判例検索β > 平成30年(ワ)第1904号
雇用契約上の地位確認等請求事件
事件番号平成30(ワ)1904
事件名雇用契約上の地位確認等請求事件
裁判年月日令和2年3月17日
法廷名福岡地方裁判所
全文
裁判日:西暦2020-03-17
情報公開日2020-03-23 15:28:07
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主1文
本件訴えのうち,原告が,被告に対し,⑴本判決確定の日の翌日以降,毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分,
⑵本判決確定の日の
翌日以降,
毎年6月25日及び12月25日限り25万円並びにこれらに

対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分をいずれも却下する。
2
原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

3
被告は,原告に対し,50万円及びうち25万円に対する平成30年4月26日から,うち25万円に対する同年5月26日から,それぞれ支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

4
被告は,原告に対し,平成30年6月から本判決確定の日まで毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

5
被告は,原告に対し,平成30年6月から本判決確定の日まで毎年6月25日及び12月25日限り25万円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

67
訴訟費用は,被告の負担とする。
この判決は,第3項ないし第5項に限り,仮に執行することができる。事
第1

実及び理由
請求

1
2
主文第2項及び第3項と同旨
被告は,原告に対し,平成30年6月から毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3
被告は,原告に対し,平成30年6月から毎年6月25日及び12月25日限り25万円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2
事案の概要

1
本件は,原告において,原告が被告との間で,昭和63年4月から,1年毎の有期雇用契約を締結し,
これを29回にわたって更新,
継続してきたところ,
原・被告間の有期雇用契約は,労働契約法19条1号又は2号に該当し,被告が原告に対し,
平成30年3月31日の雇用期間満了をもって雇止め
(以下
本件雇止めという。)したことは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められないから,従前の有期雇用契約が更新によって継続し
ている旨主張して,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,本件雇止め後の賃金として,平成30年4月から毎月25日限り月額25万円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,本件雇止め後の賞与として,平成30年6月から毎年6月25日及び12月25日限り各25万円並びにこれらに対
する各支払日の翌日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。
2
前提事実(争いのない事実,後掲の各証拠(枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)



当事者

被告
被告は,広告(新聞,雑誌,ラジオ,テレビその他の広告),屋外広告物等の設計監理,施工等を目的として,大正13年2月11日に設立された株式会社であり,九州支社(福岡市博多区a,b-c,d。以下,単に九州支社という。)を置いている。

原告
原告(昭和39年生)は,都内の4年制大学を卒業した後,昭和63年4月に九州支社に新卒採用で入社したものである。


原告と被告との雇用契約(甲1ないし5)
原告は,被告との間で,入社以来,1年ごとの有期雇用契約を29回にわたって更新してきており,特に,平成25年4月1日以降,最後の更新とな
った平成30年3月31日まで,毎年,次の内容で契約を更新していた(以下,更新されてきた有期雇用契約の全体ないしその一部(特に,平成25年から平成30年の間に更新された有期雇用契約又は最後に更新された有期雇用契約)を指称するものとして,本件雇用契約という。)。
契約期間

毎週月曜日から金曜日の午前9時30分から午後5時30分まで

休憩時間

正午から午後1時まで

給与
税込月額25万円(毎月末日締,当月25日払い)




九州支社におけるマネジメントサポート業務

就業期間

当該年の4月1日から翌年3月31日

業務内容


各年の6月と12月に各25万円

被告による更新拒絶
原告は,
平成29年12月7日,
本件雇用契約の更新を申し入れたものの,
被告は,これを拒絶し,平成30年3月31日をもって,その契約期間が満了した。



労働契約法の改正
平成24年の労働契約法の改正(平成24年8月10日法律第56号。以下平成24年改正法という。)により,同一の使用者の下で有期労働契約が更新されて通算契約期間が5年を超える場合に,労働者が無期労働契約への転換の申込みをすれば,使用者がその申込みを承諾したものとみなされ
(この申込みを行う権利を,以下無期転換申込権という。),期間の定めのない労働契約が成立することになった(労働契約法18条)。同改正法は平成25年4月1日に施行された。
3
争点及びこれに対する当事者の主張


労働契約終了の合意の有無
(被告の主張)

平成24年改正法により,平成25年4月1日以降,無期転換申込権が認められることになったため,被告は,平成25年1月,原告を含めた九州支社の契約社員全員と面談し,今後,有期雇用契約の期間の上限を5年とすること等を説明し,原告もこれに同意した。そして,被告は,原告との間で,平成25年4月1日付の契約書(甲1の1)を交わし,その中で2018年3月31日以降は契約を更新しない旨の条項(以下不更新条項という。)を合意するとともに,それ以降,毎年,同様に不更新条項の合意をしてきており,平成29年4月1日付の契約書(甲5の1)においても,

本契約の期間は,2017年4月1日から2018年3月31日までとし,本契約期間以降は契約を更新しない。

という条項を互いに確認の上,その旨
合意していた。したがって,本件雇用契約は,平成30年3月31日,上記合意に従って終了した。原告が,合意による本件雇用契約終了を認識していたことは,最後の契約年度中の平成29年5月17日に,転職支援会社に登録をしていることからも明らかである。
(原告の主張)

