺の取付方法を提案することを解決課題とするものである。他方,乙3発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取り付けて使用される建築用サイドパネルに関するものであり,組み立て作業が容易で,パネル厚の変更にもある程度対応できる汎用性のある経済的な建築用サイドパネルを提供す
ることを解決課題とする。
このように,本件発明と乙3発明は,技術分野及び解決課題を異にする。このため,乙3発明は,本件発明の進歩性を否定する資格を有しない。
(2)乙3発明の構成
乙3公報記載の建築用サイドパネルの組立工程は以下のとおりである。まず,一方の端面縦枠2を上,下枠1a,1bの長手方向一端部にボルト22で連結する。
しかる後,上,下枠1a,1bの他端部から枠付きパネル4の上下周縁部の横枠体4b,4bを上,下枠1a,1bの溝7にスライドさせて嵌め込み,その縦枠体4bを前記端面縦枠2の溝19に嵌め込む。
この状態で,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付け操作を行い,これによっ
て枠付きパネル4の縦枠体4bは第1側板部23bとパネル受け部18で挟持されて,一方の端面縦枠2にしっかりと固定されることになる。
しかる後,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに留め具35によって取り付け,次の枠付きパネル4の上下周縁部の横枠体4bを上,下枠1a,1bの溝7に中間縦枠取付金具30と当たる位置までスライドさせて嵌め込む。

次に中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付ける。すなわち,上,下枠1a,1bの溝7を横切ってその両側に相対向する一対の中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付け用ボルト31で取り付けることによって,一対の中間縦枠3a,3bによって枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bを挟持する。これによって,枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bの隙間(枠付きパネル同士の目地)を両
側の中間縦枠3a,3bで視覚的に隠蔽することができ,美麗な外観を確保できることになる。
上記の作業を繰り返し,最後の枠付きパネル4の上下の横枠体4bを上,下枠1a,1bに嵌め込んだら,他端の端面縦枠2の溝19に嵌め込み,この状態で前記の一方の端面縦枠2と同じように,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付操作を行い,
これによって最後の枠付きパネル4の縦枠体4bは第1側板部23bとパネル受け部18で挟持されて,他端の端面縦枠2にしっかりと固定されることになる。(3)

本件発明と乙3発明との対比


本件発明の構成要件A及びLと乙3発明の構成A’及びL’

乙3発明においては,本件発明の手摺の取付方法に関しては何らの記載も示唆もなく,駐車場の屋根Bを支持する柱Cに,その室内側に建築用サイドパネルAを取り付けた状態の駐車場が開示されているに過ぎない。
また,乙3発明においては,本件発明のベランダのパラペットP上にその長手方向に所定間隔おきに手摺支柱1を立設してなる構造,これら手摺支柱1の上端部に手摺笠木2を架け渡すことによって手摺本体3を形成してなる構造及びこれらの構造による手摺の取付方法について,何らの記載も示唆もない。

本件発明の構成要件Bと乙3発明の構成B’

乙3発明には,手摺本体3については何らの記載も示唆もなく,まして,手摺本体3の室外側にガラス取付枠14が一体又は一体的に設けられる構成についても,何らの記載も示唆もない。

本件発明の構成要件Cと乙3発明の構成C’

乙3発明は、枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bの隙間(枠付きパネル同士の目地)を視覚的に隠蔽する中間縦枠が,一対の中間縦枠3a,3bからなるのに対し,本件発明のアルミ製目地枠13は室外側にのみ配設する点で,両者は相違する。

本件発明の構成要件Dと乙3発明

乙3発明には,本件発明の構成要件Dの

手摺支柱1の室外側側面には、アルミ製目地枠13を係止するための係止爪15が突設され

る構成について,何らの記載も示唆もない。

本件発明の構成要件Eと乙3発明の構成E’

乙3発明は,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに,上,下枠1a,1bの溝7を横切るようにして留め具35によって取り付け,上,下枠1a,1b間の溝7を挟んで,その両側に相対向する一対の中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付け用ボルト31で取り付けることによって,一対の中間縦枠3a,3bによって枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4bを挟持するようになっており,アルミ製目地枠13の室内側側面には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させることによって前記係止爪15に係止される被係止爪16が突設される構成については,何らの記載も示唆もない。

本件発明の構成要件F,G,J及びKと乙3発明の構成F’,G’,J’及びK’
乙3発明は,上枠1aの下向きの溝7に枠付きパネル4の上部横枠体4bを,また,下枠1bの上向きの溝7に枠付きパネル4の下部横枠体4bをそれぞれ同時に,上,下枠1a,1bの他端部から横方向にスライドさせて嵌め込むようになっており、本件発明のように,ガラス板12を室内側からその上縁部12aをガラス上縁部嵌合溝4に嵌合し,所謂倹鈍式によってガラス板12を上下枠5,7間に嵌め込むようにはなっていない。
したがって,乙3発明にあっては,本件発明の構成要件F,G,J及びKについて,何らの開示も示唆もない


本件発明の構成要件Hと乙3発明の構成H’

本件発明にあっては,ガラス板12の側縁部12cを直接に側枠10のガラス側縁部嵌合溝8に嵌合するようになっているが,乙3発明にあっては,枠付きパネル4の上下周縁部及び左右周縁部に横枠体4b及び縦枠体4bを形成し,枠付きパネル4の上下周縁部の横枠体4b,4bを上,下枠1a,1bの溝7にスライドさせて嵌め込み,その縦枠体4bを端面縦枠2の溝19に嵌め込むようになっている点で相違する。ク
本件発明の構成要件Iと乙3発明のI’

乙3発明では,本件発明のアルミ製目地枠13を上下枠5,7間を一方側から摺動させて,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させという構成については,何らの記載も示唆もない。ケ
以上のとおり,乙3発明には,本件発明の構成要件のいずれについても,何
らの記載ないし示唆はない。
(4)

乙4発明等について

乙3発明と乙4発明~乙9発明は,いずれも技術分野を異にする。また,乙4発明については,パネル30を上下にガイドする支持部材20に上から差し込んだり引き抜くように支持するパネルの取付構造をそのまま乙3発明に適用することは不可能である。
乙5発明については,上枠15と笠木17とで板ガラス16の上端を挟持し,笠木17を上枠15から取り外すことによって作業者が手摺の内側から板ガラスを装着及び交換の作業をすることができるようにした発明であり,これを乙3発明に適用することは不可能である。

乙6発明については,乙3発明とはその発明の構成を全く異にすることから,その構成を乙3発明に適用することは不可能である。
乙7発明については,乙3発明とはその発明の構成を全く異にすることから,たとえ倹鈍式でカバー部材15を取付部材23に取り付ける構造が開示されていても,これを乙3発明に適用することは不可能である。

乙8発明については,支柱2,2間の横桟109,110の条溝140,141に覆板6を倹鈍式で取り付けるようにした組立式囲いの覆板支持装置が記載されているが,乙3発明は,この間仕切り構造のものとは技術分野も解決課題も異にすることから,乙8発明の構造を乙3発明に適用することは不可能である。
乙9発明については,複数の単位間仕切パネル10,40,50を上下のランナー80,
80間に倹鈍式で取り付ける間仕切り構造が記載されているが,乙3発明は,この間仕切り構造のものとは技術分野も解決課題も異にすることから,乙9発明の構造を乙3発明に適用することは不可能である。
以上より,乙4発明~乙9発明のいずれも,乙3の発明と組み合わせることはできない。

4
サポート要件違反の有無(争点3-2)

(被告の主張)
本件発明の課題は,手摺本体の室外側長手方向略全域に,手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにすることであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0016】,【0017】)によれば,この課題を解決するには,本件特許の請求項2に係る発明の構成が必要である。したがって,本件発明の構成には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,本件発明は,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているといえる。
また,発明の詳細な説明には,本件特許の請求項2記載の構成に代えて採用することのできる構成は開示されておらず,出願時の技術常識に照らしても,本件発明
の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
さらに,本件明細書には,ガラスとは独立して,目地枠について長手方向の移動を規制する手段は開示されておらず,したがって,長手方向の移動を規制する手段を限定する事項は開示されていない。このため,ガラスとは独立して,目地枠につ
いて長手方向の移動を規制する手段を任意に付加することができるとすると,その手段はあらゆる手段を含み,例えば,足場を設けて,ボルト締めや溶接を行う手段を付加することも含まれることになる。しかし,本件発明の作用効果として足場が不要である点が挙げられていることから,長手方向の移動を規制する手段を付加できるとすると,本件発明は,その課題を解決することができないことになる。
以上より,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず,本件特許は特許法36条6項1号に違反してされたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項4号),原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)

本件発明は,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放しておくことができ,かつ,手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにした手摺の取付装置と取付方法を提案するものである。
本件発明は,その構成により,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板がガラス取付枠に取り付けられるようになっているため,手摺本体の室外面である見付は,手摺本体の長手方向略全域にかけて連続して設けられたガラス板で覆われていることになり,上記課題を解決し,外観上の体裁が非常に良く,また,ガラス板によって室内側への風雨の進入を防ぐことができ,風雨の時でも室内を開放しておくことができる,いわゆる倹鈍方式で室内側からガラス板をガラス取付枠に取り付けることができ,ガラス板を手摺本体の室外側に取り付けるための足
場等が不要であるから,それだけ施工費が安価になる,互いに隣り合う複数のガラス板間にアルミ製目地枠が配設されるようになっているため,従来のゴム系の目地材を充填するのに比較して,アルミ特有の見栄えを発揮することができ,手摺本体の見付面の体裁がこの面からも良好である,といった作用効果を発揮する。したがって,本件発明に係る請求項1の記載は,発明の詳細な説明において,発
明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲にある。手摺本体の室外側長手方向略全域に連続してガラス板をガラス取付枠に取り付けるに際し,最後のガラス板を嵌合するために側枠に可動側部材と固定側部材を用いること自体は本件特許の請求項2の発明ではなく,可動側部材と固定側部材を用いた上で,一般的な取り付け方法で取り付けることは可能である。

