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助成金返還請求事件
事件番号平成29(行ウ)500
事件名助成金返還請求事件
裁判年月日令和元年11月7日
裁判所名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-11-07
情報公開日2020-03-26 14:00:40
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令和元年11月7日判決言渡
平成29年(行ウ)第500号

助成金返還請求事件

主1文
被告は,原告に対し,1408万6230円及び別表の内金欄記載の各金員に対する同表の起算日欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
2
訴訟費用は被告の負担とする。

3
この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1

請求
主文第1項と同旨

第2

事案の概要
被告は,岡山県の指定を受け,障害者等の就職困難者に係る就労継続支援等の
事業を営んでいたところ,岡山労働局長は,被告が14名の障害者及び1名の高齢者(以下,この15名を本件対象労働者という。)を雇用したことに関し,被告の申請に基づき,特定就職困難者雇用開発助成金(以下特困金という。)及び高年齢者雇用開発特別奨励金(以下高奨金という。)を支給する旨の決定(以下本件各支給決定という。)をし,被告に合計1408万6230円(以下本件助成金という。)を支給したが,その後,上記申請の際に提出さ
れた労働条件通知書における雇用期間に関する記載が事実と異なっていたことが判明したとして,本件各支給決定の全部を取り消す旨の決定(以下本件各取消決定という。)をした。本件は,原告が,①本件各取消決定により本件助成金に係る贈与契約が解除されたことによる原状回復請求,又は,②本件助成金に係る贈与契約の錯誤無効若
しくは詐欺取消しによる不当利得返還請求に基づき,行政事件訴訟法4条の公法上の当事者訴訟として,被告に対し,本件助成金の返還等を求める事案である(なお,被告は,本件訴えの提起に先立ち,本訴として,本件助成金の返還債務の不存在の確認を求める訴えを提起したところ,原告が,反訴として,本件訴えを提起したため,被告は上記の確認の訴えを取り下げた。)。
1
関係法令等
(1)

本件に関係する雇用保険法(平成28年法律第17号による改正前のも
の)の定めは別紙2-1,雇用保険法施行規則(平成24年厚生労働省令第67号による改正前のもの。)の定めは別紙2-2,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成22年法律第71号による改正前のもの。以下障害者支援法という。)の定めは別紙2-3,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成24年厚生労働省令第40号による改正前のもの。以下障害者支援法施行規則という。)の定めは別紙2-4,障害者の雇用の促進に関する法律(平成25年法律第46号による改正前のもの。以下障害者雇用促進法という。)の定めは別紙2-5,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(平成24年
法律第78号による改正前のもの。以下高年齢者雇用安定法という。)の定めは別紙2-6のとおりである。
(2)

雇用保険法62条1項は,政府が,被保険者等に関し,失業の予防,雇
用状態の是正,雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため,雇用安定事業として,同項1号から5号までに定める事業を行うことができるものとし,同項3号において,①定年の引上げ,高年齢者雇用安定法9条に規定する継続雇用制度の導入等により高年齢者の雇用を延長し,又は同法2条2項に規定する高年齢者等(以下,単に高年齢者等という。)に対し再就職の援助を行い,若しくは高年齢者等を雇い入れる事業主その他高年齢者等の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対して,必
要な助成及び援助を行うことを定め,②同項5号において,障害者その他就職が特に困難な者の雇入れの促進,雇用に関する状況が全国的に悪化した場合における労働者の雇入れの促進その他被保険者等の雇用の安定を図るために必要な事業であって,厚生労働省令で定めるものを行うことができる旨を定めている。
これを受けた雇用保険法施行規則109条は,雇用保険法62条1項3号及び5号に掲げる事業として,特定求職者雇用開発助成金(以下雇用助成金という。)等を支給するものとし,同規則110条1項は,雇用助成金は特定就職困難者雇用開発助成金(特困金)及び高年齢者雇用開発特別奨励金(高奨金)とする旨を定めている。
雇用助成金は,高年齢者や障害者等の所定の者(以下対象労働者と
いう。)を雇い入れた所定の事業主に対して支給するものとされ,雇用保険法施行規則においてその支給要件及び支給金額等が概括的に定められている。これを前提に,特困金については,平成23年▲月▲日職発〇第〇号厚生労働省職業安定局長通達により,特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)支給要領(乙1。以下特困金支給要領
という。)が定められ,高奨金については,平成26年▲月▲日職発〇第〇号厚生労働省職業安定局長通達により,特定求職者雇用開発助成金(高年齢者雇用開発特別奨励金)支給要領(乙2の1。以下高奨金支給要領という。)が定められ,さらに,雇用助成金の共通の支給手続等を定めるものとして,雇用関係助成金支給要領第1共通要領(乙2
の2。以下支給要領(共通)という。)が定められており,これらの各支給要領(以下,上記3つの支給要領を併せて本件各支給要領という。)において,雇用保険法施行規則に反しない限りで,支給要件及び支給手続等が具体的に規定されている。なお,雇用保険法施行規則及び本件各支給要領は,随時一部改正されているところ,本件助成金の支給要件及
び支給手続等に関する部分の規定の内容については,基本的に変更されていない。
(3)

特困金の支給について
対象労働者(雇用保険法施行規則110条2項1号イ,支給要領〔特困金〕0202)
(ア)
(イ)

60歳以上の者
身体障害者

a
障害者雇用促進法2条3号に規定する重度身体障害者

b
障害者雇用促進法2条2号に規定する身体障害者のうち重度身体障害者以外の者であって雇入れ日現在における満年齢が45歳以上であるもの

c
障害者雇用促進法2条2号に規定する身体障害者であって上記a及びb以外のもの

(ウ)

知的障害者

a
障害者雇用促進法2条5号に規定する重度知的障害者

b
障害者雇用促進法2条4号に規定する知的障害者のうち重度知的障害者以外の者であって雇入れ日現在における満年齢が45歳以上であ
るもの
c
障害者雇用促進法2条4号に規定する知的障害者であって上記a及びb以外のもの

(エ)

精神障害者
障害者雇用促進法2条6号に規定する精神障害者

(オ)

その他(省略)

支給要件等(特困金支給要領0201)
特困金は,次の(ア)~(イ)等に該当する事業主(以下支給対象事業主という。)に対して支給される。

(ア)

雇用保険の適用事業の事業主であること。

(イ)

対象労働者を公共職業安定所(以下安定所という。)若しく
は運輸局又は適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等(以下,これらを安定所等と総称する。)の紹介により,一般被保険者として雇い入れ,かつ,当該対象労働者を特困金の支給終了後も引き続き相当期間雇用することが確実である(以下雇用継続性要件1という。)と認められる事業主であること。

雇用保険法施行規則110条2項1号イは,対象労働者を安定所等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主であることを要する旨定めており,特困金支給要領においてこの要件を上記のとおり具体化したものである。
なお,厚生労働省等作成に係る平成23年版雇用の安定のために事業主の方への給付金のご案内(詳細版)(以下平成23年ガイドブックという。乙3)は,期間の定めのある雇用(以下有期雇用という。)については,契約更新の回数に制限がなく,希望すれば全員の契約更新が可能である場合など,期間の定めがない雇用(以下無期雇用という。)と同様と判断される場合に限り,雇用継続性要件1を
充足するものとしている。

特困金の助成対象期間及び助成金の額等(特困金支給要領0301~0404)
(ア)

特困金の支給の対象となる対象労働者の雇入れ日から起算した最

初の6か月が支給対象期の第1期とされ,以後6か月ごとの支給対象期が第2期,第3期,第4期とされており(以下,例えば,第1期の支給申請を第1期支給申請,第1期の支給決定を第1期支給決定と
いうことがある。),これらの支給対象期の一部又は全部につき特困金が支給される。

(イ)

特困金につき,対象労働者別及び企業規模別に定められた支給額

及び支給回数等は,別紙3-1のとおりである。
なお,雇用保険法施行規則110条2項から6項までは,別紙3-1の支給総額を定めている。
(4)

高奨金の支給について
支給要件等(高奨金支給要領0201)
高奨金は,以下の要件等に該当する事業主に対して支給される。

雇入れ日における満年齢が65歳以上であることなどの所定の要件に該当する対象労働者を安定所等の紹介により,1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れ,かつ,当該対象労働者を1年以上継続して雇用(無期雇用又は1年以上の契約期間の雇用)することが確実であると認められる事業主であること(以下雇用継続性要件2
という。)
雇用保険法施行規則110条7項1号イは,支給要件として,対象労働者を安定所等の紹介により1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主であることを要する旨を定めており,高奨金支給要領においてこの要件を上記のとおり具体化したものである。

なお,厚生労働省等作成に係る平成26年度雇用関係助成金のご案内~雇用の安定のために~(詳細版)(乙4。以下平成26年ガイドブックという。)は,高奨金の支給について,1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れ,1年以上雇用することが確実であると認められる場合に雇用継続性要件2を充足するとしている。

高奨金の助成対象期間及び助成金の額等
高奨金の対象となる期間は,起算日から1年間であり,起算日から起算した最初の6か月が支給対象期の第1期とされ,以後の6か月が第2期とされ,各期に支給される(2回支給)。

高奨金につき,対象労働者の労働時間区分別及び企業規模別に定められた支給額は,別紙3-2のとおりである。
(5)

