判例検索β > 平成28年(行ウ)第268号
事件番号平成28(行ウ)268
裁判年月日令和2年2月27日
裁判所名東京地方裁判所
分野行政
裁判日:西暦2020-02-27
情報公開日2020-10-12 16:00:36
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令和2年2月27日判決言渡
平成28年(行ウ)第268号

都市計画道路事業放射第23号線等事業認可取消

請求事件
主1文
本件訴えのうち,別紙1原告目録記載5,6及び10の原告らの請求に係る部分をいずれも却下する。

2
その余の原告らの請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由

第1

請求
関東地方整備局長が平成27年12月3日付けで被告参加人に対してした別紙3事業目録記載の都市計画事業の認可を取り消す。

第2

事案の概要
本件は,国土交通大臣から権限の委任を受けた関東地方整備局長(処分行政庁)が,都市計画法59条2項に基づき,平成27年12月3日付けで,被告
参加人(以下参加人という。)の申請に係る道路の整備に関する都市計画事業(施行者を参加人とし,事業地を東京都世田谷区(住所省略)とする,別紙3事業目録記載の事業。以下本件事業という。)の認可(以下本件事業認可という。)をしたところ,本件事業の事業地(以下本件事業地という。)内の不動産について権利を有し,あるいは,本件事業地内に居住し又
は過去に居住していた原告ら18名が,被告を相手に,本件事業認可の違法を主張して,その取消しを求める事案である。
1
関係法令等の定め
本件に関する法令等の一覧は,別紙4-1記載のとおりであり(同別紙で定
義した略語は本文においても用いる。),それぞれの関係法令等の定めは,別紙4-2から4-13までに記載のとおりである(漢字はいずれも新字体で表記した。以下,関係法令等以外についても同じ。)。
都道府県が都市計画事業を行う場合には,国土交通大臣の認可を受けなければならず(都市計画法59条2項。なお,認可権限は地方整備局長に委任されている〔同法85条の2,同法施行規則59条の3参照〕。),事業の内容が都市計画に適合することが,上記認可の要件の一つとされている(同法6
1条1号)。そのため,都市計画事業の認可は,当該事業に係る都市計画が適法にされていることを前提としている。
なお,都市計画法が施行された昭和44年6月14日の時点において既に旧都市計画法の規定により決定されていた都市計画は,都市計画法の規定による相当の都市計画とみなされる(都市計画法施行法2条)。

2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

本件事業の概要等
本件事業の概要は,別紙3事業目録記載のとおりである。具体的には,都市計画道路(都市計画施設としての道路。なお,旧都市計画法との関係においては道路を街路と表記することがある。)である東京都市
計画道路幹線街路放射第23号線(以下放射第23号線といい,その余の幹線街路放射線についても同様に表記する。)及び同幹線街路環状第7号線(以下環状第7号線といい,その余の幹線街路環状線について
も同様に表記する。)のうち,東京都世田谷区(住所省略)を起点とし,杉並区(住所省略)を終点とする区間に,延長1005m,幅員25mから33m(標準幅員は25m)の道路(以下本件道路という。)を整備することを内容とするものである。
放射第23号線は,港区(住所省略)を起点とし,渋谷区及び世田谷区
を経て杉並区(住所省略)(武蔵野市との境)に至る,延長約12kmの幹線道路である。本件道路の大部分は放射第23号線を構成するものであり,その余は環状第7号線を構成するものであるが,環状第7号線も対象に含まれているのは,
放射第23号線との交差箇所
(本件道路の起点付近)
を一部拡幅することになるためである。
放射第23号線における本件道路の位置は,
別紙5-1記載のとおり
(赤
色の事業化区間)であり,本件道路の概形は,別紙5-2記載のとお
り(オレンジ色の事業化予定範囲)である。本件道路は,放射第23号線と環状第7号線が交差するA交差点(世田谷区(住所省略))を起点とし,東京都水道局B給水所の施設用地(以下B給水所用地という。)及びその西方の民有地を経て,C交差点において甲州街道(国道第20号線)
と交差し,
ここで井の頭通り
(C交差点以北の部分をいう。
以下同じ。


に接続し,終点の杉並区(住所省略)に至ることとされている。
(以上につき,甲1,3,4)

なお,東京都の特別区内(以下区部という。)における都市計画道路は,放射線(放射状に延びる道路),環状線(環状に延びる道路)及び補助線によって構成されており,その計画総延長は約1764kmである
が,このうち完成しているのは平成24年度末時点で約1127km(全体の約6割)にとどまっている(甲3)。
(2)

当事者
原告らの住所は別紙1原告目録記載の各肩書地のとおりである(以下,同
目録に付された各原告の番号を原告番号といい,同番号をもって各原告を特定する。)ところ,原告番号1~4,7~9及び11~18の原告ら15名は,本件事業地のうち土地を収用する部分(別紙3の4参照。以下本件収用地という。)内の建物に居住しており,さらに,そのうち原告番号1~4,11,13,15及び17の原告ら8名は,本件収用地内の土地又
は建物について所有権等の権利を有している(以下,上記原告ら15名のうち,
居住しかつ所有権等の権利を有している8名を
地権者原告ら
といい,
居住しているが所有権等の権利を有していない7名を
居住原告ら
という。。

他方,原告番号5,6及び10の原告ら3名は,かつては本件収用地内の建物に居住していたが,
現在は本件事業地から離れた場所
(新宿区,
渋谷区)
に住所を移している(以下,上記原告ら3名を非居住原告らという。)。なお,地権者原告ら及び居住原告らが居住しているのは,おおむね別紙5
-2記載の
事業化予定範囲
のうち赤線で囲われた範囲
(Dより南であり,
かつ,B給水所用地より西である地域)内である。
(以上につき,甲5~10〔枝番号を含む。〕,55,59の4,乙3,E)
(3)

本件道路に関する都市計画
昭和21年の都市計画決定
東京復興都市計画街路について,内閣総理大臣による旧都市計画法3条に基づく決定(以下昭和21年決定という。)があったとして,昭和21年3月26日付け戦災復興院告示第3号による告示がされた。放射第23号線は,昭和21年決定に係る東京復興都市計画街路の一つであるが,
当時の都市計画は以下のとおりであり,本件道路はその対象に含まれていなかった。(甲11,12)
(ア)

終点

世田谷区(住所省略)

(ウ)

主な経過地

渋谷区(住所省略)

(エ)

赤坂区(住所省略)

(イ)
起点

幅員

40m

昭和41年の都市計画決定
東京都市計画街路について,建設大臣による変更決定(旧都市計画法3条に基づくもの。以下昭和41年決定といい,昭和21年決定と併せ
て本件各都市計画決定という。)があったとして,昭和41年7月30日付け建設省告示第2428号による告示がされた。昭和41年決定によって,放射第23号線に係る都市計画は以下のとおり変更され,本件道路もその対象に含まれることとなった。
(甲13,14,丙1~3,11。
以下,昭和41年決定による放射第23号線に係る都市計画のうち,本件道路に係る部分を本件都市計画という。)
(ア)

港区(住所省略)

終点

杉並区(住所省略)

(ウ)

主な経過地

渋谷区(住所省略)

(エ)

幅員

25m

(オ)
起点

(イ)

延長

1万2030m


昭和45年の都市計画決定
東京都市計画道路について,参加人による都市計画法(昭和50年法律第66号による改正前のもの。)21条に基づく変更決定(以下昭和45年決定という。)があったとして,昭和45年8月13日付け東京都告示第869号による告示がされた。昭和45年決定によって,放射第23号線に係る都市計画は以下のとおり変更されたが,本件道路に係る部分
(本件都市計画)
に変更は加えられていない。
なお,
昭和45年決定以降,
本件事業認可に至るまで,本件都市計画は変更されていない。(丙10の1~3)
(ア)

終点

杉並区(住所省略)(現在のF)

(ウ)

主な経過地

世田谷区(住所省略)

(エ)

幅員

25m

(オ)

延長

1万2080m

(カ)
港区(住所省略)

(イ)

起点

構造

地表式

(4)

本件事業認可
参加人は,平成27年10月26日,関東地方整備局長に対し,①交通の円滑化,②安全で快適な歩行空間の確保及び③広域避難場所への避難路の確保による地域の防災性の向上を理由として,都市計画法59条2項に基づき,自らを施行者とする本件道路の整備に関する事業(本件事業)の認可の申請をした(甲1,26,乙2~4)。

関東地方整備局長は,平成27年12月3日付けで,本件事業を認可する旨の決定をし(本件事業認可),同月24日にこれを告示した(甲2,乙1)。

(5)

本件訴えの提起
原告らは,平成28年6月20日,本件訴えを提起した。

3
争点
(1)

本件訴えの適法性(原告適格の有無)

(2)

本件事業認可の適法性

アイ4
昭和41年決定の実体上の適法性


本件各都市計画決定の手続上の適法性

昭和41年決定後の事情との関係

争点に関する当事者等の主張の要旨
争点に関する当事者及び参加人の主張の要旨は,別紙6記載のとおりである(同別紙で定義した略語は本文においても用いる。)。

第3
当裁判所の判断
当裁判所は,本件訴えのうち原告番号5,6及び10の原告ら(非居住原告ら)の請求に係る部分は,原告適格を欠く不適法な訴えであるから却下すべきものであり,その余の原告らの請求については,本件事業認可の前提となる都市計画決定が手続上も実体上も適法にされたものであり,また,同決定後の社会・経済情勢の変化を踏まえても,本件都市計画に基づき本件事業認可をした
ことは適法であるといえるから,棄却すべきものであると判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。
1
争点(1)(本件訴えの適法性〔原告適格の有無〕)について
(1)

行政事件訴訟法9条は,
取消訴訟の原告適格について規定するが,
同条1

項にいう当該処分の取消しを求めるにつき
法律上の利益を有する者
とは,
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,最高裁平成24年(行ヒ)第156号同25年7月12日第二小法廷判決・裁判集民事244号43頁参照)。
(2)ア

本件収用地内の土地又は建物につき所有権等の権利を有する原告ら(地

権者原告ら)が本件事業認可の取消しを求める原告適格を有することは,明らかである(被告及び参加人においてもこれを争っていない。。)
イ(ア)

次に,本件収用地内の土地又は建物につき所有権等の権利は有して
いないが本件収用地内の建物に居住している者(居住原告ら)については,都市計画事業の認可(本件事業認可)が告示されると,本件収用地内の土地の収用が可能となり
(都市計画法69条参照)当該土地上の建

物は移転されることとなるから,その結果,当該建物に居住することができなくなり,その居住の利益を侵害されることとなる。したがって,居住原告らは,自己の権利若しくは法律上の利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者として,本件事業認可の取消しを求める
原告適格を有するものと解される。
(イ)

他方,本件収用地内の土地又は建物につき所有権等の権利を有して
おらず,本件収用地内の建物に居住もしていない者(非居住原告ら)については,自己の権利若しくは法律上の利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのあることをうかがわせる事情は見当たらないから,本件事業認可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される(なお,非居住原告らは,現在,本件事業地から離れた場所に住所を移している〔前提事実(2)〕から,本件事業地の周辺に居住する住民として本件事業により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあると認める余地もない。。

この点,非居住原告らは,本件収用地内には同原告らの実家があり,そこには同原告らの部屋とその所有物が残されているなどと主張する。
しかしながら,非居住原告らは,本件収用地内の土地又は建物につき所有権等の権利を有するものではなく,同地内の建物にその所有物が保管されているとしても,同地内の土地の収用によって,その所有物に係る所有権が直ちに侵害されるものでもないから,非居住原告らの上記主張は,同原告らの原告適格を基礎付けるものではない。


以上によれば,本件訴えのうち,地権者原告ら(8名)及び居住原告ら(7名)
の請求に係る部分は,
いずれも適法に提起されたものである一方,
非居住原告ら(3名)の請求に係る部分は,原告適格を欠く不適法な訴えであるというべきである。

2
争点(2)ア(本件各都市計画決定の手続上の適法性)について
(1)ア

都市計画法は,
都市計画事業の認可の要件の一つとして,
事業の内容が

都市計画に適合することを規定している(61条1号)から,都市計画事業の認可が適法であるためには,その前提となる都市計画が適法であることを要するものと解される。
放射第23号線は,昭和21年決定に係る都市計画道路(東京復興都市計画街路)の一つであるが,本件道路は,その都市計画の範囲に含まれておらず,昭和41年決定によって初めて整備の対象とされたものであって,その後,
本件道路に係る都市計画
(本件都市計画)
は変更されていない
(前
提事実(3))。これらに照らすと,本件事業認可をするための要件である都
市計画との適合性の判断の対象となるべき都市計画は,昭和41年決定による本件都市計画であると認められるから,本件事業認可が適法であるためには,その前提となる昭和41年決定が適法であることが必要である。なお,
昭和21年決定は本件道路の整備について定めたものではないが,昭和41年決定は,昭和21年決定を前提とし,同決定で定められた放射第23号線について都市計画の内容を変更するものであるため,昭和21年決定に手続上の重大な違法がある場合には昭和41年決定の適法性に
影響が及ぶ可能性も否定し得ないことから,以下においては,原告らの主張に鑑み,昭和21年決定を含めた本件各都市計画決定につき,手続上の適法性を検討することとする。

