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土地の使用許可申請不許可処分取消等請求事件
事件番号平成29(行ウ)237
事件名土地の使用許可申請不許可処分取消等請求事件
裁判年月日令和元年7月18日
裁判所名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-07-18
情報公開日2020-03-26 12:00:46
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【機密性2】

令和元年7月18日判決言渡
平成29年(行ウ)第237号

土地の使用許可申請不許可処分取消等請求事件
主1文
本件訴えのうち,後記第1請求の趣旨2項,3項及び5項か

ら10項までの請求に係る部分を却下する。

2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求の趣旨
原告が平成29年6月12日付けでした別紙2物件目録第1記載の土地の使用許可申請及び同目録第2記載の住居の新築許可申請に対し,国土交通省近畿地方整備局長が同年7月27日付けでした不許可処分を取り消す。
2
原告が,次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,別紙2物件目録第2記載の住居を生活の本拠とした状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される
地位にあることを確認する。
3
原告が,次回の日本国憲法の改正手続に関する法律に基づく国民投票において,別紙2物件目録第2記載の住居を生活の本拠とした状態を継続しながら投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあることを確認する。

4
被告国は原告に対し,5000円及びこれに対する平成29年12月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

5
原告が,被告国が管理・占有する土地につき,住居を有するための使用権を有することを確認する。

6
原告が,次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法がい
うホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあることを確認する。7
原告が,次回の日本国憲法の改正手続に関する法律に基づく国民投票において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法がいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又
は投票人名簿に登録される地位にあることを確認する。
8
原告が,衆議院議員総選挙の選挙権行使のための選挙人名簿に登録されていないことは違法であることを確認する。

9
原告が,大阪市〇〇区選挙管理委員会が調製保管する選挙人名簿に登録される地位にあることを確認する。

10

大阪市〇〇区選挙管理委員会は,その調製保管する選挙人名簿に原告を登録せよ。
なお,以下,上記請求の趣旨1項の請求を請求1といい,順次,上記請求の趣旨2項以下の請求についても同様に呼称する。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,
(1)大阪市△△区長から住民票の消除処分を受け,
その後C川水系C
川の河川区域内の土地(別紙2物件目録第1記載。以下本件土地という。)にDと称する工作物(別紙2物件目録第2記載。以下本件工作物とい
う。)を設置し,同工作物を居所として生活している原告が,国土交通省近畿地方整備局長(以下近畿地方整備局長という。)に対し,河川法24条に基づく本件土地の占用許可及び同法26条1項に基づく本件工作物の新築許可の各申請を行ったところ,
いずれも平成29年7月27日付けで不許可処分
(以
下本件不許可処分という。)を受けたことから,被告国に対し,本件不許
可処分の取消し及び被告国が管理・占有する土地につき,住居を有するための使用権を有することの確認をそれぞれ求め(請求1及び請求5),(2)本件不許
可処分が取り消されると,原告について,本件工作物が生活の本拠として認められ,住民基本台帳に記録されることになるとして,被告らに対し,そのような状態において次回の衆議院議員総選挙及び次回の日本国憲法の改正手続に関する法律(以下憲法改正手続法という。)に基づく国民投票において,それぞれ投票をすることができる地位等にあることの確認を求め(請求2及び請求3),(3)本件不許可処分が取り消されない場合として,原告について,本件工作物が生活の本拠として認められず,住民基本台帳に記録されない状態が継続されるとしても,住所を有し,かつ,住民基本台帳に記録されている日本国民に限って選挙権を認めている公職選挙法21条1項は,憲法13条,14条
1項,15条1項及び3項,44条ただし書,市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年8月4日条約第7号。以下B規約という。)25条に反し無効であり,また,住民基本台帳に記録されている日本国民に限って国民投票権を認めている憲法改正手続法22条1項は,憲法13条,14条1項及び憲法の基本原理に反し無効であるなどと主張し,被告らに対し,①次回の
衆議院議員総選挙及び次回の憲法改正手続法に基づく国民投票において,それぞれ投票をすることができる地位等にあることの確認(請求6及び請求7),②原告が衆議院議員総選挙のための選挙人名簿に登録されていないことの違法確認(請求8),③大阪市〇〇区選挙管理委員会が調製保管する選挙人名簿に登録される地位にあることの確認(請求9)及び④大阪市〇〇区選挙管理委員
会が原告を選挙人名簿に登録することの義務付け
(請求10)
をそれぞれ求め,
(4)公職選挙法上の住所要件を満たさない者が選挙権を行使するために必要な立法措置を採ることを被告国が怠り続けたことにより,原告の選挙権又はその行使が侵害され精神的苦痛を被ったと主張し,被告国に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である
平成29年12月26日から民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案(請求4)である。

なお,原告は,本件訴えのうち,請求8に係る部分を抗告訴訟としての不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法(以下行訴法という。)3条5項),請求9に係る部分をいわゆる無名抗告訴訟,請求10に係る部分をいわゆる非申請型義務付け訴訟(同条6項1号)であるとしている。
2
関係法令の定め
別紙3のとおり

3
前提事実(当事者間に争いがない事実,各項掲記の証拠(証拠番号は特記しない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)

(1)

原告
原告は,平成19年3月29日,大阪市△△区長から住民票の消除処分を
受けた後,平成29年6月8日までに,C川水系C川の河川区域内に所在する本件土地に本件工作物を設置し,本件工作物を居所として生活をしている者である。
(2)

転入届不受理処分
原告は,平成29年6月8日,大阪市〇〇区役所において,本件土地を住所とする転入届を提出したが,大阪市〇〇区長は,同月28日付けで,不受理処分(以下本件転入届不受理処分という。)をした(甲8)。

原告は,平成29年7月11日,大阪市長に対し,本件転入届不受理処分について審査請求をした。

(3)

本件土地の占用及び工作物の新築の許可の申請に対する不許可処分原告は,平成29年6月12日付けで,河川管理者である近畿地方整備局長に対し,河川法24条及び26条1項に基づき,平成29年6月12日から平成33年6月12日までの間,本件土地を占用すること及び本件
土地に住居として使用するための工作物を新築することの許可の申請(以下本件申請という。)を行った(甲7)。


近畿地方整備局長は,平成29年7月27日付けで,原告に対し,本件申請を不許可とする処分(本件不許可処分)をした(甲9)。


原告は,平成29年8月21日,国土交通大臣に対し,本件不許可処分について審査請求をした。また,原告は,同日,近畿地方整備局長に対し,本件土地の代替地を指定するように求める申請を行った(甲10)。
(4)

選挙権の不行使
原告は,平成29年10月22日,同日に実施された衆議院議員総選挙の
投票をするため,大阪市(住所省略)を管轄するE投票所に赴いたが,選挙人名簿に登録されていないと伝えられるなどし,投票をすることができなかった。

(5)

本件訴えの提起
原告は,平成29年12月5日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
4
争点及び当事者の主張
(1)

争点

(本案前の争点)

本件訴えのうち,請求2に係る部分(以下請求2に係る訴えという。以下,順次,本件訴えのうち,請求3以下に係る部分についても同様に呼称する。)の適法性(争点1)


請求5に係る訴えの適法性(争点3)
請求6に係る訴えの適法性(争点4)


請求7に係る訴えの適法性(争点5)


請求8に係る訴えの適法性(争点6)

キウエ
請求3に係る訴えの適法性(争点2)

請求9に係る訴えの適法性(争点7)


請求10に係る訴えの適法性(争点8)

(本案の争点)


本件不許可処分の適法性(請求1及び請求5の当否)(争点9)


原告について,本件不許可処分が取り消された場合に次回の衆議院議員総選挙の投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあるか否か(請求2の当否)(争点10)


原告について,本件不許可処分が取り消された場合に次回の憲法改正手続法に基づく国民投票の投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあるか否か(請求3の当否)(争点11)


公職選挙法21条1項の憲法適合性及び条約適合性(請求6及び請求8~10の当否)(争点12)


憲法改正手続法22条1項の憲法適合性(請求7の当否)(争点13)

公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使のための立法不作為についての違法性(請求4の当否)(争点14)

(2)

当事者の主張
争点1(請求2に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)
請求2に係る訴えは,
以下のとおり,
①紛争の成熟性
(即時確定の利益)

②方法選択の適切性,③確認対象の適切性をいずれも欠くから,確認の利益が認められない。
(ア)

①3か月以上住民基本台帳に記録されていれば,法令の定める理由
により当該記録が抹消されるなどしない限り,選挙人名簿に登録されることとなる上,万が一,事務手続等の誤りにより同名簿に登録されなかった場合には,公職選挙法24条に基づき異議を申し立てることにより同名簿に登録されることになるのであるから,原告が求める地位を得ることができる。そうすると,原告が住民基本台帳に記録されることを前
提とした場合に,選挙人名簿に登録されないことが未確定な段階で本件訴えを提起することは,紛争の成熟性を欠く。

(イ)

②仮に,原告が公職選挙法24条に基づき異議を申し出たにもかか
わらず,
選挙管理委員会が上記異議の申出を正当でないと決定した場合,
原告は,当該選挙管理員会を被告として訴えを提起することができるから(同法25条),方法選択の適切性を欠く。
(ウ)

③原告が住民基本台帳に記録されることを前提としても,当該記録
後,どのような経過で原告が選挙人名簿に登録されるのかは未確定の状態であるから,上記訴えは,未だ事実関係の確定していない段階で訴訟提起を行うものであり,将来の法律関係を対象とする確認の訴えというほかないから,確認対象の適切性を欠く。
(原告の主張)

(ア)

請求2に係る訴えは,請求1が認容され,本件不許可処分が取り消
されることを前提にしている。そして,本件不許可処分が取り消されると,原告は,本件工作物を住居として使用することが認められることになり,本件転入届不受理処分も取消しを余儀なくされるから,請求2に係る訴えは,事実上,本件転入届不受理処分の取消しを求める訴えの意
義を有するといえるため,確認の利益が認められる。
(イ)

原告が本件転入届不受理処分の取消訴訟を提起したとしても,訴え
が直ちに退けられる可能性が極めて高いこと,また仮に勝訴したとしてもその判決の確定を待っていたのでは,次回の衆議院議員総選挙までに間に合わないことからすれば,請求2に係る訴えには,確認の利益が認
められる。

争点2(請求3に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)
請求3に係る訴えは,
以下のとおり,
①紛争の成熟性
(即時確定の利益)


②方法選択の適切性,③確認対象の適切性をいずれも欠くから,確認の利益が認められない。

(ア)

①住民基本台帳に記録されていれば投票人名簿に登録されることと
なる上,万が一,事務手続等の誤りにより同名簿に登録されなかった場合には,憲法改正手続法25条に基づき異議を申し立てることにより同名簿に登録されることになるのであるから,原告が求める地位を得ることができる。そうすると,原告が住民基本台帳に記録されることを前提とした場合に,投票人名簿に登録されないことが未確定な段階で訴えを提起することは,紛争の成熟性を欠く。
(イ)

②仮に,原告が憲法改正手続法25条に基づき異議を申し出たにも
かかわらず,選挙管理委員会が上記異議の申出を正当でないと決定した場合,原告は,当該選挙管理員会を被告として訴えを提起することができるから(同法26条),方法選択の適切性を欠く。
(ウ)

③原告が住民基本台帳に記録されることを前提としても,当該登録
後,原告が投票人名簿に登録されるのかは未確定の状態であるから,上記訴えは,未だ事実関係の確定していない段階で訴訟提起を行うものであり,将来の法律関係を対象とする確認の訴えというほかないから,確認対象の適切性を欠く。
(原告の主張)
(ア)

