判例検索β > 平成30年(ワ)第22428号
不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成30(ワ)22428
事件名不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日令和2年7月10日
裁判所名東京地方裁判所
権利種別不正競争
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2020-07-10
情報公開日2020-08-12 16:00:53
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令和2年7月10日判決言渡

同日原本領収

平成30年(ワ)第22428号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

不正競争行為差止等請求事件

令和2年3月11日
判決原告
ワールドトレーディング株式会社

同訴訟代理人弁護士

關被
株式会社COMAX


同訴訟代理人弁護士

健金野主1
JAPAN

哲上一敏潤一文
被告は,別紙原告商標目録記載の各商標を付した別紙商品目録記載の1ないし16の各商品の販売が別紙被告商標目録記載の各商標権を侵害する旨を第三者に告知又は流布してはならない。

2
被告は,原告に対し,60万円及びこれに対する令和元年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
原告のその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

5
この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。事
第1
1実及び理由
請求
被告は,別紙原告商標目録記載の各商標を付した別紙商品目録記載の1ないし16の各商品の販売が別紙被告商標目録記載の各商標権を侵害する旨を告知若しくは流布し,又は書面,電子メール若しくは口頭によって第三者に通知してはならない。

2
被告は,原告に対し,580万2500円及び内金61万円に対する平成3
0年7月21日から支払済みまで,内金519万2500円に対する令和元年9月4日から支払済みに至るまで,
それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要
本件は,インターネットショッピングサイトを通じて枕,マットレス等の商品を販売している原告が,被告に対し,被告による同サイト運営者に対する商
標侵害に係る告知は虚偽であり,不正競争防止法(以下不競法という。)2条1項21号の不正競争行為に該当すると主張し,被告に対し,不競法3条1項に基づき,
原告商品の販売が被告の有する商標権を侵害するとの虚偽の事
実を第三者に告知又は流布することなどの差止め,同法5条2項,民法709条に基づき,損害賠償金580万2500円(逸失利益127万5000円,
無形損害400万円及び弁護士費用相当額52万7500円の合計額)及びう
ち61万円に対する不法行為の後である平成30年7月21日
(訴状送達日の
翌日)から,うち519万2500円に対する令和元年9月4日(同月2日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで,それぞれ民法(平成29年法律第44号による改正前)
所定の年5分の割合による遅延損害金の支

払を求める事案である。
2
前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)

(1)当事者
原告及び被告は,いずれも,枕,マットレス等の輸入販売を業とする株式会社である。
(2)原告の有する商標権
原告は,別紙原告商標目録記載の各商標権(以下,符号に従い原告商標権1などといい,併せて原告各商標権というほか,各商標権に係る商標を原告商標1などといい,併せて原告各商標という。)を有して
いる。(甲1,2)
(3)被告の有する商標権
被告は,別紙被告商標目録記載の各商標権(以下,符号に従い被告商標権1などといい,併せて被告各商標権というほか,各商標権に係る商標を被告商標1などといい,併せて被告各商標という。)を有している。(甲3,4)
(4)原告及び被告の販売行為
原告は,平成28年2月から,アマゾンジャパン合同会社(以下アマゾン社という。)の運営するインターネットショッピングサイト(以下本件サイトという。)上においてBalzano
Japan株式会社(以

下バルジャノ社という。)が開設している仮想店舗において,原告各商標を付した枕,マットレス,枕カバー等の別紙商品目録記載の商品(以下,符号に従い原告商品1などといい,併せて原告商品という。)を販売していた。なお,原告は,同商品を,楽天市場やYahooショッピングサイト等のウェブサイトにおいても販売している。(甲5,7,弁論の全趣旨)
被告は,原告と競争関係にあり,自社のウェブサイト等において,LATEXIA(ラテシア)のブランドで,枕,マットレス,枕カバー等(以下被告商品という。)を販売している。(甲6)

(5)被告の行為等

被告は,アマゾン社が提供するブランド登録サービスを利用していたところ,平成30年4月25日,アマゾン社から,同サービスがリニューアルされたとして,新サービスを利用しないかとの勧誘を受けた。その際,アマゾン社の担当者は,リニューアルされたAmazonブランド登録サービス(以下本件サービスという。乙13。)について,被告が保有する商標などを他社が不正に使用して本件サイト上で出品するこ
とを防ぐことができるなどと説明した。(乙4)
被告は,本件サービスを利用することとし,同日,アマゾン社の担当者に,本件サービスに登録することを希望する商標として被告商標権2の登録番号及び被告商標2の画像を添付したメールを送信し,同月27日,ブランド名をCOMAXとするブランド登録を完了した。その際,アマ
ゾン社の担当者は,被告に対し,不正な商品があれば本件サービスのトップページの権利侵害の申告より,出品停止の申告が可能である旨説明した。
なお,
被告は,
被告商標権1についても,
本件サービスに登録した。
(乙6,7,弁論の全趣旨)

本件サービスについて,アマゾン社のウェブサイト(平成30年12月11日時点)には,以下のとおりの説明が掲載されている。(乙13)すなわち,
同サイトの
amazonbrandregistry

と題するウェブページには,Amazonブランド登録を利用すべき理由は何ですか?との項目の下に,①ブランドの正確な表示として

ブランド登録をすると,Amazonにおけるそのブランドの商品出品に対して,より大きな影響力や権限を行使できるようになります。

,②強力な検索ツールとしてAmazonブランド登録では,世界中のAmazonストアのコンテンツを検索できます。画像,キーワード,ASINのリストを使用してコンテンツを一括検索し,シンプルなガイド付きのワークフローに従って,違反の疑いを報告できます。,③積極的なブランド保護として,自動保護機能がブランドについての情報を使用して,侵害の疑いや不正確なコンテンツを事前に削除します。情報を数多く提供していただけばいただくほど,より強力にブランドを保護でき,ブランドのイメージが向上します。と記載されている(乙13の1・2)。ウ
被告は,平成30年5月8日頃,本件サービスの権利侵害申告を行うため,本件サイトの上でCOMAXブランドを用いている商品を検索・選定
した上で,ウェブページの登録フォーマットに,被告登録商標をいくつかの商品ごとに複数回に分けて,概ね,以下の内容を入力し,原告商品が被告の権利を侵害する旨の申告(以下本件申告という。)を行った。(甲
8,9,11,12,乙8,弁論の全趣旨)
(ア)申告内容:偽造品であること
(イ)ブランド名:COMAX
(ウ)登録商標:被告各商標
(エ)権利侵害の内容を把握できる,詳しい情報:

