判例検索β > 平成30年(ネ)第2347号
損害賠償請求控訴事件
事件番号平成30(ネ)2347
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日令和2年10月16日
裁判所名・部大阪高等裁判所  第12民事部
結果棄却
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号平成29(ワ)724
判示事項の要旨子を殺害したとして有罪判決を受け,20年の除斥期間経過前に子の死亡を原因とする損害賠償請求権を行使することができなかった母親が,再審公判における無罪判決確定後6か月以内に損害賠償請求訴訟を提起した事案について,除斥期間の経過により損害賠償請求権が消滅することを定めた民法724条後段(平成29年法律第44号による改正前のもの)は,加害者が権利者の権利行使を意図的に妨害した場合など,これを適用することが著しく正義・公平の理念に反するときはその適用が制限されるが,本件では,被告とされた会社の従業員等が母親の刑事事件や再審開始決定に対する即時抗告審において母親の権利行使を意図的に妨害したなどと認めるには足りないと判断し,除斥期間の経過を理由として損害賠償請求を棄却したもの
裁判日:西暦2020-10-16
情報公開日2020-11-05 16:00:21
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主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,5210万8735円及びこれに対する平成7年7月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要

1本件は,控訴人が,平成7年に控訴人宅で発生した火災(以下本件火災という。
)の原因は,被控訴人が設計・製造し,販売した軽乗用自動車が通常備えるべき安全性を備えていなかったため,同車から漏出したガソリンに控訴人宅の風呂釜の種火が引火したことによるものであると主張して,被控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金5210万8735円(本件火災に
より死亡した控訴人の子の逸失利益及び死亡慰謝料の2分の1相当額である3237万1578円,
控訴人固有の慰謝料1500万円並びに弁護士費用473
万7157円の合計額)
及びこれに対する不法行為日である同年7月22日から
支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,
上記損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅したとして控訴人の
請求を棄却したことから,控訴人がこれを不服として控訴した。
2
前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,
後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の事実及び理由の第2事案の概要の2及び3(別紙軽自動車目録を含む。原
判決1頁22行目~10頁7行目,28頁)に記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決1頁22行目から23行目にかけての弁論の全趣旨の次に及び記録を加える。


原判決4頁6行目の滅圧を減圧に改める。



原判決4頁12行目の傾斜して駐車されていたを傾斜して駐車されており,連通管現象により液体ガソリンが給油口まで押し上げられやすい状況にあったに改める。⑷

原判決4頁13行目の冷温のガソリンが燃料タンクにあったを冷温のガソリンが燃料タンクに入っており,当時(夏)の気温やエンジンの熱により過熱されて燃料タンクの内圧が相当上昇したに改める。


原判決4頁23行目末尾に,改行して次のとおり加える。

なお,本件火災発生直前のガソリン給油の際に給油口近くまでガソリンが給油されていたとしても,通常あり得る給油方法にすぎないし,給油口の閉栓の際に最後まで給油キャップが回し切られていなかったとしても,その程度は大きくなく,異常な使用方法であったとはいえないから,本件火災が異常な使用方法に起因して発生したとはいえない。また,訴訟上の因果関係及びその基礎となる事実の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実の存在及びその事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであれば足りるものであって(最高裁昭和50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1417頁),控訴人が製品の欠陥に起因する危険事象の発生に至る科学的機序等の詳細まで立証しなければならないものではないというべきである。⑹
原判決7頁14行目の
民法724条後段の効果

民法724条後段を(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ)の効果(以下「旧法後段の効果

という。」に改める。)


原判決7頁24行目の
民法160条
の次に(平成29年法律第44号に

よる改正前のもの。以下同じ)

を加える。


原判決8頁1行目冒頭から4行目末尾までを次のとおり改める。
本件被害者が取得した損害賠償請求権は,損害の性質上権利行使が不可能なものであったとはいえないが,控訴人は,本件被害者に対する殺人の罪等
により本件有罪判決を言い渡され,同判決が確定したことから,その後の再審において無罪判決が確定するまでの間,
相続欠格事由
(民法891条1号)
が存在することとなり,本件被害者から相続した損害賠償請求権を行使することが法律上絶対に不可能であった。そして,除斥期間の効果は,損害賠償を求める債権者ごとに相対的に判断されるものであるから,旧法後段の効果
を制限するかについても債権者ごとに相対的に判断すべきであり,本件被害者の損害賠償請求権を相続した父において法律上権利を行使することが可能であったとしても,控訴人に法律上権利を行使することが不可能な時期があった以上は,控訴人について旧法後段の効果を制限すべきである。」


原判決8頁6行目の場合には,をときにに改める。


原判決8頁8行目冒頭から14行目末尾までを次のとおり改める。
仮に本件火災の時か定有罪判決により相続欠格事由が発生し,除斥期間経過時に法律上の障害により客観的・絶対的に権利行使ができなかった場合に民法724条後段を適用することは,債権者に著しく酷である。最高裁判所平成16年4月27日第三小法廷判決(民集58巻4号1032頁。以下「平成16年判決という。
)は,民法724条後段が除斥期間の起算点を不法行為の時と規定しているにもかかわらず,身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や,
一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のよう

に,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,不法行為時に損害賠償請求権を行使することが客観的・絶対的に不可能であり,同時点を起算点とすることが著しく酷である一方,加害者は,相当の期間が経過した後に被害者から損害賠償の請求を受けることを予期すべきものであることを考慮し,加害者側の関与の程度を問わずに,当該損害の全部又は一部が発生した時を除斥期間の起算点と解釈している。このことに照らせば,本件のような,法律上の障害により客観的・絶対的に権利行使ができなかった場合は,加害者側の関与の程度を問うことなく,旧法後段の効果を制限する2つの判例(最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁〔以下平成10年判決という。,同平成21年4月28日第三小法廷判決・民〕

