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傷害、監禁、殺人、道路交通法違反被告事件
事件番号令和2(わ)11
事件名傷害,監禁,殺人,道路交通法違反被告事件
裁判年月日令和2年6月26日
裁判所名・部大津地方裁判所
裁判日:西暦2020-06-26
情報公開日2020-07-29 18:00:17
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令和2年6月26日宣告大津地方裁判所刑事部判決
令和2年第11号,第18号,第48号被告人Tに対する傷害監禁殺人,道路交通法違反,被告人Yに対する傷害監禁殺人各被告事件
主文
被告人Tを懲役10年以上15年以下に,被告人Yを懲役5年以上10年以下に処する
被告人らに対し,未決勾留日数中各120日を,それぞれその刑に算入する。理由
(犯行に至る経緯)
1下記第1の犯行(カラオケ店等における傷害)に至る経緯
R(氏名は別紙のとおり。以下,アルファベットで表記した人物について同様とする。)は,令和元年9月頃(以下の月日は特に断らない限り令和元年のものをいう。),被害者と知り合い,Rの父方に同居するなどして行動を共にするようになったが,その後,Rがブラジル人から暴行を受けた際に被害者が助けてくれなかったなどといって悪感情を抱くようになった。10月7日,R及び被害者が暴力団関係者とトラブルになったが,Rは,被害者のせいだと腹を立てていた。被告人Tは,10月8日,交際相手であったBに誘われ,R,B及び被害者と一緒に別表1番号1記載の滋賀県内のカラオケ店に遊びに行った。被告人Tは,Rとは以前1度少し話したことがあっただけであり,被害者とは初対面であった。前記のとおり被害者に立腹していたRは,同日午後11時頃から,同店において,被害者に対しスパーリングと称して暴行を始めた。被告人Tも,スパーリングと称して被害者に暴行を始め,Rらから被害者のせいで暴力団関係者とトラブルになった,Bがそれに巻き込まれているなどと聞いて立腹したことなどから,これをエスカレートさせ,その頃から同月10日午前零時頃までの間,Rとともに,場所を変えながら下記第1別表1の犯行に及んだ。なお,別表1番号3の場(石山駅)には,Bのほか,K及びM,Bが誘ったS及び被告人Yが居合わせた。被告人Yは,R,T
及び被害者とは初対面であり,Rらにスパーリングの相手を選ぶように言われた被害者から指名を受けたが,応じなかった。
さらに,被告人Tは,R及びKとともに,10月10日午後1時頃から同月12日午前3時頃までの間,Rが購入した車を引き取るために訪れた三重県や戻ってきた別表2番号2記載のRの父方において,スパーリングと称して暴行を加えたり,暴力団関係者のトラブルやブラジル人とのやりとり等に関して被害者を追及しながら暴行を加えたりして下記第1別表2の犯行に及んだ。なお,被告人Yは,別表2番号1の場(三重県内の駐車場)に居合わせたものの,その後Rらと行動を別にし,同月15日には実家のある京都府に行くなどしたが,同月16日には滋賀県に戻った。
2下記第2(傷害),第3(監禁)及び第4(殺人)の各犯行に至る経緯Rは,交際相手であるCから止められていたこともあり,10月12日の暴行以降,数日間は被害者への暴行を控えており,同月14日には,Cに促されて被害者を病院に連れて行き,けがの原因を口止めしつつも,受診させるなどした。ところが,10月16日午後10時45分頃,Rの父方において,R,被告人T,K,M及びNの面前で,被害者が電話でトラブルになっていた暴力団関係者にRの居場所を告げたことから,これに立腹したR及びNとともに,被告人Tも被害者に対する暴行を開始し,その頃から同日午後11時頃までの間,下記第2の1の犯行に及んだ。その暴行の音が近所に聞こえるのを避けるためRらは場所を移動することにし,Rらの言動を畏怖していた被害者を車(プリウス)のトランク内に乗り込ませ,下記第3の監禁の犯行を開始した。その移動途中に,被告人Tが呼び出した被告人Y及びSも合流した。そして,同月17日午前零時30分頃から同日午前1時頃までの間,場所を変えた下記第2の2記載の奥びわ湖ロッヂ跡地前路上においても,被告人Tは,Rらとともに,引き続き被害者に暴行を加え,下記第2の2の犯行を続けた。
その後,Rらが被害者を追及する中で被害者に死ねなどと申し向け,自殺させる