仮に,本件発明の構成要件Kが最後のガラス板12を左側枠11に嵌合する際に,左側枠11を固定側部材17と可動側部材18とからなり,最後のガラス板12を室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌め入れる前に,可動側部材18を後退させて,ガラス側縁部嵌合溝9の室外側を開放しておき,この状態で最後のガラス板12を室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌め入れ,しかる後に可動側部材18を固定側部材17に重合し,可動側部材18を固定側部材17にビス止めする構成に限定されるとしても,そのような実施形態の記載(本件明細書【0036】,【0037】)がある以上,サポート要件を備えている。
5
原告の損害額(争点4)

(原告の主張)
(1)

被告製品1m当たりの売上金額(税別)は,6739円である。


被告の利益の額

被告製品1m当たりの原価(税別)は,3451円(アルミ押出形材212
9円,部品1087円,梱包資材その他82円,生産用固定資産153円)であるから,1m当たりの利益(税別)は,3288円となる。
なお,生産用固定資産のうち,手摺門扉製作用モータープレス機は,3台のうち1台を被告製品専用に使用しているのみであることから,被告製品以外にも転用できるものであり,変動経費には当たらない。また,BL認定取得費用も,被告製品の販売に必要不可欠なものではなく,変動経費には当たらない。
さらに,外注加工費については,工事台帳に外注費用の欄があるにもかかわらず加工費が計上されていないのは不合理であるし,全販売数量1万8606.3mの
8%である1480.6m分の工事を基に売上や原価を計算しておきながら,加工費は全体で計算するというのは妥当ではない。仮にこれを控除するとしても,同一工事を基に,1m当たりの加工費として計算すべきである。そうすると,外注加工費については,控除対象とすべきではないが,仮に控除する場合には,1m当たり68円として控除すべきである。


被告製品の販売数量は,以下のとおりである。

・平成29年10月31日までの期間(以下第1期間という。)
3228.2m
・平成29年11月1日~平成30年5月23日(以下第2期間という。)4493.5m
・平成30年6月1日~同年12月27日(以下第3期間という。)7035.6m
・平成31年1月7日~令和元年6月5日(以下第4期間という。)3849m

以上によれば,被告の利益額(税別)は,合計6117万7515円となり,
期間別には以下のとおりとなる。
・第1期間

1061万4322円

・第2期間

1477万4628円

・第3期間

2313万3053円

・第4期間

1265万5512円


さらに,特許法102条2項に基づき推定される損害額には,消費税相当分
も含まれるから,損害賠償支払時点の税率(10%)に基づき,合計611万7750円を加算すべきである(期間別には以下のとおり。)。
・第1期間
・第2期間

147万7462円

・第3期間
106万1432円

231万3305円

・第4期間

126万5551円

(2)

推定覆滅事由の不存在


顧客誘引力

ガラス手摺においては,手摺取付業者とガラス取付業者が別であることが通常であるところ,本件発明は,簡便な取付方法であることから,手摺取付業者による手摺取付完了後に,足場不要で,ガラス取付業者においてガラス板と目地枠を取り付けることができる。
こうした手摺の取付方法の簡便さは,製品金額や工事金額に反映される。このため,需要者を建物所有者等としたときでも,同様の外観や安全性であれば,金額で選択するから,手摺の取付方法が製品選択の動機となり得るのであって,本件発明
を利用し取付方法の簡便さで安価になった被告製品を選択するといえる。足場に関しては,マンション新築工事においては足場を組むのが通常であるが,小規模な住宅やリフォームの際には,足場を組むとは限らない。また,潜在的なメリットとして,不具合によるガラス板を取り換える必要がある場合や,工事が遅れても,手摺工事さえ終わっていれば足場を先に撤去し,その後にガラス工事を行うことも可能である。さらに,メンテナンスにおいても,足場を組まずにガラス板の取り換えなどのメンテナンスが可能である。これらの事情から,足場が不要ということも,大きな顧客誘引力となる。

競合品について

ガラス板が連続していて目地もアルミであるフラットレール製品についての原告のシェアは,9割以上である。
また,原告は,平成22年4月から本件特許の実施品を販売しているが,被告の主張する競合製品は,いずれも本件特許出願より相当後に発売された製品である。さらに,これらの被告主張の競合製品のうち,シャルム(乙39。以下乙39製品という。)は,手摺笠木を一度外す必要があるので施工に手間がかかり,FeeletM-Gslim(乙30。以下乙30製品という。)及びNT120(乙
31。以下乙31製品という。)は,回転式のアルミ製目地枠を用いており,製造コストがかかる上,取付強度と耐久性に難点があり,TOPRAIL(乙42。以下乙42製品という。)も,手摺笠木部分を回転させる方法であり,製造コスト,取付強度,耐久性に難点がある。加えて,スウィン(乙27。以下乙27製品という。)とViewXシリーズ(乙29。以下乙29製品とい
う。また,乙27製品,乙29製品~乙31製品,乙39製品及び乙42製品を併せて乙27製品等ともいう。)は,本件特許の侵害品である可能性が高い。これらのことから,被告の主張する競合製品は推定覆滅事由とならない。ウ
(3)

以上より,本件においては,推定覆滅事由はない。
弁護士及び弁理士費用

原告は,本件訴訟の提起のため,弁護士及び弁理士に委任しており,弁護士・弁理士費用は,消費税分加算前の被告の利益額の1割(611万7750円)を下回らない(期間ごとの内訳は,前記(1)オと同じ。)。
(4)

原告の損害額

以上より,原告の損害額は,合計7341万3015円となる。また,期間別には以下のとおりとなり,各期間の最終不法行為日に遅滞に陥っている。・第1期間

1273万7186円

・第2期間

1772万9552円

・第3期間

2775万9663円

・第4期間

1518万6614円

(被告の主張)
(1)被告の利益の額

被告製品の1m当たりの製造原価は3553円(アルミ押出形材2129円,
部品1087円,梱包資材その他82円,生産用固定資産220.9円,BL認定取得費用34.7円)である。
また,これとは別に,被告は被告製品の生産に際し,スロープやコーナー形状の部品について社外加工先に加工を委託しており,総販売数1万8606.3mにおける外注加工費は244万5725円であるから,被告の利益額は,5683万4803円である。

特許法102条2項に基づき権利者の損害額と推定されるのは,侵害者が販
売等によって現に受けた利益の額である。したがって,侵害者は,販売時点での消費税率に基づく負担を負うにとどまる。すなわち,消費税相当分は,販売時点の消費税率(8%)に基づいて算定されるべきである。
(2)

推定覆滅事由の存在


顧客誘引力

(ア)本件発明の作用効果は,①室内側から取り付けることができるため,足場等が不要であること,②取付強度が高く,ガラス板の肉厚が薄いものであっても風圧に耐え,安定して取り付けることができることである。
しかし,①については,他の競合製品においても,押し並べて室内側から取り付けることが可能である。②は,ガラス板をアルミ製目地枠に取り付ける取付装置であれば一様に生じる作用効果であって,本件発明に特有の作用効果ではない。したがって,本件発明の作用効果とされるものは,本件発明に特有の作用効果ではなく,顧客への訴求力は乏しい。より具体的には,以下のとおりである。(イ)本件特許の方法により取り付けた手摺と同様の構造,すなわちガラス板等のパネルを上下枠及び縦枠で囲繞して取り付けた構造については,本件特許の出願前に複数の特許出願が公開されており,パネルを囲繞する構造ではないものの,ガラス板等のパネルを有する手摺も,本件特許の出願前に複数の特許出願が公開されて
いる。これらの特許出願の記載から理解される本件特許出願時における技術水準を前提とすれば,ガラス板をガラス取付枠及びアルミ製目地枠で囲繞して取り付けた手摺は,本件発明の方法を用いなくても,当業者の技術常識を用いて容易に構成できたものであり,本件発明の方法を用いて取り付けた手摺自体には本件特許の価値がなく,本件発明の方法で手摺を取り付けるという点にのみ価値がある。
また,被告製品の需要者は,建物の所有者等の手摺の最終的な需要者であるところ,このような需要者にとって,被告製品を選択する際の動機となるのは,デザインや安全性等の手摺自体の特徴であり,手摺の取付方法が製品選択の動機となることはなく,被告方法に顧客誘引力はない。例外的に,手摺の取付業者が被告製品の仮の需要者と考えられる場合は,手摺の取付方法は被告製品を選択する際の動機と
なり得ることから,このような場合にのみ,被告方法に顧客誘引力が存在し得る。もっとも,ほぼ全ての場合において最終的な需要者が被告製品の需要者であることから,被告製品の販売による利益のうち,被告方法の顧客誘引力による利益の割合は,多くても10%を超えることはない。
他方,足場は,外壁工事等にも用いるものであり,工事作業の安全確保及び周辺
環境の維持も考慮すると,足場等のない状態で施工されることはなく,被告製品の施工においても,手摺の取付時には足場が設置された状態である。このため,被告製品を取り付けるための被告方法においては,足場等を不要として施工費を安価にするという本件発明の効果を実現していない。そうすると,仮に被告方法がガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けるという特徴を含むとしても,その顧客誘引力による利益は,被告方法の顧客誘引力による利益のうちの多くても10%を超えることはない。
ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けるという特徴についても,本件発明のアルミ製目地枠を手摺支柱に係止させるという手法に限らず,他の方法によってもガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けることはできる。このため,仮にガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けると
いう特徴に顧客誘引力があり,被告方法がアルミ製目地枠を手摺支柱に係止させるという特徴を含んでいるとしても,当該特徴に係る顧客誘引力による利益は,ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けるという特徴の顧客誘引力による利益のうち,多くても50%を超えることはない。
したがって,被告製品の販売による利益のうち,本件発明の顧客誘引力による利
益の割合は,多くても0.5%(=10%*10%*50%)を超えることはない。イ
競合品