当社の商品は,現在当社にて小売り販売のみを行っており,他社・他販売店への,販売を目的とする商品の提供を行っていません。また,当社は他社・他販売店に対し,「COMAX

COMAXNaturalの使用を許可していません。
したがって,
今回,
選択した商品は,
当社とは全く関係のない商品で間違いがありません。
【COMAXNaturalの柄がある商品について】

COMAXHOLDINGS

PTE.,LTD.(シンガポールCO

MAX)の看板商品は,COMAXブランドを使用した,天然ラテックス(天然ゴム)製の枕,マットレスであるところ,当社は,2015年10月13日に,シンガポールCOMAXと,特約販売店契約を締結し,COMAXブランドを使い,日本国内で独占的に販売できる許諾を受けました。当社は,他社に対しCOMAXブランドの商品を提供していないことから,もし他社がCOMAXブランドの商品を販売しているとすれば,それは当社の商品とは全く関係のないものです。
【サイズが異なる商品について】

選択した商品について,アマゾン社のWebページ上に記載された商品のサイズを確認しましたところ,当社の商品とはサイズが異なってい
ました。したがって,これらの商品は,当社の商品ではありません。【形が違う商品について】
選択した商品は,当社で製造販売している商品とは,デザイン,形が異なります。
したがって,
これらの商品は,
当社の商品ではありません。
【柄が異なる商品について】

選択した商品は,当社で製造販売している商品とは,柄,色が異なります。したがって,これらの商品は,当社の商品ではありません。」エ
アマゾン社は,平成30年5月8日,被告に対し,被告からの申告(申立番号1851806763)を受信した旨の連絡をし,更に,同月10日,同申告を慎重に審査した結果,原告商品1,2及び15等を削除した
旨のメールを送信した。(乙8,9)

アマゾン社は,平成30年5月10日,バルジャノ社に対し,原告商品1,2及び15等について,①権利者から商標権を侵害している旨の主張があったため,上記各商品の出品をキャンセルしたこと,②出品を再開するには,権利者からの申立ての取下げが必要になるとして,当時の被告代
表者であるAの氏名及び被告のメールアドレスが記載されたメールを送信した。当該メールには,侵害の種類:商標権(ワードマーク),被告商標権1の登録番号,申立番号として1851806763との記載がある。(甲8,弁論の全趣旨)

アマゾン社は,平成30年5月10日,バルジャノ社に対し,原告商品9,11及び13について,上記オの①及び②と同じ内容が記載されたメールを送信した。同メールには,侵害の種類:商標権商品梱包,商品表示ページ,ワードマーク,ロゴ,被告商標権1の登録番号,申立番号として1851808363との記載がある。(甲9)

バルジャノ社は,平成30年5月10日,アマゾン社に対し,COMAXの商品を国内で販売する商標権を持つ原告から仕入れをしているとして,
原告が有する3つの商標権の登録証及び請求書のデータを添付したメールを送信し,出品の再開を求めた。なお,同メールにおいて,バルジャノ社は,特許情報プラットフォームで検索したところ,被告は天然ゴムについて,原告は枕,マットレスの販売についての商標を有していると記載した上で,検索結果のファイルを添付した。(甲10)


アマゾン社は,平成30年5月10日,バルジャノ社に対し,提供された情報をもとに慎重に審査した結果,原告商品1,3,6及び15等について,再出品は認められないこと,上記オの②と同様の内容及びAmazon.co.jpは,本件の権利を主張する当事者ではない為,出品者様の法的権利の有効性,妥当性および可能性について,法的な助言を提供することは一切できません。…本件については,直接権利者にご確認ください。との文章が記載されたメールを送信した。同メールには,申立番号として1853123023との記載がある。(甲11)

アマゾン社は,平成30年5月14日,バルジャノ社に対し,原告商品10,12及び14等について,上記オの①及び②と同じ内容が記載され
たメールを送信した。同メールには,侵害の種類:商標権,被告各商標権の登録番号,申立番号として1853945823との記載がある。(甲12)

本訴提起当時,バルジャノ社の仮想店舗上の原告商品のウェブページがアクセス禁止になっていることから,
別紙商品目録記載の原告商品のうち,

アマゾン社から出品停止の連絡のあった商品以外の商品も出品できない状態となっている。(甲13,弁論の全趣旨)
3
争点
(1)本件申告が虚偽事実の告知に当たるか(争点1)
(2)原告の損害の有無及びその額(争点2)

第3

争点に関する当事者の主張

1
争点1(本件申告が虚偽事実の告知に当たるか)について

〔原告の主張〕
被告は,本件申告により,原告商品が被告各商標権を侵害する旨をアマゾン社に告知したものであるが,
下記(1)のとおり,
原告商品は被告各商標権を侵害
するものではないから,虚偽事実の告知に当たる。また,仮に,本件申告の趣旨が,被告の独占販売権の侵害又は原告商品が偽造品である旨を告知することにあるとしても,下記(2)及び(3)のとおり,いずれにしても虚偽事実の告知に当たる。
(1)本件申告の趣旨が,原告商品が被告各商標権を侵害するというものである
場合
被告は,本件申告をするに当たり,被告各商標権の登録番号をアマゾン社に告知した上で,原告が権利侵害を行ったと告知したものであり,同社から原告に送信されたメールにも,商標権を侵害しているという主張が権利者から届きました,侵害の種類:商標権などと記載されているのである
から,
被告は,
原告商品が被告各商標権を侵害する旨を申告したものである。
被告各商標権は,いずれもその指定商品を第17類に属する天然ゴム,ゴムとするものであり,原告商品は,枕,マットレス及び枕カバーであり,被告各商標権の指定商品に含まれるものではないから,原告商品の販売は,被告各商標権を侵害するものではない。
したがって,本件申告は,虚偽事実の告知に該当する。

