判例検索β > 令和2年(ネ)第10004号
特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号令和2(ネ)10004
事件名特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日令和2年9月30日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2020-09-30
情報公開日2020-10-29 18:00:49
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令和2年9月30日判決言渡
令和2年(ネ)第10004号

特許権侵害差止等請求控訴事件

(原審・大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7532号)
口頭弁論終結日

令和2年7月8日
判決
控訴人兼被控訴人

シーシーエス株式会社
(以下一審原告という。)

訴訟代理人弁護士

上甲悌二雨宮沙
訴訟代理人弁理士

西村竜
控訴人兼被控訴人

株式会社レイマック

耶花平
(以下一審被告という。)

訴訟代理人弁護士

伊1己山恭子橋本祐太藤主友並
訴訟代理人弁理士

原河恒生文


一審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
一審被告は,
別紙被告製品目録1ないし7記載の各製品を製造し,
販売し,又は販売のための展示をしてはならない。



一審被告は,一審原告に対し,615万5891円及びうち46
5万9192円に対する平成29年8月11日から,うち149万6699円に対する平成30年10月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


一審原告のその余の請求を棄却する。

2
一審原告の控訴を棄却する。

3
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その4を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。

4
この判決の第1項⑵は,仮に執行することができる。事実及び理由

第1控訴の趣旨
1
一審原告


原判決を次のとおり変更する。



一審被告は,
別紙被告製品目録1ないし7記載の各製品を製造し,
販売し,
又は販売のための展示をしてはならない。



一審被告は,一審原告に対し,5152万2245円及びうち3780万9768円に対する平成29年8月11日から,うち1371万2477円に対する平成30年10月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
一審被告


原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。



前項の部分につき,一審原告の請求をいずれも棄却する。

第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,
発明の名称を
光照射装置
とする特許
(特許第4366431号。
以下,この特許を本件特許といい,本件特許に係る特許権を本件特許権という。)の特許権者である一審原告が,一審被告による別紙被告製品目録1ないし7記載の各製品(以下被告各製品と総称し,同目録記載の番号に従い,それぞれを被告製品1などという。)の製造及び販売が本件特許権の侵害に当たる旨主張して,一審被告に対し,①特許法100条1項に基づき,被告各製品の製造,販売等の差止めを,②同条2項に基づき,被告各製品の廃棄を求めるとともに,③本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として1億0307万4986円(令和元年法律第3号による改正前の特許法102条(以下,単に特許法102条という。)2項に基づく損害額9370万4533円と弁護士及び弁理士費用相当額937万0453円の合計額)及びうち7812万9991円に対する平成29年8月11日
(訴状送達の日の翌日)
から,うち2494万4995円に対する平成30年10月1日(最終販売日の後)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分(以下,単に民法所定の年5分という。)の割合による遅延損害金の支払を,被告製品1ないし6の販売分(ただし,別紙原告主張損害額算定表の本件期間1の販売分)に係る予備的請求として不当利得返還請求権に基づき,102万2415円及びこれに対する平成29年8月11日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求めた事案である。
原審は,一審原告の請求のうち,上記①の被告各製品の差止請求及び上記③の損害賠償請求のうち,1000万4068円(別紙原判決損害額算定表の⑦欄の合計額)及びうち726万9573円に対する平成29年8月11日から,うち273万4495円に対する平成30年10月1日から各支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余の請求を棄却した。一審原告は,原判決には特許法102条2項の推定の覆滅事由に係る判断に誤りがあるとして,一審原告敗訴部分のうち,控訴の趣旨の限度で(内訳は別紙原告主張損害額算定表のとおり)原判決を不服として控訴を提起し,,
また,
一審被告は,一審被告敗訴部分を全部不服として控訴を提起した。2
前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)


当事者

一審原告は,光学機器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。

一審被告は,工業用電気機械設備・装置の製作,施工及び販売等を目的とする株式会社である。



本件特許に係る訂正審判請求及び無効審判請求の経緯等

一審原告は,平成20年7月30日,本件特許に係る特許出願(特願2008-197040号。以下本件出願という。)をし,平成21年8月28日,
本件特許権の設定登録
(請求項の数3)
を受けた
(甲1,。
2)
一審原告は,平成22年8月11日,三菱化学株式会社(以下三菱化学という。)に対し,一審原告,三菱化学及びA間の同年7月26日付け業務提携基本契約(以下本件業務提携契約という。甲16の1)に基づき,本件特許権の共有持分2分の1を譲渡し,その旨の本件特許権の一部移転登録(受付日同年8月26日)を経由した(甲1)。
その後,三菱化学は,一審原告に対し,本件特許権の上記共有持分2分の1を譲渡し,その旨の持分移転登録(受付日平成26年11月21日)を経由した(甲1)。


一審原告は,平成29年8月3日,本件訴訟を提起した。
その後,一審原告は,同年12月25日,本件特許の特許請求の範囲について請求項1及び3を訂正し,請求項2を削除する旨の訂正審判を請求(訂正2017-390157号事件。以下,この訂正審判請求に係る訂正を第1次訂正という。甲8)をし,平成30年3月20日,第1次訂正を認める審決(甲10)がされ,同審決は,同月29日に確定した(甲26)。
その間の同月15日,一審原告は,第1次訂正後の特許請求の範囲の請求項1を訂正する旨の訂正審判を請求(訂正2018-390056号事件。以下,この訂正審判請求に係る訂正を本件再訂正という。甲9)をし,同年6月15日,本件再訂正を認める審決(以下本件訂正審決という。甲11)がされ,本件訂正審決は,同月25日に確定した(甲26)。

一方,一審被告は,平成30年4月26日,本件特許について特許無効審判を請求(無効2018-800050号事件。以下別件無効審判という。)した(甲23)。
その後,特許庁は,令和元年5月8日,別件無効審判について,本件再訂正後の請求項1及び3に係る本件特許に無効理由は認められないとして,請求不成立審決(以下別件審決という。甲23)をした。
一審被告は,同月24日,別件審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10074号事件)を提起したが,同裁判所は,同年12月23日,一審被告の請求を棄却する旨の判決(以下別件判決という。甲24)をした。
一審被告は,同月28日,別件判決を不服として,上告受理の申立てをした(甲26)。



特許請求の範囲の記載

設定登録時
本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は,次のとおりである(以下,同請求項1に係る発明を本件当初発明という場合がある。甲2)。
【請求項1】
複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,
前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた光照射装置であって,
電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,
前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数としている光照射装置。
【請求項2】
前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている請求項1記載の光照明装置。
【請求項3】
前記LEDが,表面実装型LEDである請求項1又は2記載の光照射装置。

第1次訂正後
第1次訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は,次のとおりである(下線部は第1次訂正による訂正箇所である。以下,第1次訂正後の請求項1に係る発明を第1次訂正発明という。甲8,10)。なお,請求項2は第1次訂正により削除された。
【請求項1】
複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,
前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えたライン状の光を照射する光照射装置であって,
電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,
前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている光照射装置。
【請求項3】
前記LEDが,表面実装型LEDである請求項1記載の光照射装置。

本件再訂正後
本件再訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(下線部は本件再訂正による訂正箇所である。以下,本件再訂正後の請求項1に係る発明を本件再訂正発明という。甲9,11)。
【請求項1】
複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,
前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,ライン状の光を照射する光照射装置であって,
電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,
前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし,
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある光照射装置。


本件再訂正発明の構成要件の分説
本件再訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
【本件再訂正発明】
A
複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,

B
前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
C
ライン状の光を照射する光照射装置であって,

D
電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,

E
前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし,

F
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある

G
光照射装置。



一審被告の行為等について

一審被告は,平成24年7月から平成30年9月までの間,被告各製品(甲3ないし5)を製造し,販売した。

被告各製品の構成の概要は,別紙物件説明書記載のとおりである(ただし,電圧については,おおよその数値であり,白色LED搭載製品である被告製品1と青色LED搭載製品である被告製品3,白色LED搭載製品である被告製品4と青色LED搭載製品である被告製品6は,それぞれ順方向電圧が同じであり,また,基板の高さ寸法は,いずれも33mmである。)。
被告各製品は,
本件再訂正発明の構成要件AないしGをすべて充足する。

3
争点


無効の抗弁の成否(争点1)

訂正要件違反(無効理由1)


IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2)


IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由3)


IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(無効理由4)




サポート要件違反(無効理由5)
先使用権の成否(争点2)


IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に基づく先使用権の成否(争点2-1)


IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明に基づく先使用権の成否(争点2-2)


IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明に基づく先使用権の成否(争点2-3)

IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成否(争点2-4)


LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明に基づく先
使用権の成否(争点2-5)


自由技術の抗弁の成否(争点3)



作用効果不奏効の抗弁の成否(争点4)



一審被告の過失の有無(争点5)



一審原告の損害額(争点6)



消滅時効の成否(争点7)



一審被告の利得額(争点8)(予備的請求関係)

第3争点に関する当事者の主張
1
争点1(無効の抗弁の成否)について
(一審被告の主張)
本件再訂正発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,一審原告は,一審被告に対し,本件特許権を行使することはできない。


無効理由1(訂正要件違反)
本件出願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて本件明細書という。甲2)には,従来は,各色(各種)LEDについて専用基板を作って対応していたが,それでは部品点数が増え,製造コストも嵩むので,本件当初発明においては,電源電圧と各色(各種)LEDの順方向電圧から導き出されるLED単位数の公倍数のLEDの個数を搭載するLED基板(汎用基板)を作製することで,各色(各種)LEDについて専用基板を作らずに済み,部品点数を少なくして製造コストも下げるという作用効果を奏することの記載がある。
この記載に鑑みると,もともと本件当初発明がLED基板の構成のみを特徴とする発明であったことは明らかである。
一方で,本件再訂正発明は,汎用基板が1枚では足りないときにどうするのかという,本件明細書にも記載のない新たな課題について,ライン方向に複数枚並べて使えば良いという新たな解決原理に基づく具体的構成を提示して必要寸法を満たすことを提案するものであり,本件再訂正発明では,LED基板の構成とLED基板を並べたことが特徴部分となっている。このように,本件再訂正発明では,LED基板を並べたことという特徴部分が本件当初発明の特徴部分に加えられているが,LED基板の構成とLED基板を並べたこととは,互いに関連性のない独立した技術である。そして,LED基板の構成に関する本件当初発明にLED基板を並べたことが発明特定事項に加えられることなどは,当業者は予想できないから,本件再訂正により第三者に不測の不利益を与えるものといえる。
したがって,本件再訂正は特許法126条6項の実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当し,同項に違反するから,本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項8号の無効理由がある。⑵

無効理由2(IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如)
次のとおり訂正するほか,原判決7頁8行目から8頁3行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決7頁9行目の主引用発明をIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と改め,同頁11行末尾に

そして,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの購入者は,その内部構造を知り得る状況にあったから,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,本件出願前に公然実施されていた。

を加える。

原判決7頁13行目のIDB-11/14R及びIDB-11/14WIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明を
と,
同頁14行目の構成以外の構成を構成(構成要件F)以外の構成
と,同頁18行目の本件特許出願を本件出願と改める。

原判決7頁25行目から8頁3行目末尾までを次のとおり改める。(当審における一審被告の補充主張)原判決は,①乙8(「2004年~LED照明総合カタログ)
によれば,IDB-11/14Rを始めとするダイレクトバー/IDBの製品には,検査物ごとに所定照射領域が異なるという課題に対しては,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させて対応するのではなく,当該所定照射領域の長さに応じたLED基板を用意して対応するという技術的思想があることが読み取れることからすると,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wと一審被告が周知例として挙げたIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS,乙18記載の線状照明装置は,同じライン状の光を照射する光照射装置に係る発明であるとはいえ,異なる長さの所定照射領域への対応の仕方に係る技術的思想がおよそ異なるから,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成を,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(相違点に係る本件再訂正発明の構成)
に置き換える動機付けは見いだし難い,

L②ED基板の設計においては,当業者は,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,『LED基板間の配線及び半田付けを極力減らす』ようにするのが常である。

という技術常識が存在することからすると,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成を,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(相違点に係る本件再訂正発明の構成)に置き換えることには,阻害要因がある旨判断した。
しかしながら,①については,乙8には,IDB-11/14Rを始めとするダイレクトバー/IDBの製品には,検査物ごとに所
定照射領域が異なるという課題に対して,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させて対応するのではなく,当該所定照射領域の長さに応じたLED基板を用意して対応するという技術的思想の開示はない。そして,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wと周知例に係るIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS,乙18記載の線状照明装置の技術分野は同一であるから,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に周知技術(
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある
との構成)を適用する動機付けは十分にあるといえる。
次に,
②については,
本件出願当時,
LED基板の設計においては,
所定照射領域の長さに応じた1枚のLED基板を用意する設計手法が技術常識であるとともに,所定照射領域の長さに応じて複数枚のLED基板を並べる設計手法も技術常識(例えば,IDB-L600/20RSを始めとするラインセンサー照明/IDB-LIDB-L/Hの製品,乙18,乙40添付の資料1(乙41の2005年~LED照明総合カタログと同じ)記載のIDM-32/62RTを始めとするチップLED面発光照明/IDMの製品,同資料2
(特開2005-283563号公報),同資料3(特開2007-103886号公報),同資料4(特開2007-273456号公報),同資料5(特開2007-299682号公報),同資料6(特開2006-275790号公報)の【0062】)であったものであり,いずれの設計手法を採用するかは,当業者が適宜選択可能な設計事項であったものである。
そうすると,当業者が,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明において,上記周知技術の構成を採用することについての動機付けがあり,阻害要因はない。
したがって,原判決の上記判断は誤りである。


