判例検索β > 令和2年(行コ)第10002号
特許権 行政訴訟
事件番号令和2(行コ)10002
裁判年月日令和2年7月22日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2020-07-22
情報公開日2020-08-05 14:00:44
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令和2年7月22日判決言渡
令和2年(行コ)第10002号

特許料納付書却下処分取消請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第278号)
口頭弁論終結日

令和2年6月15日
判決控訴人
中井紙器工業株式会社

控訴人
株式会社グラセル

上記両名訴訟代理人弁護士

控訴内西被木加奈阪子裕人国
処分行政庁


指定代理人

笠間那芝原智大江摩今福智文尾﨑友美主許文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
庁長官未果史弥子
第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
特許第5181035号の特許権に係る第4年分の特許料納付書について,特許庁長官が平成29年8月3日付けでした手続却下の処分を取り消す。
第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,特許第5181035号の特許権(以下本件特許権といい,本件特許権に係る特許を本件特許という。)を共有していた控訴人中井紙器工業株式会社(以下控訴人中井紙器という。)及び控訴人株式会社グラセル(以下控訴人グラセルという。)が,本件特許権の第4年分の特許料の追納期間経過後に同年分の特許料及び割増特許料(以下,これらを併せて本件特許料等という。)を追納するための特許料納付書(以下本件特許料納付書という。)を提出したが,特許庁長官が,控訴人らが追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて特許法(以下法という。)112条の2第1項に規定する正当な理由があるものと認められないとして,本件特許料納付書に係る手続を却下する旨の手続却下の処分(以下本件却下処分という。)をしたため,その取消しを求める事案である。原審は,特許庁長官のした本件却下処分に違法はないとして,控訴人らの請求を棄却した。
控訴人らは,原判決を不服として本件控訴を提起した。

2
前提事実
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決2頁21行目の本件特許の出願を本件特許出願と改め,同
頁22行目から24行目までを次のとおり改める。
⑶控訴人中井紙器は,平成24年12月28日,本件特許出願について特許査定を受け,平成25年1月11日,第1年から第3年までの各年分の特許料を納付し,同月18日,本件特許権の設定登録を受けた(甲13,14)。控訴人中井紙器は,そのころまでに,A弁理士に対し,本件特許権の第4年分以降の特許料の納付管理(以下「本件年金管理という。)を委任した(甲8)。」


原判決2頁末行の21日,の後にB弁理士を代理人として,を加
える。



原判決3頁2行目の乙4を乙4,5と,同頁10行目の

告知をした。

告知を口頭でした。

と改め,同頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
また,A弁理士は,そのころ,A弁理士の事務所で特許料の納付管理事務に従事していた担当者に対し,本件年金管理の事務をしなくてよい旨の指示をするとともに,控訴人中井紙器の本件特許権以外の権利については今後も特許料の納付管理事務を行うよう指示をした(甲8)。


原判決3頁20行目から21行目にかけての(甲2,3,乙14)を(乙13,14)と改め,同頁25行目の⑼の後に次のとおり加える。
特許庁は,平成27年8月13日,本件訂正を認め,本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする旨の審決(以下「本件審決という。乙16)をした。」


原判決4頁25行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
B弁理士と同じ特許事務所に所属するC弁理士は,同年7月28日,インターネットの特許情報プラットホームにおいて,本件特許権の第4年分の特許料が納付されている旨の表示がないことを確認したが,同年分の納付状況が反映されていないだけであろうと考え,特段の措置を講じなかった。B弁理士は,同年8月24日,控訴人中井紙器の代理人のD弁理士に対し,本件特許権の第4年分の特許料の納付状況の報告等を求める旨の問合せをした。D弁理士は,同日,控訴人中井紙器の担当者を通じてA弁理士に対して第4年分の特許料の納付について確認したところ,納付手続をしていないことが判明し,本件追納期間内に本件特許料等の納付がされていないことを知った(乙8,26)。⑹