原告は,被告から提示された契約書に署名押印をしなければ,本件雇用契約を更新できない状況に置かれており,不更新条項を含む本件雇用契約の締結を受け入れざるを得なかった。このような不更新条項への同意の意思表示は,
無期転換申込権を認めた労働契約法18条の趣旨を没却するものであり,公序良俗(民法90条)に反し無効である。

また,雇用契約書に不更新条項が存在する場合,不更新条項への同意が雇用契約を更新する条件となっていることが少なくないのであるから,その同意が労働者の自由な意思に基づくものであるかどうかについて慎重な検討が必要である。この点,原告は,平成30年4月1日以降も更新があり得る旨の上司の言葉を確認し,その上で,不更新条項が記載された契約書(甲1の1,2の1,3の1,4の1及び5の1)に署名したのであり,一貫して平成30年4月以降も被告との雇用契約を継続する意思を有していたのである
から,不更新条項への同意は,原告の自由な意思に基づくものではない。したがって,不更新条項を含む契約書を交わしたからといって,雇用契約が終了することはない。

労働契約法19条1号又は2号該当性が認められるか
(原告の主張)

労働契約法19条1号該当性
原告は,被告に入社以後,1年ごとの有期雇用契約を29回にわたって更新し,その雇用期間は通算30年間にも上っており,平成25年4月1日の更新より前は,更新日の前後に,従前と同様の労働契約書を形ばかり
交わすだけであった。
また,原告が担当していた計画管理部における内部統制の整備運用等及び被告九州支社のマネジメントサポート業務といった,いわゆる間接部門の業務は,元来,正社員が担当してきた常用性のある業務であり,原告は,正社員と実質的に異ならない業務に従事していた(被告は,間接部門の前
記業務を非正規社員に切り換える雇用システムを採用してきているが,上記のような業務の性質に変わりはない。)。しかも,原告は,被告の求めに応じて衛生管理者の資格を取得し,九州支社の衛生管理者にも選任されていたのである。
このような事情からすれば,原告について,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるものというべきである。イ
労働契約法19条2号該当性
被告から原告へ交付された契約更新通知書(甲12(平成26年

2月付のもの),甲24(平成28年2月付のもの),乙14(平成29年2月付のもの))には,契約期間以降は契約を更新しない旨が記載されているものの,その末尾には

本更新書に定める条件は,当文書作成時点のものであり,将来制度変更に伴い内容等が変更される場合があります。

とも記載されており,契約更新の可能性は否定されていない。
また,平成29年4月1日付契約書(甲5の1)では,第5条に

本契約の期間は(中略)2018年3月31日までとし,本契約期間以降は契約を更新しない。

としながら,第6条には

本契約の期間満了後における本契約に係わる更新については,契約社員就業規則第14条第2項,第3項に基づく。

と記載し,同規則(甲8)14条2項では,

業務上の必要があり,かつ契約社員の勤務状況,勤務成績および健康状態から当該業務に支障がないと判断した場合,会社は(中略)雇用契約を更新することがある。

と定めるなど,労働契約の更新の可能性を明記している。このような事情に照らせば,原告が更新の期待を抱くことは極めて合理的である。

原告は,平成25年1月,被告の当時の人事部長であったαから有期雇用契約が5年となることを告げられたものの,最終的に本件雇用契約が更新される旨の説明を受けた。また,当時の九州支社長代理兼計画管理部部長であったβからも,契約更新は大丈夫だからと言われていた。原告は,同年5月,国内専門事業統括局とβとの面談時に,事務職契約社員の評価についてと題する書面(甲17)を交付され,6年目以降の契約については,それまでの間(最低3年間)の業務実績(目標管理による評価結果・査定)に基づいて更新の有無を判断すること,契約社員目標管理シート(甲18)の記載の仕方とともに,評価ランクBでは更新されないことの説明を受けた。この点,原告は,平成25年にA(甲12)と評価され,平成27年度に計画管理部長がγとなってからは評価そのものが行われていないが,重大な注意などを受け
たこともなく,むしろ,肯定的な評価をされることが多かったのであって,自身の評価が下がったなどという認識を抱くことはなかったものである。
さらに,当時の九州支社長であるδからも,本件雇用契約の更新について,

それは大丈夫だよ。

と言われ,安心したという経緯もある。
加えて,平成28年8月の国内専門事業統括局との面談でも,平成30年度以降の契約更新の可能性を指摘されるなどし,原告は,更新の可能性について大きな期待を抱いていたのである。
なお,平成30年1月になって,引継の話が出たり,γの指示で原告の業務を行うための勉強会が始められたが,それまではそのような話が
出ることもなく,同年3月の人事通達にさえ,原告は退職者として掲載されていなかった。
以上のような事情からすれば,原告は,昭和63年4月以降,本件雇用契約を更新し続け,平成30年4月以降も本件雇用契約が更新されるものと期待したことについて合理的な理由があることは明らかである。
(被告の主張)

