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東京都市計画高度地区(港区決定)計画書第7項に基づく許可処分取消請求事件
事件番号平成29(行ウ)470
事件名東京都市計画高度地区(港区決定)計画書第7項に基づく許可処分取消請求事件
裁判年月日令和元年5月29日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-05-29
情報公開日2020-03-25 18:00:32
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令和元年5月29日判決言渡
平成29年(行ウ)第470号東京都市計画高度地区(港区決定)計画書第7項に基づく許可処分取消請求事件
主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用並びに補助参加についての異議によって生じた費用及び補助参加によって生じた費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
港区長が平成29年6月26日付けで別紙物件目録記載の建物の建替えの計
画に係る建築物についてした東京都市計画高度地区(港区決定)計画書7項に基づく絶対高さ制限の緩和に係る許可(29港街計第〇〇号)を取り消す。第2

事案の概要
本件は,都市計画法上の高度地区に係る都市計画である東京都市計画高度地区(平成27年港区告示第266号による変更後のもの。以下本件都市計画という。)において建築物の高さの最高限度が定められている地区内に所在する別紙物件目録記載の建物(以下本件マンションという。)の建替えの計画に係る建築物について,本件マンションのうちの分譲部分の区分所有者全員をもって構成する団体であるA管理組合(以下本件管理組合とい
う。)とその構成員(組合員)の一人であり本件マンションのその他の部分(賃貸部分)の区分所有者でもあるB株式会社(以下Bという。)との共同の申請を受け,港区長が,本件都市計画の定めに基づき,絶対高さ制限を緩和する旨の許可(以下本件許可という。)をしたところ,本件管理組合の組合員(区分所有者)の一人である原告が,本件許可の申請のうち本件管理組
合による部分(以下本件管理組合申請部分という。)は本件管理組合ないしその組合員からの授権を欠き無効であるなどと主張して,本件許可の取消し
を求める事案である。
1
高度地区に関する定め
(1)

都市計画法
都市計画法8条1項3号は,都市計画区域については,都市計画に,高度
地区を定めることができる旨を定め,同条3項2号トは,高度地区について
は,都市計画に,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定めるものとする旨を定める。
(2)

本件都市計画(乙1,2)
本件都市計画は,高度地区に係る都市計画であり,建築物の高さの最高限
度を定めるところ,その付記7項において,総合設計制度を活用する建築物(分譲マンションの建て替え)の特例との見出しの下,次のア及びイのいずれにも該当する主たる用途が共同住宅である建築物の建替えに際して建築基準法59条の2に基づく許可(いわゆる総合設計許可)を受けた建築物で,周辺環境に対し一定の配慮が図られ,市街地環境の向上に資する建築物であると港区長が認めて許可したものについては,東京都総合設計許可に係る建築物の高さ等誘導指針の範囲内で,当該建築物に係る絶対高さ制限(北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限を除いた建築物の高さの限度をいう。)について,その高さを算定することができる旨を定める。

マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下円滑化法と
いう。)2条1項に規定するマンションの建替えであること。


建替え後の建築物の主たる用途が共同住宅であること。

(以下,上記の港区長による許可を7項特例許可という。)
2
前提事実(掲記の証拠等により認められる。)
(1)

当事者等
本件マンションは,本件都市計画において建築物の高さの最高限度が3
5mとされている35m高度地区内に所在し,分譲部分及びそれ以外の賃貸部分から成っている(甲2,乙2,弁論の全趣旨)。

本件管理組合は,本件マンションのうちの分譲部分の区分所有者全員をもって構成する団体である(甲2,弁論の全趣旨)。


Bは,本件マンションのうちの賃貸部分の全部の区分所有者であり,また,分譲部分の一部の区分所有者として本件管理組合の組合員でもある(甲2,7,8,弁論の全趣旨)。


原告は,本件マンションの区分所有者であり,本件管理組合の組合員である(甲1,2)。

(2)

本件許可について
本件管理組合及びBは,平成28年10月25日,港区長に対し,共同で,
本件マンションの建替えの計画に係る建築物(計画高さ79.95m)について,7項特例許可の申請をしたところ,同区長は,平成29年6月26日付けで本件許可(29港街計第〇〇号)をした。なお,本件管理組合申請部分は,本件管理組合の当時の理事長であったCにより,本件管理組合理事長
Cの名義で行われている(後記のとおり,その授権の有無については争いがある。)。(甲9)
(3)

