判例検索β > 平成28年(わ)第771号
殺人未遂、殺人
事件番号平成28(わ)771
事件名殺人未遂,殺人
裁判年月日令和2年7月15日
裁判所名・部福岡地方裁判所  第1刑事部
裁判日:西暦2020-07-15
情報公開日2020-09-18 12:00:18
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令和2年7月15日宣告
平成

殺人未遂,殺人被告事件(裁判員裁判)
判決主文
被告人を懲役22年に処する
未決勾留日数中900日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,平成27年4月4日未明頃,福岡県久留米市a町b番地cde号の当時の被告人方において,別れ話のもつれから,突発的に,殺意をもって,A(当時28歳)の首をひもで強く絞め付けたが,前記Aを一時意識不明の状態に陥らせるとともに,同人に全治7ないし10日間を要する頚部皮下出血の傷害を負わせたにとどまり,同人を死亡させるには至らなかった。
第2

被告人は,職場の同僚であり,一時期同居していたBを殺害しようと企て,平成27年4月29日未明頃,福岡県久留米市内又はその周辺において,殺意をもって,同人(当時25歳)に睡眠薬等の薬剤を服用させ,同人を意識もうろう状態に陥れた上,同人を自動車で同県八女市f町ghi番地jから西方約600mのk大橋へ連れて行き,同人を橋の上から約54.8m下の沢へ墜落させ,よって,その頃,同所において,同人を頭部打撲による脳幹部損傷により死亡させて殺害した。

(証拠の標目)※括弧内の番号は,検察官請求証拠番号を示す。
省略
殺人未遂について有罪と判断した理由)
1
被告人がAの首を絞めたと認められること
被害者とされるAは,判示第1のとおり被告人方で被告人から首を絞められたと供述し,Aの母Cは,その日(4月4日)の朝被告人方を訪れ,Aからその旨聞き,被告人に確認したところ,被告人もAの首を絞めたことを認めたと供述する。
これらの供述は,Aの首にAの述べる態様で被告人から首を絞められたとして矛盾しない索条痕があることや,同日夜から翌日にかけて被告人がCに対して

今回はご迷惑をお掛けしました。診察にかかった費用を持って行きたい。「


などというメールを送信したことと整合している。
また,Aは,別れ話のもつれから被告人が突発的にAの首を絞めた旨供述するところ,
被告人の知人であるDは,
事件前,
被告人が

