判例検索β > 平成30年(ワ)第38776号
共通義務確認請求事件
事件番号平成30(ワ)38776
事件名共通義務確認請求事件
裁判年月日令和2年3月6日
法廷名東京地方裁判所
全文
裁判日:西暦2020-03-06
情報公開日2020-03-23 15:28:09
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令和2年3月6日判決言渡

同日原本領収

平成30年(ワ)第38776号

裁判所書記官

共通義務確認請求事件

口頭弁論終結日令和元年11月22日
判決主文
1被告が,別紙対象消費者目録記載1の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を負うことを確認する。
入学検定料,受験票送料,送金手数料及び出願書類郵送料,並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務

1月12
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務2原告のその余の請求に係る訴え(受験に要した旅費及び宿泊費に係る共通義務の確認を求める部分)を却下する。
3訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1主位的請求
被告が,別紙対象消費者目録記載1の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を負うことを確認する。
入学検定料,受験票送料,送金手数料,出願書類郵送料,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務

年1月1
2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務2予備的請求1
被告が,別紙対象消費者目録記載2の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を負うことを確認する。
入学検定料,受験票送料,送金手数料,出願書類郵送料,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務
費者目録記載2
及びイの対象消費者については平成29年2月18日から,別紙対象消費者目録記載2

ウ及びエの対象消費者については平成30年2月17日か

ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務3予備的請求2
被告が,別紙対象消費者目録記載2の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を負うことを確認する。
入学検定料,受験票送料,送金手数料,出願書類郵送料,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務
本件訴状送達の日又は各別に催告した日のいずれか早い日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務
第2事案の概要
1本件は,消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下特例法という。
)65条1項により内閣総理大臣の認定を受
けた特定消費者適格団体である原告が,
東京医科大学
(以下
本件大学
という。

を運営する学校法人である被告に対し,
平成29年度及び平成30年度の本件大
学の医学部医学科の一般入学試験及びセンター試験利用入学試験(以下,総称して
本件試験
という。において,

出願者への事前の説明なく,
出願者の属性
(女
性,
浪人生及び高校学校等コード51000以上の者)
を不利に扱う得点調整
(以
下本件得点調整という。
)が行われたことについて,不法行為又は債務不履行
に該当すると主張して,上記属性を有する出願者のうち,受験年の4月30日までに合格の判定を受けなかった者(以下本件対象消費者という。
)を対象消費
者として,特例法3条1項3号,5号に基づく共通義務確認の訴え(特例法2条4号)を提起した事案である。
主位的請求
本件対象消費者の全員(別紙対象消費者目録記載1)につき,被告が本件得点調整を行うことを募集要項等において事前に説明していないことが違法であるとして,不法行為に基づく被告の損害賠償債務として,入学検定料,受験票送料,送金手数料,出願書類郵送料(以下,上記の4つの損害を本件受験費用という。,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費)
者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の金銭の支払義務を確認するとともに,同支払義務に係る金員に対する本件試験の各出願期間の最終日(平成29年度の一般入学試験の受験につき平成29年1月24日,平成29年度のセンター試験利用入学試験につき同月13日,平成30年度の一般入学試験につき平成30年1月23日,平成30年度のセンター試験利用入学試験につき同月12日)
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払義務の確認を求める事案である。
予備的請求1
本件対象消費者のうち,本件試験の一次試験に合格し,かつ,本件試験の二次試験を受験した者(別紙対象消費者目録記載2。本件得点調整の現実の対象者である。につき,

被告が本件得点調整を行うことが入学試験を公正かつ妥当
な方法で行う義務に反し違法であるとして,不法行為に基づく損害賠償請求として,本件受験費用,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の金銭の支払義務を確認するとともに,同支払義務に係る金員に対する本件試験の二次試験の合格発表日(平成29年度につき平成29年2月18日,平成30年度につき平成30年2月17日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務の確認を求める事案である。
予備的請求2
(別紙対象消費者目録記載2)を
対象に,被告が本件得点調整を行ったことが,対象消費者と被告との間の入学試験受験契約における入学試験を公正かつ妥当な方法で行う義務に反し,同契約の債務不履行による損害賠償の請求として,本件受験費用,受験に要した旅費及び宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の金銭の支払義務を確認するとともに,同支払義務に係る金員に対する本訴状送達の日(平成31年1月10日)又は対象消費者が各別に被告に催告した日のいずれか早い日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務の確認を求める事案である。
2前提事実
(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)


当事者

原告は,内閣総理大臣から平成28年12月27日に特例法65条1項に基づく認定を受けた特定適格消費者団体である(甲1,11)





被告は,本件大学を運営する学校法人である。
平成29年度の一般入学試験


募集人数は75名であり,一次試験及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は6万円である。

イ出願期間は,
平成29年1月24日までとされ,
一次試験は同年2月4日,
二次試験は同月12日に行われた。

一次試験は,理科200点,数学100点,英語100点の合計400点の学力試験の成績によって判定され,合格者が決定される。


二次試験は,一次試験合格者に対し,小論文60点,適性検査及び面接の各試験結果に,一次試験の成績及び調査書を加味して,総合的判定によって合格者が決定される。具体的には,一次試験と小論文の得点を加算した合計得点が高い者から順に受験者名が配列された一般二次合格者選定名簿が作成され,
成績上位者から順に面接や適性検査の結果を参照して合否判定を行う。なお,適性検査及び面接は,一次試験の点数等と合算するものではなく,ネガティブチェックのために行われており,適性検査及び面接の評価の低い受験生については,合否について慎重な判断がされていた。


受験者数は2832名であり,そのうち女性は1140名であった。二次試験の合格発表は平成29年2月18日に行われ,正規合格者及び繰上合格者の合計は131名であった。
平成29年度のセンター試験利用入学試験


募集人数は15名であり,一次試験及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は4万円である。

出願期間は平成29年1月13日までであり,二次試験は一般入学試験と同日の平成29年2月12日に行われた。


センター試験のうち,国語200点,数学200点,地理歴史公民100点,理科200点,外国語(英語)250点の合計950点の合計得点が一次試験合格者判定のための資料となる。

エ一次試験合格者に対し行われる二次試験の内容は一般入学試験の二次試験

受験者は,846名であり,そのうち女性は400名であった。二次試験の合格発表は平成29年2月18日に行われ,合格者は48名であった。平成30年度の一般入学試験


募集人数は75名であり,一次試験及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は6万円である。

イ出願期間は,
平成30年1月23日までとされ,
一次試験は同年2月3日,
二次試験は同月10日に行われた。

一次試験の配点は,平成29年度と同様(理科200点,数学100点,

二次試験は,平成29年度

と同様であるが,小論文の配点は

100点とされた。

受験者数は2614名であり,そのうち女性は1018名であった。二次試験の合格発表は平成30年2月17日に行われ,正規合格者及び繰上合格者の合計は171名であった。
平成30年度のセンター試験利用入学試験


