判例検索β > 令和1年(行ケ)第10082号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和1(行ケ)10082
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和2年8月5日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2020-08-05
情報公開日2020-08-17 12:00:44
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令和2年8月5日判決言渡
令和元年(行ケ)第10082号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和2年6月10日
判決原告
ネオケミア株式会社

訴訟代理人弁護士

高橋
訴訟復代理人弁護士

渡邊亮祐宮川利彰被告淳
株式会社メディオン・リサーチ・
ラボラトリーズ

訴訟代理人弁護士

山本響子柴田和彦田中順也水谷馨也迫主威松
訴訟代理人弁理士

田一郎田恭子文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2018-800053号事件について令和元年5月7日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
1


特許庁における手続の経緯等
被告は,
発明の名称を
二酸化炭素含有粘性組成物
とする発明について,
平成10年10月5日(優先日平成9年11月7日(以下本件優先日という。),優先権主張国日本)を国際出願日とする特許出願(特願2000-520135。以下本件出願という。)をし,平成23年1月7日,特許権の設定登録(特許第4659980号。請求項の数13。以下,この特許を本件特許という。)を受けた(甲85,86)。



原告は,平成30年5月7日,本件特許について特許無効審判を請求した(甲90)。
特許庁は,上記請求を無効2018-800053号事件として審理を行い,令和元年5月7日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同月17日,原告に送達された。



原告は,令和元年6月6日,本件審判の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし13の記載は,次のとおりである(以下,請求項の番号に応じて,請求項1に係る発明を本件発明1などという。甲85)。
【請求項1】
部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含む
顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒,粉末)剤と,アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり,
含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。【請求項2】
得られる二酸化炭素含有粘性組成物が,二酸化炭素を5~90容量%含有するものである,請求項1に記載のキット。
【請求項3】
含水粘性組成物が,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後において50以上の容量を保持できるものである,請求項1又は2に記載のキット。【請求項4】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである,請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである,請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする,水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。
【請求項7】

請求項1~5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。
【請求項8】
顔,脚,腕,腹部,脇腹,背中,首,又は顎の部分肥満改善用である,請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって,1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒,粉末)剤と,アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;
を用いて,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み,含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものである,二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。
【請求項10】
調製される二酸化炭素含有粘性組成物が,二酸化炭素を5~90容量%含有するものである,請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
含水粘性組成物が,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後において50以上の容量を保持できるものである,請求項9又は10に記載の調製方法。【請求項12】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである,請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。

【請求項13】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである,請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。
3
本件審決の要旨


本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,本件発明1ないし13は,本件優先日前に頒布された刊行物である甲1(特開昭60-215606号公報)に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,又は本件優先日前に頒布された刊行物である甲2(特公平7-39333号公報)に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件特許を無効とすることはできないというものである。


本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下甲1発明という。),本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。ア
甲1発明
平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール4部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール6部,カルボキシメチルセルロースナトリウム3部,亜鉛華4部,炭酸水素ナトリウム5部,香料0.3部,色素を微量及び水53.7部から製造したA剤と,平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,酒石酸5部,香料0.3部,色素を微量及び水56.8部から製造したB剤の組み合わせからなるパック剤であって,使用時にA剤2重量部とB剤3重量部を混合することで,pHが6.2となるとともに,発生する炭酸ガスによる血行促進作用により,皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与えるパック剤イ
本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点
(一致点)
二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,炭酸塩を含有する含水粘性組成物と,酸を含む剤の組み合わせからなり,含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキットである点(相違点1-1)
炭酸塩及び酸をそれぞれ含む組成物の構成について,本件発明1では,炭酸塩がアルギン酸ナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され,酸が顆粒(細粒,粉末)剤に含まれるのに対し,甲1発明では,炭酸塩がポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され,酸が含水粘性組成物に含まれる点
(相違点1-2)
二酸化炭素含有粘性組成物の用途が,本件発明1では,部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用されるものに特定されるのに対し,甲1発明では,皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与えるとされる点
第3当事者の主張
1
取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)について


原告の主張

相違点1-1の容易想到性の判断の誤り

(ア)

相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成について本件審決は,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成に関し,アルギン酸ナトリウムは,本件優先日当時において,増粘剤としては周知であるものの,皮膜形成能を有する増粘剤として周知であったことを示す証拠はないことからすると,使用時に皮膜を形成して作用する甲1発明のパック剤において,皮膜形成に寄与するポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースナトリウムに代えてアルギン酸ナトリウムを用いることを当業者に動機付けるに足る根拠を見いだすことはできない旨判断したが,以下のとおり,本件審決の判断は誤りである。
a
甲1発明の目的は血行促進にあるところ,甲1には,パック剤は,通常ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース,各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合したもので,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進する(1頁右欄1行~5行)との記載があり,上記記載中に等の水性粘稠液との文言がある。甲1は,
上記文言により,
増粘剤として,
ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース以外のものを選択することが可能であることを示唆又は開示している。
しかるところ,甲87(特開平9-278926号公報)の【0011】,【0015】及び【0016】には,アルギン酸ナトリウムを含む水溶液が皮膜を形成すること,皮膜の膜厚をアルギン酸ナトリウムの濃度で調整することの記載があること,これらの記載事項は,甲88及び89(機能性包装資材の開発技術の形成-機能性段ボール箱の開発徳島県立工業技術センター研究報告Vol.4
199

5)にも記載されていることからすると,本件優先日当時,アルギン酸ナトリウムが皮膜形成の主体となることは,周知であったものといえる。
加えて,本件優先日当時,アルギン酸ナトリウムは,毒性がなく,皮膚に良い影響を与え,肌に対する高い安全性を有していることは周知であったこと(甲22,49ないし51等),アルギン酸ナトリウム水溶液が医療の分野で肌に塗布するジェル剤として慣用されていたこと
(甲21,
44,58等)
からすると,アルギン酸ナトリウムは,
本件優先日当時,安全性が高く,粘度の高い水性粘稠液を形成する増粘剤として慣用されていたものといえる。
そうすると,
甲1に接した当業者であれば,
甲1発明において,
血行促進という課題を解決するために,A剤の含水粘性組成物に含有される,造膜形成能(皮膜形成能)を有するポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースを,皮膜形成能を有する増粘剤として周知であり,かつ,安全性が高く,粘度の高い水性粘稠液を形成する増粘剤として慣用されていたアルギン酸ナトリウムに置換する動機付けがあるものといえる。
したがって,当業者は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,甲1発明において,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物
の構成とすることを容易に想到することができたものである。
b
次に,甲1発明の目的である血行促進は,造膜形成(皮膜形成)
における物理的刺激の付与のほかに,二酸化炭素の経皮吸収によってももたらされることは,本件優先日当時の技術常識であった。
そして,本件優先日当時,二酸化炭素の経皮吸収の効率性の向上の
ため,気泡状の二酸化炭素を効率的に発生・保持させ,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高めることは,自明又は周知の課題であり(甲5,18,62ないし67),また,気泡膜を形成する媒質の粘性を高めることにより気泡の安定性が増すこと(甲15,16),界面活性剤が気泡の起泡性及び安定性を高めること(甲70ないし72)は,技術常識であった。
しかるところ,本件優先日当時,①アルギン酸ナトリウムは,難溶性であるため,アルギン酸ナトリウムを水の存在下で増粘剤として利用する場合には,アルギン酸ナトリウム水溶液を利用することが慣用されていたこと(甲21,44,58),②アルギン酸ナトリウムは,高分子界面活性剤であり,起泡剤(気泡剤)として利用することができること(甲60),アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤が,発生した気泡状の二酸化炭素を閉じ込める効果を有すること(甲5,61)は,いずれも周知であったことからすると,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高めるために,アルギン酸ナトリウムを事前に溶解した水溶液を選択することは必然であるといえる。
そうすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において,血行促進という課題を解決するために,A剤の含水粘性組成物に含有される,造膜形成能(皮膜形成能)を有するポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースに代えて,二酸化炭素の経皮吸収の効率性を向上させるための増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを選択することは,設計事項であるといえる。
したがって,当業者は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,甲1発明において,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物
の構成とすることを容易に想到することができたものである。

c
以上のとおり,当業者は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成とすることを容易に想到することができたものであるから,これを否定した本件審決の前記判断は誤りである。

