判例検索β > 平成28年(ワ)第965号
損害賠償等請求事件
事件番号平成28(ワ)965
事件名損害賠償等請求事件
裁判年月日令和2年1月31日
裁判所名・部東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-01-31
情報公開日2020-06-04 22:29:17
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令和2年1月31日判決言渡

同日原本領収

平成28年(ワ)第965号

損害賠償等請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

令和元年10月1日
判決1
被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3は,原告A1に対し,連帯して,1200万円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3は,原告A2に対し,連帯して,750万円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3は,原告A3に対し,連帯して,1100万円及びこれに対する被告B1については平成28年1
月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3は,原告会社に対し,連帯して,1500万円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで
年5分の割合による金員を支払え。
5
原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

6
訴訟費用は,原告A1と被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3との間では,これを10分し,その9を原告A1の負担とし,その余を被
告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3の負担とし,原告A1とその余の被告らとの間では,
全て原告A1の負担とし,
原告A2と被告JBC,
被告B1,被告B2及び被告B3との間では,これを10分し,その9を原告A2の負担とし,その余を被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3の負担とし,原告A2とその余の被告らとの間では,全て原告A2の負担とし,原告A3と被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3との間では,これを10分し,その9を原告A3の負担とし,その余を被告J
BC,被告B1,被告B2及び被告B3の負担とし,原告A3とその余の被告らとの間では,全て原告A3の負担とし,原告会社と被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3との間では,これを23分し,その22を原告会社の負担とし,その余を被告JBC,被告B1,被告B2及び被告B3の負担とし,原告会社とその余の被告らとの間では,全て原告会社の
負担とする。
7
この判決は,第1項から第4項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
請求
被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3は,原告A1に対し,連帯して(被告B6と第2項,被告B7と第3項,被告B8と第4項の各範囲で連帯して),1億1615万8904円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告B6は,原告A1に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,5807万9452円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
被告B7は,原告A1に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2903万9726円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
被告B8は,原告A1に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2903万9726円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。5
被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3は,原告A2に対し,連帯して(被告B6と第6項,被告B7と第7項,被告B8と第8項の各範囲で連帯して),8055万8904円及びこれに対する被告B
1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6
被告B6は,原告A2に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,4027万9452円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7
被告B7は,原告A2に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2013万9726円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8
被告B8は,原告A2に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2013万9726円及びこれに対する平
成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。9
被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3は,原告A3に対し,連帯して(被告B6と第10項,被告B7と第11項,被告B8と第12項の各範囲で連帯して),1億1900万円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月3
0日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10

被告B6は,原告A3に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,5950万円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

11

被告B7は,原告A3に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2975万円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
12

被告B8は,原告A3に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,2975万円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

13

被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3は,原告会社に対し,連帯して(被告B6と第14項,被告B7と第15項,被告B8と第16項の各範囲で連帯して),3億4834万7404円及びこれに対する被告B1については平成28年1月31日から,その余の被告らについては同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
14

被告B6は,原告会社に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,1億7417万3702円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
15

被告B7は,原告会社に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,8708万6851円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
16

被告B8は,原告会社に対し,被告JBC,被告B1,被告B2,被告B4,被告B5及び被告B3と連帯して,8708万6851円及びこれに対する平成28年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
事案の概要
本件は,元プロボクサーである原告A1,原告A2,現役プロボクサーである原告A3(以下,原告A1,原告A2及び原告A3を併せて原告3選手という。及び原告3選手によるプロボクシングの試合を興行する原告会社が,)
被告JBCにより原告3選手の所属していたプロボクシングジムであるCジムの会長のクラブオーナーライセンス及びプロモーターライセンス並びに同ジム
のマネージャーのマネージャーライセンスについての更新を不許可とする違法な処分が行われたことにより,原告3選手が日本国内でプロボクシングの試合を行うことができなくなり,原告3選手のファイトマネーや原告会社の興行収入が得られなくなるなどの損害を被ったと主張して,被告JBC及び被告B2について,不法行為又は共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告B1について,
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(以下
一般法人法
という。)198条が準用する同法117条1項が規定する理事らの第三者に
対する責任(以下理事の第三者責任という。)に係る損害賠償請求権又は不法行為若しくは共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,その余の被告らについて,理事の第三者責任に係る損害賠償請求権又は共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,連帯して(ただし,亡D訴訟承継人らの間では相続割合に応じた分割債務),原告A1について1億1615万8
904円,原告A2について8055万8904円,原告A3について1億1900万円,原告会社について3億4834万7404円及びこれらに対する各被告らに対する訴状送達の日の翌日(被告B1については平成28年1月31日,その余の被告らについては同月30日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

1
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(証拠に枝番がある場合,特に枝番号を掲記しないときは全ての枝番を含む。以下この判決において同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)


当事者

原告3選手は,いずれも,Eが会長を務め,F(以下EとFを併せてEらという。がマネージャーを務めるCジムに所属するプロボクサーであ)
った者である。
原告3選手は,被告JBCが,平成26年2月7日,Eのクラブオーナーライセンス及びプロモーターライセンス並びにFのマネージャーライセ
ンスについて平成26年への更新を許可しない旨の決定
(以下
本件処分
という。をするまで,

被告JBCが発行するボクサーライセンスを保有し
プロボクサーとして日本で活動していた。
原告A1は平成27年10月に,原告A2は同年9月にプロボクサーを引退したが,原告A3は,現在,協栄ボクシングジムに所属し,現役のプロボクサーとして活動している。

原告会社は,原告3選手によるプロボクシングの試合を興行として実施すること等を業とする株式会社である。


被告JBCは,日本におけるプロボクシングを管理・運営し,健全なプロボクシングの発展を図るとともに,ボクシングを通じて日本のスポーツの発展と国際親善に寄与することを目的とし,日本国内のプロボクシングを統括するために設立された一般財団法人であり,日本国内において行わ
れる全てのプロボクシングの試合を管轄している。被告JBCの管轄下で行われる全てのプロボクシングの試合は,被告JBCが定める財団法人日本ボクシングコミッション試合ルール(甲1,以下試合ルールとい
う。
)に基づいて管理,運営され,被告JBCの事務局長は被告JBCの管轄下で行われるプロボクシングの試合を指揮,監督することとされている
(試合ルール4条)

被告JBCは,
日本国内のボクサーランキングの決定,
発表やボクサー,
トレーナー,セコンド,マネージャー,プロモーター,クラブオーナー等の各種ライセンスの交付や更新等の業務を行っている(甲1)


被告B1は,被告JBCの理事長であり,本件処分を決定した被告JBCの資格審査委員会兼倫理委員会(以下本件委員会という。
)の委員長
を務めていた者である(甲2)



被告B2は,本件委員会の委員を務め,本件処分当時,被告JBCの事務局長代行も務めていた者である。


Dは,本件処分当時,被告JBCの会長(代表権を持つ理事の地位も兼ねる。
)を務めていた者であるが(甲2,3)
,業務執行には携わらないい
わゆる非執行理事であった。
Dは,本件訴訟の係属中である平成29年5月17日に死亡し,Dの妻である被告B6,Dの子である被告B7及び被告B8(以下,三者併せてD承継人という。
)がDの訴訟上の地位を承継した。

被告B3は,本件処分当時,被告JBCの事務局長として業務の執行に当たるとともに,被告JBCの理事を務めていた者である(甲2)。


被告B4及び被告B5は,本件処分当時,被告JBCの理事を務めていた者であり
(甲2)業務執行には携わらないいわゆる非執行理事であった。



被告JBCの組織

被告JBCは,5名以上8名以内の評議員(定款(甲3)11条1項)で構成される評議員会を設置している(定款15条)。評議員は無報酬である。評議員会は,理事及び監事を選任及び解任し(定款16条1号),計算書類を承認するほか定款を変更し,基本財産・残余財産を処分し,事業の譲渡又は廃止などを決議する権限を有する(定款16条3号~7号)。被告JBCは,8名以上12名以内の理事及び2名以内の監事を置き,理
事のうち,代表理事が会長1名及び理事長1名の2名であり,その他の理事から2名以上が業務執行理事に選定される(定款25条1項,2項)。イ
理事長は,理事会の決議により選任され(定款36条1項1号),被告JBCの業務を統括し,被告JBCを代表する(定款27条3項)。業務執行理事は,理事長を補佐し,被告JBCの業務を執行する(定款
27条4項)。
理事は,無報酬であるが,常勤の理事及び監事に対しては,評議員会の定めに従って報酬を支給することができる(定款31条ただし書)。ウ
被告JBCは,事務を処理するための事務局を設置しており,その構成員は事務局長及び事務局の職員13名であり,有給である(定款47条1項,6項)。

被告JBCは,事業を円滑に遂行するため,ランキング委員会,選手権委員会,渉外・苦情処理委員会,健康管理委員会,審判委員会,総務・財務委員会,倫理委員会,資格審査委員会及びサポート委員会を設置することができる(定款46条1項)。
各委員会の委員長及び委員は,理事,学識経験者その他この法人の業務
を遂行するため適当と認められる者の中から理事長が委嘱し,その旨を理事会に報告する(定款46条2項)。
各委員会は,いずれも会長,理事長及び委員長の指揮監督の下に活動する(定款46条3項)


被告JBCの定めるライセンスに関する規定等
被告JBCは,日本国内において行われる全てのプロボクシングの試合を
統括しているため,日本国内のプロボクシングジム及びプロボクシングの選手が被告JBCの関与なく国内でプロボクシングの試合を行うことは,事実上不可能である。そのため,プロボクシングジム及びプロボクシングの選手が日本国内においてプロボクシングの試合を行うためには,選手が所属するジムの会長が被告JBCの発行するクラブオーナーライセンスを保有することを前提に,選手も当該ジムを通じて被告JBCに対してボクサーライセンスの発行を申請し,その交付を受けることが必要となる。
被告JBCは,ライセンスの得喪や更新,懲罰等に関し,試合ルールの他
に,
財団法人日本ボクシングコミッション倫理規程
(以下倫理規程と
いう。,

財団法人日本ボクシングコミッション懲罰規程
(以下
懲罰規程
という。,
)財団法人日本ボクシングコミッション資格審査委員会規則
(以
下資格審査委員会規則という。
)等を定めており,これらの規程等には,
以下の定めがある(甲1)



被告JBCのライセンスを所持していない者は,被告JBCの管轄下で行われるプロボクシングの試合(公式試合場におけるスパーリング及び慈善試合を含む。)に関与することができない(試合ルール6条)。イ
すべてのライセンスの有効期間は,1月1日から12月31日までの1年間である。ライセンスの次年度の更新は,特別の事情のない限り,許可される。(試合ルール11条1項,3項)


被告JBCは,ライセンス所持者について試合ルール又は倫理規程に違反する行為があったと認めるときは,所定の手続を経て,懲罰処分等の必要な措置を講ずることができる(試合ルール12条)。


被告JBCの本部事務局は,ボクサーについて健康管理上の問題があると判断した場合には,資格審査委員会に対し,当該ボクサーに対するライセンス更新の不許可又はライセンス取消し等に関する審議を要請すること
ができる(試合ルール19条)。

マネージャーは,マネージメント契約をしているボクサー(以下契約ボクサーという。)の利益を守るため,次の各号に定める責務を負う(試合ルール34条)。
1
契約ボクサーに適当なるトレーニング施設を用意すること

2
契約ボクサーのトレーニングを監督すること

3
契約ボクサーの健康を管理すること

4
契約ボクサーの収入を確保するために,相当数の試合に出場させること5
契約ボクサーが試合に出場するとき及びファイトマネーを受け取るときは,これに立会うこと

6
契約ボクサーが負傷又は疾病の場合には,試合日の24時間前までにプロモーター及びJBCに対して報告すること


ライセンス所持者は,ボクシング関係者としての名誉を重んじ,品位を高めボクシング界の信頼を維持するように努めなければならず,社会秩序を乱す行動や社会から非難される行動をしてはならない(倫理規程2条,3条)。

ボクサー以外のボクシング関係者に対する懲罰処分の種類は,
厳重注意,
戒告,罰金,没収,ライセンスの停止及びライセンスの取消しとする(懲罰規程2条2項)。


本部事務局は,ライセンス所持者が次の各号のいずれかに該当する行為を行った場合,迅速にその事実関係を調査し,懲罰等に関する意見を附して倫理委員会に審議を要請する(懲罰規程3条)。
12
本部事務局の指示命令に従わなかったとき

3
ボクシング界の秩序,風紀を乱したとき

4
刑罰法規に抵触する行為を行ったとき

5
試合ルールに違反したとき

方法の如何を問わず公式試合の結果に影響を及ぼす恐れのある不正行為に関与したと認められたとき


倫理委員会は,本部事務局の要請に基づき,事案を審議し,その議決により懲罰規程2条に定める懲罰処分をすることができる。懲罰処分をする
にあたっては,調査期日において処分対象者に対して意見を述べる機会を与えた後でなければ罰金以上の処分をすることはできない。(懲罰規程5条,6条)

倫理委員会は,調査期日を定めたときは,その期日の14日前までに,処分対象者に対し,調査期日の日時及び場所,処分の原因となる事実,調
査期日に出席して意見等を述べることができることを通知しなければならない(懲罰規程7条)。

