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源泉所得税納税告知処分取消等請求事件、更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件、源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
事件番号平成28(行ウ)434
事件名源泉所得税納税告知処分取消等請求事件,更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件,源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
裁判年月日令和元年5月30日
裁判所名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-05-30
情報公開日2020-03-26 12:00:53
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令和元年5月30日判決言渡
平成28年(行ウ)第434号

源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第1事

件)
平成28年(行ウ)第435号
更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事

件(第2事件)
平成28年(行ウ)第436号

源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第3事

件)
主1文
名古屋中税務署長が第1事件原告株式会社Dに対して平成26年12月5日付けでした平成21年11月分から平成24年12月分までの各月分
の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及びこれらに係る不納付加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。
2
昭和税務署長が第2事件原告Eに対して平成27年2月10日付けでした平成23年分及び平成24年分の各年分の所得税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分並びに平成26年12月26日
付けでした平成21年分から平成24年分までの各年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。
3
名古屋中税務署長が第3事件原告F株式会社に対して平成26年12月5日付けでした平成21年11月分から平成24年12月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及びこれらに係る不納付加算税
の各賦課決定処分をいずれも取り消す。
4
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1
請求

(第1事件)
主文第1項と同旨
(第2事件)
主文第2項と同旨
(第3事件)
主文第3項と同旨
第2

事案の概要
原告Eは,自らが所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下同じ。)2条1項5号の非居住者に該当するとの認識のもと,平成21年分から平成24年分(以下本件各年分という。)について,いずれも確定申告期限までに所得税の申告をしなかったところ,同項3号の居住者に
該当するとして所轄税務署長から期限後申告を勧奨されたため,本件各年分の所得税について期限後申告を行った上で,平成23年及び平成24年分の所得税について更正の請求をしたが,所轄税務署長から,いずれも更正をすべき理由がない旨の通知(以下本件各通知処分という。)を受け,さらに,本件各年分の所得税の無申告加算税に係る各賦課決定処分(以下第2事件各賦課決定処分という。)を受けた。また,原告Eが代表取締役を務める原告株式会社D(以下原告Dという。)及び原告F株式会社(以下原告Fという。)は,原告Eに対して支払った役員報酬について,原告Eが同項5号の非居住者に該当するとの前提で所得税を源泉徴収して納付していたところ,所轄税務署長から,原告Eが同項3号の居住者に該当するとして,平成21
年11月から平成24年12月までの各月分(以下本件各月分という。)の源泉徴収に係る所得税(以下源泉所得税という。)の納税告知処分(以下本件各納税告知処分という。)及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下第1・3事件各賦課決定処分という。)を受けた(以下,本件各通知処分及び第2事件各賦課決定処分と併せて本件各処分という。)。

本件の第1事件及び第3事件は,原告D及び原告Fが,本件各納税告知処分及び第1・3事件各賦課決定処分の取消しを求め,本件の第2事件は,原告Eが本件各通知処分及び第2事件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。1
関係法令の定め
(1)

本件に関する関係法令の定めは別紙2-1~3に記載したとおりである。
(2)

所得税法5条1項は,居住者(国内に住所を有し,又は現在まで引き続い
て1年以上居所を有する個人をいう。以下同じ。同法2条1項3号)は所得
税を納める義務がある旨を規定し,同法7条1項1号は,非永住者以外の居住者に対し,全ての所得について所得税を課する旨を規定している。一方,同法5条2項は,非居住者(居住者以外の個人をいう。以下同じ。同法2条1項5号)について,国内源泉所得(同法161条)を有する場合などに限定して所得税を納める義務がある旨を規定している。

また,所得税法183条は,居住者に対し国内において給与等の支払をする者は,その給与等について所得税を徴収し,納付する義務がある旨を規定し,同法185条は,賞与以外の給与等について徴収すべき所得税の額を規定している。一方,同法212条は,非居住者に対し国内において国内源泉所得の支払をする者は,当該所得について所得税を徴収し,納付する義務が
ある旨を規定し,同法213条1項1号は,給与等の国内源泉所得につき,その徴収すべき所得税の額を当該所得に100分の20の税率を乗じて計算した金額とする旨を規定している。
2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者等
原告Eは,昭和30年5月6日,三重県において出生した日本国籍を有する男性である(乙共1)。


原告D及び原告F(以下,併せて原告各社という。)は,各種ラジエーターの製造,販売,修理,自動車部品販売等を行う株式会社である。

原告各社の関連会社としては,日本に本店が所在するG株式会社(以下Gという。),株式会社H(以下Hという。)のほか,インドネ
シア共和国(以下インドネシアという。)に本店が所在する法人であるI,アメリカ合衆国(以下アメリカという。)に本店が所在す
る法人である
J
,シンガポール共和国(以下
シンガポールという。)
に本店が所在する法人であるK及び中華人民共和国(以下中国と

いう。)に本店が所在する法人であるLがある。
なお,以下においては,上記の各海外法人を総称して本件各海外法人といい,原告各社,G,Hと併せて本件各社又は本件グループ法人という。
(2)

原告Eの各国における滞在日数及び滞在状況等
原告Eは,平成21年から平成24年まで(以下本件各年という。)を通じて,日本のほか,アメリカ,シンガポール,インドネシア,中国及びその他の国(以下,これらの国を併せて本件諸外国という。)に滞在しており,その具体的な滞在状況は別紙3原告Eの国内外での滞在状況記載のとおりである(乙共3~5)。
また,平成16年から平成24年における原告Eの国別の滞在日数は別紙4のとおりである。

原告Eは,本件各年を通じて,日本滞在時には,名古屋市α区内に所在する住宅(以下本件日本居宅といい,同居宅の所在地を本件日本住所地ということがある。乙共7の1及び2)において,アメリカ滞在時
には,同国カリフォルニア州に所在するコンドミニアム(以下本件アメリカ居宅という。乙共8)において,シンガポール滞在時には,同国に所在するKが借り上げた賃貸住宅
(以下
本件シンガポール居宅
という。
乙共9)において,それぞれ生活していた。
(3)

原告Eの原告D及び原告F等における役職等
原告Eは,別紙5本件各年における原告Eの本件各社での役職記載のとおり,本件各年を通じて,内国法人である原告D(当時の商号は,M株式会社である。乙共10),原告F(当時の商号は,株式会社Nである。乙共11)及びGのほか,本件各海外法人の代表者を務めていた(乙共12~22)。
(4)

前回の税務調査
平成21年から平成22年にかけて,原告Eの平成16年分~平成20年
分に係る所得税について税務調査(以下前回調査という。)が行われたが,その後も,上記各年分の所得税について,原告Eが居住者であるとの前提での課税はされなかった。
(5)

本件各処分の経緯
原告Eについて
(ア)

原告Eは,自らが非居住者に該当するとの認識のもと,本件各年分
について,各確定申告期限までに所得税の申告を行わなかった。
(イ)
昭和税務署長は,平成25年から平成26年にかけて行った税務調
査に基づき,
本件各年分について,
原告Eが居住者であったと認定して,
原告Eに対し,本件各年分に係る所得税の期限後申告を勧奨し,これに基づく所得税の納付をしょうようした。
(ウ)

原告Eは,平成26年12月17日,本件各年分の所得税について
期限後申告を行った上で,
平成27年1月16日,
昭和税務署長に対し,
平成21年分及び平成22年分の所得税について更正の申出を,平成23年分及び平成24年分の所得税について更正の請求をそれぞれ行った。しかし,
昭和税務署長は,
原告Eに対し,
平成27年2月10日付けで,
原告Eの平成21年分及び平成22年分の所得税について更正の申出に係る更正をしない旨の通知を,平成23年分及び平成24年分の所得税
に係る更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知(本件各通知処分)をそれぞれ行った(甲B1,2,乙B1~4)。
なお,
平成23年度税制改正
(平成23年法律第114号による改正)
により,平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について更正の請求ができる期間が1年から5年に延長されたことに伴い,同日より前に法定申告期限が到来する国税についても,運用上の措置として,更正の請求の期限を過ぎた課税期間であっても,更正ができる期
間内に更正の申出をすれば,調査により職権で減額の更正を行うものとされた。かかる申出は職権発動を促すものにすぎず,申出どおりに更正がされない場合であっても,不服申立てをすることはできない。
(エ)

昭和税務署長は,原告Eに対し,平成26年12月26日付けで,
原告Eの本件各年分に係る所得税の無申告加算税の各賦課決定処分(第
2事件各賦課決定処分)をした(甲B3~6)。
(オ)

原告Eは,第2事件各賦課決定処分については平成27年2月26
日付けで,本件各通知処分については同年4月6日付けで,それぞれ異議申立てをしたが,昭和税務署長は,本件各通知処分に係る異議申立てについては同年5月20日付けで,第2事件各賦課決定処分に係る異議
申立てについては同年6月26日付けで,いずれも棄却する旨の決定をした(甲B7,8)。
(カ)

原告Eは,第2事件各賦課決定処分については平成27年6月24
日,本件各通知処分については同年7月22日,それぞれ審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成28年3月1日付けで,これらの
審査請求を棄却する旨の裁決をし,同月23日頃,同裁決は原告Eに送達された(甲B9,10)。
(キ)

原告Eは,平成28年9月16日,第2事件に係る本件訴えを提起
した。
(ク)


原告Eに対する課税処分の経緯等は,別表2記載のとおりである。
原告Dについて
(ア)

原告Dは,本件各月分において,原告Dの代表取締役である原告E
に対し支払った役員報酬について,原告Eが非居住者に該当することを前提として,所得税法213条1項1号に基づき別表1の納付額欄記載のとおり所得税(本件各月分の役員報酬に100分の20を乗じて計算した額)を源泉徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを納付した。
(イ)

名古屋中税務署長は,平成25年から平成26年にかけて行った税
務調査に基づき,本件各年において原告Eが居住者であったため,原告Dは,所得税法183条1項により,同法165条1項2号を適用して計算した金額の所得税(別表1納付額欄記載の額に源泉所得税の額欄記載の額を加えた金額)を納付すべきであったとして,原告Dに対し,平成26年12月5日付けで,本件各月分の源泉徴収に係る所得税(上記の金額から納付済みの額を控除した金額)につき各納税告知処分(以下第1事件各納税告知処分という。)及びこれらに係る不納
付加算税の各賦課決定処分(以下第1事件各賦課決定処分といい,第1事件各納税告知処分と併せて第1事件各処分という。)をした(甲A1)。
(ウ)

原告Dは,平成27年1月29日,第1事件各処分について異議申
立てをしたが,名古屋中税務署長は,同年4月23日付けで,異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲A2)。
(エ)