請求3に係る訴えは,請求1が認容され,本件不許可処分が取り消
されることを前提にしている。そして,本件不許可処分が取り消されると,原告は,本件工作物を住居として使用することが認められることになり,本件転入届不受理処分も取消しを余儀なくされるから,請求3に係る訴えは,事実上,本件転入届不受理処分の取消しを求める訴えの意義を有するといえるため,確認の利益が認められる。
(イ)

原告が,本件転入届不受理処分の取消訴訟を提起したとしても,訴
えが直ちに退けられる可能性が極めて高いこと,また仮に勝訴したとしてもその判決の確定を待っていたのでは,近時に実施予定の憲法改正手
続法に基づく国民投票までに間に合わないことからすれば,請求3に係る訴えには,確認の利益が認められる。

争点3(請求5に係る訴えの適法性)について
(被告国の主張)
原告は,請求1で求めているとおり,本件不許可処分に対して取消訴訟
を提起し得るのであるから,請求5に係る訴えは,確認の利益を欠く。(原告の主張)
争う。

争点4(請求6に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)
(ア)

法律上の争訟性を欠くこと
公職選挙法21条1項は,選挙人名簿の登録要件の1つとして,登録
市町村等の住民票が作成された日から引き続き3か月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者であることを定めている上,同法42条1項本文は,選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者には投票を認めていないことからすれば,原告が請求6に係る訴えにおいて確認を求める地位は,公職選挙法を改正しなければ認められない法的地位であるといわざるを得ない。
したがって,法令の適用によって終局的に解決することができないも
のというべきであり,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟には当たらない。
(イ)

確認の利益を欠くこと
原告は,次回の衆議院議員総選挙において選挙人名簿に登録される地
位等の確認を求めているが,選挙人名簿の登録は,住民基本台帳の記録に基づいて行うこととされているところ(公職選挙法21条1項),住民基本台帳は,住民票を編成して作成されるものであり(住民基本台帳
法(以下住基法という。)6条1項),住民票の記載等は,届出に基づいて又は職権により行われるのであるから(同法8条),原告は,選挙人名簿の登録を求めるのであれば,届出を行うことで住民票の記載を求めることができ,仮にこれが認められなければ当該処分に対する抗告訴訟を提起することができる。実際に,原告は,本件転入届不受理処分を受けており,同処分に対する取消訴訟又は無効確認訴訟を提起し得るのであって,むしろ,それがより適切な紛争解決手段であるといえるから,方法選択の適切性を欠き,確認の利益が認められない。
(被告国の主張)

原告は,次回の衆議院議員総選挙において選挙人名簿に登録される地位等の確認を求めているが,そもそも選挙人名簿の調製及び保管は,市町村の選挙管理委員会が行うこととされているから
(公職選挙法19条2項)

被告国には選挙人名簿の登録を行う権限が存しない。
そうすると,被告国に対し,原告主張の地位の確認を求めることは,何
ら有効適切な紛争解決手段とはいえず,確認対象の適切性を欠き,確認の利益が認められない。
(原告の主張)
(ア)
a
法律上の争訟性を有すること
公職選挙法を改正しなくとも,同法42条1項ただし書において,選挙人名簿に登録されるべき旨の確定判決書を所持している場合には投票を認める旨規定されていることからすれば,本件訴えにおいて,請求6に係る訴えを認容する判決が確定すると,原告についても国政選挙において投票をすることができる法的地位が認められる。この点において,最高裁判所裁判官国民審査法には上記のような規定がない
ため,東京地裁平成23年4月26日判決(平成22年(行ウ)第162号ほか・判タ1377号60頁)とは事案が異なる。

b
一定の市町村の区域内に定住しながら,財産・収入が少ないことにより家主・地主に対し,家賃・地代名目の金銭の支払をすることが困難なため,公園内や河川敷に建てた住居において眠っている日本国民及び住居を有することができず路上等で眠っている日本国民
(以下
家賃等支払困難国民という。)の選挙権の行使の機会を剥奪する公職
選挙法21条1項の規定は,本文が違憲であるのではなく,

ただし,住所を有さない日本国民については資格審査をして選挙人名簿に登録する。

旨のただし書が定められていないことが違憲である。最高裁平成20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁
(以下
平成20年最高裁判決という。)が,旧国籍法3条1項に

ただし,嫡出子たる身分を取得した子でなくとも,日本人の父の認知と届出があれば日本国籍を取得することができる。

旨の規定がないことが違憲である旨判示しているに等しいことからすれば,本件においても,公職選挙法21条1項に上記ただし書が定められていないことが違憲であると判断することは可能である。立法者は,家賃等支払困難国民
を国政選挙から排除するために,同項に選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する(中略)日本国民という要件を加えたのではないから,本件訴えにおいて,請求6に係る訴えについて判断することは,何ら立法権を侵害するものではなく,法律上の争訟性が認められるべきである。

c
公職選挙法21条1項が定める選挙権を行使するための要件のう
ち,継続して3か月以上いずれかの市町村の住民基本台帳に記録されていることという要件は,実質的には,①一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住していること,②一定の市町村の区域内に継続
して3か月以上居住する際には,住居を私有すること又は家賃等を支払っていることに分けられるところ,
上記②の要件は,
不合理であり,

憲法44条ただし書等に反し無効である。
平成20年最高裁判決の今井功裁判官の補足意見に照らすと,裁判所に違憲立法審査権が与えられた趣旨は,違憲の法律を無効とすることによって,国民の権利利益を擁護することにあるところ,法律の規定が国民に権利利益を与えるものである場合,その規定全体を無効と
すると,権利利益を与えられなくなるが,例えばA要件とB要件の両要件を満たす者に限り権利利益を与えると定めている規定であれば,B要件のみが無効であるとし,その結果,A要件のみを満たした者についても,その規定の定める権利利益を与えることになると解することが可能である。

公職選挙法21条1項が定める要件のうち,上記の②の要件を除いた要件を満たす国民は,同項に基づき選挙権の行使が認められなければならず,原告が主張する法的地位は,現行法の合憲的解釈により認められるものであるから,かかる地位の確認を求める請求6に係る訴えは,法律上の争訟性が認められる。

(イ)

確認の利益が認められること
原告が,本件転入届不受理処分の取消訴訟を提起したとしても,訴え
が直ちに退けられる可能性が極めて高く,仮に勝訴したとしてもその判決の確定を待っていたのでは,次回の衆議院議員総選挙までに間に合わない。
また,別件の判決(最高裁平成20年10月3日第二小法廷判決・集民229号1頁)等によると,住民票の転居届の不受理処分の適法性の判断においては,家賃等支払困難国民の選挙権行使の機会の剥奪に係る憲法適合性は考慮されていないから,本件転入届不受理処分に対する取
消訴訟等を提起できることを理由として,確認の利益がないとする被告らの主張は失当である。

以上からすれば,請求6に係る訴えには,確認の利益が認められる。オ
争点5(請求7に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)
(ア)

法律上の争訟性を欠くこと
憲法改正手続法22条1項は,投票人名簿の登録について,住民基本
台帳の記録に基づいて行うこととしている上,同法53条1項本文は,投票人名簿又は在外投票人名簿に登録されていない者には投票を認めていないことからすれば,原告が請求7に係る訴えにおいて確認を求める地位は,憲法改正手続法を改正しなければ認められない法的地位であるといわざるを得ない。
したがって,法令の適用によって終局的に解決することができないものというべきであり,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟には当たらない。
(イ)

確認の利益を欠くこと
原告は,今後行われる可能性のある憲法改正手続法に基づく国民投票
において投票をすることができる地位等の確認を求めているが,投票人名簿の登録は,選挙人名簿の登録と同様に住民基本台帳の記録に基づいて行うこととされているのであるから(同法22条1項),原告が投票人名簿の登録を求めるのであれば,前記エ(被告らの主張)(イ)と同様に,原告は,届出を行うことで住民票の記載を求めることができ,仮にこれが認められなければ当該処分に対する抗告訴訟を提起することができるから,方法選択の適切性を欠き,確認の利益が認められない。(被告国の主張)
原告は,今後行われる可能性のある憲法改正手続法に基づく国民投票
において投票をすることができる地位等の確認を求めているが,そもそも投票人名簿の調製は,市町村の選挙管理委員会が行うこととされてい
るから(同法20条1項),被告国には投票人名簿の登録を行う権限が存しない。
そうすると,被告国に対し,原告主張の地位の確認を求めることは,何ら有効適切な紛争解決手段とはいえず,確認対象の適切性を欠き,確認の利益が認められない。
(原告の主張)
(ア)
a
法律上の争訟性を有すること
憲法改正手続法を改正しなくとも,同法53条1項ただし書において,投票人名簿に登録されるべき旨の確定判決書を所持している場合には投票を認める旨規定されていることからすれば,本件訴えにおい
て,請求7に係る訴えを認容する判決が確定すると,原告について国民投票において投票をすることができる法的地位が認められる。この点において,最高裁判所裁判官国民審査法には上記のような規定がないため,東京地裁平成23年4月26日判決(平成22年(行ウ)第162号ほか・判タ1377号60頁)とは事案が異なる。

b
家賃等支払困難国民の投票権の行使の機会を剥奪する憲法改正手続法22条1項の規定は,本文が違憲であるのではなく,

ただし,住所を有さない日本国民については資格審査をして投票人名簿に登録する。

旨のただし書が定められていないことが違憲である。立法者は,家賃等支払困難国民を国民投票から排除するために,同項に国民投票の期日前50日に当たる日(中略)において,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者という要件を加えたのではないから,本件訴えにおいて,請求7に係る訴えについて判断することは,何ら立法権を侵害するものではなく,法律上の争訟性が認められるべきである。

c
憲法改正手続法22条1項が定める要件として,日本国民であるこ
と及び18歳以上であることのほかに,投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村の住民基本台帳に1日以上記録されていることが必要であり,この要件は,実質的には,①投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村に1日以上居住していること及び同15日間中,最初に居住した市町村を証明できる
こと,②投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村に1日以上居住する際には,住居を私有するか又は家賃等を支払っていることに分けられるところ,上記②の要件は不合理であるとともに憲法14条1項等に反し,無効である。
そして,憲法改正手続法22条1項が定める要件のうち,上記②の
要件を除いた要件を充足する国民は,同項に基づいて投票をすることができる地位が認められるから,かかる地位の確認を求める請求7に係る訴えは,法律上の争訟性が認められる。
(イ)

確認の利益を有すること
原告が,本件転入届不受理処分の取消訴訟を提起したとしても,訴え
が直ちに退けられる可能性が極めて高く,仮に勝訴したとしてもその判決の確定を待っていたのでは,近時に実施予定の憲法改正手続法に基づく国民投票までに間に合わないことからすれば,確認の利益が認められる。
また,最高裁は,別件の判決(最高裁平成20年10月3日第二小法
廷判決・集民229号1頁)等によると,住民票の転居届の不受理処分の適法性の判断において,家賃等支払困難国民の選挙権行使の機会の剥奪に係る憲法適合性を考慮していないから,本件転入届不受理処分に対する取消訴訟等を提起できるとして,確認の利益がないとする被告らの主張は失当である。


