判例検索β > 平成30年(ワ)第2937号
損害賠償請求事件
事件番号平成30(ワ)2937
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和2年2月26日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第15民事部
裁判日:西暦2020-02-26
情報公開日2020-03-26 18:00:19
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主1文
被告Cは,原告Aに対し,6124万2667円及びうち5849万2667円に対する平成29年12月20日から,うち275万円に対する平成27年5月11日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2
被告Cは,原告Bに対し,110万円及びこれに対する平成27年5月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

3
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

4
訴訟費用は,別紙訴訟費用目録記載のとおりの負担とする。

5
この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
請求
被告らは,原告Aに対し,連帯して,9403万5974円及びうち8853万5974円に対する平成29年12月20日から,うち550万円に対する平成27年5月11日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2
被告らは,原告Bに対し,連帯して,330万円及びこれに対する平成27年5月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要等
事案の概要
本件は,被告Cが運転する普通貨物自動車(以下被告車という。
)が,F

が運転する自転車(以下本件自転車という。
)に衝突し,Fが死亡した事故
(以下本件事故という。
)につき,Fの母である原告A及びFの弟である原
告Bが,被告らに対し,以下の損害賠償を求める事案である。
(1)

原告Aの請求
本件事故によりFが死亡し,Fが被った人身損害に係る損害賠償請求権を相続したと主張して,被告Cに対しては,民法709条又は自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。
)3条に基づき,被告D及び被告Eに
対しては,民法719条2項に基づき,8853万5974円及びこれに対する自賠法16条1項による損害賠償額
(以下
自賠責保険金
という。

が支払われた日の翌日である平成29年12月20日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める。イ
本件事故によりFが死亡したことで,原告Aが精神的苦痛を被ったと主張するとともに,Gが精神的苦痛を被ったことにより取得した慰謝料請求権を譲り受けたと主張して,被告Cに対しては,民法711条又は自賠法3条に基づき,
被告D及び被告Eに対しては,
民法719条2項に基づき,
550万円及びこれに対する不法行為の日である平成27年5月11日から支払済みまで上記割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める。
(2)

原告Bの請求
本件事故によりFが死亡したことで,原告Bが精神的苦痛を被ったと主張
して,被告Cに対しては,民法711条又は自賠法3条に基づき,被告D及び被告Eに対しては,民法719条2項に基づき,330万円及びこれに対する不法行為の日である平成27年5月11日から支払済みまで上記割合に
よる遅延損害金を連帯して支払うよう求める。
2
前提事実
以下の各事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる(以下,特に断らない限り,書証番号の枝番は省略する。。)

(1)本件事故の発生(甲1,20)
ア日時
平成27年5月11日午前3時46分頃

イ場所
大阪市a区bc丁目d番e号


関係車両等
(ア)本件自転車

F(平成▲年▲月▲日生まれ,当時24歳)が運転す
る自転車

(イ)被告車

被告Cが運転し,被告Dが助手席に,被告Eが後部座席に
乗車する普通貨物自動車(なお,外国車であり,運転席は左
側にある。


事故態様

上記場所付近には,別紙図面のとおり,南北に伸びる道路
(以下本件道路という。
)があり,本件道路の東側には駐
車場(以下本件駐車場という。
)がある。本件道路は交通

規制により北行きの一方通行とされていた。
被告車は,本件駐車場の西側出入口(以下駐車場西側出入口という。)から本件道路に進出し,本件道路を北から南
に向かって進行してきた本件自転車と衝突した。
(2)Fの死亡及び相続等(甲2~7,乙16)

Fは,平成27年5月11日,本件事故による両側多発頭蓋底骨折に基づく外傷性くも膜下出血により死亡した
(死亡時24歳)Fの母である原告A

は,Fの損害賠償請求権を含む権利義務を単独で相続した(なお,Fの父であるGは,相続の放棄をした。。

(3)Fに関する既払金


任意保険金(甲41,弁論の全趣旨)
被告Cが加入する自動車保険の保険者
(以下
任意保険社
という。は,

Fの治療に関し,平成29年12月9日までに,医療機関に対して7万3890円を支払った
(以下,
この支払に係る金員を
任意保険金
という。。



自賠責保険金(甲41,弁論の全趣旨)
被告車を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険の保険者
(以下
自賠社という。
)は,Fの人身損害に関し,平成28年1月22日に290
万円を,平成29年12月19日に2448万3305円を,それぞれ原告Aに支払った。

3
被告らの責任についての当事者の主張
(1)被告Cの責任について
(原告らの主張)

被告Cは,本件駐車場において,運転開始前に飲んだ酒の影響により,道路及び交通の状況に応じた運転操作を行うなどの正常な運転が困難な状態で,被告D及び被告Eが同乗する被告車の運転を開始した。別紙図面の①の駐車区画(以下駐車区画①という。)から発進した被告車は,駐

車区画①の左前方にあった駐車区画(別紙図面の②の駐車区画。以下駐車区画②という。)の南側に設けられた鉄柵(以下本件鉄柵という。

で進行が妨げられ,被告Cはアクセルペダルを踏み込んで本件鉄柵を乗り越えた。そして,被告Cは,本件鉄柵を乗り越えた時点でブレーキペダルを踏むべきところ,アクセルペダルを踏み込み続け,別紙図面の㋐あるい
はそれより西の地点で,本件道路を南行き方向に進行する本件自転車に気付いたものの,ブレーキを踏むことも,駐車場西側出入口で徐行又は一時停止することも,北行き方向の一方通行の標識を確認しないまま,被告車を本件道路に進出させ,被告車の前部を本件自転車の後部に衝突させ,Fを路上に転倒させ,Fに両側多発頭蓋底骨折の傷害を負わせ,同傷害によ
る外傷性くも膜下出血により,Fを死亡させた。

