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取立債権請求控訴、同附帯控訴事件
事件番号令和1(受)861
事件名取立債権請求控訴,同附帯控訴事件
裁判年月日令和3年1月22日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成30(ネ)858
原審裁判年月日平成31年2月1日
判示事項土地の売買契約の買主は売主に対し当該土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできない
裁判日:西暦2021-01-22
情報公開日2021-01-22 18:00:04
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令和元年(受)第861号
令和3年1月22日

取立債権請求控訴,同附帯控訴事件

第三小法廷判決

主1文
原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。

(1)

被上告人らは,上告人に対し,それぞれ486万
4300円及びこれに対する平成28年9月29
日から支払済みまで年6分の割合による金員を支
払え。

(2)
2
上告人のその余の請求を棄却する。
訴訟の総費用は,これを5分し,その3を上告人の
負担とし,その余を被上告人らの負担とする。
理由
上告代理人伊藤知之,同四方奨,同山川大喜の上告受理申立て理由(ただし,排除された部分を除く。)について
1
本件は,土地の売買契約の代金債権を差し押さえた上告人が,第三債務者で
ある被上告人らに対し,上記の売買代金として各1250万円余り及びこれに対する各訴状送達の日の翌日である平成28年9月29日からの遅延損害金の支払を求める取立訴訟である。被上告人らは,上記売買契約の売主に対する債務不履行等に基づく損害賠償債権を有するとし,同債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなどして,上告人の請求を争っている。論旨は,上記の債務不履行に基づく損害賠償債権のうち弁護士報酬に関するものである。
2
(1)

原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
被上告人らは,平成26年7月23日,ハイエステート有限会社(以下
本件会社という。)との間で,本件会社の所有する土地(以下本件土地という。)を9200万円で買い受ける旨の売買契約(以下本件売買契約という。)を締結し,本件会社に対して手付として500万円を支払った。本件売買契約において,残代金8700万円の支払期限は同年9月末日とされ,残代金全額の支払時に本件土地の所有権が被上告人らに移転するものとされ,本件会社は,本件土地につき,本件会社の費用で,地上建物を収去し,担保権等を消滅させ,境界を指示して測量した上で,残代金の支払と引換えに引き渡すものとされた。(2)

平成26年8月5日,本件会社は営業を停止し,その代表者が行方不明と
なった。被上告人らは,同月,本件売買契約における本件会社の債務の履行を求めるための事務等を弁護士(以下本件弁護士という。)に委任した。(3)

本件弁護士は,被上告人らの代理人として,本件土地について,平成26
年8月,処分禁止の仮処分を申し立て,これを認容する旨の決定がされた後の同年9月,本件会社に対して所有権移転登記手続を求める訴訟を提起した。同訴訟において,本件会社に対する公示送達により手続が進められて被上告人らの請求を認容する判決がされ,平成27年5月,本件土地について,被上告人らに対する所有権移転登記がされた。
また,本件弁護士は,同年9月,被上告人らの代理人として,本件土地について,本件会社に対して地上建物を収去して明け渡すことを求める訴訟を提起した。同訴訟においても,本件会社に対する公示送達により手続が進められて被上告人らの請求を認容する判決がされ,本件弁護士は,平成28年6月,被上告人らの代理人として,上記判決に基づいて強制執行を申し立て,上記建物の解体撤去工事を行った業者に同工事の代金として498万7000円を支払った。
(4)

本件弁護士は,平成27年8月,被上告人らの代理人として,本件土地に
設定されていた本件会社を債務者とする根抵当権について,根抵当権者らに対して合計7080万円を支払い,根抵当権設定登記が抹消された。本件弁護士は,同月,被上告人らの代理人として,上告人によって本件土地にされた仮差押えについて,上告人に対して30万円を支払い,仮差押登記が抹消された。また,本件弁護士は,被上告人らの代理人として,本件土地の測量等を土地家屋調査士に依頼し,平成28年6月,その費用として118万4400円を支払った(以下,本件弁護士が被上告人らの代理人として行った以上の各事務を本件各事務という。)。(5)

被上告人らは,平成30年8月,原審の弁論準備手続期日において,本件
会社が本件売買契約を締結した10日余り後に営業を停止するなどしたことにつき債務不履行等が成立し,被上告人らが本件弁護士に本件各事務を委任したことによる弁護士報酬その他被上告人らが負担した費用について債務不履行等に基づく損害賠償債権を有すると主張して,上告人に対し,同損害賠償債権と本件売買契約の残代金債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。
3
原審は,上記事実関係等の下において,上記弁護士報酬について,被上告人
らは本件会社に対して債務不履行に基づく損害賠償債権を有すると判断し,上記弁護士報酬の額は972万8600円を下らず,これにその他被上告人らが負担した費用である7727万1400円を加えた額は,本件売買契約の残代金額である8700万円以上であるから,債務不履行に基づく損害賠償債権による相殺により本件売買契約の残代金債権は消滅したとして,上告人の請求を棄却した。4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは,不法行為に基づく損害賠償を請求するなどの場合とは異なり,侵害された権利利益の回復を求めるものではなく,契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。また,契約を締結しようとする者は,任意の履行がされない場合があることを考慮して,契約の内容を検討したり,契約を締結するかどうかを決定したりすることができる。
加えて,土地の売買契約において売主が負う土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務は,同契約から一義的に確定するものであって,上記債務の履行を求める請求権は,上記契約の成立という客観的な事実によって基礎付けられるものである。
そうすると,土地の売買契約の買主は,上記債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても,売主に対し,これらの事務に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないというべきである。
したがって,本件各事務のうち訴訟の提起・追行並びに保全命令及び強制執行の申立てに関する各事務に係る弁護士報酬については,被上告人らが本件会社に対して債務不履行に基づく損害賠償債権を有するということはできない。また,本件各事務のうちその余の事務は,被上告人らが自ら本件土地を確保し,利用するためのものにすぎないから,同事務に係る弁護士報酬についても,被上告人らが本件会社に対して債務不履行に基づく損害賠償債権を有するということはできない。
5
以上によれば,本件各事務に係る弁護士報酬972万8600円につき,被
上告人らが本件会社に対して債務不履行に基づく損害賠償債権を有するとして同債権による本件売買契約の残代金債権との相殺を認めた原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。
前記事実関係等及び上記4に説示したところによれば,原判決を主文第1項のとおり,被上告人らに対してそれぞれ上記の額の2分の1である486万4300円及びこれに対する平成28年9月29日からの遅延損害金の支払を求める限度で認容する旨に変更すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官
宇賀克也


裁判官

景一

裁判官

戸倉三郎

道晴)
裁判官

宮崎裕子

裁判官

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