旧都市計画法3条は,都市計画決定の手続要件について,都市計画…ハ…主務大臣之ヲ決定シ内閣ノ認可ヲ受クヘシと規定しており,その文
言上,
①主務大臣の決定及び②内閣の認可を手続要件としている。そこで,
本件各都市計画決定に係る手続上の適法性を検討するに当たっては,上記各要件との関係が問題となる。
(2)

主務大臣の決定に関し
昭和21年決定について
(ア)

太平洋戦争終結直後の昭和20年11月5日,戦災復興院官制が公
布,施行され,戦災復興院が設置された(乙5,12)。戦災復興院は,戦災地の復興を一元的に推進する専門の機関として,内閣総理大臣の管理に属するものとして設けられたものであって,戦災地ニ於ケル市街地計画及其ノ施行ニ関スル事項をその所掌事務の一つとするものであった(戦災復興院官制1条1号)。そして,戦災復興院の一部局である計画局計画課が戦災復興都市計画及同事業ニ関スル事項をつかさどることとされていた(戦災復興院官制4条,戦災復興院分課規程3条,4条1号)。

以上によれば,戦災復興院官制施行下における戦災地の復興に係る都市計画(戦災復興都市計画)は,戦災復興院が所掌するものであって,その主務大臣は戦災復興院を管理する内閣総理大臣であったと解される。(イ)

昭和21年決定は,戦災復興院官制施行下においてされたものであ
り,かつ,戦災復興都市計画である東京復興都市計画街路に関するものであるから(前提事実(3)ア),上記(ア)のとおり,これを所掌するのは戦災復興院であり,その主務大臣は内閣総理大臣であった。
そして,昭和21年決定があった旨の告示(戦災復興院告示第3号)が戦災復興院総裁心得により行われ,同告示において東京復興都市計画街路左ノ通内閣総理大臣の決定アリタリとされていること(前提事実(3)ア,甲12)から,昭和21年決定が主務大臣である内閣総理大臣
によってされたことが認められる。
(ウ)a

この点,
原告らは,
東京復興都市計画街路に係る都市計画決定は,

戦災復興院官制1条1号に規定された戦災地ニ於ケル市街地計画及其ノ施行ニ関スル事項には含まれないから,これを所掌するのは,戦災復興院ではなく,都市計画ニ関スル事項を所掌していた内務
省であった(内務省官制7条1号)旨を主張する。しかしながら,戦
災復興院官制1条1号に規定する
戦災地ニ於ケル市街地計画
とは,
戦災地の復興に係る都市計画(戦災復興都市計画)を意味するものと解するほかなく,戦災復興院官制の施行に伴い,内務省が所掌していた都市計画ニ関スル事項のうち戦災地の復興に係るものが戦災復
興院に移管されたと解するのが相当である。そうすると,太平洋戦争
による戦災地である東京都の区部の復興のために道路を整備する都市計画である東京復興都市計画街路は,
戦災地の復興に係る都市計画
(戦
災復興都市計画)にほかならず,上記戦災地ニ於ケル市街地計画
に該当し,戦災復興院の所掌事務に属するものというべきである。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。

b
また,原告らは,昭和21年決定に係る決裁文書が証拠として提出されていない以上,同決定が主務大臣によってされたものと認めることはできないと主張する。
しかしながら,上記(イ)のとおり,昭和21年決定について内閣総理大臣の決定がされた旨の告示が,戦災復興都市計画を所管する戦災復興院によりされている上,その告示に先立って東京復興都市計画街路決定の件につき昭和21年2月27日に都市計画東京地方委員会に付議され,同年3月2日に同委員会における議決も経ている(甲11)のであるから,昭和21年決定が主務大臣である内閣総理大臣によりされたことを認めるのに十分である。原告らが指摘する決裁文書は,70年以上前に作成されたものであって,作成当時その保存が
法律上要求されていたものでもないから,本件訴訟の係属前に廃棄されていたとしても不自然とはいえない。
なお,この点について,原告らは,昭和21年決定より前の都市計画決定に係る決裁文書が現存していることを指摘し,昭和21年決定に係る決裁文書が存在しないことは不自然であると主張するが,原告
らが現存すると指摘する文書(甲15,31の2,32の2)は,いずれも都市計画法3条所定の内閣の認可に係る文書(内務大臣の請議及び閣議決定に係る文書)であって,内閣総理大臣の決定に係る内部の決裁文書とはその保管状況が異なることも想定されるから,上記指摘の文書の現存をもって,昭和21年決定に係る決裁文書が存在しな
いことが不自然であるとはいえない。
以上によれば,昭和21年決定に係る決裁文書が存在しないことをもって,内閣総理大臣の決定に関する上記(イ)の認定を左右することはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。

昭和41年決定について
(ア)

昭和22年法律第238号により,内務省が昭和22年12月31日限り廃止されるとともに,内務省官制や戦災復興院官制等の勅令も廃止され,戦災復興院も廃止された(乙7)。そして,昭和23年1月1日に設置された建設院が,同年7月10日に建設省へと改組され,都市計画及び都市計画事業に関する事務を管理し,並びに都市計画事業を実施すること等がその所掌事務として定められた(乙8,9)。このような経緯の下,昭和41年決定当時も都市計画に関する事務は建設省が所管していたのであるから,同決定の主務大臣は建設大臣であったと認められる。
そして,
昭和41年決定があった旨の告示
(建設省告示第2428号)

が建設大臣によって行われていること(前提事実(3)イ)から,昭和41年決定が主務大臣である建設大臣によってされたことが認められる。(イ)

この点,原告らは,昭和41年決定に係る決裁文書(甲13)の大臣欄に建設大臣の押印及び署名がされていないことを理由に,建設大臣の決定があったと認めることはできない旨主張する。
しかしながら,上記大臣欄には手書きで了と記載されている
ところ,かかる記載は建設大臣において決裁内容を了解したことを意味するものといえる(なお,行政府省において作成される決裁文書に決裁者の署名又は押印を求める法令ないし行政規則は見当たらない。)。また,上記決裁文書は,東京都市計画街路の変更,追加及び廃止

等について,次のとおり審議会に付議し原案どおり議決答申されたときはこれを決定し告示してよろしいかを伺うものであるところ,上記決裁文書に添付された付議案や同文書上の答申済官報掲載済等
の記載に照らせば,上記決裁の対象とされた原案のとおり建設大臣名で東京都市計画地方審議会に付議され,昭和41年6月9日に同審議会の
答申を得て,同年7月30日付けで告示(建設省告示第2428号)がされたことが認められるから,このことからも,建設大臣までの決裁を経た上で所定の手続が行われたことが認められる。
以上によれば,昭和41年決定に係る上記決裁文書における大臣
欄に建設大臣の署名及び押印がないことをもって,建設大臣の決定に関する上記(ア)の認定を左右することはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。


小括
以上によれば,本件各都市計画決定は,いずれも主務大臣によってされたものであるから,この点に関し手続要件を欠く違法はない。

(3)

内閣の認可に関し
旧都市計画法3条は,
前記(1)イのとおり,
内閣の認可を都市計画決定の
手続要件としているところ,本件各都市計画決定は内閣の認可を受けていない。
もっとも,臨時措置法(昭和18年3月17日施行)1項1号は,法律により認可を要する事項について,勅令の定めるところにより認可を要し
ないこととすることができる旨規定しており,さらに,臨時措置法の委任を受けた臨時特例(同年12月27日施行)は,同法の規定に基づく旧都市計画法の特例として,旧都市計画法3条の規定による内閣の認可につき,認可を受けることを要しないものと規定している。すなわち,臨時措置法及びその委任を受けた臨時特例の上記各規定に係る修正により,旧都市計
画法3条による内閣の認可を受けずに都市計画決定を行うことができることとされていたのであるから,上記各規定の適用下で行われた本件各都市計画決定について内閣の認可を受けなかったことが同条の手続要件に違反するものではない。
イ(ア)

この点,原告らは,臨時措置法1項が大東亜戦争ニ際シ行政簡素化ノ為必要アルトキと定めていることなどを根拠に,同法は太平洋戦争(大東亜戦争)の終結と同時に失効しているから,本件各都市計画決定に適用される余地はないと主張する。
しかしながら,臨時措置法1項は,大東亜戦争ニ際シ行政簡素化ノ為必要アルトキハ勅令ノ定ムル所に依リ…左ニ掲ゲル措置ヲ為スコトヲ得として,同項1号において認可…ヲ要セザルコトトスルコトと定めているものであるところ,これらの文言によれば,認可等を不要とする勅令を定めるための要件として大東亜戦争ニ際シ行政簡素化ノ為必要アルトキであることを規定したものと理解することができる。また,臨時措置法の立法過程における貴族院及び衆議院での法案説明(甲18,乙14)によれば,許可や認可等を要する事項が激増して複雑多
岐となっていた当時の実情から,もともと行政事務を刷新強化する必要性が高まっていたことに加え,戦時下において行政機関職員の定員が縮減されたことも相まって,行政手続の簡素化を図ることが喫緊の課題となっていたことがうかがわれる。そして,このような行政手続の簡素化の要請は戦争終結時までに限られるものではなく,戦後の復興の過程に
おいても,復興に関わる多数の行政事項についてその手続を簡素化する必要性が継続することは容易に想定し得るものといえるから,臨時措置法がその効力を太平洋戦争の終結時までに限定する趣旨で立法されたものと解することはできない。
現に,
臨時措置法の終期を明示する規定や,
その失効に伴う経過措置を定める規定は設けられておらず,このことか
らしても,同法をいわゆる限時法であると解することは困難である。このように,臨時措置法は,太平洋戦争中から戦後にかけての行政手続の簡素化を目的とするものである一方,その終期についてはあらかじめ法令で定められていなかったものであるところ,同法及びその委任を受けた各勅令(勅令効力令により,日本国憲法施行の際現に効力を有す
る勅令の規定は,一部の例外を除き,政令と同一の効力を有するものとされた。)につき,その効力廃止の時期をいつとするかは,特例措置の存続の必要性や廃止後の行政手続の整備等の諸般の事情に照らし判断されるべきものであるから,国会及び内閣の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そして,臨時措置法は,平成3年法律第79号により廃止され,臨時特例は昭和44年政令第158号により廃止されたから,それぞれ廃止までの間は有効に存続していたものと解される。本件各都市計画決定は,いずれも,臨時措置法及び臨時特例の廃止前に行われたものであるから,上記アのとおり内閣の認可はその手続要件ではなかったものである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。

(イ)

また,原告らは,臨時措置法が太平洋戦争の終結に伴い失効してい
たことを前提に,
旧憲法下で行われた昭和21年決定との関係において,
勅令にすぎない臨時特例は,それ単独で旧都市計画法3条の規定を変更することが許されないから(旧憲法9条ただし書),旧都市計画法3条の規定どおり内閣の認可が手続要件となる旨を主張する。
しかしながら,
上記(ア)で説示したとおり,臨時措置法は平成3年法律第79号により廃止されるまで有効に存続していたのであるから,
原告らの上記主張は,
その前提を欠き失当である。
なお,この点に関し,原告らは,勅令で法律の内容を変更することを許容する臨時措置法は,それ自体が旧憲法9条ただし書に違反して無効
であり,その委任を受けた臨時特例も無効である旨主張する。しかしながら,臨時措置法は,あくまでも同法の委任に基づく勅令をもって,法律によって許可や認可等を要することとされている事項につき別段の措置を行うことを許容しているものであって,勅令のみをもってこれを行うことを許容しているものではないから,命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得スと定める旧憲法9条ただし書の規定に違反しないことは明らかである。
(ウ)

さらに,原告らは,昭和41年決定との関係において,そもそも臨
時特例は,命令効力法1条にいう法律を以て規定すべき事項を規定するものに当たるから,同条に定める昭和22年12月31日の経過により失効していると主張する。
しかしながら,臨時特例は,法律である臨時措置法の委任を受けたも
のである以上,命令効力法1条にいう法律を以て規定すべき事項を規定するものに当たらないから,臨時特例が昭和22年12月31日の経過により失効したものとは解されない。臨時特例は,勅令効力令1項により,政令と同一の効力を有するものとして,同日の経過後も存続していたものというべきである。したがって,原告らの上記主張は採用す
ることができない。

小括
以上によれば,旧都市計画法3条のうち内閣の認可を要するとする部分は,本件各都市計画決定に適用されるものではないから,この点に関し本件各都市計画決定について手続要件を欠く違法はない。

3
争点(2)イ(昭和41年決定の実体上の適法性)について
(1)

