判例検索β > 令和2年(ワ)第2589号
解雇無効、地位確認等請求事件
事件番号令和2(ワ)2589
事件名解雇無効,地位確認等請求事件
裁判年月日令和2年11月24日
裁判所名名古屋地方裁判所
裁判日:西暦2020-11-24
情報公開日2021-03-01 18:01:38
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令和2年11月24日判決言渡し

同日原本領収

裁判所書記官

解雇無効,地位確認等請求事件(差戻し前の第1審・名古
号,差戻し前の控訴審・名古屋高等裁判所令

口頭弁論終結日

令和2年9月8日
判決主文
1
2
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求

1
原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2
被告は,原告に対し,平成29年4月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,
1か月75万1472円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで
年6分の割合による金員を支払え。
3
被告は,原告に対し,302万5275円及びこれに対する平成29年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,被告に雇用されていた原告が,被告に対し,被告が平成29年3月3
0日にした普通解雇(以下本件解雇という。)が無効であるとして,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認,賃金請求権に基づき,同年4月から本判決確定の日まで毎月25日限り1か月75万1472円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,
並びに被告が原告に裁量労働制

を適用しなかったことや強制労働状態に置いたことなどが不法行為に当たるとして,損害賠償請求権に基づき,302万5275円及びこれに対する同月1日
から支払済みまで上記改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
差戻し前の第1審は,
本件解雇は有効であり,
不法行為も認められないとして,
原告の請求をいずれも棄却するとの判決を言い渡した。原告が控訴をした。差戻し前の控訴審は,差戻し前の第1審が弁論を終結した時点で,訴訟が裁判をするのに熟したときにあったとは評価できず,
原告がした弁論再開の求めに応じなか
ったことが訴訟手続の法律違反に当たるとして,原判決を取り消し,当裁判所に差し戻すとの判決を言い渡した。本件は,差戻し後の第1審である。1
前提事実
(争いのない事実並びに各項記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)



被告は,トヨタグループ9社の共同出資を受けて設立された研究所であり,環境・エネルギー・パワートレーン,情報・安全快適・エレクトロニクス,材料・モノづくり,
戦略研究などの研究に従事している(乙1)。


原告は,平成4年3月に大学を卒業し,同年4月に被告に採用され,研究系所員として勤務していた(乙3)。



被告は,
平成28年7月5日,原告に対し,戒告処分(以下本件戒告処分
という。)をした。
懲戒該当理由は,①

海外出張の業務報告書を指示した査読ルートや査読結

果に基づく内容の修正検討に従わないこと,②
平成28年度業務情報・数理科学に関する国内外研究の諸動向調査の業務指示に従わないことであった。懲戒該当事項は,研究所員就業規則(甲4,以下本件就業規則という。)59条1号及び2号であった。
同処分において,被告は,原告に対し,同月7日正午までにBR人材開発部(以下人材開発部という。)の部長宛の始末書提出を命じた。

(甲17)


被告は,平成28年11月21日,原告に対し,同月22日から同月24日
まで3日間の出勤停止処分(以下本件出勤停止処分といい,本件戒告処分と合せて,本件各懲戒処分という。)をした。
懲戒該当理由は,①

指示した業務に従事していないこと(平成28年8月

24日付け指示業務),②
こと,③

人材開発部からの産業医との面談指示に従わない

不必要な離席が常態化しており,かつ業務実態も確認できず,職務
専念義務に反していることに関する業務指示違反及び職務専念義務違反による本件就業規則4条違反であった。
懲戒該当事項は,本件就業規則59条1号及び2号であった。
(甲18)


被告は,平成29年3月30日,原告に対し,本件就業規則41条1号及び5号に基づき,同日をもって普通解雇した(本件解雇。甲3)。



本件就業規則には,次の定めがある(甲4)。


研究所員は研究所設立の使命を自覚し職務の遂行にあたっては諸規則を守り上位責任者の指示に従って誠実に職務に専念し互いに協力して研究所
の秩序維持発展につとめなければならない(4条)。

研究所員が次の各号の一に該当するときは解雇することがある。(後略)(41条)

1号
5号
研究所員としての能力を著しく欠くとき
その他前各号に準ずる程度の事由があるとき


研究所員が次の各号の一に該当するときは懲戒する。(後略)(59条)
1号
2号


この規則,またはこの規則に基づいて定める諸規定に違反したとき業務上の義務に違反し,または怠ったとき

原告の本件解雇当時の基本給は46万2400円であり,
平成28年の原告
の年収は905万0626円であった(乙5の1ないし4)。

2
争点についての当事者の主張


本件解雇の効力(争点1)