争点6(請求8に係る訴えの適法性)について

(被告らの主張)
原告は,請求8に係る訴えを行訴法3条5項の不作為の違法確認の訴えであると主張するが,
法令に基づく申請に対する行政庁の不作為
(不応答)
だけが同項の不作為の違法確認の訴えの対象となり得るところ,選挙人名簿の登録は,市町村の選挙管理委員会が当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有するものについて行うものであり(公職選挙法22条1項及び3項),申請に基づいて行うものではないこと,原告が転入届の受理を求めた行為は,転入届が受理されれば住民票の記載がされるにすぎず,これにより選挙人名簿への登録がされるものではなく,
行訴法3条5項の
申請に該当しないことから,請求8に係る訴えは不適法である。
(被告国の主張)
選挙人名簿の調製及び保管は,市町村の選挙管理委員会が行うこととされており(公職選挙法19条2項),被告国には選挙人名簿の登録を行う権限が存しないから,被告国に対する請求8に係る訴えは,被告適格がな
く,不適法である。
(原告の主張)
請求8に係る訴えは,行訴法3条5項に定める不作為の違法確認の訴えである。そして,原告が転入届の受理を求めた行為に対し,大阪市(〇〇区役所)は諾否の応答をしなければならず,原告の上記行為は,選挙人
名簿の登録に係る申請の意義を有するから,同項の申請に該当する。最高裁平成17年9月14日大法廷判決民集59巻7号2087頁・
(以
下平成17年最高裁判決という。)が判示するとおり,選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができな
い性質のものである。また,同判決が,主位的確認請求に係る訴えを予備的確認請求に係る訴えの方がより適切な訴えであるとして却下しているこ
とに照らせば,請求6に係る訴え及び請求7に係る訴えが不適法の評価を受ける場合には,請求8に係る訴えについては適法の評価を受けるというべきである。

争点7(請求9に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)
請求9に係る訴えは,将来選挙を行う場合に選挙人名簿への登録を求めても選挙人名簿に登録しない不利益処分がされるおそれがあることから,その予防を目的とする無名抗告訴訟として位置付けられるべきものと解するのが相当であり,実質的には,選挙人名簿に登録しない処分の差止めの
訴えを選挙人名簿に登録されていないことの違法確認あるいは選挙人名簿に登録される地位にあることの確認を求める訴えの形式に引き直したものということができる。
しかるに,このような予防的な無名抗告訴訟についての訴えの利益があるというためには,予想される不利益処分を待ってこれに関する訴訟等に
おいて事後的に処分の適否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情が存在しなければならない。
それにもかかわらず,本件において,原告は不利益処分たる選挙人名簿に登録しない処分を待って,当該処分の適否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情について何ら主張立証をして
いないのであるから,上記訴えは確認の利益が認められないため不適法である。
(被告国の主張)
選挙人名簿の調製及び保管は,市町村の選挙管理委員会が行うこととされており(公職選挙法19条2項),被告国には,選挙人名簿の登録を行
う権限が存しないから,被告国に対する請求9に係る訴えは,被告適格がなく,不適法である。

(原告の主張)
平成17年最高裁判決が判示するとおり,選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものである。また,同判決が,主位的確認請求に係る訴えを予備的確認請求に係
る訴えの方がより適切な訴えであるとして却下していることに照らせば,請求6に係る訴え及び請求7に係る訴えが不適法の評価を受ける場合には,請求9に係る訴えについては適法の評価を受けるというべきである。ク
争点8(請求10に係る訴えの適法性)について
(被告らの主張)

原告において選挙人名簿への登録を求めるのであれば,住基法や住民基本台帳法施行令(以下住基法施行令という。)に基づいて市町村長に対して転入の届出をし,住民票の作成や住民基本台帳への記録を求めることができるのであり,仮に当該届出が認められないのであれば,これに対する取消訴訟を提起することで争うことができる。したがって,非申請型
義務付け訴訟の訴訟要件である
損害を避けるため他に適当な方法がない
(行訴法37条の2第1項)とはいえず,不適法である。
(被告国の主張)
非申請型義務付け訴訟においては,当該処分を行う権限が行政庁にあることが当然の前提となり,それが訴訟要件となるところ,被告国には,選
挙人名簿の登録を行う権限が存しないから,請求10に係る訴えは,被告国に対し,その権限を有しない処分の義務付けを求めるものであるため,不適法である。
(原告の主張)
争う。


争点9(本件不許可処分の適法性)について

(被告国の主張)
河川法24条及び26条1項の許可の申請に対し,河川管理者がした不許可処分に関しては,河川の公共性から客観的に定立された平成11年8月5日付け建設省河政発第67号建設事務次官通達河川敷地の占用許可についての別紙河川敷地占用許可準則(以下本件占用許可準則という。)及び平成6年9月22日付け建設省河治発第72号建設省河川局治水課長通達工作物設置許可基準について(以下本件設置許可基準という。)の規定に則した判断である限り,裁量権の範囲の逸脱又は濫用は認められず適法なものというべきである。

本件申請は,以下の(ア)ないし(キ)のとおり,本件占用許可準則第6ないし第11の各要件を満たしていない上,本件設置許可基準第3の要件も満たさないことから,本件不許可処分は適法である。
(ア)

原告は,河川敷地の占用許可を受けることができる者に該当しない
ため,本件占用許可準則第6の要件を満たさない。
(イ)

本件工作物は,許可対象となる占用施設に該当しないため,本件占
用許可準則第7の要件を満たさない。
(ウ)

本件工作物は治水上の支障を生じさせるため,本件占用許可準則第
8の要件を満たさない。
(エ)
本件工作物は他の者の河川の利用を著しく妨げるため,本件占用許
可準則第9の要件を満たさない。
(オ)

本件工作物は河川整備計画に沿わないものであるため,本件占用許
可準則第10の要件を満たさない。
(カ)

本件工作物は自然的及び社会的環境を損なうため,本件占用許可準
則第11を満たさない。
(キ)

本件工作物は,その機能上,河川区域に設ける以外に方法がないと
も,河川区域に設置することがやむを得ないとも認められないから,本
件設置許可基準第3の要件を満たさない。
(原告の主張)
(ア)

住居を有するための土地使用権は,憲法13条,22条1項に内在
された権利,すなわち侵すことのできない永久の権利の一内容であるから,その権利行使を制限する不許可処分に係る違憲性あるいは違法性の審査基準は当然に厳格になる。
原告は,本件不許可処分により,住居を有するための土地の使用が許されないこととなり,雨風に打たれながら,又は歩きながら眠ることを強要されることになり,確実に死に至る。本件土地は,原告にとって公
共の福祉を最も脅かさずに住居を有するための土地使用権を行使できる場所である。それにもかかわらず,近畿地方整備局長が,原告に対し,代替地を指定することなく本件不許可処分を行ったことは,
憲法13条,
22条1項,31条に違反するものであって,憲法98条1項の規定に基づき,違憲無効となるものである。

(イ)

本件占用許可準則及び本件設置許可基準が,近畿地方整備局長に対
し,住居を有するための土地使用権を行使するための許可申請と,河川敷地で行われるスポーツに使用される用具のための物置小屋に係る許可申請等を異なる見地から審査することの裁量を与えていない点につき裁量権の範囲の逸脱があり,憲法13条,22条1項に違反している。(ウ)

仮に,本件占用許可準則及び本件設置許可基準を前提としても,以
下の事情によれば,近畿地方整備局長の判断には裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるから,本件不許可処分は違法である。
a
原告は,河川区域外に土地を購入する費用等がない。

b
F地区に家を建てることは,都市公園内に家を建てることよりも格段に公共の福祉を脅かさない。

c
本件土地付近の河川敷地には,野球場の防球ネット等が簡易な方法
で設置されているところ,本件工作物に使用されている資材はそれと比較して極めて少量にすぎず,また,洪水が発生する前に本件工作物を直ちに解体することが可能であるため,治水上・利用上の理由で本件不許可処分をすることは失当である。
d
本件工作物は自然と調和しているし,本件土地付近は,住居を有するための土地使用権の行使を制限する程度に自然環境の保全ないし再生が尊重される場所ではないから,自然環境の保全・再生を理由に本件不許可処分をすることも失当である。


争点10(原告について,本件不許可処分が取り消された場合に次回の衆議院議員総選挙の投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録さ
れる地位にあるか否か)について
(原告の主張)
請求2に係る訴えは,請求1が認容され,本件不許可処分が取り消されたことを前提とするものである。本件不許可処分が取り消されると,原告は当然に本件工作物に居住することになり,健全な社会通念に基礎付けら
れた住所としての定型性を具備することになるから,本件転入届不受理処分が無効であると判断され,原告が選挙人名簿に登録される地位にあることは明らかである。
(被告の主張)
争う。


争点11(原告について,本件不許可処分が取り消された場合に次回の憲法改正手続法に基づく国民投票の投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあるか否か)について
(原告の主張)

請求3に係る訴えは,請求1が認容され,本件不許可処分が取り消されたことを前提とするものである。本件不許可処分が取り消されると,当然
に原告が本件工作物に居住することになり,健全な社会通念に基礎付けられた住所としての定型性を具備することになるから,本件転入届不受理処分も無効であると判断され,原告が投票人名簿に登録される地位にあることは明らかである。
(被告の主張)

争う。

争点12(公職選挙法21条1項の憲法適合性及び条約適合性)について
(原告の主張)

(ア)

判断枠組み
国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されないこ
とから,公職選挙法21条1項が違憲であるか否かは,それらを制限することについてやむを得ないと認められる事由があるか否かによるべきであり,平成17年最高裁判決の判断枠組みが妥当する。
(イ)

公職選挙法21条1項が違憲であること
原告は,現在の住基法に照らすと,住所を有することができず,

住民票を取得することができない。その結果,選挙人名簿に登録されることがなく,選挙権を行使することもできない。
そもそも,在外国民が国内に住所を有せず住民登録をしていないことは自己の選択の結果であり,日時の経過とともに変わり得るものであるのに対し,家賃等支払困難国民が住所を有することができず家賃等の支払能力がないこと,すなわち貧困であることは自己の選択の結果とは到底いえない。
公職選挙法21条1項は,家賃等支払困難国民に対する選挙権行使の
機会を絶対的かつ継続的に剥奪しているにもかかわらず,その制限についてやむを得ないと認められる事由がないから,憲法13条,14条1
項,15条1項及び3項,44条ただし書,B規約25条に反し,無効である。公職選挙法21条1項は,一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住していることの証明方法を,
住居を私有しない日本国民中,
家賃等の支払能力がある日本国民のみが有することができる住民票に限定しているのであるから,まさに憲法15条3項が禁止した制限選挙であるとともに,憲法44条ただし書が規定する財産又は収入による選挙人差別の禁止に抵触するものである。
また,公職選挙法21条1項が定める当該市町村の区域内に住所を有すること(以下住所要件という。),その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き3か月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されていること(以下3か月継続登録要件という。)の合理性ないし合憲性は認められるものの,一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住しながら財産又は収入が少ないことにより住居を私有できず又は家賃等を支払うことができない日本国民に対して
申請に基づく選挙人名簿への登録を認めないことは違憲である。すなわち,同項に

ただし,いずれの市町村の住民基本台帳に記録されていない者であっても,一定の市町村の区域内に引き続き3か月以上居住する者は,本人の申請に基づき資格審査をして,選挙人名簿に登録する。

旨の規定がないことが違憲である。家賃等支払困難国民が選挙権を行使
することができるようにするために,本人の申請に基づく資格審査制度を構築すべきであり,当該制度を構築したとしても,二重登録を防止するなど,選挙の公正な実施を維持することは可能である。
(被告らの主張)
(ア)