原告Dは,平成27年5月22日,第1事件各処分について審査請
求をしたが,国税不服審判所長は,平成28年3月7日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決をし,同裁決は,同月23日頃,原告Dに送達された(甲A3,4)。
(オ)

原告Dは,平成28年9月16日,第1事件に係る本件訴えを提起
した。
(カ)

原告Dに対する課税処分の経緯は別表1のとおりである。

原告Fについて
(ア)

原告Fは,本件各月分において,原告Fの代表取締役である原告E
に対し支払った役員報酬について,原告Eが非居住者に該当することを前提として,所得税法213条1項1号に基づき,別表3の納付額欄記載のとおり所得税(本件各月分の役員報酬に100分の20の税率を乗じて計算した額)を源泉徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを納付した。
(イ)

名古屋中税務署長は,平成25年から平成26年にかけて行った税
務調査に基づき,本件各年において原告Eが居住者であったため,原告Fは,所得税法183条1項により,同法165条1項2号を適用して計算した金額の所得税(別表3納付額欄記載の額に源泉所得税の額欄記載の額を加えた金額)を納付すべきであったとして,原告Fに対し,平成26年12月5日付けで,本件各月分の源泉徴収に係る所得
税の各納税告知処分(以下第3事件各納税告知処分という。)及びこれらに係る不納付加算税の各賦課決定処分(以下第3事件各賦課決定処分といい,第3事件各納税告知処分と併せて第3事件各処分という。)をした(甲C1)。
(ウ)

原告Fは,平成27年1月29日,第3事件各処分について異議申
立てをしたが,名古屋中税務署長は,同年4月23日付けで,異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲C2)。
(エ)

原告Fは,平成27年5月22日,第3事件各処分について審査請
求をしたが,国税不服審判所長は,平成28年3月9日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決をし,同裁決は,同月23日頃,原告Fに送達された(甲C3,4)。
(オ)

原告Fは,平成28年9月16日,第3事件に係る本件訴えを提起した。
(カ)
3
原告Fに対する課税処分の経緯は別表3のとおりである。

税額等に関する当事者の主張
被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び計算は,別紙8課税の根拠及び計算のとおりであるところ,
後記4の争点に関する部分を除き,

その計算の基礎となる金額及び計算方法について当事者間に争いはない。4
争点
本件の争点は,本件各処分の適法性であるところ,具体的な争点は以下のとおりである。

(1)

原告Eが本件各年において居住者に該当するか否か

(2)

国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)6
6条1項ただし書及び同法67条1項ただし書に定める正当な理由の有無5
争点に対する当事者の主張の要旨
争点に対する当事者の主張の要旨は,別紙7記載のとおりである(同別紙で
使用した略語は本文においても用いることとする。)。
第3

当裁判所の判断
当裁判所は,原告Eは本件各年のいずれにおいても所得税法2条1項3号に定める居住者に該当するとは認められないから,原告Eが居住者に該当することを前提としてされた本件各処分はいずれも違法であり,本件各処分の取
消しを求める原告らの請求はいずれも理由があるから認容すべきものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。
1
争点(1)(原告Eが本件各年において居住者に該当するか否か)について(1)

認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

原告Eについて
原告Eは,昭和30年5月6日に三重県において出生し,愛知県名古屋市に本籍を有する男性である。原告Eは,昭和55年▲月▲日,妻Oと婚姻し,昭和56年▲月▲日に長男P,昭和58年▲月▲日に長女Q,昭和60年▲月▲日に二女Rをもうけた。原告Eの住民登録は,昭和35年1
2月9日以降,名古屋市β区においてされていたが,平成4年に同市α区内の本件日本住所地への転居届がされた。(乙共1,2)

原告各社等の国内法人について
(ア)

原告Dは,昭和45年7月1日に設立された名古屋市内に本店を置
く株式会社であり,平成28年7月に商号をM株式会社から株式会社Dに変更した(乙共10)。
原告Dの前身は,原告Eの父であるSが昭和31年7月に個人企業として創始した,ラジエーターの修理等を行うTであるが,そのうち修理だけでなく自らラジエーター部品の製造を行うようになり,昭和43年
にはラジエーター等の生産工場を建設し,ラジエーター部品の製造・販売等を行うようになった。昭和45年7月に原告Dが設立されて法人化した後,
昭和52年8月に修理・販売部門を分離して原告Fが設立され,
さらに工場を増設するなどし,設立当初には資本金300万円であった原告Dは,平成5年には資本金4000万円となった。(甲共54,乙
共42)
(イ)

原告Fは,昭和52年8月に設立されて以降,主として原告Dから
仕入れたラジエーター製品の販売等を行っている。平成28年7月に商号を株式会社NからF株式会社に変更した(乙共11)。
(ウ)
原告Dは,後述のようにI及びLから製品を仕入れるようなって以
降は自社製品の製造は減少したものの,I及びLから仕入れた製品を原告Fに対し販売することにより,本件各年において毎年約34億~40億円を売り上げた。
原告Fは,専ら原告Dから仕入れたラジエーターを日本国内の顧客に対し販売しており,本件各年において毎年約39億~44億円を売り上げた。内部取引による売上げを除いた原告各社の本件各年における売上高は約44億~48億円である。なお,平成24年末における原告各社
の従業員数は約160人であった。
(以上につき,弁論の全趣旨)
(エ)

Hは,不動産等の管理を目的とした株式会社であり,後述のように
JやKが設立される以前は,Iの製品を海外の顧客に販売するなどしていた。

Gは,本件各年においては休眠会社となっていた。
(以上につき,原告E本人)

原告各社の海外展開について(甲共54,乙共42,原告E本人,弁論の全趣旨)

(ア)

原告Eは,昭和54年頃から原告各社の業務に携わるようになり,
Sの長男として原告各社を継ぐつもりでいたものの,日本国内における自動車部品のアフターパーツ市場は縮小すると予想されたことから,アメリカなどの海外市場へ進出すること,そのために,賃金の安い海外でラジエーターの製造を行うことを提案した。Sはこれに強く反対したものの,原告Eの説得により,限られた予算の範囲内という条件付きで海外進出について了承した。その結果,平成6年2月,原告Dとインドネシア企業との共同出資でインドネシアにIが設立され,原告Eがその代表者に就任した。もっとも,Iの設立後,その経営判断は専ら原告Eが行い,Sないし原告DがIの経営に介入することはなかった。また,原
告Eは,Iを設立した当初から,インドネシアのジャカルタに住居を置いていた。
Iは,原告Dから派遣された工場長1人と現地で採用した従業員50人の体制でラジエーター製品(当時日本で製造していた部品のみのものではなく,アメリカ市場に合わせた完成品)の製造を開始し,Hを通じて主にアメリカで製品を販売するほか,ヨーロッパやオーストラリアでも販売するようになり,平成8年には第2工場が,平成10年には第3工場が建設され,従業員は最大で1500人程度になり,本件各年においても,1000人程度の従業員を雇用していた。また,平成9年のアジア通貨危機によりインドネシア通貨が暴落したことや,日本市場においてもラジエーターの部品交換ではなく完成品の交換が一般化しつつあ
ったこと,I製品の品質が向上したことなどから,Iの製品は原告各社を通じて日本にも輸出されるようになった(これに対し,原告Dの製品が海外に輸出されることはほとんどなかった。)。
平成24年におけるI製品の販売先は,原告Dが約37%,Jが約33%,Kが約25%の割合を占めていた。

(イ)

I製品の売れ行きが好調であったことから,平成12年4月に,原
告E,妻,H及びGが出資して,アメリカのカリフォルニア州にラジエーターの販売を行うJが設立され,原告Eがその代表者に就任し,平成17年には同国ニュージャージー州に営業所が開設された。
Jは,I製品のほか,平成17年2月にLが設立された後はLからも製品を仕入れ,アメリカ各地域の顧客に販売しており,平成24年末における従業員数は25人,本件各年における売上高は毎年約18億~24億円であった。
(ウ)

さらに,原告Eは,アメリカ以外の海外市場を開拓するために,英
語を話せる営業向きの人材を確保することが容易であり,Iのあるインドネシアとの地理的距離が近く,しかも世界的なハブ空港があり各国への渡航の利便性が高いシンガポールに,新たに販売会社を設立することとし,平成16年12月,原告E,長男及び長女が出資してKが設立され,原告Eがその代表者に就任した。Kは,ヨーロッパ,中東,アフリカ,アジア,オセアニア等の地域で顧客を獲得し,I及びLから仕入れた製品を上記各地域で販売し,平成22年にはオランダに営業所を開設するに至った。

平成24年末におけるKの従業員は7人であり,本件各年における売上高は毎年約12億~13億円であった。
(エ)

Kによる顧客開拓により,Iにおける製品の生産が追い付かなくな
ったことから,平成17年2月,原告Dの出資により,中国の蘇州にラジエーターの製造を行うLが設立され,
原告Eがその代表者に就任した。

Lは,JやK及び原告Dに製品を輸出するほか,中国の顧客にL及びIの製品を販売していた。
平成24年におけるL製品の販売先は,原告Dが約43%,Jが約30%,Kが約10%の割合を占めていた。

原告Eの本件各社における役割等について
(ア)

原告Eは,平成8~9年頃にSの後を継いで原告各社の代表者に就
任し,原告Eの弟であるKも,他社で勤務していたのをやめて原告各社の業務に携わるようになった(原告E本人)。
(イ)
原告各社は,日本国内の競業会社が事実上1社しかないことや,長
年の取引関係がある既存顧客が多いことから,安定的に利益を上げており,原告各社の経営管理の内容は既存顧客との関係維持や経費の節減などが中心であった。そのため,重要な意思決定を除き,原告Eが原告各社の業務に実質的に関与することはなく,Sが体調を崩してからはKがこれに代わって原告各社の業務に関与するようになり,平成18年頃に
Sが亡くなってからは,当時専務取締役であったKが中心となって原告各社の経営管理を行うようになった。Kは,平成22年7月1日に原告各社の代表取締役に就任し,本件各年中に行われた原告Dの金融機関からの2億円の借入れに係る消費貸借契約,取引先との請負契約,原告Fの店舗に係る賃貸借契約,原告Dの労使協定等について,原告Eに相談することなく,その締結等に係る判断をした。(甲共3~5,7,8,54,乙共98,原告E本人)
もっとも,原告Eは,Kが代表取締役に就任するまでは原告各社において単独で代表権をもつ代表取締役社長の地位にあり,平成22年7月1日にKが代表取締役社長に就任すると,自らは代表取締役会長に就任した。原告Eは,原告各社について,その重要な意思決定の際にはKか
ら相談を受けるなどし,毎月1回開催される経営会議にもおおむね出席して,
月次の報告を受けたり,
海外の状況を報告するなどしていたほか,
年2~3回程度開催される株主総会及び取締役会にも出席した
(甲共3,
乙共44~63)。
また,原告Eは,原告各社の借入れについて個人保証や物上保証を継
続していた(乙共7の1及び2,64)。
(ウ)

