判例検索β > 令和1年(わ)第2860号
傷害致死
事件番号令和1(わ)2860
事件名傷害致死
裁判年月日令和2年9月18日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第5刑事部
裁判日:西暦2020-09-18
情報公開日2020-10-27 12:00:19
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文
被告人を懲役3年に処する
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,Aを含む弟らの育児等を母から押し付けられていたが,軽度知的障害の影響もあってそのような家庭環境から逃れることができず,不満を募らせていた。被告人は,平成31年4月2日早朝から同日午前11時20分頃までの間に,大阪市(住所省略)被告人方において,A(当時3歳)に対し,その腹部を足で踏みつける暴行を加え,よって,腹部圧迫による下腸間膜動脈裂傷等の傷害を負わせ,同日午後0時30分頃,同所付近において,前記傷害に起因する失血により同人を死亡させた。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
罰条
刑法205条

未決勾留日数の算入

刑法21条

刑の全部執行猶予

刑法25条1項

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件は,3歳の弟に対する傷害致死1件の事案である。
何ら落ち度のない3歳の被害者の命を失わせた結果はいうまでもなく重大である。また,幼児の腹部を踏みつけるという犯行態様は,両者の体格の違いなどを考慮すれば,被害者に重篤な傷害を負わせる可能性が高い危険なものである。もっとも,精神鑑定によれば,被告人は軽度の知的障害を有し,その知能や発達年齢は概ね9歳から10歳程度と診断されており,自らの行為の危険性を十分に認識していたとは認め難い。
犯行に至る経緯,動機についてみるに,被告人は,父から幼少期等に暴力を受け,母からは弟妹への暴力を指示されるなど,暴力肯定的な家庭で生育した。そのような生活の中,弟らの世話を押し付けられ,これが知的障害を有する被告人にとっては過度の負担となっていたものの,両親に逆らうことができず,不満を募らせて犯行に及んだと認められる。何ら落ち度がない被害者に暴行を加えた点は非難を免れないものの,劣悪な家庭環境に置かれる中,知的障害の影響により自力でそこから逃れることができず,犯行に及んだ点は相応に酌むべき事情といえる。そうすると,本件は,同種事案との比較では中程度より軽い部類に属し,実刑と執行猶予いずれの選択肢もあり得る事案といえる。
そこでその余の事情について検討すると,被告人については,両親と別居するためのグループホームへの入居のめどが立っている上,後見人が選任され,福祉の援助が見込まれるなどの手厚い支援体制も構築されている。また,被告人は,被害者の命を失わせたことを後悔し,朝晩に手を合わせて冥福を祈るなど,被告人なりに反省の態度を示しており,これまでに前科もない。
これらの事情に鑑みれば,被告人を直ちに実刑に処すべきとまでは認め難く,被告人を主文の刑に処し,今回に限り,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。(求刑

懲役5年)

令和2年9月25日
大阪地方裁判所第5刑事部

裁判長裁判官

長瀨敬昭
裁判官


裁判官

平博山一裕也
トップに戻る

saiban.in