(イ)

相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成について本件審決は,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成に関し,甲1発明において,酸を含むB剤の剤形を,含水粘性組成物から顆粒(細粒,粉末)剤に変更すること,又はA剤とB剤の剤形を,含水粘性組成物同士の組み合わせから,含水粘性組成物と顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせに変更することを当業者に動機付けるに足りる根拠を見いだすことはできない旨判断した。
しかしながら,本件優先日当時,経皮吸収を目的とする化粧品については,反応速度を調整するため,徐放化技術が慣用されていたこと(甲17),二酸化炭素を適切に発生させるための徐放化技術として,炭酸塩と酸を一つの固形物に含有させることは,慣用技術であったこと(甲73ないし81),水分と炭酸塩と酸の組み合わせのうち,酸を固形にしておくことは,技術常識であったこと(甲64ないし67,82)に照らすと,甲1に接した当業者は,甲1発明において,A剤の含水粘性組成物に含有される,ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースをアルギン酸ナトリウムに置換することに伴い,上記慣用技術を適宜組み合わせるなどして,酸を含むB剤の剤形を顆粒(細粒,粉末剤)の構成(相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成)とする動機付けがあるものと
いえるから,上記構成を容易に想到することができたものである。したがって,本件審決の上記判断は誤りである。

相違点1-2の容易想到性の判断の誤り
本件審決は,甲1には,使用時に甲1発明のA剤及びB剤を混合して得られるパック剤を,部分肥満改善や水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療に使用できると認識させる記載は見いだせず,また,本件優先日当時において,血流量,皮膚水分量(NMF値)及び肌のしっとり感を向上させることや皮膚表面を清浄することにより,
部分肥満改善水や虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療ができるとの技術常識が存在したとはいえないことからすると,使用時に甲1発明のA剤及びB剤を混合して得られるパック剤を部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物(相違点1-2に係る本件発明1の構成)とすることを,当業者に動機付けるに足る根拠を見いだすことはできない旨判断した。
しかしながら,本件優先日当時,血行が促進する結果,新陳代謝が盛んとなるため,皮下脂肪の燃焼が促進されることから,部分肥満改善効果が生じることは,技術常識であったこと(甲83,84)からすると,甲1に接した当業者は,部分肥満改善という美容品(化粧品)が有する普遍的な課題を解決するため,甲1発明に上記技術常識を適用して,部分肥満改善用化粧料の構成とする動機付けがあるものといえるから,上記構成を容易に想到することができたものである。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。


小括
以上のとおり,本件審決における相違点1-1及び1-2の容易想到性の判断に誤りがあり,本件発明1は,甲1及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,これを否定した本件審
決の判断は誤りである。
したがって,本件審決は取り消されるべきである。


被告の主張

相違点1-1の容易想到性の判断の主張に対し
(ア)a

原告は,甲87ないし89の記載を根拠として,アルギン酸ナト

リウムを含む水溶液が皮膜を形成することは,本件優先日当時,周知であったから,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成に関し,アルギン酸ナトリウムが皮膜形成能を有する増粘剤として周
知であったことを示す証拠はないとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,甲1発明における皮膜とは,ピールオフタイプ
のパック化粧料が皮膚上で乾燥して固まり,剥離可能な膜を皮膚上に形成したものを指しているのに対し,甲87の請求項1の記載に照らすと,甲87の【0011】,【0015】及び【0016】記載の皮膜を形成するアルギン酸を含む水溶液でいうところの皮膜
とは,段ボールや食品等の被コーティング物の表面に塗布された水溶液の膜(単に水を被コーティング物の表面に塗った状態)を指しているにすぎず,乾燥して固まったものではなく,剥離可能なものでもないから,甲1発明における皮膜は,甲87記載の皮膜と技術
的に異なるものといえる。
また,甲88及び89は,甲87記載の発明の発明者らが執筆した論文であり,甲87と同様の技術を開示するものにすぎない。
したがって,本件審決の上記判断に誤りはなく,原告の上記主張は失当である。
b
原告は,当業者は,甲1発明において,血行促進という課題を

解決するために,
A剤の含水粘性組成物に含有される,
造膜形成能
(皮
膜形成能)を有するポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースに代えて,二酸化炭素の経皮吸収の効率性を向上させるための増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを選択することは,設計事項であるから,上記構成を容易に想到することができた旨主張する。
しかしながら,甲1発明のパック剤は,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料であり,甲1には,二酸化炭素の経皮吸収に関しては何ら言及がない。
また,ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムは皮膜形成能を有しているのに対して,アルギン酸ナトリウムは,本件優先日当時,当業者に皮膜形成能を有するとは認識されていなかったから,かかる増粘剤の変更が設計事項であるなどとはいえない。
さらに,アルギン酸ナトリウムに原告が主張するような優れた特性があるとしても,ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースナトリウムを増粘剤として用いている甲1発明において,増粘剤をアルギン酸ナトリウムに置換してしまうと,使用時に皮膚上で皮膜を形成して作用する甲1発明の本来の効果を奏しなくなるから,甲1発明に接した当業者がかかる置換を行う動機付けがあるものとはいえないし,設計事項であるともいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
c
以上によれば,本件審決における相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成とすることの容易想到性の判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。

(イ)

甲1には,甲1発明は,使用時に皮膚上で皮膜形成をして作用する
パック剤であって,短時間ですぐれた血行促進作用を示すものであることも記載されていることからすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において,反応速度の調整をする必要があると認識するとはいえないから,甲1発明において,使用時の二酸化炭素の発生を遅延させ,持続性を持たせる情報技術を適用する動機付けはない。
したがって,本件審決における相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成とすることの容易想到性の判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。

相違点1-2の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
甲1発明は,炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚をしっとりさせることを目的とする発明にすぎず,甲1には,部分肥満改善用化粧料としての用途の記載はないのみならず,単なる血行促進作用や物理的刺激が部分肥満などに対して効果をもたらすことについての示唆すらない。また,原告が挙げる甲83は,従来技術として挙げられている電動マッサージ具の効果を,甲84は,従来技術として挙げられているしおの効果をそれぞれ記載したものであり,甲83及び84は,甲1発明を部分肥満改善化粧料に変更する可能性があることを示唆するものとはいえない。したがって,相違点1-2に係る本件発明1の構成を容易に想到することができないとした本件審決の判断に誤りはなく,これに反する原告の主張は理由がない。


小括
以上によれば,本件発明1は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

2
取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし13の進歩性の判断の
誤り)について
(1)

原告の主張
本件審決は,本件発明2ないし13は,いずれも,本件発明1の全ての発
明特定事項又はそれらに対応する事項を含むものであるから,本件発明1と同様の理由により,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない旨判断した。
しかしながら,前記1⑴で述べたとおり,本件審決における本件発明1の進歩性の判断に誤りがあるから,本件審決の上記判断は誤りである。⑵

被告の主張
前記1⑵で述べたとおり,本件審決における本件発明1の進歩性の判断に誤りはないから,本件審決における本件発明2ないし13の進歩性の判断の誤りをいう原告の主張は,その前提において理由がない。
したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

第4当裁判所の判断
1
明細書の記載事項


本件出願の願書に添付した明細書(以下本件明細書という。甲85)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する表1ないし7,10ないし12,20及び21については,別紙1を参照)。