懲罰処分を受けた当事者は,十分な反証を有する場合に限り,本部事務局へ再審議を請求することができる(懲罰規程11条)。


資格審査委員会は,ライセンスの申請をする者について,健康管理上の支障がある者,許可なく他のプロスポーツに関与又は従事している者,暴力団関係者,その他ライセンスを交付される資格に欠けると認められる者に該当すると認めるときは,ライセンスの申請を却下する(資格審査委員会規則2条)。
資格審査委員会は,本部事務局の要請に基づき,事案を審議し,ライセンス所持者について健康管理上の支障があると認めるときは,その議決に
より,ライセンス所持者に対して,ライセンス更新の不許可,ライセンスの停止,ライセンスの取消し,引退勧告の各処分をすることができる(資格審査委員会規則4条)。これらの処分をするにあたっては,調査期日を定めて処分対象者に対し意見陳述の機会を与えなければならず,調査期日を定めたときは,調査期日の14日前までに,処分対象者に対し,調査の
期日及び場所,処分の原因となる事実,調査期日に出席して意見等を述べることができることを通知しなければならない
(資格審査委員会規則4条,
5条)。
処分を受けた当事者は,十分な反証を有する場合に限り,本部事務局へ再審議を請求することができる(資格審査委員会規則8条)。



Cジムによる世界タイトルマッチの開催

平成25年12月3日,大阪市内に所在するボディーメーカーコロシアムにおいて,国際ボクシング連盟(以下IBFという。
)のスーパーフ
ライ級王座(以下IBF王座という。
)の保持者であった原告A2と,
ベネズエラ出身のプロボクサーであり,世界ボクシング協会(以下WBAという。)のスーパーフライ級王座(以下WBA王座という。
)の
保持者であったGのプロボクシングの世界タイトルマッチ(以下本件試合という。)が,Cジムの主催により開催されることとなった。本件試合
は,IBF王座とWBA王座の2団体王座統一戦(本件試合の勝者が両団体の王座の保持者となる試合)として開催される予定であった。
(乙6)


Gは,本件試合の前日である同月2日に行われた計量において,スーパーフライ級の規定体重をオーバーし,計量失格となり,この時点でWBA王座を剥奪された。

Gの計量失格により,同日に行われた本件試合に適用されるルールを確認するためのルールミーティング(以下本件ルールミーティングという。において,

原告A2が本件試合に勝利した場合にはIBF王座とWB

A王座の2団体統一王者となり,原告A2が本件試合に敗れた場合にはWBA王座は空位となることが確認され,原告A2が敗戦した場合のIBF王座の帰趨についても確認された(もっとも,その内容については争いがある。。


IBFのルールブック(英語版。以下IBFルールブックという。)
にはチャンピオンが計量に成功し,挑戦者がこれに失敗した場合,その試合は,勝敗に関わらずチャンピオンがそのタイトルを保持するという了解の下で行うことができる旨の記載がある(甲5。以下,原告A2が本件試合に敗れた場合にもIBF王座を保持するとする見解を保持説という。)。

他方,試合ルール78条3項には,
タイトルマッチにおいて,チャンピオンが正規ウエイトで,挑戦者がオーバーウエイトの場合,チャンピオンは,当該試合をタイトルマッチとして行うか否かを選択することができる。チャンピオンが当該試合をタイトルマッチとして行うことを選択し,当該試合に勝った場合,タイトルを防衛したものとみなす。チャンピオンが当該試合をタイトルマッチとして行うことを選択し,当該試合に負けた場合,タイトルは空位となる。旨の記載がある(甲1。以下,原告A2が本件試合に敗れた場合にIBF王座が空位になるとする見解を
空位説
という。。

なお,WBAルールも保持説を採用している(甲23)

IBFのスーパーバイザーであるHは,同日の本件ルールミーティング終了後,WBAのスーパーバイザーであるI及び被告B3と共に記者会見を行い,原告A2が本件試合に敗れた場合のIBF王座の帰趨について記者から尋ねられ,
IBFtitleisvacant
(IBF王座は空位になる)との
発言をした。これを受けて,報道各社は,空位説を内容とする報道を行った(甲6,乙7)


原告A2は,同日午後7時頃,Gが勝利した場合にはIBF王座とWBA王座の両王座が空位になる旨を自身のブログに掲載し,CジムのスタッフもCジムのブログに同様のことを掲載した(乙10~13)



同月3日午後10時20分頃,本件試合が終了し,原告A2は2-1の判定により敗戦した。リングアナウンサーであるJは,本件試合の判定がアナウンスされた直後に,ChampionretainstheIBFworldtitle(チャンピオンはIBFタイトルを保持する)との保持説を前提とした英語によるリングアナウンスを行った。他方で,被告JBCにおける公式のリングアナウンサーであるKは,その直後に

G選手が勝ちましたので,IBF並びにWBAスーパーフライ級王座は空位になります。

との空位説を前提とした日本語によるリングアナウンスを行った(甲8)。


F及びHは,同日午後10時30分頃,本件試合の会場において記者会見を開いた。Hは,同記者会見において,前日の空位説の説明を撤回して謝罪し,正しくは保持説である旨説明した。Fは,IBF王座の帰趨に関するルールに関して,空位説を前提とする現在の報道が誤りであり,正しくは保持説である旨の発表をした(以下本件訂正記者会見という。甲
9)。

Fは,本件試合の翌日の同月4日,本件試合とは無関係の原告A3に関する記者会見を行った後,毎日新聞,日本経済新聞,スポーツニッポン,東京新聞ら報道各社から質問を受け,これに応じる形で,本件ルールミー
ティングにおいて保持説が確認された旨,原告A2自身も本件試合前に保持説であることを認識していた旨回答した。コ

本件試合のIBF王座の帰趨について,保持説・空位説いずれのルールが採用されたのか不明確であったことから,
同月4日の朝刊,
同日の夕刊,
同月5日の朝刊等で,被告JBCに対する批判的な報道が行われた(甲10,35,乙8,9,15,19)




本件委員会による調査

被告JBCは,Eらの本件試合をめぐる対応に対する処分及びライセンス更新の許否を判断するため,倫理委員会及び資格審査委員会を統合する形で1つの委員会として本件委員会を設置し,Eらに対し,資格審査委員会規則5条1項及び懲罰規程7条1項に基づき,平成25年12月24日付けで,調査期日を開催する旨の通知書(甲11)を発し,この頃,Eら
は同通知書を受け取った。
上記通知書には,懲罰規程7条1項及び資格審査委員会規則5条1項に基づき,
調査対象である処分の原因となる事実について,
①本件ルールミーティングにおいて,本件試合においては,原告A2が敗戦すればIBF王座は空位になると決定され,本件ルールミーティング直後においてIBF,WBA及びJBCの三者が共同して記者会見を行い,当該決定内容を公表し,本件試合はかかるルールに従って開催されたところ,原告A2が敗れるや,Fはマスコミの取材に対し,本件ルールミーティングにおいて決定したルールとは異なるルール(IBF及びWBAルール)によって支配されるべきであると発表した。②EはCジムの会長兼プロモーターとしてFを管理監督すべき責任があるところこれを怠った。③上記のF及びEの各行為は,JBCの信用を毀損し,もしくはボクシング界の秩序を乱すものと思料する。と記載されている(甲11)。

本件委員会は,法務アドバイザーとして被告ら代理人である堤淳一弁護士,石田茂弁護士及び谷口好幸弁護士(以下,単に法務アドバイザーという。を選任するとともに,平成26年1月10日,

調査期日を開き,Eらに対する審問を行った(甲14,乙16)


本件処分
本件委員会は,平成26年2月7日,原告3選手が所属するプロボクシングジムであるCジムの会長を務めるEのクラブオーナーライセンス及びプロモーターライセンスについて,①本件試合についてほとんどライセンス保
持者としての実務に携わっていなかったこと,②Fに対する監督責任を尽くさなかったこと,③Fが報道関係者の取材に応じているのを制止せずに被告JBCの損害の発生に寄与したこと,④本件試合に関する報道に一切接しなかったことを理由に,Eがクラブオーナー及びプロモーターとしての適格性を欠くとして,更新を不許可とする旨の決定を行い,また,同ジムのマネー
ジャーを務めるFのマネージャーライセンスについて,①原告A2にとって最も利害関係が大きい王座の帰趨について無関心であったこと(試合ルール34条違反)
,②マスコミ対策ありきとばかりに安易に新聞記者の取材の機会を設け,新聞紙上等に本件ルールミーティングにおいて原告A2が敗れても王座を維持する旨の説明を受けたなどと報道がされたことにより混乱
を生じさせ,被告JBCの信用毀損を招いたこと(懲罰規程3条2号違反)を理由に,Fがマネージャーとしての適格性を欠くとして,更新を不許可とする旨の決定を行った(甲4)


本件処分後の経過

Eらは,平成26年2月11日付けで,被告JBCに対し,再審議申請書を提出し,本件処分に関し再審議の請求をした。


平成26年2月25日,被告JBCの理事会が開催され,本件委員会の委員長である被告B1により本件処分に関する報告がされた(丙3)。


ボクシングジムの会長で組織する日本プロボクシング協会の一組織である東日本ボクシング協会は,平成26年4月21日,Eがオーナーとしての職務を果たさなかったなどとして,同人を同協会から除名処分とした(甲52,乙5)。

本件委員会は,平成26年4月25日,Eらによる再審議の請求を棄却する旨の決定を行い,同日,理事長あてに答申を行った。

2
争点


被告B1の責任(争点2)



被告B2の責任(争点3)



被告B3の責任(争点4)



Dの責任(争点5)



被告B4及び被告B5の責任(争点6)



原告らの損害及びその額並びに因果関係(争点7)



本件処分の違法性及び被告JBCの責任(争点1)



過失相殺の成否(争点8)

3
争点に関する当事者の主張


本件処分の違法性及び被告JBCの責任(争点1)

(原告らの主張)

本件処分は,以下のとおり,処分理由の重要な部分が前提を欠くか,社会通念上著しく妥当性を欠き,かつ重大な手続違反があるから,違法であり,このような処分を行った被告JBCは,原告らに対し不法行為責任を負う。

本件処分の理由の重要部分が前提を欠くこと
本件ルールミーティングにおいて,保持説が明記されたIBFルールブックが出席者に配布され,被告JBCの事務局長である被告B3を含む出席者がこれに署名し,Hが本件試合にはIBFルールが適用される旨説明したこと等に照らせば,本件ルールミーティングにおいて保持説
が採用されたことは明らかであるにもかかわらず,本件処分は,空位説を前提として行われたものであるから,理由の重要部分の前提を欠くものであって,違法である。本件処分が著しく妥当性を欠くこと
試合ルールは被告JBCが交付するライセンスの更新について,ライセンスの翌年への更新は,特別の事情のない限り,許可される(試合ルール11条3項)と定めていることから,被告JBCはライセンスの更新申請を原則として許可することを前提としており,例外的に特別の事情が認められるときに限り更新を不許可とすることができる。被告JBCは前記特別の事情の具体例を規定していないが,被告
JBCがライセンスの申請に対する却下の具体例として,健康管理上の支障がある者,他のプロスポーツに関与又は従事している者,暴力団等関係者に該当する者を列挙していることから(資格審査委員会規則第2条),ライセンス更新不許可の判断においてもこれらと同等の事情が要求される。
本件処分の基礎となった事実は,①Fが本件試合の直後に被告JBC
に事前相談することなくHによる会見を開いたこと,②Fが本件試合の翌日に被告JBCに事前相談することなく記者会見を行ったこと,③Fが本件ルールミーティングの終了後から本件試合が開始されるまでの間に空位説を前提とするマスコミ報道やCジムの関係者のブログに気付かなかったことであると考えられるが,以下のとおり,本件処分を正当化
する事情とはいえず,
本件処分は,
社会通念上著しく妥当性を欠くから,
被告JBCの裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してなされたものとして,違法である。
a
Fは,本件試合の直後に自身が認識していた保持説ではなく,空位説を前提とする日本語のリングアナウンスを聞いて驚き,更にその直
後,前記アナウンスと同様の空位説を前提とする報道がされていることを知り,報道を訂正する必要があると考えてHによる会見を開いたのであり,原告A2の利益を考える立場にあるマネージャーとして当然の行動である。Fは,本件ルールミーティングに出席した被告JBCも当然ながら自身と同じ保持説の認識を持っていると考え,F自身が本件ルールミーティングで確認されたと認識していた保持説を発表することに被告JBCが異議を唱えることなど想像もしなかったので
あり,被告JBCと事前相談をする時間的余裕もなかったから,被告JBCに事前確認をする義務があったとはいえない。したがって,Fが本件試合の直後に被告JBCに事前相談することなく本件訂正記者会見を行ったことは,本件処分を根拠づける理由とはならない。
b
Fは,平成25年12月4日の記者会見の際,本件ルールミーティングに出席した被告JBCも自身と同じ保持説の認識を有しているはずであると考えていたことから,会見を一旦打ち切った上で記者の質問に対して自身が認識する事実を述べただけであり,このような場合に被告JBCの事前了承を得なければならない理由はなく,そのような試合ルール等の規定も存在しない。したがって,Fが本件試合の翌
日に被告JBCに事前相談することなく記者会見を行ったことは,本件処分を根拠づける理由とはならない。
c
本件試合当日には世界戦3試合を含む7試合が行われ,試合数が多く注目度の高い興行であったこと,Gが計量に失格するという事態が
重なり,本件試合に向けた準備や多くの外国人関係者の対応に追われて多忙であったことから,Fは,テレビや新聞を見る時間的な余裕はなく,本件試合が開始されるまで,空位説を前提とするマスコミ報道やCジム関係者のブログの存在に全く気が付かず,IBF王座の帰趨という極めて重大な事柄について,自己の認識と異なる空位説の報道
がなされている等とは全く考えていなかった。また,Fは,本件ルールミーティングに出席し,保持説であることを含む本件試合に関するルールを十分に把握していたことから,マスコミ報道等から情報を得る必要はなく,試合の準備に優先してマスコミ報道やブログの内容を気に掛ける必要性は全くなかった。したがって,Fが本件ルールミーティングの終了後から本件試合が開始されるまでの間に空位説を前提とするマスコミ報道やブログに気付かなかったことは,本件処分を根
拠づける理由とはならない。
本件処分に重大な手続違反があること
a
被告JBCは,本件処分において,①Eらが被告JBCに提出した重要な客観的証拠及び主張書面を,被告B1及び被告B2を除く本件委員会の構成員に対して配布せず,その結果,本件委員会は,Eらの
反論資料を検討しなかった,②Eらが提出した重要な証拠である報告書(甲40)に対する反論及び反証を何ら示すことなく,本件処分の2日前の夜に,前記報告書に対する弾劾証拠(甲42)を開示し,これに対するEらの反論の機会を与えなかった,③本件ルールミーティングにおいて保持説と空位説のいずれが採用されたかという重要な問
題について,H,Iその他本件ルールミーティングに出席していた第三者に対する聴取を意図的にしなかったという重大な手続違反をしているから,本件処分は違法である。
b
調査期日の通知書には処分の原因となる事実を記載しなければ
ならないところ
(懲罰規程7条1項,
資格審査委員会規則5条1項)

