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所得税更正処分等取消請求事件
事件番号平成28(行ウ)462
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判年月日令和2年1月30日
裁判所名東京地方裁判所
分野行政
判示事項保険医療機関である麻酔科クリニックを個人で開設する麻酔専門医である原告が他の保険医療機関で実施された手術について業務委託契約に基づき行った麻酔関連医療業務に係る報酬の金額が租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)26条1項にいう「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」に該当しないとされた事例
裁判日:西暦2020-01-30
情報公開日2020-07-02 16:00:20
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令和2年1月30日判決言渡
平成28年(行ウ)第462号

所得税更正処分等取消請求事件

主文12
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成23年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額2009万2050円,納付すべき税額333万4100円を超える部分,及び同処分に伴う過少申告加算税賦課決
定処分のうち2万6000円を超える部分を取り消す。
2
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成24年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額2204万9034円,納付すべき税額367万6600円を超える部分,及び同処分に伴う過少申告加算税賦課決定処分のうち4万1000円を超える部分を取り消す。

3
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成25年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額2193万3649円,納付すべき税額につき377万8900円を超える部分,及び同処分に伴う過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

4
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成22年1月1日から同年12月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の各決定処分並びにこれに伴う無申告加算税賦課決定処分を取り消す。
5
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成23年1月1日から同年12月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の各決定処分並びにこれに伴う無申告加算税賦課決定処分を取り消す。
6
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成24年1月1日から同年12月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の各決定処分並びにこれに伴う無申告加算税賦課決定処分を取り消す。7
戸塚税務署長が平成27年2月27日付けで原告に対してした平成25年1月1日から同年12月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の各決定処分並びにこれに伴う無申告加算税賦課決定処分を取り消す。
第2
1
事案の概要
横浜市内に保険医療機関であるAクリニック(以下本件クリニックという。)を個人で開設する医師である原告は,平成23年分から平成25年分まで(以下本件各年分という。)の所得税及び復興特別所得税(以下所得税等という。)の確定申告をするに当たり,その事業所得の金額の計算上,他の保険医療機関(以下本件各病院という。)で実施された手術について業務委託契約に基づき行った麻酔関連医療業務(以下本件業務という。)に係る報酬(以下本件各報酬という。)の金額が租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下措置法という。)26条1項に
いう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当することを前提に,同項所定の概算経費率(後記2(1)参照)を乗じて計算した金額(以下本件概算経費額という。)を必要経費に算入した。また,原告は,本件業務に係る役務の提供(以下本件役務提供という。)の対価(本件各報酬)につき,消費税法上(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)非課
税となることを前提に,平成22年1月1日から平成25年12月31日までに係る各課税期間(以下,例えば平成22年1月1日から同年12月31日までの課税期間を平成22年課税期間といい,他の課税期間についても同様に表記する。平成22年課税期間から平成25年課税期間までを併せて本件各課税期間という。)の消費税及び地方消費税(以下消費税等という。)
の確定申告をしなかった。
これに対し,戸塚税務署長(処分行政庁)は,本件各報酬額は上記社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当せず,本件概算経費額を必要経費に算入することはできないことなどを理由に,原告に対し,平成27年2月27日付けで,本件各年分の所得税等の各更正処分(以下,例えば平成23年分の更正処分を平成23年分所得税更正処分といい,他の年分についても同様に表記する。本件各年分の更正処分を併せて本件所得税各更正処分とい
う。)及びこれらに伴う過少申告加算税賦課決定処分(以下本件所得税各賦課処分といい,本件所得税各更正処分と併せて本件所得税各処分という。)をした。また,戸塚税務署長は,同日付けで,本件役務提供の対価(本件各報酬)は消費税法上非課税とならないことを理由に,本件各課税期間に係る消費税等の各決定処分(以下,例えば平成22年課税期間に係る消費税等の
決定処分を平成22年課税期間消費税決定処分といい,他の課税期間についても同様に表記する。本件各課税期間の消費税等の決定処分を併せて本件消費税各決定処分という。)及びこれらに伴う無申告加算税賦課決定処分(以下本件消費税各賦課処分といい,本件消費税各決定処分と併せて本件消費税各処分といい,本件所得税各処分と本件消費税各処分を併せて本件各処分という。)をした。本件は,原告が,被告を相手に,本件所得税各処分の一部(本件概算経費額の必要経費への不算入を理由とする部分)の取消しを求めるとともに,本件消費税各処分の全部の取消しを求める事案である。
2
関係法令等の定めの概要
本件に関係する法令等の定めの概要は次のとおりである。
(1)

措置法


所得税法27条2項は,事業所得の金額はその年中の事業所得に係る
総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨を定めるところ,措置法26条1項は,医業又は歯科医業を営む個人が,各年において,社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において当該支払を受けるべき金額が5000万円以下であるときは,その年分の事業所得の金額の計算上,当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額は,所得税法37条1項及び第2編第2章第2節第4款の規定にかかわらず,当該支払を受けるべき金額の2500万円以下の部分についてはその72%,2500万円を超え3000万円以下の部分についてはその70%,
3000万円を超え4000万円以下の部分についてはその62%,4000万円を超え5000万円以下の部分についてはその57%(以下,このような割合を概算経費率という。)に相当する金額の合計額とする旨を定めている(以下,同項による社会保険診療報酬の所得計算の特例を本件特例という。)。


そして,措置法26条2項は,本件特例の適用対象となる社会保険診
療について,同項各号に掲げる給付又は医療,介護等をいう旨を定めるところ,同項1号は,健康保険法,国民健康保険法,国家公務員共済組合法,地方公務員等共済組合法などの各法律(以下,同号に記載の各法律を併せて健康保険法等という。)の規定に基づく療養の給付や医療の給付等
(以下,同号に記載の各給付を併せて療養の給付等という。)を定めている。

本件特例の沿革等(乙20)
本件特例は,所得税の負担の軽減により社会保険医について一定の所得
水準の維持を図る趣旨で昭和29年に創設され,当初は,社会保険診療報酬の全額について,その72%に相当する金額を控除することが認められていた。
税制調査会は,本件特例は税負担の公平を阻害する程度が著しい措置であるとして度々答申を提出した。そして,昭和47年以降,社会保険診
療報酬課税特別部会における審議を経た結果,社会保険医についてのみ概算経費率を法定して必要経費の積上げ計算を不要とすることは適当でないといわざるを得ないが,課税の簡便性・安定性からすれば,引き続き概算経費率を法定することはやむを得ないなどとして,本件特例の制度自体は維持されたものの,昭和54年の税制改正において,社会保険診療報酬の収入金額に応じて5段階(上記アの4区分〔72%,70%,62%,57%〕のほか,5000万円を超える部分については52%)
に区分された概算経費率が定められた。
その後,昭和63年の税制改正において,地域医療の確保等に配慮しつつ,税負担の公平確保の要請に応える観点から,年間の社会保険診療報酬の支払を受けるべき金額が5000万円を超える場合は本件特例を適用しないこととされ,これにより,概算経費率の定めは上記アのような
4段階の区分となった。
(2)