小括
以上によれば,本件再訂正発明は,本件出願前に公然実施をされたIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから
(特許法29条2項)本件再訂正発明に係る本件特許には同法12,
3条1項2号の無効理由がある。」



無効理由3(IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如)
次のとおり訂正するほか,原判決10頁2行目から18行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決10頁3行目の主引用発明をIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と改め,
同頁5行目末尾に
そして,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの購入者は,その内部構造を知り得る状況にあったから,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明は,本件出願前に公然実施されていた。を加える。


原判決10頁7行目のIDB-C11/14R及びIDB-C11/14BをIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と,同頁8行目の構成以外の構成を構成(構成要件F)以外の構成と,同頁14行目の前記2(被告の主張)⑶を無効理由2で述べたところと,同頁16行目の公然実施された発明を公然実施されたIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明及び周知技術と,同頁17行目の特許無効審判から18行目末尾までを

本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項2号の無効理由がある。

と改める。⑷

無効理由4(IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る(公然実施発明)を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如)次のとおり訂正するほか,原判決12頁9行目から13頁10行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決12頁13行目末尾にそして,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの購入者は,その内部構造を知り得る状況にあったから,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明は,本件出願前に公然実施されていた。を加える。

原判決12頁15行目のIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSをIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明と改め,同頁17行目から18行目にかけての単に公倍数であるが,の次に本件出願当時,LED基板の設計において,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,「LED基板間の配線及び半田付けを極力減らすようにすることは技術常識であったことに鑑みると,」を加え,同頁22行目の本件特許権はから24行目末尾までを

本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項2号の無効理由がある。

と改める。

原判決13頁5行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,乙41記載のIDM-32/62RTを始めとする「チップLED面発光照明/IDMの製品は,赤色(IDM-**/**RT)がIDB-L600/20RSのLED単位数と,白色(IDM-**/**WT-12V)がIDB-L600/20WSのLED単位数とそれぞれ同じであり,LED基板に搭載されるLEDの個数は公倍数の36個になっており,LED基板は,最大で16枚(576個/36個)並べられること(IDM-122/122RT及びIDM-122/122WT-12V-SC),各製品の技術分野の共通性,本件出願当時の周知技術及び技術常識に鑑みると,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSのLED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数(相違点に係る本件再訂正発明の構成)とすることには,十分な動機付けがある。


原判決13頁8行目の本件特許権はから10行目末尾までを

本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項2号の無効理由がある。

と改める。



無効理由5(サポート要件違反)
本件明細書には,本件再訂正発明の作用効果に関し,

LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できる。

(【0011】)との記載がある。
そして,本件明細書の【0035】の記載によれば,部品点数及び製造コストの削減において着目している部品は,LED基板2上におけるLED21のそれぞれの位置の個々のレンズ部501に設けられた押圧部材5である。
また,本件再訂正発明において,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができること及びLED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができることは,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数としたことの効用にほかならず,本件再訂正発明の最小公倍数の構成のものに限られない。そうすると,押圧部材5に相当する構成を備えていないものは,本件再訂正発明の作用効果を奏するものとはいえない。
しかるところ,本件再訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)は,押圧部材5に相当する構成を備えていないものも含むものであり,本件再訂正発明の作用効果を奏しないものまで技術的範囲に包含しているから,特許法36条6項1号所定の要件(サポート要件)に適合しない。
したがって,本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項4号の無効理由がある。
(一審原告の主張)


無効理由1に対し
原判決6頁25行目から7頁5行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。



無効理由2に対し
次のとおり訂正するほか,原判決8頁4行目から9頁5行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決8頁5行目の主引用発明をIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と,同頁12行目,13行目から14行目にかけて及び18行目から19行目にかけての各IDB-11/14R及びIDB-11/14WをいずれもIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と,同頁24行目の本件訂正発明を本件再訂正発明と改める。

原判決9頁4行目の
IDB-11/14R又はIDB-11/14W
をIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と改める。



無効理由3に対し
次のとおり訂正するほか,原判決10頁19行目から11頁13行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決10頁20行目の主引用発明をIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と,同頁24行目のIDB-C11/14R及びIDB-C11/14BをIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と改める。イ
原判決11頁1行目から2行目にかけて,3行目及び8行目の各IDB-C11/14R及びIDB-C11/14BをいずれもIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と,同頁10行目の前記2(被告の主張)⑶を無効理由2に対する反論で述べたところと,同頁12行目のIDB-C11/14R又はIDB-C11/14BをIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と改める。


無効理由4に対し
次のとおり訂正するほか,原判決13頁11行目から14頁17行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決13頁18行目及び19行目から20行目にかけての各IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSをいずれもIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明と改める。



無効理由5に対し
本件再訂正発明は,ライン状の光を照射する光照射装置において,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし,かつ,このLED基板がライン方向に沿って複数直列させてある点に特徴がある。
本件明細書の記載から,本件再訂正発明において,部品の共通化(同じ大きさのLED基板に共通化できる),用意すべき部品点数の削減(前記共通化により大きさの異なったLED基板を削減できる)及びその結果としての製造コストの削減という作用効果が得られることを理解できる。また,本件再訂正発明の特徴的構成により,その(LED基板の)大きさを可及的に小さくし,汎用性を向上させる(本件明細書の【0009】)という効果をも奏するものであり,この効果は,LED基板の長さを,可及的に短くすることにより,その直列枚数を異ならせるだけで,細やかに長さの異なるライン光照射装置のバリエーションを提供することができ,LED基板を多様な長さのライン光照明装置に共通に用いることのできる汎用性の高いものにすることにある。
このような作用効果を得るために,本件再訂正発明において,一審被告主張の押圧部材5の構成は特段必要ない。
したがって,一審被告主張の無効理由5は理由がない。
2
争点2(先使用権の成否)について


争点2-1(IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決9頁8行目から25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決9頁9行目の前記2(被告の主張)(1)のとおり,本件特許出願の前から,を本件出願前から,と,同頁12行目の先使用に基づく通常実施権を

先使用による通常実施権(特許法79条。以下「先使用権

という。」と,同頁15行目,16行目,18行目,23行目から2)
4行目にかけて及び25行目の各通常実施権をいずれも先使用権
と改める。


原判決9頁17行目及び24行目の各又はをいずれも及びと,
同頁21行目の
IDB-11/14R及びIDB-11/14WIをDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と,同頁21行目から22行目にかけての
前記2(原告の主張)(2)で指摘した前を記のとおりのと改める。⑵

争点2-2(IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決11頁16行目から26行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決11頁17行目の前記4(被告の主張)⑴のとおり,被告は,本件特許出願の前から,を一審被告は,本件出願前から,と,同頁20行目,22行目,23行目及び25行目の各通常実施権をいずれも先使用権と,同頁23行目の前記3(被告の主張)を前記⑴の一審被告の主張と,同頁24行目の又はを及びと改める。

原判決12頁2行目のIDB-C11/14R及びIDB-C11/14BをIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明と,同頁2行目から3行目にかけての前記4(原告の主張)(2)で指摘したを前記のとおりと,同頁4行目及び5行目の各又はをいずれも及びと,同頁2行目から3行目にかけての前記6(原告の主張)(1)で指摘したを前記のとおりのと,同頁4行目から5行目にかけて及び6行目の各
通常実施権
をいずれも
先使用権
と改める。



争点2-3(IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決14頁20行目から15頁5行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決14頁21行目の前記6(被告の主張)(1)のとおり,被告は,本件特許出願の前からを一審被告は,本件出願前から,と,同頁24行目から25行目にかけての通常実施権を先使用権と改める。

原判決15頁2行目及び3行目から4行目にかけての各又はをいずれも及びと,同頁2行目から3行目にかけての前記6(原告の主張)(1)で指摘したを前記のとおりと,同頁4行目の通常実施権を先使用権と改める。⑷

争点2-4(IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決15頁8行目から25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決15頁9行目の被告は,本件特許出願の前であるを一審被告は,本件出願前のと,同頁12行目,15行目,16行目,19行目,22行目及び25行目の各通常実施権をいずれも先使用権と改め
る。


原判決15頁17行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁(以下「最高裁昭和61年判決という。
)は,
特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり,したがつて,先使用権の効力は,特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけではなく,これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶ旨判示して,発明思想の枠内かどうかで先
使用権の効力の及ぶ範囲が認定されるべきであるとした。最高裁昭和61年判決に鑑みると,先使用権が成立するためには,先使用物件が特許発明の技術的範囲に属することは必須の要件ではなく,先使用物件と特許発明とが同一の技術的思想であればよいものと解される。そして,一審被告が本件出願前に公然実施していたIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wは,本件当初発明の技術的範囲に属するものであったところ,本件当初発明の特許請求の範囲(請求項1)について第1次訂正及び本件再訂正の2度にわたる訂正がされたが,いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件再訂正発明の技術的範囲は,本件当初発明の技術的範囲に包含される関係にある。また,本件再訂正の訂正内容は,ごくありふれた,周知の構成を追加するものであり,発明の本質的部分ではない。
そうすると,
IDR-F60/32R及びIDB-F60/32Wは,
本件再訂正発明の均等に係る範囲に属するということができるから,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明と本件再訂正発明とは,同一の技術的思想であるということができる。


原判決15頁18行目,21行目及び24行目の各又はをいずれも及びと改める。



争点2-5(LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決16頁2行目から20行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決16頁3行目の本件特許出願の前であるを本件出願前の
と,同頁6行目から7行目にかけて,9行目,10行目,13行目,17行目及び20行目の各通常実施権をいずれも先使用権と改める。


原判決16頁7行目末尾にまた,LR-F60/32R及びLR-F60/32Wは,本件再訂正発明の均等に係る範囲に属するということができるから,LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明と本件再訂正発明とは,同一の技術的思想であるということができる。を加える。


原判決16頁12行目,16行目及び19行目の各又はをいずれも及びと改める。

3
争点3(自由技術の抗弁の成否)について
(一審被告の主張)
一審被告は,本件出願前から,本件当初発明の技術的範囲に属するIDR-F60/32R及びIDR-F60/32W(乙3,4)
,LR-F60/32
R及びLR-F60/32W(乙5)
,第1次訂正発明の技術的範囲に属するI
DB-11/14R及びIDB-11/14W(乙8,9)並びにIDB-C11/14R及びIDB-C11/14B(乙10,11)を製造,販売していた。
そして,本件出願当時の技術常識に照らせば,LED基板を長手方向に連設して製品長さを調整することは,公知技術を当業者が適宜に実施していることの域を出るものではないといえるから,一審被告による被告各製品の製造及び販売は,公知技術(自由技術)を実施するものにすぎない。
したがって,一審被告による被告各製品の製造及び販売には本件再訂正発明に係る本件特許権の効力は及ばない。
(一審原告の主張)
一審被告の主張は,本件再訂正発明のLED基板がライン方向に沿って複数直列させてあるとの構成を考慮しないものであり,本件再訂発明は公知技術ではないから,その前提において失当である。
4
争点4(作用効果不奏効の抗弁の成否)について
(一審被告の主張)
本件明細書の【0035】の押圧部材5に相当する構成を備えていないものは,本件再訂正発明の作用効果を奏するものとはいえないことは,前記1の(一審被告の主張)⑸で述べたとおりである。
しかるところ,被告各製品は,
押圧部材5に相当する部品は備えていない
から,本件再訂正発明の作用効果を奏するものではない。
したがって,一審被告による被告各製品の製造及び販売には本件再訂正発明に係る本件特許権の効力は及ばない。
(一審原告の主張)
被告各製品は,本件再訂正発明の構成要件AないしGをすべて充足し,前記1の(一審原告の主張)⑸で述べた本件再訂正発明の作用効果を奏するから,一審被告の主張は失当である。
5
争点5(一審被告の過失の有無)について
次のとおり訂正するほか,原判決16頁22行目から17頁2行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決16頁末行末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,一般論としては,特許発明を業として実施する事業者には,公示されている訂正前の特許請求の範囲等の内容を調査・検討するにあたり,訂正の可能性及びその訂正内容をも考慮に入れることが合理的に期待されているといえるが,特許公報掲載時において,訂正で追加される可能性のある事項は無数に存在するのであり,事業者は,そのありとあらゆる訂正の可能性及び訂正内容を考慮することはできず,考慮するにも限界がある。訂正の予測を期待することが,当業者に無理を強いるような場合においては,過失の推定は覆滅されるというべきである。しかるところ,本件再訂正の内容は,本件明細書にも記載のない新たな課題を持ち出し,それについて解決原理を本件明細書の中から探し出して再構成し,それをもって具体的な構成として後付けで提示するものであり,その結果,本件再訂正発明は本件当初発明より完全に変質したものになったのであるから,本件においては,特許法103条に基づく過失の推定は覆滅されると評価すべきである。