被告Cが上記のような運転をしたのは,アルコールの影響により,認知能力や判断能力が著しく低下していたからである。そして,被告Cは,駐車場西側出入口から本件道路に左折進出するにあたり,道路状況及び周囲
の状況に応じて適切な運転操作をする義務があるのに,運転開始前に飲んだ酒の影響により,道路及び交通の状況に応じた運転操作を行うなどの正常な運転が困難な状態で被告車を運転し,Fの運転する本件自転車が見通しのよい本件道路上を右方から進行してきているにもかかわらず,上記地点まで本件自転車に気付かず,本件自転車に気付いてもブレーキペダルを
踏まず,アクセルペダルを踏み込み,上記アのとおり,被告車を本件自転車に衝突させ,Fを死亡させた。そして,被告Cは被告車の所有者であった。よって,被告Cは,Fに対しては民法709条又は自賠法3条に基づき,本件事故によりFに生じた損害を賠償すべき義務を負い,原告ら及びGに対しては,民法711条又は自賠法3条に基づき,本件事故により原告ら及びGに生じた損害を賠償すべき義務を負う。
(被告らの主張)
被告車が本件自転車に衝突し,
Fが死亡したことは認め,
その余は否認し,
争う。
被告Cは,駐車区画①に駐車していた被告車を発進させるためアクセルペダルを踏んだ際,多少加速気味に発進したことに気付き,すぐにブレーキペ
ダルを踏んで速度を調整したが,被告車は本件鉄柵に乗り上げてしまった。これにより,被告Cは,その右足のかかとが床から浮くとともに,何か物を壊したのであれば,警察官に飲酒運転が発覚する可能性があると考えて焦っていたところ,そのすぐ後に,本件道路を北から南に向けて進行してくる本件自転車に気付いて狼狽し,ブレーキペダルを踏もうとしたが,間違えてア
クセルペダルを踏んで,被告車を加速させてしまい,被告車を本件自転車に衝突させた。本件事故の原因は,上記のとおりであって,被告Cが,本件事故当時,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったからではない。
(2)被告D及び被告Eの責任について

(原告らの主張)
本件事故の際に被告車に同乗していた被告D及び被告Eは,被告Cが本件事故前に飲酒していた現場に同席しており,被告Cの本件事故の際の酩酊の度合いを容易に知ることができた。また,被告Cと被告D及び被告Eとは友人関係にあり,被告D及び被告Eにおいて,被告Cによる飲酒運転を制止す
ることは容易であった。それにもかかわらず,被告D及び被告Eは,被告Cがアルコールの影響により自動車の正常な運転が困難であることを認識していたのに,これを制止することなくその運転を容認し,被告Cの飲酒運転を助長した。よって,被告D及び被告Eは,民法719条2項に基づき,本件事故によりF,原告ら及びGに生じた損害を賠償すべき義務を負う。(被告D及び被告Eの主張)
否認し,争う。以下の各事情によれば,被告D及び被告Eの行為は,民法
719条2項の幇助に該当せず,被告D及び被告Eが同項に基づく責任を負うことはない。

被告D及び被告Eは,被告Cが運転を開始する直前まで,被告Cが運転をすることを想定していなかった。


被告D及び被告Eは,被告Cが正常な運転が困難である程度に酔っていることを認識していなかった。


被告Eは,被告Cの運転を制止しており,被告Dも,被告車を運転する準備をしていたから,被告Eと同様に被告Cの運転を制止したといえる。

被告D及び被告Eは,被告Cが被告車を運転するのは駐車区画①から駐車場西側出口付近まで移動させるためであると認識していた。

4
損害に関する当事者の主張
(1)Fの損害
(原告Aの主張)
Fは,本件事故により以下の損害を被り,原告AはFの損害賠償請求権を
相続した。

7万3890円


死体検案書料

3万0000円


葬儀費用

150万0000円


治療費

逸失利益

5889万2813円

Fは,本件事故当時,准看護師として稼働するほか,飲食店等の従業員としても稼働し,本件事故の日(平成27年5月11日)の前年度である平成26年度の年間所得は382万2721円であった。そして,Fは,看護学校にも通っていたことがあり,将来的に看護師の資格を取得し,常勤の看護師として稼働することが可能であったから,その基礎収入は,平成28年賃金センサス・看護師(産業計・企業規模計・男女計)
・全年齢平
均賃金479万5000円とすべきである。

また,Fの死亡時の年齢は24歳であるから,労働能力喪失期間は24歳から67歳までの43年間(対応するライプニッツ係数は,17.5459)である。
そして,Fは,本件事故当時,交際相手と結婚する予定であり,単身者であるとはいえないため,その生活費控除率は30%とすべきである。
よって,
逸失利益は,
479万5000円×17.
5459×
(1-0.
3)=5889万2813円になる。

慰謝料

3500万0000円

Fが死亡時24歳であったこと,本件事故の態様及びその悪質性等の事情によれば,死亡慰謝料は3500万円とするのが相当である。


上記ア~オの小計


9549万6703円

損害の塡補
(ア)任意保険金

-7万3890円

(イ)自賠責保険金
a
平成28年1月22日支払分
原告Aは,
平成28年1月22日,
本件事故によるFの損害に関し,
自賠社から290万円の自賠責保険金を受領した。これを,上記カの額から上記キ(ア)の額を控除した残元本
(9542万2813円)
に対
する同日までの遅延損害金(335万8620円)に充当すると,同日時点における未払の遅延損害金は45万8620円となる。

b
平成29年12月19日支払分
原告Aは,平成29年12月19日,本件事故によるFの損害に関し,自賠社から2448万3305円の自賠責保険金を受領した。これを,上記aの未払の遅延損害金(45万8620円)に充当し,その後,上記aの残元本(9542万2813円)に対する上記aの自賠責保険金の支払日の翌日である平成28年1月23日から平成29
年12月19日までの遅延損害金(909万7846円)に充当すると,自賠責保険金の残額は1492万6839円となる。これを上記aの残元本(9542万2813円)に充当すると,残元本は8049万5974円となる。

弁護士費用

804万0000円


損害の合計

8853万5974円

(被告Cの主張)
前記2(3)の事実は認め,その余は否認する。

逸失利益について
(ア)Fは,本件事故当時,派遣社員やアルバイトとして稼働していたこと
などからして,将来にわたって本件事故の前年と同様の勤務状態を継続していた蓋然性はない。また,Fは,本件事故当時,看護師の資格は有しておらず,看護師として24歳から67歳まで稼働することができたという高度の蓋然性もない。よって,Fの逸失利益を算定するにあたっては,その基礎収入は,平成26年賃金センサス・女性・学歴計・全年
齢平均賃金である364万1200円とすべきである。
(イ)Fには,本件事故当時,扶養家族がいなかったこと,Fが若年者であることから,生活費控除率は40%とすべきである。

