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情報非公開決定処分取消等請求事件
事件番号平成30(行ウ)138
事件名情報非公開決定処分取消等請求事件
裁判年月日令和2年3月19日
裁判所名大阪地方裁判所
分野行政
判示事項松原市において一般廃棄物の収集運搬業を無許可で行っていた事業者を特定することができる情報が,松原市情報公開条例6条1号本文所定の「法人等に関する情報であって,情報の公開をすることにより,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当しないとされた事例
裁判要旨松原市において一般廃棄物の収集運搬業を無許可で行っていた事業者を特定することができる情報は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行うことにつき厳格な要件を定めて許可にかからしめるものとし,その違反に対しては厳しい態度で臨んでいることに加え,事業者が許可区域外の松原市で浄化槽の清掃等を行っていたことを認めていること,あくまでも自ら法令遵守を怠ったことによって社会的評価や信用等が一定程度低下するなどの不利益を被ることが予想されるにすぎないことなど判示の事情の下においては,松原市情報公開条例6条1号本文所定の「法人等に関する情報であって,情報の公開をすることにより,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当しない。
裁判日:西暦2020-03-19
情報公開日2020-10-12 16:00:29
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令和2年3月19日判決言渡
平成30年(行ウ)第138号

情報非公開決定処分取消等請求事件

主1文
松原市長が平成30年3月8日付けで原告に対してした情報非公開決定のうち,別紙公開請求情報目録記載の情報を公開しないとした部分を取り消
す。
2
松原市長は,原告に対し,別紙公開請求情報目録記載の情報を公開する旨の決定をせよ。

3
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2
1
事案の概要
事案の要旨
本件は,原告が,松原市情報公開条例(平成11年松原市条例第21号。以下本件条例という。
)5条1項1号に基づき,本件条例上の情報公開の実施
機関である松原市長に対し,
平成29年度において,松原市が一般廃棄物の収集運搬業を無許可で行っていた事業者に対し,指導等を行った報告書,起案文書,無許可営業を行っていた事業者から提出された顛末書等,これらに関係する一切の書類の公開の請求(以下本件情報公開請求という。)をしたとこ
ろ,松原市長が,本件情報公開請求の対象となる文書に記録されている情報は本件条例6条3号ウに該当するとして,全部を公開しない旨の決定(以下全部非公開決定という。をしたため,

原告が,
同決定は違法であると主張して,
同決定のうち,別紙公開請求情報目録記載の情報(以下本件非公開情報と
いい,当該情報が記録された文書を本件非公開文書という。
)を公開しない
とした部分の取消しを求めるとともに,松原市長に対して本件非公開情報を公開する旨の決定をすることの義務付けを求める事案である。
2
本件条例の定め(甲1)
(1)

1条
この条例は,情報の公開を求める権利を明らかにして,市の保有する情報
の公開に関し必要な事項を定めることにより,
知る権利
の保障に資すると
ともに市民の市政への参加を推進し,もって市民本位の市政の発展に寄与することを目的とする。
(2)

2条
この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に
定めるところによる。
1号
実施機関

市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,

農業委員会,固定資産評価審査委員会,水道事業管理者,消防長及び議会をいう。
2号
情報

実施機関又は指定管理者が職務上作成し,又は取得した文書,図画
及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該実施機関又は指定管理者が組織的に用いるものとして実施機関又は実施機関に代わって指定管理者が保有しているもの(以下文書等という。)に記録されている情報をいう。
3号
公開

実施機関がこの条例の規定により,
情報を閲覧若しくは視聴に供し,

又はその写しを交付することをいう。
(3)

5条1項
次に掲げるものは,実施機関に対して,情報の公開(中略)の請求(以下公開請求という。)をすることができる。
1号
市の区域内に住所を有する者
2~5号(略)
(4)

6条
実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報については,情報の公開
をしないことができる。
1号
法人(国及び地方公共団体その他の公共団体(以下国等という。
)を除
く。
)その他の団体(以下法人等という。
)に関する情報又は事業を営む
個人の当該事業に関する情報であって,情報の公開をすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命,身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼす違法な若し
くは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。

2号(略)
3号
事務事業の執行過程において,実施機関が作成し,又は取得した情報であって,次に掲げるもの

ア,イ(略)

実施機関又は国等の機関が行う取締り,立入検査,許可,認可,試験,入札,交渉,渉外,争訟等の事務に関する情報であって,情報の公開をすることにより,当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすと認められるも

4号(略)
(5)