(原告の主張)
本件解雇は,次の理由などにより解雇権の濫用であるから,無効である。ア
原告は,上司らの継続的な就業規則違反,社内規則違反,労働法規違反や倫理違反により,業務設定や推進について,常識から著しくかい離した不利
益な扱いを受け続けた。原告が改善を求めてした内部通報は見過ごし続けられ,原告は,不公正で不均衡な本件各懲戒処分を受け,残業代を支払われないといった名誉,財産や権利を害される弾圧を受けていた。
原告は,かかる環境に屈服して労働するよりも,就業規則や労働法規が守られ,保護される労働環境が提供されるよう,被告による原告の扱いについ
て,何が問題でなぜいけないのかを具体的に表面化させて書き記す仕事(以下書き記しという。)をしていた。この仕事は,被告の職務の一部を肩代わりするものである上,内部通報を行った際に対応した責任者の一人であるa総務部長から許可を得ていた。
原告は,学会等の情報提供や業務報告書の調査リスト作成を実施している。
したがって,原告が,業務命令に従わなかった,仕事をしなかったなどとはいえない。原告が異議申立てを繰り返したのは,被告が対応しないからであり,原告に非や責任はない。

被告が本件解雇前にした本件各懲戒処分は,被告が,原告の労働環境を研究業務に専念できない状態にしたことを度外視し,不公正,不均衡に原告に
非を見出し,擦り付け,業務指示に従っていないなどとしてした処分であって,かつ,原告がした内部通報に対する報復であるから,無効である。被告が本件解雇前にした産業医との面談指示は,原告に何らかの障害などのレッテルをはろうとした不合理なものであり,権利の濫用である。(被告の主張)


原告は,各職場で協調性を欠く言動(各職場での業務指示に反する言動や正常なコミュニケーションをとることができないことによるコンフリクト)
を繰り返し,異動を繰り返してきただけでなく,最後の職場であるマルチフィジックスプログラムにおいても,業務命令違反等を理由として2度にわたり懲戒処分を受けたにもかかわらず,最後まで指示された業務を全く遂行せず,無断離業を繰り返した。その経過において,原告は,平成28年度の業務にかかる抽象的な異議申立てを繰り返していたが,これは業務命令拒否の正当な理由たり得ない。
被告は,原告の業務命令拒否が何らかの疾病に起因する可能性にも配慮して,医師の診断書の提出を求めるなどしたが,特に配慮が必要となる事情は確認されなかった。

そこで,被告は,もはや改善の見込みはないと判断して,就業規則41条1号に基づき,本件解雇をした。本件解雇は,客観的に合理的な理由に基づき社会通念上の相当性も備えた有効なものである。

被告やその従業員が社内規則や各種法令に違反する行為をして,原告を不利益に扱ったことはない。a総務部長は,平成28年4月6日,原告との面
談で,原告の通報についてハラスメントやコンプライアンス違反がない旨回答した。その後も,被告は,面接や書面で原告の異議申立て,通報に対する回答をした。a総務部長が書き記しを許可したことはない。
原告に対する未払賃金はない。


賃金請求権の有無及び金額(争点2)

(原告の主張)
本件解雇は無効である上,解雇後も,原告は,強制労働に相当する状態に置かれ,被告に無給で働かせられているも同然の状態であるから,原告は,被告に対し,賃金月額75万1472円(平成19年から平成28年までの10年間の給与収入平均月額)の請求権を有する。

(被告の主張)
争う。



不法行為の成否及び損害額(争点3)

(原告の主張)
次の行為は不法行為に当たり,原告は,合計350万円の損害を被った。そこで,解雇予告手当として受領した47万4725円を控除した302万5275円の支払を求める。

被告は,原告に対し,不当に裁量労働制を適用しなかった。被告が裁量労働制を提供していれば,原告は,残業代との差額121万5385円を受領することができた。


原告は,被告がした次の違法な行為によって,精神的損害を被り,その損害額は228万4615円を下らない。
被告は,原告が書き記しを行わざるを得ない状況を作出し,強制労働状態にさせ,
その上で,
業務に従事していないと受け取って原告を解雇した。
被告は,原告に対する解雇理由等に関する説明責任や誠実交渉義務を果たさず,不利益な条件を一方的に提示し,原告の退職を前提としない話し
合いに応じる意向はないと表明して原告の団体交渉権を侵害した。そのため,解雇が不当で,かつ,解雇された後も被告が原告の権利を不当に侵害したことを説明することを原告が担わざるを得ない状態に置いた。(被告の主張)
争う。

第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実に加え,各項記載の証拠(枝番号のある書証で個別の枝番号の記
載がないものは,すべての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。


