判例検索β > 平成30年(ワ)第1349号
損害賠償等請求事件
事件番号平成30(ワ)1349
事件名損害賠償等請求事件
裁判年月日令和2年12月21日
裁判所名・部福岡地方裁判所  第6民事部
裁判日:西暦2020-12-21
情報公開日2021-01-15 12:00:19
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主文
1被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成30年5月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,3億7106万0356円及びこれに対する平成30年5月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。2被告は,被告発行の福島民友新聞に,別紙1記載の謝罪広告を,別紙2記載の掲載条件で掲載せよ。
第2事案の概要

本件は,消費生活協同組合連合会である原告が,被告が発行する福島民友新聞(以下本件新聞という。)の記事等により名誉を毀損されたと主張して,被告に対し,不法行為(709条)に基づき,損害賠償金3億7106万0356円(非財産的損害1000万円,カンパ代3億2075万8311円,冊子製作・送付費用656万9286円,弁護士費用3373万2759
円)及びこれに対する不法行為の後である平成30年5月18日(訴状送達日の翌日)以降の平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,名誉を回復するための適当な処分(723条)として,本件新聞への謝罪広告の掲載を求める事案である。

1前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)


当事者等

原告(旧名称生活協同組合連合会グリーンコープ連合から平成30年7月9日に現名称に変更。)は,鹿児島県,宮崎県,熊本県,大分県,長崎県,佐賀県,福岡県,山口県,広島県,島根県,鳥取県,岡山県,兵庫県及び大阪府の1府13県の地域において,会員の事業に必要な物資を
購入し,これを加工し,若しくは加工しないで,又は生産して会員に供給する事業等を目的とする消費生活協同組合連合会である。
原告は,構成員である組合員向けに商品を供給するため,①週1回の頻度で商品カタログを配布しているほか,②年2回(夏季〔6月配布〕及び冬季〔10月配布〕)の頻度でギフトカタログを配布している。(なお,
原告では西暦表示でカタログを特定しているが,以下では,統一的に和暦で記載する。)

被告は,福島市内に本店を置き,日刊新聞の発行,電子・通信メディアにおけるニュースの配信等を目的とする株式会社であり,本件新聞を発行している。

本件新聞は,発行部数18万部余の日刊新聞であり,福島県内を中心に販売されている。(弁論の全趣旨)


平成29年商品カタログ22号(以下本件カタログという。甲7,43㉓)における東日本大震災復興応援企画の掲載等

原告は,同年7月頃に配布した本件カタログにおいて,東日本大震災復興応援企画と題する特集ページの中で,いずれも赤丸の中に白抜き文字で東日本を応援しよう!と表示するマーク(以下応援マークという。)を付した上で,宮城県産食品等21点及び岩手県産食品4点を掲載したものの,福島県産の商品は掲載されなかった(もっとも,本件カタログの東日本
大震災復興応援企画ではない通常ページには,福島県産の産地指定米しひかりが掲載されていた。)。こ
また,原告はインターネット上でホームページ(以下原告サイトという。)を運営し,様々な情報を発信していたところ,PDF形式で保存された本件カタログの東日本大震災復興応援企画部分(以下本件カタログPDFという。乙8)を原告サイトに掲載した。(甲7,43㉓,70①~④,乙7,8)


本件新聞への記事の掲載等

被告は,平成29年9月24日,本件新聞において,復興応援なのに今年も本県外しという見出しを付した別紙3-1記載の記事(以下本件記事①という。)を掲載した。(甲8①)

被告は,平成29年9月24日,被告が運営するウェブサイト福島民友みんゆうNet(以下被告サイトという。)において,復興応援なのに…今年も福島県外しグリーンコープ連合という見出しを付
した別紙3-2記載のニュース記事(以下本件記事②という。)を掲載した。(甲8②)

被告は,平成29年9月28日,本件新聞において,本件商品早期拡充なしグリーンコープ復興企画方針で回答という見出しを付した別
紙3-3記載の記事(以下本件記事③という。)を掲載した。(甲8③)

被告は,平成29年9月28日,本件新聞において,本件商品拡充予定なしグリーンコープ復興企画方針で回答という見出しを付した別
紙3-4記載の記事(以下本件記事④という。)を掲載した。(甲8④)

被告は,平成29年9月28日,被告サイトにおいて,福島県商品,早期拡充なしグリーンコープ,復興企画方針で回答という見出しを付
した別紙3-5記載の記事(以下本件記事⑤という。)を掲載した。(甲8⑤)

被告は,平成29年9月29日,本件新聞において,グリーンコープに抗議県生協という見出しを付した別紙3-6記載の記事(以下本件記事⑥という。)を掲載した。(甲8⑥)キ
被告は,平成29年9月29日,被告サイトにおいて,グリーンコープに抗議福島県生協,復興応援から福島県商品除外という見出しを付
した別紙3-7記載のニュース記事(以下本件記事⑦という。)を掲載した。(甲8⑦)

被告は,平成29年9月30日,本件新聞において,復興応援企画誤解と偏見解かねばならぬという見出しを付した別紙3-8記載の社説(以下本件記事⑧という。)を掲載した。(甲8⑧)

被告は,平成29年9月30日,被告サイトにおいて,復興応援企画/誤解と偏見解かねばならぬという見出しを付した別紙3-9記載の社説(以下本件記事⑨という。)を掲載した。(甲8⑨)

被告は,平成29年10月3日,本件新聞において,グリーンコープ問題県産品の魅力丁寧に発信という見出しを付した別紙3-10記載
の記事(以下,本件記事⑩といい,本件記事①から同⑩までを併せて本件各記事という。)を掲載した。(甲8⑩)


本件訴状は,平成30年5月17日,被告に対し送達された。(顕著)
2争点


本件各記事における事実の摘示及び社会的評価の低下の有無(争点1)


違法性阻却事由の有無(争点2)



損害の発生及びその額(争点3)



謝罪広告の必要性の有無(争点4)

3争点に関する当事者の主張


争点1(本件各記事における事実の摘示及び社会的評価の低下の有無)について
(原告の主張)

本件記事①及び同②について

(ア)本件記事①及び同②は,復興応援なのに今年も本県外しなどと大きな見出しを付した上で,原告が過去にカタログに東北5県と記載して東京電力福島第1原発事故(以下本件原発事故という。)の風
評被害の助長につながるとの抗議が相次ぎ,謝罪した経緯があること(後記認定事実等⑴イ・ウ参照。以下東北5県事件という。)や,インターネットなどでは,原告は本県の除外について批判を聞く気がないのではないかとの声も上がっていることなどが記載されている。これらの記事は,原告が福島県あるいは福島県産の商品に対し差別ないし偏
見を持っており,そのために福島県産の商品を意図的に商品カタログの東日本大震災復興応援企画に掲載せずに風評被害を助長する行為を行ったという事実を摘示するものである。
(イ)東日本大震災の発生以降,福島県に関する各種対応は社会に与える影響が極めて大きく,また福島県への風評被害や偏見も大きな問題となっ
ている社会情勢に鑑みると,上記事実の摘示によって,原告は各方面から誤った印象を抱かれてその社会的評価は著しく低下した。

本件記事③,同④及び同⑤について
(ア)本件記事③,同④及び同⑤は,見出しに本県商品早期拡充なし又は本県商品拡充予定なしとの否定的な記載がなされ,さらに,その本文にて本県商品が除外されていた今回の復興応援企画ではと原告が差別ないし偏見を持って東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品を掲載しなかった旨が記載されており,かつ本件記事①及び同②とも連続的に掲載されている。これらの記事は,原告が福島県あるいは福島県
産の商品に対し差別ないし偏見を持っており,そのために福島県産の商品を意図的に商品カタログの東日本大震災復興応援企画に掲載せずに風評被害を助長する行為を行ったという事実を摘示するものである。(イ)上記ア(イ)と同様に,これらの事実の摘示によって,原告の社会的評価は著しく低下した。また,本件記事④の本県商品拡充予定なしという記載は,時期を限定せず広く将来に向かって拡充の予定がないと読者が誤解しがちな表現であり,社会的評価の低下の程度も本件記事③と比
較してより強いものとなっている。

本件記事⑥及び同⑦について

(ア)本件記事⑥及び同⑦では,本件記事③,同④及び同⑤と同様,除外という文言が使われ,この点が問題視されている。また,原告が福島県生活協同組合連合会(以下福島生協という。)から抗議を受け
たことも記載して,同じ生協の仲間からも抗議を受けるほど悪い行為を原告が行ったとの印象を与えている。これらの記事が本件記事①から同⑤までが掲載された後に連続して掲載されていることをも併せ鑑みれば,これらの記事は,原告が福島県あるいは福島県産の商品に対し差別ないし偏見を持っており,そのために福島県産の商品を意図的に商品カ
タログの東日本大震災復興応援企画に掲載せずに風評被害を助長する行為を行ったという事実を摘示するものである。
(イ)上記ア(イ)と同様に,これらの事実の摘示によって,原告の社会的評価は著しく低下した。

