判例検索β > 平成28年(ワ)第94号
事件番号平成28(ワ)94
裁判年月日令和2年2月19日
裁判所名・部福島地方裁判所  第一民事部
結果その他
裁判日:西暦2020-02-19
情報公開日2020-06-04 22:27:16
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主文
1被告は,別紙3認容額等一覧表の各原告(原告番号33及び34を除く。)に対し,それぞれ,同別紙の認容額(元金)欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3
原告らと被告との間にそれぞれ生じた訴訟費用は,別紙3認容額等一覧表の
被告負担割合欄記載の割合を被告の,その余を原告らの各負担とする。4この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。ただし,被告が,別紙3認容額等一覧表の各原告
(原告番号33及び34を除く。に対し,

それぞれ,
同別紙の担保額欄記載の金員の担保を供するときは,当該原告との関係においてその仮執行を免れることができる。
事実及び理由
【目次】
第1部請求

第2部事案の概要等

第1章

事案の概要

第2章

前提事実

第1当事者

1原告ら

2被告

第2本件事故に至る経緯

1本件地震の発生等

2本件原発の状況

3放射性物質の拡散状況

第3避難指示等の経過
1本件事故発生当初の時期
11

2本件事故発生当初の時期よりも後の時期

第4中間指針等

第3部争点

第4部争点に対する原告らの主張

第1章

損害総論(原告らに共通する事情)

第1判断枠組みについて

第2原告らの損害の基礎となる事情

1本件事故前の中通りの状況

2本件事故後の状況

3放射線被ばくによる被害の特徴

4放射線被ばくの不安

5中通りの住民は見棄てられた

6自主的避難を迫られた

7中通りで生活する決断をせざるを得なかった苦悩

8小さな子供を持つ親・祖母としての不安

9結婚に対する不安

10本件事故により失われたもの・余儀なくされた生活の変化

第3中間指針等による賠償について

1自主的避難等対象区域に係る賠償の内容

2一律かつ低額の賠償額では賠償に値しないこと

第4原告らの主張する精神的損害が中間指針等の対象とされていないこと
1中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害

2原告らの主張する精神的損害との関係

第5弁済の抗弁について

1精神的損害に対する弁済の抗弁に対する反論

2財産的損害に対する弁済の抗弁に対する反論

第6ADR和解における清算合意について

1ADR和解の射程について

2ADR和解の多様性について

3和解契約書の記載は合理的限定解釈すべき

第2章

損害各論(原告らの個別事情)

第5部争点に対する被告の主張

第1章

損害総論(原告らに共通する事情)

第1原告らは権利又は法律上保護された利益を侵害されていないこと
1原告らの主張する権利は,法的権利として認められるものでないこと
2原告らの請求の根底にある放射線被ばくに対する不安について

3法律上保護される利益に対する侵害の有無の検討

4法律上保護された利益の侵害の有無に関する法的な主張のまとめ
第2損害についての考え方

1はじめに

2東電提示賠償額の内容・根拠

3東電提示賠償額について

4中間指針等を踏まえた賠償

5結論

第3原告らの主張する34項目の精神的損害について

1原告らの主張する精神的損害が中間指針等で考慮済みであること
2原告らの主張する精神的損害①~㉞に対する個別的反論
3原告らの主張する精神的損害①~㉞についてのまとめ
第4放射線の健康影響に関する原告らの主張に対する反論

1内部被ばくについての情報の周知がされなかったとの主張について
2福島県における甲状腺がんの多発に関する主張について

第5弁済の抗弁に関する主張

1原告らの精神的損害についての弁済の抗弁

2原告番号5,7及び8の財産的損害についての弁済の抗弁

3
原告番号27及び40が請求する除去土壌の保管に伴う精神的損害について
の弁済の抗弁
第6ADR手続を経た原告らについての清算条項に関する主張
116

1原告番号7及び8の請求について

2原告番号15の請求について

3原告番号18の請求について

4原告番号24の請求について

5原告番号33及び34の請求について

第2章

損害各論(原告らの個別事情)

第1原告らの主張に共通する特徴について

第2原告らの個別損害(別紙6の枝番1ないし52)について

第6部当裁判所の判断

第1章

認定事実

第1本件事故前の原告らの居住地等

第2本件事故後の状況

1環境放射能状況

2避難者数

3健康調査

4除染の状況

5除去土壌の保管方法

6水道水及び食品に対する措置等

7水環境及び森林の状況

第3賠償に関する各種基準の概要
1中間指針
144

2中間指針追補

3中間指針第2次追補

4被告の自主賠償基準

第4放射線と健康影響に関する知見等

1ICRPの勧告

2日本の放射線防護体制

3IAEA国際フォローアップミッション最終報告書

4文部科学省通知

5低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書

6UNSCEARの報告

7原子力規制委員会の見解

第2章

損害総論

第1基本的な考え方

1原賠法について

2財産的損害

3精神的損害

4中間指針等について

第2避難の相当性

1自主的避難者等の避難の相当性

2低線量被ばくのリスクと避難の合理性に関する原告らの主張について
第3自主的避難者等に係る精神的損害について

1被侵害利益

2慰謝料

第4弁済の抗弁について

1精神的損害に係る弁済の抗弁

2財産的損害に係る弁済の抗弁

第5清算合意について

第6原告らの主張する慰謝料算定における考慮要素について

1はじめに

2全般的検討

3項目毎の検討

第3章

損害各論

第1原告番号1

第2原告番号2

第3原告番号3

第4原告番号4

第5原告番号5

第6原告番号6

第7原告番号7

第8原告番号8

第9原告番号9

第10原告番号10

第11原告番号11

第12原告番号12

第13原告番号13

第14原告番号14

第15原告番号15

第16原告番号16

第17原告番号17

第18原告番号18

第19原告番号19

第20原告番号20

第21原告番号21

第22原告番号22

第23原告番号23

第24原告番号24

第25原告番号25

第26原告番号26

第27原告番号27

第28原告番号28

第29原告番号29

第30原告番号30

第31原告番号31

第32原告番号32

第33原告番号33

第34原告番号34

第35原告番号35

第36原告番号36

第37原告番号37

第38原告番号38

第39原告番号39

第40原告番号40

第41原告番号41

第42承継前原告番号42

第43原告番号43

第44原告番号44

第45原告番号45

第46原告番号46

第47原告番号47

第48原告番号48

第49原告番号49

第50原告番号50

第51原告番号51

第52原告番号52

第4章

結論

別紙1(原告一覧表)

別紙2(被告代理人目録)

別紙3(認容額等一覧表)

別紙4(原告請求額一覧表)

別紙5(既払金一覧表(被告の主張))

別紙6(原告らの主張(損害各論))

別紙7(原告番号8の財産的損害に関する主張)

【以下本文】
第1部

請求

被告は,別紙4原告請求額一覧表の各原告に対し,それぞれ,同一覧表の訴額合計欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2部

事案の概要等

第1章

事案の概要

本件は,
平成23年3月11日当時,
福島県中通り地域
(以下
中通り
という。

に位置する福島市,a町,郡山市,伊達市,田村市又は二本松市(福島県内の市町村については,県名及び郡名を省略する。以下同じ。)に居住していた提訴時原告ら52名
(うち1名が訴訟係属中に死亡し,
その相続人3名が訴訟承継した。が,

東北地方太平洋沖地震(以下本件地震という。)に伴う津波の影響で,被告が
設置,運転する福島第一原子力発電所(以下本件原発という。)の設備が損壊し,放射性物質が放出された事故(以下本件事故という。)により,精神的損害及び一部の原告らはこれに加えて財産的損害を生じたと主張し,原子力損害の賠償に関する法律(以下原賠法という。)3条1項本文に基づき,それぞれ,一部請求として,
一人当たり110万円から911万2496円
(弁護士費用を含む。
訴訟承継をした原告ら(原告番号42の1~3)については,被承継人の請求額である。)の損害賠償金(請求額合計9993万2896円)及びこれらに対する本件事故が発生した日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
第2章

前提事実

当裁判所に顕著な事実,当事者間に争いのない事実,各項に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
第1当事者
1原告ら
原告ら(以下,原告らのうち,訴訟承継人である原告番号42の1~3については,同原告らに代えて訴訟承継前の原告番号42(以下承継前原告番号42という。)を指す趣旨で用いることがある。)は,本件事故当時,政府による避難指示等(政府又は本件事故発生直後における合理的な判断に基づく地方公共団体による避難等(避難,対象区域外滞在及び屋内退避)の指示,要請又は支援・促進の意味で用いる。
以下同じ。の対象とされなかった福島市,

a町,郡山市,伊達市,田村市b町又は二本松市(いずれも後出の中間指針追補において自主的避難等対象区域とされた区域に該当する。)に居住していた。具体的には,伊達市に原告番号10及び11が,a町に原告番号20及び26が,郡山市に原告番号28が,田村市b町に原告番号17が,二本松市に原告番号21,福島市にその余の原告らが居住していた。
訴訟承継(原告番号42の1ないし3)

承継前原告番号42は,本件訴訟係属中である平成29年7月26日,死亡したところ,その相続人である原告番号42の1~3は,平成30年5月16日,承継前原告番号42に係る訴訟手続を受継し,相続分(各3分の1)に応じた金額を請求した。
2被告
被告は,c町及びd町に本件原発を設置し,運転してきた東京電力株式会社が会社分割及び商号変更を経た株式会社であり,本件事故時,原賠法2条3項(平成24年法律第47号による改正前)の原子力事業者であった者である。第2本件事故に至る経緯
1本件地震の発生等
平成23年3月11日午後2時46分,牡鹿半島の東南東約130kmを震源とするM9.
0の本件地震が発生し,
本件地震に伴う津波が本件原発に到達した。
2本件原発の状況
1号機の状況
1号機の原子炉は,本件地震発生時,運転中であったところ,平成23年3月12日午後3時36分頃,1号機原子炉建屋内で水素爆発が起き,放射性物質が放出された。(甲A79の2,乙A35)
2号機の状況
2号機の原子炉は,本件地震発生時,運転中であったところ,遅くとも平成23年3月15日午前6時頃,水素爆発によるものと思われる衝撃音が確認され,大気中に放射性物質が放出された。(甲A79の2,乙A35)3号機の状況
3号機の原子炉は,本件地震発生時,運転中であったところ,平成23年3月14日午前11時頃,3号機原子炉建屋で水素爆発が起き,放射性物質が放出された。(甲A79の2,乙A35)
4号機の状況

4号機は,本件地震発生時,定期検査のため運転停止中であったところ,平成23年3月15日午前6時頃,3号機から排気されたガスの逆流により4号機原子炉建屋で水素爆発が起き,
3号機由来の放射性物質が大気中に放出され
た。(甲A79の2,乙A35)
3放射性物質の拡散状況
原子力安全・保安院(平成24年9月19日廃止され,原子力規制委員会に統合)は,平成23年4月12日,事故の重大さを0から7の8段階にレベル分けした国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)に基づき,本件事故をレベル7(深刻な事故)と評価したことを公表した。
(甲A7,乙A35)
原子力安全・保安院は,本件原発1号機ないし3号機から大気中に放出された放射性物質の総量を推計し,平成23年6月6日,ヨウ素131が約16万テラベクレル,セシウム137が約1.5万テラベクレル,これらのヨウ素換算値は約77万テラベクレルとなることを公表した。(甲A7,79の1)第3避難指示等の経過
1本件事故発生当初の時期
平成23年3月11日の指示
政府は,本件事故が発生した平成23年3月11日,原子力災害対策本部を設置し,同日21時23分,本件原発から半径3km圏内の住民に対して避難の指示をし,
半径3kmから10km圏内を屋内退避指示区域として指定した。(乙A165)
平成23年3月12日の指示
政府は,平成23年3月12日17時39分,福島第二原子力発電所(以下福島第二原発という。)から半径10km圏内を避難区域に指定し,同日18時25分,本件原発から半径20km圏内を避難区域に指定した。(乙A166,167)
平成23年3月15日の指示

政府は,平成23年3月15日11時00分,本件原発から半径20kmから30km圏内を屋内退避指示区域として指定した。(乙A168)警戒区域の指定
政府は,平成23年4月21日,福島第二原発に係る避難区域を半径8km圏内に縮小変更し(これにより福島第二原発に係る避難区域は,全て本件原発に係る避難区域に含まれることとなった。),同月22日午前零時をもって本件原発から半径20km圏内を警戒区域に設定し,緊急事態応急対策に従事する者以外の者に対し,市町村長が一時的な立入りを認める場合を除き,当該区域への立入りを禁止し,
当該区域からの退去を命じた。
(乙A169,
170)
計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の指定

政府は,平成23年4月22日,本件原発から半径20kmから30km圏内に指示していた屋内退避の指示を解除し,以下のとおり,計画的避難区域及び緊急時避難準備区域を指定した。(乙A171)
計画的避難区域の指定
e村,f村,g村,h町の一部及び南相馬市の一部であって,本件原発から半径20km圏内を除く区域を計画的避難区域として指定し,当該区域内の居住者等に対し,原則として概ね1か月程度の間に順次当該区域外へ避難のための立退きを行うこと。
緊急時避難準備区域の指定
i町,j町,k町,田村市の一部(原告番号17の居住地である田村市b町を含まない。)及び南相馬市の一部であって,本件原発から半径20km圏内を除く区域を緊急時避難準備区域に指定し,当該区域内の居住者等は,
常に緊急時に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備を行うこと,当該区域においては,引き続き任意の避難をし,特に子供,妊婦,要介護者,入院患者等は,当該区域内に入らないようにすること,当該区域においては,保育所,幼稚園,小中学校及び高等学校は,休所,休
園又は休校とすること,勤務等のやむを得ない用務等を果たすために当該区域内に入ることは妨げられないが,その場合においても常に避難のための立退き又は屋内への退避を自力で行えるようにしておくこと。

域又は緊急時避難準備区域に指定されなかった区域(中通りが含まれる。)については,引き続き避難指示等の対象とされていない。
南相馬市における住民に対する一時避難の要請
南相馬市は,
平成23年3月16日,
市民の生活の安全確保等を理由として,
その独自の判断に基づいて,南相馬市の住民に対し一時避難を要請したが,同年4月22日,引き続き警戒区域,計画的避難区域又は緊急時避難準備区域に指定された区域を除く南相馬市内の区域から避難していた住民に対し,自宅での生活が可能な者の帰宅を許容する旨の見解が示された。(乙A1)2本件事故発生当初の時期よりも後の時期
特定避難勧奨地点の指定
政府は,
本件事故発生以降1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される地点を特定避難勧奨地点とすることとし,平成23年6月30日,同年7月21日,同年8月3日及び同年11月25日,伊達市ah町,ai町及びaJ町における117地点128世帯,k町1地点1世帯並びに南相馬市における142地点153世帯を特定避難勧奨地点に設定した。伊達市及びk町の特定避難勧奨地点は,
平成24年12月14日,
南相馬市の特定避難勧奨地点は,
平成26年12月28日,
それぞれ解除された。
(公知の事実,
弁論の全趣旨)
ステップ1の終了と緊急時避難準備区域の解除

政府は,平成23年7月19日,本件事故の収束に向けた道筋の進捗状況を公表し(乙A181),原子炉の安定的な冷却等ができていること,本件原発の敷地境界における被ばく線量評価は最大でも年間1.7mSvとなっており,放射線量が着実に減少傾向となっているとのステップ1の目標
を概ね達成したことを確認した。(弁論の全趣旨)

政府は,平成23年8月9日,避難区域等の見直しに関する考え方を公表し,当時の避難指示等のうち,緊急時避難準備区域及び警戒区域の指定については原子力発電所の状況が安定していないことを理由として,発電所から一定の距離を確保するために避難や避難準備を求めているもの,計画的避難区域については事故発生後1年間に住民が受ける積算線量が20mSvを超えると推計されることを理由として,放射線による影響を低減させるために避難を求めているものと整理した上で,①原子炉施設の安全性を評価し,発電所からどの程度の距離を確保することが必要かを判断し,②区域内の放射線量を詳細にモニタリングし住民の安全が確保されているか否かを確認した上で,③公的サービス・インフラ等を含め,住民の生活環境の復旧の目途がたった時点で,見直しをするものとした。(乙A182)

政府は,平成23年9月30日,緊急時避難準備区域の指定


)を解除した。(乙A172)
ステップ2の完了及び警戒区域及び避難指示区域の見直し

政府は,平成23年12月16日,本件原発について,原子炉は冷温停止状態に達し,不測の事態が発生した場合も,敷地境界における被ばく線量が十分低い状態を維持できるようになったことから,放射性物質の放出が管理され,放射線量が大幅に抑えられているというステップ2の目標達成と完了を確認し,本件事故そのものは収束に至ったと判断した。(乙A183)


政府は,平成23年12月26日,ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題についてを発表し,年間積算線量が20mSv以下となることが確実とされた地域を避難指示解除準備区域,年間積算線量が20mSvを超えるおそれがある地域を居住制限区域,居住制限区域のうち,5年間を経過して
もなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれのある地域を帰還困難区域に設定し,
避難指示区域等を再編する方針を示した。
(乙A184)

平成24年4月1日から平成25年8月8日にかけて,警戒区域,避難区域及び計画的避難区域は,帰還困難区域,居住制限区域及び避難指示解除準備区域に再編された。(公知の事実,弁論の全趣旨)

第4中間指針等
原賠法18条1項に基づき文部科学省に設置された原子力損害賠償紛争審査会(以下原賠審という。)は,平成23年8月5日付け東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針(以下中間指針という。乙A1),同年12月6日付け東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)(以下中間指針追補という。甲A50),平成24年3月16日付け東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第2次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)(以下中間指針第2次追補という。甲A51),平成25年1月30日付け東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第3次追補(農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害について),同年12月26日付けで中間指針第4次追補(乙A5)(以下,中間指針,中間指針追補,中間指針第2次追補,中間指針第3次追補及び中間指針第4次追補を総称して中間指針等という。)を策定・公表した。(公知の事実,弁論の全趣旨)
第3部

争点

原告らは,被告に対し,原賠法3条1項に基づき,原子力損害として,精神的損害又はこれに加えて財産的損害に係る損害賠償を請求するものであるところ,責任原因は本件の争点になっておらず,専ら損害論が争点になっている。主たる損害論
の争点は,①本件事故と相当因果関係のある原告らの損害額,②弁済の抗弁の成否及び弁済額,③一部の原告らにつきADR和解における清算合意の効力である。第4部争点に対する原告らの主張
第1章

損害総論(原告らに共通する事情)

第1判断枠組みについて
原告らは,被告に対し,原賠法3条1項に基づく損害賠償請求をしている。原賠法3条1項は,民法709条と違い,
他人の権利又は法律上保護される利益を侵害することを文言上要求していない。すなわち,

原子炉の運転等の際,当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは,当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。として,

原子力損害
があれば,
原子力事業者が無過失で損害賠償責任を負うと規定しているだけである。原賠法3条1項は,原発事故が一旦起これば,権利又は法的利益の侵害は当然に認められるという前提に立っている。風評被害が原子力損害として賠償の対象となっているのと同様,原告らの34項目の精神的損害についても,被侵害法益にこだわることなく原子力損害として認められるべきである。以上のことからすれば,
本件訴訟においては,
いわゆる生業訴訟第1審判決
(福
島地裁平成29年10月10日)
のように,
被侵害法益
を検討した上で損害を
認定してはならない。
被侵害法益を一括りにして認定し,
それに対応する
損害
を認定するという手法は,
損害の範囲を不当に狭めるだけだからである。
第2原告らの損害の基礎となる事情
1本件事故前の中通りの状況
福島県中通りの位置づけ
福島県の面積は,北海道,岩手県に次ぐ全国第3位で,関東地方でいうと,東京都,千葉県,埼玉県,神奈川県の4都県を合わせた面積に匹敵する広さを持つ。中通りは,福島県の中部を南北に貫く国道4号線周辺の中部に所在する地域であり,西を奥羽山脈,東を阿武隈高地に挟まれ,その中央を阿武隈川が
貫く太平洋側内陸地域である。中通りには,北部に福島市(人口約30万人。本件事故当時。以下同じ。)や二本松市(人口約6万人)等が,伊達市(人口約6万6千人)等が,中部に郡山市(人口約39万人)や田村市(人口約4万人)等があり,中通りの人口は約115万人である。

福島市について
福島市は,県庁所在地であり,日本銀行の支店もある。福島市は山に囲まれた盆地となっており,福島市の北には祭りや信仰の対象となっている信夫山がある。それ以外にも,半田山,阿武隈山系の霊山,口太山,羽山,日山・裏磐梯,吾妻山系の東吾妻山,家形山,一切経,浄土平から鎌沼周辺・安達太良山,和尚山,箕輪山・磐梯山・蔵王の刈田岳などが,自動車でアクセスできる場所にある。山林と水源に恵まれた自然豊かな地域である。

その他の主な市について
中通りの北部に,二本松市が所在している。二本松市の西には安達太良山があり,西部には温泉が点在している。東部の市街地付近を阿武隈川が流れている。中通りの中部に位置する郡山市は,東北自動車道と磐越自動車道が交差し,
東北新幹線の停車駅も存在し,
東北地方の交通の要衝となっており,
経済的にも発展した都市である。郡山市の西に猪苗代湖,東に阿武隈山地,北は安達太良山に接しており,市の中心部を阿武隈川が流れているなど,豊かな自然に恵まれた地域でもある。田村市は,郡山市の東に位置し,浜通り地域と隣接しており,市の面積全体の約62%を山林が占め,阿武隈高地が南北を発しており,山岳を水源とする多数の川が流れている。
中通りでの暮らし


中通りは,山河に恵まれ,景勝地としてはもちろん,登山やハイキング,スキー,キャンプ,渓流で釣りも楽しむこともできた。山から,多くの山ウドやコシアブラ,タラの芽,ワラビ,タケノコなどの山菜やきのこを採取できた。山菜とりは,原告らにとって,家族や友人とのコミュニケーションの
場でもあった。福寿草,クロッカス,水仙,チューリップ,たいつり草,八車草,
ジャーマンアイリス,あじさい,サフラン,ポピー,紫苑,コスモス,ヤマブキ,萩,あやめ,シャクヤク,ボタン,グラジオラスなど,季節ごとに咲き誇る花を楽しむことができた。太平洋側には相馬漁港もあり,豊かな水産資源へのアクセスも可能な地域でもあった。原告らは,このような自然環境に一体感と生きがいを感じ,その豊かさを享受して生活していた。イ
中通りでは,その豊かな自然を生かし,果物や野菜といった農産物が生産されてきた。原告らの中には,農業に従事していた者もいる。原告らの中には,家庭菜園や無農薬の田畑を所有し,農産物を育てていた者もいる。農業に従事していなかった者であっても,地元の新鮮かつおいしい農産物を得ることができた。
原告らは,
福島県産の農産物との密接な生活を楽しんできた。


原告らは,中通りの人と自然,農産物は自分の身体と一体であると考え,自分の身体と同様に,自然と農産物を慈しみながら生きてきた。


中通りは,原告らにとって,離れて暮らす家族が帰ってくる場所でもあった。中通りの豊かな自然の中で,帰郷した子供や孫,親族などが集まって,楽しく食事をしたり遊んだりするふるさとであった。近隣の人達や友人との付き合いの中で暮らしを楽しむ場所でもあった。親族や友人,近所の住民とコミュニケーションをとり,つながりを意識して生活してきた。このつながりは,
家庭菜園でとれた収穫物を贈ったりもらったりすることでも強められた。原告らは,家庭菜園やガーデニング,園芸などの趣味を楽しんでいた者が多い。原告らは,家庭菜園や庭,花壇などでの労働に汗を流し,景色や収穫物を楽しみ,それにより中通りの自然と恵みを感じながら生きてきた。原告らは,やりがいを感じながら仕事(家事労働を含む。)をしてきた。原告らは,個人として当然に尊重され(個人の尊厳),幸福追求権を有していた(憲法13条)。放射線被ばくの不安もなく,中通りの自然とともに,仕事を持ちながら生活し,自然の恵みを食し,家族や友人とともに人生を謳歌す
る健康で文化的な生活を送っていた(憲法25条)。
中通りの住民にとって本件原発とは
本件原発(福島第一原子力発電所)は,浜通りのd町及びc町に所在しているが,福島という名称が付されたことにより,世界的にFukushimaフクシマが本件事故の代名詞になった。本件事故当時,本件原発の原子炉は1号機から6号機まであった。中通りは,本件原発のある場所から約50~60km離れた位置にある。本件原発は,関東地方への電力供給のための施設であり,中通りの住民にとって電力供給等の恩恵はなかった。
2本件事故後の状況
放射性物質の飛散状況
平成23年3月11日,
本件地震が発生した。
被告は当初否定したが,
同日,
本件原発1号機は,
冷却機能を喪失しメルトダウンを起こしており,
翌12日,
水素爆発を起こした。本件原発3号機は,同月13日,冷却機能を喪失してメルトダウンを起こし,同月14日,水素爆発を起こした。本件原発2号機は,同月14日,燃料棒が露出し,メルトダウンを起こし,同月15日,原子炉建屋爆発により原子炉格納容器が損傷した。本件原発4号機は,同月15日に,原子炉建屋で爆発と火災が発生し,同建屋内の使用済み核燃料プールがむき出しとなった。
本件事故により放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの大量の放射
性物質が大気中に放出された。特に大量の放射性物質が拡散されたのは,同月15日の午前7時から11時までと,午後1時から3時までの間と考えられている。特に2回目の大量放出では,ガス状の放射性物質が集まった放射性プルームが形成された。これらの大量飛散は,同月15日から同月16日に掛けて空間線量が跳ね上がったことから裏付けられる。同月21日,本件原発から大量の放射性物質が飛散し,放射性プルームが生じた。大気中に放出された放射性物質は,同心円状には広がらず,風に乗って近隣地域に拡散された。放射性物質が大気中に放出された同月12日の本件原発付近の風向きは,当初は南向
きであり,放射性物質は太平洋方向に飛散していった。同月12日の夕方頃から北北西方向の風向きに変わり,福島県の内陸部に放射性物質が飛散し,南西方向にも飛散した。中通りを含む福島県に大量の放射性物質が拡散された。飛散した放射性物質の中には,放射性ヨウ素が大量に含まれていたと考えられる。同月15日,福島県で雪が降っていた。この日は,放射性物質の飛散時期と重なるため,大気中に飛散した大量の放射性物質が雪に付着し,雪とともに地表や建物に降下したと考えられる。福島県の地表や建物に大量の放射性物質が降下し,沈着した。福島市東部では,地表面から1mの高さの空間線量率が,1.0~1.9μSv/時又は0.5~1.0μSv/時の箇所が多く,1.9~3.8μSv/時のところもある。本件原発から半径20km圏内にあるj町の状態に近く,
本件原発から半径30km圏内にあるi町と比較しても高い空間線量である。二本松市や伊達市の大部分における空間線量率は,1.0~1.9μSv/時,0.5~1.0μSv/時,1.9~3.8μSv/時の地域で構成されている。郡山市にも,空間線量率が1.0~1.9μSv/時,0.5~1.0μSv/時の地域が存在している。中通りには,本件原発から30kmの地点と比べても空間線量率が高い地点が存在している。
原子力緊急事態宣言
平成23年3月11日19時過ぎ頃,政府は,同日16時36分,本件原発において,
原子力災害対策特別措置法第15条1項2号の規定に該当する事象が発生し,
原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要があると認められるとして,
同条の規定に基づき,
原子力緊急事態宣言を発した。
同年4月12日,国際原子力事象評価尺度(INES)において,チェルノブイリの事故と同じ,最悪のレベル7(深刻な事故であり放射性物質の重大な外部放出が認められればレベル7と認定される。)と暫定評価された。本件原発からは,希ガス,ヨウ素,セシウム,ストロンチウム,プルトニウム等の放射性物質が大量に大気中に放出された。半減期30年であるセシウム137
の放出量は,実に広島原爆168発分に相当する量であった。国立環境研究所は,
大気中に放出されたセシウムのうち22%が日本列島の陸地に落ちたと報告している。福島県をはじめとする陸地には,広島型原爆の約37発分のセシウム137が降り積もっている。本件事故後5年を経過した時点で原子力緊急事態宣言は解除されていない。
避難指示の状況
政府は,平成23年3月11日夜,本件原発から半径2km以内の住民について避難指示を出した。その33分後に3km圏内に避難指示を拡大した。同月12日17時39分,本件原発・福島第二原発から半径10km以内に避難指示を拡大した。本件原発1号機建屋の水素爆発後の12日夜,本件原発から半径20km以内の避難指示に拡大した。同月15日,本件原発から半径20km~30km以内の住民に,屋内退避指示を出した。中通りの住民に対して避難指示が出ることはなかった。
放射性物質は,
同心円状に広がるのではなく,
風向きによって拡散状況が変化する。本件原発から単純に円状に避難指示範囲を線引きすることに合理性はない。政府は,リアルタイムで放射性物質の拡散状況を計測するSPEEDIのデータにより放射性物質の拡散状況を把握していたがそのデータを避難指示に活用しなかった。政府が示した避難指示範囲は不合理な線引きによってなされたというほかない。
被告による情報提供義務違反
国や本件事故の当事者であった被告は,本件事故や放射線の情報について国民に提供する義務があった。本件事故に関する情報は国民が容易には入手できず,かつ,人の五感の作用では放射線を認識できないため,国や被告による適切な指示がないと国民は適切な避難行動をとれないからである。本件事故当初,被告は,実際にはメルトダウンが発生しているにもかかわらず,それを否定し隠蔽した。被告がメルトダウンを認めたのは,平成23年5月24日である。被告は,平成28年2月24日付けのプレスリリースにおいて,平成23年3
月14日の時点で炉心溶融(メルトダウン)と判定できたにもかかわらず,その事実を通報・報告しなかったことを認めた。同月11日の津波襲来直後,速やかに通報・報告できた可能性のある事象があることを確認したことを発表した。通報というのは,原子力災害対策特別措置法10条に基づくもので,緊急事態に相当するような過酷な事象が発生した場合には,事業者が直ちに関係各所に通報することが求められている。報告は,同法15条に基づくもので,更に厳しい事態になった場合に内閣総理大臣が原子力緊急事態を宣言すること等を求めており,事業者は当該事象の発生を直ちに報告することとしている。被告が,前記法令に基づき,迅速で適切な通報・報告を行っていれば,原告らが情報不足に困惑することはなかったはずである。SPEEDIに基づく放射性物質の拡散情報に関する情報は隠し通された。福島県は,SPEEDIに基づく国から放射線物質の拡散予測のデータについて電子メールによって提供を受けていたにもかかわらず,本件事故発生から5日分のファイルを削除していた。それ以後のデータに関しても,予測に基づくデータを公表すれば混乱を招くだけであるとして公表しなかった。国や福島県は主に外部被ばくについての情報を提供するだけで危険性を有する内部被ばくの危険について十分な周知を行わなかった。
以上は,別個独立の不法行為を構成するものとしてではなく,原賠法3条1項による慰謝料請求における一事情として主張する。
本件事故情報の不足による混乱
本件地震が発生した当初,中通りでは,震災や停電の混乱のため,原告らに十分情報が行き届かなかった。本件事故の詳細が報道されるようになったのは,被告の隠蔽行為もあり,本件事故からしばらくしてからである。SPEEDIによる放射線拡散予測も国が公開しなかったため,報道されたのは,本件事故から随分後である。以上の情報不足の中で,原告らは,何とか自分の身や家族を守ろうと,懸命に努力してきた。本件事故や放射線に関する情報が不足して
いた。原告らは,放射線によって生命や身体に危害が及ぶのでないか,すぐにでも避難しなくてはならないのでないかと思い悩むことになった。放射線被ばくの恐怖と不安
原告らは,平成23年3月11日以降,当初は地震と収まらぬ余震,津波による破壊の映像を見て沈鬱になった。徐々にではあるが,本件事故及びこれに伴う放射性物質飛散に関する情報が流れる中で,新たに放射線被ばくの恐怖に襲われる。その情報は十分なものといえなかった。原告らは,放射線被ばくや避難に関する情報を,被告及び国,マスコミから十分に受け取ることができなかった。国は,記者会見において直ちに害はないという言葉を繰り返し用いていたが,原告らが安心することはなかった。原告らは,広島・長崎の原爆やチェルノブイリの事故などによる生命や健康に対する甚大な被害について知っており,中通りも同様の生命・健康に対する被害が生じるのでないかという恐怖に駆られた。原告らは,行政などから納得の行く情報が得られない状況下,放射線被ばくに対する不安感が日増しに高まった。混乱する情報の中で,直ちに避難すべきとの意見も聞きながら,被ばくを避けるためにはどうすべきかを考え,自主的に避難するか否かで,原告らは思い悩んだ。
初期被ばくの事実と国の過小評価
本来国や事故の当事者である被告,マスコミが,放射線被ばくによる被害のおそれがある地域に対し,積極的に本件事故や放射性物質の拡散情報を伝えなければならないのに,
全くなされなかった。
原告らは,
本件事故初期において,
必要に駆られて外出し,被ばく防御もしないまま食料や水・ガソリンを求めて屋外で行列し,高い線量の放射線を浴び,多くの放射性物質を体内に取り込んだおそれがある。特に放射性物質が大量に飛散し,その上に雪が降った平成23年3月15日,
放射性物質が雪に付着し高い線量になった中で外出した者が
いる。その際,原告らは放射線被ばくしたおそれが強い。半減期が8日と短い放射性ヨウ素も,本件事故直後に外出した者は,摂取したおそれがある。原告
らは,現在も続く低線量被ばくだけでなく,本件事故直後の高線量外部被ばく及び内部被ばくによる健康不安を感じながら生きていかなくてはならない。国は,初期被ばくについて,福島県の住民の一人一人について,その被ばく量を計測していない。
原告らを含む本件事故による被ばく者が健康不良になった場
合,
初期の被ばく量から健康不良の原因を突き止めることが困難になっている。土壌・道路・建物汚染と放射線被ばく

大気中に放出された放射性物質のプルームは,雨や雪に付着し地表に降下し沈着する。中通りでは,平成23年3月15日に雪が降り,大量の放射性物質が地表(土壌・道路)や建物に降下し,沈着・吸着した。地表に降下した放射性物質は,放射線を放出する。空気中の放射線量を計測するとき,地表に近ければ近いほど放射線量が高くなる。地表に降下し沈着した放射性物質との距離が近くなり,より多くの放射線が検出されるからである。放射性物質は,文部科学省による第4次航空機モニタリングの結果についてによると,中通りは,本件原発から30km圏内の浜通りと同程度に汚染された。本件事故で放出された放射性物質は,半減期が短く比較的土壌汚染の原因になりにくいヨウ素を除くと,セシウム134とセシウム137の割合が大きい。セシウムはアルカリ金属であり,同じくアルカリ金属であるカリウムと似た科学的性質を示す。水溶液中では,1価の陽イオンとなる。土壌中では,粘土鉱物や有機物が負に荷電しているため,これらとセシウムは結び付きやすい。セシウムは土壌下方へ浸透しにくく,大部分が長期間にわたって土壌表層にとどまる。他にもストロンチウムも水溶液中では2価の陽イオンとして存在し,土壌に結び付くが,セシウムよりは土壌下方へ移動しやすい。地表に降下した放射性物質は,コンクリートやアスファルトにも沈着した。建物や路面に放射性物質が沈着することで,空間線量が上昇する原因となった。セシウムは,コンクリートやアスファルトに対しては土壌と比べて沈着の程度が弱いため,コンクリートやアスファルトに降下した放射性物質
が雨水等により流されることで,水が流れ着く場所に放射性物質が蓄積される。雨樋や側溝など局所的に高線量となる場所が生じた。これらの放射性物質を土壌に作付けされた農産物が吸収することで,農産物に放射性物質が移行する。農産物に放射性物質が移行する割合は,作物の種類,土壌の物理的性質・化学的性質などによって決まる。農産物の部位によっても,放射性物質が移行する量は異なる。この放射性物質が移行した農産物を人が摂取すれば,内部被ばくの原因となる。放射性物質が沈着した土が風によって土ぼこりとして,大気中に飛散するおそれがある。この土ぼこりの中には,その土壌に沈着した放射性物質が含まれている。この土ぼこりを人が呼吸により吸い込めば,肺に放射性物質が取り込まれ,内部被ばくの原因となる。イ
中通りには大量の放射性物質が地表に沈着した。学校の校庭や学校までの通学路についても同様に放射性物質が沈着し,本件事故後5年を経過した現在でも,
放射線管理区域に相当する放射線量を記録している校庭や通学路は多い。女性自身取材班は,福島県内の小中学校周辺から,約60か所の土壌をランダムに採取した上,土壌に含まれるセシウム137を調査している。放射線管理区域とは,放射線を発生する施設を扱う職員等の放射線被ばくを防ぐため,法令により,厳しく管理されている区域のことである。放射線管理区域の中には職員以外の一般人は立入禁止,18歳未満は就労禁止,職員も区域内での睡眠や飲食は禁止,放射性物質が外部に漏れることを防ぐため一定の線量以下にならないと職員の退出や物の搬出禁止など,放射線被ばくを避けるため厳しい管理がされている。表面汚染密度が,4万Bq/㎡(法令上はアルファ線を放出するものについて汚染密度4Bq/㎠と定められている。この分母を平方メートルに換算すると,表面密度4万Bq/㎡となる。)であれば,放射線管理区域に当たることになる。


本件事故から5年以上経過しても,
中通りでは,
調査箇所44か所のうち,
36か所が放射線管理区域に相当し,8割以上が放射線管理区域に相当する。
本来であれば18歳未満は就労すら禁止されている区域において,多くの子供達が生活することを余儀なくされている。校庭は,児童や学生が運動をする場であり,
それに伴い発生した土ぼこりを児童や学生が吸い込んでしまう
おそれは高い。通学路は,学校に通う児童や学生が日常通う場所であり,日常的に土ぼこりを吸い込み,内部被ばくのおそれは高い。原告らの多くは,学校に通う児童や学生を持つ親であり,祖父母である。親として,祖父母として,児童や学生を見守る教師として,児童や学生の被ばくによる影響を心配し,守るべき人を守り切れなかったのでないかと悩み,精神的に傷ついている。
土壌・道路・建物汚染と除染作業
土壌・道路・建物に放射性物質が沈着した。土壌・道路・建物の表層部分にとどまっている放射性物質は,それらの表層を取り除いたり,表面を洗い流したりすることで,放射性物質を取り除き,空間線量を下げることができる。この作業が,
放射性物質の除染作業である。
この除染作業は,
放射性物質を土壌・
道路・建物から取り除くだけで,放射性物質が消滅するわけでない。除染作業を行ったとしても,土壌・道路・建物から取り除かれたものが放射性廃棄物として残る。空間線量を下げようと思えば,この放射性廃棄物を別の場所に移すしかない。除染作業とは,放射性物質を別の場所に移す移染作業にすぎない。この放射性廃棄物を移すための中間貯蔵施設の建設すら遅れている。除染作業により生じた放射性廃棄物を移す場所がない。原告らは,放射性廃棄物を,自宅の敷地内に置く又は埋めることを強いられている。放射性廃棄物が自宅の敷地内にある限り,原告らの精神的苦痛は消えることはない。放射能漏れによる低線量被ばくの継続
本件事故はいまだ収束しておらず,着手してから40年以上掛かるといわれる廃炉作業の過程において再び大量の放射性物質が飛散するおそれが考えられる。平成25年10月7日の参議院経済産業委員会において,被告の廣瀬直
巳社長(当時)は,本件原発において明白な事故がなくとも,現在も毎時1000万Bqの追加的放出があるという深刻な状況にあることを述べている。中通りでは,平成27年12月時点で,本件事故由来の放射性物質がほとんど取り除かれておらず,浜通りの南相馬市やj町,i町と比べても空間放射線量が高い。現在でも,低線量被ばくが継続している。平成28年2月17日午前10時の時点において,福島市県北保健福祉事務所が毎時0.19μSvであり,
南相馬市南相馬市役所では,
0.14μSvである。
特に福島市には数え切
れないほどのホットスポットが存在している。原告らが独自に線量計を用いて自宅や庭の空間線量を測ったところ,公式測定線量より高い数値が計測されることが多い。公式測定線量は低めに計測されている疑いが高い。
放射線被ばく限度の基準を超える被ばくを強いられた
放射線被ばく限度の基準について,原子力基本法20条は,

放射線による障害を防止し,公共の安全を確保するため,放射性物質及び放射線発生装置に係る製造,販売,使用,測定等に対する規制その他保安及び保健上の措置に関しては,別に法律で定める。

と規定し,放射線障害防止の技術的基準に関する法律(本件事故当時のもの。以下同じ。)3条は,放射線障害の防止に関する技術的基準を策定するに当っては,放射線を発生する物を取り扱う従業者及び一般国民の受ける放射線の線量をこれらの者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とすることをもって,その基本方針としなければならない。と規定している。同法4条により文部科学省に放射線審議会が設けられ,同法6条により,関係行政機関の長は,放射線障害の防止に関する技術的基準を定めようとするときは,同審議会に諮問しなければならない。同審議会は,平成23年1月28日,国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年の勧告において一般公衆の被ばく限度を年間1mSvとしたことを踏まえ,同審議会の基本部会の国際放射線防護委員会
(ICRP)
2007年の勧告
(Pub.103)
の国内制度等への取り入れについて(第2次中間報告)を承認した。現行国内
法制上,公衆の被ばく限度を年間1mSvとする考え方が採用されている。これらの法令をはじめとする公衆被ばくの限度の基準を年間1mSvとするという考え方は,ICRPの勧告とも一致する。ICRPの勧告については,内部被ばくの危険性が考慮されていない等の批判がある。欧州放射線リスク委員会
(ECRR)
の2010年勧告は,
年間0.1mSvをもって公衆の被ばくの
年間最大許容量とすべきであるとしている。政府の除染目標も,空間線量が年間1mSvになるまでと定められている。中通りに住む原告らは,年間1mSv以上の空間で長期間生活することを強いられてきた。
3放射線被ばくによる被害の特徴
放射線・放射性物質の性質

人には認識できないこと
放射線被ばくによる健康リスクを回避しようとすれば,日常生活の至る所に常に自らの五官で認識できない放射性物質・放射線が存在していることを意識し,注意して行動しなくてはならず,見えざる敵を相手にして,神経をすり減らす。放射性物質・放射線には,このような不気味さがある。

放射性物質の半減期
ヨウ素131の半減期は8日,セシウム134の半減期は2.1年,セシウム137の半減期は30.2年である。ある放射性物質の半減期の2倍の期間を迎えたとしても,2分の1の2乗(4分の1)にしかならず,放射性物質はゼロにならない。半減期の10倍の期間を経過すると,2分の1の10乗(1024分の1)になる。半減期の長いセシウム137について,放射性物質の量が1024分の1になるには,302年掛かる。本件事故によって放出された放射性物質が完全に消滅するためには,途方もない期間が必要となる。
放射線被ばくによる健康リスクは自分が生きている限り続くと考
えざるを得ず,そう考えなければならないこと自体が精神的損害である。

放射線被ばくによる健康リスク

放射線には,ガンマ線,ベータ線,アルファ線の3種類がある。ガンマ線は高エネルギー光子,
ベータ線は電子,
アルファ線はヘリウム原子核である。
いずれも,電離作用を持っている。人体を透過する際に,原子から電子をはじき出して生体に影響する作用を有している。それによりはじき出された電子も電離作用を有し,他の原子の電子をはじき出す。この電離作用による高速電子が細胞組織内の化学結合を切断する。ベータ線とアルファ線はガンマ線と異なり飛跡の最初から電離作用を引き起こすため,ガンマ線と比べれば細胞組織内を透過する距離は短い。人間の体細胞には46本の染色体がある。この染色体のどの部分もガンマ線・ベータ線・アルファ線によって切断され得る。切断された染色体は,分離した部分を修復しようとして再結合する性質を有する(修復)。切断部には損傷が起こり得るし,全ての遺伝子の機能が修復されるのでない。切断された染色体切断片が染色体主部との再結合に失敗することもある(欠失)。これにより染色体に断片が生じるが,正常な細胞分裂に必要な動原体を有しない断片を無動原体断片という。この無動原体断片が消失することにより,遺伝情報が失われる。切断された染色体の断片が別の切断された染色体の断片に結合してしまうことがある(転座)。これらの現象により正常な細胞分裂が行われず,がんや白血病が誘発されると考えられる。
欠失が放射線誘発がんの原因事象となっている限りにおいては,
がん発生が放射線量に比例すると考えられることであり,
それは考え得る最
低の線量にまで当てはまる(直線・閾(しきい)値なしの考え方につながる。)。以上は,放射線被ばくした本人に生じる身体的な危険であるが,他にも,
被ばくした個人の子孫について生じる影響,
遺伝的影響も存在する。
放射線による遺伝子や染色体の損傷によって突然変異が起こり,遺伝的影響が生じる。遺伝的影響は,染色体病(ダウン症等),伴性遺伝病(色盲,血友病等),常染色体遺伝病,劣性遺伝病,不規則遺伝病に分類される。遺伝的影響は明らかな奇形や血友病のような稀少疾患にとどまらない。元来全て
の病気は遺伝的要素を持っていて,治癒させることが不可能な場合もあり,その疾病のリストにはアレルギー,てんかん,関節炎,腎臓病,肝臓病,発達障害,眼疾患,筋萎縮,骨疾患,脳の退行性疾患,動脈硬化,心疾患,活力喪失などが含まれる。胎児に対する影響もある。この原因も,遺伝的影響と同じく遺伝子や染色体の異常である。放射線被ばくにより,受精卵が細胞分裂してできたヒトの原型である胚子の死まで至らないが,生まれた子供に構造・機能上の損傷が生じることがある。中枢神経系の欠陥や感覚器官の異常,奇形などである。原告らは,以上のような放射線被ばくによる健康リスクにおびえ,不安を抱えている。

直線・閾(しきい)値なし(LNT仮説)
現在,国は,空間放射線量が年間20mSvであるかどうかによって避難指示の対象区域を決定し,避難指示区域か避難指示区域外の一定の地域か,避難指示解除はいつ頃か等ということにより賠償額も変わる内容の中間指針を定めている。この基準は,空間放射線量が年間20mSvという一定の線引きを前提とし,年間20mSv以下は安心・安全ということになっている。本当に安心・安全なのかは疑問がある。放射線防護の考え方について,国際的な潮流としては,直線・閾(しきい)値なしという考え方(LNT仮説)が一般的である。LNT仮説とは,自然放射線量を原点として,
そこから放射線量の増加に比例して健康リスクも高まるという仮説である。自然放射線量を超えて放射線が増加すればするほど,健康リスクが高まる。原点から放射線量とリスクが比例した線が描かれるため直線であり,かつ,これ以下なら安全であるという閾値がないため閾(しきい)値なしである。
LNT仮説によれば,
低線量でも健康に対してリスクを有し,
そのリスクはゼロでない。放射線量がある限度を下回れば健康被害が生じなくなる性質のものでない。放射線は低線量だからといって安全といえるものでない。本件事故から5年が経過したとしても,中通りにおいて生活してい
る原告らにとって,放射線量はそれほど下がらず,本件事故前の自然放射線量と比較すると,かなり高い放射線量の中で生活している。本件事故から5年以内の一定の時点をもって健康被害のおそれが全くなくなったという線引きをすることもできない。LNT仮説は飽くまでも仮説であるとして,この考え方に対する反論もある。放射線の性質からすれば,幾ら低線量であっても生体の細胞に影響を及ぼす。しかし,欠失が放射線誘発がんの原因事象となっている限りにおいては,
がん発生が放射線量に比例すると考えられる
ことであり,それは考え得る最低の線量にまで当てはまる。このような知見からすれば,
LNT仮説は十分合理的な仮説であり,
放射線防護の観点から,
LNT仮説に従うのは正当である。原告らの被ばく対策は,放射線に対する予防原則に従った行動であり,この措置をとること自体が原告らにとって精神的苦痛を伴い,経済的な出費を強いている。本件事故さえなければこのような原告らの損害は発生しなかった。