認定事実
前提事実等並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認め
られる。

本件に関する都市計画の経緯
(ア)
a
昭和21年決定
内閣総理大臣は,太平洋戦争によって被害を受けた東京都の市街地復興を図るため,都市計画東京地方委員会の審議を経た上で,昭和21年3月頃,東京復興都市計画街路(幹線街路)を整備する旨の都市
計画決定(昭和21年決定)をした。戦災復興院総裁心得は,同月26日付けで,昭和21年決定をした旨を告示するとともに,その関係図面を縦覧に供した。
昭和21年決定は,都心及び副都心に集中する傾向のある交通を分散させることによって,交通能率の増進を図るとともに,街路の幅員を拡張することによって,将来の交通量の増大に備え,緑地帯と併せて都市の防災に寄与することを目的としたものであった。

(以上につき,前提事実(3)ア,前記2(2)ア,甲11,12)b
放射第23号線及び環状第7号線は,いずれも昭和21年決定によって整備することとされた都市計画道路(幹線道路)である。放射第23号線については,赤坂区(住所省略)
(現在の港区(住所省略))
を起点とし,G(アメリカ合衆国の軍用団地。現在のH。)を経て,
終点である世田谷区(住所省略)(現在のA交差点)において環状第7号線に接続するとの計画であった(前提事実(3)ア,丙16)。(イ)
a
昭和41年決定
建設大臣は,昭和21年決定の対象とされなかった地域(環状第6号線と荒川放水路とを結ぶ線の外側に存する区部の地域並びに三鷹市
及び武蔵野市の一部)について,能率的かつ経済的な街路網を整備すべく再検討を行い,東京都市計画地方審議会の審議を経た上で,昭和41年7月頃,従前の東京都市計画街路について変更(89路線),追加(92路線)等をする旨の決定(昭和41年決定)をした。建設大臣は,同月30日付けで,昭和41年決定をした旨を告示するとと
もに,
その関係図書を縦覧に供した。
(前提事実(3)イ,
前記2(2)イ,
甲13,14,丙1~3)
b
放射第23号線については,昭和21年決定ではA交差点(環状第7号線との接続部)を終点としていたが,昭和41年決定によって,
同交差点から武蔵野市との境である杉並区(住所省略)(現在のF)まで延伸して整備することとされた。
これは,武蔵野市のI浄水場とB給水所を結ぶ水道管を埋設している道路(いわゆる水道道路)である井の頭通りが,区部と武蔵野市方面を結ぶ道路として利用されていたところ,放射第23号線から井の頭通りへ直接つながる道路がなかったため,J方面から放射第23号線を通ってA交差点に至った車両は,同交差点を右折して環状第7号
線を北上し,次いでK交差点を左折して甲州街道を進行し,更にC交差点を右折して井の頭通りに入る(甲州街道ルートを利用する)場合が多く,これが交通渋滞の原因となっていたことから,A交差点と井の頭通りを結ぶ本件道路を新たに設け,甲州街道を経由しなくても井の頭通りに入ることができるようにするとともに,井の頭通りの幅員
を拡げ,環状第8号線を越えて武蔵野市との境に至るまでを幹線道路として整備しようとしたものであった。
なお,本件道路の線形の決定に当たっては,地方公営企業である東京都水道局が管理するB給水所用地等の公有地の利用が検討され,本件事業地(国道及び都道を除いて約2万2000㎡)のうち約930
0㎡について公有地が利用されることとなった。また,本件道路を含む延伸部の幅員は25mと定められたが,これは,平面交差点等の交通の緩和を図るのに十分な幅員の確保を目的としたものであった。(以上につき,前提事実(3)イ,丙16,17)
(ウ)

昭和45年決定
参加人は,昭和45年8月,従前の東京都市計画道路を変更する旨の
決定(昭和45年決定)をし,東京都知事は,同月13日付けで,同決定をした旨を告示し,関係する都市計画の図書を縦覧に供した。
昭和45年決定は,鉄道の高架化事業等に伴う東京都市計画道路の変更を目的とするものであり,放射第23号線についても,小田急線の高架化事業に必要な変更が加えられたが,本件道路に係る計画(本件都市計画)に変更は加えられなかった。
(以上につき,前提事実(3)ウ,丙10の1・2)

都市計画道路の見直しと第1次事業化計画
参加人は,区部の都市計画道路について,社会・経済情勢の変化や地域の環境の移り変わりなどに伴う見直しを行うこととし,昭和53年5月に
東京都市計画道路再検討の基本方針及び基準を策定し,さらに,昭和54年12月には上記基本方針及び基準に基づく見直しの素案である東京都市計画道路再検討の素案を策定した。このような過程を経て,参加人は,昭和56年に,今後10年間(昭和56年度~昭和65年度〔平成2年度〕)で着手又は完成すべき事業化路線を選定する(以下第1次事業化計画という。)とともに,変更の必要があると認められた都市計画道路については,これらに係る都市計画を変更する旨の決定を行った(昭和56年2月10日告示)。
上記見直しの結果,放射第23号線は,本件道路を含む全線について必要性が確認され,環状第6号線から第7号線までの区間(本件道路に係る
区間は含まれない。)が第1次事業化計画に係る事業化路線として選定されることとなった。なお,放射第23号線に係る都市計画は,上記決定による変更の対象とはされておらず,
これ以降も,
本件事業認可に至るまで,
放射第23号線に係る都市計画の変更はされていない。
(以上につき,前提事実(3)ウ,丙4,12,13)


第2次事業化計画
参加人は,第1次事業化計画の目標年次(平成2年度)が経過したことから,平成3年に,今後10年間(平成3年度~平成12年度。なお,計画終了年度は後に平成15年度に変更された。)で着手又は完成すべき事
業化路線を新たに選定した(以下第2次事業化計画という。)。なお,放射第23号線のうち,本件道路に係る区間は,第2次事業化計画に係る事業化路線としては選定されなかった。(丙4)

整備方針の策定と第3次事業化計画(丙4)
(ア)

整備方針の策定
参加人は,第2次事業化計画の目標年次である平成15年度に至って
も,いわゆるバブル経済の崩壊による経済情勢の悪化等の影響により,事業化への着手率が5割にとどまるなど当初の目標に及ばなかったことから,特別区と合同して,都市計画道路全体の新たな整備方針を策定することとした。
そして,
①区部における都市計画道路の必要性の検証
(以
下必要性の検証という。),②広域的,地域的な課題の解決に資す
る路線として,今後12年間(平成16年度~平成27年度)に優先的に整備すべき路線の選定
(以下,
かかる路線を
優先整備路線
といい,
選定された優先整備路線に係る事業化計画を第3次事業化計画という。)についての調査検討を進め,平成16年3月,これらを取りまとめた区部における都市計画道路の整備方針(以下平成16年整備方針という。)を策定した。平成16年整備方針は,東京圏全体が目指すべき将来都市像の実現に向けた基本理念を定めるとともに,これを具体化するための4つの基本目標(①活力〔都市再生と国際競争力の向上〕,②安全〔安全で安心できるまちの実現〕,③環境〔快適な環境の創出〕,④暮らし〔生活の質
の向上〕)を設定している。
(イ)
a
平成16年整備方針における必要性の検証
検証の枠組み
平成16年整備方針における必要性の検証は,区部の都市計画道路(完成区間及び事業中の区間を除く。以下同じ。)を対象に,4つの
基本目標に照らした課題の解決に資すると考えられる諸要素を評価項目とすることにより行われた。
具体的には,4つの基本目標のうち活力,
安全及び環境
に係る評価項目((a)自動車交通の混雑緩和への貢献,(b)都市再生,拠点整備の推進,(c)都市間物流機能の向上,(d)震災時の甚大な被害が想定される地域の防災性の向上,
(e)延焼遮断帯の形成,
安全な避難
路の確保,
(f)地球温暖化の抑制への貢献)
を抽出項目とするとともに,

残りの
暮らし
に係る評価項目
((g)バス交通を支える道路網の形成,
(h)居住環境地区の形成,
(i)他の都市基盤施設との連携,
(j)地域のま
ちづくりの支援)をチェック項目とした上で,抽出項目及びチェック項目のいずれにも該当しない路線は必要性がないものとし,都市計画の見直しの候補とするというものであった。

b
検証結果
抽出項目のうち,まず上記(a)自動車交通の混雑緩和への貢献への該当判定が行われ,推計される将来交通量(平成62年時点の交通量として予測されるもの。)につき,幹線街路の最低限の規格である2車線の道路の交通容量の半分(1日当たり6000台)に満たない
区間を非該当としたところ,72の非該当路線が抽出された。
続いて,その余の抽出項目(上記(b)~(f))への該当判定により28の非該当路線が抽出され,さらに,チェック項目(上記(g)~(j))への該当判定により5の非該当路線(いずれも補助線)が抽出されたため,
これら5路線が都市計画の見直しの候補とされることとなった。

他方,その余の路線については,都市計画道路として整備する必要性が依然としてあるものとされた。
c
本件道路についての検証結果
本件道路を含む放射第23号線については,将来交通量が1日当た
り4万9000台と推計され(丙14),基準となる1日当たり6000台を大きく上回ることとなった。
そのため,
本件道路については,
自動車交通の混雑緩和への貢献の抽出項目に該当し,他の抽出項
目及びチェック項目への該当性を検討するまでもなく,都市計画道路として整備する必要性があるものとされた。
(ウ)
a
第3次事業化計画
優先整備路線の選定方針
上記(イ)のとおり必要性が認められた路線の中から,第3次事業化計画の対象となる優先整備路線の選定が行われた。
選定に当たっては,区部の都市計画道路を広域的な課題に資する路線(幅員16m以上で起点及び終点が複数区にまたがる路線)と
地域的な課題に資する路線
(その余の路線)に区分した上で,
広域的な課題に資する路線
については,
整備優先度の定量的な評価を,
地域的な課題に資する路線については,特別区のマスタープラン
等との整合性も図りつつ,地域の課題を踏まえた検討をそれぞれ行うこととされた。

また,広域的な課題に資する路線に係る定量的な評価に当たっ
ては,4つの基本目標に照らした課題の解決に資すると考えられる諸要素(①自動車交通の円滑化〔(a)交通混雑の緩和,(b)渋滞ポイントの解消,(c)走行性の向上〕,②防災性の向上〔(a)骨格防災軸の形成,(b)主要延焼遮断帯の形成,(c)木造密集地域における防災
性向上〕,③物流を支える道路のネットワークの形成,④まちづくりの支援)を評価項目とし(上記①,②については小項目〔(a)~(c)〕を一つの評価項目とする。),そのうち2項目以上を満たすものを優先整備路線として取り扱うことが原則とされた。
なお,上記①(a)交通混雑の緩和の評価項目については,平成1
1年度道路交通センサス(以下道交センサスという。)における
混雑度1.25を上回る路線の混雑緩和に資するか否かによって,同⒝渋滞ポイントの解消の評価項目については,東京都第3次渋滞
対策プログラムにおいてボトルネックとされた箇所(渋滞のポイントとなる箇所。以下ボトルネック箇所という。)の混雑緩和に資す
るか否かによって,同⒞走行性の向上の評価項目については,道
交センサスにおける混雑時平均旅行速度が時速17.5km(区部の
平均値)を下回る路線の混雑緩和に資するか否かによって,それぞれ判定をすることとされた。
b
優先整備路線の選定結果
上記aの方針に基づく選定の結果,広域的な課題に資する路線
として106路線,地域的課題に資する路線として102路線が

優先整備路線に選定された(総延長13万3165m)。
c
本件道路についての選定結果
本件道路を含む放射第23号線は,幅員16m以上で起点及び終点が複数区にまたがる路線に当たるため,広域的な課題に資する路線」に区分された。そこで,定量的な評価が行われたところ,本件道路は,道交センサスにおける混雑度1.25を上回り,かつ,混雑時平均旅行速度が時速17.5kmを下回る東京所沢線(放射第6号線。中野区(住所省略))の混雑緩和に資すると評価されたため,「交通混雑の緩和及び走行性の向上の評価項目に該当すると判定された。また,
本件道路は,
環状第7号線と甲州街道との交差点
(K交差点)

といったボトルネック箇所の混雑緩和に資すると評価されたため,渋滞ポイントの解消の評価項目にも該当すると判定された。
以上の判定経緯により,本件道路は,2項目以上の評価項目にも該当することとなったため,優先整備路線として選定された。

新たな整備方針の策定と第4次事業化計画(丙18)
参加人は,特別区及び多摩地域(26市及び2町)と合同して,平成28年3月,東京における都市計画道路の整備方針(以下平成28年整備方針という。)を策定した。平成28年整備方針では,①平成16年整備方針における必要性の検証に相当する
将来都市計画道路ネットワークの検証
が行われるとともに,
②今後10年間(平成28年度~平成37年度)で優先的に整備すべき路
線が選定された(以下第4次事業化計画という。)。もっとも,本件道路については,第3次事業化計画で既に事業化されていたため,第4次事業化計画に係る検証及び選定の対象とはならなかった。

本件事業認可
(ア)

参加人は,平成27年10月26日,関東地方整備局長に対し,第
3次事業化計画において優先整備路線に選定されていた本件道路の整備に関する事業(本件事業)の認可の申請をした(前提事実(4)ア)。(イ)