集63巻4号853頁〔以下平成21年判決という。)と同様に,旧法〕
後段の効果を制限すべきである。そうすると,除斥期間経過後であっても,債権者が権利を行使する法律上の障害がなくなってから6か月(あるいは相続の熟慮期間を加えた9か月)以内に権利を行使した場合において,除斥期間経過前に債務者において債権者が将来権利を行使することを予期すべき
状況にあったときは,債務者の関与・寄与により債権者が権利を行使できない状態に陥ったか否かに関係なく,
旧法後段の効果が制限されるものと解す
べきこととなる(民法160条参照)

これを本件についてみると,被控訴人は,除斥期間経過前に,遅くとも本件開始決定に対する即時抗告審における審理に関与した時点で,将来再審の
公判手続で無罪判決が確定することにより相続欠格事由が解消されれば控訴人が被控訴人に対して損害賠償請求権を行使することを予期すべき状況にあったから,
控訴人の無罪判決確定から6か月以内に本件訴訟が提起され
ている以上,旧法後段の効果は制限されるべきである。なお,民法724条後段は不法行為後長期間が経過すると証拠が散逸し,債務者の反証が困難に
なるおそれがあることをも考慮した規定であるところ,被控訴人は,本件火災の原因が熾烈に争われた本件確定審や本件開始決定に対する即時抗告審における審理に関与していたから,本件火災に関する証拠は散逸しておらず,旧法後段の効果が制限されても支障がないというべきである。


原判決8頁15行目,
9頁7行目及び10頁6行目の各
除斥期間の効果

9頁4行目の同条の効果並びに同頁23行目及び26行目の各民法724条後段の効果をいずれも旧法後段の効果に改める。

原判決8頁21行目の
被告
から9頁2行目末尾までを次のとおり改める。

被控訴人及び株式会社αの従業員は,次のとおり,本件刑事事件の初動捜査の段階で燃料残量計について誤った説明をしたほか,その後も,本件車両の給油口から液体ガソリンが漏れる可能性を否定する趣旨の,事実に反する誤った証言や回答,説明などをした。その結果,初動捜査の段階で,何者かが燃料タンクから約7ℓの液体ガソリンを故意に抜き取ったとの誤った見立てがされるなどして,控訴人が本件有罪判決を受けることになったほか,本件開始決定に対する即時抗告審において,上記の回答等を根拠とする検察側の主張立証が行われることでその審理が長期化し,同審理中に除斥期間が経過したことが明らかである。a捜査段階における関与(以下「被控訴人関与1という。)について
被控訴人の従業員であるβ及びγは,燃料残量計のシリコンオイルが高熱で加熱されると,粘性が低下して正確な残量を示さないことがあり,ガソリンを抜き取った事実がなくても,燃料残量計の針が4分の3強を示すことがあり得るのに,平成7年7月25日に行われた検証において,通電していな
ければ燃料残量計が動くことはないと説明したため,捜査機関が燃料残量計の針が4分の3強を示したのは何者かがガソリンを抜き取ったためであるとの誤った見立てをする原因になった。
b
本件確定審における関与(以下被控訴人関与2という。
)について
α所属のδが,燃料タンクの給油口から液体ガソリンが漏出(噴出)する可能性がない旨証言したため,控訴人が本件有罪判決を受けることになった。c
本件開始決定に対する即時抗告審における関与について


被控訴人のお客様相談センターの従業員は,検察官や裁判官に誤解を与えるため,
本件車両の取扱説明書である
κVAN取扱説明書
(甲22)
における

燃料補給は自動停止後に追加補給しないでください。気温の変化によりあふれることがあります。

との注意事項の記載を根拠とする弁
護人の燃料タンクのガソリンが過量的満杯の状態の場合に,気温の変化によりガソリンの体膨張が生じれば液体ガソリンが給油口からあふれることがあり得るとの主張に関連した大阪高等検察庁からの電話による問
合せに対し,
上記注意事項が給油キャップを閉める前の給油中における注
意事項であることや,
気温の変化によりあふれることがあります
とは,

季節によって気温が変化するため,気温の低い時期に追加補給してあふれることがなかった量でも,気温が高くなる夏場には,燃料タンク内の圧力がより高まることにより,給油口からガソリンがあふれる危険があるという意味であると回答した
(甲23,
24。被控訴人関与3
以下
という。。

しかしながら,
給油中に気温の変化によってガソリンがあふれることはあ

り得ない事柄であり,上記注意事項は,給油キャップを閉めた後に気温の変化によりガソリンがあふれることがあることについて注意喚起をしたものである。被控訴人の従業員による上記回答は,給油キャップを閉めた後にガソリンが漏出することがあることを隠蔽するためにされたものである。



被控訴人は,ε作成の鑑定書(甲7。以下ε鑑定書という。
)を弾劾
するために行われた捜査関係事項照会に対し,平成26年4月25日付けで,給油キャップのシール性が確保されていれば,設計上,13.7kPa以下のタンク内圧である限り,給油口から液体又は気体が漏れ出すこと
はないところ,
バルブ等のベント系が正常に作動しているときにタンク内
圧が13.7kPaに達することは実際には考え難いことや,ガソリンの温度が251.
9℃にまで上昇しない限り液体ガソリンが給油口に達しな
いこと(ガソリンの膨張に関する計算式を付記)から,液体ガソリンが膨張することによって給油口に達する事態が非現実的である旨の誤った回答をした(甲21,125。以下被控訴人関与4という。。