低線量被ばく
低線量被ばくの危険については,現在でも判明していないと主張する学者が多い。
福島県における低線量被ばくの健康リスクについて指摘するWHOの発表や論文がある。福島県では,若年層の甲状腺がんの多発が懸念されている。WHOは,平成25年,福島県民に今後どのような健康リスクが生じるか検証した,WHO健康リスク評価報告を発表した。同報告書では,主に計画的避難区域の住民を対象として,がんと白血病のリスクを詳細に評価している。同報告書では,若年層のがん,特に甲状腺がんの多発のおそれを明言している。特に多発が顕著であるとするのは小児甲状腺がんであり,被災時1歳だった女児の場合,事故発生からの15年間で,発症率は9倍にもなると予測している。その他にも,小児白血病や乳がん,固形がんの増加も予測されている。津田敏秀教授が平成27年10月に発表した論文(以下津田論文という。)では,疫学的観点から,福島県における甲状腺がんの多
発を論じており,福島県内での甲状腺がんの多発を指摘,最大で20~50倍の発生率になると主張している。同論文は,この数値について,過剰診断やスクリーニング効果では説明できないとしている。このような見解が示されている中で,中通りの住民としては,低線量被ばくによる健康被害を懸念するのは当然である。
現に,
低線量被ばくにさらされている原告らにとって,
より自らの生命や健康を確実に守ろうと思えば,低線量被ばくの健康リスクを指摘する立場に基づいて行動することが自分や家族の身を守ることにつながると考えるのは当然である。LNT仮説も,放射線防護の観点からは合理的であるから,なおさら原告らの不安や不安に基づく行動は相当である。LNT仮説について反論もあるものの,高度に専門的であり,今まで放射線被ばくに無縁であった中通りの住民にその是非の判断ができるようなものでない。学者の中でも対立がある事項について,自身の生命や健康が害されるおそれがあるにもかかわらず,どちらかの立場に立つことを迫られること自体異常である。そのような不確かな状況に置かれていること自体が,原告らにとっての不安の原因である。低線量被ばくによる健康リスクについて否定的な見解も,
低線量被ばくによる健康被害が現時点では立証できないため,
不明であると述べているにすぎない。原告らにとって,放射線被ばくによる本人や家族の生命・健康への不安は,現在生じている。後に低線量被ばくが危険だと分かっても,現時点で避難や被ばく対策をとらないと,原告らとその家族にとっては手遅れになる可能性がある。その状況の中で,原告らが自らその家族を守ろうと必死になれば,低線量被ばくによる健康リスクを警戒して最大限の対策をとらざるを得ない。専門家や政治家が科学の名の下に不確かな現象を切り捨て,実際に低線量被ばくによる危険にさらされている中通りの住民の不安を不合理と切り捨てることがあってはならない。平成28年3月,福島県県民健康調査検討委員会による県民健康調査における中間取りまとめが発表された。これによると,これまで得られている科学的知見に照らして,統計的有意差をもって確認できるほどの健康影響が認められるレベルではないと評価するとされている。中間取りまとめ
この
の最大の欠陥は,
子供の甲状腺がんの著しい増加について本件事故前から予
測できていたという科学的知見がどこにもないことである。仮に,本件事故前から子供の甲状腺がんが県民健康調査で判明した程度に多いことが分かっていたならば,それは科学的知見に基づく想定内の出来事だということができるであろう。実際はそうではなかった。本件事故後,福島県における子供の甲状腺がんが明らかに増加したという想定外の出来事を中間取りまとめでは説明できていない。原告らの不安は中間取りまとめでは解消しないどころか増すばかりである。本来行政が放射線被ばくのリスクや不安を取り除くための施策を行い,被告が原状回復(損害賠償)すべきであるにもかかわらず,それらを行わないままに個人を切り捨て,個人の行うリスク対策を不合理とする現実がある。原告らは,その現実にやり切れなさを感じながらも,自らの費用と覚悟で予防措置をとりながら,不安の日々を過ごしている。これも本件事故がなければ生じなかった精神的損害である。内部被ばくの恐ろしさ
内部被ばくとは,
放射性物質が体内に取り込まれることにより生じる被ばく
である。内部被ばくでは,①外部被ばくではほとんど起こらないアルファ線やベータ線の被ばくが生じること,②ガンマ線と比較すると,局所的な被ばくであるため分子切断の範囲が狭く,放射線到達範囲内の被ばく線量が非常に大きくなること,③高密度の被ばくのため,DNAの二重切断を多く引き起こし,DNAの死滅や異常再結合が多く生じてしまうこと,④放射性物質が体内にある限り,継続して被ばくすることといった特徴がある。この特徴のため,内部被ばくは単純に外部被ばくと比較できず,外部被ばくよりも甚大な被害をもたらす。原告らは,これら内部被ばくの特徴に照らし,放射性物質を体内に取り込まないようにするための対策として,飲料水や食物について放射線物質が含
まれていないものを選んで摂取する必要がある。この点について,国は,食品安全基準について,
一般食品については本件事故後の緊急時に500Bq/K
g,その後100Bq/Kg以下と定めた。本件事故時に急に人間の体が放射能に強くなるはずはない。直線・閾(しきい)値なしの考え方からは,放射線量が少ないから安全というものではなく,いかに低線量であっても健康リスクを有する。内部被ばくのリスクを回避しようとすれば,徹底的に,放射性物質を含んだ飲料水や食物の摂取を回避するほかない。放射性物質が混入しているおそれのある福島県の水や福島県産の食品を避けることになる。このような内部被ばく対策は,防御原則に照らして合理的である。このような対策をとらなければならないこと自体が精神的損害につながるし経済的にも損失である。
放射線被ばくを避けるため,
原告らは,
暑いさ中でもマスクを着用したり,
洗濯物を外に干さない等の生活を強いられ,外で運動したり,自然と触れ合ったりすることも制限するという具合で,あらゆる日常生活の質が著しく低下した(特に子供の行動制限は厳しく行われた。)。原告らは,暮らしの様々な場面で放射線被ばくのことを考えながら生活することを余儀なくされた。4放射線被ばくの不安
初期被ばくの事実と原告らの健康被害に対する不安
原告らは,
本件事故初期に発生した放射性プルームに含まれていた放射性ヨ
ウ素を,呼吸などで人体に取り込んだと考えられる。本件事故以降日常生活の中で外部被ばくを受け続けている。放射性ヨウ素は,ヨウ素として人の甲状腺に取り込まれることで甲状腺が内部被ばくし,甲状腺がんを誘発する。原告らの甲状腺等価線量は40mSv程度であったと考えられる。原告ら本人やその子供,孫の中には,甲状腺に嚢胞が見付かった者がおり,甲状腺に生じた嚢胞が将来甲状腺がんに進行するのでないかと思い悩むことになった。母性としての防御本能による被ばく回避とその苦悩
原告らの多くは子供や孫を持つ母親や祖母である。原告らは,放射線被ばく
から子供や孫を守ろうとしてきたが,特に,母親又は祖母である者は,いわゆる母性としての防御本能を働かせ,自分を犠牲にしてでも子や孫を守りたいと考えた。目に見えない放射能との戦いは困難であり,避難を含めた防御策をあれこれと考えたが,様々な制約から,理想どおりに子や孫を守れないかもしれない,又は守れなかったことを思い悩む者もいる。中通りに住み続けながら出産し,里帰り出産のため中通りに戻って出産した女性も多く,原告らは放射線防御のため多大な苦労をした。福島県において子供の甲状腺がんが多発しているとの報道により,不安を募らせている母親は多い。
仕事の中で被ばくを受容せざるを得ないことのつらさ
原告らの中で,仕事をしていた者の中には,本件事故後,放射性物質が降り注ぐ中,職責を果たすため中通りにとどまり仕事を続けた者がおり,結果的に中通りから避難した人に比べ多くの被ばくをした。原告らは,被ばくによる健康リスクを負うことを分かりながら,職責があり仕事を放り出すわけにはいかないというジレンマに苦しんだ。原告らは仕事の中で,放射線被ばくから原告本人だけでなく守るべき人を守り切れなかったという後悔の念を抱いている。除染作業を原告自らがせざるを得なかった不条理と苦悩
原告らは,自身の居住する家屋や敷地に放射性物質が降り注いだため,自分の家で日常生活をしている間も常に放射線にさらされた。原告らは,放射線被ばくを避けるため,放射性物質を取り除く作業が行われることを希望した。除染作業は,
本件事故により放射性物質をまき散らした被告が本来行うべきである。被告はその放射性物質を自ら積極的に回収しようとしなかった。現状は行政が被告に代わって除染作業を行っているにすぎない。行政による除染作業は遅れた。行政による除染作業を待てない原告らが,業者に除染作業を自ら依頼しても,業者も除染作業の注文が殺到して除染作業に着手できず,1年以上待たされる状況があった。
行政又は業者による除染を待っていたのでは被ばくが
進むことから,放射線被ばくを早く低減したいと考える原告らは,自らの手で
除染作業を行った。
放射性物質をまき散らしたのは原告らでないにもかかわら
ず,原告らは,放射性物質の後処理を理不尽にも押し付けられた。原告らは,なぜ自らの手で除染作業をしなければならないのか,その不条理さに納得できないでいる。
原告らにとって除染作業は初めてのことであるため大きな負担と
なり,重労働のため体調を崩したり,負傷したりした者までいた。除染作業を行えば,放射性物質が沈着したほこりが舞い上がり,それを原告らが吸い込むことで,内部被ばくのリスクが増加した。除染作業直後は放射線量が下がったとしても,原発からの放射性物質の拡散が継続していることにより,一向に除染作業が行われない山林などのホットスポットから放射性物質が風で運ばれ,放射線量がすぐに上昇した場合も多い。原告らは,自らに責任がないにもかかわらず除染作業を強いられ,その肉体的負担及び内部被ばくとともに,除染作業による効果が思うように実現できなかったことで精神的苦痛を抱えた。放射線被ばくに関するおそれは正当である

本件事故の現実
本件原発1号機において,平成27年4月に原子炉格納容器内を調査したところ,
計測した放射線量は最大で毎時9.7Svあった。
この数値は,
人が
無防備でそこにいれば1時間足らずで死に至る値である。人の接近は不可能な状態にある。原発は,事故から約5年経過した今でも,容易に人を死に至らしめる存在である。自身の生命を守ろうと思えば,このような原発の存在を恐れるのは当然である。原発は,人々に対し,現実に死の恐怖を与えている。本件原発の1号機,2号機,3号機の建屋爆発による大気中に放出されたセシウム137の合計量は,広島原爆約168発分,そのうち福島県などの陸地に落ちたセシウム137は約37発分である。原告らは,学校教育の中で広島原爆の恐怖について学んでおり,この広島原爆37発分という数字は,
広島原爆をはるかに上回る放射線被ばくによる被害が生じるのでないかとの恐怖をもたらすには十分な数である。本件事故後,国は,強烈な急性被
ばく以外では,放射能の影響は直ちにない,安全であるといった情報を流し続け,放射能によって死んだ人はいないとの説明を繰り返している。チェルノブイリの事故時とは違って,致死量に近いほどの高線量の場所に十分な被ばく防御手段もとらないまま近づき消火作業等に従事したリクビダートルのような人々がいないため,被ばくを原因とする短期間で死亡事例がなかっただけの話である。現実に急性被ばくにより死亡した人がいないとしても放射性物質に汚染された地域が安全とはいえない。本件事故前に比べて極めて多量の放射性物質が飛散・沈着したため,中通りの土壌・建物汚染は深刻であり,空間線量は高いままである。中通りに暮らす人々は外部被ばく・内部被ばくの危険にさらされている。放射線被ばくを恐れて避難し,避難中に体調を悪化させて死亡した者は数多い。本件原発から遠く離れた地点においても,健康へのリスクが,現実に存在している。本件事故は,精神的にも人々を極限まで追い詰めた。放射性物質の飛散・沈着,避難指示により本件事故前の生活を奪われたことを苦にし,自ら命を絶つ者までいる。本件原発は人を死に至らしめる存在であるとともに,放出した放射性物質により,福島県に暮らす人々に対して生命や健康のリスクをもたらしている。このおそれは,本件事故から5年を経過しても継続している。原子力緊急事態宣言すら解除されておらず,溶けた核燃料のデブリがどこにあるのかさえも判明していない。これらの状況下において,中通りに暮らす原告らが,更なる本件事故や低線量被ばくを恐れるのは正当である。

被ばく健康リスクについて個人に責任転換すべきでない
本件事故においては,放射性物質・放射線が色もなく,臭いもせず,健康被害も晩発性であることが多いので,個々人が危険を察知して逃げることができない特徴がある。政府又は事業者である被告が,本件事故当初から,積極的に情報を開示し避難誘導しなければならなかった。放射性物質の性質や放射線被ばくの危険性に対しても周知し,外部被ばくと内部被ばくの違いに
ついても住民に伝える必要があった。これらの情報がなければ,本件事故によって被害を受けるおそれのある住民が,放射線被ばくから適切に身を守ることができないからである。原子力産業が有する情報の機密体質も相俟って,本来開示されるべき情報が隠され,かつ,責任逃れのため被害を過小評価する方向に進んでいった。実際,事故当初のメルトダウン否定やSPEEDI情報の非開示等,国や被告による積極的な情報開示はなかった。放射線被ばくの危険性についても,国は直ちに影響はないとの言葉を繰り返すだけであり,それ以上のことを伝えることはなかった。本件事故後,避難指示区域外の中通りの住民の中で自らの判断により避難を行った自主的避難者は,情報伝達回路が機能しない中で,どうやって自分の身を守ったらよいか悩んだ。自主的避難を迫られたことについての問題は,本来,①政府による避難区域の指定は適切であったか,②公的機関や事業者の側からリスク情報が積極的に開示されたかという点から検討しなければならないはずである。本件事故後,国や福島県は,放射線についての知識を広めるため複数の会合等を開き,空間線量年間100mSv以下は安心・安全であるが,年間20mSvをもって国の避難指示基準とするとしてきた。国や福島県は,自主的避難の問題を,
放射線被ばくへの
正しい
知識の不足から来る
放射線恐怖症
として,心理的不安の過剰という個人レベルの問題として置き換え,責任転換してきた。誤った意味でのリスクコミュニケーションを住民に押しつけ,
中通りの住民は避難する状況にないと宣伝し続けた。
このような宣伝は,
自主的避難者及び自主的避難地域である中通りにおいて住み続けながら放射線被ばくについて思い悩んだ住民に対し,非科学的,知識不足,過度に神経質
などのレッテルを貼った。
このキャンペーンは,
誤った
科学の名の下に住民に社会的犠牲を強いている。

被ばくから子供たちを守るための自主的避難
福島県から近県へ避難した者及び遠隔地に避難した者に関し,避難の経緯
や避難生活への適応を比較検討することを目的として,山形県(平成25年12月調査実施)と沖縄県(同年10月調査実施)で生活する避難者を対象とした福島県外避難者調査が,福島県内における避難経験者と未経験者の社会的・心理的特性を比較検討することを目的として,福島県内に居住している母親を対象とした福島県定住者調査(平成26年8月)が,それぞれ行われた。これらの調査を基にして,高橋征仁氏は,対象者を,A:福島県内定住者(1か月未満の自主避難経験者を含む。),B:自主避難経験者(1か月以上の自主避難経験者),C:福島県から山形県に自主避難中,D:福島県から沖縄県に自主避難中,E:関東から沖縄県に自主避難中の5グループに分け,避難の経緯や避難生活の在り方,メディアや行政への信頼,パーソナリティと不安などに関して比較検討している。その結果,福島県外に自主的に避難した者は,福島県内の居住者と比較して,テレビや新聞の情報でもそのまま信じるのではなく,他のテレビ局の番組や新聞,インターネットで確かめているなど4つの質問から構成されるメディアリテラシーの得点
が高いことが判明した。福島県外自主的避難者は,ほとんどの者が,東日本大震災直後の政府の発表やマスコミ報道に不自然さを感じ,チェルノブイリ事故に関する自主的な学習を行っている割合が高い。自主的避難者は,知識不足どころか,本件事故に関する情報を多面的にチェックし,より多くの知識を積極的に求める傾向があることが判明した。実際に,原告らの中にも,本件事故後は,積極的に放射線についての会合や講演会に出掛け,テレビやラジオの報道を注視し,時には専門書まで読み,放射線被ばくに関する知識を積極的に得ていた者がいる。
以上のことからすれば,
自主的避難者等が
正しい知識不足と非難することは誤りで,むしろ意図的な偏見である。過度の心理的不安を抱えた人だけが自主的避難したという見方や,地元に残るより避難することの方がストレスは強いという見方は一面的であり,自主的に避難した者が,特別心理的不安を抱えていたのでもなく,特殊だったわけで
もない。原告らのうち自主的避難をしなかった者は,知識不足から自主的避難に思い至らなかったのではなく,放射線被ばくは危険と知りつつ,やむにやまれない理由からとどまらざるを得なかった。原告らは自分なりに情報収集をしながら,被ばくを極力避ける生活を強いられた。

放射線被ばくに対するおそれは正当
自主的避難者は積極的に情報を求め,パーソナリティの面としても基本的には物事に積極的であり,未知の出来事に過度に不安を抱くタイプでもない。自主的避難を決断したことや自主的避難をしようと思い悩んだことを,知識不足や放射線恐怖症による過度の不安といった個人レベルの問題にすり換えて責任転換しようとすることは誤りである。国や福島県は,放射線被ばくについて正しく怖がる,正しく恐れることを求めてキャンペーンを繰り広げた。正しくという言葉は,未知の部分が多く残されている放射線被ばくによるリスクについて,安全であるか否かの決着が付いているかのような前提で用いられている。正しい理解を求めることは,当該情報の正当性すなわち一定の放射線量以下であれば安全との考え方を決めつけた上で,その考え方に従わない者にリスクを押し付ける。科学を偽装した社会的強要にほかならない。このようなやり方が極めて巧妙に,国民を洗脳するかのごとく喧伝されていること自体,原告らの精神的損害につながっている。原告らは,低線量被ばくといった,科学者の間でも対立があるような事項についても,自分の手で知識や情報を得て考え悩み抜いた上で本人や家族の身を守るため行動している。原告らの有する放射線被ばくに対するおそれは,抽象的に生じているのではなく,具体的に生じている。原告らにとって,知識不足や過剰不安ゆえに,それまで住んでいた家から補償の当てのないまま放射線量の低い場所へ大きく移動・移住するという重大な決断(自主的避難)を下すことはあり得ない。自主的避難者は,被告及び国や福島県による情報隠しを敏感に察知し,放射線被ばくを避けるための自己防衛
として,予防的見地から避難したのであって,その行動はやむを得ない。放射線被ばくに対するおそれは,原告らが自ら得た低線量被ばくの危険性や内部被ばくの危険性などの情報に基づくものであり,正当である。原告らは,本件事故によって放出された放射性物質,そして放射性物質から発せられる放射線による被ばくのリスクについて正当に怖がるものであって,この原告らの慎重な態度を責めることは絶対に許されない。原告らがとった避難や被ばく対策は決して知識不足から来るものでない。その精神的損害も,個人のパーソナリティの問題に還元することはできない。原告らが放射線被ばくに対する恐れを抱いたことにより被った精神的損害は,正当であり,本件事故との間に相当因果関係を有する。
5中通りの住民は見棄てられた
中通りは,風向きがもたらした放射能プルームの影響により,浜通りの避難指示区域と同程度の放射性物質が降り注がれた。国は,中通りに避難指示は出さなかった。本件事故直後,国は,避難指示範囲設定の不合理さを認識していたものと思われる。仮に国が,風向きやSPEEDIのデータを基に避難指示を出してしまうと,
福島県の政治の中心地である福島市及び経済の中心地である郡山市を含む,110万人以上の人口を抱える中通りまで避難指示を出す必要がある。人口の多い地域からの避難に混乱が生じ交通渋滞などのパニックに陥ってしまう。一旦,避難パニックが起きたときにはそれを押さえる手段はなく,福島県全体,東北全体,日本全体が混乱し,経済が停滞する事態が生じかねないと想定し,国や福島県の役人などが懸念したと思われる。
このときの国などの想定・懸念は
エリートパニック
と呼ばれる。
中通りに住んでいた原告らは,
エリートパニック,
経済的理由によって見棄てられ,十分な補償や支援策もなく,被告から原告ら個人に対する謝罪すらない。原告らは,大きく精神的に傷つけられた。6自主的避難を迫られた
原告らは,本件事故後,放射性物質が降り注ぐ中で,中通りに住もうと思えば
健康リスクがあり,
被ばくによる健康リスクを避けようと思えば住み慣れた中通
りから避難しなければならないというジレンマを抱えた。中通りには避難指示もなく何の補償の当てもないまま避難をするかどうかの自主的な判断を迫られた。自主的避難の決断をした原告らは,自分自身の安全だけでなく,家族,特に子供のため放射線の影響の少ない地域に避難することを選択した。子供たちを避難させないとすれば,将来の健康リスクに関する危惧を抱くことになり,放射線から守ってやることができなかったとして自責の念に駆られてしまう。他に,原告らの中には,
本件事故直後の混乱と不安の中で少しでも原発から離れた他県に一時的に避難した者,
自主的避難をすべきかどうかで家族会議を開くなどして悩む者,
自主的避難をしたが避難に伴う家族の不安に悩む者,勤務先や子供の通う学校の関係で通勤先や通学先を移せず住居のみ福島県外とする避難を行い負担の大きい二重生活を迫られた者,
自主的避難をしたが避難に伴う体調不良に苦しみ悩む
者,一旦自主的避難をしたが避難生活の苦悩に耐えかねて中通りに戻った者,避難や放射線被ばくに対する考え方や仕事に対する重圧の差などから避難という自主的な判断をめぐって家族との争いが生じた者がいる。
7中通りで生活する決断をせざるを得なかった苦悩
原告らの多くは,本件事故による放射線被ばくをすることを承知の上で,中通りにとどまるという決断をせざるを得なかった。原告らは,中通りにいてよいのかどうか悩み,
本当は避難したいのにそれができない悔しさや悲しみを背負って
生活せざるを得なかった。
放射線が危険と分かっていても,
被ばくを覚悟しつつ,
中通りにとどまる選択をとらざるを得なかった。その理由は様々であるが,仕事を放棄できない,病気や老齢の家族を置いて逃げられない,子供の通学のため,家族間の意見対立から一部の家族だけを置いて避難できないなどである。なるべく被ばくを避けながら中通りにおいて生活することを選択したものの,被ばく防止をしながら生活することに精神的苦痛を感じている。避難先で仕事を見付けられるか不安であったことから,職を失わないため中通りに残らざるを得なかった
者もいる。金銭面から,避難費用や避難先での生活分を賄えないとして,自主的避難を断念した者も多い。原告らは,本当であれば被ばくを避けるため避難したかったが,それができずに精神的に傷ついている。原告らが中通りでとどまる決断をした理由は様々であるが,安心・安全という理由では決してない。原告らは中通りにおいて生活しているため,自主的避難をしている者に比べ,より高い放射線量を長期にわたって浴びていることから,健康リスクに対する不安も強い。8小さな子供を持つ親・祖母としての不安
原告らの多くは子供や孫を持つ母や祖母である。小さな子供は,細胞分裂が盛んなため放射線に対する感受性が強く,特に放射線被ばくの影響を受けやすい。原告らは放射線被ばくが小さな子供に与える影響を強く懸念している。子供や孫達を放射線被ばくから守るため,原告らは様々な策を講じている。それは小さな子供や孫達に大人以上の負担を精神的にも強いるものであり,原告らは子供たちが精神的に病んでしまわないかどうかと不安を抱えている。
9結婚に対する不安
原告らの中には未婚の女性もいる。原告らの多くは子供や孫を持つ母や祖母であり,その子供や孫にも未婚の者が多い。原告らは,放射線被ばくの影響によって,未婚の者が将来結婚し,正常に子供を産むことができるかどうかと心配している。本件事故時に中通りにいた者が,被ばく者として正常な子供を産む能力がないとして差別され,結婚できないのでないかと不安を抱えている。10本件事故により失われたもの・余儀なくされた生活の変化
失われた清らかで豊かな自然とその恵み

本件事故後も,中通りの自然は,一見して本件事故前と同じように見える(除染廃棄物を覆ったブルーシートを除く。)。実際には,目に見えない放射性物質に覆われている。山に放射性物質がたまり,川に放射性物質が流れ込む中,原告らには本件事故前と同じ景色には見えなくなった。本件事故前は,中通りの清らかで豊かな自然とその恵みを原告らは享受していた。山か
ら山菜をとり,自然の木々や花を愛で,自然との一体感を堪能できていた。本件事故により,山河や田畑に放射性物質が降り注いだことで,その自然を楽しむことができなくなった。原告らにとって,中通りの清らかで豊かな自然で暮らすという生きがいが失われた。

中通りは元来自然豊かな地域であったが,本件事故により,この地域に住む者は放射線にさらされ,常に健康リスクを背負い,そのことを常に不安に感じなくてはならない地域になった。原告らは,清らかで豊かな自然環境・住環境を十分に享受することができなくなった。内部被ばく対策のため,中通り・浜通りの水や農産物の摂取を回避せざるを得なかった。既に受けている外部被ばくの上に,被ばくを重ねることを避けるためには,原告らが家庭菜園で自ら育てた野菜・果物なども口にすることができなくなった。地元や家庭菜園の食材を使うことを避け,他県産の食材を購入するなどの対応をせざるを得なかった。他県産の食材は,福島県産のものと比べて価格も高く,鮮度も落ちてしまう。
原告らは福島の自然や農産物と一体となって生きてい
くという価値観を喪失した。
失われた家族とのつながり


原告らの中には,同居していた家族が避難し,本来の親密なつながりが失われた者がいる。放射線被ばくによる生命・健康へのリスクを避けるため,家族の一部が福島県外に避難する一方,様々な理由で中通りに残らざるを得ない者もあり,
一緒に暮らしていた家族が別離せざるを得ない状況に追い込
まれた。


世帯の中で自主的に避難した家族とそうでない家族が離れて暮らしているせいで,世帯分断の生活を今でも送っている者がいる。元々は自由に会えていた子供や孫に自由に会うことができなくなった。距離的に離れたことで,子供や孫に接触しようと思えば,
子供や孫のいる避難先に通うため,
精神的,
肉体的,時間的,経済的負担が掛かる。


親子や夫婦で避難についての意見が対立する場合があった。親としては,健康を気遣って福島県外への避難を勧めたにもかかわらず,子供は仕事や就学等の都合から避難を拒否したり,家族を残して自分だけ避難できないと判断したりしてとどまった。価値観の違いから夫婦でも避難するかどうかで意見が分かれ,軋轢が生じた場合もある。本件事故さえなければ生じなかった家族間の対立が生じた。


放射線被ばくによる健康リスクを案じれば,中通りに子供や孫を里帰りさせることにも葛藤が伴う。仮に子供や孫を招けば,将来に健康リスクが発現するのではとの不安感に駆られる。原告らは,現在でも続く放射能汚染のため家族とのつながりを失った。
失われた地域とのつながり
中通りにとどまる者がいる中で,自主的に避難した者もいる。長い時間を掛
けて築き上げてきた地域のコミュニティが崩壊・分断された。原告らは地域でのきずなを失い,精神的に損害を被った。本件事故により放出された放射性物質により,地域とのつながりも変化した。
失われた親族・友人とのつながり
本件事故前,原告らは,近隣から農産物を購入したりもらったりして人間関係のつながりを感じながら暮らしてきた。本件事故後は,内部被ばく対策のためそのようなつながりを避けざるを得なかった。福島県外の親族や知人に福島県産の食品を贈ることもためらわれることになった。原告らの中には,本件事故前はおいしいと言って喜んでくれていた果物などを,事故後に親族に贈ったところ放射線のせいで嫌がられ,親族関係が傷ついた者もいる。親族や近隣住民とのつながりが損なわれ,原告らは精神的に傷ついた。内部被ばく対策に理解を示す者もいるが,無理解な者もおり,国が基準値以下の食品は安全であるとのキャンペーンを行ったことと相俟って,風評被害といった言葉が多く聞かれるようになった。原告らが福島産の食品を避けることに対し,復興に対
し水を差すものとして扱われかねない状況すらあった。原告らは,内部被ばく対策について友人に話すことをためらわれた。原告らは,友人と本音で語り合うことができず,友人との間に溝が生じた。原告らの中には,本件事故に関連して差別や中傷の事実を耳にした者もいる。本件事故の被害者の間でも溝が生じている。避難指示の有無によって賠償額が全く異なり,差別されていると感じている原告らは多い。中通りの住民同士でも,自主的避難が可能であった者ととどまらざるを得なかった者との間では軋轢が生じ,精神的苦痛を抱える原告がいる。
婚約破棄
本件事故後の福島に住んでいるというだけの理由で,家族が婚約を破棄され,精神的に傷つけられてつらい日々を送っている原告がいる。
仕事の喪失・変更
原告らの中には働いている者もいたが,放射線によるリスクを避けようと思えば,福島県外又は比較的線量の低い福島県内に避難するほかなく,仕事を辞めざるを得なかった者もいる。本件事故がきっかけで,自営の仕事ができなくなった者もいる。被ばくについての考え方が職場で合致せず,仕事を辞めた者もいる。
趣味の喪失
外部被ばく対策の除染作業として,土壌の表面や樹木の表面に付着した放射性物質を除去するため,
原告らは庭や家庭菜園の表土や樹木を除去せざるを得
なかった。表土を剥がしたことにより肥えた土も失われ,野菜等の栽培の再開も困難になった。家庭菜園については,育て直したとしても,作物を摂取すれば内部被ばくのおそれがあるため,純粋に楽しむことができなくなった。原告らは,樹木の育成や家庭菜園,ガーデニングなど趣味を本件事故前のようにはできなくなり,精神的苦痛を味わった。ハイキングやスキー,山菜とりといった比較的放射線量の高い山でのレジャーも,外部被ばく・内部被ばくを抑えよ
うとすれば断念せざるを得ない。本件事故前は趣味と実益を兼ねていた山菜とりは,山菜やタケノコ,キノコから高度の放射線量が検出され,内部被ばくを避けるため口にすることはできない。
ペットロス
原告らの中には,犬や猫といったペットを飼っていた者もいた。ペットに本件事故以前にはなかった健康不調が生じ,原告らは,放射線による健康被害がペットに顕在化したのでないかと不安を抱え,精神的損害を被った。自主的に避難した原告らの中には,避難先にペットを連れて行けなかった者もいる。その際ペットと引き離されたことによる精神的損害を抱えた。
曖昧な喪失
中通りは,元来清らかで豊かな自然を持っていた。原告らは,中通りで生まれ育った者もそうでない者もいるが,中通りに魅力を感じて暮らしていた。中通りで過ごすことを考えていた者や,中通りを終の住みかとするため他の土地から移住してきた者もいる。中通りは長期の休みには子供や孫が帰郷する場所でもあった。原告らやその家族にとって,中通りは,かけがえのないふるさとだった。放射性物質の蔓延により,そのふるさとにおいて,健康への不安を考えずに平穏に暮らすことができなくなった。子供や孫の健康を気にすれば,中通りへの帰郷を望めないこともあり,仮に帰郷したとしても,子供や孫の健康を心配しなければならない。それまで同居していた家族が放射線被ばくを避けるため自主的避難し,自由に会えなくなった者もいる。かけがえのない人や物を失うことを喪失という。喪失を経験すると,多くの場合,その直後は悲嘆反応が出現する。曖昧な喪失は,その喪失自体が曖昧で不確実な状況のことをいう。通常の喪失と異なり,曖昧な喪失の中にある人は,その悲しみのため,前に進むことができなくなってしまう。原告らの中には,曖昧な喪失を経験し,精神的に傷ついている者がいる。低線量被ばくによる健康リスク及びその懸念


放射線被ばくには健康リスクが存在する。原告らは,本件事故当初大量の放射線を浴びたのに加え,放射線にさらされ続け,健康被害がいつ顕在化してもおかしくない。
本件事故当初,
適切な情報が提供されず,
原告らは生命・
健康のリスクについて不安を感じた。放射線被ばくについて知識を得た後は,生命・健康への不安を感じた。直線・閾(しきい)値なしの考え方や低線量被ばくによる健康リスクの考え方からすれば,国が避難指示を出さなかった地域の線量であっても,生命・健康へのリスクを有する。


本件事故後,原告本人や家族に体調の異変が生じ,その際,その体調不良が放射能によるものでないかとの不安を抱いた者がいる。甲状腺の嚢胞や目の病気は多くの原告らとその家族に生じており,原告らは放射線による健康被害が現実に生じたと不安を感じ,精神的に落ち込んでいる。


子供は放射線の影響を比較的受けやすい。特に小児がんの発生が懸念される。その子供が自らの子供を産もうと思えば,染色体異常の影響を受けるおそれ
(遺伝的影響)
があり,
奇形児・障害児を出産するおそれが付きまとう。
原告らは,いつ発生するか分からない,子供や孫,更に次の世代にまで放射線による健康被害が発生することを恐れて生きていかなくてはならなくなった。様々な理由から子供たちの避難が遅れた原告らの中には,自らには何ら非がないにもかかわらず,子供たちを放射線から守れなかったとして自責の念に駆られている者もいる。


これらの不安は,
本件事故から5年以上たった時点でも放射線量が本件事
故前のレベルまで下がらず低線量被ばくが続く中,現在も継続している。被ばく対策に追われ疲れ果てる
原告らは,本件事故後,日々の生活の中で健康被害を避けるため,常に放射
線の危険を想定し,
放射線から身を守るため様々な防護策を講じた。
原告らは,
呼吸や食事ですら被ばくから身を守ることを考えて過ごさなければならない。福島県産の食材や水を避け,趣味も十分に楽しめなくなった。原告らは被ばく
防御対策に追われ,疲れ果てていった。原告らの中には,趣味や仕事などの生きがいとしていた農業を,被ばくを避けるためやめた者がいる。家庭菜園からとれる野菜なども,口にしなくなった。放射線被ばくに敏感な家族とそうでない家族間で意見の行き違いなどが生じ,精神的に傷ついた者もいる。被ばく防御による行動制限及び体調不良並びに介護生活の苦悩
原告らは,自身の楽しみや生きがいよりも,放射線被ばくから身を守るということを第一にして暮らしていくようになり,生活の変化を余儀なくされた。原告又はその家族が体調を壊し,原告らは日々の生活を送る中で更に疲れ果てていった。被ばく防御による行動制限のため寝たきりになった家族がおり,その家族の介護に振り回されて苦しむ原告もいる。
除染及び除染後の放射性廃棄物にまつわる精神的苦痛

中通りでも放射線被ばくを低減するための除染作業が行われた。行政による除染はなかなか行われず,原告らが自ら除染を業者に委任しようとしても,その業者も手いっぱいの状態で順番待ちであった。行政による除染を待つ間,原告らは,放射線量の高い自宅での寝食,生活を強いられた(本来は被告自らが除染作業をすべきであること,行政による除染を待てなかった原告らが自ら除染作業を強いられたことによる精神的苦痛については前述。)。

除染作業終了後の無残で殺風景な姿になった庭や家庭菜園を見て,原告らは本件事故前の豊かで華やかな庭や家庭菜園とのギャップに落ち込んだ。

除染作業が行われても,それは所詮移染にすぎず,除染により生じた廃棄物が自宅の敷地内にブルーシートにくるまれて積み上げられ,庭の土の中に埋められるなどされた。この廃棄物自体が放射性物質であり,それが日常空間に取り残された。本来であれば,被告がこれらの放射性廃棄物を引き取るべきであるが,被告はそうしていない(被告と福島県森林組合との間では,材木を加工する際に出されるバーク(木の幹の皮)が放射性廃棄物になるため,これを被告が引き取り原発敷地内に運んでいる。)。原告らは,自宅の
敷地内にある放射性廃棄物が国によって中間貯蔵施設へ移動されるまで待たなければならない。原告らは,日々生活する中で,自宅敷地内にブルーシートにくるまれた放射性廃棄物や,それが自分の土地に埋められていることを示す標識を目にするたびに,いやがおうにも放射性物質の存在を自覚させられている。原告らは,放射性物質に対する不安からいつまでも逃れられないことによる,
更なる喪失感と精神的苦痛を感じながら毎日を過ごしている。
原告らの精神的苦痛は,自宅の敷地内に積み上げられ・埋められた放射性廃棄物の遮蔽措置が十分にとられていないことからも生じている。
福島で生きることの誇りが失われた
本件事故により,
中通りを含む福島県民は放射線にさらされた人として扱わ
れるようになった。
福島県外に避難した子供が避難先で
ヒバクシャ
として,
いじめやからかいの対象とされ,結婚や就職で差別的に扱われるおそれがあるとの報道がされた。福島県のナンバーを持つ自動車は,給油をするため福島県外のガソリンスタンドを訪れたのに給油を拒否されたり,駐車場の管理者から,別の場所に駐車するよう言われたりしたといった事例もある。食べ物を代表として,
福島県の物は放射性物質に汚染されているから全て危険であるといった扱い方すらされたこともある。このような状況の中で福島県というふるさとに対する誇りを傷つけられ,精神的に落ち込んだ原告がいる。
第3中間指針等による賠償について
1自主的避難等対象区域に係る賠償の内容
中通りは,中間指針追補において,自主的避難等対象区域とされた地域に当たる。中間指針も同追補も法律ではなく,本件事故による損害賠償の範囲や額を判断するに当たってのガイドラインにすぎない。
中間指針追補において,避難区域外からの避難の合理性を認め,同地域に在住する者については,①避難によって生じた生活費の増加費用,②避難により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたため生じた精神的苦痛,③避難及
び帰宅に要した移動費用として,子供・妊婦については一人当たり40万円,それ以外の者については一人当たり8万円が賠償されることとされた。なお,実際には,中通りにとどまり避難していない者についても同額の賠償がされている。平成24年3月に定められた中間指針第2次追補において,少なくとも子供及び妊婦については,個別の事例又は類型ごとに,放射線量に関する客観的情報,避難指示区域との近接性等を勘案して,放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱き,その危険を回避するため自主的避難を行うような心理が平均的・一般的な人を基準としつつ,合理性を有していると認められる場合には,賠償の対象となるように定められた。平成24年分として,子供・妊婦以外の者について,追加として4万円の賠償がされることになった。
これらの基準に従い,被告が賠償額を定め,対象者に請求書を送付する形式により賠償がなされた。国が十分に被害者の声を聴かず,加害者である被告が一方的に賠償基準を定めて請求書を送り付け,一律賠償に応じるかどうか返答を迫るようなやり方が,
本来の意味での誠意ある損害賠償に値しないのは明らかである。
2一律かつ低額の賠償額では賠償に値しないこと
中間指針等の内容は,
加害者である被告でも受諾せざるを得ない最低限の基準
を定めたにすぎない。中通りに住む被害者である原告らには,それぞれ個性があり,
享受していた環境等も本件事故により失われた生活の内容も被害者一人一人で異なる。被害者ごとに被害実態も異なる。被害者の具体的な被害実態に応じた損害賠償がなされるべきであるのに,一律賠償ではそのような考慮が一切なされていないことになり,一人一人の被害実態を無視する。
中間指針等に法的拘束力はないため,中間指針等に含まれない損害であっても当然に賠償の対象外となることはない。中間指針等に含まれない放射線被ばくによる健康不安や差別に対する不安,生活の質の変化,放射性物質により失われた清らかで豊かな自然やその自然の下での豊かな生活が失われたこと,ふるさとに誇りを持てなくなったことなど,原告らの精神的損害として重大で多くの部分が
取り残されている。原告らの精神的損害は多大かつ深刻であり,その損害が5年間も継続したことからすれば,その精神的損害を4万円では償えない。第4原告らの主張する精神的損害が中間指針等の対象とされていないこと1中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害は,自主的避難により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたため生じた精神的苦痛又は,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたため生じた精神的苦痛に係る損害であるとされている。
2原告らの主張する精神的損害との関係

精神的損害(精神的損害①~㉞)に整理される。これらの精神的損害①~㉞と中間指針追補で対象とされた精神的損害との(包摂)関係は次のとおりである。初期被ばくしたことによる精神的損害(精神的損害①)中間指針追補は,本件事故当時,原告らを含む自主的避難対象区域に住んでいた住民が初期被ばくしたことを前提とするとも推測されるが,自主的避難対象区域に住んでいた住民が本件事故当時どのようにしてどの程度被ばくしたのかを具体的に検証しておらず,個々の被ばくの事実を確認していない。中間指針追補は,初期被ばくしたこと自体を損害と考えておらず,原告らの初期被ばくしたことによる精神的損害は,中間指針追補の対象となっていない。原告らは,本件事故当時,中通りに居住していたところ,中通りに本件事故により放出された放射性物質が降り注いだことは明白であり,原告らは,程度の差はあれ,それにより外部被ばく又は内部被ばくし,初期被ばくした。この初期被ばくにより,原告らの身体が不本意にも傷つけられたから,仮に傷ついたDNAが原状回復し,その程度が軽いとしても,原告らには少なくとも精神的損害がある。初期被ばくを強いられたことによる精神的損害は深く,原告ら
の心の傷として決して消えることはない(幸福追求権,生存権の侵害)。放射線被ばくを避けるための避難をするかどうかの決断を迫られたことによる精神的損害(精神的損害②)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に含まれる(幸福追求権,生活平穏権,居住の自由の侵害)。精神的損害②を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
被告から適時に正確な情報が発信されず,適切な放射線被ばく防止措置をとることができなかったことによる精神的損害(精神的損害③)炉心溶融の事実を被告が隠蔽したことなど,本件事故の本当の姿・現状について,被告から情報提供がなかったため(知る権利の侵害),原告らは適切な放射線被ばく防止措置をとることができず,無用な被ばくを強いられたことによる精神的損害であり(幸福追求権,生活平穏権,居住の自由の侵害),中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。福島県の地元新聞である福島民報によると,炉心溶融の事実を被告が隠蔽したというニュースが,平成28年の福島県内の読者が選ぶ十大ニュースのトップであった。この記事から読み解くと,原告らを含む福島県民が被告による情報隠蔽によって深く傷つけられたことが分かる。
放射線被ばくを避けるための一時的避難に伴う精神的損害(精神的損害④)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に含まれる(幸福追求権,生活平穏権,居住の自由の侵害)。精神的損害④を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
放射線被ばくから身を守るため自主的避難をしたものの,自主的避難に伴う葛藤や精神・身体の不調,生活の苦労,家族の争いなどにより生じた精神的損害(精神的損害⑤)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部が含まれる。ただし,中間指針追補が示すところの自主的避難により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたこと,又は放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたの射程距離が問題になる。正常な日常生活とは,本件事故前の日常生活との対比で使用されていると解される。自主的避難により又は放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が阻害されたから,放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに対する精神的損害が射程となる。精神的損害⑤は,
放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便
さに対する精神的損害にとどまらず,自主的避難を決断するまでの心の葛藤や自主的避難後の心の葛藤に関するものであり,自主的避難をめぐる家族間における諍いにより精神的に傷ついたから(本件事故がなければ諍いは起きなかったという意味で因果関係はある。
幸福追求権の侵害)これらの精神的損害は,

中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)には含まれない。中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部含まれる部分についても,精神的損害⑤を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
自主的避難により生じた家族の分断・別離による精神的損害
(精神的損害⑥)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害
(上記1)
とは別物である
(幸
福追求権,生活平穏権,居住の自由の侵害)。中間指針等は,放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに対する精神的損害を射程としていると解される。実際にも,避難指示区域の住民に対し,ADR実務において,
それまで一緒に大家族で住んでいた者が避難先別にグループ分けされたことによる家族別離に関する慰謝料は,別途増額が一般的に認められており,被告との間で和解が成立している例が多数存在する。自主的避難により生じた家族の分断・別離による慰謝料の増額和解事例もある(甲A72の2)。放射線被ばくを余儀なくされると分かっていても,中通りにとどまり仕事や
生活をせざるを得なかったことによる精神的損害(精神的損害⑦)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部(本件事故後,平成23年4月か同年5月まで)含まれる(幸福追求権,生活平穏権の侵害)。精神的損害⑦を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
放射線被ばくから原告ら本人や原告らの家族の身を守るための対策を講じたことで,心身ともに疲弊したことによる精神的損害(精神的損害⑧)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部(本件事故後,平成23年4月か同年5月まで)含まれる(幸福追求権,生活平穏権の侵害)。精神的損害⑧を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
仕事の中で,
放射線被ばくから守るべき人を守り切れなかったという後悔や
職責を果たし切れなかったという無念さから来る精神的損害(精神的損害⑨)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。精神的損害⑨も本件事故がなければ後悔や無念さを感じることはなかったという意味で因果関係はある(幸福追求権の侵害)。原告らは,その後悔や無念さが自分の心の損害であることを主張立証している。
子供の親,又は孫の祖父母として,子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配することによる精神的損害(精神的損害⑩)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。精神的損害⑩も本件事故がなければ,子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配することはなかったという意味で因果関係はある(幸福追求権の侵害)。原告らは,その子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配することが自分自身の心の損害であることを主張立証している。

特に,
母性としての防御本能による被ばく回避とその苦悩による精神的損害(精神的損害⑪)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部(本件事故後,平成23年4月か同年5月まで)含まれる。母性としての防御本能による被ばく回避とその苦悩による精神的損害は,生命の根源に対する敬虔さを呼び覚ます意味で重要である。身体を捨象した人間観や中性的人間を基盤とする世界では見えてこない母性は本当の危機に直面したときにくっきりと浮かび上がってくる。特に,自分の命と引き換えにでも子供や孫を守りたいという情動・欲求として現れている。母性をもってしても本件事故によって放出された放射性物質は防ぐことができない(幸福追求権の侵害)。精神的損害⑪を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
本件事故後,病気になったり原因不明の体調不良に悩まされて,放射線被ばくが原因なのでないかと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑫)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。原告らはいずれも初期被ばくしているが,その後病気になったり原因不明の体調不良に悩まされたりして,放射線被ばくが原因なのでないかと不安を抱くことによる精神的損害を負った(幸福追求権及び生存権の侵害)。
なお,原告らは不安を抱くことによる精神的損害を主張立証しようとしているのであって,
現に被ばくによる健康被害そのものを主張立証しようとす
るものでないことを再度念押しする。
放射線被ばくにより将来健康被害が生じるかもしれないと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑬)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。原告らはいずれも初期被ばくしているが,その後将来健康被害が生じるかもしれないと不安を抱くことによる精神的損害を負った(幸福追求権及び生存権の
なお,
原告らは
将来の健康被害について不安を抱くことによる精神的損害
を主張立証しようとしているのであって,現に被ばくによる健康被害そのものを主張立証しようとするものでないことを再度念押しする。
被ばく防止に伴う行動制限から家族が体調を崩し,家族の介護を強いられるようになったことによる精神的損害(精神的損害⑭)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。中間指針等は,
放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに
対する精神的損害を射程としているから,他の家族の介護・世話が必要になり自分がそのため本件事故前になかった労働を迫られたことによる精神的損害は別途評価されるべきである(幸福追求権,労働の自由の侵害)。実際にも,避難指示区域の住民に対しては,家族の介護が必要な場合に被介護者及び介護者ともに慰謝料を増額するADRの和解事例が多数存在する。放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな生活(食生活を除く)を奪われたことによる精神的損害(精神的損害⑮)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。中間指針等は,
放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに
対する精神的損害を射程としており,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな生活(食生活を除く)を奪われたことによる精神的損害を含まない。放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに対する精神的損害も生活平穏権の侵害に伴う精神的損害であるが,放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな生活(食生活を除く)を奪われたことは,生活の平穏という消極的な意味合いよりも,健康的で文化的な生活(憲法25条)を営む上でのより基礎的で人間の感性を揺り動かす,清らかな自然とのコミュニケーションに焦点を当てたものである。強いていえば,自然環境享受権(北欧で慣習として認められている通行権,滞在権,自然環境利用権,果実採取権など。)に類似する。

放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食生活を奪われたことによる精神的損害(精神的損害⑯)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。中間指針等は,
放射線被ばくを避けるための場所的移動に伴う苦痛や不便さに
対する精神的損害を射程としており,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食生活を奪われたことによる精神的損害を含まない。
ただし,中間指針等は,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があれば,その増加費用を損害賠償として認めている。被告もこれに従い,原告らを含む自主的避難等対象区域の住民に対して生活費増額分として大人一人当たり4万円及び追加分として4万円(合計8万円)を支払い,原告らはこれらを受領している。原告らは,放射線被ばくを避けるため福島県外産の野菜やペットボトルの水などを買い求めたことなどを含む生活費増加分について,一定の賠償は受けている。これに関しては,例えば,交通事故の場合において自動車の物損に対する慰謝料請求が原則認められないこととの比較において,被告が原告らの放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食生活を奪われたことによる精神的損害については,生活費増加分としての賠償金の支払によって損害は填補されているとの反論が予想される。
しかし,損害の公平な分担という不法行為法の趣旨からいっても,過失を前提とする交通事故と無過失を前提とする原賠法の事例とは,損害の分担基準が異なるという判断は十分あり得るし,そうでなければ,本来あってはならない本件事故の被害者を救済できない。
原告らは,
放射線被ばくを避けるため福島県外産の野菜やペットボトルの水
などを買い求めているが,それによる生活費の増額が全て賠償されているとはいえない。上記の大人一人当たり8万円は,具体的な用途を特定しない包括的な賠償であり,他の生活費増額分も含まれている。原告らは,具体的に上記8
万円の充当関係を明らかにした上で精神的損害⑯を請求するものでない。自動車と違って,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食生活は代替性がなく,原告らの愛情利益や精神的平穏を強く害する。
精神的損害⑯は,別途評価されるべきである(幸福追求権の侵害)。放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然があったからこそできた趣味(家庭菜園・花壇を除く)を楽しめなくなったことによる精神的損害(精神的損害⑰)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。
という意味でのライフスタイルに結び付くのに対し,
精神的損害⑰は,(ス
趣味
ポーツや娯楽など)に重きを置いたものである(幸福追求権の侵害)。家庭菜園・花壇を楽しめなくなったことによる精神的損害(精神的損害⑱)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。原告らの中には,家庭菜園を楽しめなくなったことによる損害について,別途ADR手続において一部賠償を受けている者がいる。そのため,被告から当該原告については損害が填補されている旨の反論が考えられる。
しかし,損害の公平な分担という不法行為法の趣旨からいって,無過失を前提とする原賠法の解釈においては,損害の分担基準が異なるという判断は十分あり得るし,そうでなければ,本来あってはならない本件事故の被害者を救済できない。家庭菜園・花壇を楽しめなくなったことは代替性がなく,原告ら本件事故被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害する。
精神的損害⑱は,別途評価されるべきである(幸福追求権の侵害)。放射線被ばくから身を守るための対策をどうするかについて考え方の食い違いにより家族間に生じた精神的損害(精神的損害⑲)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。
であるが,精神的損害⑲は放射線被ばくから身を守るための対策をどうするかについて考え方の食い違いにより家族間に生じた精神的損害であって,家族間の意見の違いによって原告らが精神的に傷ついたことによる損害である(本件事故がなければ被ばく対策に関する家族間の意見の違いは起きなかったという意味で因果関係はある。幸福追求権,生活平穏権の侵害)。本件事故を起因とする家族の離婚・婚約破棄に伴う精神的損害(精神的損害⑳)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。離婚や婚約破棄の相手方は被告とは無関係の個人であるが,離婚や婚約破棄の相手方が本件事故によって原告ないし原告の家族に対し,本件事故が起きなければ抱くことのなかった思い(本件事故を起因とする放射性物質の拡散及びそれによる被ばくという事実に関する偏見,被ばくをどう受け止めるのか,被ばく防御についてどのようにするのか)について意見の食い違いが生まれることはなかった。この意見の食い違いは,本件事故と密接不可分に結び付いたものである。本件事故を起因とする家族の離婚・婚約破棄に伴う精神的損害も,本件事故がなければ本件事故を起因とする家族の離婚・婚約破棄は起きなかったという意味で因果関係はある。原告本人でなく,原告の家族に離婚や婚約破棄があった場合であっても,それが原告本人の精神的損害といえる場合には,原告に損害賠償請求権がある(幸福追求権の侵害)。
放射線被ばくに対する考え方の違いから生じた(家族以外の)周囲の人々との擦れ違いによる精神的損害(精神的損害㉑)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。
る精神的な損害である点が異なる。原子核の分裂という自然現象が原子力発電に利用されるという意味で,原子力が社会化する過程において,社会的動物である人間は,
社会化された原子力発電による利益と不利益を併せて享受してい