死亡慰謝料について
Fは,家族を扶養していた者ではなく,一家の支柱には当たらない。Fの死亡慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計額は最大でも2500万円である。
(被告D及び被告Eの主張)
知らない。
(2)

原告Aの損害

(原告Aの主張)

Fの母である原告A及びFの父であるGは,Fの死亡により精神的苦痛を受け,慰謝料として少なくとも各250万円の損害を被り,原告AはGから慰謝料請求権を譲り受けたため,原告Aが請求できる慰謝料の額は500万円である。そして,本件事故により原告Aが被った弁護士費用の損害は50万円であるので,損害の合計は550万円である。

(被告Cの主張)
Fの死亡慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計額は最大でも2500万円である。
(被告D及び被告Eの主張)
知らない。

(3)

原告Bの損害

(原告Bの主張)
原告Bは,Fの死亡により精神的苦痛を受け,慰謝料として300万円の損害を被った。そして,本件事故により原告Bが被った弁護士費用の損害は30万円であるので,損害の合計は330万円である。

(被告Cの主張)
Fの死亡慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計額は最大でも2500万円である。
(被告D及び被告Eの主張)
知らない。

第3

責任に関する当裁判所の判断
1
被告Cの責任について
(1)前記前提事実,証拠(甲1,8,10~26,37,38,64~66,乙6~19,22~28,30,31,丙1,2,被告C,被告D,被告E)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


被告車について
被告車は,車両の全長が585cm,車幅が211cm,高さが202cmのフォードエクスカーションであり,運転席が左側にある左ハンドル車であった。運転席床面にあるアクセルペダルの横幅は約5cm,ブレーキペダルの横幅は約12cmであり,これらのペダルの間の距離は約6cmであった。

被告Cは,平成27年4月下旬頃,被告車を使用するようになり,本件事故直前には,ほぼ毎日被告車を運転していた。

本件事故が発生する前までの状況について
(ア)被告Cは,平成27年5月10日の夜,別紙見取図の②の飲食店(以
下本件飲食店という。
)で行われる予定の飲み会に参加するため,被
告車を運転し,本件駐車場に向かった。この飲み会には,被告Cとは高校生の頃からの友人である被告Dと本件事故の約1年半前頃から友人関係にある被告Eも参加していた。
被告Cは,本件飲食店で飲酒をする予定であったため,あらかじめ,
被告D及び被告Eに対し,帰宅時には被告車を運転するよう依頼し,その承諾を得ていた。被告Dは翌日に健康診断が予定されていたため,被告Eは妊婦であったため,それぞれ飲酒をしないつもりで飲み会に参加していた。
(イ)被告Cは,
本件駐車場に到着した後,
被告車を駐車区画①に駐車した。

被告Cは,被告車を駐車区画①に駐車する際,被告車の後部が駐車区画①に収まらなかったため,何度か切返しを行い,また,その際,被告車が本件鉄柵を乗り越えて後退進行することがあった。
(ウ)被告車を降車した被告Cは,同日午後11時21分頃,徒歩で本件駐車場を出て,コンビニエンスストアへ向かい,500ml缶入り発泡酒(アルコール分5%)1缶を購入し,この発泡酒を飲みながら,本件飲食店に向かった。被告Cは,本件飲食店に到着するまでに上記缶入り発泡酒のうち約450mlを飲んでおり,残りは本件飲食店の店員に処分するよう依頼した。
(エ)被告Cは,同月11日午前0時頃から同日午前3時頃までの間,本件飲食店で,被告D及び被告Eを含めた7名の知人らと共に,食事をしな
がら,300mlグラスで,3~4杯のビール(アルコール分5%)を飲み,被告D及び被告Eは,そのことを把握していた。他方,被告D及び被告Eは,上記(ア)の事情があったため,飲酒しなかった。
(オ)被告らは,同日午前3時頃,本件飲食店を出て,被告Cの案内により本件駐車場に向けて歩き始め,その途中で別紙見取図の③のコンビニエ
ンスストアに立ち寄った。被告Cは,被告Dに頼んで350ml缶入りの発泡酒(アルコール分5%)1缶を購入し,飲酒量は明らかでないものの,この発泡酒を飲みながら,被告D及び被告Eと共に本件駐車場に向かった。
被告Cは,気分が少し高揚し,口数が多い様子であったものの,呂律
が回らなかったりすることや足取りが不安定なことはなく,話し方や話す内容にも不自然な点はなく,本件駐車場までの道に迷うこともなかった。
(カ)被告Cは,本件駐車場に到着した後,足が痛かったため,履いていた靴を被告車の車内に保管していた室内用のスリッパに履き替え,一人で
スリッパのまま別紙見取図の①のコンビニエンスストアに向かった。被告Cは,同日午前3時40分頃,上記コンビニエンスストアで,ウォッカベースのカクテル1本とカップ麺1個を購入し,このカップ麺にお湯を注いで,本件駐車場に向かった。被告Cがカップ麺1個を購入したのは,本件飲食店では他の人に気を遣ってあまり食べ物を食べることができなかったからであった。被告Cは,被告車に戻ってカップ麺を食べようと思い,カップ麺にお湯を注いたが,その際,お湯を入れすぎて手やズボンにこぼした。
被告Cは,本件駐車場へ戻り,本件駐車場内で,被告車に乗っていた被告D及び被告Eに戻ってきたことを伝えるため,お湯が注がれたカップ麺を持った手を頭上に挙げた。もっとも,被告D及び被告Eが被告C
のこの動作に気付くことはなかった。
(キ)被告Dは,事前に被告Cから被告車の運転を頼まれていたことから,被告車を運転するつもりで,被告車の運転席の高さを調整するなどしていたが,被告車が想像していたよりも大きな車両であったため,本件駐車場付近の幅員の狭い道路を運転することに不安を感じた。

