判例検索β > 平成29年(行ウ)第120号
法人税更正処分取消等請求事件
事件番号平成29(行ウ)120
事件名法人税更正処分取消等請求事件
裁判年月日令和元年12月5日
裁判所名大阪地方裁判所
分野行政
裁判日:西暦2019-12-05
情報公開日2020-07-02 16:00:27
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令和元年12月5日判決言渡
平成29年(行ウ)第120号

法人税更正処分取消等請求事件
主文12
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
枚方税務署長が原告に対し,平成27年4月22日付けでした平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度以降の法人税の青色申告承認取消処分を取り消す。

2
枚方税務署長が,原告に対し,平成28年7月7日付けでした次の各処分をいずれも取り消す。
(1)

平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度に係る法
人税の更正処分のうち,所得金額2億0848万3354円及び納付すべき税額6124万1100円を超える部分並びに同事業年度に係る重加算税の賦課決定処分
(2)

平成22年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度に係る法
人税の更正処分のうち,所得金額3億6796万4283円及び納付すべき税額1億0906万8900円を超える部分並びに同事業年度に係る重加算税の賦課決定処分
(3)

平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度に係る法
人税の更正処分のうち,所得金額2億6463万6072円及び納付すべき税額7808万5900円を超える部分並びに同事業年度に係る重加算税の賦課決定処分
(4)

平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度に係る法
人税の更正処分のうち,所得金額1億8533万1224円及び納付すべき税額4605万6900円を超える部分並びに同事業年度に係る重加算税の賦課決定処分
(5)

平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度に係る法
人税の更正処分(ただし,平成29年10月24日付け再更正処分により一部取り消された後のもの)のうち,所得金額4億2816万5986円及び
納付すべき税額1億0803万0400円を超える部分並びに同事業年度に係る重加算税の賦課決定処分
第2
1
事案の概要
事案の要旨
本件は,原告が,枚方税務署長から,①平成22年3月期(平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度をいい,他の事業年度についても同様に略称する。
)において,株式会社A(以下Aという。
)から受領し
た,広告宣伝費及び事務用品費(以下広告宣伝費等という。
)に係る割戻し
(バックリベート)を収入から除外していたことなどを理由に,平成22年3
月期以降の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下本件青色申告承認取消処分という。)を受けるとともに,②平成22年3月期から平成26年3月期までの各事業年度(以下本件各事業年度という。において,Aから受領)
した,広告宣伝費等に係る割戻し(以下本件リベートという。
)を雑収入と
して計上せず,益金の額に算入しなかったこと,平成23年3月期から平成2
6年3月期までの各事業年度において,株式会社B(以下Bという。)等に
対し,折り込みチラシ制作等の役務提供を受けた事実がないのに架空の広告宣伝費(以下本件架空広告宣伝費という。
)を支払って計上し,損金の額に算
入していたことなどを理由に,本件各事業年度に係る法人税の各更正処分(以下本件各更正処分という。
)及び重加算税の各賦課決定処分(以下本件各賦課決定処分という。)を受けたため,被告を相手に,本件青色申告承認取消
処分の取消しを求めるとともに,本件各更正処分(ただし,平成26年3月期については,平成29年10月24日付け再更正処分により一部取り消された後のもの)のうち申告額(平成22年3月期,平成24年3月期及び平成25年3月期については確定申告による申告額,平成23年3月期及び平成26年3月期については修正申告による申告額)を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。

2
関係法令の定め
別紙2のとおり

3
前提事実(当事者間に争いがない事実,各掲記の証拠(証拠番号は特記しない限り枝番号を含む。
以下同じ。及び弁論の全趣旨により容易に認められる事


実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)

当事者等
原告は,平成4年12月7日,不動産の売買,仲介,代理及び建売業等を目的として設立された株式会社である。


Cは,平成18年3月31日に原告の代表取締役に就任し,本件各事業年度当時,その地位にあったが,平成26年9月18日,代表取締役在任
中に横領行為又は背任行為を行っていたとして代表取締役を辞任した(乙10,11,弁論の全趣旨)


Dは,
原告の創業者であり,
本件各事業年度当時,
原告の会長
(ただし,
取締役ではない。
)を務めていた。なお,上記イのとおり,Cが,平成26
年9月18日に原告の代表取締役を辞任したため,同日,Dが原告の代表
取締役に就任した。
(乙10,31)

E(以下Eといい,Dと併せてDらという。
)は,Dの子であり,
平成14年8月20日から平成18年3月31日までの間,原告の代表取締役を務め,本件各事業年度当時,原告の発行済株式総数1200株のうち1100株を保有する株主であった。
(乙11,31,弁論の全趣旨)


(2)

本件リベートの受領等
原告は,本件各事業年度において,Aに対し,広告宣伝文書の作成等を依頼し,同社に対し,広告宣伝費等を毎月支払っていた。
Aの実質的経営者であり,かつ,株式会社F(以下Fという。
)の代表
取締役であるGは,本件各事業年度において,Cに対し,上記広告宣伝費等に係る割戻し(本件リベート)を支払っていた。
(3)