支給手続等
雇用助成金の支給を受けようとする事業主は,助成金の支給の対象となる対象労働者に係る支給対象期が経過するごとに,当該支給対象期分の助成金について,当該支給対象期の末日の翌日から起算して1か月以内(高奨金については2か月以内)に,雇用助成金第1期支給申請書又は雇用助
成金2・3・4期支給申請書のいずれかを管轄労働局長に提出しなければならない(以下,この提出行為を支給申請という。)。
支給申請における必須の添付書類は,雇用契約書又は雇入れ通知書(以下労働条件通知書という。),対象労働者雇用状況等申立書(以下雇用状況等申立書という。)等とされている(特困金支給要領10
01~1004,高奨金支給要領0602,支給要領(共通)0401~0402)。

管轄労働局長は,支給要件の判定においては,対象事業主に該当するか否か及び支給することができない所定の場合に該当するか否かの判定並びに支給額の算定に係る確認を行い,支給要件を満たすものと判定された事
業主について,雇用助成金を支給することが適切であるか否かを判断して支給決定を行う。
対象事業主に該当するか否かに係る確認事項のうち,特困金については,対象労働者の雇用継続の確認においては,事業主が対象労働者を助成金の支給終了後も引き続き一般被保険者として雇用することが確実である
か否かについて,事業主から提出された雇用状況等申立書の記載内容により確認するものとされている(特困金支給要領1101~1103,支給要領(共通)0601)。

管轄労働局長は,事業主が偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合等には,当該事業主に対して,支給した助成金の全部又は一部に係る支給決定を取り消すものとされている(特困金支給要領1301,1401,支給要領(共通)0701,0801。以下本件取消条項という。)。また,特困金支給要領1302は,本件取消条項に該当する助成金の不正受給の意義について,詐欺,脅迫,贈賄等刑法各本条に触れる行為を含むことは勿論であるが,刑法上犯罪を構成するに至らない場合であっても,故意に支給申請書に虚偽の記載を行い,又は偽りの証明を行うことにより,本来受けることのできない助成金を受け,又は受けようとすることをいう。ただし,支給申請書の記載誤りが故意によらない軽微なものと認められる場合にはこれに該当しない。としている。2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は,枝番のあるものは,枝番を特定しない限り,全ての枝番を含むものとして表示する。)
(1)

被告は,職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動等,特定非
営利活動に係る事業(在宅障害者等に対する障害福祉サービス事業)等を目的とする特定非営利活動法人であり,平成23年10月1日,岡山県から,就労継続支援A型事業所(以下A型事業所という。)の指定を受け,障害者等を雇用し,岡山県倉敷市茶屋町に所在する被告の本部又は岡山市C1区に所在する作業場(名称C2。)において,農業,食品製造加工及び販売事業等に従事させていた(甲1)。

就労継続支援A型事業(以下A型事業という。)は,障害者支援法5条において障害福祉サービスの一つとして定める就労継続支援事業であり,通常の事業所に雇用されることが困難であって,雇用契約に基づく就労が可能である障害者と雇用契約を締結することにより,これらの者に対し,就労の機会を提供するとともに,生産活動等の機会の提供を通じて就労に必要な
知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行うものである(障害者支援法施行規則6条の10第1号)。A型事業所の指定を受けた事業所が,A型事業の利用者である障害者に当該支援に係るサービスを提供するに当たっては,同事業所と利用者との間で,雇用契約とは別に,A型事業に係る利用契約(以下A型事業利用契約という。)が締結される。
これに対し,就労継続支援B型事業(以下B型事業といい,同事業を行うための指定を受けた事業所をB型事業所という。)は,通常の事業所に雇用されることが困難であるばかりでなく,雇用契約に基づく就労も困難である者に対して就労の機会の提供等をするものである(障害者支援法施行規則6条の10第2号)。B型事業所では,利用者との間で雇用契約は締結されず,その就労に対しては工賃が支払われるが,その額は,最低賃金を
下回るのが通常である。
(2)

本件助成金の支給申請及び本件各支給決定等
本件対象労働者のうち,後記アの2名及び後記イ(ア)の12名は特困金の
対象労働者であり(以下,併せて本件特困金対象労働者という。),後記ウの1名は高奨金の対象労働者である(なお,本件特困金対象労働者につき,障害別に見た内訳は,後記イ(ウ)のとおりである。)。

本件特困金対象労働者の一部であるC3及びC4の雇用と特困金の支給決定(乙8の1及び2)
(ア)

C3及びC4の雇用
被告は,平成23年10月4日,倉敷中央公共職業安定所(以下倉敷安定所という。)に対し,障害者を対象とし,農作業,清掃等を仕事の内容としてパート労働者を求人する旨記載した求人票(以下本件求人票1という。)を提出し,これに応募した知的障害者であるC3を,平成23年11月14日付けで雇い入れ,同様に応募した身体障害者であるC4を,同月21日付けで雇い入れた。

(イ)

C3及びC4の雇用に係る特困金の支給申請
被告は,平成24年7月6日,C5(同社労士の事務所をC6と
いう。)を提出代行者ないし事務代理者として,倉敷安定所を経由して,岡山労働局長に対し,C3及びC4を対象労働者とする特困金の第1期支給申請書(以下,併せて本件申請書1という。)及びその添付書類を提出した(以下本件申請1という。)。
(ウ)

求人票,労働条件通知書の記載内容等
本件求人票1の職種欄には,(障)農作業,清掃,食器洗浄,

雇用期間欄には雇用期間の定めなし,求人条件特記事項欄
には就労継続支援A型事業(雇用型/利用料あり)との記載があり,本件申請書1には,求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付されていた。その一方で,本件申請書1に添付された労働条件通知書(乙10の1及び2。以下本件訂正前通知書という。)には,いずれも契約期間欄に『就労継続支援A型事業利用契約書』に基づいた期間の定めあり(以下本件期間制限条項という。)との記載が存在し,その下に具体的な契約期間(始期及び終期)が記載されるとと
もに,契約更新の有無欄に,

雇用契約の更新は,A型事業利用契約書(第3条,17条及び19条)の内容,進捗状況を参考にして,その都度,判断することとします。

(以下本件更新条項1という。)との記載が存在した。なお,本件期間制限条項及び本件更新条項1において上記のとおり引用されているA型事業利用契約書は,添付されてい
なかった。
岡山労働局職業安定部職業対策課助成金主任(当時)であったC7は,本件申請1に係る上記書類を審査し,C6に電話を架け,同事務所の事務員に対し,本件訂正前通知書に本件期間制限条項が記載されていることを指摘するなどした(以下第1措置という。)。

その後,被告は,本件訂正前通知書の契約期間欄の記載を期間の定めなしとの記載に修正した労働条件通知書(乙8の1及び2。以下本件提出通知書1という。)を作成し,岡山労働局長に提出した。その後,C7は,本件申請書1の添付書類の一つとして提出された雇用状況等申立書(以下本件雇用状況等申立書という。)について,その雇用期間の定め欄のありに丸印が付され,契約期間欄
にその期間(C3については平成23年11月14日~平成24年4月
30日,C4については平成23年11月21日~平成24年4月30日)が記載されているのを発見したことから,平成24年10月1日付けで,C6の事務員に対し,本件雇用状況等申立書の写しに,赤字で,上記丸印及び契約期間の記載の上に二重線を引いた上で,雇用期間の定め欄のなしに丸印を付したものを送付して,同申立書の訂正を
求めた(甲9~11。以下第2措置という。)。被告は,雇用期間の定め欄のなしに丸印を付した雇用状況等申立書を作成し,これを岡山労働局長に提出した(乙8の1及び2)。
(エ)

C3及びC4の雇用に係る特困金の支給決定
岡山労働局長は,平成24年10月12日,C3及びC4を対象労働
者とする特困金の第1期支給決定をし,被告に対し,その旨通知するとともに,同月17日,被告が指定した被告名義の銀行口座に,C3に係る特困金45万円及びC4に係る特困金43万4425円を振込入金した(別紙4の番号1及び2)。
(オ)

その後のC3及びC4の雇用に係る特困金の支給
被告は,その後,倉敷安定所を経由して岡山労働局長に対し,C3及
びC4を対象労働者とする特困金の第2期及び第3期支給申請を行い,岡山労働局長は,上記各支給申請について,それぞれ支給申請書を審査した結果,支給要件を満たすものと判断し,順次,支給決定を行った(別紙4の番号9,10,16及び17)。


その他の特困金の対象労働者に係る雇用と特困金の支給等(乙8の3~13及び15)
(ア)

被告は,本件対象労働者のうち12名(C8,C9,C10,C

11,C12,C13,C14,C15,C16,C17,C18及びC19)を雇い入れ,これらの者を対象労働者とする特困金の第1期支給申請(以下,併せて本件申請2という。)を行い,岡山労働局長は,本件申請2に係る各支給申請書(以下本件申請書2という。)を審査した結果,支給要件を満たすものと判断し,順次,第1期支給決定を行った(別紙4の番号3~8,23,24,28,30,31及び34。乙8の3~13及び15)。

本件申請書2に添付された求人票(以下本件求人票2という。)
には,いずれも雇用期間の定めなし等の記載があり,本件申請書2には,求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付され,本件申請書2に添付された労働条件通知書(以下本件提出通知書2とい
う。)には,いずれも,契約期間欄に期間の定めなしと記載さ