一方,原告Eは,前記ウのとおり,平成6年から順次設立された本
件各海外法人の代表者に就任しているところ,本件各海外法人の設立等は,いずれも原告Eの判断に基づくものであり,SやK又は原告各社が本件各海外法人の業務や経営判断に関与することはなかった。
本件各海外法人にはそれぞれ現地に責任者が常駐していたものの,原告Eは,各法人の代表者として,営業活動や従業員の雇用,工場の管理等を含め,自ら判断し業務を執行していた。その関与の度合いは各法人により異なり,例えばJでは,CEOである原告EのほかにCOOとして大きな決裁権限を有する日本からの駐在員がいたため,相当範囲の判
断を委ねることができたが,Iについては,1000人を超える従業員の労務管理を含め,原告Eが全面的に関与していた。また,Kについても,ヨーロッパ,中東,アフリカ,アジア,オセアニアなど世界の各市場を対象としていたため,各市場の顧客や競合他社の動向を考慮して全体としての利益の最大化を図るよう配慮しつつ判断する必要があり,製品仕入価格の変更,製品販売価格の大幅な変更,重要な取引先との取引条件の変更等については必ず原告Eが自ら決定し,営業のため各国へ出
張していた。なお,Kには,Jにおけるような大きな決裁権限を有する部下がいなかったため,財務や経理についても原告Eが担当していた。(以上につき,甲共3,54,87,乙共98,原告E本人)
(エ)

原告Eは,本件各年を通じ,原告D,G,H,J及びKの株式を保
有しており,
平成24年末の持株割合は,
それぞれ23.
7%,
100%,

46%,25.5%,20%であった。
一方,Kは,本件各年を通じて,Hを除き,本件各社の株式を保有していない。
なお,平成24年末における本件各社の資本関係は,別紙6のとおりである。

(以上につき,弁論の全趣旨)
(オ)

原告Eは,本件各年を通じ,原告各社,K,J及びIから役員報酬
を得ており,平成24年分における原告Eの役員報酬の額は,原告Dが3000万円,原告Fが1800万円,Kが2881万8530円,Jが5743万4652円,Iが926万0674円であった(甲B2・
4頁)。
一方,平成24年分におけるKの役員報酬の額は,原告Dが2880万円,原告Fが1800万円であった(乙共23~32)。

原告Eの各国における滞在時の状況等(甲A2,甲共3,54,87~89,乙共98,116,117,原告E本人)
(ア)

原告Eは,シンガポール滞在時にはKが賃借している3LDKのコンドミニアムである本件シンガポール居宅で起居し,平日はほぼ毎日Kのオフィスに出勤している。
原告Eは,Kの営業方針の決定,営業活動,取引先との交渉,契約事項の決定等の業務を担っており,シンガポールを訪れた各国の顧客とのミーティングや会食への出席,シンガポールからヨーロッパ等への出張(例えば,ヨーロッパで開催されるアフターパーツの展示会などに出展し,新規顧客への営業活動を行うなど)のほか,中国やインドネシアの工場に顧客を同行して視察をするなどしていた。そのほかに,IやLの業務のためにも,毎月1回程度はインドネシアや中国の工場を訪れるな
どしていた。
原告Eがインドネシアへ渡航する際は,専らシンガポールを起点としていたのに対し,中国へ渡航する際は,シンガポールを起点とする場合と日本を起点とする場合とがあった(別紙3)。原告Eがシンガポールとインドネシアを往復する際の航空運賃はIが負担しており,原告Eが
シンガポールを起点として中国へ渡航する際の航空運賃,シンガポールと日本の間を渡航する際の航空運賃は原告Dが負担していた(なお,原告Eは,中国滞在時はホテルに滞在しており,インドネシア滞在時はサービスアパートを契約しているホテルに滞在している。)。
(イ)

Jには原告Eの長男が常駐していたが,原告Eは,同社の代表者と
して,
本件各年を通じて,
別紙3及び別紙4のとおりアメリカに滞在し,
Jの営業業務等を担っていた。原告Eは,アメリカに滞在している期間の7~8割程度は本件アメリカ居宅において起居し,残りの期間は,アメリカの各地域への出張のためホテル等に滞在していた。
原告は,アメリカに渡航する際は,専ら日本を起点としており,日本
からアメリカへ渡航する際の航空運賃はJが,アメリカから日本へ渡航する際の航空運賃は原告Dが負担していた。
(ウ)

一方,原告Eは,本件各年を通じて,別紙3,4のとおり日本に滞
在し,
上記エ(イ)のとおり,
原告各社で行われる毎月1回の経営会議や,
年間2~3回程度開催されていた原告各社の株主総会及び取締役会に出席していた。また,原告Eは,日本滞在中には,従業員に顔を見せるため,その半分程度の日数は原告各社に出社し,原告各社の本社ビルにあ
る自身の個室で執務をしていた。原告Eは,原告各社で執務をしている間も,本件各海外法人の業務についてメール等で報告を受けたり,指示を出したりするなどしており,主として本件各海外法人の業務に従事していたものの,代表者である原告Eが出社することで,その存在を従業員らに示すことに意義があるものと考えていた。そのほか,原告Eは,
日本滞在中に,原告各社の取引先の担当者と面会することもあった。原告Eは,日本滞在中は本件日本居宅に起居し,原告各社に出社する以外は,妻と買物や旅行に出かけるなどしていた。
また,原告Eは,本件各年を通じて,東京自動車部品工業健康保険組合(現在の名称は日本自動車部品工業健康保険組合)の健康保険に加入
しており,毎年,日本国内の病院で人間ドックを受診するほか,国内の病院をおおむね毎月受診していた(乙共65,89)。平成24年には網膜剥離の手術や心臓の手術により国内の病院に入通院したため,前年までと比較して日本国内での滞在日数が多くなっていた。

家族の状況
原告Eの妻及び二女は本件各年を通じ,原告Eの長女は平成24年3月頃まで,本件日本居宅に居住していた。本件日本居宅の水道光熱費等は原告Eの預貯金口座から引き落としがされていたほか,原告Eの妻は,毎月20~30万円程度を原告Eの預貯金口座から引き出して生活費等に充
て,又は原告Eの預貯金口座から引き落とされるクレジットカードを利用して日常の買い物等を行っていた。(乙共66~68,98)
原告Eの長男(本件各年当時,27~31歳)は,平成19年5月からインドネシアのジャカルタに滞在後,平成21年からJの役員としてアメリカに常駐するようになり,本件各年を通じて本件アメリカ居宅に居住していた(なお,本件各年より後の平成26年にKの100%子会社が設立されミャンマーに工場が設置されたのを機に,シンガポールに呼び寄せら
れ,現在はシンガポールに居住している。)。長男は,本件各年当時,原告Eの預貯金口座から引き落とされるクレジットカードを利用することがあったものの,原告各社から毎年1000万円程度の収入を得ていた(甲A1,甲共3,弁論の全趣旨)。

資産の状況(乙共7の1及び2,8,66,69~88,弁論の全趣旨)原告Eは,本件各年を通じて,日本国内の預貯金口座を有しており,平成24年末における残高は約1億9800万円であった。
また,
原告Eは,
本件各年を通じて,日本国内において,投資信託口座,並びに原告D,H及びGの株式を保有していたほか,母と共同で本件日本居宅を所有し,平成24年には自動車2台を所有していた。

一方,海外の資産としては,原告Eは,本件各年を通じ,アメリカ国内の預金口座を有しており,平成24年末における残高は約440万円であった。また,原告Eは,本件各年を通じ,アメリカ国内において,J株式のほか,本件アメリカ居宅を所有していた。
また,原告Eは,本件各年を通じて,シンガポール国内の預貯金口座を
有しており,平成24年末における残高は約1780万円であったほか,シンガポール国内においてKの株式を保有していた。

住民票その他の書類の状況
(ア)

原告Eは,Kの設立後は本件シンガポール居宅に自身の生活拠点が
あるものと認識していたが,前記アのとおり名古屋市内の本件日本住所地における住民登録がされたまま,本件各年を通じ,住民票の転出届を提出していなかった。これは,原告Eが,原告各社の借入れについて個人保証等をしていたことから,印鑑登録証明書を取得する便宜のためであった。原告Eは,平成27年7月22日になって,シンガポールを転出先とし,転出日を平成17年11月29日とする届出を行った。(甲共2,3,原告E本人)

(イ)

原告Eは,本件各年を通じ,シンガポールにおいてエンプロイメン
トパス(就労ビザ)を取得しており,本件シンガポール居宅を住所として届け出ていたが,シンガポールにおいては,日本におけるような住民登録等の制度は存在しないため,
このような登録はされていなかった
(甲
共77~80,94)。

(ウ)

原告Eは,本件各年を通じ,シンガポールにおいては居住者用の納
税申告書を用いて納税申告を行い,アメリカにおいては,非居住者用の納税申告書を用いて納税申告を行っていた(甲A1)。
(2)
検討
所得税法2条1項3号は,国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を居住者とし,同法5条1項は,居住者の所得税の納付義務を定めるところ,同法2条1項3号にいう住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である(最高裁平成20年(行ヒ)第139号同23年2月18日第二小法廷判決・裁判集民事236号71頁参照)。
そして,
客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは,
滞在日数,
住居,職業,生計を一にする配偶者その他の親族の居所,資産の所在等を総
合的に考慮して判断するのが相当である。
そこで,前記(1)の認定事実を踏まえ,上記の判断の枠組みに従って,原告Eが居住者に該当するか否かについて検討する。

滞在日数及び住居について
(ア)

本件各年において原告Eが滞在していた各国のうち,原告Eが自己
所有建物又は賃貸建物に居を構え,定住できる態勢の整っていた3か国(日本,アメリカ,シンガポール。以下居住3国という。)についてみると,これらの国における滞在日数は,別紙4のとおり,平成21年において,日本93日,アメリカ97日,シンガポール82日であり,平成22年において,日本105日,アメリカ87日,シンガポール70日であり,平成23年において,日本83日,アメリカ104日,シ
ンガポール80日であり,平成24年において,日本128日,アメリカ75日,シンガポール68日である。そのうち,日本国内における滞在日数と,原告らが原告Eの住所があったと主張するシンガポールにおける滞在日数とを比較すると,いずれの年についても,日本国内における滞在日数が上回っていたが,その差は平成21年において11日,平
成22年において35日,平成23年において3日,平成24年において60日であり,これらを総じてみると,両国における滞在日数に大きな差があるとはいえない。
(イ)