本件事業は,骨格幹線道路である放射第23号線においてミッシン
グリンク(接続に至っていない箇所の意味)となっている区間に,延長1005m,幅員25m(標準)から33m(A交差点付近)の本件道路を整備するものであり,その内容として,2車線の車道(中央帯,停車帯及び自転車走行空間を含む。とその両側に歩道を設けるとともに,)
併せて沿線の電線類を地中化し,街路樹を植栽するというものである。本件事業の効果として,①本件道路の整備により自動車交通の円滑化
が図られること,②歩道及び自動車走行空間を設けることによって歩行者や自転車の通行の安全性,快適性が向上すること,③延焼遮断帯が形成されるとともに,緊急車両のアクセスや避難路としての機能がより一層充実し,地域の防災性が向上することなどが期待されていた。
他方,本件道路の大部分には中央帯(1.5m)が設けられる予定で
あるため,B給水所以西の地域(L)においては,本件道路が整備されることにより,東西の往来が従来よりも不便になる可能性が指摘されていた(甲23,24)。
(以上につき,前掲のほか,前提事実(1),(4)ア,甲3,4)(ウ)

関東地方整備局長は,平成27年12月3日付けで,本件事業を

認可する旨の決定をし(本件事業認可),同月24日にこれを告示した(前提事実(4)イ)。

(2)

判断枠組み
旧都市計画法は,手続要件とは異なり,都市計画決定の実体的要件につい
ては規定していないものの,都市計画の定義を交通,衛生,保安,防空,経済等ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ福利ヲ増進スル為ノ重要施設ノ計画と定めている(1条)。そして,都市施設は,その性質上,土地利用や交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めなければならないものであるから,都市計画において都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般
の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって,裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,
当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,
その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,
又は,
事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,
判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解す
るのが相当である(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同18年11月2日第一小法廷判決・民集60巻9号3249頁参照)。
そこで,以下,上記の見地に立って,昭和41年決定において本件都市計画を定めた建設大臣の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるかについて検討する。
(3)

検討
認定事実ア(ア)bのとおり,放射第23号線は,昭和21年決定によって整備することとされた都市計画道路(幹線道路)であって,同決定の計画では,港区(住所省略)
(地名は現在のもの。以下同じ。)を起点とし,
Jを経て,終点であるA交差点において環状第7号線に接続するものとされ,本件道路は含まれていなかったが,その後,昭和21年決定の対象と
されなかった地域について街路網の再検討がされた結果,昭和41年決定において本件道路を含む計画へと変更されたものである。その変更の理由は,武蔵野市のI浄水場とB給水所を結ぶいわゆる水道道路である井の頭通りが,区部と武蔵野市方面を結ぶ道路として利用されていたところ,放射第23号線から井の頭通りへ直接つながる道路がなかったため,J方面
から放射第23号線を通ってA交差点に至った車両は,同交差点を右折して環状第7号線を北上し,次いでK交差点を左折して甲州街道を進行し,更にC交差点を右折して井の頭通りに入る(甲州街道ルートを利用する)場合が多く,これが交通渋滞の原因となっていたことから,A交差点と井の頭通りを結ぶ本件道路を新たに設け,甲州街道ルートを利用しなくても
井の頭通りに入ることができるようにしたものである。
そして,本件道路の線形の決定に当たっては,B給水所用地等の公有地の利用が検討されており,B給水所の配水池に交差せずにB給水所用地を最大限に利用できる線形が選択されている
(認定事実ア(イ)b,
甲22)

また,B給水所用地以西の線形については,C交差点に向けて最短と考え
られる線形が選択されている(別紙5-2参照)。加えて,本件道路の幅員(標準25m)についても,平面交差点等の交通の緩和を図るのに十分な幅員を確保するものとして合理的なものといえる。
以上のとおり,本件道路に係る都市計画(本件都市計画)は,①昭和21年決定の対象とされなかった地域につき街路網の再検討を行う中で,井の頭通りが区部と武蔵野市方面を結ぶ道路として利用されており,かつ,放射第23号線から井の頭通りへ直接つながる道路がなかったため,甲州
道路ルートを利用する車両が多く交通渋滞の原因となっていたという当時の交通実態等を踏まえ,かかる課題を解決するべく,放射第23号線の終点であったA交差点と井の頭通りを結ぶ本件道路を新たに設ける必要性が認められたものであり,また,②本件道路の線形は,公有地の利用を検討した上で,起点と終点とを最短で結ぶ合理的なものが選択されており,
その幅員についても合理的なものといえるから,本件都市計画はその必要性及び合理性が認められるものというべきである。したがって,昭和41年決定において本件都市計画を定めた建設大臣の判断につき,重要な事実の基礎を欠き,又はその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことを認めるに足りる事情があるとはいえないから,その裁量権の範囲を逸脱
し又はこれを濫用したものと認めることはできない。

原告らの主張について
(ア)

本件道路に係る必要性の評価が不合理であるとの主張について
原告らは,Jから放射第23号線を通ってA交差点に至った車両が,
本件道路の終点であるC交差点に行くには,①A交差点を右折して環状第7号線を北上し,更にK交差点を左折して甲州街道を進行するか(甲州街道ルート),②A交差点を直進し,突き当たりにあるB給水所用地を右回りに迂回する(給水所ルート)ことで足り,本件道路を新設する必要性はない旨主張する。

しかしながら,甲州街道ルートは,3度の右左折を必要とする点で,これを要しない本件道路に比べて経路としての合理性が劣ることは明らかな上,上記アで説示したとおり,本件道路は,甲州街道ルートを利用する車両が多いことによる交通渋滞を解消するという課題の解決のためにその整備の必要があるとされたものであるから,甲州街道ルートの存在をもって,本件道路を整備する必要性が否定されるものではない。また,現に給水所ルートが存在するにもかかわらず甲州街道ルートを
利用する車両が多いという交通実態に照らせば,給水所ルートが甲州街道ルートよりも利便性の乏しい経路であり,上記の課題解決に資するものでないことは明らかである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)
a
合理的な代替案を考慮していないとの主張について
原告らは,公有地を利用した合理的な代替案(原告代替案)を考慮しないで行われた昭和41年決定は,建設大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であると主張する。
都市施設の区域は,当該都市施設が適切な規模で必要な位置に配置
されたものとなるような合理性を持って定められるべきものであり,民有地に代えて公有地を利用することができるときには,そのことも上記の合理性を判断する一つの考慮要素となり得るものと解される(平成18年9月最判参照)。これを本件についてみるに,上記アで説示したとおり,本件道路の線形の決定に当たっては,B給水所用地
等の公有地の利用が検討されており,B給水所の配水池に交差せずにB給水所用地を最大限に利用できる線形が選択されているのであるから,本件都市計画について,民有地に代えて公有地を利用することができるにもかかわらずこれを考慮しなかった違法があるといえないことは明らかである。

原告らの主張は,本件道路よりも民有地の利用が少なくてすむ原告代替案が存在することをもって,本件都市計画の必要性ないし合理性を否定するものと解される。そこで,以下,かかる主張の当否について検討する。
b
給水所ルート改修案について
原告らが主張する給水所ルート改修案は,
B給水所用地の北東角
(別
紙7-1記載1の赤い矢印の箇所)の左折角度が緩やかになるよう改
修工事を行った上での給水所ルートを本件道路の代替案とするものである。しかしながら,そもそも給水所ルートが甲州街道ルートと比べて利便性に乏しい経路であり,甲州街道ルートの利用による交通渋滞という課題の解決に資するものでないことは,上記(ア)で説示したとおりであって,このことは,原告ら主張の改修工事を行ったとしても
異なるものではない。したがって,給水所ルート改修案が本件都市計画の必要性ないし合理性を否定するような代替案といえないことは明らかである。
c
現道利用案について
原告らが主張する現道利用案は,本件現道(別紙7-1記載1の赤
色の道路。)に接続する道路を,B給水所用地を利用して新たに整備するというものである。しかしながら,本件現道は幅員が9~11mしかない上,原告らが主張する経路はいずれも複数回の右左折を伴うものであって(別紙7-1記載2(1),(2)参照),甲州街道ルートと比べて利便性に乏しいといわざるを得ず,これにより甲州街道ルート
の利用による交通渋滞という課題の解決に資するものでないことは明らかであるから,現道利用案が本件都市計画の必要性ないし合理性を否定するような代替案といえないことは明らかである。
d
ラウンドアバウト案について
原告らが主張するラウンドアバウト案は,B給水所用地の四方の各側道を内方向に拡幅し,右回りの一方通行道路を設けるというものである(なお,原告らが主張するラウンドアバウトは,一般的に考えられているラウンドアバウト〔道路交通法4条3項所定の環状交差点〕とは,そもそもの性質を異にするものである〔丙5〕。)。
しかしながら,原告らが主張する経路は,上記cの現道利用案と同様に,幅員が9~11mしかない本件現道を利用し,かつ,複数回の
右左折を伴うものであって(別紙7-1記載3参照),甲州街道ルートと比べて利便性に乏しいといわざるを得ず,これにより甲州街道ルートの利用による交通渋滞という課題の解決に資するものでないことは明らかであるから,ラウンドアバウト案が本件都市計画の必要性ないし合理性を否定するような代替案といえないことは明らかである。
e
直結案(原告新道案及び原告地下案)について
原告らが主張する直結案は,B給水所用地を利用して,C交差点に直結する別紙7-2記載の緑色の道路を地上又は地下に建設するというものである。

しかしながら,上記アで説示したとおり,本件道路の線形については,B給水所の配水池に交差せずにB給水所用地を最大限に利用できる線形が選択されているのに対し,直結案の経路は,B給水所の1号配水池と交差しており,かかる経路を実現するためには,公共施設であって代替の利かない同配水池を移設するか,又は大幅に改修する必
要があるのだから,直結案が合理的な代替案であるということはできない。
また,直結案のうち原告地下案(B給水所用地内から,C交差点を越えて井の頭通りに入った地点まで本件トンネルを建設するというもの。)については,甲州街道を右左折する場合には,給水所ルートを
ほぼそのまま本件トンネルの側道として利用するというのであるから,同案では,結局のところ,国道である甲州街道と交差しないこととなるに等しく,幹線道路である放射第23号線の整備の在り方として合理的であるとはいえない。
したがって,直結案が本件都市計画の必要性ないし合理性を否定するような代替案であると評価することはできない。
f
小括
以上に検討したとおり,原告代替案は,いずれも本件道路の必要性ないし合理性を否定するものではなく,原告らの上記主張は採用することができない。

(ウ)
本件道路がもたらす地域社会への悪影響を看過しているとの主張

について
a
原告らは,本件道路が完成すると,地域住民がそれまで利用していた公民館や公園が利用できなくなるなど,地域社会が分断されることになる上,地域の中小の商工業者にとっては商圏が縮小することになり,その経営が圧迫されることになるなどと主張する。

しかしながら,本件都市計画におけるように道路が新設される場合に,その地域における往来等に影響が及ぶ可能性は否定し得ないとしても,そのような事態は,道路の整備に伴って通常生じ得るものであって,都市計画法が当然に予定するところのものであるから,その事態の存在をもって直ちに当該道路に係る都市計画の合理性が否定され
るものではない。
そして,本件道路については上記アのとおりその新設の必要性が認められる上,本件道路は幅員25mであって横断歩道等によって横断することが可能であり,その新設による地域の往来等への影響も一定の範囲内といえる程度のものであることをも考慮すると,原告ら主張
の事情により本件都市計画の合理性が否定されると認めることはできない。
b
また,原告らは,本件道路によって東西方向の往来が制限されることになるため,災害時の避難や,断水時にB給水所に出向いて給水を受けることが困難になるなどと主張する。
しかしながら,本件道路によって東西の往来が不可能となるものではないことは,上記aで説示したとおりである。また,本件道路によ
る災害時の避難等への影響という観点から見ても,幹線道路である放射第23号線の一部となる本件道路が新設されることにより,避難経路が確保されるほか,
救援物資の搬送や救急車両の移動も容易になり,
さらに,本件道路の25mという幅員のため火災時の延焼防止効果も期待することができるから,地域全体としてみれば,災害時における
避難や人命の救助,災害の拡大防止等に資するものといえる。したがって,原告ら主張の事情により本件都市計画の合理性が否定されると認めることはできない。

以上のとおりであるから,昭和41年決定において本件都市計画を定めた建設大臣の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したもので
あるとはいえず,本件事業認可の前提となる同決定は,実体上も適法である。
4
争点(2)ウ(昭和41年決定後の事情との関係)について
(1)ア

前記2及び3において検討したとおり,本件事業認可の前提となる昭
和41年決定は手続上も実体上も適法にされたものであるから,同決定が違法にされたものであることを根拠として本件事業認可が違法である旨をいう原告らの主張は理由がない。
そうであるところ,原告らは,昭和41年決定がその決定当時において適法であったとしても,その後の社会・経済情勢の変化を踏まえると,本
件事業認可の時点においては,①本件道路を整備する必要性は失われ,②代替案の合理性及び実現可能性は高まり,さらに,③本件都市計画が地域住民にもたらす犠牲はより一層著しいものとなっていたのだから,本件都市計画は都市計画法21条1項に基づき変更されるべき状態にあったというべきであり,このことを看過して行われた本件事業認可は違法である旨主張する。