Aと別れたくないが,彼は別れたがっている。「彼の車に火をつける。「料理に薬を混ぜる。


」などと
言っていたと供述しており,Aの供述を裏付けている。
もっとも,A及びCが110番や119番に通報していないこと,Aが警察に被害届を出したのはかなり後であることなど,AやCの事件後の行動には一見おかしな点もある。しかし,この点について,Aは,これ以上被告人と関わりたくなかったと述べ,Cは痴話げんかであって大事にしたくなかったと述べており,このような説明はそれなりに理解できる。
そのほか,弁護人は,A供述の問題点をいくつか指摘しているが,だからといってAが作り話をしているとは考えられない。
他方,被告人は,Aから首を絞められるなどして気絶し,気が付くとAが首にひもを巻いて寝ていたので,ひもをほどいたなどと述べ,Aに薬を飲ませたことはないし,Aの首を絞めたこともないと供述する。また,被告人は,Aから継続的なDVを受けていたと述べるほか,Aに貸し付けた生活費の返済を要求していたなどと供述する。
しかし,これが事実なら,事件後,被告人がCに前記のようなメールを送信することは考え難い。この点,被告人は,自宅で何かが起きたことは事実だと思ったし,解離性同一性障害のため(なお,被告人の精神鑑定を実施したE医師によれば,被告人が解離性同一性障害に罹患していることが認められる。,)
人格が変わるとその状況についてすぐに説明できないことが多いので,とりあえず謝ったなどと供述するが,Aに薬を飲ませたり,Aの首を絞めたりしたという認識がないにもかかわらず,しかも,Aに貸し付けた生活費の返済を要求していたというのに,自分の責任を認めて治療費を負担する旨のメールを送信するというのは不自然である。
また,Aが自分で自分の首を絞めて索条痕をつける理由も見当たらない。弁護人は,Aが本気で自殺を考えていた可能性を指摘するが,法医学の専門家であるFによると,Aの索条痕は首つりによるものではないし,自分でひもを引っ張る方法で首を絞めても,
意識がなくなればひもは緩むというのであるから,
そのような方法で自殺を図ったとは考えられない。
なお,Aの首には,A自身が抵抗してつけた傷跡が見当たらないが,前記Fによれば,首を絞められた被害者は抵抗した傷跡を残さないことの方が多いというのであるし,A自身,抵抗する間もなかったと述べているのであるから,問題はない。
以上から,被告人の供述や弁護人の主張を踏まえても,被告人から首を絞められたというAの供述は間違いないと判断した。
2
被告人に殺意が認められること
Aは,被告人方和室の窓際に座っていたところ,右後ろにいた被告人が,和室の腰高窓の落下防止柵に結び付けられたひもをAの首に巻き付け,両手で綱引きをするような体勢で引っ張ったため,息ができなくなり,二,三秒で気絶したなどと供述する。
そもそも,前記Fが述べるように,首を絞めるという行為は小さな力でも人が死ぬ危険性の十分ある行為である上,上記のように被告人が力を入れやすい体勢でひもを引っ張り,Aの首を絞めたことからすると,被告人には殺意があったと考えるのが自然である。
次に,Aは,首を絞められる前に大量の薬を飲んでいるが,薬学の専門家であるGによれば,
薬の作用で一気に気絶することは考えにくいというのであるから,Aが気絶した原因は首を絞められたことにあると考えられる。
また,Cは,被告人方でAの顔を見たとき,どす黒い,紫がかった赤色だったと供述する。Cは,日中,カーテンの開いた部屋で,倒れていた息子を発見して意識的にその顔を確認したのであるから,
この供述の信用性は高い。
そうすると,
Aは,首を絞められて顔面がうっ血していたものと解される。
そして,前記Fの供述によれば,Aが首を絞められて気絶し,顔面にうっ血を生じたことから,
被告人は一,
二分間Aの首を絞め続けたことが認められる。
二,
三秒で気絶したというAの供述は,あくまで感覚的なものにすぎず,前記認定に疑いを生じさせるものではない。
このような行為態様の検討に加えて,そこに至るまでの被告人の言動に照らすと,被告人は,Aとの別れ話のもつれから,突発的に殺意をもってAの首を絞めたと認めるのが相当である。
殺人について有罪と判断した理由)
判示第2の日時頃,Bがk大橋から墜落して死亡したことは争いがなく,証拠上も明らかである。その上で,検察官は,被告人がBに薬物を服用させて意識もうろう状態に陥れ,Bを橋から墜落させて殺害したと主張するのに対して,弁護人は,被告人がBと二人でk大橋にいたことは認めつつ,被告人はBに薬を飲ませたことも墜落させたこともないから無罪であると主張し,
被告人もこれに沿う供述をする。
そこで検討すると,まず,前記Gの供述によれば,Bは,当時,服用した薬物の影響により,自力で立っていられないような状態であり,自分一人でk大橋の欄干を乗り越えて墜落することはできない一方,他人が指示を出したり,介助したりすれば,Bに欄干を乗り越えさせることは可能であったと認められる。そして,Bと二人でk大橋に行ったという被告人の供述は,その直前に二人が被告人方を出る様子が防犯カメラで記録されていることや,二人で食事をしたといううどん屋のレシートなどにより裏付けられており,未明という時間帯や,周囲を山に囲まれたk大橋という場所柄からも,Bに欄干を乗り越えさせた他人は,被告人以外に考えられない。また,Bのラインのトーク内容等から,被告人が架空の人物である海図になりすましてBとの間でトークをやり取りする方法で,Bに薬物を服用させ,Bをk大橋まで連れて行ったことが認められる。そうすると,被告人は,Bに薬物を服用させ,Bをk大橋まで連れて行った上で,Bが薬物の影響により自力で立っていられないような状態であることを分かりながら,Bに指示を出したり,Bを介助するなどして,Bに欄干を乗り越えさせたことになるのであるから,その後Bがどのようにして橋から墜落したのか,その具体的態様が不明であるとしても,被告人がBを墜落させて殺害した犯人であると認められる。さらに,被告人が,Bの墜落後110番や119番通報をしていないことや,Bの死亡後間もなく海図のラインアカウントを削除したこと,事件前に被告人が知人に対してBの殺害をほのめかす言動をしていたことは,いずれも被告人がBを殺害したことを裏付けている。被告人が犯人でないのにこのようにいくつもの事実が偶然積み重なることは考えられない。よって,検察官の主張どおり,判示第2の事実が認められる。
以下,補足して説明する。
1
Bが自分一人でk大橋から墜落したのではないこと