また,原告Eの滞在国は,居住3国以外にも,インドネシア,中国
及びその他の国々に及び,本件各年においてそれぞれ相当数の滞在日数があるところ,シンガポールと地理的距離が近いインドネシアのほか,中国やその他の国(ヨーロッパ,中東,アフリカ,アジア,オセアニアの国々)にも,世界的なハブ空港があり各国への渡航の利便性が高いシンガポールを起点として渡航していることからすると,中国への渡航には日本を起点とするものが相当数あることを踏まえても,シンガポール
が,居住3か国以外の各国へ渡航する際の主な拠点となっていたことは否定し難いものというべきである。そして,これらの渡航先国での滞在が,中国を除いても,平成21年において37日,平成22年において60日,平成23年において58日,平成24年において62日に及ぶことを考慮すると,日本国内における滞在と,シンガポールにおける滞在との間には,量的な観点からみて有意な差があるとはいえない。(ウ)

以上によれば,滞在日数の比較から,原告の生活の本拠が日本国内
にあったことを積極的に基礎付けることはできないものというべきである。
(エ)

なお,被告は,原告Eが日本に1日も滞在していない月はないのに
対し,それ以外の滞在国には1か月間全く滞在していない月が存在すると指摘するが,本件各年中に原告Eがシンガポールに滞在しなかった月
は1月だけである一方,日本に滞在した日数が1,2日だけという月もあることからすれば,上記指摘を踏まえても両国における原告Eの滞在状況に有意な差があるとはいえない。

原告Eの職業について
(ア)

原告Eは,原告各社及び本件各海外法人の代表者の地位にあるが,
そもそもは海外進出に強く反対していた父Sを説得して海外進出の了承を得たという経緯から,本件各海外法人に係る経営判断は専ら原告Eが行ってきたものである。そして,これらの海外における事業展開は,①インドネシアに設立したIにおいて,
ラジエーターの製造工場を設置し,
さらに2つの工場を増設し,1000人以上の従業員の労務管理を行いながらこれらの工場を稼働させて製品を製造し,②アメリカに設立したJにおいて,アメリカの各地域における販売活動を行い,③さらに,シンガポールに設立したKにおいて,ヨーロッパ,中東,アフリカ,アジア,オセアニア等における顧客を獲得して販売地域を広げ,④製品の生
産量を増やすため,中国に設立したLにおいて,工場を設置し,製品の製造を行うなどというものであり,これらに関する業務の中には,本件各年においてもなお現地の責任者には委ねることができず原告Eが自ら行わなければならないものも多数含まれていた上,顧客と会ったり工場を視察するなどのために現地へ赴く回数も多数にのぼったことが認められる。
他方,日本法人である原告各社については,原告Eの父であるSが体調を崩してからは原告Eの弟であるKがこれに代わって経営判断を行っていたものであり,その業務内容も,I又はLで製造した製品を国内市場(既存顧客)に販売するというものであって,市場における競争も激しくなかったため,基本的にKの判断に任せておけば足りるものであっ
た。
そのため,
原告Eが本件各年に原告各社のために行っていた業務は,
具体的には,原告各社の代表取締役会長として毎月1回の経営会議や年2~3回程度の株主総会及び取締役会に出席するほか,原告各社において重要な意思決定がされる場合にKから相談を受けるという程度のものであって,日本滞在中に従業員に顔を見せるなどのため原告各社に出社
した日数を入れても,原告Eが日本に滞在した日数のおよそ半分に相当する年間13~17%の日数に過ぎないものと認められる。
そして,原告Eは,本件各年を通じ,上記①~④のような本件各海外法人の営業活動や工場の管理等の業務のため,年間の66~75%程度の期間は,本件諸外国に滞在して業務を行っていたものと認められると
ころ,このうち,居住3国の一つであるアメリカにおける滞在日数や,日本から渡航することもあった中国の滞在日数の半数を除いても,年間の約4割の日数においてシンガポール又は同国を起点として渡航したインドネシアや中国及びその他の国に滞在していたことになるから,原告Eの職業活動は,シンガポールを本拠として行われていたと評価するこ
とができるものといえる。なお,かかる評価は,原告E自身,本件各年分についてシンガポールの居住者として同国における納税申告をし,自らがシンガポールに居住しているとの認識を有していたこと(認定事実ク(ウ))とも合致し,また,本件各年においてアメリカに居住していた長男を後にシンガポールに呼び寄せていること(認定事実カ)とも合致するものということができる。
(イ)

これに対し,被告は,原告Eが原告各社からKと同等以上の役員報
酬を受け取っていたことなどから,原告Eが原告各社においてKと同等以上の職責を有していたと考えられる旨を主張するが,原告Eが原告各社の代表取締役社長又は会長の地位にあったほか,原告EがIやLにおいて製品を製造することにより原告各社にとっても,日本国内で生産するより安価で,品質も十分な製品を安定的に供給してもらうことができるというメリットがあったのであり,加えて,本件グループ法人が事業をグローバルに展開していること自体が,創業者企業としての原告各社のブランドイメージを高めることにもつながったと考えられるから,このような功績に鑑みて原告Eに対し相応の役員報酬が支払われることが
不合理であるとはいえない。また,そもそも,原告Eの原告各社における業務の実態は上記(ア)のとおりであり,原告各社における役員報酬の高さは,原告Eの職業活動の本拠が日本にあったことを裏付けるものとはいえない。
また,被告は,原告Eがシンガポールと中国を往復する際の航空運賃
等を原告Dが負担していたことなどから,原告各社の代表者である原告Eがその地位に基づき本件グループ法人の統括業務を行っていたと考えるのが合理的である旨主張するが,原告Eの各国における滞在状況や滞在先での業務の従事状況は上記のとおりであり,本件諸外国に滞在している期間は,専ら本件各海外法人の業務を行っていたものと認められ,
渡航費用がいずれの会社の負担によるかによってその業務の実態が変わるものではない。
さらに,被告は,原告Eが内国法人である原告Dを中心とした本件グループ法人全体の経営管理を行っていたとして,原告Dの本店所在地のある日本国内に最も密接な関連を有していた旨主張する。
しかしながら,
本件グループ法人の実態は,原告Eの父であるSが創業した日本国内の法人と,
原告Eが自らの才覚をもって築いた海外法人とで大きく異なり,

前者すなわち原告各社の業務は基本的にKに任されていたのに対し,後者すなわち本件各海外法人の業務は原告各社やKの介入を受けず,専ら原告Eの判断で行われていたのであるから,本件グループ法人の事業活動が日本に所在する原告各社を中心に行われていたということはできない。また,そもそも,原告Eの職業活動がどの国を本拠として行われて
いたかの判断は,その職業活動を行うに当たって当該国に滞在する必要性がどの程度あったかによって決せられるべきであり,本件グループ法人の中心が日本法人であるか否かによって決まるものではないから,この点においても被告の主張は採用することができない。
(ウ)

以上によれば,原告Eの職業活動は,シンガポールを本拠として行
われていたものと認められる。

生計を一にする配偶者その他の親族の居所について
認定事実カのとおり,本件各年を通じて,原告Eと生計を一にする妻や二女は,本件日本居宅において居住を続けていたことが認められる。これ
について,原告Eは,インドネシアにIを設立した平成6年頃から,インドネシアの工場で生産した製品をアメリカの市場で販売するため海外の各地に滞在して業務を行うことが必要となり,妻らが原告Eとともに海外に転居したとしても,原告Eが不在となることが多々あるため,妻らの生活の便宜や子らの教育上の配慮から,妻らについては従前と同様に日本に
おける居住を継続していたと説明するところ(原告E本人),かかる説明は合理的なものである。そうすると,原告Eとその妻は,年間の大部分を海外の各地で過ごすことになる原告Eの職業活動に適応した生活の在り方として,妻らの生活の本拠は海外に移さず,本件日本居宅のままとし,原告Eが帰国したときに休暇も兼ねて妻らと会うという方法を選択したものということができるから,生計を一にする妻らが国内に居住していたことは,原告Eの生活の本拠が日本国内にあったことを積極的に基礎付け
るものとはいえない。

資産の所在について
認定事実キのとおり,原告Eは,日本国内において原告各社の株式のほか,
本件日本居宅の共有持分権,
自動車及び多額の預貯金等を有しており,
原告Eが所有する資産の多くは日本に所在していたものと認められる。も
っとも,原告Eは,シンガポールにおいても1700万円以上の預貯金を有しており,当面生活するために十分な額の資産を有していたものといえる。そして,日本の預貯金等の資産をシンガポールに移転していないことは,家族を残して海外に赴任する者の行動として不自然なものとはいえないことからすると,原告Eが日本により多くの資産を所有していることを
もって,その生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえない。

その他の事情について
(ア)

認定事実ク(ア)のとおり,原告Eは,本件各年を通じ,本件日本住
所地における住民登録について転出の届出をしていなかったことが認められるところ,このことについて,原告Eは,原告各社の借入れに係る個人保証の手続等において印鑑登録証明書を取得する便宜のためであったと説明している。一般に,適切な届出がされないため,住民登録の所在が必ずしも生活の実体を反映したものとなっていない例があること
や,海外に赴任する者が他の手続上の便宜のために日本国内に住民登録を残しておくこともその者の行動として不自然であるとはいい難いことからすると,原告Eが本件日本住所地における住民登録について転出の届出をしていなかったとしても,このことをもって,原告Eの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえない。
(イ)

また,認定事実オ(ウ)のとおり,原告Eは,本件各年を通じて,日
本の健康保険組合に加入を継続し,日本国内の病院において,毎年の人
間ドックを受診し,おおむね毎月通院していたほか,平成24年には網膜剥離や心臓の手術を受けるために入通院していたこともあったことが認められる。しかしながら,原告Eのように世界の各地を頻繁に行き来し,一時帰国数も少なくない者であれば,医療水準や保険制度の整備状況,通院や入退院の便宜等に鑑み,一時帰国時に日本の病院に通院等す
ることが不自然であるとはいい難い。また,上記ア(ア)及び別紙4のとおり,原告Eが日本の病院に入通院した平成24年においても日本での滞在日数は128日に過ぎず,シンガポール及びこれを拠点として渡航する諸外国での滞在と比べて突出して長期の滞在となっているものではない。そうすると,原告Eの国内における通院等の状況を踏まえても,
このことをもって,原告Eの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえない。

