判例検索β > 令和2年(行ケ)第10029号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10029
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年2月18日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-02-18
情報公開日2021-02-25 16:01:44
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
令和3年2月18日判決言渡
令和2年(行ケ)第10029号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年1月19日
判決原告
幸南食糧株式会社

同訴訟代理人弁理士

井内同高龍田二一被告
東洋ライス株式会社

同訴訟代理人弁護士

平野
同訴訟代理人弁理士

藤井主和宏淳文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が無効2019-800036号事件について令和2年1月24日に
した審決を取り消す。
第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等


被告は,発明の名称を旨み成分と栄養成分を保持した無洗米とする発明について,平成17年3月28日,特許出願(特願2005-93152号。以下本件出願という。)をし,平成23年3月25日,その設定登
録(特許第4708059号。請求項の数3。)を受けた(甲20。以下,この登録を受けた特許を本件特許という。)。


原告は,
平成27年9月4日,本件特許の請求項1ないし3について特許
無効審判(無効2015-800173号,以下別件無効審判という。)を請求し,
被告は,
平成28年11月21日付けで明細書及び特許請求の範

囲を訂正する訂正請求
(以下
本件訂正請求
という。を行った

(甲25)

特許庁は,平成29年3月24日,特許第4708059号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,〔2-3〕について訂正することを認める。特許第4708059号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。特許第4708059号の請求項2ないし3に係る発明についての審判請求は,成り立たない。との審決をしたところ(甲25),原告が提起した請求項2及び3に係る部分の取消を求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10103号)については出訴期間経過を理由に訴えが却下されて確定し,被告が提起した請求項1に係る部分の取消を求
める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10083号)については審決を取り消す旨の判決がされ,審理が再開した。
特許庁は,平成31年1月18日,本件訂正請求を認め,請求項1についての特許無効審判請求を不成立とする審決をし(甲26),同審決は,その後出訴期間の経過により確定した。



原告は,平成31年4月18日,請求項1ないし3について特許無効審判を請求し(甲15),特許庁は,上記請求を無効2019-800036号事件として審理した上で,令和2年1月24日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年2月5日,原告に送達された。



原告は,令和2年3月4日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し
た。
2
特許請求の範囲の記載
本件訂正請求による訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,請求項の番号に従い本件発明1などのようにいい,本件
発明1ないし本件発明3を併せて本件発明といい,本件特許の明細書を図面を含めて本件明細書という。なお,下線部は訂正に係る部分。)。【請求項1】
外から順に,表皮(1),果皮(2),種皮(3),糊粉細胞層(4)と,澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され,
該表層部の内側は,前記糊粉細胞層(4)に接して,一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と,該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の,純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において,
前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で,摩擦式精米機により搗精され,表層部から糊粉細胞層(4)
までが除去された,該一層の,マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており,且つ米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており,

更に無洗米機(21)にて,前記糊粉細胞層(4)の細胞壁(4’)が破られ,その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなることを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米。
【請求項2】

外から順に,表皮(1),果皮(2),種皮(3),糊粉細胞層(4)と,澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され,
該表層部の内側は,前記糊粉細胞層(4)に接して,一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と,該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の,純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において,
摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによって,前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層
(5)と澱粉細胞層(6)の中で,精米機による搗精により,表層部から糊粉細胞層(4)までを除去し,該糊粉細胞層(4)と澱粉細胞層(6)の間に位置する亜糊粉細胞層(5)を外面に残して,該一層の,マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ,且つ搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた
胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り,残された基底部である胚盤(9)』を残した,白度35~38の精白米に仕上げ,
前記白度35~38の精白米を,更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして,『肌ヌカ』のみが除去された,白度41
以上となるように仕上げることを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。
【請求項3】
前記白度41以上の無洗米であって,これを炊飯すると黄色度13~18に炊き上がることを特徴とする請求項2に記載の旨み成分と栄養成分を保持
した無洗米の製造方法。
3
本件審決の理由の要旨


本件審決は,本件発明を原告の主張する無効理由1(サポート要件違反)及び無効理由2(明確性要件違反)によって無効にすることはできないと判
断した。
その理由の要旨は,後記⑵及び⑶のとおりである。


無効理由1(サポート要件違反)について

原告の主張は,本件明細書の発明の詳細な説明につき,①亜糊粉細胞層が米粒表面に露出している事実が実証されていない,②わずか一層の亜糊粉細胞層を米粒の表面に露出した状態の精白米を製造可能な方法の記載がない,③精米工程の最中に白度を検出する精米機の制御方法の記載がな
い,④米粒の表面に亜糊粉細胞層が露出していることを確認する手段についての記載がない,⑤亜糊粉細胞層が表面に露出している精白米から亜糊粉細胞層を全く脱落させることなく肌ヌカのみを分離除去する方法の記載がない旨をいうものである。

本件発明の課題は,白米でありながら,米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して,旨み成分と栄養成分を保持した無洗米とその製造方法の提供である。本件明細書には,①本件発明の課題解決には高栄養・良食味の亜糊粉層と胚盤等が残るように亜糊粉細胞層が露出したときに搗精を終えるようにすることが必要であること,②摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒を得ることができること,③白度やマル
トオリゴ糖の含有量を指標に精米工程を実施すれば,亜糊粉細胞層が表面に露出した状態の米粒を得ることができること,④無洗米機を用いれば亜糊粉細胞層や胚盤を流出させずに肌ヌカを除去することができること,⑤上記精米工程や肌ヌカ除去工程を経て得られる無洗米の食味や栄養価が優れていることが記載されており,当業者が上記課題を解決することがで
きると認識できる。
したがって,本件発明は,いずれも発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ,前記ア①ないし⑤の原告の主張は採用することができない。⑶
無効理由2(明確性要件違反)について

別件無効審判における明確性要件違反に係る原告の主張は,本件発明の特定事項中の特定の文言について著しく不明確な記載があるとの主張で
あるが,本件審判における無効理由2は,請求項全体としての記載が不十分である点に関する主張であるから,両者は,その具体的な主張の内容を異にし,無効理由2は,一事不再理の原則(特許法167条)に反するものではない。

本件発明の特許請求の範囲の記載中には,
出願当時の技術常識からみて,
当業者が技術的意味を理解できなかったり,発明特定事項が不足していたりして,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な記載は認められず,本件発明は不明確ではない。

4
取消事由


サポート要件に関する判断の誤り(取消事由1)



明確性要件に関する判断の誤り(取消事由2)

第3

当事者の主張

1
取消事由1(サポート要件に関する判断の誤り)の有無について


原告の主張

本件発明について
次のとおり,本件発明は,本件明細書の記載によってサポートされているとはいえない。
(ア)

本件発明は,摩擦式精米機により亜糊紛細胞層が表面に露出するように搗精された米粒,無洗米機により,亜糊紛細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米及びその製造方法を提供するとするものであり,本件明細書の段落【0042】にも,本発明の精米機から排出された白度35~38の精白米には,その表面に糊粉細胞層4などの糠成分が残っていない,

白度41~45の本発明の無洗米は,おいしさの足を引っ張る糠成分がほとんど除去された無洗米に仕上がっていることになる。

との記載がある。

しかしながら,本件発明の実施品として市販されている金芽米の
電子顕微鏡写真(甲28)を見ると,米粒の表面は糊粉細胞層(4)で覆われ,さらに,糊粉細胞層(4)の表面には肌ヌカがへばりついているのを確認することができ,いずれも除去されていない。
(イ)

本件明細書には亜糊紛細胞層が表面に露出したことを確認する

方法が何ら記載されていない。したがって,亜糊紛細胞層が表面に露出した際の白度を確認することもできない。(ウ)

