判例検索β > 平成28年(ワ)第3088号
損害賠償請求事件
事件番号平成28(ワ)3088
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和2年2月21日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第25民事部
裁判日:西暦2020-02-21
情報公開日2020-03-26 18:00:26
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主1文
被告らは,原告Aに対し,連帯して,5620万5243円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告らは,原告Bに対し,連帯して,1405万1311円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告らは,原告Cに対し,連帯して,1405万1311円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用は,これを20分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。

6
この判決は,第1~3項に限り,仮に執行することができる。

第1
1実及び理由
請求の趣旨
被告らは,原告Aに対し,連帯して,6556万3248円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
被告らは,原告Bに対し,連帯して,1639万0812円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
被告らは,原告Cに対し,連帯して,1639万0812円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要
本件は,被告会社が経営していたレストランD
(以下本件レストラン
という。で調理師として働いていたEが,

本件レストランにおいて長期間にわ
たって反生理的な長時間労働に従事した結果,過労等によって体力・免疫力が低下したために心筋炎を発症し,劇症型急性心筋炎のため補助人工心臓を装着することになり,最終的に脳出血によって死亡するに至ったとして,Eの妻及び両親である原告らが,Eの使用者である被告会社に対しては,会社法350条又は安全配慮義務違反に基づく損害賠償として,被告会社の代表者である被告Fに対しては,不法行為又は会社法429条1項に基づく損害賠償として,
治療費,逸失利益,慰謝料及び弁護士費用等の合計9834万4872円(Eの妻であった原告Aに対しては6556万3248円,Eの両親である原告B及び原告Cに対しては各1639万0812円)及びこれらに対する不法行為後の日(Eの死亡の日)である平成26年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を求めた事案である。
2
前提事実(当裁判所に顕著な事実及び当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって認定できる事実)
(1)

被告会社は,
食堂,
喫茶店の経営等を目的とする特例有限会社であったが,

平成25年11月30日に解散し,現在は清算手続中で,その清算人は被告Fである。被告Fは,被告会社の取締役であった者で,被告会社の発行済み株式の全てを保有している。
被告会社は,平成15年頃から,
Dとの名称のフレンチレストラン(本
件レストラン)を経営しており,被告Fはオーナーシェフとして本件レストランの運営に当たっていた。なお,被告Fは,被告会社を解散した後は,本
件レストランを個人で経営している。
(甲1,乙63,弁論の全趣旨)
(2)

E(昭和55年10月12日生まれ)は,平成21年6月頃から本件レス
トランにおいて調理師として稼働するようになり,平成24年11月23日まで本件レストランにおいて調理等の業務を担当していたが,感冒様の症状を訴えて,同月24日,G病院を受診したところ,急性心筋炎と診断されて入院した。その後,Eの症状は急激に悪化して心不全が進行し,Eは,同月26日にはH病院に転院して治療を受けていたが,症状の改善が見られず,補助人工心臓を装着せざるを得なくなった。Eは,平成25年9月2日に,一旦,H病院を退院したものの,その後,症状が悪化し,平成26年1月3日,再度,H病院に入院して治療を受けたものの,同年6月2日,脳出血によって死亡した。

(甲2,19,乙2,4)
(3)

原告AはEの妻であった者(平成23年1月30日に婚姻)であり,原告
BはEの父,原告CはEの母である。原告A,原告B及び原告Cは,Eの財産に属した一切の権利義務について,
法定相続分に従い,
原告Aが3分の2,
原告B及び原告Cが各6分の1の割合でそれぞれ承継した。

(弁論の全趣旨)
(4)

原告Aは,Eの死亡が被告会社における業務に起因するものであるとし
て,療養補償給付,遺族補償年金,葬祭料及び休業補償給付の支給を請求したが,大阪中央労働基準監督署長は,これらについて不支給とする旨の処分を行った。原告Aは,これを不服として審査請求を行ったものの,平成27
年11月にこれを棄却する決定がされ,
これに対する再審査請求についても,
平成28年8月に棄却する旨の裁決がされた。
そこで,原告Aは平成29年2月21日,国を被告として,上記の各処分の取消しを求める訴えを提起した(大阪地方裁判所平成29年(行ウ)第34号事件)同訴訟については令和元年5月15日,

上記の各処分をいずれも

取り消す旨の判決が言い渡された。同判決に対しては国が控訴しており,現在,大阪高等裁判所に係属中である(大阪高等裁判所令和元年(行コ)第96号事件)

(甲19,49,乙64)
3
争点
(1)

被告Fにおいて,Eの業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を怠ったといえるか否か等
(2)

被告Fの注意義務違反とEが心筋炎を発症して死亡するに至ったことと
の因果関係の有無
(3)

4
Eに生じた損害及びその額

争点に対する当事者の主張
(1)

争点(1)(被告Fにおいて,Eの業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積し
て労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を怠ったといえるか否か等)について
(原告らの主張)

使用者は,労働契約に基づき労働者を雇用して自らの管理下に置き,活動を行っているから,労働契約に付随した信義則上の義務として,自ら,あるいは履行補助者を通じて,労働者の労働時間・業務量並びに健康状態等を把握し,労働者の生命・健康が損なわれないように配慮すべき義務を負っているところ,このような義務は,使用者の労働者に対する不法行為
法上の注意義務でもある。

被告会社の代表者である被告Fは,被告会社の従業員であるEの健康に配慮し,その従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積してEの心身の健康を損なうことがないよう注
意すべき義務を負っていたのであるから,Eの心身の安全を確保するために,その時間外労働が80~100時間程度に及ぶことのないよう配慮すべき義務を負っていた。
しかしながら,Eは,Eが本件レストランに最後に出勤した日である平成24年11月23日から遡って6か月間においても,月曜日から土曜日
までの間,おおむね午前8時30分に出勤した後,業務に従事し,翌日の午前1時あるいは2時に業務を終了するという状況が継続しており,この間,60分間の休憩時間を取ったと仮定しても(なお,実際には,15分程度の休憩時間しかとることができなかった。,1か月当たり約250時)
間程度の長時間の時間外労働に従事し続けていて,この状態が1年以上にわたって継続していたことから,睡眠時間が5時間未満の状態が続き,極度の疲労・疲弊状態に陥っていた。なお,Eは,上記以外にも定休日であ
る日曜日に出勤することもあった。
また,Eは,上記のように極度の長時間労働を行っていたのみならず,その業務は仕込みや調理といった立ち仕事であったことから,質的にも過重性を有しており,その身体には大きな負荷がかかっていた。

このような状態であったにもかかわらず,被告FがEについて,疲労が過度に蓄積しないよう,その労働時間,業務量及び業務内容を管理した形跡は全くないのみならず,36協定の締結,雇用保険・労災保険・社会保険への加入,定期健康診断の実施といった措置も何ら取らず,時間外割増賃金すら支払っていなかった。


被告Fの上記のような行為は,Eに対する不法行為(民法709条)に該当し,被告会社は,Eに対し,会社法350条に基づく損害賠償義務を負うべきである。また,Eの使用者であった被告会社には,雇用契約上の安全配慮義務違反があることは明らかであり,
その代表者である被告Fは,
会社法429条1項に基づく損害賠償義務を負うべきである。

(被告らの主張)

争う。Eは,本件レストランの営業日には,午後4時30分から午後5時30分までの間,仮眠を含む休憩時間を取得していた。また,本件レストランの終了時刻は,平均すると午前1時頃であった。


一般に飲食業界においては,個人経営のレストランにおいて,勉強や修行の目的で働き始める者が多く,そのような者は労働条件を十分に理解した上で勤務している。Eも,独立することを目標にして本件レストランで働き始めたものであり,非常に勉強熱心で,仕事に真剣に取り組んでいたものである。
(2)

争点(2)(被告Fの注意義務違反とEが心筋炎を発症して死亡するに至っ
たこととの因果関係の有無)について
(原告らの主張)

Eは,長期間にわたって本件レストランで過酷な長時間労働に従事していた結果,疲れやすくなり,平成24年10月頃からは,口内炎がなかなか治らないような状態となっていたところ,
同年11月19日か20日頃,
発熱や関節痛の症状が出現していた。これは,心筋炎の初期症状であったと考えられるが,その後も,Eは,症状が改善しないままの状態で勤務を
続け,同月23日には,Eの体調が悪いことに気付いた本件レストランの顧客が被告Fに注意したことから,午後11時過ぎにようやく帰宅することを認められたような状況であった。Eは,同月24日朝,高熱や息苦しさを訴えてG病院を受診したが,感染性心筋炎と診断されて同病院に入院することになったものの,症状が急激に悪化し,同月25日には劇症型心
筋炎・急性心不全の状態になった。その後,Eは,劇症型心筋炎に伴う心筋障害のために心不全が進行した結果,補助人工心臓を装着することになったが,そのことが原因となって,平成26年6月2日,脳出血によって死亡した。