被控訴人は,κ・ストリートについても,パッキンの素材としてOリングと同種の素材を用いており,異物の付着等によるシール性の低下により数百ミリリットル程度の漏出があり得るのに
(証人ζ尋問調書
〔甲10〕,

平成26年6月26日及び同月27日にホンダサービス技術センター近畿で実車見分を実施した際に確認された4台のκ・トラックの燃料漏れ(甲11)の原因に関し,①

いずれのトラックも,フューエルフィラー

キャップパッキン及びローターボディパッキンのシール性が確保されていたこと,②

いずれのトラックも,給油キャップのキーシリンダー部に

あるOリング外周部に隙間があることが確認されたこと,③
上記実車見

分時のガソリン漏れの原因と推定されるキーシリンダー部にあるOリングからのガソリン漏れ事象については,タイプの異なるκ・ストリートに
は関係しない事象であることを記載した同年8月1日付け報告書を作成し,大阪高等検察庁に提出した(甲140。以下被控訴人関与5という。。



αのζ研究員は,液体ガソリンが温度の高いエンジン近傍で温められて燃料タンクに還流するとのε鑑定書の意見を否定する証言をした(以下
被控訴人関与6という。。



被控訴人は,大阪高等検察庁がε鑑定書に関する同年12月12日付け意見及び求釈明申立書(意見書11)と題する書面(甲26)を本件開始決定に対する即時抗告審裁判所に提出するに当たり,大阪高等検察庁か
らの問合せに回答する形式で協力しており,べーパー(ガソリン蒸気)に混じって液体ガソリンも燃料タンクに戻る場合があるものの,その量は極めて少量であり,
タンク内圧力に影響を与える量ではないとの認識を伝え
ていた(以下被控訴人関与7という。。
)」

原判決9頁20行目の被告がを被控訴人は,に改める。

3当審における当事者の補充主張


控訴人

本件開始決定に対する即時抗告審における被控訴人の関与・寄与に関する主張
被控訴人は,κ・トラックにつき多数のガソリン漏出事例が収集され,原因特定に至らないものの,何らかの原因でキャップのシール性が低下し
た(実況見分調書添付の写真〔甲59の写真第128,130号〕によると,本件車両の給油キャップは,つまみが水平の位置からやや傾いた位置にあったことが認められるところ,このようなことがあれば,給油キャップの回転角が足りず,パッキンの押し付け力が低下してシール性が低下すると考えられる。と認められるのに,

ガソリン漏出を否定し続けた
(以下

被控訴人関与8という。。

被控訴人は,検察官の捜査関係事項照会書(甲124)のうち,
給油キャップの『シール性が確保』されない事態ないし事象が起こり得るとすれば,どのような原因及び機序によって起こるのか,また,どの程度までシール性が低下するのかについて,回答しない旨を回答し(甲125),

給油キャップのシール性が確保されない事態ないし事象について想定可能なものを全て挙げられたい旨の再度の照会(甲135)に対しても,回答しない旨の回答をした(甲142。以下,これらを併せて被控訴人関与9という。。)
被控訴人は,平成26年までに把握したガソリン漏出事例の報告に関し,
国土交通省に対して10台(κ・ストリート1台,κ・トラック9台)のガソリン漏出を報告していたのに(当審における調査嘱託の結果),本件
開始決定に対する即時抗告審において,検察官に対し,同年10月2日付けで,κ・トラックにつき2件の報告があったが,κ・ストリートについては報告がないとの虚偽の回答をした
(甲142。被控訴人関与10
以下
という。。

被控訴人は,①

圧の上昇,


連通管現象,②

燃料タンクへの入熱によるタンク内

エバポレーションパイプの径が細いことなどによるエバポ

レーション制御系の機能不足ないし機能不全,④
ル性の低下,⑤

給油口キャップのシー

鶴首(燃料タンク本体と給油口を繋ぐパイプ)が比較的

短い設計になっているため,連通管現象が生じたときに液面が容易に給油口まで達することなどのガソリン漏出の機序に関係する知見を熟知して
おり,
本件車両についてタンク内温度の上昇とタンク内圧の上昇によりガソリンが給油口のレベルに容易に達することも熟知していたとしか考えられないだけでなく(ε教授作成の意見書〔甲95。以下ε意見書という。)
〕,遅くとも再審請求事件の第1審におけるη新実験及び即時抗告審におけるθ実験等によりιの自白どおりの放火が不可能であることは,
事実上決着がついていたにもかかわらず,裁判官に誤解を与えるため,即時抗告審で被控訴人関与4に係る回答をしたことから,
検察官は同回答に
基づく主張をした。その結果,本件開始決定に対する即時抗告審における争点の解明が著しく遅れ,ひいては,再審公判における無罪判決の確定が大幅に遅れたため,
控訴人が除斥期間経過前に本件訴訟を提起することが

できなくなった。

民法改正について
加害者である被控訴人が控訴人の権利行使を著しく困難にした本件の事案において,民法724条後段を除斥期間を定めたものと解した上で旧法後
段の効果を制限しない解釈をすることは,20年の期間を消滅時効期間に改めた今般の民法改正の立法事実を否定する誤った解釈である。