判断枠組み
国会が新たな選挙制度の仕組みを採用した場合には,その具体的に定
めたところが,議員は全国民を代表するものでなければならないという
制約や法の下の平等などの憲法上の要請に反するため国会の広い裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁)。
この点,選挙制度を具体的に制度設計する際には,短期間のうちに極めて多数の投票行為が行われるという選挙の性質上,一定の時間的制約や人的・物的設備面の制約等考慮すべき技術的事項が多く,また,選挙の公正の確保及び選挙の適正な管理執行にも配慮する必要があるから,
国会の裁量権の当否を判断するに当たってもこれらの点を考慮しなければならない。
原告は,平成17年最高裁判決の判示する厳格な基準が適用されなければならない旨主張するが,同判決は,国外に居住しているため国内の市町村の区域内に住所を有していない在外国民が当時の公職選挙法の規
定により選挙権の行使の機会を絶対的に失っていた事案であるのに対し,本件は,原告が,公職選挙法の制度上は選挙人名簿に登録され選挙権を行使し得る途が開かれながら,経済的事情等により一時的に住民基本台帳に登録されておらず,選挙権の行使が事実上できない状態となっているにすぎず,生活保護等の公的扶助を活用するなどして住所を有し
ない状態が解消され,住民基本台帳に記録されれば,選挙権の行使が可能となるから,上記判決とは事案を異にする。
(イ)

公職選挙法21条1項は合憲であること
以下のとおり,公職選挙法21条1項の定める住所要件の目的は正当
である上,合理性を有するから,国会の広い裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に該当しないことは明らかであるから,同項の規定は合憲である。

同法21条1項が,選挙人名簿の登録を住民基本台帳の記録を基にして行うこととしたのは,住民把握の方法を一元化し,住民に関するあらゆる事務処理の基礎となる公簿としての住民基本台帳の性格を明確化するとともに,住民の居住関係が,市町村長のみならず,あらゆる関係執行機関の常時照合調査等によりチェックされ,相互補完により正確性が一層確保されることが期待されたためである。また,住所要件は,選挙人名簿の登録の基準日に当該区域内に住所を有しないことが明らかな者についてまで,住民基本台帳に記録されているという理由のみで選挙人名簿に登録するのは,
かえって選挙人名簿を不正確にすることとなる上,

選挙人名簿の作成は,本来選挙管理委員会の責務であり,相互補完体制の確立という意味からも選挙管理委員会においてもチェックするという責任を留保しておく必要があるためである。そして,選挙人名簿への被登録資格の認定を住民基本台帳の記録と結び付けることにより,詐偽投票,二重登録の防止を図り,選挙人名簿の正確性の確保を図ることがで
きるのであって,合理性を有するものと認められる。
そもそも,国内に居住しながら住所を持てないというのは,公職選挙法の制度上は選挙人名簿に登録される途が開かれながら,
多分に政治的,
社会的,経済的要因等の影響が個々人に投影された結果であって,個別にそれら諸要因が除去されることにより選挙人名簿に登録するという解
決が予定されているというべきである。そして,貧困等を理由に住居を有することができなくなり,一時的に住所を持つことができなくなったとしても,生活困窮者自立支援法(以下自立支援法という。)による生活困窮者住居確保給付金の支給(同法3条3項,6条)や,生活保護法に基づく住居扶助(同法14条)等を活用することにより,住所を
持つことが可能となり,ひいては選挙人名簿に登録されることも可能となる。そうすると,貧困等を理由に住居を有することができなくなり,
一時的に住所を持つことができなくなる者がいるとしても,そのこと自体を理由に,公職選挙法21条1項が,このような者の選挙権を合理的理由なく制約しているということはできない。

争点13(憲法改正手続法22条1項の憲法適合性)について
(原告の主張)
(ア)

判断枠組み
憲法改正手続法22条1項の違憲性を判断する際の違憲審査基準は,
平成17年最高裁判決と同様に,厳格な基準が適用されなければならない。
(イ)

憲法改正手続法22条1項が違憲であること
憲法改正手続法22条1項が定める投票人名簿への登録要件の合憲性
については認めるものの,同項1号及び2号に

ただし,住所を有しない日本国民については資格審査をして投票人名簿に登録する。

旨の規定がないことが違憲である。
また,同項が定める要件のうち,投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村の住民基本台帳に1日以上記録されていることという要件は,実質的には,①投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村に1日以上居住していることないし同15日間中,最初に居住した市町村を証明できること,②投票日の50日前
から35日前の15日間中,いずれかの市町村に1日以上居住する際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことであるところ,上記②の要件は不合理であるとともに,憲法13条,14条1項の規定及び憲法の基本原理に抵触しているから,上記②の要件を満たさない者の投票を認めたとしても二重投票ないし投票人名簿への二重登録
を防止することができるのであれば,上記規定は違憲となる。
しかるところ,本人の申請に基づく資格審査制度を採用すれば,家賃
等支払困難国民が憲法改正手続法に基づく国民投票権を行使したところで投票の公正は何ら脅かされず,
投票の公正を確保し得る。
したがって,
同法22条1項は,上記②の要件の部分に限り違憲である。(被告らの主張)
(ア)

判断枠組みについて
憲法96条は,国会による憲法改正の発議に対する国民の承認のため
に行われる国民投票の具体的な方法の決定を国会の広い裁量に委ねていると解される。
そうすると,国会が国民投票の具体的な方法についての法律を制定した場合,その具体的な法律の内容が国会の広い裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に初めて憲法に違反することになるものと解するべきである。
原告は,平成17年最高裁判決の判示する厳格な基準が適用されなければならない旨主張するが,同判決は,国外に居住しているため国内の
市町村の区域内に住所を有していない在外国民が当時の公職選挙法の規定により選挙権の行使の機会を絶対的に失っていた事案であるのに対し,本件は,原告が,国民投票の制度上は投票人名簿に登録され投票権を行使し得る途が開かれながら,経済的事情等により一時的に住民基本台帳に登録されておらず,投票権の行使が事実上できない状態となって
いるにすぎず,生活保護等の公的扶助を活用するなどして住所を有するに至り,
住民基本台帳に記録されれば,
投票権の行使が可能となるから,
上記判決とは事案を異にする。
(イ)

憲法改正手続法22条1項が合憲であること
以下のとおり,憲法改正手続法22条1項の定める住民基本台帳への
登録要件の目的は正当である上,住民基本台帳を基に投票人名簿に登録することは合理性を有するから,国会の広い裁量権を考慮してもなおそ
の限界を超えており,これを是認することができない場合に該当しないことは明らかであるから,同項の規定は合憲である。
上記登録要件は,二重投票や不正投票の防止を図るために設けられたものであるところ,憲法96条1項の定める過半数の賛成の有無を正確に把握するためには,二重投票や不正投票を防止する必要があるの
であるから,上記登録要件の目的が正当であることは明らかである。また,二重投票等を防止するためには,投票人個々人を的確に把握する投票人名簿が作成される必要があるところ,投票人名簿を,住民に関する事務処理の基礎であるとともに,住民の住所に関する正確かつ統一的な記録である住民基本台帳の記録を基に作成することは合理性を有す
る。

争点14(公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使のための立法不作為についての違法性)について
(原告の主張)

(ア)

前記シにおける(原告の主張)のとおり,公職選挙法21条1項の
規定は憲法及び条約に反し無効である。
(イ)

平成8年にB規約に関する一般的意見25が採択されてから20年
以上が経過していること,平成17年最高裁判決は,選挙の公正を確保するためのやむを得ない事由がない限り,日時の経過により住所のない状態が変わりうる日本国民に対する国政選挙権行使機会の剥奪につき,憲法44条ただし書等に違反すること,この国政選挙権行使機会の剥奪につき国会議員が放置すればその立法不作為は国家賠償法上違法の評価を受けることを判示し,その後12年も経過していること,平成19年3月15日に行われた参議院厚生労働委員会における質問及び答弁によ
り,家賃等支払困難国民の住所問題が顕著になったにもかかわらず,その後10年以上が経過していることなどを踏まえると,平成29年時点
においても国会議員が公職選挙法21条1項の改正を怠り,必要な立法措置を講じていないことは,もはや国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるというべきである。
(ウ)
そして,原告は,上記立法不作為により,平成29年10月22日
に実施された衆議院議員総選挙において選挙権を行使することができず,精神的苦痛を被った。その慰謝料は5000円が相当である。(被告国の主張)
(ア)

国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上
違法となるかどうかは,立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。
法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程におけ
る行動が職務上の法的義務に違反したものとして,例外的にその立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることがあると解される(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁(以下昭和60年最高裁判決という。),平成17年最高裁判決,最高裁平成27年12月16日大法廷判決・民集69巻8
号2427頁(以下平成27年最高裁判決という。))。
(イ)

上記シにおける(被告らの主張)のとおり,公職選挙法21条1項
には合理性が認められ,憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものではない。したがって,公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使に係る国会議員の立法不作為は,国家賠償法上違法とは認められない。
(ウ)

原告が主張する損害については争う。

第3
1
当裁判所の判断
争点1(請求2に係る訴えの適法性)及び争点2(請求3に係る訴えの適法性)について
(1)

原告は,
請求2に係る訴え及び請求3に係る訴えにおいて,
本件工作物を

生活の本拠とした状態を継続しながら,①次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあることの確認及び②次回の憲法改正手続法に基づく国民投票において,投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあることの確認を求めているところ,こ
れは,原告の主張によれば,本件不許可処分が取り消されることを前提とするものであり,本件不許可処分が取り消されると,原告が本件工作物を生活の本拠として住基法の規定に基づき住民基本台帳に記録されることになるとして,次回の衆議院議員総選挙及び次回の憲法改正手続法に基づく国民投票において,投票をすることができる地位等にあることの確認を求めるもので
ある。
(2)

原告が住民基本台帳に記録されている場合には,
住基法施行令8条等によ

り当該記録が消除されるなどしない限り,選挙人名簿に登録されることとされており(公職選挙法21条1項,住基法15条1項),同名簿に登録されなかった場合でも,市町村の選挙管理委員会に対し異議を申し出る方法(公職選挙法24条1項)等により同名簿に登録される途が存在する。そうすると,原告が住民基本台帳に記載されることを前提とすれば,選挙人名簿に登録されないことが未確定である現時点の段階において,原告が求める①次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位
といった法的地位に危険や不安定な状態が生じているとも,将来的に生じる蓋然性が高いともいえず,
これを確認する必要性はないといわざるを得ない。

(3)

また,
原告が住民基本台帳に記録されている場合には,
住基法施行令8条

等により当該記録が消除されるなどしない限り,投票人名簿に登録されることとされており(憲法改正手続法22条1項),同名簿に登録されなかった場合でも,市町村の選挙管理委員会に対し異議を申し出る方法(同法25条1項)等により同名簿に登録される途が存在する。そうすると,原告が住民
基本台帳に記載されることを前提とすれば,投票人名簿に登録されないことが未確定である現時点の段階において,原告が求める②次回の憲法改正手続法に基づく国民投票において,投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位といった法的地位に危険や不安定な状態が生じているとも,将来的に生じる蓋然性が高いともいえず,これを確認する必要性はない
といわざるを得ない。
(4)

以上より,
請求2に係る訴え及び請求3に係る訴えは,
いずれも確認の利

益を欠き,不適法である。
2
争点3(請求5に係る訴えの適法性)について
原告は,請求5に係る訴えにおいて,被告国が管理・占有する土地につき,
住居を有するための使用権を有することの確認を求めているところ,原告が係る土地につき,住居を有するための使用権を取得するためには,本件土地について本件申請をし,本件不許可処分に対する取消訴訟を提起したように,具体的な土地について法令に基づき使用するための許可の申請をした上で,不許可処分がされた場合に,その処分の取消訴訟等を提起することが有効かつ適切で
あり,上記のような確認を求める訴えを選択することは適切でない。したがって,請求5に係る訴えは,確認の利益を欠き,不適法である。3
争点4(請求6に係る訴えの適法性)について
(1)

