判例検索β > 令和2年(ネ)第1093号
事件番号令和2(ネ)1093
裁判年月日令和2年11月5日
裁判所名・部東京高等裁判所
裁判日:西暦2020-11-05
情報公開日2021-01-06 16:00:29
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主文1
本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とし,附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。事実及び理由

第1
1
当事者の求めた裁判
控訴の趣旨
原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。

2
附帯控訴の趣旨
原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
控訴人は,消費者との間で,控訴人が運営するポータルサイトモバゲーのサービス利用契約を締結するに際し,原判決別紙契約条項目録記載2の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。控訴人は,その従業員らに対し,控訴人が前項の意思表示を行うための事務を行わないことを指示せよ。

第2
1
事案の概要
被控訴人(原告)は,消費者契約法(以下法といい,平成30年法律第54号(以下本件改正法という。)による改正前の法を改正前法という。)13条1項所定の認定を受けた適格消費者団体であり,控訴人(被告)は,インターネットを使ったポータルサイトモバゲーを運営する株式会社である。
本件は,被控訴人が,控訴人は消費者との間でモバゲーに関するサービス提供契約(以下本件契約という。)を締結するに当たり,法8条1項の不当条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い,又は行うおそれがあると主張し,法12条3項に基づいて,控訴人に対し,消費者との間で本件契約を締結するに際し,原判決別紙契約条項目録記載1及び2の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行わないよう求めるとともに,控訴人が同意思表示を行うための事務を行わないことを従業員らに指示するよう求める事案である。
原審は,①原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求を全部認容し,②同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求を全部棄却したところ,控訴人は,上記①を不服として本件控訴を提起し,被控訴人は,上記②を不服として本件附帯控訴を提起した。
2
関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次の点を改めるほかは,原判決の事実及び理由欄の第2事案の概要
の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決3頁25行目の第八条から4頁1行目の除くまでを第八条第一項第一号又は第二号に掲げる消費者契約の条項にあっては,同条第二項の場合に該当するものを除くに改める。原判決5頁18行目の存在するの次に

(なお,後記とおり,本件規約は改正された。)

を加える。原判決8頁18行目の同月26日付けを平成28年8月26日付けに改める。
原判決9頁17行目末尾に改行して以下のとおり加える。
原判決後の経緯

原審は,令和2年2月5日,①原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求を全部認容し,②同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求を全部棄却する旨の判決を言い渡したところ,控訴人は,同月14日,上記①を不服として本件控訴を提起した。

控訴人は,令和2年3月17日,本件規約の一部の条項を次のとおり改正した(乙11。以下,本件規約の7条1項,7条1項c号,7条1項e号などというときは,改正後のものを指す。)。7条(モバゲー会員規約の違反等について)
1項

モバゲー会員が以下の各号に該当した場合,当社は,当社

の定める期間,本サービスの利用を認めないこと,又は,モバ
ゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。た
だし,この場合も当社が受領した料金を返還しません。
c
他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が合理的に
判断した場合

e
その他,モバゲー会員として不適切であると当社が合理的
に判断した場合


被控訴人は,令和2年6月16日,前記アの②を不服として本件附帯控訴を提起した。」

原判決10頁7行目の判断したを合理的に判断したに改める。
原判決10頁15行目の判断を合理的な判断に改める。
原判決13頁11行目の判断したを合理的に判断したに改める。
原判決13頁12行目の判断を合理的な判断に改める。
原判決14頁26行目の制限的解釈を制限的解釈をに改める。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求は全部理由があり,同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求は全部理由がないものと判断する。その理由は,次の点を改め,当審における控訴人の主張に鑑み後記2を付加するほかは,原判決の事実及び理由欄の第3当裁判所の判断に記載のとおりであるから,これを引用する。原判決17頁4行目の紛争のの次に事後的なを加える。
原判決18頁7行目,8行目及び17行目の各判断したをいずれも合理的に判断したに改める。
原判決18頁10行目及び17行目の各判断をいずれも合理的な判断に改める。原判決18頁18行目のすなわちから22行目から23行目にかけての言わざるを得ないまでをすなわち,控訴人は,上記の「合理的な判断を行うに当たって極めて広い裁量を有し,客観的には合理性がなく会員に対する不法行為又は債務不履行を構成するような会員資格取消措置等を合理的な判断であるとして行う可能性が十分にあり得るが,会員である消費者において,訴訟等において事後的に客観的な判断がされた場合は格別,当該措置が合理的な判断に基づかないものであるか否かを明確に判断することは著しく困難である」に改める。
原判決19頁5行目のe号は,をe号のに改める。
原判決19頁6行目及び9行目の各判断したをいずれも合理的に判断したに改める。原判決19頁12行目から26行目までを以下のとおり改める。
この点に関し,控訴人は,他の企業の規約の中には「当社が判断した場合などの文言を含む条項がある(乙4の1から4の25)旨主張するが,控訴人が指摘する規約の中には,上記条項に関する責任免除規定がないもの,上記条項によって消費者が損害を被る蓋然性が低いものがあるほか,現時点で差止請求がされていないことをもって法に違反していないとはいえないから,当社が判断した場合などの文言を含む他の企業の条項があるからといって,控訴人の本件規約7条1項c号及びe号の内容が著しく不明確であるとの上記判断を左右しない。」
原判決20頁26行目から21頁11行目までを以下のとおり改める。
しかしながら,本件規約7条3項には,単に「当社の措置によりとの文言が用いられ,それ以上の限定が付されていないところ,前記説示したとおり,会員において,同条1項c号及びe号該当性につき明確に判断することは,極めて困難である。さらに,同条3項が