k大橋の状況
k大橋は,自動車が通行できる道路橋であり,橋の両側には欄干がある。橋の下は谷であり,欄干の下の縁石から谷底の沢までの高さは約54.8mである。欄干の高さは約85cm,欄干の下の縁石の高さは25cmである。欄干の外側には6.5cm間隔で縦に格子が取り付けられている。
そして,福岡県警察科学捜査研究所の物理科で勤務するHによると,Bと同じような体格の人物が,k大橋において,欄干から谷底を覗き込むように身を乗り出したり,欄干に背中を付けてよりかかったりしても,体の重心が欄干の頂点付近よりも低いため,それだけで墜落することはなく,墜落するには欄干の上部手すりを鉄棒に見立てて前回りをするように体を持ち上げるなどする必要があることが認められる。
橋から墜落する直前のBの状態
Bの遺体の心臓内血液等からは,アルプラゾラム(抗不安薬)
,フルニトラゼ
パム(睡眠薬)
,エチゾラム(睡眠薬)
,クエチアピン(抗精神病薬)という4
種類の薬物が検出された。前記Gは,各薬物の心臓内血液中の濃度及び血中治療域(治療の上で十分な効果が現れる血中濃度の幅)を基に,Bが橋から墜落する直前の時点において,これらの薬物は,いずれも,単独で一定程度若しくは十分に効果を発現しており,さらに,これらの薬物には相乗効果があることからすると,Bは,これらの薬物の睡眠作用,鎮静作用により,意識レベルが低下して,外から刺激を与えなければすぐにも眠ってしまい,何かをする意思や意欲が生じたり,それが継続したりすることが考えにくい状態であって,自分が橋の外へ出ようとしているという状況を認識していたかについても疑問があり,また,これらの薬物の筋弛緩作用により,他人が支えていなければ腰が抜けたように座り込んでしまう状態であったと考えられるが,他方で,他人が話しかけるなどして刺激を与え,眠らないようにした上で介助すれば,橋の欄干を乗り越えることもできたはずであるなどと供述する。
これに対し,弁護人は,薬の効果には個人差があることなどから,G供述の信用性を争うが,Gは,薬学の専門家としての知識と経験に基づき,Bの心臓内血液の薬物濃度等を根拠に,各薬物の血中治療域に反映されている薬効の個人差も考慮し,かつ,実際にk大橋に赴き前記のような欄干の状況等を確認した上で墜落直前のBの状態を検討していることからすると,G供述の信用性は肯定できる。
そうすると,
Gが前記供述内容を踏まえて考察しているとおり,
Bは,
当時,
これらの薬物の影響により,自力で立っていられないような状態であり,自分一人でk大橋の欄干を乗り越えて墜落することはできない一方,他人が指示を出したり,介助したりすれば,Bに欄干を乗り越えさせることは可能であったと認められる。
なお,弁護人は,Bが自殺した可能性を指摘するが,Gは,薬物の作用により意識レベルが低下し,自殺を決意していたとしてもその意思が継続するとは考えられない旨述べている上,Bの知人であるIも,Bが5月3日に好きな歌手のコンサートに行く予定であり,それを楽しみにしていた旨述べていることなどからして,弁護人の主張には理由がない。
また,弁護人は,k大橋の欄干や格子等に印象された指掌紋等の状況からすると,Bの状況等について橋の上で手の位置が2m以上移動したことなどが推論できるところ,このようなBの状況等についてGは合理的な説明ができなかったと批判する。しかし,前記指掌紋等について,間違いなくBのものと判断できたのは一つだけであり,それ以外は誰のものであるか,いつどのように付いたのか不明であり,前記指掌紋等の状況からBがどのようにして欄干の外に出て橋から墜落したかを特定することはできないから,弁護人の批判は当たらない。
まとめ
以上から,Bは,薬物の影響により,意識もうろう状態で,他人の指示や介助によってk大橋の欄干を乗り越え,その後,橋から墜落したものであって,その場には指示や介助をした他人がいたと認められる。
2
被告人がBを墜落させて殺害したこと
Bと一緒にいた人物は被告人であること
Bは,本件当日(平成27年4月29日)午前零時48分頃(甲40,証人J)被告人と共に被告人方マンションから外出しており,