る。本来あってはならない本件事故により,原告らは生活を乱され,家族以外の周囲の人々との擦れ違いにより精神的に傷ついたから,これによる精神的損害㉑は,別途評価されるべきである。本件事故がなければ,放射線被ばくに対する考え方の違いも生じないし,家族以外の周囲の人々との擦れ違いも生じなかったから,因果関係はある(幸福追求権の侵害)。
被ばく防止等のために,やりがいを持っていた仕事を失ったことによる精神的損害(精神的損害㉒)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。精神的損害㉒を主張する原告らは,いずれも被告から労働喪失逸失利益の賠償を受けておらず,別途労働喪失逸失利益の主張はしない。本件事故を起因として
やりがいを持っていた仕事を失ったことによる精神的損害
を請求する
(幸
福追求権の侵害)。
原告ら本人や周囲の人の避難等によって地域とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉓)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。地域で暮らす権利は,自分が暮らしたい地域で暮らし,住み慣れた地域で一生を終える権利であって,地域社会において,人とのつながりの中で自分らしい生き方を求めることは,
個人の尊厳・幸福追求権の中核を成す権利である。
地域で暮らすことは,単なる願望や理念でない。地域で暮らすことは,年齢や障がいの有無にかかわらず,地域社会において,人とのつながりの中で,自分らしい生き方を求めることであり,個人の尊厳・幸福追求権の中核を成す権利であり,
かつ,
平等原則の具現化である。
憲法22条
(居住・移転の自由)
や憲法25条(生存権)の保障を基礎に,憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権),憲法14条(平等権)等の憲法条項によって保障されている。本件事故当時,
被告は人の生活に不可欠な電力供給における独占事業者であ
って,国家類似の機能を有するから,原告と被告との間の私人間においても,
上記各憲法上の人権規定は,被告の権利侵害を判定するための民法90条の解釈基準として機能している(他の憲法上の権利についても同じ)。原告らは,本件事故を起因とする原告ら本人や周囲の人の避難等によって,地域とのつながりが失われたことにより,
地域で暮らす権利
を侵害された。
本件事故を起因として親族・友人とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉔)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。親族・友人とのつながりは,憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権)と密接に関わる。本件事故を起因として親族・友人とのつながりが失われたことは,原告らの幸福追求権を侵害する。
放射性物質の分布や被ばく量,避難指示の有無,損害賠償金格差などの差別を感じることにより生じた精神的損害(精神的損害㉕)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。放射性物質の分布や被ばく量,避難指示の有無,損害賠償金格差などの差別は平等権(憲法14条)に違反する。原告らは本件事故により,放射性物質の分布や被ばく量,避難指示の有無,損害賠償金格差などの差別を受けているが,
本件事故がなければこれらの差別は生じなかったから,
因果関係はある。
避難指示の有無による差別は,国によるものであるが,原告らは国を被告としておらず,避難指示の有無の違法性を問題にしているのでない。本件事故がなければ,避難指示の有無に煩わされず,原告らの精神的損害も生じなかったから,生活平穏権の侵害を問題にする。
曖昧な喪失により生じた精神的損害(精神的損害㉖)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。曖昧な喪失としては,大切な人(物)の不在のためそれまであった関係性や愛着が失われること,その人(物)の未来とともに自分の未来がきっとこうなるだろうという確実性が失われること,自分の人生のコントロール感が失わ
れること,将来への希望や夢が失われること,アイデンティティや妻としての役割・子供としての役割といった自分の役割が失われること,世界が安全な場所であるという信頼感が失われることなどが指摘されている。これらは個人の幸福追求権(憲法13条)に関わるものであり,原告らは,本件事故を起因として曖昧な喪失による精神的損害㉖を被っている(幸福追求権の侵害)。家族と同様のペットが亡くなったり,病気になったりしたことが放射線被ばくの影響によるものでないかと不安を抱えることによる精神的損害(精神的損害㉗)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。原告らは,ペットロスそのものを精神的損害として主張するものでないし(避難指示区域の住民については,避難に伴うペットロスについてもADR実務では慰謝料の増額事由となった和解事例が多く存在する),ペットロスが放射線被ばくの影響によるものと断定するものでもない。家族と同様のペットが亡くなったり,病気になったりしたことが放射線被ばくの影響によるものでないかと不安を抱えることによる精神的損害を主張する。ペットが家族と同様であり,生きがいになっている場合が数多く存在する。その意味でペットとともに生きることは,幸福追求権の一部である。そのペットが亡くなったり,病気になったりしたことによって,放射線被ばくの影響によるものでないかと不安を抱えることは,本件事故がなければ生じることのなかった精神的不安であり,
本件事故との因果関係はある
(幸福追求権の侵害)

居住している建物が放射能汚染され,その建物の中で寝食を含む生活をしなければならないことによる精神的損害(精神的損害㉘)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部(本件事故後,平成23年4月か

精神的

損害㉘は,人の生活において最も身近で,居住し寝食をするための建物が放射
を取り出したものである(幸福追求権及び生活平穏権の侵害)。精神的損害㉘を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。居住している建物や敷地の速やかな除染がなされず,高線量の放射線被ばくを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉙)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)に,一部(本件事故後,平成23年4月か同年5月まで)含まれ
損害㉙は,
居住している建物や敷地が放射能汚染されたことに着目したもので
の違いは,本来被告が除染作業を行うべきであるにもかかわらず,行政の手による除染作業を待たなければならず,行政の手による除染作業の順番待ちに耐え切れずに自らの費用で除染作業した場合において,除染作業終了までの期間,高線量の放射線被ばくを強いられたことに焦点を当てた(幸福追求権,生活平穏権の侵害)。精神的損害㉙を全て補うための慰謝料は,既払金の4万円のみでは到底足りない。
何ら非がないにもかかわらず,居住している建物や敷地の除染作業を自ら行うことを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉚)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。原告らの中には,
居住している建物や敷地の除染作業を自ら行うことを強いら
れたことによる除染作業に関する実費について,別途ADR手続において一部賠償を受けている者がいる。そのため,被告から当該原告については損害が填補されている旨の反論が考えられる。
しかし,損害の公平な分担という不法行為法の趣旨からいって,無過失を前提とする原賠法の解釈においては,損害の分担基準が異なるという判断は十分あり得るし,そうでなければ,本来あってはならない本件事故の被害者を救済できない。原告らは,別途ADR手続において,居住している建物や敷地の除染作業を自ら行ったことによる実費の一部の賠償金を受領しているものの,損
害の全部の填補ではなく,原告らが生活の基盤としている建物や敷地を自らの費用で除染作業をすることを強いられたことによって精神的平穏を強く害された(生活平穏権の侵害)。精神的損害㉚は,別途評価されるべきである。自宅の庭や敷地にそのまま置かれた,又は,埋められた除染廃棄物を日常生活の中で見なければならないことによって生じる精神的損害(精神的損害㉛)中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。自宅の庭や敷地にそのまま置かれた,又は,埋められた除染廃棄物を日常生活の中で見なければならないことは,本件事故当時の恐怖や不安を呼び起こすことにつながるし,
継続的に除染廃棄物のそばで暮らさなければならない不
安ないし心理的圧迫は精神的に相当つらいものがある(生活平穏権の侵害)。除染後の自宅の庭や家庭菜園に対する喪失感による精神的損害(精神的損害㉜)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。本件事故による放射能汚染がなければ,自宅の庭や家庭菜園を除染作業することも必要なく,
除染作業によって植木や花壇がなくなって寂しい思いをするこ
とがなかった,という意味で因果関係がある(幸福追求権の侵害)。現在も続く放射能汚染のため,離れて暮らす家族に里帰りを勧められないことによる精神的損害(精神的損害㉝)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。
もともと(福島県以外の地域で)離れて暮らしていた家族に対し,中通りに住む原告らの元に,春休み,夏休み(お盆),冬休み(正月)に帰ってこいと言えないつらさによる精神的損害である(幸福追求権の侵害)。
本件事故による放射能汚染のために福島で生きる誇りが傷つけられたことによる精神的損害(精神的損害㉞)
中間指針追補で賠償の対象とされた精神的損害(上記1)とは別物である。
本件事故による放射能汚染がなければ,自分の住む福島に対する誇りを持ち続けていられたという意味で,
本件事故との因果関係はある
(幸福追求権の侵害)

第5弁済の抗弁について
1精神的損害に対する弁済の抗弁に対する反論
被告は,本件事故による損害として,包括慰謝料として一人8万円を支払っているのであり,
精神的損害に対する賠償額として4万円を支払っているもの
でないとして,精神的損害について8万円の弁済の抗弁を主張する。しかし,原子力損害賠償紛争解決センターの和解案において,大人一人当たり12万円の内訳は,8万円分が生活費の増加分等に対する賠償,4万円分が精神的損害に対する賠償として扱われ,被告もそれに異議を述べず,和解に合意している実情にあるから,原告らの精神的損害についての既払金は4万円にすぎないと解すべきである(前橋地裁平成29年3月17日判決同旨)。仮に,
被告が原告らの精神的損害に対する既払金を8万円であると主張するのであれば,それは信義誠実の原則に反するとともに権利濫用であるから(民法1条)無効である(民法90条)。
2財産的損害に対する弁済の抗弁に対する反論
原告らのうち,
財産的損害に対する賠償を求めている者
(原告番号5,8)
7,
は,
いずれも被告による既払金8万円
(生活費増加分。
12万円マイナス4万円)
の枠外の財産的損害を主張しているから,被告による弁済は生じていない。第6ADR和解における清算合意について
1ADR和解の射程について
原告らのうちADR和解をした者については,これをしていない者との均衡,ADR和解をした者の中でも慰謝料の対象期間は異なること,原子力損害賠償紛争解決センターを含む当事者間の主張とADR和解の過程,本件事故に伴うADR和解の性質から総合的に検討すれば,ADR和解において,慰謝料の対象期間は,平成23年3月11日から同年4月までであり,精神的損害が対象とする内
容は,中間指針第2次追補記載の事柄に限られる。原告らがしたADR和解は,期間の点でも対象の点でもそれを上回る損害賠償請求を妨げるものでない。2ADR和解の多様性について
原告らのような自主的避難等対象区域に住んでいた者が原子力損害賠償紛争解決センターにADR申立てする場合,大きく分けて二つのパターンがある。一つは,生活費増加分,自主的避難をした家族との面会等の交通費請求,自主的除染費用,放射線測定のための線量計購入費用等の請求(以下物的請求という)をすること及び慰謝料の請求をすることである。もう一つは,慰謝料の請求はしないで,物的請求のみで申し立てることである(原告らの中にも該当者がいる)。後者の場合には,ADR申立てをせずに直接請求によって被告から損害賠償金を受領した者
(原告らの大部分)
と同じ立場に立つことになる。
物的請求に関しての生活費増加分は,中間指針第2次追補にいう放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により増加した,生活費増加費用である。原子力損害賠償紛争解決センターは,中間指針等で定めた額を超える金額をほとんど損害と認めなかった。
原告らの中には,
除去土壌の保管費用相当額の精神的損害があったと主張し
ている者がいる(原告番号27,40)。この請求は,精神的損害の主張であって,物的請求でない。除去土壌の保管に係る精神的損害を金銭的に算定することが困難なため,
賃料相当額と同等の精神的損害があったと主張しているだ
けである。除去土壌の保管は,公的除染後の事情であって,中間指針第2次追補が対象としている期間よりもずっと後であるから対象期間が異なる。原告らの中にはADR和解をした者がいるところ,その和解契約書における慰謝料(精神的損害賠償)の対象期間は,平成23年3月11日から,Ⅰ)平成23年12月末日まで,Ⅱ)平成23年11月30日まで,Ⅲ)本件事故発生当初の時期という3種類のものが存在している。原告ら訴訟代理人が担当した他の自主的避難等対象区域の住民に関するADR和解では,慰謝料(精神的
損害賠償)の対象期間を平成23年4月までとする和解契約書もある。これらのADR和解は,書面審理のみであり,慰謝料の対象期間の是非についての議論は全くといっていいほどされず,原子力損害賠償紛争解決センターの仲介委員の方針で和解契約書の案が一方的に示され,ADR申立人は,示された慰謝料(精神的損害賠償)の対象期間を丸のみするしかなかった。ADR和解における慰謝料(精神的損害賠償)の対象期間がばらばらな理由は,ADRには一事不再理効がなく,和解額を超える損害が後に見付かった場合には,
再度ADR申立てや損害賠償請求をすることができるという基本理念があるからである。実際にも,原告ら訴訟代理人が担当した避難指示区域のADR申立てに係る和解契約書では,その旨が明記されている。
原告らの中には,ADR和解において清算合意をした者がいるところ,被告は,このうち原告番号7,8,15,18,24,33及び34について,原告らの請求の一部又は全部が清算合意により清算された旨主張している。この点,同原告らのADR和解契約書(乙B7の1,乙B15の1,乙B18の1,乙B24の1,乙B33の1)において,和解の範囲として

本件に関し,下記の損害項目(下記期間に限る。)について和解することとし,それ以外の点については,本和解の効力は及ばないことを相互に確認する

と記載されているのは,
一事不再理効がないこと及び和解の対象を限定する意味
で設けられた条項である。和解契約書中の

損害項目(下記期間に限る。)

の文言に関し,慰謝料(精神的損害賠償)の中身(項目)と期間は,中間指針第2次追補記載のとおりという程度でしか合意していないのが実態である。3和解契約書の記載は合理的限定解釈すべき
被告は,これまで,慰謝料の既払金について中間指針第2次追補記載のとおりである旨の主張しかせず,
平成23年4月22日の避難指示区域の再編によって
避難指示区域と原告らが住む自主的避難等対象区域の区別ができた時点を基準に,
それ以降は原告らの精神的損害は生じない旨主張している。
そうだとすれば,

ADR手続及び本訴の別を問うことなく,原告らに対する精神的損害賠償の既払金は,同年4月までの約2か月間に対応する。
精神的損害賠償の既払金額は4万円で,原告ら一律に同額である。仮に,ADR申立てをした原告らとこれをしていない原告らとの間で,精神的損害賠償の対象期間と内容が異なるとすると,原告ごとに既払金4万円の意味が異なることになる。中間指針第2次追補は,自主的避難等区域の者に対し,一律に定額賠償を支払うと定めているところ,ADR申立てをしたからといって,中間指針第2次追補に基づく定額賠償の意味付けが変更されるわけでない。
ADR和解をした原告もそうでない原告も,精神的損害に関する既払金の対象期間は平成23年4月までの約2か月間であり,既払金の対象は,中間指針第2次追補記載の事柄に限られる。原告らがしたADR和解は,期間の点でも対象の点でもそれを上回る損害賠償請求を妨げるものでない。
第2章

損害各論(各原告の個別事情)

原告ら(原告番号1ないし52)の個別の損害(精神的損害又はこれに加えて財産的損害)の内容は,別紙6(枝番1ないし52)のとおりである。第5部争点に対する被告の主張
第1章

損害総論(原告らに共通する事情)

第1原告らは権利又は法律上保護された利益を侵害されていないこと1原告らの主張する権利は,法的権利として認められるものでないこと原告らは,人格権の一種として,平穏で安全な生活を営む権利(平穏生活権)が認められており,その一環として,原告らはこれを放射線による被ばくの心配のない,安全な環境下で生活する権利を有すると主張し,原告らが主張する精神的損害①ないし㉞にカテゴライズして主張する各事情によって,かかる権利の侵害が基礎付けられていると主張すると解される。
しかし,原告らが被ばくの心配のない安全な環境下で生活する権利と主張していることから,
原告らは身体の安全利益に関する権利として主張すると解さ

れるところ,我々は,社会生活上,自然放射線等による低線量の放射線被ばくを受けているのであり,世界平均で年間一人当たり約2.4mSv(2400μSv)
,日本平均では年間一人当たり約1.5mSv(1500μSv)の自然放射線を受けていること,成田・ニューヨーク間を飛行機で1回往復すると約0.2mSv(200μSv)の放射線を宇宙から受けるとされていることなどからすれば,我々は日常的に放射線被ばくを受けているのであり,
被ばくの心配のないという環境は実際の社会生活においては存しないこと,どの程度の被ばくであれば権利の侵害となるのかも判然とせず,原告らが主張する放射線による被ばくの心配のない,安全な環境下で生活する権利なるものは,その内容及び外延が極めて不明確であり実定法上,法的権利として認められているとは解し得ない。一般には平穏生活権なる権利が認められ得る場合があるとしても,原告らが主張しているその権利の内実が上記のとおりである以上は,かかる内容の法的権利が認められないことに変わりはない。
したがって,被侵害権利が放射線による被ばくの心配のない,安全な環境下で生活する権利であるとする原告らの主張は失当である。2原告らの請求の根底にある放射線被ばくに対する不安について
原告らが主張する権利は認められないため,原告らは,本件事故によって原告らのいかなる法律上保護される利益が侵害されたのかについて,具体的に明らかにしていないことになる。そこで,手掛かりとして原告らがカテゴライズした精神的損害①ないし㉞の精神的損害の列挙の内容をみると,これらはいずれも,
本件事故による放射線の作用に対する原告らの不安として生ずるものである。そのため,
以下では,
本件事故による放射線の作用に対する原告らの不安
が法律
上保護される利益に当たるかどうかという観点から検討する。
原告らの主張する不安は,身体侵害を伴わない人格的利益の侵害であるところ,判例(大阪国際空港事件上告審判決等)は受忍限度論を用いてかかる権利・法益に対する侵害の有無を判断してきており,本件事故によって原告らに生じたと主
張する不安の法的評価として,原告らに認められる法律上保護される利益に対する侵害が生じたと解されるか否か(受忍限度を超えるか)が問題になる。一般論として,生活環境の侵害を内容とする不法行為の成否については,当該行為の態様,これによって侵害を受ける権利その他の法的利益の性質及び内容,その侵害の程度,とりわけ,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害防止に関する措置の有無及びその内容,効果等諸般の事情を総合的に考察して,
権利その他の法的利益が侵害されているといえるか否かを判
断することが必要であるところ(最高裁平成元年(オ)第1682号平成6年3月24日第一小法廷判決参照)
,このような考え方によれば,原告らが本件事故
後に不安を感じることがあったとしても,それが法律上保護される利益に対する侵害に当たると評価されるためには,法益の性質及び侵害の態様に照らして受忍限度を超えると評価できる場合でなければならず,抽象的で漠然とした不安感や危惧感を感じるというだけでは足りず,具体的な危険を前提とした不安が生じていることが必要と解される。
原告らが主張する不安が具体的根拠に裏付けられないことに加え,本件事故に関する報道の状況や,原告らの居住地の生活環境からも,原告らの不安は客観的な健康に対する危険に対するものではなく,専ら主観的・心情的な危惧感をいうものであって,直ちに法律上保護される利益には当たらない。
3法律上保護される利益に対する侵害の有無の検討
原告らが主張する精神的損害は,本件事故による放射線の作用に対する原告らの不安から生ずる。そして,抽象的・主観的な利益にすぎないものを被侵害利益として把握するような認定の領域に入ることは判例に照らしても許されない。仮に法律上保護される利益の侵害を観念し得るとしても,本件事故の発生態様等の固有の事情(本件事故の特殊性)を踏まえて,自主的避難等対象区域内の一般的・平均的な人を基準として,本件事故発生直後の客観的な状況の下で抱くことが不合理でないと考えられる相当程度の不安によって
平穏かつ正常な日常生活が相当程度阻害されたと認められる範囲内においてのみ,辛うじて法律上保護される利益の侵害を観念し得るのであり,そのような客観的な事情を離れて,単に主観的・抽象的に不安や危惧感を抱いているということそれ自体は,本件事故の放射線の作用によって原告らの法律上保護される利益が侵害されていることを意味するものでない。換言すれば,客観的な事情を無視して,原告らの心情のありようのみをもって,原告らの慰謝料請求権が基礎付けられることはあり得ない。
客観的基礎事情
以下で述べる客観的事情は,法律上保護される利益に対する侵害の有無の判断基準である,原告らが主張する不安が,主観的・抽象的なものにすぎないのかを計り知る上で,前提となる事情である。以下では,原告らの法律上保護される利益に対する侵害の有無及び程度を検討する上で基礎となる,本件事故当時に原告らが居住していた地域の事情等の共通的事項について述べる。ア
原告らが本件事故当時に生活の本拠を有していた地域(中通り)は,政府による避難指示等の対象とされた区域でない。


福島県内の自主的避難等対象区域等の概況
避難指示区域,旧緊急時避難準備区域,旧屋内退避区域及び旧南相馬市が一時避難を要請した区域以外の福島県内の市町村については,概ね,以下のとおりに分類することができる。
a
中間指針追補に基づく自主的避難等対象区域
県北地域

福島市,二本松市,伊達市,本宮市,l町,a町,h町

及びm村


県中地域

郡山市,須賀川市,田村市,n町,o村,p町,q村,

r村,s町,t町,u町及びv町


相双地域



いわき地域

相馬市及びw町
いわき市

b
被告が自主的避難等に係る賠償の対象とする福島県県南地域
白河市,x村,y村,z村,aa町,ab町,ac町,ad町及びae村
c
会津地域(耶麻郡,河沼郡,大沼郡及び南会津郡)
原告らは,
本件事故当時,
いずれも上記aの区域に居住していた。
以下,

これらの区域からなる福島県内の本件事故後の状況について整理する。新聞報道による本件事故後の情報提供の状況
新聞(地元紙)において,本件事故後の本件原発の状況及び空間放射線量や放射線被ばくに関する知見等,避難指示等対象区域外の住民の自主的避難等に関し,
本件事故発生直後から平成23年4月末頃まで次のような
情報が報道された
(日付は平成23年であり,
報道された日付を指す。。

a
3月11日から3月17日まで
3月14日から同月16日にかけて本件事故の状況について繰り返し報じられ,同日,福島市で放射線量が上昇していることが報じられているが,福島県はかかる放射線量の状況をもって健康に影響を与える範囲ではないと報じられている(乙A206の5枚目)。同日,放射線量と人体への影響に関する科学的知見が紹介され,各地で測定された放射線レベルは現時点で即,健康に影響が出る値でないと報道された(乙A206の6枚目)。

b
3月18日から3月24日まで
3月17日,
福島市や郡山市等の福島県内7地点の環境放射能測定値
が報じられ,
健康に影響なし
と報道された
(乙A206の8枚目)

3月20日,
本件原発の1号機及び2号機に外部電源が接続されたこ
と,3号機も一定の安定した状態にあるとの政府の認識が報じられた(乙A206の9枚目)。同日,福島市の放射線量の状況等について,健康には全く心配ない水準であるとの専門家の見解が報じられ(乙A206の10枚目),同月21日,放射線リスクに対する過度の反応を戒
める旨の専門家の講演内容が紹介された(乙A206の12枚目)。3月22日,5,6号機も電源が復旧したことが報じられ(乙A206の13枚目),放射線の暮らしへの影響に関する情報提供がされ,福島市や郡山市内の放射線量の状況が報じられた。被ばくの有無を調べる1万0058人を対象としたスクリーニング検査の結果,基準値を超えたのは一人で,
その一人も衣服を脱ぐなどして再検査した結果基準値を
下回ったことが報じられた(乙A206の14枚目)。
3月23日,放射性物質の影響に関するQ&Aが掲載され,冷静な対応が呼び掛けられた(乙A206の15枚目)。
c
3月25日から3月31日まで
3月25日,飲料水や生活用水に関するQ&Aが掲載され,風呂も心配はなく,妊婦も通常の生活をすることが呼び掛けられた(乙A206の18枚目)。環境放射線の測定値とともに福島市で減少傾向にあることが報じられた(乙A206の18枚目)。
3月26日,h町の小児甲状腺被ばく調査において全て問題がないとの結果であったことが報じられた(乙A206の19枚目)。
3月27日,中通りに,浜通りの避難指示対象区域からの避難者が多数転入手続をしていることが報じられた(乙A206の20枚目)。3月28日,
30km圏外ではハウス野菜7品が放射能暫定基準値を
下回り,安全であるとして,福島県が全国の市場や卸売業者に対して販売強化を要請した旨報じられた(乙A206の21枚目)。いわき市において一部店舗で営業が再開される模様や福島市で空間放射線量が低下傾向にあること,福島県が実施するスクリーニングの結果,基準値超えはなかったことなどが報じられた(乙A206の23枚目)。
3月29日,国立がん研究センターが,周辺地域で通常より高い放射線や放射性物質が観測,検出されていることについて,一般市民問題ない,正しい知識で冷静にとのメッセージを緊急会見で発したことが報じられた(乙A206の24枚目)。
d
4月1日から4月7日まで
4月1日,
福島県内の各地点の空間放射線量が減少か横ばいであるこ
とが測定値とともに報じられ,いわき市内の水道水の乳児による摂取制限が解除されたことが報じられた(乙A206の26枚目)。
4月2日,福島県ががんばろうふくしま!地産地消運動をスタ

ートさせ,
福島県知事も参加して福島の野菜の安全性がアピールされて
いることが報じられた(乙A206の27,28枚目)。
4月3日,大気中の放射性物質濃度の低下傾向が報じられ(乙A206の29枚目),4月4日,30km圏外の家庭生活について日常に影響ない放射線Q&Aとの
が掲載された
(乙A206の31枚目)

4月7日,
福島市などの36市町村について農産物の作付け自粛が解
除されたと報じられた。福島県内46市町村の公立小中学校で6日に入学式が行われたことが報じられた(乙A206の32枚目)。
4月7日,福島県のアドバイザーのQ&Aとして,

現在の状況が続いても,健康リスクがあるとされる100mSvまで蓄積される可能性はない。

将来の妊娠も全く心配要らない。子供も現在の線量で影響が出ることはない。

との回答等が報じられた(乙A38の2)。e
4月8日から4月16日まで
4月11日,
3月15日に放射線量が上昇した後はほぼ一貫して低下
傾向を示していることがグラフとともに示され,1年間で100mSv以上を浴びると,
がんのリスク上昇率と相関関係が見られるとの東大名
誉教授の見解が報じられた(乙A206の34枚目)。
4月11日,
いわき市長が野菜や加工品について安全宣言をした旨報
じられ,福島市afでの花見の様子が報じられた(乙A206の35枚
目)。
4月15日,福島県内水道水から放射性物質が検出されないこと,福島県内11地点で放射線量が減少か横ばいにあることが測定値とともに報じられた(乙A206の37,38枚目)。
4月16日,
いわき市の10の県立高校で1週間遅れの入学式が行わ
れたことが報じられ,同月17日,25市町村で原乳の出荷制限が解除されたことが報じられた(乙A206の39枚目,41枚目)。
f
4月17日から4月30日まで
4月17日,積算被ばくに関する人体への影響Q&Aが掲載され(乙A206の42枚目),福島県内のハウス栽培野菜全48点の放射性物質検査の結果が暫定基準値を下回ったことが報じられ,福島の食についての風評被害をなくすため,福島県と全農県本部が東京で県産農産物や加工品の販売会を開催している様子が報じられた(乙A206の43枚目)。福島市の花見山公園では桜が満開となり,1万人近い観光客でにぎわったことが写真付きで報道された(乙A206の44枚目)。4月18日,
同月17日に被告が公表した本件事故の収束に向けての
工程表が報じられ(乙A206の45枚目),同月20日,文部科学省の校庭等の利用に関する暫定基準(毎時3.8μSvを超える場合には屋外活動が制限される)と13校・園が制限の対象となったことが報じられた(乙A206の46枚目)。文部科学省が実施した土壌放射能の数値が,全校・園で健康上問題となる数値ではなかったことが報じられた(乙A206の46枚目)。同月20日,この暫定基準で活動制限の対象にならなかった学校等の子供は外遊びについて気にしなくてよいとの専門家の見解も報じられた(乙A206の48枚目)。
4月20日,
本件原発の1ないし4号機について外部電源の多重化が
完了したと報じられ,米国の専門部隊も本件原発の事態が悪化する可能
性は低いと判断したとみられ,来週にも帰国する旨が報じられた(乙A206の47枚目)。
4月21日,校庭等の利用に関する暫定基準値の毎時3.8μSvの考え方が報じられ,福島市やいわき市等の福島県内11地点の空間放射線量率の測定値(福島市で毎時1.67~1.77μSv,郡山市で毎時1.61~1.80μSv,いわき市で毎時0.28~0.32μSv)の状況が報じられた(乙A206の50枚目)。
4月23日,いわき市のスパリゾートハワイアンズでフラガールが練習を再開したことが報じられ,いわき市において屋内退避区域の指定が解除されたことについて,いわき市長が安堵していることが報じられている(乙A206の51枚目)。
4月30日,
屋外活動が制限された9校中7校で暫定基準を下回り屋
外活動制限が解除される見込みと報じられた
(乙A206の52枚目)

g
小括
以上のとおり,本件事故発生直後から4月22日頃までにかけて,本件事故の状況や福島県内の空間放射線量の状況は日々報道され,避難指示等対象区域外の地域における空間放射線量が時間の経過に伴い低減していることも情報提供され,避難指示等対象区域外での放射線被ばくと健康影響に関する科学的な知見についても報じられ,不必要に不安や恐怖を抱くことのないよう冷静な対応が呼び掛けられている。
本件原発の状況も3月下旬から本件原発敷地内における汚染水の問題などが報道されたが,本件原発の原子炉等を冷却し得ない状況等への進展が予想される状況にはなく,本件事故直後においても,福島市の放射線量の状況をもって健康に影響を与える範囲ではないとしていることが報じられ,
放射線量と人体への影響に関する科学的知見が紹介さ
れ,各地で測定された放射線レベルは現時点で即,健康に影響が出る値
でないとの報道がされ(本件原発から少なくとも30km以上離れている自主的避難等対象区域内の生活圏の空間放射線量は時間の経過とともに低減し,4月17日,本件事故の収束に向けた道筋(乙A173)が公表され,冷温停止に至るまでの道筋が示されたこと,4月22日,自主的避難等対象区域より本件原発に近い20~30km圏内の屋内退避指示が解除され,この頃までには本件事故発生直後の時期に比して本件原発の原子炉等の状況が落ち着いていることが報道されている。4月19日,
学校等における校庭等の利用に当たっての基準が公表さ
れ,4月末までに福島県内の学校の屋外活動の制限は概ね解除され,企業活動についても3月下旬から4月にかけて再開されるなど,社会的活動も復旧を示していることなどの事情が明らかとなっている。
このような本件事故直後からの状況や報道による住民への情報提供の内容を踏まえれば,自主的避難等対象者において本件事故後の放射線の影響による不安感や本件事故の進展状況に対する恐怖や不安を幾分か感じるとしても,それは客観的な根拠に裏付けられない抽象的・主観的な心情の域を出ない。仮に,一部の者において,特別な不安や恐怖を感じたとしても,遅くとも,概ね4月22日頃までには,自らの置かれている状況や客観的な危険の状況について冷静に判断するに足りる情報提供はされるに至っていると評価することができる。
本件事故発生当初の時期以降の状況(日付は平成23年)
4月22日頃以降の状況は,同日頃までに社会的に認識されるに至っている本件原発の状況や自主的避難等対象区域内の空間放射線量の低減の傾向を悪化させる状況を示すものではなく,本件事故発生当初の時期を脱した中で,放射線量に関する住民へのより精緻な情報提供への取組,4月17日に公表された本件事故収束への道筋の着実な履行,年間20mSvという緊急時の基準ではなく,年間1mSvという平常時の基準を目指し
た,放射線量低減に向けての除染の取組の法制化,リスクコミュニケーションに資する科学的知見の整理・公表,4月22日以降の空間放射線量の引き続いての低減などの動向や状況を示す。
4月22日以降の動向や状況からも,同日頃以降において本件原発が具体的な危険を新たに生じさせていると評価すべき実情にはない。
新聞報道以外での情報提供の状況
以上のような新聞報道の外にも,本件事故発生直後より,政府や専門機関等において,
以下のとおりの情報提供されている
(日付は平成23年)

a
政府からの情報
経済産業省は,3月23日,原子力安全委員会による避難・屋内退避区域外にお住まいの皆様へのQ&A(乙A39)を公表し,冷静な対応を呼び掛けた。


原子力災害現地対策本部は,3月29日以降,被災地域向けニュースレターを発行し,24時間対応の相談窓口を設け,広報活動・相談窓口機能の拡充を図った(乙A40の1~8)。



厚生労働省は,4月1日,

妊娠中の方,小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。~水と空気と食べものの安心のために~

というパンフレットにおいて,避難指示や屋内退避指示が出ているエリア外で放射線がおなかの中の赤ちゃんに影響をおよぼすことは,まず,考えられません。また,国や自治体から指示がない限りは,妊娠中だからという理由で特別な対処が必要,ということはありません。と広報した(乙A41)。
b
福島県からの情報
3月22日及び4月1日,福島県民に対して落ち着いて行動していただきたいとの福島県知事のメッセージをウェブサイト上に掲載した(乙A42の1,2)。

c
医療関係者からの情報
公益社団法人日本医学放射線学会は,3月18日,放射線被ばくなどに関するQ&Aをウェブサイト上に掲載し,放射線被ばくに関する科学的知見を提供するとともに,適切かつ冷静な判断を促した(乙A43の1)。


日本産科婦人科学会は,3月24日,水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(乙A43の2)を公表し,科学的根拠を明らかにして,妊娠中・授乳中女性が軽度汚染水道水を連日飲んでも母体及び胎児に健康被害は起こらず,授乳を持続しても乳幼児に健康被害は起こらないと推定されるとした。

避難指示等の対象区域外の放射線量の状況と本件原発からの距離
本件事故後における福島県内各地の空間放射線量の推移(乙A65の1~7,
福島県がウェブサイトで公表している環境放射能測定結果
(暫定値)
の抜粋)は,政府による避難指示の基準となる年間20mSv(毎時3.8μSv)を大きく下回っている上,自主的避難等対象区域は,避難指示等対象区域となった区域に比して本件原発からの距離が遠く,空間放射線量も相対的に低く,会津地域については,本件事故による精神的損害の賠償の対象区域とされている浜通り地域及び中通り地域との比較でも,本件原発からの距離が遠く,空間放射線量も低い。
平成28年12月1日時点の福島県内と世界主要都市の放射線量との比較では,福島市が0.17,郡山市が0.10各毎時μSvであるのに対し,シンガポールが0.17,ミュンヘンが0.12,北京及びパリが0.
10各毎時μSvであり,
ほぼ同じ水準にある
(乙A189の5頁)

本件事故後約1年間における自主的避難等対象区域等の空間放射線量データ
(平成24年2月23日開催の第24回原賠審の参考資料として配布された。乙A66)をみても,上記の傾向が明確となっている。
自主的避難関連データ(平成23年12月6日開催の第18回原賠審において参考資料として配布された。以下同じ。乙A67)によれば,空間放射線量の分布推移については,時間の経過につれて減少している。自主的避難の状況について
自主的避難関連データによれば,福島県内における自主的避難の状況は,以下のとおりである。
a
平成23年3月15日時点において,自主的避難者数は,4万0256人である。その後一度減少したが,同年9月22日の時点で5万0327人となっている(乙A67の2頁)。

b
平成23年3月15日時点での各市町村の自主的避難者数及び人口に占める自主的避難者数の割合は以下のとおりである(ただし,自主的避難者数には,地震・津波による避難者数も含んでいる。)。
・郡山市

5068人(人口比1.5%)

・相馬市

4457人(人口比11.8%)

・福島市

3234人(人口比1.1%)

・須賀川市

1138人(人口比1.4%)

・a町

986人(人口比9.8%)

・二本松市

647人(人口比1.1%)

・白河市

522人(人口比0.8%)

・aa町
・本宮市
c
365人(人口比2.0%)
133人(人口比0.4%)

復興庁によれば,平成28年10月時点においては,福島県全体の避難者数は約8万6000人,同年7月時点の避難指示区域等からの避難者数が約5万7000人であり
(乙A190の18頁)これによれば,

現在の自主的避難者数及び地震・津波のみを理由とする避難者数は,合計で約2万9000人を下回ると考えられ,本件事故以前の人口との比
較による避難者の人口比は,更に低下していると考えられる。
d
東日本大震災による18歳未満の避難者数が福島県によって公表されており(乙A69の1~5,乙A69の7),これによれば,福島県全体の18歳未満の避難者数は年々減少している。

e
本件事故発生前である平成23年3月1日時点の18歳未満人口(乙A70)と18歳未満の避難者数(平成29年4月1日,地震・津波による避難者を含む。乙A69の7)を比較すると,東日本大震災による避難に伴う福島県全体の18歳未満人口の減少率は,平均約1.7%である。避難指示等対象区域の周辺地域においては,18歳未満の住民も含め,
大部分の住民が自主的避難をせずにそれまでの住居に滞在し続け
ており(中間指針追補の1頁参照),ここから大多数の住民は,本件事故後も滞りなく日常生活を継続していたことが推認できる。
避難指示等対象区域外の社会的活動の状況
福島県内の避難指示等対象区域外における活動に本件事故発生直後に
は混乱は見られたが,
後に落ち着きを見せた。
原告ら
(訴訟承継人を除く。

が本件事故当時居住していた福島市(45名),伊達市(2名),a町(2名),郡山市(1名),田村市(1名)及び二本松市(1名)のうち,代表して福島市の状況は次のとおりである(日付は平成23年)。
a
本件地震によるインフラ被害が発生したが,電気は3月14日,水は同月22日,ガスは同月30日に全面復旧した(乙A79の13交通機関・ライフライン等の被害及び復旧)。b
4月6日から小・中学校の新学期が始まった(乙A191,乙A219の1)。

c
4月1日,福島県は,福島県内スーパーなどにコーナーを設けて福島県産野菜の安全,安心をアピールするがんばろうふくしま!地産地消運動をスタートさせ,同日,郡山市のほか,福島市においてスター
トイベントが開催された。同イベントでは,福島県産のイチゴを食べる子供たちの姿も見られた(乙A206の28枚目)。
d
4月10日,福島市の花見山公園の桜が開花し始め,福島県内のみならず,
東北各地や関東からの来園者が園内を散策する姿があちこちで見
られ,
県外からの来園者が例年と同様に散策を楽しんだと話しているこ
とが報道された(乙A206の35枚目)。

e
5月4日と同月5日,福島市の四季の里で,市民の激励イベントが開催された。同イベント会場では,焼きそばやおでんを売るテナントが並び,地元産野菜の販売コーナーも人気でアスパラガスが完売となり,親子連れなどで賑わいを見せた(乙A230)。

f
8月6日,福島市の福島わらじまつり,8月6日から同月8日,
福島七夕まつり
がいずれも福島市において開催され,
同月7日,
ふくしま花火大会が開催された(乙A81,乙A192の4~5頁)。
g
9月4日,四季の里で消防救急フェアが,9月10日,おつきみが開催された。9月11日,福島市中央卸売市場において青果まつりが開催され,多くの買い物客が訪れた(乙A82・11頁)。
h
10月16日,福島市において,2011ふくしま健康マラソン大会が開催された。同大会には,福島県内外から約940人が出場し,4歳以上の未就学児から60歳以上にまでわたる男女が参加した(乙A219の22)。

i
福島市の製造品出荷額は,平成22年は6382億円であったが,平成23年6019億円,平成24年6117億円,平成25年6177億円,
平成26年6372億円と本件事故前と概ね同水準で推移してい
る(乙A85・20頁,乙A86)。

j
福島市の自動車保有台数は,平成22年から平成28年にかけて一貫して増加傾向にある(乙A89の1から7)。このことは,福島市にお
ける消費活動,経済活動が活発に行われていることを示している。k
福島市における新設住宅着工戸数は,平成23年に減少したが,1300戸以上の新築着工が行われており,平成24年以降増加し,平成28年には2553戸にまで増えている(乙A90の1から7)。


放射線の人体影響に関する科学的知見とその周知状況
放射線と健康影響に関する科学的知見
国際的にも合意された科学的知見によれば,低線量被ばくによる健康影響については,
100mSv以下の被ばくについては他の要因による発が
んの影響によって隠れてしまうほど小さいため,放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされており,本件事故において避難の基準とされている年間20mSvの被ばくについても,他の発がん要因(喫煙,肥満,野菜不足等)によるリスクと比べて十分低い水準にあることが明らかにされている。
放射線防護の考え方
ICRPは,
100mSv以下では放射線による発がんリスクは他の要
因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため,リスクの明らかな増加を証明することは難しいとされていることなどの科学的知見も踏まえ,
緊急時被ばく状況や現存被ばく状況においてはそれぞれ20~
100mSv/年,1~20mSv/年を参考レベルとして定めている。国際的な放射線防護の考え方は,事故時等においては,100mSv以下の水準において線量管理を行うことが許される。
福島県内の放射線被ばくの状況
県民健康管理調査や内部被ばく調査,UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会。
以下同じ。の評価結果等を踏まえても,

原告らの中に,
年間20mSvを超える被ばくを受けた者が存在したとは
考え難く,
原告らが現実に被ったと考えられる被ばく量は年間20mSv

を大きく下回ると推測される。
放射線の健康影響に関する科学的知見に関する報道・周知の状況
放射線の健康影響に関する国際的な科学的知見の内容は,これまで新聞報道や政府の広報,専門機関のホームページなどにより公開され,低線量被ばくの健康影響に関する科学的知見は広く知られている状況にある。これを踏まえ,冷静な対応を呼び掛ける報道も多数されている。

客観的基礎事情のまとめ
原告らの法律上保護される利益の侵害の有無・程度を検討する上での客観的基礎事情は,以下のとおり要約できる(日付は平成23年)。自主的避難等対象区域は,本件事故による放射線の作用によって住民の健康に影響が生ずる状況にはなく,政府による避難指示等の対象とされていない。
本件事故直後の3月16日頃から,避難指示等対象区域外における空間放射線量によって直ちに健康影響が生ずるものでないとの専門家の見解が繰り返し新聞報道され,自治体からも冷静な対応をとることが促されており,
避難指示等対象区域外の住民が避難することが科学的に必要であるという論調は,新聞報道において見当たらない。
本件原発の状況について連日報道され,4月17日,本件事故の収束に向けての道筋が公表され,今後6~9か月程度で原子炉の冷温停止を目指すスケジュールが公表され,冷温停止のためにすべきことが明確化されるなど収束に向けての方向性が示された。
3月下旬以降,本件原発敷地内での汚染水の問題が報道されているが,避難指示等対象区域外における空間放射線量の状況は3月16日以降日々報道され,時間の経過とともに大きく低減していることが報じられ,汚染水の問題等の本件原発の敷地内の状況によって避難指示等対象区域外の住民の生活環境中の放射線量が上昇するという状況にはない。
4月7日,一部の地域を除き,福島県内の避難指示の対象外の地域において,農家に対する作付け延期要請が解除され,避難指示等対象区域外での農業再開が見込まれる状況になった。
4月19日,文部科学省・厚生労働省より,小・中学校等の校庭・園庭利用の基準として毎時3.8μSvの基準が示され,4月末にかけて学校での屋外活動の制限が概ね解除されたことが報道されている。
4月22日,
避難指示区域と接する20~30km圏内において屋内退
避区域の指定が解除され,計画的避難区域に指定された一部区域を除いて,緊急時避難準備区域として再編されるに至っている。
自主的避難等対象区域の空間放射線量は年間20mSvを大きく下回る水準で推移し,そのことは日々報道され,時間の経過とともに更に低減している。
自主的避難等対象区域内では,3月下旬以降企業等の活動が再開され,4月上旬以降,小・中学校でも新学期の授業が開始されている。

以上を踏まえると次のとおりである。
本件原発の状況や避難指示等対象区域外の空間放射線量の状況,社会的活動の状況,
避難指示等対象区域外の放射線被ばくと健康影響に関する科学的
知見の状況等について,新聞報道等によって本件事故発生直後から繰り返し情報提供され,
政府及び自治体からも冷静な対応が繰り返し呼び掛けられた。
自主的避難等対象区域内の住民はそのほとんどが自主的避難をしていないところ,この点は,新聞報道等によって情報の提供がされたことにより,広く冷静に事態が受け止められていた実情を示す。
このように,本件事故後の状況に基づいて,自主的避難等対象区域内の居住者においては,抽象的な恐怖や不安を感じ得る状況が存在しつつも,他方で,
本件原発に対する対処の状況や当該区域内の空間放射線量の状況や科学的な知見等に基づき,そのような不安を打ち消し,緩和するに足りる情報の
提供もされ,客観的に避難が求められる事情は存在しなかったのであり,平成23年4月下旬にかけての時間の経過の中で,放射線量の低下や学校や企業の再開なども進み,生活も落ち着きを取り戻しつつある状況が窺われる。このような事情に鑑みれば,原告らについては,本件事故の放射線の作用によって
法律上保護される利益
が侵害されたと評価することはできない。
仮に,原告らの法律上保護される利益が侵害されたと解する余地があるとしても,上記の事情に照らせば,遅くとも同月22日頃以降については,自らの置かれている状況や客観的な危険の状況について冷静に判断することができないとは評価できず,慰謝料請求を基礎付けるに足る法律上保護される利益の侵害が引き続き生じていると解することはできない。4法律上保護された利益の侵害の有無に関する法的な主張のまとめ本件事故後,
原告らが本件事故当時に居住していた避難指示等対象区域外の地
域では,本件事故による空間放射線量の状況は,年間20mSvの水準を大きく下回っており,かつ,時間の経過とともに低減していることから,原告らの健康に被害を及ぼす具体的な危険は生じていない。
上記地域における空間放射線量の状況は,本件事故直後より日々新聞報道され,そのような低線量被ばくによる健康影響についても,健康に影響を及ぼすものでない旨の科学的知見の情報提供が新聞報道によって繰り返し行われ,本人尋問の結果によれば,原告らはそのような情報を得ていると認められる。実際に,上記地域では原告らを含めてほとんどの住民が自主的避難をせずに滞在しており,平成23年3月下旬頃からは企業や店舗等も営業を再開しており,住民も生活に落ち着きを取り戻しており,同年4月上旬,福島県知事も農産物の風評払拭キャンペーンを開始し,小中学校も開校しているとの事情が認められる。そうすると,本件事故後,原告らが本件事故当時における生活の本拠が所在する地域に滞在することによって,原告らの健康に対する具体的な危険が生じていたものでなく,その旨の情報提供もされていたのであり,原告らの法律上保護さ
れる利益に対する侵害は生じていない。
第2損害についての考え方
1はじめに
本件事故の放射線の作用によって原告らの法律上保護される利益に対する侵害は生じていない。もっとも,本件事故発生当初の時期においては,本件事故の状況は必ずしも明確でなく,自己の置かれている状況についての情報を正確に把握することが困難な時期があったことも確かであり,本件事故の今後の進展について恐怖や不安を覚えることも合理的と解される状況にあった可能性もある。したがって,本件事故の発生態様等の固有の事情を踏まえれば,本件事故の今後の進展や健康影響が分からないことにより,本件事故が発生しなければ生じなかった平穏な日常生活の阻害が生じると考えられる範囲においては,これによる精神的苦痛は,法律上保護される利益に当たり得ると解することが可能である。法律上保護される利益に当たり得るか否かは,個々人の事情に依存するが,その個人の事情を精査した上で精神的苦痛に対する賠償を行うか否かを判断することは,必要な賠償の大幅な遅延を生じさせるリスクがあるため,かかるリスクを回避するために,
生じた精神的苦痛が法律上保護された利益であると評価し得る
と考えられる者を基準として,一定の合理的な地理的範囲に居住する住民に対しては一律に賠償するとすることにも必要性・合理性が認められる。被告は,
以上の考え方に基づいて自主的避難等対象者に対する精神的損害の賠償を行っており,原告らが主張する事情を踏まえても,原告らに認められ得る精神的損害は,被告が既に賠償した精神的損害の賠償額を超えない。2東電提示賠償額の内容・根拠
避難指示等対象区域外において,中間指針追補は,一定の区域を自主的避難等対象区域と定めた上で,①放射線被ばくへの恐怖や不安により自主的避難等対象区域内の住居から自主的避難を行った場合において,自主的避難によって生じた生活費の増加費用,自主的避難により,正常な日常生活の維持・継続が
相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,避難及び帰宅に要した移動費用が,
②放射線被ばくへの恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合において,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があれば,その増加費用についてはそれぞれ賠償すべき損害と認められるとし,自主的避難者の場合と滞在者の場合の上記の合算損害額は同額として算定するのが公平かつ合理的であるとしている。特に本件事故発生当初において,大量の放射性物質の放出による放射線被ばくへの恐怖や不安を抱くことは,年齢等を問わず一定の合理性を認めることができるとし,その後においても,少なくとも子供及び妊婦の場合は,放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていることから,比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被ばくへの恐怖や不安を抱くことについては,人口移動により推測される自主的避難の実態からも,一定の合理性を認めることができるとして,自主的避難等対象者のうち子供及び妊婦については,本件事故発生から平成23年12月末までの損害額として一人40万円,その他の自主的避難等対象者については,本件事故発生当初の時期
(概ね本件事故発生から平成23年4月22日頃までが目安となるとされている。)の損害として一人8万円との賠償指針を示している。その後,中間指針第2次追補において,自主的避難等に係る損害について,平成24年1月以降に関し,少なくとも子供及び妊婦については,個別の事例又は類型ごとに,放射線量に関する客観的情報,避難指示区域との近接性等を勘案し,放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱き,その危険を回避するために自主的避難を行うような心理が,平均的・一般的な人を基準としつつ合理性を有していると認められる場合,賠償の対象となるとの考え方が示された。被告は,中間指針等を踏まえて,以下のとおりの賠償(以下東電提示賠償額という。)を行う旨提示し,実施している(乙A13,乙A16)。ア
大人について
精神的損害等の賠償として8万円(中間指針追補),平成24年1月以降の実費として4万円


子供・妊婦について
精神的損害等の賠償として40万円(中間指針追補),実際に自主的避難をした者には避難費用実費として20万円を併せて賠償,平成24年1月から同年8月31日までの期間について精神的損害の賠償として8万円,同期間における4万円の費用
この結果,
自主的避難等対象者に対する精神的損害等の東電提示賠償額は,
大人について8万円,子供・妊婦について48万円となる。

3東電提示賠償額について
大人(子供・妊婦以外)について(同伴者を含む。)