消費税法
消費税法4条1項は,国内において事業者が行った資産の譲渡等(事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供。同法2条1項8号)には消費税を課する旨を定めているところ,その例外とし
て,同法6条1項は,国内において行われる資産の譲渡等のうち同法別表第1に掲げるものには消費税を課さない旨を定めている。そして,同別表6号は,消費税を課さない資産の譲渡等(以下非課税資産の譲渡等という。)として,同号イからトまでに掲げる療養若しくは医療又はこれらに類するものとしての資産の譲渡等を定めており,療養の給付等もこ
れに含まれている(同号イ)。
なお,本件において,原告は,本件役務提供が消費税法別表第1第6号に規定する療養の給付等に当たることを理由に,その対価である本件各報酬が非課税となる旨を主張しており,本件役務提供が同号所定の他の非課税資産の譲渡等に当たる旨の主張はしていない。


診断群分類による診療報酬の包括評価制度の下における取扱い(ア)
我が国の保険診療における診療報酬体系は,診療行為や投薬に応

じた出来高払方式によるものであったが,検査や投薬等の増大に伴って診療報酬が高額になることにより過剰な医療につながるおそれがあったことなどから,診断群分類(DiagnosisProcedureCombination)による診療報酬の包括評価制度が導入され,臨床的に類似する各患者を診断群分類としていくつかに区分し,その診断群分類ごとに定められた診療報酬が医療機関に支払われるという包括支払方式が採用されている(以下,上記の診断群分類に基づいて評価される,入院1日当たりの定額により診療報酬が算定される病棟をDPC算定病棟という。)。

(イ)

DPC算定病棟に入院中の患者が他の医療機関を受診した場合,

他の医療機関が分配を受けた診療に係る費用に消費税が課税されるか否かについて,厚生労働省保険局医療課の平成24年8月9日付け事務連絡(以下平成24年厚労省事務連絡という。)は,下記のとおりの解釈を示している(甲23)。

(問)

DPC算定病棟に入院中の患者に対し他医療機関での診療が

必要となり,当該入院中の患者が他医療機関を受診した場合(当該入院医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療が必要となった場合等のやむを得ない場合に限る。)の他医療機関において実施された診療にかかる費用は,入院医療機関の保険医が実施した診療の費用と同様の取扱いとし,入院医療機関において請求し,この場合の医療機関間での診療報酬の分配は,相互の合議に委ねるものとされているが,当該分配により他医療機関が得た収入には消費税が課税されるか。

(答)

健康保険法等の規定に基づく療養の給付等は,消費税が非課税

となる(消費税法6条)。質問のケースの場合,他医療機関が行う診療にあっては,社会保険診療であるから,当該療養の給付に係る診療報酬は入院医療機関との合議で受け取ったものについても消費税が非課税となる。
(3)

社会保険診療に関する法令
健康保険法
(ア)

措置法26条2項1号には,本件特例の対象となる社会保険診療

のうち,療養の給付等に関する法律として,健康保険法のほか,国民健康保険法,高齢者の医療の確保に関する法律,船員保険法,国家公務員共済組合法,地方公務員等共済組合法,私立学校教職員共済法,戦傷病者特別援護法,母子保健法,児童福祉法,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律が列挙されているところ,これらの各法律においては,療養の給付及び療養の担当,診療報酬の算定方法,請求,審査,支払等について,いずれも健康保険法の規定を準用し,あるいは,同法ないしこれによる命令の例によるなどとされている。

(イ)

療養の給付の概要

a
健康保険法は,被保険者に係る同法による保険給付の一つとして,療養の給付を規定しているところ(同法52条1号),同法63条1項は,被保険者の疾病又は負傷に関しては,次のとおり同項各号に定める療養の給付を行う旨を定めている。
1号

診察

2号

薬剤又は治療材料の支給

3号

処置,手術その他の治療

4号

居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の

看護
5号
b
病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

健康保険法63条3項は,療養の給付(上記a)を受けようとする者は,厚生労働省令で定めるところにより,同項各号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち,自己の選定するものから受けるものとする旨を定めており,この病院等の一つとして,同項1号は,保険医療機関を掲げている。
(ウ)

保険医療機関の責務
健康保険法70条1項は,保険医療機関は,厚生労働省令で定めると
ころにより,当該保険医療機関において診療に従事する保険医に診療に当たらせるほか,療養の給付を担当しなければならない旨を定めている。(エ)

保険医の責務
健康保険法64条は,保険医療機関において健康保険の診療に従事す
る医師は,厚生労働大臣の登録を受けた保険医でなければならない旨を定めている。そして,同法72条1項は,保険医療機関において診療に従事する保険医は,厚生労働省令で定めるところにより,健康保険の診療に当たらなければならない旨を定めている。
(オ)

療養の給付に係る費用負担等

a
健康保険法74条1項は,保険医療機関から療養の給付を受ける

者は,その給付を受ける際,所定の一部負担金を当該保険医療機関に支払わなければならないとする一方,同法76条1項は,保険者(全国健康保険協会,健康保険組合)は療養の給付に関する費用を保険医療機関に支払うものとし,保険医療機関が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は,療養の給付に要する費用の額から,上記一部負担金に相当する額を控除した額とする旨を定めている。b
健康保険法76条2項は,療養の給付に要する費用の額は,厚生

労働大臣が定めるところ(診療報酬の算定方法〔平成20年厚生
労働省告示第59号〕を指す。)により算定するものとし,同条4項は,保険者は,保険医療機関から療養の給付に関する費用の請求があったときは,上記(ウ)及び(エ)の厚生労働省令並びに同条2項及び3項の定めに照らして審査の上支払う旨を定め,同条5項は,保険者は上記の審査及び支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金等(以下基金等という。)に委託することができる旨を定めている。

保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号。以下療養担当規則という。)
療養担当規則16条は,保険医は,患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき,又はその診療について疑義があるときは,他の保険医療機関に転医させ,又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない旨規定している。

3
前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認められる事実)
(1)

原告及び本件クリニックについて
原告は,横浜市α区に保険医療機関であるAクリニック(本件クリニック)
を個人で開設している医師であり,麻酔科を専門としている(以下,原告のように麻酔科を専門としている医師を麻酔専門医という。)。本件当時,本件クリニックにおいて,診療に従事する医師は原告のみであり,従業員は看護師1名のみであった。
(2)

