判例検索β > 令和1年(行ケ)第10144号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和1(行ケ)10144
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年1月21日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-01-21
情報公開日2021-02-02 16:00:43
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
令和3年1月21日判決言渡
令和元年(行ケ)第10144号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和2年11月11日
判決原告X被告特
同指定代理人

金澤俊郎渡邊豊英関口哲生北村英隆石塚利恵主庁長官文1
原告の請求を棄却する。

2許
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が不服2018-14937号事件について令和元年9月24日にした審決を取り消す。

第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等
(1)

原告は,平成28年4月27日,名称を地熱発電等温泉システムとす
る発明につき,
特許出願
(特願2016-89537。本願
以下
という。

をした(甲4,乙7)。
原告は,
平成29年5月29日付けで拒絶理由通知
(甲5)
を受けたため,

その指定期間内の同年8月21日に,特許請求の範囲の請求項1について手続補正(以下第1次補正という。)をした(甲7,乙8)。原告は,同年12月4日付けで拒絶理由通知(甲8)を受け,平成30年3月8日に特許請求の範囲の請求項1及び2並びに発明の名称について手続補正(以下
第2次補正という。)をした(甲10,乙9)が,同年7月13日付け(発
送日:同月24日)で,第2次補正の却下決定(乙10)とともに拒絶査定(甲11)を受けた。
(2)

原告は,
平成30年10月24日,
拒絶査定不服審判を請求する
(甲12)

とともに,同日付けで,特許請求の範囲の請求項1及び発明の名称について手続補正(以下第3次補正という。)をした(甲13)。

特許庁は令和元年9月24日,第3次補正を却下した上で,上記審判請求(不服2018―14937号事件)につき,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年10月16日,原告に送達された。
(3)

原告は,
令和元年10月30日,
本件審決の取消しを求める本件訴訟を提

起した。
2
特許請求の範囲の記載
本願における第1次補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである
(以下,
第1次補正後の請求項1に係る発明を
本願発明
という。。


【請求項1】
我国地熱エネルギ活用の地熱発電を促進するため,地熱発電発電反対を抑止する目的のため,第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電すること,第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供し,第五に温泉業者の源泉
低温化のコストを不用にしてメリットを与えるという五つの組み合わせの方法により温泉業界の地熱発電反対を抑止し,地熱発電を促進し,我国地熱エネル
ギ活用を増大し得ることを特徴とする我国地熱発電促進方法。
3
本件審決の理由の要旨
(1)

本件審決の理由の要旨
(本件訴訟における原告の主張と関連するもの)
は,

本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2013-133705号公報(甲1。以下引用文献という。)に記載された発明を本願発明との対
比のために整理すると,引用文献には後記(2)の発明(以下引用発明という。)が記載されており,本願発明は,引用発明と一致し相違点はなく,したがって,特許法29条1項3号に該当し,同項本文の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものであるというものである。

(2)

本件審決が認定した引用発明は,次のとおりである。
地熱発電の普及が実現されるため,源泉の権利者への不具合を生じさせず
熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くするため,温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができ,発電に使用した熱水を,本来の
温泉水としても利用でき,
温泉利用設備30の所有者にとっても利益になり,
源泉の権利者への不具合を生じさせず温泉利用設備30の所有者にとって熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くし,熱水蒸気発電装置1の普及を進みやすくする,地熱発電の普及が実現される方法。
4
取消事由
本願発明の新規性の判断の誤り

第3
1
当事者の主張
原告の主張
(1)

本願発明と引用発明の相違点の認定に誤りがあることについて

ア(ア)

本願発明は,
地熱発電用に新たに井戸を掘らないという点において

顕著な特徴を有する。

(イ)

しかし,引用文献には,本願発明の新たに井戸を掘らないとい

う発想も,具体的な記載も全くない。
(ウ)

以上によれば,本願発明では地熱発電用の井戸を掘らないのに対し,
引用発明では地熱発電用の井戸を掘らない大前提を欠くという相違点がある。
この相違点を看過した本件審決には誤りがある。
イ(ア)

現在の温泉システムでは,
温泉のお湯を人が入れる温度にするため

に,
冷却装置6として湯の中に冷体を浸けて温度を下げたり,枝の沢山ある笹竹13の上まで熱湯をパイプ12で導き笹竹13に降り注ぐと,枝を垂れ落ちる14間に温度が下がり,溜温15の温度は42℃程度の人が入れる温度になるので,これをパイプ16を通じて温泉部7に導くといった手間のかかる方法をとっていた。本願発明は,第1次補正後の請求項1の構成を有することにより,温泉の源泉からのお湯の熱で発電し,これにより源泉の温度を下げ温泉に適する温度に下げる【0004】,(
)このような一連の動作の中で,タービン25からの蒸気は復水器29に入り,配管30を介してガス発生部21に液体状22で戻され循環して使用される。配管18から出射された熱水はガス発生部21を加熱するので温度が下がり42℃程度となり,人が浸かれる温度まで下がるので,温泉7として利用することができる。(【0011】)ものであり,源泉を入浴に適する温
度にするために従来のような手間の掛かる方法を取る必要がなくなるという顕著な効果を達成する。
(イ)

これに対し,引用発明は,発電の際に源泉の温度を下げるものでは
ない。
a
引用発明において,
混合熱水タービン3が,
地中からの混合熱水の
噴射圧力によって発電を行い(
【0066】,水蒸気タービン4が,


水蒸気の移動によって発電を行うが(
【0076】,混合熱水タービ

ン3も,
水蒸気タービン4も,
発電により源泉の温度を下げるもので
はない。
被告は,
タービンにおいて,
熱水と水蒸気が混合した混合熱水は断
熱膨張
(外部から蒸気を加熱することもなく,
また外部へ熱が逃げる

こともなく膨張すること。
)し,気体が断熱膨張するときに気体の温
度が下がることは技術常識であるから,
混合熱水タービン3や,
水蒸
気タービン4が源泉の温度を下げるものであると主張する。しかし,タービン
とは各種の流体の持っているエネルギーを有用な機械的
動力に変換する回転式の原動機の総称であり,
水車等も含まれ
(甲1

4)
,流体の流れがあればそれによってローター等を回転させること
ができるから,タービンにおいて断熱膨張が必須であるとはいえず,また,引用文献には断熱膨張という記載はない。
b
引用文献には,冷水循環路11を備える復水器10が記載されて
いるが,復水器10は,水蒸気を液化させるためだけのもので,源泉の温度を下げるものではない。
水蒸気の液化は,
水蒸気の潜熱を奪う
ことによる気体から液体への状態変化を意味するのであり,温度低下の意味は含まない。
冷却水によって,水蒸気を凝縮して,熱水を得る。この熱水は,温度が高いことを要件とするのではなく,水蒸気が凝縮して生じる液体である。すなわち,復水器10で得られる熱水は,温度条件で定義されるものではない。(【0120】)との引用文
献の記載からも,引用発明における復水器が源泉の温度を下げるものではないことは明らかである。
被告は,
引用文献に示される復水器10が水蒸気を液化させるため

だけのものであり,
更に冷却されるものではないとしても,
引用文献
には

復水器10の内部は,真空に近い圧力にまで低下する。(

【0
099】
)との記載があるところ,引用発明における真空に近い圧力が,復水器の圧力として普通とされる真空710~730mmHg程度(乙6)であれば,水の飽和蒸気圧からみて,水蒸気の凝
縮温度は約40℃ないし約30℃であるといえる
(乙5)
と主張する。
しかし,
飽和水蒸気圧は,
閉鎖空間に閉じ込めた水蒸気が平衡状態に

なった際の圧力を示すものであるところ,
引用発明において,
水蒸気
と熱水が平衡状態に達するまで復水器10に閉じ込めておく構成になっていることは立証されておらず,かえって,引用文献の

水蒸気タービン4は,回転に使用した水蒸気を,蒸気管路9に出力する。蒸気管路8は,水蒸気タービン4から,復水器10に接続している。



【0109】
)との記載からすれば,引用文献では,水蒸気は次々に
連続的に復水器10に流入する構成であると考えるべきであり,
さら
に,
引用文献の図3のように,
復水器10の下に貯留容器12が配置
される位置関係からすれば,
復水器10で凝縮した熱水は順次連続的
に貯留容器12に送られる構成であるとみるべきであり,
そのような

非平衡系の復水器に乙第5号証記載のデータを適用することはできない。
引用発明における復水器の圧力が被告の主張する
真空710~730mmHg程度
であったとしても,
水蒸気の凝縮温度が約4
0℃ないし約30℃であるとはいえない。
(ウ)

以上によれば,本願発明では発電により源泉の温度を下げるのに対
し,引用発明では発電により源泉の温度を下げるわけではないという相違点がある。
この相違点を看過した本件審決には誤りがある。
ウ(ア)
仮に,被告提出の文献(乙1,2)により引用文献のタービンの混
合熱水の温度が下がることが証明できるとしても,どの程度の温度まで下がるかを証明するものではなく,まして,本願発明のように入浴に適する温度であることを証明するものではない。
引用発明での水蒸
気の凝縮温度が約40℃ないし約30℃であると認められないことは,前記イ(イ)bのとおりである。
したがって,
本願発明では入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業

(イ)

者に提供するのに対し,
引用発明では,
温泉を入浴に適する温度に下げ

ないという相違点がある。
この相違点を看過した本件審決には誤りがある。
エ(ア)

引用発明は,本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,,第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供し,との構成を有しないから,本願発
明の
第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電すること,第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供し,第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えるという五つの組み合わせに相当する事項を有していない。
したがって,
本願発明では,
五つの組み合わせの方法を有してい

(イ)

るのに,引用発明はこのような構成を有していないという相違点がある。
この相違点を看過した本件審決には誤りがある。
(2)