本件事故の放射線の作用によって原告ら各人の法律上保護される利益に対する侵害が直ちに生じているとは解されないが,被告の賠償の考え方に基づき法律上保護される利益の侵害があると解する場合においても,自主的避難等対象区域の空間放射線量の状況は健康に影響を及ぼす程度のものでなく,それゆえ政府による避難指示の対象とされていないこと,本件事故の直後である平成23年3月16日頃から,避難指示等対象区域外における空間放射線量によって直ちに健康影響が生ずるものでない旨の専門家の意見が繰り返し地元紙及び全国紙において報道され,専門的な知見に基づき冷静な対応をとることが促されていること,本件原発の状況についても連日報道され,
原子炉の冷却に向けての取組や電源復旧の進展状況や汚染水の問題が生じている中,同年4月17日,本件事故の収束に向けての道筋が公表され,今後6~9か月程度で原子炉の冷温停止を目指すスケジュールが公表され,冷温停止のためにすべきことが明確化されるなど収束に向けての方向性が
示されたこと,同年3月下旬以降企業等の活動が再開され,同年4月上旬,自主的避難等対象区域において小中学校の授業が開始されたこと,同月22日,
避難指示区域と接する20~30km圏内において屋内退避区域の指定が解除され,計画的避難区域に指定された一部区域を除いて,緊急時避難準備区域として再編されるに至ったことなどの諸事情からすると,本件事故による放射線の作用によって自主的避難等対象区域において客観的な危険が生じているとは認められない中で,自主的避難等対象区域の住民である原告らについて,本件事故の放射線の作用と相当因果関係を認め得る法律上保護された利益の侵害があったと評価し得るとしても,これによる損害は専ら心理的・主観的な要因に起因し(原告らの同居の親族でも相当数の者が原告になっていないことはこのことを如実に裏付けている。),客観的な根拠に基づくとはいえないから,限りなく軽微であり,かつ,かかる主観的な不安についても,新聞報道等にみられるように情報提供が繰り返され,企業や学校の社会的活動も再開される状況の中で,社会生活に落ち着きが回復されるに伴い,その精神的苦痛は和らいでいくと解され,法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評価される場合においてもそのような状況はかかる時間の経過の中で解消されると考えられるから,本件事故の発生態様等の固有の事情を踏まえて,本件事故の今後の進展や健康影響が分からないことにより,
本件事故が発生しなければ生じなかった平穏な日常生活の阻害
が生じると考えられる範囲において,これによる精神的苦痛が法律上保護される利益に当たり得ると解する場合においても,新聞報道でみたとおりの本件事故後の情報提供や社会的活動の動向を踏まえれば,遅くとも本件事故発生当初の時期である概ね同年4月22日頃を超えて,原告らの法律上保護される利益が侵害されている状況が生じていたとは評価し得ない。

大人個人に対する当該期間についての精神的損害の賠償額である一人当たり8万円は,以下の事情を考慮すれば,原告らの精神的苦痛を十分慰謝す
るに足る水準である。被告は,これらの事情及び中間指針追補を踏まえて,一人当たり8万円の精神的損害等の賠償を行うとともに4万円の追加的費用の実費賠償を行っている。
中間指針において,屋内退避区域の居住者に対しては当該指示の期間が約40日間で10万円の慰謝料額が定められているところ,自主的避難等対象者については,
政府指示によって屋内退避を余儀なくされた居住者の
精神的苦痛を上回る精神的苦痛が生じていると解すべきでないこと。避難指示等の対象とはされていない自主的避難等対象区域においては,本件事故後の空間線量率の情報に照らしても,放射線被ばくによる客観的な健康リスクにさらされているとは評価できず,そのような科学的な知見は新聞報道等によって本件事故発生直後の時期から地元紙及び全国紙において継続的に情報提供がされていると認められ,そのような中で,それでもなお生じる不安や恐怖に基づく日常生活阻害の精神的苦痛がここでの賠償対象であり,
具体的な権利又は法的に保護される利益に対する侵害
を認め得るとしてもその侵害の程度は,避難指示により避難を強いられた避難等対象者に比して大きいものでなく,不安を緩和する情報提供がされていることも考慮する必要があること。
子供や妊婦が世帯内にいる場合には,子供や妊婦各人一人当たり,精神的損害と生活費の増加費用等を一括した一定額として,平成23年分40万円及び平成24年1月から同年8月までの分8万円(一人当たり合計48万円)を賠償するとともに,子供・妊婦のうち実際に自主的避難を実行した者に対しては,
追加的費用として平成23年分20万円及び平成24
年1月から同年8月まで4万円(一人当たり合計24万円)を賠償しており,自主的避難をした場合には子供一人当たり72万円の賠償が行われ,このような子供・妊婦に対する賠償によって,世帯内に子供・妊婦がいることによる精神的苦痛や実費の支出分については填補されること。
子供・妊婦について
被告は,子供や妊婦各人一人当たり,①精神的損害と生活費の増加費用等を一括した一定額として,
平成23年分40万円及び平成24年1月から同年8
月までの分8万円(一人当たり合計48万円)を賠償し,②平成24年1月から同年8月までの追加的費用として4万円,③子供・妊婦のうち実際に自主的避難をした者に対しては避難費用実費として20万円を賠償している。この結果,滞在者である子供・妊婦については一人当たり52万円,自主的避難者である子供・妊婦については一人当たり72万円の損害額が賠償される。この点については,
政府による避難指示等を受けた避難等対象者についての
本件事故発生から平成23年12月31日まで慰謝料額は80万円(中間指針上,同年3月から同年8月までは月額10万円,同年9月からは月額5万円とされている。)とされていることとの対比で考えた場合においても均衡を失するものでなく,大人(子供・妊婦以外)に対して同年3月11日から同年4月22日頃までの慰謝料額として8万円を賠償していることとの対比においても均衡を失するものでない。したがって,子供及び妊婦の自主的避難等対象者に対する同年12月末までの期間に対する精神的損害の賠償額を40万円とすることは精神的苦痛を慰謝するに足る十分な水準である。被告は,実際に自主的避難を行った子供及び妊婦に対し,この40万円に更に20万円の実費賠償を上乗せして,一人当たり60万円の賠償を行っている。
このため,自主的避難をした大人二人(12万円×2=24万円),子供二人(72万円×2=144万円)の4人世帯では賠償額は合計168万円となり(滞在者の4人世帯であれば合計128万円となる。),世帯単位で十分な損害の填補がされている実情にある。
原告らの中には子供・妊婦がいないが,同居又は別居の親族中の子供・妊婦に対しては,それぞれの子供・妊婦に対する賠償として,上記のとおりの賠償が行われていることに留意する必要がある。

4中間指針等を踏まえた賠償
中間指針等は,それ自体は法令に該当するとはいえないため,直ちに裁判所に対する法的拘束力を有するわけでない。しかし,中間指針等は,我が国の原子力損害賠償の法体系において明確に位置付けられた法令に根拠を有する指針である。
自主的避難等対象者は約146万4000人に上るという本件事故の特質にも鑑みれば,
多数の被害者に対して迅速に賠償を実現することが重要であり,
同様の被害状況に置かれている場合には同様の救済が与えられるべきである。被告は,
原賠審が原賠法に基づき策定した中間指針等を踏まえた被告の賠償基準により,これまで既に多数の賠償を実施しており,自主的避難等対象者に係る賠償実施件数は,令和元年7月5日時点で約98万2000件(延べ件数。以下同じ。)(賠償額約3兆1363億円)に上っており,自主的避難等対象者や法人賠償を含めると,直接賠償の実施件数は同時点で約270万6000件(賠償総額約9兆0585億円)に上っている(乙A231)。
原賠審の下に設置された原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続(ADR手続)においても,平成23年から平成29年までに個人による申立件数は累計で1万8007件に上り,中間指針等に基づいて個々の紛争解決が行われている(乙A232)。
原賠審が策定した中間指針等は,策定後6年以上にわたってADR手続や訴訟を含む多数の紛争解決において用いられ,圧倒的多数の被害者が同指針に基づく和解を受け入れて紛争が解決されている。かかる事情は,東電提示賠償額が,被害者の精神的苦痛を慰謝するに足ることを物語る。
5結論
原告らに生じた生活妨害に係る精神的苦痛が法律上保護される利益に当たると解される場合においても,その被侵害利益の性質が専ら主観的・心理的なものに基礎を置き,客観的な危険に対するものではなく,生活妨害や同種事案における裁判例における慰謝料の認容額の水準に照らしても,東電提示賠償額は,原告
らの精神的苦痛を慰謝するに足りるから,これを超える慰謝料請求は理由がない。第3原告らの主張する34項目の精神的損害について
1原告らの主張する精神的損害が中間指針等で考慮済みであること原告らの主張する精神的損害①~㉞の内容については,本件事故と相当因果関係を有する具体的な権利利益の侵害に当たるような精神的苦痛については,結局のところ,一時避難を行った場合には(原告精神的損害④),一時避難により,正
常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,また,
自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合は,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛と重なり合い,これらは中間指針等の定める精神的苦痛に対する賠償において考慮されていると解される。
2原告らの主張する精神的損害①~㉞に対する個別的反論初期被ばくしたことによる精神的損害(精神的損害①)科学的知見などからすれば,自主的避難等対象区域の住民に対する低線量被ばくによるリスクは,他の健康リスクに隠れてしまうほど小さく,原告らの健康に対する客観的かつ具体的な危険を生じさせず,このような科学的知見については広く公表され,
広く知られており,
原告らの被ばくへの不安については,
客観的な根拠に基づかない,漠然とした危惧感にとどまること,空間放射線量も低く,時間の経過に伴い更に低減していること,事故後,内部被ばくを防止するための取組が行われていること,本件事故後も社会生活や事業活動等が行われている実情にあること,本件原発の状況は安定しており,本件原発の状況に起因する具体的な危険が生じている状況にないことを踏まえれば,原告らが本件事故直後に低線量の被ばくを受けたこと自体によって,原告らの具体的な法的権利・利益が侵害されたと評価することはできない。
放射線被ばくを避けるための避難をするかどうかの決断を迫られたことによる精神的損害(精神的損害②)

そのような逡巡をするという心理状態に置かれたこと自体が原告らの具体的な法的権利・利益の侵害に当たると解することはできない。
被告から適時に正確な情報が発信されず,適切な放射線被ばく防止措置をとることができなかったことによる精神的損害(精神的損害③)本件事故後,
科学的な知見は広く日々の報道やインターネット等を通じて提
供されており,正確な情報が入手できない状況にあったとはいえない。原告らの本件事故時の居住地においては,健康に対する具体的な危険を生じさせる程度の空間放射線量には至っておらず,原告らの慰謝料を基礎付ける具体的な危険にさらされたということはできない。
放射線被ばくを避けるための一時的避難に伴う精神的損害(精神的損害④)上記1のとおりである。
放射線被ばくから身を守るため自主的避難をしたものの,自主的避難に伴う葛藤や精神・身体の不調,生活の苦労,家族の争いなどにより生じた精神的損害(精神的損害⑤)
かかる精神的損害は,本件事故発生当初の時期において,自主的避難によって生じた正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛について中間指針等に基づく東電提示賠償額において損害として評価され,賠償されている。自主的避難等対象区域内における本件事故の放射線の影響に鑑みれば,
これと相当因果関係のある原子力損害としての慰謝料額とし
て,東電提示賠償額を超える慰謝料額が基礎付けられるものでない。自主的避難により生じた家族の分断・別離による精神的損害
(精神的損害⑥)

放射線被ばくを余儀なくされるとわかっていても,中通りにとどまり仕事や生活をせざるを得なかったことによる精神的損害(精神的損害⑦)かかる精神的損害は,
放射線被ばくへの恐怖や不安を抱きながら自主的避難
等対象区域内に滞在を続けた場合の,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴
う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛であり,中間指針等に基づく東電提示賠償額において賠償の対象とされている。
自主的避難等対象区域内に原告らが滞在することによって不安を抱くとしても,客観的な根拠に基づく危険に対する不安であるとはいえず,これにより原告らの法的権利・利益が侵害されている状態にあるとは評価できない。放射線被ばくから原告ら本人や原告らの家族の身を守るための対策を講じたことで,心身ともに疲弊したことによる精神的損害(精神的損害⑧)原告らが,政府による避難指示や屋内退避の指示が出されていない中で,自己の判断で念のために外出を控え,洗濯物を家の中に干すなどの対策をとることによって,直ちに原告らの法的権利・利益が侵害されるとは評価し得ない。被告は,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛を中間指針等に基づく東電提示賠償額において賠償の対象としている。仕事の中で,
放射線被ばくから守るべき人を守り切れなかったという後悔や
職責を果たし切れなかったという無念さから来る精神的損害(精神的損害⑨)本件事故後,
原告らの仕事の中で様々な自己の価値観等に照らして不快な思
いを抱くことがあったとしても,そのこと自体によって直ちに慰謝料を基礎付ける程度の具体的な法的権利・利益の侵害があったと評価することはできない。かかる精神的苦痛は,
いずれも本件事故後の仕事を通じて原告らが抱いた思い
や認識をいうにとどまり,慰謝料を基礎付ける精神的損害には当たらない。子供の親,又は孫の祖父母として,子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配することによる精神的損害(精神的損害⑩)

将来の妊娠も全く心配いらない。子供も現在の線量で影響が出ることはない

など,科学的知見については,広く情報発信及び報道がされ,周知されて
いる実情にあること,また,実際にも,自主的避難等対象区域の大多数の18歳未満人口は自主的避難をしていないことからすれば,原告らの主張する不安は,客観的根拠に基づかない漠然とした不安感をいうにすぎず,原告らの精神的損害を基礎付ける事情には当たらない。
自己の近親者に対する健康被害によって本人が固有の慰謝料請求権を取得すると解される場合があるのは近親者の生命侵害の場合及び傷害によって生命を害された場合にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときであると解されており,子供の健康に危惧を感じるにとどまる場合において,その子供の親に固有の慰謝料請求権が生ずると解することはできない。
特に,
母性としての防御本能による被ばく回避とその苦悩による精神的損害(精神的損害⑪)
本件事故発生当初の時期において,自主的避難によって生じた正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,及び,放射線被ばくへの恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合の,
放射線被ばくへの恐怖や不安,
これに伴う行動の自由の制限等により,
正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛について,中間指針等に基づく東電提示賠償額において損害として評価されて,賠償されている。
本件事故後,病気になったり原因不明の体調不良に悩まされて,放射線被ばくが原因なのでないかと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑫)原告らが本件事故時に居住していた自主的避難等対象区域内においては,本件事故直後より,
住民の健康に影響を及ぼす程度の空間放射線量となっておら

(それゆえに政府による避難指示や屋内退避指示の対象となっていない。,)
低線量被ばくの健康影響に関する科学的知見からしても,原告らの健康に放射線による健康被害の具体的かつ客観的な危険が生じているとはいえないから,原告らが主張する不安は客観的な根拠に基づかない漠然とした不安をいうに
とどまり,原告らの法的権利・利益の侵害には当たらない。
放射線被ばくにより将来健康被害が生じるかもしれないと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑬)
本件事故後,
本件事故の放射線の影響により原告らの健康に具体的かつ客観
的な危険が生じているとはいえないから,原告らが主張する不安は客観的な根拠に基づかない,漠然とした不安をいうにとどまり,原告らの法的権利・利益の侵害には当たらない。
被ばく防止に伴う行動制限から家族が体調を崩し,家族の介護を強いられるようになったことによる精神的損害(精神的損害⑭)
原告らは,原告らの家族が,本件事故により,以前は可能であった家庭菜園等が本件事故によりできなくなり,行動に制限が生じたことから,認知症等の症状が進行したと主張するが,自主的避難等対象区域においては,政府による行動制限等の指示はなく,家庭菜園や外出を自粛することが要請されていた事実はない。また,低線量被ばくによる具体的かつ客観的な危険が生じているともいえない。また,原告らの父母の認知症等の症状の進行が本件事故の放射線の影響によるとは認められない。
放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな生活(食生活を除く)を奪われたことによる精神的損害(精神的損害⑮)本件事故後,
自主的避難等対象区域内において河川内に立ち入ってはならな
いとか,山林等を散策してはならないとの指示が出された事実は認められず,河川に入り山林等を散策することによって中通りの豊かな自然を堪能することができる。平成23年8月時点においてすら,政府による避難指示の基準となる年間20mSv相当を大きく下回っており,その後も時間の経過につれて更に低減しているから,
森林を散策等することが原告らの生命身体等に対して
具体的かつ客観的な危険を生じさせない。
放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食
生活を奪われたことによる精神的損害(精神的損害⑯)
次の点に鑑みれば,
中通りの自然を堪能する食生活が奪われたという事情は
存在しないから,かかる原告らの主張は失当である。

水道水の摂取制限はされておらず(乙A60),水道水の摂取の安全性については,
専門家及び専門機関の見解が新聞報道やホームページなどで重ね
て公表されている。


自主的避難等対象区域においては,本件事故後から食料品を扱う多数のスーパーや小売店が営業を継続しており,多くの農作物が販売され,福島県の近隣県産の米や野菜などの農作物を購入することが可能であった。

農林水産省が平成27年2月27日に公表した米の作付等に関する方針(乙A133の1,乙A133の2)では,米の作付の扱いについて,避難指示区域内においては,帰還困難区域では作付制限が,居住制限区域では農地保全・試験栽培が,避難指示解除準備区域では作付再開準備が,それぞれ取扱いとして定められている。他方,避難指示区域外については,米の作付は制限されていない。


原告らは安全性が確認された水産物を食べることができる。福島県内においては,水産物を扱う卸売市場として,中央卸売市場2箇所(福島市中央卸売市場,いわき市中央卸売市場)及び水産物産地市場6箇所が,本件事故後も開場し,水産物を扱っている状況にあり(乙A142),これらの卸売市場の水産物の取扱額は,本件事故前後で大きな変化はない。
放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然があったからこそで
きた趣味(家庭菜園・花壇を除く)を楽しめなくなったことによる精神的損害(精神的損害⑰)

が奪われたという事情は存しないから,かかる原告らの主張は失当である。家庭菜園・花壇を楽しめなくなったことによる精神的損害(精神的損害⑱)
原告らの本件事故時の住所地は政府による避難指示の対象区域ではなく,本件事故による放射線の影響によって住民に対する具体的かつ客観的な危険が生じているとは認められない。
仮に家庭菜園を自粛することによって法的権利・利益が侵害されていると解する余地があるとしても,放射線被ばくへの恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合の,放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛については,中間指針等に基づく東電提示賠償額において損害として評価されて,賠償されている。
放射線被ばくから身を守るための対策をどうするかについて考え方の食い違いにより家族間に生じた精神的損害(精神的損害⑲)
認識の相違に起因する個人間の事情によって,原告らの法的に保護された権利・利益が侵害されたと解することはできず,本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとはいえない。
本件事故を起因とする家族の離婚・婚約破棄に伴う精神的損害(精神的損害⑳)
本件事故による放射線の影響等に関する個人間の受け止め方の違いに起因する事情によって,原告らの法的に保護された権利・利益が侵害されたと解することはできない。
放射線被ばくに対する考え方の違いから生じた(家族以外の)周囲の人々との擦れ違いによる精神的損害(精神的損害㉑)

被ばく防止等のために,やりがいを持っていた仕事を失ったことによる精神的損害(精神的損害㉒)
放射線による健康影響に関する科学的な知見についても新聞報道等を含めて広く知り得る状況にあるといえるから,原告らは本件事故の放射線の影響に
よって退職を余儀なくされる状況に置かれていたとは評価できない。原告らがそのような中で任意に退職したとしても,本件事故と相当因果関係のある損害が発生するということはできない。
原告ら本人や周囲の人の避難等によって地域とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉓)
自主的避難等対象区域内の居住者の大多数は自主的避難をしておらず,政府による避難指示等の対象区域とは異なり,自主的避難等対象区域内において地域とのつながりが失われたと評価すべき実情があるとはいえない。本件事故を起因として親族・友人とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉔)
放射能汚染を気にする親族・友人との間の人間関係に起因する精神的苦痛が生じているとの原告らの主張については,福島県内の農作物等に対する風評に起因する問題であるところ,福島県外等の友人や親族におけるかかる風評に基づく認識に基づいて,原告らが不愉快な思いをし,人間関係が悪化するという事象が生じたとしても,これによって,慰謝料を基礎付ける程度の原告らの法的に保護された権利・利益が侵害されたということはできない。
放射性物質の分布や被ばく量,避難指示の有無,損害賠償金格差などの差別を感じることにより生じた精神的損害(精神的損害㉕)
本件事故後の放射線量の状況等及び科学的知見に基づいて,政府による避難指示区域が定められることは合理的であり,
平等権
(憲法14条)
に反しない。
曖昧な喪失により生じた精神的損害(精神的損害㉖)
曖昧な喪失の概念自体が不明確であり,権利・法益の侵害に当たるとは解されない。
家族と同様のペットが亡くなったり,病気になったりしたことが放射線被ばくの影響によるものでないかと不安を抱えることによる精神的損害(精神的損害㉗)

原告らが飼っていたペットの病気と本件事故との因果関係が客観的に裏付けられるものではなく,原告らの主張する不安は,客観的な根拠に基づかない漠然とした不安感であり,原告らの権利・法益の侵害には当たらない。居住している建物が放射能汚染され,その建物の中で寝食を含む生活をしなければならないことによる精神的損害(精神的損害㉘)
避難指示等対象区域外における本件事故に由来する放射線量はそこでの滞在を阻害する程度ではなく,原告らが本件事故時の住所地における居宅において生活することによって,権利・法益が侵害されると直ちに評価し得ない。居住している建物や敷地の速やかな除染がされず,高線量の放射線被ばくを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉙)
原告らが自主的避難等対象区域内の本件事故時の住所地における空間放射線量は本件事故直後より年間20mSvの水準を大きく下回っており,それゆえに避難指示の対象とされておらず,原告らが従前の生活を継続することができない程度の高線量の放射線被ばくにさらされたとはいえない。
何ら非がないにもかかわらず,居住している建物や敷地の除染作業を自ら行うことを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉚)
本件事故後の原告らの住所地における空間放射線量は本件事故直後から年間20mSvを大きく下回る状況で推移し,かかる低線量被ばくにより住民の健康に対する具体的な危険が生じているのではなく,権利・法益が侵害される状態にあったとはいえない。そのような状況下で,原告らが任意に念のための除染の作業をしたとしても,直ちに権利・法益が侵害されるとはいえない。自宅の庭や敷地にそのまま置かれた,又は,埋められた除去土壌を日常生活の中で見なければならないことによって生じる精神的損害(精神的損害㉛)避難指示等対象区域外における除染については,法令に基づいて各自治体が除染実施計画を策定した上でこれに基づく除染が順次実施され,実際の除染についても原告らの同意の下に実施されている。

除去土壌の保管方法は,現場保管であると解されるところ,現場保管についても,除染作業後,原告らの同意の下にされる措置であり,その保管方法としても,除去土壌を安全に保管するため,保管ガイドラインに定める施設・管理要件を充足する形で実施されており,実際に,除染の現場において地上保管を実施した場合でも,全ての自治体において,残置土の保管後の方が保管前より空間放射線量が減少していることが確認されていることに照らせば,かかる現場保管により原告らが精神的苦痛を感じたとしても,当該事情により権利・法益の侵害に当たるとはいえない。
除染後の自宅の庭や家庭菜園に対する喪失感による精神的損害(精神的損害㉜)
避難指示等対象区域外においては,低線量被ばくによる住民の健康に対する具体的かつ客観的な危険が生じているとは認められず,通常の生活をすることができる状況にあり,本件事故による放射性物質の影響によって権利・法益が侵害されている状態にあるとはいえない。
現在も続く放射能汚染のため,離れて暮らす家族に里帰りを勧められないことによる精神的損害(精神的損害㉝)
自主的避難等対象区域内の空間放射線量の状況は本件事故直後に増して大きく低減している状況にあり,本件事故の放射線の影響によって,離れて暮らす家族に里帰りを勧められない状況にあるとはいえない。
本件事故による放射能汚染のために福島で生きる誇りが傷つけられたこと原告らの本件事故時の住所地においては,本件事故の放射線の影響による健康への具体的かつ客観的な危険が生じているとはいえず,通常の生活が可能であり,実際に通常の生活が営まれている実情にあり,福島県に対する誤った認識が社会的に不合理であり不相当であることについても広く認識されている。仮に,そのような不合理で不相当な認識を有する個人がいるとしても,福島県内の放射線の状況等に関する正しい情報を広めていくことによりそのような
誤解を解消することが求められる。かかる認識が一部に存するとすれば,それは誤りであるから是正されるべきであり,これを具体的な根拠に基づく原告らの権利・法益を侵害する事情と評価すべきではなく,原告らに慰謝料を賠償することによって解決されるべき問題であるということもできない。3原告らの主張する精神的損害①~㉞についてのまとめ精神的損害①~㉞については,中間指針追補に定められている本件事故と相当因果関係があると認められる精神的苦痛については賠償の対象となっており,本件事故と原告ら一人一人の被害実態を無視するものであり,原告らの精神的損害として重大で多くの部分が取り残されてしまっているとの主張は当たらない。なお,原告らは放射線被ばくの恐怖,低線量被ばくの継続や放射線被ばく限度の基準を超える被ばくをしたことなどを慰謝料の請求事由として掲げているが,本件事故による放射線の影響等については,自主的避難等対象区域内においても各人ごとにその主観的な受け止め方についての差異はあり得ると考えられるが,自主的避難等対象区域は政府による避難指示の対象となっておらず,本件事故に起因する放射線の影響の観点から避難を要する区域には当たらず,その客観的な健康リスクは他の社会的リスクに比しても十分に小さいことが科学的に明らかにされているという事情の下においては,被告が賠償の対象期間としている期間を超えて,
原告らにおいて放射線による健康影響について漠然とした抽象的な危惧感を感じることがあるとしても,中間指針等の考え方に基づき被告が提示している賠償額を超える法律上保護される利益に対する侵害による損害が生じていると評価することはできない。
第4放射線の健康影響に関する原告らの主張に対する反論
1内部被ばくについての情報の周知がされなかったとの主張について内部被ばくに関する情報は,次のとおり新聞報道等で情報提供されている。ア
平成23年3月20日付け朝日新聞(乙A37の6)
<Q農産物から放射能

食べても平気?健康害するリスク小さい>

食品の安全性基準は厳しい値に決められている。健康に影響を与えかねない値より,かなり余裕をもって設定されている。だから,『直ちに健康に影響が出るわけではない』という見方で専門家の意見は一致している。心配しすぎてもいけないようだ。

今回,ヨウ素に汚染されていることが分かった福島県の牛乳を約1リットル飲むと,人体が受ける影響は,約33μSvという値になる。これは胃のX線集団検診を1回受けた時に受ける放射線量の約20分の1。


平成23年3月22日付け朝日新聞(乙A37の7)
Q放射能ついた野菜は心配?・・・規制値を超える野菜が見付かった場合は,その産地からの同じ種類の野菜は出荷停止になるから出回らない。規制値以下の野菜は心配ないが,気になる人は洗ったり,ゆでたりして汚れをよく落とせばいい。ゆで汁は捨てる。野菜の皮や外側の葉をむくのも効果的だ。

Q規制値ってどう設定?・・・規制値は1年間にわたって食べ続けた場合を想定して,それでも問題ないように設定されている。1~2回の食卓で,健康に影響が表れることはない。

Q水道水はどうなの・・・規制値は長期間にわたり飲み続けた場合を想定して決めているため,短期間それを超える値の水を飲んだからといって,神経質になる必要はない。



平成23年3月25日付け朝日新聞(乙A37の8)
<Q水道水と赤ちゃん

現状は?母乳の心配なし

妊婦も影響なし>

<Q料理は?歯磨きは?うがいは?子供を別にする必要なし>

福島民報
規制値以上の放射性ヨウ素が検出された水は飲まないのが賢明な選択。ただ,数回飲んだからといって心配する必要は今の放射線レベルなら全くない。逆に,ミネラルウォーターがないから水を飲ませない,ミルクをあげないのは乳幼児の健康に良くない。野菜を洗う,顔を洗う,風呂に入るなど,生活用水に使うのは心配ない。規制値は,そのレベルの放射線量の食品や水を1年間食べたら影響が出る可能性があるという目安(乙A38の2)

厚生労働省も,平成23年4月1日,避難指示や屋内退避指示が出ているエリア外で放射線がおなかの中の赤ちゃんに影響をおよぼすことは,まず,考えられません。また,国や自治体から指示がない限りは,妊娠中だからという理由で特別な対処が必要,ということはありません。と記載し,内部被ばくに関する情報を提供している(乙A41)。


内部被ばくに関する情報は,新聞報道や政府の広報,専門機関のホームページなどにより広く提供されて知られており,住民がこのような情報に接することは十分に可能であった。国や福島県が内部被ばくの危険性について十分な周知を行っていなかったとの原告らの主張は理由がない。


原告らは,
内部被ばくが外部被ばくよりも甚大な被害をもたらすと主張す
るが,放射性物質が身体の外部にあっても内部にあっても,それが発する放射線がDNAを損傷し,損傷を受けたDNAの修復過程での突然変異が,がん発生の原因となるから,臓器に付与される等価線量が同じであれば,外部被ばくと内部被ばくのリスクは同等と評価できる(乙A11の5頁)。

福島県が行っているホールボディカウンターによる測定では,6608人のうちセシウム134及びセシウム137による預託実効線量(体内に放射性物質を摂取後の内部被ばくの実効線量)は,1mSv以下が99.7%を占め,1mSv以上は0.3%,最大でも3.5mSv未満であり(乙A11の14~15頁),福島県が平成23年6月27日から平成25年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査では,1mSv未満が99.9%を占めており,全員,健康に害が及ぶ数値ではなかった(乙A33)。本件事故に起因する内部被ばくによって,福島県内の住民に対して健康に対する具体的な危険が生じていたとはいえない。本件事故に由来する放射性物質に汚染された食品等については,原子力安全
委員会及び食品安全委員会が定めた規制値を超える場合には摂取制限又は出
荷制限の措置が講じられており,放射性物質に汚染された食物等を摂取することによって健康に影響を及ぼす事態が生じないように措置がされている。内部被ばくに関する情報が本件事故後に提供されていなかったとの原告らの主張は事実に反する。本件事故後,原子力安全委員会及び食品安全委員会が定めた規制値に基づき,
食品に対する摂取制限又は出荷制限の措置が講じられ
ており,避難指示等対象区域外において,健康に影響を及ぼす程度の内部被ばくが生じているということはできない。
2福島県における甲状腺がんの多発に関する主張について
原告らが指摘している津田敏秀教授が平成27年10月に発表した論文(津田論文)
については,
その解析対象とした福島県
県民健康調査
の情報管理・
統計調査に携わっている放射線医学県民健康管理センター自体,その評価について誤りであると断定している。
すなわち,放射線医学県民健康管理センターの情報管理・統計室室長である高橋秀人教授を筆頭著者とする福島県立医科大学の教授8名は,平成28年2月3日,疫学の学術誌Epidemiologyの電子版に,津田論文における解析手法の誤りを指摘し,これを反駁する意見書を投稿しており,以下のとおり述べて,津田博士らの結果は,実際とはかけ離れた仮定を前提にして得たものですので,必然的に実際とは違っている(真の値を得ることができない)と結論付けている。(乙A61,62)ア
津田論文では,
福島県で実施している県民健康調査の甲状腺検査について,
甲状腺がんの潜伏期間を4年間と仮定した上で,福島県における甲状腺がんの罹患率が全国の罹患率と比較すると超過であり(例えば,中通りの中部の場合,
50倍)これはスクリーニング効果で説明できない,

と述べている。


この論文では,
①原発事故後に
全てのがんが甲状腺検査(がん健診)で発見できるまでに進展した,②がん健診で発見されたがんの全てが,4年間に臨床症状で発見されるまでに成長する(潜伏期間が4年)という二つ
の仮定が共に成立していることが前提になっている。

かかる前提のうち,上記①に関しては,原発事故が起きる前にもがん健診で発見できるまでに進展した甲状腺がんが存在した可能性があり,②に関しても,がんの進展(成長)が遅く,4年間では臨床症状(体調が悪くなる,声がかすれたり物を飲み込みづらかったりするなどの自覚症状がある,甲状腺の腫れが表面から分かるなど)が出て医療機関を受診し,その甲状腺がんが発見されるまでには進展しない可能性がある。


甲状腺がんは一般的に進展が遅いことが知られており,
甲状腺がん以外の
原因で亡くなった高齢者の解剖(剖検)をすると,甲状腺がんが見付かることが少なくない。その甲状腺がんは,本人が亡くなるまで悪さをしなかった(=臨床症状が出なかった)ことになる。4年で全てのがんが臨床症状で発見されるまでに成長するというのは,実際とはかけ離れた仮定である。

津田博士らは上記①及び②に関する二つの可能性を無視した解析をしている。つまり,本論文の本質である福島県の甲状腺がん罹患率や,その罹患率を用いた全国の罹患率との比較について,津田博士らの結果は,実際とはかけ離れた仮定を前提にして得たものであり,必然的に実際とは違っている(真の値を得ることができない)と考えられる。
高橋秀人教授は,
同種訴訟において提出された意見書
(乙A62)
において,

津田論文について,
上記のとおり実際とはかけ離れた仮定を前提にしているこ
とに加え,
津田教授らの仮定に依拠すると年間当たり4人に一人が臨床的にがん罹患するという結果が算出されてしまうが,これは現実的にあり得ない数字であり,一般論によっても現実離れした結果が導き出されてしまうと述べ,総じて
科学的妥当性に疑問がある
と指摘している
(乙A62の10~11頁)

以上のとおり,原告らが依拠する津田論文は,現実からかけ離れた仮定に基づくものであり,
その結果についても科学的妥当性を欠くと評価されているの
であって,福島県内における小児甲状腺がんの発症に関する,広く妥当性・信
頼性の認められた科学的知見に当たるとは評し得ない。
UNSCEARは,その2013年の報告書(乙A35)において,本件事故後の甲状腺吸収線量がチェルノブイリの事故後の線量よりも大幅に低いため,福島県でチェルノブイリの事故時のように多数の放射線誘発性甲状腺がんが発生するというように考える必要はない(58頁・222項)とし,そのフォローアップ報告であるUNSCEARの2015年の報告書(乙A36)においても,本委員会は,2013年の報告書の当該分野での知見は今も有効であり,現在までに発表された新規情報の影響をほとんど受けていないとの結論に達した。むしろ,新たな情報により,甲状腺調査における小結節,嚢胞,及び,がんの高い検出率は,集中的な集団検診及び使用機器の感度の高さによる結果であり,事故による放射線被ばくの増加の結果ではないとする報告書の記述についての重要性を高めている(19頁,75項)としている。このように,
専門的見地から放射線の影響に関する科学的評価を行うことを
その役割とするUNSCEARが,80名を超える国際的科学者による4年以上をかけて実施した評価において,このような結論をまとめているのであり,このようなUNSCEARが示す科学的知見については,国際的にも広く受け入れられており,科学的妥当性・信頼性を有すると評価されている。以上の科学的知見の状況を踏まえれば,津田論文に依拠して本件事故によって福島県で小児甲状腺がんが多発しているとする原告らの主張は失当である。第5弁済の抗弁に関する主張
1原告らの精神的損害についての弁済の抗弁
被告の基本的主張
被告は,自主的避難等対象者(大人)に対し,中間指針等に基づき,被告の直接請求手続において,自主的避難の有無を問わず,本件事故発生当初の時期の精神的損害等(生活費の増加費用,移動費用を考慮した包括慰謝料額として定められている。)の賠償金として一人当たり8万円を賠償するとともに,本
件事故発生当初の時期以降における清掃業者への委託費用や生活費の増加費用等の追加的費用として,一人当たり4万円の賠償金を賠償している。原告らはいずれも福島県内の避難指示等対象区域外に本件事故時の住所地を有し,妊婦・子供には該当しないことから,被告が裁判外で提示している賠償方針に基づく原告らに対する賠償額は,一人当たり上記合計12万円となる。その上で,被告は原告らの精神的損害の賠償請求に対しては,一人当たり8万円の弁済の抗弁を主張する。これとは別に,原告らに対し,生活費増加費用等の追加的費用の賠償を行っていることから(各原告に対する賠償状況は,別紙5の原告らに対する財産的損害の支払総額欄記載のとおり),かかる財産上の損害填補もされている事実を事情として主張する。
直接請求手続における精神的損害の支払後,精神的損害の支払額について被告との間で和解契約を締結している原告(原告番号4,7,8,31,33,34,38,40,41,48及び49)について
原告番号4,7,8,31,33,34,38,40,41,48及び49の各原告との間では,
被告の直接請求手続における上記8万円の精神的損害の
支払後に,各原告が申し立てたADR手続において,各原告との間でそれぞれ和解契約が締結されており,これらの和解契約によれば,自主的避難等対象者に対する慰謝料額としては4万円とする旨の確認がされているが,これは,直接請求手続において被告が各原告に対して生活費の増加費用,
移動費用を考慮
した包括慰謝料額として8万円を支払ったことに対し,後日,そのうち4万円を慰謝料額として充てる旨の追加合意が成立したことを意味すると解される(かかる合意成立の事実自体については積極的に争うものでない。)。もっとも,原告らの慰謝料請求に関しては,生活費の増加費用,移動費用を考慮した包括慰謝料額としての8万円が弁済されていること自体に争いはなく,この点については,ADR和解を経ている原告らとそうでない原告らの間で実質的に差異がないこと,かかる弁済を前提とすれば,かかる包括的な慰謝料としての性格を有する既弁済額(8万円)を超えて本件事故と相当因果関係のある慰謝料請求権が認められるか否かが判断の対象となると解されることからすれば,
一部の原告らについて8万円のうちの4万円を便宜的に慰謝
料とするとのADR上の合意が成立しているとしても,それは,8万円の内訳が被告との関係で明確化された原告らであることを意味するにとどまり,8万円の内訳が被告との関係で明確化されていないその他の多くの原告らとの間に実態の差異はない。換言すれば,8万円の内訳が被告との関係で明確化されていないその他の多くの原告らにおいても,個々人によって実支出は異なり得るがある程度の部分が実費賠償の性格を持つことに変わりはなく,ただ,その金額が,包括慰謝料方式故に,被告との関係では確認・合意されておらず,認識されていないにすぎないから,ADR和解を経ていない原告らであっても,人によっては4万円が慰謝料額,4万円が実費に充当されていることはあり得る。
これは自主的避難等対象者に対する慰謝料等の賠償に当たって,中間指針追補に基づく包括賠償方式が採用されたことに起因して生ずるやむを得ない問題であり,
ADR和解における慰謝料と実費の振り分け合意は原子力損害賠償紛争解決センターの方針に基づく便宜的なものにすぎず,ADR和解を経ていない原告らにおいても実質的には両者の振り分けは存するから,両者の差異は振り分けが認識できるかできないかの差異にすぎない。認識できないだけで,両者の振り分け自体はADR和解を経ていない原告らにも存するはずである。したがって,原告らの中にADR和解を経ることにより,8万円の包括慰謝料額のうちの4万円が慰謝料額である旨の被告との合意をした者がいたとしても,
他の原告らもかかる明確な認識ができないだけで実費部分と慰謝料部分の双方の賠償を受けているとの実態があることからすれば,この二つのグループの原告らを区別して扱う必要はなく,結局,包括的な慰謝料としての性格を有する既弁済額(8万円)を超えて本件事故と相当因果関係のある慰謝料請求権が認められるか否かについて判断されるべきであり,そうすることが原告らの間の実質的な公平にもかなう。
したがって,被告は,直接請求手続における精神的損害の支払後に,精神的損害の支払額について被告との間で和解契約を締結している原告らからの精神的損害の賠償請求に対しても一人当たり8万円の弁済の抗弁を主張する。直接請求手続においては精神的損害の支払を行っておらず,ADR手続のみで支払がされている原告(原告番号15及び24)について
被告は,当初,裁判所からの求釈明に対し,原告番号15及び24が請求する精神的損害に対する弁済の抗弁の額として各4万円と回答したが,改めて原告番号15及び24の精神的損害の請求に対しても各8万円を主張する。すなわち,多数の自主的避難等対象者においては,本件事故に係る損害賠償の請求方法として,被告の直接請求手続を選択する者,ADR手続や訴訟手続を選択する者及びこれらを併用する者がおり,併用する者の中においても,いずれの手続を先行させるかは,自主的避難等対象者によって様々である。で述べたとおり,被告は,本件事故による自主的避難等対象
者の損害については,基本的に,中間指針等に基づく本件事故発生当初の時期の精神的損害等として一人当たり8万円の包括慰謝料及び本件事故発生当初の時期以降における追加的費用として一人当たり4万円の合計12万円の賠償によって十分に填補されるとの考えに基づいて賠償している。
被告は,
自主的避難等対象者の個別具体的な事情によって上記合計12万円の賠償によっては填補されない本件事故と相当因果関係を有する損害が基礎付けられる場合にはこれを超える損害について賠償を行っているが,上記の基本的考えは,
自主的避難等対象者がいかなる請求方法を選択するか否かによっ
て異なるものではなく,原告らについてもその例外でない。
被告は,原告らに対しても,原告らがいかなる請求方法を選択したかにかかわらず,中間指針等に基づく賠償を行っており,ADR和解を経ている原告ら
については,
原子力損害賠償紛争解決センターの方針に基づいて便宜的にその

以上のことは,
被告の直接請求手続において精神的損害の賠償を受けた後に,
告ら(原告番号4,7,8,31,33,34,
38,40,41,48及び49)に限って当てはまるものではなく,被告の直接請求手続を経ずにADR和解を申し立てた原告(原告番号15及び24)についても等しく当てはまる。
したがって,
被告と原告番号15及び24との間でそれぞれ締結されたAD
R和解に基づく支払についても,中間指針等に基づく合計12万円の賠償に加えて,
これによって填補されない本件事故と相当因果関係を有する同原告らの損害を賠償するという事実は,他の原告らと異なるものでない。
以上のとおりであるから,被告は,原告番号15及び24が請求する精神的損害に対する弁済の抗弁としても,各8万円を主張する。
小括
以上のとおり,被告は,原告らによる各精神的損害の請求に対しては,いずれの原告に対しても各8万円の弁済の抗弁を主張する(別紙5原告らが請求する精神的損害に対する既払金額(弁済の抗弁額)欄記載のとおり)。2原告番号5,7及び8の財産的損害についての弁済の抗弁
原告番号5,7及び8がそれぞれ請求している財産的損害は,いずれも本件事故と相当因果関係を有しない。
仮にかかる請求について,本件事故と相当因果関係を認める余地があるとしても,被告は,原告番号5に対し,4万円(乙B5の1),同7に対し,33万2000円
(乙B7の1,
被告の令和元年10月23日付け上申書)同8に対し,

215万3199円の財産的損害の賠償を行っており
(乙B8の1,
上記上申書)

かかる支払済みの賠償額を超えて,同原告らの財産的損害の発生が基礎付けられているとはいえない。

したがって,原告ら(原告番号5,7及び8)が請求する財産的損害の賠償請求に対しては,上記財産的損害の既払額全額の弁済の抗弁を主張する。3
原告番号27及び40が請求する除去土壌の保管に伴う精神的損害について
の弁済の抗弁
被告は,
原告番号27及び40による除去土壌の保管に伴う精神的損害の請求に対しては,上記1記載の8万円の弁済の抗弁に加えて,各4万円の弁済の抗弁を主張する。
すなわち,原告番号27及び40が主張する事実によっては,同原告らの物的損害の発生は基礎付けられないこと,被告は,直接請求手続において自主的避難等対象者に生じた生活費の増加費用等として同原告らに対し各4万円を支払ったこと,同原告らは,除去土壌の保管に伴う精神的損害の請求について,当初の物的損害の請求から現在の精神的損害の請求の主張に訂正したが,これらの請求は,
同一の事実を物的損害又は精神的損害として評価して請求するかが相違するにすぎない同質的なものであって,原賠法3条1項に基づく損害賠償請求権という一つの実体的権利を行使することに変わりはなく,各4万円の弁済により精神的損害の慰謝及び財産的損害の填補がされることで,原告らの損害は填補されるから,これを超える同原告らの請求は基礎付けられない。
したがって,同原告らの除去土壌の保管に伴い,上記各支払額を超えて,同原告らの物的損害又は精神的損害の発生が基礎付けられない。
第6ADR手続を経た原告らについての清算条項に関する主張
1原告番号7及び8の請求について
清算条項の内容

原告番号7及び8と被告との間の和解(乙B7の1)においては,以下の期間における各損害については,同和解に定めるもののほか,被告との間で債権債務がないとする清算条項がある。
平成23年3月11日から同年12月31日までの避難費用及び生活
費増加費用(二重生活費用及び自家栽培野菜を除く)
平成23年9月23日から同年12月31日までの生活費増加費用(二重生活費用)
平成23年3月11日から平成24年12月31日までの生活費増加費用(自家栽培野菜)
平成23年3月11日から平成24年9月30日までの除染費用,線量計購入費用,検査費用
平成23年7月1日から同年8月31日までの就労不能損害

したがって,原告番号7及び8が主張する各損害のうち,かかる期間に対応する各損害は,これによりいずれも清算されている。
原告番号7の請求の一部については既に清算されていること


原告番号7は,被告に対して,精神的損害300万円のほか以下の財産的損害合計31万6000円についての賠償を求めている。
平成23年5月26日から同年6月20日までの自宅線量測定と樹木寸法計測に係る費用除染作業費
マスク代

4万0000円

24万0000円
3万6000円


に実施した自宅線量測定と樹木寸法計測の作業費を請求するものであり,上
量測定と報告書作成の人件費として除染作業費24万円を請求するが,かかる費用は,
いずれも除染作業に係る費用またはその前提としての検査費用の

月10日までの期間の間に購入したと考えられるマスクの購入代金ということであり,上記和解における清算の対象とはならないが,同支出について
は裏付けもなく,また仮にそのような支出があるとしても,本件事故発生から1年6か月以上が経過した同期間におけるマスク代の支出について本件事故との相当因果関係は認められない。
原告番号8の請求の一部については既に清算されていること

原告番号8は,被告に対し,精神的損害600万円のほか,以下の財産的損害合計230万2668円について賠償を求めている。


平成27年10月16日頃の尿検査費用(送料のみ)1000円



平成27年12月9日頃の大気中塵埃に含まれる放射能測定費用
3656円



平成27年11月頃及び平成28年3月頃の家庭用放射性セシウム除染布


5000円

平成26年4月から平成27年4月までの原告ら生活環境周辺の放射能測定費用


2万0000円

平成23年3月から平成29年5月までの一時避難保養避難費用
82万3378円



平成25年から平成27年までの浄水器フィルター代

4万151

1円


平成24年9月5日から同月8日までの山梨県北杜市への保養旅行費用


2万4273円

内部被ばく対策費用

以下の合計37万2400円

平成23年3月20日から同年5月11日までの飲料水・調理用ペットボトル購入代1万3500円

平成23年5月から同年7月までの宅配ボトルウォーター利用料
1万8900円


平成23年7月20日の浄水器(逆浸透膜システム)購入本体1
4万8000円


平成23年11月25日の浄水器(逆浸透膜システム)取り付け費用2万3100円

平成23年3月11日から平成24年11月9日までのマスク代
1万4000円


平成23年7月から平成24年4月までの山梨県からの野菜宅配代8万2600円


平成23年12月15日の秋田県産米120kg(送料9600円込み)7万0800円

平成24年4月4日の食品測定代1500円



平成23年8月15日の自主除染の樹木伐採費用31万8550円

平成23年5月26日から同年6月20日までの自宅線量測定と樹木寸法計測8万0000円

平成23年11月9日から同年12月21日までの除染作業費24万0000円


平成26年5月から平成28年3月までの放射能汚染物保管費用6万9000円


平成25年度から平成27年度までの家庭菜園15万0000円


平成24年7月1日から平成28年2月11日までの新潟の孫に会いに行く費用15万3900円

しかし,上記請求⑧のⅰからⅳまで,平成23年12月31日までの期間
条項によって清算される。上記請求⑧のⅷ及び同⑨から⑫までについては,
2原告番号15の請求について
原告番号15と被告との間の和解(乙B15の1)は,本件事故発生当初の時
期に生じた同原告の精神的損害について,同和解に定めるもののほか,被告との間で債権債務がないとしており,同原告が主張する各精神的損害のうち,かかる期間に対応する精神的損害はこれにより清算される。
3原告番号18の請求について
原告番号18と被告との間の和解(乙B18の1)は,平成23年3月11日から同年11月30日までに生じた同原告の精神的損害について,同和解に定めるもののほか,被告との間で債権債務がないとしており,同原告が主張する各精神的損害のうち,かかる期間に対応する精神的損害はこれにより清算される。4原告番号24の請求について
原告番号24と被告との間の和解(乙B24の1)は,本件事故発生当初の時期に生じた同原告24の精神的損害については,同和解に定めるもののほか,被告との間で債権債務がないとするものであり,同原告24が主張する各精神的損害のうち,かかる期間に対応する精神的損害はこれにより清算されている。5原告番号33及び34の請求について
原告番号33及び34と被告との間の和解(乙B33の1)においては,平成23年3月11日から同年12月31日までの期間に生じた原告番号33及び34の各精神的損害については,同和解に定めるもののほか,被告との間で債権債務がないとするものであり,原告番号33及び34が主張する各精神的損害のうち,かかる期間に対応する精神的損害はこれにより清算されている。第2章

損害各論(各原告の個別事情)