原判決17頁2行目を次のとおり改める。
一審被告の主張は争う。特許が無効であることが確定しているわけでもない状態で無効であると考えて実施するのは,単なる誤信であるから,本件において,過失の推定は覆滅されるべきではない。したがって,一審被告の主張は理由がない。6
争点6(一審原告の損害額)について
(一審原告の主張)
次のとおり訂正するほか,原判決17頁4行目から20頁8行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決19頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
この点に関し原判決は,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の各製品の市場における実勢価格がおおむね同程度であり,また,当該市場において一審原告及び一審被告の各シェアは,いずれもトップにはないとした上で,被告各製品の販売がなかった場合に,これに対応する需要が全て原告各製品(同一覧表の番号12に対応するライン状の光を照射する光照射装置。以下同じ。)に向かったであろうと見ることに合理性はない旨判断した。しかし,画像処理LED照明の国内シェア(数量ベース)については,平成26年から平成30年まで一貫して,一審原告が1位,一審被告が2位であり,一審原告のシェアは2割を超えており(甲18ないし22),このように画像処理LED照明のシェアを2割以上一審原告が有している以上,被告各製品の販売がなかった場合には,そのうちの少なくとも2割は原告各製品に向かうことは明らかであるし,シェア上位の会社の信頼性という面からは,2位のシェアを占める被告各製品を購入した需要者は,被告各製品の販売がなかった場合には1位のシェアを占める原告各製品を購入する蓋然性が高い。また,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の各製品のうち,原告各製品の種類の多さを考えても,被告各製品の販売がなかった場合にはこれに対応する需要は原告各製品に向かう割合は極めて高いというべきである。⑵

原判決19頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,侵害者が複数いる場合にそれぞれの損害賠償債務が不真正連帯債務となると考えられていることからすれば,権利者が複数いる場合のそれぞれの損害賠償債権も不真正連帯債権になると考えるべきである。侵害者が支払ってもいない他の権利者への損害賠償債務があることを主張することで損害の推定が一部覆滅するというのは妥当ではないし,不真正連帯債権であれば侵害者の二重払の危険も防止することができ,侵害者保護としては十分である。なお,平成29年法律第44号による改正後の現行民法432条は,連帯債権について,「各債権者は,全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ,債務者は,全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。と規定している。」⑶

原判決19頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
エまとめ以上によれば,仮に特許法102条2項による推定が覆滅されるとしても覆滅の割合は●●が限度であるというべきであるから,同項に基づく一審原告の損害額は,被告各製品の限界利益の額の●●●に相当する額(別紙原告主張損害額算定表の③欄記載の合計額4685万2265円)となる。


原判決20頁1行目の逸失利益の●●に相当する937万0453円を
別紙原告主張損害額算定表の④欄のとおり,合計467万円と改める。



原判決20頁3行目から8行目までを次のとおり改める。
別紙原告主張損害額算定表の「⑤欄記載の本件期間1ないし3における一審原告の損害額の合計額3780万9768円については,遅くとも訴状送達の日の翌日(平成29年8月11日)から,本件期間4における一審原告の損害額の合計額1371万2477円については,遅くとも最終販売日の後である平成30年10月1日から遅延損害金が発生する。


小括
以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,5152万2245円及びうち3780万9768円に対する平成29年8月11日から,うち1371万2477円に対する平成30年10月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。」
(一審被告の主張)
次のとおり訂正するほか,原判決20頁9行目から22頁25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決21頁9行目から20行目までを次のとおり改める。

一審原告主張の被告各製品の販売利益の額については争わない。


(2)原判決21頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。また,本件再訂正発明の技術的意義は,LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できるとともに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができる点にあるとの原判決の判断は,本件再訂正発明の作用効果を述べるものであるところ,このような作用効果は,順方向電圧の異なるLED搭載製品を作製することを前提とするものである。しかるところ,被告各製品において,白色LEDと青色LED(被告製品1に搭載された白色LEDと被告製品3に搭載された青色LED,被告製品4に搭載された白色LEDと被告製品6に搭載された青色LED)とは,いずれも順方向電圧は同じであり,順方向電圧が異なるのは赤色LED(被告製品2及び5に搭載された赤色LED)であり,順方向電圧が同じLEDを搭載するLED基板は,もともと共通の基板サイズのものが利用される。そして,赤色LEDは,白色LEDや青色LEDと比較すると暗いため,検査用照明としての需要が極めて少ないことは業界常識であり,実際にも,一審被告が本件期間1ないし4の期間中に販売した被告製品2の販売個数は数個であり,売上高はごく僅かな額にとどまっている。このように被告各製品においては順方向電圧が同じである白色LEDと青色LEDを搭載するLED基板は,もともと共通の基板サイズのものが利用されていること,順方向電圧の異なる赤色LED搭載製品の販売実績は乏しいことからすると,一審被告が販売した被告各製品については本件再訂正発明の作用効果が奏していないか,又は仮に奏していたとしても,著しく低いものであって,本件再訂正発明に顧客吸引力はないから,かかる事情は推定覆滅事由として考慮すべきである。⑶

原判決22頁10行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

一審原告と三菱化学は,平成22年8月26日から平成26年11月21日までの間(本件期間1及び2),本件特許権を持分各2分の1で共有していた。




原判決22頁22行目から23行目までを次のとおり改める。
すなわち,共有に係る損害賠償請求権は,分割債権であって,各共有者は,自己の持分に応じた額を(100%を上限として)それぞれ請求できるとするのが原則であって,これと異なる特段の事実関係がある場合には,これを超える損害額を請求する共有者がその事実を証明しなければならない。しかるところ,一審原告は,共有者の三菱化学が本件期間1及び2において本件再訂正発明を実施していないことについて立証していないから,共有者の持分割合(本件においては50%ずつと推定される。を前提に,)本件期間1及び2に係る損害賠償額が按分されるべきである。
7
争点7(消滅時効の成否)について
原判決23頁1行目から14行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

8
争点8(一審被告の利得額)(予備的請求関係)について
原判決23頁16行目から24頁18行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

第4当裁判所の判断
1
本件明細書の記載事項について


本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし図7については別紙明細書図面を参照)


【技術分野】
【0001】
本発明は,複数のLEDを用い,例えばライン状の光を照射することができる光照射装置に関し,特にワーク(製品)の所定照射領域における傷の有無やマーク読み取り等の検査用として好適に用いられるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライン光照明装置等の光照射装置は,特許文献1に示すように,複数のLEDを搭載した長尺状のLED基板と,このLED基板を収容する筐体と,を備えている。
【0003】
この光照射装置において,LED基板に搭載されるLEDの個数は,電源電圧VEとLEDの順方向電圧Vfとの関係から,直列接続されるLEDの個数が制限される。
【0004】
例えば,電源電圧VEが24Vの場合,赤色LEDの順方向電圧Vfが約2.2Vであり,LED基板に搭載される赤色LEDの個数は10個である。また,白色LEDの場合の順方向電圧Vfが約3.3Vであり,LED基板に搭載される白色LEDの個数は6個である。さらに,赤外LEDの順方向電圧Vfが約1.5Vであり,LED基板に搭載される赤外LEDの個数は15個である。
【0005】
しかしながら,上記のように,LED基板に搭載されるLEDの個数が異なることから,LED基板のサイズが異なり,LEDの種類毎に専用のLED基板を用意する必要がある。また,LED基板を収容する筐体もLEDの種類に応じて異なり,それぞれ用意する必要があるという問題がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は,上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり,種類の異なるLEDを用いた光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することをその主たる所期課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る光照射装置は,複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載するLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数としていることを特徴とする。【0008】
このようなものであれば,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数として,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載される個数を同一にすることができ,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じすることができる。また,順方向電圧の異なるLEDを用いた光照射装置を製造する場合に,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができる。このようなことから,光照射装置の製造において,LED基板及び筐体などの部品を共通化することができ,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減することができる。【0009】
LED基板の大きさを同じにするだけでなく,その大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させるためには,前記LED基板に搭載するLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としていることが望ましい。
【0010】
LED基板に搭載されるLEDが表面実装型(チップ型)LEDであれば,LEDの前方に光学レンズを設ける必要がある。このとき,LED基板に搭載されたLEDの個数に応じて,専用の光学レンズを用意する必要がある。本発明によれば,表面実装型LEDをLED基板に搭載するに際して,その個数を前記LED単位数の公倍数にして,順方向電圧の異なるLEDでも搭載される個数を同じにすることにより,共通の光学レンズを用いることができ,本発明の効果を一層顕著にすることができる。【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば,LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に,本発明に係る光照射装置1の一実施形態について図面を参照して説明する。なお,図1は本実施形態の光照射装置1を示す斜視図であり,図2は光照射装置1の断面図であり,図3はLED21が搭載されたLED基板2の平面図であり,図4は赤色LED21を搭載した場合の回路線図であり,図5は白色LED21を搭載した場合の回路線図であり,図6は赤外LED21を搭載した場合の回路線図である。
【0014】
本実施形態に係る光照射装置1は,例えば検査物(ワーク)の所定照射領域にライン状の光を照射するもので,撮像装置(図示しない)で前記所定照射領域を撮影し,得られた画像データを,画像処理装置(図示しない)で取り込んで傷等の有無の自動表面検査を行う製品検査システム等に用いられる。
【0015】
具体的にこのものは,図1及び図2に示すように,LED基板2と,筐体3と,伝熱部材4と,押圧部材5と,を備えている。
【0016】
LED基板2は,図3に示すように,複数の同一のLED21を搭載した長尺状の基板である。具体的にLED基板2は,長尺状のプリント配線基板の表面に複数のLED21を光軸を略一定方向に揃えて長辺方向に直線状となるように,短辺方向に1列又は複数列(図においては3列)に機械実装したものである。LED21は,図示しない電圧制御回路により,図示しない電源からの電圧が制御されて供給されるものであり,例えば薄い矩形板状をなすパッケージ211の中央にLED素子212を配設した表面実装型(チップ型)のものである。かかるLED21は,例えば,前記LED素子212が,長辺方向及び短辺方向それぞれにおいて所定の間隔で並ぶように配置される。
【0017】
筐体3は,図1及び図2に示すように,LED基板2を収容する基板収容空間を形成する収容凹部301を有するものである。
具体的に筐体3は,
長尺金属製で,長手方向(延伸方向)に直交する断面が概略コの字形状をなすものであり,左右側壁31,32及び底壁33により収容凹部301が形成される。なお,本実施形態の収容凹部301は2つのLED基板2を長手方向に連続して収容する。また,筐体3は,押し出し又は引き抜き成型した一体ものであり,
左右側壁31,
32及び底壁33の外周面には,
長手方向に延びる複数の溝3Mが設けてあり,その間に形成された突条が放熱フィンFとしての役割を果たすようにしてある。また,収容凹部301とLED基板2との間には,伝熱部材4が設けられ,LED基板2により発生する熱を筐体3に伝熱する。
【0019】
押圧部材5は,図2に示すように,複数のLED21毎に対応する複数のレンズ部501を有し,LED基板2の長辺側端部201を筐体3の収容凹部301の底面に向かって押圧するものである。なお,本実施形態では,押圧部材5は,各LED基板2に対応するように,直列に連続させて設けられている(図1参照)。
【0020】
具体的に押圧部材5は,例えば長手方向に直交する断面が概略H形状をなすものであり,レンズ部501が形成されるレンズ形成部51と,当該レンズ形成部51の長辺側両端に形成され,当該レンズ形成部51と直交するフランジ部52とからなる。フランジ部52は,押圧部材5が収容凹部301に収容されると筐体3の左右側壁31,32に対向配置される。そして,フランジ部52の下端面521の略全面が,LED基板2の長辺側端部201,詳細にはLED基板2におけるLED21よりも外側上面に接触する。これにより,LED基板2の長辺側端部201には略均一の力が加えられ,LED基板2が長手方向に反ってしまうことを防ぐことができる。また,フランジ部52の下端面521がLED基板2の長辺側端部201に接触した状態において,LED21から射出された光の略全てがレンズ部501を通過するように,フランジ部52が設定されている。【0021】
そして,押圧部材5は,図2の部分拡大図に示すように,筐体3又は押圧部材5の一方に設けられ,収容凹部301の底面側を向く第1の面61と,筐体3又は押圧部材5の他方に設けられ,第1の面61に当接する収容凹部301の開口側を向く第2の面62とからなる固定機構6により筐体3に固定される。
【0022】
また,固定機構6の第1の面61及び第2の面62が当接した状態において,
LED基板2又は押圧部材5の一方に設けられた凸部
(図示しない)
と,LED基板2又は押圧部材5の他方に設けられ,凸部に嵌合する凹部(図示しない)とが嵌合して,複数のレンズ部501の中心軸と複数のLED21毎の光軸とが一致するように位置決めする位置決め機構を備えている。この位置決め機構により,LED21とレンズ部501とが長辺方向及び短辺方向に位置決めされる。