小括
前記(1)のとおり,
引用発明と本願発明には相違点があるが,
本件審決は,

これを看過している。
そうすると,
本願発明が特許法29条1項3号に該当し,
新規性を欠くと
した本件審決の判断は誤りである。
2
被告の主張
(1)

本願発明と引用発明の相違点の認定に誤りがないことについて


本願発明の我国地熱エネルギ活用の地熱発電を促進するためについて
引用文献の日本は,火山列島であり,国内には多数の温泉地や熱水地がある。加えて,外国の温泉地と異なり,日本の温泉地は観光や湯治場などとしての地域開発が行われており,交通インフラ,住居インフラなどが整っていることが多い。温泉地では,当然ながら多くの温水,熱水などが存在しており,多くの湯気がそこかしこから昇っている状況を目の当たりにできる。日本においては,これらの熱源を無駄にしている問題がある。温水,熱水,熱水蒸気は,発電には十分な熱源であり,発電に用いないことは,資源の無駄といえる。(【0009】)という記載から,引用発
明は,日本の温泉地の熱源を活用する地熱発電に関するものであるといえる。
そして,引用文献のまた,装置が大型とならず,発電に使用した熱水を温泉として再利用できることで,源泉の規模や温泉権利者の規模などにフレキシブルに対応した熱水蒸気発電装置が実現できる。結果として,種々の規制や権利処理に関らず,地熱発電の普及が実現される。(【0023】)という記載から,引用発明は,温泉の熱水を利用した地熱発電の普及に関するものであるといえる。
したがって,引用発明の地熱発電の普及が実現されるためは,日本の地熱エネルギを利用する地熱発電の普及を促進するためであるから,本
願発明の
我国地熱エネルギ活用の地熱発電を促進するため
に相当する。

本願発明の地熱発電発電反対を抑止する目的のためについて
引用文献の

(1)温泉取得権利者の利便を損なわないこと。

(【0
018】),

温泉地においても,源泉の権利者への不具合を生じさせないで,熱水蒸気発電装置1が設置される。

(【0152】)という記載から,引用発明は温泉権利者への不具合を生じさせないものであるといえ
る。
また,引用文献の

発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できるので,温泉利用設備30の所有者にとっても,熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションが高くなる。

(【0153】)という記載及び

いずれの場合であっても,温泉利用設備30にとっては,熱水蒸気発電装置1を設置する高いモチベーションを有することになる。

(【0155】)という記載から,引用発明は,温泉利用設備30の所有者が熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くするものであるといえる。
このように,温泉権利者への不具合を生じさせず,熱水蒸気発電装置1
を設置するモチベーションを高くすることは,源泉の権利者にとってデメリットをなくしメリットを与えることであるから,これにより地熱発電反対が当然に抑止されることになる。
したがって,引用発明の源泉の権利者への不具合を生じさせず熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くするためは,本願発明の
地熱発電発電反対を抑止する目的のために相当する。

本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することについて引用文献の源泉40の権利者である温泉利用設備30は,温泉入浴に用いるために,源泉40を利用している状態であり,源泉を吸い上げる機構を既に設置済みである。この機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができる。(【0153】)という記載から分かるように,引用発明においては,源泉を吸い上げる機構を既に設置済みであるから,地熱発電専用の井戸を掘る必要がなく,温泉
利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,源泉からのお湯で発電することができる。

したがって,引用発明の温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができは,本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することに相当する。エ
本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しについて(ア)

引用文献の熱水蒸気発電装置1Aは,源泉40Aから吸い上げた混合熱水を,タービンを回転させる圧力として利用するだけであるので,熱水そのものを消費することはない。温水還流路6Aは,凝縮した水蒸気を含む温水を,温泉水として,温泉利用設備30Aに還流できる(送出できる)。温水還流路6Aから還流される温水は,温泉水としての変質はしていない。このため,温泉利用設備30Aにおいては,通常の温泉水と同様に利用が可能である。もちろん,衛生管理や衛生処理などの付加的な処理は,温泉利用設備30Aにおいて行われれば良い。(【0

150】)という記載から,引用発明は,混合熱水を,タービンを回転する圧力として利用するものであるといえる。
そして,タービンにおいて,熱水と水蒸気が混合した混合熱水は断熱膨張するところ,気体が断熱膨張するときに気体の温度が下がることは技術常識である(乙1,2)。

また,前記

温水還流路6Aは,凝縮した水蒸気を含む温水を,温泉水として,温泉利用設備30Aに還流できる(送出できる)。

(【0150】)という記載から,温度が低下した温水を,即ち,発電に使用した熱水を,温泉水として温泉業者に提供することも記載されているといえる。そして,温泉利用設備において,通常,温泉水は専ら浴用に利
用されるものであり,

このため,温泉利用設備30Aにおいては,通常の温泉水と同様に利用が可能である。

(【0150】)という記載
から,温泉利用設備30Aにおいては,入浴に適した温度も含む温泉水が提供されると理解される。
したがって,引用発明の発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できは,本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しに相当する。
(イ)

原告は,引用発明にいう水蒸気の液化が温度低下の意味でない

ことは明らかであると主張するが,引用文献に冷水循環路11による水蒸気の急激な冷却によって,水蒸気が復水器10で液化する(【0099】)と記載されるように,引用文献に示される熱水蒸気発電装置1の復水器10は,内部で水蒸気が急激に冷却されるように構成されたものであるから,復水器内の水蒸気は液化されるだけでなく,さらに冷却されるものであるといえる。
また,仮に,原告が主張するように,引用文献に示される復水器10は,水蒸気を液化させるためだけのものであり,更に冷却されるもので
はないとしても,引用文献の

復水器10の内部は,真空に近い圧力にまで低下する。

(【0099】)との記載から,以下のとおり,そのときの凝縮温度は,
100℃よりも低い温度であることは明らかである。
水の沸点(水の蒸気圧が外圧(周囲の圧力)と等しくなる点)は,1気圧においては100℃であるが,外圧(周囲の圧力)が低くなるほど
低い温度になり(低い温度で沸騰する。),水の飽和蒸気圧は30℃において0.04186atm(気圧),40℃において0.0728気圧,50℃において0.1217気圧,60℃において0.1966気圧,100℃において1気圧である(乙5)。
前記のように,引用発明においては,復水器の内部は真空に近い圧力であるから,水蒸気が凝縮する温度は100℃よりも低い温度であり,例えば真空に近い圧力が0.04186気圧であれば,復水器
の内部の水蒸気は30℃で凝縮し,0.0728気圧であれば,復水器の内部の水蒸気は40℃で凝縮し,0.1217気圧であれば,復水器の内部の水蒸気は50℃で凝縮し,0.1966気圧であれば,復水器の内部の水蒸気は60℃で凝縮する。復水器の圧力は,真空710mmHg(大気圧よりも710mmHg低い圧力という意味。0.0657
8気圧相当)ないし真空730mmHg(0.03947気圧相当)程度にされるのが普通であるとされているところ(乙6),0.06578気圧は40℃のときの飽和蒸気圧(0.0728気圧)に近く,0.03947気圧は30℃のときの飽和蒸気圧(0.04186気圧)に近いから,引用発明における真空に近い圧力が復水器の圧力として
普通とされる真空710~730mmHg程度であれば,水蒸気の凝縮温度は,約40℃ないし約30℃であるといえる。
したがって,引用発明における水蒸気の液化は,温度低下の意味
をも表すものであるから,原告の主張は理由がない。

本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えることについて前記エのとおり,引用発明において,源泉の温度は発電により低下するから,温泉業者の源泉低温化のコストは不要になるといえる。
また,前記イのとおり,引用発明において,熱水蒸気発電装置1Bで発電された電力を温泉利用設備30Bで使用することができ,

場合によっては売電も可能である。

(【0153】)から,温泉業者にメリットを与えることができる。
したがって,引用発明の温泉利用設備30の所有者にとっても利益になりは,本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えるに相当する。

本願発明の五つの組み合わせについて

前記ウないしオのとおり,引用発明の温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができは,本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することに相当し,
引用発明の
発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用でき

は,本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しに相当し,引用発明の温泉利用設備30の所有者にとっても利益になりは,本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えるに相当するから,引用発明は,本願発明の五つの組み合わせに相当する事項を備え
ているといえる。

本願発明の温泉業界の地熱発電反対を抑止し,地熱発電を促進し,我国地熱エネルギ活用を増大し得ることについて前記イと同様に,引用発明の源泉の権利者への不具合を生じさせず温泉利用設備30の所有者にとって熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くしは,本願発明の温泉業界の地熱発電反対を抑止しに相当する。
また,前記アと同様に,引用発明の熱水蒸気発電装置1の普及を進みやすくする,地熱発電の普及が実現される方法は,本願発明の我国地熱エネルギ活用を増大し得る我国地熱発電促進方法に相当する。
(2)

小括
前記(1)のとおり,引用発明と本願発明には相違点はない。
したがって,
本願発明が特許法29条1項3号に該当し,
新規性を欠くと

した本件審決の判断に誤りはない。
第4
1
当裁判所の判断
明細書の記載事項について

(1)

本願の願書に添付した明細書及び図面(以下本願明細書等という。甲
4,乙7)には,別紙1のような記載がある。


前記⑴の記載事項によれば,本願明細書等には,次のような開示があることが認められる。
日本には火山が110箇所あり,世界の1割を占め,しかも地熱源が都会
に近いという世界でも稀な地熱発電最適国であるが,温泉業界が源が減ることを心配して,地熱発電に反対してきた(【0003】)。
本発明は上記課題を解決するためにされたもので,地熱発電用の井戸を掘らず,温泉の源泉からのお湯の熱で発電し,これにより源泉の温度を下げ温泉に適する温度に下げるという構成を採用した(【0004】)。
本発明により,地熱用の井戸を新たに掘削する必要がないのでローコストで発電でき,源泉の冷却をタダ又は利益を得てできる上,源泉も減らないので地熱発電に反対している温泉業者が反対しないどころか喜んで協力し,したがって,我が国の地熱エネルギをフルに有効利用して源泉エネルギを得ることができ一石四鳥の大きな効果がある(【0005】)。

