判例検索β > 平成31年(ワ)第9号
損害賠償請求事件
事件番号平成31(ワ)9
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和2年2月17日
裁判所名・部札幌地方裁判所  室蘭支部
判示事項の要旨原告が,地方公共団体である被告に対し,被告が,原告所有の土地上に建物を所有して無権原で占有しているとして,不法行為に基づき賃料相当損害金等の支払を求めた事案において,原告の請求は権利の濫用に当たるとの被告の主張に理由がないなどとして,原告の請求を全部認容した事例
裁判日:西暦2020-02-17
情報公開日2020-03-23 15:29:51
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文
1被告は,原告に対し,583万3807円及びうち460万3238円に対する平成31年2月9日から,
うち123万0569円に対する令和元年12月5
日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨

第2事案の概要
本件は,原告において,被告が原告所有の土地上に建物を所有し,同土地を無権原で占有している旨主張して,
被告に対し,
不法行為に基づく損害賠償として,
賃料相当損害金等583万3807円及びうち460万3238円に対する平成31年2月9日(訴状送達の日の翌日)から,うち123万0569円に対す
る令和元年12月5日(訴えの変更申立書送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1前提事実
(当事者間に争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
当事者等


原告は,昭和47年1月31日に設立された不動産の売買,賃貸,仲介等を目的とする株式会社である。原告の取締役会長であるAは,原告設立後,平成31年4月1日まで,原告の代表取締役を務め,平成19年6月以降,株式会社B(明治45年頃創業の菓子店Cを昭和39年に法人化した菓子メーカーである。B
以下
という。の代表取締役も務めている

(甲56,
証人A)



被告は,地方公共団体である。
不動産の所有及び占有関係

原告は,別紙物件目録記載1①ないし⑤の各土地(以下,併せて本件土地という。)を所有している。その取得の経過は,原告が,平成26年2月
17日,D,E及びFより,別紙物件目録記載1①,④及び⑤の各土地を合計480万円で,同日,G及びHより,別紙物件目録記載1②及び③の各土
地を合計160万円でそれぞれ購入したというものである(甲1ないし5,19,20,56,証人A)

なお,D,E,F,G及びH(以下,併せてDらという。
)は,B創業
者の親族である(甲1ないし5,18,56,証人A)


被告は,別紙物件目録記載2の建物(以下本件建物という。
)を所有し
ており,平成27年10月15日以降,本件土地を含む本件建物の敷地である苫小牧市a町b丁目c番dないし同c番e,同c番f,同c番g,同c番hないし同c番i所在の合計33筆の土地(以下,併せて本件敷地という。を占有している。

本件土地を含む本件敷地及び本件建物の位置関係は,

要旨,別紙図面記載のとおりである(乙3,4)
。原告と被告との間に本件土
地の利用に関する合意はない。
被告が本件建物の所有権を取得した経過は,
以下の

記載のとお

りである(甲6ないし9)

被告は,
平成27年10月15日,
Dらを含む共有持分権者24名より,
寄附を原因として,別紙物件目録記載2③の区分所有建物(以下本件建物③という。)の共有持分権(合計124万4447分の61万857
9)を取得した。
被告は,平成28年1月26日,Bより,寄附を原因として,本件建物③の共有持分権(124万4447分の14万9209)を取得した。
被告は,
平成28年3月1日,
株式会社サンプラザ
(以下
サンプラザ
という。より,

寄附を原因として,
別紙物件目録記載2①及び②の各区分所有建物の区分所有権並びに本件建物③の共有持分権(124万4447分の47万6659)を取得した。
被告は,平成29年2月1日,Iより,寄附を原因として,別紙物件目録記載2④の区分所有建物の区分所有権を取得した。本件に係る事実経過


本件建物は,昭和52年10月30日,多目的商業ビルとして,苫小牧駅前である本件敷地上に建設され,同敷地の所有者らは,同建物の区分所有権又は共有持分権を取得した(甲6ないし9,49の1,乙3)

サンプラザは,昭和50年12月,本件建物の運用管理を行うため,本件敷地の所有者らの出資により,設立された(乙2,38)