他の保険医療機関との麻酔関連医療業務委託契約の締結等
原告は,本件当時において,本件各病院,すなわち,①一般財団法人B会
C病院(以下C病院という。),②一般財団法人D会E病院(以下E病院という。なお,上記2法人のいずれも,一般財団法人への移行前は財団法人であった。)及び③F連合会G病院(以下G病院という。)との間で,それぞれ,麻酔関連医療業務委託契約を締結していた(以下本件各業務委託契約という。なお,以下における各病院の記載は,上記各法人等を指す場合と,上記各法人等が開設する保険医療機関を指す場合がある。)。原告は,本件各業務委託契約に基づき,本件各病院で実施される手術において麻酔施術(以下本件麻酔施術といい,その対象とされた手術を本件手術という。)を行い,その対価として,同契約所定の報酬を本件各病院から受けていた(このように本件各業務委託契約に基づき本件各病院から支払を受けた報酬のうち,原告が社会保険診療分であるとして請求したものが,本件各報酬である。)。
(3)

原告の消費税に係る届出等の状況
原告は,平成20年9月9日,戸塚税務署長に対し,①消費税法2条1項14号に規定する基準期間(平成18年1月1日から同年12月31日までの期間)における課税売上高が1000万円を超えることとなったこ
とから,同法57条の規定に基づき,適用開始課税期間を平成20年課税期間とする消費税課税事業者届出書を提出し,併せて,②平成21年課税期間から同法37条1項(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)に規定する簡易課税制度(別紙2の第2の1(2)参照)の適用を選択する旨の消費税簡易課税制度選択届出書を提出した。上記②の届
出書には,事業の内容を不動産賃貸業及び医療業(一般診療所)とする旨,事業区分を第5種事業とする旨が記載されていた。(甲21,22)イ
原告は,平成22年10月27日,戸塚税務署長に対し,基準期間(平成20年課税期間)における課税売上高が1000万円以下となり,平成22年課税期間から消費税の納税義務がなくなった旨などを記載した消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を提出した(甲22)。原告がこのように上記基準期間における課税売上高が1000万円以下となったとしたのは,本件役務提供の対価(本件各報酬)が消費税法上非課税となることを前提としたものであった。

原告は,平成23年6月30日,戸塚税務署長に対し,納税地を原告の当時の住所(横浜市α区β)から本件クリニックの所在地(同区γ)へ変更する旨などを記載した所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書を提出した(甲21,22)。
(4)

本件訴訟に至る経緯
原告は,本件各年分の所得税等について,別表1-1から1-3までの確定申告欄記載のとおり,いずれも法定申告期限内に申告した(甲1
6~18,乙1,6,10)。原告がしたこれらの申告は,本件各報酬額が措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当することを前提に,本件特例(関係法令等(1))の概算経費率を乗じて計算した金額(本件概算経費額)を必要経費に算入して,事業所得の金額を計算したものであった。

また,原告は,上記(3)イのとおり平成22年課税期間から消費税の納税義務がなくなった旨の届出をしていたことから,本件各課税期間の消費税等について,いずれも法定申告期限までに確定申告をしなかった。イ
戸塚税務署長は,平成27年2月27日付けで,本件各報酬額は措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当せず,本件概算経費を必要経費に算入することはできないことや,一部に収入金額の計上漏れがあったこと(原告が平成24年12月分としてC病院に請求した231万2063円)などを理由に,別表1-1から1-3までの更正処分等欄記載のとおり本件所得税各処分をした(甲20の1
~3)。
また,戸塚税務署長は,平成27年2月27日付けで,本件各報酬に対応する役務の提供(本件役務提供)は消費税法6条1項,別表第1第6号に規定する非課税資産の譲渡等(関係法令等(2)ア)に該当せず,また,本件各課税期間の基準期間の課税売上高がいずれも1000万円を超え
ていることから,原告は本件各課税期間の消費税等について納税義務者になるとして,別表2-1から2-4までの決定処分等欄記載のとおり,本件消費税各処分をした(甲20の4~7)。ウ
原告は,平成27年4月8日,本件各処分の取消しを求めて異議申立てをしたが,戸塚税務署長は,同年7月2日付けで原告の異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした(甲21)。


原告は,平成27年7月30日,本件各処分の取消しを求めて審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成28年4月4日付けで,原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲22)。


原告は,平成28年9月30日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。

4
本件各処分の適法性に関する被告の主張
被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び計算は別紙2記載のとおりであるところ,原告は,後記5の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。

5
争点及びこれに関する当事者の主張の要旨
本件の争点は,(1)本件各報酬額は,措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当するか否か(争点(1)),(2)本件役務提供は,消費税法6条1項,別表第1第6号に規定する非課税資産の譲渡等に該当するか否か(争点(2))であり,これに関する当事者の主張の要旨は別紙3記載のとおりである(同別紙において定義した用語は,本文においても用いる。)。

第3

当裁判所の判断
当裁判所は,原告が本件各業務委託契約に基づいて行った本件麻酔施術は,原告が療養の給付の主体として行ったものとは認められず,本件各報酬額は措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当し
ないため,本件概算経費額を必要経費に算入することができないとしてされた本件所得税各処分は適法であり,また,本件役務提供は消費税法6条,別表第1第6号に規定する非課税資産の譲渡等に該当しないため,これを前提にされた本件消費税各処分も適法であると判断する。その理由の詳細は,次のとおりである。
1
認定事実
前記前提事実に証拠(各掲記のほか,甲44,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告が本件各病院との間で締結した本件各業務委託契約の内容や,原告が同契約に基づき行った麻酔関連医療業務(本件業務)の内容等について,以下の事実を認めることができる(末尾に証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)。

(1)

C病院について
業務委託契約の内容(甲6の1及び2)
本件クリニック(原告)がC病院との間において締結した業務委託契約(平成22年4月1日付け,平成23年4月1日付け)には,①同病院は原告に対し院内における麻酔関連医療業務を委託し,原告はこれを受
託すること(第1条),②院内における麻酔関連医療業務についての診療契約は,患者は原告との間で直接締結すること(第2条),③原告が行った上記業務中の社会保険診療分に対して同病院が算定した社会保険診療報酬について,同病院及び原告が一定の割合で分配すること(第4条),④原告が行った上記業務中の自由診療分に係る報酬については,
同病院が原告に対し消費税とともに支払うこと(第5条),⑤原告は,前月1日から末日までの報酬を毎月10日までに同病院に請求し,同病院は,上記③の社会保険診療報酬については,同病院が保険者の振込を受けた後速やかに,原告の請求金額と保険者からの決定金額に従って,原告が指定した口座に振り込んで支払い,上記④の報酬については,毎
月10日に前月分の請求金額を上記口座に振り込んで支払うこと(第6条)等の約定があった。そして,原告は,C病院が算定した社会保険診療報酬のうち,平成22年4月1日から平成23年3月31日までは社会保険診療報酬点数の86%に相当する金額,同年4月1日から平成24年3月31日までは上記点数の81%に相当する金額につき,上記約定に従って支払を受けていた。


業務の内容等(甲39,乙15,16)
(ア)

C病院における麻酔施術に関しては,水曜日から金曜日までに実

施される手術については原告が,月曜日及び火曜日に実施される手術についてはC病院の外科医師又はH大学からの派遣医師等が,それぞれ担当していた。ただし,原告が事故や災害等のため手術当日に来院できない緊急時には,原告に代わってC病院の医師が対応することとされていた。
(イ)

