判例検索β > 平成29年(ワ)第27238号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)27238
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日令和2年2月28日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-02-28
情報公開日2020-03-23 15:30:30
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令和2年2月28日判決言渡

同日原本交付

平成29年(ワ)第27238号

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日令和元年12月6日
判決原告
日亜化学工業株式会社

上記訴訟代理人弁護士

知彦加治梓子
上記訴訟代理人弁理士

鮫島睦同田村啓同山尾憲同野同牧玄番佐被告人奈恵
東芝映像ソリューション株式会社

上記訴訟代理人弁護士

島正洋同小栗久典同鮫上山
上記訴訟代理人弁理士

片山主浩健一文
1被告は,原告に対し,1795万6641円及びこれに対する平成29年8月29日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,
別紙物件目録記載の製品を生産し,
譲渡し,
輸入し,
譲渡の申出をし,
または輸出をしてはならない。
2被告は,その占有にかかる前項記載の製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,1億3200万円及びこれに対する平成29年8月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,発明の名称を発光装置と表示装置とする特許権(特許第5177317号。以下,
本件特許権1といい,この特許を本件特許1といい,そ
の特許出願の願書に添付されたとみなされる明細書及び図面を本件明細書1
という。,発明の名称を発光装置,樹脂パッケージ,樹脂成形体並びにこれら)の製造方法とする特許権(特許第6056934号。以下,本件特許権2と
いい,この特許を本件特許2といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を本件明細書2という。
)及び発明の名称を発光装置,樹脂パッケージ,樹脂成形体並びにこれらの製造方法とする特許権(特許第58253
90号。以下,
本件特許権3といい,この特許を本件特許3といい,その
特許出願の願書に添付された明細書及び図面を
本件明細書3
という。の特許

権者である原告が,被告の販売等に係る別紙物件目録記載のテレビ(以下,同目録記載1の製品を被告製品1
,同目録記載2の製品を被告製品2といい,
被告製品1と被告製品2を
被告製品
と総称する。に搭載されていたLEDは


本件特許1の請求項1の発明の技術的範囲及び本件特許3の請求項2の発明の技術的範囲に属するものであり,上記LEDの製造方法は本件特許2の請求項1の発明の技術的範囲に属するものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき被告製品の生産,譲渡等の差止め及び被告製品の廃棄を求めるとともに,民法709条に基づき損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提事実
(当事者間に争いがない事実及び後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
原告は,半導体及びその関連材料,部品等の製造,販売等を業とする株式会社である。
被告は,テレビ及びその周辺機器や業務用ディスプレイ等の開発,設計,製
造,販売等を業とする株式会社である。被告は,平成28年6月30日,吸収分割により,
東芝ライフスタイル株式会社のテレビ等を扱う映像事業を包括承
継した。
原告は,
以下の本件特許権1,
本件特許権2及び本件特許権3を有している。

本件特許権1(甲2,14)
特許番号

第5177317号

原出願日

平成9年7月29日(特願2008-269号の分割)

出願日

平成24年8月29日(特願2012-189084号)

優先権主張番号

特願平8-198585号

優先日(第1優先日)
優先権主張国
優先権主張番号

日本国
特願平8-244339号

優先日(第2優先日)
優先権主張国
優先権主張番号
平成8年9月17日

日本国
特願平8-245381号

優先日(第3優先日)
優先権主張国

平成8年7月29日

平成8年9月18日

日本国
公開日
登録日

平成25年1月18日

発明の名称

平成24年11月22日(特開2012-231190号)

発光装置と表示装置

本件特許権2(甲5,15)
特許番号

平成20年9月3日(特願2014-81908号の分割)

出願日

平成27年10月9日(特願2015-200794号)

公開日

平成28年3月3日(特開2016-29732号)

登録日

平成28年12月16日

発明の名称

第6056934号

原出願日

発光装置,樹脂パッケージ,樹脂成形体並びにこれらの製
造方法


本件特許権3(甲17,18)
特許番号
原出願日

平成20年9月3日(特願2013-44799の分割)

出願日

平成26年4月11日(特願2014-81908号)

公開日

平成26年8月14日(特開2014-146836号)

登録日

平成27年10月23日

発明の名称

第5825390号

発光装置,樹脂パッケージ,樹脂成形体並びにこれらの製
造方法

本件特許権1


原告は,平成29年8月,本件特許1の明細書及び特許請求の範囲について訂正審判の請求をして,
同年11月28日,
訂正を認める旨の審決がされ,
同審決は確定した。
(甲3,23,弁論の全趣旨)
訂正後の本件特許1の請求項1の記載は以下のとおりである(以下,同請
求項に記載された発明を本件発明1という。。

