判例検索β > 令和1年(ネ)第2243号
事件番号令和1(ネ)2243
裁判年月日令和2年2月26日
裁判所名・部東京高等裁判所
裁判日:西暦2020-02-26
情報公開日2020-03-25 16:00:21
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主文1
本件控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由

第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
被控訴人は,控訴人ら各自に対し,それぞれ55万円及びこれに対する平成30年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要(以下,特に断らずに原判決記載の略称を用いることがあ
る。)
1
本件は,控訴人らが,被控訴人に対し,現行の戸籍法において,日本人同士の夫婦の一方が婚姻により配偶者の氏を称することとした場合に,婚姻前の氏を戸籍法上の氏として称することを認める制度(本件旧氏続称制
度)が設けられていないこと(本件旧氏続称制度の不存在)について,①日本人同士が離婚した場合や日本人が外国人と婚姻又は離婚した場合と比較して取扱いが異なり不合理な差別で憲法14条1項に違反する,②婚姻状態の有無という個人のプライバシーに関する情報が本人の意に反して公にされることとなり憲法13条に違反する,③国会の立法裁量の範囲を超
える不合理なもので憲法24条に違反するなどとした上で,④同制度の不存在が法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反する状態であることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合に該当し,同制度を設ける立法措置を執らないと
いう国会議員の立法不作為(本件立法不作為)が国家賠償法1条1項の適用上違法となるところ,⑤控訴人らは本件立法不作為により精神的苦痛を
被った旨を主張して,同項に基づく損害賠償として,控訴人ら各自に対し,それぞれ55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成30年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求める事案である。
原判決は,①日本人同士の婚姻の場面における本件旧氏続称制度の不存在が憲法14条1項に違反する状態にあるということはできない,②控訴人らにつき自らが法律婚の状態にあるという情報をみだりに第三者に開示又は公表されたとは認められず憲法13条違反の主張は採用できない,③
夫婦同氏を定める民法750条の規定が合憲である以上,そこから派生する不利益に対処するため,本件旧氏続称制度に関する法律の規定を設けるか否かは国会の立法裁量に委ねられた問題であり,憲法24条適合性を論ずる余地はないなどとした上で,④本件立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして,控訴人らの請求をいず
れも棄却した。
これに対し,控訴人らがこれを不服として本件控訴を提起した。
2前提事実,争点及び各争点に関する当事者の主張は,後記3のとおり補正し,当審における控訴人らの補充主張を後記4のとおり付加するほかは,原判決の事実及び理由中第2事案の概要の1から7までに記載のとおりであ
るから,これを引用する。
3原判決の補正
原判決3頁1行目のいずれも日本人でありをそれぞれ日本人の男性と女性でありと改める。原判決8頁10行目の日本人を同制度によって外国人配偶者の氏を戸籍法上の氏として称することを届け出た日本人と改める。4当審における控訴人らの補充主張



憲法14条1項違反について
①日本人同士の婚姻の場合には本件旧氏続称制度がない結果,戸籍法上の氏として婚姻前の氏を称することが認められていない。これに対し,②日本人同士の離婚の場合は婚氏続称制度(民法767条2項,戸籍法77条の
2)が設けられ,③日本人が外国人と婚姻した場合は届出により外国人配偶者の氏に変更することができ(戸籍法107条2項),④外国人と婚姻して戸籍法107条2項の届出に基づき外国人配偶者の氏に変更していた日本人が離婚した場合は届出によりその氏を変更の際の氏に変更することができて(戸籍法107条3項),いずれの場合も民法上の氏と異なる戸籍法上の氏
を選択することが認められている。そして,上記①の場合も,上記②ないし④で氏の選択を認める理由となったのと同程度の不都合を生ずるおそれがあるのに,上記①の場合にのみ婚姻前の旧氏を称することを戸籍法が認めないのは,法の欠缺であり,憲法14条1項に違反する合理性のない差別に当たる。この欠缺を立法で補うことは,最高裁判所平成26年(オ)第1023号
同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2586頁(夫婦同氏制国賠訴訟大法廷判決)の氏の選択に関し(中略)仮に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨に沿うものという判示に合致するものである。


