判例検索β > 平成31年(わ)第135号
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反
事件番号平成31(わ)135
事件名入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反
裁判年月日令和2年3月23日
裁判所名・部福岡地方裁判所  小倉支部
裁判日:西暦2020-03-23
情報公開日2020-06-04 22:15:00
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主文
被告人を懲役1年6月に処する
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,築上町環境課長として,ごみ処理及びし尿に関する業務を掌理し,同町が発注する同課所管のし尿処理施設建設工事の入札において,入札参加資格条件を検討・提案する職務等に従事していた者であるが,その入札等に関する職務を適正に行う義務があるのに,これに反し,平成28年7月19日(以下特に記載のない限り,日付は平成28年のことを指す。)に同町が執行した築上町し尿処理施設建設工事(以下本件工事という。)の条件付一般競争入札(以下本件入札という。)に関し,電気,土木,清掃施設,機械器具設置工事等を業とする株式会社Aに本件工事を落札させる目的で
1
5月下旬頃から6月20日頃までの間,福岡県築上郡築上町大字ab番地築上町役場a支所において,本件入札に係る入札参加資格条件の案文を作成するに当たり,株式会社Aによる業者間の談合が容易になるよう入札参加資格を有する業者を少なくするため,建設業法27条の29の規定に基づく総合評定値の要件について,
土木一式工事及び機械器具設置工事の2業種で800点以上
などとしていた案に,清掃施設工事を追加し,3業種のいずれも900点以上に変更した案文を作成するなどし,同月20日,築上町長をして,同案文どおりの入札参加資格条件に決定させ

2
7月上旬頃,福岡県内又はその周辺において,株式会社Aの意向を受けた築上町議会議員Bに対し,面談又は電話で,入札に関する秘密事項である本件入札への参加資格確認申請を行った入札参加予定業者数及び同業者名を教示し
よって,同月19日,本件入札において,株式会社Aをして,本件入札の最低制限価格7億5742万円(税抜き)を上回る7億9450万円(税抜き)で本件工事
を落札させ,もって入札の公正を害すべき行為を行った。
(証拠の標目)

(事実認定の補足説明)
第1

弁護人は,判示の事実に関し,①被告人には,本件工事を株式会社Aに落札させる目的(判示柱書)及び入札参加資格を有する業者を少なくする意図(判示1)のいずれもなく,総合評定値の要件に清掃施設工事を追加し,点数を800点以上から900点以上に変更した案文を作成する行為(判示1)は,官製談合防止法8条にいう入札等の公正を害すべき行為には当たらない,さらに,②被告人は,Bに対して入札参加予定業者数及び同業者名を教示していない(判示2)
,したがって被告人は無罪であると主張する。
しかしながら,当裁判所は,判示のとおり認定したので,以下その理由を説明する。

第2

弁護人の主張①について

1
関係証拠によれば,
本件入札に至る経緯等に関し,
以下の事実が認められる。


本件工事は,規模の大きな公共工事であるところ,株式会社Aは,築上町が,本件工事の予算獲得のため,同社に対し,施設建設にかかる経費の概算見積の依頼を行ったことを契機に,受注に向けた営業活動を本格化させ,同町に対し,自社の受注に有利な発注方式の提案をしたり,建設コンサルタントとして官公署が発注する工事の概算設計や実施設計等を行う株式会社CのDを紹介したりするなどした。
そして,Dは,本件工事の概算設計及び実施設計を担当し,平成27年3月31日に概算設計を,2月26日に実施設計をそれぞれ完了させたが,株式会社Aは,Dを通じて,自社の落札に有利な入札参加条件や仕様書の内容となるように働きかけをするなどしていた。
さらに,5月下旬頃,株式会社AE支店F営業所長であったGは,Bに対
し,本件入札の入札参加資格業者数を少なくするよう築上町職員に対して働きかけをしてもらいたい旨依頼した。


築上町では,条件付一般競争入札の告示に当たり,まず,発注原課(本件入札では環境課がこれに当たる。が告示案の草案を作成し,

これを財政課管
財係が審査をして告示案を完成させた上,同町工事請負業者指名選考委員会(以下指名委員会という。
)の審議に諮るとされていたところ,4月1日
付けで環境課長に就任した被告人は,5月下旬頃,環境課環境係長であるHに対し,入札参加資格条件を含む本件入札告示案の草案作成を命じた。