8条1項
実施機関は,公開請求に係る文書等に次の各号のいずれかに該当する情報
とそれ以外の情報とが合わせて記録されている場合において,これらを容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,当該該当する情報が記録されている部分を除いて,当該情報を公開しなければならな
い。
1号
第6条各号のいずれかに該当し,そのことを理由として公開されない情報2号(略)
3
前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)

本件情報公開請求
原告は,松原市の区域内に住所を有する者であるところ,平成30年2月
22日付けで,本件条例5条1項1号に基づき,本件条例上の実施機関である松原市長に対し,
平成29年度において,松原市が一般廃棄物の収集運搬業を無許可で行っていた事業者に対し,指導等を行った報告書,起案文書,無許可営業を行っていた事業者から提出された顛末書等,これらに関係する一切の書類の公開の請求(本件情報公開請求)をした(甲2)。
(2)

全部非公開決定
松原市長は,平成30年3月8日付けで,原告に対し,本件情報公開請求
の対象となる文書に記録されている情報は本件条例6条3号ウに該当するとして,全部を公開しない旨の決定(全部非公開決定)をし,原告は,その頃,同決定に係る通知書を受領した(甲3,弁論の全趣旨)。
(3)

本件訴えの提起等
原告は,平成30年5月30日付けで,全部非公開決定を不服として,松原市長に対し,
審査請求
(以下
本件審査請求
という。をした

(乙3)


原告は,
平成30年9月3日,
全部非公開決定は違法であると主張して,
本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)



松原市長は,平成31年1月18日付けで,本件審査請求に対し,本件
情報公開請求の対象となる文書に記録されている情報は本件条例6条3号ウに該当するものではないとした上で,その一部は,本件条例6条1号本
文に該当するなどとして,全部非公開決定を変更し,一部を公開する旨の裁決(以下本件裁決という。
)をした。
本件非公開文書には,本件裁決で非公開とすべきものとされた情報の一部が記録されている。すなわち,本件非公開文書には,松原市において廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和元年法律第37号による改正前の
もの。以下廃棄物処理法という。
)に違反して一般廃棄物収集運搬業を
無許可で行っていた事業者
(以下
本件事業者
という。の名前,

所在地,
電話及びFAX番号,設立年月,代表者名,従業員数,グループ企業,取得許可一覧,取引先,使用車両の種類と台数,様式(フォーム)等の本件非公開情報が記録されている。
(以上につき,乙3,弁論の全趣旨)


原告は,本件裁決を受けて,令和元年6月14日,本件訴えのうち,全
部非公開決定のうち本件非公開情報を除く情報の公開を求める部分の訴えを取り下げた(当裁判所に顕著な事実)

(4)
本件事業者に対する不起訴処分等
本件事業者は,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者である
ところ,松原市においては一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うための許可(廃棄物処理法7条1項)並びに浄化槽清掃業の許可(浄化槽法35条1項)を受けていなかったものの,他市においては上記各許可を受けていた(乙3)

なお,本件事業者は,浄化槽法違反の被疑事実について,平成31年4月5日付けで不起訴処分となった(乙4)

4
争点
(1)
(2)

本件非公開情報の本件条例6条1号括弧書き該当性(争点2)

5
本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性(争点1)

争点に関する当事者の主張
(1)

争点1(本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性)について
(被告の主張)

本件事業者は,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者であるところ,運搬範囲と運送経費等を勘案すれば,松原市域を営業エリアとしていると想定される業者は,松原市から10km圏内の事業者に限定されるところ,そのうち,被告が上記各事業の許可をしていない業者は,1
0km圏内で28業者,7km圏内で22業者,5km圏内で6業者という極めて少数の業者となるため,上記前提事実(3)ウの各情報のいずれか1つでも公開されれば,各事業者のホームページ等を検索することにより,本件事業者を特定することができる。

本件事業者は,全部非公開決定当時,廃棄物処理法違反の被疑者になっていたにすぎないのに,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定されると,既に有罪判決を受けたかのような誤解を与えるし,本件事業者と競争関係にある事業者が当該情報を利用してあたかも本件事業者が有罪判決を受けた業者であるかのように宣伝することで,本件事業者の公正な
競争上の地位を害するおそれがある。
また,本件事業者は,浄化槽法違反の被疑事実について不起訴処分となったため,本件事業者の不起訴事件記録は,刑事訴訟法47条本文又は同法53条の2により,非公開となっている。不起訴事件記録が非公開とされる趣旨が,被疑者等の名誉,プライバシーが侵害されるなどの弊害が生
じることを防止することにあるにもかかわらず,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定されると,本件事業者の名誉,信用,社会的評価及び事業活動が損なわれ,本件事業者の正当な利益が害される。とりわけ,松原市に参入可能な業者は本件事業者を含め32社と極めて少数の業者に限られていることからすれば,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定されると,本件事業者の公正な競争関係に大きな影響を及ぼし,本件事業者の正当な利益を害するものといわなければならない。