本件記事⑧及び同⑨について

(ア)本件記事⑧及び同⑨は,本件原発事故に伴い原告が福島県あるいは福島県産の商品に誤解と偏見を有していることを前提に,東日本大震災復興応援企画において被災3県(岩手県,宮城県及び福島県)のうち福島県産の商品のみ除外されている旨が記載されている。これらの記事は,原告が,本件原発事故に伴い,福島県あるいは福島県産の商品に誤解と偏見を持っており,そのために原告は福島県産の商品を意図的に商品カタログの東日本大震災復興応援企画に掲載せずに風評被害を助長する行為を行ったという事実を摘示するものである。
(イ)上記ア(イ)と同様に,これらの事実の摘示によって,原告の社会的評価は著しく低下した。

本件記事⑩について

(ア)本件記事⑩は,本件記事①から同⑨までが掲載された後に連続的に掲載されたものであり,グリーンコープ問題としてA福島県知事(以下県知事という。)が定例記者会見において原告がホームページ上に本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画を掲載していた問題で語ったなどと記載し,あたかも原告が看過できない問題を引き起こし
たかのような記載内容となっている。かかる記事は,原告が福島県あるいは福島県産の商品に対し差別ないし偏見を持っており,そのために福島県産の商品を意図的に東日本大震災復興応援企画に掲載せずに風評被害を助長する行為を行ったという事実及び県知事もそのことを問題視しているという否定的な事実を摘示するものである。

(イ)上記ア(イ)と同様に,これらの事実の摘示によって,原告の社会的評価は著しく低下した。
(被告の主張)

本件記事①及び同②について

(ア)本件記事①及び同②が摘示した事実は,○原告がホームページに掲載ⅰ
している本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,
被災3県のうち,岩手県産及び宮城県産の商品は掲載されていたが,福島県産の商品は掲載されていなかった事実,○原告が,被告の取材に対ⅱ
し,

経緯について今はコメントできない。今後しっかりと説明したい

と述べた事実である。本件記事①及び同②が問題としているのは,その時点で原告がホームページに掲載している本件カタログの東日本大震災復興応援企画であり,同カタログのそれ以外のページにおいて福島県産の商品が取り扱われていたかどうか,それ以前のカタログにおいて福島県産の商品が取り扱われていたかどうかについては報じていない。そして,当時原告がホームページに掲載していた東日本大震災復興応援企画は,本件カタログの東日本大震災復興応援企画であり,そのことは一般の読者がインターネットにより容易に特定,確認し得るものである。平成29年に原告が配布した他のカタログ等について,これらの記事では何ら報じていないのであるから,それらにおいて原告が本県外しをしていると誤読される余地はない。

(イ)消費生活協同組合連合会である原告が,その商品カタログにおいていかなる商品を取り扱うかは原告の自主的判断に委ねられる事項であり,仮に○´原告がカタログにおいて福島県産の商品を東日本大震災復興応ⅰ
援企画として取り扱わなかった事実を摘示したとしても,それ自体は違法ないし不当と評価されるべきものではなく,これにより原告の品性,
徳行,名声,信用等の人格的利益が毀損されることも特段ない。また,本件記事①及び同②は,○原告が,被告の取材に対して,その理由につⅱ
いて今後しっかりと説明する旨述べたことを明示して報じており,その事実を知った読者が,原告の品性,徳行,名声,信用等の人格的利益について特段の悪印象を抱くことはない。

本件記事①及び同②により,原告の社会的評価が低下することはない。

本件記事③,同④及び同⑤について
(ア)本件記事③,同④及び同⑤が摘示した事実は,○原告のホームページⅰ
に掲載されている本件カタログの東日本大震災復興応援企画に
おいて,福島県産の商品が掲載されていなかった事実,○原告が,被告ⅱ
の取材に対し,福島県産の商品を早期に拡充する予定はないと回答したとの事実である。
(イ)原告が,その商品カタログにおいていかなる商品を取り扱うか,今後どのような商品を拡充することを予定しているかは原告の自主的判断に委ねられる事項であり,仮に○´原告がカタログにおいて福島県産の商ⅰ
品を東日本大震災復興応援企画として取り扱わなかった事実,あるいは○福島県産の商品を早期に拡充する予定はないと回答したとの事実を摘ⅱ
示したとしても,それ自体は違法ないし不当と評価されるべきものではなく,これにより原告の品性,徳行,名声,信用等の人格的利益が毀損されることもない。

本件記事③及び同⑤により,原告の社会的評価が低下することはない。本件記事④も,本件記事③の見出しに若干の修正を加えたものの,記事本文はなんら変更していないのであるから,原告の社会的評価を低下させることはない。

本件記事⑥及び同⑦について

(ア)本件記事⑥及び同⑦が摘示した事実は,原告がホームページに掲載している本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,福
島県産の商品が掲載されていなかった事実である。
(イ)原告が,その商品カタログにおいていかなる商品を取り扱うかは原告の自主的判断に委ねられる事項であり,仮に原告がカタログにおいて福島県産の商品を東日本大震災復興応援企画として取り扱わなかった事実を摘示したとしても,それ自体は違法ないし不当と評価されるべきものではなく,これにより原告の品性,徳行,名声,信用等の人格的利益が毀損されることもない。

本件記事⑥及び同⑦により,原告の社会的評価が低下することはない。

本件記事⑧及び同⑨について

(ア)本件記事⑧及び同⑨が摘示した事実は,○原告がホームページに掲載ⅰ
している本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,
被災3県のうち,岩手県産及び宮城県産の商品は掲載されていたものの,福島県産の商品のみが掲載されていなかった事実,○原告が,被告ⅱ
の取材に対し,福島県産の商品を掲載しなかった理由について,福島県とつながりがないと回答したとの事実,○上記○の事実を前提としⅲ

て,福島県を応援するかどうかについてとやかく言うつもりはないという意見ないし論評,○上記○の事実を前提として,除外の背景に本件原ⅳⅰ
発事故に伴う福島県産の商品への誤解と偏見があるとすればその誤解ないし偏見は解かねばならないという意見ないし論評である。
(イ)原告が,その商品カタログにおいていかなる観点に基づいて(本件についていえばつながりを重視するなどして),いかなる商品を取り扱うかは原告の自主的判断に委ねられる事項であり,仮に原告が○つⅱながりの有無という観点に基づいて,○´カタログにおいて福島県産ⅰ
の商品を東日本大震災復興応援企画として取り扱わなかった事実を摘示したとしても,それ自体は違法ないし不当と評価されるべきものではなく,これにより原告の品性,徳行,名声,信用等の人格的利益が毀損されることもない。

本件記事⑧及び同⑨は,その本文において除外の背景に東京電力福島第1原発事故に伴う県産品への誤解と偏見があるとすれば遺憾であり,その認識は正してもらう必要があるとあくまで仮定の上で報じるとともに,その本文を受けて誤解と偏見解かねばならぬとの見出しを付して報じたにとどまり,これを超えて,原告に福島県産品への誤解と偏見があると断定的に報じたものではない。本件記事⑧及び同⑨により,原告の社会的評価が低下することはない。

本件記事⑩について

(ア)本件記事⑩が摘示した事実は,○原告がホームページに掲載しているⅰ
本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,福島県産
の商品が掲載されていない事実,○県知事が,会見で引き続き県産品ⅱの安全性や魅力を丁寧に発信していく,

国内外全体に風評被害の問題がある。そうした事実を頭に置きながら,できる限り風評払拭の対策に取り組んでいくことが重要

と語った事実である。(イ)原告が,その商品カタログにおいていかなる商品を取り扱うかは原告の自主的判断に委ねられる事項であり,仮に○´原告がカタログにおいⅰ
て福島県産の商品を東日本大震災復興応援企画として取り扱わなかった事実を摘示したとしても,それ自体は違法ないし不当と評価されるべきものではなく,これにより原告の品性,徳行,名声,信用等の人格的利益が毀損されることも特段ない。
また,県知事の発言のうち,○風評の問題や風評払拭につい

て報じた点は,原告について個別具体的に風評の問題があるとしたものではなく,国内外全体に風評の問題があること,その風評の払拭に取り組んでいくことが重要であることなどの一般論としての認識を示したことを報じたにとどまる。
本件記事⑩により,原告の社会的評価が低下することはない。



