判例検索β > 平成27年(行ウ)第50号
違法公金支出返還請求事件
事件番号平成27(行ウ)50
事件名違法公金支出返還請求事件
裁判年月日令和2年6月25日
裁判所名・部京都地方裁判所  第3民事部
裁判日:西暦2020-06-25
情報公開日2020-08-21 16:00:20
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主1文
本件訴えのうち,被告京丹波町に対する補助金交付決定の取消請求に係る部分を却下する。

2
原告らの被告京丹波町長に対する請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は原告らの負担とする。事
第1
1実及び理由
請求
被告京丹波町長は,被告補助参加人に対し,6億0700万円及びこれに対する平成27年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。

2
被告京丹波町長が丹波地域開発株式会社に対し平成26年12月22日にした補助金交付決定を取り消す。

3
被告京丹波町長は,丹波地域開発株式会社に対し,3億2529万円及びこれに対する平成27年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。

4
被告京丹波町長は,丹波地域開発株式会社に対し,2億8171万円及びこれに対する平成27年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。

第2
事案の概要

1
事案の要旨
本件は,被告京丹波町(以下被告町という。)の町長であった被告ら補助参加人(以下参加人という。)が,被告町内に立地する商業集積施設である丹波マーケスを運営するいわゆる第三セクターである丹波地域開発株式会社(以下本件会社という。)の経営を支援するため,被告町の機関と
して,本件会社に補助金3億2529万円(以下本件補助金という。)を交付する決定(以下本件交付決定という。)をするとともに,本件会社との間で,本件会社の所有する丹波マーケスの敷地(別紙3物件目録(略)記載の各土地。以下併せて本件土地という。)を代金2億8171万円で買い受ける旨の売買契約(以下本件契約という。)を締結し(以下本件契約締結行為という。),被告町が,本件会社に対し,本件補助金及び本件土地の売買代金として合計6億0700万円を支払ったことについて,被告町の住民である原告らが,


被告京丹波町長に対し,
本件交付決定は,裁量の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり,参加人は,違法な補助金の交付決定をしたことにより,被告町に補助金相当額3億2529万円の損害を被らせ,

本件契約締結行為は,裁量の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり,参加人は,違法な契約を締結したことにより,被告町に売買代金相当額2億8171万円の損害を被らせた
と主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,参加人に対して6億0700万円の損害賠償請求すること(支出の日である平成27年
1月9日以降年5分の割合による遅延損害金の請求を含む。)を求め(請求の趣旨第1項),
本件交付決定が無効であることを前提に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,相手方である本件会社に対して本件補助金相当額3億2529万円の不当利得返還請求をすること(同日以降年5分の割合
による利息又は遅延損害金の請求を含む。以下同じ)を求め(請求の趣旨第3項),
本件契約が無効であることを前提に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,相手方である本件会社に対して売買代金相当額2億8171万円の不当利得返還請求をすることを求め(請求の趣旨第4項),


被告町に対し,地方自治法242条の2第1項2号に基づき,本件交付決定の取消しを求める(請求の趣旨第2項)事案である。
2
関係法令等の定め
地方自治法


2条14項
地方公共団体は,その事務を処理するに当つては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。


232条の2
地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助
をすることができる。
地方財政法4条1項
地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。
京丹波町補助金等交付規則(乙14)


5条
補助金等の交付の申請をしようとするものは,補助金等交付申請書に,事業計画書,収支予算書又はこれに準ずる書類及びその他町長が必要と認める書類を添えて,町長に提出しなければならない。


6条1項
町長は,補助金等の交付の申請があったときは,当該申請に係る書類を審査し必要に応じ実地を調査し,補助金等を交付すべきと認めたときは,速やかに補助金等の交付を決定するものとする。
第三セクター等の経営健全化等に関する指針(甲7。以下本件指針と
いう。)
総務省が平成26年8月5日に策定したガイドラインである本件指針には,要旨以下の定めがある。ア
第三セクター(地方公共団体が出資又は出えんを行っている会社法法人等)は地方公共団体から独立した事業主体として,公共性,公益性が高い事業を行う法人である。その経営は原則として当該第三セクター等の自助努力により行われるべきであるが,当該第三セクター等が能率的な経営を
行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難と認められる経費については,地方公共団体が公的支援を行うこともやむを得ないものと考えられる。

地方公共団体に相当程度の財政的なリスクが存在する第三セクター等において,経営が著しく悪化している場合には,速やかに抜本的改革を含む
経営健全化を検討することが強く求められる。地方公共団体は,第三セクター等が経営悪化に至った主たる要因が,公共性,公益性が高い事業を行ったことにより生じた損失以外である場合には,財政支援は行うべきではない。また,第三セクター等が公共性,公益性が高い事業を行っていたとしても,財政支援の前に経営の効率化,合理化の余地について検討し,速
やかに取り組むことは当然である。
3
前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠〔特に掲げるもののほか,枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)⑴

当事者等

原告らは,被告町の住民である。


被告町は,京都府の中心部に位置し,船井郡を構成する自治体の1つであり,平成17年10月11日,丹波町,瑞穂町及び和知町が合併することにより発足した。被告町の平成26年当時の住民数は,約1万5000人であった。


被告京丹波町長は,被告町の執行機関である。参加人は,平成21年11月20日から平成29年11月19日まで,被告町の町長の職にあった者である。エ
本件会社は,平成4年11月6日,丹波町が500万円(全体の15.6%),民間企業が2700万円を出資するいわゆる第三セクターとして設立された。設立の基本方針は,船井地域の消費者を対象とする暮らしの広場と国道を通行するドライバーとレジャー客への飲食サービス機能
の複合的商業集積の確立であり,設立時の代表取締役には,当時丹波町の町長であったAが就任した。
参加人は,本件会社の設立時から平成25年3月30日まで本件会社の取締役であり,うち平成6年10月8日から平成24年7月14日までは代表取締役であった。参加人の子であるBは,平成24年7月14日から
平成26年11月25日まで本件会社の代表取締役であった。

参加人は,昭和53年,本店を京丹波町に置き食品及び日常生活用品等の小売業を行うサンダイコー株式会社(以下サンダイコーという。)を設立し,平成17年3月5日までその代表取締役であった。同日以後は,Bがサンダイコーの代表取締役である。

サンダイコーは,本件会社の設立に当たり,300万円を出資し,丹波マーケスの開業当初から現在まで,そのテナント(スーパーマーケット等)として入居している。
丹波マーケス開業までの経緯

丹波町は,平成5年5月,本件会社が事業主体となり,商業基盤施設と商業施設の一体的整備を目指すことを内容とする丹波町特定商業集積整備基本構想(乙6の1)を定め,同年12月,丹波町議会において,商業集積の整備推進に関する決議がされた(乙19)。


丹波町は,上記アの基本構想及び決議に基づき,船井郡北桑田地区土地開発公社(以下土地開発公社という。)との間で本件土地の先行取得契約を締結し,土地開発公社は,同契約に基づいて第三者から取得した本件土地を丹波町に売り渡した。ウ
本件会社は,丹波町との間で,①平成9年3月12日,本件土地の一部である別紙3物件目録記載1~3の各土地(計12464.62㎡(当時の公簿面積)。以下本件土地甲という。)を代金7億6843万8000円で,②平成12年3月31日,本件土地の残部である別紙3物件目
録記載4の土地(1147㎡。以下本件土地乙という。)を代金8809万6855円で,いずれも本件会社が丹波町から購入する契約を締結した(乙2)。