技術分野本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ;褥創,創傷,熱湯,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;排便反射の減衰または喪失に基づく便秘;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療あるいは改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる二酸化炭素含有粘性組成物とそれを用いる予防及び治療方法に関する。(2頁40行~3頁6行)イ
背景技術痒みの治療に対して,局所療法として外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などが一般に使用される。これらは痒みが発生したときに使用され,一時的にある程度痒みを抑える。湿疹に伴う痒みに対しては外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤の使用が一般的であり,これらは炎症を抑えることにより痒みの発生を防ごうとするものである。しかしながら,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤はアトピー性皮膚炎,水虫や虫さされの痒みにはほとんど効果がない。外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤は,痒みに対する効果は弱く,即効性もない。また,ステロイド剤は副作用が強いため,使用が容易でない。本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴う痒みに有効な製剤とそれを用いる治療及び予防方法を提供することにある。また本発明は,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;排便反射の減衰または喪失に基づく便秘;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とする。(3頁7行~31行)

発明の開示本発明者らは鋭意研究を行った結果,二酸化炭素含有粘性組成物が,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤,非ステロイド抗炎症剤,ステロイド剤などが無効な痒みにも有効であることを発見し,更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用,美肌作用,部分肥満解消作用,経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。即ち,本発明は,下記の1~48に関する。1.増粘剤の1種または2種以上を含む含水粘性組成物に気泡状の二酸化炭素を含有してなる二酸化炭素含有粘性組成物。2.増粘剤が天然高分子,半合成高分子,合成高分子,無機物からなる群の中から選ばれる1種または2種以上よりなることを特徴とする項1に記載の二酸化炭素含有粘性組成物。3.増粘剤としての天然高分子がアラビアゴム,カラギーナン,ガラクタン,寒天,クインスシード,グアガム,トラガントガム,ペクチン,マンナン,ローカストビーンガム,小麦澱粉,米澱粉,トウモロコシ澱粉,馬鈴薯澱粉,カードラン,キサンタンガム,サクシノグルカン,デキストラン,ヒアルロン酸,プルラン,アルブミン,カゼイン,コラーゲン,ゼラチン,フィブロインからなる群より選ばれる少なくとも1種であり,増粘剤としての半合成高分子がエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース及びその塩類,カルボキシメチルエチルセルロース及びその塩類,カルボキシメチルスターチ及びその塩類,クロスカルメロース及びその塩類,結晶セルロース,酢酸セルロース,酢酸フタル酸セルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,粉末セルロース,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,アルファー化澱粉,部分アルファー化澱粉,カルボキシメチル澱粉,デキストリン,メチル澱粉,アルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステル,コンドロイチン硫酸ナトリウム,ヒアルロン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり,増粘剤としての合成高分子が,カルボキシビニルポリマー,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,メタアクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー,メタアクリル酸-メタアクリル酸エチルコポリマー,メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー,メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であり,増粘剤としての無機物が含水二酸化ケイ素,軽質無水ケイ酸,コロイダルアルミナ,ベントナイト,ラポナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項1または項2のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物。4.二酸化炭素が酸と炭酸塩の反応により得られることを特徴とする項1~3のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物。5.酸がギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,フマル酸,マレイン酸,フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,グルタミン酸,アスパラギン酸,グリコール酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,乳酸,ヒドロキシアクリル酸,α-オキシ酪酸,グリセリン酸,タルトロン酸,サリチル酸,没食子酸,トロパ酸,アスコルビン酸,グルコン酸,リン酸,リン酸二水素カリウム,リン酸二水素ナトリウム,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸カリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム,ピロ亜硫酸カリウム,酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム,酸性ヘキサメタリン酸カリウム,酸性ピロリン酸ナトリウム,酸性ピロリン酸カリウム,スルファミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり,炭酸塩が炭酸アンモニウム,炭酸カリウム,炭酸カルシウム,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム,セスキ炭酸カリウム,セスキ炭酸カルシウム,セスキ炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項4記載の二酸化炭素含有粘性組成物。6.炭酸塩と酸と増粘剤と水が実質的に二酸化炭素を発生しない状態でなるキットであって,炭酸塩と酸と増粘剤と水を混合することにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。7.炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を含む項6記載のキット。

9.炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒,粉末)剤を含む項6記載のキット。

12.炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤と含水粘性組成物を含む項6記載のキット。

18.項1~5のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物または項6~17のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする医薬組成物。

22.皮膚粘膜損傷の予防ないし治療剤である項18記載の医薬組成物。

23.化膿性皮膚疾患の予防ないし治療剤である項18記載の医薬組成物。

27.項1~5のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物または項6~17のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む化粧料。

29.顔,脚,腕,腹部,脇腹,背中,首,顎などの部分肥満を改善できる項27記載の痩身化粧料。

(以上,3頁32行~5頁14行)

かゆみを伴う皮膚粘膜疾患もじくは皮膚粘膜障害としては,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などが挙げられる。皮膚粘膜損傷としては,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疸などが挙げられる。(5頁48行~6頁3行)

化粧料としては,美白,肌質改善,そばかす改善,部分痩せ,除毛後の再発毛抑制,髪の艶改善効果などがあり,クリーム,ジェル,ペースト,クレンジングフォーム,パック,マスクなどの形状で使用できる。

(6
頁15行~17行)

本発明でいう「含水粘性組成物とは,水に溶解した,又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である。該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ,皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合,二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。該組成物は,二酸化炭素を気泡状で保持するためのものであれば特に限定されず,通常の医薬品,化粧品,食品等で使用される増粘剤を制限なく使用でき,剤形としてもジェル,クリーム,ペースト,ムースなど皮膚粘膜や損傷組織,
毛髪などに一般的に適用される剤形が利用できる。
本発明には,例えば以下のキットが含まれる。
1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸とのキット;
2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩とのキット;
3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;…
6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤と含水粘性組成物のキット;…
気泡状の二酸化炭素を含む本発明の組成物は,これらキットの各成分を使用時に混合することにより製造できる。」(6頁18行~39行)

増粘剤としては,例えば天然高分子,半合成高分子,合成高分子,無機物などがあげられ,これらの1種又は2種以上が用いられる。天然高分子としては,例えば植物系高分子,微生物系高分子,蛋白系高分子があげられる。半合成高分子としては,例えばセルロース系高分子,澱粉系高分子,アルギン酸系高分子,その他の多糖類系高分子があげられる。…本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のセルロース系高分子としてはエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース及びその塩類,カルボキシメチルエチルセルロース及びその塩類…などがあげられる。…発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のアルギン酸系高分子としてはアルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステルなどがあげられる。…本発明の増粘剤に用いる合成高分子としては,カルボキシビニルポリマー,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,メタアクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー,メタアクリル酸-メタアクリル酸エチルコポリマー,メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー,メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーなどがあげられる。(6頁40行~7頁23行)