本件架空広告宣伝費の支払
原告は,平成23年3月期から平成26年3月期までの各事業年度におい
て,B,同社が解散した後にその代表取締役であったHが個人事業主として事業をしていたIことH(以下Hという。,JことK(以下Kとい)
い,B及びHと併せてB等という。
)から,折り込みチラシ制作等の役務
提供を受けた事実がないのに,B等に対し,架空の折り込みチラシ制作等に係る広告宣伝費(本件架空広告宣伝費)を支払った。なお,本件架空広告宣伝費の金額については争いがある。
(4)

確定申告等
原告は,本件各事業年度に係る法人税について,別表5-1~同5-5の
各確定申告欄のとおり,各法定申告期限内に確定申告を行った(乙1~5)

原告は,平成23年3月期に係る法人税について,別表5-2の修正申告欄のとおり,平成23年11月30日に修正申告を行い,また,平成26年3月期に係る法人税について,別表5-5の修正申告欄のとおり,平成27年4月20日に修正申告を行った(乙6,7)

(5)

更正処分等
枚方税務署長は,平成27年4月22日付けで,原告に対し,原告が平成22年3月期において本件リベートを収入から除外していたことが,法
人税法127条1項3号に該当するとして,本件青色申告承認取消処分をした(乙8)


原告は,平成27年5月22日,大阪国税局長に対し,本件青色申告承認取消処分に対する異議申立てをしたが,大阪国税局長は,平成28年6月24日付けで,上記異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲8,9)。


枚方税務署長は,平成28年7月7日付けで,原告に対し,原告が,本件各事業年度において,本件リベートを雑収入として計上せず,益金の額
に算入しなかったこと,平成23年3月期から平成26年3月期までの各事業年度において,本件架空広告宣伝費を支払って計上し,損金の額に算入していたことなどを理由として,別表5-1~同5-5の各更正処分等欄のとおり,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした(甲1~5)


枚方税務署長は,平成26年3月期に係る法人税について,別表5-5の再更正処分欄のとおり,本件訴え提起後の平成29年10月24日付けで,原告に対し,再更正処分をした(乙9)


原告は,平成28年7月28日,国税不服審判所長に対し,本件青色申告承認取消処分並びに本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に対する
審査請求をしたが,国税不服審判所長は,本件訴え提起後の平成31年1月11日付けで,
上記審査請求を棄却する旨の裁決をした
(甲7,
乙32)

(6)

本件訴えの提起
原告は,平成29年7月7日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

(7)

原告及びCに対する起訴
大阪地方検察庁検察官は,原告を法人税法違反の罪で,Cを法人税法違反
及び会社法違反(特別背任)の各罪で,平成29年1月13日,それぞれ大阪地方裁判所に起訴した(以下本件刑事事件という。。法人税法違反と)
して起訴された逋脱額は,平成24年3月期が1310万3700円,平成25年3月期が1314万3400円,平成26年3月期が889万3100円であったところ,これらは本件架空広告宣伝費に関するものであり,本件リベートに関するものは含まれていない。
(甲15)
(8)

原告のCらに対する民事訴訟等


原告は,Cから,Cの原告に対する損害賠償債務に対する支払として,平成26年9月から同年12月までの間に,合計3億0470万0335円相当の金員及び株式を受領した(甲59,乙30)



原告は,Cに対し,Aからの本件リベートの受領及びB等に対する本件架空広告宣伝費の支払(以下本件各不法行為という。
)等により既払金
を除き4億0317万2653円の損害を受けたとして,Hに対し,本件架空広告宣伝費の支払により1億3252万3650円の損害を受けたとして,Kに対し,本件架空広告宣伝費の支払により4835万8800
円の損害を受けたとして,それぞれ不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起し(以下,これら3件の民事訴訟を併せて別件民事訴訟という。,同裁判所は,平成30年4月27日,原告のCに対す)
る請求につき1億8515万3551円を,原告のHに対する請求につき7748万0262円を,
それぞれ認容する旨の判決を言い渡した。
Cは,

上記判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したが,同裁判所は,平成31年3月27日,原告のCに対する請求につき,1億5515万3551円(原審の認容額から,原告のHに対する請求について成立した訴訟上の和解に基づき支払われた金額を控除した金額)を認容する旨の判決を言い渡した。
(甲31,59,乙30,弁論の全趣旨)

4
争点
(1)

本件青色申告承認取消処分について
法人税法127条1項3号の取消事由の有無(争点1)

(2)

本件各更正処分及び本件各賦課決定処分について
本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各事業年度の益金の額に算入すべきか否か(争点2)
イ5
本件各更正処分の適法性(争点3)

争点に対する当事者の主張
(1)