れていた(乙8の3~13及び15)。
(イ)

被告は,その後,倉敷安定所を経由して岡山労働局長に対し,C

8,C9,C11,C12,C14,C15については第2期~第3期の,C13については第2期~第4期の,C16については第2期の各支給申請を行い,岡山労働局長は,上記各支給申請について,それぞれ支給申請書を審査した結果,支給要件を満たすものと判断し,特困金の支給決定を行った(別紙4の番号11~15,18~22,25~27,29,32及び35)。
(ウ)

本件特困金対象労働者のうち,C3,C9及びC15は知的障害

者(45歳未満),C8,C12,C14,C17及びC18は重度知的障害者,C10,C13及びC16は精神障害者,C11及びC4は身体障害者(45歳以上),C19は重度身体障害者に該当する者であり,被告は,これらの者との間で,A型事業利用契約を締結していた(乙8の1~13及び15)。

高奨金の対象労働者であるC20に係る雇用と高奨金の支給(乙8の14)
被告は,平成26年6月1日,C20を雇い入れ,平成27年1月27
日,C20を対象労働者とする高奨金の第1期支給申請(以下本件申請3という。)を行い,岡山労働局長は,支給申請書(以下本件申請書3という。)を審査した結果,支給要件を満たすものと判断し,第1期支給決定を行い,被告に対し,30万円を支給した(別紙4の番号33)。

本件申請書3に添付された求人票(以下本件求人票3という。)には,雇用期間の定めあり3ヶ月契約更新の可能性あり等の条件

でパート労働者を求人する旨の記載があり,本件申請書3には求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付され,同申請書に添付された労働条件通知書(以下本件提出通知書3という。)の契約期間

欄には期間の定めあり(平成26年6月1日~平成26年8月31日)との記載があり,契約更新の有無欄には①原則,雇入れ日より最低2年間は雇用を継続する,②雇用の更新期間は3ヶ月から12ヶ月の間で区切ることとするとの記載(以下2年間雇用継続条項という。)がある。


本件助成金の額
上記ア~ウにより,本件対象労働者につき,特困金については特困金支給要領(別紙3-1),高奨金については高奨金支給要領(別紙3-2)所定の各金額が被告に支給されたものであり,その金額の合計は,
1408万6230円である。
また,被告が,本件各支給決定に基づいて個々の支給を受けた各金額及び各日は,別紙4の支給金額欄及び振込日欄記載のとおりであ
る(以下,このように被告が交付を受けた特困金を本件特困金といい,高奨金を本件高奨金という。)(乙14)。
(3)
本件各支給決定の取消しの経緯

ア(ア)

実地調査の状況等(乙9,10)
岡山労働局の職員は,平成27年7月3日,被告の事業所を訪問し
て,調査を行い,被告が保管している書類を確認するなどした。
被告が本件特困金対象労働者に対し交付したものとして保管されていた労働条件通知書(以下本件交付済通知書1という。)には,いずれも,契約期間欄に『就労継続支援A型事業所利用契約書』に基づいた期間の定めあり(本件期間制限条項),契約更新の有無欄に

雇用契約の更新は,A型事業利用契約書(第3条,17条及び19条)の内容,進捗状況を参考にしながら,その都度,判断することとします。

(本件更新条項1)との記載が存在した。そして,本件期間制
限条項の下には,括弧書きで具体的な契約期間(始期及び終期)の記載が存在し,その期間は概ね半年間であった(乙10の1~13及び15)。
また,本件高奨金の対象労働者であるC20に交付された労働条件通知書(以下本件交付済通知書2という。)には,契約期間欄に

期間の定めありとの記載があり,その期間として,いずれも1年未満(平成26年6月1日~平成26年8月31日平成26年9月1日~平成27年2月28日平成27年3月1日~平成27年8月31日)の記載が存在した上,契約更新の有無欄には雇用契約は,次の内容を判断しながら更新することがあるとの記載があり,
次の内容として出勤状況,態度等勤務への取組み姿勢,知識,技能等の習得状況,契約期間満了時点の経営状況,その他,規則第2条,第6条『服務心得』の遵守状況などとの記載が存在した(以下本件更新条項2という。)。
(イ)

被告の理事に対する聴取
岡山労働局の職員は,平成27年7月22日,被告の事業所を再度訪
問し,上記(ア)の労働条件通知書に本件期間制限条項,本件更新条項1及び2の記載が存在することの理由等について,被告のC21から聴取した(乙12)。
C21は,岡山労働局の職員が上記聴取の結果について下記の内容を記載した雇用関係助成金に関する申立事項聴取書と題する書面に署
名押印した(なお,下記の記載内容につき,上記において定義した用語と置き換えて表記する場合がある。以下の引用部分についても同じ)。記
本件対象労働者の雇用助成金第1期支給申請にかかる添付書類の一つである労働条件通知書について,原本とは異なる内容のものを別途作成し,支給申請書に添付しました。また,その後につづく2期以降の申請も,1期の手続が不適正であったにもかかわらず続けて行いました。雇用助成金の支給要件では『有期雇用契約者の場合は支給対象外』のため,本来の労働条件では,支給要件に該当しませんでした。そこで,申請代行を依頼していたC5の指導のもと,雇用助成金支給要件に該当するように,対象労働者の労働条件のうち,雇用期間に係る項目を本来の「雇用期間の定め有から雇用期間の定め無しに書き換え,また更新条項の項目を変更または消去して雇用助成金の支給要件に合うよう,通知書を別途作成し,雇用助成金の申請には当該通知書(写)を添付いたしました。当該通知書は,助成金申請用であったため,当然対象
労働者本人には交付しておらず,雇用助成金支給申請後に廃棄処分をしております。」
今回の通知書の内容については,事実と異なる雇用期間定め無しの通知書が別途作成されたということは,あってはならない事だと現場を含め社内に周知したところです。事実と異なる内容の通知書を作成し,雇用助成金の支給を受けたことについて,大いに反省しており,今後このようなことが無いよう業務管理を徹底していきます。

本件各支給決定の取消し
岡山労働局長は,平成27年8月17日付けで,被告が事実と異なる内容の労働条件通知書を偽造し,本件助成金を受給したことを理由として,本件各支給決定について,いずれも支給額の全額を取り消し(本件各取消決定),被告に対し,その旨の通知をするとともに,特定求職者雇用開発助成金の支給分に係る返還についてと題する書面を送付して,本件助成金の全額を返還するよう通知し,さらに,本件各取消決定の日(平成27年8月17日)から3年間,被告の事業所について雇用助成金の支給は行われない旨記載した通知書を送付した(甲2~4)。
(4)

本件訴えの提起
被告は,平成28年12月7日,本件助成金の返還義務がないことの確
認を求める訴えを岡山地方裁判所に提起し,同裁判所は,これを東京地方裁判所に移送した(東京地方裁判所平成29年〔〇〕第〇号)。これに対し,原告が,反訴として,本件助成金の返還等を求める本件訴えを提起した(平成29年〔行ウ〕第500号)ため,被告は,上記確認の訴えを取り下げ
た。
なお,被告は,平成29年7月31日付けで事業所を閉鎖し,すべての労働者を事業主都合で解雇した。
3
争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件助成金の返還義務の存否であり,争点に関する当事者の
主張の要旨は,別紙5のとおりである(同別紙で定義する略語は本文でも用いる。)。
具体的には,本件各支給要領のうち本件取消条項(関係法令等⑸ウ)に定める偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合に当たるか否かが争われているところ,被告は,本件提出通知書1に無期雇用と記載した(前提事実(2)ア(ウ))のはC7の指導によるものであるほか,そもそも被告
における本件特困金対象労働者の雇用は,有期雇用ではあっても対象労働者が希望すれば更新するという運用がされており,実質的に無期雇用と同様であったのであるから,特困金の支給要件である雇用継続性要件1を充足していたものであり,また,本件高奨金に係る対象労働者の雇用についても同様にその支給要件である雇用継続性要件2を充足していたものであるから,本来受けるこ
とのできない助成金を不正行為により受けた場合には当たらないなどと主張している。
第3

当裁判所の判断
当裁判所は,被告による本件助成金の申請は支給要件である雇用継続性要件1
及び2を充足していたとはいえず,本件取消条項に定める偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合に該当すると認められるため,本件各支給決定の取消しにより本件助成金に係る贈与契約の解除の効果が発生し,被告は原告に対し本件助成金の返還等をすべき義務を負うから,原告の請求を認容すべきものと判断する。
その理由の詳細は,次のとおりである。

1
認定事実
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(1)

本件対象労働者の雇用及び退職
被告は,平成23年10月1日,岡山県からA型事業所の指定を受け(前
提事実⑴),別紙6資格取得年月日欄記載の各日(平成23年11月14日から平成26年6月1日まで)に本件対象労働者を雇い入れ,本件対象労働者は,被告の事業所において就労し,同別紙資格喪失年月日記載の日に被告を退職した。
また,被告は,本件特困金対象労働者との間でA型事業利用契約を締結していた(前提事実(2)イ(ウ))。
(2)