本件訴えの提起
原告は,平成29年10月13日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3
争点
(1)

本案前の争点
原告適格及び訴えの利益の有無(争点①)

(2)

本案の争点
本件許可について,原告は,Cにより行われた本件管理組合申請部分は本
件管理組合ないしその組合員からの授権を欠くため無効である旨の主張をするところ,被告は,当該主張を争うほか,そもそも本件管理組合申請部分に
係る授権の欠缺は本件許可の取消事由たる瑕疵とはならないことや,本件管理組合の総会において本件管理組合申請部分に係る追認決議がされたことを主張している。
そうすると,本件における本案の主たる争点は,次のとおりに整理できる。ア
本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺が本件許可の取消事由たる瑕疵となるか(争点②)


本件管理組合申請部分に係る授権の有無(争点③)

本件管理組合の総会においてされた本件管理組合申請部分に係る追認決議の有効性(争点④)

4
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点①(原告適格及び訴えの利益の有無)について
(原告の主張)
本件許可は,その申請をBと共同でした本件管理組合を名宛人の一人としてされたものであるが,後記(3)(原告の主張)のとおり,本件管理組合申請部分が本件管理組合ないしその組合員による授権を欠いたものであり,本件管理組合及びその組合員である原告の意思に反するものであること,本件許可により,建築物の高さ制限が緩和され,本件マンションが高層のものに建て替えられると,テロの標的になることや倒壊等のおそれが高まり,その区分所有者である原告の生命,身体,財産等に大きな危険が生じること,本
件許可は,円滑化法に基づくマンション建替事業の前提となるものであり,原告の有する本件マンションの区分所有権について権利変換の処分がされること等が予定されていることからすれば,原告は,本件許可による法的効果が直接及ぶ者として,その取消しを求める原告適格を有する。
また,本件許可は,上記のような法的効果を有しており,原告の法的地位
に不利益を生じさせるものであるといえるから,訴えの利益も認められる。(被告の主張)

本件許可は,本件マンションの建替えの計画に係る建築物の高さ制限を緩和するものであり,これにより原告の権利や法律上保護された利益が侵害され又は侵害されるおそれがあるとはいえないから,原告はその取消しを求める原告適格を有せず,また,本件許可は,申請者に有利な効果をもたらすものであり,原告の法的地位に何ら不利益を課すものではないから,訴えの利益も認められない。
(2)

争点②(本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺が本件許可の取消事由
たる瑕疵となるか)について
(被告の主張)
本件許可は,申請に係る建築物ないし建替えの計画に対してなされる対物処分の性質を有するものであり,港区長は,その許否の判断に当たって,当該建築物ないし建替えの計画が,総合設計制度を活用する分譲マンションの建替えであるか,周辺環境に対し一定の配慮が図られ港区の市街地環境を向上させるものであるかといった,専ら客観的要素に着目することとなる。
こうした本件許可の性質に鑑みれば,代理人ないし代表者により行われた申請について本人からの授権を欠いていたとしても,そのような申請者の人的要素は,許可をするか否かの判断における審査の対象外であり,その授権の有無によって本件許可の効力は左右されない。
また,本件許可の申請は,本件管理組合とBとが共同で行っているから,
本件管理組合理事長による本件許可の申請が授権を欠くものであったとしても,Bが行った本件許可の申請の効力には影響がないから,本件許可の効力は否定されない。
したがって,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺は本件許可の取消事由たる瑕疵とはならない。

(原告の主張)
本件許可は,港区長による総合的な判断をもって行われる裁量処分であり,
申請者の権限(本人からの授権)の有無といった申請者の人的要素等も考慮し得るところ,本件管理組合申請部分についての授権を欠く場合には申請行為自体が無効となるから,本件許可は違法であるといえる。
また,本件のような共同申請においては,各申請者が他の共同申請者と共同して申請をする意思があることが必要となるが,本件管理組合申請部分が授権を欠くものとして無効である以上,本件管理組合にはBとの共同申請の意思も欠けていたことになるから,共同申請行為が全体として無効となる。したがって,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺は本件許可の取消事由たる瑕疵となる。

(3)

