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意匠権侵害差止等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟
事件番号令和2(ネ)211
事件名意匠権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日令和2年7月31日
裁判所名大阪高等裁判所
権利種別意匠権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2020-07-31
情報公開日2020-09-28 10:01:12
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令和2年7月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官

令和2年(ネ)第211号意匠権侵害差止等請求控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成29年(ワ)第5108号)
口頭弁論終結日令和2年6月3日
判決
控訴人(一審原告)

株式会社

同訴訟代理人弁護士


同補佐人弁理士


被控訴人(一審被告)

株式会社ドリームファクトリー

同訴訟代理人弁護士

釜田佳孝同平野惠稔同大和奈月同渡辺
同訴訟代理人弁理士

隈元主林MTG正己有希洋健次文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を後記2項から4項の限度で取り消す。

2
被控訴人は,
原判決別紙被告商品目録記載のトレーニング機器を製造,
譲渡,
輸入,譲渡の申出(譲渡のための展示を含む。
)をしてはならない。

3
被控訴人は,前項記載のトレーニング機器及びその金型を廃棄せよ。
4
被控訴人は,控訴人に対し,●(省略1)●及びうち1500万円について平成29年6月6日から,うち●(省略2)●について平成30年1月19日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

5
訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

6
仮執行宣言

第2

事案の概要
以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。

1
控訴人の請求及び訴訟の経過
本件は,控訴人が意匠権を有している後記登録意匠(本件意匠)について,被控訴人が,これと類似する意匠を用いて原判決別紙被告商品目録記載のトレーニング機器(被告商品)を製造・販売しているところ,これは控訴人の意匠権の侵害に当たると主張して,被控訴人に対し,意匠法37条1項及び2項に基づき,被告商品の製造・販売等の差止め並びに同製品及びその金型の廃棄を求めるとともに,意匠法39条2項及び民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。
)709条に基づき,●(省略3)●,及びうち1
500万円について不法行為の後の日である平成29年6月6日(訴状送達の日)から,うち●(省略4)●について平成30年1月19日(請求の拡張申立書送達の日)から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。

2
前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。書証は枝番号を含む。


(1)

当事者等
控訴人は,美容機器,健康機器及び化粧品等の開発,設計,製造,販売等
を目的とする株式会社である。
被控訴人は,医療機器,健康食品,装身具,日用品雑貨の販売等を目的とする株式会社である。
(2)

本件意匠権及び原告商品


本件意匠権(甲1,2)
控訴人は,下記の意匠権(本件意匠権)を有している。
登録番号
意匠に係る物品

トレーニング機器

出願日

平成27年2月19日

登録日

平成27年9月18日

登録意匠

第1536247号

原判決別紙本件意匠に係る公報記載のとおり

原告商品(甲7)
控訴人は,本件意匠を有する製品(原告商品。商品名はSIXPADAbsFit)を,平成27年7月より,製造・販売している。

(3)

被告商品及び被告意匠


被告商品(甲3~5,乙1~8)
被控訴人は,平成29年1月頃から,他の商品の購入特典として無償で被告商品の譲渡の受付を開始し,同年4月3日から,店舗及びインターネット通販において被告商品の販売を開始した。
被告商品の外見は,原判決別紙被告商品目録添付写真のとおりである。

被控訴人の意匠登録(乙42)
被控訴人は,被告商品に係る意匠(被告意匠)につき,以下のとおり,意匠登録をした。
登録番号
意匠に係る物品

トレーニング機器

出願日

平成29年1月30日

登録日

平成29年11月24日

登録意匠
(4)

第1593189号

原判決別紙被告意匠に係る公報記載のとおり

物品の同一性
本件意匠に係る物品及び被告商品は,いずれも人体に接触させて使用し,
筋肉に電気的刺激を与えるEMS商品に属するトレーニング機器であり,物品は同一である。
(5)

被告意匠に係る無効審判請求(乙83,85,86)
控訴人は,前記(3)の被告意匠の登録について,平成30年2月28日,被
告意匠は本件意匠に類似し,意匠法3条1項3号により意匠登録を受けることができず,
同法48条1項1号の規定に該当し無効とすべきであるとして,
無効審判請求をしたところ,特許庁は,同年10月23日,被告意匠は本件意匠に類似するということはできないとして,請求不成立の審決をした。控訴人は,これを不服として審決取消訴訟を提起したが(知的財産高等裁判所平成30年(行ケ)第10169号)同裁判所は,

平成31年4月22日,
両意匠は需要者の視覚を通じて起こさせる美感を異にするというべきであり,被告意匠は本件意匠に類似するとはいえないとして,控訴人の請求を棄却する旨の判決を行った。
控訴人は,これを不服として上告受理申立てをしたが(最高裁判所令和元年(行ヒ)第235号)
,同裁判所は,令和元年10月11日,上告不受理の決
定を行い,前記審決は確定した。
(6)