本件建物は,昭和52年11月,スーパーマーケットのダイエー苫小牧店を含む専門店60店舗が入店する商業施設として開業するも,
売上の低迷に
より,平成17年11月には,ダイエー苫小牧店が撤退するなどした。そこで,サンプラザは,平成18年2月,スーパーマーケットであるラル
ズを誘致し,同年3月には,上記商業施設を苫小牧駅前プラザegao
としてリニューアルオープンしたが,再び売上が低迷し,平成25年4月には,ラルズが撤退することとなり,その後もテナントの撤退が相次いだ。ウ
サンプラザは,平成26年4月,本件建物内の各テナントに対し,本件建物の閉鎖と破産申立てを行う旨通知し,同年8月30日,苫小牧駅前プラザegaoの営業を終了し,本件建物は閉鎖された。


サンプラザは,同年4月11日,札幌地方裁判所苫小牧支部に対し,破産手続開始の申立てをしたが,予納金を納付することができず,同年5月16日,同申立ては却下された(乙2)



サンプラザは,同年11月27日,札幌地方裁判所に対し,破産手続開始の申立てをし,同裁判所は,平成27年3月2日,保全管理命令を発令し,保全管理人を選任した。

被告は,同年8月頃,苫小牧駅前の大型ビルである本件建物の廃墟化を避けるため,固定資産税納付義務の免除措置を条件として,本件建物及び本件敷地の権利者らに対し,保有する権利を被告に寄附するよう要請して,権利を集約するよう努める方針を決め,権利者らとの交渉を開始した。

被告は,同年11月25日,上記保全管理人に対し,サンプラザが所有する別紙物件目録記載2①及び②の区分所有建物の区分所有権,本件建物③の共有持分権並びにサンプラザが所有する本件敷地の一部である12筆の土地等の寄附を申し入れた(乙33)

札幌地方裁判所は,
同年12月2日,
サンプラザの破産手続開始を決定し,
平成28年2月23日,
破産管財人による上記寄附を許可し
(乙39,
40)


同年3月1日,サンプラザから被告に対する上記寄附に係る移転登記手続がされた(甲6ないし8,乙2,6ないし8,10ないし14,26,29ないし31)

同年5月7日,札幌地方裁判所による破産手続廃止決定が確定し,サンプラザの破産手続が終了した(乙38)



被告は,本件建物及び本件敷地の権利者らとの交渉を継続し,平成29年2月1日までに,原告を除く権利者28名から寄附を受け,原告所有の本件土地を除いた本件敷地及び本件建物を所有するに至っている
(甲6ないし9,
乙5ないし32)


2争点及び争点に関する当事者の主張
原告の損害額(争点1)
(原告の主張)

賃料相当損害金

530万3461円

本件土地の面積は合計1070.36平方メートルであり,本件土地の賃料相当額は,本件土地近隣の土地の賃料額と比較しても,1平方メートル当たり月額100円を下らない。したがって,本件土地の賃料相当損害金は,月額10万7036円である。
被告は,平成27年10月15日から令和元年11月30日まで,本件土地の占有を継続しているから,賃料相当損害金の額は,平成27年10月15日から同年12月31日までは27万2769円,平成28年から平成30年までは各年128万4432円,平成31年1月1日から同月
17日までは5万8697円(以上,訴状請求部分),同月18日から令和元年11月30日までは111万8699円(請求拡張部分)であり,合計530万3461円(うち訴状請求部分は合計418万4762円,うち請求拡張部分は111万8699円)となる。

弁護士費用

53万0346円

原告は,被告と交渉による解決を図れないことから,弁護士に委任し,本件訴訟を提起したものであり,上記アの金額の1割相当額である53万0346円(うち訴状請求部分は41万8476円,うち請求拡張部分は11万1870円である。)は,弁護士費用として,被告の不法行為と相当因果関係がある。


合計

583万3807円

(被告の主張)
いずれも不知ないし争う。
権利濫用の成否(争点2)
(被告の主張)

