判例検索β > 令和1年(わ)第553号
過失運転致死傷
事件番号令和1(わ)553
事件名過失運転致死傷
裁判年月日令和2年3月19日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  岡崎支部
裁判日:西暦2020-03-19
情報公開日2020-06-16 12:00:25
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過失運転致死傷被告事件
主文
被告人を禁錮3年に処する
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,令和元年5月10日午後2時16分頃,普通乗用自動車を運転し,愛知県西尾市ab丁目c番地先の交通整理の行われていない丁字路交差点をd町e方面からf町g方面に向かい右折進行するに当たり,同交差点右折先出口には横断歩道が設置されていたのであるから,自動車の運転者としては,前方左右を注視し,速度を適宜調整し,同横断歩道を利用して道路を横断する歩行者等の有無及びその安全を確認して右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,新たな就職口のことを考えて注意が散漫となり,前方左右を注視せず,速度を適宜調整せず,同横断歩道を利用して道路を横断する歩行者等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約41.4キロメートルで右折進行した過失により,折から,子どもを幼稚園まで迎えに行くためにA(当時2歳)を抱きかかえながら同横断歩道上を横断歩行中のB(当時33歳)に気付かないまま,自車右前部を同人に衝突させ,その衝撃により前記B及び前記Aを跳ね上げて自車フロントガラスに前記Bの頭部等を衝突させるなどした上,同人らを付近路上に転倒させ,よって,前記Bに外傷性くも膜下出血及び脳腫脹等の傷害を,前記Aに加療約11日間を要する見込みの頭頂部挫創の傷害をそれぞれ負わせ,同月12日午後4時58分頃,同県安城市h町i番地所在のC病院において,前記Bを前記外傷性くも膜下出血及び脳腫脹により死亡させたものである。(証拠の標目)
省略
(適用法令)

省略
(量刑の理由)
本件事故は,被告人が適正な速度で走行せず,かつ,進行方向を十分に注視していなかったことにより生じたものであって,被告人が慎重な運転を心掛けていれば容易に事故の発生を防ぐことができた点で被告人の過失は大きい。
被害者らは,横断歩道を利用して道路を横断しているところ本件事故に遭ったもので,被告人の不注意な運転により,幼い子らを残して突如として一命を奪われた被害者の無念の思いは察するに余りある上,同人が妊娠中であったこともあり,妻のみならず生まれて来るはずの生命まで一度に失い,幸せな生活が一変した夫の受けた悲しみや喪失感は極めて大きい。本件事故の結果,残された家族の生活は一変し,被告人側の事故後の遺族に対する対応も遺族にとって全く誠意が感じられるものではなく,死亡した被害者の夫は被告人に対して厳しい処罰感情を抱いている。以上によれば,被告人の刑事責任は相当に重いといわなければならない。なお,検察官は,被告人の運転態様が極めて危険なものであったと主張しているところ,時速約41キロメートルの速度で走行していた場合,被告人が横断歩道全体を完全に見通せる地点において仮に被害者らを発見したとしても,制動距離との関係で衝突を避けることが困難であったと認められることからすると,その運転態様は危険なものであったといえる。もっとも,被告人が進行してきた方向から見た場合,同地点に至るまで,事故現場の横断歩道は建物等により全く視界が妨げられていたわけではなく,上記地点に差し掛かる手前であっても被告人が進行方向を良く確認さえしていればそれなりに見通せる状況にあったことからすると,被告人車の走行速度が検察官が主張するように極めて危険なものであったとはいえない。
検察官は,本件において,その求刑意見として,被告人に対する実刑判決を求めているところ,本件の主な事故原因は,被告人の不注意な運転にあるものの,それは無免許運転や酒気帯び運転等のいわゆる無謀運転を伴うものでもないし,それに匹敵するほど危険なものともいえない。また,本件事故による損害については,未だ示談は
成立していないものの,近い将来において運転車両に掛けられていた自動車保険により適正な補償がなされることが見込まれる。さらに,被告人は,事故原因を含めて事実を素直に認め,この裁判の過程においても反省の情を示している。加えて,被告人には,交通違反歴はあるものの,罰金刑を含めて前科はない。
被告人の量刑を判断する際に基本となるのは,被告人がいかなる犯行を行ったかという行為責任であり,被告人の遺族に対する事故後の対応状況や,遺族の被害感情等の一般情状を重視して量刑を判断することは相当とはいえない。本件においては,上記のとおり,被告人の運転行為がいわゆる無謀運転を伴うものではないことに照らすと,結果の重大性を考慮しても,被告人を直ちに矯正施設に収容しなければならない悪質な事案とは言い難く,被告人に対しては,社会内で更生する機会を与えることが相当と判断し,主文のとおり量定した上,その刑の執行を猶予した。よって,主文のとおり判決する。
(求刑

禁錮3年)

令和2年3月19日
名古屋地方裁判所岡崎支部刑事部

裁判官

鵜飼祐充
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