Eが罹患した心筋炎は,ウイルスの感染によるものであると考えられるところ,過労状態では免疫力が低下する結果,ウイルスが体内で増殖し,疾患を引き起こすとされており,また,睡眠不足によっても免疫力の低下が引き起こされることが知られている。Eは,本件レストランにおける長時間労働の結果,1日当たり5時間を大幅に割り込む睡眠時間しか確保す
ることができず,その結果,体内でウイルスが増殖し,ウイルス感染症により心筋炎を発症し,劇症化しやすい状態にあったと考えられる。Eが上記アのような経過を辿って死亡するに至ったのは,心筋炎の原因となるウイルスの感染・心筋炎の発症・心筋炎の劇症化の各過程において,本件レストランにおける反生理的な著しい長時間労働によって,Eの免疫力が低下していたことによるものである。このような長時間労働による免疫力の低下がなければ,Eが心筋炎を発症することはなかったと考えられ
るし,また,心筋炎が劇症化して死亡することもなかったということができる。

被告らは,心筋炎が劇症化したのは,Eの素因によるものである旨主張するが,Eに何らかの素因があったことについては,具体的に主張・立証されておらず,過労や極度の睡眠不足による免疫力の低下以外に,Eの心
筋炎が劇症化した原因は見当たらない。

以上によると,Eは,過労状態になければそもそも急性心筋炎に罹患しなかったか,罹患しても自然軽快しその予後も良好であったはずであったところ,過労状態や睡眠不足による免疫力の低下のために,心筋炎を発症し,これが劇症化したものと考えられるから,Eの極度の長時間労働と心
筋炎の発症及びその劇症化との間には相当因果関係があるというべきである。

また,Eは,平成24年11月23日以前に病院を受診し,治療を受けて休養する機会が与えられていれば,死亡に至るまでの病状の進展を未然に防止することが可能であったと考えられるところ,本件レストランにお
ける業務が多忙であったことから,休業して治療・休養する機会を得ることができなかった。この点からもEの長時間労働と死亡との間には相当因果関係が認められる。
(被告らの主張)

長時間労働による疲労の蓄積や睡眠不足によって免疫力が低下し,ウイルスに感染しやすくなったり,感染症の症状が重症化しやすくなることについては,確立した医学的知見はなく,そのような可能性があるにすぎない。
脳・心臓疾患認定基準が対象疾病を脳血管疾患(脳内出血,くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症)と虚血性心疾患(心筋梗塞,狭心症,心停止,解離性大動脈瘤)と定めているのは,医学経験則に照らし,長時間労働等
業務による負荷が長期間にわたって生体に加わることによって疲労の蓄積が生じ,脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるからであり,
本件のような免疫動態や感染症の発症

増悪と比較して論じることは医学的に妥当ではない。ウイルス感染による急性心筋炎は,従来から業務との関連を評価する脳・心臓疾患の認定基準
の対象疾病としては想定されておらず,想定すべきとする根拠のある医学的な知見は存在しない。

平成24年11月24日の時点においても,Eの免疫力が低下していたことを示す客観的なデータは見当たらず,むしろ,栄養状態・炎症状態・
各臓器機能等は健常者に近い状態であった。
また,心筋炎の発症因子としては,病原(ウイルス,細菌等)以外に個体因子(遺伝的背景,男女,年齢等)と環境因子(住居,職場,仕事内容,作業時間,睡眠時間等)が考えられるものの,疲労が免疫機能に与える影響はほとんど明らかになっておらず,過重労働によって免疫力が低下した
としても,感染症による急性心筋炎を発症しやすくなるということができるかどうかも不明である。
さらに,急性心筋炎が劇症化する予測因子も現時点では不明であるところ,現在の医学的知見を踏まえれば,ウイルス性心筋炎については,個人の免疫力の低下とウイルスへの感染しやすさ及び心筋炎の発症・重症度と
の相関性は認められず,むしろ遺伝的な個別性を背景として発症すると理解されている。すなわち,心筋炎は,免疫力が低下した個人が発症しやすいものではなく,心筋にウイルスが感染した場合に何らかの機序で過剰な免疫反応が発動され,その結果,重篤な心筋炎が発症するものと考えられており,心筋炎の発症・劇症化には個体側要因の関与が強く示唆されている。このことは,心筋炎が健常な若年成人,特に男性に多く発症する事実からも明らかである。


原告らは,Eの本件レストランにおける業務が多忙であったことから,休業して治療休養する機会を得ることができなかったなどと主張するが,・
平成24年9月頃以降,Eは独立に向けた準備をしたり,シェフ仲間と遅くまで会食をしたりするなどしており,常に業務に拘束されていたわけではない。また,被告Fは,同年11月23日よりも前に,Eから体調が悪
いとの申告を受けたことはなく,同日に体調が悪い旨の申告を受けた際には,病院を受診することを認めている。
また,
仮に,
本件レストランにおける業務が多忙であったことによって,
Eが治療機会を喪失したことが認められるとしても,Eがウイルスに感染したと推認される時点において治療が開始されていれば,死亡の結果を回
避することができたとの点については,医学的根拠等をもって立証されているわけではないし,Eの心筋炎が劇症化したことについては,遺伝的素因等の免疫異常が原因であったと考えられるから,安静にしていたとしても,死亡の結果を回避することはできなかったと考えられる。

また,Eは,平成24年11月25日には循環動態が破綻し,補助人工心臓による循環補助を要する状態になっており,心筋障害も非常に強く,自己心機能は廃絶し,回復が見込めないような状況であった。しかも,Eの死亡までの間には,平成25年3月14日に補助人工心臓の交換手術が実施されているところ,
重篤な患者に対する侵襲処置は非常に危険であり,

また,再手術は感染のリスク因子になっており,これが平成26年1月からの再入院中のドライブライン感染や敗血症の一つの原因となったものとも考えられる。

以上によると,被告Fの行為と,Eの心筋炎の発症や劇症化及びEの死亡との間には,相当因果関係が認められないというべきである。

(3)
争点(3)(Eに生じた損害及びその額)について

(原告らの主張)

積極損害
(ア)

281万4176円

治療費
40万2328円

(イ)

入通院雑費
Eの入通院期間は,平成24年11月24日から平成26年6月2日
までの556日間であるところ,この間の入通院雑費は,83万4000円(1日あたり1500円)とするのが相当である。
(ウ)

介護用品レンタル費用
2万5508円

(エ)

その他雑費
3万0500円

(オ)

通院交通費
2万1840円

(カ)

葬儀費用
150万円


消極損害(逸失利益)
(ア)

5253万0253円

Eは,被告Fの経営する本件レストランで経験とスキルを得るべく
超長時間労働に従事していたのであるから,仮に劇症型心筋炎を発症していなければ,料理長や有名店のシェフとして少なくとも年に500万円程度の収入を得られた蓋然性があった。平成26年度男性33歳の調理師に係る賃金センサスを基準とすると,その年収は337万0500円となるが,Eは前記のとおり超長時間労働に従事していたのであるから,かかる時間外労働についての割増賃金を含めて基礎収入を算定するのが合理的である。Eは,今後も少なくとも1か月あたり60時間程度の時間外労働に従事する蓋然性が高かったというべきであるところ,その場合の1か月の割増賃金はおよそ10万8945円(月収25万13
00円÷173時間×1.25×60時間)になることから,これらの点を考慮すれば,Eは,平成26年度賃金センサス・男性労働者(学歴計)の33歳の平均賃金である463万4300円程度の収入を得ることができた蓋然性が高いということができる。
(イ)

Eは,
一家の支柱であったことから,
その生活費控除率は30%とす

るのが相当である。また,Eは,67歳に至るまでの34年にわたって就労することが可能であった。
(ウ)

以上によると,
Eの死亡による逸失利益の額は,
5253万0253

円となる。
(計算式)4,634,300円×(1-0.3)×16.193=52,530,253円

慰謝料
(ア)

3406万円

入通院慰謝料

406万円

Eは,平成24年11月24日から平成25年9月2日までと,平成26年1月3日から同年6月2日までの434日間にわたって入院し,平成25年9月3日から平成26年1月2日までの122日間にわたっ
て通院した。そうすると,入通院慰謝料としては,406万円が相当である。
(イ)

死亡慰謝料
3000万円とするのが相当である。


弁護士費用
原告らは,原告訴訟代理人弁護士らに委任して本件訴えを提起することを余儀なくされた。これに係る弁護士費用としては,894万0443円が相当である。

以上合計

9834万4872円


Eの死亡によって,原告Aは,上記の3分の2に相当する6556万3248円の損害賠償請求権を,原告B及び原告Cは,上記の各6分の1に
相当する1639万0812円の各損害賠償請求権をそれぞれ相続した。(被告らの主張)
争う。
第3
1
争点に対する判断
争点(1)
(被告Fにおいて,
Eの業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積して労
働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を怠ったといえるか否か等)について
(1)

前提事実と後掲各証拠(なお,被告会社代表者兼被告F本人については,
被告F本人とのみ表記する。
)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事
実が認められる。

本件レストランの運営状況等
(ア)