本発明の含水粘性組成物に二酸化炭素を保持させる方法としては,該組成物に炭酸ガスボンベなどを用いて二酸化炭素を直接吹き込む方法がある。また,反応により二酸化炭素を発生する物質を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させるか,又は含水粘性組成物を形成すると同時に二酸化炭素を発生させて二酸化炭素含有粘性組成物を得ることも可能である。二酸化炭素を発生する物質としては,例えば炭酸塩と酸の組み合わせがある。具体的には以下のような組み合わせにより二酸化炭素含有粘性組成物を得ることが可能であるが,本発明は二酸化炭素が気泡状で保持される二酸化炭素含有粘性組成物が形成される組み合わせであれば,これらの組み合わせに限定されるものではない。1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ;2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の組み合わせ;3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせ;4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせ;…6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤と含水粘性組成物の組み合わせ;…9)炭酸塩と酸と含水粘性組成物の組み合わせ;…なお,炭酸塩含有含水粘性組成物,酸含有含水粘性組成物及び含水粘性組成物は,各々炭酸塩の増粘剤含有顆粒(細粒,粉末)剤等,酸の増粘剤含有顆粒(細粒,粉末)剤等及び増粘剤含有顆粒(細粒,粉末)剤等の製剤を製造し,これらから調製してもよい。炭酸塩の増粘剤含有顆粒(細粒,粉末)剤等及び酸の増粘剤含有顆粒(細粒,粉末)剤等は各々炭酸塩及び酸の徐放性製剤とすることにより,更に持続性を増強することも可能である。(7頁26行~8頁1行)ク
本発明に用いる炭酸塩としては,炭酸アンモニウム,炭酸カリウム,炭酸カルシウム,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,セスキ炭酸カリウム,セスキ炭酸カルシウム,セスキ炭酸ナトリウム,炭酸水素カリウムなどがあげられ,これらの1種または2種以上が用いられる。本発明に用いる酸としては,有機酸,無機酸のいずれでもよく,これらの1種または2種以上が用いられる。…本発明の組成物には更に必要に応じて殺菌剤,抗生物質,抗臭菌剤,抗炎症剤,止血剤,局所麻酔剤,創傷治癒促進剤,血管拡張剤,血栓溶解剤,角質溶解剤,保湿剤,各種ビタミン,各種ホルモン,鎮痒剤,毛根賦活剤などの各種薬効物質を加えることにより,効果を強めたり相乗効果などを得ることができる。また,香料や色材,保湿剤,油性成分,界面活性剤などを加え,クリーム,ジェル,ペースト,クレンジングフォーム,パック,マスクなどの剤形にして,使用感や使用の利便性等を向上させることができる。(8頁2行~24行)

本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的,又は美容目的で使用する場合は,該組成物を直接使用部位に塗布するか,あるいはガーゼやスポンジ等の吸収性素材に含浸させるか,またはこれらの素材を袋状に成形してその中に該組成物を入れて使用部位に貼付してもよい。該組成物を塗布又は貼付した部位を通気性の乏しいフィルム,ドレッシング材などで覆う閉鎖療法を併用すれば更に高い効果が期待できる。該組成物を満たした容器に使用部位を浸すことも有効である。その場合,炭酸ガスボンベなどを用いて該組成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続する。(10頁3行~9行)本発明の二酸化炭素含有粘性組成物は使用後ティッシュペーパーなどでふき取ったり,水などで洗い流すことにより容易に除去できるが,該組成物の原料及び該組成物自体はいずれも非常に安全性が高いので,褥創面などの損傷組織に投与した場合は,完全に患部から除去しなくても問題はなく,また,場合によっては除去せずに新しい二酸化炭素含有粘性組成物を追加使用することも可能である。本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を腹部等に適用して部分痩せを行う場合には,入浴時などに行えば,所定時間後に容易に洗い流すことができる。本発明の二酸化炭素含有粘性組成物は,数分程度皮膚または粘膜に適用し,すぐに拭き取ってもかゆみ,各種皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防,あるいは美容に有効であるが,通常5分以上皮膚粘膜もしくは損傷皮膚組織等に適用する。特に褥創治療などでは24時間以上の連続適用が可能であり,看護等の省力化にも非常に有効である。肌質改善等の美容目的に使用する場合は,1回の使用ですぐに効果が得られる。使用時間や使用回数,使用期間を増やせば,美容効果は更に高まる。部分痩せ用途に対しては,1日1回の使用を1ヶ月以上継続すれば十分な効果が得られるが,使用時間や使用回数,使用期間を増やせば効果は更に高まる。(10頁21行~35行)

本発明の二酸化炭素含有粘性組成物は,密閉容器等に保存することにより,長期間有効性を失うことなく使用が可能である。また,用時調製により使用することも可能である。用時調製による二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な使用方法としては,例えば,炭酸塩を含有する含水粘性組成物や含水もしくは多孔性高分子フィルム又はシート等を使用部位に塗布又は貼付し,その上に酸を含有する含水粘性組成物や含水もしくは多孔性高分子フィルム又はシート,顆粒剤等を塗布したり,貼付又は散布して二酸化炭素含有粘性組成物を得ることもできる。また,この顆粒剤等は通気性の乏しい高分子フィルム又はシート等に粘着剤で接着しておき,この高分子フィルム又はシート等を,炭酸塩を含有する含水粘性組成物や含水もしくは多孔性高分子フィルム又はシート等を塗布又は貼付した上からそれを覆うように貼付すれば二酸化炭素含有粘性組成物が得られると同時に,閉鎖療法が簡便に実施できる。もちろんこれらの組み合わせで炭酸塩と酸を入れ替えても有効であるし,顆粒剤等を炭酸塩と酸の複合顆粒剤等とし,含水粘性組成物との組み合わせで二酸化炭素含有粘性組成物を得ることも可能である。用時調製では二酸化炭素の発生に伴う吸熱反応により二酸化炭素含有粘性組成物が冷たくなるため,調製用の材料を暖めておくか,又は調製後に二酸化炭素含有粘性組成物を暖めてもよい。(10頁36行~50行)


本発明の二酸化炭素含有粘性組成物の水分量は,40~99重量%程度,好ましくは60~96重量%程度である。炭酸塩と酸を使用して二酸化炭素を発生させる場合,含水粘性組成物100重量部に対し,炭酸塩0.01~30重量部程度,酸0.01~30重量部程度を使用できる。本発明の組成物は,調製直後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後においても通常30以上,好ましくは50以上,より好ましくは70以上の容量を保持している。本発明の二酸化炭素含有粘性組成物は,使用時に気泡状の二酸化炭素を1~99容量%程度,好ましくは5~90容量%程度,より好ましくは10~80容量%程度含む。(11頁7行~15行)シ本発明の組成物は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ;褥創,創傷,熱傷,口角炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;排便反射の減衰または喪失に基づく便秘;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療及び予防あるいは改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる。(11頁16行~30行)

発明を実施するための最良の形態実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚,表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。実施例1~84炭酸塩含有含水粘性組成物と酸との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表1~表7に示す。〔製造方法〕増粘剤と精製水,炭酸塩を表1~表7のように組み合わせ,炭酸塩含有含水粘性組成物をあらかじめ調製する。酸は,固形の場合はそのまま,又は粉砕して,又は適当な溶媒に溶解又は分散させて,液体の場合はそのまま,又は適当な溶媒で希釈して用いる。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を混合し,二酸化炭素含有粘性組成物を得る。<炭酸塩含有含水粘性組成物の製造>ビーカー等の容器中で精製水に増粘剤を溶解又は膨潤させ,炭酸塩を溶解又は分散させる。このとき必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解,膨潤を促進してもよいし,増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておいて用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕<発泡性>炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。これを10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い発泡性を評価する。増加率<評価基準1>発泡性70%以上+++50%~70%++30%~50%+30%以下0体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ,それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。<気泡の持続性>炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。<評価基準2>減少率気泡の持続性20%以下+++20%~40%++40%~60%+60%以上0体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ,それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。(11頁31行~12頁末行)セ
実施例109~144炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表10~表12に示す。〔製造方法〕増粘剤と精製水,炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸),マトリックス基剤を表10~表12のように組み合わせ,炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤をあらかじめ調製する。この顆粒剤は徐放性であってもよい。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤を混合し,二酸化炭素含有粘性組成物を得る。本発明でいうマトリックス基剤とは,溶媒による溶解や膨潤,加熱による溶融などにより流動化し,他の化合物を包含した後,溶媒除去又は冷却等により固化し,粉砕等により顆粒を形成する化合物,もしくは他の化合物と混合,圧縮して固化し,粉砕等により顆粒を形成する化合物で水により溶解もしくは崩壊するものすべてをいう。マトリックス基剤としては,エチルセルロース,エリスリトール,カルボキシメチルスターチ及びその塩,カルボキシメチルセルロース及びその塩,含水二酸化ケイ素,キシリトール,クロスカルメロースナトリウム,軽質無水ケイ酸,結晶セルロース,合成ケイ酸アルミニウム,合成ヒドロタルサイト,ステアリルアルコール,セタノール,ソルビトール,デキストリン,澱粉,乳糖,白糖,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート,ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,プルラン,ポリエチレングリコール,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,マンノース,メチルセルロースなどがあげられ,これらの1種又は2種以上が用いられる。<炭酸塩含有含水粘性組成物の製造>実施例1~84に記載の炭酸塩含有含水粘性組成物の製造方法に従い製造する。<酸の顆粒剤の製造>マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は,ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に酸を加えて十分攪拌,混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し,固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合は,ビーカー等の容器中でマトリックス基剤を水又はエタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ,これに酸を溶解又は分散させて十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し,乾燥させる。完全に固まったら粉砕し顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。なお,本発明において上記の酸の顆粒剤の製造方法は本実施例に限定されることはなく,乾式破砕造粒法や湿式破砕造粒法,流動層造粒法,高速攪拌造粒法,押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕<発泡性>炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1g相当量の酸の顆粒剤を直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。これを10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い,発泡性を評価する。体積の測定は,実施例1~84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<発泡性>に記載の方法に従い測定する。<気泡の持続性>炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1g相当量の酸の顆粒剤を直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。体積の測定は,実施例1~84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。(22頁49行~23頁末行)