Hは,その後,財政課管財係長であるIとの間で,数度にわたり草案についてのやり取りをした上で,6月8日,Iに対し,建設業法27条の29の規定に基づく総合評定値の要件を
土木一式工事機械器具設置工事
及び
の2業種でいずれも800点以上などとする草案を送付した。同草案に基づく入札参加可能業者数は16社となり,一般競争入札を行うに当たり十分な業者数となったことから,財政課管財係と環境課との間では,同草案のとおり入札参加資格条件を設定することで概ね話がまとまった。



そうしたところ,被告人は,Hに対し,入札参加資格条件をより厳しくし
た草案を作成するよう指示をし,Hは,かかる草案を作成する必要性を理解できなかったものの,
その指示に従い,
2つの草案を作成して,
6月15日,
Iに送付したが,被告人は,同日,更にHに対し,総合評定値の要件にこれまで掲げられていなかった
清掃施設工事
の業種を追加するよう指示した。
Hが,Iに対し,その旨伝えたところ,Iは,かかる変更をすると,入札参加可能業者数は10社になる旨返答をした。


Hは,6月16日,Iに対し,

本当の最終版です。

と題したメールで,総合評定値の要件に清掃施設工事の業種を追加した上,過去に施工実績を有する旨の要件を加え,入札参加可能業者数が8社となる草案(以下6月16日段階の草案という。)を送付した。

6月16日段階の草案は,指名委員会の委員長であるJ副町長の内諾を得たため(なお,同委員会の進行を円滑に行うため,完成した告示案を同委員会に諮問する前に,委員長である副町長の内諾を得るのが通例となっていた。,指名委員会における審議を経る段階となった。

⑹ア

そうしたところ,被告人は,6月17日,Hに対し,入札参加資格条件のうち,総合評定値800点以上とあるのを900点以上に変更
するよう指示した。
しかし,Hは,既に草案が概ねまとまった段階にあり,その変更の必要性はないと考え,
被告人の指示を拒否しつつ,
Iに対し,
総合評定値を
800点以上から900点以上に変更する旨の連絡はしたところ,Iから,変更するなら根拠を示すよう求められた。


そのため,被告人は,株式会社CのDに対し,6月16日段階の草案が妥当なものであるか意見を求めた。
Dは,自社が工事の設計等を行う業者であり,入札参加資格条件の適否を検討することはできなかったため,株式会社Aの担当者に対し,6月16日段階の草案を見せ,入札参加資格条件の妥当性について意見を求めたところ,株式会社Aの担当者は,総合評定値を800点以上から900点以上に変更するのが適当であることなどを指摘し,Dは,被告人に対し,その旨の変更が適当であることなどを連絡した。


そして,被告人は,Hを通じて,Iに対し,6月16日段階の草案を前記のとおり変更する旨伝えるとともに,Dに対し,前記変更の根拠となる株式会社C名義の意見書を作成するよう依頼したところ,
Dは,
同人自身,
総合評定値の変更の理由が分からなかったため,株式会社Aの担当者に対して,理由を記載した書面の作成を依頼し,その送られてきた書面を基に意見書を作成して,被告人に送付し,被告人は,これを財政課管財係に提出した。



6月20日,指名委員会が開催され,総合評定値が800点以上から900点以上に変更された草案が審議されて,告示案として承認され,町長への答申及びその決裁を経て,同月21日,告示案のとおり,本件入札が告示された。



