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措置命令取消請求事件
裁判日:西暦2019-11-15
情報公開日2020-03-26 14:00:32
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令和元年11月15日判決言渡
平成30年(行ウ)第30号

措置命令取消請求事件

主文12
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
消費者庁長官が平成29年▲月▲日付けで原告に対してした不当景品類及び不当表示防止法(以下景表法という。)7条1項の規定に基づく命令(消表対第〇号。以下本件措置命令という。)を取り消す。

第2

事案の概要
消費者庁長官は,平成29年▲月▲日,原告が,原告の運営する商品販売用ウェブサイトであるAmazon.co.jp
(以下本件ウェブサイトという。
)に
おいて,
平成26年10月から平成29年7月までの間に順次,
C株式会社
(以

下Cという。
)が製造して一般消費者に販売している3種類のクリアホルダ

(別紙1の別表1。
以下,
同別表の上から順に,
本件商品①

本件商品②
又は
本件商品③
といい,
これらを総称するときは,
本件3商品
という。,

D(別紙1の別表2。以下本件商品④という。
)及びE(別紙1の別表3。
以下,
本件商品⑤といい,本件商品①から本件商品④までと総称して本件5商品という。)について,それぞれ,製造事業者が一般消費者への提示を目
的としないで商品管理上便宜的に定めていた価格又は製造事業者が設定したいわゆるメーカー希望小売価格
(以下
希望小売価格
という。より高い価格を,

本件ウェブサイト上の販売価格を上回る参考価格として,いわゆる見え消しにした状態で併記し,実際の販売価格が参考価格に比して安いかのよう
に表示し(以下,本件3商品に係る表示を総称して本件表示①と,本件商品④に係る表示を本件表示②と,本件商品⑤に係る表示を本件表示③と,それぞれいい,本件表示①から本件表示③までを総称して本件各表示という。,もって景表法5条2号が規定する表示(いわゆる有利誤認表示。以)
下有利誤認表示という。
)をしたとして,原告に対し,景表法7条1項の規
定に基づく命令(本件措置命令)をした。
本件は,原告が,本件措置命令は,本件5商品に係る参考価格を自ら決定し
た事実はないこと,本件各表示は,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものではないこと等を看過してされた違法なものであるなどとして,被告に対し,本件措置命令の取消しを求める事案である。
1
関連する法令等の定め
別紙2関連法令等の定めのとおりである(同別紙において定める略称等は,以下においても用いることとする。。


2
前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者の間に争いがないか,又は当裁判所に顕著な事実である。以下前提事実という。)

(1)

原告の概要等
原告は,多数の従業員を擁し,数億アイテムにわたる幅広い商品を取り扱う100億米ドルを優に超える売上高(ただし,平成28年度)を有する本件ウェブサイトを運営してリテール事業(原告が仕入先(原告が本件ウェブサイトにおいて販売する商品を調達する際の販売元のこと。以下同じ。)か
ら商品を買取仕入れ等の方法によって調達し,本件ウェブサイトにおいて販売する小売事業のこと。
以下同じ。及びマーケットプレイス事業

(原告が,
商品の製造事業者,小売業者等に対し,原告が運営する電子商店街である本件ウェブサイトにおいて商品を出品し,販売するための場及びこれに伴うサービスを提供する事業(なお,上記の場に出品して販売する商品の製造事業
者,小売業者等を総称して,以下出品者という。)のこと。以下同じ。)を営む法人であって,世界各地で様々な商品を販売するウェブサイトを運営する世界的にも著名な米国法人の傘下にある法人である(乙7)。なお,原告は,平成28年5月1日,アマゾンジャパン株式会社とF株式会社が合併し,存続会社であるF株式会社が組織変更されて成立した合同会社であるところ,F株式会社は,同日付けで,Gから我が国における本件ウェブサイトの運営事業を,Hから我が国における本件ウェブサイトを通じた
小売事業を,それぞれ,事業譲渡により承継したものである。
(2)

本件ウェブサイトにおける商品価格表示の概要等

本件ウェブサイトにおいて提供されている商品には,①原告のみが(リテール事業として)販売するもの,②単数又は複数の出品者のみが(マーケットプレイス事業を利用して)販売するもの,③原告(リテール事業)
及び単数又は複数の出品者(マーケットプレイス事業を利用)のいずれもが販売するものの3種類がある。本件ウェブサイトの設定により,複数の販売者が存在する場合であっても,同一の商品については1つの商品詳細ページしかなく,複数の販売者のうちの1者を商品詳細ページ上において販売者として表示する仕組みであり,当該ページのリンク先に他の販売者
の名称,販売価格等が掲載されるようになっている。具体的には,別紙3のとおりである。

前記ア③のとおり,
本件ウェブサイトにおいて販売されている商品には,
原告及び単数又は複数の出品者のいずれもが販売するものが存在している
ところ,原告及び出品者が同一の商品を販売している場合,原告がリテール事業において販売する商品の販売価格は,同一商品を販売する競合他社の販売価格等を参考にして,原告が使用するコンピュータシステムを利用して決定され,出品者が販売する商品の販売価格は,出品者が本件ウェブサイトに掲載する商品の情報を登録する際に原告が使用するコンピュータ
システムに販売価格を入力することによって決定される。その上で,原告が使用するコンピュータシステムが総合評価によって最も顧客に信頼されると判定した販売者(原告又は出品者)が,商品詳細ページにおいて販売者として表示され,当該販売者が決定した販売価格が当該商品詳細ページの中央部分に表示される一方,他の販売者が決定した販売価格は,当該商品詳細ページの右側及びリンク先ページに表示される。

本件ウェブサイトには,商品詳細ページの価格欄に販売価格が表示されるほか,参考価格が併記されることがあるところ,これは,リテール事業における原告の仕入先や出品者が,任意で,原告が使用するコンピュータシステムに入力する情報である。同一商品について,複数の者によって参考価格が入力されることもあるが,商品詳細ページにおいては,そのうちの1つのみが表示されることになっている。

(3)

本件措置命令に至る経緯等
ア(ア)a原告(ただし,平成28年4月30日までは,H。以下,両者を特に区別することなく,単に原告という。)が販売する本件商品①は,
本件ウェブサイト中の本件商品①に係る商品詳細ページにおいて,平成26年10月1日から平成29年5月10日までの間,実際の販
売価格を上回る参考価格:¥4,860との価格が,実際の販売
価格と併記されて表示されていた(乙2の1)。
b
原告が販売する本件商品②は,本件ウェブサイト中の本件商品②に係る商品詳細ページにおいて,平成26年10月1日から平成29年5月10日までの間,実際の販売価格を上回る参考価格:¥9,720との価格が,実際の販売価格と併記されて表示されていた(乙2の2)。
c
原告が販売する本件商品③は,本件ウェブサイト中の本件商品③に係る商品詳細ページにおいて,平成28年6月26日から平成29年
5月10日までの間,実際の販売価格を上回る参考価格:¥19,440との価格が,
実際の販売価格と併記されて表示されていた
(乙
2の3)。
(イ)原告が販売する本件商品④は,本件ウェブサイト中の本件商品④に係る商品詳細ページにおいて,平成28年9月5日から平成29年6月29日までの間,実際の販売価格を上回る参考価格:¥4,640との価格が,実際の販売価格と併記されて表示されていた(本件表示②。
乙3)。
(ウ)原告が販売する本件商品⑤は,本件ウェブサイト中の本件商品⑤に係る商品詳細ページにおいて,平成29年6月16日から同年7月18日までの間及び同月21日,実際の販売価格を上回る参考価格:¥3,780との価格が,実際の販売価格と併記されて表示されていた(本
件表示③。乙4)。
(エ)本件5商品の本件各表示の直下には,本件各表示に係る本件5商品の販売者が原告であることを示す旨の記載である

この商品は,Amazon.co.jpが販売,発送します。

との記載が表示されていた。イ
消費者庁長官は,平成29年▲月▲日,原告に対し,本件5商品の取引について,景表法5条の規定によって禁止されている同条2号に該当する不当な表示を行っていたとして,
景表法7条1項の規定に基づき,
次の(ア)
から(エ)までのとおり命令(本件措置命令)をした。なお,本件措置命令に係る不当景品類及び不当表示防止法第7条第1項の規定に基づく措置命令と題する文書(甲1。以下本件措置命令書という。)の記載は,別
紙4のとおりである。
(ア)

原告は,原告が一般消費者に販売する本件5商品の各商品に係る表
示に関して,次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については,あらかじめ,消費者庁長官の承認を受けなければならない。
a(a)原告は,本件3商品を構成する各商品を一般消費者に販売するに当たり,
本件ウェブサイトにおいてそれぞれした前記ア(ア)の表示が,
実際の販売価格を上回る参考価格と称する価額を実際の販売価
格に併記することにより,
あたかも,
参考価格
と称する価額は,
一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格であり,実際の販売価格が当該価格と比較して安いかのように表示していたこと(本件表示①)。
(b)実際には,参考価格と称する価額は,本件3商品の製造事業者が社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていなかったものであったこと。

b(a)原告は,本件商品④を一般消費者に販売するに当たり,本件ウェブサイトにおいてした前記ア(イ)の表示が,
実際の販売価格を上回る
参考価格
と称する価額を実際の販売価格に併記することにより,
あたかも,参考価格と称する価額は,一般消費者がこれを参考
にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格であり,
実際の販売価格が当該価格と比較して安いかのように表示していたこと(本件表示②)。
(b)実際には,参考価格と称する価額は,本件商品④の製造事業者が設定した本件商品④の希望小売価格よりも高く任意に設定された価格であったこと。

c(a)原告は,本件商品⑤を一般消費者に販売するに当たり,本件ウェブサイトにおいてした前記ア(ウ)の表示が,
実際の販売価格を上回る
参考価格
と称する価額を実際の販売価格に併記することにより,
あたかも,参考価格と称する価額は,一般消費者がこれを参考
にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格であり,
実際の販売価格が当該価格と比較して安いかのように表示していたこと(本件表示③)。
(b)実際には,参考価格と称する価額は,本件商品⑤の製造事業者が設定した本件商品⑤の希望小売価格よりも高い本件商品⑤の6本分の希望小売価格に基づく価格であったこと。
d
前記a(a),b(a)及びc(a)の各表示は,それぞれ,前記a(b),b(b)及びc(b)のとおりであって,それぞれ,本件5商品の各商品の取
引条件について,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり,景表法に違反するものであること。
(イ)原告は,今後,本件5商品又はこれらと同種の商品の取引に関し,前記(ア)a,b及びcの表示と同様の表示が行われることを防止するため
に必要な措置を講じ,これを原告の従業員に周知徹底しなければならない。
(ウ)原告は,今後,本件5商品又はこれらと同種の商品の取引に関し,前記(ア)a,
b及びcの表示と同様の表示を行うことにより,
当該商品の取
引条件について,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると
一般消費者に誤認される表示をしてはならない。
(エ)原告は,前記(ア)に基づいて行った周知徹底及び前記(イ)に基づいてとった措置について,速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。
(4)

本件訴えの提起
原告は,平成30年1月26日,本件訴えを提起した。
なお,原告は,同日,東京地方裁判所に対し,本件措置命令の効力の停止を求める申立て(当庁平成30年(〇)第〇号事件)をしたが,東京地方裁判所は,
同年6月13日,
上記の申立てを却下する旨の決定をした。
原告は,

同月20日,
東京高等裁判所に対し,
上記の決定に対する即時抗告をしたが,
東京高等裁判所は,同年9月10日,上記の即時抗告を棄却する旨の決定をした。
(5)

原告が実施したアンケート調査
原告は,Iに対し,本件表示③が一般消費者が本件商品⑤を購入するに当たって及ぼす影響の有無について分析を実施するよう依頼した。
Iは,いわゆるウェブアンケート調査業務を行っている株式会社に対し,
日本の人口構成に合わせた年代,地域別及び男女別の構成となるような一般消費者に対する調査として,本件表示③を表示した商品画面を見せたグループ(以下本件グループ①という。)と,本件表示③を表示しない商品画面を見せたグループ(以下本件グループ②という。)の2つのグループに対する調査(以下本件調査という。)の実施を委託し,最終的に,本
件グループ①については2273名,
本件グループ②については2246名,
合計4519名の者から回答を得た。
本件調査においては,問3として,本件グループ①には,本件表示③が表示された本件商品⑤の商品画面を,本件グループ②には,本件表示③が表示されていない本件商品⑤の商品画面を,それぞれ示した上で,あなたは,このEを購入したいと思いますか。次のアマゾンの商品ページを見てください。あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。このEは,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあると想定してください。また,表示されている価格には,配送料も含むものとしてお考えください。※画像をクリックすると,大きい画像でご覧になれます。画面をスクロールしてご覧ください。との質問がされ,本件調査の調査対象者は,購入したいと強く思う,購入したいと思う,あまり購入したいとは思わない又は全く購入したいとは思わないという4つの選択肢の中から1つのものを選択して回答することが求められていた。

3
争点
(1)

原告が本件各表示をした事業者であるといえるか否か(争点1)

(2)

本件各表示が実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であったか否か(争点2)

(3)

消費者庁長官が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の有無(争点3)

(4)

本件措置命令を発出する手続の適法性(争点4)

(5)

本件措置命令に係る理由の提示に不備があるか否か(争点5)

4
争点に関する当事者の主張の要点

(1)
争点1(原告が本件各表示をした事業者であるといえるか否か)について(被告の主張の要点)

景表法における不当表示を行ったとして措置命令の対象となる事業者は,自己の供給する商品又は役務について一般消費者向けに行った広告等において不当表示となる表示を行った者であり,当該表示の主体は,当該表示の内容の決定に関与した事業者である。

商品を購入しようとする一般消費者にとっては,通常は,商品に付された表示という外形のみを信頼して情報を入手するしか方法がないから,そのような一般消費者の信頼を保護するためには,上記の表示の内容の決定に関与した事業者とは,①自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず,②他の者の表示内容に関する説明
に基づいて当該内容を定めた事業者,すなわち,他の事業者が決定した又は決定する表示内容について,当該事業者から説明を受けてこれを了承し,その表示を自己の表示とすることを了承した事業者及び③他の事業者にその決定を委ねた事業者,すなわち,自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者も含ま
れるものと解すべきである。
イ(ア)本件ウェブサイトを運営する原告は,いわゆるプラットフォーム事業者(出品者が商品を出品し,販売するための場やサービス等を提供する事業者)であると同時に,本件ウェブサイトを通じて自ら商品を一般消費者に販売する小売業者でもある。
本件各表示は,本件ウェブサイト中の本件5商品を構成する各商品に係る商品詳細ページにおける実際の販売価格に参考価格と称する当該販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)が併記されたいわゆる二重価格表示に当たるものであり,原告による商品販売の側面で見た場合にあっては,原告自らが商品を供給する際の取引条件である販売価格や当該販売価格の安さを強調するための比較対照価格を記載したもので
ある。
一般に,販売業者が自分自身の企画として表示する場合には,その販売業者が表示主体となるのは当然であるところ,本件においては,本件各表示の直下にいずれも

この商品は,Amazon.co.jpが販売,発送します。

と記載されており,本件各表示は,本件5商品について原告が小売
業者(販売者)として,自らが一般消費者に商品を販売する際の取引条件について行った表示であり,自分自身の企画として表示したものということができる。
(イ)a原告は,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用し,原告が本件ウェブサイ
トを通じて商品を販売する場合において,当該商品の販売価格については自ら決定し,これを本件ウェブサイトに登録するとともに,本件ウェブサイトの商品情報登録画面中の参考価格欄に登録する価額
の決定及び登録については,当該商品の仕入先に委ねていた。
原告は,本件3商品の実際の販売価格を自ら決定した上で,本件ウ
ェブサイトの商品情報登録画面に登録している。他方,
参考価格と
称する価額は,仕入先であるJ株式会社(以下Jという。
)に対し
て原告が作成した商品情報登録用シートを提示して商品情報の入力を依頼し,それにJが参考価格の表示に用いられる価額を入力して本件ウェブサイトの商品情報登録画面中の参考価格欄に登録していた
ものである。
原告は,仕入先との間で,商品の仕入れに当たり毎月引渡しを受け
た商品の代金を支払うという内容の契約を締結しており,商品を販売した際の売上げが原告自身の売上げとなることが自明であって,仕入先が原告が販売する商品の取引条件を決定することがおよそあり得ないことに鑑みると,原告は,本来は自らが表示内容を決定すべき本件ウェブサイト上の参考価格について,仕入先であるJにその決定

及び登録を委ね,その表示に至らしめたものである。
したがって,原告が,本件表示①の内容の決定に関与した事業者であることは明らかである。
b
原告は,本件商品④の実際の販売価格を自ら決定した上で,本件ウェブサイトの商品情報登録画面に登録している。他方,
参考価格と
称する価額は,他の出品者が入力した価額が表示されていた。
原告は,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■仕組みを自ら構築して運営しており,当該仕組みを当然に認識
しているものである。原告は,当該認識の下,本件商品④の参考価格の表示に用いる価額を自ら入力するという選択をしなかったから,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に
委ねる旨の意思決定をしたものと評価すべきである。
したがって,原告は,本来は自らがその表示内容を決定することが
できる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にそ
の内容の決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものであるから,本件表示②の内容の決定に関与した事業者であることは明らかである。c
原告は,本件商品⑤の実際の販売価格を自ら決定した上で,本件ウェブサイトの商品情報登録画面に登録している。他方,
参考価格と
称する価額は,他の出品者が入力した価額が表示されていた。

本件ウェブサイトにおいては,本件商品⑤について,単品の商品と6本セットの商品の販売がされており,
これらに係る
参考価格
は,
希望小売価格に基づき,他の出品者が登録した価額がそれぞれ表示されていたところ,原告が,本件ウェブサイトのシステム上,6本セットの商品の商品番号を単品の商品の商品番号に統合して商品情報を更
新した際,上記のシステムにおける何らかの原因により,6本セットの商品の商品情報に登録されていた参考価格の価額が単品の商品
の参考価格として表示される状態になった。
したがって,原告は,前記bと同様,本来は自らがその表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,

他の出品者にその内容の決定及び登録を委ねていたところ,6本セットの商品の商品番号を単品の商品の商品番号に統合して商品情報を更新するという原告自身の作為によって,本件表示③をするに至らしめたものであるから,本件表示③の内容の決定に関与した事業者であることは明らかである。

ウ(ア)原告は,製造事業者や卸業者が商品又は役務の取引について決定した表示をそのまま消費者に伝達した小売業者は,景表法5条にいう表示をした事業者に該当しないところ,本件各表示における参考価格は,仕入先や出品者が,単独で又は原告以外の者と共同して決定した上で,原告に対し,本件ウェブサイトに表示するよう指図したものであるから,原
告は,同条にいう表示をした事業者には該当しない旨主張する。
しかし,本件各表示は,小売業者である原告が自らの企画として,一般消費者に商品を販売する際の取引条件について行った表示であり,販売業者が自分自身の企画として表示する場合には,その販売業者が表示主体となるのは当然であるから,原告の主張は,失当である。
(イ)原告は,原告の事業は,セレクトショップとは異なり,商品の独自の選択及び提供という要素がないから,商品,役務の内容その他の取引条件の表示に関与しているとはいえない旨主張する。
しかし,前記アにおいて被告が主張した表示の内容の決定に関与した事業者の意義は,
セレクトショップの形態による小売事業に限らず,
一般的に通用する解釈であるから,
本件にも当然に妥当するものである。

したがって,原告の主張は,被告の主張を正解するものではなく,失当である。
(ウ)原告は,実際の店舗においてされる場合には,仕入先による表示であると評価されるものが,インターネット上においてされる場合には,当該画面を作成したわけではなく,それを構築する仕組みを提供しただけ
である小売業者による表示であると評価されるのは,インターネット上の小売事業における表示を過度に規制し,インターネット上の小売業者の責任を加重するものである旨主張する。
しかし,本件各表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物がインターネット上の商品販売ページで混在する結果のもので
はなく,原告は,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用し,①原告が本件ウェブサイトを通じて商品を販売する場合においては,当該商品の販売価格については自ら決定し,これを本件ウェブサイトに登録するとともに,本件ウェブサイトの商品情報登録画面中の参考価格欄に登録する価額
の決定及び登録については,当該商品の仕入先に委ねる仕組みを自ら構築して運営しており,当該仕組みを当然に認識しつつ,仕入先に参考価格の決定及び登録を委ねる旨の意思決定(本件3商品),又は②■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■仕組みを自ら構築して運営しており,当該仕組みを当然に認識しつつ,
参考価格の
表示に用いる価額を自ら入力するという選択をすることなく,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に委ねる旨の意思決定(本件商品④及び本件商品⑤)をそれぞれしたものであり,それによって本件各表示がされるに至らしめたのであるから,全体としてみれば,本件各表示は,原告が作成した表示物と評価されるべきもので
あることは明らかである。
したがって,
原告の主張は,
その前提を欠くものであり,
失当である。
(エ)a原告は,仕入先又は出品者が商品登録の際に参考価格が表示されるように入力した場合,参考価格を当該入力に基づく指図に従って当該商品に係る商品詳細ページに表示しており,本件3商品についても同
様であったから,原告が,本件3商品に係る参考価格欄に登録する価額の決定及び登録について,当該商品の仕入先事業者に委ねている事実はない旨主張する。
しかし,原告の主張は,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用し,原告が

本件ウェブサイトを通じて商品を販売する場合において,当該商品の販売価格については自ら決定し,これを本件ウェブサイトに登録するとともに,本件ウェブサイトの商品情報登録画面中の参考価格欄
に登録する価額の決定及び登録については,当該商品の仕入先に委ねるという本件ウェブサイト上の二重価格表示の全体の仕組み(前記イ
(イ)a)の中から,仕入先が入力した定価の情報が参考価格と
して商品詳細ページに示されるという一事象のみを殊更に取り出して論ずるものにすぎず,実態からかい離したものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
b
原告は,本件3商品に係る参考価格として表示されていた価格は,製造者であるCが定めた定価(希望小売価格)であって,原告がこれを決定することができる地位にはなかったところ,Cのグループ会社
であるJが,単独で又はCと共同して,これを参考価格とすることを決定し,本件ウェブサイトに掲載する商品情報を登録する際にこれを入力することによって,本件ウェブサイトにおける本件3商品に係る商品詳細ページに表示させたものである旨主張する。
しかし,
前記イ(イ)aに主張したところに加え,
本件表示①の表示主

体性は,飽くまで,原告が本件ウェブサイトを通じて自らが販売主体となって販売した本件3商品についてされた実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記して二重価格表示をするという表示内容の決定への関与により判断されるものであって,製造事業者の定めた希望小売価格その他の定価と称される価格を決定する権限が誰に