雇用の状況並びに労働条件通知書の記載及び説明内容
被告は,労働者を雇い入れるか否かについては,面接や5日間の体験実習
等を通じて,当該労働者が,A型事業所において求められる作業能力を有していると認められるかにより判断していた。
被告は,本件特困金対象労働者を雇い入れる際,各労働者に本件交付済通
知書1を交付したが,同通知書には,契約期間欄に『就労継続支援A型事業所利用契約書』に基づいた期間の定めあり(本件期間制限条項),契約更新の有無欄に

雇用契約の更新は,A型事業利用契約書(第3条,17条及び19条)の内容,進捗状況を参考にしながら,その都度,判断することとします。

(本件更新条項1)との記載が存在した(前提事実⑶ア(ア))。被告の理事であり,平成23年から平成25年6月頃まで被告のA型事業所における採用等を担当していたC22は,本件特困金対象労働者に同通知書を交付する際,その記載の概要を読み上げたのみで,契約更新の有無欄の内容については説明せず,どのような場合に契約が更新されるか
についても説明しなかった。また,C22は,雇用契約を更新する際も,本件特困金対象労働者に対し,どのような場合に契約が更新されるかを説明することはなかった。
そのため,本件特困金対象労働者の大部分は,被告との雇用契約に係る契約期間や契約更新について,本件交付済通知書1に記載された以上の認識を
有していなかった。
(3)

(乙16~19,証人C22)

A型事業利用契約について

A型事業は,通常の事業所に雇用されることが困難であって,雇用契約に基づく就労が可能である障害者と雇用契約を締結することにより,これらの者に対し,就労の機会を提供するとともに,生産活動等の機会の提供を通じて就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行うものであり,A型事業所の指定を受けた事業所が,A型事業の利用者
である障害者に当該支援に係るサービスを提供するに当たっては,同事業所と利用者との間で,雇用契約とは別にA型事業利用契約が締結される(前提事実⑴)ところ,当該利用契約に係るサービス利用料は,障害者支援法の規定に基づく訓練等給付費の支給対象とされ,これが事業所に支給される。訓練等給付費の支給決定には有効期間が定められており(更新は
可能であり,更新回数に制限はない。),A型事業所においては,この有効期間に合わせて,例えば半年や1年といった期間での有期雇用契約が締結されることもあった。
このような実情を踏まえ,特困金の支給にかかる審査の運用においても,有期雇用契約であるというだけで直ちに雇用継続性要件1を満たさな
いものとするのではなく,契約更新の回数に制限がなく,労働者が希望すれば契約を更新することを前提として雇用契約を締結するなど,実質的に無期雇用と同等のものと評価することができ,当該雇入れが特困金の支給の趣旨に合致するものであるか否かによって個別に判断することとされている(乙11)。


利用契約の内容
被告と本件特困金対象労働者が締結したA型事業利用契約に係る契約書(以下A型事業利用契約書という。)には,下記の各条項が記載されている(乙17の2)。

第1条

本契約は,障害者支援法に基づいて,事業者が提供するA型事
業のサービス内容と,利用者が支払うべき料金との関係を明確にし,利用者と事業者の双方の理解と合意のもとにA型事業が提供されることを目的とします。
第2条
(略)

第3条

この契約の期間は,平成

年月
日から平成

年月
日と

します。
2
前項の契約期間満了日において引き続き,利用者への訓練等給付費の支給が決定されたときは,その決定された期間満了まで本契約は更新するものとします。また,それ以降の契約期間満了に伴う更新についても同様とします。ただし,期間満了の3か月前までに利用者から
本契約を更新しない旨の申入れがあった場合,又は,第18条若しくは第19条により本契約が解除された場合は,本契約は終了するものとします。
第4条(略)
第5条

事業者は,利用者の個別支援計画を作成し,これに基づいたA

型事業にかかる一連のサービスを提供するものとします。
2
前項の個別支援計画について,事業者は次の各号の業務を職員に行わせるものとします。
(1)

利用者について解決すべき課題を把握し,利用者の意向を踏ま

えた上で,A型事業の目標及びその期間,サービスの内容,サービスを提供する上での留意点などを盛り込んだ個別支援計画を,原則として入所後1か月以内に作成するものとします。
(2)

前号の個別支援計画については,その内容を記した書面を利用

者に交付・説明し内容の確認並びに記名捺印を受けるものとしま
す。
(3)~(4)(略)
第6条
2
(略)
利用者は,A型事業の対価として市町村が定める定率負担額及び訓
練等給付費対象料金の利用料金と食費を事業者に支払うものとします。
3~4(略)
第7条(略)
第8条

事業者は,個々人の能力,適性に応じて,作業の内容を定め,

適切な生産活動等の支援を行うと共に,その作業に対して作業能力等を適切に評価し,応分の賃金を支払います。
第9条

事業者は,日常生活上の支援や職場外支援に当たっては,利用

者の自立の支援及び日常生活支援の充実に資するよう,適切な技術をもって行います。
第10条

事業者は,生産活動等を通じて,各種の訓練など一般就労に

向けた就労支援や,円滑な地域生活も可能となるような関連の支援を行います。
第11条~第16条(略)
第17条

利用者または事業者が,次の各号のいずれかに該当した場

合,本契約は終了するものとします。
(1)
利用者が死亡した場合

(2)

訓練等給付費が必要ないと決定された場合

(3)~(4)(略)
(5)

事業者が就労継続支援A型事業所の指定を取り消された場合又

は指定を辞退した場合
(6)(略)
第18条(略)
第19条

事業者は,やむを得ない理由がある場合には,30日以上の
予告期間をおいて文書で通知することによりこの契約を解約することができるものとします。ただし,次の事由に該当する場合には,文書で通知し直ちに本契約を解約することが出来るものとします。
(1)~(3)(略)
第20条~第25条(略)

(4)

C8の雇入れから退職に至る経緯について(乙16,21,22,証人
C29)

C8(平成3年▲月生)は,幼い頃に,高次脳機能障害となり,そのためにさまざまな障害特性を有していた。すなわち,C8は,①社会生活上
のルールについて,1度に複数のルールを覚えることができない,②難解な言葉を理解し,記憶することができない,③感情をコントロールすることが難しく,怒りや悲しさがあったりすると,その後,立ち直ることが困難な場合がある,④相手から威圧的な態度を示されると,体を硬直させ,自らの考えや意見を述べることができないといった障害特性がある一方で,
⑤優しく接せられれば,精神状態が安定する,⑥褒められたり,信頼の情が示されれば,物事を最後まで頑張ってやりきることができるという面も有していた。
C8は,小学校及び中学校では特別学級に在籍し,高等学校(普通科)を卒業した後,保育士を目指して専門学校に入学したが,中退し,その
後求職活動を始め,平成23年8月,岡山障害者職業センター長から重度知的障害者との判定を受けた。
C8は,A型事業所での就労を目指して,平成23年10月,安定所の障害者説明会に出席し,複数の企業の紹介を受けたが,いずれも不採用であった。その後,C8は,被告が岡山安定所に求人票を出しているこ
とを知り,C2を見学し,平成24年2月1日,被告に雇い入れられ,同日から,C2において働き始めた。

就労当初の状況
C8が就労するに当たって,C8の両親が,被告から,C8の障害の内容,状況や対応方法について質問を受けることはなかった。
C8は,就労を始めて間もない頃,感情をコントロールすることができなくなり,作業場を出て行ったことがあったが,被告は,C8の両親の
連絡先を把握していなかった。

後見開始の審判等
C8は,その後,交際を始めた男性のアパートに住むようになったが,同男性から金銭を使われていることが判明した。そこで,C8の両親は,
平成24年8月7日,C8について成年後見開始の申立てをし,同年10月25日,C23がC8の後見人になった。後見人の業務を実際に担当したのは,同法人の会員である弁護士のC24及び行政書士のC25であった。
C25は,平成24年の年末から翌年の初め頃,被告のC22から電話
で連絡を受け,C8が職場で問題行動を起こしており,雇用継続が難しいと告げられた。C22は,C8の問題行動の内容について,挨拶をしないこと,職員に対し口答えをすること,職場の人とトラブルを起こし作業場から飛び出すことがあること,決められたことを守ることができないことを挙げた。

これに対し,C25は,就労に課題を有する障害者の就労継続支援事業を行うA型事業所である被告はこれらの者の障害特性に応じた就労を支援しなければならない立場にあるのであるから,かかる支援をすることなく,C8の問題行動への対応が難しいという理由だけでC8を辞めさせることはできないと述べた。その上で,C25は,C22に対し,C
8の現在の状況について,例えば,労働習慣,作業態度,作業能力,対人関係等の項目別に評価した表があるかを尋ねた。
その後,話合いの場がもうけられ,C22は,C8及びC25に対し,C8の状況を項目別に評価した表(乙1・資料2)を見せた。その表は,労働習慣作業態度作業能力対人関係その他の5つ
の大項目について,それぞれさらに複数の小項目が設けられ,それぞれの小項目(合計29項目)について○又は×の欄が設けられてい