争点③(本件管理組合申請部分に係る授権の有無)について
(被告の主張)
本件管理組合の総会では,平成25年10月15日,本件マンションの建替えの計画案を作成するために総合設計制度等について行政との協議を開始することについて,平成26年8月29日,本件マンションにつき建替えの計画の方向で本格的な検討をすることについて,同年9月30日,建替え決議までに支出が予想される概算費用の承認について,それぞれ決議をしており,これら一連の総会決議は,本件許可の申請をすることを含む本件マンションの建替えに必要な行為についての包括的な授権決議であるといえること,また,本件管理組合は,平成26年4月以降,合計6回にわたりその組合員
に対する説明会及び個別面談を行っていたことなどからすれば,本件管理組合申請部分について本件管理組合ないしその組合員による授権に欠けるところはない。
(原告の主張)
本件管理組合申請部分は,Cにより,本件管理組合理事長Cの名において
されたものであるところ,本件管理組合の理事長の権限に本件許可の申請を行うことは含まれていないから,Cがこれを行うには本件管理組合からの個
別の授権を要するが,本件管理組合の総会において,本件許可の申請を行うことについての決議はされておらず,それどころか本件許可の申請を行うことそのものが組合員には知らされていなかったのであるから,本件管理組合申請部分は本件管理組合ないしその組合員による授権を欠いたものである。(4)

争点④(本件管理組合の総会においてされた本件管理組合申請部分に係
る追認決議の有効性)について
(被告の主張)
本件管理組合は,平成30年10月5日に臨時総会を開催し,本件管理組合申請部分を追認する旨の決議(以下本件追認決議という。)を行ったから,仮に本件管理組合申請部分に係る授権に瑕疵があったとしても,同決
議により当該瑕疵は治癒されたというべきである。
(原告の主張)
本件追認決議に係る議決権行使用紙及び委任状は,成立の真正や内容の信用性に疑義があるから,かかる決議の事実は認められない。
また,授権を欠いた本件管理組合申請部分を追認できるという法的根拠は
ないこと,本件管理組合申請部分自体が有印私文書偽造等の犯罪行為であり,これを追認することは公序良俗に反すること,本件追認決議に先立って本件管理組合の組合員に対する虚偽の説明がされていたことなどからすれば,本件追認決議は無効である。
仮に,本件管理組合申請部分の追認を認めるとすれば,少なくとも本件管
理組合の規約(甲2)44条3項所定の組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の特別決議によるべきであるが,本件追認決議はかかる特別決議の要件を満たしておらず,決議は成立していない。
第3
1
当裁判所の判断
争点①(原告適格及び訴えの利益の有無)について(1)

原告適格について


処分の取消しの訴えは,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができるところ(行政事件訴訟法9条1項),ここでいう法律上の利益を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである(最高裁平成17年12月7日大
法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。
そして,処分の名宛人に限らず,処分の法的効果により自己の権利又は法律上保護された利益の制限を受ける者は,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者
に当たり,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決・裁判集民事244号43頁参照)。

7項特例許可においては,その要件の一つとして,円滑化法2条1項に規定するマンションの建替えであることが定められている。そして,当該マンションの建替えについて円滑化法に定めるマンション建替事業を施行しようとする場合には,当該事業の施行により新たに建築されるマンションの設計の概要等を記載した事業計画を定めた上で,施行者となるべきマンション建替組合の設立(個人が施行者となる場合は,当該事業)につき,
都道府県知事等の認可を受ける必要があり(円滑化法9条1項,10条1項,45条1項,47条1項),その認可の基準の一つとして,事業計画の内容が法令に違反するものでないこと(円滑化法12条2号,48条2号)が定められているから,絶対高さ制限の緩和を内容とする7項特例許可は,都市計画法上の高度地区において建築物の高さの最高限度を超える
高さのマンションを建築しても法令に違反するものではないとすることにより,上記認可の要件を充足させるという法的効果を有するものというこ
とができる。また,当該認可がされると,特段の事情がない限り,その認可に係る事業計画に従って具体的な事業がそのまま進められ,その後の手続として,建替えにより除却されることとなる在来のマンションの区分所有権や敷地利用権を有する者は,権利変換の処分(円滑化法68条)によって,その権利を失い,新たに建築されるマンションの区分所有権や敷地
所有権を取得する(円滑化法70条,71条)ことになるなど,最終的にその権利の変動を受ける地位に立たされることになるといえる。
そうすると,円滑化法に定めるマンション建替事業の施行が予定されている在来のマンションの区分所有者は,7項特例許可がされることによって,上記のような事業の施行による権利の変動を受ける地位に立たさ
れることになるといえ,7項特例許可の法的効果により権利の制限を受けることとなるということができるから,7項特例許可の取消しを求める原告適格を有すると解するのが相当である。