あるかという事情により判断されるものではないことにも鑑みると,原告の主張は,
定価の決定と表示内容の決定とを混同し,表示
主体性の判断に影響しない事情をもって被告の主張を論難するものにすぎない。
したがって,原告の主張は,失当である。

c
原告は,Cが,①原告に対し,本件3商品の参考価格としていかなる数値が表示されているかを理解した上で,元々の定価は参考価格と同額であり,市場価格が下がりすぎているのであって,間違いではない旨を積極的に回答し,Jが入力した参考価格を修正する必要も
ない旨の認識を明らかにしたために,
原告は,
本件表示①における
参考価格を修正又は削除することができなかった,②定価とされるものが本件ウェブサイトにおいて参考価格として表示されることを
具体的に理解した上で,売上拡大という営業上の意図に基づいて任意に入力していたことが明らかであるなどとして,本件表示①については,原告が表示したものとはいえない旨主張する。
しかし,本件表示①の表示主体性が原告にあると認められるのは,前記イ(イ)aのとおり,
本件ウェブサイトにおいて,
実際の販売価格及
び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用した原告が,自
ら本件ウェブサイトを通じて商品を販売する場合において,当該商品の販売価格については自ら決定し,これを本件ウェブサイトに登録す
るとともに,本件ウェブサイトの商品情報登録画面中の参考価格
欄に登録する価額の決定及び登録については,当該商品の仕入先に委ねることにより,本件3商品の実際の販売価格及び参考価格と称
する価額を併記する本件表示①を表示するに至らしめたことにあるから,原告が指摘する事情によっては,本件表示①の表示主体性は,何
ら左右されないというべきである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(オ)原告は,本件表示②及び本件表示③につき,商品情報を登録する際に参考価格を入力するか否かは,
仕入先及び出品者の任意によるのであり,
仕入先及び出品者は,自らの責任において,根拠のある参考価格を入力
し,表示させているのであって,原告は,仕入先及び出品者に対して取引の場を提供しているにすぎないから,原告が,本来は自らが表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にその決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものとはいえない旨主張する。

しかし,前記イ(イ)b及びcのとおり,原告は,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用し,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■仕組みを自ら構築して運営しており,
当該仕組みを当然に認識しつつ,
参考価格の表示に用いる価額を自ら入力するという選択をすることなく,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に委ねる旨の意思決定をすることにより,本来は自らがその表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にその内容の決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものであるから,本件表示②及び本件表示③の内容の決定に関与した事業
者というべきである。また,本件商品⑤については,前記イ(イ)cのとおり,6本セットの商品の商品番号を単品の商品の商品番号に統合して商品情報を更新するという原告自身の作為によって,本件表示③をするに至らしめたものであるから,原告が,本件表示③の内容の決定に関与した事業者であることは明らかである。

したがって,原告の主張は,実態からかい離したものにすぎず,失当である。
(原告の主張の要点)
ア(ア)景表法5条にいう表示をして同条2号に該当する行為をしたとされる事業者は,当該表示の内容を決定した者であるから,製造事業者や卸業
者が商品又は役務の取引について決定した表示をそのまま消費者に伝達した小売業者は,同条が規定する表示をした事業者に該当しない。本件各表示における参考価格は,仕入先や出品者が,単独で又は原告以外の者と共同して決定した上で,原告に対し,本件ウェブサイトに表示するよう指図したものであり,原告は,それを機械的に表示したにす
ぎず,
別途,
小売業者としての表示を作成又は使用した事実はないから,
同条が規定する表示をした事業者には,該当しない。
(イ)原告は,小売業者であって,商品の希望小売価格等を決定又は変更する立場にはないことに加え,その取扱商品の多さから,個々の取扱商品の希望小売価格等を判断することができる状況になかったから,本件各表示について,自己が表示内容を決定することができる事業者には該当しない。

(ウ)原告は,仕入先及び出品者に対し,参考価格の入力は仕入先又は出品者の任意によるものであり,かつ,参考価格として表示される情報の入力については,
希望小売価格等に該当する価格がある場合に限定した上,
法令を遵守しない商品情報の提供を行わない旨の表明保証を得ており,これに該当しない情報の入力及びその結果としての表示を認めていない
から,原告は,表示内容の決定を任せた事業者に該当しない。本件ウェブサイトの商品詳細ページに参考価格が表示されている商品とそれが表示されていない商品があるのは,仕入先又は出品者が,表示すべき適切な価格の有無を検討し,参考価格として表示されるべき希望小売価格等を決定して入力する又は入力しないという独自の決定をしていることに
よるものであることも,これを裏付けている。

いわゆるセレクトショップを運営する小売業者は,その独自の視点で,品質,色,デザイン,ブランド,原産地,流行等を考慮して商品を選択し,自らが目利きしたよりすぐりの商品を一般消費者に提示して販売する者で
あり,その独自の視点で選択された品揃えが,一般消費者における商品購入の決め手の1つとなっており,一般消費者も,当該セレクトショップ独自の商品選択への期待を前提として商品の購入を検討するから,小売業者であるとしても,商品,役務の内容その他の取引条件の表示に関与する者であるといえる。

他方で,原告は,可能な限り多数の幅広い商品を一般消費者に販売して届けるというビジネスモデルの小売事業を営んでいるのであり,販売することによって原告が赤字になるような場合を除いて,原告が提供する商品を原告独自の感性,視点から選別し,商品数を限定することはなく,商品選別を行うことなく幅広い品揃えを提供することにより,一般消費者の感性,視点による商品の選択に委ねているから,セレクトショップとは異なり,商品の独自の選択及び提供という要素がなく,商品,役務の内容その他の取引条件の表示に関与しているとはいえない。
表示主体性の判断は,
具体的な事案を前提としてされるべきものであり,
抽象的な規範のみを取り出して安易に適用することはできないというべきである。

ウ(ア)a原告は,
Jから,
本件3商品を仕入れて一般消費者に販売していた。
本件3商品に係る参考価格として表示されていた価格は,製造事業者であるCが定めた定価(希望小売価格)であって,原告がこれを決定することができる地位にはなかったところ,Cのグループ会社であるJが,
単独で又はCと共同して,
これを参考価格とすることを決定し,
本件ウェブサイトに掲載する商品情報を登録する際にこれを任意に入
力することによって,本件ウェブサイトにおける本件3商品に係る商品詳細ページに表示させたものである。
原告は,仕入先又は出品者が商品登録の際に参考価格が表示されるように入力した場合,参考価格を当該入力に基づく指図に従って当該商品に係る商品詳細ページに表示しており,上記のとおり,本件3商
品についても同様であったから,原告が,本件3商品に係る参考価格欄に登録する価額の決定及び登録について,当該商品の仕入先事業者に委ねている事実はない。また,Jが,参考価格を入力した際,原告に対して内容や根拠を説明したことはなく,原告が,当該説明に基づいて参考価格を定めたこともない。

b
次のとおり,Cは,本件3商品の参考価格が定価である旨を原告に対して繰り返し説明し,もって消費者へ提示されるべき価格として提示したほか,Jは,当該定価を参考価格として本件3商品に係る商品詳細ページに表示するよう原告に指図したものであり,このような事実関係を前提とすると,本件表示①については,原告が表示をしたものとはいえない。
(a)Cの担当者は,平成27年5月20日頃,本件3商品その他の商品をセール対象の商品とする旨を原告の担当者宛に通知するため,商品リストを送付したところ,当該リストには,本件商品①及び本件商品②の定価並びにこれに消費税及び地方消費税(以下消費税等という。の額に相当する金額を加算した価額が記載されており,

これが,本件商品①及び本件商品②に係る各商品詳細ページに表示されていた参考価格であった。原告は,Jが商品登録の際に入力していた価格は,メーカー等が広く消費者又は小売業者に告知している価格(消費者に対するものが希望小売価格,小売業者に対するも
のが参考小売価格。以下同じ。
)である定価であると理解していた。
(b)原告は,入力する参考価格は,メーカー等が広く消費者又は小売業者に告知している価格に限るものとし,このような価格が存在しない場合には,
参考価格を入力しないものとする旨のルールを定め,
仕入先との間の契約においても,これを遵守するよう仕入先に義務
付けているところ,平成28年頃,本件3商品に関するカスタマーレビュー(一般消費者が本件ウェブサイトにおいて取り扱われている商品に対する意見又は感想を自由に本件ウェブサイト上に公開することができる本件ウェブサイト上の機能のこと。
以下同じ。の中

に値引率についての指摘があることに気付き,Cの担当者に対し,
本件3商品の参考価格の根拠について確認した。
Cの担当者は,
原告に対し,
元々の定価は参考価格と同額であり,
市場価格が下がりすぎているのであって,間違いではない旨を回答し,Jが入力した参考価格を修正する必要もない旨の認識を明らかにした。すなわち,Cは,本件3商品の参考価格としていかな
る数値が表示されているかを理解した上で,間違いではない旨を積極的に説明したものである。
原告は,希望小売価格その他の定価を自ら変更する権限を有
せず,製造事業者が自ら定価として間違いないと主張する価格について,小売業者の立場でこれを疑い,あえて,参考価格として表示された定価を変更することもできないのであって,Jが参考価

格として表示内容を決定して入力した参考価格は,当然に適正なものであると理解していた。
(c)原告は,本件表示①について消費者庁が調査を開始した後,Cに対して改めて説明を求めたところ,Cの担当者は,原告に対し,参考価格は社内データとしての参考上代であり,これは過去20年以
上変わっておらず,その当時の価格設定としては妥当なものである旨を説明した。Cは,原告その他の小売業者に対し,当該参考上代を定価と呼称して広く提示していたものであるところ,これは,消費者に対して割引率の大きさを訴求するためであった。すなわち,セール実施時に参考価格の入力がないと割引率が表示されず,通常
時よりも割引しているにもかかわらず,お得感が訴求できないために,Cが,上記の定価とされるものを参考価格として入力して
いたのであり,上記の定価とされるものが本件ウェブサイトにおいて参考価格として表示されることを具体的に理解した上で,売
上拡大という営業上の意図に基づいて任意に入力していたことが明
らかである。
原告は,Cに対し,当該参考価格の適正性について照会したが,
Cが当該表示は間違いではない旨説明するなどしたために,本件表示①における参考価格を修正又は削除することができなかったものである。
(イ)本件商品④は,原告(リテール事業)及び出品者(マーケットプレイス事業を利用)のいずれもが販売する商品であったところ,本件商品④に係る参考価格として表示されていた価格を決定して入力したのは,本件商品④の出品者(以下本件商品④出品者という。)である。原告が販売する本件商品④の仕入先が参考価格を入力していなかったことから,本件商品④出品者が入力した参考価格が,当該入力に基づく指図の
とおり,本件商品④に係る商品詳細ページに表示されていた。本件商品④出品者は,製造事業者が作成して決定した商品カタログに記載された希望小売価格に基づいて参考価格を入力したが,その際に誤った価格を入力したものであった。
原告は,本件商品④出品者が決定した参考価格をその指図に従って本
件ウェブサイト上に伝達したにすぎないから,本件商品④に係る参考価格欄に登録する価額の決定及び登録について,当該商品の仕入先事業者に委ねている事実はない。また,本件商品④出品者が,参考価格を入力した際,原告に対して内容や根拠を説明したことはなく,原告が,当該説明に基づいて参考価格を定めたこともない。

(ウ)本件商品⑤は,原告(リテール事業)及び出品者(マーケットプレイス事業を利用)のいずれもが販売する商品であったところ,本件商品⑤に係る参考価格として表示されていた価格を決定して入力したのは,本件商品⑤の6本セットの出品者(以下本件商品⑤出品者という。)である。原告が販売する本件商品⑤の仕入先が参考価格を入力していな
かったことから,本件商品⑤出品者が入力した参考価格が,当該入力に基づく指図のとおり,本件商品⑤に係る商品詳細ページに表示されていた。原告が,本件商品⑤の単品に係る商品番号と本件商品⑤の6本セットに係る商品番号を統合したところ,原告が使用するコンピュータシステム上で当該統合処理を行う過程において過誤が生じ,本件商品⑤出品者が登録していた本件商品⑤の6本セットに係る参考価格が本件商品⑤の単品に係る参考価格として表示されるに至ったものである。
このように原告は,本件商品⑤に係る参考価格欄に登録する価額の決定及び登録について,
当該商品の仕入先事業者に委ねている事実はない。
また,本件商品⑤出品者が,参考価格を入力した際,原告に対して内容や根拠を説明したことはなく,原告が,当該説明に基づいて参考価格を
定めたこともない。
エ(ア)本件措置命令においては,原告が,参考価格欄に登録する価額の決定及び登録について,当該商品の仕入先に委ねて本件ウェブサイトにおける本件5商品に係る表示内容を自ら決定した旨認定されている。
しかし,参考価格は,仕入先や出品者が本件ウェブサイトに掲載する
商品情報を登録する際に任意に入力することができる情報であるにとどまり,原告が,業務委託契約その他の契約によって,仕入先又は出品者に対し,参考価格の決定や入力を要請しているものではなく,本件ウェブサイトの商品詳細ページには,参考価格が表示されているものもそれが表示されていないものもあることに鑑みると,原告が,本件5商品に
係る参考価格について,仕入先又は出品者に対してその決定又は入力を委ねていたとはいえない。
(イ)被告は,原告が本件各表示の表示主体であるとする根拠として,原告が,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用したことを主張する。

しかし,他のインターネット上の小売業者に関する二重価格表示の事例(甲33)においては,当該小売業者が二重価格表示を可能とする仕組みを構築したにもかかわらず,当該仕組みを利用した出品者が表示主体であるとされているから,二重価格表示を表示する仕組みを構築したか否かは,表示主体性を判断するに当たって考慮される要素ではないはずであり,従前の消費者庁長官の見解(甲33)とも整合しないものである。
したがって,被告の主張は,失当である。
(ウ)a被告は,本件各表示が本件ウェブサイト上にされたものであることを形式的に捉え,本件各表示が,原告による表示の作成又は使用である旨主張するものと解される。

しかし,原告の行為は,本件ウェブサイトというインターネット上の店舗の仕組みを構築し,仕入先又は出品者がその内容を決定して提供した参考価格等の商品の情報を,当該内容の決定に何ら関与することなくそのまま並べておいたものにすぎない。実際の店舗においてされる表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物が
物理的に区別されるものの,本件ウェブサイト上の商品詳細ページにおいてされる表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物が区別されず,一般消費者から見ると1枚の画面に溶け込んで一体のものとなる。実際の店舗においてされる場合には,仕入先による表示であると評価されるものが,インターネット上においてされる
場合には,当該画面を作成したわけではなく,それを構築する仕組みを提供しただけである小売業者による表示であると評価されるのは,インターネット上の小売事業における表示を過度に規制し,インターネット上の小売業者の責任を加重するものである。
したがって,被告の主張は,実際の店舗における小売業者に対して
適用されてきた論理をそのままインターネット上の小売業者に適用するものであって,失当である。
b
被告は,本件各表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物がインターネット上の商品販売ページで混在する結果のものではなく,全体としてみれば,本件各表示は,原告が作成した表示物と評価されるべきものであることは明らかである旨主張する。

しかし,製造事業者がその内容を決定して作成したカタログを実際の店舗に並べた小売業者の行為と原告の行為との違いは,情報を並べた場所が,実際の店舗かウェブサイト上なのかという違いがあるにすぎない。原告は,小売業者等に対して販売の場及びこれに伴うサービスを提供しているところ,その一環として,価格表示の仕組みを提供
しており,当該価格表示の仕組みを原告も他の出品者も同じように利用しているから,表示は1つであって,その当不当も1つの結論しかあり得ないはずである。表示の仕組みを構築した者である事業者が同時に販売者となっている場合にのみ,同一の表示を利用している他の販売者と区別して当該表示の仕組みを構築した事業者兼販売者である
事業者にのみ不当表示の責任を追及することは,恣意的な法解釈である。
したがって,被告の主張は,小売業者等に販売の場を提供する行為と,小売業者としての行為を混同するものであって,失当である。(エ)a被告は,本件表示①における参考価格と称する価額は,Cが社
内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていないものであった上,Cは,原告の商品登録用シート様式の想定売価欄に記入していたCの想定する市場売価が参考価格として表示されると考えていたのであり,当該便宜的に定めている価格が参考価格として表示されると想定していなかったから,

一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格とはいえないものであった旨主張する。
しかし,希望小売価格の入力は必須ではなく,任意であり,Cの従業員が,定価がある場合にその入力は必須であることを定価の有無にかかわらずその入力が必須であると誤って理解したものと推測される。そして,Cは,希望小売価格に入力した情報(原告に定価として
通知していた実際には参考上代であった価額)が参考価格と

して一般消費者に表示されることを十分に理解し,
参考上代
を示し
て当該価額からの割引率を表示しお得感を訴求する売上拡大の意図も有していたのである。さらに,原告は,想定売価の意味をCに周知しており,Cの担当者も参考価格として表示されている数値につい
て確認を受け,
これを理解した上で間違いない旨を述べたものである。

したがって,被告の主張は,事実を誤認したものであり,本件措置命令の違法性を基礎付けるものというべきである。
b
被告は,Cが,原告に対し,本件3商品の参考価格としていか
なる数値が表示されているかを理解した上で,元々の定価は参考価格
と同額であり,市場価格が下がりすぎているのであって,間違いではない旨を積極的に回答し,Jが入力した参考価格を修正する必要もない旨の認識を明らかにしたために,原告は,本件表示①における参考価格を修正又は削除することができなかったという事情について,
当該事情によっては,本件表示①の表示主体性は,何ら左右されない
旨主張する。
しかし,
上記の事情は,
製造事業者が参考価格となる情報を決定し,
小売業者がこれを勝手に変更する立場にないことを示す事情であり,自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者という被告が主張する要件を充足しな
いことを示す事情であり,本件表示①の表示主体性に影響を及ぼす事情である。
したがって,被告の主張は,失当である。
(オ)a被告は,原告は,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■仕組みを自ら構築して運営しており,当該仕組みを当然に認識しているものであって,当該認識の下,本件商品④の参考価格の表示に用いる価額を自ら入力するという選択をしなかったから,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に
委ねる旨の意思決定をしたものと評価すべきである旨主張する。
しかし,原告は,自ら参考価格を入力することはなく,そのよ
うな仕組みを構築して運営していないから,本件商品④の参考価格の
表示に用いる価額を自ら入力するという選択の余地もないのであって,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に
委ねる旨の意思決定をしたものと評価することもできない。商品情報を登録する際に参考価格を入力するか否かは,仕入先及び出品者の任意によるのであり,仕入先及び出品者は,自らの責任において,根拠
のある参考価格を入力し,表示させているのであって,原告は,仕入先及び出品者に対して取引の場を提供しているにすぎない。
したがって,原告は,本来は自らが表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にその決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものとはいえないのであり,被
告の主張は,失当である。
b
被告は,原告が,本来は自らがその表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にその内
容の決定及び登録を委ねていたから,本件表示③の内容の決定に関与
した事業者であることは明らかである旨主張する。
しかし,前記aと同様,原告は,本来は自らが表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品者にその決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものとはいえないのであり,被告の主張は,失当である。
c
被告は,原告は,本件ウェブサイトにおいて,実際の販売価格及び参考価格と称する価額を併記する仕組みを採用し,■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■仕組みを自ら構築して運営しており,当該仕組みを当然に認識しつつ,
参考価格の表
示に用いる価額を自ら入力するという選択をすることなく,どのような価額を参考価格とするかにつき,他の出品者の判断に委ねる旨

の意思決定をすることにより,本来は自らがその表示内容を決定することができる本件ウェブサイト上の参考価格について,他の出品
者にその内容の決定及び登録を委ねてその表示に至らしめたものであるから,本件表示②及び本件表示③の内容の決定に関与した事業者というべきである旨主張する。

しかし,前記ア(イ)及び(ウ)のとおり,原告は,参考価格として表示し得る希望小売価格等を小売業者として決定又は変更することができる立場にはなく,多種多様な商品を多数取り扱う小売業者として,それらを逐一把握することも不可能であったから,自ら表示内容を決定することができるものではなかったし,適法な商品情報の提供につい
て,契約上の表明保証を得ており,不適切な参考価格の決定及び登録を他の出品者にも禁じていたから,内容の決定及び登録を委ねて不適切な表示に至らしめたともいえない。
したがって,被告の主張は,失当である。
(2)

争点2(本件各表示が実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であったか否か)について
(被告の主張の要点)

景表法5条2号は,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示を不当表示
として禁止している。
同号にいう一般消費者とは,一般レベルの常識のみを有している消費者のことをいい,同号にいう誤認とは,実際のものと一般消費者が当該表示から受ける印象又は認識との間に差が生ずることをいう。また,同号にいう誤認されるとは,社会常識,用語等の一般的意味等を基準
に判断して,実際のものと一般消費者が当該表示から受ける印象又は認識との間に差が生ずる可能性が高いと認められれば足り,現実に多数の消費者が誤認したこと,当該表示に基づいて商品若しくは役務を実際に購入した者が存在したこと,又は表示を行う事業者に故意又は過失があることは,いずれも不要であり,
当該事業者の主観的意図も何ら影響しない。
そして,

一般消費者に誤認される表示であれば,
基本的に,
不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示に該当すると解すべきである。
また,
著しくとは,誇張又は誇大の程度が社会一般に許容されている
程度を超えていることを意味し,誇張又は誇大の程度が社会一般に許容さ
れている程度を超えるものであるか否かは,当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され,当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかは,商品の性質,一般消費者の知識水準,取引の実態,表示の方法,表示の対象となる内容等により判断され,その誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろうと認められる程度に達するものは,著しく
有利であると一般消費者に誤認される表示に当たると解すべきである。イ(ア)a二重価格表示は,価格の安さを強調するために事業者が多用する価格表示方法である。事業者は,一般消費者の購買判断に当たって二重価格表示が参考にされ,一般消費者を商品の購入へと誘引するのに効果的であることを認識しているからこそ,これを多用するのであり,実際と異なるなどの不当な二重価格表示は,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるため,景表法により規制されている。
現在においても,二重価格表示が,価格の安さを強調するために事業者が多用する価格表示方法であり,悪用されがちな手法であることに変わりなく,公正取引委員会又は消費者庁は,平成10年から平成
30年までの間に,36件もの排除措置命令又は措置命令を発出していることからも明らかである。
b(a)行動経済学及び消費者心理学の分野においては,
消費者が
割引

バーゲン
という商品の価格情報の提供の仕方
(フレーミング)
に左右されて,合理的に判断すれば購入しないような財又はサービ
スを得だと思い込んで購入しがちであるとの専門的知見が得られており,例えば,①大きな割引額又は割引率を提示された消費者は,購買行動にその影響が見られることを実験的に示唆する応用心理学の学術論文,②低額な商品においては,割引率を商品情報の一種として取り扱い,購入の意思決定を行うことを実験的に示唆する応用
心理学の学術論文,③消費者がバーゲンの割引から金銭的満足のみならず非金銭的な満足感も併せて得ていることを実験的に示唆する消費者心理学の学術論文等があり,このような知見は,フレーミング効果等として体系化され,
経済学においても広く支持されている。
(b)購買経験以外の外的環境から得られた参照価格(例えば,通常価
格,定価,希望小売価格,参考価格)である外的参照価格が一般消費者の価格判断に影響を与えることは,国内外の論文で議論され,日本でも広く紹介されて定着している。このような外的参照価格の表示が消費者の価格判断に影響し,また,販売価格を表示する際にこれよりも高い外的参照価格を合わせて提示することにより消費者に販売価格の割安感を与えて販売を促進しようとする広告(価格比較広告)が有効なセールスプロモーションであることは,国内外に
おいて信頼することができる研究により,重ねて実証されており,定説として確立している。
したがって,二重価格表示は,一般消費者の購買判断に当たって
参考にされ得るものであることは,
経済学の確立した知見に照らし,
明らかである。