募集人数は15名であり,一次試験及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は4万円である。


出願期間は平成30年1月12日までであり,二次試験は一般入学試験と同日の平成30年2月10日に行われた。

一次試験の配点は平成29年度と同様である(国語200点,数学200点,地理歴史公民100点,理科200点,外国語(英語)250点の合計950点)


エ一次試験合格者に対し行われる二次試験の内容は一般入学試験の二次試験。

受験者は,917名であり,そのうち女性は384名であった。二次試験の合格発表は平成30年2月17日に行われ,合格者は43名であった。本件得点調整の概要


平成29年度の本件試験については,一般入学試験及びセンター試験利用入学試験のいずれの二次試験においても,小論文の点数に0.833を乗じた上で,現役の男性受験生には5点を加点し,一浪の男性受験生には4点,二浪の男性受験生には3点を加算する一方で,女性受験生,三浪以上の男性受験生,高校学校等コード51000番以上の者(高等学校卒業程度認定試験合格者,大学入学資格検定合格者,外国の学校等の修了者,国際バカロレア資格取得者,在外教育施設の課程修了者,専修学校の高等課程を修了した者など。甲5)
。に対しては加点をしないという得点調整を行った。


平成30年度の本件試験については,一般入学試験及びセンター試験利用入学試験のいずれの二次試験においても,
小論文の点数を0.
8倍し,
現役,
一浪及び二浪の男性受験生については一律10点を加算し,三浪の男性受験生には5点を加算し,女性受験生,四浪以上の男性受験生及びコード51000番以上の受験生には加点をしないという得点調整を行った。


前記ア及びイの得点調整(本件得点調整)は,事前に受験生に公表はされていなかった。

3争点
共通性(争点1)
(主位的請求及び予備的請求1,2に共通)
(原告の主張)

特例法の訴訟要件たる共通性は,個々の消費者の事業者に対する請求を基礎付ける事実関係がその主要な部分において共通であり,かつその基本的な法的根拠が共通であることをもって足りる。本件は,いずれの請求についても,実施された本件試験で本件得点調整が行われたこと及び出願者に対して事前に本件得点調整の説明がなかったこと,並びに対象消費者が本件試験の受験契約を締結し,
(予備的請求については)
本件試験の二次試験を受験した
ことという主要な事実関係が共通しており,共通性の要件を満たす。

得点調整は合格可能性に影響を及ぼすから,受験生にとって当該大学を受験するか否かを判断するに当たって極めて重要な事項である。受験生にとって,本件得点調整を知っていれば,属性により不利益な扱いを受けることとなるから本件大学には出願しなかったという一般的な因果関係があるというべきである。
被告は,対象消費者の出願の動機の個別性について主張するが,共通性に取り込まれない要素について,それが支配性の要件を欠かない限りは,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合
(特例
法2条4号)の問題であり,簡易確定手続で判断すれば足りる。

(被告の主張)

本件大学への入学を希望している受験生は,その合格の可能性が完全に排除されない限り,本件大学を受験すると考えるのが通常である。また,私立医科大学の受験においては,複数の大学を併願して受験し,その中から最も希望する大学に入学する受験生が多いこと,腕試しを目的とした受験もあること等の可能性を併せ考えると,本件対象消費者が,本件得点調整がされることを知っていたとしても本件大学を受験した可能性は高いのであって,原告の主張するような本件得点調整を知っていれば受験はしなかったという一般的な因果関係があるとはいえない。


したがって,原告の主張する請求原因が認められるには,個々の受験生の本件試験への出願の動機を審理する必要があるし,本件試験への出願の動機は個々の受験生により異なるものであり,共通性が欠けている。多数性(争点2)
(主位的請求及び予備的請求1,2に共通)

(原告の主張)

主位的請求について
本件試験を受けた者のうち,浪人生,高校学校等コード51000以上の者の数は明らかではないが,女性受験生だけでも平成29年度で1540名であり,平成29年4月30日までに二次試験の合格の判定を受けた77名を除いても1463名はいる。また,平成30年度の女性受験者は1402名であり,平成30年4月30日までに二次試験の合格の判定を受けた34名を除いても1368名はおり,本件対象消費者(対象消費者目録1)は多数性を満たしている。


予備的請求について
平成29年度の本件試験の一次試験に合格した者のうち,浪人生,高校学校等コード51000以上の者の数は不明であるが,女性受験生は269名であり,このうち平成29年4月30日までに二次試験の合格の判定を受けた77名を除いても192名はいる。また,平成30年度の一次試験に合格した女性受験生は217名であり,平成30年4月30日までに二次試験の合格の判定を受けた34名を除いても183名はおり,本件対象消費者(対象消費者目録2)は多数性を満たしている。

(被告の主張)
原告の請求原因は,本件得点調整がされると知っていれば本件大学を受験しなかったということに収斂されるものと思われるが,対象消費者の出願の動機は様々であるから

張〕ア)
,多数性の要件を欠

いている。
支配性(争点3)
(主位的請求及び予備的請求1,2に共通)
(原告の主張)

本件対象消費者の属性は明確であり,被告において把握しているから,対象消費者の該当性の判断が,簡易確定手続の書面審理で迅速になし得ない事態は想定し難い。
属性により不利益な扱いを受けるのであれば,本件大学には出願しないという選択をすることが一般的であることからすれば,本件得点調整を知っていれば本件大学を受験しなったといえるかという因果関係(以下本件因果関係という。)の有無は,アンケートや陳述書等で判断可能であ
り,本件因果関係を否定するような特別な事情が窺われる者についてのみ異議後の訴訟において判断すれば足りる。事業者の虚偽説明により消費者が誤認するというのは典型的な消費者被害として特例法が予定する類型であり,消費者ごとに主観が異なりうる場合でも,それによって支配性が直ちに否定されることは想定されていない。また,消費者の誤認を争点とする通常の集団訴訟でも必ずしも消費者の全員を尋問していないことからすれば,対象消費者全員を尋問する必要はなく,数名程度を尋問してその余の者についてはアンケート等による代替も可能である。


損害についても,入学検定料,受験票郵送料,出願書類郵送料は対象消費者にとって一律であるし,送金手数料,旅費及び宿泊費,特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用は書面による審理で容易に認定し得るものである。
旅費及び宿泊費については,領収書やクレジットカードの明細書等の書
証による立証が適切であり,対象消費者の尋問を要することはないし,仮にそのような資料が乏しい場合でも,鉄道会社の約款や,旅費法の定める額等により算出することが可能であって,簡易確定手続の書面審理で迅速になし得ない事態は想定し難い。
また,一度の上京の機会に複数の大学を受験する場合にも,受験した大学の数に応じて案分して旅費や宿泊費を計算することもできるのであるから,そのことをもって支配性を欠くとはいえない。
(被告の主張)

ア記載のとおり,本件因果関係の有無については,
個々の受験生の主観を審理する必要があり,その審理はアンケートや陳述書では足りず,対象消費者全員に対する反対尋問が必須であって,簡易確定手続において,適切かつ迅速に判断することは困難である。


