判例検索β > 平成28年(ワ)第4029号
不正競争行為に基づく損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)4029
事件名不正競争行為に基づく損害賠償等請求事件
裁判年月日令和2年10月1日
裁判所名大阪地方裁判所
権利種別不正競争
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2020-10-01
情報公開日2020-11-05 14:01:13
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令和2年10月1日判決言渡

同日原本領収

平成28年(ワ)第4029号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

不正競争行為に基づく損害賠償等請求事件

令和2年10月1日

当事者の表示


別紙1当事者目録記載のとおり

(以下,被告上新電機株式会社及び同P1を,それぞれ被告会社,被告P1という。)主1文
原告の主位的請求につき,請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えを却下する。

2
原告の予備的請求につき,その請求の趣旨第2項のうち,別紙②営業秘密目録記載の営業秘密を使用して作成されたソフトウェア,原価表,業務マニュアル,取引先リスト,見積書,契約書,チェックシート,パンフレット,店舗展示用ディスプレイ設備の廃棄に係る訴えを却下する。
3
被告P1は,別紙2営業秘密目録記載の営業秘密のうち,1-1,1-1-2,1-2,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密を,住宅設備商品,家庭用電化製品,オール電化住宅設備,太陽光発電設備,蓄電設備の製造,販売,若しくはリフォーム工事の設計,施工のために使用し,又は第三者に開示若しくは使用させてはならない。

4
被告会社は,別紙2営業秘密目録記載の営業秘密のうち,1-1,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密を,住宅設備商品,家庭用電化製品,オール電化住宅設備,太陽光発電設備,蓄電設備の製造,販売,若しくはリフォーム工事の設計,施工のために使用し,又は第三者に開示若しくは使用させてはならない。

5
被告P1は,別紙2営業秘密目録記載の営業秘密のうち,1-1,1-1-2,1-2,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密が記載された文書を廃棄するとともに,磁気ディスク,光ディスクその他電磁的記録媒体に記録された上記各営業秘密に係るデータを削除せよ。
6
被告会社は,別紙2営業秘密目録記載の営業秘密のうち,1-1,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密が記載された文書を廃棄するとともに,磁気ディスク,光ディスクその他電磁的記録媒体に記録された上記各営業秘密に係るデータを削除せよ。

7
被告らは,原告に対し,連帯して1815万円及びこれに対する平成28年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

8
原告のその余の主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却する。
9
訴訟費用は,これを250分し,その1を被告らの,その余を原告の負担とする。

この判決は,第7項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1
1
当事者の求めた裁判
原告の主位的請求及び予備的請求

別紙3請求の趣旨の(主位的請求)及び(予備的請求)に各記載のとおり。
2
被告会社の請求の趣旨に対する答弁

(1)本案前の答弁
原告の被告会社に対する主位的請求及び予備的請求の請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えをいずれも却下する。
(2)

本案の答弁

原告の被告会社に対する主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。3
被告P1の請求の趣旨に対する答弁

(1)本案前の答弁
原告の被告P1に対する主位的請求及び予備的請求の請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えをいずれも却下する。
(2)

本案の答弁

原告の被告P1に対する主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。第2
1
事案の概要
本件は,リフォーム事業をその事業の一環として営む原告が,原告の元従業
員であり原告退社後に被告会社に勤務した被告P1が,原告のリフォーム事業に係る営業上の秘密を原告在籍中に不正の手段により取得して被告会社へ開示し(不正競争防止法(以下不競法という。
)2条1項4号)
,又は原告から示されて取得
した当該営業秘密を図利加害目的で使用して被告会社に開示し(同項7号),被告
会社が,当該営業秘密につき,被告P1による不正取得行為が介在すること又は同人が図利加害目的で開示したことを知って又は重大な過失によりこれを知らないで取得し,自らのリフォーム事業に使用した(同項5号,8号)として,被告らに対し,以下の請求をする事案である。
(1)当該営業秘密の使用等の差止め(同法3条1項)並びに当該営業秘密が記載された文書等及び当該営業秘密を使用して作成された文書等の廃棄(同条2項)(2)被告らの上記各行為につき,不競法4条(主位的主張。また,損害額につき,同法5条1項,2項又は3項)
,民法709条及び719条1項又は715条1項
(被告会社に係る予備的主張)に基づく損害賠償金50億円及びこれに対する不正競争又は不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成28年5月12日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の
年5分の割合による遅延損害金の連帯支払
2
前提事実(争いがない事実又は各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実。なお,枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。)
(1)当事者等

原告は,家庭用電気製品,厨房台所用品,住宅設備機器,太陽光発電設備等の販売,施工,付帯工事その他の事業を目的とする株式会社である。原告は,平成21年6月頃,リフォーム事業に新規に本格参入し,システムキッチン,システムバス,トイレ等のリフォームに当たっての住宅設備の販売・設置及びオール電化住宅設備等の販売・設置並びにこれらに伴う工事の設計・施工等を行う事業を営んでいた。

被告会社は,電気製品等の販売,リフォーム工事,水道工事,空調設備・発
電設備・その他の各種設備工事等の請負施工,発電事業及びその管理・運営並びに電気の売買に関する事業その他の事業を目的とする株式会社である。ウ
被告P1は,昭和59年4月から平成18年3月まで住宅設備機器メーカー
に勤務した後,平成18年4月から100満ボルトのストアブランドで家電量販店を営む株式会社サンキュー(以下サンキューという。
)に勤務し,平成2
1年4月には,サンキューの子会社であり産業用太陽光発電システム,オール電化事業,リフォーム事業を主に行う株式会社サンキューハウスシステム(現在の商号は株式会社エディオンハウスシステム
。以下サンキューハウスシステムと
いう。また,同社とサンキューを併せてサンキュー等ということがある。)の
取締役を兼務していた。
また,被告P1は,平成23年10月にサンキュー等が原告の完全子会社化されたことを受けて平成24年4月に原告に出向した後,同年10月には原告に入社し,平成25年4月1日から同年9月30日まではリフォーム事業を担当するエコリビングソーラー統括部(以下ELS統括部という。
)商品開発部部長として,
また,平成25年9月の組織変更により同年10月1日以降はELS商品部商品企画課課長として,原告において勤務した。サンキュー等及び原告においてそれぞれ勤務等していた間,被告P1は,一貫して,家電量販店としてのリフォーム事業の展開に取り組んでいた。
しかし,被告P1は,同年12月31日に原告を退職し,平成26年1月から同年12月末日まで,被告会社にて,リフォーム事業を担当するスマートライフ推進部部長等として,リフォーム関連商品の販売企画等の業務に従事して勤務した。(以上につき,甲5,7,19)

サンキュー等と原告との関係

サンキューは,前記のとおり,リフォーム事業を子会社であるサンキューハウスシステムに担わせ,
100満ボルトのストアブランドで展開する家電量販店に
おいて手掛けていたところ,原告は,平成19年2月にサンキューと資本提携に関する基本合意を締結し,同年6月にサンキューの株式の40%を取得し,平成23年10月には残りの株式を追加取得して,同社を完全子会社化した。なお,この間の平成21年5月以降,原告は,新規事業としてリフォーム事業に本格参入し,大型店舗を中心に順次当該事業を展開していった。
(以上につき,甲166~169)
(2)HORPシステム及びJUMPシステム
原告は,そのリフォーム事業においてHouseSystemOperationReformProgramシステム(以下HORPシステムという。)を使用している。被告会社は,そのリフォーム事業においてJoshinreformUnifyManagementProgramシステム(以下JUMPシステムという。)を使用している。HORPシステム及びJUMPシステムは,●(省略)●
(3)被告らに係る刑事事件に関する事情

被告P1は,原告在職中であった平成25年10月11日,原告本社におい
て,原告より貸与されて業務に使用していたパソコン(以下原告貸与パソコンという。
)を操作して,原告が大阪市内に設置しているサーバコンピュータ(以下原告データサーバという。
)にアクセスし,コンピュータの遠隔操作及びファ
イル転送機能を有するソフトウェアTeamViewer
(以下本件遠隔操作ソフト
という。
)を使用して,原告データサーバ内に保存されていた原告のリフォーム関連商品の仕入原価,粗利金額等の情報を含むデータ81件を自己の所有するパソコン(以下P1私物パソコンという。
)に転送して保存した。その上で,被告P
1は,同月14日,自宅において,P1私物パソコンから自己の所有する外付けハードディスクドライブ(以下P1HDDという。
)に上記データを記録させて複
製し,領得した。

被告P1は,被告会社入社後である平成26年1月21日,被告会社社内に
おいて,2回にわたり,被告会社から貸与されて業務に使用していたパソコン(以下被告会社貸与パソコンという。
)を用いて,同パソコンにインストールした
本件遠隔ソフトを操作して原告貸与パソコンを遠隔操作し,これを介して原告データサーバにアクセスし,原告データサーバに保存されていた原告の販売促進方法に係る情報を含むデータ4件を被告会社貸与パソコンに転送して保存し,取得した。また,同月下旬頃,被告P1は,上記データ4件のうち1件のデータを印字した書面を,被告会社販売促進部部長のP2に交付して開示した。

被告P1は,前記ア及びイの各事実につきいずれも不正競争防止法違反被告
事件として起訴され,平成27年11月13日,これらの事実により,懲役2年付執行猶予3年及び罰金100万円の判決を受け,同判決は確定した。他方,被告会社は,前記ア及びイに係る事実につき,起訴猶予処分とされた。なお,本件では,前記イ記載の情報及び被告P1の行為は対象とされていない。(ア~ウの各事実につき,甲5,乙1)
3
争点

(1)本案前の答弁(争点1)
(2)営業秘密性の有無(争点2)
(3)被告らの不正競争の成否(争点3)
(4)差止及び廃棄請求の成否(争点4)
(5)原告の損害の有無及び額(争点5)
4
争点に関する当事者の主張

(1)

本案前の答弁(争点1)について

(原告の主張)
原告の主位的請求及び予備的請求に係る営業秘密は,それぞれ,別紙3請求の趣旨別紙①又は②の各営業秘密目録の記載により特定されており,差止及び廃棄請求の対象範囲も特定されている。
(被告らの主張)
主位的請求に係る別紙3請求の趣旨別紙①の営業秘密目録(以下営業秘密目録①という。)の記載は,営業秘密の保有者を限定せず,また,リフォーム事業等に関する資料やデータを可能な限り列挙したものにすぎず,広範かつ抽象的にすぎ,営業秘密の特定が全くされていない。
他方,予備的請求に係る別紙3請求の趣旨別紙②の営業秘密目録(以下営業秘密目録②という。)の記載については,同目録7-1~7―3記載のものを除き,対象となる情報が原告保有のものに限定されておらず,情報が記載されているとする文書又は資料(以下文書等という。)を添付資料を用いて特定するのみである。しかも,添付資料とされる文書等には公知・非公知の多種多様な情報が混載されており,その記載事項のうち何をもって営業秘密として主張しているのか判然としない。また,当該営業秘密目録のいずれの項においても,これに類するものという文言が付されており,他の要件によってなされた特定を無意味なものとしている。
以上のとおり,主位的請求及び予備的請求のいずれにおいても,請求原因の根幹である営業秘密及び差止及び廃棄請求の対象範囲が特定されていない。したがって,主位的請求及び予備的請求にかかる差止及び廃棄請求は,請求の趣旨の特定を欠き,民事訴訟法133条2項2号に違反するものとして却下されるべきである。
(2)

営業秘密性の有無(争点2)について

(裁判所注:営業秘密目録①記載の営業秘密と営業秘密目録②記載の営業秘密とは,添付資料の引用の有無において異なるものの,各目録の項番号ごとに対応関係にあると理解されることから,便宜上,より詳細かつ具体的に特定されている営業秘密目録②記載の営業秘密に基づいて原告の主張を整理している。争点3以下についても同様である。)
(原告の主張)

秘密管理性(一般)

(ア)電磁的記録(電子媒体)に化体された情報の取扱い
a
原告は,被告P1の在職当時,営業秘密目録②記載の営業秘密(以下本件各情報という。)のうち,同目録1-1~1-5,2,3-1,3-2,3-4~3-9,4-1~7-4,9(ただし,別紙3請求の趣旨別紙②添付資料9の5枚目のみ)~12記載の各情報(以下,営業秘密目録②の各項記載の情報につき,各項の添付資料番号に従い,資料1-1の情報などという。)が化体したデータを原告データサーバ内に保存していた。原告データサーバ内に保存された情報について,原告は,上記当時,以下のとおり,秘密として管理する措置を施していた(なお,上記以外の情報(資料3-3,8-1~8-4,9(ただし,添付資料9の1枚目~4枚目のみ))の各情報の管理措置については,個別に主張する。)。
b
秘密管理に関する各規程の整備

(a)情報セキュリティポリシー
●(省略)●
(b)情報セキュリティ管理マニュアル
●(省略)●
(c)就業規則の定め
●(省略)●
(d)各規定等の周知徹底
●(省略)●
cデータへのアクセス制限の実施
(a)●(省略)●
(b)●(省略)●
d
ファイルサーバの管理場所への立ち入り制限

●(省略)●
e
原告貸与パソコンの利用制限等

●(省略)●
f
ソフトウェアの無断インストール等の禁止

●(省略)●
g
情報保護ソフトの導入

●(省略)●
h
秘密保持に関する誓約書の作成

●(省略)●
i
以上のとおり,原告は,原告データサーバに保存されていた情報について,
組織的,人的,物理的及び技術的な観点から,漏洩等を防止するための種々の措置を施し,秘密として管理していた。
(イ)紙媒体に化体された情報について
a
原告は,原告データサーバ内に保存されていた情報のうち,資料1-1,1
-3,1-5,1-6,3-4,3-5,3-7,3-8,4-2~4-8,6,7-1~7-4の各情報が化体した紙媒体も保管していた。このような紙媒体に化体した情報についても,原告は,以下のとおり,秘密として管理していた。また,その余の情報(資料1-2,1-4,2,3-1,3-2,3-6,3-9,4-1,5-1,5-2,9(ただし,添付資料の5枚目のみ),10~12)について,原告は,原則として原告データサーバ内にのみ保存していたが,仮に紙媒体が存在していたとしても,同様に秘密管理をしていた。
b
●(省略)●
以上のとおり,原告は,紙媒体に化体した情報についても,組織的,人的,物
理的及び技術的な観点から,漏洩等を防止するための種々の措置を施し,秘密として管理していた。

資料1-1の情報について

(ア)

対象となる部分

●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料1-1の情報は,秘密として管理されている…情報といえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-1の情報は,事業活動に有用な…情報といえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料1-1の情報は,公然と知られていない情報といえる。(オ)以上より,資料1-1の情報は営業秘密に当たる。

資料1-2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料1-2の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料1-2の情報は営業秘密に当たる。

資料1-3の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,前記アのとおり,資料1-3の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-3の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料1-3の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料1-3の情報は営業秘密に当たる。

目録1-4の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,前記アのとおり,資料1-4の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-4の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料1-4は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料1-4の情報は,営業秘密に当たる。

目録1-5の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
これらの事情及び前記アによれば,資料1-5の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-5の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料1-5の情報は,営業秘密に当たる。

資料1-6の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
これらの事情及び前記アによれば,資料1-6の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-6の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
この点及び前記(イ)の事情から,資料1-6の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料1-6の情報は,営業秘密に当たる。

資料2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料2の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料2の情報は,事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料2の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料2の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-1の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-1の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-1の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料3-1の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料3-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-2の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-2の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-3の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-3の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-3の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-3の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-3の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-4~3-6の各情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。

資料3-7の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,前記アのとおり,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-7の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-7の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-8の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-8の情報は,前記アのとおり,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-8の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-8の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-8の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-9の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料3-9の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-9の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●したがって,資料3-9の情報は,公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料3-9の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-1の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料4-1の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料4-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
上記事情及び前記アによれば,資料4-2の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料4-2の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料4-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-3の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-3の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料4-3の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-4について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-4の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
前記チ(エ)と同様に,資料4-4の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料4-4の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-5及び4-6の各情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-5及び4-6の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
前記チ(エ)と同様に,資料4-5及び4-6の各情報は,いずれも公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料4-5及び4-6の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。

資料4-7の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
前記ツ(イ)と同様に,資料4-7の情報は,秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-7の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
前記チ(エ)と同様に,資料4-7の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料4-7の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-8の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料4-8の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料4-8の情報は,営業秘密に当たる。

資料5-1の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料5-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料5-2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,なお公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料5-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料6について

(ア)対象となる部分
●(省略)●同資料記載の情報は本件の対象となる情報である。
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料6の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料6の情報は,事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料6の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料6の情報は,営業秘密に当たる。

資料7-1~7-3の各情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料7-1~7-3の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料7-1~7-3の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料7-1~7-3の各情報は,いずれも公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料7-1~7-3の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。ヒ
資料7-4の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料7-4の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料7-4の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料7-4の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料7-4の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-1の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料8-1の情報は,秘密として管理されていたものといえる。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-1の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料8-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-2の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料8-2の情報は,秘密として管理されていたものといえる。なお,資料8-2が一般顧客に紙媒体で配布されるものであることは認める。(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料8-2の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料8-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-3の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-3の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料8-3の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料8-3の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-4の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-4の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
前記ホ(エ)と同様である。
(オ)以上より,資料8-4の情報は,営業秘密に当たる。

資料9の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料9の情報は,いずれも秘密として管理されていたものといえる。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料9の情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料9の情報は,公然と知られていないものといえる。(オ)以上より,資料9の情報は,営業秘密に当たる。

目録10の情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料10の情報は,秘密として管理されていたものといえる。なお,資料10が商談担当者に紙媒体で配布されたことはない。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料10の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料10の情報は,営業秘密に当たる。

資料11-1~11-3の各情報について

(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものといえる。
なお,資料11-1を内装施工業者,店員,派遣社員等に守秘義務を負わせることなく開示したこと,資料11-2を店長,リフォーム売り場責任者,担当者等の広い範囲で守秘義務を負わせることなく配布したこと,資料11-3を店長,エリアマネージャーその他店舗レイアウト作成担当者に守秘義務なく広く配布したことは,いずれもない。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。
(エ)非公知性
●(省略)●
したがって,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも公然と知られていないものといえる。
(オ)以上より,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。

資料12の情報について
(ア)対象となる部分
●(省略)●
(イ)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料12の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものといえる。
なお,資料12が,多数の下請業者に対し守秘義務を課すことなく広く交付されていたことはない。
(ウ)有用性
●(省略)●
したがって,資料12の情報は,事業活動に有用なものといえる。(エ)非公知性
●(省略)●
(オ)以上より,資料12の情報は,営業秘密に当たる。
(被告らの主張)

原告の秘密管理体制の欠如について

原告が営業秘密であると主張する原告データサーバに保存されていた情報は,以下のとおり,秘密として管理されていたとはいえない。
(ア)データへのアクセス制限について
●(省略)●また,特定の部署以外の従業員が使用する共有フォルダ(Lドライブ及びMドライブ)について,他の部署の従業員には技術的にアクセス権限が付与されていないことの立証はない。
●(省略)●
そもそも,原告データサーバ内の情報については,端末パソコンへのログイン時にIDとパスワードが設定されているだけであり,そこからのアクセスは自由である上,IDとパスワードは,一度交付されれば以後変更がない程度のものしかなかった。
(イ)インスイートに保存されたデータについて
●(省略)●原告の店舗従業員は複数人で共用パソコンを使用しており,また,インスイートからデータのダウンロード,印刷,メール送信が可能であるところ,ダウンロード等されたデータのその後の管理については具体的な立証がない。しかも,●(省略)●本件各情報に係る資料類は,その内容から,所属長に限定して共有するようなものは見当たらないところ,同資料類につき具体的にどの開示範囲の階層設定で共有していたのかを原告が立証しない以上,同資料類は,インスイートを通じて契約社員等を含む原告の全従業員に開示されていたと見られる。(ウ)原告管理マニュアル等の形骸化等
●(省略)●のであり,膨大な情報を日々受け取る原告従業員らがそのマニュアル等を自主的に精読していたとは考えられない。
また,原告における従業員の原告データサーバへのアクセス制限の実施状況(前記(イ))によれば,原告情報セキュリティポリシー及び原告管理マニュアルの各規程は,それが空文化していたといえるほどに運用実態との間に乖離がある。さらに,●(省略)●上記原告の措置はその規程に違反するものである。加えて,原告は,本件遠隔操作ソフトは社内での使用が認められていないものとするにもかかわらず,被告P1のほか,ELS統括部管理部・管理課の責任者として情報管理の必要性を社内に周知する業務に携わっていた者も,原告セキュリティポリシー等に違反すると認識しながら敢えて本件遠隔操作ソフトをインストールするなどしていたというのである。
これらの事情を踏まえれば,原告においては,原告の情報セキュリティに関する社内規則等が従業員に全く認識されておらず,又は実質的に形骸化していたといえる。
(エ)原告社内における営業秘密に関する認識及び認識可能性の欠如●(省略)●その結果,原告従業員にとっては,原告の営業秘密とされている資料であるからといって,当然に社外持出しが禁止されるという認識を持つこと自体が困難であったと見られる。また,原告従業員は,鍵の掛かる保管庫に入れて保管されるような情報についてはその機密性を認識できた可能性があるが,誰でもアクセス可能でダウンロードや印刷ができ,印刷した紙媒体の保管について規制がされていない資料類(本件各情報に係る資料類はこれに当たる。)ないしこれに記載された情報が会社の機密情報であるとの認識があったとは考え難い。また,●(省略)●このため,原告においては,営業秘密に該当するべき情報を従業員等が全く識別,認識できない状況でデータ管理が行われていた。現に,被告P1は,原告管理マニュアル等の存在はもとより,そこで規定されているシステム管理者の存在等も聞かされたことはなかった。また,同人は,原告入社時及び退職時に秘密保持に関する誓約書に署名押印したものの,その詳細について説明を受けたことはない。
(オ)紙媒体に化体された情報の秘密管理性の欠如
本件各情報に係る資料類は,原告データサーバ及びインスイート内にのみ存在していたわけではなく,データの形態でのみ存在していたわけでもない。原告においては,原告データサーバ及びインスイート内のデータを印刷して紙媒体で使用することは制限されておらず,また,上記資料類につき,データでの保有・使用を原則とする,紙媒体での保有・使用を制限するといったルールは存在しなかったと見られる。しかも,上記資料類,とりわけ一覧資料とされるものは,一覧化した趣旨及びその性質上,いずれも,原告社内で,各従業員の手元や店頭において紙媒体で広く保有され,利用されていたと見られる。
そうすると,原告において,紙媒体の資料に化体した情報一般について,適切に秘密として管理されていたとはいえない。
(カ)これらの事情に照らせば,本件各情報は,資料類につきデータか紙媒体かを問わず,原告において,秘密として管理されていたものとはいえない。イ
資料1-1の情報について
原告は,営業秘密の特定として,標準構成明細につき一覧資料として特定しており,そのフォーマットのみに限定して営業秘密として特定したものと理解される。
(ア)秘密管理性の欠如
原告において,標準構成明細は,インスイートによって,原告の1100以上の店舗に勤務する1万7000人以上の従業員に通達され,パート従業員やアルバイトを含むリフォームに携わる全従業員が閲覧していたのみでなく,リフォームに関係のない従業員でも閲覧可能であった。また,原告の従業員は,標準構成明細をインスイートから店舗の共用パソコンにダウンロードし,これを印刷して利用する運用をしており,原告において,これを紙媒体で出力することを禁止したり,秘密にするように従業員に対して具体的に指示していたとは見られない。●(省略)●同社が掛率を知っていることが前提の,かつ,標準構成明細作成前の作業に関するものであるし,同社との取引終了時に同社から標準構成明細を回収したり廃棄を指示した形跡はないから,同社等の社外に標準構成明細が開示されたままとなっていたと見られる。
したがって,資料1-1の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
a
●(省略)●

b
●(省略)●

c
●(省略)●

d
したがって,資料1-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。
(ウ)