本件会社は,平成9年4月28日,その所有する本件土地上に鉄筋コンクリート造り平家建ての店舗建物を建築し,同月29日,商業集積施設
丹波マーケスを開業した(乙2)。

本件会社は,丹波マーケスの運営を始めるに当たり,平成9年5月26日,京都府から,京都府中小企業高度化資金(商店街整備等支援事業の用に供する施設の設置資金を使途として貸し付けられる資金。以下本件資金という。)として12億3800万円(後に12億1185万円に減
額)を借り入れた(以下,この借入金を本件借入金という。)。その際,参加人外10名は,本件会社の借入金債務を連帯保証した。本件借入金は無利子であり,その償還計画は,5年間据置きの後,平成14年度から平成27年度まで年8253万3000円,平成28年度に8253万8000円を返済するというものであった。

丹波マーケスの概要

丹波マーケスは,テナント出店型の商業集積施設であるところ,平成26年の時点において,最大のテナントはサンダイコーが経営するスーパーマーケット(サンダイコー丹波マーケス店)であった(乙1,弁論の全趣旨)。


本件会社は,丹波マーケスの駐車場として,サンダイコーから11筆合計7932.88㎡の土地を,C及びDから1筆1776.03㎡(実測)の土地を,被告町から2筆合計3451.31㎡の土地を,それぞれ賃借している(甲13)。
本件補助金及び本件契約代金の支出の経緯等

本件借入金の平成26年9月時点における残高は,6億0700万円であった。(乙1,2,12)


被告町は,本件会社から同年6月20日付けで要請書と題する書面(乙2(53頁)。以下本件要請書という。)が提出されたことを受け,同年9月2日,被告町議会の平成26年度第3回定例会(本会議)において,本件会社に対する経営支援のため,商業集積施設経営安定化補助
金として3億2529万円を交付すること及び本件土地を時価評価額である2億8171万円で本件会社から買い受けることを予算の内容とする議案(平成26年度京丹波町一般会計補正予算(第2号)。以下本件補正予算案という。)を提出した。本件補正予算案については,同月9日の議員全員協議会及び同月24日の本会議において審議された結果,賛
成多数で可決された。(乙27,28)

被告町は,当時の被告町長(参加人)を機関として,平成26年11月27日,本件会社との間で,被告町が本件土地を代金2億8171万円で本件会社から買い受ける旨の契約(本件契約)を締結した(本件契約締結行為。乙11の2)。


本件会社は,平成26年12月10日,当時の被告町長(参加人)に対し,平成26年度商業集積施設経営安定化補助金交付申請書(交付申請額は3億2529万円)を提出した(乙37)。


被告町は,平成26年12月22日,被告町議会の平成26年度第4回定例会(本会議)において,本件土地の取得に関する議案(土地の取得について)を提出し,審議の結果,同議案は賛成多数で可決された(乙29)。カ
当時の被告町長(参加人)は,平成26年12月22日,本件会社に補助金3億2529万円(本件補助金)を交付する決定(本件交付決定)をした(乙38)。


被告町は,平成27年1月9日,本件補助金3億2529万円及び本件契約の代金2億8171万円(合計6億0700万円)を支出した(甲3~6。以下これらの支出を併せて本件支出という。)。


本件会社は,本件支出により受領した6億0700万円をもって,本件借入金を全額弁済した。



住民監査請求

原告らは,平成27年8月31日,京丹波町監査委員に対し,被告町の被った損害を填補するため本件会社に対して補助金6億0700万円の返還請求をするなど必要な措置をとることを求める住民監査請求をした(甲1)。


京丹波町監査委員は,平成27年10月28日,上記アの監査請求を棄却し,同月29日,原告らはその旨の通知を受けた(甲2)。



本件訴訟の提起
原告らは,平成27年11月25日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
4
争点
本件交付決定に処分性があるか(本案前の争点。争点⑴)
本件交付決定及び本件契約締結行為につき財務会計上の違法の有無ア
本件交付決定の違法性の有無(争点⑵ア)


本件契約締結行為の違法性の有無(争点⑵イ)
参加人の過失の有無及び被告町の損害額


本件交付決定及び本件契約締結行為を行うにあたり,参加人に過失があったか(争点⑶ア)イ

被告町の被った損害額(争点⑶イ)
不当利得返還請求の可否

アイ5
被告町の損失及び本件会社の利得の有無(争点⑷イ)

本件交付決定及び本件契約が違法,無効か(争点⑷ア)
本件会社の悪意(法定利息請求の可否)(争点⑷ウ)
争点に関する当事者の主張
争点⑴(本件交付決定に処分性があるか)
(原告らの主張)
本件交付決定は,本件借入金に係る保証人の保証債務を免れさせるもので
あり,それにより権利義務の取得や消滅の法律効果が生じるものであるから,行政処分である。
(被告らの主張)
補助金交付に関する法律関係は,その本質上,契約関係であり,補助金交付を行政処分として扱うには,その旨の明確な法律等の定めが必要である。
本件交付決定は,京丹波町補助金等交付規則(乙14)に基づくものであるところ,同規則には理由の開示に関する規定がなく,その他の規定をみても,本件交付決定が処分であることを根拠づける規定は見当たらない。したがって,本件交付決定は行政処分ではない。
争点⑵(本件交付決定及び本件契約締結行為につき財務会計上の違法の有
無)

争点⑵ア(本件交付決定の違法性の有無)

(原告らの主張)
本件交付決定は,以下のとおり,事業の目的,効果との均衡を著しく欠き,社会的,政策的見地又は経済的見地から予算の執行権限を有する職員に与えられた裁量を逸脱するものであり,最少の経費で最大の効果を挙げるべきこと及び経費はその目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて支出してはならないことを定めた地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に違反して違法である。
本件会社の行った事業に公益性がないこと
丹波マーケスの開業により,周辺の小規模商店の経営に悪影響があったという面もあり,地域経済の活性化や雇用の牽引,観光や文化の振興に貢献した事実は認められない。
また,平成27年7月には,京都縦貫自動車道の全線開通に伴い,道の駅京丹波味夢の里が被告町内に開業し,丹波マーケスが京丹