以下の

の事情によれば,原告は,本件建物及び本件敷地の再開

発を行おうとする者に対し,本件土地に対する補償を要求するなどの利益を受けることを企図して,本件土地を取得したものである。
原告は,サンプラザの経営が破綻しており,破産手続による清算を行おうとする代表取締役が選任された直後に,本件土地を取得した。
原告は,本件建物が老朽化し,かつ集客力を失っていたため,その廃墟化を避けるには,サンプラザの清算の過程において,本件建物及び本件敷地の権利を集約し,本件建物を収去して,跡地の再開発を行うほかない状況にあったことを認識していた。
権利を集約して本件建物を収去しない限り,本件土地を利用できないこと,本件土地は3か所に分かれた不連続・不整形な土地であり,一体利用ができないこと,平成18年1月以降,サンプラザより賃料が支払われていなかったこと等の事情によれば,本件土地の財産的価値は極めて乏しかった。
本件建物建設時に本件建物及び本件敷地の権利者等の間で取り交わさ
れた基本協定書には,

各権利者が,その所有権,共有権を譲渡するときは,第1次的に会社に譲渡するか,若しくは斡旋を申し出ることを確認する。(第4条)「前条の斡旋によって,第3者に所有権,共有権を譲渡す


るときは,この協定並びに,これに基づく各契約の権利,義務を譲受人に承継させることを確認する。(第5条)とあり,サンプラザの同意なくし」

て共有持分権等の譲渡ができない旨規定されているところ,原告は,基本協定書の内容を当然了知しながら,これを無視して抜け駆け的な利益をもくろんで本件土地を譲り受けた。
原告は,B発祥の地にBの店舗を再建する目的で本件土地を取得した旨主張するが,本件土地は上記のとおり不連続・不整形であり,現状のまま
ではBの店舗の再建のために利用できないこと,BやB創業者の親族であるJ及びK(以下Jらという。
)は,所有していた本件敷地の一部等を
被告に寄附しており,店舗の再建とは矛盾した行動をしていること,平成26年当時,本件建物にはBがテナントとして出店し,また,本件建物の道路を挟んだ向かい側にはBの店舗が営業中であったから,
B発祥の地で

店舗を再建するために本件土地が必要ではなかったこと等からすると,原告の上記主張は,明らかに不合理である。

他方で,被告は,苫小牧駅前の大型ビルである本件建物の廃墟化を避けるため,
優れた跡地利用計画を示した者に本件建物及び本件敷地を無償譲渡するなどの方法による再開発を計画し,権利者らに対し,本件建物及び本件敷地の所有権を被告に寄附するよう要請して権利の集約に努め,公平上,被告も固定資産税等の未徴収債権を放棄することとし,それによって,原告を除
く権利者28名全員が寄附に応じ,
サンプラザの債権者もサンプラザを債務
者とする担保物権の解除に応じるなど,
苫小牧駅前地域の再生に向けて一丸
で取り組んでいる。しかるに,原告のみが本件土地の寄附を拒み,苫小牧駅前の再開発を妨げ,被告に対し,賃料相当損害金等を請求している。なお,原告は,権利者らに寄附を求める被告の方策が非現実的である旨主
張するが,現に原告を除く権利者全員が寄附に応じており,何ら非現実的な策ではない。

以上によれば,原告が被告に対し賃料相当損害金等の支払を求める本件請求は,権利の濫用に当たり,許されない。

(原告の主張)
争う。

原告が本件土地を取得した目的は,本件土地に対する補償を要求するなど何らかの利益を受けることではなく,苫小牧におけるB発祥の地を確保してBの店舗を再建するためである。すなわち,かつてBの前身であるCが
営業していたことから,本件土地一帯は苫小牧におけるB発祥の地であるところ,本件当時,原告とBの代表取締役を兼ねていたAは,平成26年1月頃,サンプラザが本件敷地のうち担保権未設定部分を無償譲渡し,本件敷地等を一括売却して固定資産税等や債務の弁済に充てる計画を立てていることを知り,このままではB発祥の地が失われると考え,Dらより本件土地を
取得したものである。
また,被告の主張アは,以下の
記載のとおり,いずれも失当で

ある。
原告は,本件土地を取得した当時,本件建物を解体することを前提として,新たな跡地利用計画を策定しない限り,本件建物の廃墟化が避けられない状況にあることを認識していなかった。原告がそのことを認識したのは,本件土地取得後である平成28年頃のことである。