非公知性の欠如

●(省略)●
したがって,資料1-1の情報は,公然と知られていないものとはいえない。(エ)以上より,資料1-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-2の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料1-2の作成者はメーカーであるから,同資料は,原告データサーバ内のみに保管されている情報ではない。また,同資料について,データか紙媒体かを問わず,メーカーからの提供の方法ないし経緯,原告社内での保管状況,アクセスの方法・権限者の範囲,使用状況等が不明である。
●(省略)●
したがって,資料1-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
(ウ)以上より,資料1-2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-3の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-3の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-3の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料1-3の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-4の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料1-4の情報について,原告社内における保管状況,アクセスの方法及び権限者の範囲,使用状況等は不明である。
また,資料1-4は,被告P1がサンキュー在籍時に作成され,その頃,被告P1が取得したものであり,そもそも原告が保有する営業秘密ではない。●(省略)●
したがって,資料1-4の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-4の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料1-4の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-5の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料1-5の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。●(省略)●
したがって,資料1-5の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-5の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料1-5の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-6の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-6の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料1-6の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料1-6の情報は,営業秘密に当たらない。

資料2の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料2の情報が原告データサーバに保存されていたか否かは不明である。もっとも,その体裁から,同資料はプレゼンテーション用の資料であり,原告データサーバ内のみに保存することを目的としたものではない。
また,同資料は,パート,アルバイト従業員を含む原告の全従業員が見る資料であり,原告社内において,特にアクセス制限や秘密保持義務を課すこともなく,広くデータ又は紙媒体で配布されている。
したがって,資料2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●被告P1が講演会や取材等で対外的に公言してきた考え方であり,競業他社にとって競争上有用なものではない。また,同資料自体は対外的に公開することを予定していないとしても,社外秘等秘密保持義務を課す旨の記載は同資料にはなく,その内容も,上記の点のほか,原告等が公開している情報である。したがって,資料2の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-1の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-1の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。もっとも,同資料は,その性質上,HORPシステムを使用する原告従業員が随時確認する必要があるものであり,実際,多数の店舗担当者がHORPシステムを使用するに当たって必要に応じて印刷し,会議等にも持参していた。このように印刷された紙媒体の資料が原告において秘密として管理されていなかったことは,前記ア(オ)のとおりである。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●これらの機能は,汎用的な業務ソフトでも備える機能である。そもそも,HORPシステム自体,ありふれた案件管理ソフトにすぎない。したがって,資料3-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)非公知性の欠如
前記(ア)及び(イ)によれば,資料3-1の情報は,公然と知られていないものとはいえない。
(エ)以上より,資料3-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料3-2の情報が原告データサーバで管理されていたか否かは不明である。また,同資料はサンキューでも保有されていた。
同資料は,資料3-1と同様に,その性質上,原告及びフランチャイジーの各従業員が必要に応じて紙媒体に印刷して確認するものであり,閲覧後に廃棄,裁断するものでもない。
したがって,資料3-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●HORPシステムに関する情報だけでは解決できない問題やHORPシステムの課題を記載したものではない。また,HORPシステムに関する情報だけでは解決できない問題を解決するためのツールであれば,それを参考にしてもHORPシステムと同種のシステム開発には寄与しない。
また,同資料の内容は,原告の業務の運用方法を前提にしており,事業規模,組織,業務の仕組みの異なる組織において活用することはできないし,システムの要●(省略)●
したがって,資料3-2の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料3-2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-3の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-3の情報は,被告P1のサンキュー在籍時である平成20年8月頃,三谷コンピュータが作成したものであって,原告データサーバには保存されていない。被告P1がサンキュー在籍時に取得したものがP1HDDに残されていたものと思われる。
サンキューにおいては,セキュリティ管理規定等の社内規定はなく,本件情報保護ソフトの導入もなく,ログ管理についての認識はなく,本件遠隔操作ソフトを多くの者が使用しており,その情報管理体制は甘いものであった。
また,資料3-3は,プレゼンテーション資料として紙媒体で配布されたものである。
したがって,資料3-3の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料3-3の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料3-3の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-4~3-6の各情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-4~3-6の各情報は,いずれも被告P1のサンキュー在籍時に三谷コンピュータが作成したものであり,P1HDDに当時保存したものが残されていただけであって,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されたものではない。
また,資料3-4~3-6は,いずれもリフォーム事業に関わる原告及びサンキューの従業員全般又は少なくとも見積担当者等に紙媒体で配布されたものである。したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料3-4~3-6の各情報は,営業秘密に当たらない。ス
資料3-7の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-7は,被告P1のサンキュー在籍時に作成されたものであり,P1HDDに保存されたものが残っていたのであって,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されているか否かは明らかではない。
●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料3-7の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-8の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-8の情報は,被告P1のサンキュー在籍時に三谷コンピュータが作成したものを被告P1が入手し,P1HDDに保存したものであり,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されたものではない。
また,同資料の情報は,その性質上,紙媒体でも存在し,多くのサンキュー及び原告従業員に配布されていた。
さらに,資料3-8については,用途,使用方法,管理方法が不明であるし,秘密情報であることの表示もない。
したがって,資料3-8の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
そもそも,HORPシステム自体,一般的でありふれた業務管理システムでしかない。
したがって,資料3-8の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料3-8の情報は,営業秘密に当たらない。

資料3-9の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料3-9は,被告P1のサンキュー在籍時に三谷コンピュータが作成したものを被告P1が入手し,P1HDDに保存したものであり,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されたものではない。
また,原告ないしサンキューと三谷コンピュータとの間の秘密保持に関する約定,原告における資料3-9の用途や使用方法,管理方法が不明であるし,秘密情報であることの表示もない。
さらに,資料3-9は,説明書という性質上,原告従業員が紙媒体で保有していたものと見られる。
したがって,資料3-9の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料3-9の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料3-9の情報は,営業秘密に当たらない。

資料4-1について

(ア)秘密管理性の欠如
資料4-1は,被告P1のサンキュー在籍時に作成されたものであり,かつ,原告では使用されておらず,その情報は,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されていたものではない。同資料は専らサンキューで使用されていたものであるが,同社がこれを秘密として管理していたという事情はない。また,同資料の原告における具体的な使用方法,管理状況等も不明である。
さらに,同資料のデータは,その拡張子から,専用のアプリケーションによらなければ展開・表示できないものと見られ,そのようなファイルが秘密情報であることの認識可能性があったとは考えられない。
したがって,資料4-1の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料4-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料4-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料4-2~4-8の各情報について

(ア)秘密管理性の欠如
●(省略)●その際,原告が顧客に守秘義務を負わせることはない。また,資料4-3,4-4及び4-7は,いずれもメーカーが作成し,メーカーのショールームにおいて,紙媒体により無料で配布されるものである。したがって,資料4-2~4-8の各情報は,いずれも秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料4-2~4-8の各情報は,いずれも,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料4-2~4-8の各情報は,いずれも営業秘密に当たらない。

資料5-1の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料5-1は,被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,原告入社後に社名を原告に変更しただけのものであり,原告データサーバに保存されていたか否かは不明である。
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
資料5-1のうち,●(省略)●ごくありふれた内容にすぎない。また,●(省略)●被告P1の発想ないし持論であり,同人に帰属するものである。しかも,資料5-1は,原告に対して守秘義務を負わないサンキューの従業員にも交付されている。
したがって,資料5-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料5-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料5-2の情報について
(ア)秘密管理性の欠如
資料5-2は,被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,原告データサーバに保存されているか否かは不明である。●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
資料5-2のうち,●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料5-2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料6の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
●(省略)●
したがって,資料6の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●このように,資料6の情報は,ありふれた情報である。しかも,前記(ア)のとおり,資料6は,顧客に開示される資料であるとともに取引先商社にもFAX送信されていた。
したがって,資料6の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料6の情報は,営業秘密に当たらない。

資料7-1の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料7-1は,被告P1がサンキュー在籍時に取得したものであり,原告データサーバに保存されていたか否かは不明である。また,●(省略)●メール送信又は印刷された上で,営業責任者,エリアマネージャー,店長,リフォーム売り場責任者等の関係者が集まる会議等において,特に秘密である旨の指定もなく広く配布されたものと見られる。
したがって,資料7-1の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
資料7-1には,●(省略)●
しかも,●(省略)●平成26年1月時点で既に陳腐化した情報であった。したがって,資料7-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料7-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料7-2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料7-2は,サンキュー在籍時に被告P1が入手していたものであり,原告データサーバ及び原告貸与パソコンに保存されていたか否かは不明である。また,同資料は,その記載内容から,資料7-1(前記ナ(ア))と同様に,メール送信又は印刷された上で,会議等において関係者に広く配布されたものと見られる。
したがって,資料7-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
また,資料7-2は,平成23年の情報であり,平成26年1月時点では既に陳腐化している。
したがって,資料7-2の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料7-2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料7-3の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料7-3が原告データサーバ内に保存されているか否かは不明である。また,同資料は,その記載内容から,資料7-1(前記ナ(ア))と同様に,メール送信又は印刷された上で,関係者に広く配布されたものと見られる。したがって,資料7-3の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料7-3の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料7-3の情報は,営業秘密に当たらない。

資料7-4の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料7-4が原告データサーバ内に保存されているか否は不明である。また,同資料は,●(省略)●しかも,資料7-4は,関係者に広く配布されたものと見られる。
したがって,資料7-4の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料7-4の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料7-4の情報は,営業秘密に当たらない。

資料8-1の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料8-1は,被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,P1HDDに保存されていたものの,原告社内において保管されていたことは確認できない。したがって,資料8-1の情報は,原告が保有していた情報ではなく,そうである以上,秘密として管理していたとはいえない。
また,同資料には秘密である旨の表示もない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●資料8-1に含まれる公知でない情報は,サンキューハウスシステム社内においてのみ意味をもつ情報であって,競業他社にとって活用できるものではない。
しかも,サンキューハウスシステムは他社の提供する保証サービスに加入しただけであり,同資料には,サンキュー及び原告独自のノウハウは記載されていない。したがって,資料8-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料8-1の情報は,営業秘密に当たらない。

資料8-2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
●(省略)●顧客,従業員及び施工業者等に守秘義務を負わせることなく広く交付されていたものである。
また,資料8-2は,被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,原告データサーバに保存されたものではない。
したがって,資料8-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
資料8-2の内容はありふれたものであり,この程度の内容の保証書であれば誰でも容易に入手可能である。
したがって,資料8-2の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料8-2の情報は,営業秘密に当たらない。

資料8-3の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
●(省略)●
また,同資料は,被告P1がサンキュー在籍時に個人的に保有していたデータであり,原告データサーバに保存されていたものではない。
したがって,資料8-3の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料8-3の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料8-3の情報は,営業秘密に当たらない。

資料8-4の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
●(省略)●また,同資料は,問い合わせれば判明する情報の寄せ集めである。したがって,資料8-4の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものとはいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料8-4の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料8-4の情報は,営業秘密に当たらない。

資料9の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料9は,いずれも,被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,原告データサーバに保存されていない。仮に同資料の5枚目の情報を原告が保有していたとしても,印刷した上で,リフォーム事業を担当する従業員に広く配布していたものと見られるとともに,秘密である旨の表示もない。
また,●(省略)●問い合わせればすぐに判明する程度の公知の情報の寄せ集めである。
したがって,資料9の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●業者に問い合わせれば容易に回答が得られる公知の情報の寄せ集めである。
したがって,資料9の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料9の情報は,営業秘密に当たらない。

資料10の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料10の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。また,同資料は,メール送信又は印刷した上で,仕入商談担当者に配布されていた資料と見られる。
したがって,資料10の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●そもそも,仕入商談は各業者が独自にメーカーと行うものであって,その態様は千差万別である。このため,競業他社にとって,他社の商談手法を抽象的に知ったとしても,自社の仕入交渉には役に立たない。
したがって,資料10の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料10の情報は,営業秘密に当たらない。

資料11-1の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料11-1の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。
●(省略)●
したがって,資料11-1の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料11-1の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料11-1の情報は,営業秘密に当たらない。ミ
資料11-2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料11-2の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。
●(省略)●
したがって,資料11-2の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
前記(ア)のとおり,資料11-2の情報は公然と実施されており,誰でも容易に知り得る情報である。その内容もありふれたものである。●(省略)●したがって,資料11-2の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料11-2の情報は,営業秘密に当たらない。ム
資料11-3の情報について

(ア)秘密管理性の欠如
資料11-3の情報が原告データサーバ内に保存されていたか否かは不明である。
●(省略)●
したがって,資料11-3の情報は,秘密として管理されていたものとはいえない。
(イ)有用性及び非公知性の欠如
●(省略)●
したがって,資料11-3の情報は,事業活動に有用なものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(ウ)以上より,資料11-3の情報は,営業秘密に当たらない。メ
資料12の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性の欠如
資料12の情報が原告のデータサーバ内に保存されていたか否かは不明である。●(省略)●
したがって,資料12の情報は,秘密として管理されていたものとはいえず,また,公然と知られていないものともいえない。
(イ)有用性の欠如
●(省略)●
したがって,資料12の情報は,事業活動に有用なものとはいえない。(ウ)以上より,資料12の情報は,営業秘密に当たらない。
(3)

被告らの不正競争の成否(争点3)について

(原告の主張)

被告P1による本件各情報の取得

(ア)原告は,●(省略)●被告P1も,これに従って,採用時及び退職時に当該誓約書を作成した。このため,同人は,原告在籍時,就業規則及び採用時の誓約書に基づき,原告に対し,原告の営業秘密に対する守秘義務を負っており,そのことを認識していた。
(イ)前記(2)(原告の主張)アのとおり,●(省略)●にもかかわらず,被告P1は,これに違反して,原告に無断で本件遠隔操作ソフト及びデータ転送のためのオンラインストレージサービスを原告貸与パソコンにインストールしていた。被告P1は,平成25年9月頃に原告を退職する意向を固め,被告会社への就職活動を開始していた同年10月,原告貸与パソコン内に作成したフォルダELSP1内に原告データサーバに保存されていたデータを転送し,保存した(当該フォルダの名称は,後にjcettに変更された。)。当該フォルダの中には,資料1-1,3-6及び6等の情報が保存されていた。
その後(遅くとも同年12月),被告P1は,リフォーム事業の管理職として被告会社に採用されることが内定したところ,同月25日,原告貸与パソコンから自宅のP1私物パソコンに,本件遠隔操作ソフトを用いてELSP1フォルダ内に保存されたデータを転送した上,これをP1私物パソコンからP1HDDに移動ないし複製して保存した。なお,被告P1は,同月30日,使用していた原告貸与パソコンのデータを全て消去するなどし,不正取得の痕跡の隠蔽を図った。(ウ)P1HDD内には,ELSP1との名称のフォルダがあり,同フォルダ内にはpjという名称のフォルダがあり,さらに,同フォルダ内にはHORPという名称のフォルダが存在する。このHORPフォルダ内には,HORPシステムに関する大量のデータが保存されている。また,上記pjフォルダ内には,他に,★★プランニングチェックシート,★★標準構成明細,オリジナル開発,ぷちdeリフォ,商社機能内製化,担当者教育,保証等の名称のフォルダが作成されており,フォルダの名称に沿って原告の本件各情報を含む原告の営業秘密に係るデータが大量に保存されている。
(エ)以上のようなデータ転送の経緯,方法及び時期並びに対象となったデータの内容からうかがわれるとおり,P1HDDに保存された本件各情報に係るデータは,従前バックアップのために保存していたデータが残っていたのではなく,被告P1が,被告会社でのリフォーム事業に使用する明確な意図をもって,不正の手段により取得したものである。
(オ)P1HDDに保存されたサンキューに関する情報については,被告P1がサンキュー在籍時に複製して保存されたものである可能性はある。しかし,サンキューは,平成23年10月に原告の完全子会社となり,原告のグループ企業となった。また,被告P1は,平成24年4月に原告に出向し,同年10月には転籍した。被告P1は,このような経緯において,原告ELS統括部の職務に従事していたものである。そうすると,サンキュー在籍時にP1HDDに保存した情報があったとしても,原告セキュリティポリシー及び原告管理マニュアル等に基づき,被告P1は,原告退職時に当該情報をP1HDDから削除等する義務を負っていた。被告P1は,この義務に違反して,P1HDDに保存した情報を削除することなく持ち出したのであるから,当該情報についても,なお不正に取得したものといえる。(カ)営業秘密保有者からその営業秘密を示された(不正競争防止法2条1項7号)とは,営業秘密を不正取得以外の態様で保有者から取得する場合であり,営業秘密保有者から営業秘密を口頭で開示された場合,手交された場合,アクセス権限が与えられた場合,職務上使用している場合等がこれに当たる。
被告P1は,原告ELS統括部の課長として,原告のリフォーム商品に関する業務を統括する役割を担っていた者であり,業務を遂行するにあたり,原告より付与されたID及びパスワードを用いて原告貸与パソコンから原告データサーバ等に接続し,原告及びサンキュー等が保有する営業秘密を,その業務に必要な範囲で使用していた。すなわち,被告P1は,営業秘密保有者である原告の営業秘密を職務上使用していたのであり,被告P1は,原告及びサンキュー等から営業秘密を示されたといえる。なお,仮に,本件各情報に被告P1が自ら直接作成したものが含まれるとしても,被告P1は,その業務執行に必要な範囲で,業務の一環としてこれを作成し,原告の管理下にある原告データサーバや原告貸与パソコン等に保存していたものである。そうである以上,そのような情報は,被告P1に帰属するものではなく,原告が保有する情報であって,なお原告により被告P1に示されたものといえる。また,被告P1がサンキュー在籍時に同社から適法に示された情報に関しても,同様である。
したがって,仮に被告P1が原告から不正の手段によりその営業秘密を取得したといえないとしても,本件各情報の原告による開示は,被告P1が自ら直接作成したものである場合及びサンキュー在籍時に取得した場合を含め,営業秘密保有者からその営業秘密を示された場合に当たる。イ
被告P1による本件各情報の被告会社に対する開示と被告会社による取得
(ア)被告P1による開示
被告会社の共有データサーバ内のネットワークフォルダ(以下被告会社共有フォルダという。)には,本件各情報のデータが保存されていた。被告P1がP1HDDを被告会社貸与パソコンに接続していたこと,被告会社共有フォルダにデータが保存された資料が大量であることなどからうかがわれるように,被告P1は,被告会社に対し,P1HDDに保存された全てのデータを被告会社共有フォルダに移すことにより,本件各情報を開示した。
また,前記ア(エ)のとおり,被告P1は,被告会社でのリフォーム事業に使用する明確な意図をもって本件各情報を取得したものである。被告P1は,その取得当時,被告会社のリフォーム事業が順調でないことを知っていたところ,本件各情報を使用してリフォーム事業を行った場合,被告会社に多大な利益がもたらされる。したがって,被告P1による上記開示は,被告会社に利益をもたらす目的で行われたものといえる。
(イ)被告会社による本件各情報の取得
被告会社は,被告P1が原告においてリフォーム事業に従事していたことを十分認識した上で,被告会社自らリフォーム事業を広く展開するに当たり,被告P1のリフォーム事業における知識経験を利用しようとしてその採用を決定し,その採用から間もない平成26年2月に,リフォーム事業を担当する部署としてスマートライフ推進部を設置し,被告P1をその部長とした。
また,被告会社共有フォルダには,●(省略)●本件各情報が多数保存されていたところ,上記スマートライフ推進部に所属する被告P1以外の被告会社従業員もその存在を認識しており,実際に部内の会議で資料として使用されることもあった。また,被告会社共有フォルダ上の本件各情報は,これらの従業員のほか,被告会社本社で勤務する従業員は,他の部署の者でも閲覧可能な状態に置かれていた。被告会社共有フォルダに保存された本件各情報に含まれる●(省略)●は,その性質上,社外への開示が一切許されない情報であって,原告と競業関係にある被告会社は,これらの情報を見た時点で,被告P1が原告に対する秘密保持義務等に違反してそれらを被告会社に開示していることを容易に理解できたものであり,現に,被告P1から本件各情報に含まれる情報等を開示された被告会社従業員は,そのように理解した。
以上のような事情から理解されるように,被告会社は,被告P1の開示によって本件各情報を取得したところ,その際,被告P1による本件各情報の不正取得行為が介在したこともしくは被告P1による本件各情報の開示が不正開示行為であることを知り,又は重大な過失によりこれを知らないで,本件各情報を取得したものである。
このことは,被告らによる本件各情報の使用状況(後記ウ)からもうかがわれる。ウ
被告らによる使用

以下のとおり,被告らは,本件各情報を使用した。
(ア)本件各情報に共通する事情
被告会社は,被告P1が原告及びサンキューにおいてリフォーム事業に携わっていたことを認識した上で採用し,採用直後にスマートライフ推進部を立ち上げ,被告P1をその部長に任命している。このことから,被告会社は,被告P1の原告及びサンキューにおけるリフォーム事業の経験や知識を自社のリフォーム事業に使用する目的があったといえる。
被告P1も,被告会社入社後に取引事業者等に対して送付した挨拶において,原告及びサンキューのビジネスモデルのアップグレードやHORPシステムと同じ思想に基づくよりよいオペレーションシステムの開発に言及し,被告会社のリフォーム事業につき原告の事業と同一又はその延長上にあるものとして位置付ける姿勢を示している。
また,被告会社は,遅くとも平成26年2月頃から,システム開発業者であるファンテックに対してJUMPシステムの開発を委託し,同年3月2日に同システムの第1次開発に関する費用を算定の上,同年4月には同システムを導入した。しかも,その開発費用は,家電量販店における業務の流れ等を踏まえ,被告会社におけるリフォーム事業の全体を理解した上でシステム開発を行う費用としてはあまりに安価であり,開発に従事した人員数も非常に限られている。
さらに,被告らは,サンキュー元従業員につき,被告会社への引き抜きを検討したり,被告会社の従業員向けのリフォーム事業に関する研修の講師とするなど,人材面に関しても,原告及びサンキューのリフォーム事業における知識・経験を全面的に活用しようとしていた。
加えて,被告会社では,被告P1が所属するスマートライフ推進部内にとどまらず,リフォーム事業に関わる他の部署の従業員との間でも,被告会社のリフォーム事業に有益な原告に係る情報を被告P1に問合せ等を行い,同人から情報提供を受けることが常態化していた。被告会社の商品開発等に当たっても,被告P1が被告会社共有フォルダに保存した原告のリフォーム商品に関する情報が使用されていた。
実際,被告会社は,平成26年1月の被告P1の入社から1か月後にはスマートライフ推進部を発足させ,同年4月には店舗に初となるリフォームコーナーを開設した後,2か月の間に65店舗,本訴提起時には128店舗にまで増やすなど,急速にリフォーム事業を拡大・展開している。
(イ)資料1-1の情報について
a
P1HDD内には,原告の標準構成明細に係る情報が多数保存されている。
b
被告P1は,平成26年1月,●(省略)●を作成し,被告会社共有フォルダ
に保存すると共に,被告会社スマートライフ推進部に所属する従業員にこれを示し,原告の利益率との比較の上で被告会社の利益率を改善するように強く指導するなど,これを使用して仕入先等との価格交渉を行うなどしていた。●(省略)●このことは,本件比較表の作成に当たり,原告の標準構成明細(資料1-1)の情報がそのまま使用されたことをうかがわせる。
c
被告P1は,平成26年2月,被告会社従業員に対し,原告の使用する標準構
成明細と同様のフォーマットのものを標準構成明細と呼称してメールに添付して送付した。なお,当該添付資料においては,被告会社の社内資料であるにもかかわらず,備考はHORPマスタには反映されませんとして,HORPシステムに言及した記載が存在する。このことは,被告会社において,原告の標準構成明細のフォーマットを変更することなくそのまま流用していることをうかがわせる。d
原告の標準構成明細(甲79の1の2枚目)と,平成26年4月作成に係る被
告会社の標準構成明細(甲87)とを比較すると,●(省略)●
このことからも,被告会社は,原告の標準構成明細のフォーマットをそのまま流用し,リフォーム事業に使用していることがうかがわれる。
(ウ)資料1-5の情報について
資料1-5の情報は,P1HDDに保存されており,被告P1は,同資料を,平成26年2月,被告会社ビジネス開発大阪営業所長のP3に対して交付した。また,資料1-5と被告会社の工事料金表(甲126の2)を比較すると,いずれも,●(省略)●
上記事情から,被告会社が,資料1-5の情報を参考にしてその工事料金表を作成したことがうかがわれる。
(エ)資料1-6について
●(省略)●
上記事情から,被告会社は,資料1-6の情報を使用して,上記設置確認表を作成したことがうかがわれる。
(オ)資料3-3の情報について
●(省略)●
このことから,被告会社では,JUMPシステムの一次的な開発段階から,原告のHORPシステムと概要及び効果を同一にすることを目的としていたこと,そのために資料3-3の情報を使用したことがうかがわれる。
(カ)資料3-6の情報について
被告会社スマートライフ推進部所属の従業員は,平成26年6月28日,被告会社総務部に対し,●(省略)●を添付したメールを送付した。
この被告会社業務フロー図と資料3-6とを比較すると,●(省略)●上記事情から,被告会社がJUMPシステム開発に当たり資料3-6の情報を使用したことがうかがわれる。
(キ)資料3-1~3-8の情報について
資料3-1~3-8の各情報については,HORPシステムに係る以下の事情からも,被告会社によって使用されたことがうかがわれる。
a
HORPシステムの特徴等