これを本件についてみると,本件マンションは,円滑化法に定めるマンション建替事業の施行が予定されている在来のマンションであり(丙3,
弁論の全趣旨),原告は,本件マンションの区分所有者である(前記前提事実(1)エ)から,原告は,本件マンションの建替えの計画に係る建築物についての7項特例許可である本件許可の取消しを求める原告適格を有するといえる。
(2)

訴えの利益について
上記(1)に説示したところによれば,本件許可の効力が存続する以上,そ
の取消しを求めることについての訴えの利益も認められるというべきである。(3)
2
よって,本件訴えは適法である。

争点②(本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺が本件許可の取消事由たる瑕疵となるか)について
(1)

7項特例許可は,円滑化法2条1項に規定するマンションの建替えであ
ること,建替え後の建築物の主たる用途が共同住宅であること,総合設計許可を受けた建築物で,周辺環境に対し一定の配慮が図られ,市街地環境の向上に資する建築物であることといった建築物又はその建築に係る計画の内容等を要件とするものであり,都市計画法上の高度地区に係る都市計画である本件都市計画において定められている絶対高さ制限を当該建築物について緩和するという法的効果を生じさせるものである。このような7項特例許可の要件及び効果に鑑みると,7項特例許可の本質は,マンションの建替えの計画に係る建築物を対象とする対物処分であると解される。
このことに加えて,本件都市計画において,7項特例許可の申請主体に関
する要件や基準は定められていないこと,港区東京都市計画高度地区の絶対高さ制限の特例に係る区長の認定及び許可に関する基準(平成27年6月1日27港街計第808号。乙4)においても,7項特例許可の基準が,建築物の延べ面積中共同住宅の用に供されている割合(5条)や,接道条件,壁面後退,空地率,緑化面積,環境空地の整備,環境空地の質,建築物の形
態・意匠による周辺配慮(9条2項)といった,専ら建築物ないしその敷地の状況に係る物的要素に着目して定められており,申請主体の要件や基準については一切の定めがないこと,港区東京都市計画高度地区の絶対高さ制限の特例に係る区長の認定及び許可に関する事務取扱要領(平成27年7月1日27港街計第1191号。乙3)によれば,7項特例許可の申請の主
体として建築主(3条8項等)が想定されていることがうかがわれるものの,同要領にも,申請の手続の要件として,許可申請書に計画の建築物等に係る図面等及び計画概要書を添えて提出しなければならない(同条4項)等の定めがあるのみで,申請主体の要件や基準についての特段の定めはないことに鑑みると,7項特例許可の許否の判断は,基本的に当該申請に係る建
築物等の物的要素に基づいてされることが予定されており,申請主体に関しては,外形上,その計画に係る建築物の建築主になり得る者による申請であ
れば足りるものと解される。
以上の検討を踏まえると,7項特例許可において,申請主体に関する瑕疵は,外形上,当該建築物の建築主となる余地がない者による申請であるなどの特段の事情がない限りは,その申請の効力に影響しないものと解するのが相当である。

(2)

これを本件についてみると,本件許可に係る本件管理組合申請部分は,
本件管理組合理事長Cの名義により行われている(前記前提事実(2))ところ,その法形式上は,本件管理組合という団体がその代表者を通じて行った行為と評価されるものである。そして,本件マンションが分譲部分と賃貸部分とから成り(同(1)ア),分譲部分の区分所有者全員をもって構成する団
体である本件管理組合(同(1)イ)が,賃貸部分の全部の区分所有者であるB(同(1)ウ)と共同して本件許可の申請をしていること(同(2))からすると,本件許可の申請は,外形上,その実質において本件マンションの区分所有者全員が共同して行ったものとみることができるものである。そうすると,本件許可の申請は,当該申請の計画に係る建築物の建築主となり得る者によ
ってされたものであるといえ,当該建築物の建築主となる余地がない者による申請であるなどの当該申請の効力に影響を及ぼす特段の事情があるとは認められない。
よって,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺は,仮にそれがあったとしても,その申請の効力に影響し得る瑕疵には当たらないというべきである。
(3)

