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不法行為による損害賠償請求事件
事件番号平成31(受)606
事件名不法行為による損害賠償請求事件
裁判年月日令和2年4月7日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成29(ネ)5580
原審裁判年月日平成30年9月27日
判示事項強制執行の申立てをした債権者が債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されない
裁判日:西暦2020-04-07
情報公開日2020-04-07 16:00:05
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平成31年(受)第606号不法行為による損害賠償請求事件
令和2年4月7日第三小法廷判決

主1文
原判決中,上告人ら敗訴部分のうち,上告人らに対
し177万4568円及びこれに対する平成26年
4月23日から支払済みまで年5分の割合による金
員の連帯支払を求める請求に関する部分を破棄する。

2(1)前項の部分のうち,上告人らに対し177万45
68円の連帯支払を求める請求に関する部分につ
いて,第1審判決を取り消し,被上告人の請求を
いずれも棄却する。
(2)第1項の部分のうち,上告人らに対し177万4
568円に対する平成26年4月23日から支払
済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求
める請求に関する部分について,被上告人の請求
をいずれも棄却する。
3
上告人らのその余の上告を棄却する。

4
訴訟の総費用はこれを2分し,その1を上告人らの
負担とし,その余を被上告人の負担とする。
理由
上告代理人遠藤直哉ほかの上告受理申立て理由第4について
1
被上告人は,上告人らに対して第1審判決別紙物件目録記載3の建物の一部
(以下本件建物部分という。)の明渡しを命ずる仮執行の宣言を付した判決に基づく強制執行について,民事執行法42条1項に規定する強制執行の費用で必要なものに当たる合計161万3244円の費用(以下本件執行費用という。)を支出した。本件は,被上告人が,本件執行費用を上告人らによる本件建物部分の占有に係る共同不法行為による損害として主張して,上告人らに対し,不法行為に基づき,上記161万3244円及びこの請求に係る弁護士費用相当額16万1324円の合計177万4568円並びにこれに対する遅延損害金の連帯支払等を求める事案である。
2
原審は,被上告人の上記の主張に理由があると判断して,上記連帯支払を求
める請求を認容すべきものとした。
3
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は次の
とおりである。
民事執行法は,強制執行の費用で必要なものを債務者の負担とする旨を定め(42条1項),このうち同条2項の規定により執行手続において同時に取り立てられたもの以外の費用については,その額を定める執行裁判所の裁判所書記官の処分(以下費用額確定処分という。)を経て,強制執行により取り立て得ることとしている(同条4項ないし8項,22条4号の2)。また,同法42条1項にいう強制執行の費用の範囲は,民事訴訟費用等に関する法律(以下費用法という。)2条各号においてその費目を掲げるものとされ,その額は,同条各号に定めるところによるとされている。
このように,費用法2条が法令の規定により民事執行手続を含む民事訴訟等の手続の当事者等が負担すべき当該手続の費用の費目及び額を法定しているのは,当該手続に一般的に必要と考えられるものを定型的,画一的に定めることにより,当該手続の当事者等に予測できない負担が生ずること等を防ぐとともに,当該費用の額を容易に確定することを可能とし,民事執行法等が費用額確定処分等により当該費用を簡易迅速に取り立て得るものとしていることとあいまって,適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たものと解される。そうすると,強制執行においてその申立てをした債権者が当該強制執行に要した費用のうち費用法2条各号に掲げられた費目のものについては,民事執行法42条2項により債務者から執行手続において取り立てるほかは専ら費用額確定処分を経て取り立てることが予定されているというべきであって,これを当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張し得るとすることは上記趣旨を損なうこととなる。
したがって,強制執行の申立てをした債権者が,当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において,当該強制執行に要した費用のうち費用法2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されないと解するのが相当である。
本件執行費用は,費用法2条各号に掲げられた費目の費用に該当するから,上告人らに対する不法行為に基づく損害賠償請求においてこれを損害とする被上告人の主張は許されず,当該主張に理由があるとした原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。4
以上によれば,原判決中,上告人ら敗訴部分のうち,上告人らに対し161
万3244円(本件執行費用)及びこの請求に係る弁護士費用相当額16万1324円の合計177万4568円並びにこれに対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める請求に関する部分は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,上記部分に関する被上告人の請求は理由がないから,このうち,上記177万4568円の連帯支払を求める請求に関する部分については,第1審判決を取り消し,被上告人の請求をいずれも棄却し,原審における追加請求である上記177万4568円に対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める請求に関する部分については,被上告人の請求をいずれも棄却すべきである。なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官宇賀克也の補足意見がある。裁判官宇賀克也の補足意見は,次のとおりである。私は,法廷意見に賛成するものであるが,その理由について敷衍しておきたい。民事執行法42条4項以下に定める執行費用額確定手続は,裁判所書記官が費用法2条各号所定の費用の額のみを計算して債務名義とするものであり,訴訟手続と比較して簡易迅速であり,かつ申立手数料も不要とされている。
しかし,一般に,簡易迅速な特別手続が法定されている場合,それが専ら私人の便宜のみを念頭に置いたものであれば,当該特別手続を利用するか,通常の手続を利用するかを私人の選択に委ねることを否定することはできないと思われる。たとえば,登録免許税法31条2項は,登録免許税の過誤納があるとき,その旨を登記機関に申し出て,当該過大に納付した登録免許税の額を登記機関が所轄税務署長に通知すべき旨を登記等を受けた者が請求することを認めている。最高裁平成13年(行ヒ)第25号同17年4月14日第一小法廷判決・民集59巻3号491頁は,これと同趣旨の規定である平成14年法律第152号による改正前の登録免許税法31条2項について,登記等を受ける者が職権で行われる上記の通知の手続を利用して簡易迅速に過誤納金の還付を受けることができるようにしたものであり,登録免許税の還付を請求するのは専ら同項所定の手続によらなければならないこととする手続の排他性を定めるものということはできないと判示している。したがって,簡易迅速な特別手続の排他性を認めるためには,当該手続が単にその手続の利用者の便宜を図るにとどまらず,当該手続の利用に公益性を認めて,当該手続を排他的なものとする趣旨であるかを検討する必要がある。
費用法2条は,民事執行法42条4項以下に定める執行費用額確定手続,民事訴訟法71条が定める訴訟費用額確定手続等とあいまって,償還請求が可能な費用を当該訴訟等の手続により生じた一切の費用とせず,一般にそれらの手続において必要とされる類型の行為に要した費用を公平に当事者双方に負担させることにより,当事者が訴訟制度等を躊躇なく利用し,適正な立証活動等を可能にすることを意図したものといえる。したがって,それは,裁判を受ける権利を実効的なものとするという意味において,司法制度の基盤の一環をなすものといえ,公益性を認めることができ,手続の排他性を認めることが正当化されると考えられる。(裁判長裁判官
宇賀克也

宮崎裕子

裁判官


裁判官

戸倉三郎

道晴)
裁判官


景一

裁判官

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