駐車区画①まで戻ってきた被告Cは,被告Dが被告車を運転するのに不安を覚えている様子を見て,被告Dを助手席に乗せて本件駐車場から被告車を出すくらいまで運転すれば,
被告Dの不安が解消できると考え,
被告車を運転しようとしていた被告Dに対し,被告車をちょっと前に出すので運転を代わるように告げた上,駐車料金を払いに行くよう依頼し
て,被告車の運転席に座った。被告Cは,被告Dが高さ等を調整した座席を改めて調整しなかった。
被告Dは,被告Cの言動から,被告Cが被告車を駐車区画①から少し移動してくれるだけだと考え,駐車料金の支払を済ませ,被告車の助手席に乗った。被告車の後部座席に乗っていた被告Eは,被告Cが運転席
に座ったのを見て,被告Cに対し,運転しないよう注意したが,被告Cは,
ちょっとだけやからと答えたことに加え,被告Cの様子からは酔
いが原因で事故を起こすように感じなかったため,それ以上の注意はしなかった。また,被告Dも,被告Cにおいて運転に支障が出るほど酔っているとは感じなかった。

本件事故の状況について
被告Cは,平成27年5月11日午前3時46分28秒頃,駐車区画①から被告車を発進させ,駐車場西側出入口に向かうため,ハンドルを左方向に切った。被告Cは,発進時にアクセルペダルを踏み込み,被告D及び被告Eは背中が座席シートに押し付けられるように感じた(被告Dは,刑事事件の公判期日において,急発進でぴゅって行ったとも供述している。。)

被告Cは,速度が少し速かったと感じ,午前3時46分32秒頃,ブレーキペダルを踏んで少し速度を落とした。
駐車区画①の左前方約5mの地点には高さ17cmの本件鉄柵が存在したところ,駐車区画①に停車中の被告車に乗り込む際や被告車内の左側前部にある運転席から左前方にある本件鉄柵を見ることは容易であったの
に,被告Cは,これに気が付かないまま,被告車のハンドルを左方向に切りながら,被告車を左前方に進行させたところ,午前3時46分34秒の前後頃,被告車の右前輪が本件鉄柵に接触し,その時点で,本件鉄柵を乗り越えるに足りるほどの速度まで加速していたか,改めてアクセルペダルを踏み被告車を加速させたことから,被告車の右前輪は本件鉄柵を乗り越
えた。被告Cは,上下方向への衝撃を感じたがブレーキペダルを踏むことはなく,被告車は左折しながら進行したところ,本件自転車が被告車の先端から右前方約4m先まで迫った地点に至って,本件道路の中央線よりやや本件駐車場寄りを北から南に向かって進行していた本件自転車に気付いたが,ブレーキペダルを踏まずにアクセルペダルを踏み,加速した被告
車は,午前3時46分36秒頃,本件鉄柵の8mほど先にある駐車場西側出入口から本件道路上へ南西向きに進行した後,時速約24kmから約26kmの速度で,本件道路上を北から南に向かって進行していたFが運転する本件自転車に衝突した上,本件自転車に並走していたFの友人女性が運転する自転車にも衝突し,さらに,そのまま前進して,本件駐車場の向かいにある本件道路沿いの建物に衝突して停止した。

被告車の運転席からの見通しの状況等
平成27年5月11日午前3時46分頃には,本件駐車場の駐車区画①の左側(西側)にあり,駐車区画①と本件道路の間にある15~18番の駐車区画には自動車は駐車しておらず,駐車区画①の左前方(北西側)にある27番,19番及び20番の駐車区画にも自動車は駐車しておらず,
駐車区画①の前にある本件駐車場内の東西通路にも自動車は存在していなかった。その上,駐車場西側出入口や19~21番と本件道路の間には工作物等も存在していなかったことや,深夜ではあったものの,街灯や店舗の照明などが点灯していたため,駐車区画①に停車していた被告車の運転席からはもとより,上記東西通路を進行する被告車の運転席からは,本
件道路を北から南に自転車が進行していれば,その自転車を容易に視認することができる状況にあった。そして,駐車区画①から被告車がやや左前に向かって進行し,左前輪が駐車区画①の北西角から北に1.2m,西に0.7mの地点では,21番の駐車区画の西側付近の本件道路上を進行するFが運転する本件自転車やFの友人女性が運転する自転車を容易に視
認することができる状況にあり,その後も,被告車が本件道路に出るまでの間,上記各自転車を容易に視認することができる状況であった。被告Cの視力は0.
6程度であり,
普段は眼鏡を掛けることもあったが,
上記ウで認定した被告車を運転する際には眼鏡を掛けていなかった上,被告Cは,駐車区画①から発進した後,主として駐車場西側出入口の方を見
ながら被告車を運転しており,右方には注意を払っていなかったこともあって,少なくとも,被告車が本件鉄柵を超えるまでは上記各自転車に気が付いておらず,本件鉄柵を超えた後もすぐには上記各自転車に気が付かず,本件道路を北から南に向かって進んでいる上記各自転車に気が付いたのは,上記各自転車が被告車の先端から右前方約4m先まで迫った地点であった(したがって,被告Cが上記各自転車に気が付いたのは,被告車が本件鉄柵に乗り上げた午前3時46分34秒前後頃ではなく,それよりも後
である。。


本件事故後の状況
(ア)被告Cは,本件事故後,被告D及び被告Eを巻き込まないよう,被告D及び被告Eに逃げるよう伝えた。被告Dは,被告Cに対し,本件事故現場を離れない旨伝え,その後,被告Cに救急車を呼ぶよう頼まれ,被
告車の周囲にいた人に救急車と警察官を呼ぶよう依頼した。被告Cは,救急車が本件事故現場に到着するまでの間,本件事故で負傷したFの友人女性に声を掛けるなどした。
(イ)本件事故現場に臨場した警察官は,被告Cに飲酒したかを尋ねた際,被告Cから酒の臭いを感じなかったが,被告Cが飲酒をしたと回答した
ため,注意して臭いを嗅ぐと,若干酒の臭いがした。
被告Cは,同日午前4時13分頃,上記警察官による飲酒検知に応じた。その際の,検査結果は,以下のとおりであった。