争点2(違法性阻却事由の有無)について
(被告の主張)

公共性,公益目的
本件各記事は,原告がホームページに掲載している本件カタログの東日
本大震災復興応援企画において,被災3県のうち,岩手県産及び宮城県産の商品は掲載されていたものの,福島県産の商品のみが掲載されていなかった事実を客観的かつ価値中立的に報じ,未曽有の損害を生ぜしめた東日本大震災と本件原発事故からの復興という国民の関心が強く寄せられる事項について,原告の配慮の欠如を正当に指摘したものである。本件各記事が公共の利害にかかる事実を報道するものであることは明らかである。被告は,原告とは特段の利害関係はなく,いたずらに原告を断罪した
り,貶めたりする意図に基づくことなく,国民の知る権利に奉仕すると考えて本件各記事を報道したものであり,これが専ら公益を図る目的に出たものと解されるべきは当然である。

真実性
(ア)本件記事①及び同②
a
本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,福島

県産の商品が掲載されていなかったこと及び平成28年夏ギフトカタログ(甲5,42⑭)の東日本大震災復興応援企画において,原告が福島県を除いて東北5県と表記したことは真実であり,復興応援なのに今年も本県外しとの見出しは真実である。被告は,原告が東北5県事件において

福島をはずしています。

と説明したこと(後記認定事実等⑴)等を踏まえて本県外しと表現したものであり,何ら事実に反していない。
b
本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,特に甚大な被
害を受けた被災3県のうち,岩手県及び宮城県の商品は掲載されていたものの,福島県の商品のみが掲載されていなかったことは真実であり,被災3県のうち本県の商品のみが掲載されていないことは真
実である。
c
さらに,紙幅の限られた新聞記事などにおいて,取材内容ないしそ
の結果を,合理的な範囲で要約して表記することが通常であり,

同連合は福島民友新聞社の取材に『経緯について今はコメントできない。今後,しっかりと説明したい』としている

という要約は真実である。
(イ)本件記事③,同④及び同⑤a
本件記事③,同④及び同⑤は,本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品の掲載がない理由を確認した被告に対し,原告が送付した回答書(以下本件回答という。甲16)の
内容を紹介した記事である。原告は,本件回答において,つながりがない商品を開発・配置するということをしておらず,かつ,今後もそのような方針に変わりはない,福島県に商品を紹介してもらう
考えもないと明言しているのであるから,本県商品早期拡充なし
との見出し及び本県商品を早期に拡充する考えはないとの方針を明らかにしたことはいずれも真実である。b
また,本件カタログの東日本大震災復興応援企画において福島県産
の商品が掲載されていなかったことは真実であり,ホームページ上に本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画を掲載していた問題及び本県商品が除外されていた今回の復興応援企画はいずれも真実である。
(ウ)本件記事⑥及び同⑦
本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品

が掲載されていなかったことは真実であり,本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画は真実である。(エ)本件記事⑧及び同⑨
a
本件記事⑧及び同⑨は,一般論として,仮に県産品への誤解と偏見があるとすれば,誤解と偏見解かねば風評被害は払拭されないとの意見ないし論評を広く読者に表明したものであり,その前提となる本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,東
日本大震災において特に甚大な被害を受けた被災3県のうち,岩手県及び宮城県の商品は掲載されていたものの,福島県の商品のみが掲載されていなかった事実及び平成28年夏ギフトカタログ(甲5,42⑭)の東日本大震災復興応援企画において原告が福島県を除いて東北5県と表現した事実はいずれも真実である。
また,上記のとおり,被災3県のうち本県の商品が除外されていることがわかったことも真実である。b
同連合は,本県を除外した理由について『福島県とつながりがない』としていると報じたことは,本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品の掲載がない理由を確認した被告に対し原
告が送付した本件回答(甲16)の合理的な要約であり,真実である。
c
本県を応援するかどうかについてとやかく言うつもりはないと

の記述は,復興の応援に関する被告の考えを述べたものにすぎず,何ら事実に反するものではない。

(オ)本件記事⑩
原告は,過去のカタログ表記について謝罪したことがあったのであるから,その後に東日本大震災復興応援企画を行うに当たっては,福島の人々の心情を二度と傷つけないよう十分に配慮し,相応の注意を払って然るべきだったにもかかわらず,本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,またしても福島県産の商品を掲載しなかった。このような風評問題につながりかねない一連の事実経過を捉えてグリーンコープ問題とすることは表現として何ら問題とされるべきものではなく,本件記事⑩の本文も県知事の定例記者会見における発言をそのまま報じたものであるから,真実である。


真実性誤信の相当性
(ア)被告の記者は,平成29年9月21日,原告のホームページの東日本大震災支援活動と題するページのリンクから復興応援商品を開き,本件カタログPDFの東日本大震災復興応援企画の
内容を確認した上で原告に電話取材し,原告がホームページに掲載している本件カタログの東日本大震災復興応援企画において,福島県産の商品が掲載されていない理由などについて問い合わせた。また,被告の記者は,翌日の同月22日にも原告に電話取材したが,早期に具体的な回答を得られる見通しは立たなかったため,それまでの取材で把握した事実関係を基に記事を執筆し,福島県(県産品振興戦略課)
に対する取材結果を併せて,本件記事①を掲載するとともに,同内容の本件記事②を被告サイト上にて配信した。
(イ)被告は,本件記事①及び同②の掲載後も,原告から回答があった段階で改めて取材・報道をする方針であり,原告から平成29年9月27日付け本件回答(甲16)をファックスで受け取った後,原告に電話取材した上で,本件記事③及び同④を掲載し,同内容の本件記事⑤
を被告サイトにて配信した。
(ウ)その後も,被告は,本件の関連取材で入手した福島生協による抗議文(甲10)に関する情報をもとに,本件記事⑥を掲載し,同内容の本件記事⑦を被告サイトにて配信した。
本件記事⑧及び同⑨は,従前の取材をもとにした社説であり,記事
の執筆を担当した論説委員は,記事掲載の2日前に原告に対して確認の電話取材を行った上でこれらの記事を掲載ないし被告サイトにて配信した。
(エ)
被告の記者は,平成29年10月2日に行われた県知事の定例記者会見が本件記事①の掲載後初めてとなる県知事記者会見であったことから,本件に関連した質問をし,その内容をまとめて本件記事⑩を掲載した。
(オ)被告は,報道機関として,本件記事①で報じた問題を読者が正確に理解することができるように,本件に関する原告の主張内容等も踏まえた続報記事を掲載しており,その取材活動に問題はない。被告が本件各記事で摘示した事実はいずれも真実であり,少なくとも被告にお
いて真実と信じるにつき相当な理由があった。
(原告の主張)

公共性,公益目的がないこと
被告は,いたずらに読者の興味を引き,自社新聞の注目を集め,その発行部数増加のためにあえてこのような虚偽の新聞記事を掲載したのであっ
て,そこに公共性や目的の公益性はない。仮に風評被害をなくしたいという善意があったとしても,原告の内部文書というべき組合員のみを対象とした商品カタログを殊更に取り上げ,取材もきちんとせずに事実を歪曲して原告が福島県を除外し風評被害を助長しているとばかりの報道を行って原告の名誉,信用を毀損することに公共性や目的の公益性はない。

反真実
原告は,平成28年冬ギフトカタログ(甲14,42㉟)や平成29年夏ギフトカタログ(甲15,43⑭)にも福島県産の商品を掲載しているように,従前から福島県産の商品を取り扱っているし,同年9月27日付
け本件回答(甲16)の内容をみれば,原告が福島県産の商品に誤解や偏見を持っていないことは明らかである。本件カタログの東日本大震災復興応援企画には,紙面の都合上たまたま福島県産の商品がなかっただけであり,本件各記事が摘示した,原告が福島県あるいは福島県産の商品に対し誤解と偏見を有している事実,原告が福島県産の商品を意図的にカタログ
に掲載せず風評被害を助長する行為を行ったという事実は,いずれも真実でない。
また,本件記事①が掲載された平成29年9月24日当時,原告のホームページ上では本件カタログのほかに最新のギフトカタログである平成29年夏ギフトカタログ(甲15,43⑭)も掲載されており,同カタログの東日本大震災復興応援企画には福島県産の商品が掲載されていた。それゆえ,グリーンコープ連合(原告)がホームページに掲載している東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品が掲載されていることは明らかであり,この点においても本件記事①及び同②には誤りがある(本件記事③から同⑩までも同じ。)。