【0023】
しかして本実施形態のLED基板2に搭載されるLED21の個数は,種類の異なるLED21毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている。なお,種類の異なるLED21には,例えば,射出する光の波長が異なるLEDだけでなく,射出する光の波長が同じであっても,パッケージ211に配設されるLED素子の数が異なるLEDを含む。いずれの場合においても,種類の異なるLED21のパッケージ211は同一形状であることが望ましい。また,LED基板2上に搭載するLED21の個数の決定方法は,複数のLED21を電圧制御する場合にのみ有効である。【0024】
ここで,LED単位数とは,電源電圧VEとLED21を直列に接続したときの順方向電圧Vfの合計
(Vf×N)
との差
(VE-Vf×N)
が,
所定の許容範囲となるLED21の個数であり,電源電圧VEに対して直列接続されるLED21の個数である。
【0025】
本実施形態の順方向電圧Vfは,パッケージ化されたLED21毎の順方向電圧である。また,所定の許容範囲とは,種類の異なるLED21毎に定まるLED単位数の公倍数によりLED基板2にLED21を搭載した場合に,所望の照射領域を1つ又は複数のLED基板2により実現できる条件(より具体的には,種類の異なるLED21毎に定まるLED単位数の最小公倍数を可及的に小さくする条件),及び種類の異なるLED21毎にそのLED単位数を可及的に大きくする条件により決まる。【0026】
例えば,光照射装置1をFA(産業用自動機器)に組み込んで用いる場合,つまり,電源電圧VEが24Vの直流電圧である場合について,赤色LED21,白色LED21及び赤外LED21の3種類の光照射装置1を製造する場合について説明する。
【0027】
赤色LED21の順方向電圧Vfは約2.2Vであり,当該赤色LED21を電源電圧VEに対して直列接続できる個数は10個である。つまり,赤色LED21のLED単位数は10個である。
【0028】
また,白色LED21の順方向電圧Vfは約3.3Vであり,当該白色LED21を電源電圧VEに対して直列接続できる個数は6個である。つまり,白色LED21のLED単位数は6個である。なお,白色LED21を直列接続できる個数は,7個も考えられるが,他の種類のLED21のLED単位数との関係で,可及的に最小公倍数を小さくする値にしている。
【0029】
さらに,赤外LED21の順方向電圧Vfは約1.5Vであり,当該赤外LED21を電源電圧VEに対して直列接続できる個数は15個である。つまり赤外LED21のLED単位数は15個である。
【0030】
そして,赤色LED21のLED単位数(10個),白色LED21のLED単位数(6個),及び赤外LED21のLED単位数(15個)の最小公倍数である30個を,各色LED基板2に搭載するLED21の個数としている。
【0031】
回路上における各LED21の接続方法としては,LED単位数に対応する個数のLED21を直列接続し,その直列接続されたLED群を最小公倍数となるように並列接続する。つまり,赤色LED21の場合には,図4に示すように,10個の赤色LED21を直列接続して赤色LED群とし,赤色LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,赤色LED群を3列に)
並列接続する。
また,
白色LED21の場合には,
図5に示すように,6個の白色LED21を直列接続して白色LED群とし,白色LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,白色LED群を5列に)
並列接続する。
さらに,
赤外LED21の場合には,
図6に示すように,15個の赤外LED21を直列接続して赤外LED群とし,赤外LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,赤外LED群を2列に)並列接続する。
【0032】
LED基板2上におけるLED21の配置態様としては,各色LED基板2で同じであり,前述した通り,図3に示すように,LED21を光軸を略一定方向に揃えて長辺方向に直線状となるように,複数列(図3においては3列)に配置する。

【0033】
<本実施形態の効果>
【0034】
このように構成した本実施形態に係る光照射装置1によれば,LED基板2に搭載されるLED21の個数を,種類の異なるLED21のLED単位数の最小公倍数として,種類の異なるLED21であっても同じにしているので,種類の異なるLED21が搭載されたLED基板2同士の大きさを同じすることができる。また,種類の異なるLED21を用いた光照射装置1を製造する場合に,LED基板2を収容する筐体3として同一のものを用いることができる。このようなことから,光照射装置1の製造において,LED基板2及び筐体3などの部品を共通化することができ,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減することができる。
【0035】
また,LED基板2の大きさを同じできるだけでなく,LED個数が同じであるので,LED基板2上におけるLED21の位置を,各色LED21それぞれ同じにすることができ,LED21の前方にレンズ部材(本実施形態では押圧部材5)を設ける場合であっても,LED21の種類に関係なく,同じレンズ部材(押圧部材5)を用いることができ,レンズ部材(押圧部材5)に汎用性を持たせることができ,部品点数を削減でき,製造コストを削減することができる。
【0036】
さらに,LED基板2に搭載されるLED21の個数を,種類の異なるLED21のLED単位数の最小公倍数としているので,LED基板2の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができる。カ
【0037】
<その他の変形実施形態>
【0038】
なお,本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。【0039】
例えば,前記実施形態の押圧部材5は複数のレンズ部501を備えるものであったが,LED基板2に搭載されるLED21が砲弾型のものである場合には,図7に示すように,押圧部材5が,複数のLED21毎に対応して設けられた貫通孔502を有するものであっても良い。
これならば,
砲弾型LED21のモールド部213が貫通孔502内に挿入可能な構造となり,モールド部213から射出される光をそのまま外部に射出することができる。あるいは,表面実装型LED21の場合であっても,当該表面実装型LED21から射出される光をそのまま外部に射出できるようになる。
【0040】
また,前記実施形態の光照射装置1は,LED21からの光を拡散する拡散板又は所定波長のみを選択して透過する光学フィルタを備えるものであっても良い。
【0041】
さらに,LED基板と押圧部材とを対応させて,それらLED基板及び押圧部材の直列させる数を変更して,光照射装置の長さを変更するようにして良い。
【0042】
その上,曲率の異なるレンズ部を有する押圧部材を複数用意し,筐体に固定される押圧部材を変更することで,レンズ部の曲率を変更することができ,種々の目的に応じた指向性を有する光照射装置を製造することができる。
【0043】
加えて,前記実施形態では,LEDの個数を最小公倍数としているが,その他に公倍数であっても良い。
【0044】
さらに加えて,前記実施形態の光照射装置は,概略直方体形状をなすものであってLED基板が長尺状をなすものであったが,
これに限られない。
例えば,光照射装置が概略円環状をなすものである場合などにおいては,LED基板が部分円環状をなすものであっても良い。
【0045】
その他,前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし,本発明は前記実施形態に限られず,その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。


前記⑴の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件再訂正発明に関し,次のような開示があることが認められる。

従来,複数のLEDを搭載したLED基板と,このLED基板を収容する筐体とを備えたライン状の光を照射する光照射装置においては,電源電圧VEとLEDの順方向電圧Vfとの関係から直列接続されるLEDの個数が制限されるため,LEDの順方向電圧の異なるLEDの種類毎にLED基板に搭載されるLEDの個数が異なり,LED基板のサイズが異なることから,LEDの種類毎に専用のLED基板及びこのLED基板を収容する筐体を用意する必要があるという問題があった(【0001】ないし【0005】)。

本発明は,前記問題点を解決し,順方向電圧の異なる種類のLEDを用いた光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することを主たる課題とするものであり,この課題を解決するための手段として,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,LED基板に搭載するLEDの個数を順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とする構成を採用した(【0006】,【0007】)。これにより本発明は,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載されるLEDの個数を同一にし,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができ,また,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができることから,光照射装置の製造において,LED基板及び筐体などの部品を共通化し,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減するという効果を奏し,さらに,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板の大きさを同じにするだけでなく,
LED基板の大きさを可及的に小さくして,
汎用性を向上させるという効果を奏する(【0008】,【0009】,【0011】,【0036】)。

ウ本発明の実施形態に係る光照射装置1は,例えば,検査物(ワーク)の所定照射領域にライン状の光を照射するもので,撮像装置で前記所定照射領域を撮影し,得られた画像データを,画像処理装置で取り込んで傷等の有無の自動表面検査を行う製品検査システム等に用いられるものであるところ,図1及び図2に示すように,LED基板2と,筐体3と,伝熱部材4と,押圧部材5とを備えており(【0012】,
【0014】,
【0
015】),筐体3は,LED基板2を収容する基板収容空間を形成する収容凹部301を有し,収容凹部301は2つのLED基板2を長手方向に連続して収容する構成のものであるが(【0017】),LED基板及び押圧部材の直列させる数を変更して,光照射装置の長さを変更するようにして良い(【0041】)。
2
争点1(無効の抗弁の成否)について


無効理由1(訂正要件違反)について
一審被告は,本件再訂正は,LED基板の構成のみを特徴部分とする本件当初発明にLED基板を並べたことという特徴部分を発明特定事項に加えるものであり,このような発明特定事項を加えることは当業者は予想できないから,本件再訂正により第三者に不測の不利益を与えるものであるとして,本件再訂正は特許法126条6項の実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当し,同項の訂正要件に違反するから,本件再訂正発明に係る本件特許には同法123条1項8号の無効理由(無効理由1)がある旨主張するので,以下において判断する。

本件再訂正に係る訂正事項
第1次訂正を認める審決が平成30年3月29日に確定したことは前記第2の2⑵イのとおりであるところ,本件再訂正は,第1次訂正後の請求項1における

前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている光照射装置。

を,

前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある光照射装置。

に訂正するものである。

本件再訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)のLED基板の意義(ア)

第1次訂正後の特許請求の範囲(請求項1)は,複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えたライン状の光を照射する光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている光照射装置。というものである。上記記載によれば,第1次訂正発明のLED基板とは,ライン状の光を照射する光照射装置に備えられた基板収容空間を有する筐体に収容され,複数の同一のLEDを搭載したものであって,LED基板に搭載されるLEDの個数を順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とするものであることを理解できる。
一方で,第1次訂正後の特許請求の範囲(請求項1)には,LED基板の枚数について規定した記載はない。(イ)

次に,前記1⑵ア及びイの本件明細書の開示事項によれば,第1次
訂正発明の技術的意義は,順方向電圧の異なる種類のLEDを用いたライン状の光を照射する光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することを主たる課題とし,順方向電圧の異なるLEDを用いた光照射装置において,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,LED基板に搭載するLEDの個数を順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の
最小公倍数
とする構成を採用したことにより,
順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載されるLEDの個数を同一にし,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができ,また,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができることから,LED基板及び筐体などの部品を共通化し,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減するという効果を奏し,さらに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させるという効果を奏することにあることが認められる。
そして,前記1⑵ウの本件明細書の開示事項によれば,本件明細書には,第1次訂正発明の実施形態の1つとして,図1及び図2に示すように,筐体3の収容凹部301に2つのLED基板2を長手方向に連続して収容する構成(【0017】)の光照射装置1が記載されていることが認められる。上記記載から,上記構成の光照射装置1は,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させてある構成であることを理解できる。
(ウ)

以上の第1次訂正後の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件
明細書の記載を総合すれば,第1次訂正発明(請求項1)のLED基板の枚数は,1つに限定されるものではなく,複数のものも含まれると解される。

訂正の適否について
訂正をすべき旨の審決が確定したときは,訂正の効果は出願時に遡って生じ(特許法128条),訂正された特許請求の範囲の記載に基づいて技術的範囲が定められる特許発明の特許権の効力は第三者に及ぶことに鑑みると,同法126条6項の実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かの判断は,訂正の前後の特許請求の範囲の記載を基準としてされるべきであり,実質上の拡張又は変更に当たるかどうかは,訂正により,訂正前の特許請求の範囲の表示を信頼する第三者に不測の不利益を与えることになるかどうかの観点から決するのが相当である。これを本件についてみるに,本件再訂正による訂正事項は,前記アのとおりであり,本件再訂正前の第1次訂正後の請求項1においては,LED基板の枚数や具体的な配置の特定がなかったものを,本件再訂正により,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある構成に特定するものである。
しかるところ,前記イのとおり,第1次訂正発明(請求項1)のLED基板の枚数は,1つに限定されるものではなく,複数のものも含まれると解されること,本件明細書には,第1次訂正発明の実施形態の1つとして,筐体3の収容凹部301に2つのLED基板2を長手方向に連続して収容する構成(【0017】)の光照射装置1が記載されており,上記構成の光照射装置1は,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させてある構成であることを理解できることに照らすならば,本件再訂正により,第1次訂正発明の特許請求の範囲の記載の表示を信頼する第三者に不測の不利益を与えるもの認めることはできないから,本件再訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないものと認められる。
したがって,本件再訂正は,特許法126条6項の要件に適合するものと認められるから,一審被告の前記主張(無効事由1)は理由がない。(2)

無効理由2
(IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明

(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如)について

IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明の公然実施の有無について
証拠(乙8,9,15)によれば,一審被告は,IDB-11/14Rについては平成17年3月7日に,IDB-11/14Wについては平成18年1月20日にそれぞれ販売したこと,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは,上記各製品を通常の方法で分解,分析することにより,その内部構造を知り得る状況にあったことが認められる。
したがって,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,本件出願前に公然実施をされた発明であることが認められる。イ
IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明の内容証拠(乙8,9,15)によれば,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明として,次の発明を認定することができる。複数の同一のLEDを搭載したプリント基板と,前記プリント基板を収容するケースと,を備えたLEDDirectBarLightであって,直流電源の電源電圧(12V)とLEDを接続し,IDB-11/14Rの前記プリント基板に搭載された赤色LEDの場合には,LEDを6個直列に接続し,前記赤色LEDはGL3UR43であり,前記GL3UR43のTYP順電圧が1.85Vであり,IDB-11/14Wの前記プリント基板に搭載された白色LEDの場合には,LEDを3個直列に接続し,そのような直列回路を2本並列に接続し,前記白色LEDはNSPW310BS-CR又はNSPW310BS-CSであり,前記NSPW310BSの標準順電圧が3.6Vであり,前記プリント基板に搭載されるLEDの数は6個であり,1枚の前記プリント基板を配置するLEDDirectBarLight。ウ
本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明との対比
(ア)