被告と原告は,平成25年4月1日以降,平成30年3月31日を本件雇用契約の更新期限とすることを毎年確認しており,原告は,不更新条項を認識した上で,契約書に署名押印をしているのであるから,期間の定め
のない契約と同視されるようなものでないことは明らかである。
原告が従事してきた業務内容が臨時的でないことは認めるが,基幹業務ではなく,代替性のあるものであって,現在では外注している。
したがって,労働契約法19条1号には該当しない。

事務職契約社員の評価についての書面には,

それまでの間(最低3年間)の業務実績により会社が適当と判断した場合に更新する。

とあるように,更新が会社の判断であることが明記されている。また,原告の
Aという評価も期待水準通りに過ぎないものであって,更新の期待を抱くことは,およそ合理的ではない。また,査定結果Aを通知した平成26年2月の契約更新通知書においても

※ただし,継続して契約を更新した場合であっても2018年3月31日以降は契約を更新しない。

と明記されている。さらに,α,γ,β及びδが,原告の主張するような,契
約が更新されるという趣旨の発言をした事実はなく,国内専門事業統括局との面談についても同様である。
したがって,契約更新に対する合理的期待は認められないから,労働契約法19条2号にも該当しない。


本件雇止めにおける客観的に合理的な理由及び社会的相当性の有無(原告の主張)

被告が本件雇用契約の更新を拒絶したのは,結局,被告独自の更新期限を最長5年とするルールを適用した結果であるところ,かかるルール自体,原告の無期転換申込権を発生させないためのルールであり,これが公
序良俗に違反することは明らかである。
また,被告は自らが定めた平成30年4月以降の更新のための基準(甲17)すら放棄し,原告に事前に説明することなく,独自のあいまいな基準で,原告が余人をもって代え難い人材であるとはいえないなどとして,雇止めをしたのである(被告は,原告に対し,平成30年度以降の労
働契約を更新しない理由について説明をしたものの,客観的・合理的な理由の説明は皆無であった。)。

九州支社が赤字状態であることを裏付ける客観的な証拠は提出されておらず,その信憑性には疑義がある。むしろ,被告は,九州支社において,本件雇止めから僅か半年後の平成30年10月時点で,1年間の有期雇用契約の契約社員を5名程度募集するなどしていたことに照らすと,人件費の削減の必要性があったとはいえないし,原告が担当していた経理業務だ
けを取り出して高コストになっていたなどとするのも適切でない。また,原告は,入社当初に媒体局で1年間勤務した経験を有し,計画管理部の他にも従事できる業務を想定でき,配転等により雇用を維持することができたにも関わらず,被告は,そのような検討を一切することなく本件雇止めに踏み切っており,雇止めを回避するための具体的な方策を何ら
とっていない。
なお,原告の従事していた業務は多岐にわたるものであり,後任者が支障なく業務を処理できているのは,原告が長年にわたり同業務を遂行する中で,マニュアルに準ずる業務手順を蓄積ないし整理してきたからこそであって,原告のこれまでの地道な努力によるところが大きい。


以上からすれば,本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められない。

(被告の主張)

九州支社は,長年赤字状態であり,人件費の削減に努めるため,平成23年度には40名いた正社員を平成30年度には27名にまで減らし,派遣社員あるいは外注に切り換える等していた。計画管理部の人員については,増員された時期があるなど,人件費の削減は行われてこなかったが,九州支社の売上高が減少する中で,計画管理部のみを業務改善や効率化の対象外とすることはできなくなり,平成25年1月に,原告を含めた契約
社員に,契約上限を5年とすること,管理部業務の効率化を進めていくことを説明したのである。
また,原告の業務は,九州支社におけるマネジメントサポート業務に限定されているが,九州支社には計画管理部の他に,事務の経験しかない原告が従事できる業務は存在せず,他に配転先は存しない。原告が担当していた業務は,人員を1名必要とするほどの量はなく,他の契約社員で分担可能なものであって,経理業務を外注することによって,年間経費を抑え
ることができたのである。

さらに,原告は,契約終了を前提として転職支援サービスに申し込み,転職のためにパソコンのスキルを上げようとしていたのであり,本件雇用契約の継続を要求することは信義則上許されないというべきである。

したがって,本件雇止めは,客観的に合理的理由を有し,社会通念上相当である。

第3
1
当裁判所の判断
事実関係
前提事実に加え,
後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,
次の事実が認め

られ,この認定に反する証拠はいずれも採用することができない。⑴

九州支社の組織概要

九州支社には,平成30年4月当時,以下の部署が存在した(乙9)。計画管理部
九州支社の管理サポート業務(経理・人事・総務的役割)

営業局第1アカウント,営業局第2アカウント
営業を行う部署。担当得意先により,第1と第2に分かれる。
MD局クリエイティブ部
広告制作の業務を行う部署
MD局プランニング部

