判例検索β > 平成30年(あ)第845号
建造物侵入、埼玉県迷惑行為防止条例違反被告事件
事件番号平成30(あ)845
事件名建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反被告事件
裁判年月日令和2年10月1日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成30(う)476
原審裁判年月日平成30年5月24日
判示事項数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
裁判日:西暦2020-10-01
情報公開日2020-10-01 16:00:52
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平成30年(あ)第845号

建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反

被告事件
令和2年10月1日

第一小法廷判決

主文
原判決及び第1審判決を破棄する
本件をさいたま簡易裁判所に差し戻す。
理由
弁護人近藤里沙の上告趣意のうち,判例違反をいう点について
原判決の是認する第1審判決によれば,本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,盗撮用の小型カメラを設置する目的で,パチンコ店の女子トイレ内に,共犯者において侵入した上,用便中の女性の姿態を同所に設置した小型カメラで撮影し,もって公共の場所において,人を著しく羞恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような卑わいな行為をしたという事案であり,建造物侵入罪と埼玉県迷惑行為防止条例2条4項(盗撮)違反の罪(同条例12条2項1号)が成立し,両罪は刑法54条1項後段の牽連犯の関係にある。
第1審判決は,建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり,埼玉県迷惑行為防止条例違反の罪の法定刑は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金であるから,最高裁昭和22年(れ)第222号同23年4月8日第一小法廷判決・刑集2巻4号307頁(以下昭和23年判例という。)によれば,被告人に対する処断は,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪である建造物侵入罪の法定刑によることになり,罰金刑の多額は10万円となるとの判断を示し,これによると罰金刑の選択は相当でないとして被告人に懲役2月,3年間執行猶予の判決を宣告し(検察官の求刑は罰金40万円),原判決も上記判断を是認して被告人の控訴を棄却した。所論は,原判決は,罰金刑の多額が10万円となるとした点において,名古屋高等裁判所金沢支部平成25年(う)第65号同26年3月18日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成26年140頁(以下金沢支部判決という。)と相反する判断をしているというのである。
金沢支部判決は,住居侵入罪と,法定刑が2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料である暴行罪とが刑法54条1項後段の牽連犯の関係にある事案で,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは,罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきものと解するのが相当であるとして,処断刑の罰金刑の多額は30万円となると判示している。
昭和23年判例は,併科刑又は選択刑の定めがある場合の法定刑を対照して,その軽重を定めるについては,刑法10条のほか,複数の主刑中の重い刑のみについて対照をなすべき旨を定めた刑法施行法3条3項をも適用しなければならないとするもので,本件のような科刑上一罪の事案において重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがある場合の罰金刑の多額についてまで判示するものではなく,軽い罪のそれによることを否定する趣旨とも解されない。この点については,最高裁判所の判例がなく,金沢支部判決は刑訴法405条3号にいう判例に当たり,原判決は,これと相反する判断をしたものである。
そして,本件のように,数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは,刑法54条1項の規定の趣旨等に鑑み,罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきものと解するのが相当である。そうすると,所論引用の金沢支部判決は正当であり,これを変更する必要は認められない。原判決は,最高裁判所の判例がない場合に控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたもので,判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合であるとはいえない。論旨は理由がある。よって,弁護人のその余の上告趣意に判断を加えるまでもなく,刑訴法405条3号,410条1項本文,413条本文により,原判決及びこれと同趣旨に出た第1審判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため本件を第1審裁判所であるさいたま簡易裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官小長光健史,同溝口貴之
(裁判長裁判官
木澤克之

深山卓也

裁判官

山口

公判出席

裁判官

池上政幸

厚)
裁判官

小池


裁判官

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