たとえ本件土地が不連続・不整形の土地であっても,原告は,自身の不動産業の経験から,
土地の交換により所有地を集約することが可能である
と認識していたのであり,他方で,土地を失えば二度とB発祥の地でBを再建できなくなるのであるから,B発祥の地の確保を最優先事項としていた原告にとって,本件土地を取得したことは何ら不合理ではない。
被告より寄附を迫られたB並びにB創業者の親族であるDら及びJらは,寄附が最も自己の利益に適う部分を被告に寄附し,それ以外の部分については別の方法を採っただけである。原告が,Dらから担保物権の設定されていない本件土地を購入し,強制執行等を免れない土地を購入しなかったことも,B発祥の地でBを再建するための至極当然の行動である。
本件建物の道路を挟んだ向かい側でBの店舗が営業を開始したのは,本件土地取得後である平成27年9月であり,また,同店舗は賃借物件であるところ,賃借物件での営業は,原告の考えるB発祥の地での店舗の再建には当たらない。

被告は,権利者らから寄附を求める方針に固執しているが,寄附に応じた権利者らは各々の考えのもと寄附に応じたのであり,原告が他の権利者の考えに従わなければならない理由はない。そもそも,全ての権利者が寄付に応じると考えた被告の方針自体が非現実的な策である。


以上によれば,原告による賃料相当損害金等の請求は,権利の濫用には当たらない。なお,原告による本件請求が許されない場合,原告は,賃料相当損害金の請求ができない一方で固定資産税を支払うという不利益を継続的に負うことになるが,そうなると,原告はいずれ本件土地を寄附せざるを得なくなるのであり,これは原告の財産権を不当に侵害するものである。第3当裁判所の判断
1争点1(原告の損害額)について
賃料相当損害金


原告は,本件土地の賃料相当損害金について,面積が合計1070.36平方メートルであり,
1平方メートル当たり月額100円を下らないことか
ら,月額10万7036円を主張する。
そこで判断するに,本件土地は苫小牧駅前に位置しており,平成31年度の固定資産評価額が合計4604万7956円で,1平方メートル当たり4
万3021円であること(甲23),昭和52年当時,固定資産評価額の8パーセントを本件敷地の年額賃料としていたこと(当時,月額賃料として一坪当たり1500円,すなわち,1平方メートル当たり約454円と考えられていたこと)が窺われ(甲52),この算定方式によるとすると平成31年度の固定資産評価額に基づく本件土地の月額賃料は1平方メートル当た
り約286円となること及び本件土地が所在する苫小牧市a町又はその近隣所在の土地の原告を賃貸人とする賃貸借契約の賃料(甲27ないし50)等の事情を踏まえると,本件土地の賃料相当額は,1平方メートル当たり月額100円を下らないと認めるのが相当である。
そうすると,面積合計1070.36平方メートルである本件土地の賃料
相当損害金として,月額10万7036円を認めるのが相当である。イ
そして,被告は,平成27年10月15日,共有持分権者24名より,寄附を原因として,
本件建物③の共有持分権を取得して本件土地の占有を開始し,同日以降令和元年11月30日まで,本件土地の占有を継続しているか
ら,上記期間の賃料相当損害金の合計として,530万3461円(うち訴状請求に係る平成27年10月15日から平成31年1月17日までが合計418万4762円,うち請求拡張部分に係る同月18日から令和元年11月30日までが111万8699円)を認めるのが相当である。弁護士費用
原告は,訴訟代理人に委任して本件訴訟を追行しているところ,本件事案の難易,認容額等を考慮すると,
461円の1割相当額である53万0346円(うち訴状請求部分は41万8476円,うち請求拡張部分は11万1870円)を被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
合計

583万3807円

2争点2(権利濫用の成否)について
被告は,
原告が被告に対し賃料相当損害金等の支払を求める本件請求が権利の濫用に当たる旨主張することから,以下,検討する
前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


昭和52年10月30日に本件敷地上に本件建物が建設される以前,本件敷地上にBの店舗が存在していた(甲56,乙3,証人A。なお,Aの証言によっても,本件土地上にBの店舗が存在していたかまでは定かでない。。)
本件建物が建設される際に同店舗は解体されたが,Bは,本件建物のテナントとして出店して営業を継続した。

本件建物建設時に本件建物及び本件敷地の権利者等(Bを含む)の間で取り交わされた,同年10月31日付け基本協定書(甲24)には,

各権利者が,その所有権,共有権を譲渡するときは,第1次的に会社に譲渡するか,若しくは斡旋を申し出ることを確認する。

(第4条)