(2)本件申告の趣旨が,被告の独占販売権を侵害するというものである場合本件申告の趣旨が,被告の有するCOMAXブランドの独占販売権を原告が侵害したという趣旨であるとしても,本件申告の内容は事実に反し,虚偽である。

被告は,①COMAXHOLDINGS

PTE.,LTD.(以下シンガポール・コマックスという。)との間で特約販売店契約を締結し(乙
1),COMAXブランドを使い日本国内で独占的に販売できる許諾を受けている,②Latex

Systems

Co.Ltd(以下ラテックスシステムズという。)と原告との間のCOMAX商標に関する使用許諾契約は解除されているから(乙2,3),原告には原告各商標権をラテックスシステムズに返還する義務があり,COMAX商標の正
当な使用権原を有しないと主張する。
しかし,本件申告の時点で,原告は,日本において,枕,マットレス等にCOMAXの文字標章等を使用するための商標権を保有していたのであるから,原告は原告各商標をその商品に付して販売することができるのは当然であり,原告の行為が被告の独占販売権を侵害することはない。したがって,本件申告の内容は虚偽である。

また,そもそも,被告が基礎とする事実関係には誤りがある。
本件の経緯は,以下のとおりである。
(ア)原告は,平成23年頃から,タイ国のSAMWON

LAMLUKA

CO.,Ltd(以下SAMWON社という。)から原告商品の日本への輸入手続を依頼され,輸出者をSAMWON社,輸入者を原告として原告商品を輸入してきた(甲17~19)。
他方,当時,タイや香港等の東南アジア諸国における日本人海外旅行者向けに,旅行会社が斡旋し,タイ国のCOMAX

ENTERPRI

SE(以下タイ・コマックスという。)が販売者となって,現在の原告商品と同じ商品を販売していたが,枕やマットレス等を手荷物で日本国内に持ち込むことは煩雑であることから,製造者であるSAMWON社が同商品を日本の原告に輸出し,原告が購入者宛てに商品を配送していた。なお,同商品の輸入通関,国内での配達業務等は,運送会社で
ある株式会社国際エキスプレス(以下国際エキスプレスという。)がタイ・コマックスから受託して行い,同社に通関費用等を請求してい
た(甲20)。
原告は,平成25年10月頃,横浜税関調査部から貨物の納税不足を指摘され,平成26年頃,本税及び加算税を併せて納付した(甲22,23)。原告は,上記本税及び加算税相当額を本来負担すべきタイ・コマックスに請求したが,拒否されたため,倉庫における原告商品の在庫を回収し,販売した。それ以降,タイ・コマックスが上記の商流から抜けたが,
原告は,
SAMWON社に引き続き原告商品を発注し
(甲24)

日本国内で販売しており,平成27年から平成28年にかけて原告各商標権を出願して権利化した。

なお,COMAX

ENTERPRISE社は,タイのほか,シンガ

ポールにも存在するようであるが,原告の過去の取引相手はタイ・コマックスであり,シンガポール・コマックスではない。タイ・コマックス及びシンガポール・コマックスは,平成26年の時点でそれぞれGREEN
HOUSE,
HON

SHING

Pte.Ltd.と社名変更


しているようであるが(甲16),両社の関係は不明である。
(イ)被告前代表者のA
(変更前の氏名はB
〔乙16〕以下
。A
という。

は,平成24年から平成27年7月頃まで,原告の関連会社である国際エキスプレスの事務所に間借りして,自ら会社経営をするとともに,原告の業務を手伝っており,
原告商標2
(出願日は平成27年4月13日)

の出願手続も行っていた(甲27)。
Aは,国際エキスプレスの事務所から退去後の平成27年9月に,原告商標1が出願されていることを知りながら,自らを代表者とする被告を設立し,枕やマットレス等を販売するようになったが,その当時,シンガポール・コマックスが使用していたブランドは
COMAXCやOMAX/Naturalではなく,被告もこれらのブランドを使用していなかった。

被告が証拠として提出している,被告とシンガポール・コマックス間の2015年(平成27年)10月13日付け特約販売契約書(乙1。以下乙1契約書という。),原告とラテックスシステムズ間の2014年
(平成26年)
11月11日付け
商標使用権
と題する書面
(乙
2。以下乙2書面という。),同社による同2015年(平成27
年)8月17日付け商標使用権契約解除通知書(乙3。以下乙3通知書という。)については,原告は作成に関与していない。これらの書類の作成日付は,いずれも,Aが国際エキスプレスの事務所から退去した前後の時期であり,国際エキスプレスがAに貸与していたパソコンを確認したところ,そのデータが残っていた。これらの書類は,原告の販
売事業を妨害するため,Aが作成したのではないかと疑われる。

被告は,乙1契約書に基づき,COMAXブランドの独占販売権を有すると主張するが,
上記のとおり,
同契約書は,
その作成経緯が不明であり,
その内容が不自然である。

原告代表者は,
本訴提起後に,
乙1契約書に署名しているシンガポール・
コマックス代表者であるC(別名D,E。以下Cという。なお,Cはラテックスシステムズの代表者と同一人と思われる。に確認したところ,)
CはAが乙1契約書を作成してサインを求めてきたのでサインをしたが,Cは日本語を解さず,翻訳文の交付も受けていないので,内容もわからず
サインしたとの回答であった(甲28)。また,乙1契約書は,平成28年8月20日に解除されており,シンガポール・コマックスは現在COMAXNaturalLatexブランドの枕等は販売していない
とのことである(甲15)。
そうすると,仮に,上記特約販売店契約が成立していたとしても,少なくとも,本件申告がされた平成30年5月より前の平成28年8月20日の時点で,同契約は解約により失効しているから,被告は本件申告の時点
で特約販売店ではなく,独占販売権を有していなかった。