主治医は,患者の診察・診療を行った上で,手術が必要と判断し

た場合,患者及びその親族(以下患者等という。)に対し,入院直前の外来診察時に,入院診療計画等を示して手術等の事前説明を行っていたが,その際,麻酔に関しては,麻酔の説明と同意書(乙15の別添1)に基づき,麻酔方法の種類,麻酔による副作用や合併症等について説明の上,患者等の同意を得ていた。
原告が担当した本件麻酔施術に関しては,主治医による上記説明に加
え,原告も,自ら作成した麻酔承諾書(甲9)に基づき,当該患者に行う麻酔方法等の詳細について事前説明を行うのが通常であり,かかる説明は,原告の来院日に行われる術前外来や手術の前日・当日において,C病院の診察室等を使用して行われていた。なお,原告がこのような事前説明を行う時間的余裕がない場合などには,原告の依頼に基づき,
主治医から患者等に対し,原告が本件麻酔施術を担当する旨を説明することがあった。(以上につき,甲9,39,乙16)
(ウ)

患者に対する本件手術の予定及び内容については,主治医が原告

の意見を聴いた上で決めていた(例えば,患者の全身状態に照らし,全身麻酔による手術ではリスクが大きい旨の意見を原告が述べた場合には,かかる意見を尊重して手術内容が決められた。)。そして,実施する手
術内容が決まると,主治医が原告の都合も踏まえ手術日及び手術開始時刻を決定した上,麻酔依頼書を作成し,同書面により原告に麻酔の依頼をした。また,手術内容に変更がある場合等は,手術日の前日までに,手術室から原告にその旨電話やメールで連絡していた。(乙16)(エ)

本件手術を担当する執刀医,看護師や臨床工学技士などの医療従

事者は,麻酔を担当する医師(原告)を除き,全てC病院の医師等であった。また,本件麻酔施術を含め,本件手術を行うために必要な設備・器具・消耗品や薬剤等については,C病院が用意していた。
(オ)

本件手術後の患者の管理や診察は,主治医が行っていたものの,

原告も,本件麻酔施術を施行した患者(退院した患者を除く。)に対し,
次の来院日に術後回診を行っていた(甲39)。

診療録等の保管
原告を含む麻酔施術を担当する医師は,手術が行われた際,手術室において,麻酔時間や使用薬剤等を記録した麻酔記録(乙15の別添2)を
作成していた。この麻酔記録を含め,C病院内で医師が作成する書類及び患者等に署名を求めた同意書等の全ての書類は,同病院の診療録の一部として保管されていた。(乙15)
他方,原告も,本件麻酔施術についての診療録を独自に作成し,管理していた。この診療録には,上記の麻酔記録が添付されたほか,麻酔中の
困難な事象,患者の特異な体質,発生した合併症などの詳細が記録されていた。(甲40,41)エ

レセプト請求等
(ア)

C病院において行われた手術の内容については,原告が行った本

件麻酔施術も含め,主治医又は主治医の指示を受けた看護師がコンピュータに入力することにより管理しており,このデータがレセプト請求を担当する医事課に転送され,医事課の職員がレセプト請求データを作成
していた。
そして,C病院が,本件麻酔施術に関する部分も含め,保険医療機関として一括して社会保険診療報酬を請求し,その支払を基金等から受けた後,前記アの契約で定められた割合に基づき,原告の銀行口座に振り込んでいた。

(イ)

上記のレセプト請求に誤りがないようにするため,医事課では,

原告から提出される請求書及び麻酔関連医療費明細書と,C病
院で保管している診療録等とを突き合わせて確認をした上で,レセプト請求を行っていた。
(2)

E病院について
業務委託契約の内容
本件クリニック(原告)がE病院との間において締結した業務委託契約(平成23年11月1日付け,平成25年4月1日付け)には,①同病院は原告に対し院内における麻酔関連医療業務を委託し,原告はこれを
受託すること(第1条),②原告が行った上記業務中の社会保険診療分に対して同病院が算定した社会保険診療報酬について,同病院及び原告が一定の割合で分配すること(第3条),③原告が行った上記業務中の自由診療分に係る報酬については,同病院が原告に対し消費税とともに支払うこと(第4条),④原告は,前月1日から末日までの報酬を毎月
10日までに同病院に請求し,同病院は,上記②の社会保険診療報酬については,同病院が保険者からの振込を受けた後速やかに,原告の請求金額と保険者の決定金額に従って,原告が指定した口座に振り込んで支払い,上記③の報酬については,毎月10日に前月分の請求金額を上記口座に振り込んで支払うこと(第5条)等の約定があった(甲7の1及び2)。なお,平成25年4月1日付け契約において,院内における麻酔関連医療業務についての診療業務は,診療が保険診療の場合,患者は
原告との間で直接締結する旨の約定(第2条)が加えられた(甲7の2)。
そして,原告は,E病院が算定した社会保険診療報酬のうち,社会保険診療報酬点数の81%に相当する金額につき,上記約定に従って支払を受けていた(甲7の1及び2)。


業務の内容等(甲10,乙18)
(ア)

E病院における麻酔施術に関しては,火曜日に行われる整形外科

手術については原告が,水曜日に行われる整形外科以外の手術についてはE病院の外科医師が,それぞれ担当していた。
(イ)

主治医は,患者の診察・診療を行った上で,手術が必要と判断し

た場合,患者等に対し,入院診療計画等を示して手術等の事前説明を行っていたが,ここで患者等に示された同意書(乙18の別添1)には,手術・処置法の説明と併せて,当該患者に行う麻酔方法についても記載されていた。
なお,E病院においては,原告の来院日が限られていたことなどから,原告が自ら患者等に対し事前説明をする時間的余裕がなかったため,上記同意書に加え,原告が作成した麻酔承諾書(甲10)に基づ
き,主治医が,本件麻酔施術に関する事前説明を行い,患者等の同意を得ていた。

(ウ)

本件手術の日程及び患者情報等は,主治医による手術日の決定後,
主治医が作成する麻酔依頼書に基づき,手術室の看護師が,遅くとも手術日の前日までに原告にメールで連絡していた。(エ)

本件手術を担当する執刀医,看護師や臨床工学技士などの医療従

事者は,麻酔を担当する医師(原告)を除き,全てE病院の医師等であった。また,本件麻酔施術を含め,本件手術を行うために必要な設備・器具・消耗品や薬剤等は,E病院が用意していた。

(オ)

本件手術後の患者の管理や診察は,主治医が行っており,原告は,
手術前後の診察等には関与せず,手術当日の麻酔施術のみを担当していた。

診療録等の保管
原告を含む麻酔施術の担当医師は,手術室において,患者ごとに麻酔方
法,麻酔時間,麻酔薬など手術中の麻酔内容等を記録した麻酔記録(乙18の別添4)を作成していた。この麻酔記録を含め,E病院内で医師が作成する書類及び患者等に署名を求めた同意書等の全ての書類は,同病院の診療録の一部として保管されていた。(乙18)
他方,原告も,本件麻酔施術についての診療録を独自に作成し,管理し
ていた。この診療録には,上記の麻酔記録が添付されたほか,麻酔中の困難な事象,患者の特異な体質,発生した合併症などの詳細が記録されていた。(甲42)