直立能力

直立できた。

酒臭

顔面より30cm離れた位置でかすか



顔色

赤い



正常歩行した。



歩行能力



呼気中のアルコール濃度

0.25mg/lかその直近の濃度

目の状態

充血

被告Cの普段の飲酒時の状況について
(ア)被告E及び被告Dは,本件事故以前に複数回,被告Cと共に飲酒したことがあり,被告Cは飲酒すると,気分が高揚し,身体的接触が増えるといった様子になるものの,足元がふらついたり,会話が成立しなくなったりするほどに酔うことはなく,被告Cはアルコールに強い体質であると認識していた。
(イ)被告Cは,自宅で飲酒をする際は,一人で,350ml缶入り発泡酒3缶,食べ物を食べずに飲むことが多く,その際には,眠くなることが多かった。また,被告Cは,中ジョッキ4杯程度のビールを飲むと記憶が断片的になくなることがあり,また,500ml缶入り酎ハイや缶ビールを4本程度飲んで記憶がなくなったこともあった。

(2)上記(1)によれば,①被告車を運転する前の被告Cは,気分が少し高揚し,口数が多い様子であったものの,呂律が回らなかったりすることや足取りが不安定なことはなく,話し方や話す内容にも不自然な点はなく,本件駐車場までの道に迷うこともなかったこと,②被告D及び被告Eは,被告Cにおいて運転に支障が出るほど酔っているとは感じていなかったこと,
③被告Cは,

被告車を発進させる際にアクセルペダルを踏み込み,被告D及び被告Eが背中を座席シートに押し付けられるように感じた際に,ブレーキペダルを踏んで少し速度を落とすという行動に出ていること,④本件事故後,被告Cは被告Dに救急車を呼ぶよう頼み,救急車が本件事故現場に到着するまでの間,本件事故で負傷したFの友人女性に声を掛けるなどしたこと,⑤本件事故現
場に臨場した警察官は,被告Cに飲酒したかを尋ねた際,被告Cから酒の臭いを感じなかったこと,⑥被告Cは,飲酒検知の際に直立することができ,正常に歩行したこと,以上のような事実が認められ,これらの事実は,本件事故がアルコールの影響によって発生したということに疑いを抱かせるものであるといえる。そして,上記(1)で認定した本件飲食店を出た後,本件事故
が発生するまでの被告Cの言動を一つ一つ個別にみれば,アルコールの影響を抜きにしてもあり得る行動であるといえるものが含まれていることは否定できない。
(3)しかし,酒酔い運転に対する法定刑が3年以下の懲役または50万円以下の罰金であったのが,5年以下の懲役または100万円の罰金に引き上げられ,酒気帯び運転に対する法定刑が1年以下の懲役または30万円以下の罰金であったのが,3年以下の懲役または50万円以下の罰金に引き上げられたほか,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律において,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で走行し,人を死傷させた場合や,アルコールの影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し,よって,そのアルコールの影響により正
常な運転が困難な状態に陥り,人を死傷させた場合には,過失運転致死傷罪よりも重い法定刑が設けられている。このように法令が飲酒運転を容認しないとの規範的判断を示しているのは,飲酒をした場合には,アルコールの影響により,安全運転に必要な認知力,判断力,操作力,精神状態の変化が起き(乙28参照)
,他の車両や歩行者,道路標識,障害物等を見落としたり,

発見が遅れる危険性や,反応時間が遅れ,的確なハンドルやブレーキの操作ができない危険性があり,ひいては,飲酒運転が原因となって死傷事故を招く危険性があることから,刑罰をもって,飲酒運転を抑制し,これを根絶するためである。そして,法令が上記のような規範的判断を示した趣旨に照らせば,
上記(2)の各事実や事情が認められることから,
本件事故がアルコール