したがって,本件非公開情報は,公開されることによって本件事業者が特定され,本件事業者の権利,競争上の地位,その他正当な利益を害するものと認められるから,本件条例6条1号本文に該当する。
なお,原告は,本件事業者を特定することができたとしても,本件事業者はそのことによる社会的不利益は甘受すべきであると主張するが,同主
張は,本件事業者が廃棄物処理法に違反し有罪であることを前提とするものであり,失当である。
(原告の主張)

本件非公開文書は,本件事業者の企業情報が記載されているパンフレット又はホームページの該当ページを印刷したものと思われるところ,本件
非公開情報のうち,設立年月,資本金,取引銀行,従業員数,事業内容,取得許可一覧,使用車両,取引企業に関する情報,様式(フォーム)は,公開したとしても,直ちに本件事業者を特定できることにはならない。また,本件非公開情報のうち,取引銀行欄の銀行
,事業内容欄の一般廃棄物収集運搬業
,使用車両欄の台などの情報は一般的な記載であ

り,これらの情報を公開したとしても,本件事業者を特定することはできない。
したがって,本件非公開情報のうち上記各情報については,本件条例6条1号本文に該当しない。

今日では法令遵守が強く求められているところ,一般廃棄物の無許可収集運搬により廃棄物処理法に違反した本件事業者に関する情報は,たとえその情報を公開したことにより,本件事業者を特定することができたとしても,本件事業者はそのことによる社会的不利益を甘受すべきであり,そもそも正当な権利,競争上の地位,利益には該当しない。
また,本件条例6条1号本文所定の競争上の地位とは,法人等の公正な競争関係上の地位をいうところ,一般廃棄物の処理に関する責任は市
町村にあり,一般廃棄物処理業は,一般廃棄物処理計画に従って一般廃棄物処理の適正な運営が継続的かつ安定的に確保される必要性からそもそも自由競争に委ねられておらず,許可業者の濫立等によって事業の適正な運営が害されることのないよう,一般廃棄物処理業の需給状況の調整が図られる仕組みが設けられていることからすれば,一般廃棄物処理業者である
本件事業者には競争上の地位は認められる余地がないか,ほとんど認められない。
したがって,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文所定の当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものには該当しない。

(2)

争点2(本件非公開情報の本件条例6条1号括弧書き該当性)について
(原告の主張)
本件条例6条1号括弧書き所定の違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報とは,法の規定に違反しないまでも社会通念に照らして著しく妥当性を欠く事業活動をいうところ,本件非公開情報は,一般廃棄物の収集運搬業を無許可で行い廃棄物処理法に違反した本件事業者に関する情報であるから,これに該当する。また,廃棄物処理法は,生活環境の保全と公衆衛生の向上という目的を実現するために,一般廃棄物処理業につき許可制を採用しているところ,許可基準に違反した一般廃棄物処理業が行われた場
合,市町村の区域の衛生や環境が悪化する事態を将来し,ひいては一定の範囲で市町村の住民の健康や生活環境に被害や影響が及ぶ危険が生じ得る。したがって,本件非公開情報が仮に本件条例6条1号本文に該当するとしても,同号括弧書き所定の人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報に該当する。(被告の主張)
本件条例6条1号括弧書き所定の人の生命,身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動であるか否かは,一般廃棄物収集運搬業における許可制の趣旨等を根拠に,一般論として抽象的にその該当性を考えるのは適切ではなく,当該情報を公にすることにより保護される人の生命,健康及び財産等の利益と,これを公にしないことにより
保護される法人等の権利や利益との比較衡量によって判断すべきものと解されるところ,前者については,人の生命,身体又は健康を害する可能性が具体的かつ確実なものであることを要し,かつ特別な安全対策なしには社会的には存立が許されない事業活動を意味し,後者にあっては,人の財産若しくは生活に対し,具体的に重大な影響を及ぼす事業活動でこれを停止しなけ
ればならないものと意味するものと解される。
本件事業者は,松原市では浄化槽汚泥収集運搬業及び浄化槽清掃業の各許可を受けていないが,他市では上記各許可を受けており,収集運搬した浄化槽汚泥を正規の汚泥処理施設で処理しているため,人の生命,身体若しくは健康に対し危害を及ぼした事実や人の財産若しくは生活に重大な影響を及
ぼした事実もなく,
これらのおそれも認められないから,
本件非公開情報は,
本件条例6条1号括弧書きに該当しない。
第3
1
当裁判所の判断