真実性誤信の相当性がないこと
本件記事①及び同②が掲載された平成29年9月当時,原告のホームページ上では,本件カタログに加えて,同年夏ギフトカタログも閲覧することができ,同カタログの東日本大震災復興応援企画には福島県産の2つの商品が掲載されていたことを容易に知ることができたほか,同カタログ以外にも,バックナンバーにおいて,原告が福島県を支援していることや,
商品カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品を掲載したこと等に関する記事を閲覧することができた。被告の記者は,平成29年9月21日,電話取材に対応した原告専務からもホームページに掲載された本件カタログ以外の記事を紹介されていた。それにもかかわらず,被告の記者は,原告のホームページすら十分に確認せず,正当な指摘を含むツイ
ッター等の事前取材を怠り本件各記事を掲載するに至ったものである。また,原告代表者B(以下Bという。)は,被告の記者に対し,平成29年9月27日,紙面の都合上全ての商品を毎週掲載することはできないので年間計画を立てて掲載していること,これまでも福島県産の商品をカタログに掲載してきたこと,これからも福島県産の商品を掲載してい
くこと等の説明を行っており,本件記事③から同⑩までについては,真実でないことを知りつつ,悪意で報道を行ったものといえる。
被告において,本件各記事が摘示した事実が真実であったと誤信するについての相当性も認められない。


争点3(損害の発生及びその額)について
(原告の主張)


非財産的損害

1000万円

本件各記事は原告の社会的評価・信用は著しく毀損するものであり,これにより原告が被った損害は1000万円を下らない。

カンパ代

3億2075万8311円

原告の東日本大震災支援活動は,平成23年3月から現在まで,組合員からのカンパによって賄われ,その総額は平成29年8月20日時点で3
億2075万8311円に上る。このカンパは組合員の善意によるものであり,原告の社会的評価を示す指標となる。
本件各記事等が掲載されたことで,原告に見せかけである,グリーンコープで東北の復興支援活動という言葉は使うな,やめろ等の声が届けられたように,原告の社会的な評価は著しく減少し,組合員のカ
ンパ及び原告が現実に行ってきた東日本大震災の復興支援活動が台無しとなってしまった。被告の不法行為により,カンパ代全額が無価値なものとなり,原告は同額の損害を被った。

冊子製作・送付費用

656万9286円

原告は,本件各記事によってもたらされた人々と社会の誤解を解くため
に真実を伝える冊子を製作し,日本生活協同組合連合会とその会員生協,日本新聞協会とその加盟各社,原告を監督する厚生労働省や福島県・福岡県,原告の取引先,組合員等に送付・配布せざるを得なかった。その費用として656万9286円を請求する(ただし,実際には658万7572円を要した。)。


弁護士費用

3373万2759円
被告の不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用は,3373万2759円(上記アからウまで記載の金額の1割)が相当である。
(被告の主張)

非財産的損害
不知ないし争う。1000万円という多額の非財産的損害を認める余地
は一切ない。

カンパ代
不知ないし争う。現金として受領し,被災者・被災地のために使われたはずのカンパが無価値になるなどということは法律上も実際上もあり得ない。


冊子製作・送付費用
不知ないし争う。多数の冊子の制作及びその多方面への送付については,原告が自らの判断に基づいて行ったものであるから,原告の判断と行為に基づいて支出した費用等と被告の行為との間に相当因果関係があると認める余地はなく,かつ,名誉毀損によって通常生ずべき損害と認める余
地もない。

弁護士費用
不知ないし争う。


争点4(謝罪広告の必要性の有無)について
(原告の主張)
本件各記事は,読み手に対し,原告が意図的に商品カタログから福島県を除外し,福島県を不当に差別しているとの誤った印象を与え,原告の名誉・信用を著しく毀損するものであり,民法709条の不法行為に該当することは明らかである。そして,原告が被った被害回復のためには,民法723条
に基づき,別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の掲載条件で本件新聞に掲載することが必要不可欠である。
(被告の主張)
否認ないし争う。
第3争点に対する判断
1認定事実等
当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認めら
れる事実を総合すると,本件の事実経過は以下のとおりである。


東日本大震災の発生及び東北5県事件に至る経緯等

原告は,東日本大震災の発生から間もない平成23年3月14日以降,
大型トラックによる支援物資の搬送やカンパ(平成29年8月20日時点で合計3億2075万円余が集まった。)等の支援活動を行っていたところ,平成23年18号(7月配布)商品カタログから復興応援企画特集を開始し,同年冬ギフトカタログから,東北6県で製造された商品の利用を通して被災地の復興を応援する趣旨で,東北6県で製造された商品に応援マークを付した上で掲載するという取組みを始め,さらに,平成25年冬ギフトカタ
ログからは,東日本大震災復興応援商品をまとめて掲載し,東日本の
地図上に東北6県の商品の生産地を明示するなど,組合員が利用し易くする取組みを始めた。(甲6,27,36,37⑲㉞,39㉞,47から66〔枝番号含む。〕,70①~⑩,73,79①~㉓,80から82〔枝番号含む。〕,86,87,89,原告代表者C,同B)

原告は,平成27年夏ギフトカタログ(甲41⑭)及び同年冬ギフトカ
タログ(甲4,41㉟)の東日本大震災復興応援商品のページにおい
て,青森県,岩手県,秋田県,宮城県及び山形県(以下,単に5県という。)を色分けした東日本の地図(他方で,福島県部分は色塗りされていない。)とともに,

5県で製造されている商品を利用することで,被災地の復興を応援しましょう。

(以下応援文言という。)と記載し,5県産の商品に応援マークを付した上で掲載した。
原告は,平成28年夏ギフトカタログ(甲5,42⑭)の東日本大震災復興応援のページにおいても,応援文言中の5県が東北5県
という表現に改められ,また,新たなデザインの応援マーク(地図上の5県と同じ色で塗り分けられた5枚の花弁を周囲に配置した白楕円の中に,黒字で東日本を応援しよう!と表示したもの)が用いられたほかは,ほぼ同
様の掲載をした。
(甲4から6,41⑭㉟,42⑭,86,弁論の全趣旨)

平成28年夏ギフトカタログ(甲5,42⑭)の配布後,原告に対して,同カタログの東日本大震災復興応援企画における応援文言中の東北5県の表現等について,組合員や一般消費者など多方面から,福島県は東北ではないのか,本件原発事故の風評被害の助長につながる等の抗議が相次いだ。
そこで,原告は,同年6月14日,上記カタログについて,

2015年夏ギフトより東日本大震災復興応援商品を案内する中で,『福島の商品が企画できていないのに福島を表記しておくのはよくないのではないか』とグリーンコープ連合で検討し,福島県をはずしています。

福島県の商品だからといって排除したり,利用をしないということはありません。

グリーンコープでは・・・福島県で商品を製造する方とつながりが少ないため商品を企画することもできず,商品を選択することもできていません。

等として経緯を説明するとともに,平成28年夏ギフトカタロ
グ(甲5,42⑭)の東北5県という部分は大変失礼で配慮のない表現であったとして,謝罪する文書(以下本件謝罪文書という。)を公表した。
(甲6,8①)


東北5県事件に関する被告の報道

被告は,平成28年6月14日,本件新聞において,東北復興応援…本県なし西日本グリーンコープギフトの対象外という見出しで,

グリーンコープ連合が製作した夏ギフトカタログの東日本大震災の復興応援企画で,東北6県のうち本県のみが除外されて『東北5県』として掲載されていることが13日,分かった。

等と報じる記事を掲載した。(乙4)


被告は,平成28年6月15日,本件新聞において,グリーンコープが謝罪文震災復興特集で本県除外という見出しで,本件謝罪文書の内
容につき,同連合は,本県を除外したことについて,『福島県の商品だからと排除したわけではない』として風評被害の影響は否定。通常のカタログでは本県で生産された化粧品2品と本県産コシヒカリの販売も行っているとして,HP上などに掲載しているウェブ版のギフトカタログについては今後,『東北5県』の表現などを修正することも明らかにした。等と報じる記事を掲載した。(乙5)

被告は,平成28年6月16日,被告サイトにおいて,【復興の道標・5年の歴史-4】顧客減少,風評だけか福島県外し『東北5県』と
いう見出しで,復興応援をうたいながら,差別の助長につながりかねない事態も起きているとした上で本件謝罪文書の内容等を報じる記事を掲載した。(甲32)

被告は,本件新聞及び被告サイトにおいて,平成29年3月14日,復興の道標・不条理との闘いと題する連載として,怒り,悔しさは一緒という見出しで,東北5県事件後に福島県職員が原告に対して福島県の業者紹介を申し出る等,福島県が風評被害を払拭するために情報発信を工夫している旨を報じる記事を掲載した。(甲20,31,乙3)⑶