請求6に係る訴えは,
原告が,
次回の衆議院議員総選挙における選挙区選

出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(以下ホームレス自立支援特別措置法という。)
がいうホームレス(以下,単にホームレスという。)として住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあることの確認を求めるものであるところ,その訴えの性質は,公法上の法律関係に関する確認の訴え(行訴法4条)であると解される。
このような公法上の法律関係に関する確認の訴えも,他の行政事件及び民事事件に係る訴えと同様に,その対象は,法律上の争訟に当たるものであることを要するところ(裁判所法3条1項参照),ここにいう法律上の争訟とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する現実の
紛争であって,それが法令の適用によって終局的に解決できるものをいうものと解すべきである(最高裁昭和41年2月8日第三小法廷判決・民集20巻2号196頁,最高裁昭和56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁,最高裁平成14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁等参照)。

(2)

憲法においては,選挙人の資格や投票の方法その他両議院の議員の選挙
に関する事項は法律で定めるべきものとされており(憲法44条本文,47条),日本国民が現に選挙権を行使するための具体的な制度や仕組みをどのように定めるのかは,国会の立法裁量に委ねられているものと解される。そして,国会は,上記の憲法の規定を受け,公職選挙法において,選挙人の資格や投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項を定めており,具体的には,選挙人名簿制度を採用し(同法第4章),選挙管理委員会が住民基本台帳の記録に基づいて職権で選挙人名簿の登録を行い,これに登録された当該市町村の区域内に住所を有する日本国民の投票を認める制度を創設した上で(同法19条2項,21条1項,22条1項及び3項,42条1項
本文,住基法15条1項),選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢満18年以上の日本国民で,その者に係る登録市町村等の住
民票が作成された日から引き続き3か月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行うとしている(公職選挙法21条1項)。このように,上記の憲法の規定を受け,国会がその裁量に基づき定めた選挙制度の下で,はじめて具体的な選挙権の行使が可能になるといえる。原告は,ホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位等の確認を求めているが,上記のとおりの選挙制度が定められていることからすると,住所を有さず,住民基本台帳に記録されていない日本国民が選挙人名簿に登録されることは予定されておらず,住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら選挙権を行使することは,現行
の公職選挙法その他の法令を解釈することによっては,導き出すことはできないというべきである。そして,このことは,特定の条項が憲法違反等により無効とされたとしても,具体的な選挙権の行使を可能とする法令上の根拠が生じることにはならないから,原告が確認を求める法的地位は,国会において,新たに立法を行わなければ存在しえず,公職選挙法等の現行の法令の
規定を適用することによっては導き出すことができない法的地位であるといわざるを得ない。
(3)

原告の主張について
これに対し,原告は,公職選挙法21条1項の規定は,本文が違憲であるのではなく,同項に

ただし,住所を有さない日本国民については資格審査をして選挙人名簿に登録する。

旨のただし書が定められていないことが違憲であるとし,そのような判断をすることは,立法者意思に反するものではなく,立法権を侵害するものではないなどと主張する。
しかしながら,そのようなただし書が定められていないことが違憲である旨の判断をすることは,裁判所が,同法に定めのない新たな選挙権行使
の仕組みの創設を認めることにほかならない。そして,仮に,そのような仕組みを創設するとした場合,
その対象者の範囲,
資格を得るための方法,

具体的な要件等に関し,立法政策上,複数の選択肢が存在することは明らかであり,一義的に導かれるものではないことからしても,裁判所が新たな仕組みの創設を認めることは,国会の立法作用を行うことに等しく,許されないというほかない。

また,原告は,公職選挙法21条1項が定める選挙人名簿の登録のための要件のうち,継続して3か月以上いずれかの市町村の住民基本台帳に記録されていることという要件は,実質的には,①一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住していることを証明できること,②一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住する際には,住居を私有すること又は
家賃等を支払っていることに分けられるところ,上記②の要件は不合理であって憲法44条ただし書等に反し無効であるから,同要件を除いて公職選挙法21条1項の要件を充足すれば,同項に基づいて投票をすることができる地位が導き出される旨主張する。
しかしながら,原告がいう継続して3か月以上いずれかの市町村の住民
基本台帳に記録されていることという要件(これは,同項のその者に係る登録市町村等(中略)の住民票が作成された日から引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者という要件を表現し直したものと解される。)を,原告がいう上記①,②の要件に分けられるとする解釈は,独自の解釈であって,採用することはできないから,その主
張は前提を欠く。また,この点を措くとしても,既にみたように,同法は,選挙権行使の制度として選挙人名簿制度を採用し,選挙人名簿に登録した日本国民に限って選挙権の行使を認めるものとしているところ,原告がいう上記②の要件を無効とした場合,上記①の要件に従って選挙人名簿への登録を認めることになるが,居住とは(住基法にいう住所を有し

ないことを前提に)どのような状態をいうのか,その状態にあることをどのような方法で証明させるのかなどが不明であり,市町村の選挙人名簿に
登録するための条件や方法の定めがないこととなるから,結局のところ,上記②の要件を除いた公職選挙法21条1項の要件を充足する者について,選挙人名簿に登録することはできず,投票をすることができる地位を導くことはできないといわざるを得ない。また,その点で,原告が引用する平成20年最高裁判決とも事案が異なるというべきである。


さらに,原告は,公職選挙法を改正しなくとも,同法42条1項ただし書を根拠に,原告に対しても国政選挙において投票をすることができる法的地位が認められるから,法律上の争訟性が認められる旨主張する。しかしながら,上記説示のとおり,仮に同法21条1項の定める要件を一部無効としたとしても,それによって選挙人名簿に登録されるべき地位
を一義的に導くことはできないのであるから,裁判所が選挙人名簿に登録されるべき旨の判決を言い渡すことも不可能であり,同法42条1項ただし書を適用する場面も生じないから,原告の上記主張は採用することができない。
(4)

以上のとおり,
請求6に係る訴えに係る紛争は,
法令の適用により終局的

に解決できるものではなく,法律上の争訟性を欠くため,不適法である。4
争点5(請求7に係る訴えの適法性)について)
(1)

請求7に係る訴えは,
原告が,
次回の憲法改正手続法に基づく国民投票に

おいて,ホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあることの確認を求めるものであるところ,その訴えの性質は,公法上の法律関係に関する確認の訴え(行訴法4条)であると解されるため,上記3(1)で述べたとおり,法律上の争訟に当たるものであることを要する(裁判所法3条1項参照)。

(2)

憲法の改正手続について規定する憲法96条1項が,国会による憲法改
正の発議に対する日本国民の承認のために行われる国民投票の具体的な方法
の決定につき何ら定めていないことからすれば,具体的な国民投票制度の仕組みをどのように定めるのかは,国会の裁量に委ねられているものと解される。
そして,国会は,憲法改正の発議に対する日本国民の承認のために行われる国民投票の仕組みについて,投票人名簿制度を採用し(憲法改正手続法第2章第3節),選挙管理委員会が住民基本台帳の記録に基づいて職権で投票人名簿の登録を行い,これに登録された日本国民の投票を認める制度を創設した上で
(同法20条1項,
22条1項及び2項,
23条,
53条1項本文)

投票人名簿の登録は,
国民投票の期日現在で年齢満18年以上の日本国民で,

国民投票の期日前50日に当たる日(登録基準日)に当該市町村の住民基本台帳に記録されている者(同法22条1項1号),又は,登録基準日の翌日から14日以内に当該市町村の住民基本台帳に記録された者であって,登録基準日においていずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていないもの(同項2号)について行うとしている。
このように,上記の憲法の規定を受け,国会がその裁量に基づき定めた制
度の下で,はじめて具体的な国民投票の投票権の行使が可能になるところ,上記のとおりの憲法改正手続法が定める制度をみると,住所を有さず,住民基本台帳に記録されていない日本国民がかかる投票権を行使することは,特定の条項を憲法違反等により無効とすることも含め,現行の憲法改正手続法その他の法令を解釈することによっては,導き出すことはできないというべきであり,原告が請求7に係る訴えにおいて確認を求める法的地位は,国会において,新たに立法を行わなければ存在しえず,憲法改正手続法等の現行の法令の規定を適用することによっては導き出すことができない法的地位であるといわざるを得ない。

(3)

原告の主張について
これに対し,原告は,憲法改正手続法22条1項の規定は,本文が違憲
であるのではなく,同項に

ただし,住所を有さない日本国民については資格審査をして投票人名簿に登録する。

旨のただし書が定められていないことが違憲であるとし,そのような判断をすることは,立法者意思に反するものではなく,立法権を侵害するものではないなどと主張する。しかしながら,そのようなただし書が定められていないことが違憲であ
る旨の判断をすることは,裁判所が,同法に定めのない新たな投票権行使の仕組みの創設を認めることにほかならず,仮に,そのような仕組みを創設するとした場合,その対象者の範囲,資格を得るための方法,具体的な要件等に関し,
立法政策上,
複数の選択肢が存在することは明らかであり,
一義的に導かれるものではないことからしても,裁判所が新たな仕組みの
創設を認めることは,国会の立法作用を行うことに等しく,許されないというほかない。

また,原告は,憲法改正手続法22条1項が定める要件として,日本国民であること及び18歳以上であることのほかに,投票日の50日前
から35日前の15日間中,いずれかの市町村の住民基本台帳に1日以上記録されていることが必要であり,この要件は,実質的には,①投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市町村に1日以上居住していること又は同15日間中,最初に居住した市町村を証明できること,②投票日の50日前から35日前の15日間中,いずれかの市
町村に1日以上居住する際には,住居を私有すること又は家賃等を支払っていることに分けられるところ,上記②の要件は不合理であるとともに憲法14条1項等に反し無効であるから,同要件を除いた憲法改正手続法22条1項の要件を充足すれば,同項に基づいて投票をすることができる地位が導き出される旨主張する。

しかしながら,
原告がいう投票日の50日前から35日前の15日間中,
いずれかの市町村の住民基本台帳に1日以上記録されていることとの要件
(これは,同項1号の国民投票の期日前50日に当たる日において,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者及び同項2号の登録基準日の翌日から14日以内に当該市町村の住民基本台帳に記録された者であって,登録基準日においていずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていないものの要件をあわせて表現し直したものと解される。)を,原告
がいう上記①,
②の要件に分けられるとする解釈は,
独自の解釈であって,
採用することはできないから,その主張は前提を欠く。また,この点を措くとしても,既にみたように,同法は,投票権行使の制度として投票人名簿制度を採用し,投票人名簿に登録した日本国民に限って投票権の行使を認めるものとしているところ,
原告がいう上記②の要件を無効とした場合,

上記①の要件に従って投票人名簿への登録を認めることになるが,居住
とは(住基法にいう住所を有しないことを前提に)どのような状態をいうのか,その状態にあることをどのような方法で証明させるのかなどが不明であり,市町村の投票人名簿に登録するための条件や方法の定めがないこととなるから,結局のところ,上記②の要件を除いた憲法改正手続法
22条1項の要件を充足する者について,投票人名簿に登録することはできず,投票をすることができる地位を導くことはできないといわざるを得ない。また,その点で,原告が引用する平成20年最高裁判決とも事案が異なるというべきである。

さらに,原告は,憲法改正手続法を改正しなくとも,同法53条1項ただし書を根拠に,原告に対しても国民投票において投票をすることができる法的地位が認められるから,法律上の争訟性が認められる旨主張する。しかしながら,上記説示のとおり,仮に同法22条1項の定める要件を一部無効としたとしても,それによって投票人名簿に登録されるべき地位
を一義的に導くことはできないのであるから,裁判所が投票人名簿に登録されるべき旨の判決を言い渡すことも不可能であり,同法53条1項ただ
し書を適用する場面も生じないから,原告の上記主張は採用することができない。
(4)