2
引用発明について
(1)

引用文献の記載事項について
引用文献(甲1)には,別紙2のような記載がある。

(2)
前記(1)によれば,引用文献には,次のような開示があることが認められ
る。

現在の我が国では,再生可能エネルギーによる発電装置の普及が急務である(【0139】)。
火山列島である日本には多数の温泉地があり,温泉地に多く存在する温水,熱水,熱水蒸気を熱源として発電に用いないことは,資源の無駄とい
える(【0009】)。

従来技術における地熱発電装置は,温泉地などで地中から抽出した熱水
を,気体である水蒸気と液体である熱水とに分離して,水蒸気を用いてタービンを回して発電を行なうもので,分離された液体は,地中に還元されるだけであり,有効活用されていないし,大型のものとして設置されなければコスト対効果によってメリットが生じないところ(【0014】),温泉地では,大型の地熱発電装置を設置することは,温泉として利用する
利用者との間の利害調整が難しいことから,熱水取得の権利処理などの問題もあり困難である(【0015】)。
このような状況において,温泉地において,次の①~④の条件を満たす地熱発電装置が求められていたことから,本発明は,これらの条件を満たしつつ,十分な発電を実現できる熱水蒸気発電装置を提供することを
目的としている(【0017】~【0019】)。
①温泉取得権利者の利便を損なわないこと。
②大規模な施工や大規模な投資を必要とせず,設置場所に応じたフレキシブルな規模の設置が可能であること。
③得られる熱水が,発電のみならず温泉入浴やその他の用途にも流用で
きること。
④コスト対効果の高い発電を実現できること。

上記のような課題に鑑み,本発明の熱水蒸気発電装置は,源泉からの熱水であって熱水と水蒸気が混合した混合熱水を供給する混合熱水管路と,混合熱水によって回転する混合熱水タービンと,混合熱水タービン
を経由して得られる水蒸気によって回転する水蒸気タービンと,混合熱水タービンおよび水蒸気タービンの少なくとも一方の回転によって電力を生じさせるローターと,混合熱水タービンおよび水蒸気タービンの少なくとも一方を経由した熱水および水蒸気の少なくとも一方を,温水として還流させる温水還流路と,を備える(【0020】)。


したがって,本発明の熱水蒸気発電装置は小型とできるので,既に
温泉用として使用されている源泉にも設置が容易であり【0021】,(

源泉の循環路の途中に設置するだけで,発電と温泉との両方に利用できるため,温泉利用権利者の利便性を損なうことも無く(【0022】),また,装置が大型とならず,発電に使用した熱水を温泉として再利用できることで,源泉の規模や温泉権利者の規模などにフレキシブルに対応した熱
水蒸気発電装置が実現できる結果,種々の規制や権利処理に関らず,地熱発電の普及が実現される(【0023】)。

実施の形態1(【0064】~【0139】,図2,図3)における熱水蒸気発電装置1は,地中の源泉に最終的に接続された混合熱水管路2から供給される熱水と水蒸気からなる混合熱水により混合熱水タービン3を,混合熱水に含まれる水蒸気により水蒸気タービン4を回転させることで発電し,温水還流路6は,少なくともいずれか一方のタービンを経由し,発電に使用された熱水及び水蒸気を温水として還流させるので,発電によって使用された混合熱水は,再び温泉設備などの用途に有効活用される。

気液分離やフラッシャーを必要としないので,小型化・低コスト化を実現でき,使用後の熱水や温水(水蒸気を凝縮して得られる温水も含む)を還流して再利用できるので,温泉の利権などの問題を生じさせにくい。これらが合わさって,従来技術の大掛かりな地熱発電と異なり,普及が容易となる(【0139】)。


実施の形態2(【0143】~【0156】,図4)は,源泉の権利者である温泉利用設備に入浴用の温泉として源泉40A,40Bが利用されている状態であり(【0146】),既に設置済みの源泉を吸い上げる機構に
実施の形態1
における熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,

自らが使用する電力をまかなうことができ,温泉地においても,源泉の権利者への不具合を生じさせないで,
熱水蒸気発電装置1が設置される【0


152】)。場合によっては売電も可能である。その上で,発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できるので,温泉利用設備30A,30Bの所有者にとっても利益になるとともに,熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションが高くなり(【0153】),熱水蒸気発電装置1の普及が進みやすくなる(【0155】)。

(3)

引用発明の認定
(2)に認定したところによれば,
引用文献から,
本件審決が認定したとおり

の引用発明を認定することができる。
3
取消事由(本願発明の新規性の判断の誤り)について
(1)

本願発明と引用発明の相違点の認定の誤りについて


本願発明の我国地熱エネルギ活用の地熱発電を促進するためについて
引用文献の日本は,火山列島であり,国内には多数の温泉地や熱水地がある。…日本においては,これらの熱源を無駄にしている問題がある。温水,熱水,熱水蒸気は,発電には十分な熱源であり,発電に用いないことは,資源の無駄といえる。(【0009】),また,装置が大型とならず,発電に使用した熱水を温泉として再利用できることで,源泉の規模や温泉権利者の規模などにフレキシブルに対応した熱水蒸気発電装置が実現できる。結果として,種々の規制や権利処理に関らず,地熱発電の普及が実現される。(【0023】)という記載から,引用発明は,温
泉の熱水を利用した地熱発電の普及に関するものである。
したがって,引用発明の地熱発電の普及が実現されるためは,日本の地熱エネルギを利用する地熱発電の普及を促進するためであるから,本願発明の
我国地熱エネルギ活用の地熱発電を促進するため
に相当する。

本願発明の地熱発電発電反対を抑止する目的のためについて
引用発明は,引用文献の

(1)温泉取得権利者の利便を損なわないこと。

(【0018】)という記載のとおり,温泉権利者への不具合を生じさせないものであり,

発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できるので,温泉利用設備30の所有者にとっても,熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションが高くなる。

(【0153】),

いずれの場合であっても,温泉利用設備30にとっては,熱水蒸気発電装置1を設置する高いモチベーションを有することになる。

(【0155】)
という記載のとおり,温泉利用設備30の所有者が熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くするものであるから,引用発明により地熱発電反対は抑止されることになる。
したがって,引用発明の源泉の権利者への不具合を生じさせず熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くするためは,本願発明の地熱発電発電反対を抑止する目的のために相当する。

本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することについて
(ア)

引用文献の源泉40の権利者である温泉利用設備30は,温泉入浴に用いるために,源泉40を利用している状態であり,源泉を吸い上げる機構を既に設置済みである。この機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができる。(【0153】)という記載から,引用発明においては,既に設置済みの温泉利用設備30を利用することができるので,地熱発電専用の井戸を掘る必要がなく,温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,源泉からのお湯で発電することができるものといえる。
したがって,引用発明の温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができは,本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することに相当する。
(イ)

原告は,引用発明には,本願発明の新たに井戸を掘らないとい

う発想も,具体的な記載も全くないから,本願発明では地熱発電用の井戸を掘らないのに対し,引用発明では地熱発電用の井戸を掘るという相違点を認定しなかった本件審決は誤りであると主張する。

しかし,引用文献の

もちろん,発電装置は小型とできるので,既に温泉用として使用されている源泉に設置が容易である。【0021】,



このため,既に温泉用として利用されている源泉の循環路の途中に,本発明の熱水蒸気発電装置を設置するだけで,発電と温泉との両方に利用できる。

(【0022】),源泉40の権利者である温泉利用設備30は,温泉入浴に用いるために,源泉40を利用している状態であり,源泉を吸い上げる機構を既に設置済みである。この機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができる。(【0153】)との記載から,引用発明は,従来技術では,熱水などの地熱貯留層に蒸気井がボーリングされていた【0054】(


のと異なり,既に温泉用として利用されている源泉を利用することができ,その場合に井戸を掘ることが必要ないことは明らかであるから,原告の主張は採用できない。

本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供し,について(ア)a

本願発明は,第三に発電により源泉の温度を下げ,として,

単に源泉と規定し,それ以上に源泉の内容を特定するものではな
いから,引用発明の熱水及びこれに伴って存在する水蒸気も,
本願発明の源泉に相当する。
そして,引用発明においては,隔壁7は,図3に示される丸型の開口部71を有しており,この開口部71が,混合熱水タービン3と水蒸気タービン4とを連通させている。混合熱水タービン3を回転させた混合熱水の内,熱水は,混合熱水タービン3の回転に合わせて,混合熱水タービン3の下にある熱水容器8に落ちる。…(【0069】),一方,混合熱水タービン3を回転させた混合熱水に含まれる水蒸気は,混合熱水タービン3の羽根の回転にのみ従うものではないので,開口部71を通じて,水蒸気タービン4に到達する。…蒸気管路9内部に到達した水蒸気が,水蒸気タービン4を回転させるようになる。(【0070】),