原判決5頁1行目の(以下「本件特許料納付書という。)」を(本件特許料納付書)と,同頁15行目の(以下「本件却下処分という。)」を(本件却下処分)と,同頁19行目の前項の審査請求を同審査請求と改める。
3
争点
控訴人らが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)の有無

第3争点に関する当事者の主張
以下のとおり訂正し,当審における控訴人らの補充主張を加えるほかは,原判決の事実及び理由の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。1
原判決の訂正


原判決6頁8行目の本件特許権から9行目の事務処理までを本件年金管理の事務と改める。


原判決7頁6行目の本件特許権の年金管理を本件年金管理と改め
る。

2
当審における控訴人らの補充主張


控訴人中井紙器の正当な理由について

特許権を維持するために支払う特許料の納付管理(以下年金管理という。)は,単に期限の管理をすればよいだけではなく,各国の年金期限管理,当該年次における納付すべき特許料の管理,各国の法律の改正情報の収集など様々な事務処理が含まれ,容易になし得る業務ではないため,特許庁は,年金管理会社や特許事務所(以下,これらを併せて年金管理サービス会社という。)などに外部委託することを推奨している(甲18)。そして,特許権者は,年金管理サービス会社に年金管理を委託し,相応の対価を支払うことで,自社で年金管理を行うことから解放され,年金管理サービス会社からの期限通知に対し,権利維持の意思表示を行うのみで年金納付手続がされているという運用がされている(甲18)。このような年金管理の運用実態に鑑みれば,特許権者は,年金管理サービス会社に年金管理を委任(委託)した時点で,特許料の納付期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたと解すべきである。

控訴人中井紙器は,A弁理士に対し,本件特許権を含む多くの特許権の年金管理を委任しており,本件特許権の第4年分の特許料についても,A弁理士からの年金通知のご案内という納付期限が近付いている旨の通知を受け,納付手数料,印書代,電子化情報処理料といった年金管理費用をA弁理士に支払うことが予定されていた。
そして,控訴人中井紙器は,平成27年6月1日,A弁理士に対し,本件無効審判に係る手続の委任のみを解除することを明確に告知したが(甲2,,
3)本件年金管理に係る事務の委任については解除していないから,本件特許権の第4年分の特許料の納付期限である平成28年1月18日及び本件追納期間の末日である同年7月19日の時点において,本件年金管理はA弁理士に委任されたままの状態であった。
したがって,控訴人中井紙器は,A弁理士に本件年金管理を委任したことにより,相当な注意を尽くしたものといえるから,控訴人中井紙器が本件追納期間内に本件特許料等を追納することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)がある。



控訴人グラセルの正当な理由について

特許権が共有である場合,各共有者が年金管理に関し一律に同等の注意義務を有するものと解すると,共有者(例えば,大企業と個人が特許権を共有する場合の個人の共有者)によっては過度な負担を強いられることがあるから,共有者の注意義務は,共有者間における契約等の取決めによって柔軟に解釈すべきであり,具体的には,共有者間で年金管理の責任の所在を明確にし,年金管理義務を有する者を明確にした時点で,年金管理義務を有しない他の共有者は,相当な注意を尽くしたと解すべきである。

控訴人グラセルと控訴人中井紙器は平成28年3月9日成立した本件和解契約(乙25)において,本件特許権を控訴人らの共有とし,控訴人グラセルは,控訴人中井紙器からの請求を待って本件特許権の持分に従った年金(特許料)を控訴人中井紙器に支払う旨の合意をし,控訴人グラセルは本件年金管理の義務を有しないことを明確にした。
したがって,控訴人グラセルは,控訴人中井紙器との本件和解契約の締結により控訴人グラセルが本件年金管理の義務を有しないことを明確にした時点で,相当な注意を尽くしたものといえるから,控訴人グラセルが本件追納期間内に本件特許料等を追納することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)がある。