原告は,平成4年4月に被告に採用された後,研究系所員として,概ね数年ごとに異動を繰り返しながら,
研究開発,
研究管理や企画業務に従事してきた。

原告は,平成22年9月当時,知的財産部情報管理室CAE推進グループに在籍していたが,自己申告面談で,b室長に対し,上司を含め周囲の人は勝手な言いがかりをつけ,吹聴するなどと主張した。
被告は,平成23年7月,原告の上司からの人間関係を理由とする異動要請で,原告をBR社会システム研究部都市・トランスポートシステム研究室(BRは,BusinessReformの略称)に異動させ,さらに,平成24年2月,同研究部企業活動分析研究室に異動させた。原告は,人間関係のもつれを理由に自ら異動を要望し,被告は,同年5月1日,原告を同研究部付とした。原告は,同年10月頃,パワハラを受けているなどと訴えていた。
原告は,平成25年3月頃,戦略的研究テーマの抽出の提案をして総合企画室の業務を希望したが,
被告がこれを認めなかった。
これに対し,
原告は,
c総合企画室長に繰り返しメールを送って面談を求め,事前に断られたのにも関わらず話しに行った。
被告は,平成26年2月1日,原告をマルチフィジックス研究室(平成27
年2月にマルチフィジックスプログラムに改組)に異動させ,本件解雇まで同部署に配属させた。
(甲64,乙2,6ないし8)


原告の上司であるd主席研究員(SEE。SeniorExecutiveEngineer。以下d主席という。)とe領域リーダ(以下eリーダという。)は,平
成28年1月以降
(後記⑾までの日付は,
特記のあるものを除き,
同年であり,
年の記載を省略する。),原告に対し,平成28年度の業務として,情報・数理科学に関する国内外研究の諸動向調査(以下諸動向調査という。)への従事を指示していた。諸動向調査の業務内容は,国内の主要な研究者,研究内容を調査してまとめることと国の施策・ロードマップ,国内の主要な研究
プロジェクト(拠点形成活動も含む),研究活動体(ワークショップ,コンソーシアム)を調査してまとめることであり,d主席は,原告に対し,年間3本
のレポートをまとめることを期待すると伝えていた。
原告は,3月3日にも平成28年度の業務について説明を受けたが,同日,eリーダに対し,メールで打合せを受けて当方からの異議申し立てと題する書面(甲9。以下3月3日の異議申立書という。)を提出した。この書面には,前年度に相談した企業倫理・コンプライアンスに関する対処がされておらず,提示された平成28年度の業務はハラスメントの延長である,頻繁な業務内容の変更で研究活動を妨害されているなどと記載されていた。原告は,同月9日,eリーダに対し,d主席が平成27年9月25日にトヨタ紡織との受託業務で同社が担当することになっていた業務を原告が実施す
るよう指示したことに企業倫理,コンプライアンスの問題があるなどと記載したメールを送った。
原告は,4月8日,被告の相談窓口に2016年度の業務内容についてと題する書面(甲11。以下4月8日の書面という。)を提出した。この書面には,3月3日の異議申立書記載の内容のほか,数理科学に関する業務の
経験がなく,一定期間情報分野に関する業務に携わっておらず,指示された業務内容が過大要求である,指導実態のないd主席のもとで業務を行うことに抗議するなどと記載されていた。
原告は,4月25日,f所長(被告代表者)とg副所長に対し,業務指示内容に対する抗議文提出についてと題する書面(甲12。以下4月25日の書面という。)を送り,平成28年度の上記業務を命じた理由を書面で示すよう求めた。原告は,5月17日,f所長とg副所長にまともな回答を頂けずたいへん困っているなどと記載したメールを送った。
こうした原告による一連の不服等の申立てに対して,企業倫理相談窓口の責任者であるa総務部長,eリーダは,3月16日,4月6日及び同月25日の
少なくとも3回,原告と面談を行い,原告の主張内容はコンプライアンス違反には該当しない,原告が平成27年度以前に従事してきた感性あるいは画像処
理から研究の範囲を広げ,順次調査対象の分野を広げる方針で進めたい,諸動向調査を研究者である原告が行うことは問題がない,d主席は平成26年度から平成27年度に原告が担当した前記トヨタ紡織の受託業務などについて指導をしてきた,
業務指示に従うべきであるなどと伝えた。
また,
a総務部長は,
5月19日,原告に対し,4月25日の書面に対する回答として,改めて上記面談で述べた内容などを文書(甲13)で伝えた。
原告は,5月20日以降も,ほぼ連日,f所長,g副所長,a総務部長及びeリーダらに対し,それまでと同様の主張に加え,3月3日の異議申立書など原告のした申立てに対する対応がされていないとの主張や6月1日以降の専
門業務型裁量労働制(以下,単に裁量労働制という。)の適用を除外されたこと(適用除外に至る詳細は後記⑷のとおりである。)が不当であるとの主張などを記載したメールや文書などを送り続け,諸動向調査に従事しなかった。(甲9ないし15,19ないし24,38の2,87,乙16,17,89ないし91)