憲法13条違反について
日本法でも,結婚の有無について問うことはセクシュアルハラスメントに該当するとされており,婚姻状態の有無に関する情報はプライバシー情報に当たって,それを意に反して問うことは違法とされている。そして,婚姻によって配偶者の氏を称することとした控訴人Dは,創業者兼代表取
締役であるaの商業登記簿に旧姓を併記しているところ,会社の取締役の旧姓併記は婚姻によって氏を変えた者だけが利用できる制度であり(商業
登記規則81条の2),同控訴人は,自らが法律婚の状態にあるという情報をみだりに第三者に開示されたことが明らかである。また,控訴人Aは婚姻による改姓を周囲に言えない状況が続いているが,本件旧氏続称制度が存在していればそのような状況は生じなかった。さらに,控訴人B及び同Cも,氏の変更ができないために婚姻ができない状態が続き,仮に婚姻
した場合には,いずれかの者が改姓により婚姻状況を公にすることを義務付けられることとなり,これも本件旧氏続称制度の不存在によって生じた事態である。以上のように控訴人らはいずれも本件旧氏続称制度の不存在によって具体的な権利侵害を受けており,同制度の不存在は憲法13条に違反する。



憲法24条違反について
氏の変更は,それまで築いてきた社会的評価を無にするなど社会活動に重大な影響を与えるものであり,従前の氏を称する選択を認める必要性があることは,日本人同士の婚姻の場合,日本人同士の離婚の場合,日本人と外国人の婚姻ないし離婚の場合でいずれも変わらない。しかるに,日本
人同士の婚姻の場合だけこの選択が認められず,種々の不都合が生じており,これは,夫婦同氏制国賠訴訟大法廷判決のいう両性の実質的な平等が保たれておらず,婚姻制度の内容により婚姻をすることが事実上不当に制約されていることに該当し,憲法24条2項に違反する。第3当裁判所の判断
1
当裁判所も,本件旧氏続称制度の不存在が憲法13条,14条1項,24条に違反するということはできず,国会議員が同制度を設ける立法措置を執らなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとは認められないから,控訴人らの請求は理由がないものと判断する。その理由は,後記2の
とおり補正し,後記3のとおり当審における控訴人らの補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の事実及び理由中の第3当裁判所の判断の1から4までに記載のとおりであるから,これを引用する。2
原判決の補正
原判決27頁8行目冒頭から19行目末尾までを削り,20行目冒頭に⑹を加え,同行の戸籍法6条を戸籍法6条本文と改め,25行目の上記規定は,の次に民法750条の規定と相まってを加え,
28頁9行目の当然の前提を現行法上は前提と改める。


原判決28頁17行目冒頭から29頁2行目までを次のとおり改める。⑺他方,婚姻や家族に関する考え方は,その国や社会の文化的,歴史的,社会的背景によって強く左右され,国や法域(以下,単に「国
という。)によって異なるし,氏に関する法制度の内容や氏が有する社会的機能も国ごとに異なり,日本法の氏と同一の氏の概念が我が国以外の国に存在するとはいえないから,民法750条は日本人同士が婚姻する場合にのみ適用され,日本人が外国人と婚姻する場合には適用がない。したがって,日本人が外国人と婚姻しても氏の変更は生じ
ないから,昭和59年法律第45号による改正前は,戸籍法には外国人との婚姻を契機として新たに戸籍を編製するという規定はなく,戸籍の筆頭者及び配偶者でない者が外国人と婚姻したときは,父母の戸籍に在籍したままで身分事項欄にその旨を記載するにとどめていた。しかし,上記法律による国籍法の改正により従前の父系血統主義が改
められ,外国人と日本人との婚姻中に出生した嫡出子は父と母のいずれが日本人であっても一律に日本国籍を取得することとなり(国籍法2条1号参照),民法上の氏を有することとなって,従前に比較して当該子を登載するための新たな戸籍を編製する必要が増大したことも考慮して,上記改正後の戸籍法6条ただし書は,外国人と婚姻をした
者について新たに戸籍を編製するときは,その者及びこれと氏を同じくする子ごとに編製すると定めた上,同法16条3項において,日本
人と外国人との婚姻の届出があったときは,その日本人が既に戸籍筆頭者となっている場合を除き,その者について新戸籍を編製する旨を新たに規定した。ただし,これに基づいて新戸籍を編製する場合でも,外国人と婚姻した旨はあくまでも戸籍筆頭者の身分事項欄に記載されるにとどまり,民法750条の適用がないという点はもとより変わら
ない。また,民法750条の適用がない以上,同法767条1項の離婚による復氏や同条2項の婚氏続称の規定の適用もなく,日本人と外国人との婚姻や離婚の場合の氏の在り方は,日本人同士の場合とは根本的に異なっている。」