第1原告らの主張に共通する特徴について
1原告らは,
本件事故後における自主的避難等対象区域における空間放射線量の状況やそのような放射線量の状況が自主的避難等対象区域に滞在を継続することによって健康に影響が及ぶものでないとの新聞報道等が繰り返され,専門家による科学的知見についての情報も得ている。その上で,そのような知識については信用することができない又は正しいという保証はないという主観的認識若し
くは放射線への嫌悪感から,不安や不愉快な心情が生じたと主張している。確かに,一般的・平均的な人を基準としても,本件事故の発生態様等の本件事故の特殊性を踏まえれば,本件事故発生当初の情報の混乱期においては,自己の置かれている状況が分からないことによって日常生活が相当程度阻害されることはあり得るから,
これによって平穏な生活に関する法律上保護される利益の侵
害に当たる場合もあり得るが,他方,自主的避難等対象区域においては,本件事故の放射線の作用によって客観的に健康への影響が生じておらず,そのことは遅くとも平成23年3月16日以降広く情報提供され,その後の時間の経過に伴い,一般的・平均的な人においても冷静に情報を受け止めて行動することができる状況になっており,
同年4月上旬には福島県知事も風評払拭キャンペーンを開始す
るなど,その後の社会的生活の状況を踏まえても,概ね同年4月22日頃までの間には本件事故の放射線の作用に対する相当程度の不安や恐怖を抱かざるを得ない状況は解消していることからすると,原告らが抱く放射線の影響に対する不安は,抽象的・主観的なものにとどまり,原告らの健康に対する客観的・具体的な危険が存することに対する不安であるとはいえず,原告らの法律上保護される利益が本件事故の放射線の作用によって侵害されているとは評価できない。2原告らの本人尋問によって,原告らが述べる精神的苦痛は極めて主観的・抽象的であることがより一層明らかとなった。原告らが訴える精神的苦痛は,科学的根拠に基づかずに,
将来において健康に影響が出るかもしれないという危惧感や
心情,科学的根拠に基づかずに子供や孫の健康への懸念を抱くこと,除染に伴い生じた自らの庭の土壌等を保管することに伴う不快感など,いずれもその個人的認識や心理状態のみによって生じているのであって,客観的な法益侵害の危険とは別個であるから,
原告らの法律上保護される利益の侵害を基礎付ける事情には
当たらない。
3本件事故時における原告らの同居家族の多くは,本件訴訟の原告となっておらず,
被告による裁判外の賠償金を超える精神的損害の損害賠償請求をしていない。
また,
本件訴訟の原告となっていない同居家族と原告らの間では放射線に対する認識の相違があることも窺われる。
このことからすれば,
原告らが述べる心情は,
同居家族の中においてすら,極めて個人的・主観的な要素が極めて強い。慰謝料請求については,主観的にどのように感じたか,その強さ自体によって基礎付けられるのではなく,飽くまで客観的な侵害を前提として,各人の法律上保護される利益が侵害されたことを前提として,本件事故の放射線の作用と相当因果関係のある範囲において認められ,一般的・平均的な人を基準として,通常感じるであろうと想定される精神的苦痛の範囲において,被告に賠償義務が生ずると解するのが相当である。確かに,本件事故後の放射線の状況についての感じ方・受け止め方については人によって個人差があり得ると考えられるが,一般的・平均的な人の基準を超えて,提供されている情報を信じない等の個人的認識を基礎として,
強く不安を感じていることを理由に高額の慰謝料が認定される
べきであるかのような原告らの主張は,相当因果関係の範囲を超える精神的損害の賠償を求めるものであって,失当である。
4原告らの中には,
原告となっていない子供や孫の健康被害のおそれを懸念する
ことをもって,自己の精神的損害を基礎付けるように主張するものがいる。しかし,子供の親固有の慰謝料請求権は,その子の死亡したときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合は,
自己の権利として慰謝料を請求することができるとこ
ろ,原告らのように,子供の身体に具体的な疾病・傷病を伴わずに,子供の健康に漠然とした危惧を感じたとしても,その子供の親に固有の慰謝料請求権が生ずると解することはできない。
また,
自主的避難等対象区域に滞在することにより客観的に子供の健康に影響を及ぼすような状況にはない。そのことは広く情報提供がされており,平成23年4月上旬からは,実際に自主的避難等対象区域において小・中学校も始まっていることは原告らも認識しているが,被告は,自主的避難等対象者である子供に対しても,
大人とは別途の賠償の考え方に基づいて子供自身の損害として精神的
損害の賠償をしており,かかる賠償によって,子供の健康不安に対する精神的苦痛については慰謝される。
5原告らの中には,ADR手続を申し立て,直接請求による賠償金のほかに,相当額の財産的損害の賠償を受けている原告らが相当数存するが,客観的な危険が生じているとはいえない中でも,このような相当額の財産的損害が賠償されている実情があり,これにより,本件事故後に自主的避難等対象区域に滞在することに伴う精神的苦痛が慰謝されることを考慮しても,被告が賠償している精神的損害の賠償額は,原告らの精神的苦痛を慰謝するに足りる。
第2原告らの個別損害(別紙6の枝番1ないし52)について
原告らの個別損害に関する主張(別紙6の枝番1ないし52)についての被告の認否は,次のとおりである。基礎的事項欄の記載(事故時住所,事故時年齢,事故時世帯,避難状況及び特記事項)については,概ね認めるか又は積極的に争わない。精神的損害欄の記載のうち,事実関係又は原告らの内心に関する部分は,概ね否認ないし不知であり,法的評価等に関する部分は争う。第6部当裁判所の判断
第1章

認定事実

第1本件事故前の原告らの居住地等
原告ら(原告番号1~41,承継前原告番号42,原告番号43~52)は,本件事故当時,
避難指示等の対象とされなかった福島市,
a町,
郡山市,
伊達市,
田村市b町又は二本松市(いずれも中間指針追補において自主的避難等対象区域とされた区域に該当する。)に居住していた。具体的には,伊達市に原告番号10及び11,a町に原告番号20及び26,郡山市に原告番号28,田村市b町に原告番号17,二本松市に原告番号21,福島市にその余の原告らがそれぞれ居住していた。
第2本件事故後の状況
1環境放射能状況(数値の単位はいずれもμSv/時)

福島市の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月13日

0.04~0.08(甲A5,81)

平成23年3月14日

0.04~0.10(同上)

平成23年3月15日

0.05~24.24(同上)

平成23年3月16日

14.60~21.40(同上)

平成23年3月17日

12.20~14.80(同上)

平成23年3月18日

10.50~12.70(同上)

平成23年3月19日

9.00~11.10(同上)

平成23年3月20日

8.13~10.10(同上)

平成23年3月21日

7.10~8.06(同上)

平成23年3月22日

5.48~7.19(同上)

平成23年3月23日

5.12~6.09(同上)

平成23年3月24日

4.52~5.43(同上)

平成23年3月25日

3.79~4.92(同上)

平成23年3月26日

3.70~3.98(同上)

平成23年3月27日

3.50~3.87(同上)

平成23年3月28日

2.87~3.84(同上)

平成23年3月29日

2.94~3.43(同上)

平成23年3月30日

2.64~3.32(同上)

平成23年3月31日

0.64~2.61(乙A66)

平成23年4月1日~同月9日
平成23年4月30日

0.47~2.31(乙A65の1)

0.51~1.49(乙A66)

平成23年5月

0.18~2.87(乙A205)

平成23年6月

0.16~2.64(同上)

平成23年7月

0.16~2.51(同上)

平成23年8月

0.16~2.47(同上)

平成23年9月

0.15~2.33(同上)

平成23年10月

0.15~2.26(同上)

平成23年11月

0.15~2.26(同上)

平成23年12月

0.09~2.21(同上)

平成24年1月

0.08~1.58(同上)

平成24年2月

0.07~1.46(同上)

平成24年3月

0.07~1.50(同上)

平成24年4月

0.12~1.49(同上)

平成24年5月

0.12~1.42(同上)

平成24年6月

0.11~1.42(同上)

平成24年7月

0.10~1.33(同上)

平成24年8月

0.11~1.33(同上)

平成24年9月

0.12~1.29(同上)

平成24年10月

0.12~1.28(同上)

平成24年11月

0.12~1.27(同上)

平成24年12月

0.11~1.21(同上)

平成25年1月~12月

0.06~1.18(同上)

平成26年1月~12月

0.05~0.47(同上)

平成27年1月~12月

0.04~0.44(同上)

平成28年1月~12月

0.05~0.35(同上)

平成29年1月~12月

0.05~0.32(同上)

郡山市の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月13日

0.04~0.06(甲A5,81)

平成23年3月14日

0.05~0.06(同上)

平成23年3月15日

0.05~8.26(同上)

平成23年3月16日

2.66~3.18(同上)

平成23年3月17日

2.50~3.75(同上)

平成23年3月18日

2.40~2.83(同上)

平成23年3月19日

2.07~2.68(同上)

平成23年3月20日

2.33~2.57(同上)

平成23年3月21日

1.87~2.54(同上)

平成23年3月22日

1.58~1.94(同上)

平成23年3月23日

1.47~1.66(同上)

平成23年3月24日

1.34~4.05(同上)

平成23年3月25日

1.29~3.99(同上)

平成23年3月26日

3.12~3.40(同上)

平成23年3月27日

3.02~3.32(同上)

平成23年3月28日

2.66~3.07(同上)

平成23年3月29日

2.03~2.85(同上)

平成23年3月30日

2.38~2.65(同上)

平成23年3月31日

1.00~2.12(乙A66)

平成23年4月1日~同月9日

0.20~2.14(乙A65の1)

平成23年4月30日

0.30~1.51(乙A66)

平成23年5月31日

0.20~1.36(同上)

平成23年6月30日

0.25~1.24(同上)

平成23年7月31日

0.21~1.10(同上)

平成23年8月31日

0.21~1.03(同上)

平成23年9月30日

0.21~1.00(同上)

平成23年10月31日

0.21~0.98(同上)

平成23年11月30日

0.21~0.96(同上)

平成23年12月31日

0.20~0.91(同上)

平成24年1月31日

0.16~0.78(同上)

平成24年2月16日

0.17~0.83(同上)

平成24年4月1日~同月12日

0.06~1.32(乙A65の2)

平成25年4月1日~同月12日

0.06~0.94(乙A65の3)

平成26年4月1日~同月12日

0.05~0.33(乙A65の4)

平成27年4月1日~同月12日

0.04~0.28(乙A65の5)

平成28年4月1日~同月12日

0.05~0.19(乙A65の6)

平成29年4月1日~同月12日

0.04~0.16(乙A65の7)

伊達市の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月17日

7.35(甲A109)

平成23年3月18日

7.55~7.98(同上)

平成23年3月19日

6.32~6.56(同上)

平成23年3月20日

5.40~5.69(同上)

平成23年3月21日

4.48~5.31(同上)

平成23年3月22日

4.41~4.54(同上)

平成23年3月23日

3.69~3.73(同上)

平成23年3月24日

3.34~3.65(同上)

平成23年3月25日

2.97~3.21(同上)

平成23年3月26日

3.04~3.09(同上)

平成23年3月27日

2.36~2.71(同上)

平成23年3月28日

2.09~2.22(同上)

平成23年3月29日

2.28~2.32(同上)

平成23年3月30日

2.09~2.34(同上)

平成23年3月31日

2.05~2.25(甲A109,乙A66)

平成23年4月1日~同月9日

0.93~2.09(乙A65の1)

平成23年4月30日

1.21(乙A66)

平成23年5月31日

1.06(同上)

平成23年6月30日

1.79~2.18(同上)

平成23年7月31日

1.31~1.69(同上)

平成23年8月31日

1.55~2.15(同上)

平成23年9月30日

1.46~2.11(同上)

平成23年10月31日

1.44~2.13(同上)

平成23年11月30日

1.46~2.02(同上)

平成23年12月31日

1.25~2.04(同上)

平成24年1月31日

0.84~1.52(同上)

平成24年2月16日

0.90~1.59(同上)

平成24年4月1日~同月12日

0.17~0.98(乙A65の2)

平成25年4月1日~同月12日

0.12~0.58(乙A65の3)

平成26年4月1日~同月12日

0.09~0.38(乙A65の4)

平成27年4月1日~同月12日

0.07~0.31(乙A65の5)

平成28年4月1日~同月12日

0.06~0.26(乙A65の6)

平成29年4月1日~同月12日

0.05~0.23(乙A65の7)

二本松市の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月17日

13.00~13.60(甲A109)

平成23年3月18日

4.83~10.32(同上)

平成23年3月19日

4.26~9.46(同上)

平成23年3月20日

3.60~7.83(同上)

平成23年3月21日

2.85~6.90(同上)

平成23年3月22日

2.57~5.73(同上)

平成23年3月23日

2.30~5.10(同上)

平成23年3月24日

2.03~4.84(同上)

平成23年3月25日

1.98~4.23(同上)

平成23年3月26日

1.96~3.76(同上)

平成23年3月27日

1.84~3.89(同上)

平成23年3月28日

1.59~3.39(同上)

平成23年3月29日

1.42~3.06(同上)

平成23年3月30日

1.52~3.07(同上)

平成23年3月31日

1.56~3.30(甲A109,乙A66)

平成23年4月1日~同月9日

1.10~2.93(乙A65の1)

平成23年4月30日

0.77~1.52(乙A66)

平成23年5月31日

0.64(同上)

平成23年6月30日

0.49~0.63(同上)

平成23年7月31日

0.42~0.54(同上)

平成23年8月31日

0.40~0.52(同上)

平成23年9月30日

0.40~0.48(同上)

平成23年10月31日

0.51~0.60(同上)

平成23年11月30日

0.50~0.60(同上)

平成23年12月31日

0.49~0.58(同上)

平成24年1月31日

0.37~0.52(同上)

平成24年2月16日

0.40~0.52(同上)

平成24年4月1日~同月12日

0.22~0.87(乙A65の2)

平成25年4月1日~同月12日

0.16~0.76(乙A65の3)

平成26年4月1日~同月12日

0.13~0.52(乙A65の4)

平成27年4月1日~同月12日

0.09~0.26(乙A65の5)

平成28年4月1日~同月12日

0.08~0.22(乙A65の6)

平成29年4月1日~同月12日

0.08~0.18(乙A65の7)

田村市b町の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月13日

0.07~0.10(甲A110)

平成23年3月14日

0.09(同上)

平成23年3月15日

0.09~2.20(同上)

平成23年3月16日

0.22~0.38(同上)

平成23年3月17日

0.20~1.27(同上)

平成23年3月18日

0.96~1.26(同上)

平成23年3月19日

0.87~1.31(同上)

平成23年3月20日

0.77~0.98(同上)

平成23年3月21日

0.59~0.84(同上)

平成23年3月22日

0.61~1.02(同上)

平成23年3月23日

0.51~0.83(同上)

平成23年3月24日

0.48~0.65(同上)

平成23年3月25日

0.48~0.70(同上)

平成23年3月26日

0.45~0.58(同上)

平成23年3月27日

0.38~0.52(同上)

平成23年3月28日

0.38~0.52(同上)

平成23年3月29日

0.35~0.51(同上)

平成23年3月30日

0.35~0.51(同上)

平成23年3月31日

0.33~0.49(同上)

平成23年6月13日

0.18~0.24(乙A100)

平成23年12月9日

0.14~0.22(同上)

平成24年1月6日

0.13~0.18(同上)

平成24年2月9日

0.12~0.17(同上)

平成24年3月9日

0.11~0.17(同上)

平成24年4月9日

0.10~0.19(同上)

平成24年8月8日

0.11~0.17(同上)

平成25年3月8日

0.08~0.16(同上)

平成26年3月7日

0.07~0.11(同上)

平成27年3月9日

0.08~0.12(同上)

平成28年3月8日

0.07~0.11(同上)

平成29年2月8日

0.06~0.10(同上)

a町の環境放射能は,概ね以下のとおりであった。
平成23年3月18日

4.65~4.91(甲A109)

平成23年3月19日

3.71~4.44(同上)

平成23年3月20日

3.47~3.56(同上)

平成23年3月21日

2.84~3.18(同上)

平成23年3月22日

2.32~2.41(同上)

平成23年3月23日

2.03~2.20(同上)

平成23年3月24日

1.73~1.81(同上)

平成23年3月25日

1.58~1.72(同上)

平成23年3月26日

1.52~1.53(同上)

平成23年3月27日

1.43~1.48(同上)

平成23年3月28日

1.24~1.37(同上)

平成23年3月29日

1.17~1.24(同上)

平成23年3月30日

1.17~1.21(同上)

平成23年3月31日

1.09~1.15(甲A109,乙A66)

平成23年4月1日~同月9日

0.78~1.21(乙A65の1)

平成23年4月30日

0.69(乙A66)

平成23年5月31日

0.55(同上)

平成23年6月30日

0.51(同上)

平成23年7月31日

0.39(同上)

平成23年8月31日

0.48(同上)

平成23年9月30日

0.44(同上)

平成23年10月31日

0.44(同上)

平成23年11月30日

0.43(同上)

平成23年12月31日

0.40(同上)

平成24年1月31日

0.30(同上)

平成24年2月16日

0.35(同上)

平成24年4月1日~同月12日

0.22~0.26(乙A65の2)

平成25年4月1日~同月12日

0.20~0.22(乙A65の3)

平成26年4月1日~同月12日

0.14(乙A65の4)

平成27年4月1日~同月12日

0.06~0.11(乙A65の5)

平成28年4月1日~同月12日

0.05~0.07(乙A65の6)

平成29年4月1日~同月12日

0.05~0.06(乙A65の7)

2避難者数
自主的避難者

本件事故後の福島県民の自主的避難者数は以下のとおり推移した。(乙A67)
平成23年3月15日
平成23年3月25日

2万3659人

平成23年4月22日

2万2315人

平成23年5月22日

3万6184人

平成23年6月30日

3万4093人

平成23年7月28日

4万1377人

平成23年8月25日

4万7786人

平成23年9月22日

4万0256人

5万0327人

平成23年3月15日時点での自主的避難者数及び人口に占める割合は以下のとおりである。(乙A67)
福島市

3234人(人口比1.1%)

郡山市

5068人(人口比1.5%)

伊達市
二本松市
田村市
a町

14人(人口比0.0%)
647人(人口比1.1%)
39人(人口比0.1%
986人(人口比9.8%)

18歳未満の避難者数は以下のように推移した。(乙A69の1~7)ア
福島市
平成24年4月1日時点
平成25年4月1日時点

3034人

平成26年4月1日時点

2398人

平成27年4月1日時点

2059人

平成28年4月1日時点

1561人

平成29年4月1日時点

3174人

1379人

郡山市
平成24年4月1日時点
平成25年4月1日時点

2590人

平成26年4月1日時点

2311人

平成27年4月1日時点

2032人

平成28年4月1日時点

1880人

平成29年4月1日時点

2801人

1707人

伊達市
平成24年4月1日時点

428人

平成25年4月1日時点

401人

平成26年4月1日時点

312人

平成27年4月1日時点

246人

平成28年4月1日時点

230人

平成29年4月1日時点

156人


二本松市
平成24年4月1日時点
平成25年4月1日時点

316人

平成26年4月1日時点

288人

平成27年4月1日時点

272人

平成28年4月1日時点

257人

平成29年4月1日時点

316人

249人

田村市
平成24年4月1日時点
平成25年4月1日時点

367人

平成26年4月1日時点

289人

平成27年4月1日時点

206人

平成28年4月1日時点

139人

平成29年4月1日時点

387人

42人

a町
平成24年4月1日時点

56人

平成25年4月1日時点

57人

平成26年4月1日時点

26人

平成27年4月1日時点

25人

平成28年4月1日時点

21人

平成29年4月1日時点

18人

3健康調査
概要
福島県は,本件事故による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ,県民の被ばく線量の評価を行うとともに,県民の健康状態を把握し,疾病の予防,早期発見,早期治療につなげ,将来にわたる県民の健康の維持,増進を図ることを目
的とし,県民健康管理調査を実施している。この調査は,①本件事故後4か月間の外部被ばく線量の把握のための調査(基本調査)と,②本件事故時に概ね18歳以下であった者を対象にした甲状腺検査などの調査(詳細調査)から成る。
(甲A29,113の1~4,乙A157,弁論の全趣旨)
基本調査

福島県が県民健康管理調査において実施した問診票による外部被ばく実効線量推計によれば,
平成26年3月31日時点での回答を基にした放射線
業務従事経験者を除く47万1565人の外部被ばく実効線量の推計結果は,県北・県中地区では約90%が2mSv未満となり,県南地区では約91%,会津・南会津地区では99%以上,相双地区では約78%,いわき地区では99%以上がいずれも1mSv未満であった。(乙A75)

福島県が県民健康管理調査において実施したホールボディカウンターによる内部被ばく検査
(実施期間は平成23年6月27日から平成29年3月
31日まで)の結果,預託実効線量が1mSv未満の者が32万1719人/32万1745人(約99.9%)となっており,全員,健康に害が及ぶ数値でなかったとされている。(乙A74)
福島市


基本調査の結果
平成29年3月までの累計2万3757人(男性1万1377人,女性1万2380人)
がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受け
たが,預託実効線量が1mSv以上の被検査者はおらず,全員,預託実効線量は健康に影響が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)
本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象の福島市民8万2653人について,1mSv未満が2万5470人,1mSv以上2mSv未満が4万9196人であり,99.9%超の対象者が5mSv未満である。
(乙A75)


福島市は,ガラスバッジ(個人線量計)による測定(期間3か月間,対象0~15歳)を実施したところ,これによれば,平成23年度は,3万6767人中3万2076人(87.2%)
,平成24年度は,1万6223人中
1万6015人
(98.
7%)
が0.
5mSv未満であった。
(乙A76の1)
郡山市


基本調査の結果
平成29年3月までの累計3万3684人(男性1万4984人,女性1万8700人)
がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受け
たが,預託実効線量が1mSv以上の被検査者はおらず,全員,預託実効線量は健康に影響が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)
本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象の郡山市民7万3540人について,1mSv未満が3万0974人,1mSv以上2mSv未満が3万6070人であり,99.9%超の対象者が5mSv未満である。
(乙A75)


郡山市は,ガラスバッジ(個人線量計)測定を実施しているところ,これによれば,追加被ばく線量(平均値を1年間に換算)は,平成23年から平成24年に掛けて,未就学児は,1.34→1.05→1.05→0.997→0.
75→0.
592mSv,小・中学生は,1.33→0.97→0.
93→0.83→0.727→0.57mSvと推移した。
(乙A116)

伊達市

基本調査の結果
平成29年3月までの累計7884人(男性3704人,女性4180人)がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受けたが,預託実効線量が1mSv以上2mSv未満の被検査者は二人,2mSv以上の被験者は一人いるものの,全員,預託実効線量は健康に影響が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)

本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象の伊達市民1万5905人について,1mSv未満が6445人,1mSv以上2mSv未満が8250人であり,
99.
9%超の対象者が5mSv未満である。
(乙A75)

伊達市は,ガラスバッジ(個人線量計)測定を実施しているところ,これによれば,追加被ばく線量(平均値を1年間に換算)は,平成25年から平成27年に掛けて,0~6歳は,0.65→0.46→0.35mSv,7~12歳は,0.67→0.50→0.38mSv,13~15歳は,0.72→0.56→0.42mSvと推移した。
(乙A92)

二本松市

基本調査の結果
平成29年3月までの累計4331人(男性1848人,女性2483人)がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受けたが,預託実効線量が1mSv以上の被検査者はおらず,全員,預託実効線量は健康に影響が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)
本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象の二本松市民1万4425人について,1mSv未満が3374人,1mSv以上2mSv未満が8124人であり,全ての対象者が5mSv未満である。(乙
A75)


二本松市は,外部被ばく線量調査を実施したところ,平成23年度(測定期間は平成23年9月1日から同年11月30日まで)は,8725人中8705人(99.8%)が5mSv未満であり,その後も推定年間追加被ばく線量は年々減少し,平成27年度は,対象者の96%が年間1mSv以下の追加被ばくであった。
(乙A110,111)
田村市
基本調査の結果は次のとおりである。


平成29年3月までの累計4569人
(男性2207人,
女性2362人)
がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受けたが,預託実効線量が1mSv以上の被検査者はおらず,全員,預託実効線量は健康に影響が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)


本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象の田村市民9199人について,1mSv未満が8526人,1mSv以上2mSv未満が648人であり,全員が5mSv未満である。
(乙A75)
a町
基本調査の結果は次のとおりである。


平成29年3月31日までの累計4233人(男性1952人,女性2281人)がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受けたが,全員が預託実効線量1mSv未満であり,
全員,
健康に害が及ぶ数値でなかった。
(乙A74)


本件地震後4か月間の外部被ばくの積算線量は,調査対象のa町民2634人について,1mSv未満が1354人,1mSv以上2mSv未満が1268人であり,全員が3mSv未満である。
(乙A75)
甲状腺検査(詳細検査)
甲状腺検査は,超音波検査による1次検査を行い,①A判定(2次検査が不
要とされる場合で,
A1判定
(結節や嚢胞を認めなかった場合)
とA2判定
(5.
0mm以下の結節や20.0mm以下の嚢胞が認められた場合)がある。,②)
B判定
(5.
1mm以上の結節や20.
1mm以上の嚢胞が認められた場合等)
及び③C判定(直ちに2次検査を受ける必要がある場合)で判定される。福島県県民健康調査検討委員会は,平成28年3月に公表した県民健康調査における中間とりまとめ(甲A29)において,平成23年10月に開始した先行検査において,
本件地震時に福島県居住の概ね18歳以下の県民を対
象とし,約30万人が受診(受診率81.7%),これまでに113人が甲状
腺がんの悪性ないし悪性疑いと判定され,このうち99人が手術を受け,乳頭がん95人,低分化がん3人,良性結節一人という確定診断が得られたとし(平成27年6月30日集計),これについては,将来的に臨床診断されたり死に結び付いたりすることがないがんを多数診断している可能性が指摘されており,被ばく線量がチェルノブイリの事故と比べて総じて小さく,被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短く,事故当時5歳以下からの発見はなく,地域別の発見率に大きな差がないことから,総合的に判断して放射線の影響とは考えにくいが,放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず,影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であり,
今後も甲状腺検査を継続すべきであるとの見解を明らかにした。
これに対し,県民健康調査の結果については,スクリーニング効果や過剰診断等が議論されている。同調査の結果を考察した津田論文(甲A27)は,放射線被ばくにより甲状腺がんが多発した旨述べている。これに対しては,推計過程における仮定の妥当性や計算式そのものに問題があるなどとする批判があり
(乙A61,
62等)甲状腺がんと放射線被ばくの因果関係を示唆する所

見は得られていないとする研究結果も発表されているなど,県民健康調査の結果については,
専門家の間でも論争になっている。
(以上について,
甲A23~
29,65~71,113,乙A61~64,157)
4除染の状況
全体的な状況
平成23年8月26日,平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(以下「除染特措法という。)」が成立し,同月30日,公布された。政府は,同月26日,除染に関する緊急実施基本方針,同年11月11日,除染特措法に基づく基本方針を決定し,追加被ばく線量が年間20mSv未満である地域については長期的な目標として追加被ば
く線量を年間1mSv以下とすることなどを定めた。(乙A27,185)なお,放射線量が1時間当たり0.23μSvの場における年間の追加被ばく放射線量は1mSvに当たるとされている(0.23μSvの内訳は,自然界の放射線量が0.04μSv,本件事故による追加被ばく放射線量が0.19μSv。1日のうち屋外に8時間,屋内(遮蔽効果(0.4倍)のある木造家屋)に16時間滞在する生活パターンを仮定し,1時間当たり0.19μSv×
(8時間+0.
4×16時間)
×365日=年間1mSv)
(乙A186)
福島市
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅が100%,
公共施設等が99.
6%,
道路が49.8%,農地(水田,畑地,樹園地及び牧草地)が67.8%,森林が76.7%(平成29年2月末時点)(乙A78)

なお,福島市は,同市内の学校及び園について,平成23年5月以降,同年の夏休み期間終了時までに,校庭等の表土除去や校舎等の除染を実施し,屋外における空間線量は概ね8割程度の低減が図られた。
(乙A79・202頁)
郡山市
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅が99.
3%,
公共施設等が100%,
道路が83.5%,農地(水田,畑地,樹園地及び牧草地)が86.1%,森林が100%(平成29年2月末時点)(乙A117)

なお,郡山市教育委員会は,同市内の小中学校について,平成23年5月以降,屋外活動時間を1日3時間以内に制限してきたが,校庭等の表土除去を進め,空間放射線量が平均で0.2μSv/時に低下したことを受けて,平成24年4月以降,当該屋外活動制限を解除した。
(乙A118)
伊達市
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅が99.
9%,
公共施設等が100%,
道路が96.5%,農地(水田,畑地,樹園地及び牧草地)及び森林が各100%(平成29年2月末時点)(乙A94)


二本松市
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅が92%,
公共施設等が73.
7%,
道路が61.1%,農地(水田,畑地,樹園地及び牧草地)が98.1%,森林が84%(平成29年2月末時点)(乙A113)

田村市
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅,
公共施設等,
道路及び農地
(水田,
畑地,樹園地及び牧草地)が各100%(平成29年3月末時点)(乙A10。
2)
a町
除染計画に対する除染の進捗率は,
住宅が100%,
公共施設等が97.
7%,
道路が75.11%,農地(水田,畑地,樹園地及び牧草地)及び森林が各100%(平成29年2月末時点)(乙A107)

5除去土壌の保管方法
除去土壌
(除染特別地域又は除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた土壌をいう。除染特措法2条4項)について,除染特措法41条1項は,除去土壌の収集,運搬,保管又は処分を行う者は,環境省令で定める基準に従い,当該除去土壌の収集,運搬,保管又は処分を行わなければならないと定めているところ,環境省は,除去土壌の保管の基準に関する環境省令を具体的に説明するため,
除去土壌の保管に係るガイドライン
(平成25年5月第
2版)
(以下保管ガイドラインという。
)を公表した。
(乙A146)
保管ガイドラインは,除去土壌を最終処分するまでの保管方法として,①除去した現場等で保管する形態(以下現場保管という。現場保管のうち,除去土壌を地上で保管する形態が地上保管
,地下で保管する形態が地下保管である。,②市町村又はコミュニティ単位で設置した仮置場で保管する形)
態,③中間貯蔵施設で保管する3形態を挙げ,①及び②について除去土壌の量や放射能濃度に応じ,
安全に保管を行うために必要な施設要件や管理要件を整

理し,具体的な施設の仕様及び安全管理の内容等について説明している。原告らが本件事故当時居住していた福島市,郡山市,二本松市,伊達市,田村市b町及びa町は,いずれも除染実施区域(除染特措法35条1項参照)であるところ(乙A186)
,同法39条1項本文は,除染実施者(国,都道府県
又は市町村に限る。は,

除染実施区域内の土地等に係る除去土壌等を,
やむを
得ず当該除去土壌等に係る土壌等の除染等の措置を実施した土地において保管する必要があると認めるときは,当分の間,当該土地の所有者等(所有者,管理者又は占有者を指す。同法27条4項参照)に対し,当該土地において当該除去土壌等を保管させることができると定めている。
また,
同条2項本文は,
除染実施者は,前項の規定により,土地の所有者等に当該土地等に係る除去土壌等を保管させ,
又は自らが当該土地において除去土壌等を保管しようとする
ときは,あらかじめ,当該土地の所有者等にその旨を通知し,意見を述べる機会を与えなければならないと定めている。
6水道水及び食品に対する措置等
水道水(乙A40の7,乙A60)

本件事故後の平成23年3月16日,福島市の水道水から放射性ヨウ素177Bq/kg,放射性セシウム58Bq/kgが検出されたが,本件事故前に原子力安全委員会が定めていた水道水に関する指標値である放射性ヨウ素300Bq/kg,放射性セシウム200Bq/kgをいずれも下回っていたため,水道水の摂取制限が必要なレベルではないとされた。なお,同月20日,g村の水道水からは基準値を上回る放射性ヨウ素(965Bq/kg)が検出され,翌21日からその摂取制限が行われた。

厚生労働省は,平成23年3月21日,水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には乳児による摂取を控えるように求めた。その後,同月22日,伊達市,h町,田村市,郡山市,南相馬市の水道水から,同月23日,いわき市の水道水からそれぞれ乳児の指標値(100Bq/kg)
を超える放射性ヨウ素が検出され,これらの自治体において乳児による水道水の摂取が制限されたが,同年4月1日,当該摂取制限は解除された。食品等(乙A52~59,151)

厚生労働省は,平成23年3月17日,原子力安全委員会の定めた暫定規制値(放射性ヨウ素は,飲料水,牛乳・乳製品につき300Bq/kg,野菜類(根菜,芋類を除く。
)につき2000Bq/kg,放射性セシウムは,
飲料水,牛乳・乳製品につき200Bq/kg,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他につき500Bq/kg)を上回る食品について,食品衛生法6条2号に当たるものとして販売等を規制することとした。


厚生労働省は,平成24年4月1日以降,年間線量の上限を5mSv/年として設定されていた放射性セシウムの暫定規制値(飲料水,牛乳・乳製品につき200Bq/kg,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他につき500Bq/kg)を,年間線量の上限を1mSv/年とした基準値(飲料水につき10Bq/kg,牛乳につき50Bq/kg,一般食品につき100Bq/kg,乳児用食品につき50Bq/kg)に改定した。また,米については,放射性セシウム濃度に応じて作付けの制限が行われた。


以上を通じ,
本件事故後に検査対象の自治体から出荷された食品について
は,当該自治体により放射性物質検査が行われ,暫定規制値を超えて汚染された食品が流通しないための措置
(出荷制限,
摂取制限)
が講じられており,
放射性物質検査の結果等についてもホームページ等で公表されている。
7水環境及び森林の状況
水環境
平成27年4月から,岩手県,宮城県,福島県,茨城県,栃木県,群馬県,千葉県,埼玉県及び東京都の水環境(公共用水域(河川,湖沼・水源地,沿岸域)において,水質・底質及び周辺環境(河川敷,湖畔の土壌)の放射性物質濃度(放射性セシウム,放射性ストロンチウム))の調査を実施(周辺環境に
ついては空間線量も併せて測定)したところ(環境省の平成27年度水環境放射性物質モニタリング調査)その結果は次のとおりであった。

(乙A127)

水質の状況
ほとんどの地点で不検出(検出下限値:1Bq/L)。数地点で検出(最大52Bq/L)されたのは,主に増水等による濁りの影響と考えられる。

底質の状況
河川については,
全体として,20km圏内など一部限られた地点におい
て比較的高い数値が見られるが,
ほとんどの地点で300Bq/kg以下で
あり,減少傾向で推移。
湖沼・水源地については,全体として,20km圏内など一部限られた地点において比較的高い数値が見られるが,
ほとんどの地点で3000Bq/
kg以下であり,ばらつきはあるものの,概ね減少又は横ばいで推移。沿岸域については,
ほとんどの地点で300Bq/kg以下であり,概ね
減少傾向で推移。
森林
福島県森林計画課がとりまとめた森林における放射性物質の状況と今後の予測についてによれば,平成23年度ないし平成27年度の福島県内の森林内の空間線量率の調査結果は,平成23年8月時点で平均0.91μSv/時であったものの,平成25年3月時点では0.62μSv/時に減少し,その後も減少し,平成28年3月時点では0.32μSv/時に減少しており,更に減少傾向で推移している。(乙A128)
第3賠償に関する各種基準の概要
1中間指針
平成23年4月11日,
原賠法18条1項に基づき文部科学省に原子力損害賠
償紛争審査会(原賠審)が設置された。原賠審は,同年8月5日,避難指示等に係る損害について中間指針を策定し,
以下の内容を含む指針を示した。
(乙A1)

対象区域
政府による避難指示等
(対象区域における政府又は本件事故発生直後におけ
る合理的な判断に基づく地方公共団体による避難等の指示,要請又は支援・促進)があった対象区域(避難等対象区域)は,次のとおりである。ア
避難区域


屋内退避区域


計画的避難区域


緊急時避難準備区域


特定避難勧奨地点


南相馬市が独自の判断に基づき住民に対して一時避難を要請した区域避難等対象者
避難等対象者の範囲は,避難指示等により避難等を余儀なくされた者として,
以下のとおりとする。
なお,避難,対象区域外滞在及び屋内退避を併せて避難等という。ア
本件事故が発生した後に対象区域内から同区域外へ避難のための立退き(避難)及びこれに引き続く同区域外滞在(対象区域外滞在)を余儀なくされた者(ただし,平成23年6月20日以降に緊急時避難準備区域(特定避難勧奨地点を除く。から同区域外に避難を開始した者のうち,

子供,
妊婦,
要介護者,入院患者等以外の者を除く。)


本件事故発生時に避難指示等対象区域外に居り,同区域内に生活の本拠としての住居(以下住居という。)があるものの引き続き避難等対象区域外滞在を余儀なくされた者


屋内退避区域内で屋内への退避(屋内退避)を余儀なくされた者
損害項目


検査費用(人)
本件事故の発生以降,避難等対象者のうち避難若しくは屋内退避をした者
又は対象区域内滞在者が,放射線へのばく露の有無又はそれが健康に及ぼす影響を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には,これらの者が負担した検査費用
(検査のための交通費等の付随費用を含む。は,

賠償すべき損害と認められる。

避難費用
避難等対象者が必要かつ合理的な範囲で負担した以下の費用が,賠償すべき損害と認められる。
対象区域から避難するために負担した交通費,家財道具の移動費用対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用(以下宿泊費等という。)避難等対象者が,避難等によって生活費が増加した部分があれば,その増加費用
避難費用の損害額算定方法は,以下のとおりとする。
避難費用のうち交通費,家財道具の移動費用,宿泊費等については,避難等対象者が現実に負担した費用が賠償の対象となり,その実費を損害額とするのが合理的な算定方法と認められる。ただし,領収証等による損害額の立証が困難な場合には,平均的な費用を推計することにより損害額を立証することも認められるべきである。
他方,避難費用のうち生活費の増加費用については,原則として,後記
もって両者の損害額とするのが公平かつ合理的な算定方法と認められる。避難指示等の解除等(指示,要請の解除のみならず帰宅許容の見解表明等を含む。)から相当期間経過後に生じた避難費用は,特段の事情がある場合を除き,賠償の対象とはならない。

一時立入費用
避難等対象者のうち,警戒区域内に住居を有する者が,市町村が政府及び
県の支援を得て実施する一時立入りに参加するために負担した交通費,家財道具の移動費用,除染費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。)は,必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。エ
帰宅費用
避難等対象者が,対象区域の避難指示等の解除等に伴い,対象区域内の住居に最終的に戻るために負担した交通費,家財道具の移動費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。)は,必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。


生命・身体的損害
避難等対象者が被った以下のものが,賠償すべき損害と認められる。本件事故により避難等を余儀なくされたため,傷害を負い,治療を要する程度に健康状態が悪化
(精神的障害を含む。し,

疾病に掛かり,
又は,
死亡したことにより生じた逸失利益,治療費,薬代,精神的損害等本件事故により避難等を余儀なくされ,これによる治療を要する程度の健康状態の悪化等を防止するため,負担が増加した診断費,治療費,薬代等カ
精神的損害
本件事故において,避難等対象者が受けた精神的苦痛(生命・身体的損害を伴わないものに限る。のうち,

少なくとも以下の精神的苦痛は,
賠償すべき損害と認められる。
a
対象区域から実際に避難した上,引き続き同区域外滞在を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)及び本件事故発生時には対象区域外に居り,
同区域内に住居があるものの引き続き対象区域外滞在
を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)が,自宅以外での生活を長期間余儀なくされ,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛

b
屋内退避区域の指定が解除されるまでの間,同区域における屋内退避を長期間余儀なくされた者が,行動の自由の制限等を余儀なくされ,正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛

用」
のうち生活費の増加費用と合算した一定の金額をもって両者の損害額
bに該当する者であれば,その年齢や世帯の人数等にかかわらず,避難等対象者個々人が賠償の対象となる。

算定期間を,以下の3段階に分け,それぞれの期間について,以下のとおりとする。
a
本件事故発生から6か月間(第1期)
第1期については,一人月額10万円を目安とする。
ただし,この間,避難所・体育館・公民館等(以下避難所等とい
う。)における避難生活等を余儀なくされた者については,避難所等において避難生活をした期間は,一人月額12万円を目安とする。

b
第1期終了から6か月間(第2期)
第2期については,一人月額5万円を目安とする。

c
第2期終了から終期までの期間(第3期)
第3期については,今後の本件事故の収束状況等諸般の事情を踏まえ,改めて損害額の算定方法を検討するのが妥当であると考えられる。
a
始期については,原則として,個々の避難等対象者が避難等をした日にかかわらず,本件事故発生日である平成23年3月11日とする。ただし,緊急時避難準備区域内に住居がある子供,妊婦,要介護者,入院
患者等であって,
同年6月20日以降に避難した者及び特定避難勧奨地
点から避難した者については,当該者が実際に避難した日を始期とする。b
終期については,避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた精神的損害は,特段の事情がある場合を除き,賠償の対象とはならない。
間,同区域において屋内退避をしていた者(緊急時避難準備区域から平成23年6月19日までに避難を開始した者及び計画的避難区域から避難した者を除く。)につき,一人10万円を目安とする。

営業損害
従来,
対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者又は現に営んで
いる者において,避難指示等に伴い,営業が不能になる又は取引が減少する等,その事業に支障が生じたため,現実に減収があった場合には,その減収分が賠償すべき損害と認められる。
上記減収分は,原則として,本件事故がなければ得られたであろう収益と実際に得られた収益との差額から,本件事故がなければ負担していたであろう費用と実際に負担した費用との差額(本件事故により負担を免れた費用)を控除した額(以下逸失利益という。)とする。

に負担した追加的費用(従業員に係る追加的な経費,商品や営業資産の廃棄費用,除染費用等)や,事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(事業拠点の移転費用,営業資産の移動・保管費用等)も,必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
伴い事業に支障が生じたため減収があった場合には,その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また,同指示等の解除後に,事業の全部又は一部の再開のために生じた追加的費用(機械等設備の復旧費用,
除染費用等)も,必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。ク
就労不能等に伴う損害
対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者が避難指示等により,又は,上記キの営業損害を被った事業者に雇用されていた勤労者が当該事業者の営業損害により,
その就労が不能等となった場合には,
かかる勤労者について,
給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。


検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物につき,当該財物の性質等から,検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であると認められた場合には,所有者等の負担した検査費用(検査のための運送費等の付随費用を含む。)は必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。


財物価値の喪失又は減少等
財物につき,現実に発生した以下のものについては,賠償すべき損害と認められる。なお,ここでいう財物は動産のみならず不動産をも含む。避難指示等による避難等を余儀なくされたことに伴い,対象区域内の財物の管理が不能等となったため,当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には,現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の廃棄費用,修理費用等)は,賠償すべき損害と認められる。

a
財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質にばく露した場合,

又は,
b
上記aには該当しないものの,
財物の種類,
性質及び取引態様等から,
平均的・一般的な人の認識を基準として,本件事故により当該財物の価
値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には,
現実に価値を喪失し又は減少した部分及び除染等の必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
対象区域内の財物の管理が不能等となり,又は,放射性物質にばく露することにより,その価値が喪失又は減少することを予防するため,所有者等が支出した費用は,必要かつ合理的な範囲において賠償すべき損害と認められる。
2中間指針追補
原賠審は,平成23年12月6日,自主的避難等に係る損害について,中間指針追補を策定し,放射線被ばくへの恐怖や不安は,本件原発の状況が安定していない等の状況下で,本件原発からの距離,避難指示等対象区域との近接性,政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報,居住する市町村の自主的避難の状況(自主的避難者の多寡等)の要素が複合的に関連して生じたと考えられ,少なくとも以下の区域においては,住民が放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱いたことに相当の理由があり,また,その危険を回避するために自主的避難を行ったことに合理性があるとして,
以下の内容を含む指針を示した。
(甲
A50)
以下の福島県内の市町村のうち,避難指示等対象区域を除く区域を自主的避難等対象区域とする。

県北地域
福島市,二本松市,伊達市,本宮市,l町,a町,h町,m村


県中地域
郡山市,須賀川市,田村市,鏡石町,o村,p町,q村,r村,s町,t町,u町,v町


相双地域
相馬市,w町


いわき地域
いわき市
本件事故発生時に自主的避難等対象区域内に住居があった者(本件事故発生
後に当該住居から自主的避難を行った場合,本件事故発生時に自主的避難等対象区域外に居り引き続き同区域外に滞在した場合,当該住居に滞在を続けた場合等を問わない。)を自主的避難等対象者とし,自主的避難等対象者が受けた損害のうち,以下のものが一定の範囲で賠償すべき損害と認められる。ア
放射線被ばくへの恐怖や不安により自主的避難等対象区域内の住居から自主的避難を行った場合(本件事故発生時に区域外に居り引き続き区域外に滞在した場合を含む。以下同じ。)における以下のもの。
自主的避難によって生じた生活費の増加費用
自主的避難により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
避難及び帰宅に要した移動費用


放射線被ばくへの恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合における以下のもの。
放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により,生活費が増加した分があれば,その増加費用
具体的な損害額の算定の目安は以下のとおりである。


自主的避難等対象者のうち子供及び妊婦については,本件事故発生から平成23年12月末までの損害として一人40万円


上記ア以外の自主的避難等対象者については,本件事故発生当初の時期の損害として一人8万円

本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者については,賠償すべき損害は自主的避難等対象者の場合に準じるものとし,具体的な損害額の算定に当たっては次のとおりとする。

勘案した金額とする。

子供及び妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間については,
本件事故発生から平成23年12月末までの損害として一人20万円を目安としつつ,
これらの者が中間指針追補の対象となる期間に応じた金額
とする。

3中間指針第2次追補
原賠審は,平成24年3月16日,中間指針第2次追補を策定し,以下の内容を含む指針を示した。(甲A51)
政府による避難指示等に係る損害について

避難費用及び精神的損害
避難指示区域
避難指示区域内に本件事故発生時における住居があった者の避難費用及び精神的損害は,以下のとおりとする。
a
中間指針の第2期を,避難指示区域見直しの時点(避難指示等対
象区域において,警戒区域又は計画的避難区域の指定が解除されて,避難指示解除準備区域,居住制限区域又は帰還困難区域が設定される時点)まで延長し,当該時点から終期までの期間を第3期とする。

b
上記aの第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害並びにそれらの損害額の算定方法は,原則として引き続き中間指針のとおりとするが,
宿泊費等が賠償の対象となる額及び期間には限りがあることに
留意する必要がある。

c
上記aの第3期における精神的損害の具体的な損害額(避難費用のうち通常の範囲の生活費の増加費用を含む。)の算定に当たっては,避難者の住居があった地域に応じて,以下のとおりとする。


避難指示区域見直しに伴い避難指示解除準備区域に設定された地
域については,一人月額10万円を目安とする。



避難指示区域見直しに伴い居住制限区域に設定された地域につい
ては,一人月額10万円を目安とした上,概ね2年分としてまとめて一人240万円の請求をすることができるものとする。ただし,避難指示解除までの期間が長期化した場合は,賠償の対象となる期間に応じて追加する。



避難指示区域見直しに伴い帰還困難区域に設定された地域につい
ては,一人600万円を目安とする。

d
中間指針において避難費用及び精神的損害が特段の事情がある場合を除き賠償の対象とならないとしている避難指示等の解除等から相当期間経過後の相当期間は,避難指示区域については今後の状況を踏まえて判断されるべきものとする。
旧緊急時避難準備区域
緊急時避難準備区域については,平成23年9月30日に解除されてい
ることなどを踏まえ,当該区域内に住居があった者の避難費用及び精神的損害は,次のとおりとする。
a
中間指針の第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害並びにそれらの損害額の算定方法は,引き続き中間指針のとおりとする。
b
中間指針の第3期における精神的損害の具体的な損害額(避難費用のうち通常の範囲の生活費の増加費用を含む。)の算定に当たっては,一人月額10万円を目安とする。

c
中間指針において避難費用及び精神的損害が特段の事情がある場合
を除き賠償の対象とはならないとしている避難指示等の解除等から相当期間経過後の相当期間は,旧緊急時避難準備区域については平成24年8月末までを目安とする。
特定避難勧奨地点
特定避難勧奨地点については,解除に向けた検討が開始されていることなどを踏まえ,当該地点に住居があった者の避難費用及び精神的損害は,次のとおりとする。
a
中間指針の第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害並びにそれらの損害額の算定方法は,引き続き中間指針のとおりとする。
b
中間指針の第3期における精神的損害の具体的な損害額(避難費用のうち通常の範囲の生活費の増加費用を含む。)の算定に当たっては,一人月額10万円を目安とする。

c
中間指針において避難費用及び精神的損害が特段の事情がある場合を除き賠償の対象とはならないとしている避難指示等の解除等から相当期間経過後の相当期間は,特定避難勧奨地点については3か月間を当面の目安とする。

自主的避難等に係る損害について
中間指針追補において示した自主的避難等に係る損害について,平成24年1月以降に関しては,次のとおりとする。

少なくとも子供及び妊婦については,個別の事例又は類型ごとに,放射線量に関する客観的情報,避難指示区域との近接性等を勘案して,放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱き,また,その危険を回避するために自主的避難を行うような心理が,平均的・一般的な人を基準としつつ,合理性を有していると認められる場合には,賠償の対象となる。


上記アによって賠償の対象となる場合において,賠償すべき損害及びその損害額の算定方法は,原則として中間指針追補で示したとおりとする。具体
的な損害額については,同追補の趣旨を踏まえ,かつ,当該損害の内容に応じて,合理的に算定するものとする。
除染等に係る損害について
除染等に係る損害は,中間指針で示したもののほか,次のとおりとする。ア
本件事故に由来する放射性物質に関し,必要かつ合理的な範囲の除染等(汚染された土壌等の除去に加え,汚染の拡散の防止等の措置,除去土壌の収集,運搬,保管及び処分並びに汚染された廃棄物の処理を含む。)を行うことに伴って必然的に生じた追加的費用,減収分及び財物価値の喪失・減少分は,賠償すべき損害と認められる。


住民の放射線被ばくの不安や恐怖を緩和するために地方公共団体や教育機関が行う必要かつ合理的な検査等に係る費用は,賠償すべき損害と認められる。

4被告の自主賠償基準
被告は,中間指針追補及び中間指針第2次追補が定める基準に加えて,以下についても賠償する基準(自主賠償基準)を策定した。
本件事故発生後平成23年12月31日までの期間中,避難に伴い特別に負担された費用に対する賠償(乙A13)
被告は,
上記期間内に18歳以下であった者又は妊娠していた者を含む世帯については,避難生活に伴う支出が大きいと考えられることを踏まえ,18歳以下であった者又は妊娠していた者で実際に自主的避難を行った者に対して避難によって生じる費用の賠償として一人当たり20万円を追加して賠償している。
自主的避難等対象区域の拡大(乙A14,15)
本件事故発生当時福島県県南地域(白河市,x村,y村,z村,aa町,ab町,ac町,ad町,ae村)及び宮城県丸森町に住居があった者のうち,平成23年3月11日以降同年12月31日までの間に18歳以下であった者及び
妊娠していた者に対して,自主的避難の場合には自主的避難により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,自主的避難によって生じた生活費の増加費用並びに避難及び帰宅に要した移動費用を,滞在を続けた場合には,滞在により放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じる精神的苦痛及びこれに伴う生活費の増加費用に対し,一人当たり20万円を賠償している。
平成24年1月以降の賠償基準(乙A16,17)

中間指針追補で定める自主的避難等対象区域に住居を有していた者に対する賠償について
平成24年1月から同年8月31日までの期間中に18歳以下であった者及び妊娠していた者に対して
被告は,平成24年1月から同年8月31日までの期間について,次のとおり賠償している。
a
自主的避難により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,生活費の増加費用並びに避難及び帰宅に要した移動費用
滞在により放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じる精神的苦痛及び生活費の増加費用
として,8万円

b
自主的避難等対象区域での生活において負担した追加的費用(清掃業者への委託費用等)及び平成23年12月31日までの賠償金額(40万円)
を超過して負担した生活費の増加費用並びに避難及び帰宅費用等
の追加的費用として,4万円