アルミ製手摺製品の市場における原告のシェアは,高くても15%を上回らない。他方,被告のシェアは約5.35%である。
また,原告製品及び被告製品に類似する競合品として,乙27製品(平成26年発売),乙39製品(平成29年発売),乙29製品(平成28年発売),乙30製品(平成27年発売),乙31製品(平成24年発売),乙42製品が販売されており,同種製品の市場における原告製品の占める割合は,高くとも15%を上回らない。
これらの競合品は,いずれも,室内側から施工することができ,製造コスト,取
付強度,耐久性について,難点があるとはいえない。また,乙27製品は目地枠をビス止めして固定する方法であり,乙29製品は,竪枠(目地枠)を正面側から差し込んで固定する方法であり,いずれも,本件特許の侵害品ではない。第4
1
当裁判所の判断
本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について

(1)被告製品が別紙被告製品説明書のとおりの構成を有し,別紙方法目録記載の方法(被告方法)で取り付けられること,被告方法の構成a~c,g,h及びlが本件発明の構成要件A~C,G,H及びLをそれぞれ充足することは,前記(第2の2(4)イ)のとおりである。
(2)

係止(構成要件D,E,I)及び係合保持(構成要件I,J)の意義本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載によれば,係止爪15は,
手摺支柱1の室外側側面に突設されたアルミ製目地枠13を係止するためのものである(構成要件D)。他方,被係止爪16は,アルミ製目地枠13の室内側側面に突設され,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させることによって係止爪15に係止されるものである(構成要件E)。このような係止爪15と被係止爪16とは,アルミ製目地枠13を…摺動させて,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させ,これによって該目地枠13を最初のガラス板12の側縁部12dに係合保持させるものである(構成要件I)。そうすると,係合保持とは,本件発明によりアルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとが相互に干渉する状態に置かれることを意味するものと理解され
る。このような理解は,次のガラス板12を同様にして…摺動させて,該ガラス板12の側縁部12cを先のアルミ製目地枠13に係合保持させる(構成要件J)との記載とも整合する。なお,構成要件Iと同Jとでは,係合保持する主体につき,前者では最初のガラス板12の側縁部12d,後者では先のアルミ製目地枠13とも理解し得る表現がされている。しかし,これは本件発明により構成される
工程の機序に基づくものとも理解されるのであって,少なくとも,係合保持につき,アルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとが相互に干渉する状態に置かれることを意味するものと理解することとは矛盾しない。
また,アルミ製目地枠13は,手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させられ,その室内側側面に突設された被係止爪16が手摺支柱1の室外側側面に突設された係止爪15に係止されることによって,手摺支柱1に係止される(構成要件E及びI)。すなわち,係止爪15と被係止爪16とがそれぞれアルミ製目地枠13の室内側側面と手摺支柱1の室外側側面という対向する側面に設けられた上で,手摺本体3の長手方向の一方側からの摺動という動作を経ることで,アルミ製目地枠13は,手摺支柱1に係止される状態になるものである。よって,係止とは,手摺本体3の長手方向に直交する方向である室内側から見て前後方向の移動を規制する
ように係止爪15及び被係止爪16を係り止めすることを意味するものと理解される。
これを踏まえると,係合保持とは,ガラス板12とアルミ製目地枠13とが,少なくともガラス板12の板面と直交する方向である前後方向に,互いの移動が規制されるように,相互に干渉する状態に置かれることを意味するものと理解され
る。

本件明細書の記載

本件明細書には,以下の記載がある。
(ア)技術分野

本発明は,ベランダのパラペット(堰壁)に設置される手摺本体の室外側にガラス板を連続的に取り付けるようにした手摺の…取付方法に関するものである。

(【0001】)
(イ)背景技術及び発明が解決しようとする課題
ベランダに設置される従来の手摺の取付装置…としては,…パラペット上に手摺支柱を所定間隔おきに立設し,これら手摺支柱間の上枠と下枠とを横架し,上下横枠間に立格子や面板を取り付け,また手摺支柱の上端部に手摺笠木を架け渡すようにしている。(【0002】)従来のベランダに設置される手摺の取付装置は,その見付面がそのまま屋外正面に露呈しているため外観上の体裁が好ましくなく,また風雨が直接に手摺本体を通過して室内側に侵入し,風雨時に室内を開放しておくことができなかった。(【0004】)
本発明は,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放しておくことができ,且つ手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにした手摺の…取付方法を提案するものである。(【0005】)(ウ)発明の効果

請求項1に係る発明によれば,…手摺本体3の室外面である見付は,手摺本体3の長手方向略全域にかけて連続して設けられたガラス板12で覆われているため,外観上の体裁が非常に良く,又該ガラス板12によって室内側への風雨の進入を防ぐことができ,風雨の時でも室内を開放しておくことができる。(【0010】)

アルミ製目地枠13は,ガラス板12の側端縁12c,12dを係合するようにして手摺本体3に取り付けられ,ガラス板12の上下左右の四週端縁がガラス取付枠14とアルミ製目地枠13に係合保持されるようになっているため,ガラス板の上下端縁のみが上下枠に係合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充填するのに比較して,ガラス板12のガラス取付枠14に対する取付強度が高く,風圧に対する耐久性が良好であり,翻っていえば,ガラス板12の肉厚が薄いものであっても風圧に耐え,ガラス板12を安定してガラス取付枠14に取り付けることができる。(【0013】)(エ)発明を実施するための形態
アルミ製目地枠13は略L字状の被係止爪16を形成した基部片29とガラス板12の側縁部12dの端部が当接する連結件30と該連結片30を介して基部片29と一体形成される目地見付片31とからなり,目地見付片31の内側に水密パッキン20が取り付けられる。…そして手摺支柱1の室外面にもL状が上記左右反対向きの一対のL状の係止爪15が一体形成され,アルミ製目地枠13を一方側からガラス板12の側縁部12dの端縁に連結片30が当接するまで摺動させることによって,アルミ製目地枠13の被係止爪16は手摺支柱1の係止爪15に係止されるようになっている。(【0027】)アルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させることによって,ガラス板12の側縁部12dは水密パッキン19を介してアルミ製目地枠13,正確にはその目地見付片31と基部片29との間で挟持されて係合保持されることになる。このように互いに隣接するガラス板12,12間の目地部もアルミ製目地枠13で係合保持されることになるから,従来のゴム系シール材からなる目地材に比べて,ガラス板12を強固にガラス取付枠14に取り付けることができる。(【0028】)ウ
本件明細書の上記各記載によれば,係合保持とは,ガラス板12の上下
左右の四周端縁(上下縁部12a,12b及び側端縁12c,12d)とガラス取付枠14及びアルミ製目地枠13とが相互に干渉する状態に置かれることであり,かつ,そのような状態にあることによって,ガラス板12を,風圧に耐えられるように,その板面に直交する方向に動かないように維持することを意味するものと理解される。また,係止については,本件明細書においても,特許請求の範囲請求項1の記載と同様のものとして記載されていることから(【0007】),このような係合保持を実現するために,室内側から見て前後方向の移動を規制するように係止爪1
5及び被係止爪16を係り止めすることを意味するものと理解される。エ
被告の主張について

被告は,係止とは,室内側から見て前後方向の移動を規制し,かつ手摺本体3の長手方向に移動自在とすることであり,係合保持とは,接触して手摺本体3の長手方向における移動を規制することであると主張する。
しかし,まず,係止につき,係止に移動自在とする語義は通常な
く,特許請求の範囲及び本件明細書のいずれにも,係止前に手摺本体3の長手方向に摺動可能であることは記載されているものの,係止後にアルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向に移動する動作に関する記載はない。また,アルミ製目地枠13が係止後に手摺本体3の長手方向に移動自在であることの技術的意義について,本件明細書上に何らの開示も示唆もない。
次に,係合保持について,特許請求の範囲の記載には,手摺本体3の長手方向の移動の規制を意味することをうかがわせる具体的な記載はなく,アルミ製目地枠13の連結片30とガラス板12の側縁部12dとの接触に関する記載もない。また,本件明細書には,係合保持の効果として,ガラス板12を,風圧に耐えられるように,その板面に直交する方向に動かないように維持することを意味するものと
理解される記載はあるものの,アルミ製目地枠13ないしガラス板12の手摺本体3の長手方向における移動を規制することをその効果として位置付けていることをうかがわせる具体的な記載はなく,また,そのような規制の技術的意義に関する記載も見当たらない。本件明細書記載の実施形態(【0028】及び図16)を見ると,アルミ製目地枠13の目地見付片31と基部片29との間で,水密パッキン20とコーキ
ング材22とを介して,ガラス板12が,その板面方向に挟持されていることが理解できる。そうすると,アルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとが接触しなければならないものではなく,長手方向に対して両者の位置関係が一意に規制されるという関係にあるものではない。
したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。

(3)室内側から(構成要件F,J,K)の意義

本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,ガラス板12は,室内側からその上端部12aをガラス上縁部嵌合溝4に嵌合され(構成要件F),室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌め込まれ(構成要件J),ガラス取付枠14に室内側から取り付けられる(構成要件K)ものである。ここで,ガラス上縁部嵌合溝4は,手摺本体3の長手方向略全域にわたってガラス用上枠5に連通形成されるものであるところ,ガラス用上枠5は手摺本体3の室外側に設けられるものである(構成要件B)。また,ガラス用下枠7は,手摺本体3の長手方向略全域にわたって前記ガラス上縁部嵌合溝4に対応するガラスか縁部嵌合溝6が連通形成されたものである(同上)。さらに,上下枠5,7は,左右側枠10,11と共に,ガラス取付枠14を構成する(同上)。ガラス取付枠14の室内側にはアルミ製目地枠13が係止される手摺支柱1が存在するため,ガラス板12をガラス取付枠14に取り付けるに際し,手摺本体3の室外側に持ち出さずに隣り合う手摺支柱1の間にガラス板12を通す方法によることは困難である。そうすると,手摺本体3の室外側にあるガラス取付枠14を構成するガラス用上枠5に連通形成されたガラス上縁部嵌合溝4にガラス板12を嵌合
するといった工程が行われる以上,ガラス板12が室外側にあることは,いわば当然である。
したがって,室内側から(構成要件F,J,K)とは,ガラス板の取付けに当たる作業者の位置を示すものと理解するのが最も自然かつ合理的である。イ
本件明細書の記載等