この点,都市計画決定に係る判断は,決定当時の社会・経済情勢等を基礎として,将来の見通しも考慮し,政策的な観点からされるものであるから,
当該都市計画決定後に事情の変更等が生じたとしても,
そのことから,
一旦適法に定められた都市計画が遡って違法になるものということはできない。しかしながら,都市計画決定後に相当の長期間を経過し,当該都市計画の基礎とされた社会・経済情勢に著しい変化があったこと等により,
当該都市計画の必要性や合理性がおよそ失われ,都市計画法21条1項に基づき当該都市計画を変更すべきことが明白であるといえる事情が存するにもかかわらず,これが変更されないまま事業認可申請に至ったものであることが一見して明らかであるなどの特段の事情がある場合には,同法61条1号に基づき事業の内容が都市計画に適合しているかを審査する国土
交通大臣等において,当該都市計画が変更されないままの状態でその事業の認可をすることは,同法の趣旨に照らし許されないものというべきであり,
これに違反してされた事業認可は違法となると解するのが相当である。そこで,上記の観点から,昭和41年決定後の社会・経済情勢の変化を踏まえ,本件事業認可の時点において,本件都市計画の必要性や合理性が
およそ失われ,本件都市計画を変更すべきことが明白であるといえる事情が存するか否かについて,以下検討する。
(2)

本件道路を整備する必要性が失われたとの原告らの主張について
原告らは,
本件道路を整備する必要性は,
長らく不透明であったところ,
本件事業認可の時点に至っては,もはや失われていたとみるのが相当であると主張する。
しかしながら,区部の都市計画道路については,昭和56年以降,都市計画決定後の社会・経済情勢の変化等を踏まえた見直しが行われ,事業化未了の路線についてはおおむね10年ごとに整備計画(第1次~第4次事業化計画)が定められて順次事業化が進められ(認定事実イ~オ),これらのうち第3次事業化計画に係る平成16年整備方針の策定に当たって
は,4つの基本目標に照らした課題の解決に資する諸要素(例えば,自動車交通の混雑緩和への貢献等)を評価項目として,必要性の検証が行われたところ,本件道路についてもその必要性が肯定されている(認定事実エ(イ))。また,第3次事業化計画の対象となる優先整備路線の選定において,本件道路は,課題の解決に資するものとして設定された評価項目のう
ち,交通混雑の緩和,走行性の向上,渋滞ポイントの解消と
いう3つの評価項目に該当すると評価され,優先整備路線に選定されたものである(認定事実エ(ウ))。本件道路が上記渋滞ポイントの解消の評価項目に該当するものとされた理由は,環状第7号線と甲州街道との交差点(K交差点)といったボトルネック箇所の混雑緩和に資すると評価さ
れたものであるから,昭和41年決定当時において解決すべきものとされていた課題(甲州街道ルートを利用する車両が多いことによる交通渋滞を解消すること)は,第3次事業化計画が定められた平成16年当時も依然として課題として認識されていたことが認められる。そして,その後,本件事業認可に至るまでの間に,上記の交通事情等に有意な変化があったこ
とは,証拠上うかがわれない。
以上によれば,昭和41年決定において本件都市計画を定める根拠とされた本件道路を整備する必要性については,本件事業認可の時点においても失われていないものというべきである。

以上に対し,原告らは,平成16年整備方針における必要性の検証について,検証過程を認めるに足りる証拠はないから,その検証結果は信用することができないと主張する。しかしながら,必要性の検証の枠組み(4つの基本目標に対応する抽出項目及びチェック項目に該当するか否かで必要性を判定するというもの。
認定事実エ(イ)a)
は,
参加人提出に係る
区部における都市計画道路の整備方針(丙4)から明らかであるし,その内容も合理的なものということができる。また,本件道路を含む放射第23号線について推計される将来交通量が1日当たり4万9000台であり,基準となる1日当たり6000台を大きく上回ることから,自動車交通の混雑緩和への貢献の抽出項目に該当するとされたものであり(認定事実エ(イ)c),その検証過程に不合理な点は見当たらない。したがって,原
告らの上記主張は採用することができない。
ウ(ア)

原告らは,本件都市計画の必要性が本件事業認可の時点までに失わ
れていたことの根拠として,①参加人が,平成16,17年頃の時点において,地域住民に対して本件道路の整備時期は不明であると説明していたこと,②参加人以外の他の行政主体(国〔財務省〕,世田谷区等)が,本件事業が実施されないことを前提とした行動を取っていたこと,③参加人が説明していた本件道路の予測交通量が最終的に当初の3分の1以下にまで減少したことなどを指摘する。
(イ)

しかしながら,上記①(整備時期が不明である旨の説明)について
は,本件道路を優先整備路線に選定した第3次事業化計画が定められたばかりの平成16,17年頃に,本件都市計画の必要性を否定するような説明がされたとは認め難い。仮に,本件道路の整備時期が不明であるとの説明がされたのだとしても,これまで事業化計画において選定された路線が必ずしも目標年次までに着手に至るものでなかったこと(例えば第2次事業化計画の着手率は5割にとどまるものであった。認定事実
エ(ア))などを踏まえ,事業化に着手する具体的な時期が未定であるという趣旨で説明したものと解されるから,本件都市計画の必要性が失われていたことの根拠となる事情には当たらない。
(ウ)

また,
上記②
(本件事業の不実施を前提とする他の行政主体の行動)

については,本件道路に係る都市計画権者は参加人なのであって,参加人以外の他の行政主体が本件事業の不実施を前提とするかのような行動を取ったからといって,本件都市計画の必要性が失われていたことの根拠となるものではない。
(エ)

そして,上記③(本件道路の予測交通量)については,証拠(甲6
6,67,丙14)によれば,本件道路を含む放射第23号線について推計される将来交通量(平成16年に推計が実施された1日当たりの台数)は,平成27年時点が6万8000台,平成37年時点が6万5000台,平成62年時点が4万9000台であるが,これらのうち最も少ない平成62年時点の将来交通量であっても基準となる1日当たり6000台を大きく上回っていることは,
認定事実エ(イ)のとおりである。
原告らは,参加人が平成26年12月に将来交通量について1日1万9
000台と説明した旨主張し,Eも同旨の供述をするほか,同説明に関して作成されたとされるメモ(甲68の3)にもこれに沿う記載があるが,将来交通量の推計は基準となる年度等によって異なるものであるから,仮に,参加人が上記のような説明をしたのだとしても,1万9000台という将来交通量がいつを基準年度としたものであるか(平成62
年度か,それ以外か)が不明である以上,平成62年度を基準とした将来交通量が平成16年に実施された推計と平成26年に実施された推計とで異なることとなるのか否かも不明であるといわざるを得ない。また,
上記説明における1万9000台という将来交通量を前提としても,基準となる1日当たり6000台を上回ることに変わりはなく,いずれに
しても,本件都市計画の必要性が本件事業認可の時点で失われていたことの根拠となるものではない。
(オ)

したがって,原告らが指摘する上記①~③の事情は,いずれも本件
都市計画の必要性が本件事業認可の時点で失われていたことを根拠付けるものとはいえない。

以上に検討したところによれば,本件事業認可の時点において,本件都市計画の必要性が失われていたと認めることはできないから,その必要性
が失われていたことを前提に本件事業認可が違法である旨をいう原告らの主張は,採用することができない。
(3)

原告代替案の合理性及び実現可能性が高まっていたとの原告らの主張に
ついて

原告らは,道路の敷設技術や給水所施設の建築技術が向上したこと,B給水所の改修工事が進行していたことなどの事情の変化を指摘して,原告代替案は,本件事業認可の時点で見れば,昭和41年決定当時以上に,合理的で実現可能性が高いものになっていたと主張する。
a
給水所ルート改修案,現道利用案及びラウンドアバウト案について原告代替案のうち,給水所ルート改修案,現道利用案及びラウンドア
バウト案については,
前記3(3)イ(イ)b~dで説示したとおり,
そもそ
も甲州街道ルートの利用による交通渋滞という課題の解決に資するものではなく,このことは,原告らが指摘する事情の変化を踏まえても何ら異なるものではない。
b
直結案について
原告代替案のうち直結案については,B給水所の1号配水池の移設又は大幅な改修を要するものであるところ(前記3(3)イ(イ)e),この問題は,技術の向上等によって直ちに解決されるものではない。また,本件事業認可の時点においてB給水所の改修計画が進行していたこと(甲
22)を踏まえても,同計画は既設2号池の撤去と新2号池の新設,既設1号池の撤去と新1号池の新設等を内容とするものであって,改修の前後でその構造を大きく異にするものでないことに照らせば,これらの配水池の機能を維持する形で直結案に係る道路(地上の道路又は本件トンネル)
を整備することが可能であったとは直ちに認め難い。
そもそも,
B給水所を維持しつつ,その施設用地を最大限に利用するとの観点の下で決定された本件道路の線形の合理性(前記3(3)ア)が,原告ら主張の
ような事情によって否定されるものとはいえない。
また,直結案のうち原告地下案についても,国道である甲州街道と交差しないという問題(前記3(3)イ(イ)e)が残る以上,本件事業認可の時点においても,合理的な代替案といえるものではない。

原告らは,上記アの主張に関連し,参加人が,都市計画法6条1項に基づきおおむね5年ごとに行うものとされている基礎調査として公有地の位置,区域,面積及び利用状況(同法施行規則5条7号)についての調査を行う義務を負っているにもかかわらず,公有地であるB給水所用地の位置,区域,面積及び利用状況について,適切な調査を行っていなかった旨主張する。

しかしながら,
前記3(3)アで説示したとおり,
本件道路の線形は公有地
であるB給水所用地を最大限に利用することを考慮して決定されたものであって,本件事業認可直近の調査(平成25年度から平成26年度にかけて実施)に至るまで,同用地の位置,区域,面積及び利用状況に変化はなかったのであるから,その間にB給水所用地に係る基礎調査が行われて
いなかったとしても,本件都市計画の必要性及び合理性に影響を及ぼすものとはいえない。

以上に検討したところによれば,原告代替案は,本件事業認可の時点においても,本件都市計画の必要性及び合理性に影響を及ぼすものとなって
いたと認めることはできないから,原告らの原告代替案に関する上記主張は採用することができない。
(4)

本件道路の整備が地域住民に著しい犠牲を強いるものになっていたとの
原告らの主張について
原告らは,本件事業認可当時の事情として,①本件道路の整備に伴い退去を求められる住民の多くが高齢者である,②退去に当たっては遠方への転居が避けられず,特に,借地権に基づいて居住している住民については,土地収用に係る損失補償金(所有権に係る補償金の6割程度)のみでは現在の借地と同等の土地を購入することができないから,郊外への転居を余儀なくされる,③高齢者である住民にとって,見ず知らずの土地で新たに生活を始めることは極めて困難であり,人道的見地からも許されるものではないなどと
して,本件道路の整備は地域住民に著しい犠牲を強いるものになっていたと主張する。
しかしながら,都市計画法は,都市計画事業のための土地等の収用を当然の前提としており(69条),そのために本件都市計画についても,公有地であるB給水所用地を最大限に利用できるように本件道路の線形が定められ
ているのであって(前記3(3)ア),本件都市計画がその必要性及び合理性を備えたものとして適法に都市計画決定されたことを前提に,当該土地等に応じた損失補償の下で収用の対象とされるのであるから,本件都市計画が地域住民に対して同法が予定している以上の負担を課すものであるということはできない。そして,本件都市計画については,昭和41年決定がされてから
平成27年12月に本件事業認可がされるまでに約50年が経過しているところ,本件都市計画の必要性及び合理性の基礎となる事情について基本的に変化が認められないことは上記(2)及び(3)において説示したとおりであり,地域住民の負担についても,基本的に昭和41年決定当時と異なるものではないというべきである。

原告らの主張は,昭和41年決定に係る告示がされてから長期間にわたり本件都市計画が事業化されなかったため,かかる状態が続くものと期待して高齢になるまで居住し続けた住民に対し,予想外の負担を生じさせることをいうものと解される。しかし,多数の都市計画道路が計画されている東京の区部について,社会・経済情勢の変化等を踏まえて順次事業化が進められてきたこと(前提事実(1)イ,認定事実イ~オ)に照らせば,当該道路に係る事業化の着手に至るまでに相応の期間を要することは想定されていたという
ことができ,加えて,本件道路は平成16年に定められた第3次事業化計画において優先整備路線に選定されていることからも,具体的な時期は不明であってもいずれ事業化に着手されることは容易に予測されたものといえる(原告らは,上記の予測を妨げるべき参加人の説明や国等の行動があった旨を主張するが,
この点については前記(2)ウ(イ)で説示したとおり,
採用する

ことができない。)。
したがって,本件事業認可の時点において本件道路の整備が地域住民にもたらす負担の内容及び程度を考慮しても,本件都市計画の必要性及び合理性が否定されるものではない。
(5)