そして,6月30日に株式会社KL支店が,7月1日に株式会社Aがそれぞれ入札参加申請をし,同月5日に開催された指名委員会で,2社に参加資格があることが確認された上で,同月19日,本件入札が行われ,前記2社が入札した中,株式会社Aが落札した。
なお,築上町では,入札が1社のみの場合,入札不成立となる可能性が高
かったところ,
株式会社Kの入札は,
これを危惧した株式会社Aからの依頼に
基づき,落札する意思を有さずに形だけなされたものであった。
2
そこで,以上の事実関係に基づき検討するに,本件工事については,前記1
⑴のとおり,当初より株式会社Aが,築上町に対して,受注に向けた種々の組織的働きかけを行っており,そのことは築上町側においても自明であって,本件工事の実施設計完了後に環境課長に就任した被告人においてもその旨認識していたと推認できるところ,被告人自身,公判廷において,本件を否認しながらも,築上町が設計段階から株式会社Aに意見を聞いていた旨を聞き及んでおり,5月下旬には,株式会社Aが本件入札に参加する旨認識していたことを認める供述をしている。
かかる被告人の認識を前提にすると,告示案における入札参加資格条件を厳しくし,株式会社A以外の入札参加業者数を減少させる行為が,株式会社Aの落札に資する内容であることは容易に理解可能といえるところ,被告人は,前記1⑶のとおり,環境課と財政課管財係との間で,設定する入札参加資格条件の内容が既に概ねまとまっていたにもかかわらず,その後,同⑷ないし⑹のとおり,Hに指示するなどして,総合評定値の要件に清掃施設工事を追加することを含め,幾度も,告示案における入札参加資格条件を厳しくする内容へ
と変更させており,しかも,同⑹の3業種いずれについても900点以上とする変更については,指名委員会のトップである副町長の内諾まで得た後のタイミングでなされており,被告人の指示に対するHやIの反応を見ても,再検討は想定されていない段階であったといえ,かかる経過自体,被告人が,株式会社Aに本件工事を落札させる目的の下,入札参加資格を有する業者を少なくする意図をもって種々の変更を行ったことを推認させる。
そして,被告人が,公判廷で自認するとおり,5月下旬頃,被告人は,Bから,
本件工事を株式会社Aが落札できるようにしてもらいたい旨の圧力を受け,更に,800点以上とすることが定まった段階でも,(入札参加資格条件に関して)本当にこのままでいいのか,見直さなくてよいのかなどと圧力を受けていることを踏まえると,なおさらその推認は強まるというべきである。以上のとおり,被告人は,本件入札の入札参加資格条件の案文作成に関与する立場にないBの意向に従い,
株式会社Aに本件工事を落札させる目的で
株式会社Aによる業者間の談合が容易になるよう入札参加資格を有する業者を少なくするために清掃施設工事を総合評定値の要件に追加するとともに,総合評定値を800点以上から900点以上に変更したと認められ,これらは入札等の公正を害すべき行為に当たるというべきである。3
以上の認定に関し,弁護人は種々主張するので,以下順に検討する。⑴

まず,弁護人は,被告人が清掃施設工事を総合評定値の要件に追加した
のは,本件工事がし尿処理施設を建設するものであるため指名委員会の事前打合せの中で,清掃施設工事の業種を追加すべきではないかという提案があったためであるなどと主張し,被告人もこれに沿う供述をするとともに,その提案はおそらくJ副町長からなされた旨供述する。
しかしながら,前記1⑶のとおり,当時,財政課管財係と環境課との間では告示案の草案の内容につき概ね話がまとまっていた状態にあり,また入札参加資格条件の設定は重要事項であるから,打合せを経てこれを変更するのであれ
ば,その参加者の間でその旨共有されているのが自然であるにもかかわらず,被告人供述によれば打合せに参加していたというIは,これを共有していないどころか,その供述する業種追加の経緯は被告人の供述するそれとは整合しない。また,打合せに参加したとされるJ副町長も,打合せがあったかどうかについては証言せず,清掃施設工事の業種が追加された経緯につき環境課からの提案であった旨,Iと同様の証言をしている。
そうすると,清掃施設工事の業種の追加の経緯に関する被告人の公判供述を俄かに信用することはできず,これを前提とした弁護人の主張は採用できない。