場所を探した結果,R,K,M及び被告人Yは,Kの案内で別表3番号1記載の中郡橋に被害者を連れて行き,Rが被害者に橋から飛び降りるよう求めたが,被害者が怖がり,人が来るかもしれないということもあってRの父方に戻った。10月17日午前5時45分頃,Rの父方に戻った後も,R,K及びMにおいて引き続き被害者に暴行を加えたほか,被害者に命じて,裸で踊らせたり,自慰行為をさせるなどした。被告人Yも,同日午後3時頃,Rに呼ばれてRの父方を訪れて暴行に加わり,その後SやNも到着し,被告人Tも,同日午後5時か6時頃,仕事が終わるやRの父方に赴いて暴行を再開し,下記第2の3の犯行を継続した。10月18日午前3時頃,Rに呼ばれてその場に居合わせた知人の通報を受けた警察が,Rの父方を訪問した。その直前,Rらは,既に顔の原形をとどめないなど相当なけがをしている被害者を隠すためにN方に移動することにし,Nが被害者を自動車(プリウス)に乗せていたため,被害者が発見されることはなかった。Rらは,警察の訪問を受けたことにより,被害者に対する傷害等の犯行が警察に発覚することをおそれ,被害者を親戚のN方ではなく被告人T方に移動させることとし,R,N,S,K,M及び被告人両名は,被害者を連れて被告人T方に集合した。被告人T方においても,Rは被害者に対して死ねやなどといい,10月18日午前8時頃まで,R,K,S及び被告人両名らにおいて引き続き被害者に暴行を加え,下記第2の3の犯行を継続した。
Rらは,暴力団関係者の件について被害者を追及するなどしたほか,被害者に対する傷害等の犯行の発覚を防ぐため,被害者本人のいる前で,けがが治るまでかくまうか,死なせるかなどといった話合いをした。被告人Tは,被害者が仕事をしたいと言うのに応じて仕事をさせたらいいなどと言ったが,Rに拒否され,死なせる方法を話し合う中では,琵琶湖に沈めるなどとも発言し,被告人Yは,ライターのオイルで燃やすなどといった提案をした。また,Rは,捕まっても人のせいにするななどと言って,その場にいる一人ひとりの具体的な暴行内容等を指摘した。その後,Rらは,被告人T方にも警察の捜査が及ぶことをおそれ,被害者をどうするか
は決まらないまま,被告人T方を出た。被害者は,下記第2,第3の傷害監禁の各犯行の間,抵抗することもなく,なされるがままにRらの暴行を受け,Rらに指示,命令されると,いかに理不尽な内容であっても,拒絶することなく言われるがままに行動していたほか,その時点までにおいて,下記第2記載のとおりそれ自体生命にかかわりかねないようなけがも含め,全身の多数箇所に重いけがを負っていた。
Rらは,被害者をトランク内に乗り込ませた自動車を含め自動車3台に分乗し,10月18日午前8時30分頃,別表3番号4記載の多賀サービスエリアに到着し,その後しばらく滞在し,被害者をどうするか,けがが治るまでかくまうか,死なせるかなどといった話が出て,被告人Tは友人に対し,自身と被害者をしばらくの間かくまってくれないかなどと相談したが,これを拒絶された。Rらは,具体的な行き先も決まらないまま,同日午後2時頃,R,K,M及びNらが乗車し被害者をトランク内に閉じ込めた自動車(プリウス)と,被告人両名及びSらが乗車する自動車(コンテ)の2台に分乗し,同サービスエリアを出発した。
その出発後,プリウスの車内で東尋坊に向かうことが決まり,Rは,東尋坊に向かう道中のプリウス車内で,被害者に対し,自分で落ちろよ,あと1時間の命やしななどと申し向けた。一方,走行中のコンテ内の被告人両名にも行き先が東尋坊である旨伝えられ,コンテの車内では,東尋坊は自殺スポットである,東尋坊で殺す,飛び降りさせるなどといった話も出た。
被告人両名,R,K,M,N及びSらは,10月18日午後6時10分頃,別表3の4記載の東尋坊駐車場付近に到着した。
(罪となるべき事実)
被告人両名は,少年であるが,
第1被告人Tは,Rと共謀の上,令和元年10月8日午後11時頃から同月10日午前零時頃までの間,別表1記載の日時場所において,被害者(当時20歳)に対し,それぞれ,多数回にわたりその顔面及び腹部等を手拳で殴打したり足
蹴にするなどし,更にKと共謀の上,同日午後1時頃から同月12日午前3時頃までの間,別表2記載の日時場所において,被害者に対し,それぞれ多数回にわたりその顔面及び腹部等を手拳で殴打したり足蹴にするなどしたほか,被告人Tにおいて,柵の上から被害者の腹部に飛び降りるなどの暴行を加え,よって,被害者に全治不詳の顔面打撲,左第9肋骨骨折の傷害を負わせた(令和2年3月30日付け訴因変更請求書による訴因変更後の同年1月17日付け起訴状記載の公訴事実第1関係)。
第2
1被告人Tは,R,K,M及びNと共謀の上,令和元年10月16日午後10時45分頃から同日午後11時頃までの間,Rの父方(所在は別紙のとおり)において,被害者に対し,被告人T及びRが,それぞれ多数回にわたり被害者の顔面等を手拳で殴打したり足蹴にするなどし