たところ,これらの小項目のうち,○が付けられたのは5つの小項目のみで,残りの小項目には×が付けられていた。C8はこれらの評価に不満を示し,泣き出して外に出て行ってしまったため,話合いは続けることができなかった。
その後も,C8は,被告の事業所での就労を継続したが,被告の職員か
ら注意を受けて,職場を飛び出したことが何度かあった。もっとも,平成25年6月頃に被告の担当となったC26は,C8の障害特性を理解しつつ対応していたため,C8の勤続態度も安定するようになった。エ
妊娠及び出産
平成27年12月,C8は,妊娠していることが発覚し,子供を養って
いくために出産後も雇用の継続を希望したところ,C25の被告に対する働きかけもあって,産前産後休暇及び育児休業を取得できることとなった。
C8は,平成28年▲月▲日,長男であるC27を出産した。

職場復帰の話合い(1度目)
平成29年3月27日,C8の復帰に当たっての1度目の話合いが行われ,C8とその両親,C24,C25,被告の理事であるC28等が参加した。C28は,育児休暇中に実施している事業所内のルール変更についてのお知らせと題する書面(乙21・資料3。以下ルール書面という。)及び服装規定と題する書面(乙21・資料4)を示し,その記載どおりに読み上げた。
ルール書面には,別紙7のとおり,冒頭部分に

下記のルールを遵守していただくことは,『A型での就労』における最低限のルールのため必須となります。

との記載があり,その下に,5つのルール(①人のことは言わない②働く職場にふさわしい服装で通勤する③決められた場所及び時間以外で飲食をしない④他人を攻撃しない⑤物品をていねいに扱う)の記載が存在した。上記5つのルールについては,更に数多くの詳細なルールが定められていたが,複数のルールを1度に覚えることができず,難解な言葉を理解することのできないC8の障害特性(上記ア)に照らし,C8がこれらのルールを理解し,かつ記憶することは困難であった。また,上記④及
び⑤のルールに関し,ルール書面では,他人への攻撃(殴る,たたくなどの暴力行為のほか,嫌みを言う,からかうなどの言動も含む。)が目撃された場合や,物品を投げる,大きな音を立てて置くなどの乱暴な扱いを行い,口頭注意を受けてもこれを継続した場合は,作業終了を指示され,所定の場所で退社時間(午後4時)まで反省を促すものとされて
いたが,感情をコントロールすることが難しいという障害特性を有するC8には,これらのルールを遵守することは困難であった。
この話合いの後,C8がC2の職場に復帰する日が,平成29年6月1日に決まった。

職場復帰の話合い(2度目)
平成29年5月17日,C8の復帰に当たっての2度目の話合いが行われ,C8とその両親,C24,C25,被告のC28等が参加した。C28は,復帰するにあたっての約束事項と題する書面(乙21・資料5。以下約束事項書面という。)を示した。

約束事項書面には,別紙8のとおり,ルール書面に記載された5つのルールが記載されている。その1つである人のことは言わないの項目の中に

『前はこうしていた。』とは言いません。

との禁止事項が記載されているところ,これは,C8が,その障害のために,柔軟性に欠けるという面があり,前はこうしていたとつい言うことがあったため,そのような言動を禁止する趣旨で定められたものであった。
約束事項書面には本人確認の欄があり,C8はこれに押印した。また,
同書面末尾には,

以上のことを確認のうえ,復帰していただきます。

との記載があった。

退職に至る経緯等
C8は,平成29年6月1日,C2の作業場に復帰した。

C8は,復帰後に作業場で履くこととなるコックシューズについて,そのサイズを24.5cmであるとあらかじめ申告し,被告は同サイズのコックシューズを準備していたところ,C8が上記の申告をするに当たり試し履きをする機会はなく,復帰初日に初めて準備されたコックシューズを履いたが,サイズが合わなかったため,1時間で作業を中断して
帰宅することになった。
被告は,C8とその両親に対し,面談を申し入れ,同月2日,C8とその両親,C25は,被告のC28等との面談を行った。その面談において,C28は,

うちではC8を預かるのは無理です。

契約は1年ですが,復帰に向けての約束を破りました。C8をうちで雇用することは難しいです。

と述べ,C8に対し,

この間約束したよね。約束したから,印鑑押したんだよね。

と問いかけたが,C8は体をこわばらせたまま黙っていた(このようなときに体を硬直させ,自分の意見や考えを述べることができないのも,C8の障害特性である〔前記ア〕。)。C25及びC29(C8の母)は,C8の問題行動は障害特性の故であ
るとして理解を求めたものの,C28は,約束を守ることが契約を継続するのに必要であるとの見解を変えなかった。
以上のような被告の対応から,C8は,やむなく退職届の提出に応じることとし,退職届に署名捺印をして,被告に提出した(甲19)。C8は,その後,被告を退職したことについて,労働基準監督署に相談した。ク
上記ア~キの事実認定に係る補足説明
以上の事実認定に関し,被告は,C8の退職に至る経緯等に関するC2
9の証言は,被告がC8を退職させたがっていたと誤認してされたものであるから信用することができない,C25の陳述(乙21)も反対尋問を経ていないものであり信用性がないなどと主張する。しかし,C25の陳述内容とC29の証言内容は基本的に整合している上,①C8の育児休業後の職場復帰に当たり,被告におけるルールが変更されたとして,C8が
その障害特性の故に理解,遵守することが困難な内容の約束事項が示され,これらの約束事項を守ることが職場復帰の上で必要とされていたこと,他方,②C8は育児休業後の職場復帰に意欲を持っており,復帰初日に1時間しか働けなかったのは被告から指定されたシューズのサイズが合わなかったためであること,③C8が退職届を提出した後,労働基準監督署に
相談していることに鑑みれば,C8が自発的に被告を退職したという被告主張の事実は不自然であり,被告から約束事項を守ることが契約継続のために必要であるとする強い意思が示されたため,やむなく退職届の提出に応じたと認めるのが自然である。したがって,この点に関するC29の証言及びC25の陳述は,信用することができるものというべきである。
また,岡山労働局の職員がC8の申述を聴取して作成した聴取書
(乙16)の内容についても,C29の証言に沿う限度において,信用することができるというべきである。
(5)

その他の対象労働者に係る契約更新や退職について
重度知的障害者であるC18は,平成26年4月1日に被告に雇い入れられ,被告の事業所が閉鎖する平成29年7月31日まで勤務していたものであり(前提事実⑷,別紙6),その間,3回以上,契約更新がされた(乙10の13)が,これらの更新の際,被告から更新の希望の有無についての確認はされなかった。なお,C18は,野菜の皮むきや食器洗浄などの調理補助を行っていたところ,指導員から,一般の会社でも仕事ができると評価されていた(乙17の1及び2)。


重度知的障害者であるC12は,平成24年3月1日に被告に雇い入れられ,平成25年4月30日に退職する(別紙6)まで,被告の事業所において,食器を洗ったり拭いたりする業務を行っていた。C12は,採用の約1年後,

調理ができるのであればA型に残れますが,調理ができないのであれば他の人と一緒にB型事業所に移ってほしい。

と言われ,調
理ができないため退職した。なお,C12はその後,B型事業所で就労した後,一般社団法人の従業員として雇用され,ハンガーの組み立ての業務をしている(乙18)。

知的障害者であるC9は,平成24年2月1日に被告に雇い入れられ,平成25年4月30日に退職する(別紙6)まで,食器洗いの業務を行っ
ていた。C9は,被告を退職する約1か月前に,

B型事業所で働いてもらえないか。

と言われ,B型事業所に勤めることにし,被告を退職した(乙19)。

上記ア~ウの事実事実に係る補足説明
以上の事実認定に関し,被告は,岡山労働局の職員がC18,C12及びC9の申述を聴取して作成した聴取書(乙17~19)における各申述内容の信用性は低いと主張し,C22は,C12やC9は納得して退職したと証言する。
しかし,C12及びC9は,被告に雇い入れられて1年余で被告を退職
しB型事業所へ移っているところ,B型事業所はA型事業所と異なり雇用契約を締結して就労することができない者につき就労の機会を提供するというものであり,その就労に対しては工賃しか支払われない点で利用者の待遇は大きく異なるものである(前提事実⑴)。したがって,被告の事業所において1年間勤務したC12及びC9が自発的にB型事業所への移行を希望したとは考え難く,被告からB型事業所への移行を勧奨され,これを断れば就労の機会を失うため,やむなくこれに応じたも
のと認めるのが自然である。C12及びC9の各申述は,基本的にこれに沿うものであり,特に矛盾する点や不自然な点もうかがわれないから,上記認定の限りにおいて信用することができるというべきである。(6)

本件申請1の審査について
C7は,本件申請1に対し,以下の審査等をした。


本件特困金対象労働者のうちC3及びC4に係る本件申請書1に添付された本件求人票1には,雇用期間の定めなしとの記載があり,本件申請書1には,求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付されていたのに対し,本件申請書1に添付された本件訂正前通知書には,『就労継続支援A型事業所利用契約書』に基づいた期間の定めあり(本件期間制限条項)の記載等が存在しており,これに気付いたC7は,本件申請書1の提出事務を被告に代行して行っていたC6の事務員に対し,本件訂正前通知書に本件期間制限条項が記載されていることを指摘した(第1措置)ものであるところ(前提事実(2)ア(イ),(ウ)),これは,特困金の支給
要件である雇用継続性要件1(関係法令等⑶イ(イ))の充足性に関わる本件申請書1の記載(同申請書において引用する本件求人票1の記載)と,本件訂正前通知書における本件期間制限条項の記載とが明らかに矛盾するため,これらのうちいずれが正しい記載であるのかを確認する趣旨であったと推認される。そして,被告は,岡山労働局長に対し,契約期間欄に
期間の定めなしとの記載がある本件提出通知書1(乙8の1及び2)を提出した(前提事実(2)ア(ウ))ことにより,本件訂正前通知書における本件期間制限条項の記載は誤りであり,雇用期間の定めがないとする本件求人票1の記載が正しい旨を示したものである。(乙11)