レセプト請求等
(ア)

E病院では,基本的にコンピュータのシステムに入力されたデー

タに基づきレセプト請求データが作成されていたが,手術や麻酔については上記システムの入力対象外であったため,手術後,看護師が麻酔記録に基づいて作成した文書に基づき,医事課の職員によりレセプト請求データが作成されていた。
そして,E病院が,本件麻酔施術に関する部分も含め,保険医療機関として一括して社会保険診療報酬を請求し,基金等からその支払を受けた後,前記アの契約で定められた割合に基づき,原告の銀行口座に振り込んでいた。
(イ)

上記のレセプト請求に誤りがないようにするため,医事課では,

原告から提出される請求書及び麻酔関連医療費明細書と,E病
院で保管している診療録等とを突き合わせて確認をした上で,レセプト
請求を行っていた。
(3)

G病院について
業務委託契約の内容
本件クリニック(原告)がG病院との間において締結した業務委託契約(平成25年10月1日付け)には,①同病院は原告に対し院内における
麻酔関連医療業務を委託し,原告はこれを受託すること(第1条),②院内における麻酔関連医療業務についての診療契約は,診療が保険診療の場合,患者は原告との間で直接締結すること(第2条),③原告が行った上記業務中の社会保険診療分に対して同病院が算定した社会保険診療報酬について,同病院及び原告が一定の割合で分配すること(第4条),④原告
が行った上記業務中の自由診療分に係る報酬については,同病院が原告に対し消費税とともに支払うこと(第5条),⑤原告は,前月1日から末日までの報酬を毎月5日までに同病院に請求し,同病院は,上記③の社会保険診療報酬については,同病院が保険者からの振込を受けた後速やかに,原告の請求金額と保険者の決定金額に従って,原告が指定した口座に振り
込んで支払い,上記④の報酬については,毎月末までに前月分の請求金額を上記口座に振り込んで支払うこと(第6条)等の約定があった(甲8)。そして,原告は,G病院が算定した社会保険診療報酬のうち,社会保険診療報酬点数の90%に相当する金額につき,上記約定に従って支払を受けていた(甲8)。


業務の内容等(甲11,乙19)(ア)

G病院における麻酔施術に関しては,第1月曜日,第3月曜日及

び第5月曜日に行われる整形外科手術については原告が,第2月曜日及び第4月曜日に行われる整形外科手術については外部から派遣された麻酔専門医が,それぞれ担当していた。
(イ)

主治医は,入院の2週間前までに手術前検査を行い,手術日を決

定すると,患者等に対し,手術同意書(乙19の別添1)を示して手術等の事前説明を行っていたが,同書面には麻酔方法の種類等が記載されていた。
なお,G病院においては,原告の来院日が限られていたことなどから,原告が自ら患者等に対し事前説明をする時間的余裕がなかったため,上
記手術同意書に加え,原告が作成した麻酔承諾書(甲11)及
び原告の依頼により主治医が作成した麻酔専門医の往診について(同意書)(乙19の別添3)に基づき,主治医が,麻酔方法等に関する事前説明を行い,患者等の同意を得ていた。
(ウ)

本件手術の日程及び患者情報等は,手術予定日の前週の金曜日に

原告にファクシミリで連絡されていた。本件手術に際して麻酔関連の相談が必要になる場合には,原告が事前に診療録を確認することもあったが,ほとんど手術当日の対応のみで終了していた。
(エ)

本件手術を担当する執刀医,看護師や臨床工学技士などの医療従

事者は,麻酔を担当する医師(原告)を除き,全てG病院の医師等であ
った。また,本件麻酔施術を含め,本件手術を行うために必要な設備・器具・消耗品や薬剤等は,G病院が用意していた。
(オ)

本件手術後の患者の管理や診察は,主治医が行っており,原告は,
手術前後の診察等には関与せず,手術当日の麻酔施術のみを担当していた。


診療録等の保管原告を含む麻酔施術の担当医師は,患者ごとに麻酔方法,麻酔時間,麻酔薬などの手術中の麻酔内容等を記録した麻酔記録用紙(乙19の別添4)を作成していた。この麻酔記録用紙を含め,G病院内で医師が作成する書類及び患者等に署名を求めた同意書等の全ての書類は,同病院の診療録の一部として保管されていた。(乙19)

他方,原告も,本件麻酔施術についての診療録を独自に作成し,管理していた。この診療録には,上記麻酔記録用紙が添付されたほか,麻酔中の困難な事象,患者の特異な体質,発生した合併症などの詳細が記録されていた。(甲43)

レセプト請求等(乙19)
(ア)

G病院では,基本的にコンピュータのシステムに入力されたデー

タに基づきレセプト請求データが作成されていたが,手術や麻酔については上記システムの入力対象外であったため,手術中に作成された手術票等の文書に基づき,医事課の職員によりレセプト請求データが作成されていた。

そして,G病院が,原告の行った本件麻酔施術に関する部分も含め,保険医療機関として一括して社会保険診療報酬を請求し,その支払を基金等から受けた後,前記アの契約で定められた割合に基づき,原告の銀行口座に振り込んでいた。
(イ)

上記のレセプト請求に誤りがないようにするため,医事課では,

原告から提出される麻酔関連医療費明細書及び請求書と,G病
院で保管している診療録等を突き合わせて確認をした上で,レセプト請求を行っていた。
2
争点1(本件各報酬額は,措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当するか否か)について(1)

措置法26条1項が定める本件特例は,医業又は歯科医業を営む個人が社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において,当該支払を受けるべき金額が5000万円以下であるときに,当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額を,社会保険診療報酬の収入金額に応じ4段階に区分して定められた割合(概算経費率)に相当する金額の合計額とする旨を定めている(関係法令等(1)ア)。
本件特例の適用対象となる社会保険診療について規定する措置法26条2項1号は,健康保険法のほか,国民健康保険法,国家公務員共済組合法等の各法律の規定に基づく療養の給付等を定めるところ(関係法令等(1)イ),これらの各法律においては,いずれも健康保険法の療養の給付等に関する規
定を準用するなどしている(関係法令等(3)ア(ア))。そして,原告が本件各病院内の本件手術において行った本件麻酔施術が,健康保険法63条1項3号に定める処置,手術その他の治療に当たり,同項所定の療養の給付に該当することは,当事者間に争いがない。
本件で問題とされているのは,本件手術は保険医療機関である本件各病院
において実施されたものであるところ,本件手術における本件麻酔施術は,同じく保険医療機関である本件クリニックを個人で開設する原告が行ったものであるため,本件クリニック(原告)が自ら主体として療養の給付を行ったと評価することができるか(すなわち,原告は本件麻酔施術に係る社会保険診療につき支払を受けるべき地位にあるのか)否かである。