原告は,2月13日から同月20日まで,平成27年度に従事してきた研究テーマである感性に関する国際会議に出席するため,
d主席とともにアメリカ
合衆国に出張した。
d主席,eリーダ及びa総務部長は,4月12日の打合せで,原告に対し,
同月中に上記出張の報告書をまとめ,d主席の査読を受けて,hプロジェクトマネージャー(以下hPMという。)とeリーダの承認を得るよう指示した。
原告は,同日の打合せや4月25日と5月6日の打合せで,それまでにした異議申立てにまともな回答をもらっていない,報告書作成はSEEがやるべき仕事であり,専門知識のない原告がなぜやらなければならないのか,hPMが
査読を行うべきである,平成27年度の業務内容を見ていないd主席が査読する必要性を感じないなどと主張した。d主席らは,原告の主張に対し,研究員
クラスであれば十分できる仕事である,SEEもする仕事だが,原告も一緒に仕事をやってほしい,何が分からないのか教えながら進めたい,査読者は役職者が指名した者がするのが通常であり,今回はeリーダがd主席を指名した,同じ国際会議に出席したd主席が査読することが適切であるなどと説明した。eリーダは,5月17日,原告に対し,異議申立てと業務を遂行することを分けて進めるよう指示するメールを送った。
原告は,
4月25日,
指示された提出先と異なるhPMに報告書を提出した。
d主席とhPMは,5月11日と12日,原告に対し,報告書の修正を指示した。原告は修正版を提出したが,不十分な点があったため,d主席は,同月2
3日,原告に対し,再修正することを指示し,翌日に打合せを行うことを連絡したが,原告は打合せに参加しなかった。原告は,同日以降,再修正版を提出したが,最終的に承認を得られなかった。
(甲93,乙10ないし16)


原告は,前記のとおり,上司らに対し,不満や批判を申し立てる一方で,3月17日,eリーダに対し,業務命令に従うとのメールを送り,裁量労働制の適用を申請し,被告はこれを承認していた。しかし,被告は,原告が諸動向調査に着手していないことを理由に,6月1日以降,原告に対する裁量労働制の適用を除外した。その結果,原告は,それまで毎月約9万円支給されていた裁量手当を支給されなくなった。(甲16,61,乙9)



人材開発部のi主席主事は,6月16日,原告に対し,産業医との面談を指示し,原告は,同月17日,産業医と面談した。



被告は,7月5日,原告に対し,本件戒告処分をした。本件就業規則60条1号は,
戒告処分は始末書を提出させ将来を戒めるものと定めており,
被告は,
原告に対し,懲戒処分通知書で始末書の提出を指示したが,原告は提出しなか
った。(甲4,17)


原告は,7月8日,愛知労働局に相談をした。愛知労働局は,同月13日,
被告に対し,社内で話し合いの場を持つよう助言をした。
原告は,愛知同労働局への相談後,同月22日までに,i主席主事や同月から原告の上司となったj領域リーダ(以下jリーダという。)らに対し,ハラスメントを受けているなどそれまでと同様の主張や本件戒告処分が不当である旨主張する複数のメールを送った。
k人材開発部長(以下k人材部長という。),a総務部長,i主席主事,jリーダは,8月2日,原告と面談し,裁量労働制の適用を除外した理由やハラスメントの事実が確認できないことなどを説明した。これに対し,原告は,会社の対応は一方的で,ワンサイドゲームであり,中立公正ではないなどと繰
り返し主張した。k人材部長らが原告の考える中立な立場が何かを尋ねたが,原告は明確な回答をせず,k人材部長は,原告が納得できる弁護士などの第三者を連れてきて下さいなどと発言した。
(甲43,45,48,103,乙2,94)


d主席は,8月24日,原告の業務内容を見直し,原告に対し,9月23日を期限として
中研におけるCAE・シミュレーション研究の業務報告書調査
(以下報告書調査という。)を指示した。報告書調査の業務内容は,所内で実施されてきたCAE(コンピューターを利用して,製品を設計したり,数値解析で分析し,製品開発を支援するシステム)やシミュレーションに関する研究(業務)の業務報告書を調査することである。jリーダは,同日,原告に
対し,日々の進捗をラボノートに記載して,週1回報告するよう指示した。しかし,原告は,同日の指示以降も,d主席らに対し,それまでと同様の主張などをメールで送り続け,連日職場環境改善活動などと記載されているメモ(乙21の5,6枚目)を提出し,外部のイベント情報等をメールで転送したのみで,ラボノートを提出せず,報告書調査の業務に従事しなかった。d
主席とjリーダは,指示に従うよう継続的に指導した。
原告は,少なくともこの頃以降,行き先を表示せず,離席して図書室で過ご
すことを繰り返すようになった。
(甲57,78,79,乙18ないし21)


i主席主事は,9月8日,原告に対し,産業医と面談するよう指示したところ,原告は,同月26日,外部の医療機関を受診し,i主席主事に

たいへんですね。

と言われたなどと報告した。i主席主事は,10月18日,原告に対し,就業制限等が不要か確認するため,同月21日に産業医と面談するよう指示したが,原告は,優位な立場を利用して私に一方的で偏った対応を取るのは止めて下さいなどと記載したメールを繰り返し送り,産業医との面談を拒否した。