もっとも,上記のとおり提出し直した労働条件通知書のうち,C4に係るものには,

雇用契約の更新は,A型事業利用契約書(第3条,17条及び19条)の内容,進捗状況を参考にしながら,その都度,判断することとします。

(本件更新条項1)の記載が残存していたことから,C7は,平成24年10月1日頃,C6の事務員にこの点を確認したところ,同事務員は,上記の記載につき,

契約期間の定めがある場合のものであって,C4氏のような期間の定めのない人には適用しない。

旨回答したため,その回答内容を,本件更新条項1の記載の下に付記した(乙8の
2)。

その後,C7は,本件申請書1に添付された本件雇用状況等申立書の雇用期間の定め欄のありに丸印が付され,契約期間が記載されて
いることに気付き,同申立書の写しに,赤字で記入例を記した書面を作成した上,同申立書の訂正を求める文書をC6の事務員に送付した(第2措
置。前提事実(2)ア(ウ))が,これは,上記ア及びイのとおり,被告(又はその事務代行者であるC6の事務員)が,雇用期間の定めなしとの記載が正しい旨を示していたことから,その教示によれば誤りであることとなる本件雇用状況等申立書の上記記載の訂正を促したものと推認される。(7)

本件申請2及び3について
C3及びC4を除く本件特困金対象労働者12名に係る本件申請書2に添付された本件求人票2には,いずれも雇用期間の定めなし等の記載があり,本件申請書2には,求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付され,同申請書に添付された本件提出通知書2にも,いずれも期間の定めなしと記載されていた(前提事実(2)イ(ア))。なお,本件申請書2に添付された雇用状況等申立書のうち,C8,C9,C10及びC16に係るものには,雇用期間の定め欄のあり
に○が付され,契約期間が記載されていたが,それらの上から二重線が引かれ,雇用期間の定め欄のなしに○が付されている(乙8の
3~5及び11)。上記⑹の経緯に加え,C16に係る雇用状況等申立書に,特記事項欄に赤字でC6・C30様確認の上訂正11/26C31との記載があることも考慮すると,これらの訂正は,雇用状況等申立書において本件求人票2及び本件提出通知書2と矛盾する記載につき,岡山労働局の職員において,被告又はC6の事務員等に対していずれの記載が正しいのかを確認し,後者が正しい旨の回答を得たので,その回答に従った訂正をしたものと推認される。


本件高奨金の対象労働者であるC20に係る本件求人票3には,雇用期間の定めあり3ヶ月契約更新の可能性ありの記載があり,本件
申請書3には,求人票と同一条件により雇用したの欄に○が付され,同申請書に添付された本件提出通知書2には,原則として最低2年間は雇用を継続する旨(2年間雇用継続条項)が記載されていた(前提事実
(2)ウ)。
また,本件申請書3に添付された雇用状況等申立書には,契約期間の反復更新などにより1年以上継続して雇用することが確実であるかを記載する欄のあるに○が付されている(乙8の14)。
2
本件助成金の支給申請が特困金及び高奨金の支給要件(雇用継続性要件1及び2)を充足するものであるかについて
(1)

本件特困金の支給申請について
雇用保険法施行規則110条2項は,特困金の支給について,対象労働者を,安定所等の紹介により,継続して雇用する労働者として雇い入れる
事業者であること(1号イ)などの要件を定めているところ,同規則において概括的に定められた支給要件を厚生労働省の通達により具体化して定める特困金支給要領は,対象労働者を特困金の支給終了後も引き続き相当期間雇用することが確実であること(雇用継続性要件1)を要するものとしている(関係法令等(2),⑶)。そして,特困金の支給対象期が6か月ごとに第1期から第4期まで定められていること(関係法令等⑶ウ),また,特困金の制度が,障害者その他の特に就職が困難な者の雇入れの促進や雇用の安定を図るために必要な事業として定められたものであって(雇用保険法62条1項3号,5号,同法施行規則109条),特困金の支給金額も,対象労働者1名につき最高で240万円もの金額につき助成するものであること(別紙3-1)に鑑みれば,雇用継続性要件1にいう特困
金の支給終了後も引き続き相当期間雇用することが確実であるといえるためには,事業主と対象労働者との間で締結される雇用契約が,無期雇用である場合や,有期雇用については,契約更新の回数に制限がなく,対象労働者が希望すれば契約が更新される場合など,契約締結時において,その契約が相当期間にわたり継続すると確実に見込まれることが客観的に明ら
かであることを要するものというべきである。したがって,単に相当期間にわたり契約が更新される可能性があるというだけでは,雇用継続性要件1を満たすものとはいえない。
被告が本件特困金対象労働者14名に対し実際に交付した本件交付済通知書1には,いずれも,契約期間について『就労継続支援A型事業利用契約書』に基づいた期間の定めあり(本件期間制限条項)との記載があり,概ね半年間の契約期間が記載された上,契約更新の有無欄に

雇用契約の更新は,A型事業利用契約書(第3条,17条及び19条)の内容,進捗状況を参考にしながら,その都度,判断することとします。

(本件更新条項1)との記載がある(前提事実⑶ア(ア))。
そして,被告と本件特困金対象労働者との間において作成されたA型事業利用契約書の3条には,契約期間の定め(1項)とともに,契約更新について

契約期間満了日において引き続き,利用者への訓練等給付費の支給が決定されたときは,その決定された期間満了まで本契約は更新するものとします。

(2項)との定めがあり,同契約書の17条には,訓練等給付費が必要ないと決定された場合等には契約が終了する旨の定めがあるほか,同契約書の19条には,やむを得ない理由がある場合(なお,やむを得ない理由について,特に例示や限定はされていない。)に,被告が契約を解約することができる旨の定めがある(認定事実⑶イ)。これらの内容を参考にして,雇用契約の更新をその都度判断するとの本件更新条項1を通常人が読めば,当該雇用契約の更新の有
無は,主としてA型事業利用契約の更新の有無(障害者支援法に基づく訓練等給付費の支給が決定されるか否か)にかかっているものと理解される。すなわち,A型事業は,雇用契約に基づく就労が可能であるが通常の事務所に雇用されることが困難な障害者と雇用契約を締結して就労の機会を提供するとともに,就労に必要な知識及び能力の向上のために
必要な訓練等の支援を行うものである(前提事実⑴)ところ,A型事業利用契約に基づいてこれらの支援をした結果,当該対象労働者の知識及び能力が向上し通常の事業所で就労することが可能な状態となれば,訓練等給付費の支給の必要性がないものと判断され得るのであり,このような場合や,そのほか,被告においてやむを得ない理由があると判
断して,A型事業利用契約を解約した場合には,同契約は終了し,これに伴い,被告と対象労働者との間の雇用契約も更新されなくなるものと理解される。したがって,本件交付済通知書1を交付して締結される雇用契約について,対象労働者が希望すれば契約が更新されるなど,契約締結時においてその契約が相当期間にわたり継続すると確実に見込まれ
ることが客観的に明らかであったとは認め難い。
なお,被告が本件特困金対象労働者を雇い入れるに際し,本件交付済通知書1の記載の概要を読み上げる以上の説明をしたとはうかがわれないから,本件特困金対象労働者においても,契約更新について本件交付済通知書1に記載された以上の認識を有していなかったものであるから,本件特困金対象労働者において,本件交付済通知書1の記載にかかわらず,自らが希望すれば契約更新が可能であると期待し得るような状況に
もなかったというべきである。

また,被告における特困金の対象労働者に係る雇用の実態を見ても,対象労働者が希望すれば契約を更新することができるような運用状況にはなかったといえる。

(ア)

C8の例(認定事実⑷)を見ると,同人は高次脳機能障害のため
感情をコントロールすることが難しいなどの障害特性を有するところ,被告は,平成24年2月にC8を雇い入れる際に,上記のような障害特性を的確に認識しないまま雇い入れた結果,同人が,就労中に感情をコントロールできずに作業場を出て行ったり,泣いたりする状況に対して,適切に対応することができず,就労開始から1年も経たない時点で,被告のC22から,C8の後見人業務を担当していたC25に対して,C8の雇用の継続が難しいと告げたものである。その後,平成25年6月頃に障害特性についての理解のある担当者に変わったことから,雇用関係はしばらく継続し,出産後の育児休業も取得することができたものの,
育児休業から復帰するに当たって,被告がC8に交付したルール書面(別紙7)や約束事項書面(別紙8)には,A型事業所で就労するために最低限守らなければならないものとして数多くのルール等が記載されており,C8の障害特性を踏まえると,C8がこれらのルール等を理解し,遵守することは困難な状況にあった。しかるに,被告は,これらの
ルール等について,C8に遵守を約束させた上で,C8の復職初日に,被告の職員の指示に従わなかったとして,ルール等の遵守ができないことを理由に,雇用の継続は難しいと告げ,退職を促したものであり,このような被告の対応から,C8は,自己の意に反してやむなく退職するに至ったのである。
(イ)