2⑴被告人Tは,R,K,M及びNと共謀の上,10月17日午前零時30分頃から同日午前1時頃までの間,滋賀県長浜市木之本町飯浦595番地先所在の奥びわ湖ロッヂ跡地前路上において,被害者に対し,被告人T及びRが,それぞれ多数回にわたり顔面等を手拳で殴打したり足蹴にするなどしたほか,Rにおいてインパクトドライバーを被害者の口腔内に差し入れて作動させたり,被告人Tにおいて路上に横たわらせた被害者の足を自動車で轢過したり,Kにおいて火のついた煙草をその鼻腔内に挿入するなどし
⑵被告人Yは,被告人Tらの前記第2の2⑴の犯行の際,自己が所有する自動車を被告人Tらに提供して前記第2の2⑴記載の路上まで同行するなどし,もって被告人Tらの犯行を容易ならしめてこれを幇助し
3被告人両名は,R,K,M,N及びSと共謀の上,10月17日午前5時45分頃から同月18日午前8時頃までの間,前記Rの父方及び被告人T方(所在は別紙のとおり)において,被害者に対し,Rにおいて,多数回にわたり顔面及び背部等を手拳,木製バット,フライパン,ハンマー,ハンガー等で殴打
したり足蹴にしたり,ハンマーを口腔内に差し入れて前歯に引っかけた状態で引っ張るなどし,被告人Tにおいて,多数回にわたり手拳で殴打したり足蹴にしたり,その頸部を腕で締め付けたり,その手の指をつかんで手の甲側に折り曲げたり,ベッドの上から被害者の腹部の上に飛び降りるなどし,被告人Yにおいて,複数回にわたりその腹部等を手拳で殴打したり足蹴にするなどしたり,火のついた煙草を背中に押し付けたり,煙草やティッシュを食べさせたり,その背中や手の甲等をライターで炙るなどしたほか,いずれかの者においてその顔面及び胸部等をライターで炙るなどの暴行を加え,
よって,被害者に全治不詳の右中切歯・側切歯脱臼,左中切歯破折,右示指近位指節間関節脱臼,顔面・左腕・左手背部・胸腹部熱傷,背部挫傷,左大腿部・下腿部挫傷,頸部挫傷,甲状軟骨骨折等の傷害,並びに,同月8日から同月16日午後10時45分頃より前までに(被告人Yについては同月8日から同月17日午前零時30分頃より前までに)Rらの暴行により被害者が既に負っていた顔面打撲の傷害を相当程度悪化させる傷害を負わせた(ただし,被告人Yについては同月17日午前零時30分頃から同日午前1時頃の分については,幇助の限度において責任を負う。)(令和2年1月16日付け起訴状記載の公訴事実第1及び同月17日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)。第3
1被告人Tは,R,K,M及びNと共謀の上,令和元年10月16日午後11時頃,前記Rの父方前路上において,Rらの言動に畏怖していた被害者を,N運転の自動車のトランク内に乗り込ませて閉じ込め,その頃から同日午後11時20分頃までの間,同所から滋賀県彦根市a町b番地c所在のd店まで同車を走行させ
2⑴被告人Tは,R,K,M及びNと共謀の上,10月16日午後11時20分頃から同月17日午前零時30分頃までの間,同所から同県長浜市木之本町所在の前記奥びわ湖ロッヂ跡地前路上に至るまでの自動車内において,被
害者をR運転の自動車のトランク内に閉じ込めた状態で,同車を走行させるなどし
⑵被告人Yは,被告人Tらの前記第3の2⑴の犯行の際,被告人Tの運転する前記自己所有の自動車に乗車して,前記R運転の自動車に追従してRらに同行し,もって被告人Tらの犯行を容易ならしめてこれを幇助し
3被告人両名は,R,K,M,N及びSと共謀の上,10月17日午前1時頃から同月18日午後6時20分頃までの間,別表3記載の日時場所において,被害者をNないしR運転の自動車のトランク内等に閉じ込めた状態で,同車を走行させるなどし
同月16日午後11時頃から(被告人Yについては幇助犯としては同日午後11時20分頃から,正犯としては同月17日午前1時頃から)同月18日午後6時20分頃までの間,被害者を前記自動車内等から脱出困難な状態に置き,もって同人を不法に監禁した(令和2年1月16日付け起訴状記載の公訴事実第2及び同月17日付け起訴状記載の公訴事実第3関係)。
第4被告人両名は,前記一連の暴行等によって極度に畏怖し,肉体的にも精神的にも追い詰められて,Rらの意のままに従わざるを得ない状況に置かれていた被害者を自殺に見せかけて殺害しようと企て,R,K,M,N及びSと共謀の上,福井県坂井市三国町安島所在の東尋坊駐車場付近において,被告人両名,K,M及びSが,被害者に対し,「はよ歩け。」などと申し向け,その体を足蹴にするなどして,同人を前記東尋坊の崖の上まで歩かせ,令和元年10月18日午後6時10分頃から同日午後6時20分頃までの間,同崖(高さ約20メートル)の上において,前記のような状況に置かれていた被害者を同崖の縁に立たせ,被告人両名,K,M及びSが,被害者の後方に立ち,被告人T及びKにおいて