争点1(法人税法127条1項3号の取消事由の有無)について

(被告の主張)
AからCが受領した本件リベートが,原告に帰属するか否かについては,法人税法11条の趣旨が,法律上の名義と実質所得者とが遊離している場合には,経済的実質に従ってその所得を実質的に享受する者の所得として課税する点にあることに鑑みれば,実質的観点をも踏まえて,法人がそれを享受する法律上の権利を有するといえるか否かによって判断すべきであり,具体
的には,リベートを受領した者の法律上の地位及び権限のほか,相手方がリベートを交付した趣旨,目的及び経緯,並びにリベートと法人の業務との関連性の程度等の事情を検討して判断すべきである。
本件リベートは,Cの前任者であるLが,広告宣伝業務の発注権者であった頃から,広告宣伝費等の概ね一定の割合の割戻しとして支払が始まり,同
人からCが引継ぎを受けることにより連綿とその支払が継続される中で,支払がなされたものであり,GないしAがCに対して個人的な支払を行ったものではない。そして,Aが本件リベートを支払っていた趣旨ないし目的は,原告からの広告宣伝業務の受注関係を継続することにあったものと解され,その支払先であるCは,本件各事業年度において,Aに対する広告宣伝業務
の発注権限を有する原告の代表取締役であったことから,本件リベートの支払がCの原告における業務権限と強い関連性を有することは明らかである。そうすると,原告が本件リベートに係る収益を享受する法律上の権利を有するといえることから,本件リベートに係る収益は原告に帰属すると認められる。

それにもかかわらず,原告は,平成22年3月期に係る帳簿書類に本件リベートを雑収入として計上していなかったことが認められる。したがって,原告は,その事業年度に係る帳簿書類に取引の一部を隠ぺいして記載し又は記録したものとして法人税法127条1項3号の取消事由が認められる。(原告の主張)
G及びCは,本件リベートはあくまでAからCに対する個人的な支払である,具体的な金額や受領時期は分からないなどと述べていたこと,本件リベートの支払はいわば賄賂の支払というべき性格のものであり,Cの代表取締役の職務とは何らの関連性もないこと,Cは,原告の代表取締役に就任する以前に営業部長として勤務していた時からF又はAからリベートを受領して個人的な所得としていたのであり,Cの本件リベートの受領はCが代表取締
役に就任したことによるものではないことなどからすると,本件リベートはCに帰属するものというべきであって,原告に帰属していたとはいえない。したがって,原告が平成22年3月期に係る帳簿書類に本件リベートを雑収入として計上すべきであったとはいえず,法人税法127条1項3号の取消事由は認められないから,本件青色申告承認取消処分は違法である。
(2)

争点2(本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各
事業年度の益金の額に算入すべきか否か)について
(被告の主張)

横領等の不法行為により法人が取得する損害賠償請求権は,
原則として,
当該不法行為に係る損失を損金の額に算入すべき事業年度の益金の額に
算入すべきであり,その事業年度に算入しないことが許されるのは,当該不法行為の加害者を知ることが困難であるとか,権利内容を把握することが困難であるなどの理由により,未だ権利実現の可能性を客観的に認識することができたとはいえない場合に限られるというべきである。そして,この判断は,税負担の公平や法的安定性の観点から客観的にされるべきも
のであるから,通常人を基準として,権利(損害賠償請求権)の存在・内容等を把握し得ず,権利行使を期待することができないといえるような客観的状況にあったかどうかという観点から判断すべきである。
原告は,その代表取締役であったCの本件各不法行為によって,本件リベート及び本件架空広告宣伝費に相当する金額の損害を被っているところ,代表取締役は,株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するとされていること(会社法349条4項)等に照らせば,代表取締役の行為は,その意思に基づくものである限り,代表権限の濫用があったとしても,株式会社の意思に基づく行為であるというべきである。したがって,原告の代表取締役であったCの本件各不法行為は原告の行為というべきであって,原告にとって損害賠償請求権の存在及び内
容は明らかであるから,当該不法行為に基づく損害賠償請求権の実現可能性を客観的に認識することができたといえる。
よって,本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権は,本件各不法行為により損害が生じた本件各事業年度において,当該損害と同額の金額を益金の額に算入すべきである。

イ(ア)

原告は,Dその他の原告の関係者らが本件各不法行為を確知するこ
とは不可能であったから,それらの者による上記損害賠償請求権の行使を期待し得ない状況であったなどと主張するが,上記アのとおり,本件各不法行為が原告の代表取締役であったCによるものである以上,原告にとって損害賠償請求権の存在及び内容は明らかというべきであるから,原告が主張するように,Dらが本件各不法行為を確知することが不可能であったとしても,そのことによって,上記損害賠償請求権をその損害が生じた本件各事業年度に算入しないことが許容されることにはならない。仮に,この点を措くとしても,本件刑事事件に係る大阪地方裁判所平成29年12月14日判決(乙26)によれば,Dは,原告に出勤し
た上,
原告の本件各事業年度の決算書の交付を受けてその内容を把握し,広告宣伝費の金額の多さに不信を抱いてCに説明を求めるなどしたが,結局そのまま黙認していたなどと認定されているのであり,これらの事情からすれば,Dその他の原告の関係者らにおいて,本件架空広告宣伝費について十分吟味検討すれば,Cの不法行為を認識することができたといえ,さらに,それを契機に,本件リベートについても認識することができたということができる。したがって,原告の上記主張には理由が
ない。
(イ)

また,原告は,本件架空広告宣伝費のうち,共同不法行為者である
B等からCに還流された金額が不明であること,C及びB等が共同不法行為を否定していることなどを理由に,本件架空広告宣伝費に係る損害賠償請求権を本件各事業年度の益金の額に算入することはできない旨主
張するが,Cに対する本件架空広告宣伝費相当額の損害賠償請求権が,B等との共同不法行為に基づくものであったとしても,Cにその全額の賠償を求めることができ(民法719条1項)
,また,B等がCに金員を
還流させたとしても,上記損害賠償請求権の金額には影響しないから,原告の上記主張には理由がない。