本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14W
に係る発明を対比すると,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,本件再訂正発明のうち,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(構成要件F)を備えていない点で相違し(以下,この相違点を本件相違点1という場合がある。),それ以外の構成を備えている点で一致することが認められる。
(イ)

これに対し一審原告は,
本件相違点1のほかに,
本件再訂正発明は,

ライン状の光を照射するのに対し,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,ライン状の光を照射するか否かが不明である点(相違点1-1-2),本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としたのに対し,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としない点
(相違点1-1-3)
で相違する旨主張する。
しかしながら,一審原告の上記主張は採用することができない。その理由は,次のとおり訂正するほか,原判決36頁8行目から37頁5行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
a
原判決36頁8行目,9行目,14行目,20行目から21行目にかけて及び末行の各IDB-11/14RをいずれもIDB-11/14R及びIDB-11/14Wと改める。
b
原判決36頁11行目の前記⑵アのとおり,IDB-11/14Rは,をIDB-11/14R及びIDB-11/14Wは,と改める。
c
原判決37頁4行目のIDB-11/14RをIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と改める。

本件出願当時の周知技術及び技術常識
(ア)

周知技術

a
IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS


証拠(乙12,13,15)によれば,一審被告が,本件出願前
から,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSを製造,販売していたこと,上記各製品を通常の方法で分解,分析することにより,その内部構造を知り得る状況にあったことが認められるから,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明は,本件出願前に公然実施をされた発明であることが認められる。
そして,前掲証拠によれば,IDB-L600/20RS及びI
DB-L600/20WSに係る発明として,次の発明を認定することができる。
複数の同一のLEDを搭載したプリント基板と,前記プリント基板を収容するケースと,を備えたLEDLinearArrayLightであって,電源電圧(12V)とLEDを接続し,IDB-L600/20RSの前記プリント基板に搭載された赤色LEDの場合には,LEDを直列に6個接続し,そのような直列回路を29本並列に接続し,前記赤色LEDはLT1U40Aであり,前記LT1U40AのTYP順電圧が1.85Vであり,IDB-L600/20WSの前記プリント基板に搭載された白色LEDの場合には,LEDを直列に3個接続し,そのような直列回路を58本並列接続し,前記白色LEDはE1S30-AW0A7-03であり,前記E1S30-AW0A7-03のTyp.標準の直流順電圧が3.2Vであり,1枚の前記プリント基板に搭載されるLEDの個数は174個であり,2枚の前記プリント基板を長手方向に2枚直列させてあるLEDLinearArrayLight。⒝

前記⒜によれば,IDB-L600/20RS及びIDB-L6
00/20WSに係る発明は,複数の同一のLEDが搭載された,2枚のプリント基板を長手方向に2枚直列させているから,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させてあるとの構成を備えていることが認められる。

b
乙18


本件出願前に頒布された刊行物である乙18(特許第34815
99号公報)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図11
ないし図13については別紙乙18図面を参照。)。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,カメラを用いて被検査物の認識や検査を行う画像機器等のための照明装置に関し,特に,線状の光源とそれに適合した反射器を備えた照明装置に関する。
【0041】
【実施例】本発明に係る線状照明装置の具体的構成例として,連接型線状照明装置を図11~図14により説明する。本実施例の線状照明装置は,一定の長さの線状照明装置ユニットを複数個,レール上に並べて連接することにより,任意の長さの線状照明装置を構成することができるものである。図11はレール11上に固定された線状照明装置ユニット10の断面図である。ユニット10はケース12とその中に固定された照明ユニット13から成る。ケース12にはレール11の断面に対応する凹断面を有するスライド溝14が形成され,これによりユニット10全体がレール11上をスライド可能となっている。なお,ケース12はアルミ又はプラスチックの押し出し成形により作製することができる。
【0042】図12に示すように,照明ユニット13はLED保持板15と反射鏡16から成り,LED保持板15は反射鏡16の裾部にネジや接着剤等により固定されている。LED保持板15はプリント基板で構成され,LED17取り付け用の穴が一定の間隔で穿孔されているとともに,各穴を接続するプリント配線が形成されている。LED17は,そのリード線を各穴に通した後,プリント配線にハン付けすることにより固定される。反射鏡16の反射面は楕円又は放物線となっており,その反射面とLED17の発光部が本発明に従う上記位置関係を持つように,LED保持板15は反射鏡16に固定されている。反射鏡16は樹脂成形により作製し,反射面はアルミ等の金属膜を蒸着して形成するのがコスト上有利である。
【0045】図13に示すように,レール11上には複数の線状照明装置ユニット10が連続して並べられ,その両端は側板24を介して固定具25により固定される。固定具25はネジ等によりレール11に固定される。隣接する線状照明装置ユニット10同士は,双方の給電用ボード20を連結する正負一対の連結具23a,23bにより電気的に接続されている。これにより,一方の端に電源線を接続するだけで,全ての線状照明装置ユニット10の全てのLED17に電力を供給することができるようになっている。
【0046】本実施例の線状照明装置ユニット10は,上記のように連接して任意の長さにして使用することができるほか,
もちろん,
レールを使わずにそれ1個のみで単独で使用することもできる。また,このような連接は,使用者において使用時に行ってもよいし,メーカーにおいて出荷前に行ってもよい。


前記⒜によれば,乙18には,一定の長さの線状照明装置ユニッ
トを複数個,レール上に並べて連接することにより,任意の長さの線状照明装置を構成することができること,この線状照明装置ユニットは,ケースと,その中に固定されたLED保持板15(プリント基板)
及びと反射鏡16から成る照明ユニットとから成ること
(図
11,12)が開示されていることが認められる。

c
まとめ
前記a及びbによれば,本件出願当時,ライン状の光照射装置において,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させてあると
の構成(本件相違点1に係る本件再訂正発明の構成)は,周知であったことが認められる。

(イ)

技術常識

a
乙17記載の4.⑴(2頁)及び弁論の全趣旨によれば,本件出願時当時,
LED基板の設計においては,当業者は,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,LED基板間の配線及び半田付けを極力減らすようにすることが技術常識であったことが認められる。

b⒜

乙40の資料2(特開2005-283563号公報)には,①…この光照射装置1は,例えば検査物(ワーク)の所定照射領域にライン状の光を照射するもので,撮像装置(図示しない)で前記所定照射領域を撮影し,得られた画像データを画像処理装置(図示しない)で取り込んで傷等の有無の自動表面検査を行う製品検査システム等に用いられる。(【0021】),

…LED3を取り付けた配線基板5は,必要とされる長さに応じて1又は複数直列させ,前記ケーシング底板22の内面に,同数の熱伝導部材7を介して貼り付けている。

(【0025】),さらに,一定数のLED3を1列に保持する配線基板5を1又は複数個直列させてケーシング2に取り付けるようにしているため,部品の標準化を図りつつ,その配線基板5の直列数を変更することにより,段階的ではあるが種々の長さの光照射装置1を柔軟に製造することができる。(【0030】),

…LED3を取り付けた配線基板5は,必要とされる長さに応じて1又は複数直列させ,前記ケーシング底板22の内面に,同数の熱伝導部材7を介して貼り付けている。…

(【0038】)との記載があり,②図2及び図4には,LED3を取り付けた配線基板5が複数直列されている状態が示されている。


乙40の資料6
(特開2006-275790号公報)
には,
具体的にこのライン光照射装置1は,図1~図5に示すように,ケーシング2と,長尺配線基板31に複数のLED32を1列に搭載してなる発光ユニット3と,ケーシング2の側板21に支持されて発光ユニット3の左右に配置した一対のリフレクタ部材4とを備えている。(【0029】),ケーシングに1つの発光ユニットを内蔵させるのではなく,発光ユニットを複数直列または並列させてもよい。その場合,リフレクタ部材は,発光ユニットに1対1に対応させてもよいし,発光ユニットよりも長いものや,短いものを用いてよく,全体として長ささえ一致するようにすればよい。このようにすれば,少ない種類の発光ユニットやリフレクタ部材を用いて種々の長さのライン光照射装置を製造することもできる。(【0062】)との記載がある。
c
前記a及びbによれば,本件出願時当時,種々の長さのライン光照射装置を製造する場合,所定の長さに応じた1枚のLED基板を用いる方法のほか,当該所定の長さに応じて複数のLED基板を直列させる方法も,技術常識であったことが認められる。


相違点の容易想到性の有無について
(ア)

前記イ認定のとおり,IDB-11/14R及びIDB-11/1
4Wに係る発明は,
6個のLEDが搭載された,1枚のプリント基板
を用いたLEDDirectBarLightである。
しかるところ,乙8(2004年~LED照明総合カタログ)に
よれば,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは,一審被告が販売するダイレクトバー照明/IDBシリーズの一製品に位置付けられること,
乙8には,斜光照明やバックライト等幅広く使用可能!」
との見出しの下,「高輝度LEDを平面基板に実装しています。複数で斜光照明にしたりバックライトとしてもご使用できます。非常に多くのサイズバリエーションがあり標準外のご希望サイズも対応致します。…赤/白/青/緑/赤外/紫外の製作が出来ます。(16頁)との記載があることが認められる。
また,乙8にラインナップされている製品の型式,寸法及び
LED数の関係をみると,製品の寸法が長くなるとそれに応じて,1枚のプリント基板に搭載されるLED数が増えていることを読み取れることからすると,ダイレクトバー照明/IDBシリーズでは,異なる長さの照射領域に対応するために,LED基板のサイズバリエーションを多くして,照射領域に応じたLED基板を揃えていることを理解できる。一方で,乙8には,異なる長さの照射領域への対応方法として,同一サイズの複数のLED基板を直列に連接させることについての記載も示唆もない。
加えて,
本件出願時当時,
LED基板の設計においては,当業者は,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,LED基板間の配線及び半田付けを極力減らすようにすることが技術常識であったこと(前記エ(イ)a)に照らすと,本件出願当時,ライン状の光照射装置において,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させてあるとの構成(本件相違点1に係る本件再訂正発明の構成)は周知であったこと(前記エ(ア))を勘案しても,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに接した当業者において,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に上記周知の構成(周知技術)を適用する動機付けがあったものと認めることはできない。
(イ)

これに対し一審被告は,IDB-11/14R及びIDB-11/
14Wに係る発明と前記エ(ア)の周知技術は技術分野が同一であること,本件出願当時,LED基板の設計においては,所定照射領域の長さに応じた1枚のLED基板を用意する設計手法が技術常識であるとともに,所定照射領域の長さに応じて複数枚のLED基板を並べる設計手法も技術常識であったものであり,いずれの設計手法を採用するかは,当業者が適宜選択可能な設計事項であることからすると,当業者が,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明において,上記周知技術を採用することについての動機付けがある旨主張する。
しかしながら,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明と上記周知技術の技術分野が同一であることから直ちに上記周知技術を適用する動機付けがあるということはできないし,また,本件出願当時,種々の長さのライン光照射装置を製造する場合,所定の長さに応じた1枚のLED基板を用いる方法のほか,当該所定の長さに応じて複数のLED基板を直列させる方法も,技術常識であったこと(前記エ(イ)c)を勘案しても,前記(ア)のとおり,ダイレクトバー照明/IDBシリーズでは,異なる長さの照射領域に対応するために,LED基板のサイズバリエーションを多くして,照射領域に応じたLED基板を揃えていることに照らすと,当業者において,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に上記周知技術を適用する動機付けがあったものと認めることはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(ウ)

以上によれば,当業者がIDB-11/14R及びIDB-11/
14Wに係る発明及び周知技術に基づいて本件相違点1に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。
したがって,一審被告主張の無効理由2は理由がない。


無効理由3(IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明(公然実施発明)を主引用例とする進歩性欠如)について


IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明の公然実施の有無について
証拠(乙10,11,15)によれば,一審被告は,IDB-C11/14Rについては平成19年5月23日に,IDB-C11/14Bについては同年6月12日にそれぞれ販売したこと,上記各製品を通常の方法で分解,分析することにより,その内部構造を知り得る状況にあったことが認められる。
したがって,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明は,本件出願前に公然実施をされた発明であると認められる。

IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明の内容証拠(乙10,11,15)によれば,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明として,次の発明を認定することができる。
複数の同一のLEDを搭載したプリント基板と,前記プリント基板を収容するケースと,を備えたダイレクトバー照明であって,直流電源の電源電圧(12V)とLEDを接続し,IDB-C11/14Rの前記プリント基板に搭載された赤色LEDの場合には,LEDを6個直列に接続し,前記赤色LEDはGL3UR43であり,前記GL3UR43のTYP順電圧が1.85Vであり,IDB-C11/14Bの前記プリント基板に搭載された青色LEDの場合には,LEDを3個直列に接続し,そのような直列回路を2本並列に接続し,前記青色LEDはNSPW310A-WS又はNSPW310A-WSであり,前記NSPW310Aの標準順電圧が3.6Vであり,前記プリント基板に搭載されるLEDの数は6個であり,1枚の前記プリント基板を配置するダイレクトバー照明。