まとめ
以上のとおり,控訴人らには,いずれも本件追納期間内に本件特許料等を追納することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)があるから,これを否定した本件却下処分の判断は誤りである。したがって,本件却下処分は違法として取り消されるべきである。
第4当裁判所の判断
当裁判所も,本件却下処分に控訴人ら主張の違法があるとは認められず,控訴人らの請求は理由がないものと判断する。
その理由は,以下のとおり訂正し,当審における控訴人らの補充主張について判断するほかは,原判決の事実及び理由の第4の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
1
原判決の訂正


原判決13頁3行目から9行目までを次のとおり改める。
法112条の2第1項に規定する「正当な理由があるときとは,法112条4項若しくは5項により遡って消滅したものとみなされた特許権又は同条6項により初めから存在しなかったものとみなされた特許権の原特許権者において,追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたにもかかわらず,客観的な事情により追納期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなかったときをいうものと解するのが相当である。以下のとおり,控訴人らが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて正当な理由があるということはできない。」



原判決13頁18行目の

困難であったなどと主張する。

を困難であったから,控訴人らが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて「正当な理由がある旨主張する。」と,同頁21行目から22行目にかけての

業務であり,かつ,容易になし得ることである。

業務である。

と,同頁25行目の平成28年を同年と改める。


原判決14頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

⑷したがって,控訴人らの前記主張は採用することができない。

原判決14頁5行目のウこれに対し,をウまた,と,同頁9

行目の前記第2の2⑺から23行目の仮に,までを仮に控訴人らの主張するようにと改める。⑸
原判決15頁5行目末尾に行を改めて次のとおり加える。また,特許権者が特許料の納付管理又は納付手続を代理人に委任している場合は,その法律関係の形成に必要となる利益保護措置を講じることも代理人に委ねているのが通常であると解されるから,法律関係の形成に影響を及ぼすべき主観的態様は原則として代理人の主観的態様に従って判断されるべきである(民法101条参照)。そうすると,法112条の2第1項に規定する「正当な理由の有無についても,原則として原特許権者の代理人について決するのが相当であると解されるから,
原特許権者が
代理人を適切に選任したというだけでは,原特許権者に正当な理由があるということはできない。」


原判決15頁7行目の必要な注意を相当な注意と,同頁9行目の
オをエと,同頁10行目の同年を平成28年と,同頁15
行目の第4年分の特許料等を本件特許料等と,同頁17行目の支払を特許料の支払と改める。


原判決16頁14行目の特許料等を本件特許料等と,同頁16行
目から17行目にかけての
客観的にみて客観的事情により

と改め,
同頁21行目のあったとしても,の後に控訴人グラセルは上記持分を取得し,本件特許権の共有者になった以上,を加える。


原判決17頁1行目の本件年金管理事務もから6行目のまた,ま
でを削り,同頁11行目から14行目までを次のとおり改める。
以上のとおり,控訴人らが本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたものと認めることはできない。したがって,控訴人らが本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたにもかかわらず,客観的な事情により本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったものと認めることはできないから,控訴人らが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて「正当な理由(法112条の2第1項)があるということはできない。」

2
当審における控訴人らの補充主張について


控訴人中井紙器の正当な理由の有無について
控訴人らは,①特許庁は,年金管理事務を年金管理サービス会社などに外部委託することを推奨し,特許権者は,年金管理サービス会社に年金管理を委託し,相応の対価を支払うことで,自社で年金管理を行うことから解放され,年金管理サービス会社からの期限通知に対し,権利維持の意思表示を行うのみで年金納付手続がされているという年金管理の運用実態に鑑みれば,特許権者は,年金管理サービス会社に年金管理を委任した時点で,特許料の納付期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたと解すべきである,②控訴人中井紙器は,A弁理士に対し,本件特許権を含む多くの特許権の年金管理を委任し,本件特許権の第4年分の特許料についても,A弁理士からの年金通知のご案内という納付期限が近付いている旨の通知を受け,納付手数料,印書代,電子化情報処理料といった年金管理費用をA弁理士に支払うことが予定されており,本件特許権の第4年分の特許料の納付期限である平成28年1月18日及び本件追納期間の末日である同年7月19日の時点において,本件年金管理はA弁理士に委任されたままの状態であったから,控訴人中井紙器は,A弁理士に本件年金管理を委任したことにより,相当な注意を尽くしたものといえるとして,控訴人中井紙器が本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)がある旨主張する。