本件明細書の段落【0044】【表1】の注2には,

マルトオリゴ糖類は,米粒の表層部を5%削り取ったものを測定した。

とある。しかしながら,一層の亜糊粉細胞層(5)が米粒に占める割合はせ
いぜい0.5%程度と考えられるから,表層部を5%削り取った場合には米粒の表層部近傍を広く含む部分から採取したことになり,一層の亜糊粉細胞層(5)のみの成分分析になってはいない。(エ)

本件明細書の段落【0031】には,肌ヌカを除去できるならばど
のような無洗米機でもよいと記載されている。しかしながら,本件発明
の実施例は段落【0044】【表1】に記載の1例だけであり,しかも,この実施例の実施条件が記載されておらず,どのような無洗米機を用いたことによる結果なのか分からない。
(オ)

本件発明の無洗米における亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出している状態,及び肌ヌカのみが分離除去されてなる状態は,
肉眼では判別不可能なものであるから,この状態は電子顕微鏡写真等の図面代用写真等で示されなければならない。しかしながら,本件明細書にはそのような図面代用写真等は示されていない。

本件発明2及び本件発明3について
本件明細書の段落【0037】には本件発明の精米機の特定事項が記載されており,

全行程,もしくは終末寄りの行程が摩擦式精米機によって構成され,それが全精米行程の少なくとも3分の2以上を占めている。

との条件を含む4つの項目のいずれかを満たせば本件発明の効果が生じると記載されている。しかしながら,本件発明の実施例は段落【0044】【表1】に記載の1例だけであり,しかも,この実施例の実施条件が記載されておらず,どのような精米機を用いた場合の結果なのか分からない。
したがって,本件発明2の摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによってとの特定事項は,本件明細書によってサポートされているとはいえない。

小括
以上のとおり,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではな
く,サポート要件(特許法36条6項1号)を充足しないから,これを充足するとした本件審決の判断には,誤りがある。
したがって,本件審決は取り消されるべきである。

被告の主張

本件発明について
(ア)

甲28の電子顕微鏡写真の撮影対象は金芽米となっているが,

被告が製造する金芽米ではなく,当該米粒が本件発明の実施品であるとの立証は何らされておらず,原告の主張はそもそも前提を欠く。しかも,同写真を見ても,亜糊紛細胞層,糊粉細胞層,肌ヌカの判別はできず,原告が前記⑴ア(ア)において主張するような事実は全く確認できない。のみならず,たった一粒の米粒の写真で金芽米として市販されている精米がすべて同一の状態であるなどと推認することもできない。
(イ)

本件明細書の段落【0035】には,

装置のミニチュア機と,白度計と,炊飯器と,黄色度計を用い,そのロットの米はどの白度に仕上げれば良いかを事前に確認しておき,その白度で仕上げるのである。

と,
亜糊紛細胞層が表面に露出したことの確認手段が記載されている。(ウ)

本件明細書の段落【0044】【表1】の注2は,亜糊粉細胞層

が露出している本件発明の無洗米全体のマルトオリゴ糖の含有量(765mg/100g)
と,
その亜糊粉細胞層が取り除かれた後の完全精白米
のマルトオリゴ糖の含有量
(261mg/100g)
とを対比したことを

記載しているのであり,削り取った表層部に含まれるマルトオリゴ糖の量が分かるから(765-261=504mg/100g),当業者は,亜糊粉細胞層に含まれるマルトオリゴ糖のおおよその含有量を理解することができる。
(エ)

発明特定事項の構成について,その構成を限定しない旨が明細書に
記載されている場合,当該構成については当業者が適宜選択することができるとされているのであり,当該発明特定事項が明細書及び図面によってサポートされていないという関係になるのではない。本件発明においては,無洗米機は適宜のものを用いればよいのである。
(オ)

玄米が,薄黄色の亜糊粉細胞層と,澱粉を含まず食味上もよくない
糊粉細胞層等からなる黄茶色の表層部(糠層)及び純白色の澱粉層の層構造からなることは本件特許出願前から知られていたことである。亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出している状態,及び肌ヌカのみが分離除去されてなる状態は,本件明細書の段落【0036】,【0041】ないし【0045】の記載に従い,白色度や黄色度,マル
トオリゴ糖類の含有量,食味等により確認することができる。したがって,図面代用写真等を用いる必要性はない。

本件発明2及び本件発明3について
発明特定事項の具体的な構成については,特許請求の範囲及び明細書の
記載並びに技術常識を踏まえ,当業者が適宜選択することができるのであり,明細書に実施例として記載されていないことから,当然に当該発明特
定事項が明細書及び図面によってサポートされていない関係になるのではない。また,本件発明2においては,4つの項目のいずれかの項目を選択して用いればよいとの本件明細書の開示事項に従い,そのうちの一つを特許請求の範囲に掲げたものである。

小括
以上のとおり,
本件発明は,
発明の詳細な説明に記載されたものであり,
サポート要件(特許法36条6項1号)を充足するから,これを充足するとした本件審決の判断には,誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。

2
取消事由2(明確性要件に関する判断の誤り)の有無について


原告の主張

本件発明について
(ア)

次の本件明細書の記載事項は,本件発明の必須の構成であり,発明
を特定するため特許請求の範囲に掲げなければならないのにその記載がない。
本件明細書の段落【0036】のほとんど亜糊粉細胞層5も削ぎ落とされていない,亜糊粉細胞層5の表面に未剥離の糊粉細胞層4がほとんど残存していないとの記載,同段落【0029】の従来の摩擦式精米機では精白除糠網筒の内面にイボ状,または線状等の突起を設け,糠層を一度に分厚く剥離していたのをなくし,同網筒の内面を滑面にしたり,更にこれも能率の向上には逆行するが,従来の『ヘの字型』搗精,即ち,精米行程の中間行程が,他の行程のところより集中して精白しているのを変え,全行程で均等に精白したり,非効率的ではあるが,同精米機の回転数を早めることなどが有効である。また(2)については,(1)の完了後に亜糊粉細胞層5が表面に現れた時の白度が35~38(米粒により差がある)となるので,最適の状態に仕上げるような白度計と黄色度計を用いて,試験搗精の上で,対処できる。との記載,同段落【0031】の摩擦式精米機の回転数も毎分900回転以上の高速回転で運転される。更にそれらの摩擦式精米機の精白除糠網筒(図示せず)の内面は,若干微細な凹凸があるものの,従来のものにくらべ,はるかに凸部が低くなっている。との記載,同段落【0033】の研削式の場合は砥石を60番以上にする必要あり,本装置では,(1)精白除糠網の内面がほとんど,滑面状となっているから,(2)また第2精米機16では第1精米機14や第3精米機18と同状の軽負荷しかかけないから,更に,(3)本装置は毎分900回の高速回転をさせているから,との記載,同段落【0035】の

上記装置のミニチュア機と,白度計と,炊飯器と,黄色度計を用い,そのロットの米はどの白度に仕上げれば良いかを事前に確認しておき,その白度で仕上げるのである。

との記載,同段落【0038】の図3の実施例は3台連座式となっているが,これを4台連座式にしても良いし,また単機でも,上記(1)~(4)を満たすものであればよい。但し,1台の1回通過式精米機でそれを行うには,従来の精白ロールのままでは出来ない。従って,その場合の精白ロールを第2実施例として,図4に示し,説明する。(但し精米機全体の図示は省略する)。図4は,本発明の1台による1回通過式精米機に用いられる『均圧型』精白ロールを示すものであるが,その特徴は,円筒状の胴体31の外面に縦走する2本の突条32,32’が,始点34と終点35の中ほどの曲点(アールを有す)33にて,167度前後の角度で矢印方向に曲がっていることである。しかも,始点34と終点35を結ぶ線が精白ロールの軸線方向と平行になっている。との記載。