被告は,ラテックスシステムズと原告との間のCOMAX商標に関する使用許諾契約は解除されているから,原告には原告各商標権をラテックスシステムズに返還する義務があり,COMAX商標の正当な使用権原を有しないとも主張するが,原告は,そもそも,ラテックスシステム
ズがCOMAX商標なるものについてどのような権原を保有しているかを知らず,同社との間でCOMAX商標なるものについて,使用許諾契約を締結したこともない。
乙2書面
(2014年11月11日付け)ラテックスシステムズが,
は,
原告に対し,COMAXの商標及びCOMAX関連商品の使用を

許諾することを内容とするものであり,乙3通知書(2015年8月17日付け)は,平成27年11月10日をもって同使用許諾契約を解除する旨を通知するものである。これらの書面は,いずれもその日付の頃に原告に突然送付されてきたものであるが,原告はラテックスシステムズがいかなる会社であるのかを知らなかったため,特段の対応をしていない

以上のとおり,原告は,シンガポール・コマックスと被告間の契約の成否及び内容については承知しておらず,原告は,ラテックスシステムズとの間で契約をしたことはない。いずれにしても,原告は,被告の独占販売権を侵害していないので,本件申告は虚偽である。

(3)本件申告の趣旨が,原告商品が偽造品であるというものである場合本件申告の趣旨が,原告商品が偽造品であるという趣旨であるとしても,本件申告の内容は事実に反し,虚偽である。
すなわち,偽造品とは,権原のない者によって製造販売された商品であることを意味するが,上記のとおり,原告商品は,元々SAMWON社が製造
していたものであり,タイ・コマックスが商流から抜け,原告が直接日本で原告商品を販売するようになった後も,製造元は変わっておらず,従前の商
品と同様のものであるから,偽造品ではない。
(4)原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じていたとの主張について
被告は,日本の消費者において,原告商品とシンガポール・コマックスが販売していたCOMAXの標章が付された枕,マットレス等との間に混同が生じており,そのような状況についてアマゾン社に適切な措置をとることを求めるために本件申告をした旨主張する。
しかし,タイ・コマックスは,平成23年頃には,タイ国内でもCOMAXブランドの枕等を観光客に販売しており,シンガポール,香港等でも同様
の状況にあったものと推察されるが,同社と原告との取引は平成26年に終了し,それ以降は,COMAXブランドで枕等は販売しておらず,LATEXOrganic等の商品名で枕等を販売していたと聞き及んでいる。

いずれにしても,平成26年以降原告が日本で販売してきた原告商品と,同年以降にタイ・コマックス及びシンガポール・コマックスが現地で販売していた枕等は,製造元が異なり,付されていた標章も異なる上,被告も認めるとおり,
被告商品には
Natural/LATEX
等の標章が使用され,
COMAXの標章は使用されていない(甲30)。このため,原告商品と被告商品又はシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じるはずがなく,
混同が生じるとすれば,
原告商品と被告の商号との間の混同である。

(5)したがって,本件申告の趣旨をどのように解したとしても,本件申告は虚偽事実の告知に該当する。
〔被告の主張〕
本件申告の趣旨は,商標権侵害を告知する趣旨ではなく,以下のとおり,原告にはCOMAX商標である原告各商標を使用する正当な権原がなく,原
告商品と,シンガポール・コマックスが販売していたCOMAXの標章が付されたCOMAXブランドの枕,マットレス等との間で混同のおそれが生じ
ていたことから,アマゾン社に適切な措置を講じるよう求めたものにすぎず,虚偽事実の告知に当たらない。
(1)本件申告に至る経緯について

被告は,シンガポール法人のシンガポール・コマックスが製造販売していた商品を日本で販売することとし,平成27年10月13日,シンガポ
ール・コマックスとの間で特約販売店契約(乙1)を締結し,同社から,COMAXNaturalわち「COMAXLatexの枕及びマットレス,すな
Natural

Latex」の商標を付した枕等の

販売について許諾を受け,
契約の有効期間である2015年
(平成27年)
10月1日から2020年(令和2年)9月30日までの間,日本におい
て,コマックス商品を独占的に販売することができる地位にある。イ
他方で,原告は,元々シンガポール・コマックスの枕等の物流を請け負う会社であった。原告は,平成26年11月11日,シンガポール・コマックスの子会社であるラテックスシステムズから,COMAXの商標及びCOMAX関連商品の使用について許諾を受けたが(乙2),そ
の後,ラテックスシステムズは,平成27年8月17日付けで,本件商標使用権契約を同年11月10日の契約期間終了日をもって解除する旨を通知した(乙3)。その際,ラテックスシステムズは,契約期間終了までに商標の利用を中止すること,日本その他の国において商標を出願した場合は,契約期間終了までに当該商標権を返還又は出願の取下げをするよう求
めた。
そのため,原告は,平成27年11月11日以降,COMAXの商標及びCOMAX関連商品を使用する権原を有さず,日本で登録を受けたCOMAXの商標権,すなわち原告各商標権を返還する義務を負っていたから,原告は,原告各商標権の正当な権利者ではない。


それにもかかわらず,原告は,指定商品を枕,マットレス等とする原告
各商標権を返還せず,原告各商標を付した原告商品の販売を継続した。このため,被告は,COMAX商品を独占的に販売できる地位にあったにもかかわらず,COMAXの商標を付した枕等の販売を行わず,新たにラテシアというブランドを立ち上げ,ラテシアについて商標
登録をした上で,同商標を付した被告商品を販売せざるを得なくなった。
また,原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じ,COMAXという名称が使われている原告商品が販売されているが,被告商品と同じものであるかという顧客からの問合せが後を絶たない状況であった(乙10)。