●(省略)●
これに対し,市販されている一般的な案件管理システムは,工務店や建設業者等によるリフォーム事業を対象として設計・開発されたものであり,●(省略)●また,工事の管理に主眼が置かれると共に,●(省略)●工務店等が独立して案件を管理することを念頭において開発されている。
このように,HORPシステムと一般的な案件管理システムとは全く異なる。b
HORPシステムとJUMPシステムの類似性等

前記(オ)のとおり,JUMPシステムの理念及び効果は,資料3-3記載のHORPシステムの理念及び効果と,抽象的なレベルにとどまらず,具体的な記載において共通している。
また,JUMPシステムとHORPシステムは,●(省略)●
c
JUMPシステムの開発期間・費用等

原告及びサンキューは,●(省略)●
他方,被告会社では,被告P1入社から2か月後の平成26年3月2日にJUMPシステムの第一次開発に関する費用を算定し,本件稟議書を作成し,同年4月には,実用に耐え得るシステムとして一定の機能を実装したJUMPシステムを開発している。しかも,その費用はあまりに安価であり,開発に従事した人員数も非常に限られている。このことからは,被告会社がファンテックに対してHORPシステムに関する本件各情報を提供することで,要件定義の作業をはじめとする種々の作業を省力化したことをうかがわせる。
(ク)資料4-1の情報について
資料4-1は,被告会社共有フォルダ内にあるエディオン様マスタとの名称のフォルダ内に保存されていた。
そもそも,競業他社のシステムにかかるマスタデータに係る情報が保存されていること自体通常あり得ない状況である上,かかる情報が保存されていたことは,JUMPシステムがHORPシステムのマスタデータを参照にできるほどにHORPシステムに酷似していることをうかがわせる。また,P1HDDには,資料4-1のほかに資料1-4及び3-9の各情報といった多数のHORPシステムのマスタデータに係る情報が保存されていた。そうすると,被告会社は,資料4-1の情報のみならず,P1HDD内のHORPシステムのマスタデータに関する情報を最大限活用してJUMPシステムを開発・運用していたものと見られる。
(ケ)資料6の情報について
原告のプランニングチェックシートである資料6と被告会社のそれ(甲83の2)とを比較すると,●(省略)●
また,原告のパッケージリフォーム商品専用の部材が被告会社の商品構成に組み込まれていることからは,被告会社が,資料6の情報を,フォーマットの作成にとどまらず商品構成の検討の際にも使用していたことがうかがわれる。したがって,被告会社は,資料6の情報を使用したものと見られる。(コ)その余の本件各情報について
前記(ア)~(ケ)記載の各事情によれば,その余の本件各情報についても,被告会社は,リフォーム事業立ち上げのために必要な情報につき,P1HDD内にあった情報を積極的に使用していたと見られる。

小括

以上のとおり,本件各情報のいずれについても,被告らによる不正競争が行われたものである。
(被告らの主張)

本件各情報のP1HDD及び被告会社共有フォルダ内への保存について
本件各情報のうち,資料1-1,1-2,1-4,1-5,2から3-5,3-8,3-9,4-1,5-1,5-2,6(ただし,甲59のみ),7-1~7-4,8-1~8-4,9,10,11-1,11-2及び12の各情報がP1HDDに保存されていたこと,資料1-1及び6の各一部並びに4-1が被告会社共有フォルダに保存されていたこと,資料1-6,4-2~4-8の各情報がP1HDD及び被告会社共有フォルダへの保存が確認されていないことは,いずれも認める。

被告P1の開示及び被告会社の取得について

(ア)本件各情報のうち,被告P1HDDには保存されていても,被告会社共有フォルダには保存されていなかった情報については,被告会社に開示されたことはなく,被告会社が取得,使用したことはない。P1HDDは被告会社本社内の被告P1が使用していた机の引き出し内に保管されていたにすぎない。被告会社共有フォルダのみでなくP1HDDにも保存が確認されない情報については尚更である。(イ)本件各情報のうち,被告会社共有フォルダに保存されていた情報についても,それをもって被告会社に対する被告P1の開示行為ということはできない。被告会社共有フォルダの1層目にはP1という名称のフォルダが存在したと思われるが,被告P1以外の被告会社従業員は,被告P1の指示がない限りこれを開くことはない。その他のデータについては被告会社共有フォルダ内での所在位置(階層)が不明である。
また,原告がHORPシステムに関連する資料とする資料3-1~3-9及び4-2~4-8の各情報について,被告会社共有フォルダに保存されていたことについての主張立証はない。
(ウ)被告P1による本件各情報の取得について
被告P1による本件各情報の取得は,いずれも被告P1が当該情報の管理者の意思に反して行ったものではない。被告P1が本件遠隔操作ソフト等を使用して取得した情報やメール送信,電磁的記録媒体の使用により取得したものがあったとしても,既に取得していた情報については,不正の手段により取得したものとはいえない。また,本件各情報には被告P1自らが作成又は取得したものが含まれるところ,これらの情報は,被告P1が不正取得したものではなく,また,サンキュー又は原告から示された情報ともいえない。
(エ)資料3-1~3-9及び4-1~4-8の各情報について
JUMPシステムは,平成26年2月から,被告会社が,ファンテックと共に,自社の業務上のニーズに合わせて相当の期間・費用・労力をかけて設計・開発し,現在まで継続的にバージョンアップしているものである。その開発に際し,HORPシステムに関連する資料をはじめ,本件各情報を使用したことはない。開発費用については,平成26年4月までの分は限られた期間内で行うJUMPシステムの開発費用の一部にとどまるものであるから,低額すぎるとはいえない。実際,同月の稼働開始時点のJUMPシステムの機能は,簡素なものであった。また,ファンテックは,大手システム開発業者と比較して短期,安価でのシステム開発につき多数の実績を有する開発業者であり,また,過去に他の家電量販店のリフォーム工事管理システムの開発を行った実績もあったこと,被告会社の既存の情報システムの開発等を受注した経験もあったことから,ファンテックがJUMPシステムの開発に要した期間及び費用等は不合理なものではない。
また,HORPシステムとJUMPシステムの業務フロー等において共通する部分は,およそリフォーム事業であれば共通するものであり,両システムの内容は,原告と被告会社との業務フローの相違に応じて異なり,機能,デザイン,構成を個別に見ても,ありふれたものを除き異なっている。
したがって,HORPシステムとJUMPシステムに共通する内容があることは,被告会社による本件各情報の使用をうかがわせる事情とはいえない。ウ
資料1-1の情報について

(ア)フォーマットについて
被告P1は,被告会社の標準構成明細を作成するに当たり,原告の標準構成明細の数値等のデータを消去し,表として使用したにすぎない。その表は,汎用の表計算ソフトであるエクセルを使用したものにすぎず,また,その表のフォーマットは,被告P1自身が開発したものであり,上記操作によって残った計算式も,売価と粗利額,粗利率,仕入原価の関係をそのまま計算式にした程度のものである。また,標準構成明細の考案者が被告P1である以上,画像等の配置や表形式,項目名,色使い等に類似する部分があるのは当然であるし,異なる項目も多数存在することから,原告と被告会社の各標準構成明細の類似は,被告会社による資料1-1の情報の流用を裏付けるものではない。
(イ)記載に係る具体的数値について
a
被告P1は,被告会社において,商品開発や価格決定,仕入交渉を一人で担当
していた。住設機器メーカー及びサンキューでの商品知識や仕入交渉の経験,人脈を生かしてパッケージリフォーム商品を開発した被告P1が,被告会社において,改めて原告の標準構成明細や原価情報を使用し,また,被告会社に開示する必要はない。
b
本件比較表は,平成26年1月に,被告P1がその当時における被告会社の粗
利率等を把握し,原告と比較して粗利額が非常に低いことを示し,自らの理念をP4その他の被告会社のリフォーム事業担当者らに伝えるために作成したものにすぎない。また,被告P1が被告会社従業員に示したのは本件比較表のみであり,甲74の2枚目以降を示したことはない。
さらに,本件比較表を含む甲74のデータは,被告会社共有フォルダに保存されていたものの,被告会社においては被告P1が一人で商品開発や仕入交渉を行っており,被告会社がこれを商品開発等に使用したことはない。
そもそも,被告会社のパッケージリフォーム商品は被告会社において独自に考案,作成したものであり,資料1-1の情報を利用して開発したものではない。

た,被告P1が資料1-1のデータを被告会社共有フォルダに保存したのは,被告会社における商品開発終了後の平成26年7月頃である。
c被告会社の標準構成明細は,平成26年4月に被告P1によって作成されたものであるが,被告P1退職後は,被告会社において使用されていない。そもそも,パッケージリフォーム商品の開発は,商品を選定し,工事を組み合わせ,仕入価格を交渉し,想定粗利を乗せて売価を決定するという作業であり,その手法自体は被告会社に被告P1が入社する前後で変化はない。標準構成明細は,被告P1にとってはともかく,被告会社の他の従業員にとっては,特段有用なフォーマットではなかった。また,被告会社において標準構成明細が使用されていた期間を含め,JUMPシステムのマスタデータは,その開発当初から現在まで,標準構成明細のマスタデータを保有しない仕組みとなっている。JUMPシステムのマスタデータに含まれているのは,顧客への売価のみであり,パッケージリフォーム商品の標準的な内容を顧客の要望で変更した場合に生じる売価の差額だけである。エ
資料1-2の情報について

資料1-2は,P1HDDに保存されていたのみであり,被告会社共有フォルダに保存されていたものではない。
また,掛率は,被告P1が仕入先との交渉で決定した情報である。資料1-2それ自体は,被告P1が原告を介することなくメーカーから直接入手したものである。したがって,資料1-2の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもない。
さらに,メーカーからの仕入値や掛率は,メーカーとの関係,購買力等から販売事業者ごとに異なるため,被告会社が原告の商品別掛率表をメーカーとの仕入交渉に使用することはできない。しかも,被告会社においては,被告P1のみが仕入交渉を行っていたところ,被告P1にとっては,原告の商品別掛率表を使用する必要もない。
このため,被告P1に図利加害目的はなく,また,同人による資料1-2の情報の使用及び開示もない。被告会社が資料1-2の情報を使用したこともない。オ
資料1-3の情報について

資料1-3は,仮にP1HDDに保存されていたとしても,被告会社共有フォルダに保存されておらず,被告会社に開示されたことはない。
また,資料1-3は,被告P1が原告を介することなくメーカーから直接入手したものである。したがって,資料1-3の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもない。
このため,被告P1に図利加害目的はなく,また,同人による資料1-3の情報の使用及び開示もない。被告会社が資料1-3の情報を使用したこともない。カ
資料1-4の情報について

資料1-4は,被告P1がサンキュー在籍時に取得したものであり,単に標準構成明細を整理しただけの資料である。したがって,資料1-4の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもない。
また,被告P1が資料1-4の情報をP1HDDに保存したことがあったとしても,これを被告会社に開示したことはない。
このため,被告P1に図利加害目的はなく,また,同人による資料1-4の情報の使用及び開示もない。被告会社が資料1-4の情報を使用したこともない。キ
資料1-5の情報について

資料1-5は,仮にP1HDDに保存されていたとしても,その作成時に被告P1が原告から開示を受けたものである。したがって,資料1-5の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではない。また,保存先は同所のみであり,資料1-5の情報が被告会社に開示されたことはない。
このため,被告P1に図利加害目的はなく,同人による資料1-5の情報の使用及び開示もない。
さらに,資料1-5のようなバーコード付きの料金表は,バーコードを利用する小売店で広く一般に利用され,レジに設置されるものである。被告会社においては,被告P1の入社前から,資料1-5と同様に,工事名,型番,工事内容,料金等を一覧できる工事料金表を作成し,委託先の工事業者に配布するとともに,各営業店のレジに設置している。この工事料金表は,当然,資料1-5の情報を使用して作成したものではない。また,被告会社のスマートライフ工事料金表(甲126の2)は,ジョーシンサービス株式会社(以下ジョーシンサービスという。)が,工事業者による伝票計上の便宜を図るため,品種記号区分工事コード等を記載して独自に作成したものであり,これも資料1-5の情報を使用して作成したものではない。そもそも,ジョーシンサービスは被告会社と別の法人であるから,同社による資料1-5の情報の取得及び使用は,被告会社による取得等ではない。

資料1-6の情報について

資料1-6の情報は,P1HDDに保存されていない。そうである以上,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が資料1-6の情報を使用したこともない。
なお,被告会社の各種工事の設置確認表(甲127)は,もともと被告会社が行っていたリフォーム事業において使用していた設置確認表(乙24)を改定した資料であり,その際,他社の資料や公刊物等も参考としている。ケ
資料2の情報について

資料2は,被告P1が作成したものであり,また,P1HDDに保存されていたのみである。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が資料2の情報を使用したこともない。

資料3-1~3-3の各情報について

資料3-1は,被告P1が作成したものであり,資料3-2は,その作成時に被告P1が検討・最終確認したものであって,同資料の情報も,被告P1がサンキュー在籍時に既に取得したものであり,資料3-3の情報も,被告P1がサンキュー在籍時既に取得したものである。また,上記各資料の情報は,いずれも,P1HDDに保存されていたのみである。このため,上記各資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が上記各資料の情報を使用したこともない。
被告会社は,HORPシステムを参考にすることなくJUMPシステムを独自に開発したものである。

資料3-4~3-6の各情報について

(ア)資料3-4~3-6の各情報は,いずれもその作成時に被告P1が検討・最終確認したものであり,上記各資料の情報は,いずれも被告P1がサンキュー在籍時に取得していたものである。このため,上記資料の各情報は,いずれも原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示された情報でもない。(イ)資料3-4及び3-5の各情報は,P1HDDに保存されていたのみであり,被告会社に開示されたことはない。被告会社が資料3-4及び3-5の各情報を使用したこともない。
資料3-6については,JUMPシステムの稼働開始後である平成26年4月後半に開催された店舗のリフォーム担当者向け会議の説明資料の作成に当たり,被告従業員P4が,被告P1から同資料のデータの提供を受け,同資料のピクトグラムを利用して被告会社業務フロー図(甲81の2)を作成したことはある。もっとも,資料3-6の情報を使用したのはその限度にとどまり,業務フローそのものについては,被告会社固有のフロー図をもとに完成させており,同資料の情報は使用していない。ピクトグラムそれ自体は営業秘密に当たらない。

資料3-7~3-9の各情報について

資料3-7~3-9の各情報は,いずれも被告P1がサンキュー在籍時取得したものである。このため,上記各資料の情報については,仮にP1HDDに保存されていたとしても,前記コと同様である。

資料4-1の情報について

資料4-1の情報は,原告を介することなく,被告P1が入手した情報である。このため,同資料の情報は,原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示された情報でもない。
また,同資料の情報がP1HDDに保存され,被告会社共有フォルダに保存されていたとしても,被告会社は,被告P1から開示され,取得したことも,使用したこともない。

資料4-2~4-8の各情報について

資料4-2~4-8は,いずれも,P1HDDにも被告会社共有フォルダにも保存されていない。そもそも,資料4-2~4-4及び4-7の各作成日はいずれも本訴提起後であり,資料4-5,4-6及び4-8も,資料4-2等と同じく本訴提起後に作成されたものと見られる。
そうである以上,被告P1が上記各資料の情報を原告から不正の手段により取得することはできず,原告から示された情報でもないし,被告P1の図利加害目的もなく,使用及び開示もない。被告会社がこれを取得・使用したこともない。ソ
資料5-1及び5-2の各情報について

資料5-1及び5-2は,いずれも被告P1がサンキュー在籍時に作成したものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。したがって,上記各資料の情報については,前記コと同様に,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が上記各資料の情報を使用したこともない。タ
資料6の情報について

資料6の情報は,そのフォーマット及び内容とも,被告P1がサンキュー在籍時に作成した情報である。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもない。
また,被告会社は,資料6の情報を被告P1から開示されておらず,これを取得・使用していない。すなわち,被告会社において,被告会社のプランニングチェックシートの書式を作成したのは被告P1である。被告P1は,資料6に基づいてデータを加工したり,これを参照したりしつつ作成したのではなく,自身の知識に基づいて被告会社のプランニングチェックシートを作成した上で,P4に対し,その書式に合わせてシートを作るよう指示したものである。

資料7-1~7-4の各情報について

(ア)資料7-1,7-2及び7-4は,いずれも被告P1がサンキュー在籍時に取得したものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,上記各資料の情報は,いずれも被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が上記各資料の情報を使用したこともない。
(イ)資料7-3について,被告P1は,同資料の作成時に原告から開示を受け,また,自らが管理していた原告貸与パソコン又はアクセスが許容されていた原告データサーバにアクセスし,同資料の情報を取得し,P1HDDにのみ保存したものである。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が同資料の情報を使用したこともない。

資料8-1~8-4について

(ア)資料8-1及び8-2は,いずれもP1がサンキュー在籍中に作成したものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,上記各資料の情報は,いずれも被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。
被告会社も,上記各資料の情報を使用したことはない。被告会社は,平成26年1月当時からリフォーム製品の保証等を第三者に委託して実施している。当該第三者による保証制度の内容は資料8-1の情報と無関係である。他方,被告会社は,被告P1の入社前から太陽光発電システム,オール電化システムの設置工事について10年間の工事保証を行っており,独自の保証書を作成,使用していた。被告P1入社後にリフォーム設置工事の保証を追加したものの,その点を除き,その前後で上記保証書の条項等の変更はない。また,被告会社の上記工事保証書と,資料8-2との間に共通点はない。こうした事情から,被告会社が資料8-1及び8-2の各情報をいずれも使用していないことがわかる。
(イ)資料8-3及び8-4の各情報について
資料8-3及び8-4は,いずれも被告P1がサンキュー在籍時に取得したものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,上記各資料の情報は,いずれも被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。
他方,被告会社が平成26年1月当時からリフォーム商品の保証を第三者に委託していたことなどからもわかるとおり,被告会社も上記各資料の情報を使用したことはない。

資料9の情報について

資料9は,被告P1がサンキュー在籍時に取得したものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,原告から示されたものでもなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。被告会社が同資料の情報を使用したこともない。
他方,被告会社も,同資料の情報を使用したことはない。被告会社は,被告P1の入社前から施工会社を86社有しており,平成27年4月以降新たにリフォーム施工会社を追加したが,これも主に取引先等からの紹介により独自ルートで募集していたものである。むしろ,被告会社では,新規に応募してきたリフォーム施工会社のうち,競合家電量販店からの工事受注実績のある業者は施工会社に加えないようにしていた。こうした事情等から,被告会社が資料9の情報を使用していないことがわかる。

資料10の情報について

資料10は,その作成時頃に被告P1に開示された情報であって,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。
他方,同資料の記載には抽象的・概括的な内容が多く,また,被告会社が10年以上にわたりオール電化商品を取り扱っているといった事情からわかるとおり,被告会社も,同資料の情報を使用したことはない。

資料11-1~11-3の各情報について

資料11-1~11-3は,いずれも被告P1が原告から開示されたものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。
他方,被告会社が上記各資料の情報を使用したこともない。店舗レイアウトは,店舗の広さ,構造,家電その他の商品の売場構成等にも影響を受けること,売り場計画,販売計画は家電量販店各社の事情に応じ,様々な事業者の販促状況を参考にしつつも独自に創意工夫するものであることなどの事情から,被告会社が資料11-1~11-3の各情報を使用していないことがわかる。

資料12の情報について

資料12は,被告P1が原告より開示されたものであり,P1HDDにのみ保存されていた情報である。このため,同資料の情報は,被告P1が原告から不正の手段により取得したものではなく,また,被告P1の図利加害目的もないし,使用及び開示もない。
他方,被告会社が同資料の情報を使用したこともない。被告会社は,被告P1の入社前からリフォーム事情を行い,施工会社との間で業務委託基本契約書を作成していたところ,その前後で契約書の文言に大きな変更はなく,また,これと資料12とでは内容や文言が異なるといった事情からも,被告会社が同資料の情報を使用したことがないことがわかる。

小括

以上のとおり,本件各情報のいずれも,被告らによる不正競争はない。(4)

差止及び廃棄請求の成否(争点4)について

(原告の主張)
原告は,被告P1が原告の営業秘密である本件各情報を不正に取得・開示し,被告会社がこれを使用してリフォーム事業を行っていることにより,営業上の利益を侵害されている。したがって,原告は,被告らに対し,不競法3条1項に基づき,その侵害行為の停止を求める。
また,被告らが保有する営業秘密目録①及び②記載の各営業秘密が記録された文書又は電磁的記録媒体及び同営業秘密を使用して作成されたソフトウェア,原価表,業務マニュアル,取引先リスト,見積書,契約書,チェックシート,パンフレット,店舗展示用ディスプレイ設備は,侵害行為を組成したもの又は侵害行為に供されているものであるから,原告は,被告らに対し,不競法3条2項に基づき,その廃棄を求める。
(被告らの主張)
いずれも争う。
(5)