争点1(本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性)について(1)

本件非公開情報が,
法人等に関する情報
(本件条例6条1号本文)に該

当することは明らかであるところ,
当該法人等(中略)の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(同号本文)
に該当するか否
かを検討するに当たり,まず,本件非公開情報を公開することにより,本件事業者を特定することができるか否かにについて検討する。
証拠(甲3,乙3,8)及び弁論の全趣旨によれば,①本件事業者は,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者であるところ,松原市においては一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うための許可(廃棄物処理法7条1項)並びに浄化槽清掃業の許可(浄化槽法35条1項)を受けていなかったが,他市においては上記各許可を受けていたこと,②本件事業者と同様に,上記各事業を営む業者であって,松原市において上記各事業の許可を
受けていない業者は,松原市(中心部)から10km圏内に位置する市や区域内に28業者,7km圏内に位置する市や区域内に22業者,5km圏内に位置する市や区域内に6業者が所在することが認められる。
そして,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者が,通常それらの各事業を営むことが想定される範囲は,当該事業者が所在する場所の近
隣地域に限られるから,本件事業者と同様の立場にある事業者の数は相当程度限られている。また,本件非公開情報は,いずれも各事業者のホームページ等から容易に把握することが可能な情報であるとともに,多数の項目に及んでいるため,ホームページ等の記載等と比較対照することにより,本件事業者を特定し得るといえる。さらに,原告が主張するように,本件非公開文
書が,本件事業者の企業情報が記載されているホームページ等の写しであるとすれば,当該ホームページ等の様式や各情報の記載位置などを比較対照することにより,より容易に本件事業者を特定し得るといえる。以上からすると,本件非公開情報は,いずれも公開されることで,本件事業者を特定することができるものといえる。

(2)

次に,
本件非公開情報が,
本件事業者を特定することができる情報に該当

するとして,以下,本件条例6条1号本文に該当するか否かについて検討する。

本件条例6条1号本文は,
当該法人等(中略)の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものの公開をしないことができる旨規定している。そして,これに該当すると認められるためには,単に当該情報が通常他人に知られたくないというだけでは足りず,当該情報が公
開されることによって,当該法人等の権利,競争上の地位その他の正当な利益,すなわち法的保護に値する当該法人等の権利等が害されることを要すると解するのが相当である。

上記(1)で説示したとおり,
本件非公開情報が公開された場合,
本件事業
者を特定することができるから,本件事業者が廃棄物処理法に違反し,許可を受けずに一般廃棄物の収集及び運搬を業として行っていたことが社会全体に認識されることとなり,その結果,本件事業者に対する社会的評価や信用等が一定程度低下するといった不利益を被ることが予想される。もっとも,法人等が事業活動を行うに当たっては各種法令を遵守するこ
とが当然に求められる。そして,廃棄物処理法は,一般廃棄物の収集及び運搬が市町村の住民の生活に必要不可欠な公共性の高い事業であり,その遂行に支障が生じた場合には,市町村の区域の衛生や環境が悪化する事態を招来し,ひいては一定の範囲で市町村の住民の健康や生活環境に被害や影響が及ぶ危険が生じ得るものであることなどから,市町村がその区域内
における一般廃棄物の収集及び運搬の実施に関する責務を負うものとしつつ,①当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること,②許可を求める申請の内容が市町村の定める一般廃棄物処理計画(同法6条参照)に適合するものであること,③その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に,かつ,継続して行うに足りるものとして環
境省令で定める基準に適合するものであることなど,同法7条5項所定の厳格な要件を満たす場合に限り,事業者は市町村長から許可を受けて一般廃棄物の収集又は運搬を業として行うことができるものとしている。これに加え,
許可を受けずに一般廃棄物の収集又は運搬を業として行った者は,5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する旨
(同法25条1項1号)法人の場合であれば3億円以下の罰金刑を,
科する旨(同法32条1項1号)規定されており,無許可で一般廃棄物の
収集又は運搬を業として行うことについて,同法が厳しい態度で臨んでいることに鑑みれば,事業者が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行うに当たっては,同法を遵守し,許可を得てこれを行うべきであるとする社会一般からの要請は,強いものであるというべきである。
このように,廃棄物処理法が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行う
ことにつき厳格な要件を定めて許可にかからしめるものとし,その違反に対しては厳しい態度で臨んでいることに加え,本件事業者が許可区域外の松原市で浄化槽の清掃等を行っていたことは本件事業者も認めていること(乙3,公開された文書の1枚目,3枚目)
,本件事業者は,あくまでも自
ら法令遵守を怠ったことによって社会的評価や信用等が一定程度低下する
などの不利益を被ることが予想されるにすぎないことからすれば,本件事業者が上記不利益を被ったとしてもそれは本件事業者において受忍すべき範囲内のものといわざるを得ない。
そうすると,本件非公開情報が公開されることによって,本件事業者の権利,競争上の地位その他正当な利益,すなわち法的保護に値する権利等
が害されるということはできないから,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文所定の当該法人等(中略)の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものに該当するとはいえないというべきである。