そうしたところ,被告は,アマゾン社から本件サービスについて紹介され,被告が保有する商標を他社が不正に使用して本件サイトに出品することを防ぐことができるとの説明を受けた。被告は,原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じていたことから,本件サービスに登録し,両者の混同が生じないように適切な措置がとられることを求めるため,本件申告を行ったものである。

(2)本件申告の趣旨について

上記(1)のとおり,
本件申告は,
被告が独占的に使用できる商標である
COMAXについて,原告が原告各商標を付した原告商品を販売する権原を有していないことを前提に,原告各商標が付された原告商品を特定して,アマゾン社に権利侵害の申告をしたものであり,原告と被告との間におけ
る正しい法的状態を指摘するものであるから,虚偽事実の告知に当たらない。

本件申告の趣旨に関し,原告は,本件申告が,原告商品が被告各商標権を侵害する旨を告知したものであると主張するが,被告は,本件申告をす
る際,申告内容を選択してくださいとの項目につき,商品詳細ページで,商品名,商品画像,商品説明などに当社の商標が違法に使用されている,商品またはそのパッケージに当社の商標が使用されている,偽造品であるとの3つの選択肢(乙15の2枚目参照)のうち,偽造品であるを選択したのであり,商標権侵害を申告する他の2つの選択肢を選んでいない。
原告は,
SAMWON社に原告商品の製造を委託していたと主張するが,

原告の主張に基づいても,SAMWON社は,タイ・コマックス又はシンガポール・コマックスからCOMAXブランドの商品の製造を受託し,製造していたにすぎないのであるから,COMAXブランドの商品を製造する権原はない。また,原告は乙3通知書によりCOMAXブランドの使用権原を失ったのであるから,原告もまたCOMAXブランドの商品の製造
を委託する権原を有しない。しかるに,原告は,権原なくCOMAXブランドの商品を販売していたのであるから,原告商品は,COMAXブランドの偽造品と位置付けられる。
このように,原告商品は,シンガポール・コマックスとは無関係の商品であるから,シンガポール・コマックスのCOMAX商品との関係におい
て,これを偽造品であると申告することは虚偽事実の告知に当たらない。ウ
アマゾン社は,バルジャノ社を介して原告から,原告が原告各商標権を有していることを伝えられた(甲10)にもかかわらず,原告商品の出品再開を認めていないのであるから,アマゾン社が被告各商標権の侵害を理
由に出品停止をしたものでないことが推認される。
被告は,本件訴訟の審理を踏まえ,令和元年8月23日,アマゾン社に対し,本件申告が,原告商品が被告各商標権を侵害する旨の趣旨を何ら含むものではないことを通知したが(乙26),本件サイトにおいて原告商品の出品再開は認められていない。

アマゾン社は,全世界的なインターネット通販サイトを運営する企業であり,本件申告に基づき,独自に審査を行い,単に日本の商標権の侵害の
有無を判断しているものではなく,世界的な観点からのブランド保護や,正規品と非正規品との間に混同を生じる状況を是正し,本件サイトの信頼性低下が生じ得ることを防止する観点から,原告商品の出品を停止したものである。
(3)被告の独占販売権及び原告が原告各商標を使用する権原についてア
原告は,乙1契約書の真正は争わないものの,Cの陳述書(甲15)に基づき,本件特約店契約が平成28年8月20日解除されたと主張するが,同契約は現在も有効に継続しており,被告がCから同契約の解除の通告を受けたことはない。Cは,国際エキスプレスの代表者が事実に反する説明をしたことにより(甲28),BとAが別人であると誤解して被

告と契約していないと陳述しているものと推察される。

乙2書面及び乙3通知書は,本件特約店契約締結後,Cに事実関係の確認を行った際,Cから提供を受けたものである。原告は,元々シンガポール・コマックスが東南アジアでCOMAXブランドの枕等を販売し,原告の関連会社である国際エキスプレスが輸入や配送を請け負っていたので
あるから,乙2書面や乙3通知書の内容が理解できなかったなどとは考えられない。原告は,これらの書面をAが作成したことが疑われるとも主張するが,乙2書面にはCの自筆で韓国語の追記もされているのであるから,Cが自筆の署名を行い文書の作成を行ったことに疑念を挟む余地はない。ウ
原告は,原告各商標権の権利者であるから,原告各商標を使用する正当な権原があると主張するが,原告は,タイ・コマックスの代表者であるCから1年限りでCOMAX商標の使用許諾がされたものであり,原告各商標権は,上記許諾を根拠に権利化されたものにすぎないから,Cが代表を務めるCOMAX社グループ及び同グループから独占的販売権を付
与された被告に対し,原告各商標権を行使することは,権利の濫用に当たり許されない。

(4)原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じていることについて

原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じていたことは前記のとおりであり,被告は,顧客から,COMAXという標章を付した枕等が他店において販売されているが,これは被告の製品と同じで
あるかとの問合せを頻繁に受けていた(乙10)。
また,KJ・LOGISTICS株式会社(以下KJ社という。同社は,
原告と同じく国際エキスプレスが設立した会社である
〔乙11〕)

は,本件申告以前に,YahooショッピングサイトにおいてCOMAX商標を付した枕等を販売していたところ,平成30年10月4日時点
の当該商品のお客様レビューでは,

こちらの店のものは本物ですか?よく見ると柄が違うようなのですが?シンガポールの店に問合わせても,この店とは関係ないと言われました。

などの書き込みがされ(乙12),原告商品とCOMAX商品との間に混同が生じている。

これに対し,原告は,平成26年以降は,シンガポール・コマックス等の販売する枕等にCOMAXとの標章は使用されていないと主張するが,被告が,平成27年10月に同社及びタイ・コマックスを訪問し,現地研修を受けたところ,当該研修で用いられた実際の商品や包装袋には,COMAXの標章が付されていた(乙18)。