被告JBCは,Eらに対し,平成25年12月24日付けの本件委員会の調査期日を開催する旨の通知書において,処分の原因となる事実を告知したが,これは本件処分の理由とは異なるものであり,本件処分の理由となった事実はEらに一切通知されていない。したがって,
本件処分は,Eらにとって不意打ち的なものであるから,重大な手続違反があり違法である。イ

法務アドバイザー
本件委員会において,法務アドバイザーが本件処分の判断自体について助言した事実はなく,
本件委員会の意向に沿って協力したにすぎないから,
法務アドバイザーとして弁護士が関与していたことは,被告らの故意又は重大な過失を否定するものではない。

(被告らの主張)

本件処分の内容が妥当であること
試合ルール11条3項は,被告JBCのライセンス所持者について,ライセンス更新を認めるべきでない
特別の事情
が存在する場合には,

更新不許可の処分を行うことを定めており,ライセンスは1年ごとに更新の許否が審査される。ライセンス更新の許否の審査においては,ライセンス取得時における事項も審査されなければならず,被告JBCの資格審査委員会は,特別の事情の有無,すなわち,ライセンス所持者としての資質(一般的適格性)の有無について審査することができる。
資格審査委員会規則2条の反対解釈により,ライセンスを交付される資格としての適格性が要求されること,懲罰規程3条において,ライセンス所持者が,試合ルールに違反したとき,JBC本部事務局の指示命令に従わなかったとき(被告JBCの利益を害してならないことは当然に含む),ボクシング界の秩序及び風紀を乱したときには,懲罰処分等
を受ける可能性があること,ライセンス所持者は被告JBCが定めるルール及びこれに付随する諸規定を遵守する義務を負うこと,被告JBCの組織目標等を考慮すれば,ライセンス所持者の資質(一般的適格性)は,①被告JBCについて正しい理解を持つこと,②被告JBCを尊重し,被告JBCの利益を害してはならないこと,③ボクシング界の秩序
を乱さないこと,④試合ルールその他被告JBCが定める諸規定に従うことである。資格審査委員会規則4条が規定する健康管理上の支障は,単なる例示にすぎず,被告JBCがこれ以外の事由に基づいて更新不許可処分を行うことを妨げるものではない。また,資格審査委員会規則4条は,ボクサーを対象とした規定であり,健康上の支障は,ボクサーが試合によって健康を害する蓋然性が高いから規定されたものであって,クラブオーナー,マネージャー等のライセンスの得喪に関する事案において重視するべきではない。
本件処分は被告JBC内部における処分であり,被告JBCに広範な裁量が認められるものであることから,本件処分が違法となるのは,そ
の処分が全く事実の基礎を欠く場合,若しくは社会通念上著しく妥当性を欠く場合など裁量権の範囲を逸脱し又は濫用してされた処分であることが一見して明らかな場合に限られると解するべきである。そして,以下のとおり,Eらのライセンスを更新すべきでない特別の事情があり,本件処分が裁量権を逸脱し又は濫用してされたものであることが一見し
て明らかであるとはいえないから,本件処分は適法であり,被告JBCは不法行為責任を負わない。
a
Eらは,本件試合のわずか2か月前である平成25年10月2日にも,IBF王座戦における計量時間の変更を被告JBCに連絡しなかったことについて,厳重注意処分を受けており,さらに被告JBCの利益を害するような行為があれば,厳しい処分を受けてもやむを得な
い状況に至っていた。
b
本件ルールミーティングの直後,IBF,WBA及び被告JBCそれぞれの代表者による共同記者会見において,Hは原告A2が敗戦した場合におけるIBF王座の帰趨について空位説を採用することを明
言し,被告JBCは何らの異議も述べずにこれを承認した。これを受けて,本件試合の中継を放映するTBSを含む報道各社が空位説を前提とする報道を大々的に行い,原告A2,原告A1及びCジムにおいても,それぞれのブログで空位説を前提とする書き込みを公表した。その後,原告A2が本件試合において敗戦するまで,空位説を採用することについて,原告ら,Cジム関係者,IBF,報道機関その他いずれからも一切異議が唱えられることはなかった。このような経緯か
ら,
日本国内の全ての報道機関,
ボクシングファン及び被告JBCは,
空位説が採用されるものと確信しており,保持説が採用されたと発表すれば,多くのボクシングファンからボクシング界の公正さを疑われて,ボクシング界の秩序が混乱し,被告JBCの信用が毀損されることが必至の状況にあった。

c
Eらは,マネージャー及びクラブオーナー兼プロモーターとして本件試合を主導して取り仕切るべき立場にあったのであるから,本件試合に関する報道の状況や原告A2らCジム関係者のネット上での情報発信の状況等を把握し,適切な対応をとるべき義務を負っていたにもかかわらず,Eらは,これらの報道等に全く関心を払わずに漫然と放
置していたのであるから,前記義務を怠った。
d
本件試合の終了直後,被告JBCにおける公式リングアナウンサーがIBF王座は空位になる旨のアナウンスを行っており,試合ルール63条2項によれば,

アナウンサーによってアナウンスされた事項は全てJBCの公式のものとする。と定められているのであるから,

Eらは,遅くとも前記アナウンスによって,被告JBCが空位説との認識を有していることを知り,Fは,上記のアナウンスの直後に,報道機関が空位説を前提とする報道をしていたことをCジム関係者から聞いて知っていた。また,Fは,上記のアナウンスを聞いた際にリン
グサイドにいたのであるから,同じくリングサイドにいた被告B3を含む被告JBCの関係者と本件ルールについて確認して今後の対応について協議を行うことは容易であった。したがって,Eらは,記者会見を開いて,原告A2がIBF王座を保持する旨の発表を行うに先立ち,被告JBCと協議を行うべき義務があったにもかかわらず,被告JBCと一切協議を行うことなく記者会見を開き,保持説が採用された旨の発表を行った。

e
以上のとおり,Fは,故意又は過失により,本件ルールミーティング後にWBA,IBF及び被告JBCが行った共同記者発表以降,マネージャーとして当然に関心を払うべきである本件試合のルールに関する報道状況等の確認を怠ったほか,被告JBCに無断で記者会見を
行い,これにより,ボクシング界の秩序を乱し,被告JBCの信用を毀損したものであり,Eは,故意又は過失により,上記の共同記者発表以降,クラブオーナー兼プロモーターとして当然に関心を払うべきである本件試合のルールに関する報道状況等の確認を怠ったほか,Fの行動を管理監督すべき義務を怠り,Fの上記行為を放置し,これに
より被告JBCの信用を毀損した。Eらの上記行為は,ライセンス所持者としての不適格性を基礎づけるものであり,Eらのライセンスの更新を否定すべき特別の事情に当たる。
法務アドバイザー
本件委員会における評議において,弁護士である法務アドバイザーが,
本件委員会の委員に対し,判断を求める事項を取りまとめた事案整理表(甲92,乙46),上記判断をする上で検討が必要な論点を記載した検討していただきたい事項と題する書面(甲93,乙47)を配布して検討を求めた。同書面(甲93,乙47)には,単に検討事項を列挙するだけではなく,各質問の中に考慮すべき要素や検討の指針等が記
載されており,本件委員会の委員は,このような法務アドバイザーの適切な関与の下,慎重に検討を重ねた上で,本件処分を判断したから,本件処分は適法である。イ
本件処分における手続が適正であること
期日調査書に記載された事実は,調査開始時において被告JBCが認識していた事実を示すものであって,調査した結果に基づく処分の原因となる事実と相違することはあり得るのであり,本件処分に関する調査期日に
は原告ら代理人弁護士が出席し,Eらの陳述書を提出して意見を述べたのであるから,Eらの防御権は害されておらず,十分な手続保障が尽くされていた。
また,期日調査書に記載された調査対象事実をみれば,被告JBCが本件試合の直後におけるFらの報道機関に対する発表内容やEらが記者会見
を開いた経緯・理由等を問題視していることについて読み取ることができるのであり,被告JBCがこれらの点について審理することを予定していたことは明らかであったのであるから,本件処分の理由は,被告JBCがEらに対して予め通知した調査対象事実の範囲内のものである。
したがって,本件処分には手続的な違法事由は存在せず,被告JBCは
不法行為責任を負わない。


被告B1の責任(争点2)

(原告らの主張)

被告B1及び被告B2の共同不法行為責任
本件委員会の委員6名のうち被告B1は被告JBCにおける絶対的な権力を有しており,被告B2は事務局長代行として被告B1に全面的に追従していた。他方,被告B1の意思が何よりも優先され,反対意見が聞き入れられることは一切ないことから,被告B2を除く他の委員は被告B1に対して何も意見を言えないのが常であり,被告JBC(実質的には被告
B1)との対立を強く恐れて意見を述べる意欲すら奪われており,本件委員会は形骸化していた。本件処分に先立ち,Eらの代理人弁護士から提出された多くの客観的証拠や主張の大半は,被告B1及び被告B2を除く本件委員会の委員らには示されておらず,被告JBC事務局の責任者(事務局長代行)でもある被告B2が,被告B1と共謀して,他の委員4名に対してあえて示さなかったものと考えざるを得ない。

したがって,被告JBC内で絶対的な権力を持つ被告B1とそれに加担する被告B2が本件処分を推し進めたことから,被告B1及び被告B2は共同して不法行為責任を負う。

理事の第三者責任
資格審査委員会規則上,健康管理上の支障を理由としないライセンスの更新拒絶処分を行う権限は資格審査委員会に移譲されておらず,本件処分の判断権は理事会にあるのであって,本件委員会の決定は参考意見にすぎない。また,仮に本件処分を行う権限が本件委員会に移譲されていたとしても,本件委員会は被告JBCの内部者や関係者により構成さ
れており,客観的な判断を期待できない体制になっているから,その判断を信頼・尊重すべき前提を欠く。
したがって,
被告JBCの理事らは,
本件処分にライセンス更新不許可処分を行うだけの客観的に合理的な理由があるか否かを自ら十分に検討すべき義務を負っていた。
被告B1は,本件委員会の委員長として本件処分に直接関与していた
のであるから,本件委員会の委員長及び被告JBCの理事として,本件委員会の意見の内容・理由について確認するなどして,ライセンス更新不許可処分を行う特別の事情があるかを十分に検討し,不合理な点や不当な点があるときには,招集請求権を行使して理事会を開き,他の理事らに対して本件処分が不当なものである旨の意見を表明すべき義務を負
っていた。
それにもかかわらず,被告B1は,上記義務に違反し,結論ありきの姿勢で本件処分を推し進め,これを主導したのであって,前記義務違反に故意又は少なくとも重過失がある。

被告B1独自の不法行為責任
被告B1は,本件委員会の委員長兼被告JBCの理事長として結論ありきで一見して不合理かつ違法な本件処分を推し進めたものであるから,原
告らに対して故意又は少なくとも過失による不法行為責任を負う。(被告B1の主張)

被告B1及び被告B2の共同不法行為責任について
否認及び争う。
本件処分は,本件委員会の委員全員が十分に審議した上で決定されたも
のであり,被告B1が被告JBCにおいて絶対的な権力を有しているなどということもないから,被告B1及び被告B2の不法行為は存在しない。また,被告B1及び被告B2が,共謀して,Eらの代理人弁護士から提出された証拠等を本件委員会の委員らに示さなかった事実はなく,本件委員会は必要に応じてEらから提出された証拠を斟酌した上で判断したもの
である。

理事の第三者責任について
被告B1は,被告JBCの理事長であり,本件処分当時,本件委員会の委員長であったことから,本件委員会における職務の遂行は,理事として
の職務遂行と評価されるので,被告B1が果たすべき職務は,本件委員会の委員長として,本件委員会が行う審理手続を適切に管理・遂行し,適切な判断をすることにある。
被告JBCは,
本件処分を行う際,
招集通知をもって審理の対象を特定・
告知し,期日を開き,同期日においてEらの代理人弁護士が出席し,種々
の意見を述べていること,
調査結果に基づいて審議が適切に行われたこと,
法務アドバイザーの関与の下,事実整理案(乙46)及び検討すべき事項を取りまとめた書面(乙47)が配布されるなどして,決定書の作成手続が適正に行われたことから,被告B1が,自らの職務につき義務違反をしたことはなく,義務違反について故意及び重過失もない。

被告B1独自の不法行為責任について
否認及び争う。

本件委員会では慎重に審議が重ねられた上で本件処分を行うことの決定がされたものであり,被告B1が結論ありきで本件処分を推し進めたなどという事実は存在しないから,被告B1は不法行為責任を負わない。⑶
被告B2の責任(争点3)