原判決29頁3行目冒頭の⑼を⑻と改め,6行目のその点から8行目末尾までを削り,12行目のほかならずから14行目末尾までを

ほかならない。

と改め,23行目の個人のから24行目の堅持するとともに,までを削り,26行目の解されから30頁1
行目末尾までを「解される。」と改める。



原判決30頁7行目の⑽を⑼と,15行目の解されるからから17行目の

妨げるものではない。

までを「解される。」とそれぞれ改め,22行目のこのようにから24行目末尾までを削る。



原判決30頁25行目の⑾を⑽と,31頁3行目から4行目の
解されるからから5行目末尾までを「解される。」とそれぞれ改める。


原判決31頁6行目冒頭から24行目末尾までを次のとおり改める。ア民法750条は,前記(上記⑵で補正した原判決第3の2⑺)のとおり,日本人同士の婚姻の場面において適用される規定であって,日本人と外国人との婚姻の場面において適用される規定ではないと解される。


原判決32頁21行目冒頭から33頁9行目末尾までを削る。



原判決33頁10行目冒頭のを⑾と改め,14行目から15

行目のそしてから21行目末尾までを次のとおり改める。
そうすると,この民法の規定を手続面において確保する目的で,やむを得ない事由によって氏を変更する場合は戸籍筆頭者とその配偶者が家庭裁判所の許可を受けて届け出るべき旨を定めて夫婦の一方のみについての許可や届出では足りないとした戸籍法107条1項の規定も制度上合理性があるということができ,このような場合に,夫婦の一方のみの事情により当該夫婦の一方のみについて戸籍法107条1項の戸籍上の氏を変更すべき「やむを得ない事由があるとして,当該夫婦の一方のみに戸籍法上の氏の変更を許可することは,民法750条の適用を前提とする現行の法制度の許容するところではなく,もとより同法107条1項にいうやむを得ない事由が類型的に存在するとして氏の変更につき家庭裁判所の許可を不要とすべき場合に当たるということはできない。」


原判決33頁24行目のそしてから34頁1行目末尾までをそうすると,この場面においては,離婚に伴って氏を変更した者の民法上の氏は一旦婚姻前の氏に復するとしても,離婚の日から所定期間内は,離婚の際に称していたのと同一の氏につき,戸籍法上の氏として引き続き使用すべき「やむを得ない事由が類型的に存在するとして,家庭裁判所の許可を得ることなくその者の一存による届出のみによって使用することができるとする婚氏続称制度を採用することに何らの妨げはなく,日本人同士の婚姻の場面とは根本的に状況が異なる。」と改める。


原判決34頁6行目のその者がから8行目末尾までをそもそも民法750条との関係が問題となる余地はなく,これらの場合に所定期間内は戸籍法107条1項の「やむを得ない事由が類型的に存在するとして,家庭裁判所の許可を要さずに所定期間内の届出のみにより,外国人と婚姻
した配偶者につき外国人配偶者と同一の氏に変更することを認め,又は同制度を利用して氏を変更した者につき変更の際の氏に再度変更することを
認めることとしても制度上何ら妨げはないのであって,①日本人同士の婚姻の場面とはやはり根本的に状況が異なる。」と改める。