マーケティング戦略のプランニング業務を行う部署
メディアビジネス局メディアプランニング部
得意先(広告主)対応を主としたメディア業務,いわゆる業務推進部門
メディアビジネス部メディアプロデュース部
媒体社(新聞社,TV局,ラジオ,ネット)対応を主としたメディア業務


平成23年4月から平成27年3月まで,計画管理部部長をβが務め,同年4月以降はγが務めている(乙9,証人γ)




原告の業務内容等
原告は,被告に入社して1年後の平成元年より,九州支社の管理部(現在の計画管理部。以下,単に計画管理部という。)に異動し,その後,平
成30年3月31日までの間,1年ごとの有期雇用契約を更新しながら,計画管理部において,経理業務を中心に,警備業法・下請法にかかる業務等に従事するとともに,被告の指示で衛生管理者の資格を取得し,九州支社の衛生管理者にも選任されていた(甲15,16,弁論の全趣旨)。
また,
原告が入社してから,
平成25年までの間は,
毎年4月1日前後に,

被告の管理部長から封筒に入った契約書を渡され,それに署名押印をするだけで本件雇用契約が更新されていた(原告本人)



平成20年の就業規則の改訂及び平成24年改正法施行後の取扱の変更

被告は,平成20年4月1日,その契約社員就業規則14条を改訂し,それまで下記の⑴から⑶までしかなかった規定に,新たに⑷の条項(以下最長5年ルールという。
)を設けた(乙1,10,証人α)

14.(雇用期間)⑴契約社員の雇用契約の期間は,原則として1年を超えないものとし,雇用契約により定める。ただし,必要がある場合には3年を上限として雇用契約を締結することがある。⑵業務上の必要があり,かつ契約社員の勤務状況,勤務成績および健康状態から当該業務に支障がないと判断した場合,会社は当該契約社員の同意を得た上で雇用契約書をあらためて締結し,雇用契約を更新することがある。また,その際,労働条件を変更することがある。⑶契約社員との雇用契約は期間を定めた契約であり,自動更新は行わず,前項による更新がなされない限り雇用契約は雇用契約期間の終了日をもって契約期間満了により終了する。⑷会社は,前第2項により雇用契約を更新するにあたり,更新により雇用契約期間が最初の雇用契約開始から通算して5年を超える場合,原則として雇用契約を更新しない。

被告は,最長5年ルールが盛り込まれた時点において,既に5年を超えて雇用されていた従業員については,最長5年ルールを適用しないこととしていたため,原告はその適用対象外となっており,原告に最長5年ルールの説明をしていなかったが,平成24年改正法により,平成25年4月1日以降に有期雇用契約を締結する場合,5年を超えて契約を更新すると,無期転換申込権が認められることになったため,原告を含む最長5年
ルールの適用除外となっていた従業員に対しても,平成25年4月を起算点として,最長5年の上限を設ける取扱いをすることにした(乙10,証人α)


平成25年における原告と被告とのやり取り等

被告の人事部長のαは,最長5年の上限を設けることについて契約社員の承諾を得るために,九州支社に赴き,原告の他,総合職契約社員や鹿児島営業所に勤務する事務職契約社員と面談を行うことにした(乙10,証人α)

αは,平成25年1月29日に原告と面談をし,原告に対し,少なくと
も,①5年間を契約更新の上限とすること,②会社としても転職に関して支援をすること,③博報堂DYグループ各社の多くは,東京・関西にて事業所を構えているため,九州での転職支援に関してはリクルートの転職サービスを会社の費用負担で利用してもらえるようにしたことの説明をした(αは,この他にも,④労働契約法が改正され,平成25年4月より,5年を超えて契約が更新された場合は無期契約に転換する仕組みが導入されたので,これにより,これまで支社の契約社員に適用していた契約を
見直すことになったこと,⑤6年目以降の契約に関しては次年度から最低3年間の業務実績により更新するかどうかを判断すること,⑥毎年期初・期中・期末に所属部署長・部門長との面談を通じて目標管理サイクルの運用を行うこと,⑦博報堂DYグループ(被告のほか複数の広告会社等が所属するグループ(甲23)
)内での転職支援に関しては,株式会社博報堂D

Yキャプコ(博報堂DYグループの総合人材サービス会社として,グループ内の会社やマスコミ関連業界の会社への人材派遣・人材紹介を行っている会社であり,株式会社博報堂DYホールディングスが100パーセント出資している(甲23)
。以下キャプコという。
)を窓口として契約満
了者の転職支援を行っていて,意向があればいつでも登録が可能であるこ
とを説明した旨述べるのに対し,原告は前記①ないし③以外の説明はなかった旨述べている。(甲28,乙10,証人α,原告本人)


その後,原告と被告は,平成25年4月1日付の雇用契約書を取り交わした。その8条には,

契約社員就業規則第14条第2項に基づき,継続して契約を更新した場合であっても,2018年3月31日以降は契約を更新しないものとする。

旨が記載されていた(甲1の1)。
また,これと同じ条項が平成26年ないし28年の契約書にも記載されており,原告は,これらにも署名押印している(甲2ないし4)