原告の損害の有無及びその額(争点5)について


被告らの損害賠償責任

(原告の主張)
(ア)前記のとおり,被告P1は,原告のリフォーム事業に係る営業秘密を原告在籍中に不正の手段により取得して被告会社へ開示し(不競法2条1項4号),又は原告から示されて取得した当該営業秘密を図利加害目的で使用して被告会社に開示し(同項7号),被告会社は,当該営業秘密につき,被告P1の不正取得行為が介在すること又は同人が図利加害目的で開示したことを知って又は重大な過失により知らないで取得し,自らのリフォーム事業に使用した(同項5号,8号)。したがって,被告らは,原告に対し,連帯して,上記不正競争による損害を賠償すべき責任を負う(不競法4条)。
(イ)被告会社の共同不法行為責任又は使用者責任
a
不法行為の成立

本件各情報のうち,標準構成明細に係る情報(資料1-1及び1-2の各情報。以下標準構成明細情報という。)及びHORPシステム関係資料に係る情報(資料1-5及び3-1~3-9の各情報。以下HORP関連情報という。)についての不正競争について,被告P1の不正競争のみが認められ,被告会社の不正競争が認められない場合でも,被告会社は被告P1を雇用し,被告P1はその在職期間中に被告会社のリフォーム事業のための商品開発に当たり原告の営業秘密である本件各情報を使用し,被告会社はその開発された商品によりリフォーム事業を行って,原告の営業上の利益を侵害したものである。
また,標準構成明細情報の一部の使用につき,被告会社には,被告P1がこれを被告会社の業務に使用していたことにつき,少なくとも過失がある。したがって,被告P1による上記営業秘密の使用につき,被告会社の不法行為(民法709条)が成立する。
b
共同不法行為の成立

被告会社は,被告P1が不正取得した前記aの営業秘密を保有しており,同人による営業秘密の使用は被告会社内で行われたことから,被告らの行為は客観的に関連共同するものである。
したがって,被告らには共同不法行為(民法719条)が成立し,被告らは,原告に対し,連帯して不競法5条に基づき算定される損害額を賠償する責任を負う。c
使用者責任の成立

被告P1は,その不正競争により原告に対して損害賠償責任を負うところ,前記(ア)のとおり,被告会社は,被告P1を雇用し,同人は,その在職期間中に行った商品開発のために原告の営業秘密を使用したものである。すなわち,被告P1の不正競争は被告会社の事業の執行において行われたものである。
したがって,被告会社は,使用者責任(民法715条)により,原告に対し,被告P1と連帯して不競法5条に基づき算定される損害額を賠償する責任を負う。(被告らの主張)
不競法4条に基づく請求につき,否認ないし争う。
(被告会社の主張-共同不法行為責任又は使用者責任について)
(ア)被告会社が被告P1を雇用していたことは認める。その余は否認ないし争う。(イ)不法行為の不成立
被告会社は,資料1-1の情報のうち本件比較表をP4らに示した局面以外の被告P1の使用を認識していない。資料1-2の情報の使用も認識していない。被告会社の標準構成明細の送付についても,被告P1がジョーシンサービスの従業員に行ったものであり,被告会社はその事実を本件に至るまで認識していなかった。被告P1が,これらの情報を使用した商品開発を被告会社従業員として被告会社のリフォーム事業のために行ったこともない。そうである以上,被告会社に不法行為が成立することはない。
(ウ)共同不法行為の不成立
被告P1の原告在籍時における本件各情報の取得等の行為は被告会社の知り得るものでないし,被告会社採用後の取得行為も,本件訴訟の対象でない情報に係るものである。被告会社の標準構成明細の作成は,標準構成明細情報を使用したものではない。資料1-2については,被告会社は保有しておらず,使用もしていない。そうである以上,被告会社に共同不法行為が成立することはない。
(エ)使用者責任の不成立
被告P1が,被告会社在職期間中に,標準構成明細情報を被告会社の商品開発に使用したことはない。
また,被告会社は,被告P1の選任及びその事業の監督について相当の注意をした。すなわち,被告会社は,被告P1のそれまでの経歴を踏まえて同人を住宅リフォーム事業担当部署の責任者として採用したものである。加えて,同人が原告との秘密保持義務に違反してその営業秘密の不正取得行為を行うことをうかがわせる事情もなかった。このように,被告会社は,被告P1の選任に当たり相応の注意を尽くしていた。
事業の監督についても,被告会社は,被告P1に対し,その入社時に秘密保持の重要性を強調すると共に,被告会社グループの行動規範や情報セキュリティ等を含むコンプライアンス関連文書集を交付し,不正アクセスの禁止や無許可ソフトの業務用パソコンに対するインストール禁止等を厳命していた。しかも,被告会社においては,不競法等の法令遵守や営業秘密の管理を含む高水準のコンプライアンス体制を構築し,従業員に対してもその遵守を継続的に指導教育してきた。このように,被告会社は,事業の監督につき相当の注意を尽くしていたものであり,被告P1が,このようなコンプライアンス体制等を無視して営業秘密の不正取得や使用行為を行ったとしても,被告会社に使用者責任が成立することはない。イ
損害額その1(不競法5条1項の適用について)

(原告の主張)
(ア)技術上の秘密
a
意義

技術上の秘密(不競法5条1項)とは,生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であり,物の生産に直接寄与する技術だけでなく,生産工程の効率化やコストカットに関する技術も含むものであって,およそ技術に関係しない情報を除いては,技術上の秘密に当たる。
b
標準構成明細情報について

標準構成明細情報は,●(省略)●
したがって,標準構成明細情報は,技術上の秘密に当たる。
c
HORP関連情報について

●(省略)●
また,●(省略)●
HORP関連情報は,●(省略)●
したがって,HORP関連情報は,技術上の秘密に当たる。
(イ)侵害の行為を組成した物について
侵害の行為を組成した物(侵害組成物)には侵害の行為により生じた物を含むところ(不競法3条2項),これは,営業秘密の不正使用行為(侵害行為)によって直接的に生じた物全てを含む。これには,有体物のみならず,サービスや役務も含まれる。
まず,被告会社は,HORP関連情報を用いてJUMPシステムを開発したものであるから,JUMPシステムは,侵害の行為を組成した物に当たる。また,被告会社は,上記のようにJUMPシステムを開発した上,標準構成明細情報及びJUMPシステムを使用することで,パッケージリフォーム商品の販売によるリフォーム事業を展開している。すなわち,被告が販売するパッケージリフォーム商品は,全てJUMPシステムを通じて商品構築されている上,被告会社は,基本形となるパッケージリフォーム商品の商品構成をJUMPシステムに予め搭載し,顧客ごとに調整を加えて,商品・サービスの提供を行っているところ,このような調整作業をJUMPシステムによって行っている。
このように,被告会社の顧客ごとのパッケージリフォーム商品・サービスは,JUMPシステムを使用することによって調整して生成されるものであるから,これらも侵害の行為により生じた物すなわち侵害の行為を組成した物に当たる。
(ウ)譲渡数量について
本件における譲渡数量とは,被告会社がJUMPシステムを用いてパッケージリフォーム商品というサービスを顧客に提供し,受領した金額の総額すなわち売上額を意味する。
なお,被告P1は,パッケージリフォーム商品を自ら販売していないが,自らHORP関連情報を用いてJUMPシステムの開発や被告会社のパッケージリフォーム商品の開発に携わった者であることから,被告会社のパッケージリフォーム商品の譲渡数量をもって,被告P1の譲渡数量となる。
(エ)被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物とは,市場において侵害品と代替可能性のある被侵害者の商品であれば足り,侵害品と市場において排他的な関係に立つ被侵害者製品を被侵害者が販売しているという関係にあれば足りる。本件において,原告と被告会社はともに家電量販店であるから,業種業態において同様の両者が同種同様の商品を販売すれば,市場において競合する。また,単位数量当たりの利益の額とは,被告会社のパッケージリフォーム商品の売上額に乗ずることとなる原告の限界利益率である。
(オ)被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力
原告は,被告会社による不正競争が行われた平成26年当時,HORPシステムを導入してパッケージリフォーム商品の販売事業を展開して6年以上が経過しており,原告のリフォーム展開店舗数は●(省略)●店舗であった。他方,被告会社において,現在リフォームコーナーを展開する店舗数は222店舗中192店舗である。したがって,被告会社によるパッケージリフォーム商品の販売数量は,原告の販売能力を超えるものではない。
(カ)損害額
a
逸失利益

50億円

被告会社の不正競争による売上額は,少なくとも200億円である。また,リフォーム事業における業界の平均的な粗利率は28%とされており,原告の限界利益率は少なくとも25%を下らない。
したがって,原告の損害額は,不競法5条1項に基づき,50億円となる。b
調査費用

●(省略)●

原告は,本訴提起に当たり,被告P1の不正競争を調査する上で,株式会社エヌワーク(以下エヌワークという。)に対して,被告P1が使用していた原告貸与パソコンの調査を依頼し,その操作ログ等の確認や,外部の専門の解析業者への協力を得た上で調査を行い,これに●(省略)●を要した。
c
弁護士費用相当額

5億円

原告は,被告らの不正競争により本件訴訟の提起を余儀なくされた。これと相当因果関係にある弁護士費用相当損害額は,5億円を下らない。
d
小括

原告は,被告らに対し,前記a~cの損害額全額●(省略)●のうち,本件においては,50億円の限度で,連帯して損害賠償を請求する。
(被告会社の主張)
(ア)不競法5条1項の適用がないこと
a
不競法5条1項において,営業秘密につき,技術上の秘密に関するものに限定
されているのは,これらが特許類似と考えられ,技術上の秘密が商品に化体し,これを市場で譲渡することによって,被侵害者がその商品を販売することができないという因果関係が成り立つことが,特許法102条1項と同様に考えられるのに対し,顧客名簿等の営業上の秘密の場合,営業上の秘密が化体された商品を譲渡したわけではなく,それを使用されることによって,本来成立するはずであった契約の受注を失ったという関係にないため,同様の算定方式が妥当しないことによる。b
標準構成明細情報について

標準構成明細情報は●(省略)●いずれも営業上の情報であって,被告会社のパッケージリフォーム商品に化体しておらず,技術上の秘密ではない。c
HORP関連情報

HORPシステムは,●(省略)●これらは,システム開発者におけるシステム情報,製品の開発設計,製造手段であるシステム情報等のような技術上の情報ではなく,営業上の情報である。
また,原告が市場で譲渡対象としている商品はパッケージリフォーム商品であって,HORPシステムはその営業を支援するツールではあっても,譲渡対象そのものではない。この点は,被告会社のJUMPシステムも同様であり,JUMPシステムがなければリフォーム商品を販売できないわけでもない。HORP関連情報の内容に鑑みれば,それによってシステム開発が容易になるといったものではなく,せいぜい,JUMPシステムの一次開発分の開発段階で,同業他社のシステムに関する情報として,また,開発を検討しているシステムの社内用の説明資料等の作成に当たって参考にしたり,資料作成を若干短縮したりできるといった程度以上の意味はなく,JUMPシステム開発への具体的な寄与はない。
したがって,仮にHORP関連情報がJUMPシステムの開発過程で参考にされたことがあったとしても,HORP関連情報が被告会社のパッケージリフォーム商品に化体しているという関係にはないから,被告会社の販売したパッケージリフォーム商品は侵害組成物に当たらない。
(イ)推定の覆滅又は因果関係の不存在
仮に被告会社による侵害行為があったとしても,原告には,当該侵害行為と因果関係のある逸失利益が生じていない。
すなわち,被告会社のリフォーム商品は,被告会社の営業努力と多大な投資によって形成されたものである。また,平成26年度のリフォーム市場全体における原告のシェアは1%に満たず,リフォーム事業の取扱業者はリフォーム専業業者,工務店等多種多様であり,実際の現場でも,競合相手の大半は工務店等であって,家電量販店同士が競合する例は少ない。しかも,原告のリフォーム事業における販売方針は,工務店等で補足しきれていない潜在需要の喚起を主眼としており,家電量販店との競合を問題としていない。加えて,原告と被告会社では,店舗数,市場エリア等も異なり,競争力の点でも大きな開きがある。
これらの事情を踏まえると,仮に被告会社の侵害行為が認められるとしても,それがなければ被告会社のリフォーム商品の譲渡数量に相当する量を原告が販売できたという関係は成り立たない。
さらに,標準構成明細情報は,それがわかったところで被告会社がそれを自社のリフォーム商品の価格にそのまま当てはめることができるわけではないし,書式や一覧表により整理するというアイデアによってリフォーム商品が販売されているわけではない。
HORP関連情報も,仮に被告会社のリフォーム商品の譲渡数量に何らかの寄与があったとしても,その程度は抽象的なものであり,具体的に数量化できるものではない。
(ウ)調査費用及び弁護士費用相当額について
いずれも争う。エヌワークは原告の子会社であり,原告のシステムプログラムの保守管理を担当していることから,退職者のパソコンの操作ログの確認等は,もともとの保守管理契約の範囲内の業務と見られる。また,外部の専門の解析業者に対する調査費用支出を裏付ける資料はない。
(被告P1の主張)
以下のとおり,本件において,不競法5条1項の適用はない。
(ア)技術上の秘密というには,商品そのものの構造や生産方法に関する具体的な情報である必要があり,少なくとも,販売対象となる商品にその秘密の価値が具体化される性質のものであって,不正競争がなければ当該商品を製造等できない又はその商品の価値が低下するといった定型的な関係があることを要する。また,侵害組成物といえるためには,営業秘密が実際に物そのもの又は物の生産そのものに用いられていなければならず,開示があっても実際に使用されていない場合はこれに当たらない。
(イ)標準構成明細情報について
a
●(省略)●このため,構成明細情報は,販売対象となる商品に情報の価値が
具現化される性質のものとはいえず,技術上の秘密には当たらない。b
標準構成明細情報のような営業上の情報は,商品に化体して譲渡の対象となる
ことはなく,侵害の行為を組成した物にも当たらない。実際にも,被告会社のパッケージリフォーム商品には,標準構成明細資料と同じ構成及び価格(掛率,仕入価格,販売価格,工事料金)のものは全く存在しない。
(ウ)HORP関連情報について
a
●(省略)●

したがって,HORP関連情報は,パッケージリフォーム商品に情報の価値が具体化される性質のものではなく,技術上の秘密に当たらない。
b
被告P1は,JUMPシステムの一次開発が完了した平成26年4月後半頃に,
資料の書式を指示する趣旨で資料3-6をP4に交付したことがあるだけであり,JUMPシステムの開発に,HORP関連情報は参照すらされていない。実際に開発されたJUMPシステムにおいてHORP関連情報がその一部にでも用いられているということもない。
仮にHORP関連情報がJUMPシステムの開発・使用に使用されたとしても,この場合に侵害組成物となり得るのはJUMPシステムそのものであって,パッケージリフォーム商品ではない。JUMPシステムは単なる案件管理システムであって,パッケージリフォーム商品の構造や品質とは無関係であり,何ら商品を生産するシステムではなく,工事を施工するための機械でもない。
したがって,被告会社のパッケージリフォーム商品は侵害組成物に当たらない。(エ)調査費用及び弁護士費用相当額について
いずれも争う。

損害額その2(不競法5条2項の適用について)

(原告の主張)
不競法5条2項は,不正競争によって営業上の利益を侵害された者がその損害の額を立証することは必ずしも容易ではなく,十分な賠償を受けられないことに鑑み,立証の負担を軽減するために設けられたものである。また,同項は,不正競争の類型全てを適用対象とする。このため,前記イ(原告の主張)をも踏まえれば,本件において同項の適用が否定されることはない。
加えて,被告会社は,原告の営業秘密の不正使用によりJUMPシステムを構築し,これを継続的に使用してパッケージリフォーム商品を販売し,利益を受けている。原告と被告会社は,直接的な競合関係にあり,営業秘密の継続的な不正使用によって被告会社が挙げているパッケージリフォーム商品事業の売上・利益は,原告の売上・利益の喪失と極めて強い因果関係がある。
以上より,被告会社が営業秘密の不正使用によって得たパッケージリフォーム商品の販売利益は,不競法5条2項の適用により,原告が受けた損害の額と推定される。
その額及び本件において賠償を求める損害額については,前記イ(原告の主張)(カ)と同様である。
(被告会社の主張)
以下のとおり,本件において,不競法5条2項の適用はない。損害に係るその余の主張は,前記イ(被告会社の主張)(ウ)と同様である。
(ア)不競法5条2項は,侵害者が侵害行為によって受けた利益の額を損害の額と推定する損害額推定規定であって,損害推定規定ではない。このため,被侵害者は,侵害者の侵害行為によって損害を受けたことを主張立証しなければならない。この損害の発生については,被侵害者において,侵害者が侵害行為により得ている利益と対比され得るような同種同質の利益を現実に失ったという損害が発生したことを意味する。
また,同項は,侵害者の利益を被侵害者の逸失利益と観念し得る場合にのみ適用されるものであり,被侵害者に,侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合に限り,その適用がある。(イ)標準構成明細情報
標準構成明細情報のうち●(省略)●は,公開された情報であるから,これを参考に自社の販売価格を設定することは不正競争ではない。
標準構成明細情報のうち●(省略)●
また,リフォーム事業における原告の市場占有率は1%にも満たないため,仮に被告会社が原告の原価に関する情報を参照にしてパッケージリフォーム商品を開発・販売したとしても,それにより被告会社の売上が増加して利益が上がり,原告に同額分の売上減少による逸失利益が生じるという関係は成立しない。したがって,標準構成明細情報については,侵害行為により被告会社が利益を受けているとはいえず,原告がこれと同種同質の利益を現実に失ったという損害の発生はなく,また,原告において,侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情もない。
(ウ)HORP関連情報
HORP関連情報は,●(省略)●市場で譲渡対象とされる原告のパッケージリフォーム商品ではないし,同情報がパッケージリフォーム商品に化体しているものでもない。HORPシステムによって内部的に事業効率化が図られていたとしても,市場における譲渡対象である商品の営業上の利益の増大に直接的,間接的な因果関係がないのであれば,当該システムの情報に関する何らかの侵害行為があったとしても,損害の発生はない。仮にHORP関連情報の一部をJUMPシステムの開発に際して参考にされたとして,これを侵害行為としたとしても,当該侵害行為によって被告会社のパッケージリフォーム商品が売れたことにより,原告のパッケージリフォーム商品が売れなくなり,被告会社の得た利益相当額の逸失利益が原告に発生したという関係には立たない。
(被告P1の主張)
以下のとおり,本件において,不競法5条2項の適用はない。損害に係るその余の主張は,前記イ(被告P1の主張)(エ)と同様である。
(ア)不競法5条2項は,同条1項と異なり,適用される不正競争の類型に限定はないが,具体的な適用は事案に応じて検討されるべきものである。また,同条2項は,あくまで損害額の推定規定であって,損害そのものを推定するものではなく,被侵害者に,侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情の主張立証を要する。
(イ)

標準構成明細情報及びHORP関連情報は,いずれも技術上の秘密に当た
らない営業上の情報である。営業上の情報の場合,商品に情報が化体する性質のものではなく,そのために,侵害行為によって被侵害者の機会喪失が生じるという定型的関係が認められないことに鑑みれば,侵害行為によって得た利益と同じだけの利益を得ることができたという経験則を推定規定にまで高めた不競法5条2項との関係でも,営業上の情報であることは同項の適用を否定する理由となる。また,標準構成明細情報は,●(省略)●これがパッケージリフォーム商品に反映されたとしても,顧客の目に触れるものではない以上,商品需要とは無関係である。まして,被告会社のパッケージリフォーム商品に資料1-1等の情報は使用されていない。被告P1が被告会社従業員に原告の標準構成明細を開示し,また,その記載情報を削除してその書式から新たな標準構成明細を作成したことがあるとしても,これをもって被告会社のパッケージリフォーム商品の売上が増加したとも,原告が販売機会を喪失したともいえない。
HORP関連情報についても,これを参照してJUMPシステムが作成されたものではない。また,仮にJUMPシステムの開発にHORP関連情報が寄与したとしても,JUMPシステムはパッケージリフォーム商品の構造や品質とは無関係であり,その使用は,単に被告会社内部の管理に資するだけであるから,パッケージリフォーム商品の商品需要とは無関係である。
そもそも,パッケージリフォーム商品は,原告が独占して販売しているものではなく,市場においてありふれた商品である。そのため,被告会社は,不正競争の有無にかかわらず,同じ時期・規模・内容でパッケージリフォーム商品の販売が可能であり,現に,被告会社は,被告P1の入社前からこれを販売していた。また,仮に被告会社がパッケージリフォーム商品の販売をしなかったとして,その分原告の売上につながるというものでもない。
したがって,本件では,被侵害者に,侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情はない。

損害額3(不競法5条3項3号の適用について)