本件火災の原因に関する主張
被控訴人は,本件訴訟においても,κ・トラックにつき多数のガソリン漏出事例が収集され,κ・ストリートについてもガソリン漏出事例があったことを把握していたのに,ガソリン漏出を否定し続けたほか,当審にお
いて裁判所から開示を促されるまで,国土交通省に対する報告制度に基づく報告内容の全てを明らかにしないなど,隠蔽を続けた。このような訴訟態度に照らせば,本件車両の燃料タンク及び燃料キャップには,欠陥が存在したというべきである。
ιが放火行為をしていないことは,次の事実から明らかである。

a
着火材などの放火の実行に必要な道具が現場から発見されていない(捜査機関が給油ポンプに類似するとしている現場に残置された溶融物〔甲44〕が給油ポンプであったことを裏付ける鑑定等は行われていないし,本件火災現場にあったポリタンク〔甲59の写真第37~40号〕本件火災以前からガレージ内に置かれていたものにすぎない。。も,


b
ιは,
本件火災当日の午後4時28分にガソリンスタンドで給油して
おり,
本件火災が発生した午後4時50分頃に放火をすることは時間的
に不可能である。

c
ιは,控訴人と共に消火活動をしたり,近隣住民や消防士に本件被害者が取り残されていることを伝えて救出を求めたりするなど,放火殺人犯とは考えられない行動をしている。

d
本件被害者が死亡した場合に支払われる保険金は1500万円にすぎず,
ι及び控訴人が殺人手段としては極めて不確実な放火という方法
により保険金を騙取しようとしたとは考えられない。また,ι及び控訴人は,当時月額50万円の収入があり,マンション購入資金に窮してい
たわけではないし,本件被害者に対しても,塾や習い事にも通わせ,毎日学校への送り迎えをするなど十分に愛情を注いでおり,本件被害者を殺害する動機はなかった。
e
ιの捜査段階における自白は,ιと本件被害者の性的関係を材料とした脅迫・利益誘導や暴行などにより強要されたものであり,信用性を欠くものである。



被控訴人

本件開始決定に対する即時抗告審における被控訴人の関与・寄与に関する主張
次のとおりの理由から,旧法後段の効果を制限すべき事情があるとはいえない。

控訴人が⑴

主張する事象については,検証がされておらず,燃料

タンク及び給油キャップの構造上の欠陥によってガソリンが漏出したことが客観的に確認されたとはいえない。控訴人が主張するκ・トラックに関する漏出事象については,
給油キャップのキーシリンダー部にあるOリ
ングの外周部に隙間のあることが確認されたものがあったことは認めるが,
κ・ストリートの給油キャップにはキーシリンダーがないだけでなく,Oリングが用いられておらず,かつ,給油カバー(フィラーリッド)の存在など給油口の構造も異なるから,κ・ストリートとは無関係の事象というべきである。
被控訴人は,検察官の捜査関係事項照会書(甲

124)のうち,
給油キャップの『シール性が確保』されない事態ないし事象が起こり得るとすれば,どのような原因及び機序によって起こるのか,また,どの程度までシール性が低下するのかとの照会事項に漠然とした仮定の内容が含まれていたため,回答を差し控えたにすぎない。また,市街地で約3年半走行したにすぎない本件車両につき,
シール性が低下する

ほどのパッキンの劣化やさびが生じるとは考えられないから,そのような事態をも想定した回答を求めることには無理があるというべきである。の主張は争う。本件開始決定に対する即時抗告審における審理当時に国土交通省への報告制度に基づき被控訴人が報告済みであった事象は2台のκ・トラックに係るもののみであり,当時としては正しい回答である。被控訴人が当審において最初に開示した台数がこれより多いのは,報告制度導入前の把握事象について,平成28年11月及び平成31年4月
に同制度に基づく定期報告とは別に行われた報告要請に基づいて報告した事象をも加えて開示したからである。また,被控訴人が当審において最初に把握事象を開示した際,
被控訴人において車両を回収できず調査がで
きなかったもの(κ・トラックにつき3台,κ・ストリートにつき1台)を除外したが,その後,裁判所からの求めにより,これらの事象について
も開示したものであり,報告事例を隠蔽していたとはいえない。なお,平成30年に情報提供を受けた1996年式のκ・ストリートのガソリン漏出は,
給油キャップが正常に閉められていなかったことが原因であったところ,本件車両については,上記年式の車種と同様,給油キャップの厚みを約4㎜として以前の仕様より厚みを持たせた設計がされ,給油キャップ
が正常に閉められていないときは容易に気付く構造になっていたから,使用上の過失によりガソリンが漏出する可能性は低い。κ・トラックと比べてκ・ストリートのガソリン漏出事象の報告数が少ないのは,そのような事情によるものである。
の主張は否認し,争う。ガソリン漏出の機序に関係する知見や本件
車両における同知見に関連する設計の適否に関する被控訴人の認識については,旧法後段の効果の制限に関する争点との関連が乏しいため,詳細な認否・反論は行わない。しかし,被控訴人は,被控訴人関与4に係る回答において,自己の認識に即した回答をしたにすぎず,捜査機関や裁判所に誤解を与える目的で回答したものではない。


本件火災の原因に関する主張
κ・ストリートの給油キャップの構造はκ・トラックと異なっており,また,本件車両の給油キャップは,古い年式のκ・ストリートとは異なって厚みが増しており,閉め方が不十分であることに気付きやすい構造になっている。したがって,被控訴人がκ・トラックや1996年式のκ・ストリートについてガソリン漏出の報告があった後も本件車両に欠陥があることを否
定し続けたことに,何ら問題はない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求は,仮に損害賠償請求権が発生したとしても除斥期間の経過により消滅したものであって,
理由がないものと判断する。
その理由は,
次のとおり補正し,後記2のとおり当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の事実及び理由の第3当裁判所の判断
(原判