波町で唯一の商業集積施設ではなくなったから,本件会社ないし丹波マーケスを存続させる必要性は小さい。
本件交付決定が専ら参加人の利益を図るために行われたこと
a
本件交付決定は,本件会社の債務の連帯保証人ら(参加人を含む)が本件借入金に係る保証債務の履行を求められることを回避するためにされたものである。

b
丹波マーケスの最大テナントは,参加人が代表者を務めていたサンダイコーであるところ,サンダイコーが本件会社に支払うテナント賃料は,既定の基準や他のテナントの賃料に比べて大幅に減額されている。また,サンダイコーはその所有地を丹波マーケスの駐車場の敷地として本件会社に賃貸しているが(前提事実⑶イ),当該賃貸借契約においては,本件会社が,上記土地上にあったサンダイコーの店舗建
物の解体費用を負担し,立退料7000万円を支払うとの約定がされ,その賃料も他の地主より高額となっている。このようにサンダイコーは極めて優遇されており,本件会社はサンダイコーのために設立されたものというべきであるから,本件交付決定は,サンダイコーに対する利益の供与といえる。

c
被告らは,本件土地は,丹波町が土地開発公社を通じて先行取得したものであり,本件会社が本件土地を取得するために借り入れた本件借入金について,本件会社の経営責任のみに帰することはできない旨主張する。しかし,本件会社が用地を賃借せずに購入すべきであると主張したのは,本件会社の代表取締役であった参加人である。また,本件会社は,平成12年3月31日,本件土地乙を高い坪単価で追加購入している。このように,本件借入金を借り入れるという判断をし,本件会社の経営不振の原因を作ったのは参加人であるから,参加人が経営責任を負うのは当然であり,それにもかかわらず,参加人の経営責任を明らかにしないまま公金を支出したのであるから,本件交付決
定は,専ら参加人の利益を図ったものというべきである。
なお,本件補助金の額は,本件交付決定時における本件借入金の残額から本件売買代金額を控除した額として決定されており,このような補助金の額の定め方は,公金支出のあり方として違法である。
本件会社は経営改善のための方策を講じていないこと

本件会社の総収入が計画を上回ったのは丹波マーケスが開業した平成9年度だけで,その後は毎年計画を下回り,平成22年度以降は計画の6割に満たなかったのであるから,参加人らは,早い段階から本件借入金の償還が不可能であることを認識していたはずである。それにもかかわらず,これを償還するための抜本的な手段を講じた形跡がないことに
照らすと,本件会社及び参加人は,端から公金の投入を見込んでずさんな償還計画を立てていたものといえる。
本件会社の経営を圧迫する一因として,最大の店舗及び倉庫を有するサンダイコーのテナント料が低く設定されていること及びサンダイコー所有の駐車場敷地の借地料が高いことがあったにもかかわらず,本件会
社は,それらについて何ら対策を講じていない。また,本件会社にはテナント料の未収金があるところ,本件会社の役員の大半が丹波マーケスのテナントの代表者によって占められていることから,その回収が妨害されており,対策が講じられていない。
本件交付決定に至る被告町議会の審議は不十分であること
本件においては,本件会社の経営内容を徹底的に把握し,本件会社の行う事業がそもそも公共性,公益性が高い事業であったか,独立事業者として必要な経営改善策が実行されたがそれでもなお経営が困難であったといえるか,財政支援が最善である理由や事業整理を選択しなかった理由,被告町長による債務保証が本件会社の抜本的改革の阻害要因となる可能性等について,被告町議会等において十分に検討されなければな
らないところ,被告町議会における審議の際には,本件会社の決算資料等の重要な資料が示されず,示された資料も根拠のない数字を記載するなど問題があるものであったことに加え,審議がわずか2日間しか行われなかったため,上記事項について十分な検討ができなかった。
被告町議会の審議等に先立つ補助金交付申請がなかったこと

本件では,本件会社による補助金交付申請書の提出がされていない段階で,参加人が補助金を交付する方針を決定した上,被告町議会における補助金交付に係る審議がされている。このような経緯からすれば,参加人が,当初から,被告町の公金支出により本件会社の借入金債務及び参加人の連帯保証債務を帳消しにする目的をもって本件交付決定をした
ことが明らかである。
本件指針に反すること
第三セクターに対する財政支援については,本件指針に従い,経営悪化の原因が公共性,公益性が高い事業を行ったことにより生じた損失以外である場合には財政支援は行うべきではなく,公共性,公益性が高い事業を行っていたとしても,財政支援の前に経営の効率化,合理化の余地について検討し,速やかに取り組むべきであるところ,上記のとおり,本件会社の事業に公益性はないし,財政支援の前に経営の効率化,合理化の余地について検討もしていないから,本件交付決定は,本件指針にも反している。
(被告ら及び参加人の主張の要旨)
本件交付決定に地方自治法2条14項,地方財政法4条1項違反はない。地方自治法上,補助金の交付は,地方公共団体が多種多様な施策を実現するための一つの方法であり,どのような施策を実行するかは行政において選択,判断すべきものであるから,補助金交付における公益上の必要性の有無の判断については,被告町長に極めて広い裁量がある。

本件会社の行う事業に公共性があること
丹波マーケスは,町民(特に高齢者)の日常生活や地域活性化,雇用,納税等を支える必要不可欠な施設であるし,道の駅としての機能やコミュニティ拠点としての役割も有する。また,丹波マーケスの平成25年度までの全テナントの売り上げ累計額は459億2900万円,被告町
への納税額は約6ないし7億円であることに加え,丹波マーケスは約170人の従業員を雇用しているから,被告町の財政や雇用創出に対する丹波マーケスの貢献度は大きい。
したがって,丹波マーケスには公共性があり,住民生活支援施策及び地域経済活性化施策として,これを存続させる政策的意義がある。
なお,被告町内には,丹波マーケスの類似施設として道の駅和(なごみ)があるが,同施設の土地建物は町有財産であり,借地料も支払われていないことに加え,被告町による助成(平成29年度は税込1200万円)がされているし,同じく類似施設として道の駅みずほの里皿引には,被告町による助成(毎年度税込2100万円)がされてい
る。これらの施設と比べれば,丹波マーケスは,本件会社が自ら費用を支出してリニューアルを行い,固定資産税も負担するなど,町の自主財源確保に貢献しているものであり,本件交付決定は,他の類似施設との公平という観点からは,むしろ公平の実現に資する措置であるといえる。本件交付決定が参加人の個人的利益を図るものではないこと
a
サンダイコーは,丹波マーケスから退店したテナントの空き区画について,他に引き受ける者がいなかったため,これを引き受ける形で
増床したほか,本件会社の増資の際にもこれを引き受けて出資するなど,丹波マーケスの存続のための負担に応じており,優遇されていたという事実はない。一般に,商業施設において大規模な面積を占めるキーテナントは,他のテナントよりも賃料単価が安く設定されているのが通常である。また,サンダイコーが本件会社に賃貸している駐車
場用地の賃料は,土地鑑定評価額に基づき定められた適正な額であり,恣意的に決定されたものではない。
b
丹波マーケスの設立は,丹波町が主導したものであり,参加人が本件会社の代表に就任する前には,既に本件会社が本件土地を取得する
ことも決まっていたのであるから,参加人の意向によって事業が進められたものではない。
本件会社の経営改善方策をとっていたこと
丹波マーケスの建設開業に係る事業は,本件資金を主な財源として進めることとされていたところ,本件資金の貸付けを受けるためには,事
業の実施主体は,自治体出身者が取締役の半数を占め自治体が出資している第三セクターでなければならなかったことから,本件会社が受け皿として設立されたという経緯がある。本件会社は,丹波町の公益のために設立され,本件資金を借り入れた上,丹波町が土地開発公社を通じて取得した本件土地を買い受けたものである。