平成25年5月,原告は,被告の国内専門事業統括局所属の者から,被告の第五計画管理室が作成した事務職契約社員の評価についてと題する書面(甲17)を交付された(原告本人)

同書面には,
事務職契約社員の雇用契約の更新については,2013年度より5年を上限として運用を開始している。6年目以降の契約については,本人が希望し,かつそれまでの間(最低3年間)の業務実績により会社が適当と判断した場合に更新する。,

6年目以降の契約については,それまでの間(最低3年間)の業務実績(目標管理による評価結果・査定)に基づいて更新の有無を判断する。

と記載されている。また,査定に当たっては,目標管理シートに記入した上で所属長との面談を実施すること,査定ランクは,
+A
が概ね上位30パーセント以内に相当する優秀な成
果,
Aが概ね期待水準に相当する成果,
+Bが下位20パーセント
以下に相当する期待水準に満たない成果,極めて優秀な成果については
S
,大きく劣る成果についてはBのランクがありうる旨記載されて
いる(甲17)

このような評価方法の導入を受けて,業務遂行の目指すべき方向性を所属長と共有するための目標管理シートが作成されるようになった(甲17,乙4ないし8)




平成26年から平成28年までの目標管理シートの記載及び契約更新状況平成26年からは,従前と異なり毎年2月頃に,被告が原告に対して契約更新通知書を交付し,面談をするようになった(原告本人)

平成26年以降の目標管理シートの記載及び契約更新状況は以下のとおり
である。

平成26年の契約更新状況
平成25年度の目標管理シートの記載(乙4)
部署長コメント欄(期末)

成果に関しても概ね満足のいく結果となった。営業活動におけるサポート業務が主体だが,債権管理や警備業法などのコンプライアンス対応含め,牽制業務も的確に実施した。

総合成果目標達成度

2.期待水準通り

能力発揮のアクションプラン達成度2.期待水準通り
平成26年2月の契約更新通知書の記載(甲12)
契約期間及び契約期間中の報酬の他,以下の記載があった。
a
平成25年度の評価はA


b

※ただし,継続して契約を更新した場合であっても,2018年3月31日以降は契約を更新しない。


c

本更新書に定める条件は,当文書作成時点のものであり,将来制度変更に伴い内容等が変更される場合があります。

平成26年4月1日付の雇用契約書(甲2の1)

第8条

契約社員就業規則14条2項に基づき,継続して契約を更新した場合であっても,2018年3月31日以降は契約を更新しないものとする。


平成27年の契約更新状況
平成26年度の目標管理シートの記載(乙5)
部署長コメント欄(期末)
計画管理業務全般に真摯に取り組んでいる。業務遂行における正確性は評価できる。営業フローの順守も励行しており,その観点から後進の育成にも努めた。警備業などコンプライアンス対応もしっかり取り組んでおり問題は発生していない。安全衛生委員会のメンバーとして支社員の健康管理にも留意しており,インフルエンザの支社内パンデミックにも的確に対応した。総合成果目標達成度

2.期待水準通り

能力発揮のアクションプラン達成度2.期待水準通り
平成27年4月1日付の雇用契約書(甲3の1)


平成28年の契約更新状況
平成27年度の目標管理シートの記載(乙6)
部署長コメント欄(期末)
煩雑かつ膨大な量の業務に真摯に取り組んでいただきました。業務ママ遂行の正確さや,厳格なファイリングにより,過去資料を瞬時の取り出していただき,自分も含めた管理部員が助けられる場面が何度もありました。今後は,業務領域の拡大,さらなるスキルアップなど,計画管理部の中で,より重要なポジションを求められることになります。目標達成度

記載なし(中間時の評価は2.期待水準通りの見込


平成28年2月の契約更新通知書の記載(甲24)
契約期間,契約期間中の報酬の記載及び

b及びcと同様の記載

があるものの,査定評価の欄はない。
平成28年4月1日付の雇用契約書(甲4の1)


平成29年の契約更新の際の状況

平成28年度の目標管理シートの記載(乙7)
所属長確認欄(対象者の総合的な成果に対するコメント)
これまでの経験・知識を活かし,九州支社計画管理部を支えていただきました。担当業務を,がまん強く,真摯かつ正確に遂行してくれており,九州支社計画管理部を堅実に支えてくれています。引き続き,知識・スキルの周囲への伝播,コミュニケーション能力の向上,自らの業務領域拡大を課題として,九州支社計画管理部がより強い組織になっていけるよう,今後も尽力してください。達成度