また,
原告は,
平成31年3月28日時点の自社ウェブサイトにおいて,
メディア紹介として,香港とシンガポールにおいて販売されているCOMAXブランドの商品が取り上げられた2本のテレビ番組の静止画像を掲載しているが,同画像には,COMAXブランドが付された枕が映されている(乙19)。

さらに,KJ社のウェブサイトにも,

COMAXの寝具は海外でもご購入頂けます。(香港,タイ,シンガポール)との記載がある

(甲31)


(5)以上のとおり,被告による本件申告は虚偽ではなく,不正競争行為には該当しない。
2
争点2(原告の損害の有無及びその額)について

〔原告の主張〕
(1)不競法5条2項に基づく損害
被告がアマゾン社に本件申告をしたことにより,原告商品の出品を停止された平成30年5月15日から令和元年8月までの間,被告は,原告商品と競合する被告商品の販売により,以下の利益を得た。

被告商品の売上
被告の令和元年8月の本件サイトでの売上げの合計は,同月前半が3万
8900円,後半が7万9300円,配送・ギフト包装料は,同月前半が3605円,後半が6668円であり,合計額は12万8473円である(乙24)。

控除費目
令和元年8月のプロモーション割引額,アマゾンポイント費用額,アマ
ゾン手数料,FBA手数料(フルフィルメントサービス)は,変動費であり,これらを合計すると4万1635円となる(乙24)。
計算式:493円+4201円+8668円+1688円+8564円+18021円=4万1635円
なお,月間登録料は,本件サイトにおける固定費であるから,控除すべ
き費目に当たらない。

月間利益額
アの合計額からイの合計額を控除した額である8万6838円が,被告の令和元年8月の月間利益額となる。なお,平成30年5月から令和元年
8月までの本件サイトにおける売上げの平均額は,12万2201円であり,令和元年8月の金額と大きな差はない。


平成30年5月から令和元年8月までの平均売上
上記ウによれば,被告は,少なくとも月間8万5000円程度の利益を得ていたはずであるから,8万5000円に令和元年8月までの15月を乗じた127万5000円の利益があったといえる。


そうすると,不競法5条2項に基づき,127万5000円が原告の損害と推定される。


被告は,
本件申告後も被告商品の販売による利益は増加していないので,
本件申告と相当因果関係はないと主張するが,不競法5条2項は,不法行為の一般要件のうち,侵害行為と損害との因果関係及び損害額を推定する
規定であり,
被告の主張は失当である。
いずれにしても,
本件申告により,
原告が本件サイトで被告商品の競合品である原告商品が販売できなくなっていることは事実であり,原告商品の売上が何らかの影響を受けていることが容易に想定し得る。
また,被告は,本件申告の前後で被告商品の売上が減少していると主張
するが,仮にそうであるとしても,一般に商品の販売数量は季節変動や販売開始からの期間経過とともに変遷するものであって,本件申告と原告との損害の因果関係が切断されることはない。本件サイトにおける市場に限定しても,原告商品と被告商品は競合関係にあったから,原告商品の販売停止により,原告の潜在顧客が被告商品を購入したことは容易に推認でき
る。
(2)無形損害
本件申告により,原告は,バルジャノ社を介した原告商品の販売ができなくなり(甲11,12),原告が同社を介してアマゾン社に対応せざるを得なくなり(甲10),現在まで,原告商品を本件サイトにおいて販売するこ
とができていない。原告は,本件申告により信用を毀損され,無形損害を被っており,当該無形損害の額は,400万円を下らない。

(3)弁護士費用
原告は,弁護士費用相当額として,上記(1)及び(2)の合計額である527万5000円の1割である52万7500円の損害を被った。
(4)まとめ
したがって,原告は,被告に対し,上記(1)ないし(3)の合計額である58
0万2500円及びうち61万円に対する平成30年7月21日から,うち519万2500円に対する令和元年9月4日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
〔被告の主張〕
(1)不競法5条2項に基づく損害について

不競法5条2項は損害額の推定規定であって,損害の発生そのものを推定するものではないから,侵害行為と侵害者の利益の間に因果関係があることを主張立証することが必要であるが,原告はこの点について立証を行っていない。被告は,本件申告の前後を通じて,態様を変えることなく継続して被告商品を販売していたところ,被告商品の売上全体(別紙1)及
び本件サイトに限定した被告商品の売上げ
(別紙2)
のいずれについても,
本件申告の前後で売上げが増加しているという事情はなく,むしろ減少している(乙22~24)。
そうすると,本件申告を契機として,アマゾン社が原告商品の出品を停止し,原告が本件サイトにおいて原告商品を販売できなくなった結果,被
告商品の売上げが増加したり,被告の利益が上がったという関係にないから,被告が侵害行為により利益を受けている事実がなく,不競法5条2項の推定規定を適用する前提を欠く。

原告は,顧客に対して商品を販売するために必ず必要になる仕入費用,送料,梱包材料費,出荷費用及び販売手数料(月間登録料を含む。)を控除しておらず,失当である。

(2)無形損害について
不競法5条2項によって推定される損害とは別に,抽象的な無形損害を観念する余地はない上,本件申告と原告が主張する無形損害との間の因果関係や損害額について,具体的な主張立証がされていない。
(3)アマゾン社による出品停止との間の相当因果関係の不存在