本件明細書には,本件発明の効果として,ガラス板12をその周囲側端をガラス取付枠14に嵌合方式で取り付けるようになっているため,所謂倹鈍方式で室内側からガラス板をガラス取付枠14に取り付けることができ,ガラス板12を手摺本体3の室外側に取り付けるための足場等が不要であるから,それだけ施工費が安価になる。(【0011】。【0014】も同旨。)との記載がある。足場を組む必要がな
いことが本件発明の効果とされることに鑑みれば,作業者はベランダのパラペットに設置された手摺本体よりも室内側に所在することになるから,上記記載の室内側からとは,ガラス板の取付けに当たる作業者の位置を示すものと理解される。本件発明の実施例として最初のガラス板12を先端側の手摺支柱1と先端側のガラス側枠10との間に持ち来し,…ガラス板12の上縁部12aを上枠5のガラス上縁部嵌合溝4に嵌合し(【0030】)とある点も,上記の理解に沿う。ウ
以上より,室内側から(構成要件F,J,K)とは,ガラス板の取付けに当たる作業者の位置を示すものと理解される。これに反する被告の主張は採用できない。
(4)被告方法について

構成要件D及びEと構成d及びeについて

被告方法の構成dにおける支柱S,アルミ製の縦枠S22は,それぞれ本件発明の手摺支柱1,アルミ製目地枠13に相当するところ,被告方法の構成dにおいて,支柱Sの室外側側面には,アルミ製の縦枠S22と嵌め合わせるための支柱突起部が設けられている。また,被告方法の構成eにおいては,アルミ製の縦枠S22の室内側側面に,手摺本体の長手方向の一方側からスライドさ
せることによって支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部が設けられている。この支柱突起部及び縦枠突起部は,いずれも,支柱Sないしアルミ製の縦枠S22に突設された爪様の形状を有する部材であると共に,両者が嵌め合わされる(係り止めされる)ことによって,縦枠S22は,室内側から見て前後方向の移動が規制される。

したがって,支柱突起部(構成d)は係止爪15(構成要件D)に,縦枠突起部(構成e)は被係止爪16(構成要件E)に,それぞれ相当する。構成eにおいては,このほかに,縦枠S22を押縁の係合用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れという工程が含まれる。しかし,当該工程が含まれるとはいえ,その後に更に縦枠S22を手摺本体の長手方向の一方側から摺動させることによ
って支柱突起部に縦枠突起部が嵌め合わされることに変わりはなく,その意味で,当該工程の存在ないし押縁の係合用突起部の存在は,付加的な手段にすぎない。
以上より,被告方法の構成d及びeは,それぞれ,本件発明の構成要件D及びEを充足する。これに反する被告の主張は採用できない。


構成要件Fと構成fについて

被告方法の構成fにおけるガラス及びガラス上弦材の溝は,本件発明のガラス板12及びガラス上縁部嵌合溝4に相当する(構成要件Bと構成b)。また,ガラスの上側は,本件発明のガラス板12の上縁部12aに相当する。
さらに,被告方法の構成fのガラスを室内側から室外側へ持ち出してとは,作業者が室内側に所在してガラス板の取付け作業を行うことを意味する。そうすると,構成fのガラスを室内側から室外側へ持ち出しては,本件発明の室内側からに相当する。そうすると,被告方法の構成fは,本件発明の構成要件Fを充足する。これに反する被告の主張は採用できない。


構成要件Iと構成iについて

被告方法の構成iにおけるガラス上弦材S,ガラス下弦材S,最初のガラスの側縁部は,それぞれ,本件発明の上枠5,下枠7,最初のガラス板12の側縁部12dに相当する。また,被告方法の支柱突起部と縦枠突起部が嵌め合わされることによって,縦枠S22とガラスは,縦枠S22が,ガラスを,風圧に耐えられるように,その板面に直交する方向に動かないように維持する状態に置かれることとなる。縦枠S22とガラスとがこのような状態に置かれることは,係合保持に相当する。
被告方法の構成iにおいては,縦枠S22は最初のガラスの側縁部との間に隙間をあけて位置させられるけれども,係合保持には,アルミ製目地枠13がガラス
板12をその板面と直交する方向に動かないように維持する以上の意味はなく,アルミ製目地枠13がガラス板12の側縁部12dに接触している必要のないことは,前記(2)エにおいて説示したとおりである。また,証拠(甲13)によれば,ガラス工事に係る建築工事の標準的な仕様としてエッジクリアランスを設けることが定められており,ガラスの破損を防止するために,エッジクリアランスを設けることは
技術常識であることが認められる。そうすると,アルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとの間に一定の隙間を設けることは,当業者が技術常識に基づき適宜に行い得る設計事項に過ぎない。そうである以上,この点は,被告方法の構成iにおいて係合保持を欠くと見るべき事情とはいえない。
被告方法の構成iにおいては,さらに,押縁及び止めゴムを用いて支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させ,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定している。しかし,係止とは,係合保持を実現するために,室内側から見て前後方向の移動を規制するように係止爪15及び被係止爪16を係り止めすることを意味するところ,被告方法においても,縦枠突起部と支柱突起部のみでも上記の意味における係止がされており,押縁や止めゴムの存在は付加的な固定手段であるに過ぎない。

以上より,被告方法の構成iは,本件発明の構成要件Iを充足する。これに反する被告の主張は採用できない。

構成要件Jと構成jについて

被告方法の構成jにおけるガラスの側縁部は,本件発明のガラス板12の側縁部12cに相当する。また,ガラス上側をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けてガラス下側をガラス下弦材に嵌め込みとは,本件発明の倹鈍式に相当する。さらに,室内側から室外側に持ち出しては,前記イのとおり,本件発明の室内側からに相当する。他方,被告方法の構成jにおいては,最初のガラスと同様にしてガラス上弦材S及びガラス下弦材に嵌め込み,一方側からスライドさせることによって,縦枠S22
とガラスは,縦枠S22が,ガラスを,風圧に耐えられるように,その板面に直交する方向に動かないように維持するような状態に置かれるから,これは係合保持に相当する。ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間を空けて位置させることは,前記ウのとおり,係合保持を欠くと見るべき事情とはいえない。

以上より,被告方法の構成jは,本件発明の構成要件Jを充足する。これに反する被告の主張は採用できない。

構成要件Kと構成kについて

(ア)被告方法の構成kにおけるガラス取付枠は,本件発明のガラス取付枠14に相当する。また,室内側から室外側に持ち出しては,前記イのとおり,本件発明の室内側からに相当する。
さらに,被告方法の構成kのうち,複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられることにより,複数のガラスとアルミ製の縦枠S22とが外観上は連続するようにして取り付けられる点について,連続して(構成要件K)とは,本件明細書の記載(【0010】)によれば,ガラス板12が取り付けられた状態での外観の形状を表現したものと理解される。
そうすると,個別のガラスの位置決めは手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして行われるとしても,外観上複数のガラスとアルミ製の縦枠S22が連続するようにして取り付けられる以上,上記構成は,なお連続してに相当するといえる。
以上より,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kを充足する。これに反す
る被告の主張は採用できない。
(イ)足場について
被告方法は,その構成それ自体及び証拠(甲4)によれば,手摺の室外側にガラス板を取り付けるに当たって,足場を必要としないものと認められる。また,被告製品の設置に当たって,ガラスの落下の危険等に対処する目的で足場が設置される
ことがあるとしても,足場設置の目的を異にする以上,この点は本件発明の技術的範囲への属否とは無関係である。これに反する被告の主張は採用できない。(5)小括
以上より,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属する。
2
直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)について

(1)前記(第2の2(4)イ)のとおり,被告は,被告製品を販売し,被告方法のうち,手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工までを行い,ガラス取付作業は別の施工業者によって施工されている(なお,弁論の全趣旨によれば,被告は,ガラスの販売は行っていないものと認められる。)。
もっとも,証拠(甲4)によれば,ガラス取付作業に当たる施工業者は,被告製品を使用して,被告の指定した被告方法により,被告の作業に引き続いて取付作業を行ったものと見られる。この点で,被告とガラス取付作業に当たる施工業者とは,共同して被告方法を実施していたものと評価できる。
したがって,被告は,本件特許権の直接侵害に当たる行為をしていたものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
(2)

また,前記(第2の2(4)イ)のとおり,被告製品は,被告方法により取り
付けられる物であって,その構造も被告方法による取付けを前提としたものであり,経済的,商業的又は実用的な用途として,被告方法により取り付ける以外の用途があるとは想定し難い。したがって,被告装置は,その方法の使用にのみ用いる物(特許法101条4号)に当たる。そうすると,被告が業として行う被告製品の生産,譲渡及び譲渡の申出は,本件
特許権の間接侵害に当たるというべきである。これに反する被告の主張は採用できない。
3
乙3文献に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)について

(1)

乙3文献の記載

乙3文献には,以下の記載が認められる。

発明の属する技術分野

本発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される建築用サイドパネルに関するものである。

(【0001】)イ
従来の技術

従来,この種の建築用サイドパネルは,…相対向する上,下枠a,bに形成された溝cにアクリル板等からなるパネルdの上下両辺部を嵌め込み,パネルdと溝cとの隙間をビードe,fで埋めるように構成されていたので,次の点で改良の余地があった。(【0003】)パネルdをスライドさせて溝cに嵌め込む際,ビードeが不測に外れないように注意を払う必要があり,また,ビードe,fが差し込みにくい場合,ビードe,fに中性洗剤を塗布して滑りをよくしたり,ぬるま湯で暖めて柔らかくするといった工夫が必要で,建築用サイドパネルの購入者にとっては,組み立て作業がかなり面倒であった。/…使用可能なパネルdの厚みが溝cの幅によって制限されることになり,汎用性がないため,…パネルの厚みに対応する多品種を製造しなければならず,不経済であった。(【0004】。なお,/は改行部分を示す。)