水蒸気タービン4は,導かれた水蒸気によって回転する。水蒸気タービン4は,混合熱水タービン3と同様に,回転をローター5に伝達する。

(【0072】),

ローター5は,混合熱水タービン3および水蒸気タービン4の少なくとも一方の回転に基づいて,電力を発生する。

(【0073】)とあるように,源泉から吸い上げられた混合熱水が混合熱水タービン3を回転させ,さらに,混合熱水から分離された水蒸気により水蒸気ター

ビン4を回転させることで発電する。
乙第1号証(基本蒸気タービン第2版,海文堂出版,昭和55年3月20日発行)には,蒸気がタービン内部のノズル通過中に膨張する際,タービン車室を外部から完全に保温材で包むことにより外部から蒸気を加熱することもなく,また外部へ熱が逃げることもないものと仮定すると,この場合には蒸気は断熱膨張することになる。すなわち,蒸気がタービン内部を流動する時は,蒸気圧は入口で高く,出口で低くなる。これは蒸気がノズルや羽根を流動中しだいに断熱膨張するためで,蒸気圧の低下とともに容積が増加し,膨張中に蒸気のなす仕事は,先だつ蒸気を前方へ推し進めるのに費やされ,このため,蒸気速度は先へゆくほどしだいに増加する。(30頁26行目~31頁3行目),断熱膨張によりなされる蒸気の仕事は,まったく蒸気自身の保有する熱量の消費によってなされるのであるから,圧力が降下するにしたがい蒸気の保有熱量はしだいに減少し,その結果温度も降下するとともに状態によっては一部が液化する。(32頁下から10行目~下から8行目)と記載され,蒸気タービンにおいて蒸気の仕事により蒸気の熱量が消費され,その温度が低下することが示され
ており,これは技術常識であるといえる。
そうすると,引用発明では,発電のために水蒸気により水蒸気タービン4を回転させる過程において,水蒸気の内部エネルギーが失われて水蒸気の温度は下がるものと認められる。
b
また,引用発明においては,水蒸気タービン4は,蒸気管路9の内部に設けられる。隔壁7の開口部71を通じて蒸気管路9に到達した水蒸気は,上述の通り,一定の噴射圧力を有している。これに,加えて,蒸気管路9に接続する復水器10には,冷水循環路11が備わっており,この冷水循環路11による水蒸気の急激な冷却によって,水蒸気が復水器10で液化する。水蒸気が,気体から液体に急速に物理変化することにより,蒸気管路9の入り口(水蒸気タービン4の周辺)と蒸気管路9の出口(復水器10に近接する領域)との圧力差が生じる。すなわち,蒸気管路9の入り口での圧力が高く,蒸気管路9の出口での圧力が低い状態となる。場合によっては,復水器10の内部は,真空に近い圧力にまで低下する。(【0099】),この圧力差によって,開口部71を通じて蒸気管路9に到達した水蒸気は,強い圧力および速度で,蒸気管路9内部を移動するようになる。この圧力および速度を有する水蒸気が,水蒸気タービン4を回転させるようになる。(【0100】)とされているから,水蒸気タービンを
回転させた水蒸気を,復水器10で急速に液化させ,これにより蒸気管路9の入り口(水蒸気タービン4の周辺)と出口(復水器10に近
接する領域)との圧力差を生じさせ,水蒸気がより強い圧力及び速度で水蒸気タービン4を回転するようにしているものと認められる。そして,引用文献によれば,

場合によっては,復水器10の内部は,真空に近い圧力にまで低下する。

(【0099】)とされているところ,
乙第6号証
(熱機関体系

第8巻

蒸気原動機I,
山海堂,

昭和32年5月30日発行)284頁21行目~25行目によれば,復水器の圧力は真空710mmHg(0.06578気圧相当)ないし真空730mmHg(0.03947気圧相当)程度にされるのが普通であると認められる。
さらに,乙第5号証(理化学辞典(第5版),岩波書店,2012
年12月5日第5版第12刷発行)の水蒸気の項(686頁)に
よれば,
水の沸点
(水の蒸気圧が外圧
(周囲の圧力)
と等しくなる点)
は,1気圧においては100℃であるが,外圧(周囲の圧力)が低くなるほど低い温度になり(低い温度で沸騰する。),水の飽和蒸気圧は,30℃において0.04186気圧,40℃において0.072
8atm気圧であるとされている。
したがって,
引用文献
【0099】
にいう真空に近い圧力が真空730mmHg(0.03947気
圧相当)であれば,復水器10の内部の水蒸気は30℃に近い温度で凝縮し,真空710mmHg(0.06578気圧相当)であれば,40℃に近い温度で凝縮することになる。

そうすると,引用発明では,発電のために蒸気管路9の入り口と蒸気管路9の出口との圧力差を生じさせる過程においても,水蒸気
が復水器で凝縮する際に温度は下がるものと認められる。
c
本願発明の特許請求の範囲における入浴に適する温度について
は具体的な温度が特定されているわけではない。本願明細書等においては,従来技術に関して枝を垂れ落ちる14間に温度が下がり,溜温15の温度は42℃程度の人が入れる温度になるので(【0007】)との記載,第1実施例に関して

配管18から出射された熱水はガス発生部21を加熱するので温度が下がり42℃程度となり,人が浸かれる温度まで下がるので,温泉7として利用することができる。

(【0011】)との記載があるが,入浴に適する温度とするの

源泉4の温度は80~100℃なので,このままでは熱くて人が入れない。

(【0007】)ということとの関係での相対的なものであり,42℃程度に限定されるとは解されない。
一方,引用発明では,明細書の…混合熱水タービンおよび水蒸気タービンの少なくとも一方を経由した熱水および水蒸気の少なくとも一方を,温水として還流させる温水還流路と,…(【0020】),
温水還流路6は,混合熱水タービン3および水蒸気タービンの少なくとも一方を経由した熱水および水蒸気の少なくとも一方を,温水として還流させる。この結果,発電に使用された混合熱水は,再び温泉設備などの用途に有効活用される。(【0074】),また,発電に用いた混合熱水は,温水として還元できそのまま温泉設備などに用いることも可能なので,温泉取得権利などの権利処理も容易となる。発電後に温水が温泉設備に再利用できるので,温泉設備用に利用される源泉にも,実施の形態1の熱水蒸気発電装置1が設置できるからである。(【0076】),混合熱水タービン3を回転させた混合熱水は,その混合熱水が含む液体(熱水)は,隔壁7と周囲の部材とによって,混合熱水タービン3の下に設けられる熱水容器8に導かれる。熱水容器8は,混合熱水タービン3を回転させた熱水を一時的に収容する容器であり,熱水容器8は,貯留容器12に収容した熱水を移動させて,最終的に,温水還流路6を通じて,温水を還流させる。(【0095】),貯留容器12は,復水器10で凝縮されて得られた温水を貯留する。また,仕様に応じて,熱水容器8に収容されている熱水も貯留する。すなわち,貯留容器12は,混合熱水タービン3および水蒸気タービン4のそれぞれで発電に用いられた熱水を温水として回収する。混合熱水タービン3および水蒸気タービン4の回転を行った後の熱水は,温水として,外部に放出する必要があるからである。(【0128】),貯留容器12は,温水還流路6と接続されている。温水還流路6は,貯留容器12に貯留される温水を,還流できる。なお,貯留容器12や温水還流路6で定義される温水は,いわゆる熱水溜まりから得られる熱水と同一の定義で扱われる必要は無い。要は,貯留容器12や温水還流路6で扱われる温水は,混合熱水タービン3を回転させた後の熱水であったり,水蒸気タービン4を回転させた後に凝縮された温水であったりする。(【0134】)等の記載からすると,①復水器10で凝縮されて得られたものは温水として,混合熱水タービンを回転させた後に熱水容器8に収容さ
れる熱水とは区別され,②貯留容器12には熱水が貯留される場合,温水が貯留される場合,両者が混合して貯留される場合
もあり得,③熱水についても,最終的に,温水還流路6を通じて還流される際には温水となっていることが想定されているといえ
る。そして,この熱水と区別される温水は,その字義からし

ても,また,発電に用いた混合熱水は,温水として還元できそのまま温泉設備などに用いることも可能なので,(【0076】)との記載からしても,従来技術において

熱水そのものは,非常な高温であって他への流用が困難だからである。

(【0060】)とされていた熱水とは異なり,そのまま温泉設備などに用いることが可能

な,入浴に適する温度で温泉業者に提供されるものも含まれるものと当業者は理解すると解される。

d
以上によれば,引用発明の発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できは,本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しに相当する。

(イ)a

原告は,タービンとは各種の流体の持っているエネルギーを

有用な機械的動力に変換する回転式の原動機の総称であり,水車等も含まれるものであり,流体の流れがあればその流れの力によってローター等を回転させることができ,断熱膨張が必須であるとはいえず,引用文献には断熱膨張という記載はないから,引用発明は発電のために水蒸気により水蒸気タービン4を回転させる過程において,源泉の温度を下げるものではないと主張する。
確かに,インターネット辞書検索コトバンクによりタービンを
検索すると,例えばブリタニカ国際大百科事典では各種の流体のもっているエネルギーを有用な機械的動力に変換する回転式の原動機の総称とされ,圧縮空気の圧力を利用する空気タービン,水流の落差を利用する水力タービン(水車),高温高圧蒸気を利用する蒸気タービンなどが含まれるとされるが(甲14),引用発明における水蒸気タービン4がこのうち蒸気タービンであることは明らかである。そして,蒸気タービンにおいて断熱膨張の際,蒸気の温度が下がる
ことは前記(ア)aのとおりである。もっとも,理想的な意味での断熱膨張が成立するのは,タービン室を保温材で包むなどして外部から蒸気を全く加熱しないようにし,かつ,外部へ熱が全く逃げることがないようにした場合に限られるが
(乙1・30頁)引用発明の