(イ)a公正取引委員会は,
昭和44年5月26日,
不当な価格表示に関する不当景品類及び不当表示防止法第4条第2号の運用基準(以下
運用基準という。
)を定め,3つの主要な比較対照価格(市価,希望小
売価格及び自店旧価格)を用いた二重価格表示等について,不当表示に該当するおそれのある行為を示した。

運用基準は,消費者物価の上昇をきっかけとして,一般消費者において価格についての関心が高まり,価格によって商品を選択する傾向が強まる中,実際にはそれほど安くないものを,あたかも安いものであるかのような印象を与える表示をして売り付けようという傾向が相当に見られるようになってきた社会的背景の下,二重価格表示が不正
確又は不明確に行われることが横行し,一般消費者に価格についての誤った情報が提供されて,一般消費者の正しい商品選択が妨げられるなどの社会的事実が認められたことにより,定められたものである。b
運用基準が定められた後,小売業を巡る競争環境や消費者の意識が運用基準が定められた当時と大きく変化し,それに伴って小売業者の用いる価格表示も多様化する状況が見られる中で,公正取引委員会が不当な二重価格表示に関する景表法違反事件を多く取り扱い,二重価格表示を中心とした価格表示の適正化を図ることが重要な課題となる一方で,多様な二重価格表示について,どのような場合に不当表示に該当するおそれがあるか分かりにくいとの問題もあった。
そこで,公正取引委員会は,価格表示の適正化を図る観点から,小
売業者の価格表示の実態,消費者の意識等を踏まえて運用基準の見直しを進め,
本件ガイドラインを定めるに至った。
本件ガイドラインは,
実際の事例の収集分析結果に基づき,社会一般に横行しがちな不当な価格表示を類型化し,基準化したものであって,本件ガイドラインに定める表示類型に該当する二重価格表示その他の価格表示は,通常,
一般消費者に誤認を生じさせるおそれがあるといえるものである。c
原告は,現在は,平成12年当時には予測もつかないような一般消費者による消費行動が当たり前のものとなっているところ,このような現在の社会的事実を考慮することなく,遅くとも平成12年当時の
社会的事実に基づく表示に対する評価が現代におけるオンライン上の表示である本件各表示にも当てはまるとする主張には,論理の飛躍がある旨主張する。
しかし,本件各表示のような二重価格表示が一般消費者の購買判断に当たって参考にされ得るものであることは,運用基準の制定時(昭
和44年)や本件ガイドラインの制定時(平成12年)における社会的事実又は経験則であるのみならず,
前記(ア)bの定説によっても自明
のものであるから,現在においても通用する一般消費者の購買判断に係る社会的事実又は経験則であるということができる。
したがって,原告の主張は,失当である。

(ウ)本件各表示は,事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)を併記して表示する二重価格表示に当たるものであるところ,二重価格表示に係る判断基準は,本件ガイドラインにおいて明らかにされている。
本件ガイドラインは,二重価格表示は,その内容が適正な場合には,一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進に資する面がある一方,販売価格の安さを強調するために用いられた比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある旨の基本的な考え方を示した上で,比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合
には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがあるものとしている。また,希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示にあっても,希望小売価格よりも高い価格を希望小売価格として比較対照価格に用いること,希望小売価格が設定されていない場合に任意の価格を希望小売価格として比較対照価格に用いること等
が不当表示に該当するおそれのある表示の具体例として挙げられているほか,比較対照価格として用いられる価格自体が別途何らかの根拠を有するものであるかは問わないものとしている。
このように,比較対照価格として用いられる価格の実際が,当該比較対照価格の名称の意味するものと異なるものであるかどうかによって不
当表示に該当するか否かを判断すべきである。
ウ(ア)本件各表示において比較対照価格に用いられた価格は,
参考価格

あり,
参考価格の意味するところは,その名称に照らすと,希望小売
価格等の個別具体的な価格に限られるものではなく,むしろこれらの価格も内包するより広い範囲の価格であるとの印象を一般消費者に与える
ものである。そして,
参考価格との名称から一般消費者が合理的に想
定する意味合い並びに販売価格の安さを強調するために用いられる二重価格表示の趣旨及び目的に照らし,一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格であるとの印象又は認識を持つものであるから,本件各表示は,その全体として実際の販売価格が当該価格に比して安いかのような表示であると認められるというべきである。
そして,次の(イ)から(エ)までのとおり,本件ガイドラインに照らし,本件各表示は,それぞれ,商品の価格その他の取引条件について,実際のものよりも取引の相手方に対して著しく有利であると一般消費者に誤認されるため,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示であって,有利誤認表示に該当すると認められる。
(イ)本件表示①における参考価格と称する価額は,次のとおり,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていないものであったから,一般消費者がこれを参考にするこ
とにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格とはいえないものであったというべきである。
a
Cは,一般消費者にも広く公開されている商品カタログにおいて,本件3商品の価格をオープンと明記しており,何らかの価格が比
較対照価格として用いられること自体,一般消費者に混乱を与えるものであって,実際の販売価格の安さの判断に資することにはならない
ことが明らかである。
b
本件3商品の販売価格は,オープン価格であった一方,Cが卸売価格の値上げを販売先に告知する際,何らの指標もなく値上げ額のみを告知すると販売先の納得を得にくいことから,小売価格ベースでの値
上げ幅を参考的に示すことで卸売価格の値上げの納得感を得る目的で,Cの内部において商品管理上便宜的に定めている価格があり,本件表示①における参考価格が本件3商品における当該価格であって,これが参考価格として用いられたものである。そして,当該便宜
的に定めている価格は,平成14年に本件3商品が発売された際に設定された後,現在まで変わっていないところ,当該価格水準は,現在の実勢相場から大きくかい離しており,価格の絶対的な値自体は,現
時点では,小売市場における実際の販売価格の安さを判断する上では何ら参考となり得るものではなかった。
c
Cは,従前,別の商品について原告と取引した際,原告から提供された商品登録用シート様式においては,
メーカー希望小売価格
欄の
記入が必須とされており,本件3商品においても何らかの価格の記入
が必要であると考えて,前記bの便宜的に定めている価格が希望小売価格の類いに当たるものではないと認識しつつ記入したものである。また,Cは,当該様式の想定売価欄に記入していたCの想定する
市場売価が
参考価格
として表示されるものと考えていたのであり,
上記の便宜的に定めている価格が参考価格として表示されるとは

想定していなかった。
d
Cは,原告の求めに応じて個別に前記bの便宜的に定めている価格を提示したものであるところ,小売業者によって一般消費者に示されることを予定していなかったものであって,およそ一般消費者が実際
の販売価格の安さを判断するための参考として供されるべき性質を有するものではなかった。
(ウ)本件商品④の製造事業者は,一般消費者にも広く公開されている商品カタログにおいて,本件商品④の希望小売価格(3300円。ただし,消費税等の額に相当する金額を含まないもの)を記載しているところ,
本件表示②における参考価格の記載は,当該価格よりも4割弱も高いもの(4640円)であった。そして,原告自身も認めるとおり,上記の参考価格と称する価額自体,誤入力の結果にすぎず,一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格として何ら根拠のないものであった。
(エ)本件表示③における参考価格と称する価額は,本来は,本件商品⑤の6本セットの商品における参考価格として登録されていたものが,本件ウェブサイトのシステム上,原告の作為に起因して,本件商品⑤の単品の商品における参考価格として表示された結果であり,当該価額の実際は,一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格として何ら根拠のないものであった。
エ(ア)原告は,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれは,抽象的な一般消費者による誤認のおそれを抽象的又は感覚的に論ずることによって認定することができるものではなく,健全な常識を有する消費者が各商品について有する知識水準を商品ごとに具体的に認定した上で,表示内容,表示方法等諸般の事実関係を客観的に検討すること
によって初めて認定することができる旨主張する。
しかし,前記アのとおり,一般消費者に誤認される表示であれば,基本的に,
不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示に該当すると解すべきであるから,一般消費者に誤認されることと別に,一般消費者による自主的かつ合理的
な選択を阻害するおそれを認定する必要はない。また,本件各表示は,2つの金額を併記した端的かつ具体的なものであり,消費者にとって誇張が含まれ得るような表示内容ではなく,見る者によって受ける印象又は認識が異なり得るものでもないから,原告が指摘するような事実関係の認定を必要とするものではなく,その前提を欠く。

したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)a原告は,本件表示①における参考価格は,製造事業者であるCの定価であり,消費者へ提示されるべきものとして原告その他の小売業者に対して提示されていたものである旨主張する。
しかし,前記ウ(イ)のとおり,当該価格は,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格にすぎず,一般消費者に提示することを目的としていないものであったのであり,当該価格の実際は,一般消費者がこ
れを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格とは到底いえないから,原告の主張は,前提とする事実関係を誤ったものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
b
原告は,原告の従業員が作成した陳述書(甲27)の記載を根拠として,Cは,希望小売価格に入力した情報(原告に定価として通
知していた実際には参考上代であった価額)が参考価格とし
て一般消費者に表示されることを十分に理解し,
参考上代
を示して
当該価額からの割引率を示してお得感を訴求する売上拡大の意図も有
していたとして,本件表示①における参考価格と称する価額は,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていないものであったとの消費者庁長官がした認定が誤りである旨主張する。
しかし,次のとおり,消費者庁長官がした認定に誤りはなく,原告
が依拠する原告の従業員が作成した陳述書の記載は信用することができないから,原告の主張は,失当である。
(a)消費者庁長官がした認定は,Cの従業員の供述等(乙14)に依拠するものであるところ,これは,①本件3商品の参考上代やそれが参考価格として表示された経緯について,自然で合理的

な説明をするものであること,②添付された資料(原告に提出される登録用紙)の記載に沿うものであること,③原告が消費者庁に対して提出した複数の文書(乙7,28)の記載にも沿うこと,④Cの従業員には,あえて原告に不利な虚偽の供述をする動機がないことに鑑み,十分に信用することができるから,消費者庁長官がした認定に誤りはない。
(b)原告が依拠する原告の従業員が作成した陳述書の記載は,①原告が消費者庁に対して提出した複数の文書(乙7,28)には,上記の陳述書の記載に相当する内容の記載が全く見当たらないこと,②消費者庁長官は,本件措置命令に先立つ原告に対してされた弁明の機会の付与の際,原告に対し,原告が指摘する消費者庁長官がした
認定も明確に示したにもかかわらず,弁明はない旨を回答したのみで,本件3商品の参考価格に何も言及しなかったこと,③Cは,一般消費者に広く公開されている商品カタログにおいて,本件3商品の価格をオープンとしており(乙13)
,本件ウェブサイトにお
いてのみ,原告が主張するような価格の表示をする合理的な動機が
ないこと,④Cの従業員と上記の陳述書を作成した原告の従業員との間でやり取りされたメール(乙29添付のもの)の記載と整合しないこと,⑤Cの従業員も,原告の従業員が作成した陳述書の記載内容を否定していること(乙29)に鑑み,全く信用することができないから,原告の主張は,失当である。

(ウ)原告は,
本件商品④に係る商品詳細ページには,
本件商品④の定価が
3300円(消費税等の額に相当する金額を加算した後の価格が3564円)の商品である旨のカスタマーレビューが掲載されており,他の同商品詳細ページを閲覧する者は,当該カスタマーレビューを閲覧することにより,本件表示②における参考価格が過誤に基づく表示である
ことを確信することができた旨主張する。
しかし,原告が指摘するカスタマーレビューは,飽くまでも,不特定の消費者が任意に行ったものにすぎず,一般消費者が当該カスタマーレビューが本件商品④の取引条件の一部であるとの確信に至ることはおよそ考えられない。また,原告が指摘するカスタマーレビューは,数あるカスタマーレビュー欄掲載のうちの1つのものにすぎないところ,一般消費者が,本件商品④を購入する際に当該カスタマーレビューを必ず閲覧し,
かつ,
本件商品④に係る商品詳細ページの表示内容ではなく,不特定の消費者により任意にされたものであって真実性が担保される保証又は根拠のない当該カスタマーレビューの内容を真実のものとして必ず認識するということはおよそ考えられない。さらに,当該カスタマー
レビューは,平成29年4月29日に投稿されたものであるが,本件表示②は,それ以前の平成28年9月5日からされていたものである。したがって,原告の主張は,失当である。
(エ)a原告は,本件商品⑤について製造事業者がそのウェブサイトに掲載している希望小売価格は,1本当たり713円(消費税等の額に相当
する金額を含む。
)であるところ,本件商品⑤と同種の商品(E)を購入することを検討する消費者は,健全な常識を有する一般消費者である限り,Eの希望小売価格が一般的に上記の価格の程度のものであるという常識や知識を有しているから,過誤によって入力された本件表示③における参考価格のような桁違いの価格の表示は,Eを購入
することを検討する健全な常識を有する消費者であれば,当該表示が過誤によるものであることを認識することができるものであって,当該表示が顧客を誘引する性質のものとはいえない旨主張する。
しかし,広く一般消費者が利用することができる本件ウェブサイトにおいて,Eという誰もが購入し得る商品に関し,それを購入するこ
とを検討する消費者であれば,Eの希望小売価格が一般的にその程度であるという常識や知識を有しているということは何ら自明の事実ではないのであり,根拠のない独自の見解にすぎない。また,本件商品⑤については,本件表示③がされた時期においては,本件ウェブサイトにおける単品の商品の販売価格は,1000円台から2000円台に達することもあったから,Eを購入することを検討する一般消費者が,
Eの価格についての知識や常識を備えていることを前提とすると,
このような価格動向も承知していることになるのであり,本件表示③における参考価格が過誤であることを認識することができるとは
いえない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
b
原告は,本件表示③は,合計1か月程度という短い期間表示されたにとどまり,これが表示されていた期間においても,本件商品⑤の売上高及び本件商品⑤に係る商品詳細ページの閲覧数が原告の飲料の販売に係る売上高及び商品詳細ページの閲覧数に占める割合は,いずれも極めて僅少(売上高につき■■■■■■■■■%,閲覧数につき■
■■■■■■%)であった旨主張する。
しかし,実際に表示がされていた以上,表示期間の長短,売上高又は商品詳細ページの閲覧数の割合の大小は,本件表示③が一般消費者に誤認されるものであるとの結論を左右するものではない。
したがって,原告の主張は,失当である。

オ(ア)a原告は,本件調査によれば,商品を購入する際,本件調査の対象者全体の65%の者が本件商品⑤の商品詳細ページ以外の多岐にわたる情報(本件ウェブサイトにおける他のEの商品詳細ページ,本件ウェブサイト以外のオンラインショップにおける本件商品⑤の商品ページ,本件ウェブサイト以外のオンラインショップにおける他のEの商品ペ
ージ,実際の店舗における本件商品⑤の価格等)も参照する旨を回答しているから,健全な常識を有する一般消費者は,通常,本件表示③を含む商品詳細ページだけではなく,様々な情報源から参考となる情報を収集しており,本件商品⑤の価格のみならず,他のEも含めたEの一般的な価格水準がどの程度のものかについて十分な常識や知識を有していたといえるのであり,健全な常識を有する一般消費者にとって,本件表示③における参考価格が桁違いの過誤であることが明らかであったとして,本件表示③が,一般消費者によって誤認される表示ではない旨主張するが,次のとおり,失当である。
(a)本件調査及びそれを前提とするIに所属する又は所属していた者らがした分析(甲31。以下本件分析という。
)においては,本

件商品⑤の商品詳細ページ以外の情報を参照する旨を回答したとされる本件調査の対象者全体の65%の者について,当該参照先の数並びに参照先が複数であった場合の参照先の種類,組合せ及び参照比率が全く明らかにされておらず,Eの購入に当たって1つの参照先のみの情報に接した上で購入するに至った回答者が相当数に上っ
ている可能性も否定できないから,一般消費者が様々な情報源から参考となる情報を収集しているとの原告の主張の前提となる事実自体が存在しないというべきである。
(b)前記(a)の点をひとまずおき,一般消費者が様々な情報源から参考となる情報を収集しているとの事実が存在することを前提とした
としても,商品の種類によって価格帯が相当に異なることが考えられるほか,販売主体又は販売時期によっても,販売価格には相応の幅が認められること及びEを購入して消費しようとする関心層自体が限定的な性質を有する商品であることに鑑みると,ある一時点でEの価格に関する参照先の情報に接した者が,Eの一般的な価格水
準に関する十分な常識や知識を有するに至るとは限らないから,一般消費者が様々な情報源から参考となる情報を収集しているとの事実を基に,一般消費者がEの一般的な価格水準がどの程度のものかについて十分な常識や知識を有していたといえる旨の結論を導く原告の主張には,論理の飛躍がある。
(c)本件調査の結果によれば,一般消費者の35%が,他の情報を参照しない旨の回答をしているところ,これは,少なくとも全体の3分の1を超える消費者が,本件商品⑤の商品詳細ページのみを参照して本件商品⑤を購入するか否かを判断することを意味するのであり,本件表示③が,少なくとも全体の3分の1を超える消費者の判断に影響を与える可能性があることを示している。

(d)本件ウェブサイトの閲覧対象者を健全な常識を有する一般消費者に限定すること自体,不当に対象者を狭めるものであって,何ら根拠のない独自の見解である。
現実の人間は,限られた情報を基に,時には誤った情報に踊らさ
れたりしながら,その場その場で判断するものであり,人間の認識
判断能力には限りがある以上,消費者を保護する目的の法律である景表法が保護の対象として想定すべき一般消費者は,現実に存在する消費者の実態に即して想定する必要があり,景表法において想定される一般消費者は,一応の常識があるものの,広告や表示を一字一句注意深く検討することなく,大まかに目を通すだけで即断する
傾向にあるような認識判断能力に限りがある消費者を前提とする必要があるというべきである。
原告の主張する健全な常識を有する一般消費者は,専ら,E
の一般的な価格水準を十分に確認及び把握した上でこれを購入するか否かを判断することができる消費者を念頭に置くものというべき
であって,景表法が規制する有利誤認表示該当性の判断手法を誤るものというべきである。
b
原告は,一般消費者は,多数の情報に基づいて本件商品⑤の購入を決定するのであって,本件表示③によって顧客が購入に誘引されるという条件関係が存在しない旨主張する。
しかし,景表法5条2号が規制する有利誤認表示は,一般消費者が当該二重価格表示以外の情報を参照するか否かにかかわらず,当該二
重価格表示により,当該販売価格を有利に感じて,当該商品の購入に誘引されるおそれがあると認められれば足り,当該表示がなければ,個々の消費者が当該商品の購入に誘引されないという条件関係があることはその要件とされていない。
したがって,原告の主張は,失当である。

c
原告は,本件分析により,本件表示③の有無によって,本件商品⑤を購入したいと思う又は購入したいと強く思うと回答した者
の割合に有意な差異が生じなかったことが判明したところ,これは,一般消費者が本件商品⑤を購入する際に本件表示③を参考としていな
いことを示唆するものである旨主張するが,次のとおり,本件調査及びそれを前提とする本件分析自体,行動経済学の専門的知見に照らして全く信用することができないから,原告の主張は,失当である。(a)本件調査においては,調査対象者を本件表示③がされたグループ(本件グループ①)
と実際の販売価格のみが表示されたグループ
(本

件グループ②)に分けてアンケートがされ,本件分析は,これを基に,
両グループを比較対照し,
本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異がないという仮説(以下本件仮説①という。
)を帰無仮説(ある仮説が正し
いかどうかを判断するために立てられた仮説のこと。
以下同じ。と


し,本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異がある
という仮説
(以下
本件仮説②
という。を対立仮説

(上記の帰無仮説の説明の中にある
ある仮説
のこと。以下同じ。
)として,本件仮説①が棄却されるか否かという
統計的分析を行うという手法を採用している。
(b)本件調査は,消費者の実際の購買行動で現実に示された効用選択(顕示選好)ではなく,仮定の条件提示の下で示された仮想的な効用選択(表明選好)にすぎず,バイアスがかかりやすいため,情報提供の仕方次第で人間の認知や行動が変わるというフレーミング効果に注意するなど,質問の設定において特に慎重な配慮が求められ,表明選好法による実験においては,被験者が選択に困難を覚
える強制的選択(被験者に無理な想定を押し付けて選択を強いる実験の設計をすること)を避け,どの選択も選択しない選択肢を入れるなどバイアスを抑える工夫をすることが推奨されている。
しかし,
本件調査においては,あなたは,

このEを購入したいと思いますか。

という核心的な質問において,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。

及び

このEは,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあると想定してください。と誘導しており,

二重に不当な誘導をしてい
るだけではなく,上記のようなバイアスを抑える工夫もない。
前者のものは,購入したいと強く思う」購入したいと思う
及びとの回答を増やす方向でのバイアスがかかるおそれがあるところ,それが,本件グループ①及び本件グループ②のそれぞれにどの程度の介入効果を及ぼすかは不明であり,両グループに全く同じ影響しか与えないという保証もないという意味で不当なものである。後者のものを挿入した上で商品を購入したいか否かを問う質問をすると,両グループともに,「一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあるという情報に影響され,956円という販
売価格が2000円という価格に比べて有利に感じてしまうお
それがあり,
3780円
という本件グループ①の比較対照価格の
表示の影響を減殺し,両グループ間の差がなくなる方向に寄与するおそれがあるところ,
本件分析は,
956円
という販売価格に
3780円という比較対照価格を併記する二重価格表示が一般消費者の認識に与える影響を確認するために行われたものであるにもかかわらず,その影響をわざわざ判別しにくくする情報を挿入することは,不当な誘導をするものというべきである。
このように,本件分析は,質問の核心的な部分に二重に不当な誘

導がされている本件調査を基にされたものであるから,その結果に信頼性はない。
(c)Eは,購入して消費しようとする関心層自体が限定的な商品であるという性質を有し,現に,本件調査においても,
あまり購入したいとは思わないと全く購入したいとは思わないの回答比率の
合計が,本件グループ①においても本件グループ②においても,70%台に上っている。
しかも,
前記(b)による上向きのバイアスによ
り,関心層が実際よりも水増しされている可能性があり,実際の無関心層は,更に多い可能性がある。そして,本件分析において確認すべきなのは,一般消費者が,本件グループ①の場合に,本件グル
ープ②の場合と比較して有利に感じ,本件商品⑤を購入する方向に誘引される可能性があるか否かであるが,Eのような関心層自体が限定的な商品の場合には,二重価格表示の影響を受けにくい無関心層の認識に与える影響を見てもあまり意味がなく,二重価格表示が関心層に与える影響を確認すべきである。