まとめ
以上のとおり,原告Eは,本件各年を通じて,本件各海外法人の業務に
従事し,そのために相応の日数においてシンガポールに滞在し,またシンガポールを主な拠点としてインドネシアや中国その他の国への渡航を繰り返しており,これらの滞在日数を合わせると年間の約4割に上っていたことなどからすれば,原告Eの職業活動はシンガポールを本拠として行われていたものと認められ,他方,日本国内における滞在日数とシンガポー
ルにおける滞在日数とに有意な差を認めることはできず,原告Eと生計を一にする家族の居所,資産の所在及びその他の事情についても,原告Eの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえない。これらを総合すると,本件各年のいずれにおいても,原告Eの生活の本拠が日本にあったと認めることはできないから,原告Eは所得税法2条1項3号に定める居住者に該当するとは認められないというべきである。2
したがって,原告Eが居住者に該当することを前提としてされた本件各処分
は,その前提を欠くものとしていずれも違法である。
第4

結論
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官

進藤壮一郎
裁判官

池田美樹子
(別紙1省略)
(別紙3省略)
(別紙6省略)

(別紙2-1)
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源得は前所し得て四こ三かに


第る居行す二うる号事建に業作設に計の条用一し及は第有号三掲る不内産泉つて得



国動源所第の三号ちにの掲げる国内源泉所得所項得を有定よにる四か第二まにげ国源泉所得生り六一国第に号いらそ十代号人でを掲じる行内事泉げる非居住者以外の非居住者次に掲国政内で自めのもめ


契下をの結にるい

あ理者等の所者源置非第居掲よす条三得第ににイ者号渡規をのも三譲のの十所もも百源るる非国めげそげのび掲他得げ定に人泉にる及次の内ので、う又に号はて一令と通保国二


等び政得理く第所の号他国て若条
お第のて内運一いが一そお住産十にの六の編泉の前第る六のそる泉泉用定十内源適十ある内を資内掲の定たてでに国条じま所号る規百は該るの算通所各課げ十を与すが掲)あ)こるに得)ロも所条源四内泉略内他政ず源一与のる省げの他百(掲そのイにう給そ当税規号給てしに百等務者課号四勤住号第人(対に離行う居各ての非該分前条者住項住のいもげ当るすおるる非同非居非税務勤にすに、有を外因掲げはの該当得う行国基各か質性てに号に又外、は所ていし)次ほのらと。第合るおに員むの三業以には事のの号るれこ役含ロ対の内国を2場すは又のるる第、年ち供第も金賞人げ者に与の提節た前う又法掲しをは費国の次算の、報内務ても酬、報役号てる酬与すの)所歳賃(、税場る十、るに的額課の金料供税合定対内国。給提人所内一ま百)る総で掲源二を得係第得げう、)すの項もて払所掲供、提て税号るお支課行二者のにを号業泉等四住)源内得に号国居。し給務る対所揮れ内う各事該他る指せしと国のの略)六百七俸の者す十第得等に給め略じ役居対そ務省省にに業項所給当の工定(い次的役((第~人で二区者ら泉てて住。べ一前住住る一げ)応場居帰掲務非、二に義分四非よの国条支すを源の者に業る十一的ハ六八令十居款内者)内住店(に住イ、百こ居。げにい非ロ~非国るう国収おす作に国にそる内三章と国徴こ又す者対等(条下作当泉に作該で八以他にま十(そ建号源等て号(居立前三百与お第第、(、給条らも付者ちるこ住かる、居号うす以一れ建非の定供う第らい行条得規のて一せにえ得所に役所十帰国九一ろの百得第と有督を源十が所非監第年一内一国泉で令るのに以約こ締条すお権ての代る人そ
一他































国内次に掲げこるとれ国いの帰に内ううせれた住得ら己居十にに定六業国く百、

ち準源所泉



るず
(別紙2-1)
ハロイげ給二る等二のに毎当月る定額らの分給一が相半すと税め支給期が毎旬と定められてそ応項等給ぞ、
のび与号の掲額るロ与ハ以ニのは与等配第の給期が月らる場合合別別表告表定第二め乙の税の欄乙に欄にげ掲掲るげ控給き等得つのては百り収べ所税額税額と)







そ第は又げ掲第第又恒ら者第九外もる六二十ま



非内泉に得しに内げお国て源百所



る第法久はで的施ま一有にのす四る第外国六法一の受け久第も的る源し所第八七る条ま一又


第の項と設



を得百係号課第で項は国九財産に係る税等子利特のし


除ない第国七国の十号法二までがを人法若くしす者る掲ににが者定それ給か等、
金働にた場し第以金のにい国てに所納得付税しを徴な収けしれば

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(別紙2-1)
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(別紙2-2)

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(別紙2-3)

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告たる当該にあ該告し合


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限期合のる当付後限国はに算が


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納告告合十限第る場期省算税をては定

加条一た申付七に法当


徴正不場そ二


六割のよ


改正
(別紙4)
原告Eの国別滞在日数

(別紙5)
★被告第1準備書面の別紙5を添付

(別紙7)
当事者の主張の要旨

1
争点(1)(原告Eが本件各年において居住者に該当するか否か)について(1)

被告の主張の要旨
所得税法上の居住者の判断枠組み
(ア)

所得税法は,ある者が居住者であるか否かについて,基本的にその
者の住所の所在によって判断することとしているところ,同法には住所についての独自の定義規定は存在しないが,租税法が多数人を相手方として課税を行う関係上,
客観的な表象に着目して画一的に規律せざるを得な
いことからすれば,民法上の住所の意義と同様に各人の生活の本拠を指すものと解するのが,
租税法律主義や法的安定性の要請に合致するといえる。
そして,民法上の住所は,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所があ
る者の住所であるか否かは,
客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか
否かにより決すべきであって,
主観的に住所を移転させる意思があることの
みをもって直ちに住所の設定,喪失を生ずるものではなく,その具体的な判定に当たっては,①住居(滞在場所及びその滞在日数),②職業,③生計を
一にする配偶者その他の親族の居所,
④資産の所在等の客観的事実に基づき

総合的に判定すべきであり,特にその住居の観点から検討する場合には,滞在日数に明らかな格差があるか否かについても考慮すべきである(最高裁平成20年(行ヒ)第139号同23年2月18日第二小法廷判決・裁判集民事236号71頁参照)

(イ)

なお,
住所とは,各人の生活の本拠,すなわち,その者の生活に最

も関係の深い一般的生活,
全生活の中心を指すものと解されるのであるから,
複数の国に滞在する者の住所を認定するに当たっては,
国籍等の事情も判断
要素とした上で,その者の一般的生活,全生活の中心が相対的にみて日本国内にあるのかという観点から判断すべきであり,
各国における個別の生活実
態を踏まえた比較をした上で,
相対的な観点から日本国内に生活の本拠があ
ると認められるかを検討すべきである。

原告Eが本件各年を通じて日本国内に生活の本拠たる住所を有していたこと
(ア)
a
原告Eの住居について
原告Eは,日本で出生し,日本国籍を有する者である。また,住民登録の状況はそのものの所在や住居に係る客観的事実と併せて重要な判断要素になり得るものであるところ,原告Eは,昭和35年12月9日に名古
屋市に住民登録をし,
平成4年4月3日には本件日本居宅が所在する本件
日本住所地に住所地を変更した上で,
少なくとも平成25年8月13日に
至るまでの間に,同所から住所地の登録を異動した事実は認められない。そして,原告Eは,本件各年を通じて,本件日本居宅を共同所有していたところ,
原告Eが日本に滞在する場合には,
本件日本居宅において起居し,

妻らと生活を共にしていた。
b
本件各年における原告Eの日本国内での滞在日数は,
平成21年が93
日,平成22年が105日,平成23年が83日,平成24年が128日であり,本件諸外国の各国の滞在日数と比較しても,1ないし2番目に多
い状況にあった。逆に,本件諸外国のうちアメリカ及びシンガポールを除いた国については,
多い年であっても日本における滞在日数の半分程度し
か滞在しておらず,
アメリカ及びシンガポールは日本と同程度又はそれよ
り短期間であった。
また,本件各年中において,原告が本件諸外国の各国に1か月間全く滞
在しなかった月が多々存在するのに対し,
日本国内に1か月間全く滞在し
なかった月は存在しない。
c
以上からすると,本件各年を通じて,原告Eの住居は本件日本居宅の所在する本件日本住所地にあったと認められる。

(イ)
a
原告Eの職業について

原告Eは,本件各年を通じて,本件各社の代表者を務めており,本件グループ法人に対する原告Eの出資状況及び本件グループ法人の資本関係(別紙6)からすると,原告Eが本件グループ法人全体を支配する関係にあったと認められる。これに対し,原告らは,原告各社については原告Eの弟であるKが実質的に経営を担っていたと主張するが,Kは,本件各年を通じて,本件各社に対し一切の出資をしていなかった。

また,原告Eは,本件各年を通じて,原告各社の代表取締役社長あるいは代表取締役会長として株主総会及び取締役会に出席していたほか,月に1回開催される経営会議に出席して各国において収集した情報を伝えたり,日本国内の経営内容等の報告を受けるなどの業務も行っていたほか,日本滞在中は原告各社に出社し,
取引先への営業活動等をしていた。
また,

原告らは,
原告各社についてはKが実質的に経営を担っていたと主張する
が,
重要な判断については原告Eが相談を受けて原告各社の意思決定がされていたことが認められる。
本件各年の原告各社における役員報酬額につ
いては,原告EとKとの間に大きな差がなく,むしろ原告Dにおいては原告Eの報酬額が上回っていることからしても,原告Eは,原告各社におい
てKと同等以上の職責を有していたと考えるのが自然である。
さらに,
①原告Eがシンガポールと中国との間を渡航した際の航空運賃の全てについて,
出発地とも到着地とも関係のない原告Dが負担していた
こと,②原告Eがシンガポールを出発し,日本を経由してアメリカに渡航した後,再度日本を経由してシンガポールに帰着した出張においても,ア
メリカから日本までの航空運賃を原告Dが負担していたことからすれば,原告Dの代表者である原告Eが,その地位に基づき,本件グループ法人としての製品製造拠点であるL及び販売拠点であるJを統括する業務を行っていたものと考えるのが自然かつ合理的である。
b
また,国際的な企業グループの代表者は,グループ全体の事業戦略を見据えて業務を執行する必要があり,
その職務の従事状況という点からみて

も,
グループの中心である法人の所在地に密接な関連を有しているのが通常であるから,グループの中心である法人の所在地は代表者の住所を判断するに当たって重要な要素の一つである。
原告Dは,同社の前身であるTを起源とし,国内市場から世界市場へと販路を拡大するために法人化するとともに,
原告Fないし本件各海外