本件レストランは,平成13年頃,被告Fが個人で経営を始めたが,
平成15年12月18日,被告Fが被告会社を設立し,以後,被告会社が本件レストランを運営することになった。被告会社の社員(株主)は被告Fのみであり,被告Fは同社の取締役(代表者)であった。
被告会社は,当初は,肩書地のビルの1階でフランス料理店である本件レストランのみを運営していたが,平成17年頃には同ビルの2階部分も借りて,同所でカフェレストラン等を経営するようになった。被告Fは,本件レストランで調理師として稼働する者としては,将来
独立する意思を有している者のみを採用していた。
(甲1,乙63,被告F本人)
(イ)

平成24年当時,本件レストランは,座席数が29席(カウンター9
席,テーブル20席)であり,ランチの営業が午前11時30分から午後2時
(ラストオーダーの時間)ディナーの営業が午後6時から午後1

0時(ラストオーダーの時間)であった。もっとも,後記のとおり,ランチ及びディナーの終了時刻は,ラストオーダーの1~2時間後になることが多かった。また,本件レストランの定休日は日曜日であった。本件レストランで就労していたのは,調理担当がオーナーシェフである被告F以外に2~3名程度,接客担当が1名であり,その他3名程度のアルバイト従業員がいた。
本件レストランは,リーズナブルでボリュームがあっておいしいとい
うことで評判が高い人気店であり,ランチ及びディナーともに満席あるいはそれに近い状態になることが多かった。
(甲19,47,49,乙63,原告A本人,被告F本人,弁論の全趣旨)
(ウ)

Eは,平成21年6月頃から本件レストランで調理師として稼働す
るようになり,平成24年11月23日までの間,同レストランで就労していた。なお,原告Aは,平成17年頃から本件レストランの2階のカフェレストランで接客担当として稼働していたが,平成22年12月31日に退職した。
(甲19,原告A本人)
(エ)

Eが実際に就労していた平成21年6月頃から平成24年11月ま
での間,本件レストランの営業日における一日のスケジュールは,概ね次のようなものであった。
午前8時00分
従業員が出勤し,仕込み作業を開始

午前11時30分

ランチ営業のオープン

午後2時

ランチ営業のラストオーダー
午後3時~

客の退店を待って一旦閉店し,従業員らで店
内を掃除した後,賄い料理の準備をし,賄い料
理を食べた後に休憩を取る

午後5時30分
午後6時00分

ディナー営業のオープン

午後10時00分

ディナー営業のラストオーダー

午後11時頃~

ディナー営業のオープン準備

客の退店を待って閉店した後に,従業員らで
店内を清掃し,翌日の発注や仕込みを行う

午前0時~2時頃
業務を終了して従業員全員で退店

なお,本件レストランでは,閉店時刻を明確に定めてはおらず,客に対して終業を理由に退店するよう促すことはしない方針であったことから,ランチ営業とディナー営業の終了時刻は,その日の客の滞在時間次第で決まることになっており,また,被告Fの知人のシェフ等が来店した場合や,2階のカフェレストランでワインの試飲会等が行われた場合
には,従業員らの退店時刻が午前3時を過ぎることもあった。
本件レストランでは,賄い料理を作る担当者は明確には決められてはいなかったが,基本的には在籍期間の短い調理担当の従業員が作ることになっていた。また,本件レストランの従業員らの,ランチ営業後の休憩時間(賄い料理を食べる時間を含む。
)は長くても1時間程度であり,

忙しい時には,ほとんど休憩を取ることができない場合もあった。本件レストランでは,定休日である日曜日に花見や筍堀りといったイベント等が行われることがあり,従業員は原則として出席することになっていたほか,日曜日に常連客からの予約が入ることもあったことから,従業員らは年5~6回程度は休日にも出勤していた。

(甲16の1・2,甲19,41,48,乙63,原告A本人,被告F本人)
(オ)

被告会社においては,
平成24年当時,
従業員にタイムカードを打刻

させるなどの退勤の管理を全く行っておらず,
被告会社は雇用保険,
労災
保険等にも加入しておらず,従業員らに定期健康診断を受診させることもなかった。また,被告会社は,従業員らに対して,休日・時間外手当を支給することもなかった。

(甲48,原告A本人,被告F本人)

平成23年頃から平成24年11月頃までのEの本件レストランにおける稼働状況等
(ア)

平成23年当時,
本件レストランで調理を担当していたのは,
オーナ

ーシェフである被告Fを除くと,平成21年よりも以前から本件レストランに勤務していたI,E及び平成23年4月頃から本件レストランに勤務するようになったJの3名であった。その後,Iが同年9月頃に退職することになったことから,本件レストランでは,同年7月頃に調理師1名を雇用したものの,同人は平成24年3月頃退職し,代わりに同
年4月にKが勤務するようになった。その後,Jは,同年10月30日に本件レストランを退職し,代わりに同年11月頃からは,スペイン料理店で勤務した経験のある調理師1名が勤務するようになった。
平成23年9月にIが本件レストランを退職した後は,
調理師の中で,
被告Fの次に経験が長いEが,前菜の調理等を担当するほか,その他の
調理師に対する指導や教育に当たっていた。
Eは,真面目な性格で,非常に仕事熱心であり,毎日の仕事を意欲的に行っており,被告Fも,Eの料理人としての技量を信頼し,期待を寄せていた。なお,Eは,本件レストランで稼働するようになって以降,定休日以外に休みを取ったことはなかった。

(甲19,原告A本人,被告F本人)
(イ)

Eは,本件レストランから自転車で5分程度のところに住んでいたことから,同レストランの営業日には,午前8時頃までには出勤し,本件レストランを開錠した後,翌日の午前1時から2時過ぎ頃まで稼働することが多かったことから,その間の休憩時間を30分として計算した場合,平成23年11月30日から平成24年11月23日までの間におけるEの1か月当たりの平均時間外労働時間は,約250時間に上っ
ていた。また,Eの睡眠時間は,定休日以外の日については,1日当たり5時間以下であることが常態化していた。
(甲16の1・2,甲19,37,49,原告A本人,被告F本人,弁論の全趣旨)
(ウ)

Eは,平成21年6月に本件レストランで稼働するようになった当
時から,3年程度本件レストランで稼働した後は,独立してバスク料理の店を開きたいとの希望を持っており,予めその旨を被告Fに伝えていたが,平成23年9月にIが退職したことなどもあって,予定どおりに退職することはできなかった。もっとも,Eは,遅くとも平成24年10月頃までには,被告Fに対して,本件レストランを平成25年春に退
職したいとの意向を伝えており,
被告Fにおいてもこれを了承していた。
Eは,平成24年9月頃以降,独立するための準備の一環として,本件レストランの休憩時間中に,バスク地方の焼き菓子(ガトーバスク)を作るなどしており,また,同年10月頃からは,原告Aと共に独立した際に使用する店舗を探したり,被告Fの知人の業者に店舗の内装関係
の相談をしたりしていた。
Eは,同年11月11日(日曜日)の夜には,被告Fの知人がオーナーをしているレストランで行われていた著名なシェフのフェアに参加し,その後,翌日の午前3時頃まで別の店に飲みに行くなどしていた。(甲41,乙62,63,証人L,原告A本人,被告F本人)


平成24年11月18日から同月24日までのEの状況等
(ア)

Eは,平成24年11月18日(日曜日)には,原告Aと共にIKE
Aに行って買い物をした後,レストランで食事をするなどしており,同日及び翌19日の時点では,
特段,
身体の不調を訴えることはなかった。
(甲45,原告A本人)
(イ)

Eは,
同月20日に帰宅した際,
頭痛や関節痛を訴えていたことから,

自宅にあったバファリンを飲んで就寝したものの,同月21日の朝の時点でも症状は変わらなかった。Eの症状は,同月22日になると更に悪化したものの,仕事が繁忙であったことから,被告Fに対して病院に行きたいと言い出せるような状況になく,帰宅した後に体温を図ったところ,38度5分であった。そのため,原告Aは何件かの救急病院に電話をしたものの,翌日に受診するように言われて全て断られた。
Eは,同月23日(祝日)
,原告Aと共に都島にある休日診療所を受診
し,インフルエンザの検査を受けたものの陰性であり,医師から,休日診療所では血液検査等ができないことから,翌日以降に病院に行くよう
に言われた。
原告Aは,
Eに対し,
仕事を休むよう求めたものの,Eは,
同日は本件レストランが予約で満席の状態であり,自分が出勤しないと店が困るとして,食事を出し終えたら帰宅すると述べて,そのまま本件レストランに出勤した。
被告Fは,同日,本件レストランに出勤したEから,病院に行き,医
師から改めて検査をした方がよいと言われた旨を聞いたものの,休むように指導することはなかった。また,被告Fは,Eがいつもであれば見逃すことのないような接客担当の従業員のミスを見逃すなどしていたことから,Eの体調が相当程度悪いことには気付いていたものの,Eに対しては,食事を出し終えたら帰宅するよう指示したのみであり,結局,
同日,Eが帰宅したのは午後11時50分頃であり,その時点で,体温は38度8分に上っていた。
(甲45,47,乙63,原告A本人,被告F本人)
(ウ)