発明が解決しようとする課題

本発明は,組立作業が容易で,しかも,パネル厚の変更にもある程度対応できる汎用性のある経済的な建築用サイドパネルを提供するものである。

(【0005】)

発明の実施の形態

Aは,本発明に係る建築用サイドパネルの一例を示し,駐車場の屋根Bを支持する柱Cに取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される。この建築用サイドパネルAは,相対向する上,下枠1a,1bと,上,下枠1a,1bの長手方向両端部間に連結された一対の端面縦枠2と,上,下枠1a,1bの長手方向中間部間に連結された中間縦枠3a,3bと,上,下枠1a,1bの溝に嵌め込まれた複数枚の枠付きパネル4とを備えている。前記中間縦枠3a,3bは,隣り合う枠付きパネル4の目地毎に配置されており,上,下枠1a,1bの溝の両側に相対向して設けられている。(【0019】)枠付きパネル4は,…パネル材4aと,その周囲四辺に固定された方形の枠体4bとで構成されている。パネル材4aとしては,有色透明のアクリル板…等が使用される。枠体4bとしては,アルミ型材…等が使用され,これらはパネル材4aの種類に応じて任意に選択できる。(【0020】)中間縦枠3a,3bは,…縦板部27と,その両側辺から略直角に折れ曲がった両側板部28と,それらの先端から内側へ略直角に折れ曲がった鍔板部29とから成り,縦板部27には,上下両端部とその中間部に,…中間縦枠取付金具30への取付用ボルト31を挿通するための貫通孔32が形成されている。(【0026】)中間縦枠取付金具30は,横板部30aとその両端から略直角に折れ曲がり且つねじ孔33が形成された一対の垂直板部30bとから成り,横板部30aには,その両端寄りの二箇所に貫通孔34が形成され,前記上枠1aの下面と下枠1bの上面に,夫々,前記横板部30aが上,下枠1a,1bの溝7を横切り且つ前記垂直板部30bが互いに上下に向かい合う状態にボルト・ナット等の止め具35で取り付けるように構成されている。(【0027】)

上,下枠1a,1b,端面縦枠2,中間縦枠3a,3bは,何れも鋼板を曲げ加工したものであるが,アルミ等で作製してもよい。

(【0028】)

次に,上記建築用サイドパネルAの組立手順を説明する。

(【0029】)

予め,端面縦枠2とパネル係止金具23とは,ボルト26を前記ねじ孔24にねじ込んで仮止めしておき,この状態で,一方の端面縦枠2を上,下枠1a,1bの長手方向一端部にボルト22で連結する。

(【0030】)

しかる後,上,下枠1a,1bの他端側から上,下枠1a,1bの溝7に枠付きパネル4をスライドさせて嵌め込み,その縦枠材を前記端面縦枠2の溝19に嵌め込む。

(【0031】)

この状態で,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付け操作を行い,枠付きパネル4の縦枠材をパネル係止金具23と端面縦枠2のパネル受け部18で挟持する。

(【0032】)

しかる後,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに取り付け,次の枠付きパネル4を上,下枠1a,1bの溝7に中間縦枠取付金具30と当たる位置までスライドさせて嵌め込む。

(【0034】)次に,中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付ける。即ち,中間縦枠3a,3bの貫通孔32を通して挿入したボルト31を中間縦枠取付金具30のねじ孔33にねじ込むことにより,…両側の中間縦枠3a,3bの鍔板部29で枠付きパネル4の隣り合う縦枠材を挟持する。(【0035】)上記の作業を繰り返し,最後の枠付きパネル4を上,下枠1a,1bの溝7に嵌め込んだら,他端の端面縦枠2を,予め,パネル係止金具23を仮止めした状態で,上,下枠1a,1bの他端に連結すると共に,枠付きパネル4の縦枠材を当該端面縦枠2の溝19に嵌め込み,この状態で,前記と同様に,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付け操作を行い,枠付きパネル4の縦枠材をパネル係止金具23と端面縦枠2のパネル受け部18で挟持して固定する。(【0037】)
上記の構成によれば,上,下枠1a,1bの溝7に嵌め込むパネルとして,予め,パネル材4aの周囲四辺に方形の枠体4bが固定されて成る枠付きパネル4を使用しているので,…作業に不慣れな建築用サイドパネルの購入者サイドでは,ビード4cの差し込みを行う必要がなくなり,組立作業が容易である。(【0038】)しかも,上,下枠1a,1bの溝7にスライド自在に嵌め込んだ枠付きパネル4の縦枠材を端面縦枠2の溝19に嵌め込み,当該端面縦枠2の溝の一側縁に形成されたパネル受け部18と端面縦枠2の内部に設けられたパネル係止金具23とで前記縦枠材を挟持して固定し,上,下縦枠1a,1bの溝7の両側に設けられた中間縦枠3a,3bで,枠付きパネル4の隣り合う縦枠材を挟持して固定するので,枠付きパネル4の厚さ(枠体4bの厚さ)が上,下枠1a,1bの溝7の幅より薄くても,パネル受け部18とパネル係止金具23とによる挟持および両側の中間縦枠3a,3bによる挟持により,ガタツキのない状態にしっかり固定できる。(【0039】)

従って,上,下枠1a,1bに形成する溝7の幅が一定であるにもかかわらず,溝幅の範囲内で厚さ(枠体の厚さ)の異なる枠付きパネル4を使用できることになり,ある程度の汎用性が得られるので,経済的である。

(【0040】)
(2)本件発明と乙3発明の対比等

技術分野について
乙3文献の記載によれば,乙3発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される建築用サイドパネルに関するものであり,ベランダのパラペットに設置される手摺本体の室外側にガラス板を連続的に取り付けるようにした手摺の取付方法に関するものである本件発明とは,そもそも技術分野を異にする。

本件発明と乙3発明の相違点について

前記アの点を措くとしても,乙3文献の上記各記載によれば,本件発明と乙3発明とは,少なくとも,以下の点で相違する。
すなわち,本件発明では,手摺支柱1の室外側側面にアルミ製目地枠13を係止するための係止爪15が突設され(構成要件D),アルミ製目地枠13の室内側側面には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させることによって前記係止爪15に係止される被係止爪16が突設され(構成要件E),アルミ製目地枠を上下枠5,7間を一方側から摺動させて,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させる(構成要
件I)のに対し,乙3発明では,上,下枠1a,1b及び一対の端面縦枠2からなる枠が取り付けられる柱等に,中間縦枠3a,3bを係止する部材はなく,止め具35により上,下枠1a,1bに取り付けられた中間縦枠取付金具30により中間縦枠3a,3bを取り付ける(乙3文献【0027】,【0035】)こととされている。他方,乙4文献には,複数の支柱とこれらの支柱を連結する横架材とからなる骨
組に保持されるパネルの取付構造において,前記骨組の少なくとも片側に,横方向に適宜間隔を置いて縦方向に設けられた複数の支持部材と,前記支持部材の上側から縦方向に差し込むことによって,前記支持部材に取り付けられるパネルとを具備することを特徴とする取付構造が記載されている(【0007】)。このうち,パネルは,支持部材に,支持部材及び骨組の上側から差込み及び引抜き可能に取り付けら
れ,支持されるものであり(【0034】),支持部材は,通常,支柱あるいは横桟に固定されるが,支柱と一体的に形成されたものであってもよい(【0036】)。このように,乙4文献には,そもそも目地枠を設ける構成の開示も示唆もなく,したがって,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙5文献には,支柱に竪枠を取り付け,これと上枠及び下枠とにより板ガラスを上下左右の四辺で支持する構成が開示されているところ(【請求項4】,【0023】等),この竪枠は本件発明のアルミ製目地枠13に相当するものといえる。しかし,竪枠の固定方法については,ビスによる固定が示されている(【0023】)のみであって,支柱に突設された係止爪及び竪枠に突設された被係止爪という構成の開示も示唆もなく,また,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。

乙6文献には,支柱に巻回収納されたファブリックを横方向に引き出し,その端部を隣接する他の支柱に設けられたフックに係止することによってフェンスとして使用することができるファブリックフェンスが記載されており(【請求項1】,【0029】,【0033】等),そもそも目地枠を設ける構成の開示も示唆もなく,したがって,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙7文献には,石綿建材を被覆処理するためのスレート被覆構造に関する発明が記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被告の主張によっても,取付部材にカバー部材を倹鈍方式により取り付ける構成が開示されているというにとどまるし,目地枠を設ける構成及び目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。

乙8文献には,強度的安定性に優れた囲い,例えば防雪,防風,防雨として活用でき,あるいは目隠し等としても活用できる囲いを簡易に組み立てることができると共に,その分解が容易で保管スペースも少なくて済む,組立式囲いに関する発明が記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被告の主張によっても,支柱間の区画部を覆う覆板の上下の端部分を倹鈍方式で上下
の条溝に挿入する構成が開示されているというにとどまるし,目地枠を設ける構成及び目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙9文献には,建築物内部を2つの部屋に仕切る間仕切面部の構造に関する発明が記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被告の主張によっても,複数の単位仕切パネルを上下ランナーに倹鈍式で取り付ける構成が開示されているにとどまるし,目地枠を設ける構成及び目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
さらに,乙10文献~乙12文献は,いずれも,単に部材を引っ掛けて留めるという意味での係止が周知慣用技術であることを示すものとして被告の引用するものであるが,その点を措くとしても,乙10文献及び乙11文献には,いずれも目地枠に関する構成の開示も示唆も認められない。また,乙12文献は,その公開
日は本件特許の出願日に後れるものであるし,その点を措くとしても,左右の竪枠は,ガラス板に取り付けられるものであり(【請求項1】),また,ガラス板の左右側端に対面する見込片相互間に隙間が存在し(【0008】,図2),この隙間すなわち目地を覆う部材はないことから,やはり目地枠に関する構成の開示も示唆もない。