法人等を順次設立することによって本件グループ法人を構成するようになり,国際的な企業にまで成長したものと認められる。
すなわち,I及びLは,いずれも原告Dが出資して設立されたものであり,設立当初には原告Dの従業員が派遣されるなど,いずれも原告Dの事業戦略により設立された法人であるといえる。Jは,原告Dの海外販売拠
点として,Hが50%以上を出資し,その余を原告Eとその妻及び長男等が出資している。
Jは本件各年を通じてI及びLと相当額の取引関係があ
ることに加え,
平成25年3月31日現在で原告Dから1億7920万8
000円の借入れをしていること,
本件グループ法人で使用されるシンボ
ルマークを使用していることなどからすると,
原告Dを中心とした本件グ

ループ法人の一つとして活動している。
さらに,Kは,海外販売拠点としてアメリカ以外の市場においてI及びLの製品を販売することを目的に設立された法人であり,原告E,長男及び長女が出資している。
KもJと同様に本件各年を通じてI及びLと相当
額の取引関係があること,
平成25年3月31日現在で原告Dから22億

4548万2000円の借入れをしていること,本件グループ法人で使用されるシンボルマークを使用していることなどからすると,
原告Dを中心
とした本件グループ法人の一つとして活動している。
以上によれば,本件海外法人は,いずれも原告Dの事業戦略により設立された法人であって,本件グループ法人の中心は,日本国内に本店が所在する原告Dであると認められる。原告Eは,本件各年を通じて,原告Dを中心とする本件グループ法人全体の経営管理を行い,グループの事業活動
に従事していたと認められるから,職業への従事状況という点において,日本国内と本件諸外国の各国とを比較しても,
日本国内に最も密接な関連
を有していたと認められる。
(ウ)

原告Eと生計を一にする配偶者その他の親族の居所について
本件各年を通じて,
原告Eと生計を一にする配偶者及びその他の親族であ

る妻らの居所は,本件日本居宅であった。
原告Eは,本件アメリカ居宅においては,長男と同居して生計を一にしていたのであって,
原告Eと生計を一にする親族が居住していたのは本件日本
居宅だけではないと主張するが,
長男は原告各社から毎年おおむね1000
万円の報酬を受けており,
原告Eが負担しているクレジットカードの利用先
及び使途に照らしても,
原告Eが長男の生活費を負担していた事実は認めら
れず,日常的に生活費等の送金をしていた事実も認められないから,原告Eと生計を一にしていたとはいえない。
(エ)

原告Eの資産の所在について
平成24年末における原告Eの預貯金残高は,
当時のレートで円換算する

と,日本国内が約1億9800万円,アメリカ国内が440万2644円,シンガポール国内が1783万7297円であり,預金残高のみによっても,日本国内に所在する資産が明らかに多い状況にある。加えて原告Eは,本件各年を通じて,日本国内には,本件日本居宅に係る不動産のほか,多数の投資信託,有価証券及び高級自動車等の資産を有しており,アメリカあるいはシンガポールにおける資産とそれぞれ比較して,
日本国内に最も多くの資産
を保有していた。
(オ)

その他の事情について
生活において医療との関わりは欠かせないものであることからすると,そ
の者の医療機関への受診状況に特筆した事情が見られれば,これまでに述べてきた事情に加味して判断すべきであるところ,原告Eは,本件各年を通じ
て,本件日本居宅の近隣の病院におおむね毎月通院し,人間ドックや手術を受けるなどもしていたのであり,
原告Eがあえて日本国内の医療機関で健康
診断等を受診していたとの事情も原告Eの住所を判断するに当たって考慮されるべき一事情であるといえる。
また,
原告Eが日本国民であるとの事情も相応の考慮がされるべき事情で
あるといえる。
(カ)

小括
以上を総合すると,原告Eは,日本,アメリカ及びシンガポールにそれぞ
れ居宅があるものの,
住民登録の状況や滞在日数を比較すれば日本に住居が
あったと認められ,本件グループ法人を支配する地位にある原告Eが,原告
各社の経営上の意思決定を行い,
本件グループ法人の中心である原告Dの本
店が日本国内に所在することからすると,
職業への従事状況という点でも日
本国内に最も密接な関連を有していたと認められる。また,原告Eと生計を一にする配偶者等の居所は日本国内の本件日本住所地であり,日本国内に最も多くの資産を有していることが認められる。これらの事情に,原告Eが自
らの意思で日本国内の医療機関を受診しているといった事情や日本国民であるという事情も加味して,その生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を判断すれば,原告Eは,本件各年を通じて,日本国内の本件日本住所地に生活の本拠たる住所を有していたと認められる。

したがって,原告Eは,本件各年を通じて,日本国内に住所を有している者と認められることから,所得税法2条1項3号に規定する居住者に該当する。

原告らは,
本件各年分における客観的事実と前回調査に係る客観的事実とに
有意な差がないことから,本件各年分においても原告Eは居住者ではないと判断されるはずであると主張するが,ある者が居住者として課税されるか否かは,上記のような客観的事実を総合的に勘案した上で判断されるものであるから,
前回調査との間に有意な差があったか否かは本質的な問題とされるものではない。
また,本件各年分に係る調査時においては,原告E名義の銀行預金口座から料金が引き落とされる妻ら及び長男のクレジットカードの利用状況等についても新たに把握し,生計を一にする親族の居所という点に関する新たな事実が
認められたことから,本件各年分について,処分行政庁として把握した客観的事実に差が認められたものであり,前回調査に係る各年分と異なる判断となったとしても,何ら不合理ではない。
(2)

原告らの主張の要旨
原告Eが居住者であるか否かは,原告Eの住所が国内にあるか否かによって判断されるところ,
住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の
生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がその者の住所に当たるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものであると解されている。
そこで,
本件日本居宅の所在地が客観的に原告Eの生活の本拠たる実体を具
備しているか否かについて検討するに,以下に述べるとおり,被告が主張する客観的事実を考慮しても,本件各年における原告Eの生活の本拠が本件日本居宅の所在地にあったと認めることはできない。

住居について
(ア)

原告Eは,本件各年において,日本滞在中は本件日本居宅を滞在場所と
していたが,アメリカ滞在中は本件アメリカ居宅を,シンガポール滞在中は本件シンガポール居宅を滞在場所としており,
各居宅はいずれも長期間にわ
たる生活の拠点となり得る安定した居宅であったことからすると,原告Eが
日本滞在中に本件日本居宅を滞在場所としていたことは,本件日本居宅の所在地に生活の本拠があったことの根拠とはなり得ない。
(イ)

本件各年における原告Eの日本,アメリカ,シンガポール,中国,イン
ドネシア又はその他の国での滞在日数は別紙4のとおりであって,原告Eの日本での滞在日数は,
最も多い平成24年でさえ1年の3分の1程度に過ぎ
ず,平成21年~23年においては,1年の4分の1程度でしかない。他の国での滞在日数と比較しても,平成21年及び平成23年については,アメリカでの滞在日数を下回っており,平成22年についても,アメリカでの滞在日数やシンガポールでの滞在日数をわずかに上回る程度に過ぎない。また,原告Eは,本件日本居宅,本件アメリカ居宅及び本件シンガポール居宅を拠点としつつ,インドネシア,中国,ヨーロッパ等へ出張を繰り返す生活をしていたところ,
これらの出張はいずれかの居宅を拠点とした生活の

一部であるといえる。
そこで,
各出張の日数をそれぞれ加算して比較すると,
以下のとおり,本件各年を通じて,本件日本居宅を拠点として生活していた日数よりも,
本件シンガポール居宅を拠点として生活をしていた日数が多い。
したがって,滞在日数についても,原告Eの生活の本拠が本件日本居宅の所在地にあったことの根拠とはならない。
平成21年

平成22年

平成23年

平成24年

本件日本滞在日数

93

105

83

128

居宅

出張日数

22

19

56
合計

115

124

88

134

本件アメ滞在日数

97

87

104

75

リカ居宅

0070
出張日数

合計

87

111

75

本件シン滞在日数

82

70

80

68

ガポール出張日数

62

74

85

84

居宅

97

144

144

165

152

合計

職業への従事状況について
(ア)

ある者の生活の本拠を判断するに当たり,
その者の職業への従事状況を

考慮すべきであるとされているのは,
その職業に従事するための必要性から
特定の場所を生活の拠点とすることが通常であるため,職業の従事状況によってどの場所を生活の拠点としているのかを推認することができるからであると理解される。そうすると,その者がその職業に従事するためにどの場所を生活の拠点とする必要があるのかという観点から生活の本拠を判断すべきである。
原告Eは,以下のとおり,その職業に従事するために,本件日本居宅の所
在地ではなく,
本件シンガポール居宅の所在地を生活の拠点とすることを必
要としていた。
(イ)

まず,原告Eは,原告各社の代表取締役であったが,創業者であった父
Sが死亡した平成18年頃からは専ら国内向けの事業を営む原告各社の業務についてはKに任せており,
原告各社の業務への関与は極めて限定されて
いた。具体的には,原告Eは月に1回程度行われる経営会議に出席して原告各社の状況の報告を受けたり,
昔から付き合いのある顧客のところに顔を出
したりする程度で,
通常業務についてはKに全て任せており,
事業所の開設,
銀行からの借入れ,
取引先との契約締結等の重要事項についてもKが原告E
に相談することなく単独で意思決定を行っていた。そのため,原告Eは,日
本に滞在中であっても原告各社に出勤するのは仮に1週間いた場合には約半分くらいであり,
原告各社にいる間も本件各海外法人に関連した業務を行
っていた。
したがって,
原告Eが原告各社の業務を行うために本件日本居宅の所在地
を生活の拠点とする必要性は低かった。
(ウ)

他方で,原告Eは,本件各年において,本件各海外法人の代表者であっ
たところ,これらは原告Eの意向によって設立された法人であって,専ら原告Eを中心として事業を行ってきた。Kにおいては原告Eが財務や経理のこ
とを含めて判断する必要があり,原告Eは,本件各海外法人の中でも特にKの業務に注力する必要があった。そして,原告EがKを中心とする本件各海外法人の業務に注力するためには,Kの本社があり,かつ,Kの販売先及び支店並びにI及びLへのアクセスがよいシンガポールに生活の拠点を置く必要が高かった。

(エ)

したがって,本件各年における原告Eの職業への従事状況は,生活の本
拠が本件日本居宅の所在地にあったことの根拠にはなり得ず,むしろ,本件シンガポール居宅の所在地にあったことの根拠となる客観的事実である。(オ)

これに対し,被告は,本件各外国法人がいずれも原告Dの事業戦略とし
て設立されたものであり,
原告Eは日本国内を拠点として本件グループ法人

の事業活動に従事していたものと認められる旨を主張するが,
I及びLが製
造した製品を専ら海外の顧客に販売しているJ及びKについては,専ら日本国内向けの事業を営む原告Dの事業戦略とはほとんど関係がないし,IやLについても,
主に海外市場で販売する製品を製造するために設立されたもの
であり,原告Dの事業戦略として設立されたものではない。