損害についても,旅費については,交通手段は公共交通機関,自家用車,通学定期の利用等様々有り得るし,宿泊費についても,他の大学との受験のため連泊するような場合や親戚の家に泊まる場合等の様々なケースがあるのであって,個別の対象消費者に対する反対尋問の機会を確保する必要があるのであり,簡易確定手続において,適切かつ迅速に判断することは困難である。
本件得点調整の説明義務があるか(争点4)
(主位的請求)

(原告の主張)

本件得点調整は,後記(原告の主張)のとおり,不法行為ないし債務不履行に当たる違法なものであるが,被告は,本件得点調整をすることを募集要項等において事前に明らかにしていない。


大学入学者選抜実施要項(甲6。以下本件実施要項という。
)は,直接
私法上の義務を課すものではないが,募集要項には入学志願者が出願に必要な事項を明記して公表することを定めており,私法上の信義則上の説明義務の有無においても重要な指標となる。大学が,本件実施要項やアドミッション・ポリシーと合理的関連性のない採点方法,採点基準による試験の実施を予定している場合には,
信義則上採点基準を明示すべき義務を負う。
被告は,
本件大学について,本件得点調整を事前に公表していないことについて説明義務違反があり,不法行為責任を負う。

被告の主張する証拠(本件大学の大学案内。乙19号証)により,本件得点調整が予想できたとはいえない。

(被告の主張)

本件実施要項は公法上の義務を定めるものに過ぎない上,
試験の評価,判定方法については可能な限り情報開示に努めると努力義務として定めているだけであり,採点方法,採点基準を募集要項に明記することについては法的に義務付けられていない。また,アドミッション・ポリシーに表示したからといって,それに沿った採点を義務付けられるわけでない。
したがって,被告が本件得点調整を説明する義務を負っていたとはいえない。


また,被告は,証拠(乙19号証)において,受験者及び入学者のそれぞれについて,男女比や浪人構成比を明らかにしており,属性ごとの本件大学の入学しやすさを判別するに足りる情報を開示していた。
主位的請求についての損害及び因果関係(争点5)

(原告の主張)

以下の損害は,本件得点調整の説明義務違反と相当因果関係のある損害である。
入学検定料
対象消費者のうち,一般入学試験を受けた場合(別紙対象消費者目録1ア,ウ)は6万円,センター試験利用入学試験を受けた場合(別紙対象消費者目録1

イ,エ)は4万円である。

受験票送料
全ての対象消費者につき342円である。
送金手数料
所定の振込票により電信扱いで送金する必要があり,窓口送金を要するところ,その費用は540円又は864円である。
出願書類郵送料
願書を書留速達便で送付すべきものとされており,

基本料金120円,
速達料金280円,書留料金430円の合計830円である(なお,実額が判明する場合はそれによる。。

受験に要した旅費及び宿泊費
特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用
特例法においては,制度上,対象消費者が被害回復する場合には特定適格消費者団体の報酬及び費用を支払うべきものとされており(特例法76条,
65条4項6号)本件得点調整の説明義務違反と相当因果関係のある,
損害である。

本件因果関係について
本件得点調整は合否に大きな影響を及ぼすものであるから,本件対象消費者は,特別な事情のない限り,本件得点調整がされることを知っていれば,本件大学を受験しないことが通常の対応である。特別の事情がある対象消費者がいる場合においても,
個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合
(特例法2条4号)に該当するかどうかの問題で
あり,簡易確定手続で判断すれば足りる。したがって,共通義務確認の訴えにおいては,説明義務違反と上記アの各損害との間に相当因果関係が認められる。


被告は,入学検定料等の対価としての試験の実施及び合否の判定というサービスを受けている以上,実質的な損失は発生していない旨主張するが,被告が説明義務に従って受験生に正しく説明していれば契約の締結に至ることはなかったのであるから,支払った金額の全額が損害となるというべきである。また,試験の実施及び合否の判定も,本件得点調
整によるものであり,入学試験受験契約の本旨に沿った履行を受けたわけでもない。
被告は,本件得点調整により合否の判定が変わる者には追加合格の判定をしており,追加合格者については,受験に要する費用が損害になることはない旨主張するが,事前の説明があれば本件試験の出願を回避できたのであるから,入学検定料等で出捐した金銭は損害となるし,本来の合格判定を受けるべき時期をとうに過ぎてからの追加合格の判定により,損害が填補されているとはいえない。
本件得点調整により合否の判定が変わらなかった者についても,受験に要する費用が損害となるとみるべきである。
(被告の主張)

原告の主張する損害について全て争う。


のとおり,本件得点調整がされることを知ってい
れば,本件大学を受験しないといった一般的な因果関係は存在しない。したがって,説明義務違反と原告の主張する損害との間の相当因果関係を欠いている。


対象消費者は,本件試験の実施及び合否の判定並びに本件得点調整がされなかった場合の合否の判定という入学検定料の対価としてのサービスを受けているものであって,本件受験費用等はおよそ損害と評価できない。説明義務違反と相当因果関係のある損害は,当時支出した金額を損害とするのではなく,
あくまで
現実に発生した損害
に限られるべきであって,
上記サービスを受けている以上,実質的な損失は発生していないとみるべきである。
本件得点調整により合否の判定が変わる者には追加合格の判定をしており,少なくとも,追加合格を受けた者については,受験に要する費用が損害になることはない。
説明義務違反は当該説明がされていなかったことのリスクが顕在化した際にそのリスクを損害として賠償するものにすぎないところ,本件得点調整により合否の判定が変わらなかった者については,そのリスクが顕在したとはいえないから,損害が発生していない。
入学試験を公正かつ妥当な方法で行う義務(争点6)
(予備的請求1,2)
(原告の主張)

被告は,どのような学生を入学させるかについて広範な裁量を有しているが,その裁量には限界がある。そして,学校教育法3条の定める設置基準である大学設置基準2条の2,本件実施要項,憲法14条及び26条等の規定によれば,被告は,入学試験を公正かつ妥当な方法で行う義務を負っていたといえる。しかし,被告の行った本件得点調整は,属性によって合理的な理由なく,本件対象消費者を不利益に扱うものであるから,公正かつ妥当な入学試験の方法とはいえず,
被告に与えられた裁量を逸脱する行為であるから,
不法行為ないし入学試験受験契約の債務不履行に当たる。


被告は,
本件得点調整により合否に影響の出ない受験生との関係では不法
行為ないし債務不履行が成立しない旨主張するが,公正かつ妥当な試験が受けられないことが対象消費者の被った権利侵害であるから不法行為が成立するものであるし,入学試験受験契約との関係でも公正かつ妥当な方法による試験の実施と合否の判定という債務を被告は履行しておらず,債務不履行に当たる。

(被告の主張)

大学入学試験においては,個別学力検査の素点からの調整が様々な理由により認められており,得点調整をすること自体は違法とはいえない。

原告の主張する,
学校教育法3条,
大学設置基準2条の2,
本件実施要項,
憲法14条及び26条等の規程は,いずれも公法上の規程であって,私人間の契約内容を直ちに拘束するものではない。