アマゾン社が原告商品の出品を停止したのは,本件申告によって原告商品が被告各商標権を侵害すると誤信したことによるものではないから,この点でも,本件申告と,原告が被ったと主張する損害又は被告が得たと主張する利益との間の相当因果関係はない。
第4
1
当裁判所の判断
争点1(本件申告が虚偽事実の告知に当たるか)について
(1)本件申告の趣旨
本件申告の内容は,
第2の2(5)ウ記載のとおりであるが,
①本件サービス
の利用に当たり,被告は,被告各商標権を登録していること,②被告は本件
申告に当たって被告各商標を入力した上で申告内容について記載していること,③アマゾン社からバルジャノ社へのメール(甲8,9,12)にも商標権を侵害しているとの主張が権利者から届きましたと記載され,更に同各メールには侵害の種類として商標権と記載されるとともに,被告各商標権等の登録番号が記載されていることなどの事実によれば,本件申告
は原告商品が被告各商標権を侵害していることを趣旨とするものであると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,本件申告の申告内容は偽造品であることであるので,本件申告は被告各商標権の侵害を趣旨とするものではないと主張するが,偽造品であるということには,他人の信用が化体した標章を商標権等の
正当な法的権原なく商品に付すことが含まれるのであり,上記のとおり,被告が本件サービスの利用に当たり被告各商標を登録し,本件申告に際しても
同各商標を入力していることを併せ考えると,被告が本件申告の申告内容として偽造品であることと入力したとしても,そのことは,本件申告の趣旨が被告各商標権の侵害を趣旨にあるとの上記判断を左右しないというべきである。
(2)原告が被告各商標権を侵害している旨の摘示について
原告各商標は,
別紙原告商標目録記載のとおり,
標準文字の
COMAX
から構成されるものなどであり,
いずれも
第20類マットレス,まくら,クッション,座布団,家具を商品区分とするものであるところ,原告商品は,いずれも第20類に属する枕,マットレス等であって,原告各商標を付したものである。これに対し,被告各商標は,いずれも,商品区分を第17類天然ゴムゴムとするものであるから,原告商品は被告各商標権を
侵害するものではない。
なお,本件申告内容の偽造品であることという入力内容が,被告各商標権の侵害を意味するものではなく,他の商標権等の侵害を意味するものであるとしても,原告は,原告商品に自らの商標を表示して販売しているのであり,シンガポール・コマックス等の他人の使用する標章等を使用し,その真正品と偽って表示しているものではないので,被告の入力した上記申告内容はいずれにしても虚偽であるということができる。
そうすると,本件申告の内容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信
用を害する虚偽の事実であるということができる。
(3)原告が被告の独占販売権を侵害している旨の摘示について

被告は,①シンガポール・コマックスとの間で特約販売店契約(乙1)を締結し,本件申告当時,同社からCOMAXNaturalLatexの商標を付した枕等の独占的販売権を得ていた,②原告は,シンガポール・コマックスの子会社であるラテックスシステムズからCOMAX商標等に関する使用許諾を受けたが(乙2),同使用許諾契約は平
成27年11月10日をもって解除されたので(乙3),本件申告当時,原告商品を販売すべき正当な権原を有していなかったと主張する。しかし,原告は,原告各商標権を取得した上で,同各商標を付した原告商品を我が国において販売しているのであるから,原告商品を販売するに当たり,シンガポール・コマックス等からCOMAX商標の使用許諾を得る必要はなく,そもそもシンガポール・コマックスがいかなる権利を有しているかも証拠上明らかではない。
また,原告は,乙2書面及び乙3通知書の作成に関与したことを否定するところ,乙2書面及び乙3通知書は,いずれもラテックスシステムズが
作成した書面であり,原告がその内容に同意していたことを示す証拠は存在しない。そうすると,COMAX商標の使用許諾契約が原告とラテックスシステムズ間で締結され,これが解除されたとの事実を認めることもできない。
このように,原告は,原告各商標を使用して,原告商品を販売すべき権
原を有しているので,
被告がシンガポール・コマックスの
COMAXaturalNLatexの枕及びマットレスの独占的販売権を有して
いるとしても,原告商品の販売は被告の独占販売権を侵害するものではない。
なお,被告は,原告がCOMAX商標の正当な使用権原がないことを前提として,原告が原告各商標権を被告に行使することは権利の濫用に当たると主張するが,
同主張は,
その前提を欠くものであって失当である。

そうすると,本件申告が,被告がシンガポール・コマックスから許諾さ
れた独占販売権を侵害するという趣旨である場合においても,その申告内容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であるということができる。
(4)原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間の混同に関する主張に
ついて
被告は,原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じていたことから,その是正を求めるために本件申告に及んだと主張するが,原告による原告商品の販売が正当な商標権に基づくものであることは前記判示のとおりであり,仮に,需要者の間において,海外で販売されているシン
ガポール・コマックスの商品と原告商品との混同が生じているとしても,そのことについて,原告が法的責任を負うべき理由はなく,被告が虚偽の告知をすることを正当化するものでもない。
(5)小括
以上のとおり,本件申告は,原告商品が本件各商標権を侵害していること
を趣旨とするものであり,その内容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であり,不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するので,原告は,被告に対し,原告商品の販売が被告の有する商標権を侵害するとの虚偽の事実を第三者に告知又は流布することの差止めを求めることができる。

なお,被告が本件申告において権利が侵害されているとして通知した商品は,原告商品の全てではないが,同通知に係る商品以外の原告商品にも原告各商標が使用され,本件サイトに出品されていたことに照らすと,被告が,需要者及び原告の取引関係者その他の第三者に対し,これらの原告商品が被告各商標権を侵害する旨を告知・流布するおそれはあるというべきであるの
で,これらの商品についても虚偽の告知を差し止めるべき必要性があると認められる。
また,前記判示の本件申告の内容及び態様に照らせば,被告が本件申告をするにつき,少なくとも過失が認められる。
2
争点2(原告の損害の有無及びその額)について
(1)不競法5条2項に基づく損害


原告は,本件サイトにおける原告商品の出品が停止された令和元年8月までの15か月間に,被告は,被告商品の販売により,少なくとも月間8万5000円程度の利益を得ていたはずであるから,不競法5条2項に基づき,被告に対し,8万5000円に15月を乗じた127万5000円の損害賠償を求めることができると主張する。

しかし,被告は,本件申告の前後を通じて,特に販売態様等を変えることなく被告商品を販売していたと認められるところ,(乙22~24)証拠
によれば,被告商品の売上全体(別紙1)及び本件サイトに限定した被告商品の売上げ(別紙2)のいずれについても,本件申告後の売上げは,むしろ減少しているものと認められる。

