判例検索β > 令和2年(わ)第65号
詐欺被告事件
事件番号令和2(わ)65
事件名詐欺被告事件
裁判年月日令和2年12月18日
裁判所名・部宮崎地方裁判所  刑事部
裁判日:西暦2020-12-18
情報公開日2021-01-12 12:00:13
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主文
被告人を懲役6年に処する
未決勾留日数中160日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1(令和2年9月25日付け起訴状に係る事実)
被告人は,勤務先の金融機関から顧客に対する融資金名目で現金をだまし取ろうと考え,平成29年3月23日から同月24日にかけて,鹿児島市(住所省略)株式会社A銀行A1支店において,情を知らない同支店行員Mを介すなどして,同支店支店長Nに対し,真実は,顧客であるOが自宅をリフォームする予定はなく,融資金をリフォーム資金に充てる意思もないのにこれらがあるように装い,融資金は被告人が自己の用途に費消する意思であるのにそのことを秘し,内容虚偽のリフォーム費用の見積書等の書類を提出して1000万円の融資を申し込み,前記Nに,融資金は前記O方のリフォーム資金に充てられるものである旨誤信させて,同人に対する1000万円の融資を決定させ,よって,同月27日,前記Mに,被告人が管理する前記支店に開設された前記O名義の普通預金口座に現金1000万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。
第2(令和2年11月5日付け起訴状第1に係る事実)
被告人は,勤務先の金融機関から顧客に対する融資金名目で現金をだまし取ろうと考え,平成29年4月19日,前記株式会社A銀行A1支店において,情を知らない同支店行員Pを介すなどして,前記Nに対し,真実は,顧客であるQが自宅をリフォームする予定はなく,融資金をリフォーム資金に充てる意思もないのにこれらがあるように装い,融資金は被告人が自己の用途に費消する意思であるのにそのことを秘し,内容虚偽のリフォーム費用の見積書等の書類を提出して1000万円の融資を申し込み,前記Nに,融資金は前記Q方のリフォーム資金に充てられるものである旨誤信させて,同人に対する1000万円の融資を決定させ,よって,同月21日,前記Pに,被告人が管理する同支店に開設された前記Q名義の普通預金口座に現金1000万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。
第3(令和2年11月5日付け起訴状第2に係る事実)
被告人は,勤務先の金融機関から顧客に対する融資金名目で現金をだまし取ろうと考え,平成29年5月18日,前記株式会社A銀行A1支店において,情を知らない前記Pを介すなどして,前記Nに対し,真実は,顧客であるRが自宅をリフォームする予定はなく,融資金をリフォーム資金に充てる意思もないのにこれらがあるように装い,融資金は被告人が自己の用途に費消する意思であるのにそのことを秘し,内容虚偽のリフォーム費用の見積書等の書類を提出して1000万円の融資を申し込み,前記Nに,融資金は前記R方のリフォーム資金に充てられるものである旨誤信させて,同人に対する1000万円の融資を決定させ,よって,同月30日,前記Pに,被告人が管理する同支店に開設された前記R名義の普通預金口座に現金1000万円を振込入金させ,もって,人を欺いて財物を交付させた。
第4(令和2年4月16日付け起訴状に係る事実)
被告人は,S(当時32歳)からA銀行本部行員紹介限定の高金利の定期預金名目で現金をだまし取ろうと考え,平成30年10月26日,宮崎市内又はその周辺において,真実は,A銀行本部行員紹介限定の高金利の定期預金はないのにそれがあるように装い,同人に対し,自己の携帯電話機から前記Sの携帯電話機に,アプリケーションソフトLINEを使用して,紹介限定の定期預金があるけど,興味ある?

金利4%だよ。普通は0.02%

かなりお得じゃないと思って。ご紹介。

本部行員紹介限定なのでー。

旨の内容虚偽のメッセージを送信し,これを閲覧した同人をその旨誤信させ,よって,同月29日,宮崎市(住所省略)株式会社A銀行A2出張所において,同人に,株式会社B銀行E支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金500万円の振込手続をさせて,同月30日,同口座に現金500万円を振り込ませ,もって人を欺いて財物を交付させた。
第5(令和2年8月7日付け起訴状に係る事実)
被告人は,(当時32歳ないし33歳)
S
及びその母であるT
(当時67歳)
からA銀行本部行員紹介限定の高金利の定期預金名目で現金をだまし取ろうと考え,別表(略)欺罔年月日欄及び欺罔場所欄記載のとおり,平成30年10月30日頃から令和元年9月24日頃までの間,6回にわたり,宮崎市(住所省略)J株式会社が経営する店舗客室等において,真実は,A銀行本部行員紹介限定の高金利の定期預金はないのにそれがあるように装い,同表被欺罔者欄及び欺罔文言要旨欄記載のとおり,前記Sらに対し,うそを言うなどし,同人らをその旨誤信させ,よって,同表交付事実欄記載のとおり,平成30年11月9日から令和元年9月27日までの間,6回にわたり,同市(住所省略)株式会社A銀行A2出張所北側有料駐車場において,同人から現金500万円の交付を受けるとともに,同市(住所省略)株式会社A銀行A3支店において,同人らに株式会社B銀行E支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金合計3900万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。第6(令和2年11月24日付け起訴状に係る事実)
被告人は,U(当時43歳)から高金利の特別優遇定期預金の立替金精算名目で現金をだましとろうと考え,真実は,高金利の特別優遇定期預金はなく,同定期預金に預け入れる現金を被告人が立て替えた事実もないのにそれらがあるように装い,令和元年8月4日,宮崎市(住所省略)飲食店K1において,前記Uに対し,A銀行で定期預金を開設して1000万円を預けていた方が,