2.期待水準通り

平成29年2月の契約更新通知書の記載(乙14)
契約期間,契約期間中の報酬及び前記⑸

cの記載がある他,
※当契約期間以降は契約を更新しないとの記載があるが,平成28年同様,査定評価の欄はない。

γは,原告に対し,平成29年2月,契約更新前の面談において,平成30年3月をもって契約は終了する旨を伝え,
また,
平成29年3月には,

雇用契約書(甲5の1。その第5条には,

本契約の期間は,2017年4月1日より2018年3月31日までとし,本契約期間以降は契約を更新しない。

との記載がある。)を渡した。これを受け取った原告は,本当に
この1年間で最後なんですかと尋ねたところ,γは,契約書のとおり平成30年3月で終了である旨を返答した。その後,原告は,その場で署名押
印をせずに,一旦,契約書を持ち帰ったが,後日,これに署名押印をして被告に提出した(甲5の1,証人γ,原告本人)



平成29年の契約更新後の状況

被告人事部のεは,平成29年5月に原告と面談し,リクルートの転職サービスのパンフレットを原告に渡した。その際,原告は,雇止めは困る
旨を述べたところ,
εは,
上司に確認する旨を返答した
(甲6の2,
乙9)


原告は,平成29年5月17日,キャプコにおいて,氏名や電話番号等の個人情報を登録するとともに,適性テストを受験したが,履歴書の送付やパソコンのスキルチェックなどは行わなかった(甲28,乙11ないし13,原告本人)



原告は,平成29年6月に,福岡労働局に電話で相談をし,福岡労働局から,更新しないことの理由書を被告に求めたほうが良いとの助言を受けた(原告本人)
。そこで,同月,原告は,ε及びγと面談した際に,前記理
由書をもらいたい旨を伝え,これを受けて,αは,同年9月22日,原告
に対し,
2017年4月1日付で貴殿と締結した契約書の第5条に基づき,契約は2018年3月31日で満了となりますが,満了に先立ち2017年10月より,リクルートキャリアコンサルティングのサービスの利用を別紙申請書にて申し込み頂けます。と記載された被告人事局長名義の通知書及びリクルートキャリアコンサルティングのサービスの利用申請書を交付した(甲6の1,27)

平成29年11月30日,εは,原告に対してメールを送信し,後記エ
の同年12月7日の面談の日程を知らせるととともに,リクルートキャリアコンサルティングサービスの申込書と,リクルートキャリアコンサルティングの福岡オフィスの地図を添付した(甲6の1)
。原告は,このメール
に対して返信し,無期転換を希望する旨の意思表示を行った(甲6の3,原告本人)



平成29年12月7日,原告は,ε,α及びγと面談し,その際に無期転換の希望があったことを会社としても正式に承った旨を言われた(甲6の3,原告本人)

同日,原告は,福岡労働局からの助言に従い,被告代表者宛ての平成2
9年12月7日付雇用契約更新のお願いについてと題する書面(甲6の2)
を送付した
(原告本人)同書面には,

翌年度の雇用継続を望むこと,
雇止理由証明書を平成29年12月31日までに送付してもらいたいことなどが記載されている(甲6の2)

これを受けて,被告は,原告に対し,平成29年12月29日付の契約満了に関する理由説明書(甲6の4)を送付した。同書面には,以下の
内容が記載されていた。
当社では,雇用期間の定めを契約社員就業規則に定めています。2章14.⑷にある通り,最初の雇用契約開始から通算して5年を超える場合,原則として雇用契約を更新致しません。

これは,基本的には事務職契約社員においては,業務を属人化せずに標準化合理化していくことで,より柔軟な業務運営を目指すことを目的としています。
貴殿との契約については,2013年4月の契約更新時にこのタイミングでの満了が確定しており,その旨は毎年の契約更新毎に契約書に記して参りました。九州支社では,その決定に基づき,貴殿の業務内容を所属組織内で合理化した上で,再構築して業務を実施する計画です。

福岡労働局長は,個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条第1項に基づき,平成30年3月9日付で,被告に対し,原告との労働契約を平成30年3月31日をもって更新しないことについては,労働契約法19条に照らし,客観的に合理的理由があり,社会通念上相当であると認められるかについて疑問があるので,有期労働契約の実態等を精査した上
で,本件雇止めについて,原告と改めて話し合うことを助言した。また,同助言の中で無期転換ルールを避けることを目的として,無期転換申込権が発生する前に雇止めとすることは,労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないので,慎重な対応を求めることも要請した(甲11)。

αは,原告に対し,平成30年3月27日,労働局から助言があったが雇用契約を終了すること,別途相談事項がある旨のメールを送信した(甲28,証人α,原告本人)

αは,同月30日,原告に対し,電話で,契約が終了する旨のほか,転職サービスを利用して転職活動を行うように勧めるとともに,その手続書類をγから受け取るように伝え,その後,γが,原告に対して,当該手続
書類一式を渡し,翌日以降は勝手に出社しないように伝えた(甲28)。