(甲37,60,78,乙22)

i主席主事は,11月7日,原告に対し,①
いこと,②


指示された業務を行っていな

職場にほとんどおらず,就業時間の大半が離席状態であること,

産業医の面談を受けなかったことの理由を確認するため翌日面談を行う
とのメールを送った。
原告は,同日,i主席主事に対し,不当な打合せには出席しない旨のメールを返信した。
i主席主事は,同月8日,原告に対し,上記①ないし③の行動に鑑みて,懲戒処分を検討せざるを得ないこと,原告の希望があれば話を聞く場を設けるので同日中に連絡するようメールを送った。

被告は,同月21日,原告に対し,同月22日から同月24日まで3日間の本件出勤停止処分をした。
原告は,同月21日から12月7日にかけて,f所長,g副所長及びk人材部長に対し,懲戒処分不服申し立てと題する書面(甲25)やメールで,3月3日の異議申立書に対しでっちあげの回答がされ,原告は不当に差別的な
待遇を受け,本件出勤停止処分は他の労働者に比べて著しく重く,平等性を欠くなどと主張して本件出勤停止処分に不服を申し立てた。

(甲25ないし27,60)

d主席とjリーダは,
出勤停止が明けた11月25日,
原告と打合せを行い,
本件出勤停止処分の理由を改めて説明し,報告書調査を実施し,毎日,d主席とjリーダにメールで実施内容を具体的に知らせ,週1回,ラボノートをd主
席に提出するよう指示した。また,執務室が上記業務を実施する最適な場所であることを伝えた。これに対し,原告は,職場環境改善する必要があるので報告書調査を実施する時間がない,
執務室は業務を実施する上で不利な環境であ
るため滞在できない,3月3日以降の申立てに回答していないなどと主張し,報告書調査に従事する意思を示さなかった。jリーダは,同月28日,改めて
上記打合せでの指示事項をメールで伝えた。
原告は,11月25日の打合せ以降,d主席に対し,外部でのイベントの情報をメールで共有したことはあったが,指示された報告書調査の具体的な実施内容の報告をすることなく,同月29日と同月30日,jリーダに対し,3月3日の申立てに関する説明資料作成が必要となっている,今は研究業務に専念
できる状況ではないなどと記載したメールを送信した。
原告は,d主席に同月25日から本件解雇直前までラボノート(乙87)を提出したが,職場環境改善活動をしていることやそれまでと同様の主張が記載内容の大半を占め,報告書調査の進捗に関する記載はなかった。
原告は,
同月25日,
同月28日から同月30日まで自席で勤務しなかった。

d主席とjリーダは,原告に改善を求めるため,12月5日,原告との打合せを行い,業務指示に従うよう伝えると,原告は,研究に専念できる状況ではない,d主席やjリーダは自分たちの義務違反に見向きもせず個人攻撃をしている,両名も何ら業務を実施していないのに罰せられないのはおかしいなどと反論した。原告は,打合せ直後,自席に戻らなかった。

原告は,12月以降も,f所長やjリーダらに対し,それまでと同様の主張や懲戒処分撤回の要求を記載したメールを繰り返し送り,
報告書調査に従事し

なかった。jリーダは,原告に対し,業務指示に従うよう継続的に指導した。(甲28,41,42,乙23ないし31,87)

原告は,平成29年1月6日(以下の日付は,特記のあるものを除き,いずれも同年であり,年の記載を省略する。)にも,jリーダに対し,研究環境・
職場環境が改善されなければ,研究に専念することが困難である,職場環境改善活動
(不当に一方的で威圧的な扱いを受けていることを示すための書き起こし)を実施したなどと記載したメールを送信した。
i主席主事らは,同日,原告と面談を行い,懲戒処分の撤回はないことを伝えた。