(原告の主張)

本件各事業年度における確定申告は,Cの代表取締役在任中に行われているところ,そのCが本件各不法行為をしていることから,Cが原告の代表者として,自己及び共同不法行為者であるAやB等を相手に損害賠償請
求権を行使することはあり得ず,また,Dら,原告の経理担当者及び顧問税理士等が本件各不法行為を確知することは不可能であったから,それらの者による上記損害賠償請求権の行使も期待し得ない状況であった。Cが原告の代表取締役であったからといって,Cの個人的な犯罪行為が原告の行為となることはない。

また,原告はDらが支配する会社であったのであり,Cは,本件各事業年度当時,原告の代表取締役であったとはいえ,Dらから経営を委託されているだけの存在にすぎなかった。このような立場にあったCによる本件各不法行為は,原告の行為と評価されるべきでない。
したがって,本件各不法行為により損害が生じた本件各事業年度において,当該損害と同額の金額を益金の額に算入することは不可能であった。イ
また,G及びCは,本件リベートはあくまでAからCに対する個人的な支払である,
具体的な金額や受領時期は分からないなどと述べていたため,
原告がこれらを認識することはできなかったこと,原告とC及びB等の間で,架空の広告宣伝費の範囲につき争いがあり,別件民事訴訟において初めて確定されること,本件架空広告宣伝費のうち共同不法行為者であるB等からCに還流された金額が不明であること,C及びB等が共同不法行為
を否定していることなどからすれば,本件各不法行為により原告が被った損害額や損害賠償義務者が誰であるかなどについては,別件民事訴訟の判決の確定を待たなければ認識し得ないから,原告が上記損害賠償請求権を行使することが可能となるのは,
上記訴訟の判決確定時というべきである。
したがって,上記判決が確定した事業年度において,確定した損害と同
額の金額を益金の額に算入すれば足りるというべきであり,本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各事業年度の益金の額に算入すべきとはいえない。
(3)
争点3(本件各更正処分の適法性)について

(被告の主張)
Cが本件各事業年度において受領した本件リベートの金額は別表1のとおりであり,本件リベートの金額は雑収入の計上漏れであるため,当該金額を本件各事業年度の所得金額に加算する必要がある。また,平成23年3月期から平成26年3月期までの各事業年度において原告がB等に支払った本件
架空広告宣伝費は別表2~4記載のとおりであり,本件架空広告宣伝費の金額を過大計上しているため,当該金額は損金の額には算入し得ないから,当該金額を上記各事業年度の所得金額に加算する必要がある。さらに,平成23年3月期から平成26年3月期までの各事業年度については,本件青色申告承認取消処分に伴い,中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金差入の特例を定めた平成27年法律第9号による改正前の租税特別措置法67条の5第1項の規定を適用し得なかったこととなるから,減価償却超過額(原告が当該各事業年度において損金の額に算入した償却費のうち法人税法31条1項の定める償却限度額を超える金額)を所得金額に加算する必要がある。以上を前提に,原告の本件各事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき税額に関する算出過程を示したものが,別表6である(なお,本件
各事業年度においては,本件各不法行為により原告に本件リベートの金額及び本件架空広告宣伝費と同額の損失が生じているとして,これを損金の額に算入するとしても,上記争点2で主張したとおり,同じ年度において同額を益金の額に算入すべきこととなるから,結局,別表6記載の所得金額等が左右されることはない。。

平成22年3月期から平成24年3月期まで,平成26年3月期に係る各
更正処分における所得金額及び納付すべき税額(別表5-1~同5-3の各更正処分等欄,別表5-5の再更正処分欄)については,原告の当該各事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき税額と同額であり,また,平成25年3月期に係る更正処分における所得金額及び納付すべき税額(別表5-4の更正処分等欄)については,原告の当該事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき税額と同額又はこれを下回っているから,本件各更正処分(ただし,平成26年3月期については,平成29年10月24日付け再更正処分により一部取り消された後のもの)はいずれも適法である。

(原告の主張)

上記争点1で主張したとおり,本件リベートはC個人に帰属するものであり,本件リベートの金額は雑収入の計上漏れとはならない。Cによる本件リベートの受領により原告はCに対しその金額と同額の損害賠償請求権を取得したが,上記争点2で主張したとおり,これを益金の額に算入すべき時期は,原告のCに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の判決確定時であるから,本件各事業年度においてこれを計上する必要はない。
また,
本件架空広告宣伝費については,
過大計上であるとしても,
原告は,
Cによる本件架空広告宣伝費の支払によりそれと同額の損失を負っている。そして,Cに対する上記不法行為に係る損害賠償請求権を益金の額に算入すべき時期は,上記争点2で主張したとおり,別件民事訴訟の判決確定時であるから,結論として,原告申告に係る所得金額に誤りはない。
したがって,本件各更正処分(ただし,平成26年3月期については,平成29年10月24日付け再更正処分により一部取り消された後のもの)のうち申告額を超える部分は違法である。