そうすると,被告は,本件申告に係る不正競争行為により,営業上の利益を得たということはできず,本件申告とその後の被告商品の販売による利益との間に相当因果関係があると認めることはできない。

これに対し,原告は,不競法5条2項は,損害額のみならず,侵害行為と損害との間の因果関係も推定する規定であると主張するが,同項は損害
額の推定に関する規定であり,損害の発生や相当因果関係の存在までも推定するものではなく,これらの点については原告に立証責任があると解される。本件においては,本件申告と本件申告後に被告が得た販売利益との間に相当因果関係が存在すると認めるに足りる証拠はない。

したがって,原告の不競法5条2項に基づく損害賠償の主張には理由がない。

(2)無形損害
前記判示のとおり,被告による本件申告は,原告が被告の商標権等を侵害しているというものであり,その内容は,原告及び原告商品の信頼を低下させるものであり,本件申告の申告先であるアマゾン社は全世界的なインターネット通販サイトを運営する企業である。加えて,本件申告は,原告が自ら
の商標を商品に付していることを容易に知り得たにもかかわらず,これを
偽造品と称するものであって,その態様は悪質であることにも照らすと,原告の営業上の信用を毀損する程度は小さくないというべきである。しかし,他方で,本件申告は,アマゾン社に対するもののみであり,インターネットなどを通じて,不特定の需要者,取引者に対して告知したものではないことなどの事情も認められ,こうした事情も含め,本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,原告に生じた無形損害は,50万円であると認めるのが相当である。
(3)アマゾン社による出品停止との間の相当因果関係の不存在について
被告は,アマゾン社が原告商品の出品を停止したのは,本件申告によって原告商品が被告各商標権を侵害すると誤信したことによるものではないから,本件申告と,原告が被ったと主張する損害又は被告が得たと主張する利益との間に相当因果関係はないと主張する。
本件におけるアマゾン社による原告商品の出品停止措置は,被告の商標権
侵害等の事実は存在しないにもかかわらず,原告の説明及び原告から送付された資料等を十分に顧慮しないまま行われたものであって,合理的な根拠を欠くものであるといわざるを得ない。
他方,アマゾン社による上記出品停止措置は,本件申告に基づいて行われたものであり,本件申告と無関係の理由により行われたものであると認める
に足りる証拠はない。そうすると,同措置が直接的にはアマゾン社の判断によるものであるとしても,そのことは,被告による本件申告と原告に発生した無形損害との間に相当因果関係があるとの上記判断を左右するものではない。
また,被告は,令和元年8月,アマゾン社に対し,本件申告は原告商品が
被告各商標権を侵害する旨の趣旨を含むものではないと通知したが,同社が原告商品の出品再開を認めなかったことなどを理由として,本件申告と原告
に発生した損害との間には相当因果関係がないと主張するが,上記の通知を受領したアマゾン社が何らの対応をとらなかった理由は明らかではなく,同事実から,同社が本件申告内容と無関係の理由から原告商品の出品停止措置を講じたと推認することはできない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。

(4)弁護士費用相当額は,本件に係る一切の事情を考慮して,10万円を相当と認める。
(5)したがって,被告は,原告に対し,60万円及びこれに対する令和元年9月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。3
結論
以上によれば,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐達文三藤井大有
裁判官

裁判官今野智紀は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官

佐藤達文
(別紙)
原告商標目録

(1)商標権1
登録番号

第5877349号

出願日

平成28年3月23日

登録日

平成28年8月26日

商品区分

第20類

マットレス,まくら,クッション,座布団,家具

登録商標
(2)商標権2
登録番号
出願日

平成27年4月13日

登録日

平成27年10月9日

商品区分

第20類

登録商標

第5799133号

COMAX(標準文字)

マットレス,まくら,クッション,座布団,家具

(別紙)
被告商標目録

(1)商標権1
登録番号
出願日

平成28年3月15日

登録日

平成28年9月9日

商品区分
第5881032号

第17類

天然ゴム

ゴム

登録商標

(2)商標権2
登録商標
出願日

平成27年11月27日

登録日

平成28年5月13日

商品区分

第17類

登録商標

第5848611号

COMAX(標準文字)

天然ゴム,ゴム

(別紙)
商品目録


ASIN

B00QJLEF8C

商品名

COMAX肩こり防止用枕


ASIN
商品名

B01L0XMKE4
COMAX肩こり防止用枕


ASIN
商品名

B00QJW7IGW
COMAXいびき防止用枕


ASIN
商品名

B01L0XIDZ4
COMAXいびき防止用枕


ASIN
商品名

B01LEIT7C8
いびき防止用枕


ASIN

B01L0XEP4M

商品名

COMAXふんわり枕


ASIN
商品名

B01EH0WYFM
COMAXふんわり枕


ASIN

B01KZA63H8

商品名
COMAXロータイプ枕

マットレス
ASIN
商品名

B016ZAPDAK
COMAXマットレスシングル厚さ3cm×100cm×200cm
マットレス
ASIN
商品名

B01LEIT79G
COMAXマットレスセミダブル厚さ3cm×120cm×200cm
マットレス
ASIN
商品名

B011AXUU4G
COMAXマットレスシングル厚さ5cm×100cm×200cm
マットレス
ASIN
商品名

B01LEIT7C8
COMAX

マットレスセミダブル厚さ5cm×120cm×200cm

マットレス
ASIN

B011B3ALNU

商品名

COMAXマットレスシングル厚さ7.5cm×100cm×200cm
マットレス
ASIN
商品名

B01LEIT7D2
COMAXマットレスセミダブル厚さ7.5cm×120cm×200cm
枕カバー
ASIN
商品名

B016854PJC
COMAX枕カバー肩こり防止用

抱き枕
ASIN

商品名

B01KV71B4K
COMAX抱き枕

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