本件得点調整により合否への影響が存在した受験生との関係において,不法行為ないし債務不履行が成立することは有り得るとしても,本件得点調整により不合格となった受験生の数はごく一部なのであって,それにより本件試験全体が不法行為ないし債務不履行となるとみるべきではない。本件得点調整の有無にかかわらず不合格であった受験生との関係においては,合否の結果が変わらない以上,被告の行為により侵害された権利又は法律上保護された利益は存しないから,不法行為は成立しないし,入学試験受験契約との関係においても,
試験の実施と合否の判定というという債務は履行しており,
債務不履行となることはない。
予備的請求1,2についての損害及び因果関係(争点7)

(原告の主張)
アイ
入学試験受験契約の対価は,少なくとも試験の実施と合否の判定であるところ,
対象消費者は公正かつ妥当な方法による試験を受けられていないから,債務の本旨に従った履行を受けておらず,入学検定料等で出捐した金銭が損害となる。

(被告の主張)

原告の主張する損害について全て争う。

イ入学試験を公正かつ妥当な方法で行う義務の違反と受験に要した費用が損害となることとの相当因果関係は明らかではない。対象消費者は,試験の実施及び合否の判定を受け,さらに本件得点調整がされていない場合の合否の再判定も実施されており,対象消費者は入学検定料の対価に当たる利益を受けているのであって,入学検定料等の受験に要した費用を損害と評価することはできない。

前記(被告の主張)ウのとおり,少なくとも,本件得点調整にかかわらず不合格であった受験生については,相当因果関係のある損害は生じていない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実を総合すると,以下の事実が認められる。
法令等の定め

教育基本法6条1項
法律に定める学校は,公の性質を有するものであって,国,地方公共団体及び法律に定める法人のみが,これを設置することができる。


学校教育法3条
学校を設置しようとする者は,学校の種類に応じ,文部科学大臣の定める設備,
編制その他に関する設置基準に従い,
これを設置しなければならない。


大学設置基準2条の2
入学者の選抜は,公正かつ妥当な方法により,適切な体制を整えて行うものとする。


文部科学省高等教育局長は,平成29年6月1日,平成30年度の本件実施要項(甲6)を局長通知として発出した。平成30年度の本件実施要項には,以下の記載がある。
各大学は,
入学者の選抜を行うに当たり,
公正かつ妥当な方法によって,
入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する。その際,各大学は,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する。
(1頁)
各大学は,入学受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
,募集人員,
出願要件,出願手続,試験期日,試験方法,試験場,入学検定料その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限など入学志願者が出願等に必要な事項を決定し,それらを明記した募集要項を平成29年12月15日までに発表する。
(6頁)
各大学は,入学志願者に対し,募集要項のほか,大学案内,大学説明会等により,入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
,学部等の組
織,教育研究の内容及び特色,学生生活の概要及び諸経費,過去の年度の入学志願者及び合格者の数,卒業後の進路状況など大学・学部等の選択の参考となる情報の提供に努める。
(6頁)
各大学は,受験者本人への成績開示や,入試方法の区分に応じた受験者数,合格者数,入学者等の入試情報の積極的開示に努める。また,試験の評価・判定方法については,可能な限り情報開示に努める。
(7頁)
入学者選抜は,中立・公正に実施することを旨とし,入試問題の漏洩など入学者選抜の信頼性を損なう事態が生ずることのないよう,学長を中心とした責任体制の明確化,入試担当教職員の選任における適格性の確保,研修の実施など実施体制の充実を図る。
(8頁)
平成30年度の本件試験の学生募集要項(甲4)には,出願方法について概要,以下の記載がある。
ア受験票送料として受験票に速達郵便料金342円分の切手を必ず貼り付ける必要がある。

入学検定料は,志願書に付いている振込用紙を使用して,銀行,信用金庫の窓口から電信扱いで振り込む必要がある。


出願書類は,書留・速達便で送付する必要がある。
本件大学は,平成30年8月28日,本件大学医学科の入学試験における不
適切な行為等の調査を主たる目的として学校法人東京医科大学第三者委員会(以下本件第三者委員会という。
)を設立した(甲2)


本件第三者委員会は,平成30年10月22日,平成29年度及び平成30年度の入学試験についての検証結果をまとめた第一次調査報告書(甲2。以下本件報告書という。
)を提出した。
本件報告書には,前記前提事実

ないし

記載の事実の他に,以下の事実

が記載されていた。
a平成29年度の一般入学試験の二次試験の繰上合格の対象となった上位151名の受験生の内訳は,男性96名,女性55名であったが,本件得点調整及び個別の受験生に対する加点調整の影響を排除した場合の上位151名の受験生の内訳は,
男性85名,
女性66名であった。
(2
8頁)
b平成29年度のセンター利用入試の繰上合格の対象となった上位84名までの受験生の内訳は,男性40名,女性44名であるが,本件得点調整及び個別の受験生に対する加点調整の影響を排除した場合の上位83名の受験生の内訳は,男性39名,女性44名であった。
(29頁)
c平成30年度の一般入試の二次試験の繰上合格の対象となった上位230名の受験生の内訳は,男性187名,女性43名であったが,本件得点調整及び個別の受験生に対する加点調整の影響を排除した場合の上位240名の受験生の内訳は,
男性158名,
女性82名であった。
(3
3頁)
d平成30年度のセンター利用入試の繰上合格の対象となった上位83名までの受験生の内訳は,男性57名,女性26名であるが,本件得点調整及び個別の受験生に対する加点調整の影響を排除した場合の上位83名の受験生の内訳は,男性50名,女性31名であった。
(33,34
頁)
本件第三者委員会は,本件得点調整につき,以下のとおり意見した。女性を不利益に扱う部分は,平等原則,教育の機会の均等及び入試手続の公平性の要請に著しく反するものとして,到底許されない。女性に妊娠や出産というライフイベントがあることや,診療科目によっては医師における男女比に差異があることといった現状があるとしても,様々な社会的支援等により女性の働き方を十分に尊重しながら,方策を講じるべきであり,現状を肯定的に受け容れるものではないとしても,女性受験生にそのつけを回すことを正当化する理由はない。
(39頁,40頁)
概ね3浪以上の多浪生を不利益に扱う部分については,
機械的一律に,

多浪か否かという属性のみに着目して,多浪の受験生を不利益に取り扱うことは著しく不合理であり,許されない。統計的な傾向として,多浪生は大学内での進級や医師国家試験で困難を生じることが多いとしても,高校卒業時から年数を経過して医学部に入学しようとする人材には様々な背景を有する者がおり,
それら人材の中には卓抜して優れた成果を残す者も見
られるところであり,受験生の個別の資質を見極めることなく一律に得点調整することを正当化する根拠になるとは考えにくい。
そもそも,
入試は,
当該学校に入学するに値する適性を見極めることを目的としており,合否の判定を成績だけではない総合的判定で行うにしても,多浪生を一律に不利益に扱うことを総合的判定に読み込むことはできず,むしろアドミッションポリシーにうたう