白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオード。イ
本件発明1を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,分説された各構成を構成要件1A又は1Aなどと表記することがある。他の発明についても同様である。。


1A

白色系を発光する発光ダイオードであって,

1B

該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,
1C

前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲
にあるLEDチップと,
1D

該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,
吸収した光
の波長よりも長波長の光を発光する,

1E

Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,
Al及
びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む,

1F

ことを特徴とする発光ダイオード。

本件特許権2

原告は,平成30年4月,本件特許2の特許請求の範囲について訂正審判の請求をして,同年8月30日,訂正を認める旨の審決がされ,同審決は確定した(甲31の1及び2,甲45,弁論の全趣旨)
。訂正後の本件特許2の

請求項1の記載は以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を本件発明2という。。

リード及び樹脂部を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって,リードフレームと,光反射性物質を含有する樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ,前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており,前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している,樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程と,を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

本件発明2を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
2A

リード及び樹脂部を有し,
上側から見た外形が略四角形で4つの外側
面を有する発光装置の製造方法であって,

2B-1
リードフレームと,光反射性物質を含有する樹脂成形体と,を有

する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,
2B-2

前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けら

れ,
2B-3

前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分

割されて露出されており,
2B-4

前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれ

にも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
2B-5

且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフ

レームが露出している,
2B-6

樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,

2C
2D

前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,
2E

分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リ
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,

ードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程と,
2F

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

本件特許権3

本件特許3の請求項1及び2の記載は,以下のとおりである(以下,本件特許3の請求項2に記載された発明を本件訂正前発明3という。。)
請求項1

切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれた光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂と,を備える樹脂パッケージを有し,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成されており,前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,前記内底面に発光素子が配置されており,前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されており,前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており,前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されていることを特徴とする発光装置。請求項2

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなる請求項1に記載の発光装置。


本件訂正前発明3を構成要件に分説すると,以下のとおりである。3A

切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれた光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂と,を備える樹脂パッケージを有し,
3B

前記切り欠き部は,
前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成されて
おり,

3C

前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,

3D

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,

3E

前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されており,
3F

前記樹脂パッケージの外側面において,
前記樹脂部と前記リードとが

同一面に形成されており,
3G
3H
ことを特徴とする発光装置。


前記リードは,
前記樹脂パッケージの外底面において露出されている

訴外エヴァーライト・エレクトロニクス・カンパニー・リミテッドは,平成29年5月9日,本件特許権3についての無効審判(無効2017-800061)を請求し,原告は,上記無効審判において特許請求の範囲についての訂正請求をした(以下本件訂正請求という。。

原告は,本件訴訟において,後記

る被告の主張に対して訂正の対抗主張をしており,そこにおいて,本件訂正請求における訂正と同内容の訂正をした発明に基づく主張をしている。本件訂正請求に係る請求項2の記載であり,原告が訂正の対抗主張において主張する発明は,以下のとおりである(以下,この発明を本件訂正後発明3という。。)(甲16,28ないし30)

切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれるとともに前記リードの上方に一体に形成された,光反射性物質として酸化チタンが含有される熱硬化性樹脂からなる樹脂部と,を備え,互いに対向する位置にある第1外側面及び第2外側面と,互いに対向する位置にある第3外側面及び第4外側面とを有する,上面視で矩形の樹脂パッケージを有し,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しており,前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材が配置された発光装置であって,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されており,前記リードは,金属板に銀メッキ処理が施されてなり,前記樹脂パッケージの外底面において露出されて,前記金属板の少なくとも上面全面に銀メッキ処理が施されている一方,前記樹脂パッケージの外側面において前記金属板が露出しており,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第3外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第4外側面それぞれに露出した第2リードを有し,前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられていることを特徴とする発光装置。エ
本件訂正後発明3を構成要件に分説すると,以下のとおりである。3A’切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれるとともに前記リードの上方に一体に形成された,
光反射性物質として酸化チ
タンが含有される熱硬化性樹脂からなる樹脂部と,を備え,互いに対向する位置にある第1外側面及び第2外側面と,
互いに対向する位置にあ
る第3外側面及び第4外側面とを有する,
上面視で矩形の樹脂パッケー
ジを有し,
3B’前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,
前記第1外側面に沿っ
て形成された第1の切り欠き部と,
前記第2外側面に沿って形成された