東北5県事件後の原告のカタログ等
原告は,平成28年冬ギフトカタログ(甲14,42㉟)の東日本大震災復興応援企画において,福島県産の商品であるお野菜ジャム詰合せ及び若桃の甘露煮詰合せの掲載を始め,福島県と産地が明示され
た応援マーク(元の赤丸のもの。以下も同様。)を付した。また,原告は,同年35号(11月配布)商品カタログ(甲13,42㊲)の東日本大震災復興応援企画において,福島県福島市のNPO法人が生産することを明示し,応援マークを付した商品ひまわり油みんなの手の掲
載を始めた。
また,平成29年夏ギフトカタログ(甲15,43⑭)及び同年冬ギフトカタログ(甲43㉟)の東日本大震災復興応援企画には,それぞれお野菜ジャム詰合せ及び若桃の甘露煮詰合せが,同年35号(11月配布)商品カタログ(甲43㊲)及び平成30年49号(3月配布)商品
カタログ(甲43㊿)の東日本大震災復興応援企画には,それぞれひまわり油みんなの手が,上記同様の方法で掲載された。
その間,原告は,前記前提事実⑵記載のとおり,平成29年7月頃,本件カタログ(甲7)を組合員に対して配布した。
(甲36,58①,87,原告代表者C,同B)


本件各記事掲載時における原告サイトの掲載内容
前記前提事実⑶記載の本件各記事が掲載された平成29年9月から同年10月当時,原告サイトにおいては,トップページの災害支援(震災,水害等)ボタンから複数回にわたりハイパーリンクを辿ることにより,
原告が行った東日本大震災被災地に対する支援活動一覧が表示するページ(乙7)に至り,同ページの

2017.8.7復興応援商品を利用して,生産者・メーカーを応援しましょう。コチラから,または,右上『復興応援商品』からご覧ください。

のコチラ部分又は同ページ右上の復興応援商品利用して応援しようボタンをクリックすることで,本
件カタログPDF(乙8)の東日本大震災復興応援企画部分を閲覧することができた。
また,原告サイトにおいては,原告の活動等に関する記事を掲載するグリーンコープからのお知らせ欄が設けられており,原告の商品カタログを含む過去の記事を閲覧することができた。このうち平成29年6月5日付け『2017夏のおくりもの』カタログをお届けしています!と題する記事からは,平成29年夏ギフトカタログ(甲15,43
⑭)を閲覧することができ,上記ア記載のとおり,同カタログには東日本大震災復興応援企画として福島県産の商品であるお野菜ジャム詰合せ及び若桃の甘露煮詰合せが掲載されていた。
上記のほかにも,原告サイトにおいては,原告が行った寄付等の東日本大震災復興支援活動や東日本大震災復興応援企画として取り扱った福島県
産の商品の販売実績等を閲覧することができた。
(甲15,51,70①~⑩,77①~⑤,78,87,乙7から11,原告代表者B)

被告による本件各記事に関する取材等

平成29年9月21日のやり取り
上記⑶イ記載の本件カタログPDFを閲覧した被告の記者(以下被告記者という。)は,平成29年9月21日,原告代表理事(専務)としてカタログ作成等業務全般を統括するBに対して電話で取材を行った。Bは,○被告記者が本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県ⅰ
産の商品がない理由を尋ねたのに対し,掲載していない理由及び経緯について近日中に文書で正式に回答すると述べ,○被告記者が同月22日までⅱ
の回答を要望したのに対し,正式に文書で回答するので同日までという約束はできないと回答するとともに,○被告記者が福島を貶めるために行っⅲ
ているのかと尋ねたのに対し,そのような意図は一切なく,原告サイトの
本件カタログ以外の東日本大震災支援活動も見るよう要望した。
(甲11,22,87,原告代表者B)

平成29年9月22日のやり取り
被告記者は,原告職員に対し,平成29年9月22日,同日中に上記ア記載の事項に係る回答を得られるか尋ねた。
同職員から伝言を受けたBは,同日中に,被告記者に架電し,同月27日の理事会で確認した後で正式に文書で回答するため,同月22日中に回
答することはできない旨を回答したところ,被告記者は,同月23日までに回答がないと記事になってしまう可能性があると述べた。
(甲12,22,87,原告代表者B)

本件記事①及び②の掲載
被告記者は,上記ア及びイ記載の取材結果や東北5県事件の経緯等を基
に原稿を執筆し,福島県(県産品振興戦略課)に対する取材結果を併せ,平成29年9月24日付けの本件新聞朝刊社会面に本件記事①を掲載するとともに,同内容の本件記事②を被告サイト上にて配信した。(甲8①②,乙6,8,弁論の全趣旨)

平成29年9月28日のやり取り
(ア)原告は,被告に対し,平成29年9月27日,前記ア記載の被告記者の質問に対する本件回答(甲16)を送付した。
本件回答においては,○原告が取り扱っている商品(食品)は圧倒的ⅰ
に九州産が多く(それ以東の地域の産物はとても少ない。),取り扱っ
ている福島県産の商品は,東日本大震災以前は化粧品2品目と産地指定米こしひかりであり,大震災以後は若桃の甘露煮(年2回,本件カタログには掲載なし),にんじんを使ったトロッと煮詰めた甘さ控えめお野菜ジャム(年2回,本件カタログに掲載なし),ひまわり油みんなの手(年1回,本件カタログに掲載なし)となっている
こと,○原告は商品の生産者と組合員のつながりがない食品を開発ⅱ
・配置する考えはなく,一般の物品販売業者のように福島県産の商品を商材として取り揃えて販売するために福島県(県産品振興戦略課)に商材を探してもらうような考えもないこと,○原告の東日本大震災復興応ⅲ
援の取組みについて,詳細は原告サイトを見て欲しいことなどが記載されていた。
(甲16,87,原告代表者B)

(イ)本件回答を受領した被告記者及び本件新聞の論説委員は,Bに対し,平成29年9月28日,電話による取材を行ったが,被告記者は,それまで,本件カタログが同年度中の22号として22週目に配布されたカタログであることを理解していなかった。
Bは,原告においては,全ての商品を毎回掲載することはできないの
で年間計画を立てて掲載しており,本件回答に記載された福島県産の商品については,これまでもカタログに掲載しており,今年これから配布するカタログにも全商品を掲載する予定である旨を述べた。また,被告記者が,人とのつながりの中で商品を扱うという部分は変わらないかと尋ねたのに対しては,本件回答に記載したとおりであり,原告の活動
状況についてはぜひ原告サイトを見て欲しいと述べた。
(甲17,22,87,原告代表者B)

本件記事③,同④及び同⑤の掲載被告は,上記エ記載の取材等を踏まえ,平成29年9月28日付けの本件新聞朝刊社会面に本件記事③及び同④を掲載し,同内容の本件記事
⑤を被告サイト上にて配信した。(甲8③~⑤)カ
福島生協による抗議
福島生協は,原告に対し,平成29年9月28日,○原告サイトに掲載ⅰ
している東日本大震災復興応援企画において福島県産の商品が一切掲載さ
れていないことに関して,インターネットや本件新聞に大きく掲載され,もはや福島生協としても看過するわけにはいかなくなった,○この件に関ⅱ
して,原告から経緯の説明や謝罪すらなく,大変遺憾である旨を記載した同月27日付けの貴連合『東日本大震災復興応援企画』に関する抗議を送付した。
これに対し,原告が福島生協に対し,同年12月27日,原告が平成28年から平成29年に至る東日本大震災復興応援企画の中で福島県産
の商品を取り扱っており,原告サイトにも掲載していることを知っているか等として照会を掛けたところ,福島生協は,原告が送付した反論冊子(後記⑸参照)を踏まえ,平成30年1月10日,平成28年夏以降の原告の取組み等について確認して原告の見解について十分理解するに至り,上記抗議文を発送したことについては,もともと原告に対し説明を求める
趣旨であり,抗議文という表現が適切ではなかったと反省しているところであるが,本件新聞に2年連続で大きく取り上げられたことで感情的になり,原告に直接確認しないまま抗議文を発送したことについて深く反省しているとして謝罪した。
(甲10,18,19,35,原告代表者C)


本件記事⑥及び同⑦の掲載
被告は,上記カ記載の福島生協による抗議(甲10)に関する情報をもとに,平成29年9月29日付けの本件新聞朝刊社会面に本件記事⑥を掲載し,同内容の本件記事⑦を被告サイト上にて配信した。(甲8⑥⑦,10)


本件記事⑧及び同⑨の掲載
被告は,それまでの取材をもとに,平成29年9月30日付けの本件新聞朝刊4面に社説である本件記事⑧を掲載し,同内容の本件記事⑨を被告サイト上にて配信した。(甲8⑧⑨,22)