以上によれば,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺は,本件許可の
取消事由たる瑕疵とはならないから,争点③及び④について判断するまでもなく,この点を本件許可の取消事由とする原告の主張には理由がない。3
本件許可の適法性について
原告は,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺のほか,①Cが申請者名義を冒用したことに関し,港区長において行政手続法36条の3第3項違反や刑
事訴訟法239条2項違反等の違法があり,あるいは当該申請が犯罪行為に当たるものであること,②本件許可に当たり港区長が意見を聴いた港区建築審査会において,東京都は総合設計許可をする際,区に対して意見を聴くのかという委員の質問に対し,全ての案件について区で判断しているとの回答を幹事がしたこと(甲11)について,当該回答は事実に反しているから,同審査会の
答申は無効であることなどを主張している。
しかしながら,上記①に関する原告の主張は,本件許可という処分との関係において,直ちに取消事由を構成するものとは解されず,結局のところ,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺をいうものであって,これが採用できないことは前記2に説示したとおりである。また,上記②に係る幹事の回答は,総
合設計許可に際し東京都が区に意見を聞くのか否かという一般的な事項に関するものとも解され,このことが本件許可という個別具体的な処分との関係で港区建築審査会の答申に影響を及ぼしたことをうかがわせる証拠はなく,同審査会の答申につき,本件許可の取消事由となる違法があったとは認められない(なお,原告は,当該答申において本件管理組合申請部分についての授権を欠
くこと等が考慮されていない旨の主張もするが,前記2に説示したところに照らし,本件許可の取消事由となり得るものではない。)。
なお,原告は,本件許可の存在が社会に悪影響を与えるといった主張もするが,この点が本件許可についての具体的な取消事由を構成するものとは解し難い。

以上のとおり,本件許可の取消事由に係る原告の主張はいずれも理由がなく,本件許可は適法というべきである。
4
本件管理組合の補助参加の許否について
原告は,本件管理組合の補助参加の申出(以下本件補助参加申出とい
う。)について,Cに対する本件管理組合の授権を欠くため,Cの委任により大沢拓弁護士が本件管理組合の補助参加代理人としてした本件補助参加申出は
無効であるなどとして,同申出に異議を述べている。
記録によれば,原告は,本件補助参加申出に異議を述べる前に弁論をしており,その異議の適法性には疑義があるが,この点を措くとしても,証拠(丙18,19,39,40)によれば,平成30年10月5日に開催された本件管理組合の臨時総会において,本件管理組合が本件訴訟につき被告のために補助参加する件について,議決権総数1万2000に対し,合計1万0804の議決権を有する組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)が出席し,賛成議決権数が8040,反対議決権数が2528,棄権議決権数が236であったことが認められる。本件管理組合の規約(甲2)によれば,
総会の議事は,議決権総数の半数以上を有する組合員が出席する会議において,出席組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決するものとされているから(44条1項,2項,5項),上記議事は上記臨時総会において可決されたといえる。
この点につき,原告は,当該総会決議に係る議決権行使用紙及び委任状につ
いて成立の真正や内容の信用性を争う旨の主張をするが,これらの書面の原本(丙39)を踏まえた具体的な主張立証を何ら行っておらず,当該原告の主張は採用できない。また,原告は,当該総会において虚偽の説明がされたため当該総会決議には組合員の意思が正しく反映されていない旨の主張をするが,証拠(丙18)によれば,その議案について,補助参加する本件訴訟の事件番号
や被告(港区)の側に補助参加する旨の説明がされており,議案の説明に関し当該総会決議の効力に影響を及ぼすような瑕疵があると認めることはできない。したがって,本件補助参加申出につき本件管理組合による授権を欠くという瑕疵は,仮にそれがあったとしても,当該総会決議によって治癒(追認)されたといえる。

よって,原告による本件補助参加申出に対する異議には理由がないから,当裁判所は,当該申出を相当と認め,本件管理組合が被告を補助するために本件
訴訟に参加することを許可し,その行った訴訟行為を有効なものと認めるものである。
5
結論
以上によれば,本件許可は適法であり,原告の請求は理由がないからこれを
棄却することとし,訴訟費用並びに補助参加についての異議によって生じた費用及び補助参加によって生じた費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,66条を適用して,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官

田孝夫
裁判官

古中野晴行
裁判官古屋勇児は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官


(別紙省略)

田孝夫
(訴状の別紙物件目録と差替え)

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