(原告らの主張)

被告B1及び被告B2の共同不法行為責任
前記⑵原告らの主張アと同旨。


被告B2独自の不法行為責任
被告B2は,本件処分当時,被告JBCの理事ではないものの,本件委
員会の委員として本件処分に関する事実上の決定に直接関与し,本件処分の理由に関して,Fがマスコミ報道に接していないことのみを理由にマネージャーとしての適格性を欠くとの意見を述べるとともに,Fが試合直後の記者会見について被告JBCに事前の連絡をしなかったことを問題視し,本件処分に積極的に賛同したものであり,不合理な本件処分を結論ありき
で推し進めたことから,原告らに対して故意又は少なくとも過失による不法行為責任を負う。
(被告B2の主張)
否認及び争う。
本件委員会は,慎重に審議を行って本件処分を判断したものであり,結論
ありきで本件処分を推し進めた事実はない。前記⑴被告らの主張のとおり,本件処分は適法であり,被告B2は不法行為責任を負わない。⑷
被告B3の責任(争点4)

(原告らの主張)

理事の第三者責任

被告B3は,本件ルールミーティングに出席して,保持説が採用され
たことを確認しており,Fが王座の帰趨について無関心どころか,むしろ正しく把握していたからこそ,本件試合直後の誤ったリングアナウンスを受けて直ちに記者会見を開いたということも容易に理解できたはずであるから,Eらに対するライセンスの更新を不許可とする特別の事情がないことについて容易に理解できたはずである。また,被告B3
は,平成26年2月25日に開催された被告JBCの理事会において本件処分の理由の概要の説明を受けたことから,Eらに対するライセンスの更新を不許可とする特別の事情が存在しないことを容易に認識することができたはずである。
したがって,
被告B3は,
本件委員会の決定内容を確認・検討の上で,

本件処分が回避・撤回されるように,理事会の招集請求権を行使して理事会を開くなどして,他の理事らに対して本件処分が不当なものである旨の意見を表明すべき義務を負っていたにもかかわらず,被告B3は,上記のような措置を一切とらなかったのであるから,被告B3には少なくとも任務懈怠につき重過失がある。


不法行為責任
被告B3は,本件試合に適用されるルールの内容を把握すべき立場にあり,被告JBCの責任者である事務局長として本件ルールミーティングに出席し,本件ルールミーティングにおいて保持説が採用されたことを認識
していたにもかかわらず,被告JBCに対し,本件ルールミーティングにおいて空位説が採用されたという虚偽の報告を行い,Eらに対する処分に向けた調査を開始する原因を作った。また,本件処分は,被告B3による虚偽の報告を前提として,被告B2において,Eらが真実を歪曲したことから前例にない処分を科すことも考えているなどとマスコミに対して公然と発表し,本件試合にまつわる騒動の責任はCジム側にあるとの姿勢で厳しい処分ありきで調査が開始され,被告JBCが引くに引けない状況とな
り,本件調査対象事実とは無関係な著しく不合理な理由を持ち出して強行されたものである。被告B3は,上記のことを予見し少なくとも容易に予見することができたはずであるにもかかわらず,上記のとおり,被告JBCに対して虚偽の報告を行い,Eらに対する厳しい処分に向けた調査を開始させ,本件処分に至るきっかけを作ったものであるから,このような被
告B3の行為は原告らに対する故意又は過失による不法行為を構成する。(被告B3の主張)
被告B3は,被告JBCを代表して,本件ルールミーティングやその直後のHの記者会見に出席して,本件試合にも立ち会っていたことから,本件委員会による調査対象となる立場にあり,被告JBCの本部事務局長として本
件委員会に対してEらに対する処分の審議を要請したことからして,本件委員会の審議に容喙することはできず,本件委員会の決定を尊重しなければならない立場にあった。したがって,被告B3は,本件処分について意見を述べるべき立場にはなかったのであって,その意味において被告JBCの非執行理事の立場と何ら変わりがなく,本件処分について意見を述べなかったと
しても理事としての任務を懈怠したとはいえず,少なくとも任務懈怠につき重過失はない。
また,被告B3は,被告JBCや本件委員会に対して誠実に自己が認識する事実を伝えたものであり,虚偽の報告を行ったことはないから,不法行為責任は負わない。



Dの責任(争点5)(原告らの主張)

理事の第三者責任

被告JBCの各理事の職務執行に対する監督及び会長,理事長の選任及び解職が理事会の職務とされていること,それらの職務が適切に果た
されるように被告JBCの会長に臨時理事会の招集権が付与されていること,Dは当時被告JBCの会長として本件委員会を指揮監督すべき立場にあり(定款46条3項),本件委員会の審議過程及び判断内容の確認・検討を行うことは容易であったこと,本件処分の決定書(甲4)や調査期日通知書(甲11)を確認していないとしても,マスコミ報道を
通じて本件処分に関する調査対象事実及び主たる処分理由等の要点の確認・検討さえ行えばEらに対するライセンスの更新を不許可とするだけの特別の事情が存在しないことを容易に認識することができたことからすれば,
Dは,
本件委員会の審議過程及び判断内容の確認・検討を行い,
本件処分が回避又は撤回されるように,必要があれば臨時理事会を招集
して理事会で発言するなどの適宜の方法により他の理事らに対して本件処分が不当である旨の意見を表明すべき義務を負っていた。
Dは,本件処分に関する調査対象事実や処分理由等の要点についての確認・検討すら一切せずに,臨時理事会を招集するなどして他の理事らに対して本件処分が不当である旨の意見を表明することもしなかったの
であるから,その任務懈怠につき少なくとも重大な過失がある。

不法行為責任
Dは,本件処分についてすべき監視を怠れば,違法無効な本件処分により,原告らが試合を実施できないことによる損害が発生し得ることは十分
予見可能であった。そうであるにもかかわらず,そのような結果を回避するために必要な行為,すなわち,本件処分の理由を確認し,本件処分が不当である旨の意見を,必要に応じて,理事会を自ら招集しあるいは招集することを求めて,他の理事らに対して明らかにすることをしなかったのであるから,Dは過失による不法行為責任を負う。

結果回避可能性
被告JBCの理事会は,本件処分について本件委員会とは異なる判断を
することが可能である。本件処分の理由が著しく不合理なものであることは明らかであり,容易に認識できるものであるから,被告JBCの理事の立場にある者が他の理事に対し,本件処分が不当である旨の意見を述べれば,他の理事も同様の問題意識を有するに至り,本件処分が不当であるとの意見が多数を占めるに至った可能性は高かったものといえる。

したがって,Dが,本件委員会の結論を無条件に容認することなく,他の理事に対して本件処分が不当である旨の意見を表明すべき義務を履行していれば,本件処分という結果を回避することは可能であった。

小括
以上より,Dは,理事の第三者責任又は不法行為責任に基づき,原告ら
に対し,本件処分により生じた損害を賠償すべき義務を負い,D承継人らはDの原告らに対する上記損害賠償債務を各相続分に応じて承継した。(D承継人らの主張)
否認及び争う。
Dは,
本件処分の当時,
名誉職である被告JBCのコミッショナー
(会長)

であり,非常勤かつ無報酬で,業務執行に関して非執行理事と同様の立場にあった。以下のとおり,Dに任務懈怠はなく,任務懈怠につき故意及び重大な過失はないし,不法行為も成立しない。

Dは,本件委員会の審議には一切関与しておらず,平成26年2月25日の理事会において被告B1から本件処分に関する概要の報告を受け,その内容について一見して明白に合理性を欠くなどの特段の事情も認められなかったことから,本件委員会の判断を尊重したものである。イ
被告JBCにおける業務執行は,理事長及び業務執行理事のほか各種専門委員会に委ねられており,ライセンスの更新に関する権限は,資格審査委員会に移譲されているところ,Dは業務執行理事ではない非執行理事であって,大所高所から被告JBCの運営に意見を述べるために年2回程度
開催される被告JBCの理事会に出席の上で主として組織の根幹に関わる意思決定に関与することをその職務として期待されていたにすぎず,Dもこのことを前提に理事に就任したものである。したがって,Dが他の理事の不当な職務遂行を防止するために具体的な監視等を行うことは現実的に不可能であり,本件処分の当否について具体的に検討した上で意見を述べ
ることは困難であった。

Dは,
株式会社Lの代表取締役であったところ,
被告JBCにおいては,
同社の代表者が理事に就任して会長を兼務することが慣行とされてきたことから,被告JBCの代表理事である会長に就任したものであるから,Dの立場は名誉職としての色彩が濃く,本件処分当時,コミッショナーとし
てプロボクシングの試合の認定に関する職務に専念し,被告JBCの業務執行からは離れていた。


被告B4及び被告B5の責任(争点6)

(原告らの主張)

理事の第三者責任

各理事の職務執行に対する監視監督が理事会の職務とされていること,本件処分の決定書や調査期日通知書を通じて本件処分に関する調査対象事実及び主たる処分理由等の要点について確認することは極めて容易であり,これらの要点を確認してさえいれば,調査対象事実と最終的な処分理由との間に大きな齟齬があることや本件処分を許容するだけの特別の事情がないことを容易に認識することができたこと,本件処分の決定書や調査期日通知書を直接確認していないとしても,平成26年2月25日の理事会での本件処分に関する概要の報告やマスコミ報道を通じて上記のことは容易に認識できたことからすれば,被告B4及び被告B5は,本件委員会の決定が不当なものでないかにつき確認・検討し,本件
処分が不当なものであると判断した場合には,本件処分が回避・撤回されるように,招集請求権を行使して理事会を開き,他の理事らに対して本件処分が不当なものである旨の意見を表明すべき義務を負っていた。被告B4及び被告B5は,本件委員会の判断や本件処分の理由等について一切確認・検討することもなく,本件委員会の判断を了承し,本件
処分が不当であることにつき何らの意見表明も行わなかったのであるから,任務懈怠につき少なくとも重大な過失がある

不法行為責任
前記⑸原告らの主張イと同旨。


結果回避可能性
前記⑸原告らの主張ウと同旨。


小括
以上より,被告B4及び被告B5は,理事の第三者責任及び不法行為責任に基づき,原告らに対して本件処分により生じた損害を賠償すべき義務
を負う。
(被告B4の主張)
被告B4は,当時,株式会社Mの代表取締役も務めており,被告JBCの理事としての職務に専念していたものではなく,被告JBCの住所地から自宅が近いことから理事への就任を依頼されて理事に就任したといった経緯及
び前記D承継人らの主張ア~ウと同旨の事情に照らせば,被告B4に任務懈怠はなく,任務懈怠につき重過失もないし,不法行為責任も負わない。(被告B5の主張)被告B5は,
かつて株式会社Lの専務取締役を務めた経歴を有するところ,
被告JBCの理事には株式会社Lの役員経験者が就任することが慣行となっていたことから理事に就任したといった経緯及び前記D承継人らの主張ア~ウと同旨の事情に照らせば,被告B5に任務懈怠はなく,任務懈怠につき重
過失もないし,不法行為責任も負わない。


原告らの損害及びその額並びに因果関係(争点7)

(原告らの主張)

因果関係
本件処分の名宛人は,Cジムに属するEらであるが,本件処分は,Eがクラブオーナーライセンスを失うことで,Cジムに属する原告3選手のボクサーライセンスも当然に失われ,原告3選手は日本国内でプロボクシングの試合を行うことができず,その興行を開催することもできなくなることは,当然に予定されているものであるから,原告らは間接被
害者と位置づけられるものではない。
また,被告らは,原告が主張する被侵害利益は試合興行に係る様々な関係者と原告らとの各種契約に基づくものであるから,債権侵害型の不法行為であると主張するが,本件処分時点では,各種契約は未締結であり,侵害すべき対象となる債権はないから,債権侵害型不法行為の事案
ではない。
原告らは,本件処分後,被告JBCに対し,Cジムの新たなクラブオーナーとして,大手プロボクシングジムである協栄ジムの元マネージャーであり,約30年のプロボクシングライセンスキャリアを有し,多くのボクシングジムから信頼を得ているNを申請したにもかかわらず,被
告JBCはこれを認めず,東日本ボクシング協会も被告JBCの判断に追従したから,新たな会長が就任することで原告3選手がボクサーライセンスを取得することはできなかった。プロボクシング界で絶対的な権限を持つ被告JBCと半ば対立してまで原告3選手を受け入れるジムは存在せず,原告らが何とか見つけたUNITEDBOXINGGYMについても,原告A1の移籍申請を被告JBCは却下しているから,原告3選手は,他のボクシングジムに移
籍してボクサーライセンスを取得することはできなかった。
被告らは,東日本ボクシング協会の会員であることが,被告JBCのクラブオーナーライセンスを付与されるための条件であることを前提に,東日本ボクシング協会がEを除名した以上同人がクラブオーナーライセンスを付与されることは不可能になったとして,本件処分と原告らの損
害との間に因果関係はない旨主張するが,被告JBCのクラブオーナーライセンスが付与されるための要件について,東日本ボクシング協会の会員でなければならない旨を定めた規定は存在せず,前記除名は,本件処分が有効であることを前提としたものであるから,本件処分と原告らの損害との間の因果関係が否定されるものではない。


原告らの損害及びその額
原告らは,違法な本件処分が行われたことにより以下の損害を被った。原告3選手の逸失利益

合計2億5571万7808円

原告3選手は,本件処分前の過去3年間(平成23年~平成25年)において,
それぞれ,
別紙1のとおり,
プロボクシングの試合を実施し,
ファイトマネーを得ていた。しかし,本件処分に伴い,原告3選手は,被告JBCのボクサーライセンスを喪失し,日本において試合を行うことが不可能となり,日本での興行を行うことによるファイトマネーが得られなくなった。このことによる原告3選手の各逸失利益は以下のとお
りであり,合計2億5571万7808円である。
a
原告A1の逸失利益