(イ)

本件明細書の段落【0031】には,肌ヌカを除去できるならばど
のような無洗米機でもよいと記載されている。しかしながら,どのよう
な無洗米機を用いたものなのか分からないから,無洗米機は明確ではない。
(ウ)

本件明細書の段落【0041】には,無洗米機21にて肌糠を除去し,無洗米に仕上げられ,排出口22より排出する。このように無洗米機21にかけるのは,せっかく亜糊粉細胞層5や胚盤9などを残した精白米に仕上がっているのに,これを手作業や洗米機で強くゴシゴシと米を研がれると剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうからである。その点,無洗米機21にかけた場合は,排出された無洗米は,亜糊粉細胞層5は除去されず,肌ヌカが除去され…る。と記載されている。

しかしながら,無洗米機も洗米機も,精米後に精白米にこび
りついている糠を取る機能を有する同じ装置であり,以前は,
洗米機
と呼んでいたのを,最近になって無洗米機と呼ぶようになっただけであり(甲3ないし8),無洗米機21には洗米機が含まれる。
そうすると,上記記載は,洗米機では剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうとしつつ,洗米機である無洗米機21ではそうならないとしているから,意味不明の記載である。イ
本件発明3について
本件発明3は,

前記白度41以上の無洗米であって,これを炊飯すると黄色度13~18に炊き上がることを特徴とする請求項2に記載の旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。

となっているが,無洗米の製造方法であるにもかかわらず,無洗米の製造方法に関する特定のない特許請求の範囲の記載となっており,明確ではない。

小括
以上のとおり,本件発明は,明確ではなく,明確性要件(特許法36条6項2号)
を充足しないから,
これを充足するとした本件審決の判断には,

誤りがある。
したがって,本件審決は取り消されるべきである。


被告の主張

本件発明について
本件発明の特定事項に不明確なところはない。
(ア)

技術の開示の役割を持つ明細書に記載された実施態様をすべて権利
範囲を特定する特許請求の範囲に取り込み,発明を常に実施例に限定させなければならないとする理由はどこにもない。原告がいかなる根拠で実施例に限定せよとの主張をしているのか全く不明であるが,いずれにせよ,本件発明の特定事項はそれ自体として明確であり,本件明細書の段落【0036】,【0029】,【0031】,【0033】,【0035】及び【0038】の記載は,本件発明の具体的な実施態様及びそれに関連する技術事項を開示するものにすぎない。
(イ)

発明特定事項の構成について,その構成を限定しない旨が明細書に
記載されている場合,当該構成については当業者が適宜選択することができるとされているのであり,当該発明特定事項が明細書及び図面によって不明確になるという関係になるのではない。本件発明においては,無洗米機は適宜のものを用いればよいのであるから,無洗米機は不明確ではない。

(ウ)

無洗米機には,水を使用する水洗式無洗米機(甲3)と水を使用しな
い無洗米機があり(甲8),水を使用しない無洗米機はもちろんのこと,水洗式無洗米機であっても瞬間的に水で表面の肌ヌカを除去し,水が吸収される前にすぐに乾燥させるものであるから,洗米機とは全く異なるものである。本件明細書の段落【0041】の記載は,肌ヌカは水を使用しない無洗米機のみならず水洗式無洗米機によっても亜糊粉層を残して除去できるが,洗米機では剥離しやすい亜糊粉細胞層5などが流失し
てしまうとの趣旨の記載である。

本件発明3について
本件発明3は,請求項2を引用するものであり,請求項2が無洗米の製造方法に関する発明である以上,これを引用した本件発明3が無洗米の製造方法の発明であることは明らかである。

小括
以上のとおり,本件発明は,明確であり,明確性要件(特許法36条6項2号)を充足するから,これを充足するとした本件審決の判断には,誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

第4

当裁判所の判断

1
取消事由1(サポート要件に関する判断の誤り)の有無について


本件明細書の記載事項について
本件明細書(甲20)には,別紙本件明細書の記載事項記載の記載事
項があり,これによると,本件明細書には,本件発明に関し,次のとおりの開示があることが認められる。

本件発明の課題は,白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持した無洗米とその製造方法を提供することである(【0005】)。


玄米の表層部は糊粉細胞層と亜糊粉細胞層と澱粉細胞層などで構成されるが,糊粉細胞層と澱粉細胞層の間に位置する亜糊粉細胞層にはマルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質など米粒の栄養成分及び旨み成分が多く含有されており,他方,それより表層の糊粉細胞層や更に表層の物質いわゆる糠層成分は食味にマイナス作用を与える。また,胚芽の表面部を除く部分や胚盤は消化性が良く栄養成分も多いが,胚芽の表面部は口当たりが悪
く消化性も良くない。(【0014】ないし【0019】,【0022】,【0023】)

そこで,
精米機による搗精により,
表層部から糊粉細胞層までを除去し,
亜糊粉細胞層を可及的に外面に残して米粒の表面に露出させるとともに,糊粉細胞層4やそれより表層の糠層成分や胚芽の表面部を可能なかぎり除去すればよい(【0007】,【0008】)。

亜糊粉細胞層,表面部を除いた胚芽及び胚盤を可及的に残し,糠層成分や胚芽の表面部を可能な限り除去するためには,(1)可能な限り中途精米過程での1粒当りの米粒の剥離差を生じなくする,つまりむら剥離を無くすと共に,(2)亜糊粉細胞層が表面に露出した時に搗精を終わらせることが必要となる(【0028】)。
この(1)のための対策としては,従来の摩擦式精米機の精白除糠網筒
の内面に設けられていたイボ状又は線状等の突起をなくして同網筒の内面を滑面にしたり,搗精が一行程に集中するのを変えて全行程で均等に精白したり,摩擦式精米機の回転数を早めることが有効であり,(2)のための対策としては,(1)の完了後に亜糊粉細胞層が表面に現れた時の白度が35~38となるので,これを白度計と黄色度計を用いて測定すれば
よいが,これは,試験搗精をして事前に条件を確認しておけばよい(【0028】,【0029】,【0035】)。
このようにして得た白度35~38の精白米は,亜糊粉細胞層も削ぎ落とされずにほとんど残存し,亜糊粉細胞層の表面に未剥離の糊粉細胞層がほとんど残存しておらず,表面部を除去された胚芽や,胚盤もかなり残存
し,亜糊粉細胞層の表層にあった糊粉細胞層を含めて糠層がほとんど剥離されている(【0036】,【0040】)。

本件発明の精米装置は,(1)全行程,もしくは終末寄りの行程が摩擦式精米機によって構成され,それが全精米行程の少なくとも3分の2以上
を占めている,(2)その摩擦式精米行程の全行程をほぼ均等負荷がかかる負荷配分になっている,(3)同精米機の精白除糠網筒の内面はほぼ滑
面状となっている,(4)同精米機の精白ロールの回転数が毎分900回転以上の高速回転となっている,との主要な要件を備えた精米装置であればよく,上記(1)~(4)の全てを満たすことは相乗効果も働き最もよいが,
その内の各項目の一つでもそれなりの効果を有するものである【0(
037】)。


精米機で仕上げられたままでは肌ヌカが表面に付着しているが,これを手作業や洗米機で強くゴシゴシと米を研がれると剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうから,無洗米機21にて肌ヌカを除去するが,
無洗米機21にかけた場合は,排出された無洗米は,
亜糊粉細胞層5は除去されずに肌ヌカが除去され,白度41~45に仕上
がるとともに,胚盤又は表面部が除去された胚芽が残存した米粒の合計数が50%以上を占めている(【0041】)。
本件発明の無洗米は白度41以上であっても,その表面は亜糊粉細胞層に覆われているため,ご飯に炊き上げると,わずかに黄色みを帯びた黄色度13~18になり,また,全米粒のうち,胚盤又は表面を除去された胚
芽が残った米粒の合計数が50%以上も占めているため,その食味は,従来のご飯とは異なった美味しさがある【0043】