枚方税務署長が認定した本件リベートの金額及び受領時期並びに本件架空広告宣伝費の金額は否認ないし争う。上記争点2で主張したとおり,本
件各不法行為により原告が被った損害額等については別件民事訴訟の判決の確定を待たなければ明らかとならない。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実に加え,各掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)

当事者等
Dは,自らが創業した株式会社M(以下Mという。
)の経営状態が悪
化したことを受けて,平成4年12月7日に原告を設立し,原告において
Mの事業を引き継ぎ,戸建て住宅の建築・販売等を行うようになった(甲26,56,乙10)


Cは,Mに従業員として入社したが,原告設立後,平成18年3月31日に原告の代表取締役に就任し,
本件各事業年度当時,
その地位にあった。
なお,本件各事業年度当時,原告の発行済株式総数1200株のうち1100株はEが保有し,その余の100株はCが保有していた。
(甲26,5
6,乙10,11,弁論の全趣旨)

(2)

Cによる本件リベートの受領


Mは,約30年前にFとの取引を開始し,同社に対し広告宣伝文書の作成等を依頼していたところ,Fの代表取締役であったGは,Mとの取引の開始後間もなくして,その取引を円滑に行うことを目的として,Mの広告宣伝業務の発注権限を有し,当時専務であったLに対し,MからFに各月
に支払われる広告宣伝費等の3%の金額をバックリベートとして支払うことを持ちかけ,同人にバックリベートを継続的に支払うようになった(甲24,57,乙13,15,27)


その後,Mの営業部長であったCがLの後任としてFとの取引の担当者となったため,上記バックリベートはCに支払われるようになった。その
際,バックリベートの割合は3%から2%に変更され,具体的には,MがFに対して支払う各月の広告宣伝費等から,その3%の金額に相当する金額を調整額として控除し,その控除後の金額の2%から,その2%の金額の10%に相当する金額を源泉徴収税額という名目で控除し,端数を切り捨てた金額,すなわち,MがFに対して支払う各月の広告宣伝費等の1.
746%に相当する金額とされた。なお,この算出方法については,専らGが決定したものであるが,Cも,各月の広告宣伝費等の2%程度の金額がバックリベートとして支払われていることを認識していた。甲24~2(
6,56,57,乙13,15,27)

Gは,平成20年頃から,Fで行っていた広告宣伝文書の作成業務等の事業活動をAで行うようになったため,それ以降,原告は,Aに対して広告宣伝文書の作成業務等を依頼するようになった。原告は,FないしAにとって主要な取引先であった。
原告がMの事業を引き継いだ後,また,原告の発注先がFからAに変更された後も,
上記バックリベートの支払は継続されていたが,
その支払は,
引き続き,Fの資金から出捐されていた。具体的には,原告からAに対し
各月の広告宣伝費等の支払がされた日に,上記方法により算出された金額の現金がFの預金口座から引き出され,GからCに現金で支払われていた。ただし,Gは,Fの預金口座から引き出されたリベートを,毎月Cに支払うこともあれば,
手元である程度貯めた後にCに支払うこともあった。
(以
上につき,甲24~26,56,57,乙12~16,27~29)

本件各事業年度において,GからCに対して支払われた本件リベートの具体的な金額は,別表1に記載のとおりである(乙14,16,27~29)

なお,原告は,本件リベートの金額が別表1に記載のとおりであること
を否認するが,Aの代表取締役であるNは,税務調査時に,本件リベートの具体的な計算方法やその原資等について回答しているところ(乙27),
その内容に不自然・不合理な点は見当たらず,その回答内容に沿うFの元帳等の客観的証拠(乙28,29)やFの経理を担当していたNの妻の回答(乙16)も存在するほか,税務調査時のC及びGの回答も,本件リベ
ートの広告宣伝費等に占める割合,金額及び受領時期等に関して,これらの各証拠と概ね整合するものであったこと(乙13~15)からすれば,本件リベートの客観的な金額は別表1に記載のとおりであったと認められる(そもそも,原告自身,別件民事訴訟において,本件リベートの金額が別表1に記載のとおりであることを前提としてCに対し同額の損害賠
償請求をしているのであって(乙30・別紙9参照)
,本件リベートの客観
的な金額が別表1に記載のとおりであったことは,実質的に,原告も認めるところであるということができる。。


Cは,原告の経理担当者に対して本件リベートの受領を知らせたり,原告の預貯金口座に本件リベートを入金したりすることなく,これを個人的に費消した。本件リベートは,本件各事業年度において,原告の帳簿書類に雑収入として計上されることはなかった。
(甲26,57,乙13,弁論

の全趣旨)
(3)

原告のBに対する広告宣伝費の支払
原告は,平成23年3月期から平成25年3月期までの各事業年度におい
て,Bから折り込みチラシ制作等に係る役務提供を受けたとして,原告宛てのB名義の折り込みチラシ制作費等に係る請求書に基づき,B名義の普通預金口座に,請求書記載の金額を振り込んで支払い,これを広告宣伝費として損金の額に算入していた。
しかしながら,上記請求書に記載された請求金額のうち,折り込みチラシ制作費については,Bから原告に対して何らの役務提供も行われておらず,
架空の売上げを請求したものであり,Bは,折り込みチラシ制作費として振り込まれた金銭(消費税相当額を含む。
)を,Cに支払っていた。上記の架空
請求は,CがBに対し依頼して行われたものであった。Bに対する架空の広告宣伝費の金額は,別表2に記載のとおりである。
(以上につき,甲26,3
3,35,乙12,13,17,18)