また,弁護人は,し尿処理施設を建設するには建設業法上の清掃施設工事業の許可が必要であるから,入札参加資格条件における総合評定値の要件に清掃施設工事の業種を追加することは社会的に相当な行為であり,同業種を追加する案文の変更は入札等の公正を害すべき行為ではないと主張する。しかしながら,施設の建設自体に清掃施設工事業の許可が必要であっても,証拠上,総合評定値の要件に清掃施設工事の業種を追加することが必ずしも一般的とはいえない上,そもそも入札等の公正を害すべき行為の該当性については,変更された案文の内容のみならず,その意図も併せて判断をすべきところ,前記のとおり,被告人が本件で業種を追加したのは,入札参加資格条件を株式会社Aに有利なものにしようとしたためであって,弁護人の主張するところからその違法性が否定されるものではない。以上より,この点に関する弁護人の主張も採用できない。



さらに,弁護人は,
清掃施設工事の業種を追加したとしても,入札参加可
能業者数は10社程度残っていたのであるから入札の公正が害される具体的危険は発生していないとも主張するが,前記経緯及び目的で,入札参加可能業者数を減らす案文の変更をし,入札等の公正を害する具体的危険を発生させていることに変わりはないから,この主張も採用できない。



加えて,弁護人は,被告人が総合評定値を800点以上から900点以上に変更したのは,Bからの働きかけが契機になった面はあるものの,草案は適宜変更することが予定されている上,専門家(D)の意見を踏まえて条件を変更することは当然であり,そこにはBの影響もなかったのであるから,何ら入札の公正を害すべきものではないと主張する。
しかしながら,前記のとおり,被告人は,株式会社Cが株式会社Aから本件工事に関する助言を得ていたことを知りつつ,本来,入札参加資格条件の適否を検討することができない同社のDに意見を求めたのであるから,再検討の方向性自体中立的なものではなく,そこからは,Dに助言を求めれば,株式会社Aの意向を反映した助言内容が返ってくると予想し,かつ,それを期待しながら意見を求めたことが窺われ,かかる条件の変更が入札の公正を害すべきものであることに変わりはない。



また,弁護人は,被告人が総合評定値を800点以上から900点以上に変更しても,入札参加資格条件を満たさなくなったのは,元々入札予定のなかった1社に過ぎないから,入札の公正を害する具体的危険は生じていないと主張する。
しかしながら,そもそも,本件当時,上記1社に入札予定がないことが明らかになっていたわけではないのであるから,事後的に判明した弁護人の主張に係る事実を前提に,入札の公正を害する具体的危険の有無を検討するのは相当でなく,弁護人の主張は採用できない。



その他弁護人が種々主張するところを子細に検討しても,前記認定は揺らがない(以上の認定に沿う被告人の捜査段階供述は基本的に信用することができる。。


第3
1
弁護人の主張②について
前記第2で見たとおり,被告人は,公判廷において,5月下旬頃,Bから,本件工事を株式会社Aが落札できるようにしてもらいたい旨の圧力を受け,更
に,800点以上とすることが定まった段階でも,入札参加資格条件を見直さなくてよいのかなどと圧力を受けた旨供述するところ,捜査段階では,更に7月5日頃(おそらくは株式会社Aと株式会社KL支店の入札参加資格が確認された指名委員会の後である同日午後)Bから,

数字を言っていくので入札
参加社数のところで頷くよう言われ,同人が2と言ったところでうんと答え,さらにBが各業者のアルファベットの頭文字を教えるよう言ってきたので,
略と略と答えた旨供述している。
かかる供述は,被告人に働きかけて本件入札を株式会社Aに有利に進めようとしていたBの行動に沿う自然なものである上,特に業者名を教示する場面は実際に経験していないと答えづらい具体性が認められ,十分に信用することができる(この点に関し,被告人は,公判廷において,実際には上記供述に係る状況につき記憶はなかったが,逮捕や起訴を避けるため,捜査機関の心証を良くするべく迎合した内容の供述をした旨供述するが,被告人は,業者数及び業者名を教示した旨供述している調書において,記憶がない点や明確に覚えていない点についてはその旨述べたり,読み聞かせ及び閲読を経て訂正を申し立てたりしていることに加え,保釈請求の際,Bに対し,本件入札に関する情報を漏らしてしまったことなどを認める旨の弁護人作成の被告人聴取書が作成されていることなどに照らすと,少なくとも上記供述部分の信用性に疑いは生じない。。