水蒸気タービン4において外部・内部間の熱の移動を想定した記載は
なく,膨張中に蒸気のなす仕事は,先だつ蒸気を前方に推し進めるのに費やされることで蒸気タービンの機能が十分に発揮できること
からすると,引用発明の水蒸気タービン4は,少なくとも近似的
には断熱膨張がされるものであり,その際に水蒸気自身の保有す
る内部エネルギーの消費がされ,水蒸気の温度は低下すると解さ
れる。
b
原告は,飽和水蒸気圧は,閉鎖空間に閉じ込めた水蒸気が平衡状態になった際の圧力を示すものであるところ,引用発明において,水蒸気と熱水が平衡状態に達するまで復水器10に閉じ込めておく構成になっていることは立証されておらず,引用発明では水蒸気は次々に連続的に復水器10に流入し,復水器10で凝縮した熱水は順次連続的に貯留容器12に送られる構成であるとみるべきであり,そのよう
な非平衡系の復水器に乙第5号証記載のデータを適用することはできず,引用発明における復水器10の圧力が被告の主張する真空710~730mmHg程度であったとしても,水蒸気の凝縮温度が約40℃ないし約30℃であるとはいえないと主張する。
しかし,引用発明は,復水器10における水蒸気の凝縮により蒸気
管路9の入り口と蒸気管路9の出口との圧力差を生じさせ,水蒸気タービン4の回転効率を上げるものであるから,水蒸気は少なくとも近似的には復水器内で平衡状態になっているものとみるべきであり,通常の復水器を用いた場合に,水蒸気の凝縮温度が40℃ないし30℃程度であると認めるに妨げない。

c
原告は,引用発明において混合熱水の温度が下がることが証明できるとしても,どの程度の温度まで下がるかを証明するものではなく,まして,本願発明のように入浴に適する温度であることを証明す
るものではないと主張する。

しかし,前記(ア)cのとおり,引用発明においては,混合熱水タービン3を回転させた後に熱水容器に一時的に収容される熱水と,

復水器10で凝縮されて得られる温水を区別しており,また,貯
留容器12には熱水と温水が混合して貯留される場合もあり
得るところ,この場合は熱水の温度は下がるものであり,
熱水
のみを貯留容器12に貯留する場合についても,最終的に,温水還流路6を通じて還流される際には温水となっていることが想定され

ているのであって,本願発明の第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しに対応する構成は引用発明において開示されているといえる。
d
以上によれば,原告の前記各主張はいずれも採用できない。本件においては,確かに,原告主張のとおり,引用文献には,源泉の温度を
入浴に適する温度に下げることが明記されているわけではないが,引用発明がそもそも発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できる方法であることを念頭に置けば,引用文献における記載には,入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供する方法も含まれており,当業者はその旨十分に理解できるものと解されることは,
既に判示したとおりである。

本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えることについて引用発明では,
前記エのとおり,
源泉の温度は発電により低下するから,

温泉業者の源泉低温化のコストを不要にすることも可能といえる。これに加えて,引用発明では,

…この機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができる。場合によっては売電も可能である。

(【0153】)とされているから,温泉業者にメリットを与えることができる。

したがって,引用発明の温泉利用設備30の所有者にとっても利益になりは,本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えるに相当する。カ
本願発明の五つの組み合わせについて
前記ウないしオのとおり,引用発明の温泉利用設備30用の源泉を吸い上げる機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができは,本願発明の第一に地熱発電用の井戸を掘らないこと,第二に既存の温泉の源泉からのお湯で発電することに相当し,
引用発明の
発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用でき
は,本願発明の第三に発電により源泉の温度を下げ,第四に入浴に適する温度に下げた温泉を温泉業者に提供しに相当し,引用発明の温泉利用設備30の所有者にとっても利益になりは,本願発明の第五に温泉業者の源泉低温化のコストを不用にしてメリットを与えるに相当するから,引用発明は,本願発明の五つの組み合わせに相当する事項を備えているものと認められる。

本願発明の温泉業界の地熱発電反対を抑止し,地熱発電を促進し,我国地熱エネルギ活用を増大し得ることについて
引用発明の源泉の権利者への不具合を生じさせず温泉利用設備30の所有者にとって熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションを高くしが,本願発明の温泉業界の地熱発電反対を抑止しに相当することは前記イと同様である。
また,引用発明の熱水蒸気発電装置1の普及を進みやすくする,地熱発電の普及が実現される方法が,本願発明の我国地熱エネルギ活用を増大し得る我国地熱発電促進方法に相当することは前記アと同様である。
(2)
小括
前記(1)に説示したとおり,
本願発明と引用発明は一致し,
相違点はないか

ら,本件審決の本願発明と引用発明の相違点の認定(相違点は存在しないと
したこと)に誤りはない。
よって,本願発明は新規性を欠くとした本件審決の判断に誤りはない。4
結論
以上によれば,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決について取り消
されるべき違法は認められない。
したがって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官
菅野雅之本吉弘行岡山忠広
裁判官

裁判官

(別紙1)
1
【技術分野】
【0001】
本発明は地熱を利用した温泉地熱発電に関する。
【背景技術】

【0002】
地熱エネルギがある処を削井して熱エネルギをとり,発電する地熱発電は我が国では進んでいない。
2
【発明が解決しようとする課題】
【0003】

日本は世界有数の地熱エネルギがある国である。日本には火山が110箇所あり,世界の1割を占め,しかも地熱源が都会に近いという世界でも稀な地熱発電最適国なのだが,
温泉業界が源が減ることを心配して,
地熱発電に反対してきた。
従って,日本に地熱源があるのに,地熱発電が少ないという潜在エネルギを無駄にしてきた。

本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり,温泉業界の反対を受けず喜んで地熱発電に協力する発明なので,我が国の潜在エネルギを活用できる画期的な発明である。
3
【課題を解決するための手段】
【0004】

前記した課題を解決する本発明は,地熱発電用の井戸を掘らず,温泉の源泉からのお湯の熱で発電し,これにより源泉の温度を下げ温泉に適する温度に下げるという一石四鳥の発明である。
4
【発明の効果】
【0005】
本発明により,地熱用の井戸を新たに掘削する必用がないのでローコストで発
電でき,源泉の冷却をタダ又は利益を得てできる上,源泉も減らないので地熱発電に反対している温泉業者が反対しないどころか喜んで協力し,従って我が国の地熱エネルギをフルに有効利用して源泉エネルギを得ることができ一石四鳥の大きな効果がある。
図1は現在の温泉と地熱発電の関連を示す図である。図において,4は源泉で
ある。
1はマグマ,
2は地球の中の地下水,
3は地球の亀裂,
6は源泉冷却装置,
5は配管,7は温泉,8は地熱発電用井戸,9は蒸気タービン,10は発電機,11は発生された電力である。
【0006】
従って,温泉と地熱発電は同じ泉源を使用するので,地熱発電で源泉が減らさ
れ,温泉運営に支障を来すとして温泉業者が地熱発電を歓迎しないため,日本には世界有数の地熱エネルギがあるのに利用されてこなかった。
【0007】
図2は現在の温泉システムである。源泉4の温度は80~100℃なので,このままでは熱くて人が入れない。そこで,冷却装置6として湯の中に冷体を浸け
て温度を下げたり,枝の沢山ある笹竹13の上まで熱湯をパイプ12で導き笹竹13に降り注ぐと,枝を垂れ落ちる14間に温度が下がり,溜温15の温度は42℃程度の人が入れる温度になるので,これをパイプ16を通じて温泉部7に導く方法をとっている。
5
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3は本発明の第1実施例を示す図である。図において,4は源泉であり,80~100℃の温度である。18は源泉からの熱水を蒸気発生器19へ導く配管である。蒸気発生器19のヒーター管20により釜21の中の水22が蒸気23
となり高圧となって,パイプ24によりタービン25に送られ,タービン25を回転させる。

タービン25のシャフト26により結合された発電機27を回転させ,電力28を発生する。29は復水器で,水は窯21に戻る。
【0010】
源泉4の温度はヒータ20で温度が下がり,
パイプ16で温泉7に供給される。
本発明第2の実施例として源泉温度が82℃等と低い場合は水22の代わりにフレオン等沸点の低いものを用いる。気化したフレオンガス23は配管24を介してタービン25に送られ回転する。このタービン25の回転力は回転軸26を介して発電機27に与えられ,発電機のロータ(図示せず)を回転させ,発電機のロータが回転すると,発電機27で交流電圧を発生させる。該発電機27は
交流電源28として所定の負荷に送り,負荷を駆動することになるのは,第1実施例で述べたと同様である。
【0011】
このような一連の動作の中で,タービン25からの蒸気は復水器29に入り,配管30を介してガス発生部21に液体状22で戻され循環して使用される。配
管18から出射された熱水はガス発生部21を加熱するので温度が下がり42℃程度となり,人が浸かれる温度まで下がるので,温泉7として利用することができる。
【0012】
図4は本発明第3の実施例である。源泉4からの熱湯をヒーター管32(形状
は加熱効率を最大にするように曲管としてもよい)に導き,熱電素子33を加熱する。熱電素子33は熱を加えると,発電することは公知である。これを所定の電圧,電流を得るように直列又は並列に結合34して電力28を得る。第1と第2実施例は,タービンを使用する動的且つ大型,中型発電であり,第3実施例は熱電素子を使用するソリッドステートの静的且つ無音の小型発電であり,それぞ
れに適している温泉に使用する実施例である。
【0013】

第4の実施例では,前記の電気エネルギ以外のエネルギ,例えば熱エネルギとして地上式暖房や各種エネルギ用熱源と上記の温泉として使用する本発明である。従来の温泉では,源泉を冷やすのに,熱を外に捨てていた。本発明では,熱エネルギを発電機用やその他のエネルギに用いるので,地熱活用により,温泉地の収益となるので,温泉業者が地熱発電に反対しないので国家の地熱エネルギを
有効に活用できる。
6
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は温泉業者の反対が起こらず,また地熱発電のため新たな井戸を掘らな
くても温泉の源泉を用いて発電することができるので,ローコストの発電ができるのみならず全国に点在する温泉を利用して発電などエネルギ供給することができ,その温泉近辺の温泉宿や民家の電力エネルギをまかなうことができるので,我が国の熱源泉を産業に活用できる産業上の利用可能性大である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