以上のとおり,
請求7に係る訴えに係る紛争は,
法令の適用により終局的

に解決できるものではなく,法律上の争訟性を欠くため,不適法である。5
争点6(請求8に係る訴えの適法性)について
請求8に係る訴えは,原告が衆議院議員総選挙の選挙権行使のための選挙人名簿に登録されていないことは違法であることの確認を求めるものであり,原告は,これを抗告訴訟としての不作為の違法確認の訴え(行訴法3条5項)であるとする。
ところで,抗告訴訟としての不作為の違法確認の訴えは,行政庁に対し,法
令に基づく申請をしていることが前提とされているから(同項),そのような申請がされていなければ,訴訟要件を欠くものとして不適法となる。公職選挙法22条1項及び3項の各規定等を踏まえると,同法が,個々の日本国民に対し,選挙人名簿の登録に関する申請権を付与していないことは明らかである。原告は,住基法に基づく転入届の受理を求める行為が,選挙人名簿
の登録に係る申請に当たると主張するが,同行為が直接選挙人名簿への登録を求めるものとみることは困難であることからすると,これをもって行訴法3条5項の法令に基づく申請に該当するとはいえない。
したがって,請求8に係る訴えは,不作為の違法確認の訴えの訴訟要件を欠き,不適法であるといわざるを得ない。

6
争点7(請求9に係る訴えの適法性)について
原告は,
請求9に係る訴えをいわゆる無名抗告訴訟であると構成するところ,原告が選挙人名簿に登録される地位の確認を求める点では,公法上の地位を確認する法律関係に関する確認の訴えと同様であり,かかる地位が公職選挙法等
の法令の解釈により導き出すことができないことは,前記3で検討したとおりであって,
法律上の争訟性を欠くというべきであるから,
請求9に係る訴えは,

不適法である。
7
争点8(請求10に係る訴えの適法性)について
原告は,請求10に係る訴えをいわゆる非申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)であると構成するところ,原告について選挙人名簿に登録すべきことを導くためには,原告が選挙人名簿に登録される地位にあることが前提にな
るところ,そのような地位が公職選挙法等の法令の解釈により導き出すことができないことは,前記3で検討したとおりであって,そうすると,原告が求める義務付けの対象となる行為も法令の解釈により導き出すことはできないから,かかる義務付けを求める訴えについても法律上の争訟性を欠くというべきであるから,請求10に係る訴えは,不適法である。

8
争点9(本件不許可処分の適法性)について
(1)

河川法24条の趣旨は,河川区域内の土地は,本来的に,河川管理施設と
相まって,雨水等の流路を形成し,洪水を疎通させ,洪水による被害を除却し又は軽減させるためのものであり,かつ,公共用物として一般公衆の自由な使用に供されるべきものであるから,その占用は原則として認めるべきではないところ,占用の目的や態様によっては公共の利益が増進されるなど,その占用を認める必要がある場合もあることから,そのような場合には特定人に対して本来の用法を超えて特別の使用権を設定することにあると解される。また,同法26条の趣旨は,河川区域内の土地において工作物を新築す
ることなどの行為は,河川における一般公衆の自由使用を妨げたり,洪水の際に洪水の流下を妨げ災害を招いたりするなど,公共の利益に反するおそれがあるため,これらの行為を一般的に禁止し,個別の行為ごとに許可申請に基づき,支障がないと認められる場合には禁止を解除し許可することにあると解される。

(2)

ところで,
河川法24条は土地の占用の許可基準を,
同法26条1項は工

作物の新築等の許可基準を,特に規定していない。これは,許可権者である
河川管理者に,各許可申請に対する判断を行うに当たり,同法1条が規定する目的や上記各趣旨を踏まえつつ適切に判断することを求める趣旨,すなわち,専門技術的,政策的な見地から,各許可申請に対する判断を河川管理者の合理的な裁量に委ねる趣旨であると解される。そうすると,河川管理者による判断が,裁量権の行使としてされたことを前提として,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,
裁量権の範囲の逸脱又は濫用として違法となるものと解される。
そして,同法24条の裁量基準として本件占用許可準則が,同法26条1項の裁量基準として本件設置許可基準が設定されているところ,これらは同法
1条が規定する目的や上記各趣旨を踏まえた合理性を有する裁量基準であると認められるため,当該裁量基準によることに合理性が認められないなどの特段の事情がない限り,これらに基づいて行われた行政処分は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用とは認められないものと解される。
(3)ア

本件占用許可準則第5第1項は,
河川敷地の占用は,
同準則第6に規定

する占用主体がその事業又は活動に必要な同準則第7第1項に規定する占用施設について許可申請した場合で,同準則第8から第11までの基準に該当し,かつ,河川敷地の適正な利用に資すると認められるときに許可することができるものとする旨規定し,同準則第6柱書本文は,占用の許可を受けることのできる者は,各号に掲げるものとする旨規定するところ,
原告が上記各号のいずれにも該当しないことは明らかである。そして,同準則第6柱書ただし書は,同準則第7第1項7号に規定する占用施設を設置することが必要やむを得ないと認められる住民も占用主体として認められる旨規定するところ,同号は次のイからニまでに掲げる施設その他の住民の生活又は事業のために設置が必要やむを得ないと認められる施設
と規定する。本件工作物が同号イからニまでに掲げる施設に該当しないことは明らかであり,また,原告が主張するところを踏まえても,客観的に
みると,
原告が河川敷地外の場所において起臥寝食することは可能であり,河川敷地内において起臥寝食することが必要やむを得ないとは認められないため,本件工作物がその他の住民の生活(中略)のために設置が必要やむを得ないと認められる施設に該当するとは認められず,ひいては同準則第6柱書ただし書に規定する占用主体とも認められないとした近畿地
方整備局長の判断が,重要な事実の基礎を欠くとも,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くともいえない。

また,本件設置許可基準第3第1号は,工作物の設置等の許可は,当該工作物の機能上,河川区域に設ける以外に方法がない場合又は河川区域に設置することがやむを得ないと認められる場合に行う旨規定するところ,
本件工作物は,原告が個人として起臥寝食に利用するものであるから,本件工作物の機能上,公共用物である河川区域に設ける以外に方法がない場合に該当するとは認められず,また,河川区域に設置することがやむを得ないと認められる場合に該当するとも認められないとした近畿地方整備局長の判断が,重要な事実の基礎を欠くとも,社会通念に照らし著しく妥当
性を欠くともいえない。

以上のとおり,本件申請につき,本件占用許可準則及び本件設置許可基準の各要件を充足しないとした近畿地方整備局長の判断は,裁量権の行使として合理性を欠くものとはいえない。そして,原告が主張する諸事情を考慮しても,原告に本件工作物を設置させて公共用物である河川敷地を例
外的に占用させなければならない上記特段の事情は認められない。(4)

原告は,
本件土地が,
原告にとって公共の福祉を最も脅かさずに住居を有

するための土地使用権を行使できる場所であるにもかかわらず,近畿地方整備局長が,原告に対し,代替地を指定することなく本件不許可処分を行ったことは,憲法13条,22条1項,31条に違反するものであって,憲法98条1項の規定に基づき,違憲無効となるものである旨主張する。しかしな
がら,財産権(土地所有権)が憲法29条1項及び2項により保障されていることとは異なり,住居を有するための土地(公共用物たる河川敷)使用権が憲法13条,22条1項に内在された侵されることのない権利として保障されていると解することはできず,また,代替地を指定することなく本件不許可処分を行ったとしても,適正手続の保障を定めた憲法31条に違反する
ともいえないから,原告の上記主張を採用することはできない。
(5)

以上より,
近畿地方整備局長が原告に対してした本件不許可処分は,
裁量

権の範囲の逸脱又は濫用はなく,適法であると認められる。
9
争点14(公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使のための立法不作為についての違法性)について
(1)

国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるところ,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり,立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。そして,上記行動についての評価は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって,仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会議
員の立法行為又は立法不作為が直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
もっとも,法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃
等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為
は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(昭和60年最高裁判決,平成17年最高裁判決,平成27年最高裁判決参照)。
(2)ア

そこで,公職選挙法21条1項が選挙人名簿への被登録資格に住所要
件を求めている部分(なお,3か月継続登録要件のうち住民基本台帳への
記録を必要とする部分を含む。以下同じ。)が,憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして,憲法13条,14条1項,15条1項及び3項,44条ただし書に違反するものであることが明白であるといえるか,以下検討する。

憲法上,選挙人の資格や投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされており(憲法44条本文,47条),憲法は,日本国民が現に選挙権を行使するための具体的な制度,仕組みの創設・形成を,国会の立法裁量に委ねているものと解される。もとより選挙権は最も重要な基本権ではあるが,その具体的な内容や行使方法は,選挙に関する具体的な法律制度によって形成されるべきものであって,選挙
の公正の確保(不正投票の防止等)及び円滑な管理執行といった要請をも考慮する必要があるから,立法目的の実現を目指して構築された制度による制約を伴う場合があることは否定し難い。

国会は,日本国民が現に選挙権を行使するための具体的な制度,仕組みとして,選挙人名簿制度を採用し,選挙管理委員会が住民基本台帳の記録に基づいて職権で選挙人名簿の登録を行い,これに登録された当該市町村の区域内に住所を有する日本国民の投票を認める制度を創設しているところ(公職選挙法19条2項,21条1項,22条1項及び3項,42条1項本文,住基法15条1項),その趣旨は,選挙人名簿の被登録資格を住
民基本台帳の記録と結び付けることによって,不正な投票(選挙直前に投票のみを目的とした選挙期間に限定した住民票の異動等)や二重登録等を
防止し,選挙人名簿の正確性の確保を図ることにあると解される。また,公職選挙法21条1項が,選挙人名簿の被登録資格として,住所要件を定めた趣旨は,選挙人名簿の登録の基準日に当該市町村の区域内に住所を有しないことが明らかな者を選挙人名簿に登録しない措置を,市町村の選挙管理委員会がとることを可能として,上記の住民基本台帳の記録と結び付
ける仕組みと相俟って,
選挙人名簿の正確性を図る趣旨であると解される。

このような公職選挙法21条1項の立法目的は,選挙の公正の確保(不正投票の防止等)及び円滑な管理執行といった要請に沿うものである上,選挙人名簿の登録を住民基本台帳の記録と結び付けた上で住所要件によって選挙人名簿の正確性を担保する制度を採用したことは,国会に与えられ
た裁量権の行使として合理性を有するものと認められる。同項が選挙人名簿の被登録資格として住所要件を定めていることにより,貧困等を理由に住所を持つことができず選挙人名簿に登録されない日本国民が,全国に一定数存在することは否定し難い事実ではあるが(ホームレス数の全国調査によれば,平成15年度に約2万5000人であったのが徐々に減少して
いるものの,平成29年度においてもなお約5500人存在している(乙6)。),平成14年にホームレス自立支援特別措置法が,平成27年に自立支援法が施行され,生活困窮者に対する支援提供の拡充が進められており,貧困等を理由に住所を持つことができない国民が,生活保護法による住宅扶助制度(同法14条,33条),自立支援法による生活困窮者住
居確保給付金の支給制度(同法3条3項,6条)等を利用するなどして,住所を有しない状態を解消し,住民基本台帳への記録,ひいては選挙人名簿への登録を経て,
選挙権を現実に行使することが可能となるのであって,
上記のような法的整備を進めつつ,住所要件を改正しないことが国会の立法措置として合理性を欠くものとはいえない。