前条の斡旋によって,第3者に所有権,共有権を譲渡するときは,この協定並びに,これに基づく各契約の権利,義務を譲受人に承継させることを確認する。(第5条)と規

定されていた。

サンプラザは,売上が低迷していたことなどから,平成21年8月6日,株主説明会を開き,Bの社長としてAも出席していた。その際,サンプラザから,売上が減少して,資金難が生じていることなどの説明があり,出席者の間で,本件建物の担保提供や被告への売却等について協議がされた(乙36)



Aは,平成26年1月頃,サンプラザの当時の代表取締役が作成した㊙最終的な考え方(プラン)と題する書面を入手した(甲17,51,56,証人A)
。同書面には,

商業ビル存続を考えて,その障害となる多額な負債を処理する為に㈱サンプラザは,最終的に整理清算することを前提とする。,


権利者(株主・地権者)の土地・建物(ビル)を無償で整理(取得・担保設定)して売却しやすくする。,

また,売却は土地(敷地)と建物(ビル)の地階~2階(一部,7階及び屋上の設備部分)を収益物件として売却する。残った部分の3階~7階は最終処理までの間,㈱サンプラザが区分所有する。,

権利者(株主・地権者)から無償で取得した担保未設定分については,苫小牧市(債権者)に担保設定して東京債権(ひびきキャピタル)と一緒に競売等により売却することにより可能な限り固定資産税等や債務の弁済に充てる。及び権利者の交渉に当たっては,会社の資金繰り等の財務状況と日本政策金融公庫(旧中小公庫)の競売された実態を詳細に説明して,最悪(会社破産等)な処理を選択することしか残された方法がなく,このまま権利を所有している限り(空ビルのまま存続)が(ママ)固定資産税・修繕等の費用が権利所有者に負担として重くのしかかることになる。よって㈱サンプラザが会社として機能している間に無償でも処理することが今後の負担を考えると重要であることを誠意をもって説明説得する。などと記載されていた。

Aは,同書面から,サンプラザが,本件敷地のうち担保権未設定部分を権利者から無償で譲り受けて,本件敷地等を一括売却し,固定資産税等や債務の弁済に充てる計画を有していることを認識した(甲56,証人A)。

サンプラザは,
平成26年2月4日開催の定時株主総会
(Aも出席した。

の事業報告において,被告を含む大口債権者にサンプラザを清算する考えであることを伝えた旨報告した。なお,上記事業報告において,本件建物の解体に関する記載はなかった(乙37,証人A)


同月12日,サンプラザを破産手続により清算するため,Lがサンプラザの代表取締役に選任された(乙2,38)


原告は,本件建物の老朽化が進行しており,かつサンプラザの経営が破綻状態にあることを認識した上で,同月17日,Dらより,代金合計640万円で本件土地を取得した。本件土地の代金は,本件土地上に本件建物が存在
することなどを考慮して定められた。当時,本件土地には,本件建物③に係る固定資産税等の滞納処分を原因とする差押えがされていた(甲1ないし5,証人A)


原告は,平成27年7月31日,被告に対し,上記差押えに係る滞納分の残額である674万8300円を納付し,同年8月4日,同差押えは解除さ
れた(甲1ないし5,証人A)
。もっとも,被告は,平成28年3月17日,
原告に対し,上記納付額全額を返還した(証人A,弁論の全趣旨。被告が,原告に上記納付額全額を返還したのは,被告が,権利者から寄附を受けるに当たり,
実際の寄附日にかかわらず寄附日を平成27年1月1日時点として取り扱い,
同時点における固定資産税等の過年度の滞納分を免除する方針を

有しており,前記前提事実

記載のとおり,平成28年3月1日,サン

プラザより,
本件建物③の共有持分権の寄附を受けて本件建物③の所有権の取得が完了したことで,原告による滞納分の納付が前提を欠くこととなったためである。。


B創業者の親族であるJらは,平成27年10月15日,Bは,平成28年1月26日,それぞれ,被告に対し,所有していた本件敷地の一部等を寄附した。なお,BやJらが所有していた上記各土地には,サンプラザを債務者,
あおぞら債権回収株式会社を根抵当権者とする極度額5億円の根抵当権が設定されていた(乙21ないし24)