(別紙2)
1【技術分野】
【0001】
本発明は,温泉地や熱水の豊富な地域において,低コストかつ簡易な設置によって設置可能であり,熱水および水蒸気を有効活用して発電を行なう熱水蒸気発
電装置に関する。
2
【背景技術】
【0002】
近年の化石燃料(石油や天然ガス)の価格高騰,環境保護意識の高まりを背景に,化石燃料を用いた火力発電以外の発電装置の普及が求められている。特に,
再生可能エネルギーによる発電装置の普及が求められている。…
【0009】
日本は,火山列島であり,国内には多数の温泉地や熱水地がある。加えて,外国の温泉地と異なり,日本の温泉地は観光や湯治場などとしての地域開発が行われており,交通インフラ,住居インフラなどが整っていることが多い。温泉地で
は,当然ながら多くの温水,熱水などが存在しており,多くの湯気がそこかしこから昇っている状況を目の当たりにできる。日本においては,これらの熱源を無駄にしている問題がある。
温水,
熱水,
熱水蒸気は,
発電には十分な熱源であり,
発電に用いないことは,資源の無駄といえる。
3
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
…従来技術における地熱発電装置は,温泉地などで地中から抽出した熱水を,気体である水蒸気と液体である熱水とに分離して,水蒸気を用いてタービンを回して発電を行なう。
このとき,
分離された液体は,
地中に還元されるだけであり,

有効活用されていない。このような従来技術の地熱発電装置は,温泉地などで得られる熱水を,発電のためだけに用いるだけであり,温泉地において,地熱発電
のためだけに設置される必要がある。すなわち,大型の地熱発電装置として設置されなければ,コスト対効果や後述の権利処理の問題によって,メリットが生じない。
【0015】
一方で,温泉地では,温泉に用いる熱水取得の権利処理や開発許諾などの問題もあり,複雑な権利処理の必要性によって,大型の地熱発電装置を設置することが困難である。用地取得や温泉として利用する利用者との間の利害調整が難しくなるからである。あるいは,温泉旅館などの温泉取得権利者の少ない温泉地は,山奥であって地熱発電装置の設置に困難を有していることがある。あるいは,こ
のような温泉取得権利者の少ない温泉地は,国立公園の中にあり,種々の規制で地熱発電装置の設置が困難であることも少なくない。
【0016】
もちろん,温泉旅館や観光施設などのインフラが整備されている温泉地においても,温泉取得権利者の不測の不利益が生じない範囲で,湧出する熱水を利用す
ることは,当然に可能である。
【0017】
このような状況において,観光や生活としてのインフラの整備がなされている温泉地において,次のような条件を満たす地熱発電装置が求められていた。【0018】

(1)温泉取得権利者の利便を損なわないこと。
(2)大規模な施工や大規模な投資を必要とせず,設置場所に応じたフレキシブルな規模の設置が可能であること。
(3)得られる熱水が,発電のみならず温泉入浴やその他の用途にも流用できること。

(4)コスト対効果の高い発電を実現できること。
【0019】

本発明は,上記課題に鑑み,これらの条件(1)~(4)を満たしつつ,十分な発電を実現できる熱水蒸気発電装置を提供することを目的とする。4
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題に鑑み,本発明の熱水蒸気発電装置は,源泉からの熱水であって熱水
と水蒸気が混合した混合熱水を供給する混合熱水管路と,混合熱水によって回転する混合熱水タービンと,混合熱水タービンを経由して得られる水蒸気によって回転する水蒸気タービンと,混合熱水タービンおよび水蒸気タービンの少なくとも一方の回転によって電力を生じさせるローターと,混合熱水タービンおよび水蒸気タービンの少なくとも一方を経由した熱水および水蒸気の少なくとも一方
を,温水として還流させる温水還流路と,を備える。
5
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱水蒸気発電装置は,地中から得られる熱水を,気体と液体とに分離
することなく,熱水と水蒸気との混合熱水により回転する混合熱水タービンと,混合熱水タービンを経て得られる水蒸気により回転する水蒸気タービンとを,備えることで,熱水の気液分離を必要としない。気液分離を必要としないことで,フラッシャーやガス抽出装置も必要とせず,発電装置全体としての構成を簡略化できる。もちろん,発電装置は小型とできるので,既に温泉用として使用されて
いる源泉に設置が容易である。
【0022】
また,気液分離せずにタービンを回して発電できることで,タービン回転の使用が終わった熱水に対して種々の処理を施す必要がない。このため,熱水をそのまま温泉用として,還元することができ,源泉から得られた熱水が,発電のみな
らず温泉としても使用が可能であるメリットがある。このため,既に温泉用として利用されている源泉の循環路の途中に,本発明の熱水蒸気発電装置を設置する
だけで,発電と温泉との両方に利用できる。このため,温泉利用権利者の利便性を損なうことも無い。
【0023】
また,装置が大型とならず,発電に使用した熱水を温泉として再利用できることで,源泉の規模や温泉権利者の規模などにフレキシブルに対応した熱水蒸気発
電装置が実現できる。結果として,種々の規制や権利処理に関らず,地熱発電の普及が実現される。
6
【0052】
(実施の形態1)

【0053】
(従来の地熱発電)
まず,参考例として,従来の地熱発電装置について説明する。図1は,従来技術における地熱発電装置の模式図である。図1は,従来技術における地熱発電装置の模式図である。

【0054】
まず,熱水などの地熱貯留層に蒸気井がボーリングされる。この蒸気井が地熱貯留層に到達することで,地熱貯留層の熱水の自噴圧力を受けて,蒸気井は,熱水を取出すことができる。…
【0055】

蒸気井は,熱水を噴出させて,接続される二相流体輸送管に熱水を送出する。二相流体輸送管は,熱水を運搬する。このとき,地熱貯留層では,液体である熱水と気体である蒸気
(水蒸気や湯気を含む)
とを含んでおり,
二相流体輸送管は,
この液体と気体との混合した混合熱水を輸送する。…
【0056】

二相流体輸送管は,気水分離器に接続される。気水分離器は,混合熱水を液体と気体とに分離する。蒸気井は,地中の地熱貯留層という,極めて高温の熱水を
取出すので,この高温の熱水をタービン等に用いることは,タービンの耐久性などを考慮して問題がある。このため,従来技術の地熱発電装置では,気体である蒸気をタービンの回転に用いる。このため,地熱貯留層から得られた高温の混合熱水を,液体と気体とに分離する。気水分離器は,分離して得られた蒸気を一次蒸気管に送出し,液体をフラッシャーに送出する。
【0057】
一次蒸気管は,分離によって得られた蒸気をタービン発電機に送出する。蒸気は,噴出圧力を有しており,この噴出圧力によってタービンを回転させることができる。…

【0058】
フラッシャーは,気水分離によって分離された液体である熱水を,減圧膨張させて,蒸気を発生させる。この蒸気は,蒸気井から得られた蒸気ではなく,熱水を減圧膨張させて得られる二次的な蒸気である。熱水は,再び地中に還元させるので,タービン発電機に用いられない。この熱水を有効活用するため,フラッシ
ャーにて二次蒸気を発生させる。フラッシャーは,発生させた二次蒸気を,二次蒸気管に送出する。
【0059】
二次蒸気管は,一次蒸気管と同様に,二次蒸気をタービン発電機に運搬する。このとき,二次蒸気も所定の噴出圧力を有しており,この噴出圧力によって,タ
ービンが回転する。
このとき,タービンは,一次蒸気と二次蒸気とによって回転するので,より強い回転を生じさせる。もちろん,二次蒸気管は,二次蒸気の噴出圧力が弱い場合には,圧力を高める付与を行ってもよい。
【0060】

フラッシャーは,気水分離して得られた液体の熱水を,還元井によって地中に還元する。
熱水そのものは,
非常な高温であって他への流用が困難だからである。

【0061】
タービンを回転させた蒸気は,復水器で液化される。復水器は,冷却水などによる冷却機能を有しており,この冷却機能によって,蒸気を液化する。液化されて得られた水は,温水ポンプを通じて,冷却塔に送られ,復水器での冷却機能に再び用いられて,最終的には地中へ還元される。…
【0062】
以上のように,従来技術の地熱発電装置は,熱水の液体と蒸気を分離して,蒸気のみをタービンの回転に用いることが基本思想である。このため,種々の他の要素を必要としたり,大掛かりな装置となったりする。特に,熱水を還元させる
ことが前提であるので,温泉利用権利者との権利処理のため,温泉利用の源泉とは異なる地熱貯留層を利用する必要があり,コスト対効果を確保するためにも,地熱発電装置の設置場所が限定されたり,大型になったりする必要があった。【0063】
(全体概要)
従来技術を参考例とした上で,実施の形態1における熱水蒸気発電装置の全体
概要について説明する。
【0064】
図2は,本発明の実施の形態1における熱水蒸気発電装置の斜視図である。…図3は,図2で示される熱水蒸気発電装置1を側面から見た状態を示している。…
【0065】
混合熱水管路2は,源泉からの熱水であって熱水と水蒸気が混合した混合熱水を供給する。
このため,
混合熱水管路2は,
地中の源泉に最終的に接続しており,
地中の源泉からの混合熱水を,熱水蒸気発電装置1の本体部に供給する。図2に
示される矢印Aは,混合熱水管路2で供給される混合熱水の移動経路を示している。