また,そもそも原告Eの生活の本拠たる住所を判断するうえで考慮すべき職業への従事状況とは,
原告Eがその職業に従事するためにどの場所を
生活の拠点とする必要があるのかということであって,
原告Eがその業務に
従事している本件各海外法人と原告各社との間に事業戦略上の関係があるかということではない。


生計を一にする配偶者その他の親族の居所について
本件各年を通じて,
本件アメリカ居宅に居住していた長男も原告Eと生計を
一にしていたことから,
原告Eと生計を一にする親族の居所となっていたのは
本件日本居宅だけではない。
また,
単身赴任者など,
職業上の都合で生計を一にする親族と離れて生活す
る者が多いことからも明らかなように,自活することが可能な者にとっては,
生計を一にする親族の居所がその者の生活の本拠であるとは限らないし,原告
Eのように長年にわたって生計を一にする親族と生活の本拠を別にした生活を続けていた者にとってはその者の生活の本拠とはほとんど関係のないものとなっているのであるから,
妻らが本件日本居宅に居住していたことは,
原告
Eの生活の本拠が本件日本居宅にあったことの根拠とはなり得ない。

資産の所在について
生活の本拠たる住所を判断するに当たり,資産の所在を考慮すべきとさ
れているのは,生活をするためには資産の使用及び消費をすることが必要になることから,生活の拠点となる場所に必要かつ十分な資産を保有していると考えられるからにほかならない。そうすると,生活の本拠たる住所を判断するに当たって考慮すべき資産の所在とは,生活のために必要かつ十分な資産がどこにあるのかということであり,どの場所に最も多くの資産があるのかではないものと解される。
原告Eは,本件各年を通じて,日本,アメリカ及びシンガポールに相当な資
産を保有しており,いずれも生活するのに必要かつ十分な資産であることからすれば,本件各年を通じて原告Eが日本国内に最も多くの資産を保有していたとしても,そのことは原告Eの生活の本拠が本件日本居宅の所在地にあったことの根拠とはなり得ない。

住民票等の届出状況について
住民票上の住所は,
当事者がどのような届出を行ったかによって決まる形式

的なものに過ぎないため,それ自体は,その者の全生活の中心たる生活の本拠がどこにあるのかという実質的な判断をする上で重要な要素となるものではない。また,原告Eが本件日本居宅の所在地を住民票上の住所としたままであったのは,海外への転出届けをすると印鑑登録証明書の交付を受けられなくなるという不便があり,かつ,平成6年頃及び平成10年頃に,原告Dの総務経理課長等を通じて区役所へ確認したところ,届出の必要はない旨の回答を得たためであって,原告Eが本件日本居宅の所在地を住所地とする旨の意思を有していたものではない。
したがって,
原告Eが本件日本居宅の所在地を住民票上の住所地としていた
ことは,原告Eの生活の本拠が本件日本居宅の所在地にあったことの根拠とは
なり得ない。

まとめ
以上のとおり,被告が主張する客観的事実は,いずれも本件各年における原告Eの生活の本拠が本件日本居宅の所在地にあったことの根拠とはなり得ず,むしろ,原告Eが本件シンガポール居宅を拠点としていた生活の日数や,原告
Eの職業への従事状況は,
原告Eの生活の本拠が本件シンガポール居宅にあっ
たことを根拠付けるものといえる。

前回調査の対象となった各年と本件各年とで客観的諸事情に有意な差がな
いこと
平成21年から平成22年にかけて,
原告Eの所得税に関し前回調査が行わ
れ,平成16年から平成20年の各年に原告Eが居住者であったか否かについて長期間に渡って徹底的な検討が行われたが,結局,当該各年において,原告Eは非居住者であると判断されて調査は終了した。
そして,そのような判断がされた平成16年から平成20年の各年における原告Eの生活場所及び生活状況,職業及び業務の内容・従事状況,生計
を一にする配偶者その他の親族の居住地,資産の所在,生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情と,
本件各年における原告Eの客観的諸事情との間に有
意な変化を認めることはできないから,前回調査における判断が誤っていたものでない限り,
本件各年においても原告Eが居住者であるとは認められないは
ずである。
なお,被告は,本件各年については,妻ら及び長男のクレジットカードの利用状況等について前回調査時に把握していなかった新たな事実を把握した旨
を主張するが,前回調査時においても妻らと原告Eとが生計を一にしていたことは原告Eも争っていなかったのであるから,
この点について新たな事実が認
められたということはない。
2
争点(2)(国税通則法66条1項ただし書及び同法67条1項ただし書に定める正当な理由の有無)について
(1)

原告らの主張の要旨

ア仮に,本件各通知処分,本件各納税告知処分が違法とはいえない場合であっても,原告らには国税通則法66条1項ただし書又は同法67条1項ただし書の正当な理由があるから,第1~第3事件に係る不納付加算税又は無申告加算税に係る各賦課決定処分は,いずれも違法である。


国税通則法66条1項ただし書及び同法67条1項ただし書の正当な理由がある場合とは,真に納税者の責めに帰することができない客観的事情があり,無申告加算税及び不納付加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者にそれを賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解されているが,通常人に要求される注意義務をもってしても,正しい申告又は納付を行うことが期
待できなかった場合においてまで,申告義務又は納付義務の不履行に対する制裁を課すこととすれば,納税者の真摯な努力を払おうとする意欲をかえって阻害することになりかねないことから,納税者が通常人に要求される程度の注意を払ったとしても正しい申告又は納付をすることが期待できなかった場合には,
正当な理由があると認められるものと解すべきである。


本件では,平成21年から平成22年にかけて行われた前回調査において,平成16年から平成20年の各年における原告Eの居住者性について調査が行われ,名古屋国税局課税第1部資料調査課の担当者が,原告Eや税理士に対し,前回調査の結果,原告Eが非居住者であると判断した旨の説明をした。前回調査は,国税局の資料調査課によって5か月間にわたり行われ,専ら原告Eの居住者性を対象にして行われた調査であることからすれば,原告らは,
前回調査における課税庁の判断,すなわち,前回調査の対象となった各年において原告Eが非居住者であったという判断を正しいものであったと信頼することは通常のことであるといえる。そして,前回調査の対象とされた各年における原告Eの住居等の客観的諸事情と,
本件各年分におけるそれとの間に有意
な差がないことについては争いがなく,本件各年における原告Eの居住者性の
判断が異なることはないはずであるから,原告らが,本件各年において原告Eが非居住者であると判断することは無理からぬことであって,通常人に要求される程度の注意義務を払ったとしても,原告らが,本件各年において原告Eが居住者であると判断することは期待できなかったものと認められる。すなわち,原告らが前回調査における判断に対する信頼に基づいて,原告E
を非居住者であると判断したことは,
真に原告らの責めに帰することのできな
い客観的な事情であると認められることから,原告らが,本件各年において,原告Eが居住者であることを前提とする確定申告又は源泉徴収を行わなかったことには正当な理由が認められる。
(2)

被告の主張の要旨


当初から適法に申告し納税した納税者又は当初から適法に納付した納税者
である源泉徴収義務者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,無申告及び不納付による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税又は源泉徴収に係る国税の適正な自主納付の実現を図り,もって納税及び徴収の実を挙げようとする各加算税の趣旨からすると,国税通則法66条1項ただし書及び同法67条ただし書に規定する正当な理由とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があり,無申告加算税又は不納付加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に各加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解すべきであり,法の不知や納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りは正当な理由とならないというべきである。
すなわち,
正当な理由に当たる場合とは,納税者において,申告ないし

納付する契機が客観的に与えられていなかったような場合に限られると解すべきであり,少なくとも,法定申告期限又は法定納期限以前において,課税庁が当該事案に適用されるべき公的見解を表明ないし明示しており,納税者が当該見解を信頼して申告ないし納付をしなかったといった事情が必要であるというべきである。

他方で,
確定申告や納付は納税者自身の判断と責任において行われるべきものであり,また,課税庁においてすべての申告等における納税者の法的見解の誤り等を認識して是正させることは不可能であるから,単に,当該納税者の従前の申告や税務調査等において当該納税者が採用した見解に対して課税庁から何らかの指摘や課税処分を受けなかったとか,当該見解を前提とした計算方
法等を課税庁から教示されたことがあるなどといった事情だけでは正当な理由を認めるには足りないというべきである。イ
原告らは,本来であれば,本件各年分において,原告Eの住居(滞在場所及び滞在日数)
,職業,生計を一にする配偶者その他の親族の状況,資産の所在

等の客観的事実に基づき,
それらを総合的に考慮した上で,
原告Eが日本の
居住者に該当するかどうかを判断し,それに基づいて所得税の確定申告の要否又は源泉徴収税の課税上の取扱いについて判断すべきであった。しかし,原告らは,原告Eが日本の居住者に該当するとの認識を持つことは十分可能であったにもかかわらず,前回調査から原告Eの生活に有意な変化はないとして
原告Eが非居住者に該当すると判断した結果,その判断を誤ったものである。所得税の課税関係は所得税法等の法令に基づき確定するものであるところ,原告らの上記判断は,単に税法の不知あるいは法令解釈の誤りによるものというべきであって,本件において,原告らに真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情は存在せず,原告らに各加算税を賦課することが不当又は酷になる場合になるといった具体的な事情もないことは明らかである。ウ
これに対し,原告らは,前回調査において原告Eが非居住者であると判断されたことについて信頼することが通常であるなどと主張するが,
確定申告や納
付は納税者の判断と責任において行われるべきものであり,本件各年分において原告Eが居住者に該当するかどうかについては,
前回調査の結果がいかなる
ものであったかにかかわらず,原告らにおいて,暦年を前提とした計算期間ごとに原告Eの住居等の客観的事実に基づき判断する必要がある。

また,そもそも,前回調査の結果として国税当局が原告Eを非居住者であると認定した事実はないし,原告らに対し原告Eが非居住者であると認定した旨を説明した事実もないから,原告らの主張はその前提を誤るものである。エ
以上からすれば,本件において,課税庁の税務職員において,原告Eが平成16年~平成20年当時,非居住者であったとする見解を公的に示し,又はその旨の誤った指導をしたと評価し得る事情は一切認められず,原告らは,結局のところ,本件各年分において原告Eが居住者に該当するかについて,前回調査の結果を自己に都合良く解釈した上で,原告Eを居住者とした確定申告又は源泉徴収を行わなかったものと認められ,前回調査に関する判断に対する信頼
というのも,あくまで原告らの誤った認識にすぎない。すなわち,本件において,原告らに,原告Eが居住者であったことを前提に申告ないし納付をする契機が客観的に与えられていなかったとは到底認められず,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があるなどとはいえない。
したがって,
原告らに国税通則法66条1項ただし書又は同法67条1項た