多様性
の観点から矛盾する。40頁)

なお,本件得点調整のうち,高校学校等コード51000以上の者を不利益に扱う部分については,出身校によっても点数が低くなり得る者がいることから,問題がある可能性があり,今後,調査を行う予定である。(3
1頁)
本件第三者委員会は,本件大学に対し,以下のとおり提言した。
a
本件試験について,速やかに入試委員会を開催し,本件得点調整及び個別の受験生に対する得点調整を行う前の合格者選定名簿
(その内容は,
前記アに記載された内容である。をもって,

追加合否判定を実施しその
結果を公表すること。この追加合否判定の際には,①一切の性差別の禁止,②多浪である受験生(ただし,高校卒業年度から何年経過した者を多浪とするかは本件大学の判断に委ねる。について合否判定を慎重に行)
うにしても,多浪であることの一事をもって合格者選抜から排除せず,不合格とする場合には明確で説明可能な理由によるべきこと等を遵守すべきであること。
(42,43頁)
b
前記

で追加合格と判定された者のうち,少なくとも平成30年度入

試の追加合格者に対しては,平成31年度の本件大学が指定する入学日に入学することを申し込み得る地位を認めるべきこと。平成29年度の入試の追加合格者に対して同じ措置をとるか否かは,本件大学の判断に委ねるが,その取扱いを明確に定めること。併せて,追加合格者からの補償等の請求があった場合には,これに誠実に向き合い,対処すべきこと。
(43頁)

本件第三者委員会は,平成30年12月21日,主に平成25年度から平成28年度の本件大学の医学科入学試験についての検証結果をまとめた第二次調査報告書を作成した(乙1の1)



本件第三者委員会は,平成30年12月28日,主に平成25年度から平成30年度の医学科入学試験についての検証結果をまとめた第三次調査報告書(最終報告書)を作成した(乙1の2)
。同報告書には以下の記載がある。
本件大学の歴代の学長(平成18年度以降の就任者)は,遅くとも学長に就任以後は,本件得点調整を含む属性による得点調整について認識していたことが認められる一方で,その他の入試委員については認識していたものとは認定し難い。属性調整の主たる責任は,歴代の学長にあるといわざるを得ない。
(4ないし6頁)
本件得点調整等の動機・背景に,女性よりは男性が,浪人生よりは現役生や一浪生が入学者として好ましいという思想があり,
同思想の背景には,
ヒアリングを実施した多くの者が,被告が経営する大学病院を適正に運営するためには,医師国家試験を合格する能力を持ち,かつ,研修医として大学病院で継続的に勤務が可能な学生を本件大学から多く輩出することが必要との考えを前提にし,経験的にみて,進級や医師国家試験の通過率が低い(と考えられていた)多浪生や,医局に勤務した後に結婚や出産による離職率が男性に比べて高い女性の入学者をできる限り少なく抑える必要があるとの認識を有していたことがある。
(16,17頁)
2争点1(共通性)及び争点2(多数性)について
共通性の要件について

特例法における共通義務確認の訴えは消費者に共通する事実上及び法律上の原因に基づくものである必要があるところ
(特例法2条4号)これは,

個々の消費者の事業者に対する請求を基礎付ける事実関係がその主要部分において共通であり,かつ,その基本的な法的根拠が共通であることをいう。

これを本件訴えについてみると,主位的請求及び予備的請求のいずれにおいても,請求を基礎付ける事実関係は,本件得点調整がなされる一方で,これに関する事前の説明が欠如していたことのほか,対象消費者において本件試験に出願したこと(主位的請求)又は本件試験の一次試験を合格し,二次試験を受験したこと(予備的請求)であり,請求を基礎づける事実関係が主要部分においては全ての対象消費者に共通である。また,法的根拠も本件得点調整の説明義務違反を理由とした不法行為
(主位的請求)若しくは,

入学
試験を公正かつ妥当な方法で行う義務違反を理由とした不法行為又は債務不履行(予備的請求)であって,全ての対象消費者に共通しているから,基本的な法的根拠が共通であるといえる。


以上によれば,本件訴えは,いずれも共通性の要件を満たすものというべきである。
多数性の要件について


特例法2条4号においては,
相当多数の消費者に生じた財産的被害
の存
在が要件とされている。上記の要件は,特例法の制定趣旨に照らして,個別の訴訟によるよりも,
同法の定める訴訟手続等を活用した方が審理の効率化
が図られることを要求する趣旨と解され,
この観点からは,相当多数」
とは,社会通念に照らし,不特定かつ多数の消費者の利益保護を活動目的とする特定適格消費者団体の訴権の行使を正当化する程度に対象消費者の範囲が広がっていることを意味するものと解すべきである。イ主位的請求についてみると,対象消費者のうち,女性だけで平成29年度の一般入学試験において1140名(うち二次試験の女性の合格者数49名を除くと1091名)センター試験利用入学試験において400名,(うち二次試験の女性の合格者数28名を除くと372名)平成30年度の一般入学,試験で1018名(うち二次試験の女性の合格者数30名を除くと988名),センター試験利用入学試験において384名(うち二次試験の女性の合格者数4名を除くと380名)おり(前記前提事実ないし,甲2の17頁ないし20頁),対象消費者が相当多数に広がっていると評価できる。ウ予備的請求についてみると,対象消費者のうち,女性だけで平成29年度の一般入学試験において一次試験の合格者が179名(うち二次試験の女性の合格者数49名を除くと130名)センター試験利用入学試験において9,0名(うち二次試験の女性の合格者数28名を除くと62名)平成30年度,の一般入学試験で148名(うち二次試験の女性の合格者数30名を除くと118名)センター試験利用入学試験において69名,(うち二次試験の女性の合格者数4名を除くと65名)おり(甲2の17頁ないし20頁)一次試,験に合格したが二次試験を受験しなかった受験生の数がそれほど多くはないものと推測できることからすると,予備的請求についても対象消費者が相当多数に広がっていると評価できる。エ以上によれば,本件訴えは,いずれも多数性の要件を満たすものというべきである。アこれに対し,被告は,本件試験の出願の動機は様々で個々の対象消費者により異なるとして,本件因果関係の問題を指摘して,本件訴えが共通性及び多数性の要件を欠く旨を主張する。イしかしながら,共通義務確認の訴えは,①消費者に共通する事実上及び法律上の原因が存在する(共通性の要件)ことを前提として,②個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,金銭を支払う義務を負うことの確認を求める訴え(特例法2条4号)であり,②の個々の消費者の事情については,対象債権の確定手続及びその後の異議の訴えにおいて審理されることが予定されるものである。この点で,被告の前記アの指摘は,②の個々の消費者の事情として,その主観的な認識等を問題とするものにとどまり,①の共通性の要件に関する判断を左右するものとはいえない。ウまた,前記多数性の要件に係る判断は,個別の訴訟手続と,特例法上の訴訟手続等を,審理の効率性の観点から比較するものと解されるところ,最終的な債権の確定に至るまでに,被告の指摘する動機や因果関係の問題が審理の対象となる点は,いずれの手続においても共通する。このことに照らせば,共通義務確認の訴えが一定の対象消費者につき共通性の要件を満たす場合には,原則として,当該共通性を具備する対象消費者の数を基準として多数性の要件を判断するのが相当であり,事業者(被告)が主張する事情が対象消費者に広範に存在することにより,対象消費者が少数にとどまることが明らかであるなどの特段の事情のある場合を除き,多数性の要件に関する判断を左右しないものと解するのが相当である(この点については,後記5においてさらに述べる。。)3争点3(支配性)について支配性の要件についてア特例法3条4項は,「裁判所は,共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決をしたとしても,事案の性質,当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情を考慮して,当該簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは,共通義務確認の訴えの全部又は一部を却下することができる。と規定しており,個別の争点に対して共通争点が支配的であるこ
とが求められ,
簡易確定手続
(その内容については後記イに具体的に示す。