被告商品に係る仮処分手続(甲18の5・6)
なお,控訴人は,原告商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の周知商
品等表示に該当し,被告商品の製造等は原告商品と混同を生じさせる行為であるとして,
被控訴人を相手方として仮処分命令の申立てを行ったところ
(東
京地方裁判所平成29年(ヨ)第22023号)
,同裁判所は,平成30年1月
25日,控訴人の申立てを相当と認め,被控訴人は被告商品を製造してはならないこと等を内容とする仮処分決定をした(同月30日,更正決定)。
被控訴人は,これに対する保全異議の申立てを行ったが(東京地方裁判所平成30年(モ)第40035号)
,同裁判所は,同年11月2日,前記仮処分
決定を認可する決定を行った。被控訴人は,これを不服として保全抗告の申
立てを行ったが(知的財産高等裁判所平成30年(ラ)第10008号保全抗告申立事件)同裁判所は,

平成31年4月17日,
抗告を棄却する決定を行っ
た。
3
争点

(1)

本件意匠及び被告意匠の構成態様

(2)

本件意匠と被告意匠との類否

(3)

差止め・廃棄請求の必要性

(4)

損害の発生及びその額

4
争点に関する当事者の主張
次のとおり補正し,
後記5のとおり当審における控訴人の主張を加えるほか,
原判決事実及び理由第3(原判決5頁8行目から31頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)

原判決13頁4,5行目のsixpcakをsixpackに改める。
(2)

原判決22頁14行目及び23頁12行目の各差違点をいずれも差異点に改める。5
当審における控訴人の主張
以下のとおり,被告意匠は,本件意匠に類似するというべきである。
(1)

要部の認定について

創作性の程度及び新規な構成に対する考慮について
意匠法は創作保護法であるから,物品の性質,用途及び使用態様のみならず,当該意匠において新規な美感をもたらすべき創作性の評価等を踏まえて要部の認定を行うべきである。また,新規な構成であって需要者の注意を引く部分があるのであれば,特別な事情がない限り,公知の形態よりはるかに重視されるべきである。
原判決は,本件意匠の基本的構成態様として本体は薄いシート状であり,上下各1か所,左右各2か所の切込みにより,6枚のパッド片を,本体中央部に結合したような形状

6枚のパッド片は,左右2列,上下3段に配置され,左右は対称である。

と認定する。本件においては,上記基本的構成態様自体が新規かつ斬新で,需要者の目を強く引き,印象に残る。また,本件意匠が出願された当時,ウェアラブルのEMS機器の先行公知意匠としては,本件参考文献が存在していただけであった。本件意匠のように,
鍛えられた6つに割れた腹筋をイメージさせるEMS機器
の意
匠は,その全体が全く新規で,それが腹筋を鍛えるという物品の使用目的に沿っているので特に需要者の目を引くものであった。
そうすると,本件意匠の要部は,原判決説示に係る基本的構成態様ⅠないしⅣとして挙げる点及び具体的構成態様のパッド片の左右に深い略V字状の切込みが形成され,これにより左右のパッド片が略3等分され,中段のパッド片の上下に,上段パッド片と下段パッド片が,それぞれ斜め上下方向に広がるように配されている点であるというべきである。イ
要部認定の範囲について
意匠の類否判断は,取引時・使用時における需要者の視点に基づいて,いかなる美感を生じるかの問題であるから,二つの意匠を左右に並べて仔細に観察しなければわからないような細部についてまで要部と認定するのは相当でない。
すなわち,
上段及び下段の切込みの具体的な深さや中段パッド片の形状,傾斜パッド片表面の模様,隆起部などは視覚的印象に残りに,
くく,需要者の注意を強く引くとはいえないから,本件意匠の要部とはいえない。

(2)

類否の判断について
本件意匠の要部は前記(1)のとおりであるところ,上記要部に係る形態は,
被告意匠においても同様に認められる。
そして,それによって,被告意匠において本件意匠と同様に,パッド片が
斜め上下方向に広がっていくような動きのある印象を与える意匠が創出されているとともに,
商品を使用することによって達成しようとする目標(鍛えられ6つに割れた腹筋)を想起させる印象が醸し出されており,需要者の視覚を通じて,本件意匠と共通の美感を想起させるものとなっている。本件意匠及び被告意匠は,
いずれも,
左右の切り込みが深いV字状なので,
上下の方向性が生まれていて,鍛えられた6つに割れた腹筋をイメージさせる躍動感が共通する。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,被告意匠は本件意匠と類似するものではないから,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決事実及び理由第4(原判決31頁24行目から44頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)