一切損害を賠償しません。

と例外を認めていないことも併せ考慮すると,同項については,契約当事者(控訴人及び会員)の行為規範として,控訴人が不法行為等に基づく損害賠償責任を負わない場合について確認的に規定したものと解することは困難である。」
原判決21頁16行目の被告はから18行目から19行目にかけての第5準備書面)までを控訴人は,改正前の本件規約7条1項c号及びe号の「当社が判断した場合とは当社が合理的な根拠に基づき合理的に判断した場合を意味すると主張しながら,これを当社が合理的に判断した場合と改正したのみであり(乙11)」に改める。原判決22頁1行目から2行目にかけての認められるところを認められ,また,会員資格取消措置等の判断根拠について会員に通知又説明をしていないところに改める。原判決23頁2行目の同項はから4行目末尾までを本件規約12条4項は,本件規約7条3項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示が差し止められることにより,「本件契約において控訴人の責任について規定していない場合に該当する除外事由が存在しなくなったから,本件規約12条4項は,責任の全部を免除する規定であると解することはできない。」に改める。
原判決23頁9行目の3項を3号に改める。
2
当審における控訴人の主張について
控訴人は,本件規約7条3項は控訴人が損害賠償責任を負わない場合にこれを負わないことを確認的に規定したものであって,免責条項ではない旨主張する。
しかし,

イにおいて説示したとおり,本件規

約7条1項c号及びe号にいう合理的に判断したの意味内容は極めて不明確であり,控訴人が合理的な判断をした結果会員資格取消措置等を行ったつもりでいても,客観的には当該措置等が控訴人の債務不履行又は不法行為を構成することは十分にあり得るところであり,控訴人は,そのような場合であっても,本件規約7条3項により損害賠償義務が全部免除されると主張し得る。
また,控訴人は,控訴人が客観的に損害賠償責任を負う場合は,そもそも本件規約7条1項c号又はe号の要件を満たさず,したがって,本件規約7条3項により免責されることもないと主張する。しかし,事業者と消費者との間に,その情報量,交渉力等において格段の差がある中,事業者がした客観的には誤っている判断が,とりわけ契約の履行等の場面においてきちんと是正されるのが通常であるとは考え難い。控訴人の主張は,最終的に訴訟において争われる場面には妥当するとしても,消費者契約法の不当条項の解釈としては失当である。
以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
控訴人は,①一般に合理的限定解釈は許されること,②本件規約7条1項c号及びe号には多数の例示が示されていること,③他の企業においても合理的な判断との条項の意味内容につきトラブルが生じていないことからすると,本件規約7条1項c号及びe号の意味内容は明確である旨主張する。
しかし,上記①については,事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が,その解釈について疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう配慮すべき努力義務を負っているのであって(法3条1項1号),事業者を救済する(不当条項性を否定する)との方向で,消費者契約の条項に文言を補い限定解釈をするということは,同項の趣旨に照らし,極力控えるのが相当である。また,上記②については,控訴人が主張する例示(乙10)によっても,本件規約7条1項c号及びe号該当性が明確になるものとは解し難い。上記③についても,控訴人が主張するとおり,他の企業において,判断,合理的な判断といった条項の意味内容につきトラブルが生じていないとしても,そのことをもって,本件規約7条1項c号及びe号の合理的な判断の意味内容が明確であることを意味するものではない。以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
3
よって,被控訴人の請求を一部認容し,その余をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官

白石
裁判官

浅井
裁判官

湯川史子憲克彦
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