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明との対比
(ア)

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/1
4Bに係る発明を対比すると,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明は,本件再訂正発明のうち,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(構成要件F)を備えていない点で相違し(以下,この相違点を本件相違点2という場合がある。),それ以外の構成を備えている点で一致することが認められる。
(イ)

これに対し一審原告は,本件相違点2のほかに,相違点1-1-2
及び相違点1-1-3と同様の相違点が存在する旨主張する。
しかしながら,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明は,
前者がプリント基板に
白色LED
が搭載されているのに対し,
後者がプリント基板に
青色LED
が搭載されている点でのみ相違し,
それ以外の構成は同一であるから,前記⑵ウ(イ)で述べたのと同様の理由により,一審原告の上記主張は採用することができない。

相違点の容易想到性の有無について
前記⑵オで述べたのと同様の理由により,当業者がIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明及び周知技術に基づいて本件相違点2に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。
したがって,一審被告主張の無効理由3は理由がない。



無効理由4(IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明
(公然実施発明)
を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如)
について


IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明の公然実施等
IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明が本件出願前に公然実施された発明であること及びその発明の内容は,前記⑵エ(ア)a⒜のとおりである。


本件再訂正発明とIDB-L600/20RS及びIDB-L600/
20WSと本件再訂正発明の同一性の有無について
(ア)

本件再訂正発明とIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明を対比すると,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明においては,赤色LEDのLED単位数が6,白色LEDのLED単位数が3で,1枚のプリント基板に搭載されるLEDの個数が174個であることからすると,上記LEDの個数は,LED単位数の公倍数ではあるが,最小公倍数
の6個ではないから,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明は,本件再訂正発明のうち,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLEDの最小公倍数とするとの構成(構成要件E)を備えていない点で相違し(以下,この相違点を本件相違点3という場合がある。),それ以外の構成を備えている点で一致することが認められる。
(イ)

これに対し一審被告は,LED基板に搭載されるLEDの個数が,
公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的な意義はないから,本件相違点3は実質的に相違点とはならないと主張する。
しかしながら,一審被告の上記主張は採用することができない。その理由は,原判決46頁9行目から14行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(ウ)以上によれば,本件再訂正発明は,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSと同一の発明であるものと認められないから,本件再訂発明が新規性を欠如するとの一審被告の主張は理由がない。ウ
相違点の容易想到性の有無について
以下のとおり訂正するほか,原判決47頁1行目から48頁5行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決47頁1行目のIDB-L600/20RSに係る相違点3-1に係る構成をIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明のうち,IDB-L600/20RSの構成と,同頁9行目の最小公倍数を最小公倍数(本件相違点3に係る本件再訂正発明の構成)と改め,同頁10行目から11行目にかけての

接続することになる。

の後に次のとおり加える。一方,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明のうち,IDB-L600/20WSの構成についてみると,白色LEDのLED単位数は3個,LED基板に搭載される白色LEDの個数は174個となっており,白色LEDは,1枚の基板に,1列3個に直列接続された上で,これが並列に58列接続された形で搭載されているが,これをLED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の「最小公倍数にする構成
(本件相違点3に係る本件再訂正発明の構成)
とするには,
1枚の基板に1列3個の直列接続された白色LEDを2列並列接続して搭載した上で(白色LEDの搭載数6個),このような基板を29枚接続することになる。」
(イ)

原判決47頁12行目の
IDB-L600/20RS
の後に
及びIDB-L600/20WSを加え,同頁18行目のしかもから48頁2行目末尾までを次のとおり改める。
加えて,本件出願時当時,「LED基板の設計においては,当業者は,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,LED基板間の配線及び半田付けを極力減らすようにすることが技術常識であったこと(前記⑵エ(イ)a)に照らすと,仮にLED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とする構成(本件相違点3に係る本件再訂正発明の構成)が本件出願当時周知であったしても,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに接した当業者において,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明に上記構成を適用する動機付けがあったものと認めることはできない。」
(ウ)

原判決48頁5行目の上記(ア)のとおり,を前記(ア)の認定事実に照らすと,と改め,同頁5行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,一審被告は,乙41記載のIDM-32/62RTを始めとする「チップLED面発光照明/IDMの製品は,赤色(IDM-**/**RT)がIDB-L600/20RSのLED単位数と,白色(IDM-**/**WT-12V)がIDB-L600/20WSのLED単位数とそれぞれ同じであり,LED基板に搭載されるLEDの個数は公倍数の36個になっており,LED基板は,最大で16枚(576個/36個)並べられること(IDM-122/122RT及びIDM-122/122WT-12V-SC),各製品の技術分野の共通性,本件出願当時の周知技術及び技術常識に鑑みると,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSのLED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数
(本件相違点3に係る本件再訂正発明の構成)とすることには,十分な動機付けがある旨主張する。
しかしながら,一審被告の上記主張は本件出願当時の周知技術及
び技術常識の具体的な内容を特定するものではなく,
また,
前記(ア)
の認定事実に照らすと,一審被告の上記主張は採用することができない。

(エ)

以上によれば,当業者がIDB-L600/20RS及びID

B-L600/20WSに係る発明及び周知技術に基づいて本件相違点1に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。
したがって,一審被告主張の無効理由4は理由がない。」


無効理由5(サポート要件違反)について
一審被告は,①本件明細書には,本件再訂正発明の作用効果として,

LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できる。

(【0011】)との記載があり,部品点数及び製造コストの削減において着目している部品は,LED基板2上におけるLED21のそれぞれの位置の個々のレンズ部501に設けられた押圧部材5であること(【0035】)の記載があるから,押圧部材5に相当する構成を備えていないものは,本件再訂正発明の作用効果を奏するものとはいえない,②本件再訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)は,押圧部材5に相当する構成を備えていないものも含むものであり,本件再訂正発明の作用効果を奏しないものまで技術的範囲に包含しているから,特許法36条6項1号所定の要件(サポート要件)に適合しない旨主張する。

そこで検討するに,特許法36条6項1号は,特許請求の範囲の記載に
際し,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり,その趣旨は,発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば,公開されていない発明について独占的,排他的な権利を請求することになって妥当でないため,
これを防止することにあるものと解されるところ,
本件明細書
(甲
2)の発明の詳細な説明には,前記1⑵認定のとおり,本件再訂正発明に関し,従来技術の問題点(【0001】ないし【0005】)を解決し,順方向電圧の異なる種類のLEDを用いた光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することを主たる課題とするものであり,この課題を解決するための手段として,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,LED基板に搭載するLEDの個数を順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とする構成を採用したこと(【0006】,【0007】),これにより,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載されるLEDの個数を同一にし,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができ,また,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができることから,光照射装置の製造において,LED基板及び筐体などの部品を共通化し,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減するという効果を奏し,さらに,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板の大きさを同じにするだけでなく,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させるという効果を奏すること(【0008】,【0009】,【0011】,【0036】)並びにその実施形態(【0012】,【0014】,【0015】,【0017】,【0041】,図1,2)が記載されていることからすると,本件再訂正発明(請求項1)は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した発明であることが認められる。

また,本件明細書の【0008】,【0011】及び【0034】の記載に照らすと,本件明細書の発明の詳細な説明に,LED基板及び筐体を共通化し,部品点数及び製造コストを削減できることも,本件再訂正発明の効果として記載されていることが認められるから,
押圧部材5
(【0
035】)に相当する構成を備えていないものは,本件再訂正発明の作用効果を奏しないということはできない。


以上によれば,本件再訂正発明はサポート要件に適合するものと認められるから,一審被告の前記主張(無効理由5)は理由がない。

3
争点2(先使用権の成否)について
(1)争点2-1(IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決39頁11行目から40頁14行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決39頁11行目の⑴をアと改め,同頁18行目の又は少なくともその一部であるものを削り,同頁20行目から21行目にかけての特許発明の技術的範囲に属する必要があるを特許発明の同一の発明であることが必要であると改め,同頁22行目の⑵から24行目の「属しない。」までを次のとおり改める。
イIDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,前記2⑵ウ(ア)のとおり,本件再訂正発明のうち,「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(構成要件F)を備えていないから,本件再訂正発明と同一の発明であるものと認めることはできない。」

原判決39頁24行目の本件特許の出願を本件出願と,同頁2
5行目から26行目の通常実施権を先使用権と改める。


原判決40頁1行目の(3)をウと,同頁3行目の本件再訂正に係る審決を本件訂正審決と,同頁6行目から7行目にかけての別紙本件クレーム対比表1「特許請求の範囲の本件再訂正発明欄記載のとおりのもの」を本件再訂正後の請求項1及び3と改める。

(2)

争点2-2(IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る
発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決44頁1行目から8行目に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決44頁1行目のIDB-C11/14Rから3行目の「属しない。」までを次のとおり改める。IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Wに係る発明は,前記2(3)ウ(ア)のとおり,本件再訂正発明のうち,「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるとの構成(構成要件F)を備えていないから,本件再訂正発明と同一の発明であるものと認めることはできない。」

原判決44頁4行目から5行目にかけての通常実施権を先使用権
と,同頁8行目の前記3(3)を前記⑴ウと改める。
(3)

争点2-3(IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20W
Sに係る発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決48頁19行目から23行目に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決48頁19行目のIDB-L600/20RSから21行目
の「属しない。」までを次のとおり改める。
IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明は,前記2(4)イ(ア)のとおり,本件再訂正発明のうち,「前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLEDの最小公倍数とするとの構成(構成要件E)を備えていないから,本件再訂正発明と同一の発明であるものと認めることはできない。」

(4)

原判決48頁23行目の通常実施権を先使用権と改める。
争点2-4(IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る
発明に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決48頁末行から51頁15行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決48頁末行の⑴をアと改める。


原判決49頁1行目及び3行目の各
本件特許出願の前
をいずれも
本件出願前
と,
同頁5行目の
⑵イ

と,
同頁8行目の
ア(ア)

と,同頁18行目のイを(イ)と改める。

原判決50頁2行目の⑶本件再訂正発明とIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wとの対比をウ本件再訂正発明とIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明との対比と,同頁3行目を(ア)一致点と,同頁9行目を(イ)相違点と,同

頁10行目の(ア)をaと,同頁,11行目から12行目にかけて,15行目,20行目の各IDR-F60/32RをいずれもIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明と,同頁13行目の(イ)をbと,同頁18行目の(ウ)をcと改める。

原判決50頁21行目から51頁6行目までを削る。


原判決51頁7行目の⑷をエと改め,同頁8行目のIDR-F60/32Rから10行目の「属しない。」までを次のとおり改める。IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明は,前記イのとおり,相違点4-1-1ないし4-1-3に係る本件再訂正発明の構成を備えていないから,本件再訂正発明と同一の発明であるものと認めることはできない。カ
原判決51頁12行目の通常実施権を先使用権と,同頁15行
目の前記3(3)を前記(1)ウと改め,同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,一審被告は,先使用権が成立するためには,先使用物件が特許発明の技術的範囲に属することは必須の要件ではなく,先使用物件と特許発明とが同一の技術的思想であればよいものと解され,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明は,本件再訂正発明の均等に係る範囲に属するということができるから,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明と本件再訂正発明とは,同一の技術的思想であり,一審被告はIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について先使用権を有する旨主張する。しかしながら,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明が,本件再訂正発明の均等に係る範囲に属することを認めるに足りる証拠はないから,一審被告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。(5)

争点2-5(LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明
に基づく先使用権の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決51頁18行目から54頁7行目に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決51頁18行目の⑴をアと,同頁19行目及び21行目
の各本件特許出願の前をいずれも本件出願前と,同頁23行目の
⑵をイと,同頁26行目のアを(ア)と改める。

原判決52頁10行目のイを(イ)と,同頁20行目の⑶本件再訂正発明とLR-F60/32R及びLR-F60/32Wとの対比をウ本件再訂正発明とLR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明との対比と,同頁21行目のアを(ア)と改める。

原判決53頁1行目を(イ)相違点と,同頁2行目の(ア)をa

と,同頁3行目から4行目にかけて,7行目,12行目の各LR-F60/32RをLR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明と改める。エ
原判決53頁頁5行目の(イ)をbと,同頁10行目の(ウ)
をcと改め,同頁13行目から24行目までを削り,同頁25行目の⑷をエと改める

原判決53頁26行目のLR-F60/32Rから54頁2行目の「属しない。」までを次のとおり改める。
LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明は,前記イのとおり,相違点5-1-1ないし5-1-3に係る本件再訂正発明の構成を備えていないから,本件再訂正発明と同一の発明であるものと認めることはできない。カ
原判決54頁4行目の通常実施権を先使用権と,同頁7行目の
前記3(3)を前記(4)エと改める。