実施例227~249炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物の組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表20~表21に示す。〔製造方法〕増粘剤と精製水,炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸),マトリックス基剤を表20~表21のように組み合わせ,炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物をあらかじめ調製する。炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物を混合し,二酸化炭素含有粘性組成物を得る。炭酸塩と酸の複合顆粒剤は炭酸塩と酸が徐放性であってもよい。<炭酸塩と酸の複合顆粒剤の製造>マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は,ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に炭酸塩と酸を加えて十分攪拌,混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し,固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合はビーカー等の容器中でマトリックス基剤を無水エタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ,炭酸塩と酸を溶解又は分散させ,十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し,乾燥させる。完全に固まったら粉砕し,顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。<含水粘性組成物の製造>ビーカー等の容器中で増粘剤を精製水に溶解又は膨潤させる。このとき必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解又は膨潤を促進してもよいし,増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておいて用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。なお,本発明において上記の炭酸塩と酸の複合顆粒の製造方法は本実施例に限定されることはなく,乾式破砕造粒法や流動層造粒法,高速攪拌造粒法,押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕<発泡性>含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。含水粘性組成物と炭酸塩と酸の複合顆粒剤の混合物を10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い,発泡性を評価する。体積の測定は,実施例1~84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<発泡性>に記載の方法に従い測定する。<気泡の持続性>含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。体積の測定は,実施例1~84の〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。(35頁40行~36頁末行)

試験例1(足白癬に伴う痒みの治療試験)41歳男性。強い痒みを伴う右足の足白癬に対し,実施例8の組成物100gを洗面器に満たして足を約20分間浸けさせたところ,本組成物による一度の治療で痒みがとれた。

試験例2(足白癬に伴う痒みの治療試験)
73歳女性。非常に強い痒みを伴う両足の足白癬に対し,実施例18の組成物300gを洗面器に満たして足を約20分間浸けさせた。外用抗真菌剤による2年間の治療が全く効果がなかったが,本組成物による一度の治療で痒みがとれた。」
(以上,46頁4行~10行)
試験例4(褥創治療試験)78歳男性。肺ガンの進行により寝たきりとなり,腰部から臀部にかけて褥創が発生した。褥創の深さは約4cmで筋膜まで達していた。実施例1の組成物100gを褥創のポケットに満たし,20cm×30cmのフィルムドレッシング材(商品名テガダーム,3M社製)で20分間覆った。該組成物とフィルムドレッシング材は毎日交換した。治療開始11日目で褥創の深さは1cmに改善された。治療開始から1ヶ月後には肉芽はほぼ周囲の正常皮膚と同じ高さにまで盛り上がった。(46頁14行~46頁20行)
試験例7(アトピー性皮膚炎治療試験)4歳女性。両膝裏のアトピー性皮膚炎に対し,実施例20の組成物5gを1日1回5分間塗布したところ,2週間で皮膚の黒ずみが消え,4週間で皮膚の乾燥が治癒した。試験例8(顔と腹部の部分痩せ試験)41歳男性。ふっくらした頬と太いウエストを痩せさせたいと希望し,実施例8の組成物を1日1回15分間右頬に30g,腹部に100g塗布した。2ヶ月後に右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなったと判断された。腹部はウエストが6cm減少した。試験例9(肌質改善及び顔痩せ試験)37歳女性。ふっくらした頬と荒れ肌,肌のくすみに悩み,種々の化粧品を試したが効果が得られなかった。実施例20の組成物50gを1日1回10分間顔全体に塗布したところ,1回目の塗布で肌のくすみが消えて白くなり,きめ細かい肌になった。2週間後には3名の評価者全員により,顔が小さくなったと判断された。(以上,46頁30行~41行)
試験例13(腕の部分痩せ試験)36歳女性。二の腕の太さを気にしていたため,実施例18の組成物30gを左の二の腕に塗布し,食品包装用フィルム(商品名サランラップ,旭化成社製)をその上からまいて6時間放置したところ,二の腕の周囲長が2cm減少した。(47頁4行~7行)試験例16(足白癬に伴う痒みの治療試験)32歳女性。非常に強い痒みを伴う両足の足白癬に対し,抗真菌剤(商品名メンタックスクリーム,科研製薬社製)を2ヶ月間塗布したが,痒みがまったくおさまらなかった。実施例8の組成物100gを洗面器に満たして足を約20分間浸けさせたところ,一度の治療で痒みがとれた。その4日後に再度実施例8の組成物100mlを洗面器に満たして足を約20分間浸けさせたところ,病変の肉眼的所見も著明に改善した。(47頁17行~22行)
試験例18(アトピー性皮膚炎治療試験)8歳男性。一部角化,亀裂を伴い疼痛と痒みの非常に強い手指のアトピー性皮膚炎に対し,実施例8の組成物50gをカップに満たして指先を20分間浸けさせたところ,直ちに痒みが消失した。翌日には亀裂部に上皮形成が認められ,疼痛も軽減した。(47頁26行~29行)
試験例22(褥創治療試験)65歳男性。脳内出血の血脈除去手術後より植物状態になり,仙骨部に15cm×15cm大の骨膜に達するIV度褥創が生じた。創面には壊死組織が付着し,深いポケットが形成され,滲出液も認められた。生理的食塩水による創面の洗浄およびポビドンヨードシュガー塗布による治療を行ったが,ほとんど効果が得られなかった。実施例297の二酸化炭素含有粘性組成物30gを1日1回,ポケット内に充填し,更に創面に盛り上げるように塗布し,その上に20cm×30cmのフィルムドレッシング材(商品名テガダーム,3M社製)を貼付した。該組成物とフィルムドレッシング材は毎日交換した。該組成物投与5日目で創面より壊死組織,滲出液が消失して急速な治癒傾向を示した。同時に,良性肉芽の増生を認めた。2ヶ月目には褥創の大きさ,深さは著明に縮小し,創面には上皮が形成され,ポケットも消失した。(47頁42行~48頁2行)(2)

前記(1)の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細には,本件発明1
に関し,次のような開示があることが認められる。

痒みの治療に対して,局所療法として一般に使用される外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤は,アトピー性皮膚炎,水虫の痒みにはほとんど効果がなく,また,湿疹に伴う痒みに対して一般に使用される外用の非ステロイド抗炎症剤や非ステロイド剤は,痒みに対する効果は弱く,即効性もなく,ステロイド剤は,副作用が強いため,使用が容易ではない。「本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴う痒みに有効な製剤とそれを用いる治療及び予防方法を提供することにある。
また,本発明は,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷,そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの
美容上の問題及び部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とするものである。」(前記⑴イ)イ
「本発明者らは鋭意研究を行った結果,二酸化炭素含有粘性組成物が,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤,非ステロイド抗炎症剤,ステロイド剤などが無効な痒みにも有効であることを発見し,更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用,美肌作用,部分肥満解消作用,経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。」(前記⑴ウ)