9615万8904円原告A1は,本件処分当時27歳2か月であり,プロボクサーとしては,これから脂の乗った時期を迎えるところであった。また,本件処分時点までのプロ戦績は33戦32勝1敗で,日本人史上初の3階級制覇を達成し,WBA世界バンタム級王座を8度防衛した後,4階級制覇に向けて,本件処分直前の平成25年12月に当時保持してい
た同王座を返上したばかりであった。
上記の点からすれば,原告A1は,本件処分がなければ,4階級制覇に向けて活躍し,平成26年2月7日から現役引退(平成27年10月16日)までの間に,本件処分前の過去3年間(平成23年~平成25年)で得たファイトマネー(計1億6100万円。別紙1)と
同等のファイトマネー9615万8904円を得ることができたが,本件処分によりそれが得られなくなった。
b
原告A2の逸失利益

6055万8904円

原告A2は,本件処分当時25歳1か月であり,プロボクサーとしてますますの成長が期待されており,本件処分時点までのプロ戦績は
33戦29勝4敗で,平成25年9月に2階級制覇を達成したところであった。
上記の点からすれば,本件処分がなければ,平成26年2月7日から現役引退(平成27年9月6日)までの間に,本件処分前の過去3年間(平成23年~平成25年)のファイトマネー(計1億0800
万円。別紙1)と同等のファイトマネー6055万8904円を得ることができたが,本件処分によりそれを得られなくなった。
c
原告A3の逸失利益

9900万円

原告A3は,本件処分当時22歳6か月で,本件処分時点までのプロ戦績は29戦29勝であり,平成25年8月1日にWBO世界バンタム級タイトルマッチに勝利し世界王者となり,その後,平成26年11月までに3度の防衛を達成している。このように,原告A3は,平成25年以降にプロボクサーとして充実した時期を迎えており,本件処分がなければ,少なくともその後3年間(平成26年~平成28年)にわたり,毎年,平成25年のファイトマネー(3300万円。3年間で計9900万円)と同等のファイトマネーを得ることができたが,本件処分によりそれを得られなくなった。
精神的損害

合計6000万円(各2000万円)

原告3選手は,本件処分により,20代というボクサーとして充実した時期において,実戦を通して勝負感覚を磨き上げて成長するための貴重な機会を失って選手生命すら危うくする深刻な事態となり,日頃応援してくれている日本国内の人たちの前で試合をする機会も奪われた。これによる精神的苦痛は大きく,原告3選手が受けた精神的損害は各2000万円であり,合計6000万円である。

原告会社の損害

3億4834万7404円

原告会社は,本件処分前の過去3年間(平成23年~平成25年)において,別紙2のとおり,原告3選手による興行から利益を得ていたところ,本件処分により原告3選手が日本国内で試合を実施できなくなったことに伴い,日本での興行利益が全く得られなくなった。
そして,上記のとおり,原告3選手は本件処分時点においていずれもボクサーとして将来が非常に有望な時期にあったのであるから,原告会社は,本件処分がされていなければ,日本国内での興行を通じて,少なくとも原告A1が現役を引退する平成27年10月16日までの間に,本件処分前の過去3年間(平成23年~平成25年)の興行利益(計4
億6678万1922円。別紙2)と同等の興行利益2億7879万0298円を上げることができたものというべきである。また,原告会社は,本件処分がなければ,原告A1が現役を引退した後である平成27年10月17日以降においても,少なくとも平成28年末に至るまでの間は,日本国内で原告A3の試合の興行を行うことにより利益を上げることができたものというべきである。そして,原告A3が平成26年と平成27年にそれぞれ2回ずつ世界戦を実施している
ことに照らせば,同年10月17日から平成28年末までの間に少なくとも2回の世界戦の興行を行うことが見込まれる。他方,原告A3単独での世界戦の興行で見込まれる収益については,平成23年から平成25年にかけて原告3選手のうち1人のみが試合を行い,その試合が世界戦である興行(平成23年4月沖縄,同年5月大阪,同年8月東京,平
成25年4月大阪,同年7月東京,同年8月セブ,同年9月香川,同年11月韓国)の収益を参考にするのが妥当であるところ,その平均値は3477万8553円である。そうすると,原告会社は,違法な本件処分がなければ,原告A1の現役引退時から平成28年末までの間に,日本国内で原告A3の試合の興行を行うことにより,少なくとも6955
万7106円(=上記3477万8553円×2)の利益を上げることができたものというべきである。
(被告らの主張)

因果関係
本件処分は,Eらに対する処分であり,原告らは,本件処分の直接の対象になっておらず,原告らが被った損害はいわゆる間接損害にすぎないところ,Eらと原告らとの間に一体の関係はないから,原告らが被った損害は賠償の対象とならない。
また,原告らは,本件処分によって原告3選手が第三者であるボクシ
ングジムや興行主との間の契約によって得られるはずであった興行利益を損害と主張しているから,本件は債権侵害の事案であるところ,被告らには,本件処分により,前記契約の成立を妨げて興行利益に係る債権侵害をすることについて故意又は重過失は認められないから,不法行為自体が成立しない。
さらに,
原告らが被った損害が本件処分による損害に当たるとしても,
本件処分は平成26年におけるライセンスの更新をしない旨の処分に
すぎないから,因果関係のある損害は,平成26年中に生じたものに限られる。
原告3選手は,①Cジムに新たな会長が就任して東日本ボクシング協会への所属が認められ,このことを前提にして被告JBCが新会長にクラブオーナーライセンスを認めるとともに,新たなマネージャーがCジ
ムに所属し被告JBCよりマネージャーライセンスを取得したうえで,Cジム所属のボクサーとしてライセンスを申請する方法,②Cジムを離れてクラブオーナーライセンスを所持する会長がいる他のジムに移籍し,当該他のジムのボクサーとしてライセンスを申請する方法のいずれかによりボクサーライセンスを更新することができたのであるから,本件処
分により原告3選手がボクサーライセンスを喪失したことと原告らに損害が発生したこととの間には相当因果関係がない。
原告3選手が日本国内においてプロボクシングの試合を行うためには,原告3選手が所属するCジムの会長が被告JBCの発行するクラブオーナーライセンスを保有することが必要であるところ,東日本ボクシ
ング協会は,
平成26年4月21日,
Eを同協会から除名しているから,
被告JBCがEのクラブオーナーライセンスを更新することはできない。したがって,本件処分にかかわらず,原告3選手がCジムにおいてプロボクシングの試合を行うことはできないから,本件処分と原告らの損害との間に因果関係はない。


原告らの損害及びその額否認及び争う。
原告3選手の逸失利益に関する主張について
a
ボクサーとしての実力やファイトスタイルに伴うボクシングファンへの訴求力さえあれば海外においても相応のファイトマネーを獲得できるといえるところ,原告3選手は世界タイトルを獲得した経験や海
外で試合をした経験もあるのであって,原告3選手が真摯に海外で試合をすれば収入の減少を防げたはずであるから,本件処分により原告3選手が日本国内で試合を行えないこととなったからといって原告3選手に逸失利益が発生したとはいえない。原告3選手の海外でのファイトマネーが日本国内での金額より著しく低いのであれば,原告3選
手のボクシングファンへの訴求力がないからである。
b
原告3選手が被告JBCのボクサーライセンスを有していなくとも日本国内において被告JBCの管轄外でのプロボクシングの試合を行うことは可能であり,原告3選手が本件処分により日本国内で試合が開催できないということにはならないから,原告3選手が被告JBC
のボクサーライセンスを保有していないことによって原告3選手に損害が生じているとはいえない。
c
開催時期も不定期であり,ファイトマネーもその都度決めて行われるプロボクシングの試合のファイトマネーについて平準化して逸失利
益を算定することは不合理であるから,原告3選手が主張する逸失利益の算定にも合理性がない。
原告A1の逸失利益について
原告A1が王座を返上して4階級制覇を目指していたのであれば,異なる階級で挑戦者としての試合を行わなければならず,従前の階級と同
様に勝ち続け,王者としてのファイトマネーと同等のファイトマネーを得ることは容易ではなく,原告A1が平成23年から平成25年の間に行ったのと同等の試合を平成26年以降にできたとは限らない。実際に,
原告A1は,4階級制覇を目指して平成27年10月16日に行ったWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチに敗れて引退するに至っている。これらのことからすると,原告A1が本件処分以前の過去3年間のファイトマネーと同等のファイトマネーを得ることができたという蓋然性は低いといえる。したがって,原告A1が主張する逸失利益の算定には合理性がない。
原告A2の逸失利益について
原告A2が平成23年から平成25年の間に行った試合と同等の試合
を平成26年以降に行うことができたとは限らず,
実際に,
原告A2は,
平成27年9月6日に行われた試合に敗れ,その後,網膜剥離を理由として同年11月4日に引退しているのである。このように,原告A2が本件処分以前の過去3年間のファイトマネーと同等のファイトマネーを得ることができたという蓋然性は低い。したがって,原告A2が主張す
る逸失利益の算定には合理性がない。
原告A3の逸失利益について
原告A3は,平成27年5月9日及び同年9月6日の試合で敗戦しており,同人が平成26年から平成28年の間にプロボクサーとして充実した時期を迎えることができた蓋然性は低い。また,原告A1及び原告
A2が引退した後にC三兄弟といった宣伝文句で集客を図ることはできず,
原告A3単独での興行で集客を得ることができるかは疑わしい。
このように,原告A3のプロボクサーとしての実力及び集客力からすれば,原告A3が本件処分以前の過去1年間のファイトマネーと同等のファイトマネーを得ることができたという蓋然性は低いといえる。したが
って,原告A3が主張する逸失利益の算定には合理性がない。
原告3選手の精神的損害に関する主張原告3選手が日本国内においてプロボクシングの試合を行うことができなくなったのは,Eらに責任があるほか,原告3選手がライセンスを取得するための真摯な努力をしなかったからであり,また,原告3選手が海外で試合を行うことができないのは,実力やファイトスタイルに伴うボクシングファンへの訴求力が不足していたからである。
したがって,

仮に原告3選手が日本国内で試合ができないことにより精神的苦痛を受けたとしても,これは本件処分が原因ではない。また,原告3選手が主張する慰謝料額にも何らの根拠もない。


過失相殺(争点8)

(被告らの主張)

原告らが被った損害は,原告会社の従業員であるEらの非違行為によって生じたものである。原告会社は,Eらの使用者であり,原告A1は原告会社の代表取締役であるから,Eらの非違行為について,管理監督上の過失がある。
(原告らの主張)

否認及び争う。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
前提事実に加え,各掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が
認められる。


本件ルールミーティング及び本件試合に至るまでの経緯等

平成25年12月3日,大阪市内にあるボディーメーカーコロシアムにおいて本件試合が開催されることとなり,本件試合は,IBF王座とWBA王座の2団体王座統一戦として注目を浴びた。

本件試合の前日である同月2日,A2及びGの体重計量が行われ,A2は計量をクリアしたが,Gは,同日午前11時及び午後零時30分の2度の計量において指定された体重を大幅に上回り,計量失格となった。プロボクシングの試合においては,厳格な体重制が採用されており,各階級毎に指定された体重を守ることが正式な試合開催の条件とされている。この体重を超過すると,王座保持者はその王座を剥奪されることとされており,GもWBA王座を剥奪された(Gが計量失格となった時点でWBA
王座は空位となった。)。

Gが計量失格となった直後の同日午後零時45分から約30分間,本件ルールミーティングが開催された。本件ルールミーティングには,原告A2の陣営からは,F,CジムのアドバイザーであるO,Cジムの通訳人であるPの3名が,G陣営からは,G及びそのトレーナーであるQが,被告
JBCからは,本部事務局長である被告B3及び職員のRがそれぞれ出席し,IBFのスーパーバイザーであるH及びIBFの副審2名,WBAのスーパーバイザーであるI及びWBAの主審と副審各1名も出席した。本件ルールミーティングでは,GとGのマネージャーであるSが,ファイトマネー及びWBAのルールに従って課される制裁金をめぐって言い争いと
なり,Sが本件ルールミーティングの会場から退室し,代わってQが臨むなど,本件ルールミーティングの会場は騒然としており,その中で,原告3選手側の関係者とG側の関係者との間で,本件試合に関するやり取りが行われた。なお,ミーティングはすべて英語で行われた。(甲4,5,21,22,40,41,105,118)


本件ルールミーティングにおいて,
Hは,
原告A2及びG両陣営に対し,
IBFルールブック(甲5の1,甲22の1,甲22の3)を配布したところ,IBFルールブックには,英語で,チャンピオンがウエイトを形成し,挑戦者がこれに失敗した場合,その試合は,勝敗に関わらずチャンピオンがそのタイトルを保持するとの了解の下で行うことができる(保旨
持説)が記載されている。エ

Hは,IBFルールブックを配布した後,本件試合にはIBFルールが適用される旨説明し,これを受けて,CジムのアドバイザーであるOは,Hに対し,口頭(英語)で,A2が試合に負けたらIBF王座はどうなるのかと尋ね,Hは,その場合もA2がベルトを保持する旨答えた(甲28,29,甲105,118)。


Hは,本件ルールミーティング後,自身が持っていたIBFルールブック(冊子)の署名欄を開いて出席者に回覧し,そこに署名するよう求めたところ,被告B3を含む出席者は,これに署名をした(甲22,甲38の別紙4,甲105,118)。