ないし
【0045】。



サポート要件の充足について
前記⑴の記載からすると,白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持し
た無洗米とその製造方法を提供するという本件発明の課題を解決するために,本件明細書には,玄米粒において,精米機による搗精により,マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層を米粒の表面に露出させ,また,胚芽及び胚盤を残せばよいこと,そのためにはむら剥離をなくすことと亜糊粉細胞層が露出した時に搗精を終わらせることが必要である
こと,むら剥離をなくすためには摩擦式精米機を全行程の3分の2以上で用いる,負荷配分を均等にする,除糠網筒の内面を滑面状にする,ロール
の回転数を高速化するとの精米行程,精米装置の条件を提示し,亜糊粉細胞層が露出した時に搗精を終わらせるためには精白米と無洗米の白度や黄色度に着目すればよいこと,その条件は試験搗精をして事前に条件を確認しておけばよいこと,肌ヌカを除去するには無洗米機を用いればよいことを開示するものであり,これによると,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された
発明であって,かつ,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。


原告の主張について

原告は,本件発明の実施品として市販されている金芽米の電子顕微鏡写真(甲28)によると,本件発明の摩擦式精米機により亜糊紛細胞層が表面に露出するように搗精された米粒,無洗米機により,亜糊紛細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米は,本件明細書に記載する方法では得られない旨を主張する。
しかしながら,上記電子顕微鏡写真の対象である金芽米が本件発明
の実施品であるとの立証は全くないから,上記原告の主張は前提を欠くものであって,これを採用する余地はない。

原告は,亜糊紛細胞層が表面に露出したことを確認する方法が何ら記載されておらず,したがって,亜糊紛細胞層が表面に露出した際の白度を確認することもできない旨を主張する。しかしながら,精米行程の最終行程を経た白度35~38に仕上げられた精白米は,亜糊粉細胞層がほとんど残存しているとされ(【0032】)また,そのためには,装置のミニチュア機と,白度計と,炊飯器と,黄色度計を用い,そのロットの米はどの白度に仕上げれば良いかを事前に確認して(【0035】)おけばよいから,亜糊紛細胞層が表面に露出したことを確認することができないとはいえない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,本件明細書の段落【0044】【表1】の注2に

マルトオリゴ糖類は米粒の表層部を5%削り取ったものを測定した。とあるが,

これは米粒の表層部近傍を広く含む部分の含量であり,一層の亜糊粉細胞層(5)のみの成分分析になっていない旨主張する。

しかしながら,本件明細書の段落【0044】【表1】のマルトオリゴ糖類に係る記載は,本件発明の無洗米と完全精白米のそれぞれの表層部を5%削り取ったものに含有されるマルトオリゴ糖の各含有量を対比して亜糊粉細胞層のマルトオリゴ糖の含有量を間接的に推認させるものと理解できるのであるから,そもそも原告の主張はその前提を異にするも
のというべきである。すなわち,マルトオリゴ糖は亜糊粉細胞層に多く含まれているとされているところ(本件明細書【0015】,
【0016】),
上記表2の本発明の無洗米の欄には亜糊粉細胞層と更に深層の澱
粉細胞層のマルトオリゴ糖の含有量が示され,完全精白米の欄は,亜糊粉細胞層が削り取られた後の澱粉細胞層のマルトオリゴ糖の含有量が
示されているのであるから,これらを対比すれば,亜糊粉細胞層に含まれるマルトオリゴ糖のおおよその含有量が理解できるといえる。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,本件明細書の段落【0031】には,肌ヌカを除去できるならばどのような無洗米機でもよいと記載されているが,実施例が1例だけでは,どのような無洗米機を用いたものか分からない旨を主張する。しかしながら,本件明細書において無洗米機の構成が限定されていないのであれば,当業者としては適宜の無洗米機を選択すればよいのであり,構成が限定されていないことをもって,本件発明が本件明細書によってサ
ポートされていないという関係には立たない。また,原告からは,肌ヌカを除去できない無洗米機があることを示す具体的な主張,立証はされてい
ない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,本件発明の無洗米の表面状態は肉眼では判別不可能であるにもかかわらず,本件明細書には図面代用写真等が示されていない旨主張する。

しかしながら,図面(その代用としての写真を含む。)は,発明の内容を理解しやすくするために明細書の補助として使用されるものであるところ,前記⑵のとおり,本件発明の内容は原告が上記に主張するような図面代用写真等がなくても当業者において理解可能であるから,原告の上記主張を採用することはできない。


原告は,本件明細書の段落【0037】には4つの項目のいずれかを満たせば本件発明の効果が生じると記載されているが,どの項目を満たすか分からない不明な実施例が1例だけでは,その1つの項目である摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによってのみを特定事項とする本件発明2が本件明細書によってサポートされているとはいえない旨を主張する。
しかしながら,本件明細書には,白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法を提供するという本件発明の課題を解決する上で,むら剥離をなくすために摩擦式精米機に設けられる有効な手段と
して挙げられる3つの項目(【0028】,【0029】)と併記して,摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることが記載されている(【0037】)。上記本件明細書の記載に加え,本件明細書の段落【0037】のそれらの(1)~(4)の全てを満たすことは相乗効果も働き最もよいが,その内の各項目の一つでもそれなりの効果を有するものであるとの記載によると,実施例で用いられる精米機がいずれの項目を満たすものか不明で
あるとしても,摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることを特定事項とする本件発明2(及びこれを前提とする本件発明3)は,上記課題を解決するものとして本件明細書によってサポートされているといえる。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。


そのほかサポート要件違反について原告がるる主張する点は,いずれも前記結論を左右し得ない。



小括
以上のとおり,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであり,サポート要件(特許法36条6項1号)を充足するから,これを充足すると
した本件審決の判断には,誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2
取消事由2(明確性要件に関する判断の誤り)の有無について


明確性要件の充足について
本件発明は,前記第2の2のとおりに特定されるものであるところ,それ
自体として,用語の内容に不明瞭,あいまい等の明確でない部分は見出し難い。


原告の主張について

原告は,本件明細書の段落【0036】,【0029】,【0031】,【0033】,【0035】及び【0038】の記載事項は,本件発明の必須の構成であり,発明を特定するため特許請求の範囲に掲げなければならないのにその記載がないから,本件発明は明確性を欠くとする。しかしながら,本件発明の特定事項だけでは,各特定事項の間に矛盾,欠落,不整合等が生じていて,本件出願時の技術常識を踏まえても,当業
者において発明の内容を理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとは認め難いから,上記各段落の各内容を発明特定事項とす
る必要はない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,無洗米機だけではどのような無洗米機か分からないから,この用語が明確ではない旨を主張する。
しかしながら,本件明細書の段落【0031】には,肌ヌカを除去でき
るならばどのような無洗米機でもよいと記載されており,また,本件出願時の技術常識(甲2ないし8)を踏まえても,当業者において無洗米機を理解できないとはいえないから,当業者としては適宜の無洗米機を用いればよいと理解できるのであって,無洗米機が明確ではないとはいえない。

したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,無洗米機には洗米機が含まれるから,洗米機では
剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうとしつつ,洗米機である無洗米機21ではそうならないとしている本件明細書の段落【0041】の記載は明確ではない旨を主張する。