「本発明でいう含水粘性組成物とは,水に溶解した,又は水で
膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物であり,該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ,皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合,二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。
本発明の二酸化炭素含有粘性組成物は,用時調製により使用することも可能であり,例えば,炭酸塩を含有する含水粘性組成物や含水もしくは多孔性高分子フィルム又はシート等を使用部位に塗布又は貼付し,その上に酸を含有する含水粘性組成物や含水もしくは多孔性高分子フィルム又はシート,顆粒剤等を塗布したり,貼付又は散布して二酸化炭素含有粘性組成物を得ることもできる。」(前記⑴オ,コ)


「本発明の組成物は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎…などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ;褥創,創傷,熱傷,口角炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;…生着不全;…歯科疾患;…末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;…筋骨格系疾患;…神経系疾患;…角化異常症;…化膿性皮膚疾患;排便反射の減衰または喪失に基づく便秘;除毛後の再発毛抑制
(むだ毛処理)

そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰え
などの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療及び予防あるいは改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる。」(前記⑴シ)
2
甲1の記載事項について
(1)

甲1(特開昭60-215606号公報)には,次のような記載があるこ
とが認められる。

特許請求の範囲1.炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有することを特徴とするパック剤。2.炭酸ガス発生物質が炭酸塩と酸である特許請求の範囲第1項記載のパック剤。3.炭酸ガスの存在する雰囲気がpH4~7である特許請求の範囲第1項又は第2項記載のパック剤。(1頁左下欄4行~11行)

本発明はパック剤に関し,更に詳細には,炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚をしっとりさせることができるパック剤に関する。パック剤は,通常ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース,各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合したもので,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つである。パック剤には,一般に添加成分の一つとして,血行促進作用を有する合成又は天然エキス等が配合されるが,これらは少量の配合では効果が不充分であり,また多量の配合では血行は促進されるが,その反面適用部位に不快な刺激感を与えると共に,連続使用すると皮膚炎を惹起するなどの欠点があり,その改善が所望されていた。そこで,本発明者は,このような欠点がなく,血行をよく促進するパック剤を提供すべく鋭意研究を行った結果,炭酸ガスを皮膚に直接作用させると皮膚の血流がよくなり,皮膚にしっとり感を与えることを見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は,炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有するパック剤を提供するものである。(1頁左下欄13行~2頁左上欄9行)ウ
本発明のパック剤は,次に示すように,従来のパック剤と併用することもできるし,また単なる炭酸ガスパック剤として使用することもできる。本発明のパック剤は次のような形態とすることができる。①従来公知のパック剤を耐圧容器に入れ,これに高圧炭酸ガス,あるいは炭酸塩と酸,もしくはドライアイス等の炭酸ガス発生源を加えて密閉する。本パック剤は使用時内容物を吐出させて被パック部位に塗布する。②炭酸塩と酸を実質的に水の存在しない状態で,一つの不織布,布,紙等の担体に担持させる。更にこの担体に公知のパック剤成分を一緒に担持させておいてもよい。本パック剤は,使用時被パック部位に付着させ,この上に蒸しタオルを重ねるとか,水を添加するとかの方法によってパック剤に水を供給して,当該炭酸塩と酸とを反応させて炭酸ガスを発生させる。③炭酸塩と酸をそれぞれ異なる2つの上記担体に担持させる。この担体には,②と同様に公知のパック剤成分を担持させることも,また水分を保持させることもできる。本パック剤は,使用時被パック部位に重ねて付着させ,必要な場合(パック剤が水を含まない場合)には,②と同様に水を供給して炭酸ガスを発生させる。(2頁左上欄10行~左下欄8行)

ところで,炭酸ガスは,pHが酸性の場合にはCO2分子として存在して血流促進作用を示すが,pHがアルカリ性側ではCO32-イオンあるいはHCO3-イオンとして存在するため血流促進作用を示さない。従って,本発明においては,炭酸ガスの存在する雰囲気のpHが弱酸性,すなわちpH4~7,好ましくは6.0~6.7になるように調整されることが必要である。(2頁左下欄9行~右下欄2行)オ
本発明で使用される炭酸塩としては,例えば炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,セスキ炭酸ナトリウム,炭酸水素カリウム,炭酸カリウム,セスキ炭酸カリウム,炭酸水素アンモニウム塩,炭酸アンモニウム塩,セスキ炭酸アンモニウム塩等が挙げられ,これらは単独又は2種以上を組合わせて使用できる。また,酸としては,有機酸及び無機酸の何れも使用できるが,水溶性で固体のものが好ましい。有機酸としては,例えばギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸寺の直鎖脂肪酸;シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,フマル酸,マレイン酸,フタル酸,インフタル酸,テレフタル酸等のジカルボン酸;グルタミン酸,アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;グリコール酸,乳酸,ヒドロキシアクリル酸,α-オキシ酪酸,グリセリン酸,タルトロン酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,サリチル酸(o,m,p),没食子酸,マンデル酸,トロパ酸,アスコルビン酸,グルコン酸等のオキシ酸;桂皮酸,安息香酸,フェニル酢酸,ニコチン酸,カイニン酸,ソルビン酸,ピロリドンカルボン酸,トリメリット酸,ベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸並びにこれら有機酸の酸性塩が挙げられる。無機酸としては,例えば,リン酸,リン酸二水素カリウム,リン酸二水素ナトリウム,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸カリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム(メタ重亜硫酸ナトリウム),ピロ亜硫酸カリウム(メタ重亜硫酸カリウム),酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム,酸性ヘキサメタリン酸カリウム,酸性ピロリン酸ナトリウム,酸性ピロリン酸カリウム,スルファミン酸等が挙げられる。就中コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸,フマル酸,リン酸及びこれらの酸性塩が好ましい。(2頁右下欄3行~3頁右下欄9行)

本発明においては,これらの炭酸塩と酸の量を調節することにより,炭酸ガス発生雰囲気のpHを4~7に調整することもできる。例えば公知のパック剤組成物と併用する場合には,炭酸塩,酸の量はいずれも全組成の1~20重量%,特に2~10重量%になるようにするのが好ましい。また,本発明パック剤中における炭酸ガス濃度は60ppm以上であることが好ましく,これより少ないと充分な効果が奏されない。(3頁右上欄10行~左下欄4行)

本発明のパック剤には上記必須成分のほかに,通常のパック剤に使用される油性基剤,エモリエント剤,保湿剤,皮膜剤,ゲル化剤,増粘剤,アルコールおよび精製水,さらに必要に応じて界面活性剤,血行促進剤,消炎剤,ビタミン類,殺菌剤などの薬効剤,防腐剤,香料,色素などを適宜配合することができる。また本発明のパック剤に,ピールオフタイプのもの,ウォッシュオフタイプのものなどのタイプのものにも適用することができる。(3頁左下欄5行~14行)

叙上の如く,本発明のパック剤は,短時間ですぐれた血行促進作用を示し,また適用部位に不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連続使用しても皮膚炎をおこす心配がないというすぐれた性質を示す。(3

頁左下欄15行~右下欄4行)


