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運転免許取消処分取消請求事件
事件番号令和1(行ウ)322
事件名運転免許取消処分取消請求事件
裁判年月日令和2年7月3日
裁判所名東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-07-03
情報公開日2020-11-26 14:00:30
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令和2年7月3日判決言渡
令和元年(行ウ)第322号

運転免許取消処分取消請求事件
主1文
東京都公安委員会が平成31年4月14日付けで原告に対してした,運転免許取消処分及び1年間を免許を受けることができない期間として指定する処
分をいずれも取り消す。
2
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2
1
事案の概要
本件は,
原告が東京都公安委員会から酒気帯び運転をしたとして運転免許
(以
下免許という。)の取消処分(以下本件取消処分という。)を受けるとともに,1年間を免許を受けることができない期間として指定する処分(以下本件指定処分といい,本件取消処分と併せて本件各処分という。)
を受けたことについて,酒気帯び運転の事実はないなどとして,それらの取消しを求める事案である。
2
関係法令の定め
(1)

道路交通法(以下道交法という。)103条1項5号は,免許を受け
た者が,
自動車等
(普通自動二輪車を含む。
同法84条1項,
2条1項9号,
3条)の運転に関し同法若しくは同法に基づく命令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反したときは,公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消すことができる旨を定める。
(2)

道交法65条1項は,何人も,酒気を帯びて車両等(普通自動二輪車を含
む。同法2条1項17号,8号,9号,3条)を運転してはならない旨を定め,同法117条の2の2第3号は,同法65条1項の規定に違反して車両
等(軽車両を除く。)を運転した者で,その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったものは,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨を定める。
道路交通法施行令(以下施行令という。)44条の3は,道交法117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1mlにつき0.3mg又は呼気1lにつき0.15mgとする旨を定める。
(3)

施行令38条5項1号イは,
免許を受けた者が一般違反行為をした場合に

おいて,当該一般違反行為に係る累積点数が,施行令別表第3の1の表の第1欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の第2欄,第3欄,第4欄,第5欄又は第6欄に掲げる点数に該当したときは,免許を取り消すものとする旨を定める。
施行令別表第3の1の表は,第1欄が前歴が1回である者の第6欄の点数を10点から19点までと定め,施行令別表第2の1の表は,一般違反行為施行令33条の2第1項1号)(
である
酒気帯び運転(0.25未満)の点数を13点とする。
酒気帯び運転(0.25未満)とは,道交法65条1項の規定に違反する行為のうち,身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態(身体に血液1mlにつき0.5mg以上又は呼気1lにつき
0.25mg
以上のアルコールを保有する状態を除く。)で運転する行為を
いう(施行令別表第2の備考の二の9,5,2)。
(4)

道交法103条7項は,公安委員会は,同条1項各号(4号を除く。)の
いずれかに該当することを理由として免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,1年以上5年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする旨を定める。
(5)

道交法104条の3第1項は,
同法103条1項の規定による免許の取消

しは,内閣府令で定めるところにより,当該取消しに係る者に対し当該取消しの内容及び理由を記載した書面を交付して行うものとする旨を定め,道路交通法施行規則30条の4は,上記書面の交付は,免許の取消しに係る者に対し,当該処分の内容を口頭で告知した上,同規則別記様式第19の3の3の処分書を交付することにより行うものとする旨を定める。

3
前提事実
(1)

原告は,
平成28年11月3日当時,
中型自動車免許及び普通自動二輪車

免許を有し,前歴は1回であった(乙1)。
(2)
原告は,平成28年11月3日午後4時30分頃,東京都(住所省略)所
在のC店において,500mlペットボトルに25度の焼酎と水を約1:2の割合で入れた焼酎を飲み始め,
そこから
(住所省略)
付近道路までの約1.
6kmを普通自動二輪車で走行する間に,同ペットボトルの約3分の2の焼酎を飲んだ(乙5,9,10,弁論の全趣旨)。
(3)