だし書に規定する正当な理由に該当する事情があるとはいえない。以上
(別紙8)
課税の根拠及び計算

1
原告Dに対する課税処分の根拠
(1)

第1事件各納税告知処分の根拠
原告Dは,原告Eに支払った本件各月分の役員報酬について,原告Eが所得税
法2条1項5号に規定する非居住者に該当するとして,同法213条1項1号を適用し,本件各月分の役員報酬に100分の20の税率を乗じて計算した所得税の額(別表1納付額欄の金額)を納付した。
しかしながら,原告Eは,本件各年分において所得税法2条1項3号に規定す
る居住者に該当することから,原告Dが原告Eに支払った本件各月分の役員報酬は,同法28条1項(給与所得)に該当する。
そうすると,
当該役員報酬の支払者である原告Dは,
所得税法183条1項
(源
泉徴収義務)により,本件各月分の役員報酬を支払う際,その各支給額に同法185条1項2号を適用して計算した金額を源泉所得税として原告Eから徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならないこととなる。
したがって,被告が本訴において主張する原告Dの納付すべき源泉所得税の額は,本件各月分において,原告Dが原告Eに対して支払った各月の役員報酬の金
額に所得税法185条1項2号を適用して算出された各月の源泉所得税額から,原告Dの納付済額を控除した後の税額である。
そして,当該税額は,別表1納税告知処分等欄の源泉所得税の額欄の各月分の金額と同額であり,その合計額は,1485万3613円である。(2)

第1事件各賦課決定処分の根拠
原告Dの納付すべき不納付加算税の額は,
国税通則法67条1項の規定に基づ

き,別表1納税告知処分等欄の源泉所得税の額欄の各月分の金額(ただし,月ごとに同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の10の割合を乗じて算出した各金額(合計額147万9000円)となる。
2
原告Eに対する課税処分の根拠
(1)


本件各通知の根拠
平成24年分
(ア)

総所得金額(別表2①欄の金額)

1億4513万4639


上記金額は,次のaの利子所得の金額,bの配当所得の金額及びcの給与所得の金額の合計金額である。

a
利子所得の金額(別表2②欄の金額)

172万2776円

上記金額は,
原告Eが昭和税務署長に提出した平成24年分の所得税
の確定申告書(以下本件24年分確定申告書という。)に記載された金額(乙B4・1枚目の④欄)と同額である。
b
配当所得の金額(別表2③欄の金額)

877万3700円

上記金額は,本件24年分確定申告書に記載された金額(乙B4・1枚目の⑤欄)と同額である。
c
給与所得の金額(別表2④欄の金額)

1億3463万8163円

上記金額は,本件24年分確定申告書に記載された金額(乙B4・1枚目⑥欄)と同額である。

(イ)

所得控除の額の合計額

185万6118


上記金額は,次のaないしdの合計額である。
a
社会保険料控除(乙B4・1枚目の⑫欄)
137万6118円

b
生命保険料控除(乙B4・1枚目の⑭欄)
5万円

c
地震保険料控除(乙B4・1枚目の⑮欄)

d
基礎控除(乙B4・1枚目の㉔欄)

(ウ)

課税総所得金額

5万円
38万円
1億4327万8000


上記金額は,
上記(ア)の総所得金額から上記(イ)の所得控除の額の合計

金額を控除した後の金額(ただし,国税通則法118条1項の規定を適用して1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。(エ)

算出税額

5451万5200


上記金額は,
上記(ウ)の課税総所得金額に所得税法89条1項に規定す

る税率を乗じて算出した金額である。
(オ)

外国税額控除の金額

3037万3815


上記金額は,本件24年分確定申告書に記載された金額(乙B4・1枚目の㊵~㊶欄)と同額である。

(カ)

源泉徴収税額

1732万3473


上記金額は,本件24年分確定申告書に記載された金額(乙B4・1枚目の㊷欄)と同額である。
(キ)

納付すべき税額(別表2⑤欄の金額)

681万7900


上記金額は,
上記(エ)の算出税額から上記(オ)の外国税額控除の金額及
び上記(カ)の源泉徴収税額を控除した後の金額(ただし,国税通則法119条1項の規定を適用して100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。


平成23年分
(ア)

総所得金額(別表2⑦欄の金額)

1億4004万4345


上記金額は,次のaの利子所得の金額,bの配当所得の金額及びcの給与所得の金額の合計金額である。
a
利子所得の金額(別表2⑧欄の金額)

195万1835円

上記金額は,
原告Eが昭和税務署長に対して提出した平成23年分の
所得税の確定申告書(以下本件23年分確定申告書という。)に記載された金額(乙B3・1枚目の④欄)と同額である。b
配当所得の金額(別表2⑨欄の金額)

404万2500円

上記金額は,本件23年分確定申告書に記載された金額(乙B3・1
枚目の⑤欄)と同額である。
c
給与所得の金額(別表2⑩欄の金額)

1億3405万0010円

上記金額は,本件23年分確定申告書に記載された金額(乙B3・1枚目の⑥欄)と同額である。
(イ)

所得控除の額の合計額

184万2951


上記金額は,次のaないしdの合計額であり,本件23年分確定申告書に記載された所得から差し引かれる金額の合計金額(乙B3・1枚目の㉕欄)と同額である。
a
社会保険料控除(乙B3・1枚目の⑫欄)
136万2951円

b
生命保険料控除(乙B3・1枚目の⑭欄)

5万円

c
地震保険料控除(乙B3・1枚目の⑮欄)

5万円

d
基礎控除(乙B3・1枚目の㉔欄)

(ウ)

課税総所得金額

38万円
1億3820万1000


上記金額は,
上記(ア)の総所得金額から上記(イ)の所得控除の額の合計
金額を控除した後の金額である。
(エ)

算出税額

5248万4400


上記金額は,
上記(ウ)の課税総所得金額に所得税法89条1項に規定す

る税率を乗じて算出した金額である。
(オ)

外国税額控除の金額

3259万6171


上記金額は,本件23年分確定申告書に記載された金額(乙B3・1枚目の㊵~㊶欄)と同額である。

(カ)

源泉徴収税額

1732万8477


上記金額は,本件23年分確定申告書に記載された金額(乙B3・1枚目の㊷欄)と同額である。
(キ)

納付すべき税額(別表2⑪欄の金額)

255万9700


上記金額は,
上記(エ)の算出税額から上記(オ)の外国税額控除の金額及
び上記(カ)の源泉徴収税額を控除した後の金額である。
(2)

第1事件各賦課決定処分の根拠
原告Eの納付すべき本件各年分の所得税に係る各無申告加算税の額は,次の
アないしエのとおりに算出した各金額となる。

平成24年分
原告Eの納付すべき平成24年分の所得税に係る無申告加算税の額は,原告Eがした期限後申告により,
原告Eが納付すべきこととなる税額681万

7900円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下,後記イないしエにおいて同じ。)に同法66条1項に基づき100分の15の割合を乗じて算出した金額102万1500円と,
当該期限後申告により納付すべきこととなる税額681万79
00円のうち,50万円を超える部分に相当する金額631万7900円(ただし,
同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後
のもの。以下,後記イないしエにおいて同じ。)に同法66条2項に基づき
100分の5の割合を乗じて算出した金額31万5500円を合計した金額133万7000円(別表2⑥欄の金額と同額)となる。イ
平成23年分
原告Eの納付すべき平成23年分の所得税に係る無申告加算税の額は,原告Eがした期限後申告により,
原告Eが納付すべきこととなる税額255万

9700円に国税通則法66条1項に基づき100分の15の割合を乗じて算出した金額38万2500円と,当該期限後申告により納付すべきこととなる税額255万9700円のうち,
50万円を超える部分に相当する金
額205万9700円に同条2項に基づき100分の5の割合を乗じて算出した金額10万2500円を合計した金額48万5000円
(別表2⑫欄

の金額と同額)となる。

平成22年分
原告Eの納付すべき平成22年分の所得税に係る無申告加算税の額は,原告Eがした期限後申告により,
原告Eが納付すべきこととなる税額353万
3400円に国税通則法66条1項に基づき100分の15の割合を乗じ
て算出した金額52万9500円と,
当該期限後申告により納付すべきこと
となる税額353万3400円のうち,
50万円を超える部分に相当する金
額303万3400円に同条2項に基づき100分の5の割合を乗じて算出した金額15万1500円を合計した金額68万1000円
(別表2⑭欄
の金額と同額)となる。


平成21年分
原告Eの納付すべき平成21年分の所得税に係る無申告加算税の額は,原告Eがした期限後申告により,
原告Eが納付すべきこととなる税額282万
0800円に国税通則法66条1項に基づき100分の15の割合を乗じて算出した金額42万3000円と,
当該期限後申告により納付すべきこと
となる税額282万0800円のうち,
50万円を超える部分に相当する金

額232万0800円に同条2項に基づき100分の5の割合を乗じて算出した金額11万6000円を合計した金額53万9000円(別表2⑯欄の金額と同額)となる。
3
原告Fに対する課税処分の根拠
(1)

第3事件各納税告知処分の根拠
原告Fは,原告Eに支払った本件各月分の役員報酬について,原告Eが所得
税法2条1項5号に規定する非居住者に該当するとして,同法213条1項1号を適用し,本件各月分の役員報酬に100分の20の税率を乗じて計算した所得税の額(別表3納付額欄の金額)を納付した。
しかしながら,原告Eは,本件各年分において所得税法2条1項3号に規定する居住者に該当することから,原告Fが原告Eに支払った本件各月分の役員報酬は,同法28条1項(給与所得)に該当する。
そうすると,当該役員報酬の支払者である原告Fは,所得税法183条1項(源泉徴収義務)により,本件各月分の役員報酬を支払う際,その各支給額に
同法185条1項2号を適用して計算した金額を源泉所得税として原告Eから徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならないこととなる。
したがって,
被告が本訴において主張する原告Fの納付すべき源泉所得税の
額は,本件各月分において,原告Fが原告Eに対して支払った各月の役員報酬
の金額に所得税法185条1項2号を適用して算出された各月の源泉所得税額から,原告Fの納付済額を控除した後の税額である。
そして,当該税額は,別表3納税告知処分等欄の源泉所得税の額欄の各月分の金額と同額であり,その合計額は,913万2800円である。(2)

第3処分各賦課決定処分の根拠
原告Fの納付すべき不納付加算税の額は,
国税通則法67条1項の規定に基

づき,別表3
納税告知処分等欄の
源泉所得税の額欄の各月分の金額(た
だし,月ごとに同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の10の割合を乗じて算出した金額(合計額89万4000円)となる。
以上

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