において個々の消費者の損害や損失,因果関係の有無等を判断するのに個々の消費者ごとに相当程度の審理を要する場合には,二段階の訴訟手続を設けて簡易迅速に個々の消費者の請求権の実効性を確保しようとする法の趣旨に沿うものではないから,支配性を欠くと解される。

簡易確定手続においては,相手方が届出債権につき認否をし(特例法42条1項)債権届出団体が同認否を争う旨の申出をする場合には

(特例法43
条1項)裁判所は簡易確定決定をしなければならない

(特例法44条1項)
が,この審理においては,裁判所は当事者双方を審尋するが(特例法44条2項)証拠調べは書証に限りすることができる

(特例法45条1項)
とされ
ている。簡易確定決定に対して当事者及び届出消費者は異議の申立てをすることができ
(特例法46条1項,
2項)その場合には債権届出団体を原告と

して,簡易確定決定をした地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされる(特例法52条1項)ことになる。
本件因果関係の審理について
本件因果関係の審理について支配性を欠くとの被告の主張については,後記
5の主位的請求における因果関係の部分で併せて判断するものとする。各損害項目の審理について

原告が主張する各損害項目のうち,本件受験費用(入学検定料,受験票送料,送金手数料及び出願書類郵送料)と,特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用については,その費用が定型的であり書証による審理が容易であるから,支配性に欠けるところはない。


受験に要した旅費及び宿泊費について
原告は,受験に要した旅費及び宿泊費についても支配性の要件を満たすと主張する。
特例法3条2項は,拡大損害,逸失利益,人身損害,慰謝料等については,共通義務確認の訴えの対象とならないことを定めているところ,その趣旨は,①共通義務確認訴訟の段階で,事業者がおおよその損害額を把握することが困難であること,②因果関係や損害の認定において個別性が高く,類型的に支配性に欠けることの2点にあると解される。
本件で問題となる受験に要した旅費及び宿泊費は,特例法3条2項で挙げられている類型ではないものの,そのおおよその金額を被告が把握することが困難な面があることは否定できないし,因果関係や損害の認定においても個々の消費者の事情により異なる部分が相当程度あるものであるから,その支配性については慎重に検討する必要がある。
a
受験に要した旅費及び宿泊費につき,
簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情特例法3条4項)(
を検討するに,
①本件対象消費者が支出した旅費・宿泊費の金額がいくらであるか,②対象消費者による①の支出のうち,相当因果関係にある損害がどの範囲で認められるかの二点が主要な問題となることが予想される。
b
①については,本件対象消費者が領収書等を保管している場合には,その金額を確定することは容易であると認められる。もっとも,その性質上,対象消費者のうち,全ての旅費・宿泊費の領収書等を保管していない者が相当数に上るものと推測されるところである。そうすると,これらの対象消費者については,
簡易確定手続においては,
陳述書のほか,
交通機関の運賃や,ホテルの宿泊料に係る一般的資料を中心とした立証にならざるを得ない場合が少なくないと思われるが,
上記運賃及び宿泊
料の設定には個別性の高いもの(航空機の運賃や,事前予約に係る宿泊料等)
が含まれ,
一般的な資料による立証にも限界があると考えられる。

c
②についても,対象消費者の住居地や交通事情により,宿泊費の支出につき相当因果関係があるか否かが左右され得る。また,対象消費者の主張する旅費及び宿泊費について,相当因果関係の有無や範囲に係る判断の前提として,個別に,費用の具体的内容(交通機関の座席や部屋の種別,付添者等の同宿の有無,朝食や夕食代金を含むか否か)や,その支出を必要とした事情を確認する必要が生じる場合も多々想定されるところであり,個別の消費者の事情を相当程度検討する必要が生じ得るものと考えられる。
d
さらに,対象消費者の中には,いわゆる受験シーズンに上京して一定期間ホテル等に連泊し,その期間に本件大学を含む複数の大学を受験した者も相当数存在するものと推測されるところ,そのような場合には,上京に係る旅費については,相当因果関係の存在自体が疑問であり,一方で,宿泊費については,滞在中の日程に応じて様々な類型が考えられる。そして,この場合には,相当因果関係に係る判断の前提として,そもそも,対象消費者の当時の滞在日程等の再現につき,一定程度の審理を要するものと思われる。

e
以上からすると,受験に要した旅費及び宿泊費については,結局のところ,
個々の消費者の個別の事情に相当程度立ち入って審理せざるを得
ない面があり,書証の取調べ以外の立証方法が予定されていない簡易確定手続において,内容を適切かつ迅速に判断することは困難であるといわざるを得ない。
この点に関し,原告は,旅費及び宿泊費について,資料の乏しい場合で

旅費法
(なお,
国家公務員の旅費に関する法律を指すものと推測され
る。
)の定める額等により算出することが可能である旨主張している。しかしながら,不法行為による損害については,被害者の実損害額を認定することが原則であり,
損害額の認定に関する民訴法248条の規定も,
損害の性質上その額を立証することが極めて困難であることをその要件とし,個別の支出及び相当因果関係に関する審理を尽くした上で,その適用を検討すべきものである。以上に照らせば,簡易確定手続における損害の審理・判断につき,原告主張の方法(一定の基準に基づく簡易・定型的な判断)を採用することを前提として,上記の損害に係る支配性の有無(簡易確定手続における適切・迅速な判断の難易)を判断することは本末転倒な面があり,原告の上記主張は採用し難いものというほかない。ほかに,原告は,対象消費者が個別に訴訟を提起するよりも共通義務確認の訴えや簡易確定手続等による方が簡易迅速に請求できる場合には支配性の要件を欠くと解すべきではない旨主張する。
しかしながら,原告の主張する解釈は特例法3条4項の文言から直ちに導かれるものではないし,
原告の主張する解釈を採用すると,
少なくとも,
損害との関係で支配性を欠く場合はおよそ想定されないことになりかねない。そして,特例法3条2項において,拡大損害,逸失利益,人身損害,慰謝料等については類型的に支配性を欠くため,共通義務確認の訴えの対特例法は通常訴訟と
比較すれば訴訟経済に資する場合であっても,簡易確定手続の審理を適切かつ迅速に判断することが困難な場合には支配性を欠く場合があることを前提としているものと見ざるを得ない。原告の上記主張は採用できない。ウ
以上によれば,
受験に要した旅費及び宿泊費に係る共通義務の確認を求め
る部分については支配性が認められないため,
特例法3条4項に基づき却下
するものとする。