本件ルールミーティングの直後に同じ部屋の一角でH,I及び被告B3による記者会見が行われ,Hは,原告A2が本件試合に敗れた場合のIBF王座の帰趨について記者から尋ねられ,IBFtitleisvacant(IBF王座は空位になる)との回答をした。株式会社TBSテレビの通訳人を務めていたTは,Hの回答を日本語に訳して報道陣にこれを伝え,報道各社は,原告A2が本件試合に敗れた場合にはIBF王座は空位になる旨の
報道を行った。Fは,会場の後片付けに追われており,O及びPと共に上記記者会見には同席していなかった(甲6)。
なお,Tは,本件ルールミーティングの際,本件ルールミーティングが行われた部屋にいたが,前記のとおり本件ルールミーティングは騒然とした雰囲気の中で行われていたところ,TはRからGとマネージャーが口論
している内容を通訳してほしいと依頼を受けて同人の耳元で通訳するなどしたが,出席者に対して通訳を行ったのは静かにしてくださいとのIの発言を一度通訳したのみであり,本件ルールミーティングの席上におけるルールに関する発言を通訳したことはなかった(甲40,41)。キ
本件ルールミーティングは報道関係者に公開されたものではなかったが,そのことを知らなかった海外のボクシングジャーナリストであるaは,本件ルールミーティングの場に在席しており,同日午後3時19分(日本時間),海外のボクシングサイトNotiFightに,Gが勝利した場合,WBA王座は空位,IBF王座は原告A2が保持したままとなる旨の記事を掲載した(甲7,28,29)。

原告A2は,インターネットのニュースサイトを見て本件試合に空位説が採用されたものと考え,同日午後7時頃,Gが勝利した場合にはIBF王座とWBA王座の両王座が空位になる旨を自身のブログに掲載し,CジムのスタッフもCジムのブログに同様のことを掲載した(甲107,111~113,乙10~13)。


Fは,IBFルールにより本件試合が保持説により行われるものと理解していたが,本件ルールミーティング後の記者会見に同席しておらず,その後の報道等の確認も行わなかったため,Hが空位説であるかのような発言をし,マスコミが空位説を前提とする報道を行っていたことを知らなかった。また,Fは,本件試合が始まるまでに原告A2やCジムのブログの確認を行っておらず,原告A2に対し,本件試合の直前まで,敗戦した場
合の取り扱いについて確認することもなかった。(甲105,118,乙48)


本件試合及びその後の経緯等

本件試合は,平成25年12月3日午後10時20分頃終了し,2-1の判定により原告A2が敗戦する結果となった。リングアナウンサーであるJは,本件試合の判定がアナウンスされた直後に,

ChampionretainstheIBFworldtitle(チャンピオンはIBFタイトルを保持する)。

との英語によるリングアナウンスを行った。他方で,被告JBCにおける公式のリングアナウンサーであるKは,その直後に

G選手が勝ちましたので,IBF並びにWBAスーパーフライ級王座は空位になります。

との日本語によるリングアナウンスを行った(甲8)。イ

F及びHは,同日午後10時30分頃,本件試合の会場において,O及びPとともに本件訂正記者会見を開いた。Hは,本件訂正記者会見において,本件試合の結果如何にかかわらず原告A2がIBF王座を保持することになる旨を説明し,記者からの前日のHの空位説を前提とした発言に対する指摘については,

自分が前日これと異なる発言をしたのであれば,それは誤りである。

との説明をして,謝罪をした。そして,Fは,IBF王座の帰趨に関するルールに関して現在報道されている空位説を前提とする内容もまた誤りであり,原告A2は本件試合の勝敗にかかわらずIBF王座を保持することになると発表した。(甲9)。

Fは,本件試合の翌日の平成25年12月4日,本件試合とは無関係の原告A3に関する記者会見を行った後,毎日新聞,日本経済新聞,スポーツニッポン,東京新聞ら報道各社から質問を受け,これに応じる形で,本件ルールミーティングにおいて,原告A2が勝敗にかかわらずIBF王座を保持するとのルールが確認されたこと,本件試合にはIBFルールが適用され,原告A2自身も本件試合の勝敗にかかわらずIBF王座を保持す
ることについて本件試合前に認識していたことなどについて回答した(甲50)。

本件試合については,本件試合前のHの発言に基づき,マスメディアにより,原告A2が敗戦すればIBF王座を失うとの報道が大々的にされて
いたことから,本件訂正記者会見はマスメディアやボクシングファンなどの混乱を招くこととなり,平成25年12月4日の朝刊,同日の夕刊,同月5日の朝刊などの報道によって,問題の根本はJBCとIBFとの意思

疎通が不十分だったことにある。,タイトル認定団体であるJBCがIB

Fルールを熟知していなかった責任は重い。,JBCのB2事務局長代行

は『不信感を抱かせた』とタイトル認定団体のIBFに対し不満を語ったが,試合の管理は本来ローカルコミッションの役割と自覚する必要がある。,『負けても王座』C騒動の裏にJBCの体たらく。,

試合管理はJBCの責任だ。タイトル認定団体IBFと世界王座の扱いで判断が正反対になる事態は,JBCの確認不足と言われても仕方がない。

などと,被告JBCに対する批判的な報道が相次いだ(甲10,35,乙15,19,24~26)




本件処分に至る経緯等

被告JBCは,平成25年12月,本件試合をめぐる混乱に関連してEらのライセンスの更新の許否について審理するため,本件委員会を設置した。本件委員会のメンバーは以下のとおりであった。
委員(委員長)

被告B1(被告JBC理事長)

委員
委員

W(ボクシングマガジン編集員)

委員

X(レフェリー・試合役員会)

委員

V(JBC理事・一般社団法人共同通信社編集委員)

委員

U(JBC評議員・東京都中小企業団体中央会副会長)

被告B2(被告JBC事務局長代行)

本件委員会は,平成25年12月24日付けで,Eらに対し,平成26年1月10日に調査期日を開催する旨の通知書
(甲11)
を発し,
この頃,
Eらは同通知書を受け取った。同通知書に記載されていた処分の原因となる事実は,前提事実⑸記載のとおりである。


被告JBCは,本件委員会における検討の前提として,IBFに対し,本件試合におけるIBF王座の取扱いについて問い合わせたところ,IBFは,保持説が採用されたこと及びHの本件ルールミーティング後の記者会見における発言は誤りであったことを回答した(甲108,乙41,42)



被告JBCは,平成26年1月10日,本件委員会の調査期日を開き,Eらの代理人弁護士2名の立会いのもと,Eらに対する審問を行った(甲14,乙16)。
また,Eらの代理人弁護士は,平成26年1月10日から同月31日の間,被告JBCに対し,Tに対する聴取結果等の証拠の開示を3度求めたところ,被告JBCは,同年2月4日,証拠の一部を開示したものの,Tに対する事情聴取報告書は含まれていなかった。そのため,Eら及びその
代理人弁護士は,被告JBCに対し,再度証拠の開示を求めたところ,被告JBCは,同月5日,被告JBC担当者とTとの間のメール(甲42)を開示した。
Eらの代理人弁護士は,同月6日,被告JBCに対し,同代理人弁護士がTから受信したメール及びその添付ファイル(甲41)を提出した(甲
14,42~46,95)


本件委員会における評議において,法務アドバイザーが,本件委員会の委員に対し,判断を求める事項を取りまとめた事案整理表(甲92,乙46)
,上記判断をする上で検討が必要な論点を記載した検討していただきたい事項と題する書面(甲93,乙47)を配布して検討を求めた。同
書面(乙47)には,単に検討事項を列挙するだけではなく,各質問の中に考慮すべき要素や検討の指針等が記載されていた。

被告JBCは,上記法務アドバイザーによる書面に対する各委員の意見を踏まえ,前記メールを開示するよりも前の同月4日,3回目の本件委員会を開き,法務アドバイザーが作成した決定書案の検討を行った。同決定
書案には,処分の選択肢として,更新不許可処分の他に厳重注意処分も記載されていたが,本件委員会は,審議の結果全会一致で本件処分を行うことを決定した(甲108,123,124,乙42,81)


被告JBCは,平成26年2月7日,Eらに対して本件処分を行った。本件処分の理由は,前提事実⑹記載のとおりである。

Eらは,平成26年2月11日,懲罰規程11条及び資格審査委員会規則8条に基づき,本件処分に対する再審議の請求を行い,その後,本件処分が直ちに取り消されるべきであり,かつ,被告JBC担当者がTから聴取した本件ルールミーティングに関する内容の報告書等を開示すべきであるなどの意見を述べた。

平成26年2月25日,被告JBCの理事会が開催され,被告B1は,同理事会において,他の理事らに対し,本件処分について決定書(甲4)記載の主文の内容及び理由の概要を報告した(丙3,被告B1)



被告JBCは,同年4月25日,Eらの再審議請求を棄却する旨の決定を行った(甲16~20)




本件処分後の経緯

東日本ボクシング協会は,平成26年4月21日,Eがオーナーとしての職務を果たさなかったなどとして,
同人を同協会から除名処分とした
(乙
5)



原告A1は,平成26年4月21日及び同年6月28日,被告B1を訪問し,原告3選手が被告JBCからボクサーライセンスの付与を受ける方
策を相談したところ,被告B1は,Cジムが今回の件で謝罪をし,Eらが本件処分を受け入れることが,原告3選手がボクサーライセンスを取得して国内復帰するための条件である,本件処分に関するEらの申立てを一旦取り下げなければ,
ライセンスを出すのは難しい旨の回答をした
(甲51,
103の2,148,原告A13頁)



原告A1は,平成26年5月24日,東日本ボクシング協会に対し,Nを会長とする新しいジム(K3BOX&FIT

GYM)の新規加盟申請

を行ったが,東日本ボクシング協会は,同年6月16日頃,Nの人柄や実績は申し分ないが,新しいジムは,ジムの場所,名称がこれまでのCジムと何ら変わらないという理由で,同申請を却下した(甲52)
。その後,N
は,被告JBCに対し,前記申請の却下について事実確認をしたところ,被告JBCは,

C側が弁護士を通じてやっていることを取り下げて,JBCに謝罪しなければならない。と回答した

(甲103,
148,
原告A1)


原告A1は,複数のジムと協議し,UNITED

BOXING

GY

Mから移籍の承諾を得た上で,平成26年7月4日,被告JBCに対し同ジムへの移籍を申請するとともに,ボクシング関係者及び被告JBCに対
し本件試合に関し迷惑をかけたことを謝罪する旨の書面を公表した(乙33~37)
。被告JBCは,同年8月25日頃,前記ジムのクラブオーナー
ライセンスの付与を受けているYが,
年齢,体調面,ジムにもあまり出てこられていないYがC選手とスムーズに連携をとってトレーナーを含,めしっかりとコントロールし,明確な責任をもてるかどうかについて憂慮と懸念があることを理由に,同申請を却下した(甲53,乙79,80)


Eらは,平成26年12月26日,被告JBCを被告として,東京地方裁判所に対し,平成26年度におけるライセンス保持者たる地位の確認及び慰謝料の支払を求める訴訟(以下別件訴訟という。
)を提起した。


原告A3は,
平成28年10月25日,
協栄ジムに移籍することにより,
被告JBCからボクサーライセンスを付与された(弁論の全趣旨)。


Eらと被告JBCは,平成29年7月19日,別件訴訟において,被告JBCがEらに対し平成29年度のCジムのクラブオーナーライセンス及びプロモーターライセンス(Eについて)並びにマネージャーライセンス
(Fについて)を付与し,Eらがその余の請求を放棄する内容の訴訟上の和解をした(乙49)
。なお,Eは,同年2月,東日本ボクシング協会の会
員資格を得ていた(甲122)

2
争点1(本件処分の違法性及び被告JBCの責任)について


試合ルール11条3項によれば,ライセンスの次年度の更新は特別の事情のない限り許可されるものと規定されており,ボクサーライセンスについては,資格審査委員会が健康管理上の問題があると認めるときはライセンス更新の不許可又はライセンスの取消し等の処分をすることができる旨定める(試合ルール19条)ものの,他のライセンスについては更新を不許可とする場合についての明示的な規定はない(資格審査委員会規則4条にはライセンスの更新を不許可とする処分についての規定があるが,健康管理上の支障
が理由とされていることや,引退勧告が処分として掲げられていることに照らし,試合ルール19条を受けてボクサーライセンスの更新不許可等について定めたものであると解される。)。そうすると,ボクサー以外のライセンスの更新を不許可とする特別の事情の有無については,試合ルール,倫理規程,懲罰規程,資格審査委員会規則等の各規定の趣旨を参照しつつ,本件委
員会において一定の裁量をもって判断することができるものと解されるが,特別の事情という文言や,ボクサーライセンスについては更新不許可事由が健康管理上の支障に限定されていること,ライセンスの更新不許可は,当該ジムに所属するボクサーが日本国内において試合をすることができなくなるという重大な不利益をもたらす処分であること等に鑑みると,その裁
量の程度には一定程度制約があると解するべきであり,処分が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には,裁量権を逸脱・濫用したものとして,当該処分は違法と解するべきである。また,前記前提事実のとおり,被告JBCにおいては,ライセンスの更新に関する事項は資格審査委員会に,懲罰に関する事項は倫理委員会にそれぞ
れ判断が委嘱されており,理事会は,これらの委員会から報告を受けるにとどまるから,本件処分においても,その第一次的な判断権者は本件委員会であると考えられるが,処分自体の主体が被告JBCである以上(甲4),理事会において本件処分を相当でないと判断した場合には,これを執行せず,あるいは,本件委員会に対し再検討を求めることができると解される。