Eは,同月24日早朝,胸が苦しいと言い出し,熱を測ると39度6
分に上っていたため,原告Aと共にタクシーでG病院に向かい,同病院のM医師の診察を受けた。その後,Eは,検査の結果,急性心筋炎と診断され,
同病院に緊急入院することになったが,
この時点では,
Eの心機能
は,全体としては保たれた状態であった。
しかし,Eの心機能は,同日夜から急速に低下し,同月25日には循環動態が破綻して循環補助を要する状態になり,そのままでは臓器障害が進行する可能性があったことから,同月26日,H病院に転院するこ
ととなった。
なお,Eが,同日,G病院を受診した際の血液検査の結果は以下のとおりであり,いずれも正常値の範囲内であった。
ヘモグロビン濃度

14.6g/dl

平均赤血球ヘモグロビン量

32.0pg

平均赤血球ヘモグロビン濃度

総蛋白

34.0%

6.8g/dl

アルブミン/グロブリン比

1.7

(甲45,48,乙2,35,39,原告A本人)
(エ)
H病院に転院した時点で,Eは,劇症型心筋炎の状態となっていて,
重症心不全によるショック状態に陥っており,両心室はほぼ無収縮の状態となっていたことから,同月26日,EにBiVAD(両心補助人工心臓)が装着された。その後,担当の医師は,Eの心機能について回復の可能性がないと判断したことから,同年12月19日,Eについて心移植登録をした上で,まず左心についてEVAHEART(補助人工心
臓)を植え込み,平成25年1月7日には,右心についてJarvik2000(補助人工心臓)が植え込まれた。
H病院における手術時に行われた心筋組織の病理学的検索によって,Eの症状は,リンパ球性心筋炎と診断されたが,その原因を特定することはできなかった。
Eは,同年3月14日,心不全症状に対処するために,送血管の修復術(LVAD送血グラフト狭窄解除術)を行ったが,この際にカテーテ
ルを挿入してステントを入れようとしたところ,ワイヤがEVAHEARTに巻き付いて回転が止まったことから,再開胸の上,EVAHEARTを取り換えるための手術が行われた。
(甲49,乙1~3,12,14,15,17,35)
(オ)

Eは,平成25年9月2日,リハビリを終え,全身状態が改善したこ
とから,H病院を一旦退院したが,同年12月下旬頃から倦怠感や仰臥位での呼吸苦を自覚するようになり,平成26年1月に入ると発熱も見られるようになったことから,同月3日,心不全の診断で同病院に再入院した。その後,Eには,同年2月1日には右後頭葉にくも膜下出血が見られたことから,コイル塞栓術が行われた。

Eは,同年4月2日以降は一般病室に移動するなど回復傾向にあったところ,同年5月27日,突然の嘔吐とともに意識混濁に陥った。検査の結果,Eには,左前頭葉に出血が認められたところ,脳障害が極めて強く,回復は難しいと考えられたことから保存的加療を継続することとなった。

Eは,同年6月2日,劇症型心筋炎による補助人工心臓装着状態における重篤な合併症である脳出血によって死亡した。
(甲2,乙4,39)
(2)ア
労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなど
して,疲労等が過度に蓄積すると,労働者の健康を損なう危険があるところ,労働基準法は,労働時間に関する制限を定め,労働安全衛生法65条の3は,作業の内容等を特に限定することなく,同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているのは,上記のような危険が発生するのを防止することを目的とするものであると解される。そして,このような事情に鑑みると,使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理
するに際し,業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積して労働者の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当である(最高裁平成10年(オ)第217号,218号

同12年3月24日第二小法廷判

民集54巻3号1155頁参照)


そして,Eは,被告会社が運営していた本件レストランで稼働しており
(前記(1)ア(ア)及び(ウ)参照)
,Eの使用者は被告会社であったところ,被
告Fは被告会社の代表者であり
(前記(1)ア(ア)参照)Eを始めとする従業

員らを,直接,指揮・監督する立場にあったのであるから,Eに対して,上記のような注意義務を負っていたことは明らかである。

そこで,本件において,被告Fが上記注意義務を怠ったということができるか否かについて検討するに,前記(1)ア及びイで認定したところによると,①

Eは,平成23年頃から平成24年11月頃までの間,本件レ

ストランの営業日(月曜日から土曜日まで)においては,毎朝午前8時頃までには出勤した後,翌日の午前1時~2時過ぎ頃まで稼働することが多く,その間,ランチの営業が終わった後に休憩を取ることが可能であったものの,休憩時間は賄い料理を食べる時間を含めて長くても1時間程度であり,忙しい時には,ほとんど休憩を取ることができない場合もあったこと,②

Eの,平成23年11月30日から平成24年11月23日まで

の約1年間における1か月当たりの平均時間外労働時間は,休憩時間を1日当たり30分として計算した場合,約250時間に上っており,睡眠時間も定休日以外の日については1日当たり5時間以下であることが常態化していたこと,③

Eは本件レストランで調理を担当しており,平成2

3年9月以降は,本件レストランで稼働する調理師の中で,被告Fの次に経験が長く,被告FもEの技量を信頼していたこともあって,その他の調理師に対する指導や教育を行う立場であったこと,④本件レストランの

定休日は日曜日であったが,日曜日に予約が入ったり,本件レストランのイベントが行われるなどしたことから,Eは,年5~6回程度は,日曜日にも稼働していたこと,⑤

被告会社においては,平成24年当時,従業

員らの退勤の管理を全く行っておらず,従業員らに定期健康診断を受診させることもなかったこと,⑥
被告Fは,同年11月23日に,Eが体調

の不良を訴えて休日診療所を受診した後に本件レストランに出勤した際にも休息等を取るよう命じることもなく,Eの体調が相当程度悪いことを認識していながら,深夜に至るまで,ほぼ,通常と同様の業務に従事させていたことの各事実を指摘することができる。
そして,Eの上記のような恒常化した著しい長時間労働という過酷な勤
務は,被告Fの指示の下に行われていたのであるから,被告Fにおいて,上記のようなEの勤務実態を認識していたことは明らかであるところ,このような状況が長期間にわたって継続した場合には,Eが,十分な睡眠時間を確保することができなくなり,その結果,業務の遂行に伴う疲労が過度に蓄積する状況になることは容易に想定することができたということ
ができる。
しかしながら,
被告Fは,
そのような状況に全く関心を払わず,
平成24年11月24日にEが心筋炎との診断を受けて入院するに至るまでの間,Eの負担を軽減させるための措置を一切講じようともしなかったのみならず,同月23日にEが体調の不良を訴えて休日診療所を受診した後に本件レストランに出勤した際にも休息等を取るよう命じることも
なく,
Eの体調が相当程度悪いことを認識していながら,
深夜に至るまで,
ほぼ,通常と同様の業務に従事させていたのであるから,被告Fに上記の注意義務違反(過失)があったことは明らかであるといわざるを得ない。2
争点(2)(被告Fの注意義務違反とEが心筋炎を発症して死亡するに至った
こととの因果関係の有無)について
(1)
前記1(1)ウで認定したとおり,Eは,平成24年11月20日頃から頭
痛や関節痛を訴えるようになり,同月24日には急性心筋炎と診断されたところ,その後,急速に症状が進行して劇症型心筋炎に起因する重症心不全によるショック状態に陥って心機能の回復が見込めない状況になり,植込み型の補助人工心臓を装着することを余儀なくされた結果,重篤な合併症である脳出血を起こして,
平成25年6月2日に死亡するに至ったというのである。

この点について,原告らは,被告Fの注意義務違反によって,Eは過労状態となって免疫力が低下し,その結果,ウイルスに感染した際に,これが体内で増殖しやすくなり,そのために心筋炎を発症し,これが劇症化するに至った旨主張するとともに,Eにおいて平成24年11月23日以前に病院を受診し,治療を受けて休養する機会が与えられていれば,死亡に至るまでの
病状の進展を未然に防止することが可能であったところ,その機会が与えられなかったことも心筋炎による死亡という経過を辿った原因となっている旨主張する。
そこで,以下では,被告Fの注意義務違反とEが心筋炎を発症して死亡するに至ったこととの因果関係の有無について検討する。

なお,訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである(最高裁第二小法廷昭和50年10月24日判決・民集29
巻9号1417頁)から,本件においてもこのような観点から検討することとする。
(2)

後掲各証拠によると,心筋炎及び劇症型心筋炎の病因,病態,発症機序,
並びにウイルス感染症と免疫機能の関係等に関する医学的知見は,おおむね次のとおりである。

心筋炎及び劇症型心筋炎の病因,病態並びに発症機序等について
(ア)

心筋炎の病因と分類

a
心筋炎は,心筋を主座とした炎症性疾患であり,多くは細菌やウイルスなどの感染によって発症するが,薬物等による物理的刺激,代謝障害や免疫異常等が原因になって発生する場合もあり,原因が不明の場合(特発性)もある。
心筋炎は,
組織学的特徴から,
リンパ球性心筋炎,
巨細胞性心筋炎,

好酸球性心筋炎,肉芽腫性心筋炎に分類される。病因的には,リンパ球性心筋炎はウイルス感染によるものが多く,巨細胞性心筋炎,好酸球性心筋炎,肉芽腫性心筋炎は薬物,アレルギー性疾患,自己免疫疾患,全身疾患等の合併症として認められることが多い。
心筋炎は,発症様式により急性心筋炎と慢性心筋炎とに分類され,
急性心筋炎の中で,発症初期に心肺危機に陥るものは劇症型心筋炎と呼ばれる。また,慢性心筋炎には遷延性と不顕性の二型がある。
b
感染による心筋炎においては,
ウイルス感染による頻度が最も高く,