その様子が防犯カメ
ラに記録されている。
その後の行動について,被告人は,Bと行動を共にし,久留米市内のうどん屋で食事をした後,いったん被告人が自宅に戻り,更に被告人が運転する車でk大橋方面に向かったと供述しており,この供述は,防犯カメラに記録された内容や,うどん屋のレシート(甲127)により裏付けられている。また,Bの遺体を解剖した結果,胃の中からうどん等の固形物が検出されており,その消化が軽度であることから,Bは食後1時間程度で死亡したと推定されている。
さらに,Bがk大橋から墜落したのは未明の時間帯であり,しかも,k大橋は市街地から離れていて,周りを山に囲まれ,自動車で行くしかないような場所である。
これらの事実によれば,Bがk大橋から墜落する直前に,Bと一緒にいた人物は被告人以外には考えられない。被告人自身,この時Bと一緒にいたこと自体は認めている。
被告人がBに薬物を服用させ,k大橋に連れて行ったこと
前記のとおり,Bの遺体からは4種類の薬物が検出されたところ,Bが本件前頃にこれらの薬物を処方されたことはない(甲119)
。他方,被告人は本件
前頃に複数の精神科を受診してこれらの薬物の処方を受けていた(甲118)。
次に,Bが使用していた携帯電話番号のライントーク履歴等を調べた結果,被告人が使用していた架空の人物である海図
(甲123)のラインアカウン
トとBのそれとの間で,本件前頃,頻繁にやり取りがされており(甲124),
その内容,とりわけ,海図がBに対して,本件前日の4月28日(火曜日)に写真を撮る仕事に参加するように何度も誘い,その際,意識障害を生じる何らかのものを飲むように促し,これを嫌がるBを再三説得した結果,4月29日午前1時53分,Bが海図に対してのんだよーというメッセージを送信したことに加えて,Bが母親に対して心霊スポットで写真を撮るアルバイトがあると言ったり(証人K)
,知人であるLとの間で,Bがかいとくんわかるよねー?
なんかね,写真撮ってきて言われたっちゃけど
,Lがスポット?

Bがそそーといったラインのやり取りをしたりしていること(甲125)などをも併せ考えると,被告人が,
海図なる人物になりすまし,ラインを通
じて,海図が実在の男性であると信じていたBに対し,心霊スポットで写真を撮る仕事に行く前に飲む必要があるなどとだまして,前記4種類の薬物を服用するように迫り,久留米市内のうどん屋ないしその周辺で被告人がBに薬物を渡すなどして服用させた上で,
Bをk大橋まで連れて行ったことが認められる。
これに対して,被告人は,
海図について,仮想現実遊びのためにBと一緒
に作った架空の人物であり,B自身それを承知で被告人の携帯電話機を使って海図のアカウントからBのアカウントにメッセージを送ることもあったなどと供述し,弁護人も,検察官は被告人がBに薬を飲ませたことを立証できていないなどと主張する。
しかし,Bがそのような遊びをする理由が見当たらない上,海図とBは4月26日から4月29日午前3時頃までの間に数百通に及ぶ多数のメッセージを送り合っており,Bが一人二役でやったとは考えられないことや,その内容,特に,嫌がるBを海図が繰り返し説得していること,さらに,Bの友人であるLやIが,Bの言動等からBは海図を実在の人物であると信じていたと思う旨供述していること(証人L12~13頁,同I2~3頁)からすれば,弁護人が指摘する諸事情を踏まえても,
Bは,
海図が実在の男性であると信じており,
被告人が海図になりすましていることは知らなかったといえるから,前記認定は変わらない。
まとめ
以上によれば,被告人は,Bをだまし,意識障害等を生じさせるような薬物を服用させ,k大橋まで連れて行った上で,Bが薬物の影響により自力で立っていられないような状態であることを分かりながら,Bに指示を出したり,Bを介助するなどして(例えば,Bを立たせて心霊スポットの写真撮影をするなどと申し向けて)
,Bに欄干を乗り越えさせたと認められる。
この点,被告人は,橋の上でBに背を向け,煙草を吸い終わって振り返るとBが欄干の外側にいたなどと供述するが,内容自体不自然である上,Bが一人で欄干を乗り越えることができない状態であったことからも信用できない。なお,被告人がBに欄干を乗り越えさせた後,Bがどのようにして橋から墜落したのか,その具体的な態様は不明である。しかし,自力で立っていられないような状態のBを高さ50mを超える橋の欄干の外側に移動させる行為は,それだけでBが橋から墜落して死亡する危険性の高い行為であるといえるから,その結果,Bが墜落して死亡した以上,被告人がBを突き落としたか否かにかかわらず,被告人は殺意をもってBをk大橋の上から墜落させて殺害したと認められる。
3
裏付けとなるその他の事情