県知事による定例記者会見
県知事は,平成29年10月2日,県知事定例記者会見を開催した。県知事は,会見において,被告の記者が,原告の被災地支援で平成28年に続き,2年連続でまた福島県が外される事態となったことについて,県知事の考えを聞かせて欲しい等と質問したのに対し,そうした報道は確認しており,福島県としては同県産の商品の安全性や魅力を丁寧に発信していくこと,販路の開拓,拡大に向けてしっかり取り組んでいくことが大切な
使命であり,また,残念ながら国内外に風評の問題があるという現実を頭に置きながら,風評払拭にできる限りの様々な施策で対応していくと述べた。(甲68,69)

本件記事⑩の掲載
被告は,上記ケ記載の記者会見を踏まえ,平成29年10月3日付けの
本件新聞朝刊に本件記事⑩を掲載した。(甲8⑩)


原告による反論冊子の送付
原告は,被告に対し,平成29年10月25日頃,本件各記事についての
抗議文(甲22)を送付した。同抗議文には,被告の事実無根の悪宣伝の結果,原告に対する謂れのない怒りと憎悪が産み出されており,新聞の乱用は許されない旨の原告の意見のほか,原告の東日本大震災復興支援活動実績,福島県産の商品の取扱実績や及び本件各記事についての反論等が記載されていた。
また,原告は,日本全国の生活協同組合,一般社団法人日本新聞協会及び
その会員各社並びに原告取引先等の合計2848か所に対し,同年11月から12月にかけて,報道は『正確かつ公正』でなければならないものです。ところが,福島民友新聞社は私たちの説明に一切耳をふさぎ,事実を歪曲し,『グリーンコープは福島県の商品をカタログから除外した』などという事実無根の誹謗・中傷を私たちに浴びせています。新聞の『社会の公器』としての性格を考慮すれば,本当に許されないことです。等の記載に加え,上記被告に対する抗議文を添付した冊子(以下本件冊子という。甲21)を送付した。
(甲21,22,28,35,83①~⑤,84から88,乙12,13,原告代表者C,原告代表者B)
2本件各記事における名誉毀損の成否(争点1及び2)について


総論
不法行為法における名誉毀損とは,事実の摘示又は意見ないし論評の表明により,表現の対象とされた者の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価(社会的評価)を低下させることであり,ある表現における事実の摘示又は意見ないし論評が対象者の社会的評価を低下させるかどうかは,当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方
を基準として,その意味内容を解釈して判断すべきである。
また,民事法上の不法行為である名誉毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合は,摘示された事実が真実であると証明されたときは,上記行為に違法性がなく,不法行為は成立しないものと解するのが相当であり,上記事実が真実であることが証明さ
れなくても,その行為者においてその事実を真実と信じるにつき相当の理由があるときには,上記行為に故意若しくは過失がなく,結局不法行為は成立しないものと解するのが相当である。
以下,本件各記事について,名誉毀損の成否を検討する。


本件記事①及び同②について

事実摘示及び社会的評価の低下
(ア)a

前記前提事実⑶ア及びイ記載のとおり,本件記事①及び同②は,復興応援なのに今年も本県外し等の見出しで,グリーンコープ連合…がホームページに掲載している東日本大震災の復興応援企画に,被災3県のうち本県の商品のみが掲載されていない,『被災地でがんばっている生産者・メーカーを応援しましょう』と銘打ち,同連合が取り扱う宮城,岩手両県の事業者の商品を紹介しているが本県の商品は一切掲載されておらず,インターネットなどでは本県の除外について『批判を聞く気がないのではないか』などの声が上がっている。などと記載されているところ,本県外しや本県の除外という作為的な排除を示す文言が用いられていることからする
と,原告サイトに掲載された東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品が掲載されていないという客観的な事実にとどまらず,原告が意図的に福島県産の商品を除いたために福島県産の商品の掲載がないという事実を摘示したものと認められる。
そして,本件記事①及び同②において,原告の意図の内容について
明示的には言及する記載はないものの,当時の福島県では,本件原発事故により放射性物質が放出されたことに起因する風評被害の問題が生じており(乙1から3,弁論の全趣旨),被告も平成28年6月以降原告による東北5県事件が差別を助長するおそれがある等と報道していた(前記認定事実等⑵参照)ところ,本件記事①及び同②においても,前年の東北5県事件と風評被害を結び付け,その上で今年も本県外しと表現している。そうすると,これを一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,福島県による業者紹介の呼び掛けに原告が応じていない旨の記載と相まって,間接的又は黙示的
に,原告が放射性物質による汚染を懸念して,平成28年に引き続き平成29年も東日本大震災復興応援企画から福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示したものと解するのが相当である。
b
これに対し,被告は,本件記事①及び同②は本件カタログの
東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品が掲載されていなか
った事実を摘示したにとどまると主張するが,同記事には,グリーンコープ連合・・・がホームページに掲載している東日本大震災の復興応援企画にと包括的に記載され,特定のカタログの問題であるとは示されておらず,また,記事の相当部分を割いて平成28年の東北5県事件に言及した上で今年も本県外しと記載されており,一般の読
者としては,原告が平成29年にホームページに掲載している東日本大震災復興応援企画全体から福島県産の商品を除外しているという事実を摘示していると理解するのが通常である(東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品を掲載したカタログも存在するとは認識できない)。被告の上記主張は,実際に記事を読んだ者が,原告が意図的に
福島県産の商品を除いたという理解を前提とする抗議等を行っていること(前記認定事実等⑷カ参照。原告サイトやツイッター等に寄せられた意見については,甲9,33,72①~⑤,乙6参照。)とも整合しない。
それゆえ,被告の上記主張は採用できない。

(イ)上記(ア)判示のとおり,本件記事①及び同②は,原告が放射性物質による汚染を懸念して,平成28年に引き続き平成29年もホームページに掲載した東日本大震災復興応援企画から福島県産の商品を意図的に除いている事実を摘示したものであり,一般の読者において,そのような行為を行った原告は福島県産の商品に対する不当な偏見を有しており,風
評被害を助長している等の否定的な印象を抱かせるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものといえる。
これに対し,被告は,カタログにいかなる商品を掲載するかは原告の自主的な判断に委ねられており,福島県産の商品を取り扱わなかった事実を摘示してもその社会的評価に影響はない旨主張するが,上記のとお
り,本件記事①及び同②は,原告が,本件原発事故の影響を懸念して意図的に福島県産の商品を除いている事実を摘示するものである。被告の主張は,その前提を誤っており,採用できない。

違法性阻却事由
(ア)公共性,公益目的
本件記事①及び同②は,九州及び中国地方を中心に約40万人以上の
組合員を擁する原告(後記3⑶参照)が取り扱う商品について,東日本大震災の被災地で復興支援における課題とされていた風評被害の観点から報道するものであり,そのテーマは多数一般の利害に関係するため関心を寄せることが正当な事実として,公共の利害に関する事実といえる。

また,被告は被災地である福島市内に本店を置く新聞社として,これまでにも幅広く風評被害の問題を取り上げてきた経緯があり(乙2,3),本件記事①及び同②が原告に批判的な立場からの報道を超えて,原告に対する人格攻撃に及んでいるとまではいえないことからすれば,被告は前記公共の利害に関する事実について,公益を図る目的を主たる
動機として記事を掲載したと認めることができる。
(イ)真実性,相当性
しかしながら,前記ア判示の本件記事①及び同②の摘示事実については,カタログの作成に関わったBらが福島県産の商品を除く意図を明確に否定している(甲86,87,原告代表者C,同B)ところ,前記認
定事実等⑶記載のとおり,そもそも平成28年及び平成29年に本件カタログに先立って配布された複数のカタログの東日本大震災復興応援企画に福島県産の商品が掲載されている事実にも反している。加えて,本件カタログを含む多数のカタログの通常ページ(前記前提事実⑵,甲36)及び本件各記事掲載後の東日本大震災復興応援企画(前記認定事実
等⑶ア参照)等に,福島県産の商品が掲載されていることとも整合しない。結局,本件全証拠によっても,原告が平成28年に引き続き平成29年もカタログの東日本大震災復興応援企画から福島県産の商品を意図的に除いていたと認めるに足りない。
また,被告記者の取材に対し,Bは,福島を貶める意図は一切ない旨を述べるとともに,原告サイトの東日本大震災支援活動を見るよう要望し(前記認定事実等⑷ア・エ参照),実際に,原告サイトからは,東日
本大震災復興応援企画のページに福島県産の商品を掲載した平成29年夏ギフトカタログ(甲15,43⑭)や福島県産の商品の販売実績等を確認することができた(前記認定事実等⑶イ参照)。前年(平成28年)に本件謝罪文書(甲6)を受領し,原告が福島県産コシヒカリ等を販売していることを含む記事(乙5)を掲載するなどして,原告による
福島県産の商品の取扱実績を認識していた被告としては,より丁寧な調査を行うことが期待されていたというべきであり,原告サイトに掲載されていた情報の一部(本件カタログの東日本大震災復興応援企画)のみに依拠して前記事実の摘示に及んだことは軽率であったといわざるを得ない。それゆえ,真実性誤信についての相当性も認められない。