(1)

原判決33頁6行目の平成28年2月12日を平成27年5月21日に改め,同頁8行目のいずれも登録を得たの前に平成28年2月12日に,を加える。(2)

原判決33頁11行目の図4を図5に改める。

(3)

原判決33頁13行目の登録を公開に改める。

(4)

原判決33頁22行目の左右に4か所・上下に2か所を左右各2か所・上下各1か所に改める。(5)

原判決35頁15行目の本件中央部を本体中央部に改める。

(6)

原判決38頁25行目の
上段及び下段の切込みの形状,深さ上段,を下段パッド片の形状,傾斜に改める。(7)

原判決38頁12行目の
本体正中央部本体正面中央部

に改める。

(8)

原判決40頁11行目の美観を美感に改める。

(9)

原判決42頁7行目,12行目の前記(3)ウをいずれも前記(2)ウ
に改める。
(10)原判決42頁11行目の相違点を差異点に改める。
(11)原判決42頁21行目の2分の1程度の前に左右幅のを加える。(12)原判決43頁5行目の被告意匠は,の次に上下各1か所に略U字形の切込みがあり,切込みの深さは各パッド片の上下幅の3分の1程度であるほか,を加える。(13)原判決43頁9行目の3分の1程度を左右幅の4分の3程度に改める。
(14)原判決43頁10行目の多いことから12行目の与えることからまでを多いことからに改める。
(15)原判決43頁12行目の引き締まったを削る。
(16)原判決44頁4行目のそのような広義のをそのような理由によるに改める。
2
当審における控訴人の主張に対する判断

(1)

要部の認定について

創作性の程度及び新規な構成に対する考慮について
侵害訴訟において意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の最も注意を引きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠が,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要であるというべきである。
控訴人は,要部の認定においては創作性の程度や,新規な構成であることが十分に考慮されるべきであると主張する。
確かに,公知意匠にはない新規な創作部分の存否等は大きな考慮要素と
いうことはできるが,新規な創作部分であればそれだけの理由で常に要部となるわけではないし,新規な創作部分のみが要部となるわけでもない。あくまでも,需要者の最も注意を引きやすい部分がどこであるかが重要である。
なお,控訴人は,原審が要部を認定するに際し,本件意匠に後行する公知意匠を参照したことを批判する。しかし,ある登録意匠の要部を認定するに当たり,出願後の公知意匠(当該登録意匠を追随したようなものも含まれる。を観察することによっても,

当該登録意匠に含まれる当該形態が,
需要者の注意を引くかどうかを判断することができると考える。

要部認定の範囲について
控訴人は,二つの意匠を左右に並べて仔細に観察しなければわからないような細部についてまで要部と認定するのは相当でないと主張する。しかし,前記アのとおり,需要者の最も注意を引きやすい部分を意匠の要部としてとらえるべきところ,控訴人が主張するように,本件意匠のうち,円形の電池部を中心に6枚のパッド片を左右対称2列3段に配置するという形態が,新規な創作部分であり,要部であるとしたら,そのパッド片の形状やパッド片の結合状態,パッド片を区切る切込みの形状や深さについても,需要者の注意が注がれるのは当然といえる。
控訴人が主張する,仔細に観察しなければわからないかどうかという点については,要部を認定した後,共通点,差異点の抽出,類否の判断において考慮されるべきことである。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。

(2)

類否の判断について
控訴人は,
本件意匠の要部は,
前記第2の5
当審における控訴人の主張

(1)のとおりであって,被告意匠はこれと同様の形態を有し,本件意匠に類似すると主張する。

しかし,前記1において引用した原判決事実及び理由第4の3(2)及び(3)のとおり,本件意匠の要部は原判決説示に係る基本的構成態様(Ⅰ~Ⅳ)及び具体的構成態様(Ⅴ~Ⅷ)であり,控訴人の主張は,その前提(要部の認定)を異にするものであって,採用することができない。
そして,両意匠の間に相当程度の共通点はあるものの,基本的構成態様についてはパッド片の結合の仕方の点,左右対称か上下左右対称かの点が,具体的構成態様については上段,下段パッド片の形状,傾斜の点,中段パッド片の形状,
傾斜の点,
上下の切込みの形状,深さの点,
左右の切込みの形状,
開口の方向,深さの点が異なっているため,本件意匠は機械的,幾何学的な意匠であって躍動感や力強さを感じさせるものであるのに対し,被告意匠は自然界に存在する羽根を想起させる意匠であってやわらかで軽快な印象を与えるものであり,両意匠が与える美感は異なるものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
第4

結論
よって,以上の判断と同旨の原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田陽三
裁判官

倉地康弘
裁判官

三井教匡
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