しかしながら,無洗米機に洗米機が含まれるとする原告の主張
は,独自の解釈に基づくものであり,無洗米機の中に水を用いるものがあるとしても,通常の洗米機とは異なる用い方をしており(甲2ないし8),無洗米機といった場合に指し示す機器を当業者が理解できないとはいえず,両者は明確に区別され得るものであるから,原告の上記主張
は前提を欠き,採用することができない。

原告は,本件発明3が無洗米の製造方法としつつ,無洗米の製造方法に関する特定事項がないから明確ではないと主張するが,本件発明3は,請求項2に記載された製造方法によって仕上げることを特徴とするこ
とに加えて,黄色度13~18に炊き上がることを特徴とすることを明示しているのであるから,製造方法に関する特定事項がないとはいえな
い。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

そのほか明確性要件違反について原告がるる主張する点は,いずれも前記結論を左右し得ない。



小括
以上のとおり,本件発明は,明確であり,明確性要件(特許法36条6項2号)を充足するから,これを充足するとした本件審決の判断には,誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

3
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅野雅之本吉弘行
裁判官

裁判官
中村恭
(別紙)
本件明細書の記載事項

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,白米でありながら,米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して,旨み成分と栄養成分を保持した無洗米に関するものである。
【背景技術】

【0002】
いま社会の人々が望むことは,
単に長寿とか病気にならないというだけではなく,
常に若々しく,元気で活動したいということである。そのために,サプリメントからでも栄養を補いたいという人々も多い。しかし,自然の食品から有益な栄養を摂取できればということで,毎日食べるお米について,昔から玄米
分搗き米
胚芽米などが存在し,最近では発芽玄米も世に出回っている。
【0003】
しかし,それらの中で一番食べやすいといわれている胚芽米でも米消費量の1%にも満たないのが現状である。その原因は,お米という食材は,精米機によって,玄米を1分搗きから完全精白米まで自由に精白度を高められるが,高白度にな
るほど栄養成分が除去されてしまう。かといって玄米に近い,低白度のものほど栄養的に優れてはいるが,それに反比例して,食味が悪いだけでなく,消化吸収性もよくないため,玄米や分搗き米や胚芽米は敬遠される。結局は,少ない栄養成分であっても消化吸収性がよく,且つ,美味な完全精白米が好まれるからである。【0004】

従って精米機の歴史は,米粒を消化吸収性がよく,且つ美味にという点と,栄養成分を残すという相矛盾する点を,いかに両立させるかに苦労を積み重ね
てきたと言っても過言ではない。それにもかかわれず,その二律背反の問題はほとんど解決されないままで,今日に至っているのであり,ほとんどの人々は完全精白米を食しているのが現状である。しかし,玄米には元々自然の優れた栄養成分を保持しているのに,それを除去して白米となして,米偏に白と書けば粕という字となる如く,結局は粕となったものを食さねばならぬという不合理性は大である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

しかし,
文献を調べても,
これまで玄米の組織について研究されたものはあるが,
それらの各組織の食味についての研究や,種々の状態に搗精された米粒表層部の断面を顕微鏡で見て,表層の糠層などが如何程除去されているかの研究発表等が全く存在しない。
本発明は,
白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持した無洗米と,
その製造方法及びその製造装置を提供するものである。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は以上の如くであり,次に該課題を解決する為の手段を説明する。
【0007】

請求項1においては,外から順に,表皮(1)
,果皮(2)
,種皮(3)
,糊粉細胞層
(4)と,澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され,該表層部の内側は,前記糊粉細胞層(4)に接して,一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と,該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の,純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において,前記玄米粒を構成する糊粉細
胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で,摩擦式精米機により搗精され,表層部から糊粉細胞層(4)までが除去された,該糊粉細胞層(4)と
澱粉細胞層
(6)
の間に位置する亜糊粉細胞層
(5)
が米粒の表面に露出しており,
且つ米粒の50%以上に
『胚芽
(7)
の表面部を削りとられた胚芽
(8)または

『舌
触りの良くない胚芽
(7)
の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤
(9)

が残っており,更に無洗米機(21)にて,糊粉細胞層(4)の細胞壁(4’)が破
られ,その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなることを分離除去したことを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米である。
【0008】
請求項2においては,摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以
上の行程に用い,前記亜糊粉細胞層(5)と『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)
』または,
『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り,
残された基底部である胚盤(9)
』が表面に現れた,白度35~38の精白米に仕
上げ,前記白度35~38の精白米を,更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』を除去する無洗米処理をして,
『肌ヌカ』が除去された,白度41以上となるように

精白米を仕上げたことを特徴とする請求項1記載の旨み成分と栄養成分を保持した無洗米である。
【0009】
請求項3においては,白度41以上の無洗米であって,これを炊飯すると黄色度13~18に炊き上がることを特徴とする請求項2に記載の旨み成分と栄養成分を保
持した無洗米である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は,
1.本発明の無洗米は,消費者が研ぎ洗いせずとも炊け,しかも従来のどのカテ
ゴリーの米よりも甘みや旨みがあり,美味である旨み成分と栄養成分を保持した無洗米である。

【0012】
2.従来の高白度分搗き米や完全精白米より,自然のビタミンやミネラルが多く,かつ従来の玄米,分搗き米,胚芽米よりもはるかに食べやすくて消化性も良く,人体に摂取されやすい旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供できる。【0013】
3.従来の完全精白米よりも除去するものが少ないから,生産工場も省エネで生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】

本発明者は,従来の種々の精白米の表層部を解明するため調査した結果を開示する。先ず,玄米粒の組織について説明する。図1は,1粒の玄米粒の表層部の1部(各細胞が特に整然と並んだ部分)を拡大した略断面図である。その米粒表層部の各構成部の特徴について解説すると,表皮1,果皮2,種皮3,糊粉細胞層4(これは数段堆積している個所もある)までの層は,澱粉を含まないし,食味上もよく
ない黄茶色の物質である。というよりも,ごはんの美味しさの足を引っ張る物質という方が正しいであろう。
【0015】
前述した玄米,分搗き米,胚芽米などの食味がよくないのは,ご飯の美味しさの足を引っ張る物質が残っているせいである。それらが除去されている完全精白米で
も,洗米して炊かないと食味が良くないのは,精米過程で発生した糊粉細胞層4の細胞壁4’が破られ,その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に『肌ヌカ』として付着されているからである。糊粉顆粒はそれほど食味の足を引っ張るものである。それに引きかえ,糊粉細胞層4に接して,糊粉細胞層4より一段深層に位置する薄黄色の亜糊粉細胞層5(これは厚みも薄く1層しかない。)

は,黄茶色の糊粉細胞層4や,後述する純白色の澱粉細胞層6とは異質のものである。

【0016】
その成分は澱粉だけではなく,種々の有益成分を含有し,糠層(表皮1~糊粉細胞層4まで)と,胚乳(澱粉細胞層6)の中間的位置にあるというだけでなく,内容的にも,澱粉細胞と糊粉細胞との中間的な一面もあり,我々人間(特に米を主食としてきた日本人)にとって極めて美味しさを感じさせる旨み成分だけでなく,栄養的にも優れたもの,例えばマルトオリゴ糖類や,食物繊維や,良質の蛋白質などを含有しているのである。その亜糊粉細胞層5に接した深層には,成分がほとんど澱粉で占めている澱粉細胞層6があるが,澱粉細胞層6は米粒の中心部まで多段的に積層され,米粒の大部分を占める構成物である。