被告は,原告が本件土地を取得した後,原告に対し,本件土地の寄附を求めたが,原告はこれに応じていない(甲11ないし13,56,証人A)。
被告は,権利の濫用を基礎付ける事情として,原告が本件建物及び本件敷地
の再開発を行おうとする者に対し,本件土地に対する補償を要求するなどの利益を受ける目的で,本件土地を取得した旨主張する。
確かに,
被告主張のとおり,
原告は,
本件建物の老朽化が進行しており,
かつサンプラザの経営が破綻状態にあることを認識した上で,本件土地を取得している。しかし,原告がかかる認識を有していたからといって,原告が被告主張の目的で本件土地を取得したことが直ちに推認されるものではない。
また,被告は,原告が,本件土地取得の当時,本件建物及び本件敷地の
権利を集約し,本件建物を収去して,跡地の再開発を行うほかない状況にあったことを認識していた旨主張するが,原告(A)が本件土地を取得した当時に知り得た情報である上記

イ記載の株主説明会の内容や,同ウ記

載の㊙最終的な考え方(プラン)と題する書面では,本件建物の存続を前提とする計画が検討されており,その後の平成26年2月4日に開催されたサンプラザの定時株主総会の事業報告においても,本件建物の解体に関する言及がされていないこと等からすると,原告において,同月17日の本件土地取得の当時,本件建物を収去して,跡地の再開発を行うほかない状況にあったと認識していたとは認められない。
被告は,本件土地の財産的価値が極めて乏しかったことや原告が本件建
物及び本件敷地の権利者等の間で取り交わされた基本協定書(甲24)を無視して抜け駆け的に本件土地を譲り受けたとも主張するが,
るとおり,原告は,本件土地を取得した目的についてB発祥の地にBの店舗を再建するためであると説明しているし,また,上記協定書は本件建物建設時である昭和52年に作成されたものであり,
Aは同協定書の内容を
知らなかった旨証言しており,他に,Aが同協定書の内容を了知した上で本件土地を取得したと認めるに足りる証拠はない。

そして,原告は,サンプラザが,本件敷地のうち担保権未設定部分を権利者から無償で譲り受けて,本件敷地等を一括売却して弁済に充てる計画を有していることを知り,B発祥の地が失われると考え,B発祥の地にBの店舗を再建する目的で,本件土地を取得した旨主張し,Aもその旨陳述(甲56)ないし証言しているところ,そのような目的で原告が本件土地
を取得することが不自然,不合理ということはできないし,被告が及び

主張する事情は,
いずれも原告がBの店舗を再建する目的で本件

土地を購入したことと矛盾するものとはいえないから,
かかる点からして
も,被告主張の目的の存在を直ちに推認できない。

被告は,本件土地は不連続・不整形でありBの店舗の再建に利用できないこと,BやB創業者の親族であるJらが,所有していた本件敷地の一部等を被告に寄附しており,店舗の再建と矛盾した行動をしていること,平成26年当時,本件建物にBがテナントとして出店し,また,本件建物の道路を挟んだ向かい側にBの店舗が営業中であったからこと等から,
原告がB発祥の

地にBの店舗を再建する目的で本件土地を取得した旨の主張が不合理であるとも主張する。
しかし,①本件建物が建設される以前,本件敷地上にBの店舗が存在していたこと,②本件土地は不連続・不整形な土地ではあるが,別紙物件目録記載1①の土地は面積が701.08平方メートルと広く,それだけでも店舗
の設置に利用することができ(証人A)
,本件土地のうちその他の土地につ
いても土地の交換により所有地を一か所に集約できる可能性があること,③BやJらが所有していた本件敷地の一部等を被告に寄附したのは,同土地にサンプラザを債務者とする極度額5億円の根抵当権が設定されており,権利を保持できる可能性が低かったためであると考えられ,
同様の理由で原告が
BやJらから土地の所有権を取得しなかったことも合理性があること(甲56,証人A)及び④本件建物の道路を挟んだ向かい側でBの店舗が営業を開
始したのは本件土地取得後である平成27年9月以降であり,また,上記店舗は土地建物を賃借したものと認められるから(甲55)
,Bの店舗の再建
のために本件土地が必要でなかったとまではいえないこと等からすると,原告の上記主張が不合理とまではいえない(なお,原告及びAは,本件土地取得の経緯について,DらはB創業者の親族ではあるが,Bの経営には無関心
であり,
被告の説得に応じて本件土地を寄附してしまうことが危惧されていたところ,
Bが本件土地を取得するにはBの資金繰りの問題やBのイメージ
を損なうおそれがあったため,関連会社で,Aが経営する原告が取得することになった旨説明するが,これらの説明が不合理であるともいえない。。)