原告は,平成28年11月3日午後4時35分頃,東京都(住所省略)付
近道路において普通自動二輪車を運転していたところ,警察官から停止を求められ,(住所省略)先歩道上に停止した(争いがない。)。
(4)

原告は,平成28年11月3日午後5時02分から06分にかけて,水で
うがいをした後,風船に呼気を吹き込み,北川式呼気中アルコール測定器DPA-11型に同風船を取り付けて呼気中のアルコール濃度を測定したところ,同日午後5時06分,呼気1lにつき0.16mgのアルコールが検出された(争いがない。)。
原告は,同日午後5時18分,測定結果を確認し,酒酔い・酒気帯び鑑識カードに署名指印した(乙5)。
(5)

東京地方検察庁立川支部検察官は,
平成29年1月17日,
原告の酒気帯

び運転及び一時停止違反に係る道交法違反被疑事件を不起訴とする処分をした(弁論の全趣旨)。

(6)

東京都公安委員会は,
平成29年6月9日,
本件取消処分に係る意見聴取

期日を開催したが,原告は,事前に欠席する旨を通知し,意見聴取期日に出頭しなかった(乙12,弁論の全趣旨)。
(7)

東京都公安委員会は,平成29年6月9日,原告が酒気帯び運転(0.25未満)を行ったものとして13点を付加し,これにより,原告
の免許を取り消し,免許を受けることができない期間を1年間と指定する処分(本件各処分)をすることを内部的に決定し,本件各処分の処分書を交付するため,同日以降,原告に対し,複数回にわたって出頭通知書を郵送し又は電話を掛け,出頭を求めた。
原告は,平成29年12月22日,府中運転免許試験場に出頭したが,身
分確認ができる運転免許証等を所持していなかったため,本件各処分の処分書を交付することができず,東京都公安委員会職員は,運転免許証を持参して再度出頭するよう依頼した。
東京都公安委員会は,平成30年5月23日,原告に出頭通知書を郵送して出頭を求めたが,原告は出頭しなかった。

東京都公安委員会職員は,平成30年6月10日,原告宅を訪問したが,原告は不在であり,本件各処分の処分書を交付することができなかった。東京都公安委員会職員は,平成30年11月9日,原告の携帯電話に電話を掛けたが,原告は応答しなかった。
(甲1,乙1,13)

(8)

東京都公安委員会は,平成31年4月14日,府中運転免許試験場を訪れ
た原告に対し,本件各処分に係る同日付け運転免許取消処分書(甲1)を交付し,本件各処分をした(乙1)。
(9)
4
原告は,
令和元年6月7日,
本件訴えを提起した
(裁判所に顕著な事実)


当事者の主張
(原告の主張)

以下の理由により,本件各処分は違法である。
(1)

平成28年11月3日午後5時06分に呼気1lにつき0.
16mgのア

ルコールが検出されたことは争わないが,呼気検査の時刻は,本来であれば運転を終え自宅で休んでいたはずの時刻であり,同日午後4時35分の運転中のアルコールの程度は立証されていない。運転時点では,呼気中アルコール濃度はそこまで高くなかった可能性がある。
(2)

酒気帯び運転(0.25未満)の成立要件である身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態とは,運転時に身体に保有されるアルコールが呼気検査をすれば呼気1lにつき0.15mg以上が検出される状態であることをいう(以下A説という。)と解される。(3)

違反行為があったとされる年月日から本件各処分まで2年5か月余りを要
しており,少なくとも意見聴取期日の翌日には本件各処分を行うことが可能であったにもかかわらず,そこからさらに1年10か月余りを要しており,東京都公安委員会の事務処理遅延には合理的理由がない。
(被告の主張)
以下の理由により,本件各処分は適法である。
(1)

原告は,平成28年11月3日午後4時35分頃,呼気1lにつき
0.15mg
以上のアルコールを身体に保有し,酒気を帯び,東京都(住所
省略)付近道路において普通自動二輪車を運転し,もって,道交法65条1項の規定に違反した。
(2)