4
争点3(自由技術の抗弁の成否)について
一審被告は,①本件出願前から,本件当初発明の技術的範囲に属するIDR-F60/32R及びIDR-F60/32W(乙3,4)
,LR-F60/3
2R及びLR-F60/32W(乙5)
,第1次訂正発明の技術的範囲に属する
IDB-11/14R及びIDB-11/14W(乙8,9)並びにIDB-C11/14R及びIDB-C11/14B(乙10,11)を製造,販売していたこと,②本件出願当時の技術常識に照らせば,LED基板を長手方向に連設して製品長さを調整することは,公知技術を当業者が適宜に実施していることの域を出るものではないことからすると,一審被告による被告各製品の製造及び販売は,公知技術(自由技術)を実施するものにすぎない旨主張する。しかしながら,本件再訂正発明が公知技術であることを認めるに足りる証拠はないから,
一審被告の上記主張は,
その前提を欠くものであり,
理由がない。

5
争点4(作用効果不奏効の抗弁の成否)について
一審被告は,①本件明細書の【0035】の押圧部材5に相当する構成を備えていないものは,
本件再訂正発明の作用効果を奏するものとはいえない,
②被告各製品は,
押圧部材5に相当する部品は備えていないから,本件再訂
正発明の作用効果を奏するものではないとして,一審被告による被告各製品の製造及び販売には本件再訂正発明に係る本件特許権の効力は及ばない旨主張する。
しかしながら,前記2⑸イで説示したとおり,押圧部材5に相当する構成を備えていないものは,本件再訂正発明の作用効果を奏しないということはできないから,一審被告の上記主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
6
争点5(一審被告の過失の有無)について
次のとおり訂正するほか,原判決54頁末行から55頁25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決54頁末行から55頁2行目までを次のとおり改める。
⑴前記第2の2⑸イのとおり,被告各製品は本件再訂正発明の構成要件AないしGをすべて充足するから,被告各製品は,本件再訂正発明の技術的範囲に属する。したがって,一審被告による被告各製品の製造及び販売は,本件再訂正発明に係る本件特許権の侵害行為に該当する。そして,一審被告には過失があったものと推定されるから(特許法103条),一審被告は,一審原告に対し,上記侵害行為につき不法行為に基づく損害賠償責任を負うものである。


原判決55頁23行目のその事実のみをもってを削り,同頁25行目末尾に次のとおり加える。
また,一審被告主張の無効理由1ないし5が理由のないことは,前記2で説示したとおりであるところ,一審被告が本件再訂正発明に係る本件特許に無効理由があるため被告各製品の製造及び販売が本件特許権を侵害しないと信じたことについて相当な理由があるものと認めるに足りる証拠はない。
7
争点6(一審原告の損害額)について


特許法102条2項に基づく損害額について

特許法102条2項の適用の有無について
原判決56頁14行目から15行目にかけての(以下,これらの製品を「原告各製品と総称する。)」を(原告各製品)と訂正するほか,同判決56頁3行目から57頁9行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


被告各製品の販売に係る限界利益の額について
(ア)

本件期間1ないし4における被告各製品の売上高が,別紙原告主張
損害額算定表の①欄記載のとおり,本件期間1につき●●●●●●●●●円,本件期間2につき●●●●●●●●円,本件期間3につき●●●●●●●●●円,本件期間4につき●●●●●●●●●円の合計●●●●●●●●●●●円であることは,争いがない。
次に,別紙物件説明書記載のとおり,被告製品1及び4には白色LEDが,被告製品2及び5には赤色LEDが,被告製品3及び6には青色LEDが,被告製品7には赤外LEDが搭載されている。
そして,証拠(乙25,28,29,30,33)及び弁論の全趣旨によれば,本件期間1ないし4の各年度における被告各製品の販売個数は,次のとおりであることが認められる。
a
被告製品2及び5

●●個

2013年度

被告製品1及び4

●●個

被告製品2及び5

●●個

被告製品3及び6

●●個

2014年度

被告製品1及び4

●●個

(平成26年度)
d
●●個

(平成25年度)

c
被告製品1及び4

(平成24年度)
b
2012年度

被告製品3及び6

●●個

2015年度

被告製品1及び4

●●個

(平成27年度)

被告製品2及び5

●●個

被告製品3及び6

●●個
●●個

2017年度

被告製品1及び4

●●個

被告製品2及び5

●●個
●●個

被告製品7

●●個

2018年度

被告製品1及び4

●●個

(平成30年度)

被告製品3及び6

●●個

被告製品1及び4

●●個

被告製品2及び5

●●個

被告製品3及び6

●●個

被告製品7

●●個

(合計)
(イ)

被告製品2及び5

被告製品3及び6

h
●●個

(平成29年度)

g
被告製品1及び4

被告製品3及び6
f
2016年度
(平成28年度)

e
●●個

●●個

aないしgの全期間

本件期間1ないし4における被告が被告各製品の販売により受けた
利益(限界利益)の額は,別紙原告主張損害額算定表の②欄記載のとおり,本件期間1につき●●●●●●●●●円,本件期間2につき●●●●●●●●円,本件期間3につき●●●●●●●●●円,本件期間4につき●●●●●●●●●円の合計●●●●●●●●●円であることは,争いがない。
そうすると,一審被告が受けた上記限界利益の額は,特許法102条2項により,一審原告の受けた損害額と推定される(以下,この推定を本件推定という。)。

推定覆滅事由について
一審被告は,①本件期間1ないし4に係る販売分につき,一審被告が販売した被告各製品中,順方向電圧の異なるLEDを搭載した製品の販売実績が乏しいこと等,被告各製品の競合品の存在,②本件期間1及び2に係る販売分につき,本件特許権が一審原告と三菱化学との共有であったことは,いずれも本件推定を覆す事情に該当し,かかる事情を考慮すると,本件推定は覆滅される旨主張するので,以下において判断する。
(ア)

本件期間1ないし4に係る販売分につき,一審被告が販売した被告
各製品中,順方向電圧の異なるLEDを搭載した製品の販売実績が乏しいこと等,被告各製品の競合品の存在
a
一審被告は,①LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できるとともに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができるという本件再訂正発明の作用効果は,順方向電圧の異なるLED搭載製品を作製することを前提とするものであり,被告各製品において,白色LEDと青色LEDとは,いずれも順方向電圧は同じであり,順方向電圧が異なるのは赤色LEDであるから,本件再訂正発明の作用効果を奏するのは赤色LEDを搭載する製品であるところ,本件期間1ないし4の期間中に一審被告が販売した被告各製品中,赤色LED搭載製品(被告製品2及び5)の販売実績が乏しいこと,②需要者の立場からは,LED基板の設計において,本件再訂正発明の実施品であるLED単位数の最小公倍数の単位基板が長さ方向に連設されている製品と最小公倍数ではない公倍数の単位基板が連設されている製品とでは,購入意欲
に有意な差異を生じるものではなく,また,本件再訂正発明において複数のLED基板が直列させてある点は,基板の接続箇所で不具合が起こる可能性が高いとして,製品としての評価を低下させ得る事情であることは,被告各製品に実施された本件再訂正発明に顧客吸引力がないことなどを示すものといえるから,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。


①について
本件再訂正により,本件再訂正前の第1次訂正発明(請求項1)
のLED基板の枚数及び配置が複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある構成に特定されたこと,第1次訂正発明の技術的意義は,前記2⑴ア,イ(イ)及びウで説示したとおりである。また,本件明細書の【0009】及び【0041】の記載から,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLEDの個数をLED単位数の最小公倍数にすることにより可及的に小さくし
たLED基板の直列させる数を変えることで,このLED基板を
様々な長さの光照射装置に用いることができるようになることを理解できる。
これらを総合考慮すると,本件再訂正発明の技術的意義は,順方
向電圧の異なる種類のLEDを用いたライン状の光を照射する光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することを主たる課題とし,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,LED基板に搭載するLEDの個数を順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とする構成を採用した
ことにより,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載されるLEDの個数を同一にし,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができ,また,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができることから,LED基板及び筐体などの部品を共通化し,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減するという効果を奏し,さらに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させるという効果を奏し,加えて,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある構成を採用したことにより,
可及的に小さくしたLED基板の直列させる数を変えることで,
このLED基板を様々な長さの光照射装置に用いることができるという効果を奏することにあるものと認められる。
そして,被告各製品のうち,白色LED搭載製品と青色LED搭
載製品は,順方向電圧が同じであり(白色LED搭載製品である被告製品1と青色LED搭載製品である被告製品3,白色LED搭載製品である被告製品4と青色LED搭載製品である被告製品6は,順方向電圧が同じであることは,争いがない。),LED基板は共通のサイズのものを利用することができるので,被告各製品においては,本件再訂正発明は,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品と順方向電圧が異なる赤色LED搭載製品
(被告製品2及び5)
及び赤外LED搭載製品(被告製品7)について,専用のLED基板及びこれを収容する筐体を用意する必要はなく,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品と共通のサイズのLED基板及び同一の筐体を用いることができる点において主たる効果を発揮するものと認められる。
しかるところ,本件期間1ないし4における被告各製品の販売個
数は,合計●●●個であり,このうち,被告製品2及び5は●個,被告製品7は●個であるから(前記イ(ア)),被告製品2,5及び9の販売個数(合計●●個)が占める割合は,全体の約●●●●である。
一方で,被告各製品のうち,白色LED搭載製品又は青色LED
搭載製品を購入した者においても,その購入時に赤色LED搭載製品一緒に購入している場合や,既に赤色LED搭載製品を有し,又は将来赤色LED搭載製品を購入する予定である場合もあり得るから,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品においては本件再訂正発明の主たる効果が発揮されていないとまではいえないが,このような点を考慮してもなお,
被告製品2,
5及び7の販売個数
(合
計●●個)が全体の約●●●●であることは,本件期間1ないし4における被告各製品の売上げに対する本件再訂正発明の寄与ないし貢献の程度が相当低いことを示すものといえる。
したがって,被告製品2,5及び7の販売個数(合計●●個)が
全体の約●●●●であることは,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。
これに反する一審原告の主張は採用することができない。


②について
一審被告は,需要者の立場からは,LED基板の設計において,
本件再訂正発明の実施品であるLED単位数の最小公倍数の単
位基板が長さ方向に連設されている製品と最小公倍数ではない公倍数の単位基板が連設されている製品とでは,購入意欲に有意な差異を生じるものではなく,また,本件再訂正発明において複数のLED基板が直列させてある点は,基板の接続箇所で不具合が起こる可能性が高いとして,製品としての評価を低下させ得る事情であることは,被告各製品に実施された本件再訂正発明に顧客吸引力がないことを示すものといえるから,これらの事情は,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。
しかしながら,一審被告の上記主張の根拠とする事情を裏付ける
に足りる証拠はないから,一審被告の上記主張は採用することができない。
b
次に,一審被告は,本件再訂正発明の実施品であるライン光照射装置と実施品ではないライン光照射装置とは,照明器具としての性能に変わりがなく,ライン光照射装置であれば全て被告各製品及び原告が販売する原告各製品の競合品となることに鑑みると,仮に被告各製品が販売されなかったとしても,被告各製品の販売数量に対応する需要が,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の他社のライン光照射装置にも向かったであろうといえるから,このような被告各製品の競合品の存在は,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。
そこで検討するに,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の原判決別紙競合品
(被告主張)
一覧表記載の他社のライン光照射装置は,
被告各製品の競合品に該当し,このような被告各製品の競合品の存在は,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。その理由は,次のとおり訂正するほか,原判決60頁2行目から61頁8行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決60頁2行目の(ウ)を⒜と,同頁末行の(エ)を
⒝と改める。



原判決61頁3行目の
本件では,から同頁4行目末尾までを

このような被告各製品の競合品の存在は,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。

と改める。


原判決61頁8行目末尾に次のとおり加える。
また,被告各製品のカタログ(甲3)及びウェブページ(甲4,13)には,被告各製品において本件再訂正発明を実施していることやその実施により光照射装置としての性能が向上し,部品点数及び製造コストの削減を図ることができることなどをうかがわせる記載は見当たらず,他方で,「業界最高クラスの光量を実現,
驚異の明るさを実現など被告各製品の光量の大きさに関する
機能を宣伝文言としていることに照らすと,被告各製品において
本件再訂正発明が実施されていることが大きな顧客吸引力となっ
ていたということはできない。」
c
以上を前提に検討するに,前記a⒜及びbの本件推定を覆す事情の内容,本件再訂正発明の技術的意義等を総合的に考慮すると,被告各製品の限界利益の形成に対する本件再訂正発明の寄与は●●と認めるのが相当であり,前記寄与割合を超える部分については被告各製品の限界利益の額と控訴人の受けた損害額との間に相当因果関係がないものと認められる。
したがって,本件推定は上記a⒜及びbの本件推定を覆す事情によ
り上記限度で覆滅されるものと認められる。
そうすると,上記推定覆滅後の被告各製品の限界利益の額は,別紙認容額算定表の③欄記載の562万2270円となる。d
これに対し一審原告は,①被告各製品のうち,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品においても,本件再訂正発明は大きな顧客吸引力を有すること,
②画像処理LED照明の国内シェア
(数量ベース)
については,平成26年から平成30年まで一貫して,一審原告が1位,
一審被告が2位であり,
一審原告のシェアは2割を超えており
(甲
18ないし22),このように画像処理LED照明のシェアを2割以上一審原告が有している以上,
被告各製品の販売がなかった場合には,
そのうちの少なくとも2割は原告各製品に向かうことは明らかであるし,シェア上位の会社の信頼性という面からは,2位のシェアを占める被告各製品を購入した需要者は,被告各製品の販売がなかった場合には1位のシェアを占める原告各製品を購入する蓋然性が高いこと,③原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の各製品のうち,原告各製品の種類の多さを考えても,被告各製品の販売がなかった場合にはこれに対応する需要は原告各製品に向かう割合は極めて高いことを勘案すると,本件推定は5割を超えては覆滅しない旨主張する。
しかしながら,①については,前記bで説示したとおり(原判決引用部分),本件再訂正発明の顧客吸引力は大きいとはいえない。
また,②については,原告各製品及び被告各製品は,ライン状の光を照射する光照射装置(ライン光照射装置)であるところ,仮に画像処理LED照明一般という,ライン光照射装置よりも広いカテゴリのシェアで一審原告が1位であり,そのシェアが2割を超えていたとしても,被告各製品の販売がなかった場合に,これに対応する2割の需要が原告各製品に向かい,原告各製品を購入する蓋然性が高いということはできない。
さらに,③については,原告各製品の種類が多いからといって,被告各製品の販売がなかった場合にはこれに対応する需要は原告各製品に向かう割合は極めて高いということはできない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(イ)