(4)

原告のHに対する広告宣伝費の支払
原告は,平成25年3月期及び平成26年3月期の各事業年度において,
Hから折り込みチラシ制作等に係る役務提供を受けたとして,原告宛てのI名義の折り込みチラシ制作費等に係る請求書に基づき,H名義の普通預金口座に,請求書記載の金額を振り込んで支払い,これを広告宣伝費として損金の額に算入していた。
しかしながら,上記請求書に記載された請求金額のうち,折り込みチラシ制作費については,Hから原告に対して何らの役務提供も行われておらず,架空の売上げを請求したものであり,Hは,折り込みチラシ制作費として振り込まれた金銭(消費税相当額を含む。
)を,Cに支払っていた。上記の架空
請求は,CがHに対し依頼して行われたものであった。Hに対する架空の広告宣伝費の金額は,別表3に記載のとおりである。
(以上につき,甲26,3

3,35,乙12,13,18,19)
(5)

原告のKに対する広告宣伝費の支払
原告は,平成25年3月期及び平成26年3月期の各事業年度において,
Kからポスティングチラシ制作等に係る役務提供を受けたとして,原告宛てのJ名義のポスティングチラシ制作費等に係る請求書に基づき,K名義の普
通預金口座に,請求書記載の金額を振り込んで支払い,これを広告宣伝費として損金の額に算入していた。
しかしながら,上記請求書に記載された請求金額については,Kから原告に対して何らの役務提供も行われておらず,架空の売上げを請求したものであり,Kは,ポスティングチラシ制作費等として振り込まれた金銭(消費税
相当額を含む。
)を,Cに支払っていた。上記の架空請求は,CがKに対し依
頼して行われたものであった。Kに対する架空の広告宣伝費の金額は,別表4に記載のとおりである。
(以上につき,
甲26,
34,
35,
乙12,
13,
20,21)
2
争点1(法人税法127条1項3号の取消事由の有無)について
(1)

本件リベートの帰属について
バックリベートの帰属に関する判断枠組み
法人税法の課税標準の計算上,事業から生じた収益に係る所得が誰に帰属するかについては,実質上その収益を誰が享受するかによって判断すべ
きであるところ(実質所得者課税の原則。法人税法11条参照)
,バックリ
ベートに係る収益が,当該事業主体である法人に帰属するか,バックリベートを現実に受領した個人に帰属するかの判断に当たっては,バックリベートが支払われることとなった経緯や目的,バックリベート支払の根拠や算出方法,バックリベートを現実に授受した者の法律上の地位・権限,バックリベートと法人の事業との関連性の程度,取引関係者の認識,バックリベートの使途等,バックリベートの授受に関する諸般の事情を総合的に
考慮して,法律上,当該バックリベートを享受する権利ないし地位をいずれが有するかによって判断すべきである。

本件リベートについての判断
上記認定事実(2)のとおり,
本件リベートは,
MとFとの取引開始後間も

なくの頃から,同取引を円滑に行うことを目的として,約30年もの長期間にわたり継続的かつ定期的にバックリベートの支払が行われてきた中で,本件各事業年度において授受されたものであり,このようにバックリベートが長年にわたり授受されてきたことによって,Mないし原告とFないしAとの間の取引関係が維持されてきたものと評価することができる。
また,上記バックリベートは,Aの実質的経営者であり,かつ,Fの代表取締役であるGから,Mないし原告において,
専務や営業部長とい
った相応の肩書ないし地位を有し,FないしAとの間の取引について発注権限を有していたL及びCに支払われていたものであり,その後,Cは原告の代表取締役となってからも上記バックリベートの支払を受け続けて
いたものである。そして,その金額は,原告がAに各月に支払う広告宣伝費等の金額に一定の割合を乗じる方法によって算出されていたというのである。これらの事情によれば,本件リベートは,原告からAに支払われた広告宣伝費等の一部が,両社間の合意に基づいて原告に割り戻されたものとみるのが自然であるから,原告とAとの間の取引に密接に関連するも
のといえるのであって,原告の事業から離れてC個人に対して支払われた個人的な謝礼などといった性質を有するものと評価することは困難であるといわざるを得ない。
これに対し,原告は,Cは原告の代表取締役に就任する以前に営業部長として勤務していた時からF又はAからリベートを受領し,個人的な所得としていたことなどからすると,本件リベートはC個人に帰属するというべき旨主張するところ,確かに,上記認定事実(2)によれば,Cは営業部長
であった時からF又はAからリベートを受領していたこと,Cは本件リベートの受領を原告の経理担当者に知らせるなどすることなく,これを個人的に費消していたことが認められるほか,Gもこのことを認識した上で本件リベートをCに交付していたものと推認される。しかしながら,上記のとおり,Cの前にGからバックリベートを受け取っていたLも,営業部長
であった当時のC自身も,FないしAとの間の取引についての発注権限を有していたほか,その肩書からしても,原告において相応の地位にあったものと認められることからすれば,上記各事情をもって,本件リベートがCに対する個人的な謝礼などといった性質を有するものと評価すべき根拠となるということはできない。