平成29年度の目標管理シートの記載(乙8)
所属長確認欄(対象者の総合的な成果に対するコメント)
これまでの経験・知識を活かし,黙々と担当業務に取り組む姿勢については評価しています。過去の資料を瞬時に取り出すことで,助けられる場面もありました。一方,これまでお願いしてきた,周囲への積極的なコミュニケーション,知識・スキルの伝播については,十分とは言えず,非常に残念です。面談でも共有しましたが,管理部勉強会等での業務シェアの仕方についても改善の余地はあると思います。最も経験を持つ年長者であり,主体的積極的に周囲へ働きかけ,コミュニケーションをとっていただきたいと思います。年度末まで引き続き,Xさんの経験や知識を波及・拡大させることで,計画管理部さらには九州支社が強い組織になっていけるよう尽力してください。達成度


2.期待水準通り

本件雇止め後の事情
九州支社においては,原告が担当していた業務の一部である入金関連業務
を被告の関連会社に外注し(乙2)
,また,平成30年10月頃には,1年間
の有期雇用契約の社員を5名程度募集した(甲22)

2
争点⑴(労働契約終了の合意の有無)について


被告は,平成25年4月1日付の雇用契約書において,平成30年3月31日以降は契約を更新しないことを明記し,
そのことを原告が承知した上で,

契約書に署名押印をし,その後も毎年同内容の契約書に署名押印をしていることや,転職支援会社への登録をしていることから,原告が平成30年3月31日をもって雇用契約を終了することについて同意していたのであり,本件労働契約は合意によって終了したと主張する。
確かに,原告は,平成25年から,平成30年3月31日以降に契約を更
新しない旨が記載された雇用契約書に署名押印をし,最終更新時の平成29年4月1日時点でも,同様の記載がある雇用契約書に署名押印しているのであり,そのような記載の意味内容についても十分知悉していたものと考えられる。


ところで,約30年にわたり本件雇用契約を更新してきた原告にとって,被告との有期雇用契約を終了させることは,その生活面のみならず,社会的な立場等にも大きな変化をもたらすものであり,その負担も少なくないものと考えられるから,原告と被告との間で本件雇用契約を終了させる合意を認定するには慎重を期す必要があり,これを肯定するには,原告の明確な意思が認められなければならないものというべきである。
しかるに,不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印を拒否するこ
とは,原告にとって,本件雇用契約が更新できないことを意味するのであるから,
このような条項のある雇用契約書に署名押印をしていたからといって,直ちに,原告が雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない。
また,平成29年5月17日に転職支援会社であるキャプコに氏名等の登
録をした事実は認められるものの,平成30年3月31日をもって雇止めになるという不安から,やむなく登録をしたとも考えられるところであり,このような事情があるからといって,本件雇用契約を終了させる旨の原告の意思が明らかであったとまでいうことはできない。むしろ,原告は,平成29年5月にはεに対して雇止めは困ると述べ,同年6月には福岡労働局へ相談
して,被告に対して契約が更新されないことの理由書を求めた上,被告の社長に対して雇用継続を求める手紙を送付するなどの行動をとっており,これらは,原告が労働契約の終了に同意したことと相反する事情であるということができる。
そして,他に,被告の上記主張を裏付けるに足る的確な証拠はない。


以上からすれば,本件雇用契約が合意によって終了したものと認めることはできず,平成25年の契約書から5年間継続して記載された平成30年3月31日以降は更新しない旨の記載は,
雇止めの予告とみるべきであるから,
被告は,契約期間満了日である平成30年3月31日に原告を雇止めしたものというべきである。

3
争点⑵(労働契約法19条1号又は2号該当性が認められるか)⑴

原告は,昭和63年4月に新卒で被告に入社した以降,平成30年3月31日に雇止めとなるまでの間,九州支社の計画管理部において経理業務を中心とした業務に携わり,本件雇用契約を約30年にわたって29回も更新してきたものである。この間,被告は,平成25年まで,雇用契約書を交わす
だけで本件雇用契約を更新してきたのであり,平成24年改正法の施行を契機として,平成25年以降は,原告に対しても最長5年ルールを適用し,毎年,契約更新通知書を原告に交付したり,面談を行うようになったものである。
このような平成25年以降の更新の態様やそれに関わる事情等からみて,
本件雇用契約を全体として見渡したとき,その全体を,期間の定めのない雇用契約と社会通念上同視できるとするには,やや困難な面があることは否めず,したがって,労働契約法19条1号に直ちには該当しないものと考えられる。

そこで,原告に本件雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるか否か(同条2号)について検討を進めるに,まず,被告は,原告が昭和63年4月に新卒採用で入社した以降,平成25年まで,いわば形骸化したというべき契約更新を繰り返してきたものであり,この時点において,原告の契約更新に対する期待は相当に高いものがあったと認めるのが相当であり(原告が定年まで勤続できるものと期待してい
たとしても不思議なことではない。,その期待は合理的な理由に裏付けら)
れたものというべきである。また,被告は,平成25年以降,原告を含めて最長5年ルールの適用を徹底しているが,それも一定の例外(例えば,原告に配布された事務職契約社員の評価について
(甲17)には,

6年目以降の契約については,それまでの間(最低3年間)の業務実績(目標管理による評価結果・査定)に基づいて更新の有無を判断する。

とされているなど)が設けられており,そのような情報は,原告にも届いていたのであるから,上記のような原告の契約更新に対する高い期待が大きく減殺される状況にあったということはできないのである。