はよ落ちろや。

などと言うなどして,同所から飛び降りて死ぬよう被害者に命じ,被害者をして,同所から飛び降りる以外に選択することができない状態にして,前記崖の縁から飛び降りさせ,よって,その頃,前記崖
の下において,同人を頭部打撲に伴う脳挫滅により死亡させて殺害した(令和2年1月16日付け起訴状記載の公訴事実第3及び同月17日付け起訴状記載の公訴事実第4関係)。
第5被告人Tは,公安委員会の運転免許を受けないで,令和元年10月18日午後3時16分頃,滋賀県長浜市木之本町黒田1085番地2付近道路において,普通乗用自動車を運転した(令和2年2月5日付け起訴状記載の公訴事実関係)。
(証拠の標目省略)
(法令の適用)
1被告人T関係
⑴罰


判示第1の行為

包括して刑法60条,204条

判示第2の1,同2⑴及び同3の行為
包括して刑法60条,204条
判示第3の1,同2⑴及び同3の行為
包括して刑法60条,220条
判示第4の行為

刑法60条,199条

判示第5の行為

道路交通法117条の2の2第1号,64条
1項

⑵刑種の選択

判示第1,第2及び第5の罪につき,いずれも
懲役刑を選択
判示第4につき,有期懲役刑を選択

⑶併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(最も重
い判示第4の罪の刑に法定の加重)