による影響と無関係に発生したと認定することができるかについては,上記(1)で認定した他の事実も考慮して,
慎重に判断する必要がある
(被告Dや被
告Eから見て,被告Cにおいて運転に支障が出るほど酔っているとは感じなかったとしても,実際には被告Cにアルコールによる影響が及んでいることは十分にあり得るし,自動車の運転には,周囲の状況を的確に認識し,その
状況に応じた適切な操作をしなければ,交通事故を発生させる可能性があるのであって,被告Cが,飲酒検知の際に直立することができたり,正常に歩行することができたからといって,アルコールの影響なしに自動車を安全に運転をするだけの最低限の能力があったと直ちにいうことはできない。このことは,救急車を呼ぶよう被告Dに依頼したことについても同様である。。)
(4)上記(1)によれば,
被告Cは,
本件飲食店で飲食する直前に500ml缶入
り発泡酒(アルコール分5%)のうち約450mlを飲み,本件飲食店において,300mlのグラスで3~4杯のビール(アルコール分5%)を飲んだ上,本件飲食店から本件駐車場に向かうまでの間にも350ml缶入り発泡酒(アルコール分5%)の一部を飲んでいたことからして,少なくない量のアルコールを摂取している。そして,被告Cの普段の飲酒による影響は上
記(1)カ(イ)のとおりであり,これと比較すると,上記の摂取量は,被告Cにおいて記憶がなくなったりするほどではなかったものの,アルコールによる影響が身体に生じない程度にとどまっているとはおよそいえず,また,上記(1)カ(イ)によれば,被告Cは,自宅で飲酒をする際は,一人で,350ml缶入り発泡酒3缶,食べ物を食べずに飲むことが多く,その際には,眠くな
ることが多かったところ,
上記の摂取量は上記発泡酒3缶よりも多く,
かつ,
被告Cは,本件飲食店では他の人に気を遣ってあまり食べ物を食べることができなかったことからすれば,上記の摂取量がアルコールによる影響が被告Cの身体に生じない程度にとどまっているとはいい難い。
これらの事情に加え,本件飲食店を出た後,被告Cは,足取りが不安定で
あったり,呂律が回っていなかったりすることはなく,また,本件駐車場までの道に迷うこともなかったものの,気分が少し高揚し,口数が多く,本件駐車場に到着した後,スリッパでコンビニエンスストアに行くという被告Cにとって普段であればしないような行動をし(甲15,被告C)
,そのコンビ
ニエンスストアでは,購入したカップ麺にお湯を注いでは,お湯を入れすぎ
て手やズボンにこぼし,そのカップ麺にはお湯が注がれた状態であったにもかかわらず,本件駐車場に戻ってきた際に,そのカップ麺を頭上に挙げ,本件駐車場に戻るや,飲酒運転にならないようあらかじめ被告D及び被告Eに被告車の運転を依頼していたのに,被告Dに対し,被告車をちょっと前に出すとして,運転を代わるよう安易に求め,被告Eから運転しないように注意されたにもかかわらず,被告Cは,
ちょっとだけやからと言って,その注
意を聞き入れずに,被告車の運転を開始したのである。
(5)さらに,被告車の運転を開始し,本件自転車に衝突するまでの状況をみると,被告Cが,発進時に被告車のアクセルペダルを踏み込んだため,被告D及び被告Eは背中が座席シートに押し付けられるように感じる状況であったこと,被告Cはすぐにブレーキペダルを踏んで減速したものの,被告Cに
おいては,駐車区画①に停車中の被告車に乗り込む際や被告車内の左側前部にある運転席から左前方にある本件鉄柵を見ることは容易であったのに,本件鉄柵に気が付かずに被告車の右前輪を本件鉄柵に乗り上げさせていること,
上記(1)エのとおり,
駐車区画①から被告車がやや左前に向かって進行し,左前輪が駐車区画①の北西角から北に1.2m,西に0.7mの地点では,
21番の駐車区画の西側付近の本件道路上を進行するFが運転する本件自転車やFの友人女性が運転する自転車を容易に視認することができる状況にあり,その後も,被告車が本件道路に出るまでの間,上記各自転車を容易に視認することができる状況であったにもかかわらず,被告Cは,駐車区画①から発進した後,主として駐車場西側出入口の方を見ながら被告車を運転
し,右方に注意を払っていなかったこともあって,少なくとも,被告車が本件鉄柵を超えるまでは上記各自転車に気が付いておらず,本件鉄柵を超えた後もすぐには上記各自転車に気が付かず,本件道路を北から南に向かって進んでいる上記各自転車に気が付いたのは,上記各自転車が被告車の先端から右前方約4m先まで迫った地点であったこと,被告車が駐車区画①を発進後,
約5m先にある本件鉄柵に乗り上げるまでの所要時間が約6秒であったのに対し,被告車の先端が本件鉄柵の8m前後先にある駐車場西側出口を出るまでの所要時間は約2秒にすぎず,被告Cは,被告車の右前輪が本件鉄柵を乗り越えた後,駐車場内であるのに急加速するという運転に及んでいること,被告Cは,上記各自転車に気付いた後もブレーキペダルを踏むことはなかったこと,これらの出来事が約8秒の間に連続して生じていることに加え,上記(4)で指摘した被告Cの飲酒量,
飲酒による身体への影響,
飲酒によると思
われる言動をも併せ考慮すると,
上記(2)の各事実を考慮しても,
特段の事情
のない限り,被告Cは,アルコールの影響により,認知力,判断力あるいは自動車の操作能力が減弱し,そのため,被告車の先端から右前方約4m先まで迫った地点までFが乗車する本件自転車に気付かず,本件自転車に気付い
てもブレーキペダルを踏むという行動に出ることができず,その結果,被告車をFが乗る本件自転車に衝突させたものと推認される。そして,被告Cにおいて,
上記(1)イで認定したのと同程度の飲酒をしても,
被告Cの認知力,
判断力あるいは自動車の操作能力が減弱することはないことを立証すれば,上記の推認は覆されるものの,そのような立証はされていない。

なお,被告Dは,刑事事件の公判期日において,人影を見たのは5mぐらいのところである旨供述しているが,他方,被告Dはずっと前を見ていたわけではなく,前を向いた瞬間ぐらいに人影のようなものを見えた,いきなり目線を変えたら見えたとも供述している。そして,被告Dは運転操作をすべき立場にはなく,被告Dが本件自転車の運転者の人影を見たのが上記の地点
であるからといって,前方等を注視しなければならない義務を負っている被告Cにおいて,この地点付近で本件自転車に気付いていれば足りるということにはならない。
(6)他方,被告Cは,被告車が本件鉄柵を乗り越えた際に,本件駐車場の備品等を損壊したのではないかと考えて,警察官に飲酒運転が露見するのではな
いかと焦っていたところに,本件道路を南に向かって進行してくる本件自転車が見えたために接触の危険を感じてさらに焦り,そのことが原因でアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えたと主張し,刑事事件の公判期日においても同旨の供述をするとともに(乙27)
,本件においても,これに沿う
陳述(乙31)及び供述をする。
被告車の右前輪が本件鉄柵を乗り越えたことは,防犯カメラの映像から明らかであるところ,本件事故の2週間後の平成27年5月25日に本件駐車場において行われた実況見分において,被告Cは,被告車の動きを指示説明する際に被告車が本件鉄柵に乗り上げたことについては何らの指示説明をせず,上記実況見分後に本件駐車場において同日行われた実況見分において,警察官から本件鉄柵を実際に示されても,本件鉄柵には乗り上げていないし,
乗り上げたかもしれないが記憶に残っていないと指示説明していたこと(甲25,乙22)
,同月29日に行われた検察官による取調べの際も,上記主張
に沿うような供述はしていなかったこと
(甲65)同年9月17日に行われ