急性心筋炎の原因ウイルスとしては,心筋に親和性が高いピコナウイルス科のエンテロウイルス属に属するコクサッキーB群ウイルスが最
も高頻度とされてきたが,近年では,分子生物学的検査法の進歩により,アデノウイルス,パルボウイルス及びヒトヘルペスウイルスも高頻度に検出されるようになっている。
(甲34,乙16,18,38)
(イ)

急性心筋炎の症状及び徴候等
多くの急性心筋炎の患者は,かぜ様の症状(悪寒,発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感)や食思不振,悪心,嘔吐,下痢等の消化器症状が先行し,その後,数時間から数日の経過で心症状(心不全徴候,心膜刺激による胸痛,
心ブロックや不整脈及びこれらに随伴する症状)
が出現する。
軽症例を含めると,心筋炎は発生頻度の少ない疾患ではないと考えられるが,症状や徴候が非特異的であるため,臨床上,症状や症候が明白な心筋炎はまれであるとされている。
(甲34,乙18)
(ウ)
a
心筋炎の急性期管理と治療及び予後
一般的な急性心筋炎は,炎症期が1~2週間持続した後に回復期に入る。

心筋炎では,心筋壊死とともに炎症性物質による心筋細胞機能障害が起こり,両者が相まって心ポンプ失調を形成するが,多くの場合は炎症に伴う可逆的な心筋機能低下であり,急性期に全く収縮しなかった左室壁が回復期にはほぼ正常化することもまれではない。したがって,心筋炎に対する介入は,原因に対する介入,自然軽快までの血行
動態維持
(循環及び呼吸動態に基づく心肺危機管理)炎症性物質によ

る心筋機能抑制からの解放の3つに集約される。もっとも,ウイルス性心筋炎に対して一般的に臨床使用可能な抗ウイルス薬はまだ開発されていないし,炎症性物質(炎症性サイトカイン等)による心筋機能抑制に対する介入法として評価の定まったものがあるわけではない。
(甲34,乙18)
b
急性心筋炎と診断された場合でも,心徴候のみで心症状が顕著でない場合には,入院した上での安静臥床と,バイタルサイン,心電図,心エコー図,心筋トロポニン値等の注意深い経過観察のみで対処でき
るが,急変時の心肺危機管理に迅速対応が可能な状況を構築しておく必要がある。また,不整脈に対する治療や心不全に対する管理も必要である。
(甲34,乙18)
c
ウイルス感染の増悪因子としては,
過労,
ステロイドホルモン投与,

妊娠,慢性低栄養状態などの条件因子があるが,心筋炎における急性期の治療の第一は,それらの除去,すなわち安静(急性炎症が消退す
る間の3週間から1か月以上)
,心負荷の軽減を図ることが必要であ
るとされている。
(乙91)
d
また,活動性ウイルス感染時に運動をすることでウイルス複製が亢進し,生存期間が短縮する可能性があるため,急性心筋炎患者は身体
活動を制限する必要があるとされている。
(乙72の1・2)
e
昭和57年度及び昭和60年度に行われた心筋炎に関する全国アンケート調査によると,心筋炎の予後は,約50%が後遺症を全く残さずに治癒し,約40%は何らかの後遺症を残すが,一般に心異常の程
度は軽く良好であり(ただし,一部の症例においては拡張型心筋症様の病像を呈することがある。,約10%が死亡に至っていた。

(乙76)
(エ)
a
急性心筋炎の病態及び発症機序とその経過
心筋炎の大部分は,ウイルス性であると考えられており,その代表はコクサッキーウイルスである。このウイルスに感染すると,上気道感染(発熱,咳嗽,咽頭痛,頭痛)や消化器症状(悪心,嘔吐,腹痛)といった前駆症状が生じるが,ウイルス感染による症状が軽微かあるいは不顕性に終わった症例では,心症状が初発症状となる。

ウイルスの心筋細胞内での複製(増殖)は10~14日までで,その後は中和抗体によるウイルスの排除,感染細胞融解,細胞障害性の抗体産生及び細胞免疫の働きにより心臓に炎症が生じることになる。すなわち,ウイルス性心筋炎はウイルス感染による心筋細胞への直接傷害と,それに引き続くウイルスに感染した心筋細胞を除去しようとする生体の免疫反応によって,心筋細胞に重大な損傷が生じた結果として発症するものである。

(乙36,65,91)
b
ウイルス性心筋炎の病態は,①

ウイルスの心筋細胞への感染,②

自然免疫(抗原非特異的な免疫応答)による防御,③原特異的な反応)による防御,④
獲得免疫(抗

炎症の消失の4期に分けられる。

まず,ウイルス感染による心筋細胞の直接的な傷害が生じた場合,これに反応して,樹状細胞(DC)
,ナチュラルキラー(NK)細胞及
びマクロファージ等の自然免疫細胞が心臓に移動して,特異的な適応免疫(獲得免疫)が反応することができるまでウイルスの増殖を制限することになる。ウイルス感染後4~5日までは,獲得免疫が十分に
発動されておらず,自然免疫がウイルスの増殖を抑える重要な役割を果たしている。なお,ウイルス感染に対する自然免疫の最も重要な役割は,サイトカインの産生誘導である。サイトカインは,免疫担当細胞の成熟化や活性化を誘導し,自然免疫に続く獲得免疫の成立を促してウイルス除去に働くが,その一方で,炎症性サイトカインが有する
陰性変力作用や細胞障害作用は心機能を低下させ,結果として心筋炎を重症化させることがある。
自然免疫による排除から逃れたウイルスは増殖し,プロテアーゼ等を産生して直接心筋傷害や心筋細胞壊死を引き起こし,心筋ミオシン等の細胞内蛋白の放出,
NK細胞,
マクロファージの浸潤に引き続き,

T細胞が浸潤する。このような炎症性細胞が心筋組織内に浸潤することによって,心筋傷害が起き,心筋炎が惹起されることになる。
自然免疫の活性化は,ウイルス抗原特異的なT細胞やB細胞の活性化と増殖を引き起こし,数週間から数か月の間,これら獲得免疫が中心的な役割を果たすことになる。感染細胞や抗原提示細胞の主要組織適合抗原(MHC)クラスⅠ分子上に,ウイルス抗原ペプチドが抗原提示され,細胞障害性T細胞(CD8陽性T細胞)から産生されたパーフォリンによる感染細胞の傷害が惹起され,また,ウイルス抗原特異的ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)が活性化し,CD8陽性T細胞やB細胞の活性化を促す。活性化したB細胞はウイルス抗原への中和抗体を産生し,ウイルス排除を促す。これらの反応は,心筋の亜
急性~慢性炎症を引き起こし,心筋壊死,線維化,リモデリングが生じ,最終的に拡張型心筋症に特徴的とされる瘢痕形成を伴う心室拡張を呈する。
他方,ウイルス性心筋炎の経過中に自己免疫異常をきたし,これによって自己免疫性心筋炎が誘発されることがある。すなわち,ウイル
スを認識するCD4陽性T細胞が心筋自己蛋白を抗原として認識し,心筋細胞を攻撃する可能性や,ウイルス感染による心筋組織の破壊により心筋細胞内蛋白抗原が露出し,それらの自己蛋白に反応する自己反応性T細胞が活性化されて自己免疫を誘導する反応も示唆されている。

ウイルス性心筋炎においては,ウイルスの持つ生物活性,ウイルスに対する宿主の防御機構,過剰な防御機構による自己傷害の3つの因子が複雑に絡み合い,
病勢が刻々変化しているものと考えられている。
現在のところ,心筋炎が劇症化,遷延化する機序は解明されていないものの,免疫応答の異常によるウイルスの持続感染,自己抗体によ
る心筋細胞への持続的障害,Th1タイプのT細胞(炎症早期に活性化される)とTh2タイプのT細胞(炎症を抑制する作用を有する)のバランスが崩れることによる自己免疫機序の遷延や再燃等が,機序の一部であると考えられている。
(甲63の1・2,乙36,38,39,65,乙66の1・2,乙67の1・2,乙72の1・2,乙91)
(オ)
a
心筋炎発症に関連する危険因子
一般に,心筋炎発症にかかわる因子としては,病原(ウイルス,細菌等)以外に個体因子(遺伝的背景,男女,年齢等)と環境因子(住居,職場,仕事内容,作業時間,睡眠時間等)が考えられるが,個体・環境因子との関連に関する疫学的研究は少ない。
(乙39)