本件会社は,設立後ほとんどの期において経常利益を上げていたにもかかわらず,本件借入金の返済を行う必要があったために資金繰りに窮する状況に陥ったものであるが,上記のような経緯に照らせば,本件資金の借入れはあらかじめ丹波町によって決められていたものであり,本件会社には選択の余地がなかったのであるから,本件借入金の返還債務を負担するに至ったことについて,本件会社及び参加人の経営責任のみに帰することはできない。
丹波マーケス開業に当たっては,当初,本件会社の収入として2億円余を確保できる計画であった。しかし,実際は,テナント賃料を値引きすることを余儀なくされたこと等から賃料収入が当初の計画を下回ることとなり,また,鳥インフルエンザ発生による売上げの悪化や,キーテ
ナントの退店,テナント売上額の減少等のため,賃料水準を当初の予定額に戻すことができておらず,計画通りの賃料収入を確保できていない。本件会社は,独自の経営努力により経費削減を行っており,テナント賃料及び駐車場敷地賃料(借地料)は,値引き等も含め適正に設定されている。本件会社は,テナント賃料未収金への対応として,督促状の送
付,日銭集金等の措置を講じてきた上,経営改善のため,経営陣を刷新し,テナント賃料や借地料を見直し,第三者機関を設置するなどした。本件交付決定に至る被告町議会の審議が十分行われたこと
被告町は,平成26年度第3回京丹波町議会定例会(9月議会)において,借入金残高や返済状況について詳細に答弁し,丹波地域開発株式会社に対する経営支援について(乙1),追加資料(乙2)並びに参考資料として平成23年度から25年度までの事業報告書及び決算書(乙3~5)等,可能な限りの資料を提示した。被告町議会においては,本件会社を清算するという方法の採否についても十分な審理を行ったが,本件会社を清算した後,丹波マーケスを運営する会社が現れることは考
え難く,破産により京都府に負債を負わせることも公益上認めるべきではないことなどを勘案し,清算の方法によらず,本件交付決定及び本件契約締結行為を行うことを可決したものである。なお,被告町議会においては,議員全員協議会において丸一日の集中審議を行い,その他に2度の本会議における審議を行うという,例を見ない長時間の審議であった。
補助金交付申請に先立って予算審議が行われたことに問題はないこと
補助金交付申請をする場合には,まず補助金支出に係る予算が成立していることが前提となるから,予算審議前の段階で補助金の交付申請や交付がされることはあり得ず,補助金に係る予算が成立した後に補助金交付申請を受け,補助金交付決定をするというのが一般的な補助金交付手続の流れである。

本件では,本件会社から本件要請書が提出されたことを受け,被告町において調査及び検討を行った上,支援策を盛り込んだ補正予算案を9月議会において提案し,議会で可決されて予算が確定したことを受けて,本件会社が補助金交付申請書を提出し,本件交付決定がされたという経緯であるから,上記の一般的な流れと異なるところはなく,問題はない。

争点⑵イ(本件契約締結行為の違法性の有無)

(原告らの主張)
本件契約締結行為は,本件会社に対する財政支援の一環として行われたものであるところ,争点⑵ア(本件交付決定の違法性)について主張したことに加え,本件土地は,被告町にとって必要性や公益性のない土地であるし,売買価格の評価は更地での鑑定価格によるもので不適切であることに照らせば,本件契約締結行為は,裁量を逸脱するものとして違法である。(被告ら及び参加人の主張)
本件土地の売買については,法令上認められた広い裁量の範囲内で行わ
れたものであって裁量の逸脱,濫用はなく,本件契約締結行為は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に違反するものではない。被告町が本件土地を購入したのは,私的な使用目的ではなく,本件会社を支援することにより町民の生活基盤等を守る目的であったから,公益性がないとはいえないし,一等地に既存の町有地と隣接している土地を購入して大きな画地を確保できたことは,被告町の行政運営にとって大きな財産となるものである。土地の評価についても,不動産鑑定評価基準に基づ
く適正な評価であり,高額ではない。
争点⑶(参加人の過失の有無及び被告町の損害額)ア
争点⑶ア(本件交付決定及び本件契約締結行為を行うに当たり,参加人に過失があったか)

(原告らの主張)
被告町の予算の執行権限を有する町長は,漫然と違法な公金支出をしてはならないという財務会計法規上の義務を負っているところ,本件交付決定及び本件契約締結行為当時に町長であった参加人は,本件交付決定及び本件契約締結行為の相手方である本件会社の前代表者であるとともに丹波マーケスの主要な出資者であるサンダイコーの前代表者であり,本件借入
金について個人保証をしていたことからすれば,本件交付決定及び本件契約締結行為が違法であることについて,容易に認識し得たはずである。それにもかかわらず,参加人は,漫然と本件交付決定及び本件契約締結行為を行ったから,過失がある。
(被告ら及び参加人の主張)
争う。

争点⑶イ(被告町の被った損害額)

(原告らの主張)
参加人による本件交付決定及び本件契約締結行為は,被告町に対する不法行為を構成するところ,これにより,売買代金及び補助金の合計額である6億0700万円の損害が被告町に発生した。(被告ら及び参加人の主張)争う。
争点⑷(不当利得返還請求の可否)

争点⑷ア(本件交付決定及び本件契約が私法上無効か)
(原告らの主張)
公金支出を決定した行政庁の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又は濫用があり,当該公金支出決定を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるという場合には,その公金支出の決定は私法上無効になると解すべきである。本件交付決定及び本件契約締結行為は被告町長の裁量を逸脱ないし濫用
するものであって,その実態が,当時の被告町長(参加人)個人の負債を被告町に肩代わりさせるものであることも考慮すれば,裁量の逸脱,濫用の程度は著しい。そして,再建の具体的な計画がない本件会社に対して6億0700万円という極めて高額な公金を支出することは,被告町の財政状況を著しく悪化させるから,これを無効としなければ地方自治法2条1
4項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる。したがって,本件交付決定及び本件契約締結行為は,私法上無効である。
(被告ら及び参加人の主張)
争う。

争点⑷イ(被告町の損失及び本件会社の利得)について
(原告らの主張)
無効な本件交付決定及び本件契約締結行為により,被告町は,補助金及び売買代金の合計額である6億0700万円の損失を被り,本件会社は,同額の利得を得た。
(被告ら及び参加人の主張)
争う。エ

争点⑷ウ(本件会社の悪意の有無)

(原告らの主張)
本件会社は,本件補助金の支払を受け,本件契約に基づく売買代金の支払を受けるに当たり,その原資となるのは税金であって,その使途は住民への十分な説得を必要とするものであるにもかかわらず,本件会社の財政
逼迫の原因となる収益不足の原因が,サンダイコーが優遇されていることにあることが被告町議会に提出された資料に記載されていないなど十分に説明がされていないことを知っていた。したがって,本件会社は,本件補助金及び売買代金を受領するに当たり,本件交付決定及び本件売買契約に無効事由があり上記受領に法律上の原因がないことにつき悪意であった。
(被告ら及び参加人の主張)
争う。本件会社は,被告町議会において十分な説明がされていることを認識しており,公益性のある第三セクターである本件会社に対して公金が投入されることに違法性があるなどとは考えておらず,本件交付決定及び本件売買契約に無効事由があるとの認識はなかった。