【0017】
その最も表層の第1層6’には旨み成分が若干含まれ,その第2層6’’には,
それより更に微量の旨み成分が含まれている。そして第3層6’’より中心部まで’
の細胞には旨み成分がほとんど含まれていない。以上の説明から解るとおり,米粒の旨み成分や栄養成分が最も多いところは,亜糊粉細胞層5であり,オリンピック
的に評価すると,亜糊粉細胞層5は『金層』であり,澱粉細胞層6の第1層6’が『銀層』であり,その第2層6’
’が『銅層』ということになる。ところがこのよ
うに米粒における亜糊粉細胞層5は食味の点からも,栄養的見地からも極めて大切な部分でありながら,これまで,それが注目されたことは全くない。従って,これまで,この『金層』に相当する亜糊粉細胞層5の特徴を生かして搗精された米は,
全く存在しないのである。
【0018】
即ち,これまでに世に出されている米を調べても,亜糊粉細胞層5が,全部またはほとんど除去されてしまった完全精白米や高白度分搗き米か,それ以外は亜糊粉細胞層5を表皮1,果皮2,種皮3,糊粉細胞層4により,またはそのいずれかに
より,米粒表面のほとんどを覆ったままの,玄米,発芽玄米,分搗き米,胚芽米しかなかったのである。つまり亜糊粉細胞層5が,いかに食味に『金層』として価値
があっても,その表面に,美味しさの足を引っ張る糊粉細胞層4などが覆っていればその効果が出ないだけでなく,不味となるのである。
要するに本願発明者の調査の結果判明したことは,
(1)
『完全精白米』の場合は,精米機によって,表皮1,果皮2,種皮3などと共に糊粉細胞層4や,その次の層に位置している,薄い厚みで一層しかない亜糊粉細胞層5までも,ほとんど除去され,それより次の深層にある澱粉細胞層6が露出した状態で完全精白米の表面を形成しているのである。
【0019】
それは後述のとおり,精白途上の精白度の低い白度32の段階ですら,すでに澱
粉が除去されているほどであるから,それは取りもなおさず,玄米粒の中で最も浅い層に位置した澱粉含有物となる亜糊粉細胞層5が削られているのであり,それが白度約39の高白度に仕上がっている完全精白米の場合は,亜糊粉細胞層5は剥離されてしまって,それより深層の澱粉細胞層6が表面に露出しているのは当然のことである。また,この澱粉細胞層6はそれより表層にある表皮1~亜糊粉細胞層5
よりはるかに硬い為,
特に米粒同士で粒々摩擦によって剥離されにくい特性がある。
それ故に,一般に用いられている摩擦式精米機が搗精に適するのである。従って,完全精白米であっても,早期に剥離された米粒の突出部も,それほど澱粉細胞層6が深く削りとられることなく,つまり米粒の原形が大きく変わることなく,仕上がっているものの,1粒の米粒でもムラ搗きになり,僅かの部分を占める非突出部以
外は,亜糊粉細胞層5が取り去られているのである。それは,玄米の形状が図2のとおり球状ではないだけでなく,凹凸もあるからである。
【0020】
また,完全精白米には,胚芽8や胚盤9が残った米粒も殆ど存在しない。このように,完全精白米が精米機で仕上げられたままでは白度約39であり,そして無洗
米機によって肌ヌカを除去すると白度45~50になる。それを炊飯すると黄色度11以下(11より少ない数字)
(これは純白の白さである)になり,誰もがよく

知っているように,真っ白なご飯になる。
(2)また『分搗き米』の状態は,玄米に近いものほど脱芽はしていないが,果皮2や種皮3までもが多く残り,玄米とほとんど同じになる。また分搗き米でも7分搗きになると,胚芽7はほとんど脱落し,完全精白米に近いものほど果皮2や種皮3は勿論のこと,亜糊粉細胞層5までほとんど無くなっている。
【0021】
しかし,いずれの分搗き米でも,米粒の表面には多かれ,少なかれ,食味上のマイナス物質の糊粉細胞層4や場合によっては,それより表層の物質が残留しているのである。それらの分搗き米は精米機で仕上げられたままの白度は22~38であ
り,無洗米機で肌ヌカを除去すると白度25~45になる。勿論,肌ヌカを除去されただけでは,それを炊飯すると,精白度の低いものは,玄米飯の如く濃い黄茶色で,糠臭く口当たりも悪い。

そして,精白度の高いものはそれより食べやすいも

のの,胚芽7の残存がほとんどなくなり,栄養も少ない。
(3)また『胚芽米』の状態は,最も精白されたものでも,分搗き米の7分搗き程度のものであって,それに胚芽7’が多く残存している違いだけである。その白度は28~32であり,無洗米機で肌ヌカを除去すると白度32~38になる。それを炊飯すると黄色度22以上もあり,糠臭く口当たりも悪い。
【0022】
つまり,ご飯が黄茶色で,また胚芽7がほとんどそのままの形状で多く残存して
いて,その胚芽7’の表面が一層口当たりを悪くしている。従って高栄養で且つ口当たりのよい『胚芽7の表面部を除去した胚芽8』や『胚盤9』の状態で残っている米粒はほとんどみられない。ここで『胚芽7』について説明すると,玄米粒における胚芽7は,図2のように,先端が円錐状になって米粒の中心部に向けて深く没入し,その頂部が米粒の頭部より盛り上がった状態になっている。そして『胚芽
米』とは,図5に示す如く,玄米の表皮1や果皮2等を除去しても,胚芽米の胚芽7’は,玄米の時より僅かに小さくなっているものの,ほとんどそのまま残したも
のである。しかし胚芽7’の表面部,つまり米粒より盛り上がった部分は口当たりが悪く,かつ消化性も良くない。
【0023】
しかし,図7の如く,
『胚芽7の表面部を削りとられた胚芽8』になると,その
デメリットがかなり解消される。それを更に削り取ると図6に示す如く,胚芽の胚盤9だけが残ることになる。いずれにしても,この『胚芽7の表面部を除去された胚芽8』や『胚盤9』は消化性も良く,甘みもあり,またビタミンE等の栄養成分も多いのである。以上のことから考えると,従来は米の栄養成分は糠層や胚芽だけに目を向けられていたため,気付かなかったが,胚盤9や亜糊粉細胞層5には米粒
の栄養成分及び旨み成分を多く含有しているのであるから,これを可及的に残すと共に,食味にマイナス作用を与える糊粉細胞層4やそれより表層の物質,いわゆる糠層成分や,胚芽7の表面部を可能なかぎり除去すれば良いことになる。【0024】
ところが,これまでそのようなものが全く存在しなかった。特に,その存在の可
能性が高いと思われる完全精白米より,僅かに精白度の低い分搗き米でも,そのような米が存在しなかったのである。
その理由として考えられるのは,
第一に,亜糊粉細胞層5の特徴が知られていなかったこと。
第二に,亜糊粉細胞層5は極めて厚みが薄く,且つ,岩盤的な硬い澱粉細胞層6
の外側にある糊粉細胞層4と共に剥離されやすいこと。
第三に,従来から,飯米用の精米手段は摩擦式精米機にて『ヘの字型搗精』を行うことが常識とされていることから,その搗精方法では,必然的にそうなるからであろう。
即ち,この第三の理由について詳述すると,本願発明者の発見によるが,従来の
摩擦式精米機では,白度32程度の精白途上のまだ比較的精白度の低い段階から,胚芽が根こそぎ脱落している米粒が多く,またその未精白状態の時に,精米機より
排出される糠より微砕粒を除去しても,その糠にかなりの澱粉成分が含まれていることを発見した。
【0025】
それによって,これまでの概念では,摩擦式精米機では発生した糠粉を介在しながら,米粒同士を擦れ合わせて米粒の表面を剥離する方式であるから,球形とは異なる米粒表面の凹凸にかかわらず,表面が均等に剥離されていくものと考えられていたがそれは誤りであることが判明した。何故ならば,米粒の精白度が低いのに,かなりの米粒が根こそぎ脱芽しているだけでなく,米粒の深層部にしか存在しない澱粉成分が削られるということは,精米過程で一度に剥離される糠層はかなりの厚
さで,しかも部分的に『むら剥離』が生じていることになるからである。従って,完全精白米に精白される直前の高白度分搗き米を1粒当たりで見ても,米粒の全表面の内,胚芽の脱芽だけでなく,深層の亜糊粉細胞層5が削ぎ落とされ,更に,澱粉細胞層6の表面も若干削りとられている過精白部分もあれば,未だ糊粉細胞層4が残ったままの未精白部分も多く存在するのである。