C8以外の労働者についても,C12及びC9は,被告に雇い入

れられて1年余で,B型事務所への移行を勧められ,被告を退職したこ
とが認められる(認定事実⑸)。そもそも,被告は,本件特困金対象労働者を雇い入れるに当たり,面接か5日間の体験実習等を通じて,当該労働者がA型事業所において求められる作業能力(すなわち,雇用契約を締結して就労する能力)を有していると判断の上,当該対象労働者との間で雇用契約を締結しているのである(認定事実(2))から,雇用契
約を締結せずに工賃のみを支払うB型事業所への移行は,本来想定されていないはずであり,このように不利な提案に対して上記両名が応じたのは,これを断れば就労の機会が失われると考えてやむなく応じたものである(認定事実(5)エ)。
(ウ)

以上の例に照らせば,被告における雇用契約の更新に関する実際

の運用は,被告にとって扱いにくいと考える対象労働者や,被告から見て有用な作業能力を有しないと考える対象労働者については,雇用契約関係から離脱させるというものであったと推認される。そうすると,上記アのような,就労支援の必要がなくなったり被告のやむを得ない理由等のためにA型事業利用契約を終了する場合には雇用契約も更新されな
いとする本件交付済通知書1の記載とも,被告における契約更新の運用は合致しないものであったといわざるを得ない。このような被告における運用の実際に照らすと,対象労働者が希望すれば契約更新がされるなど,契約締結時にその契約が相当期間にわたり継続すると確実に見込まれることが客観的に明らかであったとは,到底いうことができない。

以上によれば,本件特困金対象労働者の雇用は,当該対象労働者を特困金の支給終了後も引き続き相当期間雇用することが確実であったとはいえないから,本件特困金の支給申請は雇用継続性要件1を充足しないものというべきである。
(2)

本件高奨金の支給申請について
雇用保険法施行規則110条7項は,高奨金の支給について,対象労働者を,1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れること(1号イ)などの要件を定めているところ,同規則において概括的に定められた支給要件を厚生労働省の通達により具体化して定める高奨金支給要領は,当該対象労働者を1年以上継続して雇用(無期雇用又は1年以上の契約期間の雇用)することが確実であること(雇用継続性要件2)を要するものとし
ている(関係法令等⑷ア)。
そこで,本件高奨金に係る申請が,雇用継続性要件2を充足するかについて,以下検討を加える。

被告が本件高奨金の対象労働者であるC20に対し実際に交付した本件交付済通知書2には,契約期間について期間の定めありとの記載があ
り,その期間として1年未満の契約期間が記載され,契約更新の有無欄には雇用契約は,次の内容を判断しながら更新することがあるとの記載があり,次の内容として出勤状況,態度等勤務への取組み姿勢知識,技能の習得状況契約期間満了時点の経営状況等の考慮要素
が掲げられている(本件更新条項2。前提事実⑶ア(ア))ところ,かかる
記載からは,被告とC20との雇用契約の締結時において,その契約が1年以上継続すると確実に見込まれることが客観的に明らかであるとはいえず,他にこれを基礎付ける事情は見当たらない。

したがって,本件高奨金の支給申請は,雇用継続性要件2を充足しないものというべきである。

(3)

本件取消条項該当性について

雇用保険法62条1項は,①高年齢者等を雇い入れる事業主等に対して,必要な助成及び援助を行う事業(3号),②障害者その他就職が特に困難な者の雇入れの促進を図るために必要な事業(5号)を,雇用安定事業として行うことができる旨を定めており,これらの事業について雇用保険法
施行規則109条及び110条1項は,雇用助成金(特困金及び高奨金)を支給することを定め,同条2項から8項までにおいて,その支給要件及び支給金額等を定めている(関係法令等(2))。しかし,これらの定めは概括的なものにすぎず,支給の手続等については,何らの定めも置いていない。

このように,雇用保険法及び同法施行規則が,政府が行う雇用安定事業として雇用助成金の支給を定めながら,支給要件等について概括的に定めるにとどめているのは,雇用助成金の支給が非権力的な給付行政の性質を有し,雇用助成金の支給をめぐる法律関係が,事業主による申込(支給申請)と行政主体による承諾(支給決定)により成立する贈与契約の性質を
有するものであることを前提に,具体的な支給要件等や支給の手続等に関しては,別途通達等で定めることを予定したものと解される。厚生労働省の通達で定められた本件各支給要領(特困金支給要領,高奨金支給要領及び支給要領〔共通〕)が,特困金及び高奨金の具体的な支給要件等や支給の手続等について定めているのは,上記のような雇用保険法及び同法施行
規則の趣旨に沿うものということができる。
そして,本件各支給要領は,偽りその他不正の行為により本来受けることのできない雇用助成金の支給を受け,又は受けようとした事業主に対しては,支給を取り消す旨を定めている(本件取消条項。関係法令等⑸ウ)が,これは,雇用助成金の支給に係る贈与契約の内容を構成するも
のであり,贈与契約の約定解除に係る要件(不正受給)及び手続(支給決定の取消し)について定めたものというべきである。
そして,特困金支給要領には,不正受給に関して,詐欺,脅迫,贈賄等刑法各本条に触れる行為を含むことは勿論であるが,刑法上犯罪を構成するに至らない場合であっても,故意に支給申請書に虚偽の記載を行い,又は偽りの証明を行うことにより,本来受けることのできない助成金を受け,又は受けようとすることをいう。との記載があるところ,
これは,本件取消条項に該当する不正受給について具体的な解釈の指針を示したものというべきであり,高奨金についてこれと別異に解すべき理由はないから,特困金支給要領に示された上記の解釈は,高奨金についても妥当するものと解するのが相当である。

本件申請1~3が本件取消条項に該当するかについて,前記認定事実及び前記2の説示によれば,被告は,本件対象労働者の雇用が雇用継続性要件1及び2の各要件を充足するものではなく,本来は本件特困金及び本件高奨金の支給を受けることができなかったにもかかわらず,①本件特困金については,本件特困金対象労働者に対して本件期間制限条項や本件更新
条項1が記載された本件交付済通知書1を交付していながら,岡山労働局長に対して本件申請書1及び2を提出するに当たって,これとは別に作成した本件提出通知書1及び2に期間の定めなしと記載して提出するなどして,雇用継続性要件1を充足しているかのような偽りの証明を行い,②本件高奨金については,対象労働者に対して,契約更新について,知識,
技能等の取得状況などを判断した上で更新することがある旨の本件更新条項2を記載した本件交付済通知書2を交付していながら,岡山労働局長に対して本件申請書3を提出するに当たっては,これとは別に作成した本件提出通知書3に,原則として最低2年間は雇用を継続する旨の2年間雇用継続条項を記載して提出するなどして,雇用継続性要件2を充足している
かのような偽りの証明を行ったものと認められるから,故意に偽りの証明を行うことにより,本来受けることのできない本件助成金を受けたものであり,本件取消条項に定める偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合に該当するものというべきである。ウ
被告は,雇用期間の定めについて事実と異なる本件提出通知書1を提出したのは,C7から,本件申請1の審査の際,無期雇用に記載を修正した労働条件通知書を送付するよう指示ないし誘導があったためであり,故意
に不正に特困金を受給しようとしたものではない旨主張する。
しかし,認定事実⑹のとおり,C7は,本件申請書1において引用する本件求人票1の雇用期間の定めなしの記載と本件訂正前通知書における本件期間制限条項の記載とが明らかに矛盾するため,これらのうちいずれが正しい記載であるのかを確認するために,本件申請書1の提出
事務を代行していたC6に連絡を取り,本件訂正前通知書に本件期間制限条項が記載されていることを指摘した(第1措置)と認めるのが相当である(C7において,事実と異なることを知りながら,被告に対し無期雇用の記載をするよう指示ないし誘導する根拠は,およそ見出し難い。)。

なお,被告は,上記主張の根拠として,C7が,本件雇用状況等申立書について,赤字で雇用期間の定め欄のなしに丸印を付した書面
を送付したこと(第2措置)を挙げるが,この第2措置は,C7が行った第1措置に対して,被告が,無期雇用の記載が正しいとして本件提出通知書1を提出したため,その記載が正しいとの前提に立って本件雇用
状況等申立書における誤りを指摘したものにすぎず,被告の上記主張の根拠となるものではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
3
信義則違反の有無について
被告は,C7が被告に対し,事実と異なる労働条件通知書を提出するよう指示・誘導したことなどから,原告が被告に本件助成金全額の返還を求めることは信義則に反する旨を主張する。しかし,被告の同主張が採用できないことは,上記2で説示したところにより明らかである。
4
小括
以上によれば,本件各支給決定により成立した本件助成金に係る各贈与契約は,その全てが,本件取消条項が定める偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合に該当し,原告は,同条項に基づき上記各贈与契約を解除することができ,平成27年8月17日,本件各取消決定をもって同契約を解除したものである。
そして,本件取消条項に基づく本件各取消決定は,契約の規定により当事者の一方が解除権を有する場合(民法540条)に当たるところ,当該解除権に
基づき契約が解除された場合には,原状回復義務(同法545条1項)が発生し,さらに金銭を返還する時は,その受領の時から利息の支払義務(同条2項)が生じるものである。
そうすると,被告は,原告に対し,本件助成金の合計1408万6230円の返還をすべき義務及び本件各支給決定により被告に支給された各助成金の支
給日の各翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払をすべき義務を負うものである。
第4