た検察官による取調べの際に,本件鉄柵に乗り上げたことにつき生の記憶としてあるのかを繰り返し尋ねられた際にも,覚えていないと供述していたこ
と(甲66)からすれば,被告Cが,本件事故当時,被告車が本件鉄柵を乗り越えた際に本件駐車場の備品等を損壊したのではないかと考えて,警察官に飲酒運転が露見するのではないかと焦ったという心理状態であったのかは疑わしく,本件鉄柵を乗り越えたことさえ覚えていなかった被告Cが上記のような詳細な心理状態を事後に思い出すというのもあり得ないことでは
ないにせよ,にわかに信用することは困難というほかなく,上記の主張に沿う被告Cの刑事事件の公判廷における供述や本件における陳述及び供述の方が信用性が高いとはいえないから,上記の主張を採用することはできない。(7)前記前提事実及び上記(5)によれば,
被告Cは,
被告車を運転して駐車場西
側出入口から本件道路に左折進出するにあたり,道路状況及び周囲の状況に
応じて適切な運転操作をする義務があるところ,Fの運転する本件自転車が本件道路上を右方から進行してきているにもかかわらず,アルコールの影響により,認知力,判断力あるいは運動能力が減弱していたため,被告車の先端から右前方約4m先まで迫った地点までFが乗車する本件自転車に気付かず,本件自転車に気付いてもブレーキペダルを踏むという行動に出ることができなかった結果,被告車をFが乗る本件自転車に衝突させ,Fに傷害を負わせ,死亡させたのであるから,被告Cは,Fの死傷によりFに発生した損
害について,民法709条に基づき損害賠償責任を負うとともに,原告ら及びGがFの死亡により精神的苦痛を被った場合には,原告ら及びGに発生した損害について,民法711条に基づき損害賠償責任を負うことになる(なお,原告らは,被告Cが被告車の所有者であるとして,自賠法3条に基づく損害賠償請求をしており,この請求の当否を判断するに当たっては,上記に
説示したような判断をする必要はない。しかし,被告Cは,被告車の所有者であることを否認したため,同条に基づく請求を全部又は一部認容するためには,被告Cによる所有権取得原因事実の主張が必要であるところ,その主張はされていないことから,民法709条及び民法711条に基づく損害賠償請求の当否について判断した。。


2
被告D及び被告Eの責任
(1)原告らは,被告D及び被告Eは,被告Cがアルコールの影響により自動車の正常な運転が困難であることを認識していたのに,これを制止することなくその運転を容認し,被告Cの飲酒運転を助長したと主張する。

(2)しかし,
上記1(1)によれば,
被告E及び被告Dは,
本件事故以前に複数回,
被告Cと共に飲酒したことがあり,被告Cが飲酒すると気分が高揚し,身体的接触が増えはするものの,足元がふらついたり,会話が成立しなくなったりするほどに酔うことはなく,アルコールには強い体質であると認識していたこと,被告E及びDは,被告Cが本件飲食店においてビールを飲み,気分
が高揚し,口数が多くなったと認識していたものの,被告Cの呂律が回っていなかったわけではなく,話し方や話す内容にも不自然な点はなく,本件駐車場までの道に迷うこともなく,被告D及び被告Eは,被告Cにおいて運転に支障が出るほど酔っているとは感じていなかったこと,被告D及び被告Eは,コンビニエンスストアにおいて,被告Cが購入したカップ麺にお湯を注ぎすぎて手やズボンにこぼしたことや,お湯が注がれた状態のカップ麺を頭上に挙げたりしたことは認識していなかったことからすると,被告D及び被告Eにおいて,被告Cがアルコールの影響により自動車の正常な運転が困難であることを認識していたとは言い難く,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被告D及び被告Eにおいて,被告Cがアルコールの影響によ
り自動車の正常な運転が困難であることを認識していたことを前提とする上記の主張を採用することはできない。
また,上記1(1)によれば,被告D及び被告Eは,本件飲食店で飲食する前に,被告Cから被告車を運転することを依頼されて,これを承諾し,本件飲食店においても飲酒をせず,本件駐車場に戻るまで,被告Cが被告車を運転
することは想定しておらず,本件駐車場に戻ってからも,被告Dは,被告車を運転するために被告車の運転席に乗り込み,運転席の高さを調節し,運転するつもりであり,被告車の後部座席に乗った被告Eも被告Dが運転するものと考えていたこと,そうであるのに,被告Cは,被告車を運転しようとしていた被告Dに対し,被告車をちょっと前に出すので運転を代わってと告げ,
被告Dは,被告Cの言動から,被告Cが被告車を駐車区画①から少し移動してくれるだけだと考えたこと,被告車の後部座席に乗っていた被告Eは,被告Cが運転席に座ったのを見て,
被告Cに対し,
運転しないよう注意したが,
被告Cは,
ちょっとだけやからと答えたことに加え,被告Cの様子からは
酔いが原因で事故を起こすように感じなかったため,それ以上の注意はしな
かったこと,被告Cは,被告Dが高さ等を調整した座席を改めて調整せず,少し移動することを前提とした行動を執っていたことからすると,被告D及び被告Eにおいて,被告Cの運転を違法に幇助したとまではいえない。(3)以上によれば,被告D及び被告Eに民法719条2項の責任があるとはいえない。
第4
1
損害に関する当裁判所の判断
Fの損害
(1)治療費

7万3890円

証拠(甲27)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によるFの治療費は7万3890円であると認められる。
(2)死体検案書料

3万0000円

証拠(甲28)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によりFが死亡した
ことによる死体検案書料は3万円であると認められる。
(3)葬儀費用

150万0000円

弁論の全趣旨によれば,本件事故と相当因果関係のあるFの葬儀費用は150万円であると認められる。
(4)逸失利益

4176万5909円

証拠
(甲29~33)
及び弁論の全趣旨によれば,
Fは,
本件事故当時,
准看護師として稼働するほか,飲食店等の従業員としても稼働し,本件事故の日(平成27年5月11日)の前年度である平成26年度の年間所得は385万2721円であったことが認められる。そして,Fは,死亡時
の年齢が24歳と若年であり
(前記前提事実)准看護師の資格を保有して

准看護師として現に就業していたことからすると,Fの基礎収入が,平成27年賃金センサス・准看護師(産業計・企業規模計・男女計)
・全年齢平
均賃金である396万7300円を下ることはない。
原告Aは,Fの基礎収入につき,平成28年の看護師の平均賃金を基礎
とすべきであると主張する。しかし,Fは,平成23年4月1日に看護師の資格を取得するために通学を開始したものの,同年12月22日に一旦はその取得を諦めて退学したこと(甲34)
,Fは,本件事故時点で看護師
の資格を保有しておらず,看護師の資格を取得するために通学していたわけでもなかったこと(弁論の全趣旨)からすると,Fが将来的に看護師の資格を取得することになったとの蓋然性が証明されたとまではいうことができず,上記の主張を直ちに採用することはできない。