したがって,平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙当時にお
いて,公職選挙法21条1項の選挙人名簿への被登録資格に住所要件を求めている部分が,憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であったとはいえないから,公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使に係る国会議員の立法不作為が,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものとはいえない。
また,原告は,公職選挙法21条1項がB規約25条に違反するとも主張するが,選挙人名簿への被登録資格に住所要件を求める同法21条1項が合理性を有するものと認められることは,上記説示のとおりであり,同
項がB規約25条に違反するものであることが明白であったともいえないから,
上記国会議員の立法不作為が,
国家賠償法1条1項の規定の適用上,
違法の評価を受けるものとはいえない。
(3)ア

原告は,
国会が,
家賃等支払困難国民に対する国政選挙権の行使機会の

剥奪につき,社会権を行使させることによって解決を図るという意思を何ら示していないのであるから,同解決に係る方針を裁判所が決定することは,憲法41条に違反する旨主張する。その趣旨は明らかではないが,裁判所が国会の意図していない立法意思を認めることは,同条に照らして許されないとの主張と解される。
しかしながら,
わが国においては,
昭和25年に生活保護法が施行され,

同年当時から住宅扶助(同法14条,33条)を含む各種の保護の制度が設けられているほか,平成14年にホームレス自立支援特別措置法が施行され,ホームレスの人権に配慮し,かつ,地域社会の理解と協力を得つつ,必要な施策を講ずることにより,ホームレスに関する問題の解決に資することを目的とし(同法1条),同法3条1項1号が,住宅への入居の支援
等による安定した居住の場所の確保に関する施策を実施することにより,これらの者を自立させることを,同項3号が生活保護法による保護の実施
により,ホームレスに関する問題の解決を図ることを目標の一つとして,ホームレスの自立支援に関する措置を講じるように努め,平成27年には更なる支援提供のために自立支援法が施行され,生活困窮者自立相談支援事業の実施,生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進
を図ることを目的として(同法1条),ホームレスだけでなく,生活困窮者(現に経済的に困窮し,最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者。同法3条1項)を対象とし,同法3条3項及び6条が,生活困窮者の住居確保,ひいては自立した生活の確保のための措置を講じていることなどからすれば(乙6参照),国会は,貧困等のために住所を
有しない日本国民に対して,生活の本拠である住所を確保することで,選挙権の行使や行政上の各種サービスを享受させる立法意思を有していることが明らかであるから,原告の上記主張は採用することはできない。イ
原告は,生活保護の受給の可否については,行政府等が広範な裁量権を有しているのであるから,それは結局,行政府等に対し,家賃等支払困難国民による国政選挙権の行使の可否を決定する権限を与えることになるのであって,立憲主義の基本原理に反する旨,社会権を行使して家賃等の支払が可能になる場合があることを理由にしてそれを合憲と解することは,強い個人になろうとする権利を保障した憲法13条の趣旨,自由意志で投
票することを保障した憲法15条4項の趣旨,原告の宗教的信念を保障した憲法19条及び20条1項の趣旨を没却せしめるものである旨主張する。
しかしながら,貧困等により住所を有することができない日本国民が,生活保護法に基づく保護の申請を行い,同法が定める要件に該当すれば,
同法に基づく保護を受けることが可能になるというにとどまり,行政府に国政選挙権の行使の可否を決定する権限を与えることにはならないこと,
原告が主張する強い個人になろうとする権利は,憲法上保護された権利の範囲に含まれるほど具体性を有するものではないこと,貧困等により住所を有することができない日本国民が,生活保護制度等を利用することにより選挙権を現実に行使することが可能になると解することは,投票の秘密等を保障した憲法15条4項に反する余地はなく,また,原告に対し生活
保護制度等を利用することを強要するものではなく,思想良心の自由や信教の自由に対する制約には何ら当たらないことからすれば,原告の上記主張はいずれも採用することはできない。
第4
結論
以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち,請求2,請求3及び請求5から請求10までに係る部分は不適法であるからこれを却下し,請求1及び請求4はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

松永栄治
裁判官

宮端謙一
裁判官

渡邊直樹
(別紙1省略)
(別紙2省略)

(別紙3)
関係法令の定め
1
市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年8月4日条約第7号)すべての市民は,第2条に規定するいかなる差別(当裁判所注:人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財
産,出生又は他の地位等によるいかなる差別)もなく,かつ,不合理な制限なしに,次のことを行う権利及び機会を有する。(25条)
(a)直接に,又は自由に選んだ代表者を通じて,政治に参与すること。(b)普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ,選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において,投票し及び選挙される
こと。
(c)一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。
2
国際人権(自由権)規約委員会が平成8年7月12日に採択した市民的及び政治的権利に関する国際規約に関する一般的意見25
11締約国は,投票権を有するすべての人がこの権利を行使することができるように実効的な措置を講じなければならない。選挙人の登録が必要な場合は,登録を促進し,これを妨げてはならない。選挙人名簿への登録に居住要件が適用される場合,当該要件は合理的なものでなければならず,住居を有しない者から投票権を排除するような方法で制限を課してはならない。(省略)3
河川法
(1)

この法律は,河川について,洪水,津波,高潮等による災害の発生が防止さ
れ,河川が適正に利用され,流水の正常な機能が維持され,及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより,国土の保全と開発に寄与し,もって公共の安全を保持し,かつ,公共の福祉を増進することを目的とする。(1条)
(2)

河川区域内の土地(中略)を占用しようとする者は,国土交通省令で定める
ところにより,河川管理者の許可を受けなければならない。(24条)(3)

河川区域内の土地において工作物を新築し,
改築し,
又は除却しようとする

者は,国土交通省令で定めるところにより,河川管理者の許可を受けなければならない。(26条1項前段)
4
平成11年8月5日付け建設省河政発第67号建設事務次官通達河川敷地の占用許可についての別紙河川敷地占用許可準則(乙1)(1)

この準則において河川敷地とは,河川法(昭和39年法律第167号。
以下法という。)第6条第1項の河川区域内の土地(中略)をいう。(第2第1項)
この準則において占用の許可とは,法第24条の許可をいう。(第2第
2項)
(2)

河川敷地の占用は,第6に規定する占用主体がその事業又は活動に必要な
第7第1項に規定する占用施設について許可申請した場合で,第8から第11までの基準に該当し,かつ,河川敷地の適正な利用に資すると認められるときに許可することができるものとする。(第5第1項)
(3)

占用の許可を受けることのできる者は,
次の各号に掲げるものとする。
ただ

し,第7第1項第7号に規定する占用施設を設置することが必要やむを得ないと認められる住民,事業者等(中略)もそれぞれ当該占用施設について占用の許可を受けることができるものとする。(第6)
1国又は地方公共団体(道路管理者,都市公園管理者,下水道管理者,港湾管理者,漁港管理者,水防管理者,地方公営企業等である場合を含む。)2独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構,独立行政法人都市再生機構,地方公社等の特別な法律に基づき設立された法人3鉄道事業者,水上公共交通を担う旅客航路事業者,ガス事業者,水道事業者,電気事業者,電気通信事業者その他の国又は地方公共団体の許認可等を受けて公益性のある事業又は活動を行う者4水防団体,公益法人その他これらに準ずる者5都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第7項に規定する市街地開発事業を行う者又は当該事業と一体となって行う関連事業に係る施設(中略)の整備を行う者6河川管理者,地方公共団体等で構成する河川水面の利用調整に関する協議会等において,河川水面の利用の向上及び適正化に資すると認められた船舶係留施設等の整備を行う者(中略)
(4)

占用施設は,次の各号に規定する施設とする。(第7第1項)

1~67(中略)次のイからニまでに掲げる施設その他の住民の生活又は事業のために設置が必要やむを得ないと認められる施設イロ(5)採草放牧地ニ8いけすハ通路又は階段事業場等からの排水のための施設(省略)
工作物の設置,
樹木の栽植等を伴う河川敷地の占用は,
治水上又は利水上の

支障を生じないものでなければならない。この場合,占用の許可は,法第26条第1項又は第27条第1項の許可と併せて行うものとする。(第8第1項)前項の治水上の支障に係る技術的判断基準は,
次の各号に掲げるとおりとし,

河川の形状等の特性を十分に踏まえて判断するものとする。
(第8第2項本文)
1~45(中略)工作物は,原則として河川の縦断方向に設けないものであり,かつ,洪水時の流出などにより河川を損傷させないものであること
(6)

河川敷地の占用は,他の者の河川の利用を著しく妨げないものでなければ
ならない。(第9第1項)

(7)

河川敷地の占用は,
河川整備計画その他の河川の整備,
保全又は利用に係る

計画が定められている場合にあっては,当該計画に沿ったものでなければならない。(第10第1項)
(8)

河川敷地の占用は,
河川及びその周辺の土地利用の状況,
景観その他自然的

及び社会的環境を損なわず,
かつ,
それらと調和したものでなければならない。

(第11第1項)
5
平成6年9月22日付け建設省河治発第72号建設省河川局治水課長通達工作物設置許可基準について(乙2)(1)

この基準は,河川区域内における河川法(中略)第26条第1項に基づく工
作物の新築,改築又は除却(以下工作物の設置等という。)の許可に際し
て,工作物の設置位置等について河川管理上必要とされる一般的技術的基準を定めるものとする。(第1)
(2)

工作物の設置等の許可は,当該工作物の設置等が次の各号に該当し,かつ,
必要やむを得ないと認められる場合に行うことを基本とする。(第3)

1当該工作物の機能上,河川区域に設ける以外に方法がない場合又は河川区域に設置することがやむを得ないと認められる場合。2~56公職選挙法(1)(省略)


この法律は,日本国憲法の精神に則り,衆議院議員,参議院議員並びに地方
公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し,その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し,もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする。(1条)
(2)

日本国民で年齢満18年以上の者は,衆議院議員及び参議院議員の選挙権
を有する。(9条1項)
(3)

選挙人名簿は,永久に据え置くものとし,かつ,各選挙を通じて一の名簿と
する。(19条1項)

市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿の調製及び保管の任に当たるものとし,毎年3月,6月,9月及び12月(第22条及び第24条第1項において登録月という。)並びに選挙を行う場合に,選挙人名簿の登録を行うものとする。(同条2項)
(4)

選挙人名簿には,選挙人の氏名,住所(中略),性別及び生年月日等の記載
(中略)をしなければならない。(20条1項)
(5)

選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢満18年以
上の日本国民(中略)で,その者に係る登録市町村等(中略)の住民票が作成された日(中略)から引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行う。(21条1項)
市町村の選挙管理委員会は,政令で定めるところにより,当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を調査し,その者を選挙人名簿に登録するための整理をしておかなければならない。(同条5項)
(6)

市町村の選挙管理委員会は,
政令で定めるところにより,
登録月の1日現在

により,当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を同日(中略)に選挙人名簿に登録しなければならない。(22条1項本文)
市町村の選挙管理委員会は,選挙を行う場合には,政令で定めるところにより,当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(中略)が定める日(以下この条において選挙時登録の基準日という。)現在(中略)により,当
該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該選挙時登録の基準日に選挙人名簿に登録しなければならない。(同条3項)
(7)