結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文の
とおり判決する。なお,被告が申し立てる仮執行免脱宣言は,相当でないからこれを付さないこととする。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官

村松悠史
裁判官

松原平学
(別紙1省略)
(別紙4省略)
(別紙6省略)
(別紙7省略)
(別紙8省略)

(別表)
内金

起算日

88万4425円

平成24年10月18日

74万7120円

平成24年11月30日

26万0880円

平成24年12月15日

138万0320円

平成25年1月11日

75万円

平成25年4月19日

68万2130円

平成25年6月12日

161万3745円

平成25年6月21日

75万円

平成25年10月19日

52万1270円

平成25年12月13日

92万8806円

平成26年1月21日

47万9653円

平成26年2月20日

45万円

平成26年4月29日

51万5755円

平成26年5月31日

85万8740円

平成26年8月28日

30万円

平成26年12月11日

156万2068円

平成27年1月27日

110万1318円

平成27年4月22日

30万円

平成27年6月27日

(別紙2-1)
3
2










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(別紙2-3)
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※なお,最低賃金の減額の特例に係る取扱いが変更された場合等には,当該変更前後のそれぞれの期間について支給額を按分して計算した額を合計することにより,支給額の算定を行う。

(別紙3-2)

対象労働者の

企業規模

第1期

第2期

支給額

支給額

①中小企業事業主25万円

25万円

50万円

2回

②中小企業事業主45万円

45万円

90万円

2回

①中小企業事業主15万円

15万円

30万円

2回

30万円

60万円

2回

労働時間区分

a
b以外の者

b
短時間労働者

支給総額

支給
回数

以外の事業主

以外の事業主

②中小企業事業主30万円

(別紙5)
争点に関する当事者の主張の要旨

(原告の主張の要旨)
1
解除に基づく返還請求
(1)

雇用助成金の支給に係る関係は,支給申請者の申込み(支給申請)に対
する行政庁の承諾(支給決定)により成立する贈与契約に当たるところ,雇用助成金について不正支給があった場合には,支給要領により支給権者が支給決定を取り消した上で支給済みの雇用助成金の返還を求めることができるが,これは贈与契約の解除権が契約において留保されているものと解される。
(2)

被告は,本件対象労働者を雇い入れる際,契約期間を定めており,雇用
継続性要件1及び2を満たす事業主に該当せず,雇用助成金の支給要件を満たしていないにもかかわらず,実際に本件対象労働者に交付した労働条件通知書(本件交付済通知書1及び2)とは契約期間に係る記載内容が異なる虚偽の労働条件通知書を提出し,無期雇用であるとの虚偽の申告をするなどして故意に偽りその他不正の行為をして本来受けることができない雇用助成金を不正に受給したものであるから,原告は,約定解除権に基づき本件各支給決定の全部を取り消すことができるというべきであり,被告は,原状回
復義務(民法545条1項及び2項)として,本件助成金全額及びこれに対する受領の時から支払済みまでの利息を付して返還すべき義務を負う。被告が雇用継続性要件1及び2を満たす事業主に該当しないことは,①被告が本件交付済通知書1及び2に,雇用期間が明示され(本件期間制限条項1及び2),契約更新条件についても所定の条件が付されているところ(本
件更新条項1及び2),本件各対象労働者に対する雇用時の説明は,この記載に沿うものであったこと,②雇用の実態を見ても,被告は,労働者の採用自体を断ったことがないことから,雇入れ時に希望する労働者全員を契約更新させる意図まで有して雇入れを行っていたものとはいえず,他方で,適格性のない労働者について配置転換等の雇用継続のための有効な労務管理態勢はなく,労働者の能力や勤務態度を勘案して契約の更新を判断し,その意向を労働者に伝えて従わせていたものであり,労働者が希望すれば確実に雇用
が継続される実態はなかったこと,③被告のC21らがかかる雇用の実態について自認したことなどから明らかである。
2
錯誤無効
岡山労働局長は,被告から,本件特困金対象労働者らと無期雇用契約を締結した旨の労働条件通知書(本件提出通知書1及び2)の提出を受け,その旨の
誤信をし,本件高奨金の対象労働者であるC20については,2年間雇用継続条項が記載された本件提出通知書3の提出を受け,雇入れより最低2年間は雇用を継続するという条件の下で雇用されるとの誤信をし,これらの誤信に基づき,本件各支給決定を行い,本件助成金を支給したものであるところ,法律行為の重要部分に錯誤があったことは明らかであるから,本件各支給決定は無効
であり,悪意の受益者である被告は,不当利得に基づき,本件助成金全額及びこれに対する助成金入金日の翌日から民法所定の割合による利息を支払う義務を負う。
3
詐欺取消し
上記2のとおり,被告は雇用期間等について偽りの事実を申告し,これによ
り,岡山労働局長は欺罔されて本件各支給決定をしたものであるから,本件各支給決定は詐欺により取り消し得る。原告は,本件各取消決定により,その取消権を行使したものであり,悪意の受益者である被告は,本件助成金全額及びこれに対する助成金入金日の翌日から民法所定の割合による利息を支払う義務を負う。

4
信義則違反はないこと
被告は,C7が被告に対し,事実と異なる労働条件通知書(本件提出通知書1)を提出するよう指示・誘導したとして,被告が本件助成金全額の返還を求めることは信義則に反する旨主張するが,そもそも,C7が被告に対し,事実と異なる労働条件通知書を提出するよう指示・誘導した事実はないから,原告が被告に対し本件助成金全額の返還を求めることは何ら信義則に反するもので
はない。
(被告の主張)
1
解除に基づく返還請求について
(1)

後記(2)に述べるとおり,本件対象労働者の雇用は,雇用継続性要件1及
び2を満たすものであるから,原告は,本件各支給決定を取り消すことができず,被告に対し,支給済みの助成金の返還を求めることができない。(2)

被告においては,労働者が被告との有期雇用の契約の更新を希望する場
合には,これを更新する運用になっており,実質的に無期雇用契約と同様の実態であった。
被告は,本件各対象労働者と有期雇用契約を締結していたのは,A型事業所においては6か月に1回以上モニタリングを行って個別支援計画を見直す必要があるところ,これに雇用契約の契約期間を合わせる必要があると考えていたためである。被告においては,労働者が退職する場合には,労働者の意向等を尊重して決めており,被告が労働者に退職を促したり,強制するこ
とはなく,これまでに労働者が退職したのは,①身体状態の悪化等のやむを得ない理由,②他の事業所や一般企業への移行又は就職,③就労継続支援B型事業所(以下B型事業所という。)への移行,④リハビリテーション訓練学校への入学といった労働者側の事情によるものである。
原告が指摘するC8(本件対象労働者のうちの一人)についても,自発的
に被告を退職したものである。C8の母親であるC29の証言は,これに反し,C8の退職の経緯に関し,被告がC8を退職させたがっていると誤認していることを前提とするものであるから信用することができない。また,C8のほか,上記事実に反する内容の原告提出の各陳述書は,いずれも陳述書の各作成者について証人として尋問していないからその内容の信用性は低い。
(3)

被告が,雇用期間の定めについて事実と異なる本件提出通知書1等を提
出したことは事実であるが,それは,C3及びC4に係る特困金について提出した本件訂正前通知書には本件期間制限条項を記載していたところ,C7から,第1措置の際,C6のC30事務員を通じて,無期雇用に記載を修正した本件提出通知書1を送付するよう指示ないし誘導があったためであり,被告としては,岡山労働局長においても,本件提出通知書1等の記載が事実
と異なることを当然に了承していると考えており,それは行政庁の判断を誤らせることを意図したものではなく,故意に不正に雇用助成金を受給しようとしたものではない。
このことは,C7が,本件雇用状況等申立書について,赤字で雇用期間の定め欄のなしに丸印を付した書面をC30事務員に送付し(第2措
置),修正方法を指示したことからも明らかである。
2
錯誤無効及び詐欺取消しについて
本件申請1~3が支給要件を満たすものである以上,本件各支給決定が錯誤又は詐欺によりされたものとはいえない。
また,被告は,本件助成金の全てをその趣旨及び目的のとおり障害者等の就
職困難者を雇用する事業に用いている(当該事業は,本件助成金を受給して行われることが当然に予定されており,本件助成金を当該事業に用いたことによる出費の節約はない。)から,被告には返還すべき現存利益が存しない。3
信義則違反
仮に,被告の行為が不正受給に該当するとしても,C7は,被告側に対し,事実と異なる労働条件通知書を提出するよう指示や指導をし,被告は,この指示や指導に従い,雇用期間の定めについて事実と異なる労働条件通知書を提出し,岡山労働局長からの釈明等もなく本件助成金が支給されたことからすれば,被告において雇用期間の定めについて事実と異なる労働条件通知書を提出しても問題がないと考えるのは当然であるから,原告が被告に対し本件助成金につき不当利得返還請求をすることは信義則に反するものとして許されないというべきである。
以上

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