Fの死亡時の年齢は24歳であるから
(前記前提事実)労働能力喪失期

間は24歳から67歳までの43年間(対応するライプニッツ係数は,17.5459)とするのが相当であり,生活費控除率を原告が主張するように30%とすべき理由もないので,生活費控除率は40%とするのが相当である。


上記ア及びイによれば,逸失利益は,396万7300円×17.5459×(1-0.4)≒4176万5909円になる。

(5)慰謝料

2800万0000円

Fは,本件事故当時24歳であり,当時,仕事の面では自分に合った職場を見つけ,私生活では,結婚を約束した交際相手と順調な交際を続け,実家から離れていたものの,母や弟との交流も絶えず,同居していた友人女性をはじめとした友人知人と交友するなど,充実した毎日を送っていたのである(甲36,45,67,69,原告A)
。ところが,何の落ち度もないにもか
かわらず,被告Cの一方的な過失により,突如としてその命を奪われ,家族
や交際相手を含む多くの人間関係も断ち切られ,将来を奪われる結果となったのであり,しかも,本件事故が被告Cによる飲酒運転中に発生したものであることなどからすると,
Fの被った肉体的精神的苦痛は甚大なものがあり,
本件訴訟に現れた一切の事情によれば,本件事故と相当因果関係のあるFの死亡慰謝料は2800万円とするのが相当である。

(6)上記(1)~(5)の小計

7136万9799円

(7)損害の塡補

任意保険金
Fの治療につき,任意保険社から医療機関に対して支払われた7万3890円(前記第2の2(3)ア)を上記(6)の額に充当すると,残元本額は7129万5909円となる。


自賠責保険金
(ア)平成28年1月22日支払分
原告Aは,平成28年1月22日,本件事故によるFの損害に関し,自賠社から290万円の自賠責保険金を受領した
(前記前提事実)これ

を,上記アの控除後の残元本7129万5909円に対する同日までの遅延損害金(251万0006円)に充当すると,自賠責保険金の残額
は38万9994円となる。これを上記7129万5909円に充当すると,残元本は7090万5915円となる。
(イ)平成29年12月19日支払分
原告Aは,
平成29年12月19日,
本件事故によるFの損害に関し,
自賠社から2448万3305円の自賠責保険金を受領した(前記前提
事実)
。これを,上記の残元本7090万5915円に対する上記(ア)の自賠責保険金が支払われた日の翌日である平成28年1月23日から平成29年12月19日までの遅延損害金(677万0057円)に充当すると,自賠責保険金の残額は1771万3248円となる。これを上記7090万5915円に充当すると,残元本は5319万2667円
となる。
(8)弁護士費用

530万0000円

本件事案の内容や訴訟活動の難易,
上記(7)の損害額等によれば,
本件事故
と相当因果関係にある弁護士費用は530万円をもって相当と認める。(9)合計

2
5849万2667円

原告Aの損害
(1)慰謝料

250万0000円

原告Aは,愛情を持って育てた娘であるFを本件事故により突如として失い,
原告AにとってかけがえのないFが死亡したとの現実を受け入れられず,Fを失ったことによる喪失感にさいなまれ,苦しみ続けており,その悲しみが癒えることは未だないのである(甲67,69,原告A)
。そして,本件事

故が被告Cの一方的な過失により発生したもので,かつ,本件事故が被告Cによる飲酒運転中に発生したものであることなどからすると,原告Aの被った精神的苦痛は多大なものがあり,本件訴訟に現れた一切の事情によれば,本件事故と相当因果関係のある原告Aの慰謝料は250万円とするのが相当である。他方,慰謝料の具体的な金額が当事者間において客観的に確定する
前に慰謝料請求権を譲渡することが許されるかについてはひとまずおくとしても,少なくとも,Gが原告Aに慰謝料請求権を譲渡した原因となる事実の主張がされていないことや,本件全証拠をもってしても,Gの受けた損害についての立証はされていないから,Gの慰謝料請求権に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。

(2)弁護士費用

25万0000円

本件事案の内容や訴訟活動の難易,
上記(1)の損害額等によれば,
本件事故
と相当因果関係にある弁護士費用は20万円をもって相当と認める。(3)合計
3
275万0000円

原告Bの損害
(1)慰謝料

100万0000円

原告Bは,姉であるFと幼いころから仲が良く,Fのことを慕い続けていたところ,本件事故により突如として姉であるFを失ったばかりか,本件事故による影響により大学に通学できなくなり,原告B自身の人生にも大きな影響が及んだことに加え(甲68,70)
,本件事故が被告Cの一方的な過失
により発生したもので,かつ,本件事故が被告Cによる飲酒運転中に発生したものであることなどからすると,原告Bの被った精神的苦痛は大きく,本件訴訟に現れた一切の事情によれば,本件事故と相当因果関係のある原告Bの慰謝料は100万円とするのが相当である。
(2)弁護士費用

10万0000円

本件事案の内容や訴訟活動の難易,
上記(1)の損害額等によれば,
本件事故

と相当因果関係にある弁護士費用は10万円をもって相当と認める。(3)合計
第5

110万0000円

結論
以上によれば,原告Aの請求は,被告Cに対し,6124万2667円及び
うち5849万2667円に対する平成29年12月20日から,うち275万円に対する平成27年5月11日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告Bの請求は,被告Cに対し,110万円及びこれに対する同日から支払済みまで上記割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求はいず
れも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第15民事部

裁判長裁判官

石丸将利
裁判官

丸山聡司
裁判官

久保晃司
(別紙)
訴1訟費用目録
原告らに生じた費用の9分の2及び被告Cに生じた費用の11分の7を被告Cの負担とする。

2
原告らに生じた費用の9分の7,被告Cに生じた費用の11分の4並びに被告D及び被告Eに生じた費用を原告らの負担とする。

(別紙)図面
<省略>
(別紙)見取図
<省略>

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