以上によれば,本件リベートは,原告に帰属するものと認めるのが相当である。
なお,原告は,大阪地方検察庁検察官は,原告を法人税法違反の罪で起訴しているところ,起訴に係る逋脱額は本件架空広告宣伝費に関するものであり,本件リベートに関するものは含まれていないことなどを理由に,
本件リベートを原告の雑収入として計上すべきであったとはいえない旨主張するが,起訴・不起訴の判断及び起訴状記載の公訴事実に係る訴因の設定は検察官の裁量に委ねられており
(刑事訴訟法247条,
248条)

検察官による起訴が税務署長の認定・判断を拘束する効力を有しないことは明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。
(2)

法人税法127条1項3号の取消事由の有無について

ある収益をどの事業年度に計上すべきかは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり,これによれば,収益は,その実現があった時,すなわち,その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解される(権利確定主義。最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照)上記認定説示の。

とおり,本件リベートは,本件各事業年度当時,原告がAとの取引の対価として各月に支払っていた広告宣伝費等の金額を基に,両社間で合意していた一定割合を乗じて算出した金額であったことに加え,原告からAに対し各月の広告宣伝費等が支払われた日に,同広告宣伝費等に係る本件リベートがFの預金口座から引き出されていたことからすれば,遅くともこの
時点で権利が確定したとして,本件リベートを本件各事業年度の収益に計上すべきであったと解することができる。そして,証拠(乙14,16,27~29)によれば,原告からAに対し各月の広告宣伝費等が支払われた日は,別表1に記載のとおりであったと認められるから,原告は,同表記載の日にそれぞれ権利が確定したとして,本件リベートを本件各事業年
度の収益に計上すべきであったというべきである。

以上によれば,原告は,別表1記載のとおり,平成22年3月期において,Aから本件リベートを受領していたにもかかわらず,これを帳簿書類に記載せず,本件リベートに係る金額を除外していたことが認められるから,
原告は,
その事業年度に係る帳簿書類に取引の一部を隠ぺいして記載し又は記録したものとして,法人税法127条1項3号の取消事由が認められる。
したがって,本件青色申告承認取消処分は適法である。
3
争点2(本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各事業年度の益金の額に算入すべきか否か)について
(1)

判断枠組み
本件各不法行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各事業年度の益金の額に算入すべきか否かについては,上記2(2)で説示した権利確定主義に基づいて判断すべきであるところ,ここでいう権利の確定とは,権利の発生とは同一ではなく,権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性を客観的に認識することができるようになることを意味するものと解すべきである。そして,不法行為に基づく損害賠償請求権については,通常,不法行為による損失が発生した時には同額の損害賠償請求権も発生,確定しているから,不法行為による損失については当該損失が生じた事業年度の損金の額に算入し,これと同時に取得する損害賠償請求権も同事業年度の益金の額
に算入すべきであると解される。
(2)

検討
まず,原告が本件各事業年度にAから受領した別表1記載の本件リベートの金額は,本件各事業年度の益金の額に算入すべきであったにもかかわらず,Cがこれを費消していることから,不法行為により同額の損失が生じているとして,法人税法22条3項3号に基づき,当該不法行為があっ
た本件各事業年度の損金の額に算入すべきものと解される。
また,原告が平成23年3月期から平成26年3月期までの各事業年度にB等に対して支払った別表2~4記載の本件架空広告宣伝費の金額は,法人税法22条3項に規定する損金の額に該当しないため,上記各事業年度の損金の額に算入することができず,他方,その支払がCの横領行為又
は背任行為に該当し,不法行為により同額の損失が生じているとして,同項3号に基づき,その支払を行った上記各事業年度の損金の額に算入すべきものと解される。

そして,原告は,本件リベートの領得行為を行ったCに対し,また,本件架空広告宣伝費の支払を行ったC及びB等に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を有するところ,代表取締役は,株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し
(会社法349条4項)株

式会社の意思決定機関として包括的権限を有することからすれば,代表取締役が株式会社の業務に関して行った行為は,代表取締役の意思に基づくものである限り,その権限の濫用があったとしても,株式会社の行為であるというほかない。したがって,原告の代表取締役であったCの本件各不
法行為は,原告の業務に関して,Cの意思に基づいて行われたものであるから,原告の行為というべきであって,そうすると,原告にとって損害賠償請求権の存在及び内容は明らかであったといえるから,当該不法行為に基づく損害賠償請求権の実現可能性を客観的に認識することができたといえる。

したがって,原告は,本件各不法行為による損失については当該損失が生じた本件各事業年度の損金の額に算入し,これと同時に取得するCに対する損害賠償請求権も同事業年度の益金の額に算入すべきであったといえる。
なお,損害賠償請求権がその取得当初から全額回収不能であることが客
観的に明らかである場合には,これを貸倒損失として扱い,法人税法22条3項3号にいう当該事業年度の損失の額として損金に算入することが許されるというべきであるが(最高裁昭和43年10月17日第一小法廷判決・裁判集民事92号607頁,最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決・民集58巻9号2637頁参照)
,上記前提事実(8)アのとおり,