d主席とjリーダは,同月7日,原告と打合せを行い,この打合せが懲戒処分の当否を議論する場ではないことを説明して,報告書調査の期限の変更を伝えようとしたが,原告は研究に専念できる状況にないなどとそれまでと同様の主張を繰り返し,最終的に勝手に退出した。jリーダは,同日の打合せの確認として,原告が独自に行っている職場環境改善活動を止め,報告書調査実施の
指示に従い,ラボノートを提出するようメールで指示した。
原告は,同日の打合せ以降も,jリーダに対し,職場環境改善活動を被告の業務として行っている,
不服申立てに対応されていない,
不当な扱いの是正
(懲
戒処分の撤回)を求める,研究活動に専念できる状態ではないなどそれまでと同様の主張をメールで送り続け,報告書調査に従事しなかった。jリーダは,
業務指示に従うこと,指示業務と関係のない内容を記述することを止めること,職場環境改善活動は業務ではないこと,残業を認められないことなどを継続的に指導した。
d主席とjリーダは,2月8日,原告と打合せを行い,原告に対し,執務室で指示された報告書調査を実施し,メールとラボノートで進捗を報告するよう
求め,報告書調査の期限を3月3日に再設定することを告げた。原告は,それまでと同様の主張を繰り返し,会社は不祥事隠し,内規違反をしているなどと
主張した後,途中で一方的に退席した。jリーダは,後刻,業務実施に関係のないメールを控え,進捗を報告するようメールで指示した。
原告は,同日の打合せ以降も,jリーダに対し,それまでと同様の主張をメールで送り続け,
報告書調査に従事しなかった。
jリーダは,
業務指示に従い,
報告書調査を行うよう継続的に指導した。なお,原告は,2月27日,d主席に対し,諸動向調査に関係があるとして,外部での研究会の日時と場所などの情報を記載したメールを送信したが,d主席は,原告に指示しているのは報告書調査であり,業務指示に従うよう返信した。
原告は,再設定された期限の3月3日までに報告書調査を完成させなかった。
d主席とjリーダは,同月6日,原告と打合せを行い,2月8日の打合せと同様の指導をした。原告は,何もできていないわけではない,研究に専念できる状態ではないなどというそれまでと同様の主張を繰り返し,途中で一方的に退席した。jリーダは,後刻,メールで改めて指導をした。
原告は,3月6日の打合せ以降も,jリーダに対し,それまでと同様の主張
をメールで送り続け,報告書調査に従事しなかった。jリーダは,業務指示に従い,成果物を提出するよう継続的に指導した。原告は,同月16日,f所長とg副所長に対し,原告の内部通報への対応がされていないとのメールを送った。
原告は,連日,数時間以上にわたり,離席していた。jリーダは,少なくも
2月28日,3月2日,同月9日及び同月10日,図書室にいた原告に対し,自席に戻るよう指示したが,原告は指示に従わなかった。
人材開発部は,同月16日,原告に対し,
警告書と題する書面(乙83)
で,業務指示に従うよう警告をした。
しかし,原告は,同日以降も,jリーダに対し,それまでと同様の主張をメ
ールで送り続け,
報告書調査に従事しなかった。
jリーダは,
業務指示に従い,
成果物を提出するよう継続的に指導した。

(甲29,乙32ないし54,56,58ないし62,66ないし76,78ないし86,88)

原告は,平成28年12月9日,自ら申し出て,被告の産業医と面談し,大学病院での受診を勧められた。

i主席主事は,1月6日に実施した原告との前記面談で,原告に対し,主治医に業務遂行上,就業上の問題がないか確認するよう指示した。原告は,同月30日,外部の医療機関を受診し,同月31日,i主席主事に対し,医療機関を受診したが,社内で起こっているトラブル等の状況をすべて把握している訳ではない以上,業務遂行上,就業上に問題がないという意見書を書くことはで
きないと言われたと報告した。
i主席主事は,2月9日,原告に対し,被告の医務室と外部医療機関との連携が必要であるとして,原告が受診した医療機関と医師を明らかにするよう求めたが,原告はこの求めを拒否した。
原告は,同月20日と同月21日,a総務部長に対し,人材開発部(i主席
主事,l氏)が1月6日にした医療機関受診の指示や原告が同月31日に報告した受診結果などの情報をjリーダらに流出・漏えいさせた旨と記載した①情報漏洩に関する報告書と題する書面など
(乙63ないし65)
を提出した。
総務部と人材開発部は,3月9日,原告の上記報告に対し,書面(乙77)で,原告の行動が心身の不調によるものであるかどうかを確認するために医療
機関の受診を指示したものであり,職場にその指示を共有することは当然であり,上司であるd主席とjリーダ,人事担当であるl氏に情報共有を図ることは情報漏えいに当たらないと回答するとともに,改めて同月15日までに医療機関での受診結果等を明らかにすることなどを指示した。原告は,同月9日,a総務部長に対し,上記回答は公正公平な手続を経たものか疑わしい,弁護士
に確認するなどと記載した書面(甲83)を提出した。
(甲83,乙46,55,57,63ないし65,77)


被告は,3月30日,原告を解雇した(本件解雇)。


原告が所属する労働組合は,3月31日,被告に対し,解雇通知の具体的説明を議題として団体交渉を申し入れた。
原告及び上記労働組合と被告は,4月20日と6月12日の2回,団体交渉
をしたが,解雇撤回を求める原告側と解雇撤回前提の話し合いには応じない被告側との間で交渉は進展せず,2回目の団体交渉で,労働組合のm執行委員長が団体交渉の打ち切りを提案し,被告代理人の平越格弁護士が了承して,団体交渉は終了した。
なお,被告は,5月10日,上記労働組合に対し,1回目の団体交渉で原告
側から要望された解雇事由を記載した書面(甲30)を交付した。(甲5,6,30,31,107の添付資料1)
2争点1(本件解雇の効力)について