⑷宣告刑の決定

少年法52条1項

⑸未決勾留日数の算入

刑法21条

⑹訴訟費用の処理

刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

2被告人Y関係
⑴罰


判示第2の2⑵,同3の行為
包括して刑法60条,204条(判示第2の2
⑵は刑法62条1項,204条,判示第2の3
は刑法60条,204条に該当するが,これら
は,同一グループが,近接する時期において,
共通する動機や人間関係を背景に行った同一被
害者に対する犯行の一環であり,幇助の部分も
含め,その全体を一体のものと評価し,包括し
て一罪(傷害罪)が成立するものと解するのが
相当である。)。
判示第3の

行為
包括して刑法60条,220条(判示第3の
2⑵は刑法62条1項,220条,判示第3
の3は刑法60条,220条に該当するが,
前記と同様の理由により,幇助の部分も含め,
包括して一罪(監禁罪)が成立するものと解
するのが相当である。)

判示第4の行為

刑法60条,199条

なお,前記奥びわ湖ロッヂ跡地前路上における傷害(判示第2の2)及び前記d店から前記奥びわ湖ロッヂ跡地前路上までの自動車内の監禁(判示第3の2)については,被告人Yが,10月10日にRらが被害者に対し強い暴行を加える現場を見ていたことや,10月16日午後11時20分頃,被告人Tに呼び出されて前記d店においてRらと合流した際に被害者が自動車のトランク内にいると聞いたこと
などからすれば,被告人Yにおいて,同店から移動した後,Rらが被害者に暴行等に及ぶであろうとの認識を有していたことは認められるものの,その直前にRの父方においてRらが被害者に暴行を加えるに至った経緯や状況までは承知していなかった上,前記奥びわ湖ロッヂ跡地前路上まで被害者を閉じ込めた車とは別の車に乗って同行し,同路上においても自らは暴行には加わらず,Rらの暴行を一部見ていたにとどまることも踏まえると,被告人Yにつき,自己の犯罪を犯す意思があったというには疑問が残り,幇助犯が成立するにとどまると判断した。⑵刑種の選択

判示第2につき,懲役刑を選択
判示第4につき,有期懲役刑を選択

⑶併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(最も重
い判示第4の罪の刑に法定の加重)