次に実施例を挙げて本発明を説明する。実施例1製造例1~4で得た本発明のパック剤,従来法で得たパック剤〔(P)及び(Q)〕について,血流量,NMF値及びしっとり感を測定した。パック剤(P)平均分子量40万のポリビニルアルコール15部,平均分子量10万のポリビニルアルコール6部,ポリエチレングリコール(平均分子量300)2部,1,3-ブチレングリコール6部,エタノール5部,酸化チタン3部,香料0.2部,ホウ砂0.1部,色素を微量,および水63.8部から常法により製造した。パック剤(Q)平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,香料0.2部,色素を微量,および水61.8部から常法により製造した。製造例1パック剤(P)を耐圧容器に入れ,高圧の炭酸ガスを封入し,炭酸ガス含有のパック剤を得た。耐圧容器内の最終ガス圧は4気圧とした。使用時のpHは6.1。製造例2平均分子量40万のポリビニルアルコール15部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール20部,エタノール5部,スクワラン10部,酸化チタン5部,ポリエチレングリコール(平均分子量300)30部,炭酸水素ナトリウム5部,クエン酸5部から常法により製造した。使用時のpHは6.3。製造例3製造例2で製したパック剤を不織布に均一に塗布して得た。製造例4平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール4部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール6部,カルボキシメチルセルロースナトリウム3部,亜鉛華4部,炭酸水素ナトリウム5部,香料0.3部,色素を微量および水53.7部から,常法により製造したものをA剤とした。平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,酒石酸5部,香料0.3部,色素を微量および水56.8部から常法により製造して得たものをB剤とした。使用時,A剤2重量部とB剤3重量部を混合する。使用時のpHは6.2。〔測定方法〕(1)血流量レザードップラー血流計を用いて測定した。ヒト(24才,女性)の左腕内側に血流計のプローブを装着し,平常時の血流を測定した後,プローブの周囲に多量のパック剤を塗布し,血流の変化を観察した。(2)皮膚水分量(NMF値)電気伝導度が水分量に比例する原理を用いたソフィーナメーターによって測定できるNMF値を角質水分量とした。実験条件:被検者:女性(21~24歳,両腕内側,n=4)室温:25℃湿度:72~76%実験方法:入室10分後に両腕を石鹸で洗浄し,タオルでふきとり,15分間放置後,平常値を測定し一定面積(5×5cm)を両腕内側に左右対称に設定し,従来のパック剤とCO2含有パック剤を各0.8gとって均一に塗布する。乾燥後(約30~40分後)皮膜となったパック剤を剥離した直後から,ソフィーナメーターによってNMF値を3分おきに30分後まで測定する。ソフィーナメーターによるNMF値はプルーブのあて方によって誤差が生じやすいので,5回測定し,その平均値とした。(3)しっとり感石鹸で洗顔後,パック剤を顔面に塗布し,乾燥後(約30~40分)パック剤を剥離し,その30分後のしっとり感を評価した。評価は,非常にしっとりする(3点),しっとりする(2点),ややしっとりする(1点),しっとりしない(0点)とし,健康な女性4人によって評価した。〔結果〕その結果は第1表のとおりである。第1表(1)血流量は,塗布前を1とした相対値で示した。(2)NMF値は塗布30分後の値を塗布前を1とした相対値で示した。(3)しっとり感はn=4の平均値を示した。第1表から明らかなように,発明品は従来品に比較し,血流量,NMF値及びしっとり感の何れにおいても顕著に優れている。(3頁右下欄5行~5頁右下欄4行)

実施例2実施例1の製造例1で製したパック剤を,かさつきが目立つ女性3人に継続使用(1週間に3回,3週間)してもらったところ,不快な刺激感はなく,肌がしっとりしてきたとの評価を得た。また皮膚炎をおこすなどの問題は生じなかった。(5頁右下欄5行~11行)(2)

前記(1)の記載事項によれば,甲1には,甲1発明に関し,次のような開
示があることが認められる。

ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース,各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合した「パック剤は,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進するとともに,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つであるところ,従来のパック剤においては,添加成分の一つとして配合される血行促進作用を有する合成又は天然エキス等が,少量の配合では効果が不充分であり,多量の配合では血行は促進されるが,その反面,適用部位に不快な刺激感を与えるとともに,連続使用すると皮膚炎を惹起させるなどの欠点があった。
そこで,本発明者は,このような欠点がなく,血行をよく促進するパック剤を提供すべく鋭意研究を行った結果,炭酸ガスを皮膚に直接作用させると皮膚の血流がよくなり,
皮膚にしっとり感を与えることを見出し,
炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有する本発明のパック剤を完成した。」(前記⑴イ)


本発明のパック剤は,短時間で優れた血行促進作用を示し,また,適用部位に不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連続使用しても皮膚炎を起こさないというすぐれた性質を有する。」(前記⑴カ)

本発明の実施例1において,製造例4で得た本発明のパッ
ク剤(甲1発明)を両腕内側に塗布し,乾燥後(約30分~40分後)皮膜となったパック剤を剥離した直後から,ソフィーナメーターによって皮膚水分量(NMF値)を3分おきに30分後まで測定し,また,
上記のパック剤(甲1発明)を顔面に塗布し,乾燥後(約30~40分)パック剤を剥離し,
その30分後の
しっとり感
について評価した結果,
第1表に示すとおり,いずれにおいても従来品に比べて顕著に優れていた(前記⑴キ)。
3
取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
(1)

相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,
炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成の容易想到性の判断の誤りについて

原告は,甲1に接した当業者であれば,甲1発明において,血行促進という課題を解決するために,A剤の含水粘性組成物に含有される,造膜形成能(皮膜形成能)を有するポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースを,皮膜形成能を有する増粘剤として周知であり,かつ,安全性が高く,粘度の高い水性粘稠液を形成する増粘剤として慣用されていたアルギン酸ナトリウムに置換する動機付けがあるものといえるから,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,甲1発明において,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成とすることを容易に想到することができたものであり,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。
(ア)

甲1には,パック剤は,通常ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロース,各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合したもので,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つである。(前記2(1)イ)「本発明」

の実施例1の
皮膚水分量(NMF値)の実験において,製造例4で得た本発明

のパック剤(甲1発明)を両腕内側に塗布し,乾燥後(約30~40分後)皮膜となったパック剤を剥離した直後から,ソフィーナメーターによってNMF値を3分おきに30分後まで測定した旨(前記2⑴キ)の記載がある。
上記記載によれば,甲1発明のパック剤は,皮膚に塗布し,乾燥後に皮膜となったものを剥離して使用するものであって,使用時に皮膚上で皮膜を形成して作用するものと理解できるから,甲1には,甲1発明のA剤に含まれるポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムは,皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤であることの開示があるものと認められる。
他方で,甲1には,

本発明のパック剤には上記必須成分のほかに,通常のパック剤に使用される…増粘剤…などを適宜配合することができる。

(前記2(1)カ)との記載はあるが,アルギン酸ナトリウムについての記載はなく,アルギン酸ナトリウムが皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤であることを示唆する記載もない。
(イ)

原告は,甲87ないし89を根拠として挙げて,本件優先日当時,
アルギン酸ナトリウムが,皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤として周知であった旨主張する。
そこで検討するに,
甲87
(特開平成9-278926号公報)
には,

【発明の属する技術分野】本発明は,主として,青果物や加工食品等を高品質な状態に保存するのに使用されるガス透過性フィルムに関する。

(【0001】),【課題を解決するための手段】本発明のガス透過性フィルムは,アルギン酸と水溶性化合物とを含む水溶液で皮膜を形成し,この皮膜をカルシウ塩等の多価金属塩の水溶液に接触させてアルギン酸を不溶化させアルギン酸凝固フィルムとし,不溶化したアルギン凝固フィルムを水洗して水溶性化合物を溶解し,溶解される水溶性化合物でガス透気度を調整することを特徴とする。(【0010】),皮膜を形成するアルギン酸を含む水溶液は,アルギン酸を酸やアルカリに溶解させた水溶液,水にアルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムやアルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩を溶解させた水溶液が使用できる。(【0011】),本発明のガス透過性フィルムは,アルギン酸と水溶性化合物を含む水溶液で皮膜を形成し,この皮膜をカルシウム塩等の多価金属塩で凝固させて,不溶化されたアルギン酸凝固フィルムを水洗してガス透気度を調整する。アルギン酸と水溶性化合物とを含む水溶液は,たとえば,段ボール箱や食品等の被コーティング物の表面に塗布して皮膜とし,あるいは,スリットから多価金属塩の水溶液中に押し出して皮膜とする。(【0015】),被コーティング物に塗布される皮膜は,アルギン酸ナトリウムの濃度で調整できる。アルギン酸を含む水溶液は,アルギン酸の濃度を高くすると粘土も高くなる。粘土の高いアルギン酸水溶液を含む水溶液を使用すると,被コーティング物の表面に付着される膜厚が厚くなる。たとえば,アルギン酸ナトリウムの水溶液は,濃度を高くすると粘度も高くなるので,被コーティング物を濃度の高いアルギン酸ナトリウムの水溶液に浸漬して,厚い皮膜を形成し,あるいは,アルギン酸を含む水溶液を噴霧して,被コーティング物の表面に厚い皮膜を形成する。(【0016】),