(原告の主張)
(ア)受けるべき金銭の額に相当する額
不競法5条3項における実施料率を定めるに当たっては,実際の許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における相場等も考慮にいれつつ,当該営業秘密自体の価値や重要性,他のものによる代替可能性,当該営業秘密を対象事業に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害の態様,営業秘密の保有者と侵害者との競業関係や営業秘密保有者の営業方針等の諸事情を考慮すべきことになる。
以下のとおり,本件において被告会社の不正使用に係る原告の営業秘密のリフォーム事業における重要性,有用性に鑑みれば,受けるべき金銭の額に相当する額は,被告会社のリフォーム事業の売上総額の10%を超える。
(イ)実施料率について
HORP関連情報は,●(省略)●ノウハウの使用に対して受けるべき金銭としては,ライセンシーがノウハウの使用によって得た売上額を基準に一定の使用料率を乗じた金額を定める仕組みが一般的に採用されている。
HORPシステム及び標準構成明細に関する技術資料は,コンピュータテクノロジーの技術分類に属するところ,コンピュータテクノロジーのライセンスの実施料率は,平均値17.9%(最大値60.0%,最小値1.5%)とされている。また,標準構成明細情報及びHORP関連情報は,システムプログラムではないものの,システム開発支援・システム運用管理に関する資料であることから,システムプログラム著作権の実施料率を参考にすると,システム開発支援の実施料率は平均値17.5%,システム運用管理の実施料率は15.8%(最大値27.5%,最小値9.5%)とされている。これらを踏まえると,少なくとも15.8%,平均的なものとしても17.9%の実施料率が業界相場となる。
(ウ)営業秘密自体の価値及び重要性等
原告においては,平成23年4月にHORPシステムを本格的に導入した後,平成27年3月期まで,リフォーム事業の売上額及び売上構成比,リフォーム導入店舗数を着実に伸ばしている。このように,HORPシステムを導入することによる効能は,一時的なものではなく,HORPシステムによるオペレーションを既存店舗に導入し,徐々に浸透させていくことで,採算を確保してリフォーム展開店舗数を伸ばし,リフォーム事業を展開していない店舗においても売上を上げることを可能とするなど,HORPシステムが継続的なリフォーム事業の拡大に資するものである。他方,平成27年3月期から平成31年3月期にかけては,原告のリフォーム売上・売上構成比及びリフォーム導入店舗数は,延びてはいるものの,その伸びは鈍化している。これは,被告会社がJUMPシステムを導入し,近畿圏内にリフォーム事業展開店舗を増やしていった結果の競合によるものと見られる。
他方,被告会社は,平成26年4月のJUMPシステム導入後,リフォーム導入店舗を増やしつつ,リフォーム事業の売上・売り上げ構成比を短期間の間に大きく伸ばすことに成功していると見られる。こうした事情は,標準構成明細情報及びHORP関連情報が重要な価値を有することを示す。
また,標準構成明細情報及びHORP関連情報を用いた原告及び被告会社と,これを用いていない他の競業他社とで,リフォーム事業の展開に差が生じていることは,これらの情報が代替可能性のないものであることを示す。
さらに,被告会社の不正競争は,被告会社の経営陣のトップが中心となって組織的関与のもとに行われた悪質なものであり,競争を歪めたという点では,家電量販店業界そのものが被害者ともいえるものである。
加えて,原告と被告会社は,家電量販店として,家電の需要者であり潜在的なリフォームの需要者である顧客を対象としてパッケージリフォーム商品・サービスを提供しているものであって,競合関係にある。原告と被告とは,決してライセンス契約が結ばれることのない関係にあり,その損害賠償額を算定するための実施料率としては,通常の実施料率の2倍,3倍といった実施料率を認めるのが相当である。(エ)原告がサンキューハウスシステムに支払ったライセンス料について原告は,平成19年2月にサンキューと資本提携に関する基本合意を締結してその株式の40%を取得したが,同社との事業提携に当たり,サンキューの連結対象会社全ての価値を約250億円と算定した。この事業提携により,原告は,サンキューの標準構成明細の導入を含むパッケージリフォーム事業に関するノウハウを得て,平成22年10月以降,サンキューハウスシステムからHORPシステムのライセンスを受けた上,HORPシステムの導入を進めた。その後,平成23年には,原告は,サンキューグループの残りの株式を取得し,合計約250億円以上もの株式取得費用を投じることで,同社が持つHORPシステム及び標準構成明細を中心とするリフォーム事業の全てを取得するに至った。
上記平成22年のライセンス取得に際し,原告は,サンキューハウスシステムに対してホープライセンス料●(省略)●円を支払ったが,これは,見積条件として初年度初期導入分とあるとおり,イニシャルロイヤリティでなくランニングロイヤリティを前提としたものである。ただし,ライセンス料支払の合意の翌年にサンキューグループを完全子会社化したことから,ランニングロイヤリティの支払はされていない。
また,上記金額は,ユーザーである原告にとって極めて有利な額である。これは,当時原告が既にサンキューグループの株式を40%保有し,その後もその完全子会社化を予定していたからであり,この金額は,株式取得価格に加えて支払う名目的なロイヤリティであって,当時のHORPシステムの価値を正しく反映した金額ではない。原告のサンキューグループ買収はHORPシステムのノウハウ取得をも主目的としたものであったことから,買収に要した約250億円に相当する金額が,標準構成明細情報及びHORP関連情報を含む原告の営業秘密の価値ともいえるほどである。
したがって,原告がサンキューハウスシステムにライセンス料として支払った金額は,受けるべき金銭の額に相当する額を定めるに当たって斟酌すべきものではない。
(オ)以上より,不競法5条3項3号に基づき算定した場合の原告の逸失利益額は,50億円を下らない。本件において賠償を求める損害額については,前記イ(原告の主張)(カ)と同様である。
(被告会社の主張)
(ア)不競法5条3項は,損害額の立証を容易化する規定であって,損害の発生を擬制したものではないから,その適用を受けるためには損害の発生が必要である。また,その損害の種類は侵害者から得べかりし実施料であるから,損害発生の内容として,侵害者から実施料を得べかりしであったことが必要である。(イ)標準構成明細情報について
後記(エ)のとおり,原告には,被告らの不正競争による損害の発生がない。また,標準構成明細情報に含まれる各種価格は,商品の販売価格や公示価格(売価)は公開されているし,仕入原価は,購買力等の異なる他社にとって実質的に使用価値はないから,その性質上,他社に対して使用許諾し,その対価を受けることが想定されていない。
したがって,標準構成明細情報については,不競法5条3項を適用する前提を欠く。
(ウ)HORP関連情報について
HORP関連情報のうち,JUMPシステム開発過程で被告会社の担当者が閲覧,使用したことのある情報は,資料3-6のピクトグラムのみであり,このような情報があったところで,JUMPシステムの開発ができるわけではなく,その寄与も全くないから,原告に損害はない。
また,仮に原告に損害が発生し,不競法5条3項3号の適用があるとしても,HORP関連情報の大半は,サンキューハウスシステムのHORPシステムを原告が導入するに当たってサンキューハウスシステムが作成した説明資料又は原告が同システムをアレンジして導入した直後の説明資料であり,その使用に対して受けるべき対価につき,被告会社のリフォーム商品の売上額が基礎となるものではない。上記対価については,最大でも,原告の業務に対応した固有の開発費やハードウェア開発費用を除いた,純粋なHORPシステムの開発費用を基礎として算出すべきである。
サンキューハウスシステムは,原告からライセンス料として●(省略)●円を受け取っているところ,これは,HORPシステムの開発費用の投下資本の回収として,永久ライセンス料として受領したものと見られる。そうすると,上記金額が,受けるべき金銭の額の最大額となる。不競法5条3項により損害額の推定を行う場合には,上記金額を基礎として,情報の使用状況,内容,範囲,寄与率,市場占有率等を考慮して算定すべきところ,HORP関連情報の使用は,ピクトグラムに限られること,何らかの寄与があったとしても,せいぜい原告のHORPシステムの業務フローを知る程度で,組織も人的物的体制も異なるためそのまま導入できるものはほとんどないことから,1%にも満たない。これと原告の市場占有率を考慮すれば,仮に原告の損害が発生したとしても,その金額は,ほとんど観念できない程度にとどまる。
なお,HORP関連情報は,システム自体を構成する要素(プログラムコード等)でもなければ,それによりシステムを開発できる性質の情報でもなく,コンピュータテクノロジーの分野に属する技術情報ではないし,プログラム著作物でもない。HORP関連情報は,HORPシステムを離れて独自の価値を有するものでもない。また,売上構成比等は各企業の経営戦略次第であるし,リフォーム事業を展開する事業者はいずれも何らかの業務管理システムを使用している。さらに,原告と被告は,パッケージリフォーム事業につき,競合関係にない。
(エ)損害の不発生及び因果関係の不存在
前記イ(被告会社の主張)(イ)及びウ(被告会社の主張)のとおり,被告会社の不正競争により原告に損害が発生したとはいえず,また,被告会社の利益と原告の逸失利益との間に因果関係は存在しない。
(オ)損害に係るその余の主張は,前記イ(被告会社の主張)(ウ)と同様である。(被告P1の主張)
(ア)

不競法5条3項3号の適用について

前記イ(被告P1の主張)及びウ(被告P1の主張)のとおり,標準構成明細情報及びHORP関連情報は,いずれも営業上の情報であり,また,被告会社のパッケージリフォーム商品の売上に寄与していない。被告会社の同商品の売上は被告会社の事業投資等によるものであり,また,パッケージリフォーム商品は原告が独占して販売しているものではなく,市場にありふれた商品であるから,被告会社による販売がなければ原告が販売できたという関係にもない。
そうすると,被告らの不正競争があったとしても,原告に何らかの損害が発生していたと観念することはできず,不競法5条3項3号の適用はない。仮に,原告に何らかの損害が発生したとしても,被告会社のパッケージリフォーム商品が侵害組成物に当たらない以上,被告会社によるその販売は営業秘密の使用に該当せず,その売上総額が不競法5条3項3号による損害算定の基礎となることはない。
そもそも,HORPシステムのような案件管理システムのライセンスにおいて,同システムを用いた商品の販売にロイヤリティ率を乗じるという許諾例・実務は存在しない。現に,原告がサンキューに支払ったライセンス料は●(省略)●円であり,パッケージリフォーム商品の売上高にロイヤリティ率を乗じているものではない。同ライセンス料は,永久的なライセンス料とする趣旨であったものと見られる。また,HORP関連情報は,ソフトウェアであるHORPシステムそのもの(ソースコード)ではなく,あくまで同システムの使用方法を説明する資料等でしかない。HORPシステムそのものも,単なる販売管理システムである。したがって,HORP関連情報は,コンピュータテクノロジー,プログラム著作物,システム開発支援・システム運用管理といったものに当たらない。しかも,HORPシステムの導入が原告のパッケージリフォーム商品の売上に具体的に寄与したことは主張立証されていないし,単なる販売管理システムであるHORPシステムが顧客の需要と関連することはない。
(イ)損害に係るその余の主張は,前記イ(被告P1の主張)(エ)と同様である。第3
1
当裁判所の判断
本案前の答弁(争点1)について

(1)主位的請求の請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えについてア
主位的請求は,原告が,被告らに対し,営業秘密目録①記載の各営業秘密の
使用の差止等を求めるものである。

営業秘密目録①においては,被告らが指摘するとおり,同目録記載の情報の
保有者は明示されていない。もっとも,この点については,本件における原告の請求内容に鑑みれば,当然に,原告が保有する情報であることが前提とされていることが理解される。その意味で,同目録記載の情報に係る保有者の特定はされているものといえる。
なお,本件においては,訴状添付の別紙営業秘密目録には原告の保有にかかるとの文言があったところ,その後の訂正により当該文言が削除されたという経緯があるものの,上記の点を左右するものではない。

もっとも,営業秘密目録①は,システムキッチン…等のリフォームにあたっての住宅設備商品及び家庭用電化製品の販売・設置…並びに,これらに伴う工事の設計,施工を行う事業に関する下記の各資料又は各データとの頭書の下,12項目の情報を列挙している(なお,「営業秘密とは,…事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」であるから(不競法2条6項),上記記載は,正確には,各資料又は各データに含まれる情報等の趣旨のものと理解される。この点は,営業秘密目録②においても同様である。)。
列挙された項目を具体的に見ると,例えば1項は,住宅設備商品,それを構成する部材及びそれらの設置工事,取外し工事,水道工事,内装工事,電気工事を組み合わせた商品の原価,粗利率,粗利金額,定価に対する卸値の割合(掛率)若しくは商品を構成する個々の部材や工事の内容及び価格が記載された資料,これらの一覧資料,電磁的記録又はこれらに類するものとされている。しかし,例えば商品を構成する個々の部材や工事の内容及び価格が記載された資料は,商品が原告のリフォーム事業における取扱商品を意味するものと理解される限り,これを構成する個々の部材の内容のように明らかにその事業活動において一般に公開される情報が含まれるところ,そのような情報とそれ以外とを区別することなく,営業秘密とされていることになる。また,その記載から,上記1項は,パッケージリフォーム商品それ自体及びこれを構成する部材等の構成内容及び原価その他の価格に関する情報を,それが化体されている媒体を個別具体的に特定することなく,かつ,包括的・抽象的に掲げたものと理解される。他方,被告会社は,原告と同様にリフォーム事業を展開する事業者であるから,当然に同様の情報を保有しており,しかも,そこには原告の情報と関わりなく被告会社が取得した情報等も含まれるものと見られる。
これらの事情に鑑みると,上記1項の記載は,広範かつ抽象的に過ぎ,本件の請求の対象である情報とそうでない情報とを区別することが不可能というほかない。加えて,資料,これらの一覧資料,電磁的記録又はこれらに類するものの又はこれらに類するものとは,情報を意味するのか,情報が化体された資料,これらの一覧資料,電磁的記録以外の媒体を意味するのかは解釈の余地があり,必ずしも一義的に明らかではない。
こうした事情は,営業秘密目録①の1項以外の項にも共通して見受けられる。エ
そうすると,本件の原告の請求のうち,主位的請求に係る差止請求及び廃棄
請求(請求の趣旨第1項及び第2項)に係る訴えについては,いずれも,その対象となる営業秘密の特定を欠くことにより請求の趣旨が不明確なものといわざるを得ず,民訴法133条2項2号に違反する不適法なものといえる。
したがって,原告の主位的請求のうち請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えについては,これを却下する。
他方,原告の主位的請求のうち請求の趣旨第3項に係る訴えについては,その内容は明確であるから,適法な訴えというべきである。
(2)予備的請求の請求の趣旨第1項及び第2項に係る訴えについてア
予備的請求は,原告が,被告らに対し,営業秘密目録②記載の各営業秘密の
使用の差止等を求めるものである。

営業秘密目録②について

(ア)営業秘密目録②記載の情報の保有者については,前記(1)イと同様に,原告の保有する情報であることが前提とされており,その保有者は特定されているものと理解される。なお,同目録においては,7項の資料7-1~7-3に係る情報につき原告の保有するものであることが明示され,他の情報についてはそのような明示がないものの,上記の点を左右するものではない。
(イ)営業秘密目録②においては,営業秘密目録①と同じ頭書の下,12項目の情報を列挙し,そのそれぞれにおいて,各項の対象とする情報が,営業秘密目録②添付の資料に記載のとおりのものであることを示している。例えば,1項では,●(省略)●とされている。
同目録それ自体の記載については,同目録添付資料に記載のとおりとする趣旨が必ずしも明確でないといわざるを得ない。もっとも,添付された資料及び原告の主張全体の趣旨も踏まえると,同目録は,添付された資料の記載を前提に,当該資料それ自体には限らないもののこれと同一の種類及び性質の資料に記載・記録された情報として,対象とする情報が化体される媒体の範囲を特定すると共に,当該情報の種類ないし内容を特定したものと理解される。また,同目録中一覧資料を掲げる項については,資料記載の記載内容である具体的な数値等のみならず,当該資料の一覧性という性質,換言すればその書式をも対象に含むものであることを理解し得る。
加えて,
資料若しくはこれに類するもの又はその電磁的記録のこれに類するものとは,若しくは及び又はという接続詞の用法をも踏まえると,主
位的請求におけるそれと異なり,
資料の概念には含まれないが情報を化体する
何らかの有体物を指すものと理解される。
(ウ)そうすると,営業秘密目録②記載の情報に関しては,他の情報と区別して特定することがなお可能であるといえる。

予備的請求の請求の趣旨第2項に係る訴えについて

予備的請求の請求の趣旨第2項のうち,営業秘密目録②記載の営業秘密が記載された文書,磁気ディスク,光ディスクその他電磁的記録媒体の廃棄を求める点(以下第2項前段という。
)については,前記イのとおり同目録記載の営業秘
密が特定されているとともに,その化体した媒体が特定されていることから,請求の趣旨の特定に欠けるところはない。
しかし,同目録記載の営業秘密を使用して作成されたソフトウェア,原価表,業務マニュアル,取引先リスト,見積書,契約書,チェックシート,パンフレット,店舗展示用ディスプレイ設備の廃棄(以下第2項後段という。)につい
ては,情報が化体された媒体の個別具体的な特定がないため,廃棄の対象となるか否かは,当該媒体が同目録記載の営業秘密を使用して作成されたものか否かに掛かることになる。ここで,営業秘密を使用して作成されたか否かの判断に当たっては,廃棄対象となる媒体が,原告の保有する営業秘密に依拠し,何らかの形でこれを内容的に変容した情報を化体しているか否かの判断を要することになる(なお,ある媒体に化体された情報が同目録記載の営業秘密の全部又は一部と同一の場合は,第2項前段の営業秘密が記載された文書等に当たるものと理解される。。しかるに,

使用に当たる態様としては,例えば営業秘密を参考資料とし
て参照したにとどまり,その結果作成された情報そのものからは営業秘密の使用が客観的にはうかがわれないような場合も含まれ得る。このように,使用につき
多様な態様を想定し得ることに鑑みると,上記判断は,場合によっては著しい困難を伴うことともなりかねない。
加えて,被告会社は,原告と同様にリフォーム事業を展開する事業者であり,その事業に当たっては,同目録記載の営業秘密を使用しているか否かに関わらず,何らかのソフトウェアや原価表,業務マニュアル等第2項後段列挙の媒体を使用していることは明らかである。
そうすると,第2項後段の記載は,
使用して作成されたとの態様の抽象性な
いし多義性と廃棄対象とされるべき媒体の特定が概括的に行われているにとどまることとが相まって,廃棄請求の対象が広範かつ抽象的に過ぎ,対象である媒体とそうでない媒体とを区別することが不可能というべきである。

そうすると,本件の原告の請求のうち,予備的請求に係る差止請求及び廃棄
請求(請求の趣旨第1項及び第2項)のうち,第1項及び第2項前段については,請求の趣旨の特定に欠けるところはなく明確であるから,適法である。他方,第2項後段については,廃棄されるべき対象の範囲が不明確なものといわざるを得ず,民訴法133条2項2号に違反する不適法なものといえる。したがって,本件の原告の請求のうち,予備的請求に係る請求の趣旨第2項後段の請求については,これを却下する。
他方,原告の予備的請求のうち請求の趣旨第3項に係る訴えについては,その内容は明確であるから,適法な訴えというべきである。
2
営業秘密性の有無(争点2)について

(1)関連する事実
前提事実(前記第2の2),証拠(各項に掲げたもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

サンキュー等及び原告のリフォーム事業における被告P1の活動等
(ア)被告P1は,平成18年4月に住宅設備機器メーカーからサンキューに転職後,一貫して同社の家電量販店としてのリフォーム事業の展開に取り組んだ。具体的には,被告P1は,他社のパッケージリフォーム商品との差別化のため,製品価格と工事価格の積み上げではなくターゲット金額を設定するといった家電量販店の手法で価格訴求力を高めるとともに,前職の経験に基づき,住宅設備機器メーカーとの仕入価格ないし掛率の交渉のほか,住宅設備機器メーカーからの製品の仕入ルートの簡略化,部材設備機器メーカーからの部材の直接仕入,新しい工法の開発による工期短縮及び人件費削減といった方法によりコストダウンを実現し,さらに,平成19年上期頃には,特典を付けることで顧客に対する価格訴求力を高めたパッケージリフォーム商品を開発した。また,これに伴い,被告P1は,その頃,●(省略)●を作成するようになり,サンキューの役員会でパッケージリフォーム商品の販売企画に関する提案をした際の説明資料として使用するなどした。平成20年9月9日付けリフォーム産業新聞(乙14)では,家電量販店のリフォーム事業100満ボルト電光石火の急成長との見出しの下,被告P1に対
するインタビューのほか,以下の内容を含む記事が掲載されている。・家電量販店エディオングループで「100満ボルトの名称で展開するサンキュー…のリフォーム事業が急成長している。」

サンキューがリフォーム事業を本格的に開始したのはまだ3年前のこと。…昨年の9月よりシステムキッチン,システムバスなどの住宅設備機器事業を開始した。

・①家電と一体化した売り場,

キッチンの隣には冷蔵庫,収納にはオーブンレンジが展示されている。またユニットバス,洗面化粧台の横には洗濯機が置かれ,日常当たり前のレイアウトが家電と住設で行われている。

最新のキッチンと冷蔵庫が並べられたレイアウトは,訪れた消費者の自宅との違いを想像させるのに難しくない。

・②家電+リフォームのセット販売,

家電と一緒にリフォームの需要喚起する仕掛けは展示方式だけではない。本業の家電販売事業との連携が同社が行うリフォームの特徴といえるだろう。

リフォーム工事をきっかけにすることで,家電購入者の需要も当社に引き込めるのです。

(被告P1の発言)・③値引き表示はなし,

一般的なリフォーム会社でよく見られるチラシの値引き表示。しかし,家電量販店では売価表示が基本だ。この考えをリフォームにも導入している。

,「安心リフォーム工事費込みに記された12項目も含まれた金額が表示されている。更にプラス特典として…計10点の中から1点無料で選べる…。こうした分かりやすい金額表示が消費者に安心感を与え,家電量販店の持つ“割安感”というイメージをうまく活用している。」
・④需要喚起するTV番組,

同社の成長の理由として挙げられるのが,潜在需要を掘り起こしてきたことだ。

リフォーム会社が相手にしているのは既に顕在化した需要。しかし,僕らの客層はキッチンメーカーの名前すら知らない人たち

(被告P1の発言)・⑤開始前の500社の職人かき集める,

同社では住設事業を始めるにあたり,500社の施工業者を一気に集めた。

・業務の効率化を高めるHORP(ホープ)システムが動き始める。これは…同社の営業をよりスムーズにさせるものだ。営業マンは,本部から寄せられる見積書,プラン図面などをネット上でダウンロードし,お施主さんのもとへ届ける。また,資材の発注や職人の手配などもネット上で行えるようになるという。合わせて,販売履歴などの顧客管理も行うことができる。(イ)被告P1は,サンキュー等と原告との事業提携及びサンキューの完全子会社化に伴い,平成24年4月に原告に出向し,同年10月には原告に転籍するなどして,原告においても,一貫して家電量販店としてのリフォーム事業の展開に取り組んだ。その際,被告P1は,サンキュー在籍中に作成した●(省略)●持参し,これを原告に提供した。原告では,サンキューで使用されていた標準構成明細を,一部変更しつつも基本的にはほぼそのまま取り入れて使用していた。平成25年7月30日付けリフォーム産業新聞のインターネット配信記事(乙13)には,被告P1のインタビュー記事が掲載されているところ,これには,以下のような内容が含まれる。
・(リフォームコーナーとは別の場所にトイレを置いているのですか,との問いに対し)

ウォシュレット売り場に置いています。今まではウォシュレットの担当者はトイレのことを知りませんでした。お客さんにしても…便器も交換できるんですと話をすると,「えっ,そうなんですか

となるわけです。」・(間もなく洗面化粧台の販売もスタートしますね,との問いに対し)

洗面は洗濯機売り場で販売します。洗濯機を買いにこられた方…は,…洗濯機と一緒に化粧台も替えられるなどと思っていないですから,需要があるわけです。

・(ぷちDEりふぉの商品増加予定はあるのですか,との問いに対し)

ずっと増やしていくでしょうね。これがまさに家電量販店のリフォームですよ。住設業界がやりたがらない,細かくて面倒くさい工事。そこに価値があります。

(以上につき,上記のほか,甲7,被告P1本人)

HORPシステム

(ア)サンキュー等のHORPシステム
●(省略)●
(イ)原告のHORPシステム
●(省略)●
(ウ)サンキュー等及び原告のHORPシステムの全体フロー
●(省略)●