被告人の事件後の行動
被告人はBの墜落後に110番や119番通報をしていない。
被告人は,Bと一緒にk大橋にいたのであるから,被告人が墜落させていないのにBが橋から墜落したのであれば,通報するはずである。それをしなかったのは,被告人がBを墜落させたからであると考えるのが最も合理的であり,それ以外の説明は困難である。この点,被告人は,気が付いたらk大橋付近で車の中に一人でおり,健忘により,そこにいた理由やBと一緒にいたことを忘れていたので通報しなかったなどと供述するが,被告人が解離性同一性障害に罹患していることを考慮しても,その供述は不自然である。
また,被告人は,4月29日午前5時47分に海図のラインアカウントを消去した(甲123)
。これは,被告人が海図になりすましてBを殺害した証拠を
隠滅するためにしたことと考えるのが最も合理的であり,それ以外に上記の日時に被告人が海図のラインアカウントを削除しなければならない理由を見出すことは困難である。被告人自身,海図のラインアカウントを削除したのは,そのような強迫観念があったからであるなどとあいまいな理由を述べるにとどまっている。
被告人が事件前にB殺害をほのめかす言動をしていたこと
被告人の知人であるDの供述(証人D16~17頁,21~23頁,45~46頁)によれば,本件前,被告人が,Bについて,
裏切られた殺す


薬を飲ませたけど失敗した4月28日に薬を飲ませて自殺に見せかけて,殺すなどと言ったことや,被告人がDにチョコラBBという栄養ドリンクの瓶の中に入ったどろどろしたものを飲ませたこと(同45~46頁)が認められる。
また,被告人と自殺サイトで知り合ったMの供述(証人M4~8頁)によれば,
本件前,
被告人が,一緒に暮らしていた親友のせいで子供を取り上げられ,彼氏とも引き離され,すべてを失ったその人が憎い,殺したいなどと言,
ったこと,被告人からその友達のプリクラを見せてもらっており,それがBに間違いないこと,被告人が睡眠導入剤をチョコラBBの瓶に入れてかき混ぜていたことが認められる。
D及びMの各供述は,相互に符合する内容である上,DやMが被告人とやり取りしていたメールの内容(甲120,129)
,特に,4月27日にDが被告
人に対してBさんのことだいじょうぶになったかな?というメールを送信したこと(証人D27頁)などとも整合しており,いずれも信用できる。4
結論
被告人が犯人でないのに,被告人が犯人であることを示すこれらの事実が偶然積み重なることは考えられない。これらは,被告人が犯人でないとしたら説明することが困難な事実関係といえる。よって,判示第2のとおり,被告人がBを殺害した犯人であると認定した。

(量刑の理由)
同種事案(処断罪は殺人,単独犯で組織的以外,処断罪と同一又は同種の罪の件数1件,被害者の落ち度なし,殺意は計画的)の量刑傾向を確認した上で,本件の量刑について検討した。
殺人についてみると,
計画的かつ強固な殺意に基づく無慈悲で冷酷な犯行である。
被告人が語らない以上,動機は不明というほかないが,被害者に落ち度はなく,被告人が被害者を憎んでいたとしてもそれは逆恨みであって,動機に酌量すべき事情は見いだせない。
もとより,
まだ若い被害者の命が奪われた結果は誠に重大である。
愛するわが子を失った被害者の両親が,被告人に対する厳しい処罰を希望するのも当然である。
また,殺人未遂についてみると,被害者との別れ話のもつれから突発的に殺意を生じたものであって,被害者も当初は警察に届け出ていないこと,傷害結果が比較的軽いことを指摘できるものの,首を絞めて殺そうとする行為自体の危険性を軽視することはできない。
以上より,本件は,同種事案の量刑傾向の中で重い部類に位置付けるのが相当である。
被告人は,解離性同一性障害と診断されたが,主人格と交代人格間で情報を共有するなどしており,精神障害の各犯行への影響はほとんど認められない。被告人に前科はなく,また,被告人のこれまでの人生には不遇な面もあったことがうかがえるが,他方で,不合理な弁解を重ねた被告人には,人の命を奪ったことへの反省が認められない。
そこで,これらの事情も考慮し,主文のとおり刑を量定した。
(求刑

懲役25年)

令和2年7月15日
福岡地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官

柴田寿宏
裁判官

武富一晃
裁判官

髙橋侑子
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