被告は,平成24年1月以降,自主的避難等対象区域での生活において負担した追加的費用(清掃業者への委託費用等)及び本件事故発生当初の賠償金額(8万円)を超過して負担した生活費の増加費用並びに避難及び帰宅費用等の追加的費用として4万円を賠償している。

中間指針追補で定める自主的避難等対象区域外の地域のうち福島県県南地域又は宮城県丸森町に住居があった者に対する賠償について
平成24年1月から同年8月31日までの期間中に18歳以下であった者及び妊娠していた者に対して
被告は,次のとおり賠償している。
a
平成24年1月から同年8月31日までの期間について,自主的避難により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛,生活費の増加費用並びに避難及び帰宅に要した移動費用滞在により放射線被ばくへの恐怖や不安,これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛及び生活費増加費用
として,4万円

b
自主的避難等対象区域での生活において負担した追加的費用(清掃業者への委託費用等)及び平成23年12月31日までの賠償金額(40万円)
を超過して負担した生活費の増加費用並びに避難及び帰宅費用等
の追加的費用として,4万円

被告は,平成24年1月以降,自主的避難等対象区域での生活において負担した追加的費用(清掃業者への委託費用等)及び本件事故発生当初の賠償金額(8万円)を超過して負担した生活費の増加費用並びに避難及び帰宅費用等の追加的費用として4万円を賠償している。
第4放射線と健康影響に関する知見等

1ICRPの勧告
国際放射線防護委員会(ICRP)は,1928年に設立された国際X線・ラジウム防護委員会が1950年に改組された任意団体であり,放射線防護の基本的枠組みと防護基準について勧告している。ICRPの最新の勧告は,2007年の勧告である。
(甲A85,乙A24)
2007年の勧告の概要(乙A24)

放射線被ばくによる健康への有害な影響を,確定的影響(高線量により確定的に生ずる細胞死又は細胞の機能不全等による影響又は障害)と確率的影響(比較的低い線量により確率的に生じる遺伝子(DNA)の突然変異等に起因するがん又は遺伝的影響)に分類している。


ICRPが勧告する実用的な放射線防護体系は,約100mSvを下回る線量においては,
ある一定の線量の増加はそれに正比例して放射線起因の発
がん又は遺伝性影響の確率の増加を生じるであろうという仮定に根拠を置くこととする。
この線量反応モデルは,
一般に
“直線しきい値なし仮説”
(以
下LNTモデルという。)として知られている。


LNTモデルは,
実用的なその放射線防護体系において引き続き科学的に
も説得力がある要素である一方,このモデルの根拠となっている仮説を明確に実証する生物学的,疫学的知見がすぐには得られそうにない。


ICRPが勧告する放射線防護体系は,以下の原則に基づくものとする。①放射線被ばくの状況を変化させるいかなる決定も,害よりも便益を大きくすべきである(正当化の原則)。②被ばくの生じる可能性,被ばくする人の数及びその人たちの個人線量の大きさは,全て,経済的及び社会的な要因を考慮して,合理的に達成できる限り低く保たれるべきである(防護の最適化の原則)。③患者の医療被ばくを除く計画被ばく状況においては,規制された線源からのいかなる個人への総線量も,ICRPが勧告する適切な限度を超えるべきでない(線量限度の適用の原則)。


被ばく状況を以下の三つに分類し,次のとおり防護の基準を定める。計画被ばく状況
(被ばくが生じる前に放射線防護を前もって計画するこ
とができる状況及び被ばくの大きさと範囲を合理的に予測できる状況)計画被ばく状況の線量限度(計画被ばく状況において,個人がそれを超えて受けてはならない公衆被ばく線量)は1mSv/年である。
緊急時被ばく状況
(急を要する防護対策及びおそらく長期的な防護対策
の履行も要求されるかもしれない不測の状況)
緊急時被ばく状況について計画する際,最適化のプロセスに参考レベルを適用すべきであり,緊急時状況において計画される最大残存線量の参考レベルは,典型的には予測線量20~100mSv/年の中にある。現存被ばく状況
(管理についての決定がされる時点で既に存在している
状況)
現存被ばく状況の参考レベルは,予測線量1~20mSv/年である。本件事故に関するICRPの声明
ICRPは,平成23年3月21日,本件事故に関し,①国の機関が,緊急
時に公衆の防護のために,最も高い計画的な被ばく線量として20~100mSv/年の範囲で参考レベルを設定することとしたICRPの2007年の勧告を,そのまま変更することなしに用いること,②国の機関が,必要な防護措置をとる場合,
長期間の後には放射線レベルを1mSv/年へ低減するとし
て,これまでの勧告から変更することなしに,参考レベル1~20mSv/年の範囲で設定することを勧告する旨の声明を発表した。(乙A25)2日本の放射線防護体制
我が国の法令(本件事故当時のもの)においては,ICRPの勧告を踏まえて,
一般公衆に対する放射線量の限度を年間1mSvとしている
(例えば,
核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に関する実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定等に基づき定められた告示(核原
料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示)3条1項1号等)
原子力安全委員会は,平成23年7月19日,今後の避難解除,復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方についてを公表した。
これによれば,
緊急時被ばく状況においては,計画的避難区域の設定等に係る助言において,ICRPの2007年の勧告において緊急時被ばく状況に適用することとされている参考レベルの範囲20~100mSv/年の下限である20mSv/年を適用することが適切であり,緊急時被ばく状況から現存被ばく状況に移行後においては,防護措置の最適化のための参考レベルは,2007年の勧告において現存被ばく状況に適用される参考レベルの範囲1~20mSv/年のうち,長期的には年間1mSvを目標とすることとされた。(乙A26)政府は,平成23年11月11日,除染特措法に基づく基本方針を閣議決定した。これによれば,土壌等の除染等の措置に係る目標値として,ICRPの2007年の勧告,原子力安全委員会の今後の避難解除,復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について等を踏まえ,自然被ばく線量及び医療被ばく線量を除いた被ばく線量(追加被ばく線量)が年間20mSv以上である地域については,当該地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指し,追加被ばく線量が年間20mSv未満である地域については,長期的な目標として追加被ばく線量が年間1mSv以下となることを目指すとされた。(乙A27)
3IAEA国際フォローアップミッション最終報告書
IAEAは,平成26年1月23日,福島第一原子力発電所外の広範囲に汚染された地域の環境回復に関するIAEA国際フォローアップミッションの最終報告書を公表した。これによれば,除染を実施している状況において,1~20mSv/年という範囲内のいかなるレベルの個人放射線量も許容しうるものであり,国際基準及び関連する国際組織,例えば,ICRP,IAEA,UNSCEAR及びWHOの勧告等に整合したものであるということについて,コミュニケーションの取組を強化することが日本の諸機関に推奨される。,

政府は,人々に1mSv/年の追加個人線量が長期の目標であり,例えば除染活動のみによって,短期間に達成しうるものではないことを説明する更なる努力をなすべきである。

などとされている。(乙A30)4文部科学省通知
文部科学省は,平成23年4月19日,福島県知事らに対し,福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方についてを通知した。その内容は次のとおりである。(乙A28)
なお,学校とは,幼稚園,小学校,中学校及び特別支援学校を指す。ア
学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安
ICRPの非常事態収束後の参考レベルである1~20mSv/年を学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし,今後できる限り,児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切である。
児童生徒等の受ける線量を考慮する上で,16時間の屋内(木造),8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると,20mSv/年に到達する空間線量率は,屋外3.8μSv/時,屋内(木造)1.52μSv/時となる。これを下回る学校では,児童生徒等が平常どおりの活動によって受ける線量が20mSv/年を超えることはないと考えられる。校庭・園庭において毎時3.8μSv以上を示した場合においても,校舎・園舎内での活動を中心とする生活を確保することなどにより,児童生徒等の受ける線量が20mSv/年を超えることはないと考えられる。


福島県の学校を対象とした環境放射線モニタリングの結果
校庭・園庭で3.8μSv/時以上の空間線量率が測定された学校等については,校庭等での活動を1日当たり1時間程度に制限するなど,学校内外での屋外活動をなるべく制限することが適当である。

3.
8μSv/時未満の空間線量率が測定された学校については,
校舎・
校庭等を平常どおり利用して差し支えない。

高等学校等についても,以上の考え方を参考に配慮することが望ましい。文部科学省は,平成23年8月26日,福島県知事らに対し,福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について(通知)(平成23年8月26日)を通知した。その内容は次のとおりである。(乙A29)

現状
校庭・園庭の土壌除去等の具体的な手法が示され,それに基づく土壌除去が進んだことなどにより,学校が開校されている地域では,既に校庭・園庭において毎時3.
8μSv以上の空間線量率が測定される学校はなくなって
いる。一方,今後ともICRPの勧告が提示している非常事態収束後の参考レベルである年間1~20mSvについて,年間1mSvに向けて低減していく取組を進めていく必要がある。


今後の考え方
夏期休業終了後,学校において児童生徒等が受ける線量は,原則1mSv/年以下とし,これを達成するため,校庭・園庭の空間線量率は,児童生徒等の行動パターン(学校への通学日数を年間200日,1日当たりの平均滞在時間を6.5時間(うち,屋内4.5時間,屋外2時間))を考慮し,毎時1μSv未満を目安とする。仮に毎時1μSvを超えることがあっても,屋外活動を制限する必要はないが,除染等の速やかな対策が望ましい。学校において比較的線量が高いと考えられる場所については,校内を測定して当該場所を特定し,除染したり,除染されるまでの間近づかないように措置したりすることが,重要である。


高等学校等についても,以上の考え方を参考に配慮することが望ましい。
5低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書
政府の要請に基づき内閣官房の放射性物質汚染対策顧問会議の下に低線量被
ばくのリスク管理に関するワーキンググループが設置され,低線量被ばくと健康影響に関する国内外の科学的知見等の整理が行われ,平成23年12月22日,低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書が公表された。その概要は次のとおりである。(乙A11)
科学的知見と国際的合意
放射線の影響に関しては様々な知見が報告されているため,国際的に合意されている科学的知見を確実に理解する必要がある。国際的合意としては,科学的知見を国連に報告している原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR),世界保健機関(WHO),国際原子力機関(IAEA)等の報告書に準拠することが妥当である。広島・長崎の原爆の人体に対する影響の調査は,その規模からも,調査の精緻さからも世界の放射線疫学研究の基本であり,UNSCEARも常に報告している。一方,内部被ばくで多くの人達が被ばくした事例としてチェルノブイリの事故がある。同事故に関する調査結果は,UNSCEAR,WHO,IAEA等の国際機関から報告されている。低線量被ばくのリスク
低線量被ばくによる健康影響に関する現在の科学的な知見は,主として広島・長崎の原爆被爆者の半世紀以上にわたる精緻なデータに基づくものであり,国際的にも信頼性は高く,
UNSCEARの報告書の中核を成している。
広島・
長崎の原爆被爆者の疫学調査の結果からは,被ばく線量が100mSvを超えるあたりから,
被ばく線量に依存して発がんのリスクが増加することが示され
ている。国際的な合意では,放射線による発がんのリスクは,100mSv以下の被ばく線量では,
他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど
小さいため,
放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難し
いとされる。疫学調査以外の科学的手法でも,同様に発がんリスクの解明が試みられているが,現時点では人のリスクを明らかにするには至っていない。一方,被ばくしてから発がんまでには長期間を要する。100mSv以下の
被ばくであっても,微量で持続的な被ばくがある場合,より長期間が経過した状況で発がんリスクが明らかになる可能性があるとの意見もあった。いずれにせよ,徹底した除染を含め予防的に様々な対策をとることが必要である。長期にわたる被ばくの健康影響
低線量率の環境で長期間にわたり継続的に被ばくし,積算量として合計100mSvを被ばくした場合は,短時間で被ばくした場合より健康影響が小さいと推定されている(線量率効果)。この効果は,動物実験においても確認されている。
本件事故により環境中に放出された放射性物質による被ばくの健康影響は,長期的な低線量率の被ばくであるため,瞬間的な被ばくと比較し,同じ線量であっても発がんリスクはより小さいと考えられる。
外部被ばくと内部被ばくの違い
内部被ばくは外部被ばくよりも人体への影響が大きいという主張がある。しかし,放射性物質が身体の外部にあっても内部にあっても,それが発する放射線がDNAを損傷し,損傷を受けたDNAの修復過程での突然変異が,がん発生の原因となる。そのため,臓器に付与される等価線量が同じであれば,外部被ばくと内部被ばくのリスクは,同等と評価できる。
なお,
ウクライナ住民で低線量の放射性セシウムの内部被ばくにより膀胱がんが増加したとの報告があるが,解析方法の問題や他の疫学調査の結果との矛盾があることなどから,
低線量の放射性セシウムの内部被ばくと膀胱がんのリ
スクとの因果関係は,国際的には認められていない。
子供・胎児への影響
一般に,発がんの相対リスクは若年ほど高くなる傾向がある。小児期・思春期までは高線量被ばくによる発がんのリスクは成人と比較してより高い。しかし,低線量被ばくでは,年齢層の違いによる発がんリスクの差は明らかではない。他方,原爆による胎児被爆者の研究からは,成人期に発症するがんについての胎児被ばくのリスクは小児被ばくと同等か,又は,それよりも低いことが
示唆されている。
また,放射線による遺伝的影響について,原爆被爆者の子供数万人を対象にした長期間の追跡調査によれば,現在までのところ遺伝的影響は全く検出されていない。さらに,がんの放射線治療において,がんの占拠部位によっては原爆被爆者が受けた線量よりも精巣や卵巣が高い線量を受けるが,こうした患者(親)の子供の大規模な疫学調査でも,遺伝的影響は認められていない。チェルノブイリの事故における甲状腺被ばくよりも,本件事故による小児の甲状腺被ばくは限定的であり,被ばく線量は小さく,発がんリスクは非常に低いと考えられる。小児の甲状腺被ばく調査の結果,環境放射能汚染レベル,食品の汚染レベルの調査等様々な調査結果によれば,本件事故による環境中の影響によって,
チェルノブイリの事故の際のように大量の放射性ヨウ素を摂取し
たとは考えられない。
生体防御反応
放射線によりDNAが損傷し,突然変異が起こり,更に多段階の変異が加わり正常細胞ががん化するというメカニズムがある。他方,生体には防御機能が備わっており,この発がんの過程を抑制する仕組みがある。
低線量被ばくであってもDNAが損傷し,その修復の際に異常が起こることで発がんするメカニズムがあるという指摘があった。一方,線量が低ければ,DNA損傷の量も少なくなり,更に修復の正確さと同時に生体防御機能が十分に機能すると考えられ,発がんに至るリスクは増加しないとの指摘もあった。放射線による健康リスクの考え方

直線しきい値なしモデル(LNTモデル)の考え方
放射線防護や放射線管理の立場からは,低線量被ばくであっても,被ばく線量に対して直線的にリスクが増加するという考え方を採用する。これは,科学的に証明された真実として受け入れられているのではなく,科学的な不確かさを補う観点から,公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用さ
れている。線量に対して直線的にリスクが増えるとする考えは,飽くまで被ばくを低減するための手段として用いられる。すなわち,予測された被ばくによるリスクと放射線防護措置等による他の健康リスク等,リスク同士を比較する際に意味がある。しかし,この考えに従って,100mSv以下の極めて低い線量の被ばくのリスクを多人数の集団線量に適用し,単純に死亡者数等の予測に用いることは不確かさが非常に大きくなるため不適切である。イ
リスクの程度の理解
本件事故による被ばくのリスクを,自発的に選択することができる他のリスク要因(例えば医療被ばく)等と単純に比較することは,必ずしも適切ではないが,リスクの程度を理解するのに有効な一助となる。
2009年の死亡データによれば,日本人の約30%ががんで死亡している。広島・長崎の原爆被爆者に関する調査の結果に線量・線量率効果係数2を適用すれば,長期間にわたり100mSvを被ばくすると,生涯のがん死亡のリスクが約0.5%増加すると試算されている。他方,我が国でのがん死亡率は都道府県の間でも10%以上の差異がある。
放射線の健康へのリスクがどの程度であるかを理解するため,放射線と他の発がん要因等のリスクとを比較すると,例えば,喫煙は1000~2000mSv,肥満は200~500mSv,野菜不足や受動喫煙は100~200mSvのリスクと同等とされる。
被ばく線量でみると,例えばCTスキャンは1回で数mSvの放射線被ばくを受ける。
重症患者では入院中に数回のCT検査を受けることも決し
て稀ではない。
東京―ニューヨーク間の航空機旅行では,高度による宇宙線の増加により,1往復当たり0.2mSv程度被ばくするとされている。
自然放射線による被ばく線量の世界平均は年間約2.4mSvであり,日本平均は年間約1.5mSvである。このうち,ラドンによる被ばく線
量は,UNSCEARの報告によれば,世界の平均は年間1.2mSv,変動幅は年間0.2~10mSvと推定されているが,日本の平均値は年間0.59mSvである。
クロロホルムは,
水道水中に含まれ発がん性が懸念されているトリハロ
メタン類の代表的な物質であるが,平均して1日に2リットルの水道水を飲用し続けたとしても発がんのリスクは0.01%未満であり,懸念されるレベルではないと評価されている。100mSvの放射線被ばくによる発がんのリスク
(例えば長期間100mSv被ばくした場合の生涯のがん
死亡の確率の増加分,約0.5%)は,このクロロホルム摂取による発がんのリスクよりは大きい。

上記イのような状況を踏まえると,放射線防護上では,100mSv以下の低線量であっても被ばく線量に対して直線的に発がんリスクが増加するという考え方は重要であるが,この考え方に従ってリスクを比較した場合,年間20mSv被ばくすると仮定した場合の健康リスクは,例えば他の発がん要因(喫煙,肥満,野菜不足等)によるリスクと比べても低いこと,放射線防護措置に伴うリスク(避難によるストレス,屋外活動を避けることによる運動不足等)と比べられる程度であると考えられる。
放射線防護の実践
低線量被ばくに対する放射線防護政策を実施するに当たっては,科学的な事
実を踏まえた上で,
合理的に達成可能な限り被ばく線量を少なくする努力が必
要である。
放射線防護のためには線源と被ばくの経路に応じて多様な措置が考えられる。具体的には,除染,放射線レベルの高いところへの立入り制限,高濃度に汚染されたおそれのある飲食物の摂取制限等である。放射線防護措置の選択に当たっては,ICRPの考え方にあるように,被ばく線量を減らすことに伴う便益(健康,心理的安心感等)と,放射線を避けることに伴う影響(避難・移住による経済的被害やコミュニティの崩壊,職を失う損失,生活の変化
による精神的・心理的影響等)の双方を考慮に入れるべきである。放射線防護政策を実施するに当たっては,子供や妊婦に特段の配慮を払うべきである。放射線防護のための方向性
我が国が採用している放射線防護上の基準は年間20mSvであるが,今後は更に被ばく線量をできるだけ低減することが必要である。その際,ステップバイステップで,
住民の被ばく線量が高いと想定される地域から漸進的に改善
していくことが必要である。長期的な目標である年間1mSvは,原状回復を実施する立場から,これを目指して対策を講じていくべきである。同時に,生活圏の除染や健康管理等の対策の実施に当たっては,投入するリソースを有効に活用するため,適切かつ合理的な優先順位をつけること,また中間的な参考レベルを示した上で行うことが有効である。
被ばく線量の低減対策の実施に当たっては,放射線影響の感受性の高い子供,放射線の影響に対する親の懸念が大きい乳幼児について優先することとし,きめ細かな防護措置を行うことが必要である。まず,想定される被ばく線量を把握することが重要であり,外部被ばく,内部被ばくを含め,どの経路による被ばくが大きいか調査することが必要である。また,実際の被ばく線量を正確に調査・把握しておくことが必要である。当面寄与が大きいと考えられる外部被ばくは,土壌等に存在する放射性物質からの放射線によるものであるから,子供の生活環境を優先的に除染する必要がある。政府は,避難区域外において,校庭・園庭の空間線量率が毎時1μSv以上の学校等について,土壌の汚染に関する財政的支援を実施した。
この結果,
現在ほとんどの学校等において校庭・
園庭の空間線量率が毎時1μSvを下回っている。今後,避難区域を解除するに当たっては,
避難区域外の学校と同等の放射線量を目指した防護措置をとる
べきである。具体的には,避難区域内の学校等を再開する前に,校庭・園庭の空間線量率が毎時1μSv以上の学校等は,周辺区域を含め徹底した除染を行い,それ未満とすべきである。また,学校だけでなく,通学路や公園等の子供
の生活圏における追加被ばく線量を年間1mSv以下とすることを目指すべきである。さらに,比較的放射線量の低い地域での移動課外教室等により,外部被ばくの低減を図るとともに,子供の心身の健康の確保に取り組むべきである。内部被ばくの予防及び低減には,適切な管理が必要である。このため,食品中の放射能濃度の適切かつ合理的な基準の設定,遵守とともに,例えば地域の実情に応じた食品中の放射能濃度の測定を実施することが必要である。個々の子供の被ばく線量を測定すると,何人かの測定値の高い子供が出てくる。そのような被ばく線量の高い子供に,医師,放射線技師,保健師,専門家,教育関係者等が個々に対応し,その原因を探り,必要に応じて生活上の助言や精神的サポート,更に除染を行うなど,きめ細かで優しく寄り添った丁寧な対応をとるべきである。
まとめ

国際的な合意に基づく科学的知見によれば,放射線による発がんリスクの増加は,100mSv以下の低線量被ばくでは,他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく,放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しい。しかしながら,放射線防護の観点からは,100mSv以下の低線量被ばくであっても,被ばく線量に対して直線的にリスクが増加するという安全サイドに立った考え方に基づき,被ばくによるリスクを低減するための措置を採用すべきである。現在の避難指示の基準である年間20mSvの被ばくによる健康リスクは,他の発がん要因によるリスクと比べても十分に低い水準である。放射線防護の観点からは,生活圏を中心とした除染や食品の安全管理等の放射線防護措置を継続して実施すべきであり,これら放射線防護措置を通じて,十分にリスクを回避できる水準であると評価できる。また,放射線防護措置を実施するに当たっては,それを採用することによるリスク(避難によるストレス,屋外活動を避けることによる運動不足等)と比べた上で,どのような防護措置をとるべきかを政策
的に検討すべきである。こうしたことから,年間20mSvという数値は,今後より一層の線量低減を目指すに当たってのスタートラインとしては適切であると考えられる。
なお,現在の避難区域設定の際には,放射能の自然減衰を考慮に入れない等,安全側に立って被ばく線量の推計を行ったこともあり,実際の被ばく線量は,年間20mSvを平均的に大きく下回ると評価できる。

子供・妊婦の被ばくによる発がんリスクについても,成人の場合と同様,100mSv以下の低線量被ばくでは,他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく,発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しい。一方,100mSvを超える高線量被ばくでは,思春期までの子供は,成人よりも放射線による発がんのリスクが高い。こうしたことから,100mSv以下の低線量の被ばくであっても,住民の大きな不安を考慮に入れて,
子供に対して優先的に放射線防護のための措置をとることは適切である。ただし,子供は,放射線を避けることに伴うストレス等に対する影響についても感受性が高いと考えられるため,きめ細やかな対応策を実施することが重要である。


放射線防護のための数値については,科学的に証明されたものか,政策としてのものか理解してもらうことが重要である。チェルノブイリでの経験を踏まえれば,長期的かつ効果的な放射線防護の取組を実施するためには,住民が主体的に参加することが不可欠である。このため,政府及び専門家は,住民の目線に立って,確かな科学的事実に基づき,分かりやすく,透明性をもって情報を提供するリスクコミュニケーションが必要である。

6UNSCEARの報告
UNSCEARによる放射線影響評価
UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は,本件事故による放射性物質の拡散,
住民・労働者の被ばく線量及び健康影響等について,

平成25年10月に国連総会に提出した年次報告書において,本件事故の放射線影響評価を次のとおり明らかにした。(乙A34)

本件事故後1年間の実効線量の推計値(大人)として,避難した住民(主に避難前又は避難中の被ばく)は10mSv以下,そのうち,平成23年3月12日の早いうちに避難したケースでは約5mSv以下,福島市の住民は約4mSvとされている(1歳の乳児の実効線量は大人の2倍とされている。)。ここで前提とされている被ばく線量の推計は,実測値と比べてそれぞれ3~5倍及び10倍大きいため,実際より過大である可能性がある。

福島県が実施している県民健康管理調査における甲状腺検査において,嚢胞,結節,がんの発見率の増加が認められるが,これは,高い検出効率によるものと見込まれる。
本件事故の影響を受けていない地域において同様の手
法を用いて検査を行った結果からは,福島県の子どもの間で見付かっている発見率の増加については,放射線の影響とは考えにくいことが示唆される。2013年UNSCEAR報告書
UNSCEARは,平成26年4月2日,2013年国連総会報告書の科学
的附属書A
2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響(以下2013年UNSCEAR報告書という。)を公表した。その概要は,次のとおりである。(甲A15,乙A35)

福島県の避難対象外行政区画の住民の本件事故後1年間の実効線量の推定値(外部被ばく,吸入による内部被ばく及び経口摂取による内部被ばくの合計。単位はmSv)は,成人が1.0~4.3,10歳児が1.2~5.9,1歳児が2.0~7.5であり,また,同住民の本件事故後1年間の甲状腺の吸収線量の推定値(単位はmGy)は,成人が7.8~17,10歳児が15~31,1歳児が33~52である。
なお,この数値は,自然放射線源によるバックグラウンド線量への上乗せ分である。データが不十分である場合には仮定を設けており,そのためこれ
らの値は平均線量を実際より過大評価している可能性がある。

福島県では,避難区域に一部が掛かる行政区画(南相馬市)と地表での沈着密度が高い行政区画(福島市,二本松市,l町,m村,郡山市,本宮市,伊達市)において,避難しなかった人として最大の推定実効線量が得られ,本件事故直後1年間における成人の行政区画平均実効線量は2.5~4.3mSvであった。これらの行政区画では,実効線量に占める沈着放射性核種に起因する外部線量の寄与率が大きかった。1歳児における本件事故後1年目の平均実効線量は,成人の平均実効線量の2倍以内と推定された。

線量推定値の主要な結果は,福島県で最も一般的である木造家屋に住む人々を対象としている。コンクリートの高層アパート又は木造モルタルの家に住む人々の線量は,それぞれ,推定線量の約25%又は50%である。

食品への放射性核種の移行は,核種の放出が1年のどの時期に発生するかによって大きく影響を受ける。本件事故が発生した3月は,わずかな作物しか栽培されておらず,家畜は保存された餌を与えられていた。そのため,食品中の濃度は,事故が1年のうちでもっと遅くに発生していた場合(1986年のチェルノブイリ事故がそうであった)より低かった。計画的避難区域の人々が,地元で栽培された食物や採取したキノコや野生の植物,地元で捕獲又は狩猟した魚や獲物を避難する前に口にした可能性を無視することができず,
そのような食習慣により住民の経口摂取による実効線量の推定値が最大でおそらく10倍まで高くなる可能性はあるものの,公衆に対して広範囲に実施された生体全身測定の結果には,そのような高線量を示す証拠は見られなかった。事故発生時期が3月であったため,地元で栽培されていた食物は限られていたし,日本の多くの人々は,食物経由の放射性核種の摂取量を減らす措置を講じたことなどから,これらの人々の場合の経口摂取による線量は,同委員会が推定した値よりかなり低かったと思われる。


避難者の本件事故後1年間の実効線量の推定値(単位はmSv)は,予防
的避難
(高度の被ばくを防止するための緊急時防護措置として平成23年3月12日から同月15日に掛けて指示された地区の避難)地区では,成人が1.1~5.7,10歳児が1.3~7.3,1歳児が1.6~9.3であり,計画的避難(平成23年3月末から同年6月に掛けて指示された地区からの避難)地区では,成人が4.8~9.3,10歳児が5.4~10,1歳児が7.1~13である。また,避難者の本件事故後1年間の甲状腺吸収線量(単位はmGy)は,予防的避難地区では,成人が7.2~34,10歳児が12~58,1歳児が15~82,計画的避難地区では,成人が16~35,10歳児が27~58,1歳児が47~83である。
なお,この数値は,自然放射線源によるバックグラウンド線量への上乗せ分である。データが不十分である場合には仮定を設けており,そのためこれらの値は平均線量を実際より過大評価している可能性がある。

被ばくは,確定的影響のしきい値を大きく下回る。精神的な健康の問題と平穏な生活が破壊されたことが,本件事故後に観察された主要な健康影響を引き起こした。これは,地震,津波,本件事故の多大な影響及び放射線被ばくに対する恐怖や屈辱感への当然の反応の結果であった。うつ症状や心的外傷後ストレス障害に伴う症状などの心理的な影響が公衆に観察された。

避難者及び避難区域以外で事故の影響を最も受けた地域の集団の最初の1年間における平均実効線量は,成人で約1~10mSv,1歳児でその約2倍と推定された。リスクモデルを用いて推論した場合,この程度の線量でもがんのリスクがわずかに上昇することが示唆されるが,一般的な集団における事故の放射線被ばくによる疾患発生率の全体的な上昇は,日本人の基準生涯リスク(あらゆる固形がんにおいて平均35%であるが,性別,生活習慣や他の要因によって個人差がある)に対して検出するには小さすぎる。

幼少期及び小児期により高い甲状腺線量に被ばくした人々の間で甲状腺がん発生率が上昇するかどうかを見極めるという点に関し,確固たる結論を
導くには,線量分布に関する情報が十分ではなかった。本件事故後の甲状腺吸収線量がチェルノブイリの事故後の線量より大幅に低いため,福島県で多数の放射線誘発性甲状腺がんが発生するというように考える必要はない。ケ
胎児及び幼少期・小児期に被ばくした人の白血病,特に若年期に被ばくした人の乳がんについて,疾患の発生率が識別可能なレベルで上昇するとは予測していない。妊娠中の被ばくによる自然流産,流産,周産期死亡率,先天的な影響,又は認知障害が増加するとは予測していない。本件事故で被ばくした人の子孫に遺伝的な疾患が増加するとも予測していない。


福島県での継続的な甲状腺超音波検査により,甲状腺結節が調査対象者の約1%,甲状腺嚢胞が調査対象者の約40%で見付かったところ,本件事故の影響をほとんど受けていない地域で行われた類似した調査と変わらない結果であった。
これは,
検査が集中的で使用機器の感度が高いことが原因で,
本件事故による放射線被ばくによるものでないことを示唆している。(乙A36の33頁参照)
2015年UNSCEAR報告書
UNSCEARは,平成27年10月,東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展を発表した。その概要は次のとおりである。(乙A36)ア
公衆の被ばく線量評価に関し,審査された12編の刊行物のうち,2013年UNSCEAR報告書の主要な知見に実質的な影響を与えるものはなく,10編は同報告書の主要な仮定の全体又は一部を確認している。

多くの分野で,
内部被ばくによる線量推定値の質と信頼性の向上に寄与す
ると思われる相当の進捗を認めた。これには,内部被ばくパターンの一層の明確化,ホールボディカウンター測定による線量測定値の検証,経口摂取及び再浮遊放射性核種の吸入による内部被ばく線量が外部被ばく線量よりもかなり小さいことの確認などが挙げられる。


2013年UNSCEAR報告書に記載されている線量推定値は,沈着した放射性核種に対する外部被ばくによる線量及び食品の摂取による内部被ばく線量を低減するための長期的な環境修復措置を考慮に入れていない。したがって,
既に実際に受けた線量又は将来に受ける可能性のある実際の被ば
く線量よりも,過大に評価されている可能性がある。


全身測定の結果により,食品中の放射性核種の経口摂取による実効線量が実際には食品測定のデータベースを用いた論理的な推定値(及び2013年UNSCEAR報告書で全般的に報告されている推定値)よりかなり低かった可能性があるという,2013年UNSCEAR報告書にある記述の信頼性が増した。新規刊行物の大部分が,特に以下の点において,2013年UNSCEAR報告書の想定及び知見を広く支持又は確認している。日本の公衆の被ばく線量は,2013年UNSCEAR報告書で予測されていたように,2011年以降は有意に減少した。
食品に含まれる放射性核種の継続的な摂取による内部被ばくからの総実効線量への寄与は小さく,再浮遊した放射性セシウムの吸入からの被ばくへの寄与はごくわずかである。
個人線量計で測定された外部被ばく線量,又は線量率の測定及び個人の聞取調査から推定した線量は,2013年UNSCEAR報告書で報告された情報と基本的に合致している。


新たな情報により,甲状腺調査における小結節,嚢胞及びがんの高い検出率は,集中的な集団検診及び使用機器の感度の高さによる結果であり,事故による放射線被ばくの増加の結果ではないとする,2013年UNSCEAR報告書の記述についての重要性を高めている。

7原子力規制委員会の見解
原子力規制委員会は,平成25年11月20日,帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)を公
表した。これによれば,放射線による被ばくがおよそ100mSvを超える場合には,がん罹患率や死亡率の上昇が線量の増加に伴って観察されている。100mSv以下の被ばく線量域では,がん等の影響は,他の要因による発がんの影響等によって隠れてしまうほど小さく,疫学的に健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認識されている。,公衆の被ばく線量限度(年間1mSv)は,ICRPが,低線量率生涯被ばくによる年齢別年間がん死亡率の推定,及び自然から受ける放射線による年間の被ばく線量の差等を基に定めたものであり,放射線による被ばくにおける安全と危険の境界を表したものではないとしている。放射線防護の考え方は,いかなる線量でもリスクが存在するという予防的な仮定にたっているとしている。,ICRPは,緊急事態後の長期被ばく状況を含む状況(現存被ばく状況)において汚染地域内に居住する人々の防護の最適化を計画するための参考レベル(これを上回る被ばくの発生を許す計画の策定は不適切であると判断され,それより下では防護の最適化を履行すべき線量又はリスクのレベル)は,長期的な目標として,年間1~20mSvの線量域の下方部分から選択すべきであるとしている。,

我が国では,ICRPの勧告等を踏まえ,空間線量率から推定される年間積算線量(20mSv)以下の地域になることが確実であることを避難指示解除の要件の一つとして定めている。が,

ICRPにおける現存被ばく状況の放射線防護の考え方を踏まえ,長期目標として,帰還後に個人が受ける追加被ばく線量が年間1mSv以下になるよう目指すことが必要であるなどとされている。(乙A31)第2章

損害総論

第1基本的な考え方
1原賠法について
原子力損害(原賠法2条2項)とは,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害をいうところ,原子力損害の範囲については,原賠法に規定が存在しないから,
民法上の損害賠償責任に関する一般原則に従って,原子炉の運転等と相当因果関係のある損害全てがこれに含まれると解される。
そして,原子力損害とは,不法行為における損害と同様に,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用が発生しなければあったであろう状態と現状の差額を金銭的に評価したものであると解され,本件事故と相当因果関係のある損害の発生及び金額については,原告らが具体的に主張立証しなければならない。
2財産的損害
原告らの一部(原告番号5,7及び8)は,精神的損害のみならず,これと併せて財産的損害の賠償を求めている。この点,不法行為に基づく損害賠償は,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補てんし,不法行為がなかった時の状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号78頁参照),原賠法3条1項に基づく損害賠償もこれと別異に解する理由はないから,これに従い,本件事故により上記原告らが被った不利益を補てんする賠償額として相当な金額を算定することとする。
3精神的損害
慰謝料額の算定は,
事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情を斟酌
して裁判所が裁量によって算定するものであるところ(最高裁昭和44年10月31日第二小法廷判決・集民97号143頁,最高裁平成9年5月27日第三小法廷判決・民集51巻5号2024頁各参照)本件事故により原告ら,
(い
ずれも自主的避難者等である。)が被った精神的苦痛を慰謝する賠償額については,相当な金額の目安を後記第3のとおり定めることとする。
もっとも,不法行為に基づく損害賠償は,被害者個々人の具体的事情を考慮して行うべきものであるところ(前掲最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決参照),精神的損害については,各原告の個別事情により精神的苦痛の程度
が左右されることから,最終的には各原告の個別事情を勘案して,相当と認める額を精神的損害に対する賠償額として認めることとする。
自主的避難等対象区域に居住していた者については,自主的避難をしたかどうかを問わず,多かれ少なかれ生活費が増加したと考えられるところ,原告らは,精神的損害の一つとして生活費が増加した旨の主張をしている。また,原告らの中には,本件事故により財産的損害(生活費の増加を除く。)が生じたとして,その損害を精神的損害として求めている者もいる。これらのうち,個別に本件事故と相当因果関係の立証が可能なものについては,財産的損害として別途賠償を求めるべきであるが,精神的苦痛の内容として主張するものについては,慰謝料の額を定める際の一要素として勘案することが相当である。4中間指針等について
中間指針等は,原賠法18条2項2号に依拠し,法学者及び放射線の専門家等の委員で構成された原賠審において,多数の被害者への迅速,公平かつ適正な賠償を行うとの見地から過去の裁判例並びに慰謝料額の基準を踏まえて定めた基準であるから,これを踏まえた被告の自主賠償基準も含め,一応の合理性を有するものといえる。もっとも,いずれも飽くまで当事者による自主的な解決に資する一般的な指針にすぎないから,その内容は裁判所を拘束するものでない。第2避難の相当性
1自主的避難者等の避難の相当性
本件事故当時に自主的避難等対象区域に居住していた者は,避難指示等対象区域に居住していた者とは異なり,避難指示等により居住地からの避難を余儀なくされたわけではない。もっとも,この点,中間指針追補は,放射線被ばくへの恐怖や不安は,本件原発の状況が安定していない等の状況下で,本件原発からの距離,避難指示等対象区域との近接性,政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報,居住する市町村の自主的避難の状況(自主的避難者の多寡等)の要素が複合的に関連して生じたと考えられるとし,自主的避難等対象区域にお
いては,
住民が放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱いたことに相当の理由があり,
その危険を回避するために自主的避難を行ったことには合理性があるとしている(認定事実第3の2)。そして,①自主的避難等対象区域において,一時的に10μSv/時や20μSv/時を超える空間放射線量が測定された場所があったこと(認定事実第2の1),②本件事故直後においては,本件事故や自らが置かれている状況について十分な情報がなく,平成23年3月頃には,本件事故の推移,
放射線の知識及び健康影響等に関する情報が新聞報道等を通じ
て提供されていたこと(ただし,冷静な対応を求める旨の内容を含む。)(乙A37,38,163,206),③本件事故当日の同年3月11日にまず本件原発の直近の地域に避難指示等が出され,その後,同月15日までの間にその対象地域が3度にわたって拡大され,急速に放射線被ばくのリスクが広がる様相を呈していたこと
(前提事実第3の1)④原子力安全・保安院は,

同年4月12日,
INESに基づき,本件事故をレベル7(深刻な事故)と評価しているところ(前提事実第2の3),これは既存レベルの中ではチェルノブイリの事故と同じ範囲に属すること,
⑤自主的避難者数は同年5月頃から同年9月頃に掛けて増加し,同月には福島県全体で5万人を超えているため(認定事実第2の2),本件事故から数か月経過した時点でも,放射線被ばくに対して不安を抱いていた住民が相当数いたものと推察されること,⑥ICRPの勧告では,年間約100mSvを下回る線量においては,これを実証する生物学的,疫学的知見が得られていないが,
ある一定の線量の増加に正比例して放射性起因の発がん又は遺伝性影響の確率が増加するであろうという仮定(LNTモデル)が採用されていること(認定事実第4の1),⑦国が避難指示の基準を年間20mSvと定めたのは,本件事故後の同年7月19日になってからであること(認定事実第4の2)がそれぞれ認められる。これらの事情からすれば,本件事故後,自主的避難等対象区域に居住していた者としては,当時客観的に健康被害のリスクが存在していたかはともかくとして,誰もが知る広島・長崎の原爆やチェルノブイリの事故を通じ
て放射線被ばくのリスクを認識していながら,どの程度の放射線量で健康被害を生ずるのかについて十分な知識を有しておらず,しかも,今後自らの居住する地域の放射線量が上昇するリスクも否定できないという状況では,たとえ政府による避難指示が出ていなくても,放射線被ばくに対して相当程度の恐怖や不安を抱いてもやむを得ないといえ,相当の期間が経過するまでの間,被ばくを避けるために避難したことには合理性が認められる。
そして,その期間の相当性について検討すると,自主的避難等対象区域からの避難者は,避難指示等によらずに避難をしたものであるが,その基礎にある放射線被ばくに対する恐怖や不安が解消されるためには,現在の放射線量が健康に被害が及ぶ程度ではないという情報が提供されるのはもちろん,一旦生じた恐怖や不安を解消するのに相応しい社会的情勢の変化と時間の経過が必要であり,また,これ以上放射性物質が拡散することはないであろうという安心が形成される必要もある。本件事故については,①屋内退避区域の指定は,平成23年4月22日に解除され,避難区域等の見直しが行われたこと,②緊急時避難準備区域は,同年9月30日に解除されたこと,③同年12月16日,放射性物質の放出が管理され,放射線量が大幅に抑えられているというステップ2の目標達成と完了が確認され,
本件事故そのものは収束に至ったと判断されたことが公表された
こと,④これを受けて,同月26日,警戒区域及び計画的避難区域の見直しの方針が公表されたこと(前提事実第3の1・2)がそれぞれ認められる。これらの事情からすれば,本件事故当時,自主的避難等対象区域に居住していた者については,
同年12月31日までには上記放射線被ばくに対する恐怖や不安も相当程度解消されていたものと認められ,同時点までを限度として,放射線被ばくを避けるための避難又は避難継続の相当性を認めるのが相当である。
なお,妊婦及び子供については,それ以外の者より放射線に対する感受性が高いと一般的に認識されていることからすれば,他の者より長期間にわたって放射線の影響を避けるために避難を継続することには合理性があると認められると
ころ,
自主的避難等対象区域における空間放射線量等の諸事情を総合考慮すると,本件事故当時,
自主的避難等対象区域に居住していた妊婦及び子供について避難
の継続の合理性が認められるのは,平成24年8月頃までと認めるのが相当である。この点,原告らの中には,本件事故当時から同月頃までの間に,自らが妊婦又は子供であった者がいるとは認められない。
2低線量被ばくのリスクと避難の合理性に関する原告らの主張について原告らは,
本件事故前における一般公衆に対する放射線量の限度である1mSv/年を超える線量が測定される地域については,避難等の合理性が認められるべきであり,20mSv/年を基準とすることは誤りである旨主張する。この点,国際的な合意に基づく科学的な知見等によれば,放射線による発がんのリスクは,100mSv以下の被ばく線量では,他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため,放射線による発がんリスクの明らかな増加傾向を証明することは難しいとされ,少なくとも100mSvを超えない限り,がん発症のリスクが高まるとの確立した知見は得られておらず(認定事実第4の5),ICRPの勧告等で述べられているLNTモデルも,飽くまで科学的な不確かさを補う観点から,
公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用された
ものである(認定事実第4の1・5)。そして,ICRPの勧告において,公衆被ばくに対する線量限度である1mSv/年は,本件事故発生後のような緊急時被ばく状況には適用されず,緊急時被ばく状況における参考レベルは,予測線量20~100mSv/年の範囲にあるものとし,現存被ばく状況においては,参考レベルを1~20mSv/年の範囲に設定すべきであるとしている(認定事実第4の1)。
そうすると,国(原子力安全委員会)が,ICRPの平成23年3月21日付同年7月19日,緊急時被ばく状況に
おいては,計画的避難区域の設定等に係る助言において,ICRPの2007年の勧告において緊急時被ばく状況に適用することとされている参考レベルの範
囲20~100mSv/年の下限である20mSv/年を適用することが適切であり,緊急時被ばく状況から現存被ばく状況に移行後においては,防護措置の最適化のための参考レベルは,ICRPの2007年の勧告において現存被ばく状況に適用される参考レベルの範囲1~20mSv/年のうち,長期的には年間1mSvを目標とすることとしたこと

は,国際的な合意

に基づく科学的な知見等に照らし,合理性を有すると認められる。よって,平成23年12月31日の経過後も,1mSv/年を超える放射線量が測定される地域については避難の合理性があるという原告らの主張は,採用することができない。
第3自主的避難者等に係る精神的損害について
1被侵害利益
原告らは,本件事故当時,自主的避難等対象区域に居住しており,避難指示等により避難を余儀なくされたものではない。しかし,本件事故後,実際に避難した原告らについては,
放射線被ばくに対する恐怖や不安を基礎にした避難の相当
性(第2の1)が認められる範囲内において,本件事故を原因として,住み慣れた自宅や地域から離れ又はそこに帰れないという苦痛を感じ,不便な避難生活を強いられるとともに,先の見通しが付かない不安を感じ,また,放射線被ばくに対する恐怖や不安,これに伴う行動の制約,本件事故に起因して生じる生活環境の変化等により,本件事故前の平穏な日常生活を喪失し,精神的苦痛を被ったといえる。他方で,本件事故後,実際に避難していない者についても,放射線被ばくに対する恐怖と不安の中での生活を余儀なくされ,行動を制約されるとともに,先の見通しが付かない不安を感じ,生活環境に変化を生じている点は,避難した者と同様であり,同程度の精神的苦痛を被ったと認められる。
以上によれば,本件において原告らが侵害された権利ないし利益は,上記の諸点を総合考慮した上での平穏生活権及びこれに付随する利益と解するのが相当であり,かかる権利ないし利益は,憲法13条,憲法22条1項等に照らし,原
賠法上も保護に値するというべきである。
2慰謝料
本件事故当時,自主的避難等対象区域に居住していた者が,本件事故後,放射線被ばくに対する恐怖や不安を抱いて生活していたが,仕事や家族等の都合により直ちに避難することができず,本件事故から一定程度期間を経過した後に避難を決断したとしても不合理とはいえない。また,本件事故後,避難を選択せずに自主的避難等対象区域にとどまった者についても,放射線被ばくに対する恐怖と不安の中での生活を余儀なくされたものであり,実際に避難した者と同程度の精神的苦痛を被ったと認められる。そして,いずれの場合にも,この状況がいつまで続くか分からないという先の見通しの付かない不安や,自らの生活の基盤となる生活環境が変質を来して精神的苦痛を受ける点は同様である。そうすると,本件事故後直ちに避難した者,本件事故から一定程度期間を経過した後に避難をした者,避難せずに自主的避難等対象区域に居住し続けた者のいずれについても,同程度の慰謝料額の賠償を認めることが相当である。もっとも,自主的避難等対象区域に居住していた者は,避難すべきかどうかについて苦悩せざるを得なかったという事情が認められる一方で,避難指示等により選択の余地なく避難を強いられた避難者と比較すれば,居住地を決定する権利が侵害された程度には差があるといわざるを得ない。
これらの一切の事情に鑑みると,自主的避難等対象区域に居住していた者の慰謝料額の目安は,
避難の相当性が認められる平成23年12月31日までの期間
に対応する慰謝料額として,30万円と認めるのが相当である。(この慰謝料額は,原告らの個々の慰謝料額を算定する際の目安となるものであり,最終的な慰謝料額については,各原告の個別事情を具体的に考慮した上で算定する。)なお,原告らの中には,子供に同伴して,平成24年1月以降に避難し,又は避難を継続した者がいるところ,同月以降の精神的苦痛については,当該子供自身に対する慰謝料額として評価する余地はあり得るにしても,そのことによって
同伴者である原告らの慰謝料が当然に増額されるものではない。
第4弁済の抗弁について
1精神的損害に係る弁済の抗弁
認定事実(第1章の第3の2・4)によれば,被告は,直接請求手続において,自主的避難等対象者に対し,①本件事故発生当初の時期の生活費の増加費用,
移動費用を考慮した包括慰謝料として8万円並びに②本件事故発生当初の時期以降における生活費増加費用等の追加的費用として4万円の合計12万円の賠償金を支払うこととしているところ,原告らに対する賠償金の支払状況等は,
次のとおりと認められる
(後記第3章の第1ないし第52の各3参照)


直接請求手続を経た原告ら
直接請求手続を経たのみで精神的損害についてADR和解をしていない者
原告番号1ないし3,5,6,9ないし14,16,17,19ないし23,25ないし30,32,35ないし37,39,42ないし52直接請求手続を経た後に精神的損害についてADR和解をした者
原告番号4,7,8,18,31,33,34,38,40及び41

直接請求手続を経ていない原告ら
原告番号15及び24(いずれもADR和解をしている。)
直接請求手続を経たのみで精神的損害についてADR和解をしていない原
おり,生活費増加費用が慰謝料増額事由として加味されているところ,後記第3章において認定する原告らの個々の慰謝料についても,生活費増加費用が慰謝料増額事由として加味されている。そうすると,直接請求手続を経たのみで
料(8万円)の全額を,同原告らの被った精神的損害に対する慰謝料額から控
除したとしても,同原告らの利益を不当に害するものとはいえない。したがって,上記原告らについては,精神的損害に対する弁済額として,上
直接請求手続を経た後に精神的損害についてADR和解をした原告ら(上記

れも直接請求手続を経た上で,それぞれ,その後のADR和解において精神的損害の額を次のとおり合意したことが認められる(後記第3章第4,7,8,18,31,33,34,38,40及び41の各3を参照)。原告番号4,7,8,31,33,34,38,40及び41については,いずれも,平成23年3月11日から同年12月31日までの期間に係る精神的損害として4万円。
原告番号18については,平成23年3月11日から同年11月30日までの期間に係る精神的損害として8万円

1については,被告との間で,平成23年3月11日から同年12月31日までの期間に係る精神的損害の額を4万円とする旨の合意をしたから,その合意に従い,精神的損害に対する弁済額として,4万円を認めるのが相当である。
18については,被告との間で,平成23年3月1
1日から同年11月30日までの期間に係る精神的損害の額を8万円とする旨の合意をしたから,その合意に従い,精神的損害に対する弁済額として,8万円を認めるのが相当である。