第3
1
当裁判所の判断
前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
丹波マーケス開業に至る経緯等について


丹波町は,遅くとも平成5年頃までに,本件土地を含む約2万㎡の土地を予定地とし,平成4年に第三セクターとして設立された本件会社を事業主体として,特定商業集積施設を建設する計画を立てており,同計画では,丹波町が開発申請を行うこと,開発行為が完了した後に丹波町が土地開発公社から本件土地を取得して本件会社に売却することが予定されていた(乙6の1,17)。


丹波町は,平成9年2月13日,本件土地甲を土地開発公社から7億6843万円で購入し,同年3月12日,同土地を本件会社に同額で売却した(乙2,10の1)。本件土地甲の代金額は,土地開発公社が平成4年頃から順次本件土地甲を取得するために要した額に,借入利息及び登記費用を加えた額とされ,当時の時価と比較すると高額であった。本件土地乙については,被告町において当時の所有者の希望する代替地を確保するこ
とができなかったことから,同日までにこれを取得することができなかった。

参加人が代表取締役を務めていたサンダイコーは,本件土地と府道に挟まれた位置にある土地上に店舗建物を所有してスーパーマーケットを営業していたところ,平成9年3月25日,本件会社(代表取締役は当時の丹
波町長であるE)との間で,本件会社が上記店舗建物の解体費用を負担し,立退料7000万円を支払うとの約定で,上記土地を丹波マーケスの駐車場として本件会社に賃貸する契約を締結した(参加人,甲13の1)。エ
丹波町は,平成12年3月頃,本件土地乙の当時の所有者に提供する代替地を土地開発公社から8809万6855円で取得した後,これと引き
換えに本件土地乙を取得し,同月31日,本件土地乙を本件会社に8809万6855円で売却した(乙2,18)。同売却に当たり,当時の丹波町長であり本件会社の代表取締役会長であったFは,同年2月21日に開催された本件会社の取締役会において,北側正面にある町有地(本件土地乙を指す。)を本件会社において取得することを依頼する旨を述べていた
(乙15)。
本件資金について(乙25)

本件資金は,商店街整備等支援事業(第3セクターが実施主体となって,商店街の活性化を図るための施設又はこれと併せてショッピングセンター
型の商業店舗(賃貸型)を設置,運営する事業)に対する支援を目的とし,同事業の用に供する施設の設置資金に充てることを条件として貸し付けられる資金であり,その貸付対象施設は土地,建物,構築物又は設備である。本件資金は無利子であり,その償還期限は20年以内とされていた。イ
本件資金の原資として,中小企業事業団(組織変更後の名称は独立行政法人中小企業基盤整備機構。以下,組織変更の前後を問わず中小機構という。)が京都府に財源(4億0300万円)を貸し付け,これに京都
府が財源(8億3500万円)を追加し,京都府が合計12億3800万円を本件会社に貸し付けることとされた(本件借入金)。

本件会社は,本件借入金について,平成14年は約定のとおり返済したが,その後は,京都府に対し,数次にわたり貸付条件の変更を申請して弁済金の一部について返済の猶予を受け,平成15年から平成21年までは
いずれも当時の償還計画の約50%,平成22年から平成25年までは約30%の額のみ返済した。平成25年度末において,本件会社と京都府の間で合意されていた償還計画は,平成28年9月までに残債務全額(6億0700万円)を返済するというものであった(乙12の2)。
本件会社の状況等について


本件会社の平成26年当時の株主は,被告町(持株比率40.51%),中小機構(同40.11%),サンダイコー(同16.18%)及びその他個人等8名(同各0.4%)であった(乙1〔4頁〕)。


本件会社の取締役及び監査役は,平成26年度まで,いずれも無報酬であった(甲18,乙3~5,13の2)。本件会社の代表取締役の推移は以下のとおりである。
平成4年11月(設立時)~平成6年10月
代表取締役社長

A(当時の丹波町長)

平成6年10月~平成18年8月
代表取締役会長

F(当時の丹波町長)

代表取締役社長

参加人平成18年8月~平成24年7月
代表取締役社長

参加人

平成24年7月~平成25年3月
代表取締役会長
代表取締役社長

参加人
B
平成25年3月~平成26年11月
代表取締役社長

B
平成26年11月~本件訴訟提起
代表取締役社長

G(当時の被告町副町長)

本件会社は,平成25年度に社員3名を減員し,同年度末における従業員は4名であった(乙5)。


本件会社の平成25年度の売上(年商)は約1億6377万円であり,営業利益は約2580万円であった。同売上のうち約90%は,各テナントからの賃料収入と共益費収入によるものである(乙1,2)。


本件会社の平成25年度期末時点における金融機関からの借入残高(本件借入金を除く。)は,約1億7582万円であった。本件会社は,平成26年4月,本件借入金及び金融機関からの上記借入金に対する返済により資金不足に陥ったため,日本政策金融公庫から新たに5000万円を借り入れた。(乙1〔4,10,11頁〕)


平成26年6月時点における本件会社の未収金(テナント賃料)債権の額は,合計2371万1000円であった。(乙2〔60頁〕)


のとおり,サンダイコー,C及びD並びに被
告町から丹波マーケスの駐車場の敷地を賃借しているところ,平成26年当時における各賃料単価(1㎡当たり月額)は,サンダイコーが176円,C及びDが126円,被告町が約47.4円であった(甲13)。

本件会社については,平成15年から平成18年までは京都府中小企業技術センターにより,平成19年以降は公益財団法人京都産業21により,毎年商店街整備等支援事業診断がされているところ,平成25年10月時点における同診断に基づく指導意見は,概略以下のとおりである(乙9の11)。
本件借入金を平成28年度に完済することは,極めて厳しい状況とな
っている。本件資金には自由な返済手法は用意されていない。
本件会社の収入のうち約3分の2はサンダイコー及びその関連会社からの収入であり,サンダイコーは,平成23年3月に1億円の増資を引き受け,9400万円の建設協力金返済を留保していることからも,本件会社の事業状況が,サンダイコーの事業状況に大きく左右される関係
にあることは明白である。

本件支出後の本件会社の営業利益は,平成26年度が約3621万円,平成27年度が約391万円,平成28年度が約682万円,平成29年度が約890万円であった(甲18~21)。



丹波マーケスの状況等について(乙1,2)

本件会社が運営する丹波マーケスは,平成10年6月に道の駅として登録され,平成26年当時,ショッピング街に14店,レストラン街に7店のテナントが出店をしていたほか,周辺農家の農産物を販売する朝市も開かれていた。


丹波マーケスの平成25年度の来店者(レジ通過者)は延べ148万4000人であった(乙5)。


丹波マーケスの全テナントの従業員数(非正規雇用を含む)は,合計約170名(平成25年6月末時点)であった。(乙1)


丹波マーケスの平成25年度の売上げは合計約18億9729万円であり,そのうち約12億9600万円はサンダイコーが運営する店舗によるものであった(乙1〔6,8頁〕,乙5)。オ