小括
上記(2)から(4)のとおり検討したところによれば,昭和41年決定後の社
会・経済情勢の変化を踏まえても,本件事業認可の時点において,本件都市計画の必要性や合理性がおよそ失われ,本件都市計画を変更すべきことが明白であるといえる事情が存していたと認めることはできない。
したがって,本件都市計画に基づく本件事業認可は,適法である。
第4

結論
以上によれば,本件訴えのうち,原告番号5,6及び10の原告ら(非居住原告ら)の請求に係る部分は原告適格を欠き不適法であるから,これらを却下することとし,その余の原告らの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄
却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部
裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官

村松悠史
裁判官

松原平学
(別紙1省略)
(別紙2省略)
(別紙5-1省略)
(別紙5-2省略)
(別紙7-1省略)
(別紙7-2省略)

(別紙3)
事1業目録
施行者の名称
東京都(参加人)

2
都市計画事業の種類及び名称
東京都市計画道路事業幹線街路放射第23号線及び幹線街路環状第7号線
3
事業施行期間
自至4
平成27年12月24日
平成35年3月31日

事業地
収用の部分

東京都世田谷区A,M及びL並びに杉並区(住所省略)

使用の部分

東京都世田谷区(住所省略)及び杉並区(住所省略)
以上

(別紙4-1)
関係法令等の定め

別紙

関係法令等の名称

証拠

4-2

都市計画法(大正8年法律第36号。昭和24年法律第

乙10

163号による改正前のもの及び昭和42年法律第7

20

5号による改正前のもの。両者に実質的な差異はないた
め,以下,併せて旧都市計画法という。)
4-3

都市計画法(昭和42年法律第103号)

4-4

都市計画法施行法

4-5

都市計画法施行規則

4-6

戦災復興院官制(昭和20年勅令第621号。昭和22
年法律第238号による廃止前のもの。以下同じ)

4-7

戦災復興院分課規程

4-8


5
12

乙12

内務省官制(明治31年勅令第259号。昭和23年勅
令第116号による改正前のもの。以下同じ)

4-9

許可認可等臨時措置法(平成3年法律第79号による廃

乙22

止前のもの。以下臨時措置法という。)
4-10

都市計画法及同法施行令臨時特例(昭和42年政令第3

乙11

45号による改正前のもの。以下臨時特例という。)の1~5
4-11

大日本帝国憲法(以下旧憲法という。)

4-12

日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効
力等に関する法律(以下命令効力法という。)

4-13

日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効
力等に関する政令(以下勅令効力令という。)

(別紙4-2)

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(別紙4-3)

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(別紙4-7)

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(別紙4-9)

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(別紙4-10)

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(別紙4-11)

第大天本持

条ハ発九シセ日及シ臣ム皇帝民但ハ国ノシ法憲幸命律法福令ヲヲヲ施増行以進テスス律ル為変ニス要コルヲ令ス発法ヲ為更必ルナト命得ルヲニ又ハ公共ノ安寧秩序又シ保ヲ(別紙4-12)



二をる十律月関にす日規国てを憲一定す法しべた昭令二暫年命


事の法際項律を現と規第を二す力七力有も効を力る有力効的す効に律効の現定定一際法に同す〕

のの二行和のき行



施で法律法ま憲規定日国本る本十日項以号



は令命るを有


命すの昭規令る和のも定二規のの十と等事


法一三律法

条年第す二



で定力
(別紙4-13)







を和もす十



日二の国する法規第





際和に十の二十


の二政効号令に政力第有る四年本関国法をす法す十勅号憲効る力を律施令〕
す第の規定に定にとは規の効定令の現条の勅規一もるの際る



行有を力効令日の現効に一際二

等同の有力と行昭現定施法令七外憲政律のの国本憲令く日関年命すに本る除○
等二有を


す力昭

力効
(別紙6)
当事者の主張の要旨

1
争点(1)(本件訴えの適法性〔原告適格の有無〕)について

(原告らの主張の要旨)
原告らは,いずれも本件収用地内に現に居住し,又は過去に居住していた者であり,本件事業のために土地を収用されたり,これに伴いその財産権を侵害されたりするなどの被害を直接受けるおそれがあるから,本件事業認可の取消しを求めるにつき法律上の利益
(行政事件訴訟法9条1項)を有する者として,その

取消訴訟における原告適格を有するものと解される。
したがって,本件訴えは,いずれも適法に提起されたものである。(被告の主張の要旨)
(1)

行政事件訴訟法9条1項は,
取消訴訟の原告適格について,
当該処分の取消

しを求めるにつき法律上の利益を有する者でなければならない旨定めるところ,法律上の利益を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者のことをいい,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,か
かる利益も法律上保護された利益に当たると解される。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,
この場合において,
当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,

当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項)。しかるところ,都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的,これらの規定が都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,都市計画法は,これらの規定を通じて,都市の健全な発展と秩序ある整備を図るなどの公益的見地から都市計画施設の整備に関する事業を規制するとともに,騒音,振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべ
きものとする趣旨を含むと解するのが相当である。したがって,都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものと解される。
そして,都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民が,その認可の取消し
を求めるにつき法律上の利益を有するか否かの判断については,都市計画法と目的を共通にする関係法令である東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。以下本件条例という。)が,対象事業(同条例2条5号)を実施しようとする地域及びその周辺地域で当該対象事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがある地域として,当該対象事業に係る事業段階関係地域(同条10号)を定めなければならないと規定していること(同条例49条1項)に鑑み,当該取消しを求める者が事業段階関係地域内に居住するか否かによって判断するのが相当である。
(2)

これを本件についてみると,
本件道路は2車線の道路であり,
本件条例の2

条5号にいう対象事業に該当しないため(本件条例別表1,同条例施行規則3条,別表第1の1(四)参照),事業段階関係地域も定められていない。そして,居住原告ら及び非居住原告らは,本件事業地内の不動産につき権利を有していないから,本件事業認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であるとはいえず,その取消訴訟における原告適格を有しない。したがって,本件訴えのうち,居住原告ら及び非居住原告らの請求に係る部分は,いずれも不適法である。

2
争点(2)ア(本件各都市計画決定の手続上の適法性)について
(原告らの主張の要旨)
本件事業認可が適法であるためには,その前提となる本件各都市計画決定が手続上も適法であることが必要である。そうであるところ,旧都市計画法3条
は,都市計画は主務大臣がこれを決定し,内閣の認可を受けなければならない旨規定しているにもかかわらず,本件各都市計画決定は,後記(1)のとおり,主務大臣によってされたものではなく,また,後記(2)のとおり,内閣の認可も受けていないのであるから,本件各都市計画決定に係る手続は違法である。(1)


本件各都市計画決定が主務大臣によってされたものではないこと
昭和21年決定について
都市計画に関する事務は,昭和22年12月31日に内務省が廃止されるまで,
内務大臣が所掌していたのであるから
(内務省官制7条1号参照)

昭和21年決定の主務大臣は内務大臣である。しかるに,昭和21年決定に係る決裁文書は証拠として提出されておらず,同決定に係る告示が掲載
された官報(甲12)が提出されているのみであるから,昭和21年決定が内務大臣によってされたものということはできない。
この点,被告は,戦災復興院官制を根拠に,昭和21年決定当時,復興都市計画は戦災復興院が所掌しており,その決定権限を有する主務大臣は内閣総理大臣であったと主張する。しかしながら,戦災復興院は戦災地ニ於ケル市街地計画及其ノ施行ニ関スル事項を所掌事務としているにすぎず(戦災復興院官制1条1号),都市計画はここでいう市街地計画に直ちに含まれるものではないから,復興都市計画を戦災復興院が所掌していたと認めることはできず,被告の上記主張は失当である。

昭和41年決定について
被告が主張するとおり,
昭和41年決定の主務大臣は建設大臣であるが,
同決定に係る決裁文書(甲13)の建設大臣欄には,鉛筆書きで了
と記載されているだけで,建設大臣の押印も署名もされていない。このような不完全な決裁文書をもって,建設大臣の決定があったと認めることはできないから,昭和41年決定が建設大臣によってされたものということはできない。
(2)

本件各都市計画決定が内閣の認可を受けていないこと
旧都市計画法3条は,都市計画は主務大臣がこれを決定し,内閣の認可を
受けなければならない旨規定するところ,本件各都市計画決定は,いずれも内閣の認可を受けていないのであるから,本件各都市計画決定に係る手続はいずれも違法である。
この点,被告は,臨時措置法1項1号及び同法の委任を受けた臨時特例2条1号により,内閣の認可を受ける必要がなかったと主張する。しかしながら,①臨時措置法は,大東亜戦争ニ際シ(1項)との文言からも明らかなように,太平洋戦争(大東亜戦争)遂行のための戦時国内体制確立を目的として制定されたものであるから,太平洋戦争の終結(昭和20年8月15
日)と同時に失効しており,本件各都市計画決定に適用される余地はないというべきである。また,②臨時特例は,(a)昭和21年決定との関係では,臨時措置法失効下においてそれ単独で旧都市計画法3条の規定を変更することはできないはずであり(旧憲法9条ただし書参照),(b)昭和41年決定との関係では,法律事項を規定した命令(勅令)の暫定的効力の期限である昭和
22年12月31日の経過により,
その効力は失われていたのであるから
(命
令効力法1条),本件各都市計画決定に適用される余地はないというべきである。したがって,被告の上記主張は,失当である。
(被告の主張の要旨)
本件事業認可の前提となる昭和41年決定が手続上適法であることについては,次のとおりである。すなわち,昭和41年決定の根拠規定である旧都市計画法3条は,都市計画は主務大臣がこれを決定し,内閣の認可を受けなければならない旨規定しているが,後記(1)イのとおり,
同決定は主務大臣によって
されたものであり,また,同決定は内閣の認可を受けていないが,これは,後記(2)のとおり,臨時措置法1条1号及び同法の委任を受けた臨時特例2条1号により,
認可を受けることを要しないとされていたからである。
したがって,

昭和41年決定に係る手続は適法である。
なお,原告らは,本件事業認可が適法であるためには,昭和41年決定のみならず,昭和21年決定についても手続上適法であることが必要であると主張するが,上記のとおり,本件事業認可の前提をなす都市計画は昭和41年決定のみであるから,原告らの上記主張は失当である。この点を措いたとしても,
昭和21年決定(昭和41年決定と同様に旧都市計画法3条に基づくものである。)は,後記(1)アのとおり,主務大臣によってされたものであり,また,内閣の認可についても,
後記(2)のとおり,臨時措置法1条1号等により受けるこ
とを要しないとされていたのであるから,昭和21年決定に係る手続は適法である。

(1)

本件各都市計画決定が主務大臣によってされたこと
昭和21年決定について
(ア)

都市計画に関する事務は,太平洋戦争当時は内務大臣が所掌してい
たが,終戦後は戦災地ニ於ケル市街地計画及其ノ施行ニ関スル事項について,内閣総理大臣の管理に属する戦災復興院が所掌することとされ(戦災復興院官制1条1号),復興都市計画等についての内閣総理大臣の決定に関する決裁権限は,戦災復興院総裁が代決して行使することとされた(内閣総理大臣決裁事項中復興都市計画並同事業ノ決定ニ関スル件戦災復興院総裁代決ノ件参照)。以上の点に照らせば,復興都市計画は戦災復興院が所掌しており,その決定権限を有する主務大臣は内閣総理大臣であるというべきである。
そして,昭和21年決定は,東京復興都市計画街路に関するものであ
り,同決定の告示においても東京復興都市計画街路左ノ通内閣総理大臣の決定アリタリとされていることからすれば,昭和21年決定の主務大臣は内閣総理大臣であって,同決定が内閣総理大臣によってされたことは明らかである。
(イ)

この点,原告らは,昭和21年決定の主務大臣は内務大臣であると
主張するが,かかる主張は,終戦後に戦災復興院官制が制定されたことを看過するものであって,失当である。
また,原告らは,昭和21年決定に係る決裁文書が証拠として提出されていない以上,同決定が主務大臣によってされたものと認めることはできないと主張する。しかしながら,決裁文書は,行政文書として保存
期間経過後は廃棄されるものであるから,決裁文書が不存在であるからといって,主務大臣の決定がされていないことが推認されるものではない。そして,昭和21年決定が主務大臣たる内閣総理大臣によってされたことは,上記(ア)のとおり同決定の告示から認めることができるのであるから,原告らの上記主張は失当である。


昭和41年決定について
昭和41年決定当時,都市計画に関する事務は,建設大臣が所掌していたところ,同決定に係る決裁文書(甲13)の建設大臣欄に了と
記載されていること,同決定の告示が建設大臣名で行われていること等の
事情に照らせば,昭和41年決定が主務大臣である建設大臣によってされたことは明らかである。
この点,原告らは,昭和41年決定に係る決裁文書に建設大臣の押印や署名がされていないことをもって,建設大臣の決定があったとは認められないと主張するが,官公庁における決裁行為に,押印や署名といった特定の様式性の具備は要求されていないのだから,原告らの上記主張は,独自の見解を前提とするものであって,失当である。

(2)