原告は,平成28年2月の出張の報告書を指示された提出先に提出せず,再修正や打合せ参加の指示に従わなかった。また,原告は,平成28年度の業務
として指示された諸動向調査に従事せず,その後,同年8月頃に指示された報告書調査にも本件解雇に至るまで従事せず,業務遂行上の必要性もなく離席を繰り返していた。このように,原告は,少なくとも平成28年3月から本件解雇がされた平成29年3月30日までの1年あまりの期間,
指示された業務へ
の従事を拒絶する態度をとり続けていた。

原告は,上記期間中,被告代表者や上司らに対し,被告に対する不服や批判を執拗に申し立て続けた。後記のとおり原告の申立てに理由があるとは認められず,この点をおくとしても,原告がハラスメント等の通報を行うためであれば,指示された業務を遂行しないことが当然に正当化されるものではない。原告の上司らは,原告に対し,面談,書面やメール等で繰り返し原告の申立てに
は理由がない旨説明し,指示された業務に従事するよう注意,指導し,段階的に本件各懲戒処分をしたが,
原告はこれらの指導,
処分を受け入れることなく,

指示された業務への従事を拒絶する態度を改めなかった。被告は,こうした原告の態度を医学的な観点から検証すべく,産業医との面談や外部医療機関での診察結果の開示を求めたが,これに対しても原告は拒否的な態度をとり,人事部局と上司がこうした情報を共有したことを情報漏えいであると批判した。以上のとおり,被告による継続的な指導と段階的な処分にも関わらず,原告は,自己の主張に固執して,指示された業務への従事を頑なに拒み続けてきた経過に加え,人間関係を原因として異動を繰り返していたことも考慮すると,原告が本件解雇時の部署で正常に業務に従事することを期待することはできず,配置転換による改善も期待することはできないと評価せざるを得ない。よ
って,本件解雇には,就業規則41条所定の解雇事由である研究所員としての能力を著しく欠くとき(1号),その他前各号に準ずる程度の事由があるとき(5号)に該当する客観的に合理的な理由があり,本件解雇は社会通念上相当である。


原告は,上司らの継続的な就業規則違反,社内規則違反,労働法規違反や倫理違反により不利益な扱いを受け続け,内部通報を見過ごし続けられ,弾圧を受けていたため,
a総務部長の許可を得て,
書き記しを行っていたと主張する。
3月3日の異議申立書と同月9日のメールの記載内容を総合すると,原告は,
d主席が平成27年9月,原告に他社担当分の業務の実施を求めたことが企業倫理・コンプライアンスの問題であると相談したにも関わらず,被告が対
処しておらず,
平成28年度の業務はハラスメントの延長であると主張してい
たと解されるが,
d主席の上記行動が企業倫理や法令に違反するものであった
と認めるに足りる証拠はない。また,仮に平成27年9月のd主席の指示に何らかの問題があったとしても,
そのことだけで直ちにd主席のもとで原告を平
成28年度の業務に従事させることが不当であるということにはならない。
さらに,3月3日の異議申立書,4月8日の書面及び同月25日の書面などでは,原告は1,2年程度で部署や業務を変更されたことや業務内容が過大で
不当であることを主張していたと解される。使用者は,人事配置と業務指示について広く裁量を有しているところ,原告が研究系所員であり,一般的にはある程度継続して同一の研究活動に従事する方が成果を上げやすいと言い得ることを考慮しても,被告が原告を1,2年の周期で異動させ,業務内容を変更させることが多かったことが被告の裁量を逸脱していたとは認められないし,平成28年度の業務である諸動向調査が原告に過大な要求であったことを認めるに足りる証拠もない。
さらに,原告は,平成28年6月以降,裁量労働制の適用を除外されたことや本件各懲戒処分にも不服を申し立てている。
しかし,
裁量労働制は人文科学・