【0026】
それ故,このような完全精白米に仕上げる直前の高白度分搗き米は食味がよくなく敬遠されたのである。そもそもこれまでの,このような『むら剥離』そのものが知られていなかったのは,米の消費のうち,炊飯に供される米の99%以上は完全精白米であり,その完全精白米の精白過程では,澱粉細胞層6が,丁度,地層の岩
盤の如く硬いため,それより深層の剥離は遅く,その間に『むら剥離』のため取り残されていた澱粉細胞層6より表層のものが剥離され,結果的に完全精白米に達する頃には,きれいにむら剥離状でなくなっていて,誰もその直前まで『むら剥離』になっていることに気付かなかったのである。しかし,
『むら剥離』は摩擦式より
も,研削式の方がひどいのである。

【0027】
胚芽米の製造手段の研削式精米機の場合になると,砥石などで米粒の表面を削る
方式であるために,摩擦式の場合より,一層むら剥離が生じ,高白度になると,澱粉細胞層6も削ぎ落とされている個所もあれば,糊粉細胞層4だけでなく,それより表層の糠層が残ったままの部分もあるという状態になる。特に,胚芽米は主要精米行程を研削式精米機にて仕上げられるため,米粒表面に研削傷があるため一層食味が良くない。また,特公平5-21628号公報に記載の技術では,胚盤9が残留したものであるが,精米機で仕上げただけの白度が40の高白度米のため,旨み成分や栄養成分の多い亜糊粉細胞層5はほとんど除去されてしまっている。【0028】
以上のことからも判るとおり,従来の精白米は,食べやすいが栄養成分が少ない
精白米か,栄養成分が多いが極めて食味がまずいものしかなかったのである。それを解決するには,摩擦式精米機での精米過程で,これまで気付かなかった,低精白米の状態の時に,脱芽したり排出される糠の中に澱粉が含まれることを可及的に少なくし,つまり,
(1)可能な限り中途精米過程での1粒当りの米粒の剥離差を生じなくする,つま
りむら剥離を無くすと共に,可能なかぎり高栄養・良食味の亜糊粉細胞層5と胚盤9か,または,口当たりの悪い胚芽7の表面部を除去した胚芽8を残るようにする。
(2)その上で,亜糊粉細胞層5が表面に露出した時に搗精を終わらせることが必要となる。

しかし,この(1)の問題は,それに気付けば対策はある。即ち,昔から精米業界で常識として行われてきた方式を,次のように変えることで実現できる。(尤も
それによってこれまでのような完全精白米に仕上げるには極めて不都合になる。)
【0029】
能率を向上させるために,
従来の摩擦式精米機では精白除糠網筒の内面にイボ状,

または線状等の突起を設け,糠層を一度に分厚く剥離していたのをなくし,同網筒の内面を滑面にしたり,
更にこれも能率の向上には逆行するが,
従来の
『ヘの字型』

搗精,即ち,精米行程の中間行程が,他の行程のところより集中して精白しているのを変え,全行程で均等に精白したり,非効率的ではあるが,同精米機の回転数を早めることなどが有効である。また(2)については,
(1)の完了後に亜糊粉細胞
層5が表面に現れた時の白度が35~38(米粒により差がある)となるので,最適の状態に仕上げるような白度計と黄色度計を用いて,試験搗精の上で,対処できる。従って,本発明の精米装置は,次のとおり従来の装置を若干変更するだけで実現できる。
【0030】
<実施例の説明>

本発明の装置の1実施例を図3に基づき説明する。玄米張込口11より第1昇降機12を経て,供給された玄米を貯蔵する玄米タンク13からの玄米供給を受ける第1精米機14,及び第2昇降機15から低白度中途精白米の供給を受ける第2精米機16,及び第3昇降機17から高白度中途精白米の供給を受ける第3精米機18と,各装置が連設されて精米装置が構成されている。なお,第1精米機14,第
2精米機16,第3精米機18はいずれも摩擦式精米機である(但し第1精米機14のみは研削式にする場合もある。
)従来は,第2精米機16が第1精米機14及
び第3精米機18よりも高馬力のモーターが付設されているが,本装置のモーター(いずれも図示せず)は3台とも同馬力のものを付設している。
【0031】

また,それらの摩擦式精米機の回転数も毎分900回転以上の高速回転で運転される。更にそれらの摩擦式精米機の精白除糠網筒(図示せず)の内面は,若干微細な凹凸があるものの,従来のものにくらべ,はるかに凸部が低くなっている。そして第3精米機18から排出された精白米は第4昇降機19より精白米タンク20に投入され,無洗米機21に供給され,同無洗米機21にて無洗米に仕上げられたも
のが排出口22より次行程に送られる構成になっている。この無洗米機21は肌ヌカを除去出来るものならどれでも良い。即ち,本願発明者の発明に係る特開平2-
242647号公報,または特開2004-321001号公報に示されるものでも良い。
【0032】
次に,上記装置の作用説明と,本件発明の製造方法を説明する。玄米張込口11に投入された玄米は,第1昇降機12を経て,玄米タンク13に投入される。そして玄米タンク13より流下した玄米は,第1精米機14にて,薄く剥離した中途精白米に仕上げられ,第2昇降機15を経て,第2精米機16に供給される。第2精米機16では,その中途精白米の表面を薄く剥離し,更に精白度を高めた中途精白米に仕上げて,第3昇降機17を経て,第3精米機18に供給する。第3精米機1
8では,その中途精白米の表面を薄く剥離して白度35~38に仕上げて,第4昇降機19を経て,精白米タンク20に投入される。
【0033】
ここで,注釈を加えるが,第1精米機14は玄米を僅かに精白するだけであるから,従来のままでも米粒の亜糊粉細胞層5まで削られることはない。(但し,研削

式の場合は砥石を60番以上にする必要あり)問題は全精米行程の中ほどを受け持つ,第2精米機16であるが,本装置では,
(1)精白除糠網の内面がほとんど,
滑面状となっているから,
(2)また第2精米機16では第1精米機14や第3精
米機18と同状の軽負荷しかかけないから,更に,
(3)本装置は毎分900回の
高速回転をさせているから,それらの作用により精白時に,従来の如く,一度に分
厚く糠層が削ぎ落とされたり,ムラ剥離されることはない。また摩擦式精米機特有の胚芽が根こそぎ脱落することもない。
【0034】
従って,従来の第2精米機16より排出する中途精白米に比べ,本装置の第2精米機16より排出される中途精白米の方が遙かに精白度が低く,且つ胚芽の残存率
が高く,また澱粉の除去率が低いのが特徴である。
【0035】