本件各都市計画決定が内閣の認可を受けることを要しないこと
旧都市計画法3条は,都市計画は内閣の認可を受けなければならない旨規定しているが,昭和18年に成立した臨時措置法1項1号が勅令ノ定ムル所ニ依リ法律ニ依リ…認可…ヲ要スル事項について認可…ヲ要セザルコトトスル措置をなすことができる旨規定し,同法の委任を受けた
臨時特例2条1号が都市計画法第三条ノ規定ニ依ル内閣ノ認可については受クルヲ要セズと規定し,旧都市計画法3条の上記規定を修正している。そうであるところ,本件各都市計画決定は,いずれも臨時措置法及び臨時特例施行下でされた都市計画決定であるから,内閣の認可を受けることを要しないものであったことは明らかである。


この点,原告らは,①臨時措置法は太平洋戦争の終結と同時に失効しており,また,②臨時特例は,(a)臨時措置法失効下において単独で旧都市計画法3条の規定を変更することができないはずであり,
(b)法律事項を規定
した命令の暫定的効力の期限である昭和22年12月31日の経過後はそ
の効力を失っているなどと主張する。
しかしながら,①原告らがその主張の根拠とする臨時措置法1項の大東亜戦争ニ際シとの文言は,法律制定の動機を示したものにすぎず,同法は太平洋戦争(大東亜戦争)の終結を有効期限とした限時法ではないのであるから,臨時措置法が太平洋戦争の終結と同時に失効したとの原告の
主張は失当である。そうすると,②(a)臨時措置法の失効を前提に,臨時特例が単独で旧都市計画法3条の規定を変更することができない旨の原告らの主張も失当である。また,②(b)臨時特例は命令効力法1条にいう法律を以て規定すべき事項を規定するものには当たらず,かえって勅令効力令1項により,政令と同一の効力を有するものとして有効に存続すべきものであるから,臨時特例が昭和22年12月31日の経過により失効した旨の原告らの主張も失当である。

3
争点(2)イ(昭和41年決定の実体上の適法性)について

(原告らの主張の要旨)
本件事業認可が適法であるためには,その前提となる昭和41年決定が実体上も適法であることが必要である。しかしながら,昭和41年決定に係る建設大臣の判断は,必要性の評価が明らかに合理性を欠いており(後記(1)),また,考慮すべき合理的な代替案を考慮しておらず(後記(2)),しかも,本件道路がもたらす地域社会への悪影響を看過している(後記(3))から,その内容は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。したがって,昭和41年決定は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。
(1)

本件道路に係る必要性の評価が不合理であること
本件道路は,閑静な住宅街の中心部を切り裂くような形で建設される都市計
画道路であり,本件道路が完成すると,J方面から放射第23号線を通って環状第7号線との交差点(A交差点。本件道路の起点である。)に至った車両は,そのまま本件道路をC交差点に向けて直進することが可能となる。しかしながら,上記車両がA交差点からC交差点に行くには,本件道路がなくても,①A交差点を右折して環状第7号線を北上し,更にK交差点(位置関係については別紙5-2参照)を左折して甲州街道を進行する方法(以下甲州街道ルートという。)もあれば,②A交差点を直進し,突き当たりにあるB給水所用地を右回りに迂回する方法(以下給水所ルートという。)もあ
り,これらの方法によれば足りるのであるから,新たに本件道路を建設する必要性は乏しい。経路自体の合理性をみても,甲州街道ルートは,進行する道路の幅員も広く,通過する交差点の数も少ないのであるから,本件道路に比べて所要時間の短い合理的な経路というべきである。
以上によれば,本件道路を新設する必要性はなく,これを必要と評価した建設大臣の判断は不合理であるから,昭和41年決定は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。
(2)

合理的な代替案を考慮していないこと
道路のような都市施設の配置を定めるにおいて,民有地に代えて公有地を利
用することができるときには,そのことも都市計画における一つの重要な考慮要素となり得るのであるから(最高裁平成15年(行ヒ)第321号同18年9月4日第二小法廷判決・裁判集民事221号5頁参照。以下平成18年9月最判という。),公有地を利用した代替案を考慮しないでされた都市計画決定は,違法になるというべきである。
しかるに,昭和41年決定によって整備することとされた本件道路については,収用される民有地が多く,地域社会への負担も大きい一方で,以下のよう
な,公有地であるB給水所用地を利用した合理的な代替案が複数考えられる(以下,これらを総称して原告代替案という。)のであるから,これらを考慮しないで行われた昭和41年決定は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。

給水所ルート改修案
現状の給水所ルートは,B給水所の北東角(別紙7-1記載1の赤い矢印
の箇所)の左折角度が大きいことから,B給水所用地(公有地)を利用し,左折角度が緩やかになるよう改修工事を行うことが考えられる。このような改修により,給水所ルートの進行はより円滑になる。また,この方法によれば,地域社会の負担は一切生じない。

現道利用案
C交差点に至る経路としては,本件道路と同様の片側2車線道路(別紙7-1記載1の赤色の道路。以下本件現道という。)が既に存在していることから,本件現道に接続する道路を新たに整備することが考えられる。具体的には,B給水所用地の東側及び北側の各側道を内方向に拡幅して本件現道に接続する案(同別紙記載2(1))や,B給水所用地内の南側及び西側の土地を通過する道路を建設して本件現道に接続する案
(同別紙記載2(2),
より

用地買収の範囲を狭めたものとして別紙7-2赤色の道路)が考えられる。このような代替案であれば,①交通の円滑化,②安全で快適な歩行空間の確保及び③広域避難場所への避難路の確保による地域の防災性の向上という本件事業の目的を十分に代替することができ,また,本件道路の場合と異なり民有地の買収も少なくて済むため,地域社会の負担も小さいこととなる。

ラウンドアバウト案
そのほかに,B給水所用地の四方の各側道を内方向に拡幅し,右回りの一方通行道路(ラウンドアバウト)とすること(別紙7-1記載3)が考えられる。このような代替案であれば,民有地を買収する必要がないため,地域社会の負担は一切生じない。


直結案
(ア)

本件道路と同様の線形であって,C交差点に直結する道路として,別
紙7-2記載の緑色の道路を建設することが考えられる(以下原告新道案という。)。このような代替案であれば,B給水所用地をより多く使うことになるが,車両の進行はより円滑となり,他方で,買収の対象となる民有地に立ち並ぶ家屋は3軒にとどまることになる。
また,
同様の経路であっても,
道路を地下化すれば
(以下
原告地下案
という。),民有地を買収する必要はなくなり,地域社会の負担は一切生じないことになる。

(イ)

原告地下案は,概要,B給水所用地内から,C交差点を越えて井の頭
通りに入った地点まで片側1車線の地下トンネル(以下本件トンネルという。)を建設するというものである。本件トンネルは甲州街道と交差しないため,甲州街道への接続に当たっては,給水所ルートをほぼそのまま本件トンネルの側道として利用することになる。なお,B給水所の1号配水池については,建て替えが必要となる。
(ウ)

原告地下案の施工は,基本的に開削工法(地盤を直接掘削する方法)
で行うことになる。そのため,家屋の地下(対象となる家屋は地上案の場合と同様に3軒のみである。)を掘削する際には,対象家屋に一旦立ち退いてもらい,掘削終了後に同等の家屋を再築することになるが,アンダーピニング工法(既存の構造物を新たに打設する杭で受け替える工法。既存の構造物を取り壊すことなく掘削を行うことが可能となる。)又は曳家工法(地上の既存構造物をそのままの状態で移動する工法。)を用いることにより,対象家屋を取り壊すことなく掘削を行うことも可能である。参加人は,道路の地下を掘削するに当たっては,水道管等の埋設物を移設するなどの対応が必要であるとか,本件トンネルの幅員が道路の幅員を
上回るため,沿道の建物を一旦全て立ち退かせなければならないなどと主張する。しかしながら,移設を要するような埋設物は少数であると思われるし,道路の幅員が本件トンネルよりも狭い部分については,道路脇の民有地を一時的に借り受けて掘削することや,道路幅で掘削した後,地下部分だけ幅員を広げて掘削することも可能なのであるから,参加人の上記主
張は原告地下案の実現可能性を否定するものではない。
(エ)

なお,原告地下案に要する工事費用としては,総額112億5000
万円,道路1m当たり1250万円を見込んでいる。上記費用総額は,本件事業における用地買収費用と同水準である。また,上記道路1m当たりの金額は,東京都が施行を計画する他の地下道路工事における金額(917万5000円)の約1.36倍もの金額なのであるから,十分に実施可能な堅い見積もりの金額である。
(3)

本件道路がもたらす地域社会への悪影響を看過していること
本件道路は,中央分離帯を有する幅員の広い道路であって,世田谷区(住所
省略)の中心部を切り裂くような形で建設される予定である。本件道路が完成すると,地域住民がそれまで利用していた公民館や公園(一時避難場所)が利用できなくなるなど,地域社会が分断されることになる上,地域の中小の商工業者にとっては商圏が縮小することになり,その経営が圧迫されることになる。また,本件道路によって東西方向の往来が制限されることになるため,災害時の避難にも支障が生ずることになるし,本件道路の南側の住民は,断水時にB給水所に出向いて給水を受けることも困難となる。
以上のように,本件道路は地域社会に様々な悪影響をもたらすものであるが,
建設大臣はこのことを完全に看過して昭和41年決定を行っているのであるから,同決定は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。
(被告及び参加人の主張の要旨)
本件事業認可が適法であるためには,その前提となる昭和41年決定が実体上も適法であることが必要であるところ,同決定は,当時の建設大臣が,旧都市計画法3条に基づいて適法に行ったものであり,その判断に,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した点はなく(後記(1)),これに反する原告らの主張はいずれも失当である(後記(2))。

(1)

昭和41年決定に係る建設大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用
がないこと
建設大臣は,首都機能の維持及び増進に資する目的で,東京復興都市計画街路をより能率的かつ経済的な街路網とすべく再検討を行い,その結果に基づき昭和41年決定を行っている。
放射第23号線は,昭和21年決定時点では,赤坂区(住所省略)(現在の港区(住所省略))を起点とし,終点である世田谷区(住所省略)(A交差点)
において環状第7号線に接続する都市計画道路であった。もっとも,J方面からA交差点に至った車両については,同交差点を右折して環状第7号線を進行し,次いでK交差点を左折して甲州街道を進行し,更にC交差点を右折して井の頭通りを進行するものが多いという実態があった(位置関係については別紙5-2参照)。そこで,昭和41年決定においては,J方面から井の頭通りに至る車両の交通量を分散させるべく,放射第23号線を環状第7号線から西に延長し,井の頭通りに接続する線形の道路(本件道路)を整備することとされたのである。本件道路の線形は,このような目的を果たすために合理的なものである。また,その線形を決定するに当たっては,公有地の利用が検討されて
おり,最終的に,地方公営企業である東京都水道局が管理する約9300㎡の土地を含む公有地等を取得することとされている。
以上のような昭和41年決定に係る建設大臣の判断は合理的であって,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した点はないから,同決定は適法である。(2)


原告らの主張がいずれも失当であること
本件道路に係る必要性の評価に関する原告らの主張について
原告らは,A交差点からC交差点に至る経路が既に複数存在しているのであるから,本件道路を新設する必要性は乏しいと主張する。しかしながら,既存の経路は交差点を右左折するものであるから,一般論として,本件道路のようにC交差点に向けて直進する方が,所要時間も短くなり経路として合理的であるし,上記(1)で述べたとおり,昭和41年決定は,東京復興都市計
画街路をより能率的かつ経済的な街路網とすべく行われた再検討の結果に基づくものであるから,建設大臣が行った本件道路に係る必要性の評価が不合理であるということはできない。

代替案を考慮すべきであったとの原告らの主張について
原告らは,昭和41年決定に当たって合理的な代替案(原告代替案)を考慮すべきであったと主張するが,都市計画決定権者に合理的な代替案の検討を義務付ける法的根拠はないのであるから,原告らの主張はもとより失当である(原告らは,利用可能な公有地の存在が都市計画決定における一つの考慮要素となり得ることを前提に,本件道路について公有地を利用した原告代替案を考慮すべきであったと主張するようであるが,
上記(1)で述べたと
おり,
昭和41年決定に当たって公有地の利用は十分に考慮されている。。)
この点を措いたとしても,原告代替案は,以下のとおりいずれも合理的なものということはできないから,原告らの主張はやはり失当である。(ア)

給水所ルート改修案に関し
原告らが主張する給水場ルート改修案は,B給水所用地の北東角(別紙
7-1記載1の赤い矢印の箇所)の左折角度が緩やかになるよう改修工事を行うというものである。しかしながら,本件道路を整備する目的は,J方面から井の頭通りに至る車両の交通量を分散させる点にあるところ,給水所ルート改修案では,上記目的を果たすことは到底できないのであるから,同案が合理的な代替案であるということはできない。

(イ)