Cは,平成26年9月から同年12月までの間に,原告に対し,約3億円を弁済していることなどからすれば,原告のCに対する損害賠償請求権がその取得当初から全額回収不能であることが客観的に明らかである場合とはいえない。
(3)

原告の主張に対する判断
原告は,本件各事業年度における確定申告は,Cの代表取締役在任中に行われているところ,そのCが本件各不法行為をしていることから,Cが原告の代表者として,自己及び共同不法行為者であるAやB等を相手に損害賠償請求権を行使することはあり得ない,Cが原告の代表取締役であったからといって,Cの個人的な犯罪行為が原告の行為となることはないなどと主張する。しかしながら,原告が本件各事業年度において本件各不法
行為に基づく損害賠償請求権の実現可能性を客観的に認識することができたといえることは上記説示のとおりであって,本件各不法行為の加害者であるCが,原告の代表取締役として損害賠償請求権を行使することが事実上期待し難いなどの事情は,納税者自身の主観的な事情にすぎないから,原告の上記主張は採用することができない。


原告は,原告はDらが支配する会社であったのであり,Cは,本件各事業年度当時,原告の代表取締役であったとはいえ,Dらから経営を委託されているだけの存在にすぎなかったから,このような立場にあったCによる本件各不法行為は,
原告の行為と評価されるべきでないなどと主張する。
しかしながら,Cが,本件各事業年度当時,原告の代表取締役であったこ
とは明らかであり,本件全証拠を精査しても,業務執行権限が与えられていない名目的な存在にすぎなかったなどといった事情は認められないから,原告の上記主張は採用することができない。

原告は,本件架空広告宣伝費のうち共同不法行為者であるB等からCに還流された金額が不明であることなどからすれば,本件各不法行為により原告が被った損害額や損害賠償義務者が誰であるかなどについては,別件民事訴訟の判決の確定を待たなければ認識し得ないから,原告が上記損害賠償請求権を行使することが可能となった時点は,上記訴訟の判決確定時というべきであるなどと主張する。しかしながら,上記説示のとおり,原
告にとって本件各不法行為による損害賠償請求権の存在及び内容は明らかである上,原告は,CとB等が共謀して原告に本件架空広告宣伝費を支払わせた時点で,これに相当する金額の損害を負っているのであって,B等からCにいくら還流したかは,原告の損害賠償請求権に何ら影響を及ぼさないから,原告の上記主張は採用することができない。
4
争点3(本件各更正処分の適法性)について
原告は,本件において取消しを求める本件各更正処分の適法性に係る被告の
主張について,上記争点を除き,争うことを明らかにせず,本件記録によっても,被告の上記主張に不合理な点は見当たらない。
5
本件各賦課決定処分の適法性
(1)

国税通則法68条1項は,
過少申告をした納税者が,
その国税の課税標準

等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮
装し,その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,その納税者に対して重加算税を課することとしているところ,既に説示したところによると,原告の代表取締役であったCは,本件リベートが原告に帰属するにもかかわらず,本件リベートを帳簿書類に記載せず,雑収入として計上すべき金額を除外することにより,原告が本件リベートを受領
した事実を隠ぺいしたものと認められるとともに,B等に依頼して,役務提供を伴わない架空の内容を記載した請求書を発行させ,これに基づき本件架空広告宣伝費を支払い,これを広告宣伝費として帳簿書類に記載することにより,本件架空広告宣伝費に係る取引があたかも存在したかのように事実を仮装したものと認められるから,国税通則法68条1項所定の要件に該当す
るものと認められる。
(2)

原告は,本件において取消しを求める本件各賦課決定処分の適法性に係
る被告の主張について,上記(1)の点を除き,特段争うことを明らかにせず,本件記録によっても,被告の上記主張に不合理な点は見当たらない。第4

結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

松永
裁判官

森田
裁判官

渡邊栄治亮
(別紙1省略)

直樹
(別紙2)
関係法令の定め
1
法人税法
(1)

11条は,資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が
単なる名義人であって,その収益を享受せず,その者以外の法人がその収益を享受する場合には,その収益は,これを享受する法人に帰属するものとして,この法律の規定を適用する旨規定する。
(2)

22条2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度
の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規定する。
22条3項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,次に掲げる額と
する旨規定し,同項1号は当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額を,同項2号は

前号に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

を,同項3号は当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものを,それ
ぞれ掲げている。
22条4項(平成30年法律第7号による改正前のもの)は,同条2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定する。(3)

127条1項3号(平成27年法律第9号による改正前のもの。本文にお
いても同じ。
)は,同法121条1項(青色申告)の承認を受けた内国法人に
つき,その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録し,その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合には,納税地の所轄税務署長は,当該事業年度までさかのぼって,その承認を取り消すことができる旨規定する。
2
国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。本文においても同じ。

68条1項は,同法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条5項の適用がある場合を除く。
)において,納税者がその国税の課税標準等又
は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,
その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対し,政令で定めるところにより,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし,又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは,当該隠ぺいし,又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計
算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定する。
以上

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