原告番号15及び24は,いずれも,包括慰謝料について直接請求手続を経
ておらず(ただし,原告番号15は,生活費増加費用等の追加的費用については直接請求手続を経た。),ADR和解契約において,被告との間で,平成23年3月11日から同年4月22日までの精神的損害を4万円とする旨の合意をしたことが認められる(後記第3章第15及び24の各3参照)。したがって,同原告らについては,いずれも,精神的損害に対する弁済額として,4万円を認めるのが相当である。
なお,原告らは,被告が原告らの精神的損害に対する既払金を4万円ではなく8万円と主張することは,信義則に反し,又は権利の濫用に当たるとも主張するが,当裁判所の判断は以上のとおりであり,採用の限りではない。2財産的損害に係る弁済の抗弁
原告らの一部(原告番号5,7及び8)は,財産的損害の賠償を求めているところ,これらの財産的損害に対する弁済の抗弁については,必要に応じ,個別に判断することとする(後記第3章第5,7及び8参照)。
なお,各世帯が被った損害について,当該世帯の構成員のうち一人の原告が代表して請求している場合には,当事者の合理的意思に鑑み,上記損害は当該世帯を代表した原告の損害と認め,被告の当該世帯に対する弁済の抗弁についても,当該原告に対する弁済の抗弁として認めることとする。
第5清算合意について
原告らの中には,
ADR和解において清算合意をした者がいるところ,
被告は,
このうち,原告番号7,8,15,18,24,33及び34について,原告らの請求の一部又は全部が清算された旨主張している。
この点については,
個別に判断する(後記第3章第7,8,15,18,24,
33及び34参照)。
第6原告らの主張する慰謝料算定における考慮要素について
1はじめに
自主的避難等対象者の慰謝料額の目安は,前記第3記載のとおりであるところ,
原告らは,原告らが被ったとされる精神的損害を以下の34項目に分類し,それぞれが賠償に値する旨主張するので,これらについて総論的に検討しておく。なお,ここでは,飽くまで原告らの全部又は一部に共通する事情を一般的に検討する趣旨であり,各原告の慰謝料額は,最終的には,各原告の個別事情の存否及び本件事故との相当因果関係を具体的に検討した上で算定することになる。2全般的検討
原告らの主張する34項目の精神的損害(後記3)は,そのほとんどが,本件事故に起因する放射線被ばくに対する恐怖や不安,又はその回避に伴う行動の制約,
本件事故に起因する生活環境の変化等に伴い発生する平穏な日常生活の阻害による精神的苦痛に収斂され得るものであり,その意味で,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において一般的に考慮済みというべきである。3項目毎の検討
以下,
原告らの主張する34項目の精神的損害
(精神的損害①~㉞)
について,
項目ごとに検討する。
初期被ばくしたことによる精神的損害(精神的損害①)原告らは,
本件事故当時,
避難指示等の対象とされなかった福島市,
伊達市,
a町,郡山市,田村市b町又は二本松市に居住していたところ,これらの地域における本件事故後1年間の実際の空間放射線量は,認定事実の環境放射能の事故後の推移やUNSCEARの報告等に照らせば,20mSvを大きく下回ると考えられる。そして,前記のとおり,低線量被ばくと健康影響に関する国際的にも合意された科学的知見によれば,年間20mSvを下回る被ばくが健康に被害を与えると認めることは困難といわざるを得ない。
この点,原告らは,低線量被ばくによる健康被害が生じたこと自体を損害の基礎とするのではなく,また,内部被ばくの具体的な個々の線量を損害の基礎とするのでもなく,
低線量被ばくによる健康被害が生じることを心配すること
により生じた精神的損害を主張するものとしているところ,確かに,本件事故
直後の時期において,福島市において,平成23年3月15日から同月16日に掛けて,一時的とはいえ20μSv/時を超える空間放射線量を測定し,他の原告らの居住地についても,その頃,通常より相当程度高い空間放射線量が測定された場所があったことからすれば,原告らが初期被ばくについて感じた不安は,法的保護に値する精神的損害に当たると認められる。
もっとも,この点は,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。放射線被ばくを避けるための避難をするかどうかの決断を迫られたことによる精神的損害(精神的損害②)この点は,放射線被ばくに対する恐怖や不安に直面した際,これに必然的に伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
被告から適時に正確な情報が発信されず,適切な放射線被ばく防止措置をとることができなかったことによる精神的損害(精神的損害③)ア
原告らは,
被告が炉心溶融の事実を隠蔽したことなど本件事故の真の姿や
現状について情報提供をしなかったため,精神的損害を受けた旨主張する。しかしながら,仮に,かかる情報の隠蔽により,原告らが精神的損害を受けたとしても,それは原子力損害(核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害)に直ちに当たるとはいい難いし,そもそも原告らは,精神的損害③に関し,原賠法3条1項の主張とは別個独立の不法行為を主張する趣旨ではないとしている。


このことを措くとしても,本件地震又は本件事故直後の混乱した時期において,放射線に関する知見は,一定程度,自治体の広報,新聞報道,インターネット等を通じて提供されていたと認められるし,原告らがそれらの情報
では十分でないと感じ,不安を解消できずに精神的苦痛を受けたとしても,この点は,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
放射線被ばくを避けるための一時的避難に伴う損害(精神的損害④)この点は,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
放射線被ばくから身を守るため自主的避難をしたものの,自主的避難に伴う葛藤や精神・身体の不調,生活の苦労,家族の争いなどにより生じた精神的損害(精神的損害⑤)この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程で必然的に直面
する精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
自主的避難により生じた家族の分断・別離による精神的損害(精神的損害⑥)
この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程でやむを得ず直
面する精神的苦痛であり,
被侵害利益
(平穏生活権)
に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,別世帯である家族との分断・別離による精神的苦痛は,当然に法的保護に値する利益の侵害とはいえず,仮に法的利益の侵害があるとしても前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において考慮されているといえる。放射線被ばくを余儀なくされると分かっていても,中通りにとどまり仕事や生活をせざるを得なかったことによる精神的損害(精神的損害⑦)
この点は,
放射線被ばくを避けられないという恐怖や不安そのものないしそ
の延長であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
放射線被ばくから原告ら本人や原告らの家族の身を守るための対策を講じたことで,心身ともに疲弊したことによる精神的損害(精神的損害⑧)この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程で必然的に直面
する精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
仕事の中で,放射線被ばくから身を守るべき人を守り切れなかったという後悔や職責を果たし切れなかったという無念さからくる精神的損害(精神的損害⑨)
この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程で派生する精神
的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
子供の親,又は孫の祖父母として,子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配することによる精神的損害(精神的損害⑩)
自己の近親者に対する健康被害によって本人が固有の慰謝料請求権を取得し得るのは,近親者の生命が侵害された場合のほか,近親者が死亡したときに
第215号昭和33年8月5日第三小法廷判決・民集12巻12号1901頁),子供の親,又は孫の祖父母として子供や孫の将来の放射線被ばくによる健康被害や結婚・出産の問題,差別を心配したとしても,当該親又は祖父母自
身の精神的損害として当然に慰謝料の対象となるものではない。
また,上記の心配は,放射線被ばくに対する恐怖や不安が自らではなく子や孫を対象として生ずるものであり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,仮に具体的な健康被害等を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係の存在を立証すべきであるところ,原告らは,具体的な健康被害や本件事故との相当因果関係を主張立証する趣旨ではないとしている。
特に,母性としての防御本能による被ばく回避とその苦悩による精神的損害(精神的損害⑪)
く子や孫を対象として派生するものであり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考
慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。本件事故後,病気になったり原因不明の体調不良に悩まされたりして,放射線被ばくが原因なのでないかと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑫)
この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安が現実化したのではないかとい
う恐怖や不安の延長であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,原告らは,本件事故による放射線被ばくによって生じる具体的な健康被害や本件事故との相当因果関係を主張立証する趣旨ではないとしている。放射線被ばくにより将来健康被害が生じるかもしれないと不安を抱くことによる精神的損害(精神的損害⑬)この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安そのものであり,
被侵害利益
(平

穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
被ばく防止に伴う行動制限から家族が体調を崩し,家族の介護を強いられるようになったことによる精神的損害(精神的損害⑭)この点については,
個別に本件事故と相当因果関係が認められる損害かどう
かを判断する。

放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな生活(食生活を除く。)を奪われたことによる精神的損害

(精神的損害⑮)本件事故後の水環境及び森林の状況(認定事実第2の7)に照らせば,これらの自然環境が破壊されたとまではいえないし,これら自然を堪能することに抵抗感があるとしても,
それは放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしこれに
伴う行動の制約であり,この点は,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然を堪能する豊かな食生活を奪われたことによる精神的損害(精神的損害⑯)本件事故後の水道水及び食品に対する措置等(認定事実第2の6)に照らせば,食生活の環境が奪われたとまではいえないし,これらの摂取に抵抗感があるとすれば,
それは放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしこれに伴う行動の
制約であり,この点は,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。

放射性物質の拡散により,中通りの清らかで豊かな自然があったからこそできた趣味(家庭菜園・花壇を除く。)を楽しめなくなったことによる精神的損害

(精神的損害⑰)
放射性物質の拡散によりこれらを楽しめなくなったということであれば,放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしこれに伴う行動の制約であり,この点は,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
家庭菜園・花壇を楽しめなくなったことによる精神的損害(精神的損害⑱)
この点も,
放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしこれに伴う行動の制約で
あり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,仮に家庭菜園等に係る何らかの財産的損害を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係のある損害及び損害額を立証すべきである。放射線被ばくから身を守るための対策をどうするかについて考え方の食い違いにより家族間に生じた精神的損害(精神的損害⑲)この点は,
本件事故に起因して家族関係に生じた原告らの生活環境の変化に
伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
本件事故を起因とする家族の離婚・婚約破棄に伴う精神的損害(精神的損害⑳)
この点については,
個別に本件事故と相当因果関係が認められる損害かどう
かを判断する。
放射線被ばくに対する考え方の違いから生じた(家族以外の)周囲の人々との擦れ違いによる精神的損害(精神的損害㉑)この点は,
本件事故に起因して周囲の人間関係に生じた原告らの生活環境の

変化に伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
被ばく防止等のために,やりがいを持っていた仕事を失ったことによる精神的損害(精神的損害㉒)この点は,
本件事故に起因して職業関係に生じた原告らの生活環境の変化に
伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,仮に逸失利益等に係る何らかの財産的損害を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係のある損害及び損害額を立証すべきである。原告ら本人や周囲の人の避難等によって地域とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉓)この点は,
本件事故に起因して地域の人間関係に生じた原告らの生活環境の
変化に伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
本件事故を起因として親族・友人とのつながりが失われたことによる精神的損害(精神的損害㉔)この点は,本件事故に起因して親族・友人関係に生じた原告らの生活環境の変化に伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
放射性物質の分布や被ばく量,避難指示の有無,損害賠償金格差などの差別を感じることにより生じた精神的損害(精神的損害㉕)この点は,
本件事故に起因して地域社会との関係で生じた原告らの生活環境

の変化ないしその延長で派生したものであり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に
考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。『曖昧な喪失』により生じた精神的損害(精神的損害㉖)
曖昧な喪失(かけがいのない人や物を失うこと(喪失)を経験すると,多くの場合,その直後は悲嘆反応が出現するところ,その喪失自体が曖昧で不確実な状況のこと)は,それ自体が法的保護に値する利益といえるかについて疑問もあるが,仮にいえるとしても,本件事故に起因して生じた生活環境の変化ないしその延長を超えるものではなく,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮
されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。家族と同様のペットが亡くなったり,病気になったりしたことが放射線被ばくの影響によるものでないかと不安を抱えることによる精神的損害(精神的損害㉗)
この点は,放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしその延長であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,原告らは,ペットが亡くなったり病気になったりしたことと本件事故との間に相当因果関係があることを主張立証する趣旨ではないと解される。居住している建物が放射能汚染され,その建物の中で寝食を含む生活をしなければならないことによる精神的損害(精神的損害㉘)この点は,放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしその延長であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。

なお,仮に居住建物に係る何らかの財産的損害を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係のある損害及び損害額を立証すべきである。
居住している建物や敷地の速やかな除染がされず,高線量の放射線被ばくを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉙)この点は,放射線被ばくに対する恐怖や不安ないしその延長であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,仮に具体的な健康被害等を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係の存在を立証すべきである。
何ら非がないにもかかわらず,居住している建物や敷地の除染作業を自ら行うことを強いられたことによる精神的損害(精神的損害㉚)この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程で直面する精神
的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,
仮に除染作業を自ら行ったことによる具体的な健康被害等を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係の存在を立証すべきである。また,仮に除染費用等に係る何らかの財産的損害を主張するのであれば,本件事故と相当因果関係のある損害及び損害額を立証すべきである。
自宅の庭や敷地にそのまま置かれた,又は,埋められた除染廃棄物を日常生活の中で見なければならないことによる精神的損害(精神的損害㉛)認定事実第2の5によれば,環境省は,除染特措法41条1項の除去土壌の保管の基準に関する環境省令を具体的に説明するため,保管ガイドラインを公表し,除去土壌の量や放射能濃度に応じ,安全に保管を行うために必要な施設要件や管理要件を定めているところ,除去土壌を当該除去土壌が生じた土地に
保管すること(現場保管)は,除染特措法39条2項により当該土地所有者等に意見を述べる機会を付与し,実際上は,当該土地の所有者等の同意を得た上で,同法39条1項に基づいて行われる措置であり,法令上の根拠に基づくものであると認められる。
(なお,
現場保管がされたからといって,
当該土地の所
有者等は,当然に除去土壌の保管料を請求し得るというものではない。)また,警戒区域,計画的避難区域等における除染モデル実証事業においては,
除去土壌の地上保管がされた場合に残置土の保管後の方が保管前より空間放射線量が減少していることが確認されている(乙A147)。そもそも精神的損害㉛は,放射線被ばくに対する恐怖や不安又はこれに対処する過程に伴う精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
除染後の自宅の庭や家庭菜園に対する喪失感による精神的損害(精神的損害㉜)
この点は,
放射線被ばくに対する恐怖や不安に対処する過程で発生する精神
的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
現在も続く放射能汚染のため,離れて暮らす家族に里帰りを勧められないことによる精神的損害(精神的損害㉝)この点は,放射線被ばくに対する恐怖や不安が残存しているため,その回避に伴う行動の制約であり,
被侵害利益
(平穏生活権)
に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。
なお,自主的避難等対象区域については,本件事故直後と比べて空間放射線量が大きく低減しているところ(認定事実第2の1),原告らのもとに里帰り
をするかどうかは,
離れて暮らす家族の個別事情と自主的判断によるといわざ
るを得ない(原告らの中には,本件事故後,離れて暮らす家族が原告らのもとに里帰りした例もある。)。
本件事故による放射能汚染のために福島で生きる誇りが傷付けられたことによる精神的損害(精神的損害㉞)この点は,
本件事故に起因して自己の帰属する社会に生じた生活環境の変化,又はこれに伴い派生する精神的苦痛であり,被侵害利益(平穏生活権)に関連する一要素として,
前記第3の慰謝料額の目安を判断する過程において既に考
慮されており,これとは別の慰謝料を当然に発生させるものではない。第3章

損害各論

第1原告番号1
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
200万円
20万円

認定事実(甲B1~B1の2,原告番号1本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号1(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,60歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。福島市に住む娘夫婦は,共働きであり,同原告が,孫二人(中学1年生と小学5年生)の面倒をみていた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。平成23年4月6日以降,
孫に長袖,
マスク等を着用させて登下校させ,
下校時は車で送迎した。
山菜採りや家庭菜園をやめた。同年6月,娘から孫と避難してほしいと頼まれたが,高齢の義母が近くの施設に入居しており,断らざるを得なかった。同原告と夫は,夏休みに孫を連れて,福島県外,会津,いわきの温泉を泊ま
り歩いた。
自宅は,
同年6月,
除染され,
除去土壌は敷地で地上保管された。
福島県外産の食材等を買っている。上の孫は,福島市で就職し,下の孫は,福島市の高校を卒業し,平成30年4月,東京の大学に進学した。3
被告の既払金(乙B1の1)
直接請求手続

①本件事故発生当初の時期の生活費の増加費用,移動費用を考慮した包括慰謝料(以下単に包括慰謝料という。)として8万円並びに②本件事故発生当初の時期以降における生活費増加費用等の追加的費用(以下単に生活費増加等の追加的費用という。)として4万円。


原告番号1を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号1は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号1の主張(別紙6-1)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号1については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号1)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第2原告番号2
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
1000万円の一部である200万円
20万円

認定事実(甲B2,原告番号2本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号2(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,34歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。
同原告と夫は,
獣医師であり,
伊達市
(自主的避難等対象区域)
に動物病院を開業していた。
本件事故後の生活状況等
本件事故を受けて避難すべきか悩んだが,獣医師の仕事を放り出して避難できなかった。本件事故後,ペットが飼い主と一緒に避難できたかが気がかりであった。平成23年夏頃,動物救出活動が始まり,ボランティアとして獣医師仲間らと避難区域における被災犬猫の保護活動に尽力した本件事故後,地域間の差別ができたように感じている。平成27年,子を出産した。子は健康であるが,今後の不安がある。被ばくの検査を受けていない。
3
被告の既払金(乙B2の1)

直接請求手続

包括慰謝料として8万円及び生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号2を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号2は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号2の主張(別紙6-2)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号2については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号2)の
認容額欄(合計)記載のとおりである。
第3原告番号3
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
200万円
20万円

認定事実(甲B3~B3の7,原告番号3本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号3(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,57歳の女性であり,
福島市
(自主的避難等対象区域)
の自宅で,(82歳)


夫及び二女(26歳)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,仕事をしており,避難しなかった。宮城県石巻市に住む長女は,本件事故後,同原告の自宅に帰宅し,平成23年3月23日,石巻に戻った。自宅やその周辺から通常より高い放射線量が測定され,不安がある。東京に住む長男は,同年6月,福島市で結婚式をしたが,友人から欠席の連絡が相次いだ。元々軽い認知症であった母は,本件事故後も畑で収穫した野菜を食卓に出し続けるため,それをやめさせなければならなかった。夫は,平成24年12月,脳出血により死亡した。自宅は,平成25年10月,除染され,除染土は庭で地下保管された。ガラスバッチ検査(平成26年9月~11月の外部被ばく量)の結果,同原告は0.1mSv,母は0.2mSv,二女は0.2mSvであり,医師からは,将来のがん増加の可能性は少ない旨説明されたが,不安である。二女は,平成28年4月から仙台で生活している。現在は,福島市の自宅で認知症の進んだ母の面倒をみている。
3
被告の既払金(乙B3の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号3を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号3は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号3の主張(別紙6-3)について
アイ
同原告は,

大切な母を守るため母の外出を制限せざるを得ず,体力が落ちて母が要介護になったのは,事故が原因である。

と主張する(精神的損害⑭)。この点,同原告の母(当時82歳)が要介護になったことと本件事故との相当因果関係が立証されているとは認められない。

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号3については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用

2万2000円

9
まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号3)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第4原告番号4
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円
30万円

認定事実(甲B4~B4の6の3,原告番号4本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号4(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,61歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,看護師として福島市の病院で勤務しており,被ばくの不安がある。福島県外に避難した同僚もいたが,経済的理由から避難しなかった。上記病院は,平成23年10月,除染された。平成25年1月,福島市の老人施設に転職したが,平成27年3月,上記病院に再び就職した。本件事故後,家庭菜園をやめ,福島県外産の食材等を買っている。福島ナンバーの車両が福島県外で嫌がらせをされたと聞き,駐車時に気を付けている。避難区域からの避難者は5人家族であれば月額50万円の賠償金をもらい税金もかからず医療費も無料である。そのような支援を受けていないことから,正直,他の避難者を妬ましくも思う。被ばくの検査結果は不検出であった。
3
被告の既払金(乙B4の1・2)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解

精神的損害(平成23年3月11日~12月31日)として4万円,避難交通費(同年3月11日~同年4月3日)として6000円,自家消費野菜(同年3月11日~平成25年9月30日)として20万1500円,除染費用(平成23年3月11日~同年11月25日)として9万7125円,弁護士費用として1万0339円。既払金として8万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号4は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号4の主張(別紙6-4)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号4については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

弁護士費用
9
2万6000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号4)の
認容額欄(合計)記載のとおりである。
第5原告番号5
1
請求額(110万円)の内訳
以下の合計710万円の一部である100万円

精神的損害

320万円(精神的損害㉛及び土地家屋の汚染に関し20

0万円,その余の慰謝料が120万円)

逸失利益(就労不能損害)390万円(平成26年1月から平成29年3月まで月額10万円)
弁護士費用

2
10万円

認定事実(原告番号6と併せて認定する。)(甲B5~B5の10,甲B6~B6の5,原告番号5本人,原告番号6本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号5
(64歳の男性)
及び6
(64歳の女性)
は夫婦であり
(以下,
同原告らを主語とする場合は主語を省略する。),福島市(自主的避難等対象区域)
の自宅に住み,
二本松市の小学校の非常勤講師として勤務していた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,平成23年3月15日,伊達市に住む原告番号6の母(当時97歳)を預かったため,避難を断念した。本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。本件事故後の一時期,勤務する小学校で校舎の窓を閉め切り,マスクをさせ,運動会等の行事を中止して児童に不自由な思いをさせたことが残念である。原告番号5は,平成25年12月,全身の痛み等により退職し,リウマチ性多発筋痛症の疑いで治療を受けたが,その症状は放射線の影響ではないかと考えている。
本件事故後,
甲状腺に嚢胞が見付かり,
経過観察中である。ホールボディカウンター検査の結果,不検出であった。自宅は,平成26年2月頃,除染され,除去土壌は庭に地下保管された。
3
被告の既払金(乙B5の1)

直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号5を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号5は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号5の主張(別紙6-5)について

を算定する際に考慮済みである。
5
財産的損害
原告番号5は,
平成25年12月に全身の筋肉の激痛及び手足の浮腫によ
って教職を辞めざるを得ず,
逸失利益
(就労不能損害)
として390万円
(平
成26年1月から平成29年3月まで月額10万円)の損害を主張する。しかし,原告の提出する証拠を総合しても,原告番号5が教職を辞めた原因とされる全身の筋肉の激痛及び手足の浮腫と本件事故との相当因果関係が立証されているとは認められないから,同原告の上記主張は採用できない。
6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号5については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

財産的損害
弁護士費用
9
0円
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号5)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第6原告番号6
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

660万円(精神的損害㉛に関し200万円,土地家屋の汚

染に関し300万円,
平成23年3月から平成26年7月までのうちの3年
4か月分につき月額4万円の160万円)の一部である100万円弁護士費用
2
10万円

認定事実
原告番号5と同じ。

3
被告の既払金(乙B6の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号6を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号6は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたこと
を斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号6の主張(別紙6-6)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号6については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号6)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第7原告番号7
第8原告番号8
1
請求額の内訳
原告番号7(請求額

精神的損害


財産的損害


弁護士費用

364万7600円)

300万円

33万1600円

原告番号8(請求額

精神的損害

911万2496円)

600万円


財産的損害
おりであり,これらの合計230万2668円の内金として請求する。)
ウ2
弁護士費用

82万8409円

認定事実(原告番号7及び8を併せて認定する。)(甲B7~B7の6,甲B8~B8の36,原告番号7本人,原告番号8本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号7(54歳の女性)及び8(62歳の男性)は夫婦であり,福島市
(自主的避難等対象区域)
の自宅で,
三女
(18歳)
と3人で住んでいた。
長女家族は,福島市に別世帯で生活し,千葉県に住む二女は,東京で仕事をしていた。
本件事故後の生活状況等
本件事故当時,原告番号8(夫)は,無職であり,原告番号7(妻)は,福島市の保育園で保育士をしていた。本件事故後,長女は,平成23年3月19日,
福島市に夫を残し,
新潟県に母子避難をした。
三女は,
同月20日,
千葉県の二女宅に避難し,同年4月25日,福島市の自宅へ戻り,福島市の短大に入学した。同年5月頃,原告番号8は,三女を避難させるなどの意見を述べたが,
他の家族に反対され,
実現しなかった。
原告番号7は,
同月頃,
同保育園の自主的除染に従事し,同年6月,同保育園を退職した。同原告らは,別紙7中の別紙4記載のとおり,同年4月から平成24年5月まで合計57回79泊136日の避難保養をし,その後も山形県等に避難保養をしているほか,別紙7中の別紙9のとおり,新潟県の孫に会いに行っている。自宅や庭は,同年5月頃に自主的除染,同年12月頃に自主的除染,平成26年5月頃に公的除染が実施され,除去土壌は一旦地下保管された後,地上保管された。同原告らは,自宅の庭で家庭菜園をしていたが,本件事故後はやめ,同年4月,山形県で土地を借りて家庭菜園を再開した。原告番号8は,本件事故後,不眠,白内障,五十肩の症状,お酒を飲んだ翌日にむく
む,大臼歯の歯根が折れる,耳鳴りがするなどの体調不良に悩んでいる。3
被告の既払金(甲B8の9,甲B8の24,乙B7の1・2,乙B8の1)直接請求手続

包括慰謝料として各8万円,生活費増加等の追加的費用として各4万円。

原告番号7及び8を含む世帯全体に対する合計額は,88万円。
ADR和解(世帯全員分)


①精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として28万円(同原告らにつき各4万円),②原告番号7の就労不能損害(同年7月1日~同年8月31日)として33万2000円,③避難費用(同年3月11日~同年12月31日)として15万7204円,④生活費増加費用(二重生活費用及び自家栽培野菜を除く)(同上)として5万5755円,⑤生活費増加費用(二重生活費用)(同年9月23日~同年12月31日)として12万円,⑥生活費増加費用(自家栽培野菜)(同年3月11日~平成24年12月31日)として10万円,⑦除染費用(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として159万1861円,⑧線量計購入費用(同上)として3万6000円,⑨検査費用(同上)として1万1840円,⑩弁護士費用(平成23年3月11日~平成24年12月31日)として8万0539円。既払金として76万円を控除(以下,これらの損害項目については,損害項目①~⑩のようにと表記する。)。

清算合意等
上記アの損害項目(上記アの期間に限る。)について和解し,それ以外の点については,和解の効力が及ばないことを相互に確認する。上記アの損害項目のうち精神的損害を除いた分(ただし,上記アの期間に限り,その遅延損害金を含む。)については,和解条項に定めるもののほか,当事者間に債権債務のないことを相互に確認する。

4
精神的損害(慰謝料)

上記2の認定事実によれば,原告番号7及び8は,本件事故後,断続的に各地に一時的避難(保養避難)を繰り返しているほかは,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告らの慰謝料を各30万円と認める。
原告番号7及び8の各主張(別紙6-7・8)について
同原告らの主張する精神的損害は,第2章第6の総論的検討及び上
5
財産的損害(原告番号7関係)
自宅線量測定と樹木寸法測定費用

原告番号7の主張
損害額4万円(平成23年5月26日から同年6月20日まで,同原告が測定作業に正味5日間を要したことによる日当8000円相当の損害)

判断
上記ア(自宅線量測定と樹木寸法計測)は,除染作業に係る費用又はそ
害項目をいう。以下同じ)⑦又は同⑨に当たるところ,原告番号7及び8は,ADR和解において,被告が損害項目⑦(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として159万1861円,損害項目⑨(同上)として1万1840円を支払い,当該損害項目(当該期間に限る。)を清算
から6月実施)は,仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。
除染作業費

原告番号7の主張

損害額24万円(平成23年12月8日から同月14日まで,同原告が測定作業及び報告書作成に実質30日を要したことによる日当8000円相当の損害)

判断
上記ア(除染作業費)は,損害項目⑦に当たるところ,原告番号7及び8は,ADR和解において,被告が損害項目⑦(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として159万1861円を支払い,当該損害項
ると,上記ア(平成23年12月8日から同月14日実施)は,仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。マスク代

原告番号7の主張
損害額3万6000円(平成24年11月10日から平成28年3月10日までに購入)


判断
上記アのマスク代は,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。

6
財産的損害(原告番号8関係)
尿検査費用(送料のみ)

原告番号8の主張
損害額1000円(平成27年10月実施。別紙7中の別紙2)


判断
原告番号8が,平成27年10月,尿検査費用の送料として1000円を負担したことを認めるに足りる証拠がない。この点を措いても,当該費用は,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。大気中塵埃に含まれる放射能測定費用


原告番号8の主張
損害額3656円(平成27年12月実施。別紙7中の別紙2)


判断
証拠
(甲B8の6の1・2)
及び弁論の全趣旨によれば,
原告番号8が,
平成27年12月,
大気中塵埃に含まれる放射能測定費用の自己負担分と
して3656円を負担したことが認められるが,当該費用は,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
家庭用放射性セシウム除染布


原告番号8の主張
損害額5000円(平成27年11月及び平成28年3月購入。別紙7中の別紙2)


判断
原告番号8が,平成27年11月と平成28年3月,家庭用放射性セシウム除染布を購入して5000円を負担したことを認めるに足りる証拠がない。この点を措いても,当該費用は,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
原告番号8の生活環境周辺の放射能測定費用


原告番号8の主張
損害額2万円(平成24年4月から平成29年12月測定。別紙7中の別紙3)


判断
証拠(甲B8の21の1~5,甲B8の7の1・2,甲B8の31の1~4)によれば,原告番号8が,平成24年4月から平成29年12月,同原告の生活環境周辺の放射能測定費用として合計2万円を負担したことが認められる。このうち,山形県内を採取地とする測定物(山菜等)の測定費用(1万4000円分)は,その採取地(避難等対象区域でも自主
的避難等対象区域でもない。)に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。その余は,①測定日を平成27年4月,採取地を福島市とする測定物(土),②測定日を同月,採取地を二本松市とする測定物(米ぬか),③測定日を平成29年12月,採取地を福島市とする測定物(同原告の毛髪)の各測定費用2000円であるところ,その測定時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
一時避難・保養避難費用

原告番号8の主張
損害額82万3378円(平成23年3月23日から平成29年5月5日実施。別紙7中の別紙4)


判断
平成23年12月31日以前のもの
上記アの一時避難・保養避難費用のうち,避難の相当性が認められる平成23年12月31日以前のものをみると,本件事故発生当初の時期である同年4月頃までのものは別として,ドイツを行先とするもののように本件事故との相当因果関係が認め難いものや,国内であっても一般的な旅行や登山等との区別を付け難いものが相当含まれている。
また,上記アの一時避難・保養避難費用は,損害項目③又は⑤に当たるところ,原告番号8は,ADR和解において,被告が損害項目③(平成23年3月11日~同年12月31日)として15万7204円,損害項目⑤(同年9月23日~同年12月31日)として12万円を支払い,当該損害項目(当該期間に限る。)を清算する旨の合意をした(上
避難費用は,
仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であると
しても,清算されている。
平成24年1月1日以降のもの

避難の相当性が認められる平成23年12月31日より後に実施された一時避難・保養避難費用は,
本件事故との相当因果関係が認められない。
浄水器フィルター

原告番号8の主張
損害額4万1511円(平成25年,平成26年7月及び平成27年9月購入。別紙7中の別紙5)


判断
証拠(甲B8の10の1~2)によれば,原告番号8が,平成25年,平成26年7月及び平成27年9月,浄水器フィルター代として合計4万1511円を負担したことが認められるが,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
山梨県北杜市への保養旅行費用


原告番号8の主張
損害額2万4237円(平成24年9月実施。別紙7中の別紙5)

判断
避難の相当性が認められる平成23年12月31日より後に実施されたものであり,本件事故との相当因果関係は認められない。
内部被ばく対策費用


原告番号8の主張
損害額37万2400円(別紙7中の別紙6)
飲料水・料理用ペットボトル購入代

1万3500円(平成23年3

月20日から同年5月11日まで購入)
宅配ボトルウォータ利用料

1万8900円(平成23年5月から7

月まで利用)
浄水器(逆浸透膜システム)購入本体
年7月20日)

14万8000円(平成23

浄水器(逆浸透膜システム)取付費用

2万3100円(平成23年

11月25日)
マスク代

1万4000円(平成23年3月11日から平成24年1

1月9日まで)
山梨県からの野菜宅配代

8万2600円(平成23年7月から平成

24年5月まで利用)
秋田県産米120kg(送料9600円込み)7万0800円(平成23年12月15日)
食品測定代

1500円(平成24年4月4日)

判断

(マ
スク代。ただし,平成23年12月31日までの分に限る。)及び上記
ないし⑤に当たるところ,原告番号8は,ADR和解において,被告が損害項目③(平成23年3月11日~同年12月31日)として15万7204円,
損害項目④
(同上)
として5万5755円,
損害項目⑤
(同
年9月23日~同年12月31日)として12万円を支払い,当該損害
日ま

5日)は,仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。

部分を除く平成24年1月1日から同年11月9日までの分については,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
以降の分については,その時期等に照らし,相当因果関係は認められないし⑥に当たるところ,原告番号
8は,ADR和解において,被告が損害項目③(平成23年3月11日~同年12月31日)として15万7204円,損害項目④(同上)として5万5755円,損害項目⑤(平成23年9月23日~同年12月31日)として12万円,損害項目⑥(平成23年3月11日~平成24年12月31日)として10万円を支払い,当該損害項目(当該期間
清算されている。
項目⑨に当たるところ,原告番号8
は,ADR和解において,被告が損害項目⑨(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として1万1840円を支払い,当該損害項目
関係が認められる損害であるとしても,清算されている。
自主除染の樹木伐採費用

原告番号8の主張
損害額31万8550円
(平成23年8月頃実施。
別紙7中の
別紙7



判断
上記ア(自主除染の樹木伐採費用)は,損害項目⑦に当たるところ,原告番号8は,ADR和解において,被告が損害項目⑦(平成23年3月1
1日~平成24年9月30日)として159万1861円を支払い,当該
そうすると,上記ア(平成23年8月頃実施)は,仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。
自宅線量測定と樹木寸法計測

原告番号8の主張
損害額8万円(平成23年5月から6月実施。別紙7中の別紙7)

判断
上記ア(自宅線量測定と樹木寸法計測)は,除染作業に係る費用又はその前提としての検査費用の一環のものとして,損害項目⑦又は⑨に当たるところ,原告番号8は,ADR和解において,被告が損害項目⑦(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として159万1861円,損害項目⑨(同上)として1万1840円を支払い,当該損害項目(当該期
ア(平成23年5月から6月実施)は,仮に本件事故との相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。
除染作業費

原告番号8の主張
損害額24万円(平成23年12月8日から同月14日実施。別紙7中の別紙7)


判断
上記ア(除染作業費)は,損害項目⑦に当たるところ,原告番号8は,ADR和解において,被告が損害項目⑦(平成23年3月11日~平成24年9月30日)として159万1861円を支払い,当該損害項目(当
上記ア(平成23年12月8日から同月14日実施)は,仮に本件事故と
の相当因果関係が認められる損害であるとしても,清算されている。放射能汚染物保管費用

原告番号8の主張
除去土壌を地上保管したことによる保管費用として,損害額6万9000円(平成26年5月から平成28年3月。別紙7中の別紙7)


判断
除去土壌の保管方法(第1章第2の5)によれば,除去土壌の現場保管は,当該土地の所有者等の同意を得た上で,法令の根拠に基づいて実施される措置であり,現場保管がされたからといって,当該土地の所有者等が当然に除去土壌の保管料を請求し得るとはいえず,原告番号8に上記アの保管費用相当の財産的損害が発生したとは認められない。また,当該費用は,その時期等に照らしても本件事故との相当因果関係は認められない。家庭菜園損害


原告番号8の主張
損害額15万円
(平成25年度から平成27年度。
別紙7中の
別紙8



判断

成24年12月31日までの自家栽培野菜に関する財産的損害(損害項目⑥)については,10万円が支払われ,当該時期に係る分については清算されているし,上記アの家庭菜園損害については,その時期等に照らし,本件事故との相当因果関係は認められない。
新潟の孫に会いに行く費用

原告番号8の主張
損害額15万3900円(平成24年7月から平成28年2月実施。別紙7中の別紙9)


判断

前記第7・8の2の認定事実によれば,長女は,本件事故当時,福島市において,原告番号7及び8とは別世帯で,夫と子(同原告らの孫)と生活していたところ,平成23年3月19日,新潟県に母子避難したこと,原告番号8は,別紙7中の別紙9のとおり,平成24年7月から平成28年2月まで合計16回にわたり,新潟の孫に会いに行ったことが認められる。しかしながら,同原告らと長女らとは,同じ福島市内とはいえ,本件事故前から別世帯であり,独立に生活していたのであり,長女がその判断で新潟県に母子避難したことにより,同原告らが新潟の孫に会うために交通費を要するようになったとしても,また,上記の時期等に照らしても,本件事故との相当因果関係は認められない。
7
弁済の抗弁
精神的損害
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号7及び8について
財産的損害
原告番号7及び8の主張する財産的損害は,本件事故との相当因果関係があるとは認められないか,又はADR和解で清算されているため,弁済の抗弁について判断する必要はない。
8
清算合意の抗弁
各精神的損害については,清算合意の対象から除外されている。
各財産的損害については,上記5及び6において検討済みである。
9
損害額
原告番号7

慰謝料

26万円(=30万円-4万円)


財産的損害

0円


弁護士費用

2万6000円

原告番号8
アイ
財産的損害

0円


弁護士費用

2万6000円

10

慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号7及び
8)の各認容額欄(合計)記載のとおりである。
第9原告番号9
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

360万円(平成23年3月から平成25年2月までの月額

10万円の240万円,同年3月から平成27年2月までの月額5万円の120万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B9~B9の5,原告番号9本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号9は,64歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(71歳)と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
長男(当時38歳)夫婦とその子(同原告の孫)は,本件事故当時,同原告の自宅の敷地内に新築した居宅において生活していたが,本件事故後,平成23年6月,被ばくを避け,東京に転居した。同原告と夫は,被ばくの不安はあったが,避難しなかった。同原告と夫は,月に1回程度上京して孫に会い,平成24年春からは長男家族も福島市に帰省している。自宅は,平成23年7月,除染された。同原告が自宅の放射線量を測定したところ,居間は気に留めるほどではなかったが,玄関先の側溝上部は0.4~1.0μSv/時であった。同原告は,同年秋から急に視力が低下し,平成28年3月
に白内障の手術をしたところ,被ばくの影響ではないかと不安である。3
被告の既払金(乙B9の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号9を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号9は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号9の主張(別紙6-9)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号9については,上記
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用

2万2000円

9
まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号9)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第10原告番号10
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(原告番号10及び11を併せて認定する。)(甲B10,11。なお,
原告番号10及び11は,
自身の原告本人尋問を各申請したが撤回した。

本件事故当時の世帯の概要等
原告番号10は,62歳の女性であり,伊達市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫,長女である原告番号11(38歳),長男(37歳)及び原告番号10の義母と5人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
原告番号10の家業は,夫が自宅で営む輪業店であり,原告番号11は,福島市の不動産会社に勤務していた。同原告らは,本件事故後,被ばくの不安はあったが,自宅で高齢の上記義母(平成24年6月頃死亡)を介護しており,避難せず自宅にとどまった。同原告らは,福島県外産の食材等を買っている。自宅は,平成25年頃,除染され,空間放射線量が低くなった。原告番号10は,
本件事故後の健康診断で異常なしであった。
原告番号11は,
本件事故後の子宮がん検査で再検査をしたところ,異常なしであった。
3
被告の既払金(乙B10の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号10を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解

なし。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号10は,本件事故後,生活の本拠のある伊達市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号10の主張(別紙6-10)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号10については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号10)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第11原告番号11
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

100万円

弁護士費用
2
10万円

認定事実
原告番号10と同じ。

3
被告の既払金(乙B11の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号11を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号11は,本件事故後,生活の本拠のある伊達市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号11の主張(別紙6-11)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号11については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額

慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号11)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第12原告番号12
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B12~B12の2,原告番号12本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号12(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,61歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,長女家族(長女,婿及び孫)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
原告番号12は,本件地震直後,福島市の長男宅に避難し,平成23年3月15日,
自宅に戻った。
本件地震の2,
3週間後,
生活は普通に戻ったが,
不安であった。
本件事故後も地元の野菜を使った手料理を食卓に出していた
が,長女夫婦はこれを食べなくなった。その後,自宅を出て,福島市で一人暮らしをしている。本件事故後,持病の喘息が悪化した。被ばくが原因と思っている。本件事故後,福島の果物を親戚に送ったところ,送り返された。本件事故後,飼い犬を連れて毎日散歩し,平成26年,飼い犬はがんで死亡した。放射線量の高い草むらを散歩させたことが原因と思っている。現居宅は,同年9月,除染され,除去土壌は敷地で地上保管された。居住地区の放射線量は,
平成27年時点で0.
15μSv/時~1.
5μSv/時である。

3
被告の既払金(乙B12の1)

直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解
なし。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号12は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号12の主張(別紙6-12)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号12については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号12)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第13原告番号13
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
500万円の一部である100万円
10万円

認定事実(甲B13,原告番号13本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号13は,60歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫及び義母(90歳)と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
原告番号13の自宅の近所に,長女家族(夫,小学生二人,乳児一人)が住んでいた。長女は,本件事故後,仕事を辞め,平成23年3月18日,3人の子を連れて山梨に避難した(長女の夫は福島市に残った。)。同原告,夫及び義母は,避難しなかった。同原告は,本件事故直後,孫と外出しており,
被ばくの不安がある。
長女は,
同年4月初め,
子らと福島市に戻ったが,
同年7月,子らと山形に避難した。同原告と夫は,交通費を掛けて毎月山形へ孫に会いに行っている。同原告と夫は,本件事故後,趣味の山菜採り,干し柿作り,椎茸栽培等をやめた。三女は,本件事故後,福島市に帰省せず,同原告と夫が山梨へ孫に会いに行っている。被ばくの検査を受けていない。
3
被告の既払金(乙B13の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号13を含む世帯全体に対する合計額は,36万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号13は,本件事故後,生活の本拠の
ある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号13の主張(別紙6-13)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号13については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号13)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第14原告番号14
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
200万円
20万円

認定事実(甲B14~B14の9,乙B14の1~3,原告番号14本人)本件事故当時の世帯の概要等

原告番号14(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,51歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,母(83歳),長男(24歳)及び二女(22歳)と4人で住んでいた。夫は,埼玉県に単身赴任中であった。
本件事故後の生活状況等
看護師として福島市の会社で勤務していたところ,本件事故後,仕事や家庭の都合から避難しておらず,
被ばくの不安がある。
本件事故から約3年後,
不整脈が出始め,医師からは,ストレスが原因である旨説明された。母は,本件事故後,趣味の庭の手入れ等をしなくなり,平成25年に要介護3,平成27年に障害等級1級,要介護4の各認定を受けた。福島市で看護師をしていた二女は,平成23年5月,東京で再就職した。本件事故当時,東京で勤務していた長女は,平成30年8月,甲状腺がんと診断された。その際,医師からは,本件事故の影響とは説明されていない。本件事故後,家庭菜園をやめ,福島県外産の食材等を買っている。自宅は,平成27年6月頃,除染され,除去土壌は敷地で地下保管された。被ばくの検査を受けていない。3
被告の既払金(乙B14の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号14を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号14は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたこ
とを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号14の主張(別紙6-14)について
アイ
同原告は,

事故後,母は外出を控えて足腰が弱り,その介護のため勤務に支障を生じ,生活スタイルも変えざるを得なくなった。

と主張する(精神的損害⑭)。この点,同原告の高齢の母が要介護になったことと本件事故との相当因果関係が立証されているとは認められない。

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号14については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号14)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第15原告番号15
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

696万円(土地家屋の汚染に関し500万円,平成23年

3月から平成27年3月まで月額4万円の196万円)の一部である100万円

弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B15~B15の6。なお,原告番号15は,自身の原告本人尋問を申請したが撤回した。)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号15(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,42歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫及び長女(小学生)と3人で住んでいた。同原告の母は,原告番号18である。本件事故後の生活状況等
本件事故後,平成23年3月19日,長女と二人で東京に避難した(夫と飼い犬は自宅に残った。)。長女は,同年4月から東京の小学校に通い,平成24年3月,
同小学校を卒業した。
同月中に長女と福島市に戻り,
長女は,
同年4月,福島市の中学校に入学した。本件事故後,福島県外産の食材等を買っている。自宅は,平成23年9月,除染された。飼い犬は,平成29年に13歳6か月で死亡した。本件事故の放射能がその原因と思っている。
3
被告の既払金(乙B15の1~3)
直接請求手続

生活費増加等の追加的費用として4万円。
なお,包括慰謝料については,直接請求手続を経ていない。


原告番号15を含む世帯全体に対する合計額は,20万円。
ADR和解(世帯全員分)
精神的損害
(平成23年3月11日~同年4月22日)
として28万円
(同

原告につき4万円),宿泊費(同年3月11日~同年12月31日)として6万円,食事と犬の世話の謝礼(同上)として27万円,生活費増加分として5万2248円(同上),電気代・ガス代・携帯電話代として9万9000円(同上),帰宅費用(同上)として20万0136円,ペットホテルとして5万2500円(同上),就労不能に伴う減収分(同上)として55万
3482円,除染費用(同上)として11万6750円,除染費用(原状回復としての芝張り工事)(平成25年4月13日~同月24日)として13万6500円。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号15は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から,平成23年3月19日,当時小学生の長女を連れて東京に転居し,平成24年3月,長女と福島市に戻ったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。原告番号15の主張(別紙6-15)について
限5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号15については,上
7
清算合意の抗弁
証拠(乙B15の1)によれば,原告番号15は,平成24年8月1日,
(ただし,同記載の期間に限り,その遅延損害金を含む。)については,和解条項に定めるもののほか,当事者間に債権債務のないことを相互に確認する旨の合意をしたことが認められる。
そうすると,原告番号15と被告との間では,平成23年3月11日から
同年4月22日までの期間に係る精神的損害については,4万円とすることとし,他に債権債務がないとの和解合意がされたから,当該合意の効力により,同原告は,被告に対し,当該期間に係る精神的損害については,4万円を超えて請求することはできない。
8
損害額
慰謝料

15万円
(上記7の清算合意で清算されていない平成23年4月

23日から同年12月31日までの慰謝料として15万円を相当と認める。)弁護士費用
9
1万5000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号15)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第16原告番号16
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
600万円の一部である100万円
10万円

認定事実(甲B16,乙B16の2・3,原告番号16本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号16(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,51歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫,二男(18歳)及び二女(14歳)の4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,
看護師として福島市のデイサービスセンターで勤務を続け
た。二男は,平成23年3月,福島市の高校を卒業し,同年4月,専門学校に入学した。二女は,同月から福島市の中学校へ通学を再開した。本件事故直後,二男及び二女と外出しており,被ばくの不安がある。郡山市に住んでいた長女は,同年3月30日から約1週間,同原告の自宅で過ごした。長女
は,同年の春に仙台の男性と結婚する予定であったが,本件地震により相手の男性も被災し,
男性の親から本件事故を理由に考え直したいとの話もあり,
結果的に破談になった。二女は,甲状腺検査でA2判定(20mm以下の嚢胞があるが再検査の必要なし)とされたところ,治療は受けていない。3
被告の既払金(乙B16の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号16を含む世帯全体に対する合計額は,172万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号16は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号16の主張(別紙6-16)について
アイ
同原告は,

長女は,事故後,婚約者の親から事故の影響を理由に結婚を考え直したいと申入れがあり,結果的に破談になった。と主張する

(精
神的損害⑳)。この点,同原告の長女が破談になったことと本件事故との相当因果関係が立証されているとは認められない。

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁

前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号16については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号16)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第17原告番号17
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円
30万円

認定事実(甲B17~B17の4,乙B17の2,原告番号17本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号17(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,69歳の男性であり,田村市b町(自主的避難等対象区域)の自宅で,妻と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,行政区長の職責を全うし,妻は,炊き出しを手伝うため,夫婦とも避難しなかった。本件事故後,自宅の窓を閉め切り,家庭菜園をやめた。本件事故前,郡山市の進学塾に勤務し,同進学塾から派遣され,双葉郡k町の村営塾(旧緊急時避難準備区域に所在)で講師をしていたが(同進学塾は,k町から村営塾の運営を委託されていた。),本件事故後,村営塾は閉鎖され,平成26年8月,勤務先の進学塾を退職した。平成27年4月,
鼻血を出した。これまでに鼻血を出したという記憶はなく,被ばくの影響ではないかと不安である。被ばくの検査結果は不検出であった。
3
被告の既払金(乙B17の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円,就労不能損害(平成23年3月11日~平成24年8月31日)として75万2696円。


原告番号17を含む世帯全体に対する合計額は,99万2696円。ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号17は,本件事故後,生活の本拠のある田村市b町から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号17の主張(別紙6-17)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号17については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号17)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第18原告番号18
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

1172万円(土地家屋の汚染に関し500万円,畑の汚染

に関し500万円,
平成23年3月から平成26年9月まで月額4万円の1
72万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B18~B18の3,原告番号18本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号18(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,66歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫及び二女と3人で住んでいた。自宅の2階には,別世帯である長男家族(長男及び嫁)が住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。本件事故後,避難しておらず,本件事故前に申し込んだ旅行をキャンセルした。近隣に住む長女(原告番号15)は,平成23年3月19日,小学生の子(原告番号18の孫)を連れて東京に避難した。長女らが避難している間,福島市に残った長女の夫及び飼い犬の世話を引き受けた。長女らは,平成24年3月,福島市に戻った。本件事故後,家庭菜園をやめ,自宅や畑を除染した。夫は,同年5月,肺腺がんと診断され,平成25年1月,手術を受けた。医師からは,
本件事故が原因とは説明されていない。同年5月,白内障の手術を受けたほか,甲状腺検査で嚢胞(良性)が見付かった(治療は受けていない。)。3
被告の既払金(乙B18の1~3)
直接請求手続

生活費増加等の追加的費用として4万円。


原告番号18を含む世帯全体に対する合計額は,16万円。
ADR和解(世帯全員分)
精神的損害(平成23年3月11日~同年11月30日)として16万円
(同原告につき8万円)自主除染費用

(同年3月12日~同年12月1日)
として91万5650円,高圧洗浄機購入費(同年3月11日~同年6月9日)として2万1767円,除染費用(同年12月1日~平成25年4月24日)として15万7500円。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号18は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号18の主張(別紙6-18)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号18については,上
7
清算合意の抗弁
証拠
(乙B18の1)
によれば,
原告番号18は,
平成24年4月20日,

遅延損害金を含む。)については,和解条項に定めるもののほか,当事者間に債権債務のないことを相互に確認する旨の合意をしたことが認められる。そうすると,原告番号18と被告との間では,平成23年3月11日から同年11月30日までの期間に係る精神的損害については,8万円とすることとし,他に債権債務がないとの和解合意がされたから,当該合意の効力により,同原告は,被告に対し,当該期間に係る精神的損害については,8万円を超えて請求することはできない。
8
損害額
慰謝料