リフォーム事業に係る業務管理システム

JUMPシステムが運用を開始される平成26年頃に存在したリフォーム事業に係る業務管理システムには,以下のものがある。
(ア)SAKSAKリフォーム統合管理システム
SAKSAKリフォーム統合管理システム(平成21年5月14日作成。乙4)は,建築業・リフォーム業に必要な情報を一元化し,業務を効率化すると同時にマネジメント力を高める低コスト高品質な業務システムとされている。製品としては,中規模~大規模(スタッフ数5名以上,年商2億円以上)の建築業・リフォーム業向けに開発されたものと,小規模(スタッフ2~4名,年商1億円程度)の建築業・リフォーム業向けに開発されたものとがある。
そのシステムの目的として,省力化,一元化,高収益化が挙げら
れており,より具体的には,コンピュータ・システムの活用で業務の効率が飛躍的に向上すること(インターネットの活用による拠点間・部門間のスムーズな情報共有),トップセールスマンの行動パターンを仕組化することで,組織が高収益体質に変わること(工事受注前から実行予算・発注・完工・入金・支払に至る全ての利益管理業務の仕組化),情報の一元化で経営状態が見える化すること(全情報のリアルタイムでの一元管理)を挙げている。また,その特徴として,情報を一元管理し,全社内で共有すること(インターネットの利用により,スタッフ間・拠点間・部門間といった全社内での情報共有が可能であり,顧客情報を中心に,リフォーム営業に必要な情報を一元管理し,必要な時に必要な者がこれを取得できること),見積り・予算・発注・請求が連動し業務の無駄を排除すること(見積作成・予算作成・発注・請求・営業管理・顧客管理全ての業務が連動するため,情報を調べる手間や転記する手間が大幅に低減されること),受注時・予算作成時・発注時・完工時の4段階粗利益管理により,進行中の現場の粗利益の状況を常に把握できることを挙げている。
(イ)リフォーム名人
リフォーム名人(乙5)は,リフォーム等の工事受付から見積書や請求書の発行・支払までの工事業務支援ソフトとされている。その機能の特徴としては,着工中の工事の工程管理ができること,見積書及び請求書が簡単に発行できることなどが挙げられている。
なお,乙5そのものの作成時期は平成28年とされているが,同書証記載の各種帳票等に表れた日付で直近のものが平成21年であることに鑑みると,商品としてのリフォーム名人は,平成26年4月より前に販売されていたことがうかがわれる。
(ウ)顧客志向
顧客志向(乙6)は,エクステリア・リフォーム業者向けの業務管理システムとされ,見積作成を効率的に実施できること,案件一覧の確認により営業進捗を把握できること,発注・原価管理により過払い等のミスを防ぐことができること,入金確認を一括で管理できること,受注及び売上をリアルタイムで管理できること,顧客情報をクラウドで管理できることなどがうたわれている。また,その主な機能として,顧客管理,営業進捗管理,見積作成,契約・工事管理,発注・原価管理,入金管理,売上管理等が挙げられている。
なお,乙6のウェブページ作成時期は平成28年頃と見られるが(©2016との表示がある。),同書証記載の各種帳票等に表れた日付で直近のものが平成25年であることに鑑みると,顧客志向は,平成26年頃には販売されていたことがうかがわれる。
(エ)Patio建築・工務店向け業務支援ソフト
Patio建築・工務店向け業務支援ソフト(乙7)は,家作り工務店のためのクラウド型業務支援ソフトとされ,その特長として,工務店業務の全課程を漏れなく簡単に管理できること,クラウド型でありブラウザが動く機器でいつでも利用可能であることなどが挙げられている。また,その導入効果としては,省力化(顧客名簿や案件データを全て一元化),機動力のアップ(モバイル機器があれば,どこからでも準備なしに顧客対応や打合せが可能)などが挙げられている。なお,乙7のウェブページの作成時期は,平成26年3月頃と見られる。(オ)住宅履歴作成システムAnyONE
住宅履歴作成システムAnyONE(乙8)は,その導入により,社内の情報(顧客情報,物件情報,工事情報,図書,工事写真,見積り,支払・請求情報)の一元化と共有により,業務効率が向上することなどをうたっている。その基本機能としては,物件・工事・施主管理,工程表作成,見積作成,実行予算作成,発注管理,支払管理,請求管理,入金管理等が挙げられている。
なお,乙8のウェブページの作成時期は,平成22年頃と見られる。(カ)住宅業・住宅設備業・建築業・リフォーム業向け情報統合システム住宅業・住宅設備業・建築業・リフォーム業向け情報統合システム(丙8)は,その機能として,営業社員の活動状況が集約される営業管理,顧客サービス向上を見据えた顧客管理,工事物件の進捗管理と支払が連動できるシステムであることなどが挙げられている。
なお,丙8のウェブページは,平成8年~平成25年の間に作成されたことがうかがわれるところ,少なくとも平成24年11月には上記記載が存在したものと見られる(丙19)。
(キ)SP-Manager工事管理
SP-Manager工事管理(丙10)は,工程表作成から施工完了までの工事管理を効率化するソフトとされ,その機能として,工程表,予算表作成,工事の一元管理等が挙げられている。
なお,丙10のウェブページは,平成21年に作成されたものであることがうかがわれる。
(ク)建物リフォーム工事管理システム
建物リフォーム工事管理システム(丙18)は,見積り・受発注・工程等の管理業務をシステム化するものとされ,システム例として,リフォーム業務を中心とした見積り,発注,請求,入金の一括したシステムが挙げられている。なお,丙18のウェブページは,平成25年に作成されたものと見られる。エ
原告における情報管理体制

(ア)

情報管理に関する規程の整備等

a
原告セキュリティポリシー

●(省略)●
b原告管理マニュアル
●(省略)●
(イ)就業規則の定め
●(省略)●
(ウ)情報管理に関する運用
●(省略)●
(上記のほか,甲134,証人P5)
b
各規程等の周知方法

●(省略)●
(甲134,証人P5)
c
データへのアクセス制限等

(a)原告データサーバの管理
●(省略)●
(甲89~91,134,証人P5)
(b)インスイートの運用
●(省略)●
(甲134,証人P5)
(c)ソフトウェアのインストールの禁止等
●(省略)●
(証人P5)
(d)本件情報保護ソフトの導入
●(省略)●
(甲92,証人P5)
(e)操作ログの管理
●(省略)●
(甲134,証人P5)
(f)紙媒体等に化体した情報について
●(省略)●
なお,原告は,●(省略)●その名称からそれ以前の版が存在することはうかがわれるものの,これをもって被告P1の原告在籍時に同様のマニュアルが存在していたことを認めることはできない。
(証人P5)
(2)

検討


営業秘密とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものである(同法2条6項)ところ,秘密として管理されている(秘密管理性)といえるためには,当該情報にアクセスした者において当該情報がその保有者の秘密情報であると認識し得るようにされていること及び当該情報にアクセスできる者が制限されていることが必要である。もっとも,この点は,情報の性質,内容,情報保有者の事業規模等によって相対的に判断されるべきものである。
また,事業活動に有用な…情報とは,当該情報により財・サービスの生産・販売,費用の節約,経営効率の改善等の現在又は将来の経済活動に役立てることができるような情報をいう。他方,公然と知られていないとは,保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあることをいう。以上の点を踏まえ,本件各情報の営業秘密性の有無について検討する。イ
資料1-1の情報について

(ア)●(省略)●
(上記のほか,甲5,7,133,134,証人P5)
(イ)

秘密管理性

a
原告においては,前記(1)エのとおりの情報管理体制が定められているとこ
ろ,その内容は,原告の事業規模等を踏まえても,合理的かつ十分なものといってよい。その運用状況についても,本件に係る被告P1の行為のほか,本件遠隔操作ソフトの無断インストールのように,一部これが遵守されていないことを示す事情は見受けられるものの,無断インストールを行った者の人数は,被告P1の供述を前提としても,同人以外に原告内部で7,8名,サンキューで20~30名というのであって,運用上原告の情報管理が十分に機能していないと評価すべき程度ではない。その他原告による情報管理体制の運用が秘密管理性を否定すべき程度に形骸化していたことをうかがわせるに足りる具体的な事情はない。したがって,一般的には,原告において,原告セキュリティポリシーに定める情報資産につき,原告セキュリティポリシー及び原告管理マニュアルに基づく情報管理が行われている限り,秘密として管理されているものと認め得る程度の管理が行われていたものと認められるものといってよい。
b
原告の標準構成明細は,原告セキュリティポリシーの定める情報資産
に該当すると見られるところ,原告データサーバに保存された情報については原告従業員に発行されるID及びパスワードによりこれにアクセスし得る者が制限され,インスイートに掲載された情報も,開示範囲及び保存期間を通じて適切に管理されていたものといえる。紙媒体に化体された情報についても,前記aのとおり,原告セキュリティポリシー及び原告管理マニュアルに基づいた情報管理が行われていたことがうかがわれる。
また,原告の標準構成明細には,●(省略)●これらの情報は,被告P1もその旨供述等するとおり(甲7,140,被告P1本人),その性質上,取引先,競業他社及び顧客等に対して詳らかにすべきものでなく,また,そのような性質の情報であることは,原告従業員にとって当然理解し得るものと合理的に推認される。
したがって,資料1-1の情報のうち,●(省略)●当該情報にアクセスした者において当該情報がその保有者である原告の秘密情報であると認識し得るように管理され,かつ,これにアクセスし得る者が制限されているものと認められる。すなわち,これらの情報は,秘密として管理されているものといえる。また,資料1-1の情報のうち,●(省略)●同様に,秘密として管理されているものといってよい。
c
被告らの主張について

被告らは,一般的に原告の秘密管理体制の欠如を指摘するとともに,標準構成明細については,インスイートを通じてパートやアルバイト従業員を含む多数の原告従業員に閲覧されるとともに,ダウンロード及び印刷して利用されていること,商社やメーカーにも開示されていることなどを指摘して,資料1-1の情報は秘密として管理されているとはいえないと主張する。
●(省略)●
その他被告らが縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する被告らの主張は採用できない。
d
以上のとおり,資料1-1の情報については,●(省略)●秘密として管
理されているものといえる。
(ウ)

非公知性

前記(イ)の事情を踏まえれば,資料1-1の情報は,保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるものといってよく,公然と知られていないものといえる。この点に関する被告らの主張は採用できない。
(エ)

有用性

a
●(省略)●

また,後記3(1)ウ(エ)のとおり,被告P1は,P4らに対して本件比較表を作成,開示し,当時の被告会社の粗利率の低さ等を指摘したことが認められるところ,この事実は,これらの情報が競業他社にとっては経営効率の改善等に資するものであることをうかがわせる。
したがって,資料1-1の情報のうち,●(省略)●
b
資料1-1の情報のうち,●(省略)●その意味で,競業他社にとっても,
販売効率の向上といった観点から価値のある書式といえる。
したがって,資料1-1の情報のうち,●(省略)●
c
被告らの主張について

被告らは,同業者であれば掛率をおおむね把握していることから,原価等も計算することができることや,被告P1がメーカーごとの掛率を記憶していること,メーカーとの仕入交渉において他社の仕入額に合わせることができないことなどを指摘して,資料1-1の情報につき,事業活動に有用なものとはいえないと主張する。しかし,メーカーとの仕入交渉において他社の仕入額に合わせることができないという点については,仮にその通りであったとしても,なお有用となり得ることは前記aのとおりである。また,おおむねの数値しか把握していない場合と正確な数値を把握している場合とで,仕入交渉や商品開発に当たり全く違いを生じないとは必ずしもいえない。このことは,被告P1の経験及び知識を考慮したとしても同様である。そもそも,事業活動に有用なものといえるか否かは客観的に判断されるべきものであり,特定の個人を念頭に判断すべきものではない。
その他被告らが縷々指摘する事情を踏まえても,この点に関する被告らの主張は採用できない。
d
以上より,資料1-1の情報については,●(省略)●
(オ)したがって,資料1-1の情報は,●(省略)●原告の営業秘密に当たる。

資料1-2の情報について

(ア)

秘密管理性及び非公知性

資料1-2(甲49)は,●(省略)●
また,資料1-2の情報は,●(省略)●
したがって,資料1-2の情報については,秘密として管理されているものといえる。また,同様の事情から,当該情報は,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
前記(ア)のとおり,資料1-2の情報は,●(省略)●このような情報は,資料1-1記載の具体的数値と同様に,競業他社にとって,自社の商品開発の際に参考になる情報といえる。
したがって,資料1-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料1-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料1-3の情報について

(ア)資料1-3(甲76)は,●(省略)●
しかし,原告のパッケージリフォーム商品を構成する個々の部材の内容は,少なくとも顧客に対しては開示される情報であり,顧客がこの点につき秘密保持義務を負うことを認めるに足りる証拠はない。また,資料1-3記載の個々の商品の価格は,メーカーの定める定価であるというのであるから,メーカーからも顧客に対して開示されることが前提となっている情報である。
そうである以上,資料1-3の情報は,保有者である原告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるものとはいえない。すなわち,同情報は,公然と知られていないものとはいえない。
(イ)原告は,資料1-3と資料1-1ないし1-2の各情報とを合わせることで個々の部材の卸値を把握し得ると主張する。
しかし,仮にそうであるとしても,●(省略)●上記事情の存在は,資料1-3の情報が非公知のものであるとする理由とはならない。この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ)以上より,その余の点について論ずるまでもなく,資料1-3の情報は,営業秘密に当たらない。

資料1-4の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
資料1-4(甲95)は,●(省略)●
そうすると,資料1-4の情報は,前記イ(イ)と同様に,秘密として管理されているものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
もっとも,資料1-4の情報のうち,パッケージリフォーム商品自体の売価(見積金額)は,カタログに掲載されると共に顧客にも開示される情報であることは顕著な事実である。そうすると,資料1-4の情報のうち,パッケージリフォーム商品の売価については,公然と知られていないものとはいえない。これに反する原告の主張は採用できない。
(イ)有用性
前記イ(エ)のとおり,●(省略)●これに反する被告らの主張は採用できない。(ウ)したがって,資料1-4の情報のうち,●(省略)●
他方,同資料の情報のうち,原告のパッケージリフォーム商品の売価に係る情報については,営業秘密に当たらない。

資料1-5の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
そうすると,資料1-5の情報は,秘密として管理されているものといえる。また,同様の事情から,当該情報は,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-5の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料1-5の情報は,営業秘密に当たる。

資料1-6の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
資料1-6(甲97)は,●(省略)●
したがって,資料1-6の情報は,前記イ(イ)と同様に,秘密として管理されているものといえる。また,同様の事情から,当該情報は,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料1-6の情報は,事業活動に有用なものといってよい。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料1-6の情報は,営業秘密に当たる。

資料2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
資料2(甲51)は,●(省略)●
したがって,資料2の情報は,秘密として管理されているものといえる。また,同様の事情から,当該情報は,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料2の情報は,事業活動に有用なものといってよい。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料2の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-1の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料3-1の情報は,秘密として管理されているものといえる。また,同様の事情から,当該情報は,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
資料3-1は,●(省略)●
したがって,資料3-1の情報は,事業活動に有用なものといってよい。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-2の情報について

(ア)

秘密管理性及び非公知性

資料3-2(甲53)は,●(省略)●
したがって,資料3-2の情報は,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
前記(ア)のとおり,資料3-2は,●(省略)●
したがって,資料3-2の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-3の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
資料3-3(甲54)は,●(省略)●
以上の事情に加え,その内容及び性質等に鑑みると,資料3-3は,原告及びサンキュー等の社内向けに作成された資料であり,データ及び紙媒体のいずれの形式においても,サンキュー等を含む原告内部で保存されると共に,その保管者において,社外への開示は当然許されないものと認識し得るものであり,このため,原告の情報管理体制に従って管理されていたことが認められる。また,資料3-3が現に原告従業員以外の第三者に何らかの形で開示されたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,資料3-3の情報は,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
前記(ア)のとおり,資料3-3は,●(省略)●
したがって,資料3-3の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-3の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-4~3-6の各情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
前記(ア)のとおり,資料3-4~3-6は,●(省略)●
したがって,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-4~3-6の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。

資料3-7の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
前記(ア)のとおり,資料3-7は,●(省略)●
したがって,資料3-7の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-7の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-8の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料3-8の情報は,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-8の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-8の情報は,営業秘密に当たる。

資料3-9の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●なお,資料3-9は三谷コンピュータが作成したもの●(省略)●
したがって,資料3-9の情報は,秘密として管理されていると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料3-9の情報は,事業活動に有用なものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料3-9の情報は,営業秘密に当たる。

資料4-1の情報について

●(省略)●それ以外に有意な記載は見当たらない。
各種建具及びその材質の名称を見ても,それがいかなる意味において現在又は将来の経済活動に役立てることができるものであるか,およそ判然としないというほかない。すなわち,資料4-1の情報は,事業活動に有用なものであるとはいえない。
したがって,その余の点を論ずるまでもなく,資料4-1の情報については,営業秘密に当たらない。これに反する原告の主張は採用できない。チ
資料4-2~4-8の各情報について

●(省略)●これらの資料は,その性質上,いずれも顧客に交付されるものと見られる。
●(省略)●
以上のとおり,資料4-2~4-8は,いずれも,原告のパッケージリフォーム商品を購入した顧客に対して交付される書面であり,また,その際,顧客に対し,原告に対する守秘義務が課されることを認めるに足りる証拠はない。そうである以上,資料4-2~4-8の各情報は,いずれも,秘密として管理されているものとはいえず,また,公然と知られていないものということもできない。したがって,その余の点を論ずるまでもなく,資料4-2~4-8の各情報は,いずれも営業秘密に当たらない。これに反する原告の主張は採用できない。ツ
資料5-1の情報について
(ア)秘密管理性
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,秘密として管理されているものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料5-1の情報は,なお事業活動に有用なものであると共に,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(ウ)以上より,資料5-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料5-2の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料5-2の情報は,なお事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料5-2の情報は,営業秘密に当たる。

資料6の情報について

(ア)●(省略)●
以上によれば,資料6の情報については,公然と知られていないものと認めるに足りる証拠はないというべきである。
(イ)そうすると,その余の点を論ずるまでもなく,資料6の情報は,営業秘密に当たらない。これに反する原告の主張は採用できない。

資料7-1~7-4の各情報について
(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料7-1~7-4の各情報は,いずれも秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料7-1~7-4の各情報は,いずれも事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料7-1~7-4の各情報は,いずれも営業秘密に当たる。ニ
資料8-1の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料8-1の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-1の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料8-1の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-2の情報について

●(省略)●
そうすると,同資料の内容は,秘密として管理されているものとはいえず,また,原告の管理下を離れ,一般に入手可能な状態になっていたものというべきであるから,公然と知られていないものとはいえない。
そうである以上,その余の点を論ずるまでもなく,資料8-2の情報は,営業秘密に当たらない。これに反する原告の主張は採用できない。ネ
資料8-3の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料8-3の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-3の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料8-3の情報は,営業秘密に当たる。

資料8-4の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料8-4の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料8-4の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料8-4の情報は,営業秘密に当たる。

資料9の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料9の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料9の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料9の情報は,営業秘密に当たる。

資料10の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料10の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料10の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料10の情報は,営業秘密に当たる。

資料11-1~11の3の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料11-1~11-3の各情報は,いずれも事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料11-1~11-3の各情報は,営業秘密に当たる。ヘ
資料12の情報について

(ア)秘密管理性及び非公知性
●(省略)●
したがって,資料12の情報は,秘密として管理されているとともに,公然と知られていないものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。(イ)有用性
●(省略)●
したがって,資料12の情報は,事業活動に有用なものであるといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(ウ)以上より,資料12の情報は,営業秘密に当たる。
(3)小括
以上のとおり,営業秘密目録②記載の情報のうち,資料1-1,1-2,1-4~1-6,2,3-1~3-9,5-1,5-2,7-1~7-4,8-1,8-3,8-4,9,10,11-1~11-3及び12の各情報については,いずれも原告の営業秘密と認められる。他方,それ以外の資料に係る情報については,営業秘密と認められないことから,その余の点を論ずるまでもなく,これらに係る原告の請求はいずれも理由がない。
3
被告らの不正競争の成否(争点3)について

(1)関連する事実
前提事実(第2の2),証拠(各項に掲げたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

被告P1の被告会社への転職に至る経緯等

(ア)被告P1は,平成25年12月31日に原告を退職し,平成26年1月からは被告会社のスマートライフ推進部部長等として勤務することとなったが,被告会社への就職活動は,平成25年10月頃から開始した。その際,被告P1は,被告会社に対し,サンキューにてリフォーム事業を立ち上げ,原告においても同事業に深く関わってきたこと,自己の経験や実績を踏まえ,リフォームをビジネスにする家電量販店への転職を希望することをアピールすると共に,被告会社への就職を希望する動機として,住宅リフォームの

部門では未だ未開発の御社で,一度紆余曲折を経験し創業から携わってきた形を課題問題点を回避し,最短で最大の結果が出せると感じています。

などと述べた。これを受け,被告会社は,住宅リフォーム関連事業を拡大し,新たな事業の柱に成長させるため,業界経験の豊富なスタッフとして被告P1を営業本部付の部長として採用することとし,同年12月20日付けでその旨を同人に通知した。そして,被告会社は,平成26年1月1日付けで,被告P1を被告会社の営業推進担当部長として採用した。(甲19)
(イ)被告P1は,サンキュー在籍時からP1HDDを同社で業務上使用していたパソコンに接続して,業務上作成した文書の多くをバックアップとする趣旨で複製・保存していた。
また,被告P1は,原告からの転職に向けて就職活動を開始していた平成25年10月1日及び同月10日,2回にわたり,原告社内において,原告データサーバ上のリフォーム事業に関連する情報を同サーバ上の被告P1の個人用フォルダ内に複製するなどした上,同月11日,原告社内において,原告貸与パソコンを操作して原告データサーバにアクセスし,本件遠隔操作ソフトを使用して,上記個人用フォルダ内に保存していたデータをP1私物パソコンに転送して保存し,同月14日,被告P1の自宅において,P1私物パソコンと接続したP1HDDに上記データを保存した。
なお,原告データサーバからP1私物パソコンへのデータの移動に関係するものとして,具体的には,以下のような様々な操作が行われた。
a
平成25年10月1日

被告P1の原告貸与パソコンの操作により,原告データサーバのP6フォルダの標準構成明細表フォルダ及びプランニングチェックシートフォルダから同ELSP1フォルダのpjフォルダに多数の標準構成明細及びプランニングチェックシートのデータが複製され,更に上記pjフォルダから上記ELSP1フォルダの価格・構成明細等フォルダにファイルの移動が行われた。また,上記P6フォルダのELS売り場企画書フォルダから上記ELSP1フォルダの店関連フォルダにあるELS売り場企画書フォルダにもファイルの複製が行われた。
b
同月8日

被告P1の原告貸与パソコンにおいて,上記pjフォルダに

保存されていた標準構成明細用,ぷちdeリフォ,リフォーム店別展示明細,担当者教育,プランニングチェックシート,保証等の名称のzipファイルが上記ELSP1フォルダの直下に移動された。また,上記P6フォルダの業務フォルダにあるリフォーム研修資料フォルダから上記pjフォルダの担当者教育フォルダにあるリフォーム研修資料フォルダにも,素材となる写真のファイルを中心として,多数のファイルが複製されるとともに,原告データサーバの商品統括部フォルダにあるELS企画【店別実績】フォルダから上記ELSP1フォルダの実績DATAフォルダにある計画・管理フォルダのELS企画【店別実績】フォルダにも,多数のファイルが複製された。
c
同月11日及び28日

被告P1の原告貸与パソコンから,本件遠隔操作ソフトを用いて,P1私物パソコンにファイルのアップロードが断続的に複数回行われた。
d
同月29日

被告P1の原告貸与パソコンから,本件遠隔操作ソフトを用いて,P1私物パソコンにファイルのアップロードが断続的に複数回行われる一方で,その合間に,原告データサーバの見積センター業務書類フォルダの各メーカー発注書フォルダから上記ELSP1フォルダの新しいフォルダフォルダにある各メーカー発注書フォルダに,多数のファイルが複製された。
e
同年12月11日

被告P1の原告貸与パソコンのELSP1フォルダの名称がjcettに変更された後,同フォルダ内のpjフォルダのHORPフォルダにあるHORPマスタメンテナンス,HORPマニュアル,HORPユーザーマスタ一覧,HORP業務フロー,HORP研修等のフォルダないしファイルや,★★プランニングチェックシート,★★標準構成明細表,ぷちdeリフォ,担当者教育等のフォルダないしファイルが,同原告貸与パソコンのDownloadsフォルダのjcettフォルダにあるpjフォルダに移動された。
f
同月25日