会社に対する融資の審査も通りやすい。

などと言い,同月5日,同市内において,自己の携帯電話機から前記Uの携帯電話機に,アプリケーションソフトLINEを使用して,

1000万円,1年定期,金利はわずかですが上乗せさせて頂きました。出来上がり0.05%です。

旨の虚偽のメッセージを送信し,さらに,同日,同市(住所省略)飲食店K2において,

私がUさんの定期預金として1000万円を立て替えておきました。

広島に帰ったら,私の口座に1000万円を振り込んで下さい。

などとうそを言い,前記Uをしてその旨誤信させ,よって,同月6日,広島市(住所省略)株式会社C銀行F支店G出張所において,同人に,同人の妻である情を知らないVを介して,株式会社A銀行A4支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金1000万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。第7(令和2年4月27日付け起訴状に係る事実)
被告人は,W(当時46歳)からA銀行行員紹介限定の高金利の定期預金名目で現金をだまし取ろうと考え,真実は,A銀行行員紹介限定の高金利の定期預金はないのにそれがあるように装い,令和元年10月1日頃,宮崎市(住所省略)飲食店K3において,同人に対し,

A銀行には行員紹介限定の定期預金があって,金利は4パーセントだ。この定期預金に預入をしないか。

旨のうそを言い,
さらに,
同月18日,
同市内又はその周辺において,
同人に対し,
自己の携帯電話機から前記Wの携帯電話機に,アプリケーションソフトLINEを使用して,

期間は6ヶ月で,自動更新付です。金利は,4%(税引き後3.2%)です。

旨の内容虚偽のメッセージを送信して,同人をその旨誤信させ,よって,同日,同市(住所省略)飲食店K4において,同人から現金100万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。第8(令和2年6月10日付け起訴状に係る事実)
被告人は,Q(当時45歳)からA銀行本部従業員関係者向けの高金利の定期預金名目で現金をだまし取ろうと考え,令和元年10月24日,宮崎市内又はその周辺において,真実は,A銀行本部従業員関係者向けの高金利の定期預金はないのにそれがあるように装い,同人に対し,電話で,

本部従業員関係者向けの特別金利定期預金がある。

この特別金利定期預金の金利は,一般定期預金の年金利が0.010パーセントなのに対して,本部従業員関係者向け特別金利定期預金の年金利は3パーセントである。

一人の上限額が1000万円と決まっており,この特別金利定期預金を紹介できる人数も決まっている。

旨のうそを言うなどし,同人をその旨誤信させ,よって,同年11月8日,
鹿児島市
(住所省略)
株式会社D銀行H支店I出張所において,
同人に,
同人が経営するL株式会社従業員である情を知らないXを介して,株式会社B銀行E支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金1000万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。
(証拠の標目)

(法令の適用)

(量刑の理由)
1
本件当時,銀行員であった被告人は,約2年8か月の間に,①3回にわたり,勤務先の銀行から,顧客にリフォームの予定があるなどとして顧客に対する融資金名目での現金をだまし取るとともに,②合計5名の顧客から合計10回にわたり,高金利の預金があるなどと偽って現金を詐取したのであり,一連の犯行は,常習的に銀行員である立場を利用した悪質なものである。
また,本件で,①銀行からだまし取った合計金額は3000万円,②顧客からだまし取った合計金額は7000万円で,これらの総額は1億円にも上り,被害額は極めて多額である。なお,②につき,本件被害者に対して銀行から被害回復が行われたが,使用者である銀行がしたにすぎず,本件被害者の処罰感情も強いことも考慮すれば,この点を量刑上考慮するとしても限定的なものにすぎない。そして,動機経緯の一つとして借金返済が挙げられるところ,被告人は,借金は銀行員としての実績を上げるための一環でもあったというが,犯行期間中,詐取金をクラブ通いや交際相手との遊興費等としても費消していたのだから,一連の動機経緯に酌むべき事情があるとはいえない。
以上によれば,本件の犯情は相当悪質で,被告人の刑事責任は重大である。2
その上で,被告人に前科がないこと,被告人が本件を認め,反省・謝罪の態度を示していること,勤務先を懲戒解雇されていることなどの事情を更に考慮し,主文の刑が相当と判断した(求刑

懲役8年)


令和2年12月21日
宮崎地方裁判所刑事部
裁判官

角田康洋
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