本件処分は,
前提事実⑹のとおり,Fのマネージャーライセンスについて,①原告A2にとって最も利害関係が大きいIBF王座の帰趨について無関心であったこと(試合ルール34条違反),②マスコミ対策ありきとばかりに安易に新聞記者の取材の機会を設け,新聞紙上等に本件ルールミーティングにおいて原告A2が敗れても王座を維持する旨の説明を受けたなどと報道がされたことにより混乱を生じさせ,被告JBCの信用毀損を招いたこと(懲罰規程3条2号違反)を理由に,Eがクラブオーナー及びプロモーターとしての適格性を欠くとして,また,Eのクラブオーナーライセンス及びプロモーターライセンスについて,①本件試合についてほとんどライセンス保持者としての実務に携わっていなかったこと,②Fに対する監督責任を尽
くさなかったこと,③Fが報道関係者の取材に応じているのを制止せずに被告JBCの損害の発生に寄与したこと,④本件試合に関する報道に一切接しなかったことを理由に,Fがマネージャーとしての適格性を欠くとして,Eらのライセンスの更新を不許可としたものであるから,以下検討する。ア
本件試合に関し適用されたルールについて
IBF王座の得喪に関するルールは,専らIBFにおいて決定することができる事項であり,他の認定団体との協議により定められるものではないこと(弁論の全趣旨),IBFは,挑戦者が計量に失敗した場合の取り扱いとして保持説を採用しており,本件ルールミーティングにおいても,保持説が明記されたIBFルールブックが出席者に配布され,被告JBC
の事務局長である被告B3を含む出席者がこれに署名していること,IBFのスーパーバイザーであるHは,本件ルールミーティング直後の記者発表においては空位説であるかのような発言をしたものの,本件試合直後に上記発言を訂正する本件訂正記者会見を行っていること,IBFは,被告JBCの問合わせに対し,本件試合は保持説により行われた旨及びHの本
件ルールミーティング後の記者会見における発言が誤りであった旨を回答しており,実際にも,本件試合後も引き続き原告A2を王座保持者として扱っていたこと(甲31,32)からすれば,本件試合のルールとしては保持説が採用されたものと認められ,本件ルールミーティング後の記者会見におけるHの発言は誤りであったと解するほかはない。
これに対し,被告らは,本件ルールミーティングにおいて空位説を採用することが確認されたと主張し,本件ルールミーティングに参加していたR,被告B3及びZの陳述書ないし報告書(甲36,38,39)には,通訳人であるTを通じ,Hから原告A2が負けた場合には空位との説明を受けた旨の記載がある。しかしながら,これらの陳述書等の内容は,本件ルールミーティング中にルールに関する発言は一切通訳していない旨の
Tのメール(甲41)の内容に反する上,IBFもWBAも保持説を採用している中で,被告JBC側からの働きかけもないのに(そのような働きかけが行われたことをうかがわせる証拠はない。),Hが自ら空位説を説明したという不自然なものであって,採用することができない。他方,Hから保持説の説明を受けたとするFの陳述ないし別件訴訟における供述
(甲105,118)は,IBFルールブックの内容と整合する上,たまたま本件ルールミーティングの場にいた外国メディアの記者であるaが,本件ルールミーティングの直後に保持説を前提とする記事を掲載していることや,メールによる回答(甲28,29)の中で同様の説明を受けた旨述べていることによっても裏付けられており,信用することができるとい
うべきである。また,被告B3が本件ルールミーティングにおいて作成したとされるメモ(甲37)には,原告A2が負けた場合空位となる旨の記載があるが,同人の本件ルールミーティング後の記者会見における発言に照らし,これはWBA王座に関する記載であると考えられるから,やはり本件ルールミーティングにおいて空位説が採用されたことの裏付けとなる
ものではない。さらに,本件試合後に被告JBCの公式のリングアナウンスが空位説を前提とするアナウンスをしたことについても,IBF王座の帰趨はIBFが決定する事項であって,被告JBCの意向ないし発表によって定まるものではないことからすれば,やはり空位説の根拠となるものとはいえない。したがって,被告らの主張は採用することができない。もっとも,前記認定事実のとおり,本件ルールミーティングは,Gがマネージャーと言い争いをして途中退出するなど,
相当混乱した状況にあり,
被告JBCが通訳を同行していなかったこともあって,被告B3には保持説が採用されたとの認識はなかったものと考えられ,本件ルールミーティング後の記者会見においてHが空位説を前提とする発言をし,マスコミもこれを前提とする報道をしていたことから,被告B3及び被告JBCは,
本件訂正記者会見が行われるまで,本件試合が空位説により行われたとの認識を有していたものと考えられる。

Fに対する処分理由について
前記認定事実のとおり,Fは,本件試合が終了するまで,本件試合に関するルールについて誤った報道がされていることや,Cジムの関係者もブ
ログで空位説を前提とする記載をしていたことを知らなかったものであり,原告A2のマネージャーとしていささか迂闊であったことは否めない。しかしながら,Fが本件ルールミーティングに出席し,IBFルールを認識していたことからすると,同人がIBF王座の帰趨について無関心であったとはいえないし,同人が本件ルールミーティング後の記者会見における
Hの発言を認識していなかったことからすると,本件試合に関するルールについてどのような報道がされているかを監視すべき義務があったともいえない。したがって,Fが本件ルールミーティングの終了後から本件試合が開始されるまでの間に空位説を前提とするマスコミ報道やCジムの関係者のブログに気付かなかったことは,Fのマネージャーとしての適格性を
否定する事情には当たらないというべきである。
また,Fが本件試合の直後にHによる本件訂正記者会見を開いたことについては,前記アのとおり,本件試合のルールとして保持説が採用されていたにもかかわらず,これと異なる報道がされ,リングアナウンスも混乱していた状況の下で,本件試合によるIBF王座の帰趨についての正確な情報をIBFの責任者と共に発表したにすぎず,本件試合の翌日に被告JBCに事前相談することなく記者会見を行ったことについても,もともと本件試合とは無関係な原告A3に関する記者会見の後に,主として記者からの質問に答える形で本件訂正記者会見と同様の内容を伝えたにすぎないから,いずれも,被告JBCに対する背信行為と評価されるような行為とはいえず,Fのマネージャーとしての適格性を否定するほどの事情には当
たらないというべきである。
被告らは,被告JBCに無断で記者会見を行ったことにより,ボクシング界の秩序を乱し,被告JBCの信用を毀損した旨主張する。しかしながら,本件試合のルールをめぐり混乱が生じたのは,Fの記者会見によるものというよりは,Hが本件ルールミーティング後に誤った発言をしたこと
が直接の原因であり,
その責任がFにあるということはできない。
そして,
Fによる記者会見は,被告JBCを誹謗中傷するようなものではなく,本件試合のルールとして保持説が採用されたことを説明したものにすぎないことからすれば,被告JBCの信用に傷がついたとすれば,それは,本件ルールミーティングにおいて採用されたルールを十分に確認しなかっ
た被告JBC自身にその原因があるというべきであって,Fによる上記記者会見が原因であるということはできない。確かに,本件試合が被告JBCの管轄する試合であったことからすると,上記の各記者会見に先立って被告JBCに事前に相談する方が望ましかったということはいえるが,記者会見の内容がIBFにおいて決定すべき王座の取扱いに関するもので
あったことからすれば,事前の相談をしなかったことが,被告JBCの信用を毀損するような行為に当たるとはいえない。したがって,前記被告らの主張は採用できない。ウ
Eに対する処分理由について
Cジムのクラブオーナー及びプロモーターであるEについては,証拠(甲106,119,乙16)によれば,本件ルールミーティングへの出席を含む本件試合の準備作業はすべてFにゆだね,自身は,本件試合の当
日に試合会場に赴き,会場のチェックや試合の準備,試合中の選手の援助等に従事したにすぎないことが認められるが,プロモーターとしての業務の一部をマネージャーに委託することが不当であるとはいえず(試合ルール41条2項),Eが本件試合についてライセンス保持者としての実務に一切関わっていなかったとまでは認められない。そして,それ以外の処分
理由については,本件試合に関するFの行動に責任を問われるような事実がないことは前記イにおいて説示したとおりであり,報道を監視すべき義務があったとはいえないことはEにおいても同様であるから,やはりEのクラブオーナー及びプロモーターとしての適格性を否定するほどの事情には当たらないというべきである。


結論
以上によれば,Eらについて本件処分の理由とされた事情は,いずれも
ライセンスの更新を不許可とすべき特別の事情には当たらない。そして,乙20によれば,Eらは,本件処分の2か月前にも被告JBCから厳重注意処分を受けていることが認められるものの,これは,Fが計量時間の変更の連絡を失念したという不注意によるもので,被告JBCとの信頼関係を失わせるような理由に基づくものではないから,当該処分歴を考慮しても,なお,Cジム所属のボクサーらに対し重大な不利益をもたらす更新不許可処分を行うことは処分の量定として相当性を欠くといわざるを得ず,
被告JBCが,Eらに対し,ライセンスの更新を不許可とした処分は,社会通念上相当性を欠き,違法である。なお,被告らは,本件処分は,本件委員会における評議において,弁護士である法務アドバイザーの関与の下で行われたものであることから,適法である旨主張する。しかしながら,事案整理表(甲92,乙46)及び検討が必要な論点を記載した検討していただきたい事項と題する書面(甲93,乙47)は,最終的な判断として本件処分をすべきことを積極
的に示唆するものではないし,むしろ,被告B3がIBFルールブックに署名していることが保持説の根拠になり得ることなどが指摘されていたほか,決定書案では,処分の選択肢として厳重注意処分も提案されていたというのであるから,本件委員会がこれらの書面で指摘された事項について検討を尽くしていれば,本件処分には至らなかった可能性も十分に考えら
れる。そうすると,本件委員会が本件処分に至ったのは,法務アドバイザーの助言に従った結果ではなく,むしろ法務アドバイザーの助言を十分に検討しなかったことによるものであるとも考えられるから,法務アドバイザーを検討過程において関与させたことをもって本件処分が正当化されるものとはいえない。したがって,被告らの前記主張は採用できない。


以上より,被告JBCのF及びEに対する本件処分は,裁量権を逸脱・濫用するものとして違法である。そして,本件処分は,被告JBCの業務の一環として組織的に行われたものであり,争点2において判示するとおり,本件処分を執行した理事長である被告B1に過失が認められるのであるから,被告JBCも不法行為責任を負う。

3
争点2(被告B1の責任)について
被告B1は,本件委員会の委員長兼被告JBCの理事長として,前記2のとおり,社会通念上妥当性を欠き違法な本件処分の判断に加わり,最終的に本件処分を執行したものである。

ところで,被告B1は,被告JBCの理事長として,本件ルールミーティングから本件試合に至る経緯を熟知していたものと考えられるところ,被告B3に対し本件ルールミーティングの状況を十分に確認するよう指示し,その結果の報告を受けるなどして,本件試合が保持説により行われることを認識することは十分に可能であったと考えられる。また,被告B1は,本件委員会における審議の過程において,IBF自身が本件試合が保持説により行われたことを公式に表明していることや,IBFルールブックに関係者が署名していること
などを認識するに至ったことは明らかであって,遅くとも本件処分が行われた時点では,本件試合が保持説により行われたことを認識することが可能であったというべきである。さらに,被告B1は,被告JBCの理事長として,プロボクシング業界の実情に通じていたのであるから,本件処分によってCジムに所属する原告3選手が日本国内において試合を行うことができなくなること
も十分に認識していたものと考えられる。そうすると,被告B1は,本件処分が裁量の範囲を逸脱する違法なものであること及びこれにより原告らが重大な損害を被ることをいずれも予見可能であったといわざるを得ず,本件委員会の委員長として本件処分を主導した上,被告JBCの理事長として本件委員会の結論をそのまま是認して本件処分を執行したことについて,過失があったと
いうべきである。
また,被告B1は,理事長として,被告JBCが裁量権を逸脱した違法な処分をすることがないように職務を執行すべき善管注意義務を負っていたところ,前記のとおり,本件試合が保持説により行われたことが十分に認識可能であり,本件処分により原告らが重大な損害を被ることも容易に予見できたにも
かかわらず,理事長として,原告らに対する不法行為に該当する本件処分を執行したのであるから,上記義務に重大な過失により違反したものというべきである。
したがって,被告B1は,原告らに対し,不法行為責任及び理事の第三者責任に基づき,原告らが被った損害を賠償すべき義務を負う。