決10頁9行目~26頁12行目)
に記載のとおりであるから,
これを引用する。


原判決10頁12行目の
同条後段の効果11頁11行目の

除斥期間の効果同頁16行目から17行目にかけての

同法724条後段の効果
並び
に同頁21行目,12頁19行目及び26頁2行目の各民法724条後段の効果をいずれも旧法後段の効果に改める。⑵

原判決10頁15行目の
民法724条
の次に(平成29年法律第44号
による改正前のもの)を加える。



原判決11頁3行目から4行目にかけての最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁を平成16年判決に改める。


原判決11頁17行目から18行目にかけての最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁を平成10年判決に,同頁18行目から19行目にかけての最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・民集63巻4号853頁を平成21年判決にそれぞれ改める。


原判決12頁5行目及び7行目の各を受けたをいずれもを受け,これが確定したに改める。⑹

原判決13頁6行目の
妨害した等の事情が認められるかを考慮して妨を害した等の関与や寄与の有無・内容等を総合的に考慮してに改め,同頁12行目冒頭から19行目末尾までを次のとおり改める。

しかしながら,平成10年判決が旧法後段の効果を制限する根拠を時効停止の規定である民法158条(平成29年法律第44号による改正前のもの)の類推適用に求めるのではなく,その「法意に求めたのは,法律関係の速やかな確定のために期間の経過により画一的に権利を消滅させるという除斥期間の性質に照らして,その例外を広く認めるのは相当でないことから,単に時効停止事由があるというだけで時効停止に関する規定を除斥期間に類推適用す
るのではなく,条理や正義・公平の理念を根拠とし,心神喪失の常況が加害者の不法行為に起因する場合との要件を加えることで,
悪質な加害行為により被
害者の権利行使が妨げられた場合に限って旧法後段の効果を制限する趣旨に出たものと解すべきである。また,平成21年判決も,平成10年判決の上記の趣旨を踏まえ,これと同様の考え方に立って,時効の停止等の根拠となる規
定があり,民法724条後段の規定を適用することが著しく正義・公平に反する事案に限って同様の例外を認める余地があることを前提に,不法行為に引き続いて死亡の事実に係る隠蔽行為が行われた場合には,
上記規定を適用するこ
とが著しく正義・公平の理念に反するものとして旧法後段の効果を制限したものであり,
加害者が被害者の権利行使を意図的に妨害した場合に限って旧法後
段の効果を制限する趣旨に出たものと解すべきである。
これらの判例の立場は,
平成29年法律第44号による改正前の民法の解釈として是認することができるのであって,
旧法後段の効果を制限すべきか否かについて判断するに当た
っては,
被害者が権利を行使することができなかった事情に関する加害者の関与や寄与の有無・内容も当然考慮すべきであり,その上で,他の考慮要素も踏
まえた総合的な判断によって,民法724条後段の規定を適用することが著しく正義・公平の理念に反することになるか否かを決すべきものと解するのが相当である。
これに対し,控訴人は,平成16年判決の趣旨に照らせば,本件のような法律上客観的・絶対的に権利行使ができなかった事案に関しては,加害者側の関与の程度を問わずに平成10年判決や平成21年判決と同様の判断をすべきであり,また,除斥期間の効果は相対的に判断されるものであるから,旧法後段の効果を制限するかについても相対的に判断すべきであり,本件被害者の損害賠償請求権を相続した父において法律上権利を行使することが可能であったとしても,
控訴人に法律上権利を行使することが不可能な時期があった以上
は,控訴人について旧法後段の効果を制限すべきであると主張する。
しかしながら,平成16年判決は,不法行為の中には,当該不法行為により発生する損害の性質上,
加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害
が発生する場合もあることから,民法724条後段の文言を離れた条理や正義・公平の観点を持ち出すまでもなく,民法724条後段の不法行為の時という文言の解釈として,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の
場合には行為時が起算点となるが,身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾患における損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきことを明らか
にしたものである。そして,上記の判断は,発生する損害の性質という被害者側の事情を考慮要素とするものであることから,被害者(損害賠償請求権が相続された場合は相続人)ごとに個別的・相対的に行うべきものであることが明らかである。これに対し,平成10年判決や平成21年判決は,加害者が被害者(損害賠償請求権が相続された場合は相続人)の権利行使を殊更に困難にし
たときは,条理や正義・公平の観点から,証拠の散逸による不利益防止という加害者側の事情を一律に考慮する民法724条後段の制度趣旨を考慮してもなお被害者の救済を優先させることを明らかにしたものであり,加害者に旧法後段の効果を享受させるべきでない例外的事情が存在するかという加害者側の事情に着目した法理を明らかにしたものであるから,被害者側にどのような事情があるか
(法律上又は事実上権利を行使することができない事情があった
か)
によって法律効果に差異を設けることを許容したものではないというべき
である。そうすると,加害者側の関与や寄与の有無・内容を問うことなく,控訴人について本件被害者の父とは異なり法律上権利を行使することができない時期があったことを理由に,
旧法後段の効果を制限すべきものとする控訴人
の主張は,採用することができない。



原判決13頁21行目の相続欠格事由から24行目末尾までを次のとおり改める。

相続欠格事由が存在することになったためであるが,この点に関する被控訴人の関与や寄与の有無・内容について,まず検討する。



原判決14頁7行目から8行目にかけての前方上部左側にあり配線が2本出ていると確認された円形状の蓋よう部分を同タンクの前方上部左側にあり,配線が2本出ていることが確認された円形状の蓋よう部分に,12行目の以下「被告関与1という。
」を被控訴人関与1にそれぞれ改める。