そこで検討するに,前記第2の2の前提事実によれば,①控訴人中井紙器は,本件特許権の設定登録がされた平成25年1月18日ころまでに,A弁理士に対し,本件特許権の第4年分以降の特許料の納付管理(本件年金管理)を委任したこと,②A弁理士は,平成27年6月1日,控訴人中井紙器のX1会長から,口頭で,本件無効審判に係る手続の代理人を解任する趣旨の告知を受けた後,控訴人中井紙器に対し,同日付けで本件無効審判に係る手続の委任を解除した旨の書面の提出を求める旨の甲3の書面を送付し,控訴人中井紙器は,A弁理士に対し,同日付けで本件無効審判に係る委任を解除したことに相違ない旨の甲2の書面を送付したこと,③A弁理士は,X1会長から上記告知を受けたころ,A弁理士の事務所で特許料の納付管理事務に従事していた担当者に対し,本件年金管理の事務をしなくてよい旨の指示をするとともに,控訴人中井紙器の本件特許権以外の権利については今後も特許料の納付管理事務を行うよう指示をしたこと,④本件特許権の第4年分の特許料の納付期限の平成28年1月18日及び本件追納期間の末日の同年7月19日が経過するまでの間,A弁理士は,控訴人中井紙器に対し,上記納付期限の案内や本件追納期間に関する連絡を行わなかったことが認められる。上記認定事実によれば,控訴人中井紙器から本件年金管理に係る事務の委任により,その代理人となったA弁理士は,控訴人中井紙器から本件無効審判に係る手続の委任の解除の告知を受けた際に,本件年金管理に係る委任も解除されたものと認識したことが認められる。
しかるところ,先に説示したとおり,特許権者が特許料の納付管理又は納付手続を代理人に委任している場合は,法律関係の形成に影響を及ぼすべき主観的態様は原則として代理人の主観的態様に従って判断されるべきであり(民法101条参照),法112条の2第1項に規定する正当な理由の有無についても,原則として原特許権者の代理人について決するのが相当であると解されるから,控訴人ら主張の年金管理の運用実態を勘案しても,
特許権者が年金管理サービス会社に年金管理を委任した時点で,
特許料の納付期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたということはできない。
したがって,控訴人中井紙器がA弁理士に本件年金管理を委任した時点で控訴人中井紙器が本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたものと認めることはできない。

次に,A弁理士は,控訴人中井紙器の代理人として,本件特許権の第4年分の特許料の不納付及び本件追納期間の徒過により本件特許権が遡って消滅したものとみなされる効果が生じることを認識し,又は認識すべきであったことに照らすと,前記アのとおり本件年金管理に係る委任が解除されたものと認識したとしても,控訴人中井紙器に対し,自らの認識と控訴人中井紙器の認識に齟齬がないかどうかを確認し,あるいは控訴人中井紙器が本件特許権の第4年分の特許料の納付期限を明確に把握しているかどうかを控訴人中井紙器に確認するなど本件追納期間の徒過を回避するために必要な措置をとるべきであったものと解される。そして,本件においては,A弁理士がかかる措置をとったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,控訴人らが主張するように控訴人中井紙器とA弁理士との間の本件年金管理の事務の委任契約が本件追納期間中も存続していたとしても,A弁理士は控訴人中井紙器の代理人として本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたものと認めることはできない。加えて,前記認定(原判決15頁9行目から21行目まで)のとおり,控訴人中井紙器においては,本件追納期間内に締結した本件和解契約により,本件特許権の一部(持分)を控訴人グラセルに譲渡するに当たり,本件特許権の第4年分の特許料が納付期限までに納付されているかどうかを確認し,その納付が未了である場合には本件追納期間内に本件特許料等を納付すべき取引上の注意義務を負っていたのであるから,自ら又はA弁理士を通じて上記納付の有無について必要な調査・確認を行うべきであったにもかかわらず,かかる調査・確認を行っていないことに照らすと,控訴人中井紙器自らも本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたものと認めることはできない。