【0066】
混合熱水タービン3は,混合熱水管路2から供給される混合熱水によって回転する。混合熱水管路2は,地中からの混合熱水の噴射圧力を有しているので,混合熱水管路2は,この噴射圧力をもって混合熱水を混合熱水タービン3に供給するので,混合熱水タービン3には,この噴射圧力が付与される。この噴射圧力によって,混合熱水タービン3は,回転する。混合熱水タービン3は,回転をローター5に伝達する。
【0067】
混合熱水タービン3と水蒸気タービン4との間には,隔壁7が備わっている。
この隔壁7は,混合熱水管路2から供給される混合熱水の内,混合熱水タービン3を回転させた熱水を,混合熱水タービン3の下に設置されている熱水容器8に導く。熱水容器8は,混合熱水タービン3の下に設置されているので,熱水は自然と熱水容器8に到達する。また,隔壁7は,混合熱水に含まれる水蒸気を,水蒸気タービン4に導く。

【0068】
…図3において,混合熱水タービン3と水蒸気タービン4との間を仕切るように,太線で枠囲いされている部分が隔壁7である。図2の斜視図からわかるように,隔壁7は,混合熱水タービン3の回転する領域(箱状部材で囲まれている)と,蒸気管路9との間を仕切っている。すなわち,水蒸気タービン4は,蒸気管
路9内部に存在する。
【0069】
隔壁7は,
図3に示される丸型の開口部71を有しており,
この開口部71が,
混合熱水タービン3と水蒸気タービン4とを連通させている。混合熱水タービン3を回転させた混合熱水の内,熱水は,混合熱水タービン3の回転に合わせて,
混合熱水タービン3の下にある熱水容器8に落ちる。…
【0070】

一方,混合熱水タービン3を回転させた混合熱水に含まれる水蒸気は,混合熱水タービン3の羽根の回転にのみ従うものではないので,開口部71を通じて,水蒸気タービン4に到達する。…蒸気管路9内部に到達した水蒸気が,水蒸気タービン4を回転させるようになる。
【0071】
このように,隔壁7が,混合熱水タービン3と水蒸気タービン4とを仕切ると共に,混合熱水の熱水と水蒸気とを分離する。
【0072】
水蒸気タービン4は,
導かれた水蒸気によって回転する。
水蒸気タービン4は,

混合熱水タービン3と同様に,回転をローター5に伝達する。
【0073】
ローター5は,混合熱水タービン3および水蒸気タービン4の少なくとも一方の回転に基づいて,電力を発生する。発生した電力は,ローター5に接続される電気線などによって,蓄電池や負荷に出力される。

【0074】
温水還流路6は,混合熱水タービン3および水蒸気タービンの少なくとも一方を経由した熱水および水蒸気の少なくとも一方を,温水として還流させる。この結果,
発電に使用された混合熱水は,
再び温泉設備などの用途に有効活用される。
もちろん,
温泉設備だけでなく,
温水を利用する設備や施設に還流されてもよい。

【0075】
このようにして,実施の形態1における熱水蒸気発電装置1は,熱水と水蒸気とを混合して含む混合熱水を用いて発電できる。混合熱水を,熱水と水蒸気に分離する必要がなく,水蒸気だけでなく熱水そのものもタービンの回転に用いることができる。このため,気液分離などの従来技術で必要であった要素を不要にで
きるので,熱水蒸気発電装置1の小型化,簡略化,低コスト化が実現できる。【0076】

また,発電に用いた混合熱水は,温水として還元できそのまま温泉設備などに用いることも可能なので,温泉取得権利などの権利処理も容易となる。発電後に温水が温泉設備に再利用できるので,温泉設備用に利用される源泉にも,実施の形態1の熱水蒸気発電装置1が設置できるからである。
【0077】
また,気液分離装置のみでなく,従来技術のフラッシャー,ガス抽出装置,冷却塔も不要にできるので,実施の形態1の熱水蒸気発電装置1は,更に小型化,簡略化,低コスト化が実現できる。このように,様々な要素を省略できる実施の形態1の熱水蒸気発電装置1は,従来技術の装置に比較して,非常に小型化でき
るので,この点からも,温泉地などの温泉取得権利の複雑な地域にも,設置が容易となる。特に,温泉地は,発電に必要となる熱水の供給と,住宅,温泉施設,観光施設などの発電された電気の需要との両方を有している。
【0078】
従来技術の地熱発電装置は,非常に大掛かりであったので,このような温泉地
に設置することは難しく,山間部や温泉地から離れた場所に設置する必要があった。この場合には,発電された電力の需要地と離隔していることで,送電コストや管理コストなどのデメリットも生じていた。
【0079】
実施の形態1の熱水蒸気発電装置は,上述の理由で,温泉地に点在する源泉の
それぞれに簡単に設置できる。すなわち,熱水の供給と電力の需要の両方がそろう温泉地に設置できる。この結果,送電コストや管理コストも低減するので,熱水蒸気発電装置1は,
普及が容易となる。
場合によっては,
発電会社のみでなく,
温泉施設の運営者が熱水蒸気発電装置1を設置して,管理することも可能である。この場合には,更に熱水蒸気発電装置1が普及しやすくなる。

【0081】
(混合熱水管路による混合熱水の供給)

混合熱水管路2は,地熱によって加熱された混合熱水を,地中の熱水溜まりから吸い上げる。例えば,混合熱水管路2の一端が熱水溜まりに接続しており,熱水たまりの自噴圧力によって,混合熱水管路2は,混合熱水を吸い上げる。もちろん,混合熱水管路2がそのまま熱水溜まりに接続するだけでなく,熱水溜まりに対してボーリングされたボーリング管と混合熱水管路2とが接続されることで,混合熱水管路2が,混合熱水を吸い上げて熱水蒸気発電装置1に供給することでも良い。
【0082】
また,混合熱水管路2は,熱水溜まりの自噴圧力によって熱水溜まりの混合熱
水を吸い上げるだけでなく,吸引ポンプなどの外部吸引圧力によって吸い上げても良い。…
【0086】
混合熱水管路2は,混合熱水を混合熱水タービン3に供給する。この混合熱水の供給によって,混合熱水管路2が供給の際に有している圧力を,混合熱水ター
ビン3に付与することができる。このため,例えば混合熱水管路2が熱水溜まりの自噴圧力によって,混合熱水を供給する場合には,混合熱水管路2は,自噴圧力を混合熱水タービン3に付与することになる。あるいは,混合熱水管路2が,吸引ポンプの外部圧力を利用して,混合熱水を吸い上げる場合には,混合熱水管路2は,この外部圧力に対応する圧力を,混合熱水タービン3に付与することに
なる。
【0089】
(混合熱水タービンの回転)
混合熱水タービン3は,熱水と水蒸気との混合である混合熱水の噴射によって,これらの圧力を受けることになる。この圧力によって,混合熱水タービン3は,
回転を行う。混合熱水タービン3の回転は,ローター5に伝達され,ローター5は,混合熱水タービン3の回転による発電を行なう。

【0090】
混合熱水タービン3は,混合熱水を受ける羽根と,羽根の回転を行う回転軸とを有している。羽根に付与される混合熱水の圧力によって,回転軸を基準に,羽根は回転を行う。回転軸は,その回転をローター5に伝達する。…【0095】
混合熱水タービン3を回転させた混合熱水は,
その混合熱水が含む液体
(熱水)
は,隔壁7と周囲の部材とによって,混合熱水タービン3の下に設けられる熱水容器8に導かれる。熱水容器8は,混合熱水タービン3を回転させた熱水を一時的に収容する容器であり,熱水容器8は,貯留容器12に収容した熱水を移動さ
せて,最終的に,温水還流路6を通じて,温水を還流させる。
【0096】
隔壁7は,混合熱水タービン3の含まれる箱状の部材と水蒸気タービン4を含む蒸気管路9とを仕切っていることで,熱水と水蒸気とを分離できる。この仕組みは,既述したとおりである。

【0097】
熱水容器8は,混合熱水タービン3の下に設置される。混合熱水タービン3の回転に用いられた熱水が,収容されるので,混合熱水タービン3の下に設置されれば,熱水の収容が確実に行われるからである。また,熱水容器8は,貯留容器12と管路や連通口によって接続している。

【0098】
(水蒸気タービンの回転)
混合熱水は,混合熱水タービン3を回転させて,液体である熱水を,隔壁7によって熱水容器8に移動させる。一方,隔壁7は,混合熱水が含む水蒸気を水蒸気タービン4に導く。水蒸気タービン4に到達する水蒸気は,噴射圧力を残して
おり,水蒸気タービン4を回転させる。すなわち,水蒸気の圧力が,水蒸気タービン4を回転させる。

【0099】
水蒸気タービン4は,蒸気管路9の内部に設けられる。隔壁7の開口部71を通じて蒸気管路9に到達した水蒸気は,上述の通り,一定の噴射圧力を有している。これに,加えて,蒸気管路9に接続する復水器10には,冷水循環路11が備わっており,この冷水循環路11による水蒸気の急激な冷却によって,水蒸気が復水器10で液化する。水蒸気が,気体から液体に急速に物理変化することにより,蒸気管路9の入り口(水蒸気タービン4の周辺)と蒸気管路9の出口(復水器10に近接する領域)との圧力差が生じる。すなわち,蒸気管路9の入り口での圧力が高く,
蒸気管路9の出口での圧力が低い状態となる。
場合によっては,

復水器10の内部は,真空に近い圧力にまで低下する。
【0100】
この圧力差によって,開口部71を通じて蒸気管路9に到達した水蒸気は,強い圧力および速度で,蒸気管路9内部を移動するようになる。この圧力および速度を有する水蒸気が,水蒸気タービン4を回転させるようになる。
【0101】
水蒸気タービン4は,回転は,ローター5に伝達され,ローター5は,混合熱水タービン3の回転による発電を行なう。水蒸気タービン4の回転は,混合熱水タービン3の回転と合わせて,ローター5に伝達されるので,ローター5での発電量が増加するようになる。