b
環境因子,特に労働環境(職場,仕事)と急性心筋炎の発生率に関しては,1977年から1996年までの20年間に,フィンランド陸軍に徴集された平均年齢約20歳のフィンランド人男性67万2672名について行われた急性心筋炎の発症例の調査結果があるが,
これによると,心筋炎の発症率は0.17%であり,同じ年齢の民間人と比較すると高い可能性があった。その理由としては,市民生活よりも軍事的状況下では呼吸器病原体による感染が促進されることと,徴集兵は,激しい訓練を受けていたことから,これが心筋炎の増悪因子となった可能性が高い。これは,実験用マウスのウイルス感染にお
いて,体を動かすこと(運動や訓練等)が心筋に関するウイルス複製を著しく上昇させることが証明されていることからの推測である。なお,アメリカ空軍の新兵においては,心筋炎が訓練に関連する突然死の根本原因として最も多く見られたとの報告もあることから,急性感染症罹患中は激しい運動を回避することが必要であると考えられて
いる。
(乙24,39,乙43の1・2,乙56)
c
個体因子との関係では,心筋炎やDCM(非虚血性拡張型心筋症)は,男性が女性よりもわずかに多いとされており,心損傷に対する心臓の急性反応は,性ホルモンの影響を受けると考えられている。
また,フィンランドにおける致死性心筋炎の発生率についての調査結果においても,男性の発症率は女性の発症率よりも高いとされてい
る。
(乙70の1・2,乙74の1・2)
d
さらに,心筋炎の原因となる心臓作用性ウイルスには,咳嗽の原因である一般的なウイルスが含まれており,約90%の健常者が生涯にわたってこれらのウイルスのうち1種類以上に罹患するといわれて
いるが,必ずしも心臓疾患を伴うわけではなく,特定のごく少数のみが臨床学的症状を示すことになる(ただし,既存の研究に用いられた診断ツールの感受性の低さが一因となって,実際の発症率が低く評価されている可能性があり,心筋炎の正確な発生率は未だ明らかになっていない。。このように,ウイルス感染後に心筋炎の臨床症状を発症)

しやすい人もいれば,後に自然に改善する人,あるいは後に突発性DCMへ進行する人もいることからすると,何らかの遺伝子的背景が,臨床的心筋炎症状の進行や心臓のウイルス感染後のDCMの進行に必須であると考えられている。
(乙30の1・2,乙69の1・2,乙72の1・2)

(カ)

劇症型心筋炎の診断と治療

a
劇症型心筋炎とは,血行動態の破綻を急激にきたし,致死的経過を
とる急性心筋炎であり,

急性及び慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版)(甲34,乙18。以下「本件ガイド

ライン」という。
)においては,体外循環補助を必要とした重症度を有
する心筋炎をその対象としている。
劇症型心筋炎の中には,発症初期から血行動態の破綻をきたす例もあるが,一方で軽微な初期症状でも急速に劇症化へ向かう症例が存在し,その病状変化は,日単位から,ときに時間単位で進行する。
初発症状としては通常の急性心筋炎と同様に,発熱を伴う風邪様症状や,嘔吐・下痢などの消化器症状を併発する。主症状としては,ショックを含む心不全症状と不整脈による動悸や失神,長時間続く胸痛が多くみられる。
(甲34,乙18)
b
2000年(平成12年)に発表された劇症型心筋炎の長期予後に
ついての調査結果(乙46の1・2)においては,劇症型(急性)心筋炎15例,非劇症型(急性)心筋炎132例について,11年後に心臓移植を受けることなく生存していた患者は劇症型心筋炎では93%であったのに対し,非劇症型心筋炎では45%であるとされており,また,2002年(平成14年)に発表された同様の調査結果(乙45の
1・2)においても,劇症型心筋炎と診断された52例中30例(57.7%)が生存し,社会生活に復帰したとされていて,劇症型心筋炎の予後は,比較的良好であるとされていた。
そして,本件ガイドラインにおいても,急性心筋炎の多くはウイルス感染に起因し,風邪類似の一相性経過をとることから,心筋炎極期
を乗り切ることができれば,劇症型であっても自然軽快し,その予後は良好であるとされているので,最も重要な急性期管理方針は,循環動態の補助を行うことによって,心筋炎による血行動態の破綻を回避し,自然回復の時期までの橋渡しをすることである旨が記載されていた。
(甲34,乙18,乙45の1・2,乙46の1・2)

c
また,新潟県内で発症した劇症型心筋炎の集計(1998年(平成10年)頃に実施)によると,18例のうち12例は,最初の医療機関受診時には感冒の疑いで自宅療養を指示されており,帰宅後に病態が悪化し,1~2日後に入院となっていたところ,最初の医療機関受診時に入院観察の方針となった6例は全員生存退院できたのに対して,初回に自宅療養の方針となった12例中9例は急性期に死亡したとされ
ている。
(乙89)
d
他方,2001年(平成13年)5月から2016年(平成28年)
11月までの間に急性心筋炎と診断された187例(劇症型心筋炎が55例,非劇症型心筋炎が132例)を調査対象として行われた劇症
型心筋炎と非劇症型心筋炎の生存率等の調査結果(乙47の1・2)によると,母集団全体のうち,院内死亡又は心移植術を行った劇症型急性心筋炎は25.5%であったのに対して,非劇症型心筋炎は0%であり,9年目の長期心移植未実施生存率は,劇症型心筋炎の患者は64.5%であったのに対し,非劇症型心筋炎の患者が100%であ
ったとされており,劇症型心筋炎の短期・長期予後は,非劇症型心筋炎よりも悪いとされている。
(乙47の1・2)
e
心筋炎が劇症化する予測因子は,現時点では不明であるが,発生個
体側の因子として,罹患時の心筋病変の範囲・重症度や完全房室ブロ
ック・重篤な心室性不整脈の有無,腎機能等の諸因子が関与していることが推定される。また,心筋炎の発症要因と同様に,患者個体の遺伝的・自己免疫的素因等の関与によって劇症化しやすいとも考えられる。
(乙24,36,39)


ウイルス感染症と免疫機構の関係等について
(ア)

感染症と免疫に関する一般論
感染症は複雑であり,病原体と宿主との流動的な関係に影響される。
この関係は,病原体が宿主防御に打ち勝てるか,増殖して感染を成立させられるか,病原体が次の宿主に感染できるかなどの要素によって変わってくる。それに加えて,宿主側は病原体を排除しようとするが,この宿主側の状態が,病原体の感染・発症の成立を決定する重要な要素であり,通常,感受性は,宿主の防御能の低下と関係している。病原体が体内に侵入しても,全ての場合に感染(症)を起こすとは限らず,病原体に対する感受性は個人によって異なっているが,同じ人でも栄養や休養
状態などで異なり,低栄養や過労の状態では,一般に病原体に対する抵抗力(生体防御能)が弱くなり,感染して発病しやすくなる。
生体防御は,自然免疫応答と獲得免疫応答に分けられており,この2つの強力な防御システムは,ほとんど全ての病原体に対応できるが,何らかの理由でこれらの防御機構が損なわれた場合には,感染症による傷
害の可能性が高くなる。
(甲38の文献1・文献2)
(イ)

睡眠遮断による細胞免疫応答の低下
長期的かつ重度の睡眠遮断は,自然免疫応答及び細胞免疫応答(獲得
免疫応答)の変化をともなう。医学的及び精神医学的に健康な男性ボランティア42名を対象として,夜の早い時間帯における部分的睡眠遮断による,循環白血球数,ナチュラルキラー(NK)細胞の数及び細胞毒性,リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の数及び活性,インターロイキン-2(IL-2)産生に対する影響を調べたところ,午後10時から午前3時にかけて睡眠遮断を行った後に,NK細胞数,NK細胞
数当たりのNK活性,LAK活性及びLAK前駆体数当たりのLAK活性によって測定される自然免疫応答の低下が認められるなどした。これらのデータからは,睡眠が免疫調整に関与し,わずかな睡眠遮断でも自然免疫応答とT細胞のサイトカイン産生が低下することを示している。(甲39,甲40の8の1・2,乙39,乙54の1・2)
(ウ)

睡眠と風邪感受性についての実験結果
合計164名の健康な男女(年齢層は18歳から55歳まで)に対し
て,実験前7日間に活動量計を装着し,同時に睡眠日誌をつけて睡眠を評価するとともに,抗体レベルを測定するために血液を採取した後,6日間にわたってホテルに隔離して,1日目にライノウイルス(風邪の病原体として最も多いとされているウイルス)を含む点鼻薬を処方し,風邪に罹患するか否かを5日間にわたって鼻汁を採取して判定し,更にウ
イルス付与から28日後に,血清試験のために血液を採取した。その結果,164名中124名がライノウイルスに感染し,そのうち48名が風邪と評価されたが,ロジスティック回帰分析の結果,活動量計由来の睡眠短縮は,風邪への罹患の増加と有意に関係しており,5時間未満の睡眠と,5時間以上6時間未満の睡眠時間は,7時間睡眠を基準とした
場合,風邪への罹患リスクは統計学的に増加していた。
(甲39,甲40の7の1・2,甲43,乙39,乙55の1・2)(3)ア

前記1(1)ウ(エ)で認定したところによると,Eの心筋炎は劇症型心筋
炎であり,その原因については特定されてはいないものの,H病院における手術時に行われた心筋組織の病理学的検索によって,Eの症状はリンパ
球性心筋炎と診断されたというのである。そして,前記(2)ア(ア)で認定したとおり,リンパ球性心筋炎は,ウイルス感染によるものが多いとされているところからすると,Eの心筋炎は,ウイルス感染による急性心筋炎であった可能性が高いということができる。