2万円
(上記7の清算合意で清算されていない平成23年12月

1日から同月31日までの慰謝料として2万円を相当と認める。)弁護士費用
9
2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号18)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第19原告番号19
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円(月額5万円の本件事故から5年分)
30万円

認定事実(甲B19~B19の4,原告番号19本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号19(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,
54歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,祖母(93歳),父母(各79歳),夫(54歳),長男(30歳),嫁(23歳)及び孫(1歳)と8人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
同居家族と果樹農家を営んでいる。平成23年3月14日,仙台空港で津波の被害に遭った二女(宮城県名取市在住)を迎えにいき,二女を福島市の自宅に連れ帰った。本件事故後,手持ちのヨウ素剤を家族に飲ませた。同月17日,同原告夫婦,長男家族及び二女は,山形県に避難し,5日後に自宅に戻った。同原告らは,同月下旬から,農作業を再開した。本件事故の風評被害による減収分につき,被告から別途,営業損害の賠償を受けている。夫と長男が反対したため,畑は除染していない。農作業を行う際,被ばくの不安がある。本件事故後,福島県外産の食材等を買っている。本件事故後,家庭菜園をやめ,自家用の柿の木も伐採し,本件事故の3,4年後,家庭菜園を再開した。平成28年になって,孫(長男の子)が何度か鼻血を出していたので,
被ばくの影響ではないかと不安である。
同原告らは,
月に2,
3回,
山形県等に保養・避難に出掛けている。被ばくの検査を受けていない。3
被告の既払金(乙B19の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号19を含む世帯全体に対する合計額は,268万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号19は,本件事故後,平成23年3月17日から5日間の山形県への一時的避難を除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる
平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号19の主張(別紙6-19)について
同原告の主張する精神的損害は,第2章第6の総論的検討及

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号19については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号19)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第20原告番号20
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

192万円(平成23年3月から平成27年2月まで月額4

万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B20~B20の4,乙B20の2~4,原告番号20本人)本件事故当時の世帯の概要等

原告番号20(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,54歳の女性であり,(自主的避難等対象区域)
a町
の自宅で,(56歳)


長男(23歳)及び義母(84歳)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,避難せず在宅ヘルパーの仕事を続けた。長男は,本件事故前から不安症状があり,平成23年3月23日,統合失調症と診断されたが,医師から本件事故の影響とは説明されていない。本件事故後,造園業をしていた夫は,仕事が少なくなり,高齢の義母は,以前のように外出しなくなった。いわき市に住む二女は,同年10月から11月まで同原告の自宅で里帰り出産した。近所に住む二人の孫(長女の子)は,甲状腺検査で嚢胞が見付かり,経過観察となった。本件事故後,福島県外産の食材等を買っている。3
被告の既払金(乙B20の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号20を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号20は,本件事故後,生活の本拠のあるa町から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号20の主張(別紙6-20)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号20については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号20)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第21原告番号21
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

412万円(平成23年3月から平成27年7月まで月額4

万円の212万円,精神的損害⑱に関し100万円,精神的損害㉛に関し100万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B21,原告番号21本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号21(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,62歳の女性であり,二本松市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(61歳)と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,
外出しており,
被ばくの不安がある。
平成23年3月下旬,

スクリーニング検査を受けた結果,基準値超えは無しであった。平成25年11月,
ホールボディカウンター検査を受けた結果,
不検出であったところ,
許容限度内であるが,数値が夫より少し高かったことが心配である。同検査の数日前に二本松市で採れた甘柿を食べたことが原因であろうと考えている。
本件事故後,
家庭菜園をやめた。
自宅は,
平成26年5月頃,
除染され,
除去土壌は敷地に地下保管され,平成28年11月,敷地外に搬出された。3
被告の既払金(乙B21の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号21を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号21は,本件事故後,生活の本拠のある二本松市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号21の主張(別紙6-21)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号21については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号21)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第22原告番号22
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
1000万円の一部である200万円
20万円の請求。

認定事実(甲B22~B22の3,乙B22の3。なお,原告番号22は,自身の原告本人尋問を申請したが撤回した。)
本件事故当時の世帯の概要等
(閲覧等制限あり)
本件事故後の生活状況等
(閲覧等制限あり)

3
被告の既払金(乙B22の1・2)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円,自主的除染費用として100万0300円。


原告番号22を含む世帯全体に対する合計額は,124万0300円。ADR和解(世帯のうち同原告との関係のみ)
生活費増加費用(平成23年3月11日~同年4月30日)として40万
円。なお,このADR和解において精神的損害の合意はされていない。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号22は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号22の主張(別紙6-22)について
アイ5
(閲覧等制限あり)

財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号22については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号22)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第23原告番号23
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

360万円(平成23年3月から平成25年2月まで月額1

0万円の240万円,
同年3月から平成27年2月まで月額5万円の120
万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B23~B23の2,乙B23の2~4。原告番号23本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号23(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,68歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。本件事故後,避難していない。自宅は,平成25年7月,除染されたが,被ばくの不安から,本件事故前にしていたような納得できる趣味の花作りなどをできないでいる。本件事故前,孫が帰省した際,野山の自然の中で一緒に遊んでいたが,本件事故後はそれをしなくなった。本件事故のせいで,孫と自然の中でで遊ぶ楽しみを奪われたように感じている。被ばくの検査を受けていない。
3
被告の既払金(乙B23の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号23を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号23は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたこ
とを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号23の主張(別紙6-23)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号23については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号23)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第24原告番号24
1
請求額(525万8000円)の内訳
精神的損害

478万円(平成23年3月から平成25年2月まで月額1

0万円の240万円,
同年3月から平成26年2月まで月額8万円の96万
円,同年3月から平成27年2月まで月額6万円の72万円,同年3月から平成28年4月まで月額5万円の70万円)
弁護士費用
2
47万8000円

認定事実(甲B24~B24の8,原告番号24本人)
本件事故当時の世帯の概要等

原告番号24(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,68歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等

(長男の子)
が本件事故後も福島市に住んでおり,
被ばくの不安がある。
平成23年5月,東京に住む孫(長女の子)を福島市の河川敷で遊ばせたところ,
後日,
その孫が鼻血を出した。
被ばくの影響ではないかと不安である。
長男夫婦に対し,孫(長男の子)を避難させたいと伝えたが,長男の妻に反対された。同年8月,自身の保養を兼ね,山形の避難住宅で,東京の孫と一緒に過ごした。本件事故前,田村市ag町(自主的避難等対象区域)の農地で,週末に野菜栽培をしていたが,本件事故後,土壌から3800ベクレル/kgが検出され(5000ベクレル/kg以上の田は耕作禁止),また,農業の協力者である知人が福島県外に移住したこともあって,野菜栽培をやめた。平成26年3月,自宅(マンション)の庭が除染され,平成30年頃から,庭で花の栽培を始めている。被ばくの検査結果は不検出であった。本件事故後,孫(長男の子)の甲状腺に嚢胞が見付かったため,心配である。3
被告の既払金(乙B24の1・2)
直接請求手続
経ていない。
ADR和解
精神的損害(平成23年3月11日~同年4月22日)として4万円,生活費増加費用(同上)として4万円,線量計購入費用(同年3月11日~同年8月15日)として1万9800円,食材等測定代(平成24年3月29日~平成25年3月7日)として5万2500円,土壌測定代(平成24年6月16日~同年8月13日)として2万8000円,除染費用(同年4月30日~同年10月9日)として8万5248円,同年12月5日付け被告
プレスリリースに基づく追加的費用(平成23年3月11日~平成24年8月31日)として4万円,弁護士費用として9166円。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号24は,本件事故後,平成23年8月に孫を連れて一時的に山形に避難
(自身の保養を兼ねて)
したことを除き,
生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。原告番号24の主張(別紙6-24)について
同原告の主

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号24については,上
7
清算合意の抗弁
証拠(乙B24の1)によれば,原告番号24は,平成25年10月15
項目
(ただし,
同記載の期間に限り,
その遅延損害金を含む。については,

和解条項に定めるもののほか,当事者間に債権債務のないことを相互に確認する旨の合意をしたことが認められる。
そうすると,原告番号24と被告との間では,平成23年3月11日から同年4月22日までの期間に係る精神的損害については,4万円とすること
とし,他に債権債務がないとの和解合意がされたから,当該合意の効力により,同原告は,被告に対し,当該期間に係る精神的損害については,4万円を超えて請求することはできない。
8
損害額
慰謝料

15万円
(上記7の清算合意で清算されていない平成23年4月

23日から同年12月31日までの慰謝料として15万円を相当と認める。)弁護士費用
9
1万5000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号24)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第25原告番号25
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円
30万円

認定事実(甲B25~B25の3の3,原告番号25本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号25(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,52歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,二女(19歳)と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故当時,看護師であり,福島市の病院で勤務していた。本件事故直後,福島市に住む長女や孫(長女の子)と外出しており,被ばくの不安がある。長女と孫,二女は,平成23年3月25日,山形県の親族宅へ避難し,同年4月10日,福島市に戻った。本件事故後,避難せず,福島県外産の食材等を買い,
休日に孫を仙台や那須へ連れて行くこともあった。
出費が増え,
家族間で金銭面のことで揉めることもあった。長女夫婦は,本件事故後,離
婚した。平成25年4月,福島市の別の病院に再就職した。自宅は,平成26年,除染され,除染土は地上保管された。平成25年3月,再婚し,平成26年1月,福島市に新居を建てて夫婦で生活している。
3
被告の既払金(乙B25の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号25を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号25は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号25の主張(別紙6-25)について
アイ
同原告は,

本件事故後の出費が嵩んでお金が足りなくなり,家族内で揉めることが増えた。長女夫婦は結局離婚してしまった。と主張する

(精
神的損害⑳)。この点,長女夫婦が離婚したことと本件事故との相当因果関係が立証されているとは認められない。

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号25については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号25)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第26原告番号26
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B26~B26の3,原告番号26本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号26(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,58歳の女性であり,(自主的避難等対象区域)
a町
の自宅で,(62歳)


長男(34歳)及び長女(31歳)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件地震による不安から,一時的にa町の町民センターに滞在した。本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。本件事故後,家庭菜園や山菜採りをやめ,平成28年頃,家庭菜園を再開した。平成24年3月,甲状腺の働きが悪いと診断され,同年6月,狭心症と診断された。放射線の影響ではないかと不安である。夫は,伊達市の工場で製造業を営んでいるが,本件事故後,仕事量が減ってしまい,体調を崩してしまった。

3
被告の既払金(乙B26の1)

直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号26を含む世帯全体に対する合計額は,48万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号26は,本件事故後,生活の本拠のあるa町から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号26の主張(別紙6-26)について
の限

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号26については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号26)
の認容額欄(合計)記載のとおりである。
第27原告番号27
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害

415万円(平成23年3月から平成27年12月まで月額

5万円の290万円,除染作業に関し50万円,娘が出産するまでの心労に関し50万円,汚染土保管に関し25万円)の一部である200万円弁護士費用
2
20万円

認定事実(甲A95,甲B27~B27の4,原告番号27本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号27(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,65歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(67歳)及び長男(27歳)と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
平成23年3月15日,本件事故後,長男と二人で埼玉県の長女宅へ避難し,同原告と長男は,同年4月7日,福島市の自宅に戻った。福島市で不動産業を営む夫は,仕事の関係で自宅に残った。長女は,同年8月,二人目の妊娠が判明し,里帰り出産を希望した。長女を迎えるため,同年10月から同年12月まで自らの手で庭の除染作業を行い,足首の疲労骨折と腰の急性ヘルニアになった。長女は,平成24年3月,福島市に帰省し,同年4月7日,
二人目の子を出産し,
埼玉県へ戻った。
本件事故後,
家庭菜園はやめた。
自宅は,平成26年6月,除染され,除去土壌は敷地で地上保管された。同月,角化嚢胞歯原性腫瘍の摘出手術を受けた。被ばくの影響ではないかと不安である。被ばくの検査結果は,同原告,夫及び長男とも不検出であった。
3
被告の既払金(乙B27の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号27を含む世帯全体に対する合計額は,36万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号27は,本件事故後,平成23年3月15日から同年4月7日まで埼玉県の長女宅に一時的避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。原告番号27の主張(別紙6-27)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号27については,上
なお,被告は,原告番号27による除去土壌の保管に伴う精神的損害の請求については,財産的損害(生活費増加等の追加的費用)として支払った4万円についても弁済の抗弁を主張するが(第5部第2章の第5の3),被告は,飽くまで財産的損害に対するものとして上記の生活費増加等の追加的費用を支払ったものであることに鑑み,当該主張を採用することはできない。7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額

慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号27)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第28原告番号28
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B28~B28の6,乙A227,原告番号28本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号28(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,34歳の女性であり,郡山市(自主的避難等対象区域)の自宅で,長女(10歳)と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,自宅のローンが残っていたことなどから,避難はせず,福島県東白川郡の実家で過ごすなどし,平成23年4月11日頃,学校の授業再開に合わせて自宅に戻った。本件事故後,洗濯物を室内に干し,外出時はマスクをし,食材等に気を使った。本件事故後の約1年間は,専門家の間でも避難すべきかについて意見が分かれていた。長女の通う小学校は,同年の4月から5月に掛けて除染され,夏でも窓を開けずに授業をした。長女は,郡山市の中学校及び高校に進学した。長女は,平成29年12月末,尿路上皮がんの手術を受けたところ,悪性であった(筋層の浸潤はなかった。)。医師からは,本件事故との因果関係は分からない旨説明されたが,膀胱がんは若年層では稀とされ,
チェルノブイリの事故後にその地域で膀胱炎が増加し
たとの情報から,本件事故との関連性を疑っている。なお,平成30年11
月に婚姻した。
3
被告の既払金(乙B28の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号28を含む世帯全体に対する合計額は,84万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号28は,本件事故後,東白川郡の実家で一時的に過ごしたことを除き,生活の本拠のある郡山市から避難しなかったところ,
本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月
31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号28の主張(別紙6-28)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号28については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号28)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第29原告番号29
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B29~B29の5,乙B29の2,原告番号29本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号29(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,69歳の男性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
新聞配達をしていたが,本件事故後,被ばくを避け,新聞配達をやめた。本件事故前は,部屋の掃除をしなくても平気であったが,本件事故後は,ほこりに放射性物質が含まれていると知り,3日に1回は掃除をするようになった。本件事故後,福島県外産の食材等を買っている。同原告の自宅は,平成26年10月,除染され,除去土壌は敷地で地上保管された。福島県立医科大学から,本件事故後3か月間に受けた外部被ばく実効線量は,約1.4mSvである旨通知された。被ばくの検査を受けたか記憶がない。
3
被告の既払金(乙B29の1)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号29は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号29の主張(別紙6-29)について

慰謝料を算定する際に考慮済みである。
5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号29については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号29)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第30原告番号30
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害

300万円

弁護士費用

30万円

2
認定事実(甲B30~B30の3,原告番号30本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号30(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,56歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(56歳)及び長男(28歳)と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,福島市に住む長女家族(長女夫婦,小学2年生の孫,幼稚園の孫)は,平成23年3月16日,山形県に避難した。その際,長女家族と一緒に山形県に避難した。夫及び長男は,同月17日,山形県に避難した。福島市に住む両親,妹及び二男は,避難しなかった。長男は,同月20日,福島市に戻り,長女家族,同原告及び夫は,同月30日,孫の学校が始まるため福島市に戻った。勤務先の会社から,無断で避難したことを咎められ,退職した
(その後,
別の会社に再就職した。)。本件事故後,外出しており,
被ばくの不安がある,本件事故後,自宅の窓を閉め切り,洗濯物を室内に干し,家庭菜園はやめた。被ばくの検査を受けていない。

3
被告の既払金(乙B30の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号30を含む世帯全体に対する合計額は,36万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号30は,本件事故後,平成23年3月16日から同月30日まで山形県に一時的避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛につ
いて,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号30の主張(別紙6-30)について
限5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号30については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号30)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第31原告番号31
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円の一部である100万円
10万円

認定事実(甲B31~B31の4,原告番号31本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号31(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,57歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫及び母
(84歳)と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,外出しており,被ばくの不安がある。同居する高齢の母がおり,経済的余裕もなく,避難しなかった。同原告と夫は,平成23年9月,自宅の庭の除染を自ら行い,夫は腰を痛めた。本件事故後,線量計,空気清浄機,エアコン,高圧洗浄機を購入し,線量計及び高圧洗浄機の費用は,ADRで賠償された。福島県外産の食材等を買っている。いわき市の孫が遊びに来るときなどは特に気を使う。自宅は,平成26年8月,除染された。平成29年6月,不整脈が見付かり,同年9月,甲状腺機能低下症(橋本病)と診断された。これらの原因は,被ばくに対するストレスと考えている。3
被告の既払金(乙B31の1・2)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号31を含む世帯全体に対する合計額は,36万円。
ADR和解(世帯のうち同原告との関係のみ)
精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として4万円,
生活費増加費用
(同上)
として4万円,
ガイガーカウンター購入費用
(同上)
として1万9800円,
高圧洗浄機購入費用
(同上)
として1万4787円,
除染費用(同上)として3万円,自家消費野菜(平成24年1月1日~平成25年6月30日)として5万4000円,弁護士費用として5958円。既払金として8万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号31は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたこ
とを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号31の主張(別紙6-31)について

算定する際に考慮済みである。
5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号31については,上
7
清算合意の抗弁
なし。なお,上記ADRの和解契約では,清算条項の定めはあるものの,精神的損害については清算の対象から除外されている。

8
損害額
慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

弁護士費用
9
2万6000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号31)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第32原告番号32
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

1800万円(平成23年3月から月額5万円の30年分)

の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B32~B32の4,原告番号32本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号32(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,
27歳の女性であり,
福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,父,母(5
7歳)及び妹(22歳)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
自宅から通勤し,h町の町役場職員(保健師)として働いていた。本件地震後,隣接するd町等から多数の避難者がh町に避難し,被ばくの不安を抱えながら避難者の対応に追われた。避難者に対し,政府の方針に従い安全である旨伝えたが,それでよかったのか悩んでいる。親が福島県に在住しており,仕事も投げ出せず,避難しなかった。平成26年3月,夫と結婚し福島市で生活しており,同年12月に長女,平成28年7月に長男をもうけ,平成29年3月,福島市の現在の居宅に引っ越した。被ばくの不安から福島県で仕事をするにも子育てをするにも葛藤を抱えている。
3
被告の既払金(乙B32の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号32を含む世帯全体に対する合計額は,36万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号32は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号32の主張(別紙6-32)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号32については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号32)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第33原告番号33
第34原告番号34
1
請求額の内訳
原告番号33(請求額

110万円)


精神的損害

100万円


弁護士費用

10万円

原告番号34(請求額

110万円)


100万円

イ2
精神的損害
弁護士費用

10万円

認定事実(原告番号33及び34を併せて認定する。)(甲B33,甲B34~B34の2の2,乙B33の3の1・2。原告番号33本人,原告番号34本人)
本件事故当時の世帯の概要等

原告番号33
(43歳の男性)
及び34
(42歳の女性)
は夫婦であり
(以
下,同原告らを主語とする場合は主語を省略する。),福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,長女(15歳),長男(13歳),二男(8歳),原告番号33の父及び原告番号34の母と7人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており(子らにもお使いを頼んだ),被ばくの不安がある。本件地震で自宅が半壊し,2μSv/時を計測した庭を解体して,平成23年11月頃,
同じ敷地に自宅を建て替えた。
子らは,
同年4月以降,
福島市の小中学校に通学した。同原告らと子らは,被ばくを避け,同年8月から平成25年8月まで山形県米沢市の避難者向け住宅を借り,週末はなるべく米沢で過ごすライフスタイルを選択した。最後の方の時期は受験等が重なり米沢には余り行かなかった。本件事故後,福島県外産の食材等を買い,子らにはおにぎりを持たせて通学させるなどした。長女は,甲状腺検査でA2判定となり,再検査の結果,嚢胞が今後大きくなる可能性は低く,嚢胞は放射能の影響と考えられる旨説明され,
経過観察中である。
原告番号33は,
平成25年に直腸のポリープ切除手術を受け,平成27年に大腸の炎症で入院した。被ばくの検査結果は,同原告ら及び子らとも不検出であった。3
被告の既払金(乙B33の1・2,乙B34の1)
直接請求手続

包括慰謝料として各8万円,生活費増加等の追加的費用として各4万円。

原告番号33及び34を含む世帯全体に対する合計額は,240万円。ADR和解(世帯のうち同原告ら及び子らとの関係のみ)
精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として68万円
(同原告らにつき各4万円),生活費増加費用(同上)として128万円,除染費用(同上)として37万6635円,線量計購入費用(同上)として9800円,避難費用(平成24年1月1日~同年10月31日)として1
0万7691円,弁護士費用として7万3624円。既払金として196万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
原告番号33及び34
上記2の認定事実によれば,原告番号33及び34は,本件事故後,平成23年8月から約2年間,米沢市に週末避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告らの慰謝料を各30万円と認める。
原告番号33及び34の各主張(別紙6-33・34)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号33及び34につい
7
清算合意の抗弁
証拠(乙B33の1)によれば,原告番号33及び34は,平成25年9
害項目に及び,それ以外の点については及ばな
の損害項目(ただし,同記載の期間に限り,その遅延損害金を含む。)については,和解条項に定めるもののほか,当事者間に債権債務のないことを相互に確認する旨の合意をしたことが認められる。
そうすると,原告番号33及び34と被告との間では,それぞれ,平成2
3年3月11日から同年12月31日までの期間(避難の相当性が認められる期間と一致する。に係る精神的損害については,

4万円とすることとし,
他に債権債務がないとの和解合意がされたから,当該合意の効力により,同原告らは,被告に対し,当該期間に係る精神的損害については,各4万円を超えて請求することはできない。
8
損害額
原告番号33

慰謝料

0円(ADR和解により清算済み)


弁護士費用

0円

原告番号34
アイ9
慰謝料

0円(ADR和解により清算済み)

弁護士費用

0円

まとめ
以上によれば,原告番号33及び34の請求はいずれも理由がない。
第35原告番号35
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
200万円
20万円

認定事実(甲B35,乙B35の2,原告番号35本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号35(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,38歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(40歳),長男(17歳),二男(15歳)及び長女(13歳)と5人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,マスクや帽子を着用し,洗濯物を室内に干すなどの注意を払
った。本件事故当時,長男及び二男は福島市の高校に,長女は福島市の中学校に在学し,平成23年4月上旬から通学を再開した。住宅ローンが残っており,避難しなかった。トラック運転手の夫は,本件事故後,福島ナンバーに対する嫌がらせを受けた。長男は,そのことを知って傷ついた。二男は,高校のサッカー部で毎日練習し,現在は健康である。長女は,平成26年7月,甲状腺に小さな嚢胞が見付かり,医師からは,放射線の影響とは説明されていない。被ばくの検査結果は不検出であった。平成30年6月頃,家庭菜園を始めたが,
その後,
本件事故とは無関係の個人的な事情でやめている。
3
被告の既払金(乙B35の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号35を含む世帯全体に対する合計額は,240万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号35は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号35の主張(別紙6-35)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁

前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号35については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号35)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第36原告番号36
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B36~B36の4,原告番号36本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号36(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,34歳の女性であり,福島市ak(自主的避難等対象区域)の自宅で,義父母,夫,長女(2歳)及び二女(生後2か月)及び姪(11歳)と6人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
平成22年12月に二女を出産し,本件事故当時,福島市al町の実家で静養していた。平成23年3月25日,長女と二女を連れ,千葉県の弟宅に避難して5日間過ごし,千葉県の義妹の実家に移り10日間過ごし,同年4月7日,福島市の自宅に戻った。長女は,同月上旬から通学を再開した。同年秋,コリン性蕁麻疹になり,薬を飲んで治ったが,医師からは,疲れとス
トレスが原因である旨説明されている。
自宅は,
平成27年春,
除染された。
米沢に行って子らに自然の中での遊びをさせている。
長女は,
平成26年頃,
甲状腺検査でA2判定とされ,不安である。被ばくの検査結果は,長女及び二女とも問題なかった。実家では,平成25年から野菜栽培を再開した。3
被告の既払金(乙B36の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号36を含む世帯全体に対する合計額は,244万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号36は,本件事故後,平成23年3月25日から同年4月7日まで子らと千葉県に一時的避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。原告番号36の主張(別紙6-36)について
同原告の主張する精神的損害は,第2章第6の総論的検討及び

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号36については,上
7
清算合意の抗弁

なし。
8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号36)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第37原告番号37
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B37~B37の3,原告番号37本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号37(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,41歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(40歳),長男(17歳),二男(13歳)及び長女(10歳)と5人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,長男,二男及び長女を連れて外出しており,被ばくの不安がある。本件事故後,子らの外遊びを禁止し,自宅の窓を閉め切り,子らにマスクをするなどした。未熟児で出生した長女に対しては,被ばくさせないように特に厳しく注意を払わざるを得なかった。長女は,被ばくの検査結果は問題なかった。経済的な事情により避難はしなかったが,平成23年8月13日から同月16日まで,子らを連れて山形県の夫の出向先で過ごした。その後,福島市の別の居宅に転居し,その居宅は,除染された。

3
被告の既払金(乙B37の1)

直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号37を含む世帯全体に対する合計額は,168万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号37は,本件事故後,平成23年8月13日から16日まで夫の出向先の山形県で過ごしたことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号37の主張(別紙6-37)について

度5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号37については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
まとめ

2万2000円

以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号37)の認容額欄(合計)記載のとおりである。
第38原告番号38
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

180万円(平成23年3月から月額3万円の5年分)の一

部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実
(甲A112の1・2,
甲B38~B38の4,
原告番号38本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号38(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,37歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫,子ら(6歳,4歳,2歳)と5人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件地震により自宅が被害を受け,夫(医師),子らと福島市の夫の実家に避難し,平成23年3月16日,自宅に戻った。本件事故直後,外出しており,
被ばくの不安がある。
同月18日,
子らを連れて喜多方市に避難し
(夫
は,自宅に残った。),学校が同年4月から始まるため,同月31日,子らと自宅に戻った。同年11月まで,週末に喜多方市で過ごす生活を続けた。長男の小学校では,夏休みに校庭の除染がされたが,それまで間に被ばくしたのではないかという不安がある。同年秋から原因不明の倦怠感に悩まされており,原爆ぶらぶら病ではないかと不安である。その後も母子避難することを望んだが,夫が大丈夫であるとして賛成しなかったため,再度の母子避難を実現できなかった。福島県外産の食材等を買っている。

3
被告の既払金(乙B38の2)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円。

ADR和解(世帯全員分)
精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として68万円(同原告につき4万円),生活費増加費用と移動費用(同上)として128万円,ガイガーカウンター購入費用(同上)として10万5000円,高圧洗浄機購入費用(同上)として2万円,平成24年12月5日付け被告プレスリリースに基づく追加賠償(平成23年3月11日~平成24年8月31日)として44万円,弁護士費用として7万5750円。既払金として196万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号38は,本件事故後,平成23年3月18日から同月31日まで喜多方市に子らと避難したこと除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号38の主張(別紙6-38)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号38については,上
7
清算合意の抗弁
なし。なお,上記ADRの和解契約では,清算条項の定めはあるものの,精神的損害については清算の対象から除外されている。

8
損害額
慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

弁護士費用
9
2万6000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号38)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第39原告番号39
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B39~B39の2,原告番号39本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号39(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,68歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,
外出しており,
被ばくの不安がある。
被ばくの検査結果は,
同原告及び夫とも不検出であった。
東京に住む長女は,
平成24年1月以降,
福島市に度々帰省しているところ,平成25年3月頃,長女を放射線量の低い環境で過ごさせるため,自宅の屋根の葺き替え工事をした。自宅の2階にある長女の部屋の放射線量は,同工事前は0.15μSv/時であったが,同工事後は同原告が安心と考える水準に低減した。二女は,本件事故当時,夫と福島市に住んでいたところ,
平成24年12月,
福島医科大学で出産し,
平成25年4月まで同原告の自宅で静養し,平成26年6月,母子で仙台に転居した(二女の夫は福島市に残った。)。自宅は,平成26年1月,除染され,
除去土壌は地下保管されたが,
平成29年6月,
敷地外に搬出された。

3
被告の既払金(乙B39の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号39を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号39は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号39の主張(別紙6-39)について
同原告の主張する精神的損害

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号39については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
まとめ

2万2000円

以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号39)の認容額欄(合計)記載のとおりである。
第40原告番号40
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

251万6000円(汚染土保管に関し汚染土が庭に置かれ

た平成26年9月28日から撤去された平成30年1月15日まで月額8000円の39.5か月分の31万6000円,本件事故から月額5万円の44か月分である220万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B40~B40の3,乙B40の3の1・2。なお,原告番号40は,自身の原告本人尋問を申請したが撤回した。)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号40(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,69歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。窓や換気扇を目張りし,カーテンを閉め,洗濯物を室内に干したが,湿気とカビの臭い,飼い犬の糞尿の臭いで吐き気や目眩がし,平成23年8月26日,メニエール病で入院した。同年6月頃,息子らとその嫁に対し,孫の被ばくを避けるため,避難の意思があるかを問うたが,息子らは,意見が対立し,関係が悪化してしまった。
孫は,
平成25年に自宅に遊びに来た際,
度々鼻血を出しており,
放射線の影響ではないかと不安である。
自宅は,
平成26年9月,
除染され,
除去土壌は敷地で地上保管された。本件事故後,家庭菜園をやめた。
3
被告の既払金(乙B40の1・2)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解
精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として4万円,自家消費野菜(同年3月11日~平成24年12月31日)として14万3000円,除染費用(平成23年3月11日~同年10月31日)として19万8450円,弁護士費用として1万1444円。既払金として8万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号40は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号40の主張(別紙6-40)について
同5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号40については,上
なお,被告は,原告番号40による除去土壌の保管に伴う精神的損害の請求については,財産的損害(生活費増加等の追加的費用)として支払った4万円についても弁済の抗弁を主張する
(第5部第2章の第5の3)しかしながら,

被告は,
飽くまで財産的損害に対するものとして生活費増加等の追加的費用を支払ったものであることに鑑み,当該主張を採用することはできない。
7
清算合意の抗弁
なし。なお,上記ADRの和解契約では,清算条項の定めはあるものの,精神的損害については清算の対象から除外されている。

8
損害額
慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

弁護士費用
9
2万6000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号40)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第41原告番号41
1
請求額(220万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
200万円
20万円

認定事実
(甲B41~B41の12,
乙B41の3・4。
原告番号41本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号41(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,62歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件地震後,
余震の不安から福島市の長女宅に一時滞在した。
本件事故後,
平成23年3月15日,埼玉県の二女から早く避難するようにとの連絡があり,
同月20日,
二女宅に避難し,
同月28日,
亡夫の相続税の手続のため,
福島市の自宅に戻った。本件事故後,畑の草むしりや町内会の一斉清掃に従事した後,喉に不快感(痰や喉の腫れ等)を覚えるようになり(本件事故前に脳腫瘍の手術を受け,その後遺症により右喉が機能していない。),ほこりを吸い込むなどして内部被ばくをしたのではないかと不安である。被ばく
の検査結果は,事故後4か月間の外部被ばくは2.3mSv/年,内部被ばくは不検出であった。本件事故後,家庭菜園をやめた。自宅は,平成26年秋,除染され,除去土壌は敷地に地下保管された。平成28年,両目が白内障と診断されたところ,被ばくの影響ではないかと不安である。
3
被告の既払金(乙B41の1・2)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円。
ADR和解
精神的損害(平成23年3月11日~同年12月31日)として4万円,避難費用(同年3月11日~同月31日)として1万3400円,除染費用(水洗い費用)(同年3月11日~同年12月31日)として11万7000円,除染費用(立木伐採等庭の手入れ・砂・砂利購入費用)(同上)として10万8875円,
家庭菜園
(同年3月11日~平成24年12月31日)
として13万8000円,平成24年12月5日付け被告プレスリリースに基づく追加的費用(平成23年3月11日~平成24年8月31日)として4万円,弁護士費用として1万3718円。既払金として8万円を控除。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号41は,本件事故後,平成23年3月20日から同月28日まで埼玉県の二女宅に避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号41の主張(別紙6-41)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号41については,上
7
清算合意の抗弁
なし。なお,上記ADRの和解契約では,清算条項の定めはあるものの,精神的損害については清算の対象から除外されている。

8
損害額
慰謝料

26万円(=30万円-4万円)

弁護士費用
9
2万6000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号41)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第42承継前原告番号42
1
請求額(合計330万円)の内訳
精神的損害

300万円(月額5万円の平成23年3月から5年分)

弁護士費用

30万円

承継前原告番号42は,本件訴訟係属中である平成29年7月26日,死亡し,その相続人である原告番号42の1~3は,平成30年5月16日,
2
認定事実(甲B42~B42の2。なお,承継前原告番号42は,自身の原告本人尋問を申請したが,撤回した。)
本件事故当時の世帯の概要等
承継前原告番号42(以下,承継前原告番号42を主語とする場合は主語を省略する。)は,65歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)
の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故当時,自宅を兼ねる建物で旅館を経営していた。長男家族と長女家族は,福島市に住んでいた。本件事故後,避難しなかった。本件事故直後は,報道関係者らが同旅館に宿泊した。本件事故後,平成23年11月に福島市で開催される女子駅伝大会に出場する福島県外のチームから,宿泊の申し込みを受け,業者に依頼し,その宿泊前に同旅館建物を除染した。同建物は,平成26年10月にも除染された。平成29年7月26日,死亡した。3
被告の既払金(乙B42の1~3)
直接請求手続
承継前原告番号42に対し,包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。
ADR和解
承継前原告番号42との関係ではなし。ただし,承継前原告番号42が代表者の会社に対し,前記旅館の自主的除染費用として316万7775円。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,承継前原告番号42は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。承継前原告番号42の主張(別紙6-42)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,承継前原告番号42について,8万円を認める。

7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号42の1~3)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第43原告番号43
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
300万円
30万円

認定事実(甲B43,原告番号43本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号43(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,50歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫及び二女(17歳)と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
特定非営利活動法人青空保育たけの子(以下たけの子という。)の代表者であり,自宅を託児所として保育をしていた。本件事故後,園児らは,平成23年3月25日までに全員が福島県外に避難した。このため,たけの子の活動を一時休止したが,
同年5月,
再開した。
たけの子は,
本件事故後,
年間2mSv(0.22μSv/時)以下を活動の目安としており,同年1
0月まで,週2回福島市で園児に外遊びをさせ,その後,平日には,福島市から米沢市に移動して園児に外遊びをさせている。同年3月15日,夫に対し,二女だけでも避難させたい旨伝えたが,夫は,二女を不慣れな環境に置くことなどを憂慮して賛成しなかった。元々,夫とは考え方や価値観の違いを感じていたが,本件事故を契機に夫に対する不信感を持つようになった。自宅は,平成26年12月,除染され,除去土壌は敷地で地上保管された。二女は,本件事故の数年後,結婚して独立した。
3
被告の既払金(乙B43の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号43を含む世帯全体に対する合計額は,108万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号43は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号43の主張(別紙6-43)について
アイ
同原告は,

不溶性の放射性物質は体内にとどまりやすいとの見解も聞く。

と主張する(精神的損害⑬)。この点,そのような見解が存在し(甲A118~121),空間線量率に比して内部被ばくの状況が不明確であることとも相俟って,同原告が不安に感じていることが認められるが,同
原告の主張状況に照らすと,上記見解の存在により初めて放射線被ばくに対する恐怖や不安を抱いているというよりも,放射線による不安を基礎付ける見解の一つとして上記見解を理解しているものであり,上記アの評価を左右するものとはいえない。
5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号43については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号43)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第44原告番号44
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

408万円(平成23年3月から月額4万円の52か月分の

208万円,除染廃棄物に関し100万円,土地家屋の汚染に関し100万円)の一部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B44~B44の6,原告番号44本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号44(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,
72歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。栃木県に住む長女夫婦は,平成23年4月9日,福島市に同原告を迎えに来たが,自宅を離れる決心が付かず,避難しなかった。本件事故後,自宅を閉め切り,換気扇やエアコンを使わなかったが,同年6月からは部屋に風を通している。本件事故前から,
小学校や保育園に出向いて絵本を読み聞かせる活動をしていたところ,本件事故後は,被災地・福島の子どもと本をつなぐ会を立ち上げ,全国各地の有志が福島の学校等に出向いて本の読み聞かせを行う際のコーディネートを行い,
合計で約1万5000人の子どもに本の読み聞かせをし
た。
自宅は,
平成28年3月,
除染され,
除去土壌は敷地で地上保管された。
3
被告の既払金(乙B44の1)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号44は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号44の主張(別紙6-44)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号44については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号44)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第45原告番号45
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B45~B45の13,乙B45の2,原告番号45本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号45(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,65歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。本件事故当時,福島市に居住していた二男夫婦と3名の孫は,平成23年3月17日頃,長男の妻の実家のある群馬県高崎市に避難し,同年4月,福島市に戻った。同原告
の夫(元農業高校教師)は,家庭菜園をしていたところ,本件事故後,家庭菜園を中断したが,ゼオライトや石灰で土壌改良をし,平成24年,家庭菜園を再開した。夫が収穫した野菜(検査結果は,ほとんどが1kg当たり20ベクレル以下で問題なし)を食べるが,不安はある。本件事故前,胃がんの手術を受けていたが,平成23年4月,腸閉塞で入院し,同年11月,網膜静脈閉塞症による眼底出血と黄斑浮腫で手術を受け,平成25年夏,蕁麻疹,平成27年以降,不眠,多尿,不整脈,耳鳴り等の症状が続き,被ばくが原因ではないかと不安である。被ばくの検査結果は不検出であった。3
被告の既払金(乙B45の1の2,乙B45の3)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号45を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解(世帯のうち同原告との関係のみ)
放射線測定器購入費用(平成23年7月14日)として5万2500円,
弁護士費用として1575円。
なお,このADR和解において精神的損害の合意はされていない。4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号45は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号45の主張(別紙6-45)について

5
財産的損害

請求していない。
6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号45については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号45)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第46原告番号46
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
1385万円の一部である100万円
10万円

認定事実(甲B46~B46の4,原告番号46本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号46(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,58歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,単身で住んでおり,夫は,伊達市に単身赴任をし(平成23年6月死亡),長女は埼玉県に,二女は福島市に,同原告の父母は郡山市に住んでいた。
本件事故後の生活状況等
平成23年3月14日,本件事故を心配した単身赴任中の夫(警察官)から,二女を連れて避難するように言われた。二女に対し,埼玉県の長女宅に避難してほしいと伝えたところ,二女は,同月16日,長女宅に避難し,約
2週間後,福島市に戻った。同月17日,郡山市の父母宅へ避難し,同月18日,埼玉県の長女宅に避難し,同月20日,郡山市の父母宅に戻り,同月25日,自宅に戻った。洗濯物を室内に干し,福島県外産の食材等を買っている。夫は,同年6月20日,死亡した。同年12月,自宅の駐車場をコンクリートにした。平成26年3月,二女が出産し,母子は健康である。自宅は,平成27年2月に除染され,除去土壌は敷地で地下保管された。自宅の除染後,庭仕事を再開した。被ばくの検査結果は不検出であった。3
被告の既払金(乙B46の1)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円,自主的除染費用として63万5902円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号46は,本件事故後,平成23年3月17日から同月25日に掛けて埼玉県の長女宅等に避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。原告番号46の主張(別紙6-46)について
の限

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁

前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号46については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号46)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第47原告番号47
1
請求額(216万4800円)の内訳
精神的損害

196万8000円(保育園の除染作業に費やした労力に伴

う精神的苦痛として1時間当たり400円の1日8時間の240日分で76万8000円,平成23年3月から月額2万円の5年分の120万円)弁護士費用
2
19万6800円

認定事実(甲B47~B47の4,乙B47の3,原告番号47本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号47(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,47歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫,長男(18歳)及び二男(16歳)と4人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
保育士であり,平成8年,福島市amに保育園を開設し,その施設長であった。同保育園は,本件地震後,平成23年3月21日まで休園し,同月22日から再開した。同保育園について,同年4月30日,自主的に除染をして空間放射線量を0.3μSv/時に低下させ,同年5月,自主的に除染を
し,同年6月,自治体主導で除染をし,同年7月,砂場の砂を入れ替え,その後も自主的に除染をした。平成24年4月,同保育園を福島市anに移転し,平成29年3月まで保育した。同保育園の園児は,本件事故後に21名のうち12名が退園して9名となり,
平成24年4月以降,
3名に減少した。
同保育園は,被告から,実質損失額の24%(平成26年度現在)に相当する補償を受けた。平成26年末,歯を食いしばる状態が続き,歯髄の炎症を起こした(平成22年頃,慢性歯周病を発症していた。)。被ばくの検査を受けていない。その後,福島市で一人暮らしを始め,保育園を閉園した平成29年3月,単身で福島県外に転居し,東京で保育士をしている。本件事故後,長男は福島県内で就職し,二男は福島県内の大学に進学した。3
被告の既払金(乙B47の1・2)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号47を含む世帯全体に対する合計額は,160万円。
ADR和解
個人の損害との関係ではなし。
直接請求手続及びADR和解により,同原告が経

営していた上記保育園に関し,逸失利益(平成23年3月11日~平成27年7月31日),風評被害(将来分),追加的費用(建物解体費用,事務所移転費用等)及び弁護士費用の合計2166万3180円。
4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号47は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ(ただし,平成29年3月,福島市から福島県外に転居した。),本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,
上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌し

た上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号47の主張(別紙6-47)について
同原告の主張する精神的損害は,第2章

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号47については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号47)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第48原告番号48
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B48,原告番号48本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号48(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,40歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(41歳)及び長男(11歳)と3人で住んでいた。

本件事故後の生活状況等
原告番号48は,本件事故後,平成23年3月21日,長男を連れて東京に避難した(仕事のある夫は自宅に残った。)。同月下旬頃,同原告と長男は,
自宅に戻り,
長男は,
同年4月から福島市の小学校の6年生に進学した。
長男の校舎内での学校生活には安心していたが,長男を車で送迎し,長男にはミネラルウォーターを持たせた。同年6月11日,長男を連れて山形市に転居し,長男は,山形市の小学校に転校し,山形市の中学校に入学した。母子の避難生活はつらく,同原告と長男は,平成24年10月,福島市の自宅に戻り,長男は,福島市の中学校に転校した。福島県外産の食材等を買っている。長男は,甲状腺検査でA2判定とされ,今後が不安である。3
被告の既払金(乙B48の1・2)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号48を含む世帯全体に対する合計額は,96万円。
ADR和解(世帯全員分)
避難費用(避難交通費)3万6090円,避難費用(宿泊代等)5万94
00円,避難費用(面会交通費)6万6420円,生活費増加費用(家財道具購入費用)24万円,生活費増加費用(二重生活増加費用)21万円,教育費(学用品購入代)1万3310円,検査費用3000円,同原告の就労不能損害23万2736円(以上,平成23年分),避難費用(住居費用)10万円,避難費用(面会交通費)10万2573円,生活費増加費用(二重生活増加費用)28万5000円,教育費(学用品購入代)9万6320円,
線量計購入費用5510円,
検査費用3000円,
避難雑費19万円
(以
上,
平成24年分)避難費用

(家具廃棄費用)
1000円
(平成26年分)

弁護士費用4万9331円。既払金として48万円(財産的損害に係る既払金と解される。)を控除。

なお,このADR和解において精神的損害の合意はされていない。4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号48は,本件事故後,平成23年3月21日から同月27日に掛けて東京に避難し,同年6月から平成24年10月に掛けて山形市に避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,
本件事故と相当因果関係があると認められる平成23
年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,
上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,
同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号48の主張(別紙6-48)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号48については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号48)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第49原告番号49

1
請求額(165万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
150万円
15万円

認定事実(甲B49の1,乙B49の3・4,原告番号49本人)本件事故当時の世帯の概要等
原告番号49(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,70歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫と二人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故当時,看護師として福島市の老人保健施設で勤務しており,本件事故後,同施設に避難者が多数入所し,対応に追われた。本件事故後,当面の間,手洗い,うがい,衣類の土ぼこりを落とす,洗濯物は室内に干すなどの対策を続けた。
三女夫婦は,
福島市で仕事をしている。
自宅で3人の孫
(三
女の子)の面倒を見ており,孫が外で遊ばないように注意を払った。平成23年9月,高圧洗浄機を購入し,自宅の洗浄を試みたが,肩を痛め,治療に2か月を要した。同年末頃,腹部に違和感を覚え,下痢症状になったが,被ばくの影響ではないかと不安である。
自宅は,
平成26年6月,
除染された。
最近,二人の孫(長女の子)の甲状腺に嚢胞が見付かり,不安である。
3
被告の既払金(乙B49の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号49を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
竹の子販売減収分(平成23年3月11日~平成26年12月31日)と
して40万円,ガイガーカウンター購入費(平成23年8月9日)として3万9800円,高圧洗浄機購入費用(同上)として2万9800円,除染費
用(平成24年9月28日)として80万円,弁護士費用として3万8088円。
既払金として8万円
(財産的損害に係る既払金と解される。を控除。

なお,このADR和解において精神的損害の合意はされていない。4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号49は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号49の主張(別紙6-49)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号49については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号49)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第50原告番号50

1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害

192万円(平成23年3月から月額4万円の4年分)の一

部である100万円
弁護士費用
2
10万円

認定事実(甲B50,原告番号50本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号50(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,54歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,長女及び孫と3人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
本件事故後,避難をすべきか悩んだが,同原告も長女も福島市で仕事をしており,経済的な理由もあって避難しなかった。孫は,本件事故直後,自宅で過ごさせた。
平成26年,
甲状腺検査で結節が二つ,
嚢胞が三つ見付かり,
再検査では,良性で心配ないとのことであった。孫は,甲状腺検査で嚢胞等は見付からず,経過観察中である。被ばくの検査結果は,同原告,長女及び孫とも不検出であった。本件事故当時,小学3年生であった孫は,福島市の中学校及び高校に進学している。

3
被告の既払金(乙B50の1)
直接請求手続
包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号50は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,
本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号50の主張(別紙6-50)について
同原告の主張

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号50については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号50)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第51原告番号51
1
請求額(110万円)の内訳
精神的損害
弁護士費用

2
100万円
10万円

認定事実(甲B51,原告番号51本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号51(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,53歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,夫(東京
に単身赴任中だが,自宅に戻っていた。),長女(24歳),二女(23歳)及び長男(11歳)と5人で住んでいた。
本件事故後の生活状況等
原告番号51の家族は,平成23年3月11日から4日間,近くに住む義母宅で過ごした。本件事故後,夫の単身赴任先である東京への避難も考えたが,二女が福島市の重度身体障害者施設に勤務しており,長男が一人で避難することを拒み,避難しなかった。保養避難を兼ねて,家族と夏休みに沖縄に旅行に行ったり,夫がいる東京に行ったり,週末に山形や宮城に行ったりした。自宅を閉め切り,外のほこりを持ち込まず,福島県外産の食材等を買っている。長男は,平成24年の甲状腺検査でA2判定となり,平成26年の検査で嚢胞は小さくなったが,被ばくの影響が不安である。
3
被告の既払金(乙B51の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号51を含む世帯全体に対する合計額は,120万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号51は,本件事故後,夫の単身赴任先である東京や沖縄等に保養避難したことを除き,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,
上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌し
た上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号51の主張(別紙6-51)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁
前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号51については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号51)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第52原告番号52
1
請求額(330万円)の内訳
精神的損害

572万円(平成23年3月から平成26年9月まで月額4

万円の172万円,庭に埋めた汚染土に関し200万円,土地家屋の汚染に関し200万円)の一部である300万円
弁護士費用
2
30万円

認定事実(甲B52~B52の7,原告番号52本人)
本件事故当時の世帯の概要等
原告番号52(以下,同原告を主語とする場合は主語を省略する。)は,56歳の女性であり,福島市(自主的避難等対象区域)の自宅で,長男家族(長男,
外国人の嫁及び孫ら
(4歳と1歳)及び二男と6人で住んでいた。

本件事故後の生活状況等

本件事故直後,外出しており,被ばくの不安がある。長男家族は,平成23年4月,妻の本国であるフィリピンに帰国した。長男は,同年6月,単身で帰国し,東京で生活した。長男の妻と二人の孫は,同年10月,日本に戻り,長男家族は,宮城県の借り上げ住宅に入居した。その後,長男夫婦は離婚し,離婚した妻と孫はフィリピンに帰国した。本件事故前,福島の果物を友人に贈っていたが,本件事故後,事前に贈ってもよいか確認している。本件事故後,ガーデニングをやめた。二男は,本件事故後,仕事の関係で福島県外に転居した。ホールボディカウンター検査の結果は不検出であった。3
被告の既払金(乙B52の1)
直接請求手続

包括慰謝料として8万円,生活費増加等の追加的費用として4万円。

原告番号52を含む世帯全体に対する合計額は,24万円。
ADR和解
なし。

4
精神的損害(慰謝料)
上記2の認定事実によれば,原告番号52は,本件事故後,生活の本拠のある福島市から避難しなかったところ,本件事故と相当因果関係があると認められる平成23年12月31日までの期間に被った精神的苦痛について,本件に係る一切の事情を考慮し,上記期間中の生活費の増加費用が生じたことを斟酌した上で,同原告の慰謝料を30万円と認める。
原告番号52の主張(別紙6-52)について

5
財産的損害
請求していない。

6
弁済の抗弁

前記第2章第4(弁済の抗弁)の1のとおり,原告番号52については,上
7
清算合意の抗弁
なし。

8
損害額
慰謝料

22万円(=30万円-8万円)

弁護士費用
9
2万2000円

まとめ
以上によれば,認容額(元金)は,別紙3認容額等一覧表(原告番号52)の認容額欄(合計)記載のとおりである。

第4章

結論

よって,
原告番号33及び34の請求は,
理由がないからいずれも全部を棄却し,
その余の原告らの請求は,主文掲記の限度で理由があるから,いずれも一部を認容し,
その余の請求は理由がないからいずれも棄却し,
訴訟費用につき民訴法61条,
64条本文及び65条1項本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を,仮執行免脱宣言につき同条3項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。福島地方裁判所第一民事部

裁判長裁判官

遠藤東路
裁判官

工藤哲郎
裁判官

奥山拓哉
別紙1(原告一覧表)
別紙2(被告代理人目録)
別紙6(原告らの主張(損害各論))
別紙7(原告番号8の財産的損害に関する主張)
(いずれも省略)

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