その他,原告が,本件土地の取得の際,本件建物及び本件敷地の再開発を行おうとする者に対し,本件土地に対する補償を要求するなどの利益を受ける目的を有していたと認めるに足りる証拠はないから,
かかる目的を認める
ことはできない。そして,原告が,B発祥の地にBの店舗を再建する目的で本件土地を取得したのであれば,それは社会的に許容されるべき経済活動の
範囲内といえるから,権利の濫用を基礎付ける事情とは評価できない。被告は,他の権利の濫用を基礎付ける事情として,本件建物及び本件敷地の原告以外の所有者全員が被告への寄附に応じているにもかかわらず,原告のみが寄附に応じず,苫小牧駅前の再開発を妨げていると主張する。
しかし,
被告が原告に本件土地の寄附を求める目的が苫小牧駅前の大型ビル
である本件建物の廃墟化を避けるという点にあるとしても,原告に本件土地の寄附に応じる義務はなく,原告が本件土地の寄附に応じないことをもって直ちに本件請求が権利の濫用であると評価することはできない。
また,Jら(Jらが寄附に応じた理由は,上記

のとおりである。)を除く

本件敷地の他の権利者らは,本件建物③の共有持分権者として,サンプラザとともに本件建物③の固定資産税等の連帯納税義務を負っており(地方税法10条の2),その免除を受けられることと引換えに寄附に応じたことが窺われる(Jらを除く本件敷地の所有者の所有する本件敷地の一部には,被告を抵当権者とする換価猶予の抵当権が設定されているか,又は滞納処分による差押えがされていた。その他にも,根抵当権が設定されているなど権利者において権利を保持できる可能性が低かったことが窺われ〔乙6ないし20,24ないし3
2〕,㊙最終的な考え方(プラン)と題する書面〔甲17,51〕でも,権利者が無償であっても権利を手放すことが得策であったことが示唆されている。)。他方,原告は,本件土地の取得後,本件建物③の固定資産税等の滞納分全額である674万8300円を納付して被告から本件土地に対する差押えの解除を受けており(ただし,その後,上記納付額全額が原告に返還され
た。),現時点において本件土地には何らの権利上の負担がない状態であること及び原告が本件土地の代金としてDらに合計640万円を支払ったこと等からすると,寄附に応じた他の権利者とは状況が異なっているといえる。加えて,原告が,被告と異なる考えのもと,本件建物及び本件敷地の再開発に協力する意向を有していることに照らしても(甲56,証人A),原告において被
告が求める本件土地の寄附に応じないことが不当であるとはいえない。なお,Aは,本件訴訟を提起して被告に賃料相当損害金等を請求したことについて,被告に揺さぶりをかける目的である旨証言しているものの,その意味するところについて,Aは被告に本件建物及び本件敷地の再開発に関心を持ってもらいたいということである旨説明しており,そのような目的での権利行使
が直ちに不当であるとはいえない。かえって,原告は,本件土地の取得後,被告に本件土地の固定資産税の納付を続けており(甲56,証人A),本件土地の所有者として被告に対する賃料相当損害金等の請求ができないとすれば,原告の受ける不利益は小さくないといえる。
その他,本件に現れた一切の事情を総合勘案しても,原告の被告に対する賃料相当損害金等の支払を求める本件請求が権利の濫用に当たると評価すべき事情を認めることはできない。
以上によれば,
原告による本件請求が権利の濫用に当たる旨の被告の主張は
理由がない。
3まとめ
よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,583万3
807円及びうち460万3238円に対する平成31年2月9日(訴状送達の日の翌日)から,うち123万0569円に対する令和元年12月5日(訴えの変更申立書送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ,原告の請求は理由がある。第4結論

以上の次第で,原告の被告に対する本件請求は理由があるからこれを認容し,仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所室蘭支部

裁判長裁判官


裁判官

原原学彰一
裁判官

(別紙物件目録及び図面省略)

内田健太
トップに戻る

saiban.in