【0102】
また,水蒸気タービン4の回転軸は,混合熱水タービン3の回転軸と同一でもよい。同一の場合には,混合熱水タービン3と水蒸気タービン4の回転とが合わさって,一つの回転軸を回転させる。この一つの回転軸の回転は,ローター5に接続しており,ローター5での発電が行なわれる。このように,2つのタービン
である,混合熱水タービン3と水蒸気タービン4との回転が合わさることで,ローター5へ付与できる回転力(回転数)が増加する。この場合には,水蒸気ター
ビン4は,混合熱水タービン3の回転を補助するものと把握されても良い。あるいは,混合熱水タービン3は,初期的に回転を開始させることで回転軸の回転を誘発し,その後,水蒸気タービン4が回転することで,ローター5に必要な回転数が確保されるものと把握されてもよい。
【0108】
このように,隔壁で分離された混合熱水の含む水蒸気は,水蒸気タービン4を回転させて発電を行なう。水蒸気は,その噴射により水蒸気タービン4を回転させた後で,蒸気管路9に出力する。
【0109】

(蒸気管路)
水蒸気タービン4は,回転に使用した水蒸気を,蒸気管路9に出力する。蒸気管路8は,水蒸気タービン4から,復水器10に接続している。蒸気管路8は,この接続によって,
水蒸気を凝縮するための復水器10に,
水蒸気を移動させる。
矢印Bは,水蒸気の移動経路を示している。水蒸気タービン4を回転させた水蒸
気は,この矢印Bの移動経路に従って,水蒸気タービン4から復水器10にかけて移動する。
【0117】
なお,
蒸気管路9では,
復水器10において水蒸気が急速に凝縮されることで,
蒸気管路9の入り口(開口部71側)と出口(復水器10側)とで,圧力差が生
じる。この圧力差によって,水蒸気の高い圧力および速度の移動を生じさせて,水蒸気タービン4を回転させる。
【0118】
(復水器での凝縮)
蒸気管路9は,復水器10に水蒸気を移動させる。

【0120】
復水器10は,
冷却水によって,
水蒸気を凝縮して,
熱水を得る。
この熱水は,

温度が高いことを要件とするのではなく,水蒸気が凝縮して生じる液体である。すなわち,復水器10で得られる熱水は,温度条件で定義されるものではない。【0121】
復水器10は,箱状の部材の一部であれば良く,蒸気管路9が接続する空間である。この空間において,冷却水の働きによって,復水器10は,水蒸気を凝縮させる。
【0126】
復水器10は,水蒸気を凝縮して得られる熱水を,貯留容器12に送出する。【0128】

(貯留容器)
貯留容器12は,復水器10で凝縮されて得られた温水を貯留する。また,仕様に応じて,熱水容器8に収容されている熱水も貯留する。すなわち,貯留容器12は,混合熱水タービン3および水蒸気タービン4のそれぞれで発電に用いられた熱水を温水として回収する。混合熱水タービン3および水蒸気タービン4の
回転を行った後の熱水は,温水として,外部に放出する必要があるからである。【0134】
貯留容器12は,温水還流路6と接続されている。温水還流路6は,貯留容器12に貯留される温水を,還流できる。なお,貯留容器12や温水還流路6で定義される温水は,いわゆる熱水溜まりから得られる熱水と同一の定義で扱われる
必要は無い。要は,貯留容器12や温水還流路6で扱われる温水は,混合熱水タービン3を回転させた後の熱水であったり,水蒸気タービン4を回転させた後に凝縮された温水であったりする。
【0135】
これらの温水は,タービンを回転させる役割を終えている。すなわち,これら
の熱水は,発電に用いることが終了している。これらの温水は,熱水蒸気発電装置1においては不要となっているので,温水還流路6を通じて,還流することが
適当である。
【0136】
温水還流路6は,貯留容器12と接続しているので,貯留容器12に温水が溜まると,この熱水の圧力によって熱水を送出する。このとき,温水還流路6は,調節バルブ61を備えていることも好適である。調節バルブ61は,温水還流路6の管路の開放度合いを調節できる。この調節によって,温水還流路6は,送出する温水の量を調節できる。
【0138】
以上のように,温水還流路6は,貯留容器12に貯留されている温水を還流さ
せる。この結果,温水は,様々な用途に再利用できる。
【0139】
実施の形態1の熱水蒸気発電装置1は,以上のように,吸い上げた混合熱水を用いて2つのタービンを回すことで発電する。このとき,気液分離やフラッシャーを必要としないので,小型化・低コスト化を実現できる。また,使用後の熱水
や温水(水蒸気を凝縮して得られる温水も含む)を還流して再利用できるので,温泉の利権などにおいても,問題を生じさせにくい。これらが合わさって,従来技術の大掛かりな地熱発電と異なり,普及が容易となる。現在の我が国では,再生可能エネルギーによる発電装置の普及が急務であり,実施の形態1における熱水蒸気発電装置1が普及しやすいことは,非常に好適である。

【0141】
(実施の形態2)
【0143】
実施の形態2では,実施の形態1で説明した熱水蒸気発電装置1が,温泉地に種々に設置される場合について説明する。

【0144】
熱水蒸気発電装置1は,熱水を用いて発電を行なう。また,実施の形態1で説
明した通り,非常に小型かつ簡便な装置であるので,宿泊施設や観光施設など,温泉の源泉を利用する権利者が既に多く存在する温泉地であっても,設置が容易である。
【0145】
図4は,本発明の実施の形態2における熱水蒸気発電装置の設置を示す模式図である。図4は,複数の源泉が存在する温泉地に,熱水蒸気発電装置1が設置されている状態を示している。
【0146】
図4では,源泉40Aと源泉40Bの2つの源泉が示されている。いずれの源
泉40A,
40Bも,
既に温泉利用設備などによって取水権利が設定されており,
温泉利用設備に利用されている状態である。図4では,源泉40Aは,温泉利用設備30Aに利用されており,源泉40Bは,温泉利用設備30Bに利用されている。例えば,入浴用の温泉として利用されている。
【0147】

実施の形態1で説明した熱水蒸気発電装置1は,これらの源泉に設けられる。熱水蒸気発電装置1Aは源泉40Aに設置される。熱水蒸気発電装置1Bは,源泉40Bに設置される。
【0148】
熱水蒸気発電装置1Aの混合熱水管路2Aは,源泉40Aに接続している。こ
の結果,混合熱水管路2Aは,源泉40Aから混合熱水(源泉の温泉水)を吸い上げる。混合熱水管路2Aは,源泉40Aからの混合熱水を熱水蒸気発電装置1Aに供給する。
熱水蒸気発電装置1Aは,
実施の形態1で説明した機能によって,
源泉40Aの混合熱水を用いて発電を行なう。熱水蒸気発電装置1Aが発電した電力は,例えば,源泉40Aの権利を有する温泉利用設備30Aで利用されれば
よい。
【0149】

次に,熱水蒸気発電装置1Aは,温水還流路6Aを通じて,発電に利用の終わった温水を,温泉利用設備30Aに還流する。すなわち,温水還流路6Aは,発電に使用した温水(凝縮した水蒸気も含む)を,地中に戻すのではなく,温泉水を利用する温泉利用設備30Aに還流する。すなわち,温水還流路6Aは,温泉水として,熱水を温泉利用設備30Aに還流する。
【0150】
熱水蒸気発電装置1Aは,源泉40Aから吸い上げた混合熱水を,タービンを回転させる圧力として利用するだけであるので,熱水そのものを消費することはない。温水還流路6Aは,凝縮した水蒸気を含む温水を,温泉水として,温泉利
用設備30Aに還流できる(送出できる)。温水還流路6Aから還流される温水は,温泉水としての変質はしていない。このため,温泉利用設備30Aにおいては,通常の温泉水と同様に利用が可能である。もちろん,衛生管理や衛生処理などの付加的な処理は,温泉利用設備30Aにおいて行われれば良い。【0151】

同様に,熱水蒸気発電装置1Bは,源泉40Bに設置されている。源泉40Bから,混合熱水管路2Bが混合熱水を吸い上げて,熱水蒸気発電装置1Bに供給する。熱水蒸気発電装置1Bで使用された熱水は,温水還流路6Bによって,温泉利用設備30Bに還流される。この場合も,温泉利用設備30Bにおいて,発電に使用された熱水が,温泉水として再利用できる。もちろん,熱水蒸気発電装
置1Bで発電された電力は,温泉利用設備30Bで使用されれば良い,【0152】
このように,熱水蒸気発電装置1は,小型であって源泉ごとに設置が容易であるので,使用した熱水を,温泉水として本来の温泉利用設備において再利用できる。この結果,温泉地においても,源泉の権利者への不具合を生じさせないで,
熱水蒸気発電装置1が設置される。
【0153】

源泉40の権利者である温泉利用設備30は,温泉入浴に用いるために,源泉40を利用している状態であり,源泉を吸い上げる機構を既に設置済みである。この機構に熱水蒸気発電装置1を接続するだけで,自らが使用する電力をまかなうことができる。場合によっては売電も可能である。その上で,発電に使用した熱水を,本来の温泉水としても利用できるので,温泉利用設備30の所有者にとっても,熱水蒸気発電装置1を設置するモチベーションが高くなる。【0154】
もちろん,
発電後の熱水を温泉水として利用することに,
懸念がある場合には,
源泉40から吸い上げた熱水を,まず温泉水として利用し,その後圧力を付与し
た温泉水を,熱水蒸気発電装置1に供給することでも良い。
【0155】
いずれの場合であっても,温泉利用設備30にとっては,熱水蒸気発電装置1を設置する高いモチベーションを有することになる。この結果,熱水蒸気発電装置1の普及が進みやすくなる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

トップに戻る

saiban.in