被告P1の原告貸与パソコンから,本件遠隔操作ソフトを用いて,P1私物パソコンにファイルのアップロードが断続的に複数回行われた。
(以上につき,甲5,137の1,137の3,137の5,137の8,137の10,137の13,138,被告P1本人)
(ウ)捜査機関によりP1HDDが差し押さえられた平成26年12月16日の時点で,P1HDDのELSP1フォルダには,pjフォルダがあり,同フォルダ内には,★★プランニングチェックシート,★★標準構成明細表,HORP,担当者教育等のフォルダがある。このうち,★★プランニングチェックシートのフォルダ内には,チェックシート2013.06月版等のフォルダがあり,各フォルダには,プランニングチェックシート等のexcelファイル又はpdfファイルが保存されている。また,上記★★標準構成明細表には,標準構成明細に係るexcelファイル又はpdfファイルが保存されている。上記HORPフォルダには,HORPマニュアル,HORP業務フロー,HORP研修等の名称のフォルダ等があり,HORPマニュアルフォルダには【HORP】運用マニュアル0217,【HORP】運用ルール0209等のファイルがある。HORP業務フローフォルダには,■HORP資料(業務フロー),HORP業務フロー全体図0121,HORP業務運用サンキューのファイルが保存されている。HORP研修フォルダには,HORPⅠ型研修資料等のフォルダがあり,同フォルダには,【Ⅰ型】HORP営業編研修資料0127等のファイルがある。さらに,担当者教育のフォルダには,リフォーム研修資料のフォルダのほか,HORPのご提案200907のファイル2種(pptファイル及びxlsファイル)等のファイルがある。
これらのフォルダ及びファイルのうち,★★標準構成明細表,
HORP,担当者教育の各フォルダ内のデータは,いずれも,前記(イ)のとおり被告P1が原告データサーバ上から複製ないし移動したデータや被告P1の使用する原告貸与パソコン上でファイルの移動等が行われたデータと,その名称が概ね一致する。
(甲9,18,138,139)

被告P1採用前の被告会社におけるリフォーム事業の状況等

(ア)EnterprisePCシステムの導入等
被告会社は,平成14年4月頃,リフォーム事業に限らず,売上伝票情報,顧客情報,在庫情報,商品入出庫,商品発注,見積書作成,長期保証等の営業活動に関連する情報の検索,入力,操作を行うシステムとしてEnterprisePCシステム(以下EPCという。)を導入した。このEPCのほか,被告会社では,売上処理,入出金処理及び各種情報照会といった機能があるレジのPOSシステムと,見積作成及び各種情報照会といった機能があるハンディ端末であるPDAシステムが,基幹システムに接続された店舗内のシステムとして使用されている。また,被告会社は,平成22年4月頃,オール電化及び太陽光発電システムの訪問営業専任担当者を配置したことに伴い,見積り,契約書の作成,印刷を行うための書式を表計算ソフトExcelを用いて作成し,これらの文書等の作成作業の自動化を進めた。リフォーム事業関連では,その書式は,顧客情報,店舗情報,販売者情報等を入力することで複数のシートにこれらの情報をリンクさせると共に,他のシートの商品マスタとリンクさせることで,JANコードを入力することにより商品の型番,内容,価格等を読み込んで見積書を作成し,その情報が店舗向けの伝票計上の依頼書や指示書に転記されるようになっており,さらに,契約書にも見積書の価格や顧客名等が記載されるといった使われ方をされていた。ただし,この段階では,各営業担当者がそれぞれ独自のフォームを利用して対応していた。(乙27,29,71,73,79,証人P4)
(イ)被告会社によるリフォーム事業の展開
被告会社は,平成23年5月発行のリフォームカタログジョーシンスマートライフ(乙15)において,オール電化及び太陽光発電システムの各商品と共に,ジョーシンリフォームと題して,キッチン,トイレ及びバスにつき,住宅設備機器とその設置工事及びこれに付帯する各種工事をパッケージ化したパッケージリフォーム商品を掲載している。平成24年4月発行の同カタログ(乙16)においては,更に洗面台に係るパッケージリフォーム商品をも掲載している。なお,この当時の被告会社におけるオール電化商品及びビルトインガスコンロ・ガス給湯器に係る各業務フローは別紙4(乙27の1)及び5(乙27の2)のとおりであるところ,パッケージリフォーム商品についても,商品の性質上異なる部分があるとしても,店舗での見積りの受付及び見積り依頼,営業担当者による顧客の訪問と設置箇所の確認,商品の提案その他の契約交渉,契約締結,商品及び施工の手配,施工,集金等の基本的な流れ及びその各段階で関係部署が行うべき業務は同様であったものと見られる。
(上記のほか,乙39,証人P4)

被告P1の被告会社入社と被告会社のJUMPシステム開発等

(ア)被告会社は,平成26年1月頃,ファンテックに対し,JUMPシステムの開発を依頼し,同年2月10日頃,ファンテックから被告会社に対し,同年4月1日稼働開始に間に合わせる機能に関して,見積書が提出された。また,その頃,P4とファンテックの担当者P7は,同年4月からの稼働に向けて,JUMPシステムの開発に関する打合せを開始した。
(甲116,乙38,39,証人P7,証人P4)
(イ)被告会社は,リフォーム事業向けの案件管理システム(JUMPシステム)の開発を進めることとし,平成26年3月2日,同年4月稼働予定のJUMPシステム第1次開発について,稟議が行われた。
その稟議に係る本件稟議書(甲31の2)には,以下の記載がある。・概要(JUMPシステムの目的)
●(省略)●
・JUMPシステムの導入効果
●(省略)●
・稼働予定時期
平成26年4月第一次予定(案件登録,進捗管理,詳細記録)…今回稟議
平成26年6月第二次予定(各種資料作成,進捗分析機能)…後日稟議
(ウ)被告会社は,平成26年4月1日,JUMPシステムの稼働を開始した。その時点でJUMPシステムが備えていた機能は,●(省略)●
(上記のほか,甲116,124の2,乙38,39,41,78)(エ)被告P1は,被告会社入社後,被告会社のパッケージリフォーム商品の開発及び仕入交渉等を単独で担当するようになった。
被告P1は,平成26年1月頃,原告のパッケージリフォーム商品の標準構成明細(甲79,80)記載の情報を用いて,被告会社が同一商品を当時の被告の仕入価格で仕入れ,原告と同じ販売価格でパッケージリフォーム商品として販売した場合を想定した架空の標準構成明細を作成した。また,被告P1は,これと同様に,当時被告会社が販売していたパッケージリフォーム商品について,当時の被告会社の●(省略)●を作成した上,原告がこれと同じパッケージリフォーム商品を当時の原告の仕入価格で仕入れ,被告会社と同じ販売価格で販売した場合を想定した架空の標準構成明細を作成した。その上で,被告P1は,これらの架空のものを含む標準構成明細に基づき,合計9つの各種パッケージリフォーム商品について,原告と被告会社それぞれの商品及び工事に係る●(省略)●を比較した本件比較表(甲74の1枚目)を作成した(本件比較表は,これに関連する標準構成明細と共に1つのファイルをなすものと見られる。)。被告P1は,その頃,本件比較表を,当時パッケージリフォーム商品の仕入を担当していたP4を含む被告会社従業員に示した上で,被告会社の粗利額,粗利率が低いことについて厳しい口調で叱責した。その際,P4は,被告P1からそのデータをもらい受け,業務上使用する資料等を記録する自己のUSBメモリに保存した。また,本件比較表及び関連資料である上記標準構成明細のデータ(JE構成明細比較.xls)は,被告会社共有フォルダのEdionフォルダ内に保存されたことにより,被告会社スマートライフ推進部所属の従業員であれば閲覧可能な状態に置かれた。
(上記のほか,甲20,131,証人P4,被告P1本人)
(オ)被告P1は,平成26年2月,被告会社ビジネス開発大阪営業所長のP3に対し,同月1日作成の標準構成明細のテンプレート4種類を添付したメール(甲86)を送信した。当該テンプレートの備考欄の上部には,備考はHORPマスタには反映されませんとの記載がある。なお,当該メール本文には,工事費売価は先日お渡ししたEDION工料表の価格で設定してありますなどと記載されている。
また,時期は不明なものの,被告P1は,P3に対し,エディオンの内装リフォーム価格表を送付すると共に,同価格での運用を依頼した。これに対し,P3は,同年3月27日,これを承知する旨のメール(甲117)を送信した。なお,被告P1は,被告会社のリフォーム事業の付帯工事を担当するジョーシンサービスの施工工事費に関する打合せも担当していたところ,同月25日,スマートライフ推進部実務者ミーティングの席上において,ビルトイン食洗機及びレンジフードの工事料金につき発注済みの工事料金表記載の金額から原告の価格に合わせてほしい旨要望し,これが採用されて工事料金表修正シールを作成することとなった。
(上記のほか,甲20,118,被告P1本人)
(カ)被告会社スマートライフ推進部に所属していたP8は,平成26年5月頃,店舗担当者からの問合せに対応するために被告P1の使用するフォルダを確認した際,原告のパッケージリフォーム商品に係る標準構成明細のデータを自己の使用するUSBメモリに保存した。
(甲21)
(キ)被告P1は,平成26年1月下旬頃,P2に対し,原告の平成26年1月時点での平成26年度販売促進活動スケジュール案を記載した文書を交付した。また,被告P1は,同年5月頃には被告会社カスタマーサービス部の従業員等から,サンキューの保証書を入手することの可能性を打診されたり,原告に関する情報の提供を求められたりすることもあった。
(甲22,75,119~121)
(ク)被告P1は,平成26年4月頃,JUMPシステムの全体フロー図を作成していたP4に対し,資料3-6のデータを交付し,これを参考としてJUMPシステムの全体フロー図を作成するように指示した。P4は,この指示を受け,別紙6(甲81の2)を作成した。
(上記のほか,甲82,証人P4,被告P1本人)

被告会社共有フォルダに保存されたデータ

被告会社共有フォルダには,Edionという名称のフォルダが存在する。同フォルダには,(旧)商品作り,1P1,110218エディオン様マスター等のフォルダが存在する。このうち,(旧)商品作りには,J-E構成明細比較.xlsのファイルがあるほか,標準構成明細,プランニングチェックシート等のデータが保存されている。
スマートライフ推進部の従業員は,上記Edionフォルダの存在を認識しており,同フォルダ内のデータを閲覧するのみならず,前記のとおり,P4やP8は,同フォルダ内のデータを自己が使用するUSBメモリに保存していた。(甲20,21,131,被告P1本人)。
(2)

検討


資料1-1の情報について

(ア)前記(1)ウ(エ)のとおり,被告P1は,被告会社において,パッケージリフォーム商品の商品開発や仕入交渉等を単独で担当するとともに,原告の標準構成明細を使用して本件比較表及びこれに添付された標準構成明細を作成し,これをP4等に示した。また,被告P1は,原告の標準構成明細の書式を使用して被告会社の標準構成明細のテンプレート(別紙2営業秘密目録資料1-1-2)を作成した(前記ウ(オ))。当該テンプレートは,原告の標準構成明細の書式とかなりの程度類似する上,その備考欄上部の記載は,これが原告の標準構成明細の書式をもとに作成されたことをうかがわせる。
被告P1も,当該テンプレート作成に当たり表としては原告の標準構成明細を使用したことを認めている(被告P1本人)。
これらの事情に加え,被告P1がP1HDDに原告の標準構成明細のデータを保存していること(前記ア(イ))に鑑みると,被告P1は,被告会社のパッケージリフォーム商品の開発に当たり,その仕入価格,粗利率,粗利金額の設定のため原告の標準構成明細記載の原告の仕入価格等の情報を参考にしていたことが合理的に推認される。また,被告P1は,被告会社の標準構成明細の書式作成に当たり,原告の標準構成明細の書式を使用したことが認められる。
したがって,被告P1による上記原告の標準構成明細の使用は,別紙2営業秘密目録資料1-1の情報の使用といえる。また,資料1-1の情報は,被告P1が原告在職中に取得したものであるところ,その当時被告P1がこれにアクセスすることは原告においても許容されていたことから,その取得に不正の手段は使用されていない。もっとも,被告P1が,被告会社への転職に向けた就職活動と時期を同じくして,複雑な手順を経て原告データサーバの情報をP1私物パソコンやP1HDDに保存したこと,被告会社で現に上記のとおりその情報を使用したことに鑑みると,被告P1による原告データサーバ上の情報の取得は,転職後に転職先でリフォーム事業に使用する意図を少なくとも含んでいたことがうかがわれる。そうすると,被告P1による上記使用行為は,被告会社のリフォーム事業にこれを使用することで被告会社の利益を増大させ,ひいては自己の評価を高める等の目的があったものと見られるのであって,不正の利益を得る目的での使用といえる。
以上より,被告P1による資料1-1の情報の使用及び同情報に基づき作成された資料1-1-2の情報の使用は,不正競争(不競法2条1項7号)に当たる。(イ)前記(1)ウ(エ)及び(1)エのとおり,被告会社共有フォルダ内に原告の標準構成明細のデータが保存されており,同フォルダを通じてP4及びP8がこれに含まれるデータを業務上使用するUSBメモリに保存している。しかも,そのフォルダ名から,当該データが,本来は被告会社にあるはずのない原告のデータであることは容易に理解し得る。
これらの事情を総合的に考慮すると,被告会社は,資料1-1の情報につき,営業秘密不正開示行為があることを知り又は少なくとも重大な過失によって知らずに,これを取得したものと認められる。すなわち,被告会社による資料1-1の情報の取得は,不正競争(不競法2条1項8号)に当たる。
他方,被告P1は,被告会社において,その在籍中は被告会社のパッケージリフォーム商品の開発等を単独で担当していたものであり,その際に使用する標準構成明細も,原告の標準構成明細のデータ及び原告在籍中の被告P1の経験に基づき,他の被告会社従業員の関与のないままに作成されたものとうかがわれる。そうすると,被告会社における標準構成明細(甲86,87)について,被告会社が,被告P1の営業秘密不正開示行為により作成されたものと知っていたこと又は知らないことにつき重大な過失があると認めるに足りる証拠はない。
したがって,資料1-1-2の情報については,被告会社の行為は,不正競争(2条1項8号)に当たらない。これに反する原告の主張は採用できない。(ウ)被告らの主張について
被告らは,被告会社共有フォルダに保存されていた情報であっても,それをもって被告P1の被告会社に対する開示行為とはいえない,被告P1が自ら作成又は取得した情報については,同人による不正取得ではなく,また,原告又はサンキューから示された情報ともいえない,資料1-1の情報につき,被告P1のそれまでの知識や経験に鑑みれば原告の標準構成明細やそこに記載された仕入価格等の具体的数値に係る情報を使用する必要がないなどと主張する。
しかし,被告P1の被告会社に対する開示が認められることは前記認定のとおりである。また,被告P1が自ら作成した情報が仮にあるとしても,原告及びサンキューの企業規模をも考えた場合,被告P1がその作成及び改訂を全て単独で行っていたとは考え難く,これを裏付けるに足りる証拠もない(被告会社の標準構成明細の作成等被告会社における商品開発等に関するものは除く。)。被告P1がサンキュー在籍時に取得した情報についても,サンキュー等が原告の完全子会社となりそのグループに属するに至ったことにより原告の情報管理体制の下に置かれた以上,被告P1もこれに基づく情報管理を行わなければならないことになる。さらに,被告P1の経験等を考慮するとしても,原告の標準構成明細と被告会社の標準構成明細テンプレート(甲86)の類似性は相当に高い。加えて,本件比較表の作成に当たっては,そもそも被告P1による原告データサーバからの各種情報の取得は転職後に被告会社で使用する意図の下に行われたと見られる上,いかに被告P1の経験等を考慮しても,対応する原告の標準構成明細を実際に確認しなければ正確な数値までは再現できないと思われることから,被告P1は,これを確認したものとうかがわれる。そのような被告P1が,被告会社の標準構成明細の書式作成に当たり原告の標準構成明細を敢えて参考にしないと考えることは不合理である。その他被告らが縷々主張する点を踏まえても,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(エ)小括
以上より,被告P1については,資料1-1及び1-1-2の各情報に係る不正競争(不競法2条1項7号)が認められる。
他方,被告会社については,資料1-1の情報に係る不正競争(不競法2条1項8号)が認められる。

資料1-2の情報について

(ア)資料1-2の情報がP1HDDに保存されていたことは当事者間に争いがないから,これを認める。
他方,被告会社共有フォルダのEdionフォルダ(甲131)を見ても,上新電機様TOTO商品掛率表(1)なるファイルはあるものの,そのファイル名か
ら資料1-2とは考え難く,また,同フォルダ内の商品作りフォルダには掛け率表なるフォルダがあるものの,その内実は不明である。その他の証拠を考慮しても,資料1-2の情報が被告会社共有フォルダに保存されていたことを認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,資料1-2の情報については,被告会社による取得及び使用を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。(イ)前記ア(ア)のとおり,被告P1は,原告の標準構成明細を参考にしつつ被告会社のパッケージリフォーム商品の開発等を行っていたところ,被告P1による原告データサーバ上のデータの持出しは転職後に使用する意図であったこと(前記ア(ア))を踏まえると,たとえそれまでの経験上おおよその掛率を把握していたとしても,資料1-2により正確な掛率を知り得る以上,被告P1はこれを使用したものと合理的に推認される。被告P1が原告から資料1-2の情報を不正の手段により取得したのではなく,これを示されたといえること及びその使用につき不正の利益を得る目的があったと認められることは,前記ア(ア)と同様である。したがって,被告P1については,資料1-2の情報に係る不正競争(不競法2条1項7号)が認められる。これに反する被告P1の主張は採用できない。ウ
資料1-4の情報について

(ア)資料1-4の情報がP1HDDに保存されていたことは当事者間に争いがないから,これを認める。
他方,被告会社共有フォルダのEdionを見ても,110218エディオン様マスターなるフォルダはあるものの,その内実は不明であり,資料1-4が同フォルダに存在すると認めるに足りない。その他の証拠を考慮しても,資料1-4の情報が被告会社共有フォルダに保存されていたことを認めるに足りる証拠はない。そうである以上,資料1-4の情報については,被告会社による取得及び使用を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。(イ)資料1-4の情報には,●(省略)●もっとも,前記(ア)のとおり,被告P1がこれを被告会社に開示したことを認めるに足りる証拠はない。また,被告P1が原告の標準構成明細のデータをP1HDDに多数保存していたこと,これを被告会社のパッケージリフォーム商品の開発等に当たり使用していたことを考えると,被告P1が,●(省略)●被告P1による資料1-4の情報の使用を具体的に裏付けるに足りる証拠もない。
したがって,資料1-4の情報については,前記ア(ア)と同様に,不正の手段により被告P1が取得したものとはいえず,また,上記のとおり,被告P1による使用及び開示を認めることもできない。これに反する原告の主張は採用できない。(ウ)以上より,資料1-4の情報については,被告らによる不正競争を認めることができない。

資料1-5の情報について

(ア)資料1-5の情報がP1HDDに保存されていたことは当事者間に争いがないから,これを認める。
また,前記(1)ウ(オ)のとおり,被告P1は,P3に対し,EDION工料表及びエディオンの内装リフォーム価格表を送付したことが認められる。P3は,被告会社ビジネス開発大阪営業所長であったところ,同営業所はパッケージリフォーム商品の工事見積りを担当する部署であること(甲81の2)を踏まえると,被告P1は,被告会社のパッケージリフォーム商品の開発に当たり,原告の工事料金を意識して積極的に活用していたことがうかがわれる。このことと,被告P1がP3に対して送付したEDION工料表は資料1-5であること(被告P1本人)に鑑みると,被告P1が被告会社のパッケージリフォーム商品の開発等に当たりこれを参考としていたことが合理的に推認される。
(イ)そうすると,資料1-5の情報については,被告P1による使用及び被告会社に対する開示が認められる。被告P1が原告から資料1-5の情報を不正の手段により取得したのではなく,これを示されたといえること及びその使用につき不正の利益を得る目的があったと認められることは,前記ア(ア)と同様である。したがって,被告P1については,資料1-5の情報に係る不正競争(不競法2条1項7号)が認められる。これに反する被告P1の主張は採用できない。(ウ)また,被告P1は,P3に対し,工事費売価はEDION工料表の価格で設定してあるとしつつ,工事費原価は仮の数値を入れているとしてP3による設定を求めている(甲86の1)。また,別の機会に,P3は,エディオンの内装リフォーム価格用記載の価格での運用を求める被告P1に対し,

内装工事の工事価格は,柔軟に変更してまいります。

と回答している。こうした被告P1とP3のやり取りからは,両者(スマートライフ推進部とビジネス開発大阪営業所)のやり取りを通じて被告会社のパッケージリフォーム商品の工事価格が決定されていたことがうかがわれる。
そうすると,資料1-5の情報につき,被告会社は,被告会社のパッケージリフォーム商品の開発等に当たってこれを使用していたものといえる。また,上記メールのやり取りの内容から,被告P1の示す工料表が原告のものであることはP3も当然に認識し得ることに鑑みると,被告会社は,被告P1の開示した資料1-5の情報が原告の営業秘密であることを知り又は重大な過失によりこれを知らないで取得し,使用したものと認められる。
したがって,被告会社については,資料1-5の情報に係る不正競争(不競法2条1項8号)が認められる。これに反する被告会社の主張は採用できない。オ
資料1-6の情報について

資料1-6の情報がP1HDD及び被告会社共有フォルダに存在しないことは当事者間に争いがないから,これを認める。また,被告P1による資料1-6の情報の取得及び被告会社に対する開示並びに被告会社によるその取得及び使用等を認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,資料1-6の情報について,被告らの不正競争を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。

資料2の情報について

(ア)資料2の情報がP1HDDに保存されていたことは当事者間に争いがないから,これを認める。
他方,被告会社共有フォルダのEdionを見ても,1P1なるフォルダ内にぷちdeリフォなる名称のフォルダはあるものの,その内実は不明である。ぷちdeリフォ企画書原案.pdfなるファイルがあることは認められるものの,その更新日時は2013/01/2517:04とされているのに対し,資料2(甲51)の作成日付は平成25年7月30日であることに鑑みると,両者が同一のものと認めることは必ずしもできない。その他の証拠を考慮しても,資料2の情報が被告会社共有フォルダに保存されていたことを認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,資料2の情報については,被告会社による取得及び使用を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。
(イ)前記(ア)の認定によれば,被告P1が資料2の情報を被告会社に開示したことは認められない。また,被告P1が資料2の情報を自ら使用し又は開示したことを認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,資料2の情報については,前記ア(ア)と同様に,不正の手段により被告P1が取得したものとはいえず,また,上記のとおり,被告P1による使用及び開示を認めることもできない。これに反する原告の主張は採用できない。キ
資料3-1~3-9の各情報について

