判例検索β > 令和2年(う)第46号
名誉毀損
事件番号令和2(う)46
事件名名誉毀損
裁判年月日令和2年9月14日
裁判所名・部大阪高等裁判所  第2刑事部
結果棄却
裁判日:西暦2020-09-14
情報公開日2020-09-30 12:00:20
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主文
本件控訴を棄却する

第1


控訴理由等

1
弁護人の控訴理由
原判決1の事実にかかる被告人の発言(以下本件発言という。)にある朝鮮学校とは,朝鮮学校一般を指し,被告人の認識としてもそうであったのに,その朝鮮学校というのはA学校を指し,被告人もその認識であったと認定し,それを前提に本件発言につき真実性の証明及び真実であると信じたことについて相当な理由はないとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認,ひいては,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。

2
検察官の答弁
本件発言にある朝鮮学校がA学校を指すことは明白であって,被告人もそのことを認識・認容していた。したがって,原判決に事実の誤認(ひいては法令適用の誤り)はなく,弁護人の控訴理由はいずれも理由がない。
第2

当裁判所の判断

1
原判決が,本件発言中の朝鮮学校とはA学校を指し,被告人もそのことを認識していたと認定し,それを前提に本件発言につき真実性の証明及び真実であると信じたことについて相当な理由がないとして被告人を有罪としたのは正当であり,その理由について弁護人の主張に対する判断の項で述べるところも相当であって,原判決に事実の誤認や法令適用の誤りはない。
2⑴

弁護人は,本件当日の本件現場において被告人が言及した朝鮮学校には,原審甲3号証の表示時刻8分02秒及び10分07秒の発言のように明らかに朝鮮学校一般を指して言ったものがあることから,本件発言中のA学校のことを指す朝鮮学校は,朝鮮学校の具体的な例示にすぎな
いことは通常の国語力のある一般人であれば容易に理解できるはずであると主張する。
しかしながら,弁護人の指摘する発言は,いずれも本件発言とは異なる文脈におけるものであって,同じ朝鮮学校という言葉であっても意味が異なることは前後の文脈から明らかである。このような発言から本件発言の意味内容を判断することはできない。


弁護人は,原判決が,本件発言はA学校のことを指して言ったものであると認定したのは,一方で,本件発言の意図について,朝鮮学校一般及び朝鮮総聯そのものを糾弾することと認定していることと合っておらず不自然であるし,本件発言の目的について,主として日本人拉致事件に関する事実関係を一般に明らかにするというもので,公益を図る目的があったと認定していることとも矛盾していると主張する。
しかしながら,被告人は全ての朝鮮学校は朝鮮総聯に支配された一体的なものとみなしていると認められるところ,そのような被告人の認識を前提とすれば,前記のような意図であっても,A学校のことを指して本件発言をすることも不自然ではないし,A学校を運営する法人の名誉が害されることを認識しながら本件発言をしたとしても,被告人の主観においては前記目的と矛盾しないといえる。
また,被告人は,本件当日は,当初予定していた場所に代えて,かつてA学校が存在していた場所に近い本件現場で演説を行うことにし,その際,本件発言などに加えて

この京都の朝鮮学校ね。これが出ていく原因になったんは我々でございます。

などと自己の活動の結果を誇示する発言もしている。加えて,本件現場は,人通りが少ないのどかな公園であり,突如としてマイクと拡声器による演説をするのは近隣住民の理解を得にくい場所であった。以上の事実によれば,本件発言には,かつて本件現場近くにあったA学校の関係者が日本人拉致事件を起こしたと言うことによって,被告人が行っ
てきた活動を正当化し,近隣住民に演説を聴いてもらおうとする意図もあったことがうかがわれる。そうであれば,A学校のことを指して本件発言をしたとしても,何ら不自然ではない。


弁護人は,本件発言のような口頭表現の場合,発言者の意図するところと違う意味内容の解釈によって表現者が不利益を受ける事態は,表現の自由を危うくするものであって避けなければならず,名誉毀損が成立する解釈とそうでない解釈が並立し得る場合には,後者を選択しなければならないなどと主張する。
しかし,既に述べたとおり,本件発言中の朝鮮学校という言葉がA学校を指すことは明白であり,異なる解釈が並立し得る場合ではないから,弁護人の主張はその前提を欠いている。


第3

弁護人の主張はいずれも採用できない。
適用した法令

刑事訴訟法396条
令和2年9月14日
大阪高等裁判所第2刑事部

裁判長裁判官

長井
裁判官

佐茂
裁判官

太田秀典剛寅彦
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