自然科学に関する研究の業務など業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者にゆだねる必要がある場合に認められるものであるところ,原告は裁量労働制適用の前提となっていた研究業務である諸動向調査に着手しなかったのであるから,裁量労働制適用を除外し,裁量手当の支給を打ち切った被告の対応は不当なものとはいえない。また,本件各懲戒処分は後記
⑶で詳述するとおり有効である。
このように,原告がした不服等の申立てはいずれも理由があるとは認められない。被告は,原告に対し,繰り返し原告の申立てに理由がないことを説明しており,被告が原告のいう内部通報を無視していたとはいえない。平成28年4月6日の面談時にa総務部長が,原告が主張するコンプライア
ンス違反の内容を具体的に指摘するよう求める旨の発言したことは認められるが(甲44の1・2),このような発言は,原告の主張内容が判然としないため,具体的に主張するよう求めたものに過ぎないと解され,業務として書き記しを行うことを許可する趣旨であったと認めることはできない。ほかに原告が業務として書き記しを行う許可を得ていたと認めるに足りる的確な証拠は
ない。
原告は学会等の情報提供や業務報告書の調査リスト作成を実施したと主張
する。前記認定のとおり,原告がd主席らにイベントの情報等をメールで送信したことはあるが,これらの情報提供は,調査業務そのものとはいえないし,原告がした情報提供はごくわずかである一方で,原告は書き記しを指すと思われる職場環境改善活動などを行っていると繰り返し報告していること,当初の期限から半年近く延長された期限である平成29年3月3日までに報告書調査を完成していないことに鑑みても,原告が諸動向調査や報告書調査に従事していたとは認められない。なお,原告が書き記しの成果であると主張する書面(甲47の1・2,86)には,平成28年4月6日の面談での会話の書き起こし,原告が申し立てた不服等に関する被告とのやり取りの経過や原告の主張
の詳細と思われる内容などが書き連ねられているだけであり,被告の業務に従事した成果物であるとは評価できない。


原告は,本件各懲戒処分が,原告の労働環境を研究業務に専念し得ない状態にしたことを度外視してされた不公正で不均衡な処分であり,
内部通報に対す
る報復であるから無効であると主張する。

しかし,前記認定のとおり,前提事実記載の本件各懲戒処分の懲戒該当事由があり,被告は,原告に対し,懲戒処分をする前に懲戒該当事由に関して,繰り返し指示,指導を行っていたこと,戒告,出勤停止と段階的に重い懲戒処分をしていることに照らすと,本件各懲戒処分は社会的通念上相当である。前記認定判断のとおり,原告がした申立てはいずれも理由があるとは認めら
れず,客観的に見て,原告の労働環境が研究業務に専念し得ない状態であったともいえない。また,本件各懲戒処分が内部通報に対する報復という不当な目的に基づくことをうかがわせる事情も認められない。
よって,本件各懲戒処分は懲戒権の濫用には当たらず,有効である。⑷

原告は,
産業医との面談指示は原告に何らかの障害などのレッテルをはろうとした不合理なものであり,権利の濫用であると主張する。
しかし,原告が被告に対する執拗な不服,批判の申立てを繰り返し,頑なに
指示された業務への従事を拒絶する態度とり続けていたことに鑑みると,被告が,原告に何らかの疾病等があることを懸念して,業務内容や業務指示の方法等についての配慮の必要性を検討するために,業務命令として原告に産業医との面談や外部医療機関の診断結果の提出を求めることは不合理であるとはいえず,労働者に対する指揮命令権限を濫用したと評価することはできない。⑸

以上の検討によれば,本件解雇は解雇権の濫用には当たらず,有効であり,原告の地位確認の請求は理由がない。

3争点2(賃金請求権の有無及び金額)について
前記判断のとおり,
本件解雇は有効であって,
本件解雇後の賃金請求権は発生しない
から,その余の点を判断するまでもなく,原告の賃金請求は理由がない。4争点3(不法行為の成否及び損害額)について


原告は,裁量労働制の適用を除外したことが不法行為に当たると主張する。しかし,前記認定判断のとおり,被告が原告の裁量労働制の適用を除外した
ことは不当なものではなく,不法行為には当たらない。


原告は,被告が書き記しを行わざるを得ない状況を作出し,強制労働状態にさせ,その上で,業務に従事していないと受け取って原告を解雇したことが不法行為に当たると主張する。
書き記しを行わざるを得ない状況や強制労働状態とはどのような状況をい
うのか判然としないが,前記認定判断のとおり,原告が業務として書き記しを行う許可を得たことはないし,原告がした不服等の申立てには理由がなく,被告はそのことについて原告に繰り返し説明を行っていることに鑑みると,原告は,自らの申立てに対する被告の対応が期待するようなものではないことに不満を抱いて,独自の判断で書き記しを行っていたに過ぎないと認められ,何らかの被告の違法な行為によって,原告が書き記しを行わざるを得ない状況や強
制労働状態にあったとは認められない。また,前記判断のとおり本件解雇は有効であるから不法行為には当たらない。



原告は,被告が説明責任や誠実交渉義務を果たさず,退職を前提としない話し合いに応じず,
不利益な条件を一方的につけて団体交渉権を侵害したと主張
する。
しかし,前記判断のとおり本件解雇は有効であるから,被告が団体交渉にお
いて退職を前提としない話し合いに応じないことは違法,
不当なものではない。
また,被告は,原告が所属する労働組合の求めで2回の団体交渉に応じ,解雇理由を口頭,書面で説明して交渉をしていたが,労働組合側の提案により,団体交渉が打ち切られた経緯に鑑みると,
被告に不法行為に当たる説明義務及び
誠実義務の違反や団体交渉権の侵害があったと認めることはできない。
5
結論
以上の次第で,
原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし

て主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第1部

裁判官

髙木博巳
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