判例検索β > 平成31年(わ)第1103号
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄、収賄
事件番号平成31(わ)1103
事件名入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄,収賄
裁判年月日令和2年2月21日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第6刑事部
裁判日:西暦2020-02-21
情報公開日2020-03-30 12:00:20
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主文
被告人を懲役2年6月に処する
大阪地方検察庁で保管中の自動車1台(平成31年領第1842号符号499)を没収する。
被告人から金497万9620円を追徴する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,大阪市建設局企画部(平成28年度以前は管理部)工務課の職員として,大阪市が発注する電気工事の設計,積算等の職務に従事していたもの,Aは,電気工事の施工,請負等を業とするB株式会社の経営に実質的に関与し,営業,入札業務等を統括していたものであるが
第1

Aと共謀の上,別表1(掲載省略)記載のとおり,平成26年12月4日から平成30年9月14日までの間に開札が行われた大阪市発注の電気工事合計29件の各制限付一般競争入札に先立ち,Aが,各入札における秘密事項であって,最低制限価格帯算出の根拠となる各直接工事費等の教示を被告人に依頼し,被告人において,前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,平成26年12月1日頃から平成30年9月12日頃までの間,15回にわたり,大阪市a区bc丁目d番e号所在の飲食店Cなどにおいて,前記各直接工事費等をAに教示するなどし,もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより,公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をし,

第2

別表2(掲載省略)記載のとおり,平成26年12月4日から平成29年6月6日までの間に開札が行われた大阪市発注の電気工事合計27件の各制限付一般競争入札につき,自己が職務上知ることができた入札に関する秘密事項である直接工事費等をAに教示して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼として供与されるものであることを知りながら,平成26年12月1日頃から平
成29年5月30日頃までの間,14回にわたり,前記飲食店Cなどにおいて,Aから現金合計135万円の供与を受け,もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受し,
第3

大阪市発注の電気工事の制限付一般競争入札につき,有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,別表3(掲載省略)記載のとおり,平成27年10月27日頃から平成30年10月30日頃までの間,16回にわたり,大阪市f区gh丁目i番j号所在の飲食店Dなどにおいて,Aから現金合計300万円及び普通乗用自動車1台(販売価格410万円。大阪地方検察庁平成31年領第1842号符号499)の供与を受けるとともに,Aに旅行代金(合計62万9620円相当)を支払わせて財産上の利益の供与を受け,もって自己の職務に関し賄賂を収受した。

【法令の適用】


判示第1の所為につき,別表1(掲載省略)の番号ごとに
官製談合防止法違反の点

いずれも刑法60条,官製談合防止法8条

公契約関係競売入札妨害の点

いずれも刑法60条,96条の6第1項

判示第2の所為

別表2(掲載省略)の番号ごとにいずれも刑法
197条の3第2項,1項

判示第3の所為

別表3(掲載省略)の番号ごとにいずれも刑法
197条1項前段

科刑上一罪の処理
判示第1

刑法54条1項前段,10条(それぞれ1個の
行為が2個の罪名に触れる場合であるから,そ
れぞれ1罪として,重い官製談合防止法違反の
罪の刑で処断。ただし,罰金刑の任意的併科に

ついては,公契約関係競売入札妨害の罪の刑の
それによる。)
刑種の選択
判示第1の各罪

いずれも懲役刑を選択

併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び
犯情の最も重い判示第2の別表2(掲載省略)
の番号9の罪の刑に法定の加重)

没収
刑法197条の5前段(主文掲記の自動車1台
は判示第3の別表3(掲載省略)の番号11の
犯行により収受した賄賂)

追徴
刑法197条の5後段(判示第2の別表2(掲
載省略)の番号1ないし14,判示第3の別表
3(掲載省略)の番号1ないし10,12ない
し16の各犯行により収受した賄賂はいずれも
没収することができないので,その価額金49
7万9620円を追徴)

【量刑の理由】
本件は,大阪市職員として道路,公園施設等の電気工事の設計,積算等の職務に従事していた被告人が,飲食接待を受けるなどして懇意な関係にあった,電気工事の施工等を事業内容とする会社の実質的経営者(以下本件業者という。)に対し,①同市発注の電気工事合計29件につき,その入札に先立ち,入札における秘密事項であり,最低制限価格帯の算出根拠となる直接工事費等を教示した官製談合防止法違反及び公契約関係競売入札妨害,②うち27件の入札に関する情報の不正教示の謝礼として,本件業者から14回にわたり現金を収受した加重収賄,③平素の入札に関する有利かつ便宜な取り計らいについての見返りの趣旨で,本件業者から16回にわたり現金,自動車等を収受した単純収賄からなる事案である。
被告人は,3年9か月を超える長きにわたって,本件業者が求める度に秘密事項の教示に応じ続け,このような情報の教示ないし関係の継続の見返りとして,種々の賄賂を収受し続けてきたものであり,本件は,常習的で悪質な犯行である。収受した賄賂の総額は907万円余に上り,相当多額であって,設計,積算等の現場をあずかる係員として公共工事の適正な運営を担うべき立場にあった被告人と特定の業者との癒着した関係を背景とする一連の犯行により,公務の公正やこれに対する社会の信頼は大きく損なわれたといわざるを得ず,厳しい非難が妥当する。被告人が教示した情報を基に,17件の入札では本件業者の会社又はその協力業者が工事を落札したのであり,現に入札の公正が害された点もまた看過できない。弁護人は,被告人は本件業者の要望や提案を受動的,消極的に受け入れていたにすぎない旨主張するところ,確かに,被告人と本件業者との関係形成の発端は本件業者からの働き掛けにあり,被告人の側から本件業者に対して情報の教示を持ち掛けたり,賄賂を供与するよう明示的に要求していたとまでは認められない。しかしながら,本件当時,被告人と本件業者との間には,情報の教示や現金の授受が常態化し,本件業者から被告人の意向に沿った利益が供与される関係が形成されていたのであり,収受した現金を遊興費等として全額費消済みであること等に鑑みれば,被告人は,本件業者との関係を受け入れ,それを利用して自らの望む利益を得ていたといえ,その利欲的な態度は軽くみることができず,やはりその刑事責任は大きい。
そうすると,被告人が当公判廷で事実を認め,反省や謝罪の態度を示していること,本件のために懲戒免職等の処分を受けるなど相応の社会的制裁を受けていること,前科はなく,実父や出廷した内妻が今後の支援を約していること等,被告人のために酌むべき事情も認められるが,これらを十分に斟酌しても,主文掲記の実刑は免れないと判断した。
(求刑

懲役4年,没収及び追徴)

令和2年2月27日

大阪地方裁判所第6刑事部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

中寄淳敦村子公大
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