4争点4(本件得点調整の事前の説明義務があるか)
私立大学の入学試験の採点基準等については,その性質上,試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであるから,採点基準の妥当性や合格・不合格の判定の当否について,当該私立大学に広範な裁量が認められているものと解される。また,本件実施要項において,試験の評価・判定方法の情報開示に関しては可能な限り努めるものとされているにとどまり
(前記1

)大学が


試験の評価方法等の全てを事前に開示する義務等を負っているわけではなく,採点方法につきどのような情報を事前に開示するかも当該私立大学に一定の裁量が与えられているというべきである。

もっとも,憲法14条1項は,性別,社会的身分により差別することを禁じており,学校教育法の定める設置基準である大学設置基準2条の2(前記1
ウ)は,公正かつ妥当な方法により入学者を選抜する旨を定め,本件実
施要項においては,
公正かつ妥当な方法による入学者の選抜を行うに当たり,
年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮するものとされている(前記1





この点につき,被告は,上記規程等は,公法上のものにすぎず,私人間に直接適用されるものではないことを指摘する。しかしながら,教育基本法6条1項が,法律に定める学校(本件大学のような大学法人が設置する私立大学も含まれる。は公の性質を有する旨を定めていることからすると,)
私立大
学であっても公の性質を有するものと考えるのが相当であり,個別に設置目的を有する私立大学の特性に鑑みてやむを得ない場合は別として,入学者の選抜に関しても,憲法やそれを受けた公法上の諸規定の趣旨を尊重する義務を負うと解すべきである。

そして,本件得点調整は,前記前提事実

のとおり,本件対象消費者を性

別,年齢,社会的身分といった属性により一律に不利益に扱うものであるところ,被告は,本件得点調整が合理的な根拠に基づく差別的取扱いであることについて具体的な主張立証をしていない。本件得点調整は,憲法14条1項や大学設置基準2の2の趣旨等に反するものであって,本件対象消費者との関係で違法である疑いが極めて強いものというべきである。
以上を前提として,被告において,本件対象消費者に対し,本件採点調整に係る説明義務を負うか否かにつき検討する。

本件試験については,被告が募集要項を定めて出願者を募集し,出願者が出願書類の提出とともに検定料等を納付し,被告が受験資格の有無等を審査の上受験票を送付することによって,出願者において本件試験を受験し,被告においてその結果を審査・採点の上合否判定を行うことを内容とする契約が成立するものと解される。


上記の契約に係る法律関係は,大学側(被告)による募集と,出願者によ
判定に際して,憲法上の平等原則を尊重するとともに,公正かつ妥当な方法により入学者の選抜を行い,
学生の受入れに際して多様性に配慮すべき責務
を負っている。
そして,
本件実施要綱においては,
多様性に係る属性としては年齢,
性別,
国籍,家庭環境が具体的に挙示されているところ,これらの属性は社会の構成要素としてごく一般的な分類である
験の評価等に関する被告の裁量を考慮しても,前記の募集に際して,上記の各属性を評価において考慮する旨の表示が皆無である場合には,
当該募集は,
出願者との関係では,原則として,上記の属性を考慮しないことを内容とするものと解するのが相当である。

一方で,出願者にとって,大学受験における合否判定が,その後の人生の岐路となり得る重大な事項であることはいうまでもなく,出願者は,被告が前記イのとおり,平等原則を尊重し,多様性に配慮した上で公正かつ妥当な方法による選抜を行うことを前提として,選抜に要する大学側の費用等(入学検定料)を負担した上で,個別の大学への出願を行うものと解される。以上の事情を考慮すれば,出願者は,試験が公正かつ妥当な方法で行われることの期待,すなわち,事前に学生募集要項やアドミッション・ポリシー等で説明されていない以上は,性別,年齢,社会的身分等によって一律に不利益に扱われることはないとの期待を有しており,同期待は単なる事実上の期待にとどまらず,前記アで述べた出願者と大学との間の法律関係の前提となり,法的保護に値するものと評価できる。

以上によれば,被告は,前記アの募集に際して,本件対象消費者に対し,学生募集要項やアドミッション・ポリシー等により,その属性を入学試験の評価において考慮する旨を告知すべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当であり,被告において上記告知を行わず,密かに本件得点調整を行っていたことは,本件対象者との関係で違法との評価を免れない。


被告は,大学入学試験について一般に素点による合理的な調整を行うことは違法でないと主張し,その例として推薦入試における地域枠による調整が許容されていること等を挙げる。しかし,本件得点調整については,学生募集要項やアドミッション・ポリシー等で事前に開示されていなかったことからすれば,違法との評価を免れないことは前記

のとおりである(なお,被

告大学においても地域枠特別推薦入試を設けているが,募集要項等でその旨を事前に開示している。甲2。。加えて,本件得点調整については,被告か)
らその合理性について何ら主張立証がされておらず,被告の上記主張はその前提を欠くものというべきである。

また,被告は,受験者や合格者の属性が公表されていること(乙19)からすれば,属性ごとの入学しやすさを事前に予測できたと主張するが,公表内容から本件得点調整の存在を窺い知ることはおよそ困難であり,まして本件大学の入試委員ですら本件得点調整を認識できなかったとされていることからすれば
(前記1
明らかであって,この点の被告の主張は採用できない。
以上によれば,
被告が学生募集要項やアドミッションポリシー等において,


本件対象消費者に係る属性の考慮につき事前に説明していなかったにもかかわらず,密かに本件得点調整を行っていたことについては,本件対象消費者との関係では,不法行為上違法との評価を免れない。
5争点5(主位的請求における損害及び因果関係)
本件因果関係について

本件訴訟の損害項目のうち,本件受験費用(入学検定料,受験票送料,送金手数料及び出願書類郵送料)については,いずれも本件試験の受験自体に要する費用であるから,前記4で認定した説明義務違反と相当因果関係を有する損害といえるためには,個々の対象消費者につき,本件得点調整について事前に説明を受けていれば本件試験に出願しなかったといえる関係(本件因果関係)があることが必要と解される。
しかしながら,共通義務確認の訴えにおいて,個々の消費者に固有の問題を審理することは予定されておらず,
個々の消費者の事情
(特例法2条4
号)については後続する簡易確定手続等で審理すべきものであることは,前記3

の判断は,個々の対象

消費者ごとに異なり得るものであり,共通義務確認訴訟においてその有無を審理することは想定されていないものといえる。

もっとも,前記

で述べたとおり,事業者(被告)が主張する事情が対

象消費者に広範に存在することにより,対象消費者が少数にとどまることが明らかであるなどの特段の事情のある場合には,多数性の要件を欠くものと判断する余地もあると考えられる。