そして,その米を第2精米機16と同一構成の第3精米機18にて,第2精米機16とほぼ同負荷で搗精することによって,白度35~38に仕上げられるのである。
(それは3台共ほぼ同負荷をかけるということであって,糠の発生量が3台が均等というのではない)
。尤も,白度35~38の内のどの白度に仕上げるかは,
上記装置のミニチュア機と,白度計と,炊飯器と,黄色度計を用い,そのロットの米はどの白度に仕上げれば良いかを事前に確認しておき,その白度で仕上げるのである。
【0036】
そして,その白度は,従来の第3精米機18より排出された完全精白米の白度よ
り低いのである。ということは,本装置にて従来の完全精白米に仕上げることもはできないし,3台共にモーター馬力を大きくしてそれを果たそうとしても,米温が極めて上昇するだけでなく,極めて効率の悪いものとなる。しかし,本発明の米を製造するときは従来の場合より,米粒から剥離するものが少ないから,逆に消費電力が少ないのである。そして注目すべきは,そのようにして得た白度35~38に
仕上がった精白米は,後述のとおりほとんど亜糊粉細胞層5も削ぎ落とされていないし,胚芽7の表面部を除去された胚芽8や,胚盤9もかなり残存しているのである。また,亜糊粉細胞層5の表面に未剥離の糊粉細胞層4がほとんど残存していないのである。
【0037】

以上のように本発明の精米装置では,
(1)全行程,もしくは終末寄りの行程が摩擦式精米機によって構成され,それが全精米行程の少なくとも3分の2以上を占めている。
(2)その摩擦式精米行程の全行程をほぼ均等負荷がかかる負荷配分になっている。

(3)同精米機の精白除糠網筒の内面はほぼ滑面状となっている。(4)同精米機の精白ロールの回転数が毎分900回転以上の高速回転となってい
る。
との主要な要件を備えたものであるが,それらの(1)~(4)の全てを満たすことは相乗効果も働き最もよいが,その内の各項目の一つでもそれなりの効果を有するものである。
【0038】
なお,図3の実施例は3台連座式となっているが,これを4台連座式にしても良いし,また単機でも,上記(1)~(4)を満たすものであればよい。但し,1台の1回通過式精米機でそれを行うには,従来の精白ロールのままでは出来ない。従って,その場合の精白ロールを第2実施例として,図4に示し,説明する。(但し

精米機全体の図示は省略する)
。図4は,本発明の1台による1回通過式精米機に
用いられる『均圧型』精白ロールを示すものであるが,その特徴は,円筒状の胴体31の外面に縦走する2本の突条32,32’が,始点34と終点35の中ほどの曲点(アールを有す)33にて,167度前後の角度で矢印方向に曲がっていることである。しかも,始点34と終点35を結ぶ線が精白ロールの軸線方向と平行に
なっている。
【0039】
なお,36・36’
・36’・36’’は,いずれも突条32の背陰部に開口し


た噴風口である。その精白ロールの作用は,精白室内に回転自在に設けられた精白ロールの右(図)に接続して,一体的に設けられた送米ラセン(図示せず)によ
り,精白室内に送られた玄米は,送米ラセンと共に回転する精白ロールの突条32,32’によって,高圧状で攪拌されるが,精白ロールの突条32,32’は曲点33にて回転方向(矢印)に対して,約167度の角度で曲がっているため,中央部に高圧がかかることがない。
【0040】

また,曲点33から,終点35までは,僅かではあるが米の流れとは逆らう方向になっているため,終点35の近傍にある排出口に設けられた圧迫板(いずれも図
示せず)の圧迫力も適圧で済む。ということは,終点35付近が極めて低圧になることもない。以上のとおりであるから,連座型であっても,或いは全精白行程を一本の精白ロールで済ます1回通過式の単機型であっても,その全行程(尤も排出口近傍の低圧部なったところを除いて)はほぼ均等に圧力がかかり,結果として全行程がほぼ均等に負荷がかかる負荷配分が行われ,上記に示す(1)~(4)が実現される。このようにして,第1実施例でも,第2実施例でも,共に,精米行程の最終行程を経た,白度35~38に仕上げられた精白米は,胚盤9や,表面部を除去された胚芽8が多く残存し,しかも亜糊粉細胞層5もほとんど残存し,またその表層にあった糊粉細胞層4を含めて,糠層がほとんど剥離されているのである。
【0041】
但し,精米機で仕上げられたままでは肌糠が表面に付着しているため,それを第4昇降機19にて精白米タンク20に投入し,無洗米機21にて肌糠を除去し,無洗米に仕上げられ,排出口22より排出する。このように無洗米機21にかけるのは,せっかく亜糊粉細胞層5や胚盤9などを残した精白米に仕上がっているのに,
これを手作業や洗米機で強くゴシゴシと米を研がれると剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうからである。その点,無洗米機21にかけた場合は,排出された無洗米は,亜糊粉細胞層5は除去されず,肌ヌカが除去され,白度41~45に仕上がっている。また全米粒のうち,胚盤9または表面部が除去された胚芽8が残存した米粒の合計数が50%以上を占めているのである。
【0042】
次に,本発明の無洗米について説明する。本発明の精米機から排出された白度35~38の精白米には,その表面に糊粉細胞層4などの糠成分が残っていないことは前述した通りであるが,それが残っていれば無洗米機21にて肌糠を取り除いていても,糊粉細胞層4等の糠成分は黄茶色をしているため,白度は40以上に上が
ることはない。従って,白度41~45の本発明の無洗米は,おいしさの足を引っ張る糠成分がほとんど除去された無洗米に仕上がっていることになる。なお,従来
の完全精白米や高白度の分搗き米の無洗米でも,白度41以上になる。しかし,本発明の無洗米との決定的な違いは,それらの無洗米は胚芽8や胚盤9は,ほとんど残留しないだけでなく,米粒表面に亜糊粉細胞層5が殆ど存在せず,澱粉細胞層6が表面に露出しているため,それがご飯に炊きあがると黄色度11以下(数字が小さくなる)の真白なご飯になる。
【0043】
それが,米偏に白と書いた『粕』
(カス)の字を表すものである。それに対して,
本発明の無洗米は白度41以上であっても,その表面は亜糊粉細胞層5に覆われているため,ご飯に炊き上げると,僅かに黄色みを帯びた黄色度13~18になるの
である。しかも,それには全米粒の内,胚盤9または表面を除去された胚芽8が残った米粒の合計数が50%以上も占めている。従って,その食味は,従来のご飯とは異なった美味しさがある。参考までに従来の米と比べた食味及び含有栄養成分を示すと,表1の通りである。
【0044】

【表1】

【0045】
ちなみに,上記黄色度13~18は炊飯前の米粒表面に亜糊粉細胞層5が露出していること,同11以下は澱粉細胞層6が露出していること,同22以上が糊粉細胞層4等の糠成分が露出していることを示すものである。しかし,従来のものにも黄色度13~18に炊き上がるものがあるが,それは炊飯前の米が1粒の中でも,更には粒と粒において,露出している部分が,澱粉細胞層6と糊粉細胞層4が混合している場合である。なお,本明細書等において記載している用語について,以下のとおり定義または解説をする。
【0046】

『白度』とは,
(株)ケット製の白度計C-300型,にて計測した精白米の白
度値(数値が高いほど白い)の3回計測した平均値である。
『黄色度』とは,日本
電色工業(株)製の分光色差計SE2000型にて炊きたてのご飯の黄色度値(数値が小さいほど白い)の3回計測した平均値である。
(ジャーで長時間保温による
変色したものなどは含まない。『胚盤』とは,舌触りの良くない胚芽の表層部や突)

出部を削り取り,残された胚芽の基底部のことであり,最も栄養分の多いところである。
『全行程をほぼ均等負荷がかかる負荷配分』とは,精米行程の終末の排出口直前の『搗精』よりも『除糠』に主眼を置いた行程(それも一般的には精米行程の範疇に入れられている)を除いた全精米行程において,従来のように,中ほどで搗精の大部分をしていたのをせずに,従来よりはるかに均等に行うことである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図5】

【図4】

【図6】

【図7】

トップに戻る

saiban.in