以上によれば,本件特許権を共有していた原特許権者である控訴人中井紙器が本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたにもかかわらず,客観的な事情により本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったものと認めることはできないから,控訴人中井紙器が本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて
正当な理由
(法112条の2第1項)
があるということはできない。
したがって,控訴人らの前記主張は理由がない。


控訴人グラセルの正当な理由の有無について
控訴人らは,①特許権が共有である場合,各共有者が年金管理に関し一律に同等の注意義務を有するものと解すると,共有者(例えば,大企業と個人が特許権を共有する場合の個人の共有者)によっては過度な負担を強いられることがあるから,共有者の注意義務は,共有者間における契約等の取決めによって柔軟に解釈すべきであり,具体的には,共有者間で年金管理の責任の所在を明確にし,年金管理義務を有する者を明確にした時点で,年金管理の義務を有しない他の共有者は,相当な注意を尽くしたと解すべきである,②控訴人グラセルと控訴人中井紙器は,本件和解契約において,本件特許権を控訴人らの共有とし,控訴人グラセルは,控訴人中井紙器からの請求を待って本件特許権の持分に従った年金(特許料)を控訴人中井紙器に支払う旨の合意をし,控訴人グラセルには本件年金管理の義務を有しないことを明確にしたから,控訴人グラセルは,控訴人中井紙器との間で本件和解契約を締結した時点で,相当な注意を尽くしたものといえるとして,控訴人グラセルが本件追納期間内に本件特許料等を追納することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)がある旨主張する。

しかしながら,特許権の共有者が合意により各自の特許料の負担割合を定めたとしても,
それは共有者間の内部的な取決めにすぎず,
各共有者は,
特許料全額の納付義務を負うものと解されるから,控訴人グラセルと控訴人中井紙器が,本件和解契約により,控訴人グラセルは,控訴人中井紙器からの請求を待って本件特許権の持分に従った年金(特許料)を控訴人中井紙器に支払う旨の合意をしたからといって,控訴人グラセルにおける本件特許権の特許料の納付義務に影響を及ぼすものではない。
そして,前記認定(原判決16頁1行目から11行目まで)のとおり,控訴人グラセルは,本件和解契約に当たり,控訴人中井紙器に対し,本件特許権の第4年分の特許料が納付期限までに納付されているかどうかを確認し,その納付が未了である場合には本件追納期間内に本件特許料等を納付するよう求めることに困難はなかったにもかかわらず,控訴人グラセルが控訴人中井紙器に対し上記確認のための照会をしたり,あるいは自ら納付の有無について調査したことをうかがわせる証拠はないことに照らすと,控訴人グラセルが本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたものと認めることはできない。

以上によれば,本件特許権を共有していた原特許権者である控訴人グラセルが本件追納期間の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたにもかかわらず,客観的な事情により本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったものと認めることはできないから,控訴人グラセルが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて
正当な理由
(法112条の2第1項)
があるということはできない。
したがって,控訴人らの前記主張は理由がない。

3
結論
以上のとおり,控訴人らが本件追納期間内に本件特許料等を納付することができなかったことについて正当な理由(法112条の2第1項)があるということはできないから,本件却下処分に違法はない。
したがって,控訴人らの請求を棄却した原判決の結論は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

本吉弘行
裁判官

中村恭
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