そうすると,本件分析の基となる本件調査においては,合計で1
000名に満たない関心層の回答しか集計することができていない可能性が高く,サンプルサイズが不十分であることが強く疑われ,その分析結果の統計的信頼度も相対的に低いというべきである。統計的信頼度は,サンプルサイズの平方根に比例するところ,表面的には4000名を超えるサンプルサイズがあるにもかかわらず,真に分析に貢献するサンプルサイズが1000名に満たないのであれば,その統計的信頼度は,4000名というサンプルサイズから想定される水準の半分以下でしかない。
したがって,本件分析は,サンプルサイズが不十分である可能性
があることからも,その調査分析結果に直ちに信頼性があるとはい
えないというべきである。
(d)本件分析においては,前記(a)のとおり,
本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異がないという仮説(本件仮説①)を帰無仮説とし,本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異があるという仮説(本件仮説②)を対立仮説として,本件仮説①が棄却されるか否かという統計的分析を行うという手法を採用している。そして,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という核心的な質問について,実現値(実際の試行の結果として観察された値のこと。以下同じ。実現値を基
に,p値(帰無仮説が正しいと仮定した場合に,実現値以上に帰無仮説に反する値がどの程度起こり得るのかの確率を表す数値のこと。以下同じ。
)が求められることとなる。
)を求め,当該実現値を前提
とするp値について,有意水準(帰無仮説を棄却するか否かの基準となる確率のことであり,実現値が,確率分布上,めったに起こら
ないことが実現したものであるかそうではないのかという珍しさを測る基準としての確率のこと。以下同じ。
)1%(p値:0.01)
を適用し(本件においては,p値が0.01を下回らない限り,本件仮説①が棄却されないとの結論を採用するという意味である。,)
本件グループ①と本件グループ②との間で回答比率に統計的に有意な差異は認められなかった(本件仮説①が棄却されなかった)と結論し,また,有意水準を5%(p値:0.05)に設定したとしても,本件グループ①と本件グループ②との間で回答比率に統計的に有意な差異は認められなかったという結論を導いている。
しかし,一般的に,有意水準は,1%(p値:0.01)に設定
することもあれば,5%(p値:0.05)又は10%(p値:0.
1)に設定することもあり,当該値が大きければ,その分帰無仮説(本件でいえば,本件仮説①)が棄却される範囲も大きくなるところ,本件分析における回答比率の差異に係るp値(p値:0.056,0.053)は,有意水準を10%に設定すれば統計的に有意な差異が認められることになるし,有意水準を5%に設定したとし
ても,上記のp値は,おおよそ統計的に有意な差異があると評価することも可能である。
したがって,本件調査を基にした本件分析において算出された実
現値から,本件グループ①と本件グループ②との間で回答比率に統計的に有意な差異が認められなかったとは断定できないから,本件
分析における推論は,誤っている。
(イ)a原告は,本件調査の結果によれば,一般消費者は,複数かつ多様な情報源を参照していることが明らかであるから,一般消費者は,本件商品⑤について,本件表示③以外にも多様な情報源から情報を得ており,本件表示③によって誤認し,本件商品⑤の購買に誘引されるとは
限らないといえる旨主張する。
しかし,一般消費者が複数かつ多様な情報源を参照しているとしても,二重価格表示により,当該表示に係る販売価格を有利に感じて当該商品の購入に誘引されるおそれがあると認められれば,当該表示の有利誤認表示該当性は肯定され得るから,
原告が上記に指摘する点は,
消費者が本件商品⑤に係る購入判断をするに当たり本件表示③により本件商品⑤の購入に誘引されるおそれがあると認められるという結論
を左右するものではない。
したがって,原告の主張は,失当である。
b
原告は,本件調査の結果によれば,本件商品⑤の商品詳細ページのみを参照して本件商品⑤を購入すると回答した者について,実際に本
件表示③を見た者とこれを見ていない者との間で,本件商品⑤の購買意欲に有意な差異が見られなかったのであり,本件表示③が消費者の購買意欲に影響を及ぼしていないことが認められるから,一般消費者の大勢を占めるのは,本件表示③も含めて他の情報の影響を受けない消費者であることが明らかと認められる旨主張する。

しかし,上記の主張は,実際に本件表示③を見た者とこれを見ていない者との間で,本件商品⑤の購買意欲に有意な差異が見られなかったとする本件分析の結果に依存しているものであるところ,本件分析が信用することができないものである以上,原告の主張は,その前提を欠くものである。

(ウ)a(a)原告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問に,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。という文言が挿入さ

れていることについて,回答者に対し,実際に購入の検討を行う状況を想定するよう促すことにより,回答者の関心を高めて実際の購
買行動により近い回答を得る目的のものである旨主張する。
しかし,被告は,本件調査における上記のような目的のいかんに
かかわらず,上記の文言の存在により介入効果が発生する以上,本件調査及び本件分析には信頼性がない旨を主張しているから,原告の上記の主張は,被告の主張に対する反論となっていない。
(b)原告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問に,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。という文言が挿入さ

れていることについて,本件表示③以外の質問文は,両グループで全く同じである以上,上記の文言を含めることによる効果が両グループの間で異なることは論理的にあり得ない旨主張する。

しかし,現実の消費者が繊細かつ千差万別であって,上記のよう
な形式論理により消費者の実態を正しく捕捉することができるわけではなく,上記の文言による購入したいと強く思う及び購入したいと思うとの回答を増やす方向でのバイアスが,本件グループ①又は本件グループ②のそれぞれにどの程度の介入効果を及ぼす
かは不明であり,両グループに全く同じ影響しか与えないという保証もないから,原告の主張は,失当である。
(c)原告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問に,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。という文言が挿入さ


れていることについて,
購入したいと強く思う又は購入したいと思うという回答比率の水準が両グループともに大きくなることにより,回答比率の差異が高まる可能性もあり,その場合には,原告の立場から見て厳格な調査となることを示すものともいえる旨主張する。

しかし,上記のような回答比率の水準が両グループ共に大きくな
ることを保証する根拠はなく,まして両グループで全く同程度大きくなることを保証する根拠は全くないから,原告の主張は,失当である。
(d)原告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問に,

このEは,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあると想定してください。とい


う文言が挿入されていることについて,被告が指摘した事実(平成29年後半に本件商品⑤の価格が2000円程度まで上昇していた時期があったこと)を踏まえ,本件表示③に接した消費者の実際の状況を回答者に認識させることで,より現実に近い状況の下で,本件表示③が一般消費者の購入意欲に及ぼす影響の有無を分析するこ
とを可能にする趣旨で挿入されたものであるから,合理的な理由に基づいて挿入されたものである旨主張する。
しかし,
前記(a)と同様,
本件調査における上記のような目的のい
かんにかかわらず,上記の文言の存在により介入効果が発生する以上,本件調査及び本件分析には信頼性がない旨を被告は主張してい
るから,原告の上記の主張は,被告の主張に対する反論となっていない。また,外的参照価格の表示に関する事案である本件においては,上記の文言自体が,本件調査における目的のいかんにかかわらず,正に外的参照価格についての介入そのものとなっており,本件表示③におけるOFF75%という比較対象価格の表示による,

介入と交差して回答者の価格判断に予測不可能なバイアスを与えてしまっている。
したがって,上記の文言は,明らかに回答そのものに特に大きな
影響を与える不適切な説明文であって,
原告の主張は,
失当である。
b
原告は,本件調査においては,アンケート調査におけるサンプルサイズの決定に際して一般的に用いられる方法により,
有意水準を1%,
検定力(対立仮説が真であるときに帰無仮説を棄却することができる確率のこと。以下同じ。
)を0.8,効果量(2つのグループ間の差異
が実質的なものといえるか否かの基準となる値のこと。
以下同じ。を

0.2とし,各グループに必要なサンプルサイズである584を得たところ,実際のサンプルサイズは,本件グループ①が2273,本件グループ②が2246であり,上記の必要なサンプルサイズを大きく上回っており,極めて保守的(原告にとって厳格)な立場からサンプルサイズが決定されている旨主張する。
しかし,本件調査のような実験においては,一般に,被験者を実験
目的に即して適切に選定する必要があり,通常,本調査に係る実験の前に,実験目的に照らして適切な被験者を選定するスクリーニング調査が実施されるところ,本件表示③についてみると,本来は,その対象商品がEという購入して消費しようとする関心層自体が限定的な商品であるという性質を考慮し,本件表示③の誤った参考価格情報に影
響を受けるのは,電子商取引によりEを購入することに関心がありながらEの価格について十分な知識を持たないような限定的な消費者層であることを踏まえた上で適切な被験者を選定する必要があり,無関心な人から回答を得ても無意味であるから,Eに関心がない人に無理な想定を押し付けて強制的選択を強いたり,不当な介入をしたりした
ところで,信頼することができる回答は得られないことを踏まえて適切に選定した被験者についてのサンプルサイズを計算しなければならない。
しかるに,本件調査においては,そのような見地に立って注意深く被験者を抽出しようとした形跡はなく,原告が指摘するサンプル(4
519)のほとんどが,Eに無関心で被験者として適切ではない者ばかりになっている。しかも,効果量は,標準偏差で正規化した平均値の差の大きさのことであるから,文脈に即した標準偏差の情報が必要であるにもかかわらず,本件調査においては,具体的実例に即することもなく,何らの情報もないままにサンプルサイズが設定されているから,このこと自体からも,本件調査におけるサンプルサイズの根拠が薄弱であることがうかがわれる。
なお,サンプルサイズが大きくなるときにp値が小さくなる傾向があり,比率間に実質的な差異がない場合であっても,帰無仮説が棄却されやすくなるところ,本件においては,本件グループ①と本件グループ②との間で購入したいと思う人の比率の差が実質的にはほとんど
ない場合であっても,サンプルサイズを大きく取れば,同比率に有意な差があるとの判断をすることとなり,ミスリーディングな結論となってしまうから,適切なサンプルサイズを選択する方法を含む標準的な分析アプローチが確立されている旨の原告の主張に沿う証拠(甲35)の記載がある。しかし,今日の経済学においては,予算や制約が
許す限り,データ数は多い方がよいと考えられており,通常,必要最低限のサンプルサイズよりもはるかに多い数のデータを使って分析がされているところ,本件においても,データ数を増やして平均的に有意な差が検出されるのであれば,母集団においても差があると考えられ,仮に,標本と母集団とが一致するまでサンプルサイズを増やすな
らば,差がどれだけ小さくとも差が存在する限りは差がないとはいえない一方,帰無仮説が正しく,真に差が存在しないならば,どれほどサンプルを増やしても有意な差は検出されず,むしろ,被験者として適切ではない者がサンプリングされるバイアスであるサンプリングエラーが減少するメリットの方が大きいから,上記の記載は,原告の主
張を正当化するものとはいえない。
したがって,本件調査におけるサンプルサイズの設定方法は,標準的な経済分析の手法とかけ離れており,Eという商品の性質,前記aにおいて指摘した各文言によるバイアスの存在にも鑑みると,本件調査のサンプルサイズは,不十分なものといえる。
c
原告は,有意水準,効果量及び検定力を事前に設定した上でサンプルサイズを決定し,収集されたデータを使って分析を行う際には同じ
有意水準等の下で統計的検定を実施することが統計学の標準的ルールであるから,
本件分析における回答比率の差異に係るp値
(p値:0.
056,0.053)は,有意水準を10%に設定すれば統計的に有意な差異が認められることになるし,有意水準を5%に設定したとしても,上記のp値は,おおよそ統計的に有意な差異があると評価する
ことも可能である旨の被告の主張が,統計学の標準的なルールから外れた独自の解釈にすぎない旨主張する。
しかし,統計学において,サンプルを収集した後に,事前に想定した有意水準を固定し,その他の有意水準で分析してはならない旨のルールは存在しない。実際の経済学分野において計量分析を行う論文に
おいても,1%,5%又は10%という複数の有意水準を設定して仮説の検定がされている。原告が,実験で得られたサンプルを分析するに当たって,原告にとって有利な1%という有意水準を定めた以上,第三者が5%又は10%といった有意水準で多角的に分析することを許さない旨の主張をするものであるとすると,そのような前提に立っ
た分析結果は,恣意的なもので不公平であり,信頼性がない。
したがって,
有意水準を1%に設定することに固執した本件分析は,
標準的な経済分析の手法とかけ離れており,本件分析において算出された実現値から,統計的に有意な差異がないと結論することは誤りである。

d
原告は,
本件調査及び本件分析において,
本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異がないという仮説(本件仮説①)を棄却することができないから,本件仮説①が正しいと推論しているように思われるところ,帰無仮説を棄却することができないからといって直ちに,当該帰無仮説が正しいものであると結論することはできないから,仮に,本件分析において,
p値が有意水準を上回ったとしても,そのことを理由に直ちに,本件表示③が一般消費者による本件商品⑤の購入において参考にされていないことを示していると結論付けることはできない。
(原告の主張の要点)

一般消費者による自主的かつ合理的な選択の阻害の可能性を認定するためには,健全な常識を備えた一般消費者が,商品取引に関する表示を具体的にどのように認識するかを検討することが必要である。また,取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるか否かは,
商品の性質,
一般消費者の知識水準,取引の実態,表示の方法,表示の対象となる内容等に照らし,当該誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろ
うと認められる程度に達する社会一般に許容されている程度を超える誇大又は誇張表示であるか否かによって判断されるべきものである。
したがって,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれは,抽象的な一般消費者による誤認のおそれを抽象的又は感覚的に論ずることによって認定することができるものではなく,健全な常識を有する
消費者が各商品について有する知識水準を商品ごとに具体的に認定した上で,表示内容,表示方法等諸般の事実関係を客観的に検討することによって初めて認定することができるものであるところ,本件措置命令においては,そのような事実関係が全く認定されていない。

被告は,二重価格表示が不正確又は不明確に行われることが横行し,一般消費者に価格についての誤った情報が提供されて一般消費者の正しい商品選択が妨げられる等の社会的事実が認められたために運用基準が定められ,その後,価格表示の適正化を図る観点から,実際の事例の収集分析結果に基づき社会一般に横行しがちな不当な価格表示を類型化し,基準化したものとして本件ガイドラインを定めたところ,本件各表示が本件ガイドラインにいう二重価格表示に当たることを前提とし,これが本件ガイドラインの定める不当表示に当たるなどとして,本件各表示についても,有利誤認表示に該当する旨主張する。
しかし,被告が上記に指摘する事実が,運用基準や本件ガイドラインの制定を必要とした社会的事実に当たるとしても,それは,少なくとも約2
0年前ほど前の社会的事実に依拠しているにすぎず,現代におけるオンライン上の表示に対する評価の前提とはなり得ない。日本における電子商取引は,平成8年以降一般化し,平成12年以降,日本語検索サービスがオンライン上で広く提供されるようになったことを含め,オンライン上の消費行動が加速度的に進化を遂げている。すなわち,現代の一般消費者は,
オンライン上で数クリックするだけで,労力を要せずに,他のオンライン上の店舗を検索したり,価格等の比較サイトを用いて店舗や商品情報を容易に比較したりすることができるのであり,平成12年当時には予測もつかないような一般消費者による消費行動が当たり前のものとなっている。このような現在の社会的事実を考慮することなく,遅くとも平成12年当
時の社会的事実に基づく表示に対する評価が現代におけるオンライン上の表示である本件各表示にも当てはまるとする主張には,論理の飛躍がある。
したがって,本件各表示が有利誤認表示に該当するか否かは,現代におけるオンラインでの一般消費者の購買行動を踏まえた上で,本件各表示の
具体的な内容及び状況をも踏まえて判断されるべきである。
ウ(ア)a本件表示①における参考価格は,製造事業者であるCの定価であり,消費者へ提示されるべきものとして原告その他の小売業者に対して提示されていたものであるから,
本件表示①における
参考価格
には,希望小売価格その他の定価が表示されていたにすぎず,一
般消費者に誤認を生ずるおそれを有するものではなかった。本件表示①がされていた期間において,Cが上記の定価とされる価格を消費者
に提示されるべき価格として積極的に活用していたことに鑑みると,上記の価格が,設定された当初においてCの商品管理上便宜的に定められたものであったとしても,何らの影響もない。
また,商品の取引に関する表示が健全な常識を備えた一般消費者に誤認を生じさせるおそれを有するか否かは,表示を行った者の主観に
影響され得るものではないから,Cが定価とされる価格を一般消費者に提示することを目的としていなかったとされることは,一般消費者の誤認可能性に何らの影響も及ぼさない。
したがって,本件表示①は,本件3商品の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,不当に顧客を誘
引し,自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかったといえる。
b
被告は,本件表示①における参考価格と称する価額は,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を
目的としていないものであったとの消費者庁長官がした認定に誤りはなく,原告が依拠する原告の従業員が作成した陳述書の記載は信用することができない旨主張するが,次のとおり,被告が依拠するCの従業員の供述等(乙14,28)は信用することができず,他方,原告の従業員が作成した陳述書(甲27)は,信用することができること
等に鑑みると,被告の主張は,失当である。
(a)消費者庁長官がした認定に沿うCの従業員の供述等は,
①一方で,
Cが便宜的に定めたとされる価格が小売業者に示すために定めた旨及びこれを小売業者に周知している旨を供述し,当該価格が多数にわたり小売業者に示す機会があるために設定されていると考えるのが合理的であるにもかかわらず,他方で,小売業者に広く知られていない旨及び小売業者に広く周知していない旨を供述しており,供述相互間に矛盾があるだけではなく,事業上の合理性にも反していること,②上記の便宜的に定めたとされる価格を小売業者から一般消費者に対する販売価格の目安を聞かれた際の回答としているところ,これを前提とすると,小売業者が当該価格に基づいて一般消費
者に対する価格を提示することは明らかであって,製造事業者としても,一般消費者に対してそのような価格が提示されることは容易に推測されたはずであるから,供述における一貫性及び合理性を欠いていること,③定価がある場合に希望小売価格の記載が必須であることを,定価の有無にかかわらず希望小売価格の記載が必須であ
る旨誤解していること,④あえて原告に不利な虚偽の供述をする動機はないとしても,自己に不利益な供述を避ける動機は十分にあること,⑤Cの規制官庁である消費者庁の職員によって作成されており,受動的な供述態度であったといえることに鑑み,全く信用することができない。

(b)原告の主張に沿う原告の従業員が作成した陳述書(甲27)の記載は,①客観的かつ具体的な事実経過において,当時存在したCの従業員との商談の内容をあるがままに簡潔に報告した内容
(甲34,
乙28)に沿って記載されており,具体的かつ客観的なものであること,②平成27年7月頃以降のカスタマーレビューにより,遅く
とも平成28年夏以降には,
Cも,
希望小売価格に入力した情報
(原
告に定価として通知していた実際には参考上代であった価
額)が参考価格として一般消費者に表示されることを十分に理
解していたという事実(原告の主張及び上記の陳述書の記載に沿う事実)が裏付けられていること,③商談とは面会での打ち合わせの趣旨であり,
参考上代
という言葉が用いられなかったという意味
において,Cの従業員と上記の陳述書を作成した原告の従業員との間でやり取りされたメール(乙29添付のもの)の記載とも矛盾しないこと,④Cには,
参考上代を示して当該価額からの割引率を
示してお得感を訴求する売上拡大の意図を有する動機があったことに鑑み,十分に信用することができる。

(c)被告は,①原告が消費者庁に提出した複数の文書(乙7,28)に原告の従業員が作成した陳述書(甲27)の記載に相当する内容の記載が全く見当たらないこと,②消費者庁長官は,本件措置命令に先立つ原告に対してされた弁明の機会の付与の際,原告に対し,原告が指摘する消費者庁長官がした認定も明確に示したにもかかわ
らず,弁明はない旨を回答したのみで,本件3商品の参考価格に何も言及しなかったことを挙げて,原告の従業員が作成した陳述書が信用することができない旨主張するが,Ⓐ原告が消費者庁に提出した文書(乙7,28)の記載と上記の陳述書(甲27)の記載との間に矛盾はなく,単に陳述書の記載内容と同じものが記載されてい
なかったにすぎないこと,Ⓑ処分の方針を決定している消費者庁長官に対して弁明を行うよりも,裁判所の判断を受けることが事案の性質に沿っていると考えて弁明をしなかったにすぎないことに鑑みると,被告の主張は,合理性がない。
(イ)本件表示②における参考価格は,本件商品④の出品者が,製造事
業者が作成した商品カタログに記載された希望小売価格に基づいて参考価格を入力する際に過誤が生じた結果のものである。そして,本件商品④に係る商品詳細ページには,本件商品④の定価が3300円(消費税等の額に相当する金額を加算した後の価格が3564円)の商品である旨のカスタマーレビューが掲載されており,他の同商品詳細ページを閲覧する者は,当該カスタマーレビューを閲覧することにより,本件表示②における参考価格が過誤に基づく表示であることを確信することができた。
したがって,本件表示②は,本件商品④の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,
不当に顧客を誘引し,
自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかったと
いえる。
(ウ)本件表示③における参考価格は,本件商品⑤出品者が本件商品⑤の6本セットの商品の参考価格として決定して入力したもの(3780円)が,原告が使用するコンピュータシステム上の処理の過程で過誤が生じたため,本件商品⑤の単品の商品の参考価格として表示されるに至
ったものである。
本件商品⑤について製造事業者がそのウェブサイトに掲載している希望小売価格は,1本当たり713円(消費税等の額に相当する金額を含む。
)であるところ,本件商品⑤と同種の商品(E)を購入することを検討する消費者は,健全な常識を有する一般消費者である限り,Eの希望
小売価格が一般的に上記の価格の程度のものであるという常識や知識を有しているから,過誤によって入力された本件表示③における参考価格のような桁違いの価格の表示は,Eを購入することを検討する健全な常識を有する消費者であれば,当該表示が過誤によるものであることを認識することができるものであって,当該表示が顧客を誘引する性質
のものとはいえない。また,本件表示③は,合計1か月程度という短い期間表示されたにとどまり,これが表示されていた期間においても,本件商品⑤の売上高及び本件商品⑤に係る商品詳細ページの閲覧数が原告の飲料の販売に係る売上高及び商品詳細ページの閲覧数に占める割合は,いずれも極めて僅少(売上高につき■■■■■■■■■%,閲覧数につき■■■■■■■%)であった。
したがって,本件表示③は,本件商品⑤の購入を検討する一般消費者
に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,
不当に顧客を誘引し,
自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかったといえる。
エ(ア)原告が,
本件表示③に対する消費者の認識を本件調査によって確認し,その結果について経済的な分析
(本件分析)
をしたところ,
次のとおり,
本件表示③は,一般消費者によって誤認される表示ではなく,かつ,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示ともいえないことが判明したから,有利誤認表示に該当しない。

a
本件調査によれば,商品を購入する際,本件調査の対象者全体の65%の者が本件商品⑤の商品詳細ページ以外の多岐にわたる情報(本件ウェブサイトにおける他のEの商品詳細ページ,本件ウェブサイト以外のオンラインショップにおける本件商品⑤の商品ページ,本件ウェブサイト以外のオンラインショップにおける他のEの商品ページ,
実際の店舗における本件商品⑤の価格等)も参照する旨を回答しているから,健全な常識を有する一般消費者は,通常,本件表示③を含む商品詳細ページだけではなく,様々な情報源から参考となる情報を収集しており,本件商品⑤の価格のみならず,他のEも含めたEの一般的な価格水準がどの程度のものかについて十分な常識や知識を有して
いたといえるのであり,健全な常識を有する一般消費者にとって,本件表示③における参考価格が桁違いの過誤であることが明らかであったということができる。
b
本件表示③は,本件ウェブサイトにおける本件商品⑤の商品詳細ページのほんの一部分にすぎず,前記aのとおり,当該商品詳細ページですら,一般消費者が商品を購入する際に参照する多種多様な情報源の1つにすぎないから,一般消費者は,これらの多数の情報に基づい
て本件商品⑤の購入を決定するのであって,本件表示③によって顧客が購入に誘引されるという条件関係が存在せず,一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがないことも明らかである。
c
本件調査の結果を統計学的に分析した本件分析によれば,本件表示③の有無によって,本件商品⑤を購入したいと思う又は購入したいと強く思うと回答した者の割合に有意な差異が生じなかったことが判明した。
このことは,一般消費者が本件商品⑤を購入する際に本件表示③を参考としていないことを示唆するものであり,本件表示③が,顧客を
誘引するものでも,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものでもないことが明らかであることを示すものである。
(イ)被告は,
行動経済学及び消費者心理学の分野においては,
消費者が
割引バーゲン