原判決14頁18行目のδをδに,20行目の以下「被告関与2
という。
」を被控訴人関与2にそれぞれ改める。


原判決18頁12行目の自動車システム開発工学科教授εを「自動車システム開発工学科のε教授に改める。

原判決19頁14行目から15行目にかけての
追加給追加補給

に,
17行目の以下「被告関与3という。
」を被控訴人関与3に,21行目
から22行目にかけての以下「被告関与4という。
」を被控訴人関与4
にそれぞれ改める。


原判決20頁16行目の
以下「被告関与5
という。を
」被控訴人関与5
に,21頁6行目の以下「被告関与6という。
」を被控訴人関与6に,
22頁2行目の以下「被告関与7という。
」を被控訴人関与7にそれぞ
れ改める。

原判決21頁24行目のζをζ研究員に改める。


原判決23頁26行目の被告から24頁3行目の

認めることはできない。

までを次のとおり改める。
被控訴人あるいはαの従業員が,控訴人の権利行使を妨害するため,意図的に,自らの認識や本件車両の開発・製造に関与した会社の従業員として当然に認識すべき事実に反する内容の説明や回答あるいは証言をしたと認めるには足りない。

原判決24頁6行目の却下を棄却に改める。


原判決24頁16行目から17行目にかけての

被告の従業員が原告主張の誤った説明をしたと認めるに足りる証拠はない。

被控訴人の従業員が控訴人の権利行使を妨害するため,捜査機関に誤った見立てをさせる意図で燃料メーターに関する説明をしたと認めるに足りる証拠はない。

に改める。

原判決24頁21行目のδの同証言から25頁5行目末尾までを次のとおり改める。

控訴人にとっては,Ⅰ本件火災の原因が,①燃料タンク内の液体ガソリンが給油口の高さまで上昇する構造上の欠陥があり,かつ,②給油キャップにシール性が確保されていない欠陥があるために液体ガソリンが漏出したことにあって,失火の余地すらなく,さらに,本件火災当時本件車両の給油キャップが正常に閉まっており,ιには殺意ないし放火の故意も火災発生に対する過失もないと判断されても,また,Ⅱ③給油キャップに構造上の欠陥はないものの,閉め方が不十分であるなどの不適切な使用上の問題があったために,上記①の欠陥に起因して給油口の高さまで上昇した液体ガソリンが給油口から漏出したことにより本件火災が発生したものであって,仮にιが本件火災直前に給油ポンプを使用して給油したとしても,閉め方が不十分であったなどという過失があったにすぎず,ιに殺意ないし放火の故意があったとは認められないと判断されても,刑事訴訟における当面の訴訟活動の目的を達することができるのに対し,被控訴人にとっては,業務上過失致死罪に法人に係る両罰規定が存在せず,上記のいずれの判断が示されても刑事責任を問われる可能性はないものの,本件車両の燃料タンクあるいは給油キャップに欠陥があると判断された場合には,民事上の責任を問われる可能性があるだけでなく,消費者からの信頼を大きく損なうおそれがある事態を生じることになる。そうすると,被控訴人としては,いずれの欠陥についても可能な限りの防御を尽くすことが当然取るべき対応であり,また,被控訴人に関わる技術者にとっても,そのことは容易に認識でき,理解できるところであると考えられる。こうしたことからすると,αの技術者であるδは,本件火災がιによる放火であったかどうかの問題を意識するというよりは,裁判所において本件車両に欠陥が存在すると認定されるかどうかの問題を強く意識して証言に臨んだものと推認される。また,被控訴人は当審において,κ・ストリートのガソリン漏出事例を明らかにした上で,本件車両は給油キャップに厚みを持たせた設計がされていて,給油キャップが正常に閉められていないときは容易に気付く構造になっていたとの,本件火災直前に意図的に給油キャップが開けられたことを推認させるような事情を主張しているが,被控訴人は,本件確定審及び本件開始決定に対する即時抗告審の各審理の中では,κ・ストリートのガソリン漏出事例を明らかにしておらず,上記のような見解を殊更に表明していたことをうかがわせる証拠はない(被控訴人のお客様相談センターの大阪高等検察庁に対する平成26年3月6日付け回答書〔甲120〕は,照会事項がκ・ストリート及びκ・トラックにおける燃料タンク及び給油キャップ等の違いについて回答を求めるものであったことから,給油キャップの厚みの変更については言及がなく,大阪高等裁判所に対する同年7月22日付け回答書〔甲114〕も,照会事項が本件車両の型式であるHH4型以降の設計変更について回答を求めるものであったことから,それ以前の設計からの変更点については,平成元年2月以降,給油キャップのツメの押さえ形式を板バネ式からスプリング式に変更していることが記載されているだけで,給油キャップの厚みの変更については言及していない。そして,大阪高等検察庁に対する同年8月1日付け報告書〔甲140〕には,実車見分をしたκ・トラックの燃料漏れの原因が記載されているにすぎず,κ・ストリートの給油キャップの厚みの変更に関する記載はない。。)これらの事情に照らせば,δが,裁判所に本件火災がιによる放火を原因とするものである旨認定させ,控訴人の権利行使を妨害する目的をもって前記5⑵イで認定した証言をしたと認めるには足りないというべきである。