(2)

健康保険法は,被保険者の疾病又は負傷に関する療養の給付の内容とし
て,診察(63条1項1号),処置,手術その他の治療(同項3号),病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護(同項5号)等を定めているところ(関係法令等(3)ア(イ)a),これは,被保険者に対し,療養の給付として,傷病の治療等に必要かつ相当と認められる一連の医療サービスの給付を行う旨を定めたものと解される。そして,こうした医療サービスの給付を誰の責務として行わせるか(療養の給付の主体)については,昭和32年の健康保険法改正により,医師,歯科医師又は薬剤師が療養の給付を担当するという従前の個人指定制度が改められ,保険医療機関が療養の給付を担当するという機関指定制度が採用されており,この機関指定制度の下では,保険医療機関は,その保険医に診療に当たらせるほか,療養の給付を担当しなければならない(同法70条1項)。これは,今日における医療サービスが,医師のみならず,看護師,栄養士,診療放射線技師,臨床工学技士等の各種の医療従事者(以下医師等ということがある。)がそれぞれの専門性を持って協同することによって行われており,また,当該医療機関の各種の物的設備等も一体となって提供されているという実態を踏まえ,
このような人(医師等)と物(設備等)とが有機的に結合された組織体としての保険医療機関が,自ら主体となって療養の給付を担当すべきことを定めるとともに,保険医個人については,当該保険医療機関が提供する療養の給付を構成する個別具体的な診療に従事するものと位置付けて,保険医療機関に療養の給付を行う責務があることを明らかにしたものと解される。
このように,健康保険法においては,人と物とが結合された組織体である保険医療機関が療養の給付の担い手となるものとされており,また,保険医療機関が行う療養の給付の内容として,傷病の治療等に必要かつ相当と認められる一連の医療サービスの給付が定められていることに照らすと,ある患者の治療等について複数の保険医療機関が関与する場合,一方の保険医療機
関のみならず他方の保険医療機関も自ら主体となって療養の給付を行ったと評価されるためには,各保険医療機関の医師等が当該患者の治療等のために行った行為の具体的内容及びその関与の程度,各保険医療機関における物的設備等の負担の有無及び程度,他方の保険医療機関が当該患者の治療等に関与することとなった経緯及び双方の保険医療機関の関係等の事情を考慮して,
他方の保険医療機関における関与が,人と物とが結合された組織体である保険医療機関として,自ら主体となって当該患者に対しその傷病の治療等に必要かつ相当と認められる医療サービスの給付を行ったものと評価することができるか否かという観点から判断することが相当である。
(3)

前記1の認定事実を踏まえ,上記(1)及び(2)の観点に照らして,原告が
自ら主体として療養の給付を行ったと評価することができるか否かについて,以下検討する。
本件各病院の医師等は,主治医による診察・診療の結果,手術が必要とされた患者に対し,入院させて本件手術を行い,退院まで,診察,治療及び看護等を行っていた(認定事実(1)~(3)の各イ)。他方,本件クリニックの医師である原告は,本件各病院が実施する本件手術において,本件麻酔施術を
行った。
一般に,手術においては,執刀医による執刀のほか,患者に対する各種の処置,病理検査などの各種医学検査,手術中に必要とされる薬剤等の使用など,医師その他の医療従事者による各種の医療関係行為が一体となって行われるものであり,麻酔施術もその一環として行われるものにほかならない。
そして,本件各病院は,本件手術の実施に当たり,執刀医,看護師や臨床工学技士など,麻酔を担当する医師を除く全ての医療従事者を提供しているほか,本件手術に必要な設備や器具,薬剤等についても全て用意し提供している(認定事実(1)~(3)の各イ(エ))のであるから,本件各病院が自ら主体となって本件手術を実施したものであることは明らかである。そうすると,当
該患者の治療等への本件クリニック(原告)の関与は,本件各病院が主体となって実施した本件手術において,その各種の医療関係行為の一環として行われた本件麻酔施術につき,麻酔専門医である原告を提供したにとどまるものといえる。
また,本件クリニック(原告)が本件手術及び本件麻酔施術に関与するこ
ととなったのは,原告が本件各病院との間で本件各業務委託契約を締結し,各病院内の手術における麻酔関連医療業務(本件業務)を受託したことによるものである(認定事実(1)~(3)の各ア)ところ,これらの業務は特定の曜日等に原告が来院して行うこととされ,そのほかの曜日等には本件各病院の外科医師や外部から派遣された麻酔専門医が麻酔施術を行っていたこと(認定事実(1)~(3)の各イ(ア))に鑑みると,麻酔専門医が不在ないし不足している本件各病院において,本件クリニック(原告)との間で本件各業務委託契約を締結することによって,麻酔に関する専門的な知識経験を有する医師を安定的に確保し,もって手術の安全性を高めようとしたものと解される。以上を踏まえると,本件クリニック(原告)は,本件各病院との本件各業務委託契約に基づき,本件各病院が実施した本件手術における本件麻酔施術
を本件クリニックの医師(原告)に行わせていたにすぎないものであって,自ら主体となって本件各病院と共に本件手術を実施したとまで評価することができるものではない。また,本件手術における各種の医療関係行為の一環として行われた本件麻酔施術を,本体たる手術から切り離して,これとは別個の医療サービスの給付を成すものと解するのも相当ではない。そうすると,
原告が行った本件麻酔施術は,本件各病院が実施した本件手術に包摂され,本件手術の一部を成すものとして医療サービスの給付(療養の給付)を構成するものというべきである。
したがって,患者の治療等における本件クリニック(原告)の関与については,人と物とが結合された組織体である保険医療機関として,自ら主体と
なって当該患者に対しその傷病の治療等に必要かつ相当と認められる医療サービスの給付を行ったと評価することはできないから,原告が自ら主体として療養の給付を行ったと認めることはできない。
(4)

原告の主張の検討
原告は,上記(2)の判断枠組みに関し,①保険医療機関が医師を中心とした有機体を形成し組織体として一連の医療サービスを提供しているか否かは,保険医療機関として厚生労働大臣から指定を受けるための要件に過ぎず,自ら主体として療養の給付を行っているか否かを判断する上での考慮要素ではない,②保険医療機関にとって重要なことは,人と人及び人と物とが有機的,一体的に機能している点であり,物的設備の負担者が誰かではないから,物的設備等の負担の有無等を考慮要素とすべきではない旨を主張する。

しかしながら,上記(2)で説示したとおり,健康保険法は,医療サービスが医師等の協同により行われ,かつ,物的設備等も一体となって提供されることに着目して,人と物とが結合された組織体としての保険医療機関を療養の給付の主体として定めているのであるから,保険医療機関が自ら主体として療養の給付を行っているか否かを判断するに当たり,
患者の治療等における保険医療機関の医師等の関与や物的設備等の負担を考慮に入れることは,むしろ当然のことというべきである。物的設備等の負担を考慮しなくてよいとする原告の主張は,合理性を有するものといえない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。