宣告刑の決定

少年法52条1項

未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の処理

刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

(量刑の理由)
1事件そのものに関する事情
⑴本件各犯行の全体としての悪質性の程度についてア被告人らは,長時間にわたり,被害者を暴行監禁するなどし,肉体的・精神的に追い詰めた末,東尋坊の崖から自ら飛び降りさせて殺害した。本件傷害監禁は,被害者をして,自ら飛び降りる以外の選択肢をとり得ない状態にまで追い詰める過程での犯行であり,本件殺人とは併合罪関係に立つものの,これと密接に関連する一連の犯行というべきであって,その悪質性については,これらの犯行を一体のものとして全体的に評価をするのが相当である(なお,被告人Yについては,前記のとおり,その一部についてのみ(かつ部分的には幇助の限度で)責任を負うものであるが,この点は,同人の個別事情において考慮する。)。イそこで,まず,本件各犯行の態様をみると,被告人らは,長時間にわたり,
無抵抗かつ無防備な被害者に対し,多人数で執拗に暴行を加えたほか,自動車のトランク内に閉じ込めるなどして監禁し,行動の自由を奪い続けた。暴行の具体的な態様・回数等は,前記罪となるべき事実に認定したとおりであって,甲状軟骨が骨折するほど強く首を絞めるなど,それ自体被害者の生命を脅かしかねない暴行や,ハンマーを口に差し入れて前歯に引っかけた状態で引っ張る,フライパンの上に手を乗せて指をハンマーで叩くなど,人を人とも思わぬ暴行を含め,強度の高い悪質な暴行が,多数回にわたり繰り返されている。暴行の態様は,残酷かつ残虐なものである。加えて,前記犯行に至る経緯に認定したとおり,本件傷害監禁の過程においては,被害者の人格を無視するような言動が繰り返されてもいる。このような一連の暴行等は,被告人らから逃げられず,誰も助けてくれない状況下にあった被害者を肉体的・精神的に追い詰め,生きることを諦めさせるほどのものであったといえる。死への恐怖心を述べる被害者を,自殺以外の選択肢をとり得ない状況に至るまで肉体的・精神的に追い詰めて自殺させるという殺害方法は,まさに被害者の心も体も殺した卑劣かつ残酷な態様というべきである。このようにしてわずか20歳で命を奪われた被害者の遺族が受けた精神的苦痛は計り知れず,その心情意見陳述において述べるとおり,被告人両名に対して厳しい処罰感情を持つのも当然である。
本件各犯行に至る経緯は,前記認定のとおりであって,R以外の共犯者は,被害者のせいで暴力団関係者とのトラブルに巻き込まれたなどというRの怒り等に流され,さしたる理由なく暴行を重ねているし,Rについても前記のような強度かつ執拗な暴行を加える理由は全くない。本件傷害の犯行が発覚しそうになると,その発覚を防ぐために被害者を殺害し,自らの保身を図ろうとした本件殺人の動機は,身勝手極まりない。一連の犯行に及んだ経緯に酌むべき点はない。
被告人らは,当初より被害者を殺害しようと意図していたものではなく,本件傷害監禁の犯行を隠蔽するため,場当たり的に実行するに至ったものであり,本件殺人は,計画的な犯行とはいえない。しかし,被告人らは,それまでの傷害監禁
の経緯や前記のような被害者の肉体的・精神的状況を熟知しつつ,迫りくる警察の捜査を免れようと話し合いを重ねた上で,東尋坊に向かい,前記罪となるべき事実記載の行為に及んだものであり,その際の状況は,弁護人が指摘するような中郡橋でのそれとは全く異なるものであった。加えて,上記話合いの内容や東尋坊の崖で落ちろなどと迫った状況等をも踏まえると,被告人らは,被害者が現実に飛び降りて死ぬ危険性が高いことを十分認識しつつ,前記行為に及んだものであり,強い殺意を有していたというべきである。
ウ以上を踏まえて,事件全体の悪質性の程度を,同種事案(成人によるものも含む殺人1件,共犯)の量刑傾向の中で位置付けると,保険金目的の計画的な殺人や暴力団抗争における組織的な動機に基づく銃器を用いた殺人などの事案が多くを占める最も重い部類に属するとはいえないが,相当に重い部類に属するとみるべきである。
⑵被告人両名の個別事情について
ア被告人Tの役割,地位,関与の程度について
判示第1及び第2のような危険かつ強度の暴行を率先して行い,これを周囲に見せつけたり,被告人YやSに対しても暴行を促すなどした。被害者を精神的・肉体的に追い詰める主たる原因となった前記のような暴行を主導し,またエスカレートさせた張本人であって,暴行の内容や程度でいえば,Rと同等又はそれ以上の中心的な役割を果たしたといえる。東尋坊の崖においても