原判決25頁11行目の上記取扱説明書から14行目末尾までを次のとおり改める。

上記取扱説明書に関する各電話聴取書(甲23,24)の作成後に,回答をした発信者に対し,回答の前提となる問合せの趣旨をどのように理解したか,自己の回答が正確に要約されているかを再確認したことをうかがわせる証拠や,電話による問合せの際に誘導がなかったことを認めるに足りる証拠はなく,上記各電話聴取書の記載が発信者の真意を反映したものといえるかは必ずしも明らかでない。そうすると,上記各電話聴取書が存在することをもって,被控訴人の従業員が,控訴人の権利行使を妨害するために裁判所に本件火災がιによる放火を原因とするものであることを認定させる目的で問合せに対する回答をしたと認めるには足りない。⒆
原判決25頁16行目のしかしから18行目末尾までを次のとおり改める。

確かに,ε意見書(甲95)によれば,ガソリン漏出の可能性を検討するに当たり,連通管現象や鶴首の長さによる影響などを考慮した分析が必要であることがうかがえるところ,被控訴人の回答(甲21,125)がこのような点についてどのように考慮したのかは明らかでなく,ガソリンの温度が251.9℃にまで上昇しない限り液体ガソリンが給油口に達しないことをも理由にしてガソリン漏出を否定する回答には,論理の飛躍がある可能性が高い。しかしながら,前記説示のとおり,上記のような回答をしたことをもって,被控訴人の従業員らが自己の認識,見解を述べる以上に,控訴人の権利行使を妨害する意図ないし目的を有していたと認めるには足りない。また,給油キャップのシール性が確保されていれば,開弁圧に達しない限り給油口からガソリンが漏れ出すことはないとの回答は,給油キャップのシール性が確保されていることを前提とした回答であり,その回答内容自体に誤りがあるわけではない。そうすると,被控訴人が控訴人の権利行使を妨害するために被控訴人関与4に係る回答をしたとはいえない。控訴人の主張は採用できない。⒇
原判決25頁23行目の自己の認識・見解を述べる以上に,の次に控訴人の権利行使を妨害するため,殊更にを加える。
2当審における当事者の補充主張に対する判断


控訴人は,κ・トラックにつき多数のガソリン漏出事例が収集され,原因特定に至らないものの,
何らかの原因でキャップのシール性が低下したと認めら
れるのに,被控訴人はガソリン漏出を否定し続けた(被控訴人関与8)と主張する。

しかしながら,証拠(甲114,120)及び弁論の全趣旨によれば,κ・トラックについては,給油口にカバー(フィラーリッド)がないほか,給油キャップにこれを開錠,施錠するためのキーの差込口があり,キー回転部の機密性を維持するためのOリングが用いられていること,そのため,外部の海水等の腐食成分がOリングの部分まで侵入しやすく,その結果,Oリングの劣化が
進んで隙間が生じやすいこと,他方,κ・ストリート(本件車両は,平成4年〔1992年〕
式のHH4型と呼ばれる4WD車であるところ,
HH4型には,
平成2年
〔1990年〕
式から平成10年
〔1998年〕
式までのものがある。

については,給油口にカバー(フィラーリッド)があるほか,給油キャップにキーの差込口がなく,
必然的にキー回転部の機密性を維持するためのOリング
も用いられていないため,κ・トラックに比べれば腐食成分がシール材の部分まで侵入しにくいこと,本件車両の給油口側(車体本体側)にはめ込む給油キャップの厚みは,
給油キャップが斜めに歪んだまま正しく閉められていなかっ
たためにガソリンが漏出した事例に係るκ・ストリート(1996年式)と同様,以前の仕様と比べて厚さが増しており,給油キャップ側の突起が給油口側の切欠きにしっかり収まっていない状態でキャップを閉めるとキャップが斜
めに閉まっていることに気付きやすい構造になっていたことが認められる。こうしたことに照らせば,被控訴人が,κ・トラックについて複数のガソリン漏出事例が把握されたからといって,κ・ストリートについてもκ・トラックと同様の機序によるガソリン漏出が生じるおそれがあるとは考えられないとの立場の下にガソリン漏出を否定し続けたことが,
合理的な根拠を欠く対応であ

ったとまでいうことはできないし,本件車両について,給油キャップの閉め方が不十分であったために過失によりガソリンが漏出する可能性は低いものと考えて,
意図的に給油キャップを閉めずにおくというような行為がない限りガソリン漏れが生じることはないと考えたことが,
合理的な根拠を欠く対応であ
ったとまでいうこともできない
(なお,
被控訴人は,
当審において初めて,
κ・

ストリートに係るガソリン漏出事例の存在を明らかにした上,過失により給油キャップの閉め方が不十分となる可能性が低いことを主張したものであり,こうしたことを本件確定審や本件開始決定に対する即時抗告審の審理の中で主張するなどしたわけではない。。そうすると,被控訴人がκ・トラックにつき)
複数のガソリン漏出事例が収集された後も本件車両におけるガソリン漏出を
否定し続けたことをもって,
被控訴人が控訴人の権利行使を妨害する目的に出
たものとまでは認めるに足りない。
控訴人の主張は採用できない。


控訴人は,被控訴人が,
給油キャップの『シール性が確保』されない事態ないし事象が起こり得るとすれば,どのような原因及び機序によって起こるのか,また,どの程度までシール性が低下するのかを問う検察官の捜査関係事項照会に対して回答しない旨を回答したほか,
給油キャップのシール性が確保されない事態ないし事象
について想定可能なものを全て挙げられたい旨の再度
の照会に対しても回答しない旨の回答をした(被控訴人関与9)と主張する。しかしながら,本件全証拠によっても,通常の研究者であれば,上記の照会に対して正確な回答をすることができたはずであるとまで認めるには足りない。
また,
前記⑴で説示したとおり,
κ・ストリートの給油キャップの構造は,