前記1(1)ア及びイで認定したところによると,
Eは,
平成21年頃に本
件レストランにおいて勤務するようになって以降,過酷な長時間労働に従事しており,平成24年11月24日にG病院を受診して心筋炎と診断されるまでの約1年間における1か月当たりの平均時間外労働時間は,約250時間(ただし,1日当たりの休憩時間を30分として計算した場合)にも上っており,その睡眠時間は,定休日以外の日については,1日当たり5時間以下であることが常態化していたというのであるから,心筋炎を
発症した当時,著しい長時間労働とこれに伴う睡眠不足によって,過労の状態にあったことは想像に難くないところである。なお,前記1(1)ウ(ウ)で認定したところによると,EがG病院を受診した際の血液検査の結果は正常値の範囲内であったというのであるが,上記のような稼働状況に鑑みると,このことから直ちに,Eが過労の状態になかったことが裏付けられ
るわけではない。

また,
このことに加えて,
前記1(1)ウ(ア)及び(イ)で認定したところによ
ると,Eは,同月20日頃から頭痛や関節痛を訴えるようになっており,これは急性心筋炎の前駆症状であったとみるのが相当であるところ(前記
(2)ア(イ)参照)本件レストランにおける仕事が繁忙であったことから,,
E
は,上記の症状が続いているにもかかわらず,同月21日及び同月22日にも本件レストランに出勤し,通常どおりの勤務を行い,さらに,同月23日においても,38度を超える発熱等もあって相当程度体調が悪化していたにもかかわらず,仕事が繁忙であったことから,休日診療所を受診し
た後に,体調不良を押して出勤した上,午後11時過ぎまで勤務を続けており,帰宅時の体温は38度8分に上っていたというのである。
このような事情に照らすと,Eにおいては,日常業務において過労の状態にあったところに加えて,急性心筋炎の前駆症状が現れた後も,ほぼ従前どおりの過酷な長時間労働を継続していたのであるから,そのことによ
って更に体力を奪われ,極めて疲弊した状態に陥っていたことは明らかである。
(4)ア

前記(2)イで認定したところによると,感染症においては,宿主側の状
態が,病原体の感染・発症の成立を決定する重要な要素であるとされており,何らかの理由で自然免疫応答と獲得免疫応答による生体防御機構が損なわれた場合には,感染症による傷害の可能性が高くなるとされていて,低栄養や過労の状態では,一般に病原体に対する抵抗力(生体防御能)が
弱くなり,感染して発病しやすいとされている。また,睡眠は免疫調整に関与しており,長期的かつ重度の睡眠遮断は,自然免疫応答及び細胞免疫応答の変化を伴うとされているところ,健康な男性ボランティアを対象として,夜の早い時間帯における部分的睡眠遮断と免疫応答に対する影響を調べた実験結果によると,わずかな睡眠遮断でも自然免疫応答とT細胞の
サイトカインの産生が低下することが示されたほか,健康な男女を対象とした睡眠と風邪感受性についての実験結果によると,睡眠時間が5時間未満及び5時間以上6時間未満の場合には,7時間睡眠の場合と比較して,風邪への罹患リスクが統計学的に増加することが示されたというのである。

これらの事情は,過労の状態や睡眠不足が,ウイルス等の病原体に対する生体防御能を低下させる要因の一つとなっていることを示しているところ,このことと前記(3)ウで指摘したような心筋炎の前駆症状が現れた平成24年11月20日過ぎ頃の時点におけるEの状態を併せ考えると,この当時,Eは,過労や睡眠不足によって,生体防御能が低下した状態に
あり,体内に侵入したウイルスが増殖して感染を成立させ,感染症を発症しやすい状況にあったということができる。

また,前記(3)ウで指摘したとおり,Eは,急性心筋炎の前駆症状が現れた後も,本件レストランにおける仕事が繁忙であったことから,仕事を休
んで安静を図ることができなかったのみならず,ほぼ従前どおりの過酷な長時間勤務を継続していたというのであるが,前記(2)ア(ウ)c及びd,並びに同(カ)cで認定したところによると,ウイルス感染の増悪因子の一つとして過労が挙げられていて,急性心筋炎における急性期の治療の第一は,増悪因子の除去,すなわち安静及び心負荷の軽減を図ることが必要であるとされており,また,活動性ウイルス感染時に運動をすることでウイルス複製が亢進することから,急性心筋炎の患者は身体活動を制限する必要が
あるとされており,さらに新潟県内で発症した劇症型心筋炎の集計によると,18例のうち,最初の医療機関受診時に入院観察の方針となった6例は全員生存退院できたのに対し,初回に自宅療養の方針となった12例のうち9例は急性期に死亡したというのである。
このような諸事情を考慮すると,Eが,急性心筋炎の前駆症状が現れた
後も,従前どおりの過酷な長時間労働を継続していたことが,その急性心筋炎の症状をより悪化させる要因になったことは否定し難いといわざるをえない。

前記1(2)で説示したとおり,被告Fは,被告会社の代表者として,被告会社が雇用する労働者を指揮・監督する立場にあったのであるから,Eについて,業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積してその健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたにもかかわらず,Eにおいて,恒常化した著しい長時間労働によって十分な睡眠時間を確保することができなくなり,その結果,業務の遂行に伴う疲労が過度に蓄積する状況にな
っていたにもかかわらず,そのような状況に全く無頓着なまま,Eの負担を軽減させるための措置を一切講じようとしなかったのみならず,同月23日にEが体調の不良を訴えて休日診療所を受診した後に本件レストランに出勤した際にも,休息等を取るよう命じることもなく,Eの体調が相当程度悪いことを認識していながら,深夜に至るまで,ほぼ,通常と同様
の業務に従事させていたというのである。そして,前記ア及びイで指摘したような諸事情に鑑みると,被告Fにおいて,恒常化した著しい長時間労働によって,Eの疲労が蓄積する状態になる以前に,従業員を増員するなどして,これを回避するための措置を取っていれば,Eにおいて急性心筋炎を発症するには至らなかった可能性があるし,また,少なくとも,実際にEが体調不良の状況に陥り,そのことを被告Fにおいて認識した時点において,直ちに休息を命じるなどの対応を取っていたとすれば,Eの急性
心筋炎の症状がより一層悪化するという事態を招くことを回避できた可能性がなかったということはできない。
そうすると,被告Fの上記義務違反と,
Eがウイルスに感染して心筋炎
を発症し,その症状が沈静化することなく進行したこととの間には,相当因果関係があるというべきである。


そして,前記1(1)ウ(ウ)で認定したところによると,Eの心筋炎は,平成24年11月25日の時点では,劇症型心筋炎の状態となっていたということができ,同月26日には重症心不全によるショック状態に陥っていたというのであるが,
前記(2)ア(オ)及び(カ)eで認定したとおり,
一般に,

心筋炎発症に関連する危険因子としては,病原以外に個体因子(遺伝的背景,男女,年齢等)と環境因子(住居,職場,仕事内容,作業時間,睡眠時間等)
が考えられている。
そして,
心筋炎及び致死性心筋炎の発症率は,
男性の方が女性よりも高いとされており,また,心筋炎の原因となる心臓作用性ウイルスには,咳嗽の原因である一般的なウイルスが含まれていて,
これに罹患した者のうち,ごく少数の者のみが心筋炎の臨床学的症状を示すとされていることからすると,臨床的心筋炎症状の進行等には,男女の差のほか,
何らかの遺伝子的背景が関与しているものと考えられ,
さらに,
心筋炎が劇症化する予測因子としても,罹患時の心筋病変の範囲・重症度等以外に,患者個体の何らかの遺伝的・自己免疫的素因等の関与がある可
能性があるとも考えられるところである。
しかしながら,仮に,心筋炎の発症やその劇症化に,男女の差や,患者の何らかの遺伝的・自己免疫的素因等の関与があったとしても,男女の差はもとより,上記遺伝的・自己免疫的素因等については,その実態すら明らかではない上,これらの因子が何らかの疾患に当たるものであったり,極めてまれな特異体質に当たるようなものであることを認めるに足りる証拠は存在しないのであるから,それらは個々人の個体差の範囲として当
然にその存在が予定されているものであるというべきである。

以上によると,心筋炎の発症の原因となるウイルスに感染した者が,長期間にわたる長時間労働やこれに伴う睡眠不足のため過労の状態にあったところに,心筋炎の前駆症状が現れた後も数日間にわたって過重な労働
を続けたことで,より一層生体防御能を低下させ,その結果,ウイルスの増殖を食い止めることができずに,心筋炎を発症するに至った場合には,一定の遺伝的・自己免疫的素因等(上記のとおり,これらは個々人の個体差の範囲内のものにすぎない。を有する者において,