原告は,本件各病院との間で締結された本件各業務委託契約は,療養担当規則16条(関係法令等(3)イ)に定める対診を原告が行うことを約したものであって,原告による麻酔施術は対診医として行ったものであるから,原告が自ら主体として療養の給付を行ったものと評価すべきである旨
を主張する。
しかしながら,麻酔専門医が麻酔施術を行うことにより手術の安全性が高まるとの効果が得られることを前提としても,麻酔施術を他の医師(外科医師など)が行うことは,対応が困難な一部の事例を除けば,特にそれ自体が困難であるというわけではなく,そもそも,療養担当規則
16条にいう患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるときに当たるといえるかには疑問があるといわざるを得ない。また,この点をおくとしても,上記(3)で説示したとおり,麻酔施術は手術における各種の医療関係行為の一環として行われるものであることに照らすと,原告が麻酔に係る専門的な知識経験を有する医師であることを理由に本件各病院との間で本件各業務委託契約が締結されたとしても,そのような原告の麻酔施術における専門性をもって,本件手術を実
施する主体でない本件クリニック(原告)が自ら主体として療養の給付を行ったと評価するのは困難である。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。

原告は,①本件各業務委託契約が社会保険診療報酬を本件各病院と原告とで分配すると定めており,原告は本件各病院との関係において対等で独立した立場にあること,②原告は本件各病院における本件手術の予定日や内容について重要な決定権を持っていたこと,③本件各病院の主治医が診療録に本件麻酔施術の記載をすることはなく,本件麻酔施術に関する記載が存する診療録は原告が保管していたこと,④実施した本件麻酔施術
の内容を踏まえ,麻酔に関するレセプト請求に係る点数を決定していたのは原告であったことから,原告は本件麻酔施術を主体的に行っていたものである旨を主張する。
しかしながら,原告が挙げる事情のうち上記③及び④については,原告が行った本件麻酔施術に係る記録は,本件手術を実施した本件各病院に
おいて診療録の一部として保管していたものであり,また,かかる記録に基づいて本件各病院がレセプト請求を行っていた(認定事実(1)~(3)の各ウ,エ)ものである。原告が本件麻酔施術の詳細についての記録を自ら保管していたことは,事後の照会等に備えるなどの趣旨によるものと解することができ,また,本件各病院がレセプト請求をするに当たり,
原告から提出される請求書等と突き合わせて確認をしていたことは,請求の正確性を期すという趣旨によるものと解することができるから,これらの事情から直ちに,原告が自ら主体として療養の給付を行っていたと認められるものではない。
また,上記①については,本件各業務委託契約には本件麻酔施術に係る社会保険診療報酬について一定の割合で原告に分配する旨の約定がある(認定事実(1)~(3)の各ア)が,上記(3)に説示したとおり,本件各業務委託契約は本件各病院が麻酔について専門的な知識経験を有する医師を安定的に確保するために締結したものであることに鑑みると,上記約定は,本件業務に係る報酬額について社会保険診療報酬の額を基準として算定することにより,原告が提供する麻酔施術の専門性に見合った水準
の報酬を確保しようとするものであり,このような観点に基づき本件業務に係る報酬額の決定方法を定めたものと理解し得るものである。また,上記(2)に説示したとおり,療養の給付の主体は,患者の治療等における保険医療機関の医師等の関与や物的設備等の負担などの事情に照らして,当該保険医療機関が自ら主体として療養の給付を行っていたといえるか
否かを客観的に判断すべきものであるから,原告主張のような契約上の文言から直ちに,原告が療養の給付の主体であると認められるものではない。
次に,上記②については,C病院においては本件手術の予定や内容を決めるに当たり主治医が原告の意見を聴いていたこと(認定事実(1)イ(ウ))
が認められる一方,原告の来院日が限られていたE病院及びG病院においてはそのような事実があったとは認められない(認定事実(2)及び(3)の各イ)。また,C病院において上記のような運用がされていたのは,原告の来院日が比較的多く,手術前に主治医とのコミュニケーションを図ることが比較的容易であったことによるものと解され,このような運
用から直ちに,原告が自ら主体として療養の給付を行っていたと認められるものではない。以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。エ
原告は,本件麻酔施術を受ける患者と原告との間には麻酔に係る直接の診療契約関係が存在し,患者の本件麻酔施術に関する同意は原告において本件各病院とは別に取得していたから,原告は本件麻酔施術について主体
的な立場を有していた旨を主張し,本件各業務委託契約においては本件麻酔施術について原告が患者との間で直接に診療契約を締結する旨の約定がある(認定事実(1)~(3)の各ア)。
しかしながら,本件各病院に入院して手術を受けようとする患者やその親族にとって,手術を実施する本件各病院との間で締結した診療契約の
ほかに,その手術の一環として行われる麻酔施術についても別個の診療契約を締結する意思があったとは考え難い。そして,本件手術に係る患者等に対し示された麻酔承諾書(認定事実(1)~(3)の各イ(イ),甲9~11)は,本件麻酔施術を外部の麻酔専門医である原告が行うことや,採用される麻酔方法等につき説明し,患者等の承諾を得る趣旨のも
のであり,G病院の患者等に示された麻酔専門医の往診について(同意書)(乙19の別添3)も,外部の麻酔専門医である原告が患者情報を同病院と共有することなどについて患者等の承諾を得る趣旨のものであって,これらの文書により原告と患者等との間で診療契約が締結されたと認めることはできず,他に原告と患者等との間で診療契約が締結
されたことを認めるに足りる証拠はない。
また,原告が患者等に対し麻酔方法等の説明をし麻酔に対する承諾を得ていたこと自体は,麻酔専門医として本件麻酔施術を担当する立場から,患者への十分な説明を尽くす趣旨で行われたものと理解することができるものであって,かかる事情により,原告が自ら主体として療養の給付
を行ったか否かの判断が左右されるものではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。オ

原告は,原告による本件麻酔施術は患者に対する本件手術の中核を占める重要なものであり,本件各病院においてより安全な麻酔施術は麻酔専門医である原告にしか実行することができないものであることは,本件麻酔施術を原告が主体として担当していることを裏付ける旨主張する。しかしながら,上記(3)で説示したとおり,手術においては,執刀医に
よる執刀のほか,医師その他の医療従事者による各種の医療関係行為が一体となって行われるのであって,麻酔施術もその一環として行われる医療行為の一つにとどまるのであるから,麻酔施術の重要性をもっても,これを手術の中核を占めるものと位置付けることが相当であるとはいえない。また,原告が麻酔に関する専門的な知識経験を有する医師である
ことは,本件手術の安全性の確保に資するものであるとしても,そのことによって,原告が自ら主体として本件各病院と共に本件手術を実施することとなったり,本件麻酔施術が本件手術から切り離されて別個の医療サービスの給付を成すものとなったりするものではないから,原告が自ら主体として療養の給付を行ったか否かの判断が左右されるものでは
ない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