現道利用案に関し
原告らが主張する現道利用案は,本件現道(別紙7-1記載1の赤色の
道路。)に接続する道路を新たに整備するというものである。しかしながら,本件事業は,自動車交通の円滑化を図ると共に,歩行者や自転車の快適性や安全性を向上させること等を目的とするものであり,そのため,本件道路には,幅員16.5mの車道部とその両側に幅員4.25mの歩道部を設けることとし(本件道路の標準幅員は25mとなる。),また,車道部には,車道のほか,中央帯,停車帯及び自動車走行空間を,交差点部には,直進車の円滑な走行を確保するために右折車線をそれぞれ設ける予定としている。これに対し,本件現道は,幅員が9~11mしかないので
あるから,本件道路に期待される上記の目的を代替し得るものではないことは明らかである。したがって,原告らが主張する現道利用案が,合理的な代替案であるということはできない。
(ウ)

ラウンドアバウト案について
原告らが主張するラウンドアバウト案は,本件現道を利用するものであ
るから,上記(イ)と同様の理由により,合理的な代替案であるということはできない。また,原告らが主張する道路の構造は,国土交通省道路局通知(望ましいラウンドアバウトの構造について)に示された幾何構造とは全く合致しない上,通行車両に対しては大きく迂回して進行することを強いるものであるから,これらの観点においても,ラウンドアバウト案は,合理的な代替案であるということはできない。

(エ)

原告地下案について
原告らが主張する原告地下案は,B給水所用地内から,C交差点を越え
て井の頭通りに入った地点まで片側1車線の本件トンネルを建設するというものである。しかしながら,原告地下案は,以下のとおり,各種の不合理性や工期及び費用の面での不都合性をはらむものであるから,合理的な代替案であるということはできない。
a
甲州街道と交差しないこと
原告地下案では,本件トンネルと甲州街道が交差しないため,放射第23号線が幹線道路としての役割を果たせないこととなる。この点,原告らは,既存の給水所ルートを本件トンネルの側道として利用するなどと主張するが,これではC交差点付近の交通処理状況は現状とほとんど
変化しないこととなり不合理である。
b
道路下での工事が困難であること
本件トンネルは,B給水所用地を経て,既存道路の地下を延伸していくことになるが,当該道路の地下には,本件トンネルよりも上部の位置
に水道管等のライフラインが埋設されているため,掘削工事に当たっては,埋設物の移設や仮受け等の防護工事が必要となり,そのために工期が遅延したり,費用が増加したりすることが見込まれる。
また,本件トンネルの幅員は,地上の道路の幅員を上回ることになるため,本件トンネルを掘削するに当たっては,沿道の建物を一旦全て立ち退かせる必要があるから,やはり工期が遅延したり,費用が増加したりすることが見込まれる。

c
B給水所の建て替えを伴うものであること
原告地下案は,B給水所の1号配水池の建て替えを前提とするものであるから,この点においても費用の増大が見込まれる。

d
原告らの費用の見積もりが不合理であること
原告らは,原告地下案に要する工事費用を総額112億5000万円
と見積もり,本件事業における用地買収費用と同水準であると主張するが,上記見積もりの合理性は何ら検証されておらず,しかも,原告らが利用の可能性について言及しているアンダーピニング工法や曳家工法等に要する費用や,本件トンネルの幅員が地上の道路の幅員を上回る(民有地に及ぶ)部分に係る区分地上権の設定費用等も加算されていないの
だから,原告らの見積もりが合理的なものであるとはおよそいい難い。ウ
地域社会に悪影響をもたらすとの原告らの主張について
原告らは,本件道路が地域社会を分断することになる旨主張するが,地域の交流を安全に行う上で必要と認められる箇所については,警視庁との協議
の上で横断歩道等を設置することになるのだから,本件道路が地域社会の分断をもたらすことはあり得ない。原告らの主張は,結局のところ,本件道路を横断する際の不便さと,それに伴う不都合さを抽象的に述べるものに過ぎない。
また,原告らは,本件道路によって東西方向の往来が制限されることにな
るため,災害時の避難にも支障が生ずると主張するが,上記のとおり本件道路には横断歩道等が設置されることになるのだから,東西方向の往来が制限されることにはならない。かえって,本件道路の整備により,避難場所であるN大学α校舎一帯への避難経路が確保される上,
火災時の延焼防止効果
(幅
員12m以上の道路には延焼防止効果が認められている。)を期待することもできるのであるから,地域の防災性は向上するというべきである。したがって,本件道路が地域社会に悪影響をもたらす旨をいう原告らの主
張は失当である。
4
争点(2)ウ(昭和41年決定後の事情との関係)について

(原告らの主張の要旨)
前記2及び3の各(原告らの主張の要旨)で述べたとおり,本件各都市計画決定は違法にされたものであるから,これらを前提とする本件事業認可も違法である。仮に,本件各都市計画決定がその決定時点においては違法でなかったとしても,
本件事業認可時点においては,
本件道路を整備する必要性は失われ
(後記(1))

また,合理的な代替案が存在していたのであるから(後記(2)),本件都市計画は都市計画法21条1項に基づき変更されなければならない状態にあったというべ
きである。そして,関東地方整備局長(処分行政庁)は,このことを看過して本件事業認可を行ったのだから,同認可は違法である。
(1)

本件道路を整備する必要性が失われていたこと
参加人は,平成16,17年頃の時点では,地域住民に対し,本件道路の整
備時期は不明であると説明していた。
また,財務省は,平成9年から平成28年にかけて,物納により取得していた本件事業地内の土地を,本件事業の施行者となるべき参加人ではなく,同土地の借地権者に売却していた。そして,世田谷区も,平成23年3月に,E(原告番号17)所有に係る本件事業地内の建物について,耐震補強工事の補助金を交付していた。このように,参加人以外の他の行政主体も,本件事業が実施
されないことを前提とした行動を取っていた。
加えて,参加人は,本件道路の予測交通量について,平成17年には1日6万8000台と説明していたのに対し,平成26年12月には1日1万9000台と説明しているのであるから,本件道路の予想交通量は,最終的に当初の3分の1以下にまで減少したことになる。
これらの事情を総合すれば,本件道路を整備する必要性は,長らく不透明であったところ,本件事業認可の時点に至っては,もはや失われていたとみるのが相当である。この点,被告及び参加人は,平成16年3月に都市計画道路の必要性の検証を行い,放射第23号線の必要性が認められたと主張するが,その検証過程を認めるに足りる証拠はないのであるから,このような検証結果は信用することができない。
したがって,参加人は都市計画法21条1項に基づき本件都市計画を変更し
なければならない状態にあったというべきである。
(2)

代替案の合理性及び実現可能性が高まっていたこと
前記3(原告らの主張の要旨)(2)で述べたように,本件道路については,昭
和41年決定当時においても,公有地であるB給水所用地を利用した合理的な代替案が複数考えられたのであるが,さらに,本件事業認可がされた平成27年当時に至っては,道路の敷設技術も給水所施設の建築技術も格段に向上しているのであるから,B給水所用地を利用した代替案は,より一層合理的なものになっていたというべきである。また,本件事業認可当時は,B給水所の改修工事が進行しており,代替案に即した形でB給水所を改修することが可能であ
ったのだから,代替案の実施はより現実的であったというべきである(前記3〔原告の主張の要旨〕(2)エ(イ)で述べたB給水所1号配水池の建て替えも容易に行うことができた。)。
これらの事情からすれば,原告らが先に述べた代替案は,本件事業認可時点で見れば,昭和41年決定当時以上に,合理的で実現可能性が高いものになっ
ていたというべきであるから,参加人が都市計画法21条1項に基づき本件都市計画を変更しなければならない状態にあったことは明らかである。なお,参加人は,都市計画法6条1項に基づく5年おきの基礎調査として,公有地の位置,区域,面積及び利用状況(同法施行規則5条7号)についての調査を行う義務を負っているにもかかわらず,公有地であるB給水所用地の位置,区域,面積及び利用状況について,適切な調査を行っていない(年度によってはB給水所用地が公有地であると認識されていない。。)そのため,
参加人は,本件都市計画を変更しなければならない状態にあったことに気付くことができず,漫然と本件事業認可の申請をしたものと考えられる。(3)

本件道路の整備が地域住民に著しい犠牲を強いるものになっていたこと本件道路が整備される場合,本件事業地内に居住する70戸の住民が退去を
迫られることになるが,本件事業地内の住民は,本件事業認可時において,その多くが高齢者となっている。
本件事業地の近隣に新たに取得することができる土地は見当たらないため,立ち退きに当たっては遠方への転居が避けられず,特に,借地権に基づいて居住している住民については,現在の借地と同等の土地を賃借することは困難で
あるし,土地収用に係る損失補償金(所有権に係る補償金の6割程度)のみで同等の土地を購入することもできないため,地価の安い郊外に転居するほかない。しかしながら,高齢者である住民にとって,見ず知らずの土地で新たに生活を始めることは極めて困難であって,このような事態は,人道的見地からも許されるものではない。

以上のとおり,本件道路の整備は,本件事業認可時点において,地域住民に著しい犠牲を強いるものとなっていたから,参加人が都市計画法21条1項に基づき本件都市計画を変更しなければならない状態にあったことは明らかである。
(被告及び参加人の主張の要旨)

前記2の(被告の主張の要旨)及び前記3の(被告及び参加人の主張の要旨)で述べたとおり,本件事業認可の前提である昭和41年決定は適法にされたものであるから,同決定による本件都市計画に適合するものとしてされた本件事業認可は適法である。
なお,原告らは,本件事業認可時点において,本件都市計画は都市計画法21条1項に基づき変更されなければならない状態にあったのだから,このことを看過して行われた本件事業認可は違法であると主張する。しかしながら,仮に本件都市計画が変更を要する状態にあったのだとしても,関東地方整備局長は都市計画の変更権限を有していないのだから,同局長が行った本件事業認可が都市計画法21条1項に違反して違法となるものではない。また,都市計画を変更しないことが同項に違反し違法となるのは極めて例外的な場合に限られるところ,原告
らが主張する事情がこれに該当しないことは明らかである(後記(1))上,そもそも,原告らが主張する事情はいずれもその前提を欠くものであって認めることができない(後記(2))から,本件事業認可が違法である旨をいう原告らの主張は失当である。
(1)

本件都市計画を変更しないことが違法となるような例外的事情は見当たら
ないこと
都市計画を変更しなければならない場合について定める都市計画法21条1項に違反して違法であるというためには,都市計画決定後,相当の長期間が経過し,その間,社会的,経済的条件が著しく変化し,これに応じて都市計画を変更しなければ当該都市計画が同法の定める都市計画基準を満たさないば
かりでなく,行政庁において当該都市計画を変更しないでこれを維持することが,行政庁に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用となるような例外的な場合に限られると解される。
そうであるところ,本件道路については,このような例外的な場合に該当する事情は見当たらず,原告らが主張する事情もこれに該当しないことが明らか
であるから,本件事業認可時点において,本件都市計画を変更しないことが都市計画法21条1項に違反するということはできない。
(2)

原告らが主張する事情を認めることができないこと
本件道路を整備する必要性は失われていないこと
原告らは,本件事業認可時点においては,本件道路を整備する必要性は失われていたから,参加人は本件都市計画を変更しなければならない状態にあったと主張する。

しかしながら,参加人は,昭和56年及び平成3年の2回にわたり,おおむね10年間で着手又は完成すべき路線を選定するなど,都市計画道路の計画的,効率的な整備を行ってきている。また,参加人は,都市計画道路の見直しも行っており,検討の結果,変更の必要があると認められた道路については,昭和56年に都市計画を変更しているが,放射第23号線はその対象
に含まれていない。
さらに,参加人は,平成16年3月,都市計画道路の必要性の検証を行うとともに,今後12年間に優先して整備すべき路線の選定を行っているが,放射第23号線はこれに選定されている。
以上のように,参加人は,都市計画道路に関する検証を不断に行ってきて
おり,本件道路を含む放射第23号線については,昭和56年と平成16年3月に,その必要性が確認されているのだから,本件事業認可時点においても,本件道路を整備する必要性が失われていないことは明らかである。したがって,原告らの上記主張は,その前提を欠くものである。

原告らが主張する代替案は合理性を欠くものであること
原告らは,本件事業認可時点において,合理的な代替案が存在しており,しかも,その合理性及び実現可能性は,昭和41年決定当時以上に高まっていたのであるから,参加人は本件都市計画を変更しなければならない状態にあったと主張する。しかしながら,原告らが主張する代替案は,前記3(被告及び参
加人の主張の要旨)
(2)イで述べたとおり,
いずれも合理的なものとはいえない
のであるから,原告らの上記主張は,その前提を欠くものである。ウ
本件道路の整備が地域住民に著しい犠牲を強いるものではないこと原告らは,本件事業認可時点において,本件道路の整備が地域住民に著しい犠牲を強いるものとなっていたのであるから,参加人は本件都市計画を変更しなければならない状態にあったと主張する。しかしながら,本件道路の整備に
ついては,昭和41年決定によって告示されており,同決定はそれ以降変更されていないのであって,本件事業地内の土地等については,正当な補償の下に参加人が取得していく予定であるから,本件道路の整備が地域住民に著しい犠牲を強いるものであるということはできない。したがって,原告らの上記主張は,その前提を欠くものである。
以上

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