という商品の価格情報の提供の仕方
(フレーミング)

に左右されて,合理的に判断すれば購入しないような財又はサービスを得だと思い込んで購入しがちであるとの専門的知見が得られている旨主張する。
しかし,被告が指摘する専門的知見は,いずれも北米の大学において2003年(平成15年)以前に初級の心理学又はマーケティングの授
業を履修していた大学生という極めて限定的な集団から,少数の調査対象者をランダムではない方法によって選定した上で得られたものであるから,本件各表示の効果を検討する上では参考とならない。
これに対し,本件調査の対象者群は,現在,日本に居住する一般消費者のうち日本の人口構成と同様の年代,地域別及び男女構成となるように無作為に抽出された大規模な集団(4519名)であり,そこから得られた結論は,
本件各表示が一般の消費者に与えた効果を検討する上で,
高い有用性及び関連性を有する。また,参考価格又は参考価格と実売価格との間の割引率の表示が消費者の価値評価や購買意欲に影響を及ぼすか否かは,あくまでも事案ごとに実証すべき問題であり,参考価格からの割引率が消費者行動に影響を及ぼす可能性が認知されている一方で,
当該因果関係が常に成立するわけではないことも認知されている。景表法5条2号にいう誤認が,現実に一般消費者の誤認が生じた
ことを要件するものではないと解釈されるとしても,実際のものと一般消費者が当該表示から受ける印象との間に差が生じる可能性が高い場合には,同号にいう誤認と認められるのであり,この点からも,本件表示
③の効果を本件に即して個別具体的に検討し,実際のものと一般消費者が当該表示から受ける印象との間に差が生じる可能性を明らかにすることを目的として実施された本件調査及び本件分析は,被告が指摘するような専門的な知見とは違い,高い有用性及び関連性を有するものというべきである。

(ウ)被告は,本件調査及び本件分析について,専らEの一般的な価格水準を十分に確認,把握した上で購買判断をするかしこい消費者を念頭に置いている旨主張する。
しかし,景表法5条2号における著しく有利であると一般消費者に誤認される表示か否かの検討を行うに際しては,健全な常識を備えた
一般消費者の知識水準を前提として行われるべきであり,健全な常識を有する消費者が表示の対象となる商品について有する知識水準を当該商品ごとに具体的に認定した上で,表示内容,表示方法等の種々の事実関係を客観的に検討して初めて可能となるものである。本件調査及び本件分析は,一般消費者が本件商品⑤の購入を検討するに際してどのような情報に接していたのか,
本件表示③が購入の意向に影響を及ぼしたのか,
本件の事実に即して具体的に,かつ,恣意性や先入観を排して客観的に調査し,分析することを意図して行われたものであり,本件表示③に接する一般消費者の知識水準を調査し,かかる知識水準を背景として本件表示③を当該一般消費者が具体的にどのように理解するのかを調査し,分析したものということができ,現実に存在する消費者の実態に即した
ものである。
したがって,被告の主張は,失当である。
(エ)a被告は,本件商品⑤の商品詳細ページ以外の情報を参照する旨を回答したとされる本件調査の対象者全体の65%の者について,当該参照先の数並びに参照先が複数であった場合の参照先の種類,組合せ及
び参照比率が全く明らかにされておらず,Eの購入に当たって1つの参照先のみの情報に接した上で購入するに至った回答者が相当数に上っている可能性も否定できないから,一般消費者が様々な情報源から参考となる情報を収集しているとの原告の主張の前提となる事実自体が存在しないというべきである旨主張する。

しかし,本件商品⑤の商品詳細ページ以外の情報を参照する旨を回答した者(本件調査の回答者全体4519名中2922名)のうち1806名の者が,当該商品詳細ページ以外の参照先が2種類以上(最大6種類)である旨を回答し,その参照先として,本件ウェブサイト以外のオンラインショップ又は実店舗の販売価格を挙げる者が過半数
であった。また,参照先の組合せ及びその比率も多岐にわたり,相当程度以上の回答比率を得ている。さらに,本件商品⑤の商品詳細ページ以外の参照先が1種類である旨を回答した者
(1116名)
のうち,
本件ウェブサイト以外のオンラインショップ又は実店舗の販売価格を参照すると回答した者が過半数を超える645名に上っている。
したがって,以上の結果からは,一般消費者は,複数かつ多様な情報源を参照していることが明らかである。

b
被告は,商品の種類によって価格帯が相当に異なることが考えられるほか,販売主体又は販売時期によっても,販売価格には相応の幅が認められること及びEを購入して消費しようとする関心層自体が限定的な性質を有する商品であることに鑑みると,ある一時点でEの価格
に関する参照先の情報に接した者が,Eの一般的な価格水準に関する十分な常識や知識を有するに至るとは限らないから,一般消費者が様々な情報源から参考となる情報を収集しているとの事実を基に,一般消費者がEの一般的な価格水準がどの程度のものかについて十分な常識や知識を有していたとは評価できない旨主張する。

しかし,複数かつ多様な情報源を参照している消費者は,意識的又は無意識的に,情報源の参照に必要な時間や労力を勘案して情報源を探索して参照しているのであり,本件商品⑤の商品詳細ページ以外にも有用な情報源があることを知り,ある程度のコストをかけてでもそのような情報源に接することのメリットも感じていることの証左であ
るから,
何らかのコストをかけて他の情報源を参照する一般消費者は,
自ら必要となる情報を主体的に得ようとしているのであり,本件表示③の影響を受けにくいということも合理的に推認することができる。したがって,被告が指摘するところを前提としたとしても,一般消費者が,本件商品⑤について,本件表示③以外にも多様な情報源から
情報を得ており,本件表示③によって誤認し,本件商品⑤の購買に誘引されるとは限らないとの原告の主張を左右するものとはいえないというべきである。
c
被告は,本件調査の結果は,少なくとも全体の3分の1を超える消費者が,本件商品⑤の商品詳細ページのみを参照して本件商品⑤を購入するか否かを判断することを意味しており,本件表示③が,少なく
とも全体の3分の1を超える消費者の判断に影響を与える可能性があることを示している旨主張する。
しかし,本件調査の結果によれば,本件商品⑤の商品詳細ページのみを参照して本件商品⑤を購入すると回答した者について,実際に本件表示③を見た者とこれを見ていない者との間で,本件商品⑤の購買
意欲に有意な差異が見られなかったのであり,本件表示③が消費者の購買意欲に影響を及ぼしていないことが認められるから,一般消費者の大勢を占めるのは,本件表示③も含めて他の情報の影響を受けない消費者であることが明らかと認められる。
したがって,本件表示③は,一般消費者に誤認をさせて本件商品⑤
の購入に影響を与えるものとはいえないのであって,被告の主張は,失当である。
(オ)a被告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問において,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。という文言が挿入さ


れているところ,これは,
購入したいと強く思う及び購入したいと思う
との回答を増やす方向でのバイアスがかかるおそれがある上,
それが,本件グループ①及び本件グループ②のそれぞれにどの程度の介入効果を及ぼすかは不明であり,両グループに全く同じ影響しか与えないという保証もないという意味で,不当な誘導をしているもので
ある旨主張する。
しかし,上記の文言は,回答者に対し,実際に購入の検討を行う状況を想定するよう促すことにより,回答者の関心を高めて実際の購買行動により近い回答を得る目的のものであり,このような促しをすることは,通常一般にも行われるものであって,このような文言によっても,回答者の回答内容にバイアスは生じず,又はバイアスが生ずる可能性があったとしてもそれを無視し得るものであるという行動経済
学や応用心理学の分野におけるコンセンサスが存在しているということができる。
また,本件調査によって精査する対象は,
購入したいと強く思う
及び購入したいと思うという回答比率の水準そのものではなく,
本件表示③を表示したグループとそれを表示しなかったグループとの
間の回答比率の差異の有無であることからすると,上記の両グループがグループとして同質であり,本件表示③以外の質問文は,両グループで全く同じである以上,上記の文言を含めることによる効果が両グループの間で異なることは論理的にあり得ないといえる。また,上記の文言を挿入することにより,
購入したいと強く思う又は購入したいと思うという回答比率の水準が大きくなるとしても,両グループ間の回答比率の差異が小さくなり,原告に有利な結果が得られやすくなるということもないから,上記の文言を挿入することが本件調査に不当な影響を与えるものとはいえない。むしろ,上記のような回答比率の水準が両グループともに大きくなることにより,回答比率の差
異が高まる可能性もあり,その場合には,原告の立場から見て厳格な調査となることを示すものともいえる。
したがって,上記の文言は,本件調査の目的に照らし,必要かつ正当なものであるから,被告の主張は,失当である。
b
被告は,本件調査における

あなたは,このEを購入したいと思いますか。

という質問において,

このEは,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあると想定してください。とい

う文言が挿入されており,不当な誘導をするものである旨主張する。しかし,上記の文言は,被告が指摘した事実(平成29年後半に本件商品⑤の価格が2000円程度まで上昇していた時期があったこと)を踏まえ,本件表示③に接した消費者の実際の状況を回答者に認識させることで,より現実に近い状況の下で,本件表示③が一般消費者の購入意欲に及ぼす影響の有無を分析することを可能にする趣旨で挿入されたものであるから,合理的な理由に基づいて挿入されたものであって,不当な誘導をするものとはいえない。

したがって,被告の主張は,失当である。
c(a)被告は,本件分析の基となる本件調査においては,合計で1000名に満たない関心層の回答しか集計することができていない可能性が高く,サンプルサイズが不十分であることが強く疑われることからも,その調査分析結果に直ちに信頼性があるとはいえないとい
うべきである旨主張する。
しかし,本件調査においては,アンケート調査におけるサンプル
サイズの決定に際して一般的に用いられる方法により,有意水準を1%,検定力を0.8,効果量を0.2とし,各グループに必要なサンプルサイズである584を得たところ,実際のサンプルサイズ
は,
本件グループ①が2273,
本件グループ②が2246であり,
上記の必要なサンプルサイズを大きく上回っている。このように,本件調査における分析は,極めて保守的(原告にとって厳格)な立場からサンプルサイズが決定されているものである。
したがって,被告の主張は,失当である。

(b)被告は,二重価格表示が関心層に与える影響を確認すべきである旨主張する。
しかし,本件分析においては,過去1年間にEを購入したと回答
した回答者のみを抽出して分析がされており,購入したいと強く思う及び購入したいと思うを選んだ回答者の比率は,両グルー
プ間で統計的に優位な差がなかったという結果が得られている。
したがって,被告の主張は,本件調査及び本件分析の信用性に何

ら影響を及ぼさない。
d
被告は,本件分析における回答比率の差異に係るp値(p値:0.056,0.053)は,有意水準を10%に設定すれば統計的に有意な差異が認められることになるし,有意水準を5%に設定したとし
ても,上記のp値は,おおよそ統計的に有意な差異があると評価することも可能であり,本件調査を基にした本件分析において算出された実現値からは,本件グループ①と本件グループ②との間で回答比率に統計的に有意な差異が認められなかったとは断定できないから,本件分析における推論は,誤っている旨主張する。

しかし,有意水準,効果量及び検定力を事前に設定した上でサンプルサイズを決定し,収集されたデータを使って分析を行う際には同じ有意水準等の下で統計的検定を実施することが統計学の標準的ルールであるから,被告の上記の主張は,統計学の標準的なルールから外れた独自の解釈にすぎない。

また,グループ間の差異に係るp値は,サンプルサイズにより変わるものであり,検定対象となるグループ間の差が実質的に大きいものといえるかについては何らの情報を与えず,グループ間の差異の検討について参考となるのは,効果量であって,一般に,小さい効果量の基準値として0.2,中程度の効果量の基準値として0.5,大きい
効果量の基準値として0.8が用いられるところ,本件調査における標本効果量は,
購入したいと強く思う
という回答比率の本件グルー
プ①と本件グループ②との間の差異が0.007であり,
購入したいと思うという回答比率の本件グループ①と本件グループ②との間の差異が0.057であった。さらに,過去1年間にEを購入したと回答した回答者のみを抽出して分析をしたとしても,本件調査における標本効果量は,
購入したいと強く思う
という回答比率の本件グルー

プ①と本件グループ②との間の差異が0.031であり,
購入したいと思うという回答比率の本件グループ①と本件グループ②との間の差異が0.042であった。
このように,本件調査における分析の結果として,購入意欲に係る回答比率の両グループ間の差異について,
統計的有意性が認められず,

効果量も極めて小さいものといえるから,本件調査の回答者の本件商品⑤の購入意欲につき,本件表示③の有無が影響を及ぼしていないことが強く示されているといえる。
したがって,被告の主張は,失当である。
(3)

争点3(消費者庁長官が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の有無)について
(原告の主張の要点)
ア(ア)本件各表示は,希望小売価格その他の定価に係る表示に関するものであり,これが有利誤認表示に該当するのであれば,製造事業者,仕
入先又は出品者に対してその是正を命ずることが直截的である。それにより,他の小売業者を通じて行われる同一の有利誤認表示も措置命令によって結果的に是正されることになり,一般消費者の利益にもより良く資することとなる。原告は,地球上で最も豊富な品揃えの実現を目指して数億種類の商品をウェブサイトに陳列して販売する小売業者であり,
セレクトショップとは異なり,販売商品をその感性や視点によって選択することもない。
したがって,原告を名宛人として本件措置命令をする必要性はなく,本件措置命令は,
消費者庁長官が,
その有する裁量権の範囲から逸脱し,
又はこれを濫用したものというべきである。
(イ)仮に,原告が本件各表示を表示した者に該当するとすれば,原告その他のインターネット上の小売業者は,個々の商品について膨大な数の仕入先及び出品者の入力する情報の正確性を個別に精査して根拠を確認するという不可能を強いられることとなり,現実的な方法としては,商品情報の大部分を削除して一般消費者に対して表示されないようにするほかない。

本件措置命令は,インターネット上の小売業者に対して遵守不可能な規制を課すものであり,インターネット上の小売業者による商品情報の提供に対して強烈な萎縮効果をもたらし,同事業の健全な発展を大きく阻害するとともに,一般消費者を商品情報へのアクセスから隔離してその利益を害するものである。

したがって,本件措置命令は,原告に対して命ずる必要性がなく,かつ,製造事業者,仕入先又は出品者に対して措置命令をすることが最も直截的な是正策であるにもかかわらず,殊更原告のみを名宛人としてされたものであるから,消費者庁長官が,その有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。

イ(ア)消費者庁長官は,原告に対して本件措置命令をする一方で,他の事業者(例えば,本件3商品の製造事業者又は仕入先)に対して措置命令をすることはなかったから,原告を他の事業者との間で不当に差別的に取り扱ったものである。前記(1)(原告の主張の要点)のとおり,原告は,景表法5条にいう表示した者に該当しないのであり,上記の表示した者
に該当するのは,製造事業者,仕入先又は出品者であるから,これらの者について本件各表示について措置命令の対象とすべき要件を欠く事情はない。
前記アのとおり,消費者庁長官は,製造事業者,仕入先又は出品者に対して措置を命ずることが直截であって,一般消費者の保護にもよりよく資するにもかかわらず,
それらの者に対して措置命令をすることなく,
あえて原告に対してのみ本件措置命令をしたことは,不当な選別的執行である。
したがって,
本件措置命令は,
平等原則に違反する違法なものである。
(イ)前記(1)(原告の主張の要点)エ(ウ)aのとおり,原告の行為は,本件ウェブサイトというインターネット上の店舗の仕組みを構築し,仕入先
又は出品者がその内容を決定して提供した参考価格等の商品の情報を,当該内容の決定に何ら関与することなくそのまま並べておいたものにすぎないのであり,そのような仕組みを構築及び運営していることのみを理由として,製造事業者又は出品者が提供する情報の表示に係る責任を追及されるとすれば,インターネット上の小売業者における表示を過度
に規制し,責任を加重するものである。
原告が構築した表示の仕組みは,他の販売者も等しく利用している。1つの表示につき,当該表示の仕組みを構築しただけでは表示の責任は問題とならず,また,当該表示を利用する他の販売者についても何ら問題とならないにもかかわらず,表示の仕組みを構築した者である事業者
が同時に販売者となっている場合にのみ,同一の表示を利用している他の販売者と区別して,当該表示の仕組みを構築した事業者兼販売者である事業者にのみ不当表示の責任を追及することは,小売業者等に販売の場を提供する事業者の小売事業を過度に制約し,萎縮させるものであって,公正な競争が阻害され,消費者の利益を害する結果を招来しかねな
いものである。
したがって,本件措置命令は,インターネット上の小売業者を不当に差別し,かつ,インターネット上の販売の場に不要な制約を課すものであるから,その必要性を欠き,消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用するものであると同時に,平等原則にも反するものというべきである。

本件各表示は,いずれも課徴金納付命令の対象とされるものではなく,かつ,既に取りやめられているにもかかわらず,本件措置命令をしたことは,原告に対する重大な民事的制裁をもたらすものであるから,消費者庁長官は,その有する裁量権を濫用したものである。
したがって,本件措置命令は,必要性を欠くにもかかわらずされた違法なものである。

(被告の主張の要点)

景表法7条1項は,消費者庁長官がその有する権限を行使して措置命令を発するか否か,発する場合にどのような内容の措置命令を発するかについての判断をその合理的な裁量に委ねているから,本件措置命令が違法なものとなるのは,消費者庁長官がした判断が,その裁量権の範囲から逸脱
し,又はこれを濫用した場合に限られる。

原告は,消費者庁長官は,原告に対して本件措置命令をする一方で,他の事業者(例えば,本件3商品の製造事業者又は仕入先)に対して措置命令をすることはなかったから,原告を他の事業者との間で不当に差別的に
取り扱ったものであるとして,本件措置命令には,平等原則違反がある旨主張する。
本件においては,原告は,本件各表示をした表示主体であると認められる一方,仕入先は原告からその表示を委ねられた者,製造事業者は参考価格として用いられることとなる価格を設定した者であるにすぎず,本件各
表示の表示主体になり得ないから,原告が本件措置命令の対象とされたことに合理的な理由がある。また,行政処分が平等原則に違反するのは,処分の相手方である事業者以外の違反行為をした事業者に対しては当初から行政処分をする意思がなく,処分の相手方である事業者に対してのみ差別的意図をもって当該行政処分をした場合等に限られると解すべきところ,本件においては,消費者庁長官が,そのような差別的意図をもって本件措置命令をした事実はない。

したがって,本件措置命令に平等原則違反があるとはいえず,原告の主張は,失当である。

原告は,本件各表示は,いずれも課徴金納付命令の対象とされるものではなく,かつ,既に取りやめられているにもかかわらず,本件措置命令を
したことは,原告に対する重大な民事的制裁をもたらすものであるから,消費者庁長官は,その有する裁量権を濫用したものである旨主張する。しかし,原告は,現在も本件5商品の販売を継続しており,本件各表示により既に形成された一般消費者の誤認を排除する必要があり,原告が本件ウェブサイトにおいて,本件5商品及び同種の商品を販売する際の表示
の適正性は十分に担保され得ない状況であって,原告に対し,再発防止策の策定や今後の同様の不当表示の差止めを求めることが不可欠である。また,
措置命令の内容は,
消費者保護のため必要な事項に限定されている上,
行政手続法上の弁明の機会の付与もされた上で発出されるなど,措置命令の対象となる事業者の利益を不当に害することのないよう慎重な配慮が
されている。仮に,本件措置命令がされたという事実に起因して間接的に原告の事業活動に何らかの影響が生じ得るとしても,それは,当該行政処分の性質上,景表法が当初から予定しているものであり,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を排除し,一般消費者の利益を保護するという景表法の目的を達する上で,
景表法に違反した事業者が当然に甘受すべきものとして予定されているものでもある。
したがって,本件措置命令をしたことが,消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したものとはいえないことは明らかであって,原告の主張は,失当である。
(4)
争点4(本件措置命令を発出する手続の適法性)について
(原告の主張の要点)

公正及び透明な手続を法的に保障しつつ,処分の原因となる事実について,その名宛人となるべき者に対して防御権を行使する機会を付与することが適正手続保障の観点から必要であるために,弁明の機会の付与がされるものであり,処分の名宛人となるべき者が,適切な防御権を行使するためには,
処分の根拠となる事実について具体的に告知を受ける必要があり,
また,当該事実を立証する証拠その他の行政庁が保有する証拠について閲覧及び謄写の機会が保障される必要がある。
消費者庁の担当者は,平成29年12月8日,原告の従業員に対し,弁明の機会の付与をする旨の通知をした際,本件措置命令の内容の概要を口頭で説明したにとどまり,消費者庁が保有する証拠について閲覧及び謄写
をする機会を与えず,保有する証拠の内容について説明せず,証拠が存在するか否かについても説明をしなかった。
したがって,消費者庁長官は,原告に対し,本件措置命令に先立って弁明の機会の付与をしたものの,実質的には,原告に弁明の機会の付与をしたものとはいえないから,本件措置命令には,行政手続法13条1項2号
に違反する瑕疵があるというべきである。

消費者庁の担当者は,原告に対し,平成29年12月初旬頃以降,ほぼ連日にわたり,相当量のデータの解析及び提出を要請し,原告も正確な情報を提出すべく準備を進めていたところ,同月4日頃,当時の原告の代理
人であるK(なお,Kは,平成30年8月31日まで,本件における原告の訴訟代理人のうちの1人であったが,同日,原告の訴訟代理人を辞任した者であり,現在の原告の訴訟代理人弁護士らが所属する法律事務所にその頃まで所属していた者である。以下同じ。
)に対し,
正確性を確認するのはその後でもよいから確実に明日の早い段階に報告を行うことを要請し,かつ,原告を調査に非協力的な会社と論難した(甲17。以下本件メールという。詳細は,別紙5のとおり。。原告は,同月8日)

午前9時,本件措置命令の案の交付を受けることとなっていたから,そもそも,事実関係について正確性を確認する時間的猶予は与えられていなかった。
消費者庁の担当者は,消費者庁の要請に誠実に対応してきた原告を殊更に調査に非協力であると論難して萎縮させた上,原告に情報の正確性を確
認する時間的猶予を与えることなく,虚偽を含み得る報告を強制したものであって,本件措置命令は,適正手続の保障を全面的に否定する調査手続を経て行われた違法があり,このような調査手続に基づいて原告その他の者から真実に反し得る報告等を徴収した上で行われたものであって,重大な事実誤認がある。