丹波マーケスのテナントの動向等について
丹波マーケスの売り場総面積は5614㎡である(乙1〔5頁〕)。丹波マーケスの開業当時,サンダイコー丹波マーケス店の店舗面積は,1166㎡であり,最大テナントであった。ホームセンターであるインテルナモリイは,サンダイコー丹波マーケス店の次に広い面積の店舗を
有していたが,平成22年5月,丹波マーケスから退店した(乙9の8)。
本件会社は,ホームセンターを展開する会社と交渉を行ったが,インテルナモリイの後継としての入店には至らなかったことから,サンダイコーは,平成23年11月,増床によりインテルナモリイが出店してい
た部分を引き受ける形で,店舗面積を1840.52㎡とした(甲12の2,乙9の8,23,24)。
サンダイコーは,平成26年までに,その他,衣料品店であるアムロス(170.24㎡)及び物販店である丹の蔵(62.35㎡)を丹波マーケスに出店した(甲12の4,9)。


丹波マーケスのテナント料について
本件会社は,丹波マーケスのテナント料について,テナント事業者の属性により基本賃料を定めているところ,その概略は以下のとおりである(基本賃料は1㎡当たり月額。乙21)。

a
町内中小企業
100㎡を超えるテナント
100㎡以下のテナント

b
2722円
3024円

町外中小企業
100㎡を超えるテナント
100㎡以下のテナント

c
3024円
3327円

大企業3932円
実際のテナント(サンダイコー丹波マーケス店及びアムロスを除く。)の賃料単価(1㎡当たり月額)は,平成26年当時,2419円~3024円であった(甲12)。
サンダイコー丹波マーケス店の店舗部分及びアムロスの賃料単価(1
㎡当たり月額)は,平成26年当時,1841円とされていた(甲12の2,4)。


本件交付決定及び本件契約に至る経緯等について

本件会社(代表取締役社長B)は,平成26年6月20日,被告町に対し,本件要請書(乙2〔53頁〕)を提出した。その内容は,本件土地を
丹波町から簿価8億5653万円で譲り受けたことによる負債が重荷になっていること,テナントからは賃料の値下げについて要請を受けていることなどから,本件土地を簿価で買い戻すことを要望するというものであった。

大和不動産鑑定株式会社は,被告町長(参加人)の依頼に基づき,平成26年8月8日付けで,同年7月1日時点の本件土地の価格について不動産鑑定評価を行い,評価書(乙11の1)を作成した。同評価書は,本件土地につき更地として鑑定評価を行い,別紙3物件目録記載1及び2の物件を271万円(1㎡当たり1万5100円),同目録記載3及び4の物件を2億7900万円(1㎡当たり1万9800円)と評価するものであ
った。

被告町議会は,平成26年9月9日午前9時頃から午後4時頃まで,町議会議員のうち16名が出席して,丹波マーケス・丹波地域開発(株)に対する経営支援についてを協議事項とする全員協議会会議を開催した。
同会議の内容は,概略以下のとおりであった(乙27)。
出席議員には,丹波地域開発株式会社に対する経営支援についてと題する冊子(以下本件資料という。乙1),丹波地域開発(株)に対する経営支援追加資料と題する冊子(以下本件追加資料と
いう。乙2)並びに平成23年度から平成25年度までの本件会社の事業報告書及び決算書(乙3~5)が配布された。本件資料には,本件会社及び丹波マーケスの設立経緯,本件会社の概要,財務状況等が記載され,本件追加資料には,本件土地の不動産登記簿及び本件会社の借入金に係る契約書等が添付されていた。
被告町の職員(商工観光課長)は,丹波マーケスは,町民の日常生活に欠かせない商業集積施設であることから,本件借入金の平成25年度
末残高である6億0700万円を解消する目的で本件会社に対する支援を行うものであること,支援の方法は,丹波町から売却した本件土地を時価評価額2億8171万円で買い戻すとともに,残債務分(3億2529万円)について補助金を交付する方法によることを説明した。出席議員から,本件会社が本件土地を被告町から購入した際,時価よ
り高額の簿価によった理由について質問がされ,これに対し,参加人は,高額に過ぎるとの意見が本件会社内で出されたものの,当時の被告町長であり本件会社の取締役会長でもあったFの意向であったため,従わざるを得なかった旨述べた。
出席議員から,本件会社による本件借入金の返済が滞った点について,
被告町及び被告町の歴代町長の責任についてどう考えるかとの質問や,本件会社に対する支援によるメリットの算定根拠は乏しいとの指摘がされ,これに対し,参加人は,本件会社の代表取締役になる場合は本件借入金残元金について個人保証をしなければならなくなること等から,平成18年8月以降,被告町の町長に本件会社の役員就任を要請しても断
られてきたが,本件借入金の弁済が完了すれば,被告町からの役員への就任が期待できる旨述べた。出席議員から,本件借入金の返済は,本件借入金について個人保証している参加人ほか10名の債務を解消するためという意味合いもあるのではないか,駐車場の借地料が2000万円を超えることになっているが,契約を見直すべきあり,特にサンダイコーに対して毎年1500万円超の借地料を支払っている部分は削減すべきではないか,丹波マーケ
スの中心をなしているのはサンダイコーであり,結局,住民からすればサンダイコーのてこ入れと思われる,などの意見が出された。

被告町は,平成26年9月22日,被告町議会議員に対し,丹波地域開発(株)にかかる経営支援再追加資料と題する文書(以下本件再追加資料という。)を配布した。本件再追加資料には,本件土地の航空
写真,本件会社の金融機関借入金一覧及びその契約書,本件会社が支払っている借地料推移等の資料が添付されていた(甲8,乙28〔347頁〕)。

被告町議会においては,平成26年9月24日,16名の町議会議員全員が出席して,平成26年第3回京丹波町議会定例会(平成26年9月議会)が行われた。同議会における審議の過程は概略以下のとおりである(乙28)。
同議会における議案第60号は,商工業振興事業(土地購入費及び商業集積施設安定化補助金。本件会社に対する支援(本件補助金の交付及
び本件契約代金の支払)を指す。)を内容とする平成26年度京丹波町一般会計補正予算(第2号)(本件補正予算案)であった。
出席議員らから,①

本件会社が本件土地を丹波町から買い取った価

格が高額に過ぎたのではないか,②

今回の税金投入は,町長の親族が

経営するサンダイコーに向けられるものではないのか,③被告町の関

係者が本件会社の役員に入ってこなかったことは無責任ではないか,④丹波マーケスの出店者の中には賃料を踏み倒して撤退した者もいるのではないか,⑤
テナント賃料の未収金(2371万1000円)につい

てどのように対応するのかなどの質問があった。これらに対し,参加人は,①

本件会社が本件土地を丹波町から買い取った際,時価評価額よ

り高額であったが,同取引は丹波町にとってプラスになるものであり,当時本件会社の代表取締役であった丹波町長の意思で進められ,また,本件資金が無利子であったことから,本件会社の大株主である丹波町を助けるという判断もあったこと,②