以上より,被告人の捜査段階供述等から,被告人が,Bに対し,秘密事項である入札参加予定業者数及び同業者名を教示したと認めることができる(そして,これが入札等の公正を害すべき行為に当たることは明らかである。。)
2
以上の認定に関し,
被告人は,
公判廷において,
7月5日の指名委員会の後,
Bから電話があり,入札参加予定業者数を教えるよう求められたが断ったところ,更にBは,数字を言っていくから合っているところで返事をするようにとして数字を言い始めたので,はぐらかしていたが,Bは,2社なんだなと述べ
てきて,既に業者数を知っている感じであった,そして,業者名については尋ねられず,伝えてもいない旨供述する。
しかしながら,関係証拠によれば,Bは業者数のみならず業者名も調べるよう株式会社Aから依頼されていたことが認められ,同社にとっては特に業者名が重要と思われるはずのところ,被告人がBから業者名を問われなかったというのはかなり不自然である。また,被告人の公判供述によると,Bは被告人以外の者から業者数を聴取していたことになるが,
それは考えにくい。
すなわち,
前記のとおり,Bは被告人に働きかけて本件入札を株式会社Aに有利に進めようとしていたのであるから,秘密事項をあえて被告人以外の者に尋ねることは考えにくい上,実際秘密事項を知っている者のうち,被告人以外の者に働きかけをした様子も見当たらない。
この点に関し,弁護人は,被告人がBから入札参加予定業者数について尋ねられたのは7月5日であるところ,株式会社A側の複数の関係者が,Bから同業者数が2社との連絡を受けたのは同月4日である旨述べていることからすると,Bは,被告人以外の者から情報を得ていた可能性があると主張する。しかしながら,被告人も上記複数の関係者も,そもそも日付について明確に記憶しているわけではない上,被告人は,公判廷において指名委員会以前に同業者数を知らなかった旨述べるものの,関係証拠によれば,財政課管財係が入札参加申請を受理した場合,指名委員会以前に発注原課たる環境課にもその業者名等が伝えられていたことが認められ,この点に関する被告人の公判供述を信用することはできない。結局,弁護人の指摘するところは,被告人以外に情報源があったことを疑わせるものとはいえず,前記認定が揺らぐとはいえない。第4

以上の次第で,判示のとおり認めることができる。

(法令の適用)

(量刑の理由)
被告人は,大規模公共工事に関する本件入札において,入札参加資格条件の案文を作成する発注原課の課長という立場にありながら,その職務に反して,恣意的に同案文を変更し,知り得た秘密事項を株式会社Aの落札を目論む町議会議員に教示して入札の公正を害しているところ,実際,被告人の行為により,株式会社Aによる談合が容易になり,その落札価格は最低制限価格を約3700万円も上回る高額なものとなっていることに照らすと,
それに寄与した被告人の責任は重いといえる。
被告人は,違法な口利きにより株式会社Aからの賄賂獲得を目論む同議員から強い働きかけを受けた際,それまでに同議員がその立場を利用して高圧的な言動をしたり,議会の場で意に沿わない者を精神的に追い詰めたりするなどを目の当たりにしていたことから,自身はそのような憂き目に遭うのを免れたいといったところが犯行動機としては大きいものの,結局,その働きかけに応じる以外の道もある中,本件犯行に及んだのは職責の重要性に照らして安易と言わざるを得ず,上記事情を酌むにも限度がある。以上によれば,本件は,罰金刑を選択すべき軽微な事案とは到底いえず,被告人に対しては,主文の懲役刑を科すのが相当である。その上で,被告人が,公判廷において,保身から反省なく不合理な弁解に終始していることは遺憾であるものの,町長を始め町職員らによって寛大な処分を求める旨の嘆願書が作成されていることからも窺われるように,本件は別にして,被告人が長年町職員として真面目に勤務してきた中,本件で失職することが見込まれるなど,一定の社会的制裁を受けることが想定されること,被告人に前科前歴はないことなども併せ考慮し,上記懲役刑につき執行猶予を付すのが相当と判断した。(求刑

懲役1年6月)

令和2年3月23日
福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部

裁判長裁判官

森喜史
裁判官

向井亜
裁判官

加島一紀子十
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