したがって,上記相違点につき,乙3発明に乙4文献~乙12文献を組み合わせたとしても,当業者が本件発明の構成を容易に想到することができたとはいえない。
(3)小括
以上によれば,本件発明は,特許出願前に当業者が乙3文献~乙12文献記載の
発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,特許法29条2項に違反して特許されたものとはいえない。したがって,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。この点に関する被告の主張は採用できない。
4
サポート要件違反の有無(争点3-2)について

(1)被告は,本件発明の課題は,手摺本体の室外側長手方向略全域に,手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにすることであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,この課題を解決するには本件特許の請求項2に係る発明の構成が必要であるとした上で,本件発明の構成には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないなどと主張する。
しかし,本件発明が解決しようとする課題は,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放しておくことができ,且つ手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにした手摺の取付方法を提案することにある(本件明細書【0005】)。また,その効果は,手摺本体3の室外面である見付は,手摺本体の長手方向略全域にかけて連続して設けられたガラス板12で覆われているため,外観上の体裁が非常に良く,又該ガラス板12によって室内側への風雨の侵入を防ぐことができ,風雨の時でも室内を開放しておくことができる。(【0010】),

所謂倹鈍方式で室内側からガラス板12をガラス取付枠14に取り付けることができ,ガラス板12を手摺本体3の室外側に取り付けるための足場等が不要であるから,それだけ施工費が安価になる。


(【0011】。なお,【0014】も同旨。),

互いに隣り合う複数のガラス板12間にアルミ製目地枠13が配設されるようになっているため,…アルミ特有の見栄を発揮することができ,手摺本体3の見付面の体裁がこの面からの良好である。

(【0012】),ガラス板12の上下左右の四週端縁がガラス取付枠14とアルミ製目地枠13に係合保持されるようになっているため,…ガラス板12のガラス取付枠14に対する取付強度が高く,風圧に対する耐久性が良好である(【0013】),複数のガラス板12の互いに隣り合うガラス板12間に取り付けられる目地材としてアルミ製目地枠13を用い,このアルミ製目地枠13を,手摺支柱1に設けた係止爪15にアルミ製目地枠13に設けた被係止爪16を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させて,手摺本体3に係止するようにしているから,アルミ製目地枠13も室内側から容易に取り付けることができ,足場等が不要であるから,この面でも安価に施工することができる。(【0015】)というものである。本件明細書には,少なくとも最後のガラス板12を嵌め入れる工程より前の工程については,本発明に係る特許請求の範囲の記載と同じ内容が記載されているといえると共に,当業者が,本件発明の上記課題を解決し,その効果を実現することができる記載がされているものといえる。
他方,本件明細書には,【発明を実施するための形態】として,少なくとも最後のガラス板12を嵌め入れる側の側枠11につき,固定側枠部材17と該固定側枠部材17から一方側に後退移動すると共に該固定側枠部材17に重合するよう進入移動可能な可動側枠部材18との2部材によって形成する構成が示されており(【0036】),この構成は,本件特許の請求項2に係る発明に対応するものと理解され
る。
もっとも,上記【0036】は,本件発明の好適な一実施形態の例を示したものに過ぎず(【0020】),本件明細書を全体として見ても,最後のガラス板12を嵌め入れる側の側枠11の構成につき上記のものに限定されることをうかがわせる記載はない。また,最後のガラス板12につき,本件特許の請求項2に係る発明によらな
ければ側枠11に固定できないというものでもない。現に,証拠(甲4)によれば,被告方法においては,最後のガラスを入れた後,壁面と端部枠Sの間から端部縁Sを入れて,端部枠Sと端部縁Sを嵌め合わせるという方法が行われることが認められる。
したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載と
を対比したとき,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載された発明ということができるとともに,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により,当業者が,上記課題を解決し,その効果を実現することができる範囲のものであるといえる。
(2)また,被告は,本件明細書には,ガラスとは独立して,目地枠について長手
方向の移動を規制する手段は開示されておらず,したがって,長手方向の移動を規制する手段を限定する事項は開示されていないとした上で,ガラスとは独立して,目地枠について長手方向の移動を規制する手段を任意に付加することができるとすると,その手段はあらゆる手段を含み,足場が不要であるという本件発明の作用効果を実現できないものも含まれ得るなどとも主張する。
しかし,前記1(2)エで説示したように,アルミ製目地枠13は,係止によって,室内側から見て前後方向に規制されるものではあっても,本件発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書のいずれの記載においても,発明の構成として,目地枠の長手方向への移動の規制に関する開示ないし示唆はされていない。よって,アルミ製目地枠13の長手方向への移動に関しては,本件発明の作用効果に即する範囲で,その移動が規制されているものも,移動が規制されていないものも含み得ると
解するのが相当である。そして,本件明細書には,本件発明の作用効果として足場等が不要であることが具体的に記載されているのであるから,ガラスとは独立して,目地枠について長手方向の移動を規制する手段を任意に付加し得るとしても,これには足場等を不要とする本件発明の作用効果を実現し得なくなるものは含まれない。このため,この点に関する被告の主張はその前提を欠き,失当である。
(3)以上より,本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものということができるから,本件特許は,特許法36条6項1号所定の要件を満たしていない特許出願に対してされたもとはいえない。したがって,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものとはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。5
原告の損害額(争点4)について

(1)被告製品の販売による被告の利益の額について

被告製品の売上額

前記(第2の2(4)ア)のとおり,被告製品1mあたりの売上金額(税別)は,6739円である。
また,被告は,平成29年1月13日~令和元年6月5日までの間,被告製品を製造,販売したところ,総販売数は1万8606.3mである。その内訳は,証拠(乙19,32)によれば,以下のとおりであると認められる。
・第1期間

3228.2m

・第2期間

4493.5m

・第3期間

7035.6m

・第4期間

3849m


控除すべき経費等

(ア)

被告製品1mあたりの原価,費用

a
被告製品の1mあたりの製造に当たり,アルミ押出形材2129円,部品1
087円,梱包資材その他82円(いずれも税別)を要することについては,当事者間に争いがない。
b
被告製品生産用固定資産について

証拠(乙34)によれば,被告製品の生産用固定資産には10種の金型が含まれること,その取得価格(税別)は,合計286万円であることが認められる(なお,被告の利益の額の算定に当たってその取得に要する費用を控除すべきことは,当事者間に争いがない。)。これを1mあたりに換算すると(なお,このような計算方法によることについては当事者間に争いがない。),1mあたり153.7円(小数点第2位以下切捨て。以下同じ。)となる。
他方,被告は,手摺門扉製作用モータープレス機1台を被告製品専用で使用していたとして,その取得費用の控除を主張する。しかし,証拠(乙34)によれば,当該モータープレス機は,被告において同時に導入したモータープレス機3台のう
ちの1台であり,他の2台は別の製品の用途に用いられていることが認められる。そうすると,被告製品専用で使用されているモータープレス機1台も,被告製品の製造以外の用途に転用可能なものと見られることから,その取得費用は,被告製品の製造のために直接的追加的に必要であった費用に当たるとはいえず,これを控除すべきではない。

c
BL認定取得費用について

証拠(甲14,15,乙29の2,30の2,31の2)によれば,BL(ベターリビング)認定とは,一般財団法人ベターリビングにより,製品の品質,性能,アフターサービス等に優れた住宅部品であると適合評価を受けたことを示すものと認められる。このような性質のものであることに鑑みると,BL認定を取得することは,被告が他社と伍して被告製品を販売するにあたって必要であったものといえるから,その取得費用は,被告製品の販売のために直接的追加的に必要であった費用に当たるといえ,被告の利益の額の算定に当たって控除すべきである。その額について,証拠(乙35)によれば,このBL認定取得のために,被告は,64万7800円(税別)を要したことが認められる。これを1mあたりに換算すると,34.8円となる。

(イ)

外注加工費

証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品を製造,販売するにあたり,スロープ及びコーナー部について,社外加工先に加工,生産を依頼していたこと,スロープの加工費用は1ユニット(1m)あたり1850円(税別),コーナーユニットの加工費用は1か所あたり1200円(同上)であったこと,第1期間についてコーナーユニットが301か所,第2期間についてスロープが4.5m,コーナーユニットが394か所,第3期間についてコーナーユニットが830か所,第4期間についてスロープが28m,コーナーユニットが463か所であったことが認められる。
そうすると,外注加工費(税別)は,第1期間について36万1200円,第2
期間について48万1125円,第3期間について99万6000円,第4期間について60万7400円となるところ,これは被告製品の製造,販売に直接的追加的に必要であった費用に当たるから,被告の利益の額の算定に当たって控除すべきである。
これに対し,原告は,工事台帳に外注費用の欄があるにもかかわらず外注加工費
が記載されていないのは不合理である,全販売数量の8%に過ぎない工事を基準に売上や原価を計算しているのに,外注加工費用は全体で計算するのは妥当でない,などと主張する。しかし,被告製品の取付けに当たり,スロープ及びコーナー部が必要となること,これを社外加工先に依頼して加工,生産を依頼すること自体は不自然ではないし,工事台帳(乙23の1~23の12)に外注商品,外注費用といった項目があることを考慮しても,なお乙36の記載内容の信用性に疑義を抱くべき具体的な事情は見当たらない。また,全販売数量の一部をもとに売上等を計算するからといって,外注加工費につき実数に基づき計算したとしても,そのこと自体は何ら不適当でもなければ,不合理でもない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ)小括

以上によれば,外注加工費を除く以外の被告製品の製造販売に係る費用(税別)は,1mあたり3486.5円(=―2,129+―1,087+―82+―153.7+―34.8)となる。これに,外注加工費として,第1期間について36万1200円,第2期間について48万1125円,第3期間について99万6000円,第4期間について60万7400円を加えたものが,控除すべき費用となる。