(ア)JUMPシステム導入前の被告会社のリフォーム事業の状況等やシステム開発及び導入の状況等については,前記(1)イ及びウのとおりである。また,原告及びサンキューにおけるリフォーム事業に関する被告P1の考え方等が示された記事の内容については,前記2(1)アのとおりであり,被告会社のJUMPシステム運用開始当時頃のリフォーム事業に係る市販の業務管理システムの内容等については,前記2(1)ウのとおりである。
これらの事情を踏まえると,被告会社によるJUMPシステム導入前後の経緯等については,以下のとおりであったことがうかがわれる。
すなわち,被告会社は,遅くとも平成23年にはパッケージリフォーム商品を商品カタログに掲載するなどしてリフォーム事業を展開していたところ,その業務フローは,被告会社の家電量販店店頭での顧客に対するアプローチから始まり,顧客からの見積依頼の受付と見積担当部署ないしメーカー及び工事業者に対する見積依頼,営業担当者ないし工事業者による顧客宅(工事現場)の訪問,メーカー及び工事業者の見積結果の提出,顧客と営業担当者との契約交渉及び契約締結,商品及び工事の手配,施工,集金という流れであった。その過程で,営業担当者等の関連部署及びメーカー,工事業者等の被告会社外の第三者は,必要な連携を取ると共に,見積依頼書,工事下見依頼書,見積結果報告書,商談結果報告書,契約書等の必要書類の作成が行われる。もっとも,JUMPシステム導入前は,被告会社にリフォーム事業に係る案件管理システムはなく,リフォーム事業もEPCやPOS,PDA等のシステムを使用して行われており,必要書類も,各営業担当者が表計算ソフトExcelを用いて個別に書式を作成し,これに必要な情報を入力するなどして作成していた。
被告会社のJUMPシステム導入前の時期に存在したリフォーム事業に係る各種案件管理システムは,いずれも原告及び被告会社のような家電量販店によるリフォーム事業を前提としたものではなく,建築業・リフォーム業を営む事業者向けのものであるが,顧客管理,進捗管理,契約・工事管理,発注・原価管理,入金管理,売上管理等の機能を持たせ,顧客情報を中心としてリフォーム事業の営業に必要な情報を一元的に管理し,関係部署間で案件情報を共有して見える化を実現すること,インターネットを利用することでモバイル機器を使用した機動的な対応が可能となること,見積り,予算,発注,請求業務を連動させることにより業務の効率化を図ること,併せて見積書や請求書,工程表等の必要書類の作成を支援することといった機能が,それぞれ,網羅的ではないにしても盛り込まれていた。また,被告会社のJUMPシステム導入に先立ち,原告及びサンキューのリフォーム事業に関する記事が業界紙に掲載されたところ,被告P1に対するインタビューを含むこれらの記事では,原告及びサンキューのリフォーム事業が順調に展開されている要因として,家電製品と連携したリフォーム商品の店舗での展示による顧客の需要喚起,値引きなしのリフォーム工事費込み売価の表示,従来のリフォーム会社と異なり潜在需要の掘り起こしに力点を置いていること,施工業者確保の重要性などが挙げられることが示されていると共に,インターネットの利用による見積書その他の書類のダウンロードと顧客への提供,資材発注や工事業者の手配,販売履歴等の顧客管理等を行い,業務効率を向上させるHORPシステムの導入予定も明らかにされ,また,従来のリフォーム業者が必ずしも積極的に取り組んでこなかった細かい住宅設備機器に係るリフォームに取り組むことが家電量販店の強みであるとの考えなども示されている。
(イ)前記(1)ウのとおり,平成26年4月当時のJUMPシステムの業務全体フローは,別紙7のとおりであるところ,同システムの開発は,同年1月に被告会社がファンテックに対して開発を依頼し,同年2月頃から被告会社のP4及びファンテックのP7を中心として打合せが行われ,開発が進められた。
なお,この打合せの過程で,被告会社からファンテックに対しHORP関連情報その他原告のHORPシステムに関する具体的な資料ないし情報が提供されたことを認めるに足りる証拠はない。
同年4月1日から稼働を開始したJUMPシステムは,第1次開発分であり,その機能は,●(省略)●
このように,ファンテックに対する開発依頼から第1次開発分のJUMPシステムの稼働,その後の機能追加が比較的短期間に進められていることに加え,その間,被告会社においてリフォーム事業が停止ないし縮小されていたことをうかがわせる事情はないことなどに鑑みると,JUMPシステムの開発は,それ以前の被告会社のリフォーム事業の業務フローを大幅に変更するものではなく,これをおおむね踏襲しつつ,一元的な業務管理及び作業手順の標準化等の観点からリフォーム事業に特化した案件管理システムの開発として進められたものと見られる。このことは,打合せに当たっては,現場の要望も踏まえつつ,被告会社の業務や基幹システムの実情に合わせて議論をして開発作業を進めた,JUMPシステムにおいても書類の書式や作業内容はその前後で大きく変えたところはない,とするP4の供述(乙39,証人P4)からもうかがわれる。
(ウ)以上を踏まえた上で,資料3-1~3-9の情報に係る被告らの不正競争の成否を検討する。
a
資料3-1~3-5,3-8及び3-9がP1HDDに保存されていたこと
は当事者間に争いがないから,これを認める。
資料3-6については,前記(1)ウ(ク)のとおり,被告P1がP4に対してこれを示したことに鑑みると,P1HDDに保存されていたものと認められる。資料3-7については,被告P1は,同資料の情報を取得したこと自体は認めていること,同人が原告退職に先立ち原告データサーバから大量に取得した情報の中には,HORP研修なるフォルダがあり,その中には【Ⅰ型】HORP営業編研修資料0127なるファイルがあることなどに鑑みると,P1HDDに保存されていたものと認められる。
b
他方,被告会社共有フォルダのEdionフォルダの1P1フォルダ内
には,研修資料なるフォルダがあることが認められるものの,当該フォルダの内実は不明であり,資料3-1~3-9が他のフォルダ内に保存されていることを認めるに足りる直接的な証拠はない。もっとも,●(省略)●
また,市販のリフォーム事業向け案件管理システムが建築業者等向けであるのに対し,HORPシステムの情報は,原告と同じく家電量販店としてリフォーム事業を展開する被告会社にとって,自社のシステム開発に当たり参考となるといえる。さらに,被告P1は,転職後に転職先でリフォーム事業に使用する意図で原告データサーバ上の情報を取得したと見られることに鑑みると,被告P1がHORPシステムに関する知識経験を有することを踏まえても,手持ちのHORPシステムに関する資料をJUMPシステムの開発に当たり開発関係者に開示しない理由はない。現に,平成26年4月頃,被告P1は,P4に対し,HORPシステムの業務全体フロー(甲82)を示し,JUMPシステムの業務全体フロー(別紙6)を作成させているし,他の原告のリフォーム事業に関する資料を被告会社従業員に示すなどしている。しかも,被告P1は,取引先に対するメール(甲25)において,

100満ボルト,エディオンにて試行錯誤しながら辿り着いた一つのビジネスモデルを,今回は更にグレードアップさせ,スピードアップさせて最短でカタチにしてゆきます。

,HORPシステムと同じ考えの基,それ以上のオペレーションシステムの開発…等ご協力いただく内容が沢山ありますなどと,HORPシステムと同様のシステムの開発に強い意欲を示していた。
こうした事情等に鑑みると,被告P1は,被告会社スマートライフ推進部でJUMPシステムの開発に当たる中心的メンバーであるP4に対し,資料3-1~3-9を示し,JUMPシステム開発の参考に供したことが合理的に推認される。もっとも,前記(イ)のとおり,JUMPシステム開発の打合せの過程で被告会社からファンテックに対しHORP関連情報その他原告のHORPシステムに関する具体的な資料ないし情報が提供されたことがないこと,JUMPシステムの開発がそれ以前の被告会社のリフォーム事業の業務フローをおおむね踏襲しつつ,一元的な業務管理及び作業手順の標準化等の観点からリフォーム事業に特化した案件管理システムの開発として進められたものと見られること,作業の組織化,情報共有,進捗管理,顧客情報管理といったシステム導入効果は,市販のリフォーム事業向け案件管理システムでもうたわれていたこと,具体的な入力項目や操作方法といった詳細な事項は,既存のシステムとの連携や,社内の関連部署やメーカー,工事業者等の取引先との連携に関する従前の運用方法からの連続性等を考慮しなければならず,事業者ごとに異なり得ることなどに鑑みると,P4等被告会社の関係者が参考としたのは,資料3-1~3-9の各情報のうち,家電量販店としてリフォーム事業を展開するための案件管理システムの設計思想その他理念的・抽象的というべき部分が中心であったものと推察される。
c
以上より,資料3-1~3-9の各情報については,いずれも,被告P1に
よる使用及び被告会社に対する開示が認められる。被告P1が原告からこれらの情報を不正の手段により取得したのではなく,これを示されたといえること及びその使用につき不正の利益を得る目的があったと認められることは,前記ア(ア)と同様である。
したがって,被告P1については,資料3-1~3-9の各情報に係る不正競争(不競法2条1項7号)が認められる。これに反する被告P1の主張は採用できない。
また,被告会社については,資料3-1~3-9の各情報のいずれについても,被告P1の営業秘密不正開示行為を知り又は重大な過失によりこれを知らないで,被告P1から開示されたこれらの情報を使用したことが認められる。したがって,被告会社については,資料3-1~3-9の各情報に係る不正競争(不競法2条1項8号)が認められる。これに反する被告会社の主張は採用できない。

資料5-1,5-2,7-1~7-4,8-1,8-3,8-4,9.10,11-1~11-3,12の各情報について
(ア)資料5-1,5-2,7-1~7-4,8-1,8-3,8-4,9.10,11-1~11-3,12の各情報がP1HDDに保存されていたことは当事者間に争いがないから,これを認める。
しかし,被告会社共有フォルダのEdionフォルダを見ても,これらの資料の存在をうかがわせるフォルダ名及びファイル名すら見当たらない。その他の証拠を考慮しても,これらの情報が被告会社共有フォルダに保存されていたことを認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,上記各情報については,被告会社による取得及び使用を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。
(イ)前記(ア)の認定によれば,被告P1が資料5-1,5-2,7-1~7-4,8-1,8-3,8-4,9,10,11-1~11-3,12の各情報を被告会社に開示したことは認められない。また,被告P1がこれらの情報を自ら使用し又は開示したことを認めるに足りる証拠はない。
そうである以上,これらの情報については,前記ア(ア)と同様に,不正の手段により被告P1が取得したものとはいえず,また,上記のとおり,被告P1による使用及び開示を認めることもできない。これに反する原告の主張は採用できない。ケ
小括

以上より,営業秘密目録②記載の情報のうち,資料1-1,1-1-2,1-2,1-5及び3-1~3-9の各情報については,被告P1の不正競争(不競法2条1項7号)が認められるとともに,資料1-1,1-5及び3-1~3-9の各情報については,被告会社の不正競争(不競法2条1項8号)が認められる。なお,これらの資料に係る営業秘密目録②の記載については,原告の主張の趣旨全体及び上記2(2)の検討を踏まえると,別紙2のとおり理解するのが適切である。
4
差止及び廃棄請求の成否(争点4)について
前記3のとおり,被告P1については資料1-1,1-1-2,1-2,1-5及び3-1~3-9の各情報に係る不正競争が認められるところ,これにより原告は営業上の利益を侵害され,又は侵害される恐れがあるといえることから,その使用等の差止請求及び上記各情報が化体されている文書その他の媒体の廃棄請求が認められる。
また,被告会社については資料1-1,1-5及び3-1~3-9の各情報に係る不正競争が認められるところ,これにより原告は営業上の利益を侵害され,又は侵害される恐れがあるといえることから,その使用等の差止請求及び上記各情報が化体されている文書その他の媒体の廃棄請求が認められる。なお,被告会社のJUMPシステムに係るデータについては,HORP関連情報の使用が認められるものの,前記3(2)クのとおり,その使用はJUMPシステム開発に当たって参考とされたという程度にとどまり,HORP関連情報それ自体がJUMPシステムに再現されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,同データは本件における差止請求及び廃棄請求の対象となるものではない。5
原告の損害の有無及び額(争点5)について

(1)原告の主位的請求に係る損害賠償請求(請求の趣旨第3項)について原告の主位的請求に係る請求の趣旨第3項の請求は,営業秘密目録①記載の各情報に係る被告らの不正競争につき,被告らに対して損害賠償を求めるものである。
しかし,前記1のとおり,営業秘密目録①記載の各情報は,いずれも特定を欠き不明確である。そうである以上,原告の上記請求は,その不正競争を裏付けるに足りる主張立証をそもそも欠くものといえることから,理由がない。(2)原告の予備的請求に係る損害賠償請求(請求の趣旨第3項)についてア
被告らの連帯責任の範囲について

前記3のとおり,被告らは,それぞれ故意又は過失により不正競争を行ったといえることから,これによる原告の営業上の利益の侵害につき損害賠償責任を負う。
それと共に,被告P1の不正競争は,被告会社の業務上行われたものであるから,被用者がその事業の執行について行ったものということができる。また,前記3認定に係る事実によれば,使用者である被告会社が被用者である被告P1の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとはいえないし,相当の注意をしても損害が生ずべきであったと認めるに足りる証拠はない。したがって,被告会社は,使用者責任(民法715条)に基づき,被告P1の不正競争により生じた損害の範囲について,同人と連帯して賠償する責任を負うこととなる。

損害額について

(ア)不競法5条1項の適用について
a
不競法5条1項は,本件との関係でいえば,技術上の秘密である営業秘密
に係る不正競争によって営業上の利益を侵害された者の侵害者に対する損害賠償請求の場合に,侵害者が侵害行為組成物(侵害行為により生じた物を含む。不競法3条2項)を譲渡した場合のその譲渡数量に,被侵害者の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を,被侵害者の販売等の能力に応じた額を超えない限度で,被侵害者が受けた損害の額とすることができるとしつつ,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとしている。その趣旨は,侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより,従前オールオアナッシング的な認定にならざるを得なかった販売数量減少について,より柔軟な認定を行うことにある。また,その基礎には,侵害行為組成物が市場において販売・譲渡されることによって被侵害者が市場機会を喪失するという関係が定型的に認められることがある。営業秘密に係る不正競争の場合に,当該秘密が技術上の秘密に関するものである場合に限って不競法5条1項の適用が認められるのも,営業秘密が技術上の秘密である場合には,当該情報が物に化体されることで侵害者と被侵害者の各商品が市場において競合する可能性があるといい得ることから,それに係る不正競争に上記のような定型的関係が認められることに基づくものと理解される。
そうすると,技術上の秘密とは,上記の可能性を生じさせるような技術上の情報であることを要すると解される。
b
標準構成明細情報について

前記3のとおり,被告らは,●(省略)●
しかし,その使用の程度は,●(省略)●
そうすると,標準構成明細情報は,パッケージリフォーム商品に化体されているものではなく,侵害者と被侵害者の各商品が市場において競合する可能性を生じさせるものとはいえないことから,技術上の秘密に当たらない。この点に関する原告の主張は採用できない。
c
HORP関連情報について

●(省略)●パッケージリフォーム商品の開発に当たっては,組み合わせる部材及び工事の種類及び価格等はシステム外で決定されるものであるし,パッケージリフォーム商品の販売や販売した商品に含まれる工事も,店舗担当者,工事業者等が実施するものであって,HORPシステムは,その進捗管理等のために使用されるにすぎない。この点は,被告会社のJUMPシステムも同様である。●(省略)●そのプログラムないしソースコードのように,そのもの自体を直接にシステム開発に使用し得る情報は含まれていない。
さらに,前記3(2)キのとおり,被告らによるHORP関連情報の使用等は,家電量販店としてリフォーム事業を展開するための案件管理システムの設計思想その他理念的・抽象的というべき部分を中心として参考としたというにとどまる(なお,HORP関連情報のうち,資料1-5の情報は,そもそもHORPシステムそのものに関するものではない。)。
そうすると,HORP関連情報は,パッケージリフォーム商品に化体されているものではなく,侵害者と被侵害者の各商品が市場において競合する可能性を生じさせるものとはいえないことから,技術上の秘密に当たらない。この点に関する原告の主張は採用できない。
d
以上より,本件においては,不競法5条1項は適用されない。

(イ)不競法5条2項の適用について
不競法5条2項は,不正競争によって営業上の利益を侵害された者の侵害者に対する損害賠償請求の場合に,侵害者が侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額をもって被侵害者が受けた損害の額と推定するものであり,その基礎には,侵害行為により生じた侵害者の商品等と被侵害者の商品等が市場において競合する定型的な関係にあることがあるものと理解される。
前記(ア)のとおり,標準構成明細情報及びHORP関連情報は,いずれもパッケージリフォーム商品に化体されるものではない。そうである以上,被告会社のパッケージリフォーム商品の販売による利益は,標準構成明細情報及びHORP関連情報に係る不正競争によって得た利益とはいえない。また,原告及び被告会社のいずれにおいても,標準構成明細情報又はHORP関連情報それ自体を販売するなどして利益を上げているわけではなく,その点では市場における競合もない。したがって,本件においては,不競法5条2項は適用されない。これに反する原告の主張は採用できない。
(ウ)不競法5条3項の適用について
a
損害の発生

原告と被告会社とは,いずれも家電量販店での販売事業の一環としてリフォーム事業を展開しており,リフォーム事業者として市場における競合関係にあるというにとどまらず,家電量販店の展開するリフォーム事業という枠組においても,市場において競合する関係にある。このため,被告会社がリフォーム事業の業務効率向上により利益を向上させることは,原告会社の利益低下につながる可能性がある。そうである以上,仮に被告会社のJUMPシステム開発に当たり原告がHORPシステムに関する情報を提供する場合,無償でその提供が行われるとはおよそ考え難い。
そうすると,被告らの不正競争により原告には損害が発生しているものといえる。これに反する被告らの主張は採用できない。
b
受けるべき金銭の額に相当する額の算定方法

不競法5条3項は,本件に関していえば,不正競争により営業上の利益を侵害された者の侵害者に対する損害賠償請求の場合に,侵害に係る営業秘密の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を,自己が受けた損害の額として賠償請求し得るとするものである。これは,侵害行為による使用料の喪失・減少をもって逸失利益と考えられることに基礎を置く。
ここで,使用料の支払方法については,1回払いのもの,所定の期間ごとに所定の使用料率に基づいて算定した額を定期的に支払うもの,それらを組み合わせたものなどがあるところ,上記趣旨によれば,受けるべき金銭の額に相当する額の算定に当たっても,侵害行為である不正競争の具体的態様に応じて合理的な支払方法に基づき算定することが相当である。
本件においては,前記(ア)のとおり,被告らは,標準構成明細情報及びHORP関連情報のいずれについても,パッケージリフォーム商品の開発等ないしJUMPシステム開発に当たってこれらの情報を参考にしたものであって,システムで取り扱われるパッケージリフォーム商品にこれらが化体されているものではない。また,標準構成明細情報については,●(省略)●はそのまま使用されるわけではなく,また,いずれ陳腐化するものであるし,書式そのものも,それ自体が必ずしも直接利益を生むものではないことに鑑みると,その使用料を継続的に支払うことの合理性は必ずしも高くないと思われる。HORP関連情報も,被告会社のJUMPシステム開発に当たって参考とされるとはいえ,HORP関連情報そのものがJUMPシステムに組み込まれて使用され続けるわけではない。そうすると,本件においては,一定の期間ごとに被告会社のパッケージリフォーム商品の売上に対し一定の使用料率を乗じて使用料相当額を算定することに合理性がないわけではないとしても,標準構成明細情報及びHORP関連情報の使用料の算定は,1回払いを前提とする方がより合理的と思われる。
c
受けるべき金銭の額に相当する額

受けるべき金銭の額に相当する額を定めるに当たっては,本件でいえば,当該営業秘密に類する性質の情報の実際の使用料額や,それが明らかでない場合には業界における相場等も考慮に入れつつ,当該情報自体の価値,当該情報を使用した場合の売上及び利益への貢献や侵害の態様,営業秘密保有者と侵害者との競業関係や営業秘密保有者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合的に考慮して,合理的な使用料額を定めるべきである。
証拠(甲149)によれば,原告は,平成23年3月,サンキューハウスシステムに対し,HORPライセンス料として●(省略)●円を支払ったことが認められる。その趣旨について,平成22年9月14日付けサンキューハウスシステム作成の御見積書(甲170)には,●(省略)●との記載がある。他方で,平成22年10月12日付け原告作成のリフォーム管理システムHORPシステム【導入概要】と題する経営会議資料(甲150)には,●(省略)●との記載がある。また,実際,その後原告がサンキュー等に対しHORPシステムのライセンス料として支払をしたことはない(弁論の全趣旨)。さらに,その後,サンキュー等は,原告の完全子会社となったものの,法人としては原告とは別に存在している。加えて,原告及びサンキューにおける標準構成明細とHORPシステムとの関係を考えると,ここでいうHORPライセンス料とは,標準構成明細に係る情報の供与に対する対価も含むものと思われる。
以上の事情を踏まえると,上記HORPライセンス料は,原告が,サンキュー等との資本提携及びその後の完全子会社化を進めるに当たり,その資産価値を評価した上,家電量販店におけるリフォーム事業に係るサンキュー等のHORPシステムの導入及び運用ノウハウの取得に対する対価として相当な額として算定されたものと理解される。また,資料3-6によれば,原告におけるHORPシステムとサンキューのそれとは,基本的な業務フロー及び実装している機能の点で,共通する部分が多いといえる。
他方,標準構成明細情報及びHORP関連情報のいずれも,被告P1がサンキュー及び原告にそれぞれ在籍した当時HORPシステムを使用したリフォーム事業に深く関与していたことに鑑みると,正確性という点で若干難があったとしても,被告P1の知識及び経験によって得られる部分も少なからず含まれていたものと推察される。売上及び利益への貢献という点では,前記(ア)のとおり,標準構成明細情報及びHORP関連情報とも,業務効率を上げるものではあるものの,直接的に売上及び利益の向上に結びつくものとまではいえない。
もっとも,原告と被告会社とは,前記aのとおり,家電量販店の展開するリフォーム事業の市場において競合する関係にあることに鑑みると,原告が被告会社に対し標準構成明細情報及びHORP関連情報を供与することは,有償であっても通常は考え難い。
以上の事情を総合的に考慮すると,受けるべき金銭の額に相当する額(不競法5条3項)としては,標準構成明細情報及びHORP関連情報の各使用を合わせて,1500万円とするのが相当である。これに反する原告の主張及び被告らの主張はいずれも採用できない。
(エ)その他の損害について
a
調査費用

証拠(甲89,90,136~138)及び弁論の全趣旨に鑑みると,原告は,本件訴訟の提起に先立ち,被告らの不正競争に関連して被告P1の使用していた原告貸与パソコン等の調査をエヌワーク及び同社を通じて株式会社ラック(以下ラックという。)に委託して行ったことが認められる。そうである以上,本件に関連してエヌワークに対し調査費用を支払ったことがうかがわれる。もっとも,その金額に関しては,見積書2通(甲151,152)があるのみであり,領収書等実際に支払われた金額を示す証拠はない。また,上記各見積書を見ても,平成26年5月20日付けラック作成の調査報告書(甲136)で調査対象として示されている端末以外の端末も示されていることから,本件との関連で実際に必要となった調査その他の作業の範囲も必ずしも明らかでない。これらの事情を総合的に考慮すると,本件に関する調査費用相当額の損害として,150万円を認めるのが相当である。これに反する原告の主張及び被告らの主張はいずれも採用できない。
b
弁護士費用

本件に表れた事情一切を総合的に考慮すると,本件に関する弁護士費用相当損害額としては,165万円を相当と認める。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用できない。

損害額合計

したがって,原告の損害額合計は,1815万円となる。
第4

結論

以上より,原告の請求のうち,主位的請求に係る請求の趣旨第1項及び第2項の訴え並びに予備的請求に係る請求の趣旨第2項のうち別紙②営業秘密目録記載の営業秘密を使用して作成されたソフトウェア,原価表,業務マニュアル,取引先リスト,見積書,契約書,チェックシート,パンフレット,店舗展示用ディスプレイ設備の廃棄に係る訴えは,いずれも不適法であるから却下する。また,主位的請求に係る請求の趣旨第3項の請求については,理由がないからこれを棄却する。
原告の予備的請求に係るその余の請求のうち,被告P1に対する別紙2営業秘密目録記載の営業秘密のうち1-1,1-1-2,1-2,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密の使用差止及びこれらの営業秘密が記載された文書等の廃棄等を求める部分,被告会社に対する上記別紙記載の営業秘密のうち1-1,1-5及び3-1~3-9記載の各営業秘密の使用差止及びこれらの営業秘密が記載された文書等の廃棄等を求める部分,並びに,被告らに対し1815万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成28年5月12日)からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,差止及び廃棄請求に係る仮執行宣言の申立て及び仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととする。

大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官

杉浦正樹杉浦一輝
裁判官

裁判官

布目真利子
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