(被告の主張の要点)

原告は,消費者庁の担当者は,平成29年12月8日,原告の従業員に対し,弁明の機会の付与をする旨の通知をした際,本件措置命令の内容の概要を口頭で説明したにとどまり,消費者庁が保有する証拠について閲覧
及び謄写をする機会を与えず,保有する証拠の内容について説明せず,証拠が存在するか否かについても説明をしなかったから,消費者庁長官は,実質的に,原告に弁明の機会の付与をしたものとはいえず,本件措置命令には,行政手続法13条1項2号に違反する瑕疵がある旨主張する。しかし,行政庁は,弁明の機会の付与の際,不利益処分の名宛人となる
べき者に対し,不利益処分の原因となる事実を証する資料の存否及びその内容を説明し,また,当該資料の閲覧及び謄写に応ずる法的義務を負わない。そして,行政庁が不利益処分の名宛人となるべき者に対して通知すべき不利益処分の原因となる事実は,当該処分の性質,原因事実の内容等を総合的に考慮し,当該処分の名宛人が,予定される処分の原因事実の存否及び内容を確認し,これに対して必要な反論をすることが可能である程度に具体的であることを要するが,それをもって足りるものである。したがって,原告の主張は,失当である。また,本件措置命令に先立つ弁明の機会の付与に関する事実の経過は,次のとおりであり,何らの瑕疵もないから,その意味においても,原告の主張は,失当である。
(ア)消費者庁の担当者は,平成29年12月8日,原告に対し,景表法7
条1項の規定に基づく命令をすることを予定しているとして,行政手続法13条1項2号に規定する弁明の機会の付与をするため,予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項,不利益処分の原因となる事実並びに弁明書の提出先及び提出期限を記載するとともに,予定される措置命令案を別紙に添付した通知書を交付した。

(イ)消費者庁の担当者は,平成29年12月8日,原告の担当者及び代理人弁護士と面談の機会を設け,それらの者に対し,予定される措置命令の原因事実の主要な点について口頭で補足説明をした上,予定される措置命令に関して何か質問があるか,不明点等がないかと質問をしたものの,それらの者はいずれも,特段の質問はない旨を回答したのみであっ
た。また,上記の消費者庁の担当者は,原告の担当者及び代理人弁護士に対し,弁明書の提出期限(同月22日)までに不明点等があれば,随時質問を受け付ける旨を告げたものの,弁明書の提出期限までの間に,それらの者から質問が出ることもなかった。
(ウ)原告は,弁明書の提出期限である平成29年12月22日に先立つ同
月14日,
消費者庁に対し,

不当景品類及び不当表示防止法違反事件に係る貴庁の『予定される措置命令の内容』については,当社としてはこの事態を厳粛に受け止め,弁明はない旨をご連絡申し上げます。と記載

した文書を提出した。

原告は,消費者庁の担当者が,原告に対し,平成29年12月初旬頃以降,
ほぼ連日にわたり,
相当量のデータの解析及び提出を要請し,
原告も,

同月8日午前9時に本件措置命令の案の交付を受けることとなっており,事実関係について正確性を確認する時間的猶予が与えられていなかった中で,正確な情報を提出すべく準備を進めていたところ,同月4日頃,Kに対し,
正確性を確認するのはその後でもよいから確実に明日の早い段階に報告を行うことを要請し,かつ,原告を調査に非協力的な会社
と論難する内容のメールを送付し,消費者庁の要請に誠実に対応してきた原告を殊更に調査に非協力であると論難して萎縮させた上,原告に情報の正確性を確認する時間的猶予を与えることなく,虚偽を含み得る報告を強制したから,本件措置命令には,適正手続の保障を全面的に否定する調査手続を経て行われた違法がある旨主張する。

しかし,次のとおり,原告の主張は,失当である。
(ア)まず,本件措置命令に至るまでの調査の手続の経緯は,次のとおりであって,原告の主張は,事実に反するものである。
a
消費者庁の担当者は,
平成29年5月31日,
本件3商品について,
同年6月21日,本件商品④について,同年8月3日,本件商品⑤について,原告の担当者に対し,それぞれ,報告書様式のデータを添付
し,事実関係について報告書の形式で回答するよう要請した(乙21ないし23)

b
原告は,平成29年7月7日,本件3商品について,同年9月13日,本件商品④及び本件商品⑤について,消費者庁の担当者に対し,
それぞれ,報告書を提出したが,これらの回答は,不十分なものであり,かつ,詳細なものではなかった(乙7,24,25)

c
消費者庁の担当者は,平成29年11月10日,Kに対し,正確な報告を改めて求めたものの,要領を得ない回答がされるにとどまった(乙26)


d
消費者庁の担当者は,平成29年12月4日,Kに対し,速やかな報告を求める趣旨のメール(本件メール)を送信した(甲17)


(イ)前記(ア)のとおり,消費者庁の担当者が,Kに対し,本件メールを送信した平成29年12月4日の時点において,既に,消費者庁の担当者が原告の担当者に対して最初に報告を求めてから4から6か月程度の時間が経過し,正確な報告を改めて求めた時点(平成29年11月10日。前記(ア)c)からでも既に1か月程度が経過していたから,原告には,事実関係について正確性を確認する時間的猶予が十分に与えられていたものである。
(ウ)本件メール中,原告が指摘する記載の趣旨は,次のとおりであることが,その文面上明らかであって,原告の主張は,本件メールの意味内容
を殊更に曲解するものである。
a
本件メールの正確性を確認するのはその後でもよいとの記載の
趣旨は,
前記(ア)のとおり,
原告からの報告が相当に遅れていたところ,
報告を求めている事項が,データを保有する仕入先に確認することにより容易に入手することができる情報であると考えられたことから,事実関係を疎明する客観的情報の取得方法として,確認に時間を要す
る自社データの確認以外の方法を提案するとともに,自社データとの正確性の確認作業自体は,当該方法により取得した情報を提出した後でも良い旨を指摘するところにあり,そのことは,本件メールの全文からも明らかであって,虚偽を含み得る情報を提出することを強制するものでもないことも明らかである。

b
本件メールの調査に非協力的な会社との記載は,
およそすぐに出るはずと思われる販売期間が出てこない,仕入先に確認するなど他の手段を模索することをせず,自社データを探すのを優先してデータ探しが難航する会社であるから,というだけでは,調査に非協力的な会社であるのかと言われてしまうだけで,納得が得られませんという一連の文章の一部を殊更に取り上げたものにすぎない。

(エ)Kが,平成29年12月6日,消費者庁の担当者に対し,消費者庁の担当者から,虚偽の内容を含む報告を直ちに行うよう要請を受けた旨等が記載された上申書(甲18)を提出したことから,上記の消費者庁の担当者の上司に当たる者は,同月7日,Kに対し,同日原告から提出された上申書(乙6)には,事実が記載されているのかという点を電話で
確認したところ,Kから,合理的に推認することができるものも含めて原告として客観的に把握している事実を記載している旨の回答を得ており,原告から報告を受けた内容に虚偽の事実が含まれていないことを確認しているから,消費者庁長官は,本件措置命令に係る調査の手続において原告その他の者から真実に反する報告等を徴収した上で,本件措置
命令をしたものではない。
(5)

争点5(本件措置命令に係る理由の提示に不備があるか否か)について(原告の主張の要点)
不利益処分に係る理由の附記は,行政庁の恣意を抑制する機能,不服申立
ての便宜とする機能等の観点から要求されているから,
本件措置命令書には,
原告が取消訴訟を提起して不服を申し立てるか否か,また,いかなる理由に基づいて不服を申し立てるかについて検討する機会を実質的に保障する程度の具体的な理由が附記される必要があった。
しかし,本件措置命令書には,本件各表示を著しく有利であると一般消費者に誤認されるため,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示であったとしているものの,これは,本件措置命令書に記載された事実関係からは認めることができないものであり,原告は,当該法令の適用がいかなる理由に基づくものであるのかを検討することができない。また,本件表示③が,本件商品⑤の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,不当に顧客を誘引し,自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものであることについての理由の記載もない。
したがって,本件措置命令書における理由の附記には不備があり,本件措置命令は違法なものである。
(被告の主張の要点)


行政手続法14条1項本文が,行政庁が不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し,又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであると解されるところ,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべ
きかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきものと解するのが相当であるとされている(最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁。最以下高裁平成23年判決という。。そして,いかなる事実関係に基づき,い)
かなる法規を適用して処分がされたのかを処分の相手方において,その記載自体から了知し得るものでなければならないと解されている(最高裁昭和49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁)


本件においては,消費者庁長官は,本件措置命令の原因となる事実として,原告が本件各表示に係る表示主体であり,かつ,当該表示が景表法5条2号所定の有利誤認表示に該当することに係る事実関係を詳細かつ具体的に摘示した上で,根拠法令等も明記しているから,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを処分の相手方においてその記載自体から了知し得るものであることは明らかである。
したがって,本件措置命令に係る理由の提示に不備はない。

第3
1
当裁判所の判断
争点1(原告が本件各表示をした事業者であるといえるか否か)について
(1)

景表法上の措置を受けるべき表示の主体

景表法は,商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより,一般消費者の利益を保護することを目的とし(景表法1条),このような目的を達成するために,

事業者は,自己の供給する商品又は役務の取引について,次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

と規定
して(景表法5条柱書き),事業者に対し,不当に顧客を誘引し一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示をすることを禁じている。
以上のような景表法の規定に加え,商品を購入しようとする一般消費者にとっては,通常は,商品に付された表示という外形のみを信頼して情報
を入手するしか方法はなく,そのような一般消費者の信頼を保護する必要があることも踏まえると,表示内容の決定に関与した事業者が,景表法5条2号に該当する不当な表示を行った事業者(不当表示を行った者)に該当するものと解するのが相当である。そして,上記にいう表示内容の決定に関与した事業者とは,自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内
容を決定した事業者のみならず,他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承しその表示を自己の表示とすることを了承した事業者(他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者)及び自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者(他の事業者にその決定を委ねた事業者)も含まれると解するのが相当である。イ
原告は,表示主体性の判断は,具体的な事案を前提としてされるべきものであり,抽象的な規範のみを取り出して安易に適用することはできないところ,前記アの事業者の解釈は,商品の独自の選択及び提供という要素を有するセレクトショップを運営する小売業者についての判断基準であるにすぎず,商品の独自の選択及び提供という要素を有さない原告のような小売業者について適用することはできない旨主張する。

しかし,事業者が商品の独自の選択及び提供という要素を有する事業を営んでいるか否かによって,景表法5条の規定により禁止されている不当に顧客を誘引し公正な競争を阻害するおそれがある表示をする主体自体又はその範囲につき異なる解釈を採るべき根拠は見当たらず,前記アの解釈は等しく妥当するものというべきである。

したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2)

本件における判断

本件においては,原告が,①本件ウェブサイトを運営していること及び②自らも,本件ウェブサイト上で,商品を販売していることの各事実は,
いずれも当事者の間に争いがない。また,当事者の間に争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば,
原告は,
③本件ウェブサイト上に,
いつ,
何を,
どこに,どのように表示をするのかという仕組みを自由に決定することができること,④原告と出品者が同一の商品を販売している場合,当該商品の販売価格は,原告が販売するものは原告が使用するシステムが,出品者
が販売するものは出品者が,それぞれ決定し,原告が使用するシステムがした総合評価の結果に従って,1つの販売者が設定した販売価格が商品詳細ページの中央部分に表示される仕組みを構築していること,⑤原告が販売者となっている商品について,誰も参考価格を入力していない場合にA

は,
当該商品の商品詳細ページには参考価格は表示されない,B■■■■○
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■という仕組みを構築していることの各事実も認められる。

その上で,⑥本件5商品については,いずれも原告が販売者であり,その旨が本件5商品の商品詳細ページにも表示されていたこと(

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との表示がされていたこと。前提
事実(3)ア(エ))も併せ考慮すると,本件においては,原告が,一定の場合に二重価格表示がされるように本件ウェブサイト上の表示の仕組みをあらかじめ構築し,当該仕組みに従って二重価格表示である本件各表示が実際に表示された本件5商品について,原告が,当該二重価格表示を前提とした表示の下で,自らを本件5商品の販売者として表示し,本件5商品を販
売していたのであるから,原告は,本件各表示について,表示内容の決定に関与した事業者といえるのであって,本件各表示の表示者は,原告であると認められる。
(3)
原告の主張に対する判断
ア(ア)原告は,製造事業者や卸業者が商品又は役務の取引について決定した表示をそのまま消費者に伝達した小売業者は,景表法5条が規定する表示をした事業者に該当しないところ,本件各表示における参考価格は,仕入先や出品者が,単独で又は原告以外の者と共同して決定した上で,原告に対し,本件ウェブサイトに表示するよう指図したものであり,原
告は,その指図に従って本件ウェブサイト上に当該表示を機械的に表示したにすぎず,また,別途,小売業者としての表示を,作成又は使用した事実はないから,同条が規定する表示をした事業者には,該当しない旨主張する。
しかし,仕入先又は出品者が入力した参考価格を本件ウェブサイト上に表示するか否かを決定するのは原告であり,
(a)それを機械的に表示す
ることとするか,
(b)何らかの基準の下に選別して表示するものとするか
又は(c)全く表示しないものとするかのいずれの対応を執ることも可能であった(少なくとも,上記の(a)ないし(c)のいずれかにしなければならない旨を原告に義務付ける法令上の根拠は見当たらない。)ところ,原告は,前提事実(2)ウのとおり,その中から1つの情報を,原告が使用
するコンピュータシステムが何らかの基準の下に選別した結果に基づいて本件ウェブサイト上に表示するものとするとの選択をした上で,それに沿う表示に係るシステムを構築した結果,本件各表示については,仕入先又は出品者が入力した参考価格が表示されたものと認められるから,原告は,
本件各表示の表示内容の決定に関与したものというべきであり,

前記(1)アによれば,
景表法5条が規定する表示をした事業者に該当する
ものと認められる。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)原告は,①小売業者であって,商品の希望小売価格等を決定又は変更する立場にはないことに加え,その取扱商品の多さから,個々の取扱商
品の希望小売価格等を判断することができる状況になかったから,本件各表示について,自己が表示内容を決定することができる事業者には該当しない,②仕入先及び出品者に対し,参考価格の入力は仕入先又は出品者の任意によるものであり,かつ,参考価格として表示される情報の入力については,希望小売価格等に該当する価格がある場合に限定した
上,法令を遵守しない商品情報の提供を行わない旨の表明保証を得ており,これに該当しない情報の入力及びその結果としての表示を認めていないから,原告は,表示内容の決定を任せた事業者に該当しない旨主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,原告は,仕入先又は出品者が入力した参考価格の中から1つの情報を,原告が使用するコンピュータシステムが何らかの基準の下に選別した結果に基づいて本件ウェブサイト上に表示するものとするとの選択をした上で,それに沿う表示に係るシステムを構築した結果,仕入先又は出品者が入力した参考価格が表示されたものであるから,本件各表示について,原告が表示内容を決定したものと認められる。また,原告が,①取扱商品の多さから,個々の取扱商品の希望
小売価格等を判断することができる状況になく,②希望小売価格等を左右することができず,又は③法令を遵守しない情報の入力及びその結果としての表示を仕入先又は出品者との間の契約上許容していないとしても,そのことから直ちに,原告が本件ウェブサイトに仕入先又は出品者が入力した参考価格の内容のいかんにかかわらず,それが一定の基準の
下で選別された後にそのまま表示されるようなシステムを必然的に構築せざるをえなかったとはいえず,原告が本件ウェブサイトにいかなる情報を表示するのかを自由に決定することができたことを何ら左右しない(現に,原告が構築した表示に係るシステムにおいては,入力された情報が,法令を遵守しない情報である等の理由により,原告と出品者又は
仕入先との間の契約において,それが入力されることが許容されていないものであったとしても,それが本件ウェブサイト上に表示されるシステムとなっていたところである。から,

原告が上記に指摘する各事情は,
いずれも,
本件各表示の表示者が原告であるとの前記(2)の認定を左右し
ない。

したがって,原告の主張は,採用することができない。
(ウ)原告は,仕入先又は出品者が商品登録の際に参考価格が表示されるように入力した場合,参考価格を当該入力に基づく指図に従って当該商品に係る商品詳細ページに表示しているところ,J,本件商品④出品者又は本件商品⑤出品者が,参考価格を入力した際,原告に対して内容や根拠を説明したことはなく,原告が,当該説明に基づいて参考価格を定めたこともなく,本件5商品についても,上記と同様の取扱いであったから,原告が,本件5商品に係る参考価格欄に登録する価額の決定及び入力について,当該商品の仕入先又は出品者に委ねている事実はない旨主張する。
しかし,原告が参考価格を定めていない又はJ,本件商品④出品者若
しくは本件商品⑤出品者から,参考価格に関する説明を受けていないことの各事実は,いずれも,原告が本件ウェブサイトにいかなる情報を表示するのかを自由に決定することができたことを何ら左右せず,本件各表示が,原告が,仕入先又は出品者が商品登録の際に参考価格が表示されるように入力した場合に参考価格を当該入力に基づく指図に従って当
該商品に係る商品詳細ページに表示するとのシステムを構築するとの決定をした結果であることも左右しない事実であるから,原告が上記に指摘する事情は,
いずれも,
本件各表示の表示者が原告であるとの前記(2)
の認定を左右しない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(エ)原告は,Cが,①原告に対し,本件3商品の参考価格としていかなる数値が表示されているかを理解した上で,元々の定価は参考価格と同額であり,市場価格が下がりすぎているのであって,間違いではない旨を積極的に回答し,Jが入力した参考価格を修正する必要もない旨の認識を明らかにしたために,原告は,本件表示①における参考価格
を修正又は削除することができなかった,②定価とされるものが本件ウェブサイトにおいて参考価格として表示されることを具体的に理解した上で,売上拡大という営業上の意図に基づいて任意に入力していたことが明らかであるなどとして,本件表示①については,原告が表示したものとはいえない旨主張する。
しかし,C又はJが本件3商品の参考価格についていかなる認識を有していたかという事実又はJがいかなる動機の下に本件3商品の参考価格を入力したのかという事実は,原告が本件ウェブサイトにいかなる情報を表示するのかを自ら決定することができることに直ちに影響を与えない事実であるから,仮に,原告が上記に指摘する事情が存在することを前提としたとしても,それらの事情は,いずれも,本件表示①の表示
者が原告であるとの前記(2)の認定を左右しない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
イ(ア)原告は,他のインターネット上の小売業者に関する二重価格表示の事例(甲33)においては,当該小売業者が二重価格表示を可能とする仕組みを構築したにもかかわらず,当該仕組みを利用した出品者が表示
主体であるとされているから,二重価格表示を表示する仕組みを構築したか否かは,表示主体性を判断するに当たって考慮される要素ではない旨主張する。
しかし,証拠(甲33)によれば,原告が指摘する事例においても,消費者庁は,本件ウェブサイトと同様のウェブサイトを運営するインタ
ーネット上の小売業者に対して景表法違反とならないための必要な措置を講じることを要請したという事実関係があったことが認められるにとどまるのであり,消費者庁が,当該ウェブサイトにおける二重価格表示について,当該ウェブサイトを運営するインターネット上の小売業者が当該表示の表示者ではない旨を明らかにしたなどの事実関係が認められ
るものではないから,原告が指摘する事例は,原告の主張するところに沿うものとは認められない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)a原告は,実際の店舗においてされる表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物が物理的に区別されるものの,本件ウェブサイト上の商品詳細ページにおいてされる表示は,仕入先が作成した表示物と小売業者が作成した表示物が区別されず,一般消費者か
ら見ると1枚の画面に溶け込んで一体のものとなるところ,実際の店舗においてされる場合には,仕入先による表示であると評価されるものが,インターネット上においてされる場合には,当該画面を作成したわけではなく,それを構築する仕組みを提供しただけである小売業者による表示であると評価されるのは,インターネット上の小売事業
における表示を過度に規制し,インターネット上の小売業者の責任を加重するものである旨主張する。
しかし,
前記ア(ア)のとおり,
仕入先又は出品者が入力した参考価格
を本件ウェブサイト上に表示するか否かを決定するのは原告であって,前提事実(2)ウのとおり,原告が,その中から1つの情報を,原告が使
用するコンピュータシステムが何らかの基準の下に選別した結果に基づいて本件ウェブサイト上に表示するものとするとの選択をした上で,それに沿う表示に係るシステムを構築した結果,仕入先又は出品者が入力した参考価格が表示されたものである以上,本件ウェブサイト上にある本件各表示を作成したのは原告であると認められるのであって,
これを仕入先又は出品者が作成したものと評価することはできないから,原告の主張は,その前提を異にするものである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
b
原告は,小売業者等に対して販売の場及びこれに伴うサービスを提供しているところ,その一環として,価格表示の仕組みを提供しており,当該価格表示の仕組みを原告も他の出品者も同じように利用しているから,表示は1つであって,その当不当も1つの結論しかあり得ないはずであり,表示の仕組みを構築した者である事業者が同時に販売者となっている場合にのみ,同一の表示を利用している他の販売者と区別して当該表示の仕組みを構築した事業者兼販売者である事業者にのみ不当表示の責任を追及することは,恣意的な法解釈である旨主
張する。
しかし,これまでに判示した本件の事実関係の下においては,本件5商品の仕入先又は出品者が本件各表示を利用して本件5商品の販売をしているわけではなく,本件各表示を利用して本件5商品を販売している主体は原告であるから,本件5商品の仕入先又は出品者が本件
各表示を利用して原告が提供するサービス等を受けているわけではないのであって,原告の主張は,その前提となる事実関係を異にするものである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
2
争点2(本件各表示が実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であったか否か)について

(1)

二重価格表示が有利誤認表示に該当する場合

景表法5条2号は,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費
者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示に該当する表示をしてはならない旨を定めている。
そして,二重価格表示のうちどのようなものが同号に該当するのかを判断する基準として,公正取引委員会は,本件ガイドラインを定めているところ,証拠(乙33)及び弁論の全趣旨によれば,本件ガイドラインは,
消費者団体,小売業の関係団体の代表者等を構成員とする価格表示の在り方に関する懇談会において関係者から意見を聴取したり,実際の事例を収集して分析したりした上で,パブリックコメントも経て定められたものであると認められ,その内容については,一般的な合理性を有するものであると認められる。

本件ガイドラインは,二重価格表示が行われる場合には,比較対照価格として,過去の販売価格,希望小売価格,競争事業者の販売価格等多様なものが用いられている。これらの比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。(本件ガイドライン第4の1(2))と定めた上で,希
望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示について,希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に,製造業者等により設定され,あらかじめ公表されているとはいえない価格を,希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。(本件ガイドライン第4
の3(1)ア)と定めるとともに,
希望小売価格に類似するものとして,製造業者等が参考小売価格や参考上代等の名称で小売業者に対してのみ呈示している価格がある。これらの価格が,小売業者の小売価格設定の参考となるものとして,製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合(製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合は含まない。)には,小売業者が当該価格を比較対照価格に用いて二重価格表示を行うこと自体は可能であるが,希望小売価格以外の名称を用いるなど,一般消費者が誤認しないように表示する必要がある。また,参考小売価格等を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に,製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格を,小売業者が参考小売価格等と称して比較対照価格に用いるときには,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。(本件ガイドライン第4の3(1)イ)と定めている。
(2)
本件における判断