この点,本件得点調整は,二次試験における小論文の点数に1未満を乗じた上で,本件対象消費者につき最低1点を減ずるものであり,本件対象消費者の合否判定に実質的な影響を与えることは明らかである。
そして,一般的に,大学入試の出願者は,当該入試に合格し,当該大学に入学する資格を得ることを最大の目的とすることは公知の事実であり,属性に基づく得点調整により合否の判定に実質的な不利益を被ることが事前に判明していれば,当該大学に出願しないと考えることは極めて自然である。これを前提とすると,本件対象消費者の大部分は,属性に基づく得点調整が事前に判明していれば,本件大学に出願しなかったものと推認するのが相当である。

これに対し,被告は,①本件大学への入学を希望している者は,合格の可能性が完全に排除されない限り,本件大学を受験すると考えるのが通常であること,
②私立医科大学の受験においては,
複数の大学を併願受験し,
その中から最も希望する大学に入学する受験生が多いこと,③腕試しを目的とした受験もあること等の様々な事情を主張して,本件得点調整について事前に説明を受けていれば本件試験に出願しなかったといえる一般的な因果関係があるとは認められない旨主張する。
しかしながら,大学受験において,受験の機会は年度ごとに限定され,当該年度における合否は,出願者にとって,大学への進学時期にとどまらず,大学卒業後の将来設計全般に影響を及ぼす事項である。さらに,医学部については,(甲8)
証拠
によれば,
入学定員に比して志願者が急増し,
競争が激化する状況が継続しているものと認められる。
以上の事情に照らせば,被告の主張する併願(前記②)は,出願者にとって,
進学先大学の選択肢の確保にとどまらず,
当該年度における大学
(医
学部)への進学自体を確保する目的で行われるものと推認され,併願先の選択に当たっても,一般的に,当該大学における合格の可能性は,出願者において最も重視すべき事項となるものと考えられる。そして,本件大学の受験日程(一次試験又は二次試験)は,平成29年度及び平成30年度のいずれにおいても,他の私立大学数校との間で重複しており,本件大学の受験を選択した場合,後者の少なくとも一部の受験が不可能となるものと認められ(甲7の1,2)
,本件対象消費者の大部分は,属性による採点
調整の存在が事前に判明していれば,併願先の選択から,本件大学を除外するものと推認するのが相当である。
一方で,本件大学(教育環境や教育理念)への共感等が,出願者の志望ところに照らせば,
当該動機が唯一の志望動機となるとはにわかに考え難
い上,属性による採点調整の存在は,これにより不利益を受ける本件対象消費者にとっては,一般的に,上記の共感自体を失わせる事情となり得るものというほかない。
また,
腕試し
目的の受験が一般的に存在するとしても,
本件対象消費
者にとっては,採点調整によるハンデを前提とした腕試しを希望する

したがって,個々の消費者の事情により本件因果関係が認められない場合を除き,説明義務違反と受験に要した費用との間の因果関係は認めることができる。
本件因果関係の審理と支配性の要件について


被告は,本件因果関係の有無については後続する簡易確定手続等で審理すべきものだとしても,その審理の際には個々の対象消費者の主観を審理する必要があり,
その審理は陳述書やアンケートといった書証による立証では足
りず,対象消費者全員に対する反対尋問が必須であるから,簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であり,支配性を欠くと主張する。


しかしながら,本件因果関係の問題は,そもそも,本件対象消費者において,出願当時に現実に認識していなかった事情(属性による得点調整)を基礎とするものであり,この点で,個々の出願者の出願当時の動機又は認識自体についての事実認定の問題とはいい難い。むしろ,
ろに照らせば,本件対象消費者の大部分にとっては,出願回避の選択につき合理性があるものと考えられ,本件因果関係の審理については,対象消費者が陳述書等を提出した上で,被告の主張等に基づき,上記合理性を覆すような事情の有無を審理することになるものと考えられ,少なくとも,網羅的に対象消費者の尋問が必要になるとは考え難い。以上によれば,簡易確定手続においてその内容を適切かつ迅速に判断することができないとはいえない。ウ
したがって,本件因果関係の審理を理由に支配性を欠くと解することはできない。
各損害項目について


で認定したところによれば,本件受験費用(入学検定料,受験票
送料,送金手数料及び出願書類郵送料)については,いずれも本件試験に出願するために必要不可欠な費用と認められるから,説明義務違反と相当因果関係を有する損害であるといえる。


また,特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用については,特例法76条は特定適格消費者団体が授権者から報酬を受けることができることを定め,特例法65条4項6号は,特定適格消費者団体が,消費者の利益の擁護の見地から不当なものでない報酬又は費用の算定方法等の事項を定めることを特定認定の要件としていることからすると,対象消費者が特定適格消費者団体に報酬及び費用を支払うことが予定されているといえる。
一方で,不法行為訴訟においては,弁護士費用(報酬)につき,不法行為と相当因果関係のある範囲で損害として認められているところ,特例適格消費者団体は,簡易確定手続を含め,手続追行を弁護士に行わせる義務を負っていること(特例法77条)に照らせば,特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用についても,弁護士費用と同様に,簡易確定手続において相当因果関係が認められる範囲において,損害と認めるべきである。


被告の主張について
被告は,本件対象消費者についても,本件試験の実施並びに合否の判定を受け,さらにその後に本件得点調整がされなかった場合の合否の判定を受けたから,入学検定料等の対価としてのサービスを受けているものであって,受験に要した費用が損害となることはない旨や,平成30年4月以降に追加合格の判定がされた本件対象消費者や,逆に,再度の判定により合否の結論が変わらない者について,損害が発生しない旨を主張する。しかしながら,前記4のとおり,属性の考慮に係る説明の欠如につき説明義務違反(違法性)が認められ,さらに個々の本件対象消費者につき本件因果関係が存在することを前提とすると,入学検定料等の支出の時点で本件対象消費者に損害が発生したものというほかなく,一方で,本件得点調整を伴う被告による役務の提供により,当該損害が填補されるものともいえない。
また,本件試験の募集及び出願については,被告及び出願者の双方が,受験年の4月からの入学を前提としていたことは明らかであって,この点
に照らせば,
同月から少なくとも1年を経過した時点
(平成31年4月期)
の入学を前提として,本件対象消費者の合否について再度判定が行われ,その結果,一部につき追加合格の判定がされたとしても,入学検定料等に係る本件対象消費者の損害が填補されるものとはいえない。
被告の前記主張は採用できない。
小括
したがって,本件受験費用並びに特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用については,
本件得点調整の説明義務違反と相当因果関係のある損害と認
められる。
第4結論
以上によれば,その余の争点(予備的請求に係るもの)について判断するまでもなく,原告の請求のうち,受験に要した旅費及び宿泊費の支払を求める部分は支配性を欠くため却下し,その余の部分は理由があるためこれを認容すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第1部

裁判長裁判官

前澤
裁判官

実本
裁判官

豊澤達朗滋悠希
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