被告の利益の額

(ア)前記ア及びイによれば,1mあたりの被告製品の売上額から控除すべき経費等を差し引いた1mあたりの利益額は,3252.5円(=―6,739-―3,486.5)となる。
そうすると,被告製品による被告の利益の額は,以下のとおりとなる。・第1期間

1013万8520円(小数点以下切捨て。以下同じ。)

3,228.2m*―3,252.5/m-―361,200=―10,138,520・第2期間

1413万3983円

4,493.5m*―3,252.5/m-―481,125=―14,133,983・第3期間
2188万7289円

7,035.6m*―3,252.5/m-―996,000=―21,887,289・第4期間

1191万1472円
3,849m*―3,252.5/m-―607,400=―11,911,472(イ)消費税について
消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項),例えば,次に掲げる損害賠償金のように,その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。…(2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金(消費税法基本通達5-2-5)とされていることに鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合,その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察される。そうすると,特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるためには,課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があるというべきであるから,利益には消費税額相当分も含まれ得ると解される。適用されるべき消費税率について,原告は,損害賠償支払時点の税率(10%)によるべきと主張する。

しかし,上記のとおり,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金に対する消費税が課せられるのは,損害賠償金の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められることによる。ここで,資産の譲渡等に相当する行為と見られるのは,特許権侵害行為である。また,消費税基本通達9-1-21では,

工業所有権等又はノウハウを他の者に使用させたことにより支払いを受ける使用料の額を対価とする資産の譲渡等の時期は,その額が確定した日とする。

とされている。これらのことに鑑みると,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金は,特許権侵害行為時に直ちに損害が発生して金額が確定するものであるから,資産の譲渡等の時期は,特許権侵害行為時であると解される。
そうすると,本件においては,第1期間~第4期間のいずれにおいても,本件特
許権侵害行為時の消費税率8%が適用されることとなる。
(ウ)以上によれば,被告の利益の額(税込)は,以下のとおりとなる。・第1期間
・第2期間

1526万4701円

・第3期間

2363万8272円

・第4期間
1094万9601円

1286万4389円

(2)推定覆滅について

本件発明の効果

本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は,前記4(1)のとおりである。要するに,本件発明の効果は,①外観上の体裁の良さ及び室内側への風雨の進入防止並びに②取付強度の高さ及び風圧に対する耐久性の良さと,③取付作業時に足場等が不要となることによる施工コストの低減にあるといえる。もっとも,上記効果のうち①及び②は,手摺本体取付け後の効果であるため,取付方法に係る発明である本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とは必ずしもいえない。イ
本件発明の貢献の程度等について

(ア)本件発明は,手摺の取付方法に係る発明である。手摺を選択するのは,最終的にはこれを取り付ける建築物の施主であるものの,手摺の取付方法そのものが施主の関心を惹くとは考え難い。その意味で,本件発明に係る手摺の取付方法を実施することは,製品選択の直接の動機となるとはいえない。
しかし,本件発明の効果①~③は,いずれも建築物に取り付けるべき手摺製品の選択の動機となり得る事情ということはできる。

(イ)もっとも,前記アのとおり,効果①及び②は,いずれも手摺本体取付け後の効果であるため,取付方法に係る発明である本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とは必ずしもいえない。例えば,本件特許出願後に公開されたものであるものの,特開2009-228320号公報(乙16。平成21年10月8日公開)には,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板等のパネルが取り付けら
れ,パネル間にはパネル支持枠(アルミニウム系金属で構成されるものであり(【0012】),アルミ製目地枠に相当する。)を用い,パネルの上下左右全ての側部が支持固定される手摺の構成が開示されている。そうすると,効果①及び②については,本件発明の実施による貢献の程度の評価に当たっては,必ずしも重視し得るものではない。
(ウ)他方,効果③については,最終的な需要者(ないしこれに対して建築物に取り付けるべき手摺を提案する手摺取付業者や建築物の開発業者等)にとって,顧客誘引力を生じ得るものといってよく,本件発明の貢献の程度を評価するに当たってはこれを考慮に入れるべきである。
もっとも,複数階層の建築物の建築現場においては,手摺取付工事のための足場は不要であっても,別工程のために足場の設置が必要となることは,当然あり得る
(乙50~54参照)。このため,このような場合は,結局は足場等設置に要するコストが発生し,施工コスト低減の効果がないか,あるとしても,設置期間短縮等による限られた効果しか生じないものと合理的に推察される。
他方,このような事情は主として建築物の新築時や大規模修繕時のものであり,それ以外のメンテナンス時には,足場等を不要とすることによる施工コストの低減
という効果が発揮されることは考えられる。現に,乙42製品のカタログ(乙42)には,

パネルは室内側から取り付けられ,メンテナンス性に優れています。

と記載されている。また,原告製品のカタログ(甲15)においても,

ガラス嵌め込み工事における,外部足場が不要になります。

との記載があり,これもメンテナンス性における優位性を指摘するものと理解される。ただし,建築物の
新築時及び大規模修繕時に比較すると,それ以外の機会にメンテナンスを実際に要する例は,規模的にかなり少ないと推察される。
さらに,被告は,そのウェブサイト(甲3の1)において,被告製品の特徴として,ガラスの連続した意匠となること,4辺支持とすることでガラス厚を薄く設計できるとともに,手すりの高耐風圧仕様となること,ガラスの縦枠への掛かり寸法
をガラス厚とし,安心な製品仕様としていることを挙げるものの,足場を組む必要がないこと(その結果として施工費が安価になること)については触れていない。加えて,本件発明に係る手摺取付方法によれば,ガラス取付業者においてガラス板と目地枠を取り付けることができるとしても,それがどの程度施工コストの低減に貢献する効果を有しているのかは明らかではない。
(エ)以上によれば,本件発明は,施工コスト低減という効果(③)によりこれを実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧客誘引力を有するといえるものの,その程度は限られているというべきである。また,効果①及び②に関しては,本件発明は,手摺本体の取付け完了後の外観上の体裁及び取付強度の点で同程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえない。ウ
競合品について

(ア)外観上の体裁の良さ等(①)について
証拠(乙27,29~31,39,42。各枝番を含む。以下同じ。)によれば,乙27製品等は,いずれも,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板が取り付けられ,ガラス板間にはアルミ製目地枠を用いているものと認められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効果①と同様の効果を奏する
ものといえる。
(イ)取付強度の高さ等(②)について
証拠(乙27,29~31,39,42)によれば,乙27製品等は,いずれも,ガラス板間の目地材としてアルミ製目地枠(縦枠,竪枠)を用い,ガラス取付枠とアルミ製目地枠とでガラス板の上下左右を係合保持しているものと認められる
(乙31製品については,2辺支持タイプとの記載もあるが(甲18),4辺支持との記載のあるガラスタイプもある(乙31)。)。これにより,これらの製品は,本件発明の効果②と同様の効果を奏するものといえる。これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製目地枠ないし手摺笠木部分の取付方法ゆえに取付強度と耐久性に難点がある旨を指
摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる取付強度及び耐久性の問題点が具体的にどの程度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件明細書によれば,取付強度及び耐久性に係る本件発明の効果は,ガラス板の上下端縁のみが上下枠に係合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充填するのに比較して(【0013】)の強度に関するものに過ぎない。このほか,原告製品(証拠(甲14,15)及び弁論の全趣旨より,本件発明に係る取付方法により取り付けられるものと認められる。)と同様に,これらの製品の施工例として高層マンション等の複数階層を有する建築物が示されていること(乙30,31,42)に鑑みても,乙30製品,乙31製品及び乙42製品は,少なくとも,原告製品と競合し得る程度には本件発明の効果②と同様の効果を奏するものと見られる。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

(ウ)施工コストの低減(③)について
証拠(乙37~42)によれば,乙27製品等は,いずれも,ガラス板とアルミ製目地枠を室内側から取り付けることが可能であり,ガラス板とアルミ製目地枠を室外側に取り付ける作業のために足場を組む必要はないものと認められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効果③と同様の効果を奏するものといえる。
これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製目地枠ないし手摺笠木部分が回転式であるがゆえに製造コストに難点がある旨を指摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる製造コストの問題点が具体的にどの程度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件発明の効果の1つである施工コストの低減は,足場等を設ける必要がないことによって実現されるものであって,
アルミ製目地枠の取付方法が回転式であること(乙30製品,乙31製品)や手摺笠木部分の取付方法が回転式であること(乙42製品)による製造コストとは無関係である。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(エ)その他

原告は,乙27製品及び乙29製品につき,本件特許権を侵害する製品である可能性が高い旨を指摘する。しかし,原告も可能性を指摘するにとどまるし,これらの製品が本件特許権を侵害することを認めるに足りる証拠もないことから,本件においては,この点は考慮に含めないこととする。
(オ)以上より,乙27製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有する製品として,原告製品及び被告製品と市場において競合するものと見るのが相当である。
もっとも,原告は,原告製品を遅くとも平成24年3月までには販売していると認められる(甲14,15,弁論の全趣旨)。他方,証拠(乙55)及び弁論の全趣旨によれば,乙27製品等の販売開始時期は,乙31製品が平成24年,乙27製品が平成26年,乙30製品が平成27年,乙29製品が平成28年3月,乙3
9製品が平成29年10月であることが認められる。
また,原告製品,被告製品及び乙27製品等の各売上額やアルミ製目地枠のフラットレール製品市場におけるシェアは,いずれも証拠上明らかでない。これらの事情を総合的に考慮すると,アルミ製手摺製品の市場において原告製品及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許法102条2
項に基づく損害額の推定覆滅事由としてこれを考慮すべきではあるものの,被告による主張立証の程度に鑑みれば,その程度は相当に限られると見るべきである。エ
推定覆滅の程度

以上の事情を総合的に考慮すれば,被告製品の売上に対する本件発明の貢献の程度は限られるものの,他方で,競合品の存在による推定覆滅の程度も相当に限定的であり,他に推定を覆滅すべき具体的な事情も見当たらないことから,本件においては,2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものとするのが相当である。これに反する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。
そうすると,特許法102条2項に基づき推定される原告の損害額は,以下のとおりとなる。