[実施例1]下記の工程でガス透過性フィルムを製造する。

,①1wt%のアルギン酸と,1wt%のプルランを含む水溶液を,5×5cmの段ボールライナーの片面にに塗布し,段ボールライナーの表面にアルギン酸とプルランを含む水溶液の皮膜,膜厚500μmを形成する。(【0
019】)との記載がある。上記記載から,アルギン酸を含む水溶液を段ボール箱や食品等の被コーティング物の表面に塗布することにより皮膜が形成されることを理解できるが,他方で,甲87には,アルギン酸
又はアルギン酸を含む水溶液が人体の皮膚上の皮膜形成に寄与することについての記載も示唆もない。
また,甲88及び89(機能性包装資材の開発技術の形成-機能性段ボール箱の開発徳島県立工業技術センター研究報告Vol.4)においても,アルギン酸又はアルギン酸を含む水溶液が人体の皮膚上の皮膜形成に寄与することについての記載も示唆もない。
そうすると,原告の上記主張は採用することができない。他に本件優先日当時,アルギン酸ナトリウムが,皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤として周知であったことを認めるに足りる証拠はない。(ウ)

以上によれば,甲1に接した当業者において,甲1発明のA剤に含
まれる,皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤であるポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースを,
このような機能を有する
増粘剤であるとはいえないアルギン酸ナトリウムに置換する動機付けがあるものと認めることはできないから,原告の前記主張は採用することができない。

次に,原告は,①本件優先日当時,甲1発明の目的である血行促進は,造膜形成(皮膜形成)における物理的刺激の付与のほかに,二酸化炭素の経皮吸収によってももたらされることは技術常識であり,二酸化炭素の経皮吸収の効率性の向上のため,気泡状の二酸化炭素を効率的に発生・保持させ,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高めることは,自明又は周知の課題であった(甲5,18,62ないし65),②そして,本件優先日当時,気泡膜を形成する媒質の粘性を高めることにより気泡の安定性が増すこと(甲15,16),界面活性剤が気泡の発生・保持に効果的に作用すること(甲70ないし72),アルギン酸ナトリウムは,高分子界面活性剤であり,起泡剤(気泡剤)として利用することができること(甲60),アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤が,発生した気泡状の二
酸化炭素を閉じ込める効果を有すること(甲5,61)は,いずれも技術常識であり,また,アルギン酸ナトリウムは,難溶性であるため,アルギン酸ナトリウムを水の存在下で増粘剤として利用する場合には,アルギン酸ナトリウム水溶液を利用することが慣用されていたこと
(甲21,
44,
58)からすると,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高めるために,アルギン酸ナトリウムを事前に溶解した水溶液を選択することは必然であるといえる,③そうすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において,血行促進という課題を解決するために,A剤の含水粘性組成物に含有される,造膜形成能(皮膜形成能)を有するポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースに代えて,二酸化炭素の経皮吸収の効率性を向上させるための増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを選択することは,設計事項であるといえるから,当業者は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,甲1発明において,相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,
炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物
の構成とすることを容易に想到することができたものであり,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。
そこで検討するに,
前記2⑵の認定事実によれば,
甲1には,
従来の
パック剤においては,添加成分の一つとして配合される血行促進作用を有する合成又は天然エキス等が,少量の配合では効果が不充分であり,多量の配合では血行は促進されるが,その反面,適用部位に不快な刺激感を与えるとともに,連続使用すると皮膚炎を惹起させるなどの欠点があったため,炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有する甲1記載のパック剤は,炭酸ガスを皮膚に直接作用させることで皮膚の血流をよくすることにより,このような欠点を解消し,短時間で優れた血行促進作用を示し,適用部位に不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連続使用しても皮膚炎を起こさない性質のパック剤を提供することを目的とするものである旨の
記載があることが認められ,上記記載から,甲1発明のパック剤は,炭酸ガスを皮膚に直接作用させることにより,短時間で優れた血行促進作用を示し,肌にしっとり感を与えることに技術的意義があるものと理解できる。
そうすると,
仮に原告が上記①で主張するように,
本件優先日当時,
血行促進は,造膜形成(皮膜形成)における物理的刺激の付与のほかに,二酸化炭素の経皮吸収によってももたらされることは技術常識であり,二酸化炭素の経皮吸収の効率性の向上のため,気泡状の二酸化炭素を効率的に発生・保持させ,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高めることは,自明又は周知の課題であったとしても,甲1発明のパック剤の上記技術的意義に照らすと,甲1に接した当業者において,甲1発明のパック剤において上記課題があると認識するものと認めることはできない。以上によれば,甲1に接した当業者は,甲1発明において,二酸化炭素の経皮吸収の効率性の向上のため,気泡状の二酸化炭素を効率的に発生・保持させ,気泡状の二酸化炭素の保留性(持続性)を高める必要性があるものと認識するものとはいえないから,甲1発明のA剤に含まれる,皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤であるポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースを,二酸化炭素の経皮吸収の効率性を向上させるための増粘剤としてアルギン酸ナトリウムに置換する動機付けがあるものと認めることはできないし,また,上記置換をすることが当業者が適宜選択し得る設計事項であるものと認めることはできない。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。

以上のとおり,本件審決における相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の構成の容易想到性の判断に誤りはない。

(2)

相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成の容易想到性の判断の誤りについて原告は,本件優先日当時,経皮吸収を目的とする化粧品については,反応速度を調整するため,徐放化技術が慣用されていたこと(甲17),二酸化炭素を適切に発生させるための徐放化技術として,炭酸塩と酸を一つの固形物に含有させることは,慣用技術であったこと(甲73ないし81),水分と炭酸塩と酸の組み合わせのうち,酸を固形にしておくことは,技術常識であったこと
(甲64ないし67,
82)
に照らすと,
甲1に接した当業者は,
甲1発明において,A剤の含水粘性組成物に含有される,ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースをアルギン酸ナトリウムに置換することに伴い,上記慣用技術を適宜組み合わせるなどして,酸を含むB剤の剤形を顆粒(細粒,粉末剤)の構成(相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせの構成)とする動機付けがあるものといえるから,上記構成を容易に想到することができたものであり,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,前記⑴で説示したとおり,当業者は,甲1及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,甲1発明において,A剤に含有される,ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースをアルギン酸ナトリウムに置換することが容易に想到することができたものと認められないから,原告の上記主張は,その前提において理由がない。


小括
以上によれば,本件審決における相違点1-1の容易想到性の判断に誤りはないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。

4
取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし13の進歩性の判断の誤り)について
本件発明2ないし13は,いずれも本件発明1の発明特定事項又は本件発明1の発明特定事項に対応する事項を含むものであり,
前記3で説示したとおり,
本件発明は甲1に記載された発明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められないから,本件発明2ないし13も,同様に,当業者が容易に発明をすることができたものと認められない。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は,理由がない。

5
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,本件審決を取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹
裁判官

中村
裁判官

岡山一郎恭忠広
(別紙)
表1

表2

表3

表4

表5

表6

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表10

表11

表12

表20

表21

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