後に掲記する証拠によれば,①Cは,本件3商品の定価をオープンとしており,その旨をカタログにも記載していたこと(乙13,14,29),②本件表示①の比較対照価格として用いられた価格は,Cが社内において,商品管理上便宜的に定め,小売業者から個別の問い合わせがあった場合に,参考上代という名称で回答していた価格であったこと(甲
27,34,乙14,28),③本件表示①の比較対照価格として用いられた価格が記載されたものは,一般消費者向けにも,小売業者向けにもなく,本件ウェブサイト以外では,当該価格を表示したものは存在しないこと(甲34,乙14)の各事実が認められる。
そうすると,本件表示①において表示された参考価格は,参考上代等の名称で小売業者に対してのみ呈示している価格であり(上記①ないし③),かつ,製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合である(上記②)ため,小売業者の小売価格設定の参考となるものとして,製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合に係るものには該当せず(上記①及び③),かつ,製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格であること(上記③)になるから,本件3商品の実際の販売価格よりも高額である上記の価格を参考価格と称して比較対照価格に用いた本件表示
①は,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するものと認めるのが相当である。イ
後に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によれば,①本件商品④のカタログにおいては,本件商品④の希望小売価格が3300円(ただし,消費税等の額に相当する金額を含まないもの。)と記載されていること(乙15,16),②本件表示②における参考価格を入力した出品者が,上記①の希望小売価格(3300円。ただし,消費税等の額に相当する金額を含
まないもの。)を入力するつもりで誤って4640円と入力したこと(乙6,24),③上記②の結果,本件表示②における参考価格として4640円である旨が表示されたこと(甲21,乙24,弁論の全趣旨)の各事実が認められる。
そうすると,本件表示②において表示された参考価格は,事実に基
づかない,客観的には虚偽のものであったことになり,比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合に該当することになるから,本件商品④の実際の販売価格よりも高額である価格を表示した本件表示②は,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するものと認める
のが相当である。

後に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によれば,①出品者が,本件商品⑤の6本セットの商品の参考価格として,
3780円
を入力したこと
(乙
6),②原告が,上記①の後,本件商品⑤の単品の商品を販売することと
したこと(乙6),③原告が,上記②の後,本件商品⑤の6本セットの商品の商品番号を本件商品⑤の単品の商品の商品番号に統合した際,原告が使用するシステム上の過誤により,本件商品⑤の6本セットの商品の参考価格が,本件商品⑤の単品の商品の参考価格として表示されるものとして取り扱われ,本件表示③がされたこと(乙6,弁論の全趣旨)の各事実が
認められる。
そうすると,本件表示③において表示された参考価格は,事実に基づかない,客観的には虚偽のものであったことになり,比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合に該当することになるから,本件商品⑤の実際の販売価格よりも高額である価格を表示した本件表示③は,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するものと認める
のが相当である。
(3)

原告の主張に対する判断
ア(ア)原告は,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれは,抽象的な一般消費者による誤認のおそれを抽象的又は感覚的に論ず
ることによって認定することができるものではなく,健全な常識を有する消費者が各商品について有する知識水準を商品ごとに具体的に認定した上で,表示内容,表示方法等諸般の事実関係を客観的に検討することによって初めて認定することができるものであるところ,本件措置命令においては,そのような事実関係が全く認定されていない旨主張する。
しかし,景表法にいう一般消費者を原告が主張する健全な常識を有する消費者と限定的に解すべき法令上の根拠は見当たらず
(なお,
原告が指摘する裁判例(甲12)においても,健全な常識を備えた一般消費者との記載があるにとどまる。),原告の主張は,その前提を異にするものである。
この点をひとまずおくとしても,
前記(1)のとおり,

本件ガイドラインにおいては,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを認定する際,一般消費者が各商品について有する知識水準を商品ごとに具体的に認定すべきである旨の定めは見当たらず,他に有利誤認表示に該当するか否かを判断する際に,健全な常識を有する消費者が各商品について有する知識水準を商品ごとに具体的に認定す
べきであることを認めるに足りる証拠も見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)原告は,平成12年以降,日本語検索サービスがオンライン上で広く提供されるようになったことから,現代の一般消費者は,オンライン上で数クリックするだけで,労力を要せずに,他のオンライン上の店舗を検索したり,価格等の比較サイトを用いて店舗や商品情報を容易に比較したりすることができるのであって,平成12年当時には予測もつかないような一般消費者による消費行動が当たり前のものとなっているなど,オンライン上の消費行動が加速度的に進化を遂げているから,遅くとも平成12年当時の社会的事実に基づく表示に対する評価が現代におけるオンライン上の表示である本件各表示にも当てはまるとする主張には,
論理の飛躍があり,本件各表示が有利誤認表示に該当するか否かは,現代におけるオンラインでの一般消費者の購買行動を踏まえた上で,本件各表示の具体的な内容及び状況をも踏まえて判断されるべきである旨主張する。
しかし,証拠(乙34ないし39)及び弁論の全趣旨によれば,二重
価格表示を含む価格比較広告が有効な販売促進手段であって,二重価格表示が,一般消費者がある商品を購入するか否かを判断するに当たって参照され得るものであることは,一般的な知見として確立しているものと認められ,原告が上記に指摘するような事情がそれを左右し得るものであるとうかがわれる証拠等も見当たらないから,原告が上記に指摘す
るような事情を前提としたとしても,本件ガイドラインの基礎となる社会的事実の存在を否定するものとはいえず,二重価格表示であることが明らかな本件各表示は,一般消費者が本件5商品を購入するに当たって参照され得るものであると認められる。
その上で,有利誤認表示に該当するためには,一般消費者が,ある表
示により,当該表示された販売価格を有利に感じて当該商品の購入に誘引されるおそれがあると認められれば足り,現実に多数の消費者が誤認したことは,同号の表示に該当するための要件としては不要であると解するのが相当であるから,原告が指摘するような消費行動の違いが,本件各表示に係る表示自体に何らかの改変を加えるものではなく,本件各表示が有する誘引のおそれを直ちに排除するものでもない以上,原告が主張するところを踏まえたとしても,本件ガイドラインの内容が合理的なものであることを左右するものとまではいえず,本件各表示が,有利誤認表示に該当し得ないとも認められない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
イ(ア)原告は,本件表示①における参考価格は,製造事業者であるCの
定価であり,消費者へ提示されるべきものとして原告その他の小売業者に対して提示されていたものであり,本件表示①がされていた期間において,Cが上記の定価とされる価格を消費者に提示されるべき価格として積極的に活用していたから,本件表示①における参考価格には,希望小売価格その他の定価が表示されていたにすぎないとして,本
件表示①は,本件3商品の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,不当に顧客を誘引し,自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかった旨主張し,これに沿う証拠(甲27,34)もある。
しかし,前記(2)アのとおり,Cは,本件3商品の定価をオープン
としてその旨をカタログにも記載しており,本件表示①の比較対照価格として用いられた価格は,
Cが社内において,
商品管理上便宜的に定め,
小売業者から個別の問い合わせがあった場合に,参考上代という名称で回答していた価格であるにすぎず,かつ,同価格を比較対照価格として用いられた価格が記載されたものは,一般消費者向けにも,小売業
者向けにもなく,本件ウェブサイト以外では,表示されたものがなかったというのであるから,本件の証拠関係の下においては,本件表示①の比較対照価格として用いられた価格が,消費者へ提示されるべきものとして原告その他の小売業者に対して提示されていたとは認められない。また,Cが上記の価格を積極的に活用する何らかの意図を有していたとしても,上記のとおり,本件ウェブサイト以外には,当該価格を表示したものは存在しないことに加え,Cの担当者が上記の価格を消費者に提示されるべき価格として積極的に活用していたことを否定していること(乙14,29)にも照らすと,本件の証拠関係の下においては,これを消費者に提示されるべき価格として積極的に活用していたとまでは認め難い。

したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)原告は,Cは,希望小売価格に入力した情報(原告に定価として通知していた実際には参考上代であった価額)が参考価格とし
て一般消費者に表示されることを十分に理解し,
参考上代
を示して当
該価額からの割引率を示してお得感を訴求する売上拡大の意図も有して
いたとして,本件表示①における参考価格と称する価額は,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていないものであったとの消費者庁長官がした認定が誤りである旨主張し,これに沿う証拠(甲27,34)もある。
しかし,証拠(甲34)によれば,原告の担当者がCの担当者から聞
いたところとして認識した内容は,①本件ウェブサイト上に表示されていた参考価格を対外的に記載したものは,消費者向けにも小売業者向けにも共になく,本件ウェブサイト以外で参考価格の表示はしていない,②これらの価格の根拠は,社内データとしての参考上代の価格である,③本件ウェブサイトの商品情報登録画面に参考価格を入力したのは,当
該入力がないとセールを実施したときに割引率が表示されず,通常時より割引しているにもかかわらず,特に単価の安い文房具は,お得感が訴求できないためであるという趣旨のものであると認められ,Cの主観的な認識としては,本件表示①における参考価格が,Cが社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり,一般消費者への提示を目的としていないものであったとしても,矛盾はない(上記①及び②参照)から,これを前提とした消費者庁長官の認定が誤りであるとは認められない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

原告は,本件表示②における参考価格は,本件商品④の出品者が,製造事業者が作成した商品カタログに記載された希望小売価格に基づいて参考価格を入力する際に過誤が生じた結果のものであるところ,本件商品
④に係る商品詳細ページには,本件商品④の定価が3300円(消費税等の額に相当する金額を加算した後の価格が3564円)の商品である旨のカスタマーレビューが掲載されており,他の同商品詳細ページを閲覧する者は,当該カスタマーレビューを閲覧することにより,本件表示②における参考価格が過誤に基づく表示であることを確信することができたか
ら,本件表示②は,本件商品④の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,不当に顧客を誘引し,自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかった旨主張する。しかし,カスタマーレビューは,その性質上,一般消費者が自由に書き込んだ意見又は感想であり,その記載の真実性が担保されていることを認
めるに足りる証拠はないから,一般消費者が,本件表示②における参考価格に関するあるカスタマーレビューを閲覧したことにより,当該参考価格が過誤に基づく表示であることを確信することができたものとは認め難い。また,証拠(甲14)によれば,被告が指摘するカスタマーレビューは,平成29年4月29日に投稿されたものであることが認められ
るところ,前提事実(3)ア(イ)のとおり,本件表示②は,平成28年9月5日からされていたものであるから,その意味においても,当該カスタマーレビューの存在により,本件表示②が有利誤認表示に当たり得ないとは認められない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
エ(ア)原告は,本件商品⑤について製造事業者がそのウェブサイトに掲載している希望小売価格は,1本当たり713円(消費税等の額に相当する金額を含む。
)であるところ,本件商品⑤と同種の商品(E)を購入することを検討する消費者は,健全な常識を有する一般消費者である限り,Eの希望小売価格が一般的に上記の価格の程度のものであるという常識や知識を有しているから,システム上の過誤によって表示された本件表
示③における参考価格のような桁違いの価格の表示は,Eを購入することを検討する健全な常識を有する消費者であれば,当該表示が過誤によるものであることを認識することができるものであって,当該表示が顧客を誘引する性質のものとはいえない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件商品⑤と同種の商品(E)を購
入することを検討する一般消費者(なお,景表法上の一般消費者を原告が主張する健全な常識を有する一般消費者と解すべき法令上の根拠が見当たらないのは,前記アと同様である。)が,Eの希望小売価格が一般的に1本当たり713円
(消費税等の額に相当する金額を含む。

の程度のものであるという常識や知識を有していることを認めるに足り
ない(なお,証拠(乙17)によれば,本件表示③がされた平成29年には,本件ウェブサイトにおける本件商品⑤の最安値が,1000円を超えていた期間が相当程度の間存在し,それが2000円を超えることもあったと認められる。また,本件調査及び本件分析については,後に個別に検討する。から,

原告の主張は,
その前提を異にするものである。

したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)原告は,本件表示③は,合計1か月程度という短い期間表示されたにとどまり,これが表示されていた期間においても,本件商品⑤の売上高及び本件商品⑤に係る商品詳細ページの閲覧数が原告の飲料の販売に係る売上高及び商品詳細ページの閲覧数に占める割合は,いずれも極めて僅少(売上高につき■■■■■■■■■%,閲覧数につき■■■■■■■%)であったから,本件表示③は,本件商品⑤の購入を検討する一般消費者に実際のものよりも著しく有利であると誤認され,不当に顧客を誘引し,自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを有するものではなかった旨主張する。
しかし,表示期間,当該表示に係る商品の売上げが全体の売上げに占
める割合又は当該表示に係る表示の閲覧数が全体の閲覧数に占める割合が,ある表示が有利誤認表示に該当するための要件となっていることを認めるに足りる法令上の根拠は見当たらないから,原告の主張は,前記(2)の認定及び判断を左右しない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)原告は,本件調査及び本件分析を前提に,本件表示③が有利誤認表示には該当しない旨を主張するから,検討する。
a
本件調査の概要は,前提事実(5)のとおりであるところ,証拠(甲31,35)によれば,本件分析は,本件調査の結果を前提として,(あ)(あ)健全な常識を有する一般消費者は,通常,本件表示③を含む
商品詳細ページだけではなく,様々な情報源から参考となる情報を収集しており,本件商品⑤の価格のみならず,他のEも含めたEの一般的な価格水準がどの程度のものかについて十分な常識や知識を有していたといえる,(い)(い)本件グループ①と本件グループ②の購入したいと思うとの回答比率の差異に係るp値が0.
056であり,
購入したいと強く思う及び購入したいと思うを併せた回答比率の
差異に係るp値が0.
053であったから,
有意水準を1%とすると,
統計的に有意な差異はなく,有意水準を5%としても統計的に有意な差異はないといえる,(う)(う)上記(い)(い)を前提とすると,本件表示③の有無によって,本件商品⑤を購入したいと思う又は購入したいと強く思うと回答した者の割合に有意な差異が生じなかったことが判明したところ,これは,一般消費者が本件商品⑤を購入する
際に本件表示③を参考としていないことを示唆するものであるなどの結論を導く内容のものと認められる。
b
その上で,前提事実(5),証拠(乙30,34)及び弁論の全趣旨によれば,本件調査及び本件分析には,次のような問題点があることが
認められる。なお,原告は,上記の証拠(乙30)の信用性を争うが,本件全証拠によっても,上記の証拠(乙30,34)の内容の真実性に疑いを生じさせる事情は見当たらないから,原告の主張は,採用することができない。
(a)本件調査は,消費者の実際の購買行動で現実に示された効用の選
択の結果ではなく,仮定の条件提示の下で行われた仮想的な効用の選択の結果にすぎず,そもそも,分析して結論を導こうとするに当たってエビデンスとしての価値が一段階低いものである上,バイアスもかかりやすいため,情報提供の仕方次第で人間の認知や行動が変わるというフレーミング効果に注意するなど,質問の設定や集計
した回答の分析において慎重な配慮が求められるところ,本件調査においては,被験者が選択に困難を覚える強制的選択(被験者に無理な想定を押し付けて選択を強いる実験の設計をすること)
を避け,
どの選択も選択しない選択肢を入れるなどの被験者のバイアスを抑える工夫が全くされていない。

(b)本件調査の質問文には,

あなたが,画像のEをアマゾンで購入することを検討していると想定してください。

という文言が挿入されているところ,これは,購入したいと強く思う又は購入したいと思うとの回答を増やす方向でのバイアスをかけてしまうおそれがあり,かつ,このバイアスが本件グループ①又は本件グループ②のそれぞれにどの程度の介入効果を与えるかが不明であり,また,両グループに全く同じ影響しか与えないという保証もないから,回答者に対して不当な誘導をすることになる。
(c)本件調査は,実際の販売価格(956円)に比較対照価格(3780円)を併記する二重価格表示が一般消費者の認識に与える影響を確認する目的でされたものであるところ,
本件調査の質問文には,

このEは,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあると想定してください。という文言が挿入されており,

両グループともに,一ヶ月くらい前には,2000円程度で販売されていたこともあるという情報
(外的参照価格)
に影響されて,
実際の販売価格(956円)が2000円という価格と比較し

て有利に感じるおそれがあるため,3780円という比較対照
価格の表示の影響を減殺し,両グループ間の差がなくなる方向に寄与してしまうおそれがあるほか,回答者の価格判断に予測不可能なバイアスを与えているのであり,上記の目的をわざわざ判別しにくくする情報を挿入するものというべきであって,回答者に対して不
当な誘導をすることになる。
(d)本件調査の対象物であるEは,これを購入して消費しようとする関心層自体が限定的な商品であるという特性を有しており,現に,本件調査においても,あまり購入したいとは思わないと全く購入したいとは思わないの回答比率の合計が,本件グループ①に
おいても本件グループ②においても,70%台に上っている。しかも,これは,前記(b)のとおり,購入したいと強く思う又は購入したいと思うとの回答を増やす方向でのバイアスがかかっているおそれがある状況下での回答であるから,関心層が実際よりも水増しされている可能性があり,実際の無関心層は,更に多い可能性も否定できない。
また,本件分析において確認すべきなのは,一般消費者が,本件
グループ①の場合に,
本件グループ②の場合と比較して有利に感じ,
本件商品⑤を購入する方向に誘引される可能性があるか否かであるが,Eのような関心層自体が限定的な商品の場合には,二重価格表示の影響を受けにくい無関心層の認識に与える影響を見てもあまり
意味がなく,二重価格表示が関心層に与える影響を確認すべきである。Eに関心がない人に無理な想定を押し付けて強制的選択を強いたところで,信頼できる回答は得られず,無意味であるから,電子商取引によりEを購入することに関心がありながらEの価格について十分な知識を持たないような消費者層を選定する必要があり,そ
のような被験者を選定するためのスクリーニング調査を実施すべきであったが,本件調査においては,そのようなスクリーニングが実施された形跡はない。
そうすると,本件調査におけるサンプルサイズが,表面的には4
000名を超えるものであるにもかかわらず,真に分析に貢献する
関心層の回答は,1000名に満たない数である可能性が高く,本件分析に係る分析結果の統計的信頼度が著しく低下し,4000名というサンプルサイズから想定される水準の半分以下の統計的信頼度しか有さないこととなる。
(e)本件分析によれば,本件グループ①と本件グループ②の購入したいと思うとの回答比率に係るp値が0.056であり,購入したいと強く思う及び購入したいと思うを併せた回答比率に係るp値が0.
053であったところ,
これらは,
有意水準を10%
とすると統計的に有意な差異があると認められ,有意水準を5%としたとしても,おおよそ統計的に有意な差異があると評価することも可能な数値である(なお,消費者利益保護の立場からすると,有意水準は5%又は10%と設定するのが望ましい。)から,本件分
析は,飽くまでも,有意水準を1%に設定している結果,本件グループ①と本件グループ②との間で本件商品⑤を購入したいという回答比率に差異がないという仮説(本件仮説①)が棄却されないという結果になっているにとどまる。
(f)本件仮説①が棄却されないという結論をとるとしても,そのこと
から直ちに,本件仮説①が正しいと結論することはできず,十分な検定力(例えば,検定力0.95)を持った検定を経て初めて当該結論をとることができるところ,
本件分析においては,
検定力は0.
8と一番緩い水準で設定されているにとどまっているほか,効果量についても,具体的な実例に即することなく,手引書から直ちに数
値を適用するにとどまっており,根拠が薄弱であって,厳密な分析とはいえない。
c
前記b(a)ないし(d)のとおり,本件調査には,①被験者のバイアスを抑える工夫がされていない,②質問文に,回答者に対して不当な誘
導をする効果を有する文言が複数含まれている,③サンプルサイズとの関係で,統計的信頼度が低いという問題点があり,これに加え,④そもそも,仮定の条件提示の下で行われた仮想的な効用の選択の結果にすぎず,エビデンスとしての価値も相対的に低いことを併せ考慮すると,本件調査の結果は,基本的に信頼性に乏しいものと評価せざる
を得ない。
そうすると,信頼性に乏しい本件調査の結果に依拠してされた本件分析も,基本的には,信頼性に乏しいものと評価せざるを得ないものである上,この点をひとまずおいたとしても,前記b(e)及び(f)のとおり,本件分析は,(あ)(あ)有意水準を1%に設定した結果のものであり,他の有意水準を前提とすると,異なる結果となる可能性もあること,(い)(い)検定力を最も緩い水準に設定しており,本件仮説①が
正しいとの結論をとるには不十分な検定がされているにとどまっていること,(う)(う)効果量を具体的な実例に即することなく手引書の数値をそのまま用いて設定しており,厳密な分析を可能とするものとはいえないことに照らすと,本件分析自体,その手法等に問題があり,信頼性に乏しいものと評価せざるを得ないものというべきである。
d
以上によれば,本件調査及び本件分析の結果を前提とした原告の個別の主張の当否を個別的に判断するまでもなく,本件調査及び本件分析に依拠した原告の主張は,
前記(2)ウの認定及び判断を左右するもの
とはいえず,採用することができない。

3
争点3
(消費者庁長官が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の有無)について

(1)

製造事業者,仕入先又は出品者のみを対象とすべき旨の原告の主張の当否ア
原告は,本件各表示は,希望小売価格その他の定価に係る表示に関するものであり,
これが有利誤認表示に該当するのであれば,
製造事業者,

仕入先又は出品者に対してその是正を命ずることが直截的であり,原告に対して措置命令をする必要性がないから,原告のみを名宛人としてされた本件措置命令は,必要性を欠くものであって,消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用するものである旨主張する。しかし,これまでに判示したところを前提とすると,製造事業者,仕入
先又は出品者は,いずれも本件各表示の一部を成す表示の前提となる行為をしたものであるにすぎず,それらの者の行為が,直ちに本件各表示として具現化したわけでも,本件各表示をすることを決定したわけでもないのであって,飽くまで,原告が構築し,運営しているシステムが適用された結果として,本件各表示がされる旨が決定され,実際に本件各表示がされたものであるから,このような事実関係を前提とする限り,製造事業者,仕入先又は出品者に対してその是正を命ずることが直截的であるとはい
えない。また,これまでに判示したところによれば,原告に対して措置命令をする必要性がないとも認め難い。
したがって,原告の主張は,その前提を異にするものであって,採用することができない。

原告は,仮に,原告が本件各表示を表示した者に該当するとすれば,原告その他のインターネット上の小売業者は,個々の商品について膨大な数の仕入先及び出品者の入力する情報の正確性を個別に精査して根拠を確認するという不可能を強いられることとなり,現実的な方法としては,商品情報の大部分を削除して一般消費者に対して表示されないようにするほか
ないから,本件措置命令は,インターネット上の小売業者に対して遵守不可能な規制を課すものであり,インターネット上の小売業者による商品情報の提供に対して強烈な萎縮効果をもたらし,同事業の健全な発展を大きく阻害するとともに,一般消費者を商品情報へのアクセスから隔離してその利益を害するものである旨主張する。