被告は,本件事業者は,全部非公開決定当時,廃棄物処理法違反の被疑者になっていたにすぎないのに,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定されると,既に有罪判決を受けたかのような誤解を与えるし,本件事業者と競争関係にある事業者が当該情報を利用してあたかも本件事業者が有罪判決を受けた業者であるかのように宣伝することで,本件事業者の公正な競争上の地位を害するおそれがある旨主張する。しかしながら,行政機関から指導等を受けることと有罪判決を受けることとは全く異質のものであることが明らかであることからすると,本件非公開情報が公開されることによって,本件事業者が,被告から指導等を受けた事業者であると認識される以上に,有罪判決を受けた事業者であるという誤解を招くおそれがあることを想定することは相当ではない。また,被告が主張するよう
に,競争関係にある事業者があたかも本件事業者が有罪判決を受けた業者であるかのように宣伝したとしても,本件事業者は,そのようなことはないことを容易に反論し得るし,名誉棄損に該当するとして不法行為責任等を追及し得ることからすると,そもそも被告が主張するような事態に至る可能性は乏しいものといわざるを得ず,その競争上の地位を害されるおそ
れが客観的に認められるとはいえない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
また,被告は,不起訴事件記録が非公開とされる趣旨が,被疑者等の名誉,プライバシーが侵害されるなどの弊害が生じることを防止することにあるにもかかわらず,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定され
ると,本件事業者の名誉,信用,社会的評価及び事業活動が損なわれ,本件事業者の正当な利益が害される旨主張する。しかしながら,本件条例1条の目的に加え,上記イで述べた廃棄物処理法が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行うことにつき許可制を採用し,厳格な態度で臨んでいることに鑑みれば,本件事業者が浄化槽違反の被疑事実について不起訴処分を
受けたことを踏まえても,本件事業者の名誉,社会的評価等を法的に保護すべきであるとはいえないから,被告の上記主張は,採用することができない。

よって,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文に該当しないから,全部非公開決定のうち本件非公開情報を公開しないとした部分は違法であり,取消しを免れない。

2
本件義務付けの訴えについて
(1)

上記1で説示したとおり,全部非公開決定のうち本件非公開情報を公開
しないとした部分は違法であり,取り消されるべきであるところ,本件条例6条柱書は,実施機関は,同条各号のいずれかに該当する情報については,情報の公開をしないことができる旨規定しており,本件条例には,当該情報に非公開情報が記録されていない場合に,あえてこれを非公開とする処分が
できるとする行政裁量を定めた規定はない。そして,上記1で説示したとおり,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文に該当せず,また,その内容も当該事業者のホームページ等に法人の概要として掲載されている公開情報であること(乙3の4頁)からすれば,これが同条各号に該当することをうかがわせる事情も存在しない。

したがって,本件において,本件条例上の実施機関である松原市長は,本件非公開情報を公開する旨の決定をすべきことが明らかであると認められる。
(2)

よって,行政事件訴訟法37条の3第5項に基づき,松原市長に対し,本
件非公開情報を公開すべき旨を命ずる判決をするのが相当である。
3
結論
以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとして,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

松永栄治
裁判官

宮端謙一
裁判官

渡邊直

別紙
公開請求情報目録

松原市長が平成30年3月8日付けで原告に対してした情報非公開決定により公開しないとされた文書のうち平成31年1月18日付け裁決書
(松企第〇号)

61枚目と特定されたもの(ただし,末尾の行に2016/12/27と記録された部分を除く。)に記録された情報
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