他方,原告は,αから,前記1⑷アの④ないし⑦の説明を受けていない,あるいは,α,β又はδなどから,契約更新は大丈夫である旨の話を聞いたなどと主張し,その旨の供述をするところ,雇用期間を5年に限る旨説
明にやって来たαが,上記④ないし⑦の説明をしないとは考え難いし,まして,原告の契約更新を肯定するような発言をすることは考え難いことである。また,βらにおいても,軽々にそのような発言ができる立場にあるとは認め難いのであり,原告の上記供述は採用し難いものである。しかし,前記アのとおり,原告は,既に平成25年までの間に,契約更
新に対して相当に高い期待を有しており,その後も同様の期待を有し続けていたものというべきであるから,原告が契約更新に期待を抱くような発言等が改めてされたとは認められないとしても,原告の期待の存在やその期待が合理性を有するものであることは揺るがないというべきである。ウ
したがって,原告の契約更新に対する期待は,労働契約法19条2号により,保護されるべきものということができる。



これに対し,被告は,平成25年以降の契約書や契約更新通知書において毎年平成30年3月31日以降は契約の更新がないことを確認していることから,契約更新に対する合理的期待はないと主張するが,それ以前の契約更新の状況等を顧みないものであり,その点で既に採用の限りではない。
4
争点⑶
(本件雇止めにおける客観的に合理的な理由及び社会的相当性の有無)⑴

被告は,九州支社が長年赤字状態にあり,人件費の削減を行う必要性があったこと,九州支社には計画管理部の他に原告が従事できる業務は存在しないこと,原告の担当していた業務が人員を1名必要とするほどのものではな
く外注によってもまかなえるものであったことなどを主張するとともに,原告に対する評価は,期待水準通りといったものであるばかりか,コミュニケーション能力に問題があることが繰り返し指摘されており,原告のコミュニケーション不足が原因でグループ会社の担当者からクレームが来たこともあったことなどを指摘する。


ところで,被告の主張するところを端的にいえば,最長5年ルールを原則とし,これと認めた人材のみ5年を超えて登用する制度を構築し,その登用
に至らなかった原告に対し,最長5年ルールを適用して,雇止めをしようとするものであるが,そのためには,前記3で述べたような原告の契約更新に対する期待を前提にしてもなお雇止めを合理的であると認めるに足りる客観的な理由が必要であるというべきである。
この点,被告の主張する人件費の削減や業務効率の見直しの必要性という
およそ一般的な理由では本件雇止めの合理性を肯定するには不十分であると言わざるを得ない。
また,
原告のコミュニケーション能力の問題については,
上記⑴に述べるような指摘があることを踏まえても,雇用を継続することが困難であるほどの重大なものとまでは認め難い。
むしろ,
原告を新卒採用し,
長期間にわたって雇用を継続しながら,その間,被告が,原告に対して,そ
の主張する様な問題点を指摘し,
適切な指導教育を行ったともいえないから,
上記の問題を殊更に重視することはできないのである。そして,他に,本件雇止めを是認すべき客観的・合理的な理由は見出せない。
なお,被告は,転職支援サービスへの登録をしたり,転職のためパソコンのスキルを上げようとしていたにもかかわらず,雇用継続を要求することは
信義則上許されないとも主張するが,前記2⑴で検討したとおり,雇用継続を希望しつつも,雇止めになる不安からそのような行動に出ることは十分あり得ることであって,信義に反するものということはできない。

以上によれば,原告が本件雇用契約の契約期間が満了する平成30年3月31日までの間に更新の申込みをしたのに対し,被告が,当該申込みを拒絶したことは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないことから,被告は従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされる。


そうすると,原・被告間では,平成30年4月1日以降も契約期間を1年とする有期雇用契約が更新されたのと同様の法律関係にあるということができる。そして,原告は本件訴訟において,現在における雇用契約上の地位確
認を求めていることから,その後も,有期雇用契約の更新の申込みをする意思を表明しているといえる。他方,被告は,原告の請求を争っていることから,それを拒絶する意思を示していたことも明らかであるところ,争点⑵及び⑶で説示したところと事情が変わったとは認められないから,平成31年4月1日以降も,被告は従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の
労働条件で,原告による有期雇用契約の更新の申込みを承諾したものとみなされる。
したがって,原告の請求は,被告に対し,雇用契約上の地位確認並びに平成30年4月1日から本判決確定の日までの賃金及び賞与の支払を求める限度で理由がある。

なお,原告の請求のうち,本判決確定の日の翌日以降の賃金及び賞与を求める部分は,将来請求の訴えの利益を認めることができないから,不適法である。
5
結論
以上によれば,原告の請求のうち,本判決確定の日の翌日以降の賃金及び賞与を求める部分は,不適法であるから却下し,その余の請求は,いずれも理由があるから認容すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第5民事部

裁判長裁判官

鈴木博
裁判官

柵木澄子
裁判官

細田裕司
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