判例検索β > 令和1年(わ)第274号
殺人
事件番号令和1(わ)274
事件名殺人
裁判年月日令和2年6月2日
裁判所名・部高知地方裁判所
裁判日:西暦2020-06-02
情報公開日2020-06-26 16:00:14
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令和2年6月2日宣告
殺人被告事件
主文
被告人を懲役15年に処する
未決勾留日数中80日を上記刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,平成28年6月頃からAと交際するようになり,令和元年5月,同人と入籍し,その娘を連れて名古屋に駆け落ちしたが,その後,婚姻関係は破綻し,同年8月頃,Aらが高知県に戻り,被告人との連絡を断ったため,インスタグラムを介し,シングルマザーになりすまして同人に接触し,同年11月20日,高知市ab番地c所在のホテルdに同人をおびき寄せた。
被告人は,Aに復縁を迫ったものの,これを断られたため,同人が他の男性のものになるくらいなら殺してしまおうと決意し,同日午後5時頃,上記ホテルにおいて,殺意をもって同人(当時22歳)の頸部を両手で数分間にわたって絞め続け,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させたものである。
(量刑の理由)
被告人は,殺人罪という重大事件を犯したものである。
その犯行態様は,数分間にわたって,被害者の首を強く絞め続け,被害者が痙攣し,動かなくなっても,なお絞め続けるという,執拗かつ残虐なものであり,強固な殺意に基づく高度の危険性を有している。その結果,被害者は死亡しているところ,その苦痛や若くして命を奪われたという無念さは,計り知れない。犯行動機についてみても,一旦は婚姻関係にあった被害者との関係が破綻し,被害者が離れて行ってしまうのであれば,殺害するのもやむなしという短絡的かつ自己中心的なものであり,同情の余地は全く存しない。この点について弁護人は,被告人は不遇な境遇の中で成長し,一筋の光明として被害者に出会ったものであり,被害者に対する思いを断ち切れず,パニックに陥った末の衝動的・突発的犯行である旨主張するが,殺害するに際して,被害者にじゃれあうように装って布団をかけ,被害者に馬乗りになってその身体の自由を束縛し,犯行に及んでいることなどに照らし,パニックになっていた様子は窺われない。成育歴についてみても,本件が結局のところ,自己中心的な動機に基づくことを考慮すると,特に汲むべき事情になるとは解し難い。
以上によれば,本件は,男女関係(DVを除く)を動機とする,被害者1名,凶器不使用などの殺人事件の中では,懲役14年ないし15年の範囲で処断するのが相当な事案である。
そこでさらに検討するに,被告人は,本件後自首しており,当公判廷において,反省の弁を述べているものの,被害者やその遺族に対して,慰藉の措置はとられておらず,これについて,首肯しうる説明もなされていないことを考慮すると,被告人が本件を真摯に受け止め,その内省を深めているとは思われない。被害者の母親と兄は,被告人の厳重処罰を望んでいる。また,弁護人は,被告人が若く,更生の可能性があるとも主張する。被告人が更生するとは具体的にどのようなことを意味するかを考えてみると,被害者やその遺族に対する謝罪の気持ちを終生持ち続け,出所後は,まじめに稼働し,賠償に努め,他人に迷惑をかけない平穏な生活を送ることなどを意味すると解されるところ,上記のような被告人の反省状況,父親の監督がほとんど期待できないことなどに照らし,その途は相当険しいと思われるものの,被告人がまだ若く,これまで前科前歴を有していないことを考慮すると,心がけ次第では更生の途を歩むことを期待することはできると思われる。
そこで,これらの諸事情を考慮し,被告人を主文掲記の刑に処すのが相当と判断した。
令和2年6月2日
高知地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

𠮷井広幸
裁判官

堀内綾乃
裁判官

遠藤裕樹
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