以上によれば,違法性阻却の抗弁は失当であり,被告には名誉毀損の不法行為が成立する。



本件記事③,同④及び同⑤についてア
事実摘示及び社会的評価の低下
(ア)a

前記前提事実⑶ウ・エ・オ記載のとおり,本件記事③,同④及び同
⑤は,本県商品早期拡充なしグリーンコープ復興企画方針で回答等の見出しで,グリーンコープ連合…がホームページ上に本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画を掲載していた問題について,被告の取材に対する原告による本件回答(甲16。前記認定事実等⑷エ参照)の要約を引用しつつ本県商品を早期に拡充する考えはないとの方針を明らかにしたなどと記載している。これらの記事が本件記事①及び同②の掲載からわずか4日後に掲載され,同様に本県商品を除外などと表現していることからすると,本件記事
③,同④及び同⑤は,福島県産商品の拡充に関する本件回答をその裏付けと位置付けて紹介しつつ,本件記事①及び同②に引き続き,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示したものと解するのが相当である。本件記事③,同④及び同⑤においては,同連合は…本県産の商品を取り扱っているが,本県商品が除外されていた今回の復興応援企画では『扱っている商品が少なく,時期の関係もあって掲載がなかった』という,取り扱う本県商品については『年間の予定通りに掲載していく』としたなど取材の結果判明した事柄も併せて記載されているが,いずれも原告による福島県産の商品の取扱実績を追記し,本件カタログの復興応援企画に関する原告の言い分を紹介したにとどまり,福島県産の商品を掲載したカタログが既に存在する事実を積極
的に摘示するものではなく,本件記事①及び同②で摘示した事実を変更する趣旨ではないと解されるから,事実摘示に関する上記判断を左右するものではない。
b
これに対し,被告は,本件記事③,同④及び同⑤は本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県の商品が掲載されていなかった事実及び原告による本件回答の内容に係る事実を摘示したにとどまると主張する。しかしながら,これらの記事が本件記事①及び同②と時期的に接着したものであることに加え,福島県産の商品を除外したという表現を踏襲していることに照らすと,本件カタロ
グに対象を限定した言及であると理解することはできず,本件記事①
及び同②の続報としての性格が強いというべきであり,被告主張の客観的事実のみを摘示したものとはいえない。それゆえ,被告の上記主張は採用できない。
(イ)上記(ア)判示のとおり,本件記事③,同④及び同⑤は,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示したものであり,本件記事①及び②と同様に,原告の社会的評価を低下させるものといえる。


違法性阻却事由
本件記事③,同④及び同⑤による事実摘示について,公共性が認められることは本件記事①及び同②と同様である。しかしながら,これらの記事の記載のうち,原告の福島県産の商品の拡
充方針に係る部分は原告による本件回答(甲16)及びBに対する取材結果(前記認定事実等⑷エ(イ)参照)を合理的な範囲で要約したものとして真実と認められるが,原告サイトから福島県産の商品を意図的に除いたという事実については,本件記事①及び同②と同様に,真実であるとは認められない。

また,被告は,前記⑵イ(イ)記載の事情に加え,原告による本件回答及びBに対する取材により,原告が取材の前も福島県産の商品をカタログに掲載していた実績があり,本件カタログでは掲載がなかったものの,平成29年中に他のカタログにも福島県産の商品を掲載する予定があることを確知し,さらに,Bから原告サイトで原告の活動状況等を確認するように再
度求められたのであるから,原告サイトにおける福島県産の商品の取扱状況に関する情報を訂正するべきであったといえ,引き続き上記事実の摘示に及んだことは相当ではない。それゆえ,真実性誤信についての相当性も認められない。
加えて,被告は,上記事実摘示の際に,本件カタログ以外のカタログに
福島県産の商品に関する情報が掲載されていることを認識しつつ,本県商品を除外という記事の掲載を継続したのであるから,誤った情報を提供した事実を覆い隠す意図が窺われ,公益目的を有していたかどうかについては疑問がある。

以上によれば,違法性阻却の抗弁は失当であり,被告には名誉毀損の不法行為が成立する。



本件記事⑥及び同⑦について

事実摘示及び社会的評価の低下
(ア)a

前記前提事実⑶カ・キ記載のとおり,本件記事⑥及び同⑦は,グリーンコープに抗議県生協等の見出しで,グリーンコープ連合…がホームページ上に本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画を掲載していた問題について,福島県生活協同組合連合会は28日までに,同連合に抗議文を送付した,

抗議文では,同連合の方針が県内や全国の生活協同組合の姿勢と捉えられ,消費者の多くから批判を受ける可能性を指摘。

などと記載している。これらの記事が本件記事①及び同②の掲載からわずか5日後に掲載され,同様に
本県商品を除外などと表現していることからすると,本件記事⑥及び同⑦は,原告の方針に関する福島生協の抗議を被告の問題意識に沿う事実として紹介しつつ,本件記事①から同⑤までの掲載に引き続き,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示したものと解するのが相当で
ある。
b
これに対し,被告は,本件記事⑥及び同⑦は本件カタログの
東日本大震災復興応援企画に福島県の商品が掲載されていなかっ
た事実を摘示したにとどまると主張する。しかしながら,これらの記事が本件記事①から同⑤までと時期的に接着したものであることに加え,福島県産商品を除外したという表現を踏襲していることに照
らすと,本件カタログに対象を限定した言及であると理解することはできず,本件記事①から同⑤までの続報としての性格が強いというべきであり,被告主張の客観的事実のみを摘示したものとはいえない。それゆえ,被告の上記主張は採用できない。
(イ)上記(ア)判示のとおり,本件記事⑥及び同⑦は,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている
事実を摘示したものであり,本件記事①から同⑤までと同様に,原告の社会的評価を低下させるものといえる。

違法性阻却事由
本件記事⑥及び同⑦による事実摘示について,公共性が認められることは本件記事①から同⑤までと同様である。
しかしながら,これらの記事の記載のうち,福島生協の抗議に係る部分は,同生協の抗議文(甲10)及び同生協に対する取材結果(甲19参照)を合理的な範囲で要約したものとして真実と認められるが,原告が福島県産の商品を意図的に除いた事実について,真実であるとは認められないこと及び真実性誤信についての相当性も認められないことは,本件記事
①から同⑤までと同様である。福島生協も,前記認定事実等⑷カ記載のとおり,その後,原告の見解を十分理解するに至り抗議文を発送したことを反省している旨,原告に対して謝罪している。

以上によれば,違法性阻却の抗弁は失当であり,被告には名誉毀損の不法行為が成立する。



本件記事⑧及び同⑨について

事実摘示及び社会的評価の低下
(ア)a

前記前提事実⑶ク・ケ記載のとおり,本件記事⑧及び同⑨は,復興応援企画誤解と偏見解かねばならぬ等の見出しで,グリーンコープ連合…が展開する東日本大震災の復興応援企画で,被災3県のうち本県の商品が除外されているなどと記載した社説である。これらの記事においては,原告の東日本大震災復興応援企画について,除外の背景に東京電力福島第1原発事故に伴う県産品への誤解と偏見があるとすれば遺憾である等として仮定的な表現を用いており,一般の読者の普通の注意と読み方とを基準としていかなる事実摘示が行われたのかどうかを検討する必要がある。
この点について,被告は,一般論として,誤解や偏見があるとすればそれらを解く必要があるという意見ないし論評を表明したものにとどまり,原告が誤解と偏見を有していると断定するものではないと主張するが,社説の見出し自体は,仮定的表現を用いておらず誤解と偏見の存在を前提にしており,本文でも,原告が東北5県事件により風評被害を助長しかねないとの抗議を受けた事実(前記認定事実等⑴イ・ウ,同⑵参照)に言及したほか,福島生協による原告への抗議(同⑷カ参照)を当然といえるとして肯定的に評価しているのであるから,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,被告
は,単なる可能性の指摘にとどまらず,原告が福島県産の商品に誤解と偏見を有している事実を摘示したものと解するのが相当である。また,これらの記事が本件記事①及び同②の掲載からわずか6日後に掲載され,同様に本県商品を除外などと表現していることも併せて
考慮すると,本件記事⑧及び同⑨は,本件記事①から同⑦の掲載に引
き続き,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示するとともに,その背景として原告が福島県産の商品に誤解と偏見を有している事実を摘示したものと解するのが相当である。
b
被告は,これらの記事について,本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県の商品が掲載されていなかった事実の摘示とそれを前提とする意見ないし論評等にとどまると主張するが,被告主張の客観的事実のみを摘示したものとはいえないことは既に判示したところと同様であるし,上記a記載のとおり,具体的な根拠及び賛意を示した記載となっていることに照らせば,誤解や偏見を有していることを仮定した意見ないし論評とはいえない。それゆえ,被告の上記主張は採用できない。