呼気検査結果は飲酒開始から約35分後のものであり,
運転中の呼気中ア

ルコール濃度を示したものではないが,本件における原告の飲酒内容と同種の飲酒をした場合,飲酒開始5分後において呼気1lにつき0.15mg以上かつ飲酒開始約35分後よりも多量のアルコールが検知されること,さらに,原告の飲酒内容に基づいてその信用性が確立されているウィドマーク式算定法によって運転時の呼気中アルコール濃度を算出すると0.152~
0.255mg/l
となることからすれば,原告が自動二輪車を運転してい
た午後4時35分頃,身体に呼気1lにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態であったことは優に認められる。
(3)

酒気帯び運転(0.25未満)の成立要件である身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態とは,運転時に体内
に呼気1lにつき0.15mg以上に相当する量のアルコールを保有する状態であることをいう(以下B説という。)と解される。
(4)

本件各処分の時期の遅延は,
原告が再三の出頭要請に応じなかったことや,

出頭しても身分証などを所持していなかったことなど,原告自身に原因があるのであって,東京都公安委員会による事務処理の遅延はない。さらにいえ
ば,関係法令上,処分時期に関する規定はないのであるから,処分の時期が遅延したとしても処分手続の瑕疵となるものではない。
第3
1
当裁判所の判断
前記2関係法令の定めのとおり,施行令別表第2の1の表にいう酒気帯び運転(0.25未満)とは,身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態(身体に血液1mlにつき0.5mg以上又は呼気1lにつき0.25mg以上のアルコールを保有する状態を除く。)で車両等を運転することをいい,施行令44条の3は,道交法117の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度として,血液1mlにつき
0.3mg又は呼気1lにつき0.15mgと定める。
ここで,身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態の解釈につき,原告は,運転時に呼気検査をすれば呼気1lにつき0.15mg
以上(以下,血中アルコール濃度についての言及は省略する。)
のアルコールが検出される状態である(A説)と主張するのに対し,被告は,
運転時に体内にそれだけの量のアルコールを保有する状態であればよい(B説)
と主張する。

A説によっても,運転時に呼気検査を行うことは現実的でないから,運転後の呼気検査の結果から運転時における呼気中アルコール濃度を推認することとなるが,A説は,それにより推認される運転時の呼気中アルコール濃度が呼気1lにつき0.15mg以上でなければ酒気帯び運転(0.25未満)は成立しないとするのに対し,B説は,運転後の呼気検査により呼気1lにつき0.15mg以上のアルコールが検出されれば,運転後に追加して飲酒していない限り,運転時には,検査結果に対応するだけのアルコール量又はそれ以上のアルコール量が
(消化器官に吸収され血液や呼気に反映される前であっても)
体内に保有されていたのであるから,酒気帯び運転(0.25未満)が成
立するとするものである。
しかし,施行令44条の3は,直接には道交法117条の2の2第3号の委任を受けて,犯罪構成要件の一部である運転時の身体におけるアルコールの保有状態として,呼気1lにつき0.15mg(以上)と定めているのであるから,運転時において呼気中アルコール濃度が上記の程度に達していることが酒
気帯び運転罪の犯罪構成要件であり,また,道交法103条1項の委任を受けた政令で定める処分基準の内容となっているのであって,運転時に呼気中アルコール濃度が施行令44条の3で定める程度に達したとは認められないのに,運転後の呼気検査結果が上記の程度を超え,運転時において呼気又は血液以外の器官において同程度のアルコールを身体に保有していたことになるというだ
けで酒気帯び運転(0.25未満)が成立すると解釈する(B説)ことは,法令の文言を離れた不当な拡張解釈というべきであり,酒気帯び運転罪を構成し,処分基準にいう酒気帯び運転(0.25未満)を構成する身体に施行令44条の3に定める程度以上のアルコールを保有する状態とは,運転時に呼気検査をすれば呼気1lにつき0.15mg以上のアルコールが検出され
る状態であることをいう(A説)と解するのが相当である。

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