本件期間1及び2に係る販売分につき共有者の存在について
次のとおり訂正するほか,原判決61頁13行目から63頁23行目
までに記載のとおりであるから,これを引用する。
a
原判決61頁14行目のその始期であるを本件期間1及び2に属すると,同頁15行目の共有を共有(持分各2分の1)と改める。

b
原判決61頁16行目から62頁12行目までを次のとおり改める。b⒜特許法73条2項は,特許権が共有に係るときは,各共有者は,契約で別段の定めをした場合を除き,他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる旨規定しているから,各共有者は,上記の場合を除き,自己の持分割合にかかわらず,無制限に特許発明を実施することができる。そうすると,特許権の共有者は,自己の共有持分権の侵害による損害を被った場合には,侵害者に対し,特許発明の実施の程度に応じて特許法102条2項に基づく損害額の損害賠償を請求できるものと解される。また,同条3項は特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であると解されることに鑑みると,特許権の共有者に侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在しないため,同条2項の適用が認められない場合であっても,自己の共有持分割合に応じて,同条3項に基づく実施料相当額の損害額の損害賠償を請求できるものと解される。しかるところ,例えば,2名の共有者の一方が単独で同条2項に基づく損害額の損害賠償請求をする場合,侵害者が侵害行為により受けた利益は,一方の共有者の共有持分権の侵害のみならず,他方の共有者の共有者持分権の侵害によるものであるといえるから,上記利益の額のうち,他方の共有者の共有持分権の侵害に係る損害額に相当する部分については,一方の共有者の受けた損害額との間に相当因果関係はないものと認められ,この限度で同条2項による推定は覆滅されるものと解するのが相当である。以上を総合すると,特許権が他の共有者との共有であること及び他の共有者が特許発明の実施により利益を受けていることは,同項による推定の覆滅事由となり得るものであり,侵害者が,特許権が他の共有者との共有であることを主張立証したときは,同項による推定は他の共有者の共有持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の損害額の限度で覆滅され,また,侵害者が,他の共有者が特許発明を実施していることを主張立証したときは,同条2項による推定は他の共有者の実施の程度(共有者間の実施による利益額の比)に応じて按分した損害額の限度で覆滅されるものと解するのが相当である。これを本件についてみるに,一審原告と三菱化学は,本件期間1及び2において,本件特許権を持分2分の1の割合で共有していたことは,前記aのとおりであるが,一方で,その期間中に,三菱化学が本件再訂正発明を実施したことについての立証はない。そうすると,本件期間1及び2に係る販売分についての本件推定は,三菱化学の共有持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の損害額の限度で覆滅されるというべきある。⒝これに対し一審原告は,①三菱化学から本件特許権の共有持分の移転を受けた際,三菱化学から,三菱化学の有する本件特許権侵害に基づく一審被告に対する損害賠償請求権を承継した,②侵害者が複数いる場合にそれぞれの損害賠償債務が不真正連帯債務となることからすれば,権利者が複数いる場合のそれぞれの損害賠償債権も不真正連帯債権になると考えるべきであり,また,現行民法で連帯債権(432条)の規定が設けられたことからすると,本件特許権が一審原告と三菱化学との共有であったことは本件推定の覆滅事由に該当しない旨主張する。しかしながら,①については,一審原告が三菱化学の有する本件特許権侵害に基づく一審被告に対する損害賠償請求権を承継したことを認めるに足りる証拠はない。次に,②については,権利者が複数いることから直ちにそれぞれの損害賠償債権が不真正連帯債権になると解すべき理由はない。また,本件特許権は一審原告と三菱化学の共有であったが,一審原告が三菱化学から本件特許権の共有持分2分の1の移転登録(受付日平成26年11月21日)を受けたことにより,本件特許権の共有関係は解消され,本件特許権は一審原告の単独保有となったことに照らすと,現時点において一審原告と三菱化学は共有関係を基礎とする密接な関係にはなく,本件特許権侵害に基づく一審被告に対する損害賠償請求権を不真正連帯債権と解すべき合理的な理由はない。さらに,民法432条は,法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有する場合に各債権者の債権が連帯債権になる旨を定めたものであるところ,本件においては,法令の規定又は当事者の意思表示に関する主張立証はないから,同条又はその趣旨は本件に妥当しない。したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。⒞また,一審被告は,共有に係る損害賠償請求権は,分割債権であって,各共有者は,自己の持分に応じた額をそれぞれ請求できるとするのが原則であって,これと異なる特段の事実関係がある場合には,これを超える損害額を請求する共有者がその事実を証明しなければならないところ,一審原告は,三菱化学が本件期間1及び2において本件再訂正発明を実施していないことについて立証していないから,本件期間1及び2に係る損害賠償額は共有者の持分割合に応じて按分されるべきである旨主張する。しかしながら,一審被告の上記主張は,前記⒜で説示した理由により,採用することができない。c
原判決63頁22行目から23行目までを次のとおり改める。

e以上によれば,本件期間1及び2に係る販売分の三菱化学の損害額は,別紙認容額算定表の④欄記載の26万6379円と認めるのが相当である。



まとめ
以上によれば,一審原告の特許法102条2項に基づく損害額は,別紙認容額算定表の⑤欄記載のとおり,合計535万5891円(同算定表の③欄記載の562万2270円から④欄記載の26万6379円を控除した額)と認められる。

(2)

弁護士費用及び弁理士費用
本件事案の内容,原審及び当審における審理の経過,認容額等の諸般の事
情を考慮すると,一審被告による本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用及び弁理士費用相当の一審原告の損害額は,80万円(別紙認容額算定表の⑥欄記載の額)と認めるのが相当である。(3)

小括
以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,本件特許権侵害の不法行為
に基づく損害賠償請求権615万5891円(別紙認容額算定表の⑦欄記載の額)及びうち465万9192円に対する平成29年8月11日(訴状送達の日の翌日)から,うち149万6699円(同算定表の③欄記載の本件期間4に係る一審原告の損害額)に対する平成30年10月1日(最終販売日の後)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求権を有するものと認められる。
8
争点7(消滅時効の成否)について
原判決64頁末行から65頁24行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

9
争点8(一審被告の利得額)(予備的請求関係)について
原判決66頁3行目の前記(第2の1⑶イ)のとおり,を削るほか,同頁1行目から6行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。第5結論
以上によれば,一審原告の請求は,被告各製品の製造,販売等の差止め並びに615万5891円及びうち465万9192円に対する平成29年8月11日から,うち149万6699円に対する平成30年10月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきものである。
したがって,これと異なる原判決は失当であって,一審被告の控訴は一部理由があるから,原判決を上記のとおり変更し,一審原告の控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

本吉弘行
裁判官

岡山忠広
(別紙)

被告製品目録

以下の光照射装置

商品名

ライン証明

(型

60万lxブライマックスライン照明Ⅱ

式)

1
IDBB-LSR●●●●W

2
IDBB-LSR●●●●R

3
IDBB-LSR●●●●B

4
IDBB-LSR●●●●W-S

5
IDBB-LSR●●●●R-S

6
IDBB-LSR●●●●B-S

7
IDBB-LSR●●●●IR-860-S
(上記の●には200~3000の100ごとの数字が入る)

(別紙)

物件説明書

被告各製品(光照射装置IDBB-LSR

series)の構成は,以下の

とおりである。

第1被告各製品の構成図
1
被告製品1(白色発光:型番IDBB-LSR●●●●W)及び被告製品4(白色発光:型番IDBB-LSR●●●●W-S)

※:上記の●には200~3000の100ごとの数字(mm単位のサイズ)が入る(以下同じ。)

2
被告製品2(赤色発光:型番IDBB-LSR●●●●R),被告製品5(赤色発光:型番IDBB-LSR●●●●R-S)及び被告製品7(赤外発光:型番IDBB-LSR●●●●IR-860-S)

3
被告製品3(青色発光:型番IDBB-LSR●●●●B)及び被告製品6(青色発光:型番IDBB-LSR●●●●B-S)

第2構成の説明
1
被告各製品の構成
(1)

共通構成
被告各製品は,それぞれ,同一種類の複数のLEDを搭載したLED基板
と,このLED基板を収容する基板収容空間を有する筐体とを備えたライン状の光を照射する光照射装置であり,24Vの電源電圧が印加されて動作する。
LED基板は,同じサイズ(幅100㎜,高さ32㎜)の矩形状をなすものであり,その4箇所に取付孔が設けられている。
このLED基板には,18個のLEDが幅方向中央部分に1列で並べ設けられている。
さらに,このLED基板を前記ライン方向に沿って複数直列させてある。(2)

被告製品1及び4の構成
被告製品1及び4においては,直列接続された6個の白色LEDからなる
LED列が並列に3列接続されている。したがって,被告製品1及び4におけるLED単位数は6個である。
また,前記白色LED単体の順方向電圧は3.1Vであるから,直列接続されている6個の白色LEDの順方向電圧の合計は18.6Vである。この順方向電圧の合計18.6Vは,電源電圧24Vまでに5.4Vの余裕があり,その余裕,すなわち電源電圧との差は,白色LEDの確実な動作を可能ならしめる許容範囲として設定されたものである。
(3)

被告製品2及び5の構成
被告製品2及び5においては,直列接続された9個の赤色LEDからなる
LED列が並列に2列接続されている。したがって,被告製品2及び5におけるLED単位数は9個である。
また,前記赤色LED単体の順方向電圧は2Vであるから,直列接続されている9個の赤色LEDの順方向電圧の合計は18Vである。この順方向電圧の合計18Vは,電源電圧24Vまでに6Vの余裕があり,その余裕,すなわち電源電圧との差は,赤色LEDの確実な動作を可能ならしめる許容範囲として設定されたものである。
(4)

被告製品7の構成
被告製品7においては,直列接続された9個の赤外LEDからなるLED列が並列に2列接続されている。したがって,被告製品7におけるLED単位数は9個である。
また,前記赤外LED単体の順方向電圧は2Vであるから,直列接続されている9個の赤外LEDの順方向電圧の合計は18Vである。この順方向電圧の合計18Vは,電源電圧24Vまでに6Vの余裕があり,その余裕,すなわち電源電圧との差は,赤外LEDの確実な動作を可能ならしめる許容範囲として設定されたものである。
(5)

被告製品3及び6の構成
被告製品3及び6においては,直列接続された6個の青色LEDからなる
LED列が並列に3列接続されている。したがって,被告製品3及び6におけるLED単位数は6個である。
また,前記青色LED単体の順方向電圧は3Vであるから,直列接続されている6個の青色LEDの順方向電圧の合計は18Vである。この順方向電圧の合計18Vは,電源電圧24Vまでに6Vの余裕があり,この余裕,すなわち電源電圧との差は,青色LEDの確実な動作を可能ならしめる許容範囲として設定されたものである。
2
被告各製品のLED基板に搭載されるLEDの個数とLED単位数の関係(1)

被告製品1及び4について
被告製品1及び4のLED基板に搭載される白色LEDの個数(18個)
は,被告製品1及び4のLED単位数(6個)と,順方向電圧の異なるLEDが搭載された被告製品2,5又は被告製品7のLED単位数(9個)との最小公倍数となっている。
(2)

被告製品2及び5について
被告製品2及び5のLED基板に搭載される赤色LEDの個数(18個)
は,被告製品2及び5のLED単位数(9個)と,順方向電圧の異なるLEDが搭載された被告製品1,4又は被告製品3,6のLED単位数(6個)との最小公倍数となっている。
(3)

被告製品7について
被告製品7のLED基板に搭載される赤外LEDの個数(18個)は,被
告製品7のLED単位数(9個)と,順方向電圧の異なるLEDが搭載された被告製品1,4又は被告製品3,6のLED単位数(6個)との最小公倍数となっている。
(4)

被告製品3及び6について
被告製品3及び6のLED基板に搭載される青色LEDの個数(18個)
は,被告製品3及び6のLED単位数(6個)と,順方向電圧の異なるLEDが搭載された被告製品2,5又は被告製品7のLED単位数(9個)との最小公倍数となっている。

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