はよ落ちろや。

などと言って被害者に飛び降りることを迫っており,本件犯行における実行部隊のリーダー格であったといえる。
他方で,東尋坊で被害者を飛び降りさせる場面を含め,共犯者らの意思決定を行っていたのはRであった。もっとも,被告人Tは,Rが包丁を用いて被害者に暴行を加えようとした際にRを制止するなど,Rに対して意見を言える立場でもあり,Rの意向に逆らうことができなかったとはいえない。
以上のような被告人Tが果たした役割,地位,関与の程度を踏まえてその責任の
程度を評価すると,被告人Tは,本件一連の犯行においてRに次ぐ重大かつ不可欠な役割を果たしていたとみるべきである。
また,被告人Tは,判示第5の無免許運転の犯行にも及んでいる。イ被告人Yの役割,地位,関与の程度について
被告人Yの関与は,判示第2の2及び第3の2の犯行以降であり,それも当初は共犯者らの犯行を幇助したにとどまり,その後自ら暴行を加えるようになった場面でも,最初はRの指示に従っていたにすぎない。暴行の内容や程度も,他の共犯者らによる暴行に比べると,その回数や強度は低く,生命への危険を伴うようなものもない。
他方で,被告人Yは,その後,誰の指示を受けることもなく,自らの意思で,火のついた煙草を背中に押し付けたり,背中や手の甲をライターで炙るなどの暴行に及んでいる上,前記犯行に至る経緯のとおり,自ら被害者の殺害方法を提案するなどしてもいる。
以上を踏まえると,被告人Yは,従属的な立場にあり,関与の程度も低いといえるものの,自ら暴行等していることからすれば単なる傍観者とはいえず,それなりに重い責任を負うとみるべきである。
なお,被告人Yは,石山駅や奥びわ湖ロッヂ跡地前路上におけるRらによる暴行場面を目の当たりにした後,その都度,Rらのもとを離れながら,被告人TやRの誘いに応じ,敢えて,再びRらと行動を共にすることを選択した上,共犯者に指示されることなく,自ら被害者に対する複数の暴行に及んでもいる。被告人Yが述べるとおり,被告人Yが,Rに対して,自らが暴行監禁等の標的にされかねないなどという漠然とした恐怖心を抱き,これが犯行への加担の一因となっていた可能性を排斥できないとしても,上記の経緯等に照らせば,それが犯行への加担の主たる原因であったとは考え難く,同人の責任の程度に関する前記判断を左右するものではない。
ウその他の被告人両名の個別事情について(年齢等)

被告人両名は,いずれも犯行当時19歳であった。年長少年であるとはいえ,人格や判断能力は成人に比して未熟であり,被告人両名に対する責任非難の程度は,その未熟さに応じて低減されるというべきである。
また,被告人Tについては,発達障害等に起因する衝動性等の影響により本件犯行における暴行がエスカレートした可能性も完全には否定できないが,その日常生活や幼少期からの生活歴等に照らすとその影響は限定的であったと考えられ,その責任を大きく軽減するものとはいえない。
2事件そのもの以外に関する事情
被告人両名は,事実を認めて,反省の弁を述べるとともに,共犯者との縁を絶つことを誓約してもいる。両名とも,事件の深刻さや各自の過ちに未だ十分に向き合えておらず,内省が深まっているとはいえない面が残るものの,各被告人なりに反省の態度を示しているといえる。
更生環境についてみると,被告人両名の母がそれぞれ出廷し,社会復帰後に各被告人と同居して監督することを約束している。被告人Tの母は医療機関の受診にも言及し,被告人Tの発達障害を踏まえた監督を検討してもいる。
以上の点のほか,被告人Tにはバイクの無免許運転等の家裁係属歴があるが,処分歴はなく,犯罪性向が進んでいるとはいえない。被告人Yには煙草所持等の補導歴が十数回あるにすぎず,家裁係属歴はなく,粗暴な問題行動等もない。被告人両名は,これまで矯正教育を受けた経験がない。
これらの点を踏まえると,被告人両名は,いずれも19歳の年長少年であるとはいえ,相当の可塑性があるといえ,本人らが自らの過ちに真摯に向き合い,内省を深めつつ,強い自覚をもって努力を続ければ,更生を期待することができる。3結論
そこで,以上を踏まえ,被告人両名の量刑を検討すると,前記同種事案の量刑傾向に加え,裁判時少年の殺人事案における量刑資料を参照し,かつ,少年法の精神を踏まえつつ,前記1の事件そのものに関する事情及び前記2の事件そのもの以外
の事情を併せて考慮すれば,被告人両名に対しては,主文掲記の各長期を定めるとともに,前記のような可塑性を踏まえ,主文掲記の各短期を定めるのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑-被告人Tについて懲役10年以上15年以下,被告人Yについて懲役7年以上12年以下)

令和2年6月26日
大津地方裁判所刑事部

裁判長裁判官

大西直樹
裁判官

大森直子
裁判官

松浦和徳
(別表1ないし3及び別紙省略)

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