・第1期間

875万9680円

・第2期間

1221万1760円
・第3期間

1891万0617円

・第4期間

1029万1511円

(3)

弁護士及び弁理士費用相当損害額

原告が本件訴訟の提起及び追行を弁護士及び弁理士に委任したことは当裁判所に顕著な事実であるから,その費用については,特許法102条2項に基づき推定される原告の損害額の1割の限度で,被告の行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。ただし,本件において,原告は,弁護士及び弁理士費用相当損害額として,消費税相当分加算前の被告の利益の額を基準として請求していることを踏まえ,消費税分加算前の被告の利益の額から推定覆滅に係る分を控除した額の1
割をもって,弁護士及び弁理士費用相当損害額とすることとする。そうすると,弁護士費用相当損害額は,以下のとおりとなる。
・第1期間
・第2期間

113万0718円

・第3期間
81万1081円

175万0983円

・第4期間

95万2917円

(4)小括
したがって,原告の損害額は合計5481万9267円となり(内訳は以下のとおり),原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づき,同額の損害賠償請求権を有する。
・第1期間

957万0761円

・第2期間

1334万2478円

・第3期間

2066万1600円

・第4期間

1124万4428円

また,原告は,第1期間の分については訴状送達の日の翌日すなわち平成29年11月16日を,第2期間~第4期間の分については各期間の最終日を,それぞれ遅延損害金の起算日として請求していることから,これに基づく遅延損害金請求権を有する。
6
差止請求及び廃棄請求について

前記第2の2(4)のとおり,被告は,令和元年6月5日まで被告製品を製造,販売していたものであるが,現時点でこれを製造,販売し,また,被告方法を使用していることを認めるに足りる証拠はない。しかし,被告方法が本件発明の技術的範囲に属することなどを争い,本件訴え提起後も被告製品の製造,販売を継続していたといった被告の対応を踏まえると,なお被告により本件特許権が侵害されるおそれがあると考えるのが相当である。そうすると,本件においては,被告製品の製造,譲渡及び譲渡の申出並びに被告方法の使用の差止の必要性があると共に,被告
による本件特許権の侵害を予防するために,被告製品の廃棄を行わせる必要もあるといえる。
したがって,原告は,被告に対し,本件特許権に基づき,被告製品の製造等及び被告方法の使用の差止請求権並びに被告製品の廃棄請求権を有する。これに反する被告の主張は採用できない。

7
結論

以上より,原告の請求は,主文第1項~第4項の限度で理由があるから,その限度でこれらを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,主文第1項~第3項については,仮執行の宣言を付すのは相当でないから,これを付さないこととする。
大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官
杉正樹杉浦浦一輝布目真
裁判官

裁判官
利子
(別紙)
物件目録
スリムフェイスガラス又はスリムフェイス称を含む商品名の手摺ガラスタイプという名
(別紙)
方法目録
1
被告製品に係る手摺の取付方法の名称
スリムフェイスガラス又はスリムフェイスガラスタイプという名

称を含む商品名の手摺の取付方法
2
図面の簡単な説明
【図1】被告製品に係る手摺の外観正面図である。
【図2】同縦断側面図である。
【図3】被告手摺取付方法により施工した最初の工程を示す縦断側面図で
ある。
【図4】同次の工程を示す縦断側面図である。
【図5】同更に次の工程を示す横断平面図である。
【図6】(a)は,同更に次の工程を示す横断平面図である。(b)は,同要部拡大横断平面図である。
【図7】同更に次の工程を示す横断平面図である。

【図8】同更に次の工程を示す横断平面図である。
【図9】同最後の工程を示す横断平面図である。
3
被告製品に係る手摺の取付方法の説明
被告製品に係る手摺の取付方法を分説して説明すれば,以下のa~lの構成
に分説することができる。
a
ベランダ端のパラペット上にその長手方向に一定間隔おきに支柱Sを設置
し,これら支柱Sの頂部に手摺の笠木を横にわたさせることによって手摺本体を形成してなる手摺の取付方法において,
b
手摺本体の室外側に,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたってガラス上側を入れ込む溝が連続して形成されるガラス上弦材Sと,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたって前記ガラス上弦材Sの溝に対応するガラス下側を入れ込む溝が連続して形成されたガラス下弦材Sと,ガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に,ガラス左右側縁部を入れ込む溝が端部枠S及び端部縁Sで形成される左右側枠とからなるガラス取付枠が一体的に設けられ,
c
このガラス取付枠に複数のガラス板と各ガラス板の継ぎ目に目地部材を
取り付けるにあたって,目地部材としてアルミ製の縦枠S22を使い,d
支柱Sの室外側側面には,アルミ製の縦枠S22と嵌め合わせるための支柱
突起部が設けられ,
e
アルミ製の縦枠S22の室内側側面には,アルミ製の縦枠S22を押縁の係合
用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れ手摺本体の長手方向の一方側からスライドさせることによって前記支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部が設けられ,
f
まず最初のガラスを室内側から室外側に持ち出してその上側をガラス上弦
材の溝に嵌合し,
g
次にガラスの下側をガラス下弦材Sの溝に落し込むように入れることによ
ってガラスをガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に嵌め込み,
h
次にそのガラスをガラス上弦材Sの溝とガラス下弦材Sの溝に沿って一方
側からスライドさせて,該ガラスの側縁部を,ガラス取付枠の他方側の右側枠である端部枠Sと端部縁Sとで形成された前記溝に入れ込み,
i
次にアルミ製の縦枠S22をガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間を一方側
からスライドさせて,その縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせて,さらに,押縁及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させ,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定し,これによって該縦枠S22を最初のガラスの側縁部との間に隙間をあけて位置させ,
j
そして次のガラスを同様にして室内側から室外側に持ち出してガラス上側
をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けてガラス下側をガラス下弦材に嵌め込み,これも同様に一方側からスライドさせて,ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間をあけて位置させ,
k
複数のガラスとアルミ製の縦枠S22を交互にガラス取付枠に室内側から室
外側に持ち出して取り付けることによって,手摺本体の室外側長手方向のほぼ全域に複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられることにより,複数のガラスとアルミ製の縦枠S22とが外観上は連続するようにして取り付けられる
l
手摺の取付方法。-72-

押縁の係合用突起部
押縁の係合用突起部
押縁の係合用突起部

押縁

止めゴム

押縁の係合用突起部
押縁

止めゴム
押縁
止めゴム

押縁
止めゴム

押縁

押縁

止めゴム

止めゴム

バックアップ材

止めゴム

押縁

押縁

シール材

止めゴム
(別紙)
被告製品説明書
1
被告製品の名称
スリムフェイスガラス又はスリムフェイスガラスタイプという名

称を含む商品名の手摺
2
図面の簡単な説明
【図1】被告製品に係る手摺の外観正面図である。
【図2】同縦断側面図である。
【図3】(a)は,同横断平面図である。(b)は,同要部拡大横断平面図である。
3
被告製品に係る手摺の構造の説明
被告製品に係る手摺の構造は,以下のa~lの構成に分説することができる。a
ベランダ端のパラペット上にその長手方向に一定間隔おきに支柱Sを設置
し,これら支柱Sの頂部に手摺の笠木を横にわたさせることによって手摺本体を形成してなる手摺であって(図1参照のこと。),
b
手摺本体の室外側に,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたってガラス
上側を入れ込む溝が連続して形成されるガラス上弦材Sと,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたって前記ガラス上弦材Sの溝に対応するガラス下側を入れ込む溝が連続して形成されたガラス下弦材Sと,ガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に,ガラス左右側縁部を入れ込む溝が端部枠S及び端部縁Sで形成される左右側枠とからなるガラス取付枠が一体的に設けられ(図2,図3(a)参照のこと。),
c
このガラス取付枠に複数のガラス板と各ガラス板の継ぎ目に目地部材を
取り付けるにあたって,目地部材としてアルミ製の縦枠S22からなり(図3(a),(b)参照のこと。),
d
支柱Sの室外側側面には,アルミ製の縦枠S22と嵌め合わせるための支柱
突起部が設けられ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),e
アルミ製の縦枠S22の室内側側面には,アルミ製の縦枠S22を押縁の係合
用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れ手摺本体の長手方向の一方側からスライドさせることによって前記支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部が設けられ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
f
最初の右側のガラスが室内側から室外側に持ち出されてその上側をガラス
上弦材の溝に嵌合され(図2参照のこと。),
g
右側のガラスの下側をガラス下弦材Sの溝に落し込むように入れることに
よってガラスをガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に嵌め込み(図2参照のこと。),
h
その右側のガラスをガラス上弦材Sの溝とガラス下弦材Sの溝に沿って一
方側からスライドさせて,該ガラスの側縁部を,ガラス取付枠の他方側の右側枠である端部枠Sと端部縁Sとで形成された前記溝に入れ込み(図3(a)参照のこと。),
i
アルミ製の縦枠S22をガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間を一方側から
スライドさせて,その縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせて,さらに,押縁及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させ,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定し,これによって該縦枠S22を右側のガラスの側縁部との間に隙間をあけて位置させ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
j
左側のガラスを右側のガラスと同様にして室内側から室外側に持ち出して
ガラス上側をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けてガラス下側をガラス下弦材に嵌め込み,該左側のガラスをアルミ製の縦枠S22に向かってスライドさせて,該左側のガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間をあけて位置させ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
k
複数のガラスとアルミ製の縦枠S22を交互にガラス取付枠に室内側から室
外側に持ち出して取り付けることによって,手摺本体の室外側長手方向のほぼ全域に複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられることにより,複数のガラスとアルミ製の縦枠S22とが外観上は連続するようにして取り付けられる(図1~図3参照のこと。)l
手摺。
押縁の係合用突起部
押縁S22
止めゴム

シール材
バックアップ材



別紙特許公報は省略
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