原判決34頁9行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改める。このように,日本人夫婦の同氏制を定める民法750条の規定が合憲である以上,①その適用を前提とする日本人同士の婚姻の場面において,本件旧氏続称制度を設けないものとする一方,いずれも民法750条の適用されることのない②日本人同士の離婚の場面において婚氏続称を認め,③日本人と外国人との婚姻の場面において外国人配偶者の氏への変更を認め,④日本人と外国人との離婚の場面において,上記変更の届出によって一旦外国人配偶者の氏への変更をした日本人に限って変更の際に称していた氏に変更することを認めて,上記②ないし④の各場面において一定の要件の下で戸籍法107条1項が規定する家庭裁判所の許可を不要として届出のみによって氏の変更を認める結果,上記①の場面と差異が生じているとしても,この取扱いの差異は,既に説示した民法750条を始めとする現行法における氏の性質や氏に関する具体的な法制度の内容に照らして不合理とはいえない。本件旧氏続称制度の不存在によって,結果的に日本人同士が婚姻したことを第三者が推知し得ることがあるとしても,この点を左右するものではない。また,我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件旧氏続称制度の不存在によって生じた結果であるということはできない。⑿
原判決36頁21行目の法律上の氏はから23行目の鑑みると
までを商業登記簿に婚姻前の氏が併記されるのは婚姻により氏を改めた役員がその旨の申出をした場合とされており(商業登記規則81条の2第1ないし第3項),控訴人Dが自ら婚姻前の氏を併記することを選択したことに照らすとと,38頁20行目の画される否かを画されるか否かとそれぞれ改める。3当審における控訴人らの補充主張に対する判断

憲法14条1項違反について
控訴人らは,民法750条の規定が憲法14条1項,24条等に違反し
ないとした夫婦同氏制国賠訴訟大法廷判決を前提とした上で,日本人同士の婚姻により氏を変更した場合においても,日本人同士の離婚に伴って氏が変更となる場合や日本人と外国人が婚姻及び離婚に際して氏を変更する場合と同程度の不利益を受けるおそれがあるのに,日本人同士の婚姻以外の場合には従前と同じ氏等を称する制度が戸籍法上認められ,日本人同士の婚姻の場合のみこのような制度が認められていないとして,このこと(本件旧氏続称制度の不存在)は,法の欠缺であり,憲法14条1項に違反する合理性のない差別に当たると主張する。
しかしながら,控訴人らが主張する日本人同士の婚姻の場合とそれ以外
の場合との取扱いの差異は,まさに前者の場面では民法750条の規定が適用され,その他の場面では適用されないという点から生じている。すなわち,日本人の外国人との婚姻や離婚の場面にはそもそも民法750条の適用がなく,そもそも氏は変更されないのが原則で,むしろ日本人同士の場面とは原則と例外が逆ともいえる。また,日本人同士の離婚の場
面も既に夫婦でなくなっている以上,民法750条の規定は適用されない。そして,日本人同士の離婚の場面並びに日本人と外国人との婚姻及び外国人との婚姻の際に外国人配偶者の氏に変更した日本人の離婚の場面では,所定期間内に届け出た場合に限り,戸籍法107条1項の氏を変更すべきやむを得ない事由が類型的に認められることから,いわば同項の例外
として,家庭裁判所の許可を得ることなく離婚前の氏又は外国人配偶者の氏若しくは変更の際の氏を称することを認めたものにすぎない。

他方,日本人同士の婚姻の場面では民法750条の規定が適用されるところ,これを戸籍手続に反映し,その実効性を保つため,戸籍法6条は原則として夫婦及びこれと氏を同じくする子を戸籍の編製の単位とし,また,同法107条1項は,やむを得ない事由によって氏を変更しようとする場合であっても当該氏を従前から使用している戸籍の筆頭者だけではなく婚姻に伴って当該氏に変更したその配偶者も共に家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出ることを義務付けているのであって,民法750条の規定が憲法に違反しないとしながら,これを実現し,あるいはその実効性を保つための手続を定めた戸籍法の上記各規定が憲法に違反するというこ
とはできず,控訴人らも上記各規定が憲法に違反するとすべき具体的な理由を何ら主張するものではない。そして,戸籍法107条1項の規定が適用される以上,民法750条により婚姻の際に配偶者の氏を選択して一旦民法上の氏を変更した夫婦の一方のみの事情により,婚姻前に称していたものと同一の氏に再度変更をすべきやむを得ない事由があると類型的
に認めてその一方のみの届出によって婚姻前に称していたのと同一の氏を戸籍法上の氏として称することを認める余地はなく,また,控訴人らのいう本件旧氏続称制度を設ける場合においても,その適用を選択した夫婦間に出生した子の氏や戸籍をどう定めるかについては改めて検討を要する余地があり,この制度を認めるためには,戸籍法の上記各規定についても改
正の要否を検討する必要があるのであって,単に法の欠缺があり,それをどう埋めるかが一義的に決せられるとはいえない。
そうすると,控訴人らの上記主張は,本来比較の対象とならない場面をとらえ,これらの間の取扱いの差異が合理性のない差別に当たるとするものにすぎず,採用することができない。

