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親子関係存在確認請求事件
事件番号平成31(受)184
事件名親子関係存在確認請求事件
裁判年月日令和2年7月7日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成28(ネ)4525
原審裁判年月日平成30年10月18日
判示事項法例の一部を改正する法律(平成元年法律第27号)の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,法の適用に関する通則法29条1項を適用し,子の出生の当時における母の本国法によって定める
裁判日:西暦2020-07-07
情報公開日2020-07-07 14:00:03
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平成31年(受)第184号
令和2年7月7日

第三小法廷判決

主1
親子関係存在確認請求事件


原判決中,上告人と亡Aとの間の親子関係の存在確認
請求に関する部分を破棄し,同部分につき本件を東京
高等裁判所に差し戻す。

2
上告人のその余の上告を棄却する。

3
前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人李宇海ほかの上告受理申立て理由第2の1(1)について1
本件は,上告人が,検察官に対し,上告人は亡Bと亡Aとの間に出生した子
であると主張して,上告人とAとの間の親子関係が存在することの確認等を求める事案であり,嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立についての準拠法が争われている。
2
(1)

原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
上告人は,昭和33年▲月▲▲日に日本で出生し,日本に居住している。
上告人については,韓国において,Bとその当時の妻との間の子として出生の届出がされ,韓国の戸籍の父の欄にはBの当時の氏名が記載された。
上告人は,平成14年▲月,帰化により日本国籍を取得した。その際に編製された日本の戸籍は,父の欄が空欄とされ,母の欄にはBの遠縁に当たる女性の氏名が記載された。
(2)

Aは,昭和8年▲月,日本で出生し,日本国籍を有していた。

Aは,昭和28年▲月,Bとの間に長女をもうけ,昭和39年▲▲月,Bと婚姻をし,昭和40年▲月,Bと共に被上告補助参加人を養子とする養子縁組をした。Aは,平成22年▲月,死亡した。

3
原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人とAとの
間の親子関係の存在確認請求に係る訴えを却下した。
法の適用に関する通則法(以下通則法という。)附則2条は,同附則3条の規定による場合を除き,通則法の規定を通則法の施行日前に生じた事項に適用する旨を規定する。この経過措置は平成元年法律第27号(以下平成元年改正法という。)による一部改正後の法例(以下新法例といい,同改正前の法例を旧法例という。)とこれを全部改正した通則法との適用関係を規律するものである。平成元年改正法の施行前に生じた事項については,通則法附則2条による通則法の規定の適用はなく,平成元年改正法附則2項本文がなお従前の例による旨を規定するところに従って旧法例の規定が適用される。
平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,準拠法を定める規定が旧法例になく,確立された国際慣習法も存在しなかったから,認知による親子関係の成立についての準拠法を定める旧法例18条1項を準用ないし類推適用するのが相当であり,子の出生の当時における母の本国法及び子の本国法の双方が適用されると解すべきである。
したがって,上告人とAとの間における嫡出でない子の分娩による親子関係の成立については韓国法及び日本法の双方が適用され,上記の親子関係存在確認請求に係る訴えは,韓国民法865条2項所定の出訴期間を徒過して提起されたものであり,不適法である。
4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
準拠法の決定及び適用について定める通則法は,新法例を全部改正したものであるところ,通則法附則2条は,同附則3条の規定による場合を除き,通則法の規定を通則法の施行日(平成19年1月1日)前に生じた事項にも適用する旨を規定する。その趣旨は,新法例の規定及び平成元年改正法の施行日(平成2年1月1日)前に生じた事項についてなお従前の例による旨を規定する平成元年改正法附則2項
本文により適用していた旧法例の規定のうち,通則法によって内容が実質的に変更されていないものについては,これらの規定に代えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがないことから,通則法の規定の遡及適用を認めることとしたものと解される。このような趣旨からすれば,旧法例に明文の規定が欠けていても他の規定の解釈等によってある規範が導かれ,これに代えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがない場合には,その規範は通則法によって内容が実質的に変更されていないものと評価することができるから,通則法の規定を遡及適用することとして差し支えないというべきである。
嫡出でない子の親子関係の成立について,旧法例は18条1項で認知による場合の準拠法を規定し,出生による場合の明文の規定を欠いており,平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,準拠法の決定が旧法例の解釈に委ねられていたところ,上記親子関係の成立については,分娩による直接的な結び付きがあること,親子関係の存否が確定しなければ子の本国法が定まらない場合があること等を踏まえ,旧法例22条の法意に鑑み,子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当であったと解される。上記親子関係の成立については,通則法附則3条によって通則法の規定の適用が除外される場合に当たらないところ,通則法29条1項は,上記親子関係の成立についての準拠法は子の出生の当時における母の本国法であると規定するから,上記の旧法例の解釈によって導かれる規範に代えて同項を適用してもその結果に変わりがなく,同項が遡及適用されるというべきである。
以上によれば,平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,通則法29条1項を適用し,子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当である。
そうすると,上告人とAとの間の嫡出でない子の分娩による親子関係の成立についてAの本国法である日本法のほかに韓国法を適用し,韓国民法865条2項所定の出訴期間の徒過を理由に上記親子関係存在確認請求に係る訴えを不適法とするこ
とはできない。
5
以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,上告人とAとの間の親子関係の存在確認請求に係る訴えを却下した部分は破棄を免れず,上告人とAとの間の親子関係の存否について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。なお,上告人のその余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官
宮崎裕子


裁判官

道晴

裁判官

宇賀克也)

戸倉三郎

裁判官


景一

裁判官

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