参加人の親族が経営するサンダイ

コーは,本件会社に出資しているものの,一出店者にすぎないこと,③本件借入金を完済することにより,本件会社の役員が本件資金を連帯保証する必要がなくなるので,役員を刷新することができ,被告町の副町長を中心に経営陣として送る予定であること,④

中小機構や京都府が

選んだ出店者の中には,家賃を踏み倒して退店するテナントがいたが,中小機構の指導には従わざるを得ず,また,開業当初5,6年は,賃料が高すぎたことが原因で退店に追い込まれたテナントもいたことなどを述べた。
また,出席議員から,本件会社がサンダイコーから土地を駐車場として賃借するに至った経緯について質問があり,参加人は,サンダイコーの所有地は府道に面しており,丹波マーケスの開業に当たって協力するよう要請を受けたこと,賃料については事業団による監査も受けている
ことを述べた。
さらに,出席議員から,本件契約の対象が本件土地のみとなっていることについて,本件建物も購入しないのはなぜか,また,本件土地について底地として評価した場合には評価額は低くなるのではないかとの質問がされ,これに対し,参加人は,本件土地は丹波町から買い取ったも
のであるから,本件土地のみを購入することにしたこと,本件土地の価格については,土地鑑定士による評価であることを述べた。被告町の商工観光課長は,出席議員の求めに応じ,再追加資料のうち丹波町の特定商業集積整備基本構想について説明をした。
出席議員らの一部は,本件補正予算案から本件会社に対する支援(6億0700万円)を削除することを含む内容の修正動議を提出し,それぞれ賛成及び反対の立場から発言がされた。

上記の審議を経て,本件補正予算案は,賛成多数(賛成8票,反対7票)で可決された。

本件会社は,平成26年12月10日,被告町長(参加人)に対し,平成26年度商業集積施設経営安定化補助金として3億2329万円の交付を申請した(乙37)。


被告町議会は,平成26年12月22日,16名の町議会議員全員の出席の下,平成26年第4回京丹波町議会定例会(平成26年12月議会)を開催した。本件契約に係る議案第75号土地取得についてについて,出席議員から代金額の相当性や購入の必要性に関する質問がされ,これらに対して参加人及び被告町の職員が回答ないし説明した上,各議員による
討論がされた後,同議案は,賛成多数で可決された。(乙29)


被告町の財政状況について
被告町の平成26年度の一般会計(歳出総額)は,約120億円であった(乙28〔365,369頁〕)。本件補助金及び本件契約に係る代金の合計6億0700万円は,被告町の財政調整基金を財源として拠出された(乙
28,弁論の全趣旨)。
2
本件交付決定の取消しを求める訴えについて
争点⑴(本件交付決定に処分性があるか)についてア
抗告訴訟の対象となる処分とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であり(行政事件訴訟法3条1項,2項,6項),これは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。

地方公共団体が私人に対して補助金を交付する関係は,地方公共団体が,その優越的地位に基づき公権力を発動して私人の権利自由を制限し又はこれに義務を課するものではなく,本来,資金の給付を求める私人の申込みに対する承諾という性質を有する非権力的な給付行政に属するものであるから,その関係においては,原則として,行政処分は存在しないものというべきである。もっとも,法令等が,一定の政策目的のために,特に一定
の者に補助金の交付を受ける権利を与えるとともに,補助金の交付手続により行政庁に当該者の権利の存否を判断させることとした場合や,法令等が補助金の交付手続を定める中で行政庁による不交付決定に対して不服申立手続を設けているような場合などには,例外的に補助金の交付決定に処分性が認められるものと解される。

弁論の全趣旨によれば,本件交付決定は,地方自治法232条の2に加え,京丹波町補助金等交付規則に基づいて行われたと認められる。このうち,地方自治法232条の2には,公益上の必要がある場合という要件のほか要件・効果の定めがない。その趣旨は,どのような者にどのような補助を行うかの判断を,地方公共団体の執行機関等が社会的・地域的事情を
総合的に考慮して行う公益上の必要に関する政策的な裁量に委ねたものと解するのが相当であり,同条が一定の者に補助金の交付を受けられる地位を与える趣旨を含むものとは解されない。
そして,京丹波町補助金等交付規則は,地方自治法等の委任によらず,また,条例(地方自治法14条)の形式によることなく,補助金の交付の
申請,決定等に関する基本的事項を一般的に規定するもので,不交付となった場合の不服申立てについても規定がない。これらの事情に照らせば,京丹波町補助金等交付規則は,京丹波町内部における事務手続を定めたものにすぎず,その趣旨を超えて,対象者に当該補助金の交付を受けることのできる法的権利を認める趣旨を含むものとは解されない。
その他,本件交付決定に法令等が行政処分としての性質を与えたと解すべき根拠は見当たらない。


したがって,本件交付決定は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないから,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条1項,2項,6項)に当たるとは認められず,抗告訴訟の対象となる処分に該当しない。

よって,本件訴えのうち,被告町に対して地方自治法242条の2第1項2号に基づき本件交付決定の取消しを求める部分は,不適法である。3
参加人に損害賠償請求をすることを求める訴えについて
争点⑵ア(本件交付決定の違法性の有無)について

地方自治法232条の2は,公益上の必要以外には補助金交付の要件を定めていないところ,これは,補助金の交付に際しては,地方公共団体の長等が,社会的,地域的事情等を総合的に考慮して,補助をする公益上の必要があるか否かをその裁量により政策的に判断すべきものとする趣旨と解される。したがって,同条の規定に基づく補助金交付決定は,公益上の必要性に関する当該地方公共団体の長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はそ
の濫用があったと認められる場合に限り,違法の評価を受けるものと解するのが相当である。