なお,個人が社会において使用する法律上の氏の個数や本件旧氏続称制度を採用した場合にそれが一つとなるのか二つとなるのかといった議論は,
本件の結論を左右するものではなく,これらの点を含め,婚姻した夫婦の間における氏の制度をどのように定めるかは,その間に出生した子の氏をどう定めるかといった事項とも密接に関係する事柄であって,基本的に立法府の合理的裁量に委ねられているというべきであるから,本件でこれらの点を論ずる必要はない。



憲法13条違反について
控訴人らは,個人が婚姻状態にあるという情報(結婚情報)がプライバシーに関するものであるとした上で,本件旧氏続称制度の不存在がこの情報を公にすることを強制するものであるとして憲法13条に違反すると主張する。しかし,結婚情報が我が国の現状においてプライバシー情報に当
たるといえるか否かは措くとしても,控訴人らの主張するところによって本件旧氏続称制度の不存在のために控訴人らが結婚情報の公表を強制されたといえないことは,上記2⑿で補正の上で原判決を引用して説示するとおりであり,控訴人らの上記主張は前提を欠く。


憲法24条違反について
控訴人らは,本件旧氏続称制度の不存在によって種々の不都合が生じており,夫婦同氏制国賠訴訟大法廷判決のいう両性の実質的な平等が保たれておらず,婚姻制度の内容により婚姻をすることが事実上不当に制約されている場合に該当し,憲法24条2項に違反すると主張する。
しかし,上記大法廷判決が,民法750条の採用する夫婦同氏制の下で,婚姻によって氏を改める者のアイデンティティの喪失感や婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用,評価,名誉感情等を維持することが困難になるなどの不利益を受ける場合があること,これらの不利益を避けるためにあえて婚姻をしないという選択をする者(控訴人Bと同
Cもこれに該当する。)が存在することを認めつつも,夫婦同氏制の下でも婚姻前の氏の通称使用は認められ,これによって上記の不利益が一定程
度緩和されること等も指摘した上で,夫婦が別の氏を称することを認めないという夫婦同氏制,換言すれば本件旧氏続称制度を含むいわゆる選択的夫婦別氏制度の不存在が,直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認められないとしていることからすると,控訴人らが主張するような不都合が生じていたとしても,これが憲法24条2項に反する程度に至っていると認めることはできない。控訴人らの主張に係る,民法750条の規定を維持した上で婚姻前の氏を戸籍法上の氏として称することを認める本件旧氏続称制度を設けるか否かやこのような制度を戸籍法上のものにとどめるか民法にこれに関する規定を置く
かを含め,夫婦の氏をどう定めるかは,当該夫婦間に出生した子の氏をどう定めるか等にも密接に関係する問題であり,上記大法廷判決が説示するとおり,婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に関する状況に対する判断を含め,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄であって,控訴人らの上記主張は採用することができない。

第4結論
以上によれば,引用に当たって削除又は変更した原判決の説示の一部には疑問の点があるとはいえ,本件旧氏続称制度の不存在が憲法13条,14条1項及び24条に違反するものではなく,本件立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではないとして控訴人らの請求を棄却した原判決は相当
であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第9民事部

裁判長裁判官

小川秀樹
裁判官


裁判官

間戸口壯夫史恵
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