原告は,平成24年厚労省事務連絡(関係法令等(2)イ)によれば,DPC算定病棟に入院中の患者が外部の保険医療機関において外来診療を受
けた場合,当該外来診療を行った委託先保険医療機関も療養の給付を主体的に担当していたことになるところ,この場合(DPC病棟事例)と,原告の本件麻酔施術とを比較すると,患者が外部の保険医療機関に赴くか(DPC病棟事例の場合),外部の保険医療機関が委託元保険医療機関に赴くか(本件)の違いしかなく,DPC病棟事例の場合と同様,本件につ
いても,原告が療養の給付の主体と認められるべきである旨を主張する。しかしながら,平成24年厚労省事務連絡は,DPC病棟事例について,入院先の保険医療機関であるDPC算定病棟において診療を行うことができない専門的な診療が必要となったため患者がやむを得ず他の保険医療機関を受診する必要がある場合について,当該他の保険医療機関が分配を受ける診療報酬につき消費税が課されない(他の保険医療機関も自ら主体として療養の給付を行ったものとみなされる。)旨を回答したものである。そして,この場合において,他の保険医療機関において行われる診療は,入院先の保険医療機関(DPC算定病棟)で行われている入院治療とは独立した別個の医療サービスの給付であって,本来は別途に診療報酬が支払われるべきものであるが,入院先の保険医療機関が診
療報酬の包括支払方式を適用されるDPC算定病棟であることから,基金等に対する社会保険診療報酬の支払請求を別途に行うことができないという手続の制約上,入院先の保険医療機関において基金等に対する支払請求をし,両保険医療機関間の協議により診療報酬を分配せざるを得ないという事情があったものであり,それぞれの保険医療機関が自ら主
体として療養の給付を行ったことが明らかな事例であったといえる。これに対し,原告の本件麻酔施術は,本件各病院が実施した本件手術における各種の医療関係行為の一環として行われたものであるから,DPC病棟事例とはその前提を異にするものといわざるを得ない。
なお,原告は,訪問診療において別の診療所が診療を行った場合や保険
医療機関である病院に所在する保険薬局が薬剤を支給する場合を挙げ,複数の保険医療機関が特定の患者を診療することは一般的であり,その複数の保険医療機関の全てに診療の給付の主体性が認められることとの対比においても,原告に本件麻酔施術についての主体性が認められるべきであるなどと主張するが,本件手術という一つの医療サービスの中に
原告が行った本件麻酔施術が包摂されると評価すべき本件と,原告が挙げる上記の例が異なることは明らかである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。キ
原告は,療養の給付の主体性を判断するに際し,人的要素(保険医療機関の医師等の関与)及び物的要素(物的設備等の負担)を考慮し,これらにより形成される有機体として一連の医療サービスを提供したか否かを検
討するとしても,①麻酔専門医である原告と本件各病院の執刀医その他の医療従事者は本件手術の遂行という目的のために有機体を形成しており,②本件麻酔施術に必要な設備,器具,消耗品及び薬剤については,これらに係る費用を原告が負担している上,その選定やメンテナンスに係る判断も原告が行っているから,原告は人的要素と物的要素が一体として結合し
た組織体として一連の医療サービスを提供している旨を主張する。しかしながら,上記①については,麻酔専門医である原告が本件手術を担当する執刀医その他の医療従事者と本件手術の遂行のため一体となって医療行為を行うことは,原告の医師としての責務として当然のことであり,本件クリニック(原告)が自ら主体となって本件各病院と共に本
件手術を実施したと評価し得る根拠となるものではない。
次に,上記②については,確かに,原告は,本件各業務委託契約において本件業務に係る報酬を定めるに当たり,本件麻酔施術に係る社会保険診療報酬相当額の全額ではなく,10%から19%に相当する金額を控除した残額について支払を受けることとしていたものである(認定事実
(1)~(3)の各ア)。
しかしながら,上記の控除割合は,病院によって,又は契約期間によって異なるところ,原告が本件麻酔施術を行うのに必要な本件各病院の物的設備の使用に係る費用,消耗品の購入に係る費用,看護師や臨床工学技士等の人件費などの諸費用がいくらであるかは,その概算すら明らか
にされていない。また,本件各病院と原告が本件業務に係る報酬額を定めるに当たっては,原告に本件業務を委託することにより本件各病院において麻酔に関する専門的な知識経験を有する医師を安定的に確保することができること,その他本件各病院の収益や経営状況など,様々な事情や要素が考慮された上で,本件各病院と原告との交渉の結果として報酬額が定められたものと認められる(甲44,原告本人,弁論の全趣旨)。そうすると,上記のような控除割合を定めるに当たり,本件麻酔
施術を行うのに必要な費用についてどのように考慮されたかは,不明であるといわざるを得ない。また,仮に,原告が実質的にみて本件麻酔施術に係る費用のうち相当部分を負担していたとしても,そもそも本件麻酔施術は本件手術における各種の医療関係行為の一環として行われたものであるから,本件手術に必要とされる費用全体に占める割合は僅かな
ものにとどまるものということができ,上記のような費用の負担から直ちに,原告が自ら主体として療養の給付を行ったと認められるものではない。
また,原告が本件各病院の麻酔施術に係る物的設備等の購入やメンテナンスについて何らかの意見を述べたとしても,それは本件各病院に定期
的に来院し麻酔施術を担当する医師の立場から参考としての意見を述べたにすぎないものと解されるから,保険医療機関である本件クリニック(原告)の物的設備等の負担には当たらない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(5)

小括
以上によれば,原告は自ら主体として療養の給付を行ったとは認められな
いから,本件麻酔施術に係る社会保険診療につき支払を受けるべき地位にあるとはいえず,本件各報酬額は措置法26条1項にいう社会保険診療につき支払を受けるべき金額に該当しない。したがって,同項所定の概算経費率を乗じて計算した金額(本件概算経費額)を必要経費に算入することができないとしてされた本件所得税各更正処分及びこれに伴う本件所得税各賦課処分は,いずれも適法である。3
争点(2)(本件役務提供は,消費税法6条1項,別表第1第6号に規定する非課税資産の譲渡等に該当するか否か)について
上記2で説示したとおり,原告は自ら主体として療養の給付を行ったとは認められないから,原告が本件業務について支払を受けた報酬は療養の給付の対
価には当たらず,本件業務に係る役務の提供(本件役務提供)は,消費税法6条1項,別表第1第6号に規定する非課税資産の譲渡等に該当しない。したがって,本件役務提供が非課税資産の譲渡等に該当しないことを前提にされた本件消費税各決定処分及びこれに伴う本件消費税各賦課処分はいずれも適法である。

第4

結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官

進藤壮一郎
裁判官

田中慶太
(別紙1省略)
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