そこで,本件補助金の交付に公益上の必要性があるといえるか否かについて検討する。

前提事実及び前記1に認定したとおり,本件補助金は,本件会社に対する財政支援の一環として,本件借入金の残債務(6億0700万円)の返済原資に充てることを目的として交付されたものであり,本件補助金の額は,上記残債務額と本件土地の丹波町への売却代金2億8171万円との差額として定められたものである。そして,本件会社は,ショッピングセンター型の商業集積施設である丹波マーケスの開業,運営等を事業目的として,丹波町及び民間企業の出資により設立された会社であるところ,本件会社が運営する丹波マーケスは,スーパーマーケットを含む計21店のテナントが入居する施設であり,住民数が約1万5000人の被告町にあって年間延べ購入者数が148万人を超えるなど,住民の買い物の場として一定の役割を果たしているものと評価でき,本
件会社の行う事業内容には公益性があるといえる。
また,本件会社が本件借入金債務を負うに至ったのは,そもそも,丹波町が,平成5年に策定した特定商業集積整備基本構想等に基づき,商業集積施設用地とする目的で,土地開発公社との間で先行取得契約を締結した上,本件土地を簿価で買い取り所有していたところ,上記のとお
り,商業集積施設である丹波マーケスの運営主体として本件会社が設立され,本件会社が丹波町から本件土地を同額で買い取ることとされため,その原資を本件資金からの借入れで調達したという経緯による。
さらに,本件会社は,平成15年以降,本件借入金の返済に窮しており,本件補助金の交付がなければ,残債務の最終弁済期限が到来する平
成28年には経営破綻する懸念があったところ,本件会社は第三セクターであり,被告町は本件会社の株式を40%超保有していたから,本件会社が経営破綻した場合には被告町が多額の損失を被ることが見込まれた上,本件借入金を返済することなく本件会社が経営破綻することになれば,被告町と京都府(債権者)及び中小機構(出資者)との関係が悪
化するおそれもあったと考えられる。
なお,本件会社が本件借入金を約定どおりに返済できなかったことについて,平成26年当時における本件会社の財務状況(営業利益は上がっているものの,本件資金の返済には足りず,そのために他の金融機関からの借入れを余儀なくされている状況であったこと)等に照らすと,本件会社の経営改善策等が不十分であったと評価することはできない。また,丹波マーケスの用地となる本件土地を賃借ではなく購入したこと照らせば,本件会社が本件土地を
丹波町から購入することは丹波町の既定方針であり,参加人が独自に決定したものとは認められないから,本件土地を購入したことにより参加人が本件会社の経営不振の原因を作ったということはできないし,仮に,
参加人による経営判断に何らかの問題があったとしても,そのことから直ちに,本件会社に補助金を交付して財政支援することが公益上の必要性を欠き許されないということになるわけではない。
以上に加えて,本件補助金の額は被告町の予算額の約5%程度にとどまり,1回限りの支出であること,本件補助金を交付することの可否に
ついては,被告町議会において,本件資料,本件追加資料,本件再追加資料及び各年度の決算書等の資料が提示された上で質疑及び討論が行われ,反対する立場からの対案(動議)についても更に審議を経た上で可決されたものであることなどに照らすと,本件会社の財政支援のため補助金を交付することに公益上の必要があるとの参加人の判断が,その裁
量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したといえるほど不合理なものであるということはできない。
これに対し,原告らは,本件会社はサンダイコーないしその経営する参加人の利益のために設立されたものであり,本件交付決定は,専ら参加人ないしサンダイコーの個人的利益を図ったものであると主張する。
しかしながら,サンダイコーは丹波マーケスの最大テナントであり,その経営する店舗による売上げ(平成25年度)は丹波マーケス全体の売上げの約68%を占めていたこと,丹波マーケス開業に当たり,サンダイコーは経営していた店舗の営業を中止して店舗建物の解体に応じ,その敷地を丹波マーケスの駐車場として提供したという経緯があること等に鑑みれば,サンダイコー及びアムロスについて定められたテナント料が他のテナントの約60%~約76%であることやサンダイコーが本
件会社から収受する駐車場賃料が他の賃貸人に比して高額であることなどの事実があっても,サンダイコーないし参加人の利益のために本件会社が設立されたとの原告らの主張を認めることはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。
原告らは,また,参加人が本件借入金に係る保証債務を免れる目的で
本件補助金の交付を決定したとも主張するが,参加人は,本件会社の取締役として本件借入金債務を保証したのであるから,本件会社に対する本件補助金の交付に公益性が認められる以上,本件会社が本件補助金等で本件借入金債務を完済することにより参加人の保証債務が消滅したとしても,そのことをもって,本件補助金が参加人に特別の個人的利益を
与えるものであるとか,不公正であるとかということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができず,その他,本件補助金の交付が特に不公正であると評価すべき事情は見当たらない。ウ
よって,参加人が本件補助金の交付に公益上の必要があると判断したことに裁量権の逸脱又はその濫用があったということはできず,本件交付決
定に違法はない。
争点⑵イ(本件契約締結行為の違法性の有無)についてア
原告らは,本件売買契約を締結した参加人の判断が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に違反すると主張するが,上記各条項は,地方公
共団体が事務処理に当たって準拠すべき指針である最小経費による最大効果の原則を一般的,抽象的に,あるいは予算執行の観点から定めたものにとどまり,それを超えて地方公共団体による不動産の購入について具体的な規制をするものではない。地方自治法は,地方公共団体における財産の取得をその長の事務とし(149条6号),その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産を取得する場合には議会の議決を経なければならないと規定する(96条1項8号)以外には,地方公
共団体による不動産の取得及びその対価の決定について,具体的な定めを置いていない。その趣旨は,地方公共団体の長がその代表者として不動産を購入する契約を締結するに当たっては,当該不動産の購入目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮して政策的観点から行う必要があるこ
とから,その判断を地方公共団体の合理的な裁量に委ねる趣旨と解される。この趣旨に照らせば,地方公共団体の長が地方自治法の規定上必要とされる議会の議決を経た上で行った不動産購入に係る契約の締結が,財務会計法規上の義務に反し違法なものとされるのは,明らかに当該不動産を取得する必要性がないにもかかわらずこれを取得した場合や,合理的な理由も
なく適正価格を著しく超えた代金額でこれを購入した場合等,上記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときに限られるものと解するのが相当である。イ
そこで検討するに,本件契約は,本件会社に対する財政支援の一環とし
て,本件会社が本件借入金債務を返済するための原資を調達する目的で行われたものであるところ,

本件会社が行う事業

(丹波マーケスの運営)には公共性があること,本件会社が設立された目的,本件土地購入の経緯等に照らせば,本件会社から本件土地を買い戻す形で財政支援することは被告町の公益にかなうものということができる。そうすると,被告町が,明らかに本件土地を取得する必要性がないにもかかわらずこれを取得したとはいえない。また,本件契約における本件土地の売買代金額2億8171万円は,不動産鑑定士による鑑定結果を踏まえてそのとおりに定められたものであること,本件土地は,平成8年から12年にかけて,丹波町から本件会社に対して計8億5653万4855円で売り渡されたものであったことなどに照らすと,本件契約における売買代金の額が適正価格を著しく超えたも
のであったとも認められない。なお,原告らは,上記鑑定が本件土地を更地として評価したことが違法であると主張するが,本件土地を土地上に建物が存在する収益物件として評価した場合に,本件の評価額に比べて著しく低額になることを認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は,採用できない。


したがって,参加人の本件契約締結行為が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法であるということはできない。
小括
以上によれば,本件交付決定及び本件契約締結行為はいずれも違法とはい
えないから,その余の争点(争点⑶ア及びイ)について判断するまでもなく,
被告町長に対し,参加人を相手方として損害賠償請求を行うよう求める請求(事実及び理由の第11項の請求)は,理由がない。
4
本件会社に不当利得返還請求をすることを求める訴えについて
で判示したとおり,本件交付決定及び本件契約締結行為はい
ずれも違法はないから,その余の争点(争点⑷ア~エ)について判断するまで
もなく,本件会社を相手方として不当利得返還請求を行うよう求める請求(事実及び理由の第13項及び4項の請求)は,理由がない。
5
まとめ
以上によれば,本件訴えのうち,被告町に対する本件交付決定の取消請求に係る部分は不適法であり,被告町長に対する請求はいずれも理由がない。
第4

結論以上の次第で,本件訴えのうち,被告町に対する本件交付決定の取消請求に係る部分は不適法であるから却下し,被告町長に対する請求は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官

森珠美
裁判官

中田克之
裁判官

増藤野真歩子
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