しかし,インターネット上の小売業者に対し,商品を販売する際に二重価格表示をすべきことを義務付けた法令上の規定は見当たらない上,小売業者が,インターネット上で自ら商品を販売する際の当該商品の情報に係る表示について,法令に適合した情報を表示すべき義務を負わない旨又は法令に適合した情報を表示すべき義務が免除される旨の法令上の規定も
見当たらない。また,本件全証拠によっても,本件措置命令がインターネット上の小売業者に対して遵守不可能な規制を課すものであることをうかがわせる事情等(なお,原告は,抽象的に上記のように主張するのみであって,本件措置命令を遵守することが不可能である具体的な理由,事情等は,何ら主張立証しないところである。
)は見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2)

平等原則違反である旨の原告の主張の当否
原告は,消費者庁長官は,製造事業者,仕入先又は出品者に対して措置を命ずることが直截であって,一般消費者の保護にもよりよく資するにもかかわらず,それらの者に対して措置命令をすることなく,あえて原告に対してのみ本件措置命令をしたことは,不当な選別的執行であって,平等原則に違反するものである旨主張する。

しかし,前記(1)のとおり,原告の主張は,その前提を異にするものである上,
本件のような事案において,
消費者庁長官が,
法令上,
製造事業者,
仕入先又は出品者に対して措置命令を発出すべき義務を負う旨の規定も見当たらない。また,本件全証拠によっても,他に,消費者庁長官が,差別的意図をもって特に不利益性の高い内容の措置命令を発出したなどの
平等原則に違反して本件措置命令を発出したことをうかがわせる事情等も見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

原告は,原告の行為は,本件ウェブサイトというインターネット上の店舗の仕組みを構築し,仕入先又は出品者がその内容を決定して提供した参考価格等の商品の情報を,当該内容の決定に何ら関与することなくそのまま並べておいたものにすぎないのであり,そのような仕組みを構築及び運営していることのみを理由として,製造事業者又は出品者が提供する情報の表示に係る責任を追及されるとすれば,インターネット上の小売業者に
おける表示を過度に規制し,責任を加重するものである旨主張する。しかし,これまでに判示したとおり,原告の行為が,仕入先又は出品者がその内容を決定して提供した参考価格等の商品の情報をそのまま並べておいたものにすぎないとは認め難いから,原告の主張は,その前提を異にするものである。また,これまでに判示したところに加え,本件ウェブサイト上の商品詳細ページの表示をどのように構成するか,どのような内容を表示するか等,その内容を全て決定しているのは,本件ウェブサイト
を運営している原告であることにも照らすと,インターネット上の小売業者である原告に対して本件措置命令をすることにより,インターネット上の小売業者における表示を過度に規制し,責任を加重するものであるとも認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。


原告は,1つの表示につき,当該表示の仕組みを構築しただけでは表示の責任は問題とならず,また,当該表示を利用する他の販売者についても何ら問題とならないにもかかわらず,表示の仕組みを構築した者である事業者が同時に販売者となっている場合にのみ,同一の表示を利用している
他の販売者と区別して,当該表示の仕組みを構築した事業者兼販売者である事業者にのみ不当表示の責任を追及することは,小売業者等に販売の場を提供する事業者の小売事業を過度に制約し,萎縮させるものであって,公正な競争が阻害され,
消費者の利益を害する結果を招来しかねないから,
本件措置命令は,インターネット上の小売業者を不当に差別し,かつ,イ
ンターネット上の販売の場に不要な制約を課すものであり,平等原則に違反するものである旨主張する。
しかし,これまでに判示したところに加え,原告が,情報を表示する場を提供するだけではなく,当該場を用いて自らの事業に係る情報を表示したという事実関係を前提とする限り,原告に対して本件措置命令をするこ
とが,小売業者等に販売の場を提供する事業者の小売事業を過度に制約し,萎縮させるものであって,公正な競争が阻害され,消費者の利益を害する結果を招来しかねないとは認め難い(なお,原告は,抽象的に上記のように主張するのみであって,原告が本件措置命令を受けることにより,小売業者等に販売の場を提供する事業者の小売事業を過度に制約し,萎縮させるものであって,公正な競争が阻害され,消費者の利益を害する結果を招来しかねないことを裏付ける具体的な事情等は,何ら主張立証しないとこ
ろである。。

したがって,原告の主張は,その前提を異にするものであって,採用することができない。
(3)

本件措置命令をする必要性に関する原告の主張の当否
原告は,本件各表示は,いずれも課徴金納付命令の対象とされるものでは
なく,かつ,既に取りやめられているにもかかわらず,本件措置命令をしたことは,原告に対する重大な民事的制裁をもたらすものであるから,消費者庁長官は,命令の必要性を欠く処分をしたものであって,その有する裁量権を濫用したものである旨主張する。
しかし,課徴金納付命令の対象とされるものではないもの又は既に取りや
められているものについて,措置命令を発出することができない旨の法令上の根拠は見当たらず(景表法7条1項柱書き後段も参照)
,また,それらのも
のについて,措置命令を発出することが必要性を欠くものであるとも直ちには,認め難い。また,原告は,上記の点を超えて,本件措置命令が必要性を欠くものであることを裏付ける具体的な事情等を何ら主張立証しない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(4)

まとめ
以上のもののほか,本件の証拠関係の下においては,本件措置命令が,消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用してされたも
のであることを認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件措置命令は,消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用してされたものであるとは認められない。
4
争点4(本件措置命令を発出する手続の適法性)について

(1)

弁明の機会の付与に係る瑕疵の有無
原告は,消費者庁の担当者が,平成29年12月8日,原告の従業員に対し,弁明の機会の付与をする旨の通知をした際,本件措置命令の内容の概要
を口頭で説明したにとどまり,消費者庁が保有する証拠について閲覧及び謄写をする機会を与えず,保有する証拠の内容について説明せず,証拠が存在するか否かについても説明をしなかったから,実質的には,原告に弁明の機会の付与をしたものとはいえないのであり,本件措置命令には,行政手続法13条1項2号に違反する瑕疵がある旨主張する。

しかし,行政庁が,弁明の機会の付与をする際,不利益処分の名宛人となるべき者に対し,当該行政庁が保有する証拠について閲覧及び謄写をする機会又は当該行政庁が保有する証拠の内容若しくは証拠の存否についての説明を受ける機会のいずれか又は双方の機会を与えなければならない旨を規定する法令上の根拠は見当たらないから,原告の主張は,その前提を異にするも
のである。そして,本件全証拠によっても,消費者庁長官が原告に対してした弁明の機会の付与が,同号に違反するものであったことをうかがわせる事情等は見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2)

本件メールの適正

原告は,消費者庁の担当者が,Kに対し,本件メールを送付したことを捉え,消費者庁の担当者が,消費者庁の要請に誠実に対応してきた原告を殊更に調査に非協力であると論難して萎縮させた上,原告に情報の正確性を確認する時間的猶予を与えることなく,虚偽を含み得る報告を強制した
から,本件措置命令には,適正手続の保障を全面的に否定する調査手続を経て行われた違法があり,このような調査手続に基づいて原告その他の者から真実に反し得る報告等を徴収した上で行われたものであって,重大な事実誤認がある旨主張する。

後に掲記する証拠によれば,次のような事実関係が認められる。
(ア)消費者庁の担当者は,
原告の担当者に対し,
①平成29年5月31日,

本件3商品について,
本件表示①を行っていた期間,参考価格」
の根拠,表示の決定過程,本件3商品の販売期間等を,同年6月15日までに別添の様式によって報告することを求める内容のメールを,②同月21日,本件商品④について,本件商品④の販売期間,本件表示②を行っていた期間,「参考価格の根拠,表示の決定過程等を別添の様式によって報告
することを求める内容のメールを,③同年8月3日,本件商品⑤について,本件商品⑤の販売期間,本件表示③を行っていた期間,参考価格
の根拠,表示の決定過程等を,同月17日までに別添の様式によって報告することを求める内容のメールを,それぞれ送付した(乙21ないし23)


(イ)消費者庁の担当者は,平成29年11月10日,Kに対し,同月13日を回答期限として,複数の事実関係に関する回答を求める内容のメールを送信した(乙26)

(ウ)消費者庁の担当者とKとの間では,その後もやり取りが続いていたところ,Kは,平成29年12月4日,消費者庁の担当者に対し,

在庫等データについて社内調査に着手しましたところ,その結果がなお集計できておりませんので,集計が可能であることが判明し,かつ集計が完了した場合には,おって御報告することとしております。などと記載した

メールを送信した(甲17)

(エ)消費者庁の担当者は,平成29年12月4日,Kに対し,本件メール
を送信した。
なお,
本件メールの全文は,
別紙5のとおりである。
(以上,
甲17)
(オ)Kは,平成29年12月6日,消費者庁の担当者に対し,
当職は,貴職が担当する貴庁による景品表示法違反被疑事件に係る調査手続に対応しておりますところ,貴職から,虚偽の内容を含む報告を直ちに行うよう要請を受けましたので,このことについて別紙のとおり上申します。,検討の時間的猶予を与えることなく関係人に対して虚偽報告を要請し,もって不当な審査結果を追求されることは即刻取りやめていただきたく,本書をもって申し入れます。また,かかる要請を経て今後行われる貴庁の御判断は違法の瑕疵を帯びることとなりますので,その旨申し添えます。等と記載された上申書を提出した(甲18)。なお,上記の上

申書の詳細は,別紙6のとおりである。
(カ)原告は,平成29年12月8日,消費者庁の担当者に対し,回答を求められていた内容に対する回答等を記載した上申書と題する文書を提出した(乙6)
。消費者庁の担当者は,同日,Kに対し,当該上申書の
内容に虚偽の事実が含まれているか否かを確認したところ,Kは,合理
的に推認することができるものも含めて原告が客観的に把握している事実を記載した旨の回答をした(弁論の全趣旨)

(キ)消費者庁長官は,平成29年12月8日,原告に対し,本件措置命令に先立って弁明の機会の付与をすることとし,予定される措置命令の内容等,弁明の方法,弁明書及び証拠の提出期限(同月22日)を通知し
た(乙19)
。原告は,同月14日,消費者庁に対し,上記の予定される
措置命令の内容については,

当社としてはこの事態を厳粛に受けとめ,弁明はない旨をご連絡申し上げます。と記載された文書を提出した

(乙
20)

ウ(ア)前記イの事実によれば,①消費者庁の担当者がKに対して本件メール
を送信した時点において,原告に対する報告をメールで求めてから少なくとも4か月が経過していたこと,②Kが,本件メールに先立ち,消費者庁の担当者に対し,
在庫等データについて社内調査に着手したものの,
その結果が集計できていないことを理由に,直ちに報告することができない旨のメールをしたこと,③本件メールは,上記②のメールを受け,消費者庁の担当者が,原告に対して報告を求めている情報が販売期間等のすぐに出てくると認識している情報であり,かつ,原告の社内のデータを集計すること以外の方法によっても,原告が早期に報告をすることが可能であるとの認識を前提に,早期に報告をするよう求める趣旨のメールであること,④原告は,本件メールが送信された4日後には,消費者庁の担当者に対し,報告内容をまとめた文書を提出したところ,当該
文書の内容に誤りは含まれていないと原告自身も認識していること,⑤原告は,本件措置命令に先立つ弁明の機会の付与の際,調査過程に問題があったなどの主張を全くしていないことの各事実が認められる。(イ)以上の事実経過,特に前記(ア)の①,③,④及び⑤を前提とすると,消費者庁の担当者が,原告に対して報告を初めて求めてから本件メールが
送信されるまでの間に少なくとも4か月が経過しており,報告を求めた内容も,少なくとも4か月では当該情報を正確に把握することが困難であるとは認められないものである(なお,原告は,なぜに,Ⓐ少なくとも4か月では正確な情報を把握し,確認するのに不足であるのか,Ⓑデータの調査を開始したのが平成29年12月頃となったのか,Ⓒ他の方
法によって情報を収集することができないのかについて,何ら具体的な主張立証をしないところである。
)ところ,原告は,実際には,本件メー
ルが送信されてから4日後には,原告が正確な情報であると認識している情報を消費者庁の担当者に報告することができ,かつ,調査手続について,本件措置命令に係る弁明の機会の付与の際に何らの不服等も述べ
ていなかったから,消費者庁の担当者が,原告に対し,情報の正確性を確認する時間的猶予を与えていないとは評価し難いものである。
(ウ)a原告は,
確実に明日の早い段階には報告及び正確性を確認するのはその後でもよいとの本件メールの文言をもって,原告に対して虚偽を含み得る報告を強制したものである旨主張する。
しかし,文章の趣旨は,特定の文言だけではなく,その前後のつながりや文章全体の文脈も踏まえて解釈すべきものであり,特定の文言
を部分的に切り取って取り出した上で解釈すべきものではないところ,消費者庁の担当者は,データを探す作業が難航されているようであればという前提の下,
最も早い手段を選択することを求め,それを
前提に,確実に明日の早い段階には報告いただける手段を選択してくださいとの要望を伝える趣旨で,本件メールに確実に明日の早い段階には報告と記載したものであるから,
確実に明日の早い段階には報告との文言を,虚偽を含み得る報告を強制する趣旨のものであるとは解し難いというべきである。
また,消費者庁の担当者は,上記に引き続き,
在庫管理をしていると思われる仕入業者に確認すれば,商品,期間が特定されていますし,すぐに出てくる話かと思われますと記載し,原告のデータから抽出する作業以外に正確な情報を短時間で把握することができる具体的な方法を示した上で,自社の販売データ等を探して正確性を確認するの

はその後でもよいのではないかと思われます。と記載したものであり,

その後でもよい
と断定的に記載していないことも踏まえると,
正確性を確認するのはその後でもよいとの文言を,虚偽を含み得る報告を強制する趣旨のものとは解し難いというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
b
原告は,
本件メールの
調査に非協力的な会社
との文言を指摘し,
消費者庁の担当者が,原告を殊更に調査に非協力であると論難して萎縮させた旨主張する。
しかし,
本件メールの原告が指摘する文言の前には,
膨大なデータから膨大な事項を抽出しなければならないなどとても不可能であるとの合理的な事情があるのならいざしらず,およそすぐに出るはずと思われる販売期間が出てこない,仕入先に確認するなど他の手段を模索することをせず,自社データを探すのを優先してデータ探しが難航する会社であるから,というだけではとの文章があり,その後に調査に非協力的な会社であるのかと言われてしまうだけで,納得が得られませんとの文章が続いているところ,本件全証拠によっても,原告に,Ⓐ膨大なデータから膨大な事項を抽出しなければならないなど
とても不可能であるとの合理的な事情,Ⓑ販売期間に係るデータを示すことができなかった合理的な理由,Ⓒ仕入先に確認するなど他の手段を模索することができなかった合理的な理由又はⒹ自社データを探すのを優先せざるを得ない合理的な理由があったことを認めるに足りる事情等は見当たらない(原告も,上記ⒶからⒹまでの事実につき,
何ら具体的な主張立証をしない。
)上,
調査に非協力的な会社であるのかと言われてしまうだけで,納得が得られませんとの文章自体,調査に非協力的な会社という評価を断定的にしているとまでは解
し難いことも踏まえると,
調査に非協力的な会社との文言を,原告
を殊更に調査に非協力であると論難して萎縮させる趣旨のものとは解
し難いというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(エ)以上によれば,原告の主張する本件メールの文言をもって,消費者庁の担当者が,原告に対し,情報の正確性を確認する時間的猶予を与えていないとも,虚偽を含み得る報告を強制したものとも,原告を殊更に調
査に非協力であると論難して萎縮させたものとも解し難いというべきである。

したがって,本件措置命令には,適正手続の保障を全面的に否定する調査手続を経て行われた違法がある旨の原告の主張は,その前提を異にするものであって,採用することができない。
なお,原告は,本件措置命令には,重大な事実誤認がある旨も主張するが,本件において,本件メールのいかなる文言を根拠に本件措置命令に重
大な事実誤認があるのか,本件メールの後に原告がしたいかなる報告を前提とした本件措置命令における事実認定に重大な事実誤認があるのか,何ら具体的な主張立証をしておらず,これまでに述べたとおり,消費者庁長官が,本件措置命令の前提となる重要な事実を誤認したとも認められないから,原告の主張は,採用することができない。

(3)

まとめ
以上のもののほか,本件の証拠関係の下においては,本件措置命令を発出するに至る手続に違法の瑕疵があったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件措置命令を発出するに至る手続に違法の瑕疵があったとは認められない。

5
(1)

争点5(本件措置命令に係る理由の提示に不備があるか否か)について理由の提示の意義等
行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し
又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基
準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(以
上,最高裁平成23年判決参照)
(2)

本件における理由の提示の不備の有無
消費者庁長官が,
本件措置命令をした際,
原告に対してした理由の提示は,
別紙4のとおりであるところ,それを前提とすると,消費者庁長官は,原告の概要をまず示すとともに,本件ウェブサイトにおける価格の表示の仕組み
の概要及びその決定者を示すことによって,本件各表示を表示した主体が原告であることを,本件各表示の概要を示すことによって,本件各表示が景表法5条2号が規定する有利誤認表示の要件を満たすものであることを,それぞれ記載していることが認められる。
したがって,これらの記載を全体的に見ると,本件措置命令の性質及び内
容を総合考慮しても,上記の理由の提示は,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨を満たすものとして,行政手続法14条1項の規定により不利益処分をする際に提示すべき理由の程度として,同法の要請を少なくとも必要最小限度は満たしているものと認めるのが相当であり,不
利益処分における理由の提示として不備があるものということはできない。これに反する原告の主張は,上記に判示したところに照らし,採用することができない。
6
結論
以上のもののほか,本件措置命令が違法なものであることをうかがわせる事
情等は見当たらないから,本件措置命令は,適法である。
よって,原告の請求は,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官

野真敬
裁判官

福渡裕貴
裁判官

鎌獅野裕介子
別紙2
関係法令等の定め

1
(1)

景表法の定め
景表法1条(目的)の定め
景表法1条は,景表法は,商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示(顧客を誘引するための手段として,事業者(商業,工業,金融業その他の事業を行う者のこと。以下同じ。)が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって,内閣総理大臣が指定するもの。以下同じ。)による顧客の誘引を防止
するため,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより,一般消費者の利益を保護することを目的とする旨を定めている。
(2)

景表法5条(不当な表示の禁止)の定め
景表法5条柱書きは,事業者は,自己の供給する商品又は役務の取引につい
て,次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない旨を定めている。2号

商品又は役務の価格その他の取引条件について,実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
その余の号
(3)

(略)

景表法7条1項の定め
景表法7条1項柱書きは,内閣総理大臣は,景表法4条の規定による制限若
しくは禁止又は景表法5条の規定に違反する行為があるときは,当該事業者に対し,その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができ(前段),その命令は,当該違反行為が既になくなっている場合においても,次に掲げる者に対し,することができる(後段)旨を定めている(以下,景表法7条1項の規定に基づく命令を措置命令という。)。
1号

当該違反行為をした事業者

2・3号
4号

(略)

当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者

(4)

景表法33条(権限の委任等)1項の定め
景表法33条1項は,内閣総理大臣は,景表法による権限(政令で定めるも
のを除く。)を消費者庁長官に委任する旨を定めている。
2
不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(平成12年6月30日付け公正取引委員会。乙11。以下本件ガイドラインという。)の定め
(1)
本件ガイドライン第2(不当な価格表示に関する景表法上の考え方)の1(景表法の内容)の定め


本件ガイドライン第2の1(1)の定め
本件ガイドライン第2の1(1)柱書きは,販売価格に関する表示については,次の表示が景表法上問題となる旨を定めている。
(ア)自己が供給する商品又は役務の販売価格について,実際の販売価格よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

(イ)(略)

本件ガイドライン第2の1(2)の定め
本件ガイドライン第2の1(2)は,有利であると一般消費者に誤認されるとは,当該表示によって販売価格が実際と異なって安いという印象を一
般消費者に与えることをいい(前段),著しく有利であると誤認される表示か否かは,当該表示が,一般的に許容される誇張の程度を超えて,商品又は役務の選択に影響を与えるような内容か否かにより判断される(後段)旨を定めている。

本件ガイドライン第2の1(3)の定め
本件ガイドライン第2の1(3)は,景表法上問題となるか否かは,表示媒体における表示内容全体をみて,一般消費者が当該表示について著しく有利
であると誤認するか否かにより判断されるものであり,その際,事業者の故意又は過失は問題とされない旨を定めている。
(2)

本件ガイドライン第4(二重価格表示について)の1(二重価格表示についての基本的考え方)の定め


本件ガイドライン第4の1柱書きの定め
本件ガイドライン第4の1柱書きは,二重価格表示は,事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(以下比較対照価格という。)を併記して表示するものであり,その内容が適正な場合には,一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進に資する面があるが(前段),二重価格表示において,販売価格の安さを強調するために用いられた
比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある(後段)旨を定めている。

本件ガイドライン第4の1(2)(比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示や曖昧な表示を行う場合)の定め
本件ガイドライン第4の1(2)は,二重価格表示が行われる場合には,比較対照価格として,過去の販売価格,希望小売価格,競争事業者の販売価格等多様なものが用いられ(前段),これらの比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のもので
ある場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがあり(中段),過去の販売価格や競争事業者の販売価格等でそれ自体は根拠のある価格を比較対照価格に用いる場合でも,当該価格がどのような内容の価格であるかを正確に表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格について曖昧な表示を行う場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある(後段)旨を定めている。

(3)

本件ガイドライン第4の3(希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示について)の定め

本件ガイドライン第4の3(1)(基本的考え方)アの定め
本件ガイドライン第4の3(1)アは,製造業者,卸売業者,輸入総代理店等,小売業者以外の者(以下製造業者等という。)が,自己の供給する
商品について希望小売価格を設定している場合に,小売業者は,この希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うことがあるところ(前段),一般消費者は,通常,希望小売価格については,製造業者等により小売業者の価格設定の参考となるものとして設定され,あらかじめ,新聞広告,カタログ,商品本体への印字等により公表されているものであり,この
ことから,小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考情報の1つとなり得るものと認識していると考えられるため(中段),希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に,製造業者等により設定され,あらかじめ公表されているとはいえない価格を,希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与
え,不当表示に該当するおそれがある(後段)旨を定めている。

本件ガイドライン第4の3(1)イの定め
本件ガイドライン第4の3(1)イは,希望小売価格に類似するものとして,製造業者等が参考小売価格や参考上代等の名称で小売業者に対してのみ
呈示している価格があるところ(前段),これらの価格が,小売業者の小売価格設定の参考となるものとして,製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合(製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合は含まない。)には,小売業者が当該価格を比較対照価格に用いて二重価格表示を行うこと自体は可能であるが,希望小売価格以外の名称を用いるなど,一般消費者が誤認しないように表示する必要があり(中段),参考小売価格等を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に,製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格を,小売業者が参考小売価格等と称して比較対照価格に用いるときには,一般消費者に
販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある(後段)旨を定めている。

以上

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