選挙人は,
選挙人名簿の登録に関し不服があるときは,
次の各号に掲げる区

分に応じ,当該各号に定める期間又は期日に,文書で当該市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができる。(24条1項)
1第22条第1項の規定による選挙人名簿の登録(当該市町村の区域の全部又は一部を含む区域において選挙が行われる場合において,登録月の1日が当該選挙の期日の公示又は告示の日から当該選挙の期日の前々日までの間にあるとき(中略)を除く。)当該登録が行われた日の翌日から5日間2第22条第1項の規定による選挙人名簿の登録(当該市町村の区域の全部又は一部を含む区域において選挙が行われる場合において,登録月の1日が当該選挙の期日の公示又は告示の日から当該選挙の期日の前々日までの間にあるとき(中略)に限る。)及び同条3項の規定による選挙人名簿の登録当該登録が行われた日の翌日
市町村の選挙管理委員会は,前項の異議の申出を受けたときは,その異議の申出を受けた日から3日以内に,その異議の申出が正当であるかないかを決定しなければならない。その異議の申出を正当であると決定したときは,その異議の申出に係る者を直ちに選挙人名簿に登録し,又は選挙人名簿から抹消し,その旨を異議申出人及び関係人に通知し,併せてこれを告示しなければならない。その異議の申出を正当でないと決定したときは,直ちにその旨を異議申出
人に通知しなければならない。(24条2項)
(8)

前条第2項の規定による決定に不服がある異議申出人又は関係人は,当該
市町村の選挙管理委員会を被告として,決定の通知を受けた日から7日以内に出訴することができる。(25条1項)
(9)
市町村の選挙管理委員会は,第22条第1項又は第3項の規定により選挙
人名簿の登録をした日後,
当該登録の際に選挙人名簿に登録される資格を有し,
かつ,引き続きその資格を有する者が選挙人名簿に登録されていないことを知った場合には,その者を直ちに選挙人名簿に登録し,その旨を告示しなければならない。(26条)
(10)

市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録されている者が第11条第
1項若しくは第252条若しくは政治資金規正法第28条の規定により選挙権を有しなくなったこと又は当該市町村の区域内に住所を有しなくなったことを
知った場合には,
直ちに選挙人名簿にその旨の表示をしなければならない。
(2
7条1項)
(11)

市町村の選挙管理委員会は,当該市町村の選挙人名簿に登録されている者
について次の各号のいずれかに該当するに至ったときは,これらの者を直ちに選挙人名簿から抹消しなければならない。この場合において,第4号に該当す
るに至ったときは,その旨を告示しなければならない。(28条)

12(中略)前条第1項又は第2項の表示をされた者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後4箇月を経過するに至ったとき。3(12)(中略)4登録の際に登録されるべきでなかったことを知ったとき。

選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は,投票をすること
ができない。ただし,選挙人名簿に登録されるべき旨の決定書又は確定判決書を所持し,選挙の当日投票所に至る者があるときは,投票管理者は,その者に投票をさせなければならない。(42条1項)

選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録された者であっても選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されることができない者であるときは,投票をすることができない。(同条2項)
7
住民基本台帳法
(1)

この法律は,市町村(特別区を含む。以下同じ。)において,住民の居住関
係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。(1条)
(2)

市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行わ
れるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。(3条1項)
住民は,常に,住民としての地位の変更に関する届出を正確に行なうように努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。(同条3項)
(3)

市町村長は,
個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して,
住民基本台帳

を作成しなければならない。(6条1項)
(4)

住民票には,次に掲げる事項について記載(中略)をする。(7条)

1~67(中略)住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については,その住所を定めた年月日。8~14(5)(省略)


住民票の記載,消除又は記載の修正(中略)は,第30条の3第1項及び第
2項,第30条の4第3項並びに第30条の5の規定によるほか,政令で定めるところにより,第4章若しくは第4章の3の規定による届出に基づき,又は職権で行うものとする。(8条)
(6)

選挙人名簿の登録は,住民基本台帳に記録されている者又は公職選挙法第
21条第2項に規定する住民基本台帳に記録されていた者で選挙権を有するものについて行うものとする。(15条1項)
市町村長は,第8条の規定により住民票の記載等をしたときは,遅滞なく,
当該記載等で選挙人名簿の登録に関係がある事項を当該市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。(同条2項)
(7)

住民としての地位の変更に関する届出は,すべてこの章及び第4章の3に
定める届出によって行うものとする。(21条)
(8)

転入
(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい,
出生による場合を

除く。中略)をした者は,転入をした日から14日以内に,次に掲げる事項(中
略)を市町村長に届け出なければならない。(22条1項)
1氏名2住所3転入をした年月日4従前の住所5~78(省略)

住民基本台帳法施行令
(1)

市町村長は,新たに市町村の区域内に住所を定めた者その他新たにその市
町村の住民基本台帳に記録されるべき者があるときは,次項に定める場合を除き,その者の住民票を作成しなければならない。(7条1項)

(2)

市町村長は,
その市町村の住民基本台帳に記録されている者が転出をし,

は死亡したときその他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由が生じたときは,その者の住民票(中略)を消除しなければならない。(8条)
(3)

市町村長は,法(当裁判所注:住民基本台帳法をいう。)第4章又は法第4
章の3の規定による届出があったときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,第7条から前条までの規定による住民票の記載,消除又は記載の修正(中略)を行わなければならない。(11条)
9
日本国憲法の改正手続に関する法律
(1)

この法律は,日本国憲法第96条に定める日本国憲法の改正(以下憲法改正という。)について,国民の承認に係る投票(以下国民投票という。)に関する手続を定めるとともに,あわせて憲法改正の発議に係る手続の整備を行うものとする。(1条)
(2)
日本国民で年齢満18年以上の者は,国民投票の投票権を有する。(3条)
(3)

市町村の選挙管理委員会は,
国民投票が行われる場合においては,
投票人名

簿を調製しなければならない。(20条1項)

(4)

投票人名簿には,投票人の氏名,住所,性別及び生年月日等の記載(中略)
をしなければならない。(21条1項)
(5)

投票人名簿の登録は,国民投票の期日現在で年齢満18年以上の日本国民
で,次のいずれかに該当するものについて行う。(22条1項)
1国民投票の期日前50日に当たる日(以下「登録基準日という。)において,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者

2
登録基準日の翌日から14日以内に当該市町村の住民基本台帳に記録された者であって,登録基準日においていずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていないもの(登録基準日後当該住民基本台帳に記録された日までの間に他の市町村の住民基本台帳に記録されたことがある者及び当該住
民基本台帳に記録された日においていずれかの市町村の在外投票人名簿に登録されている者を除く。)」
市町村の選挙管理委員会は,政令で定めるところにより,当該市町村の投票人名簿に登録される資格を有する者を調査し,その者を投票人名簿に登録するための整理をしておかなければならない。(同条2項)
(6)

市町村の選挙管理委員会は,
中央選挙管理会が定めるところにより,
当該市

町村の投票人名簿に登録される資格を有する者を投票人名簿に登録しなければならない。(23条)
(7)
投票人は,
投票人名簿の登録に関し不服があるときは,
前条第1項の規定に

より中央選挙管理会が定める期間内に,文書で当該市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができる。(25条1項)
公職選挙法第24条第2項の規定は,前項の異議の申出について準用する。(同条2項)
(8)

公職選挙法第25条第1項から第3項までの規定は,投票人名簿の登録に
関する訴訟について準用する。この場合において,同条第1項中前条第2項とあるのは,日本国憲法の改正手続に関する法律第25条第2項において準用する前条第2項と読み替えるものとする。(26条1項)(9)

市町村の選挙管理委員会は,第23条の規定により投票人名簿の登録をし
た日後国民投票の期日までの間,当該登録の際に投票人名簿に登録される資格を有し,かつ,引き続きその資格を有する者が投票人名簿に登録されていないことを知った場合には,その者を直ちに投票人名簿に登録し,その旨を告示し
なければならない。(27条)
(10)

投票人名簿又は在外投票人名簿に登録されていない者は,投票をすること
ができない。ただし,投票人名簿に登録されるべき旨の決定書又は確定判決書を所持し,国民投票の当日投票所に至る者があるときは,投票管理者は,その者に投票をさせなければならない。(53条1項)

10

生活保護法

(1)

住宅扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対
して,左に掲げる事項の範囲内において行われる。(14条)
12(2)住居補修その他住宅の維持のために必要なもの

住宅扶助は,金銭給付によって行うものとする。但し,これによることがで
きないとき,これによることが適当でないとき,その他保護の目的を達するために必要があるときは,現物給付によって行うことができる。(33条1項)11
ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法

(1)

この法律は,自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくさ
れた者が多数存在し,健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに,地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ,ホームレスの自立の支援,ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し,国等の果たすべき責務を明らかにするとともに,
ホームレスの人権に配慮し,
かつ,
地域社会の理解と協力を得つつ,必要な施策を講ずることにより,ホームレスに関する問題の解決に資することを目的とする。(1条)

(2)

この法律においてホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他
の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。(2条)(3)

ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標は,次に掲げる事項とする。
(3条1項)
1自立の意思があるホームレスに対し,安定した雇用の場の確保,職業能力の開発等による就業の機会の確保,住宅への入居の支援等による安定した居住の場所の確保並びに健康診断,医療の提供等による保健及び医療の確保に関する施策並びに生活に関する相談及び指導を実施することにより,これらの者を自立させること。2(省略)3前2号に掲げるもののほか,宿泊場所の一時的な提供,日常生活の需要を満たすために必要な物品の支給その他の緊急に行うべき援助,生活保護法(昭和25年法律第144号)による保護の実施,国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護,地域における生活環境の改善及び安全の確保等により,ホームレスに関する問題の解決を図ること。
12

生活困窮者自立支援法

(1)

この法律は,
生活困窮者自立相談支援事業の実施,
生活困窮者住居確保給付

金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする。(1条)(2)

この法律において生活困窮者とは,就労の状況,心身の状況,地域社会
との関係性その他の事情により,現に経済的に困窮し,最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。(3条1項)
この法律において生活困窮者住居確保給付金とは,生活困窮者のうち離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し,居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い,又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったものであっ
て,就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対し支給する給付金をいう。(同条3項)
(3)

都道府県等は,その設置する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する生
活困窮者のうち第3条第3項に規定するもの(中略)に対し,生活困窮者住居確保給付金を支給するものとする。(6条1項)

前項に規定するもののほか,生活困窮者住居確保給付金の額及び支給期間その他生活困窮者住居確保給付金の支給に関し必要な事項は,厚生労働省令で定める。(同条2項)
13
生活困窮者自立支援法施行規則

(1)

法(当裁判所注:生活困窮者自立支援法をいう。)第6条第1項に規定する
厚生労働省令で定める生活困窮者は,
次の各号のいずれにも該当する者とする。
(10条)
1生活困窮者住居確保給付金の支給を申請した日(以下この条及び次条において「申請日という。)において,65歳未満の者であって,かつ,離職した日又は事業を廃止した日(以下離職等の日という。)から起
算して2年を経過していないものであること。
2
離職等の日においてその属する世帯の生計を主として維持していたこ
と。
3
申請日の属する月における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の収入の額を合算した額が,基準額及び当該生活困窮者が
賃借する住宅の1月当たりの家賃の額(中略)を合算した額以下であること。
4
申請日における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の所有する金融資産の合計額が,基準額に6を乗じて得た額(中略)以下であること。

5
公共職業安定所に求職の申込みをし,誠実かつ熱心に期間の定めのない
労働契約又は期間の定めが6月以上の労働契約による就職を目指した求職活動を行うこと。」
(2)

生活困窮者住居確保給付金は1月ごとに支給し,
その月額は,
生活困窮者が

賃借する住宅の1月当たりの家賃(中略)の額とする。(11条1項本文)(3)

生活困窮者住居確保給付金の支給期間は,3月とする。ただし,支給期間中
において生活困窮者住居確保給付金の支給を受ける者が第10条各号(第1号を除く。)のいずれにも該当する場合であって,引き続き生活困窮者住居確保給付金を支給することが当該者の就職の促進に必要であると認められるときは,3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができる。(12条1項)
以上

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