(イ)上記(ア)判示のとおり,本件記事⑧及び同⑨は,原告が放射性物質による汚染を懸念して,誤解と偏見に基づいて意図的に福島県産の商品をカタログから除いている事実を摘示したものであり,一般の読者において,そのような行為を行った原告が不当・不合理な活動を行っているものとして否定的な印象を抱かせるから,原告の社会的評価を低下させる
ものといえる。

違法性阻却事由
本件記事⑧及び同⑨による事実摘示について,公共性が認められることは本件記事①から同⑦までと同様である。しかしながら,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商
品をカタログから意図的に除いていると認められないことについては,本件記事①から同⑦までと同様であるし,原告が福島県産の商品に対して誤解と偏見を有している事実が真実であるとも認められない。
また,被告論説委員は,Bに対する取材等を通じて,原告がそれまでも福島県産の商品をカタログに掲載した実績があり,本件カタログでは掲載
がなかったものの,平成29年中に掲載する予定があること認識していた(前記認定事実等⑷エ参照)のであるから,これらの事実の摘示するにあたり真実性誤信についての相当性も認められない。

以上によれば,違法性阻却の抗弁は失当であり,被告には名誉毀損の不法行為が成立する。



本件記事⑩について

事実摘示及び社会的評価の低下
(ア)a

前記前提事実⑶コ記載のとおり,本件記事⑩は,県産品の魅力丁寧に発信グリーンコープ問題の見出しで,グリーンコープ連合…がホームページ上に本県商品を除外した東日本大震災の復興応援企画を掲載していた問題(なお,前記認定事実等⑷ケ記載のとお
り,被告の記者は,県知事に対し,原告の被災地支援で平成28年に引き続き,2年連続で福島県が外される事態となったという誤った前提に基づき質問をしている。)について,県知事が引き続き県産品の安全性や魅力を丁寧に発信していく,

国内外全体に風評の問題がある。そうした事実を頭に置きながら,できる限り風評払拭の対策に取り組んでいくことが重要

という旨等を述べたと記載している。これらの記事が,本件記事①及び同②の掲載から9日後に掲載され,同様に本県商品を除外した・・・問題などと表現していることからすると,本件記事⑩は,県知事が示した風評払拭への意欲を被告の問題意識に沿う事実として紹介しつつ,本件記事①から同⑨までに引き
続き,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘示したものと解するのが相当である。
b
これに対し,被告は,本件記事⑩は本件カタログの東日本大震災復興応援企画に福島県の商品が掲載されていなかった事実を摘示したにとどまると主張する。しかしながら,これらの記事が,本件記事①から同⑨までと時期的に接着したものであることに加え,福島県産商品を除外したという表現を踏襲していることに照らすと,
本件カタログに対象を限定した言及であると理解することはできず,
本件記事①から同⑨までの続報としての性格が強いというべきであり,被告が主張するような客観的事実のみを摘示したものとはいえず,風評被害に関する県知事の発言を原告とは無関係な一般論として紹介したものともいえない。それゆえ,被告の上記主張は採用できない。
(イ)上記(ア)判示のとおり,本件記事⑩は,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いている事実を摘
示したものであり,本件記事①から同⑨までと同様に原告の社会的評価を低下させるものといえる。

違法性阻却事由
本件記事⑩による事実摘示について,公共性が認められることは本件記事①から同⑨までと同様である。

しかしながら,本件記事⑩の記載のうち,県知事の会見に係る部分は同会見内容(前記認定事実等⑷ケ)を合理的な範囲で要約したものとして真実と認められるが,原告が放射性物質による汚染を懸念して,福島県産の商品をカタログから意図的に除いているとは認められず,真実性誤信についての相当性も認められないことは,本件記事①から同⑨までと同様であ
る。

以上によれば,違法性阻却の抗弁は失当であり,被告には名誉毀損の不法行為が成立する。

3原告の損害及び謝罪広告(争点3及び4)について


非財産的損害
前記判示のとおり,本件各記事は名誉毀損として不法行為を構成するところ,違法な事実摘示が短期間に繰り返し行われたことによって,原告が意図的に福島県産の商品を除いたという事実を本件新聞の読者に強く印象付けたと考えられるほか,その一部はインターネット(被告サイト)に掲
載されることによって広く一般に閲覧に供され,実際に原告に対する多数の抗議を惹起したこと等からすると,原告の社会的評価に対する影響は相当程度大きいものであったといえる。
しかしながら,本件各記事の掲載においては,原告自身も不適切な表現であったと自認している東北5県事件がその発端となった可能性は否定できず,被告の行為が同事件を踏まえた問題提起としての側面をも有していたこと,原告の反論等が記載された本件冊子を関係各所に配布済みであること等,本件における一切の事情を考慮すると,原告が被った無形の損害を賠償するための金員は,100万円と認めるのが相当である。


カンパ代
原告は,東日本大震災支援活動として組合員から合計3億2075万8311円のカンパを集め,そのうち3億1500万円余を支援物資購入費
用等に充てることで実際に支援活動を行った(甲27,47から66〔枝番号含む。〕,70①~⑩,73,79①~㉓,80から82〔枝番号含む。〕,86,87,89,原告代表者C,同B,弁論の全趣旨)というのであるから,当該支援活動は復興支援として有益であったということができ,被告の不法行為により組合員が提供したカンパが無価値となる
ことはない。また,原告による東日本大震災支援活動に対する社会的評価が低下したとは認められず,カンパを提供した原告組合員が何らかの損害を被ったとも認められない。それゆえ,カンパ代相当額を被告の不法行為と因果関係ある損害と認めることはできない。


冊子製作・送付費用
表現の自由の保障という観点からは,言論の場において互いに応酬を重ねることを通じて議論を深めるのが望ましいことは論を俟たないが,かかる言論に要した巨額の費用について訴訟を提起して相手方に請求することは,かえって言論や表現を萎縮させる結果となるおそれがある。名誉毀損
表現に対する反論等に要した費用等を相手方に請求することを認めるか否かは,特に慎重な検討を要するというべきである。
本件において,原告は,本件各記事掲載後もカタログを用いた商品供給を従前どおり継続しており(甲43①~○,44①~⑤),記事の掲載によって商品供給に係る売上げが有意に減少した等の事情もうかがわれないほか,構成員である組合員数も本件各記事が掲載される直前の平成29年8月当時で約41万2000人であったのに対し,掲載から約2か月後の
同年12月には約41万7000人に増加し,令和2年6月時点では約42万3000人に至っており(原告代表者C,弁論の全趣旨),消費生活協同組合連合会としての活動に著しい影響が生じたとまでは認められない。また,原告は原告サイトに本件カタログを含む多数の情報を掲載し,積極的に情報を発信していた経緯があり,本件各記事においても原告サイ
トの掲載内容が取り上げられるなど同サイトに対する関心は高まっていたのであるから,原告サイトを活用する等してより低廉なコストで自らの意見を表明することは十分に可能であった。これらの事情に照らすと,原告による本件冊子の作成・送付が原告の名誉回復のために必要であるとはいえず,そのために要するとされる費用658万7572円(甲28,83
①~⑤,84,85,87,88,原告代表者B)が,被告の不法行為との間に相当因果関係がある損害とは認められない。


弁護士費用
本件の事案の内容及び認容額等を総合的に考慮すると,被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用の額は,前記認容額100万円の10パ
ーセントである10万円と認めるのが相当である。


謝罪広告
本件各記事によって低下した原告の社会的評価は,本判決によって非財産的損害請求の一部が認められることにより,相当程度回復すると考えられる
から,原告の名誉回復のために,損害賠償に加えて謝罪広告を命じる必要があるとまでは認められない。
第4結論
以上のとおりであるから,被告は,原告に対し,損害賠償金110万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。
よって,主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第6民事部

裁判長裁判官

立川
裁判官

石山
裁判官

田中毅
(別紙掲載省略)
仁朗悠
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