4
争点3(被告B2の責任)について被告B2は,本件委員会の委員として,前記2のとおり,社会通念上妥当性を欠き違法な本件処分の判断に加わったものであり,また,被告JBCの事務局長代行として,本件処分に至る手続に密接に関わったものである。ところで,被告B2は,被告JBCの事務局長代行として,事務局長である被告B3を補佐して本件試合を指揮,監督すべき立場にあり,本来であれば,
本件ルールミーティングにおいて保持説が採用されたことを認識すべき立場にあった。そして,本件委員会における審議の過程において,IBF自身が本件試合が保持説により行われたことを公式に表明していることや,IBFルールブックに関係者が署名していることなどを認識するに至ったことは明らかであって,本件試合が保持説により行われたことを十分に認識可能であったと
いえる。また,被告B2は,本件JBCの事務局において業務執行に関与しており,本件処分によってCジムに所属する原告3選手が日本国内において試合を行うことができなくなることも十分に認識していたものと考えられる。そうすると,被告B2は,本件処分が裁量の範囲を逸脱する違法なもので,これにより原告らが重大な損害を被ることを予見可能であったといわざるを得ず,本
件委員会の委員として本件処分に賛同したことについて,過失があったというべきである。
したがって,被告B2は,原告らに対し,不法行為責任を負い,原告らが被った損害を賠償すべき義務を負う。また,被告B2の上記不法行為は,同じく本件委員会の委員であった被告B1の不法行為と共同して行われたものとい
えるから,被告B1との共同不法行為となる。
5
争点4(被告B3の責任)について
被告B3は,理事として,被告JBCが裁量権を逸脱した違法な処分をすることがないように職務を執行し,理事長がそのような違法な処分を判断,執行
することがないかどうかを監視すべき善管注意義務を負っていたところ,本件委員会が判断した違法な本件処分について,理事会において報告を受けたにもかかわらず,何らの異議も述べずにこれを是認したのであるから,前記監視義務に違反したといえる。
また,被告B3は,被告JBCの事務局長として本件試合を指揮,監督する立場にあり,本件ルールミーティングにもIBF及びWBAの各責任者と共に出席していたのであって,本件試合に適用されるルールを把握しておくべき立
場にあり,また,少しの注意を払えば容易に本件試合が保持説によって行われることを認識することが可能であった。しかるに,被告B3は,通訳を同行せずに本件ルールミーティングに臨み,IBFルールブックに署名しながら本件試合が保持説によって行われることを認識しておらず,かえって,本件ルールミーティング後の記者会見におけるHの誤った発言を信じて本件試合が空位
説で行われるものと誤信し,その後の空位説に基づく報道等を認識しながらこれを放置していたというのであるから,本件試合をめぐるその後の混乱に対する責任は大きいといわなければならない。
このように,被告B3は,本件試合を指揮,監督する者としてそのルールを把握すべき立場にあり,また,少しの注意を払えば本件試合が保持説により行
われることを認識することが可能であったにもかかわらずその注意を怠り,その結果,本件委員会が決定した本件処分の違法性を指摘することもなくこれを是認したのであるから,重過失により理事の任務を怠ったものといわざるを得ず,原告らに対する理事の第三者責任を免れない。
また,被告B3が被告JBCの事務局長としてプロボクシング業界に精通し
ており,本件処分によって原告らが重大な損害を被ることを容易に予見可能であったことを考慮すれば,原告らとの関係でも過失があったものといえ,不法行為責任を免れないというべきである。
6
争点5(Dの責任)について
Dは,理事として,被告JBCが裁量権を逸脱した違法な処分をすることがないように職務を執行し,理事長がそのような違法な処分を執行することがないかどうかを監視すべき善管注意義務を負っていたところ,本件委員会が判断した違法な本件処分について,理事会において報告を受けたにもかかわらず,何らの異議も述べずにこれを是認したのであるから,前記監視義務に違反したといえる。
もっとも,被告JBCにおいて,ライセンスの更新や懲罰に関する事項は資
格審査委員会又は倫理委員会に判断が委嘱されており,理事会はその報告を受けるにすぎないこと,Dは,被告JBCの会長ではあったものの,業務執行に携わらないいわゆる非執行理事であり,被告JBCの業務執行には直接関与していなかったこと,Dが,本件ルールミーティングや本件試合の経緯の詳細を把握していたことを認めるに足りる証拠はないことからすれば,Dが,本件委
員会から報告を受けただけで,本件試合が保持説により行われたこと及び本件処分が社会通念に照らし相当性を欠き違法であることを容易に認識できたとはいえないから,上記任務懈怠について重過失があったとはいえない。また,上記に述べた事情に照らせば,Dが本件処分を是認したことについて原告らに対する不法行為を構成するとも認められない。

したがって,Dが原告らに対し理事の第三者責任又は不法行為責任を負うとは認められず,D承継人らは原告に対し損害賠償義務を負わない。7
争点6(被告B4及び被告B5の責任)について
非執行理事であった被告B4及び被告B5は,理事として,被告JBCが裁
量権を逸脱した違法な処分をすることがないように,理事長の職務執行を監視すべき善管注意義務を負っていたところ,本件委員会が判断した違法な本件処分について,理事会において報告を受けたにもかかわらず,何らの異議も述べずにこれを是認したのであるから,前記監視義務に違反したといえる。しかしながら,被告JBCにおいて,ライセンスの更新や懲罰に関する事項
は,資格審査委員会又は倫理委員会に判断が委嘱されており,理事会はその報告を受けるにすぎないこと,被告B4及び被告B5は,被告JBCの業務執行には関与しておらず,本件ルールミーティングから本件試合に至る経緯の詳細を認識していたことを認めるに足りる証拠もないことからすれば,同被告らが,本件委員会の報告を受けただけで,本件試合が保持説により行われたことや本件処分が社会通念に照らし相当性を欠き違法であることを容易に認識できたとはいえないから,
上記任務懈怠について重過失があったとはいえない。また,

上記に述べた事情に照らせば,被告B4及び被告B5が本件処分を是認したことについて原告らに対する不法行為を構成するとも認められない。したがって,被告B4及び被告B5は,原告らに対し,理事の第三者責任及び不法行為責任を負わない。
8
争点7(原告らの損害及びその額並びに因果関係)について


本件処分と原告らの損害との間の因果関係

被告らは,本件処分は原告らに対する不法行為ではなく,本件は間接不法行為型の事案であること,本件処分による損害は,原告3選手が第三者であるボクシングジムや興行主との間の契約によって得られるはずであっ
た興行利益であるから,債権侵害型の事案であることを指摘し,不法行為が成立するためには,故意又は過失が必要である旨主張する。
しかしながら,ある違法行為により,その直接の名宛人でない第三者が損害を被った場合であっても,その違法行為を行った者は,当該違法行為と当該損害との間に相当因果関係がある限り,当該第三者に対し不法行為
責任を負うのであって,
本件処分が原告らを対象とするものでないことは,
直ちに原告らに対する不法行為の成立を否定する根拠になるものではない。そして,前記前提事実⑶のとおり,原告3選手が日本国内においてプロボクシングの試合を実施するためには,Eがクラブオーナーライセンスを保有することが前提となっており,Eのクラブオーナーライセンスが失われ
れば,事実上,原告3選手は直ちに日本国内においてプロボクシングの試合を実施することができなくなるのであって,原告3選手が日本国内においてプロボクシングの試合を実施することができないことによる損害は,本件処分により直接生ずる損害と評価し得る。また,プロボクシング選手の試合が原告会社のような興行主によって行われることも,本件処分に関し不法行為責任を負う被告B1,被告B2,被告B3及び被告JBCにとっては,当然に予見可能であったことは明らかである。そうすると,原告
らが本件処分により日本国内において試合を実施できなくなったことにより生じたものと評価できる損害は,上記被告らの不法行為との間に相当因果関係があるものと認めることができる。このことは,理事の第三者責任に基づく損害についても同様であって,原告らが本件処分により日本国内において試合をすることができなくなったことにより生じた損害は,理事
の任務懈怠により生じた損害と認めることができる。
また,原告らは,本件処分当時存在していた具体的な債権が本件処分により侵害されたとの主張をしているものではなく,本件処分による逸失利益を損害として主張しているのであるから,債権侵害による不法行為の事案とも異なるというべきである。

したがって,被告らの前記主張は採用できない。

被告らは,原告3選手は,①Cジムに新たな会長が就任してクラブオーナーライセンスを取得した上で,Cジム所属のボクサーとしてライセンスを申請する方法,②Cジムを離れてクラブオーナーライセンスを所持する
会長がいる他のジムに移籍し,当該他のジムのボクサーとしてライセンスを申請する方法のいずれかによりボクサーライセンスを更新することができたのであるから,原告3選手が日本国内で試合をすることができなかったことは本件処分が原因ではなく,本件処分と原告らの損害との間には因果関係がないとも主張する。

しかしながら,上記①及び②の方法は,被告JBCが,Cジムの新たな会長及びマネージャーによるライセンスの申請を許可すること,原告3選手が他のジムに移籍してボクサーライセンスを取得することを許可することが必要であるところ,被告B1は,CジムのEらが本件処分を受け入れることが,原告3選手がボクサーライセンスを取得して国内復帰するための条件であるとの立場をとり(認定事実⑷),実際にも,原告らが東日本ボクシング協会に対し,Nを会長とする新しいジム(K3BOX&FIT
GYM)の新規加盟申請をしたところ,同協会が同申請を却下したことから,被告JBCにおいてもNに対する新たなクラブオーナーライセンスを付与せず,また,原告A1が,被告JBCに対し,UNITED
ING

BOX

GYMへの移籍を申請したところ,被告JBCは,同申請をYに

関する理由を述べて却下していること(認定事実⑷)からすれば,上記①
及び②の方法によって原告3選手がボクサーライセンスを更新して日本国内でプロボクシングの試合をすることができるかどうかは,結局のところ被告JBC又は東日本ボクシング協会の意向次第であったといえ,実際に原告らがこれらの方法を試みたものの奏功しなかったことを考慮すれば,被告らの前記主張は採用できない。


被告らは,原告3選手が日本国内においてプロボクシングの試合を行うためには,原告3選手が所属するCジムの会長が被告JBCの発行するクラブオーナーライセンスを保有することが必要であるが,東日本ボクシング協会は,本件処分前にEを同協会から除名しているから,被告JBCが
Eのクラブオーナーライセンスを更新することはできず,本件処分と原告らの損害との間に因果関係はない旨主張する。
確かに,前記認定事実⑷記載のとおり,東日本ボクシング協会はEを同協会から除名処分としているところ,証拠(甲123,124,乙41,原告A1,被告B1)によれば,被告JBCは,慣行として,東日本ボク
シング協会を始めとする日本ボクシング協会に所属するクラブオーナーに対してのみライセンスを付与していることが認められる。しかしながら,試合ルールその他の被告JBCの規定等には,ボクシング協会の協会員であることをクラブオーナーライセンス取得の要件とする旨の定めはなく,上記取扱いは飽くまで慣行に基づく事実上のものであると考えられるから,被告らの前記主張は採用できない。


原告らの損害及びその額
前記2に説示したとおり,
違法な本件処分により,
原告3選手は,
事実上,
日本国内でプロボクシングの試合を行うことができず,ファイトマネーを得られなくなり,原告会社は,原告3選手の試合に伴う興行収入を得られなくなったのであるから,これにより相応の損害を被ったものと認められる。な
お,この点について,被告らは,原告3選手が日本国内において被告JBCの管轄外で試合を行うことが可能であると主張するが,弁論の全趣旨によれば,
日本における世界的に公認されたコミッションは被告JBCのみであり,世界的なレベルの試合を被告JBCの管轄外で行うことは事実上不可能であると認められるから,被告らの上記主張は採用することができない。
もっとも,本件処分は,あくまで平成26年におけるEらのライセンスの更新を許可しない旨の処分であって,ライセンスを永久に剥奪することを内容とするものではないところ,被告B2本人によれば,Eは,平成27年及び平成28年においてクラブオーナーライセンスの申請を行っていないことが認められるから,本件処分による損害は,平成26年中に生じたものに限
られるというべきである。
また,プロボクシングの試合を行うかどうかは,選手のコンディションや成績に大きく左右され,年に何回の試合を行うことができたかを確実に予測することは困難である上,弁論の全趣旨によれば,原告3選手は,従来から海外においても試合を行っていることが認められるから,本件処分がなかっ
た場合に国内においてどの程度の試合を行ったかも不確実である。さらに,ファイトマネーは,選手の成績,人気,テレビ放映されるかどうかなどの諸事情によってその金額が大きく変わるものであり,実際にも,証拠(甲59~61の各3)によれば,平成25年中の原告3選手のファイトマネーは300万円から1500万円と試合によって大きな開きがあるのであって,事前にその額を予測することは困難である。
以上の見地から,本件に現れたすべての事情を総合考慮して検討すると,
原告3選手は,試合の勝敗にかかわらず,平成26年中に少なくとも平成25年の試合と同規模の試合を各1試合は行うことができた蓋然性が高いものと認められるところ,平成25年における1試合平均のファイトマネーを参照すると,原告A1について1200万円,原告A2について750万円,原告A3について1100万円となるから,これらをもって原告3選手が本
件処分により被った損害と認めるのが相当である。
また,原告会社の興行収支については,証拠(甲62~77)によれば,試合によって赤字であったものから利益が8000万円近くに及ぶものまでさまざまであり,平成25年中の試合について見ても,赤字であったものが1興行ある上,利益があったものについてもその額は約9万円から約520
0万円まで様々であるから,年間の1試合当たりの興行収入の平均をもって原告会社の損害と認めることはできない。もっとも,本件に現れたすべての事情を総合すれば,原告3選手1人当たり1回の日本国内の試合で最低でも500万円程度の収益は得られた蓋然性が高いものと考えられるから,原告会社の損害としては,1500万円の限度で本件処分と相当因果関係のある
ものと認めるのが相当である。
他方,本件処分の名宛人ではない原告3選手が被った損害のうち,本件処分と相当因果関係のある損害は財産的損害に限られるというべきであり,また,原告3選手の精神的苦痛は財産的損害の賠償を受けることで相当程度慰謝されるといえるから,慰謝料請求は認められない。

9
争点8(過失相殺)について被告らは,原告らが被った損害は,原告会社の従業員であるEらの非違行為によって生じたものであり,原告会社はEらの使用者として,原告A1は原告会社の代表取締役として,Eらの非違行為について,管理監督上の過失がある旨主張する。
しかしながら,前記2に説示したとおり,Eらに非違行為に当たるような言
動は認められないから,被告らの前記主張は採用できない。
第4

結論
以上によれば,原告らの請求は,主文の限度で理由があるからこれを認容することとし,その余の請求には理由がないからこれを棄却することとして,主
文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第25部

裁判長裁判官

谷口安史
裁判官

島尻香織
裁判官

白井宏

(別紙1),(別紙2)は記載を省略
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