心筋炎が劇症化する
ことは,因果の流れとして一般に想定されるものであったといわざるを得
ない。
そうすると,被告Fの上記注意義務違反と,Eが心筋炎を発症し,その後,これが劇症化して重症心不全によるショック状態に陥ったこととの間には,相当因果関係があるというべきである。
そして,前記1(1)ウ(エ)及び(オ)で認定したとおり,Eは,劇症型心筋炎
の状態になった結果,重症心不全によるショック状態に陥って,左心及び右心に補助人工心臓を植え込むことになり,これによる重篤な合併症である脳出血によって死亡したというのであるから,被告Fの上記注意義務違反と,Eの死亡との間にも,相当因果関係があるといわざるを得ない。(5)ア

これに対して,
被告らは,


疲労が免疫機能に与える影響はほとんど

明らかになっておらず,過重労働によって免疫力が低下した場合に,急性心筋炎を発症しやすくなるかどうかは不明である,②急性心筋炎が劇症

化する予測因子も不明であるが,心筋炎の発症・劇症化には個体側要因の関与が強く示唆されており,遺伝的な個別性を背景として発症するものと考えられているなどと主張し,これに沿う医学意見書(乙24,36,39,65,73,87)を提出する。

しかしながら,上記ア①の点については,前記(4)アで説示したとおり,一般論ではあるものの,過労の状態や睡眠不足が,ウイルス等の病原体に対する生体防御能を低下させる要因の一つとなっているというのであるから,Eにおいては,平成24年11月20日過ぎ頃の時点において,少なくとも過労や睡眠不足によって,生体防御能が低下した状態にあり,体
内に侵入したウイルスが増殖して感染を成立させ,感染症を発症しやすい状況にあったということができる。
そして,
前記(4)イで説示したとおり,
Eが,急性心筋炎の前駆症状が現れた後も,引き続いて過酷な長時間労働を継続したことが,その症状の悪化に拍車を掛けたこと自体は否定し難いところであるから,仮に,過労や睡眠不足の状態が,急性心筋炎の発症そ
れ自体に与えた影響が決定的なものではなかったとしても,その症状の進行に大きな影響を与えた蓋然性が高いといわざるをえない。
また,上記ア②の点については,被告らの指摘するとおり,ウイルス性心筋炎は,ウイルス感染による心筋細胞への直接傷害と,それに引き続くウイルスに感染した心筋細胞を除去しようとする生体の免疫反応によっ
て,
心筋細胞に重大な損傷が生じた結果として発症するものであり,
かつ,
過剰な防御機構による自己傷害によって劇症化する可能性があるとされている上,上記のような心筋炎の発症や劇症化の機序には,男女の差や遺伝的・自己免疫的素因等が関与している可能性が否定できないというのである(前記(2)ア(エ)~(カ)参照)
。しかしながら,前記(4)エで指摘したよう

な事情に鑑みると,
上記の事情は,
前記(4)オの結論を左右するものではな
い。
したがって,被告らの上記主張は,いずれも採用することができないといわざるを得ない。
(6)

以上によると,
被告Fの注意義務違反と,
Eが心筋炎を発症して死亡する

に至ったことの間には因果関係を肯定することができるので,被告Fの行為は,Eに対する不法行為に該当することになる。

3
争点(3)(Eに生じた損害及びその額)について
(1)

積極損害について
治療費(文書代を含む)
前記1(1)ウ(エ)及び(オ)で認定したとおり,
Eは,
平成24年11月24
日,心筋炎との診断を受けてG病院に入院した後,劇症型心筋炎の状態に
なって同月26日にH病院に転院し,その後,平成25年9月2日までの間,同病院に入院して治療を受け,同日,一旦退院してH病院に通院していたものの,同年12月下旬頃から,再度体調が悪化し,平成26年1月3日に心不全の診断でH病院に再入院し,その後,同年6月2日に死亡するまでの間,同病院において治療を受けたというのである。そして,証拠
(甲10の1~39)によると,H病院におけるEの治療費及び文書代として合計40万2328円を要したことが認められるのであるから,これは,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害である。

入院雑費
前記アのとおり,Eは,心筋炎に罹患し,合計434日間にわたって入
院していたところ,入院期間中に要した入院雑費については,1日当たり1500円とするのが相当であるから,合計65万1000円が,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害となる。

介護用品レンタル費用
証拠(甲11の1の1~甲12の11)によると,Eは,H病院から退院した後,自宅療養の際に必要となったシャワーチェア,尿器,入浴介助エプロン,車いす及び特殊寝台等を購入し,又はレンタルし,そのために合計2万5508円を支出しているところ,この費用も,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害である。

その他雑費
証拠(甲13)によると,Eは臓器移植ネットワークへの登録費用とし
て3万円を支払っており,また,証拠(甲14)によると,Eは身体障害者の磁石ステッカー代として500円を支払っていることが認められる。そして,Eの症状に照らすと,上記合計3万0500円の支出も,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害であるというべきである。

通院交通費
証拠(甲10の18~32,15の1~13)によると,Eは,平成25年9月3日から平成26年1月2日までの間に,13回にわたってH病院に通院しており,1回あたりの通院交通費は1680円であったと認められる。したがって,この間の通院交通費である合計2万1840円についても,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害である。


葬儀費用
前記アのとおり,Eは,平成26年6月2日に死亡したところ,葬儀費用についても,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害であるところ,その額は150万円とするのが相当である。

(2)

消極損害(死亡逸失利益)について
基礎収入
証拠(甲19)によると,Eは,本件レストランに勤務することで,被告会社から,平成21年7月から平成22年3月までの間は月額14万5000円を,同年4月から同年10月までの間は月額15万5000円を,
同年11月から平成23年3月までの間は16万5000円を,同年4月から平成24年3月までの間は月額17万5000円を,同年4月から平成25年12月までの間は月額18万5000円の給与の支給を受けていたことが認められる。
もっとも,前記1(1)ア(オ)で認定したとおり,被告会社は,従業員らに対して時間外手当を支給することがなかったところ,同イ(イ)で認定したとおり,Eの平成23年11月30日から平成24年11月23日までの
間における1か月当たりの平均時間外労働時間は約250時間に上っていたというのであるから,本来であれば,上記労働時間に見合うだけの給与の支給を受けるべきであり,Eが被告会社から実際に支給を受けていた上記給与の額は著しく過少なものであったということができる。
また,前記1(1)イ(ア)で認定したとおり,Eは,平成26年6月2日に
死亡した当時,33歳であったところ,真面目で非常に仕事熱心であり,被告FもEの料理人としての技量を信頼し,期待を寄せていたというのであるから,今後,就労可能な67歳に至るまでの34年間にわたって,少なくとも調理師に係る平成26年度賃金センサス・企業規模計・男性労働者の平均賃金である370万6800円程度の収入を上げる蓋然性が高
かったということができる。

生活費控除率
前提事実(3)のとおり,
Eは,
原告Aと平成23年1月30日に婚姻して
おり,一家の支柱であったのであるから,その生活費控除率は30%とするのが相当である。


以上によると,Eの死亡による逸失利益の額は,4201万6689円となる。
(計算式)

(3)

3,706,800円×(1-0.3)×16.1929=42,016,689円
慰謝料
入通院慰謝料
前記(1)アで認定したようなEの入通院状況と,Eが劇症型心筋炎に罹患し,補助人工心臓の装着を要する状態であったことを考慮すると,本件におけるEの入通院に係る慰謝料の額は406万円とするのが相当である。

死亡慰謝料
Eが一家の支柱であることを考慮すると,Eの死亡に係る慰謝料の額は
2800万円とするのが相当である。
(4)

以上によると,
被告Fの不法行為によってEに生じた損害の額
(弁護士費

用を除く。
)は,合計7670万7865円となる。
(5)

弁護士費用
原告らは,本件について原告ら訴訟代理人弁護士に委任して訴訟を追行す
ることを余儀なくされているところ,弁護士費用相当額も,被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害であるというべきである。そして,本件に現れた事情を考慮すると,弁護士費用相当額は,760万円とするのが相当である。
(6)

以上によると,
被告Fの不法行為と相当因果関係のある損害の額は,
合計

8430万7865円となる。
4
前記2で説示したとおり,被告Fは,Eに対し,不法行為に基づく損害賠償
義務を負うべきであるところ,
被告Fは,
被告会社の代表者であり,
被告Fは,
その職務を行うについて,Eに損害を生じさせたのであるから,会社法350条に基づいて,被告会社も,Eに生じた損害を賠償する責任を負うべきことになる。そして,被告Fと被告会社の責任は,不真正連帯の関係にあるとみるのが相当である。
そして,前提事実(3)で認定したとおり,原告AはEの妻であった者であり,原告BはEの父,原告CはEの母であるから,Eに生じた損害は,原告Aがそ
の3分の2を,原告B及び原告Cが各6分の1を相続している。そうすると,被告Fは不法行為に基づく損害賠償として,被告会社は会社法350条に基づく損害賠償として,それぞれ連帯して,原告Aに対しては5620万5243円,原告B及び原告Cに対しては,それぞれ1405万1311円の支払義務を負うとともに,これらに対する不法行為後の日である平成26年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払義務を負うべきことになる。
第4

結論
以上のとおりであるから,原告らの請求は,いずれも上記の限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第25民事部

裁判長裁判官

金地香枝
裁判官

織川逸平
裁判官

亀井健斗
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