本件開始決定に対する即時抗告審においてガソリン漏出の原因が議論されていたκ・トラックのそれとは異なるものであり,κ・トラックの給油キャップを念頭に置いてされた照会に対して端的に回答することで,本件車両(κ・ストリート)の給油キャップの構造に即した正確な回答ができたとは考え難い。そうすると,
被控訴人が上記の各捜査関係事項照会に回答しなかったことをも

って,控訴人の権利行使を妨害したということはできない。
控訴人の主張は採用できない。


控訴人は,
被控訴人が国土交通省に対して10台
(κ・ストリート1台,
κ・
トラック9台)のガソリン漏出を報告していたのに,本件開始決定に対する即
時抗告審において,
検察官に対し,トラックにつき2件の報告があったが,
κ・
κストリートについては報告がないとの虚偽の回答をした

(被控訴人関与10)
と主張する。
しかしながら,当審における令和元年10月31日付け調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によれば,⑴被控訴人がκ・ストリートについて国土交通省に
報告したガソリン漏出事例は3件であるところ,①
うち2件は,不具合発生

日を平成27年10月30日(本件開始決定の確定日〔原判決の引用に係る前提となる事実⑶エ〕と同一の日)とするもの及び平成30年6月30日とするものであり,


不具合発生日を平成12年5月24日とする1件については,

同省に対する報告制度導入前の把握事象であったところ,同省から平成28年11月に同制度に基づく定期報告とは別に報告制度導入前の把握事象の報告を求められたことから,同月17日に報告をしたものであり,本件開始決定に対する即時抗告審における回答当時は,同省に対して報告済みであった事象は存在しなかったこと,⑵

被控訴人がκ・トラックについて同省に報告したガ

ソリン漏出事例は10件であるところ,①
30年3月1日とするものであり,②
うち1件は,不具合発生日を平成

うち7件は,上記報告制度導入前の把

握事象であったところ,同省から平成28年11月に同制度に基づく定期報告とは別に報告制度導入前の把握事象の報告を求められたことから,同月17日に報告をしたものであったこと,③

うち1件は,情報受付日を平成26年9

月12日,同省に対する報告日を平成27年1月29日とするものであり,検察官に対する平成26年10月2日付け回答当時は報告の準備中であったこと,④

そのため,本件開始決定に対する即時抗告審における回答当時は,同
省に対して報告済み又はその準備中であった事象は2件であったことが認められる。そうすると,被控訴人が本件開始決定に対する即時抗告審において検察官に対してした回答は,
上記即時抗告審における審理当時に上記報告制度に
基づき同省に報告済み又はその準備中であった事象の件数と一致しているものであり,被控訴人が検察官に上記のような回答をしたからといって,被控訴人が虚偽の回答をしたとか,控訴人の権利行使を妨害する意図を有していたということはできない。
また,被控訴人は,当審において,当初,国土交通省に対して報告した事象の全てを明らかにしたわけではなかったものの,弁論の全趣旨によれば,被控
訴人が車両の実物を回収した上で不具合の内容や原因について調査をすることができなかった事象を除外したにすぎないことが認められる。そして,被控訴人が当裁判所からの求めに応じ,いったん除外した事象についてもその内容を明らかにしたことは,当裁判所に顕著な事実である。そうすると,被控訴人が最初から同省に報告した事象の全てを明らかにしなかったからといって,被控訴人に控訴人の権利行使を妨害する意図があったなどと推認することはできない。

控訴人の主張は採用できない。


控訴人は,
被控訴人がタンク内温度の上昇とタンク内圧の上昇によりガソリ
ンが給油口のレベルに容易に達することを熟知していただけでなく,遅くとも再審請求事件の第1審におけるη新実験及び即時抗告審におけるθ実験等によりιの自白どおりの放火が不可能であることは事実上決着がついていたに
もかかわらず,裁判官に誤解を与えるため,即時抗告審で被控訴人関与4に係る回答をし,検察官が同回答に基づく主張をした結果,即時抗告審における争点の解明が著しく遅れ,ひいては,再審公判における無罪判決の確定が大幅に遅れたため,
控訴人が除斥期間経過前に本件訴訟を提起することができなくな
ったと主張する。

しかしながら,
原判決を引用
(当審補正部分を含む。して説示したとおり,

被控訴人が控訴人の権利行使を妨害するために被控訴人関与4に係る回答をしたとはいえないから,同回答により即時抗告審における審理が長引き,再審公判における無罪判決の確定が除斥期間経過後になったことをもって,旧法後段の効果を制限すべきものということはできない。

控訴人の主張は採用できない。


民法改正について
控訴人は,
本件の事案において旧法後段の効果を制限しない解釈をすること
は,今般の民法改正の立法事実を否定することになると主張する。
しかしながら,民法724条後段の規定が判例上除斥期間と解釈されていたのに対し,
平成29年法律第44号による改正後の民法724条は20年の期間(同条2号)が消滅時効期間であることを明確に定めたものであるところ,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則35条1項は,同法の施行日(令和2年4月1日)において民法724条後段に規定する期間が既に経過していた場合におけるその期間の制限については,なお従前の例による旨を定めており,
上記施行日において除斥期間が既に経過していることによ
り消滅したものとされる権利(控訴人の本件訴訟に係る損害賠償請求権は,これに含まれる。
)を改正法の対象から明らかに除外している。このことからす
ると,
本件の事案において旧法後段の効果を制限しないことが上記の民法改正の立法事実を否定することになるとはいえず,控訴人の主張は採用できない。
3以上によれば,控訴人の請求は,被控訴人による不法行為の成否について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

河井久寛明田野斉申二郎
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