第2の切り欠き部と,
前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠
き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しており,
3C’前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,

3D’前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,
3E’前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材が配置された発光装置であって,3F’

前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,
前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,
前記リードの上方に形成
された前記樹脂部と,
前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に
形成されており,
3G’前記リードは,金属板に銀メッキ処理が施されてなり,前記樹脂パッケージの外底面において露出されて,
前記金属板の少なくとも上面全

面に銀メッキ処理が施されている一方,
前記樹脂パッケージの外側面に
おいて前記金属板が露出しており,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第3外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第4外側面それぞれに露出した第2リードを有し,
3H’前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられている

3I’

ことを特徴とする発光装置。

東芝ライフスタイル株式会社は平成26年1月から被告製品1を,平成27年5月から被告製品2を,それぞれ輸入し,譲渡し,譲渡の申出を行った。なお,被告製品は,被告又は東芝ライフスタイル株式会社ではなく,海外のメーカーが設計,製造等したものであった。
被告製品1の販売は遅くとも平成28年3月に終了し,被告製品2の販売は遅くとも平成28年12月に終了した(被告製品2につき,乙87)。なお,前

のテレビ等を扱う映像事業を包括承継した。
被告製品には,1台につき24個の発光ダイオード(LED)が搭載されて
いた(以下,被告製品1に搭載されているLEDをイ号LEDといい,被告製品2に搭載されているLEDをロ号LEDといい,イ号LEDとロ号LEDを本件LEDと総称する。。

3争点
本件LEDが本件発明1の技術的範囲に属するか否か(争点1)


白色系を発光する発光ダイオードであって
(構成要件1A)の充足性
(争点1-1)

イY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む(構成要件1E)
の充足性
(争
点1-2)
本件LEDの製造方法が本件発明2の技術的範囲に属するか否か(争点2)ア光反射性物質を含有する樹脂成形体
(構成要件2B-1)の充足性(争
点2-1)
イ前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断する(構成要件

2E)の充足性(争点2-2)
前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるようにの充足性について(争点2-2-1)前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程の充足性について(争点2-2-2)
本件LEDが本件訂正前発明3の技術的範囲に属するか否か(争点3)ア
切り欠き部
(構成要件3A,3B)の充足性(争点3-1)

イ前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)の充足性(争点3-2)

前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている
(構成要件3G)の充足性(争点3-3)
本件発明1に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)

無効理由1(サポート要件違反1)
(争点4-1)


無効理由2-1(特開平7-176794号公報(以下乙1公報という。
)を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-2)


無効理由2-2(特開平5-152609号公報(以下乙3公報という。
)を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-3)


無効理由3(サポート要件違反2)
(争点4-4)


無効理由4(周知技術を理由とする進歩性欠如)
(争点4-5)
本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点5)
なお,被告は,本件発明2に係る無効理由6として,特開2004-111964号公報を主引例とする進歩性欠如を主張していたが,当該主張を撤回した。

無効理由1(サポート要件違反)
(争点5-1)


無効理由2(特願2007-63698号(特開2008-227166号)
(以下乙11公報という。
)の拡大先願との同一)
(争点5-2)


無効理由3(米国公開公報US2007/0126020号(以下乙47公報という。)を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-3)


無効理由4(特開2001-36154号公報(以下乙48公報という。
)を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-4)


無効理由5(特開2004-128424号公報(以下乙49公報という。
)を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-5)
本件訂正前発明3に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきもの
か(争点6)
なお,被告は,本件訂正前発明3に係る無効理由4として特開2009-283883号公報の拡大先願との同一,無効理由8として特開2003-218398号公報を主引例とする進歩性欠如,無効理由9として特開2004-111064号公報を主引例とする進歩性欠如をそれぞれ主張していたが,当
該主張をいずれも撤回した。

無効理由1(明確性要件違反,サポート要件違反1)
(争点6-1)


無効理由2-1(乙11公報の拡大先願との同一)
(争点6-2)


無効理由2-2
(特開2006-156704号公報
(以下
乙16公報
という。
)を主引例とする新規性・進歩性欠如)
(争点6-3)


無効理由3(明確性要件違反,サポート要件違反2)
(争点6-4)


無効理由5(特開2010-062272号公報(以下乙53公報という。
)を主引例とする進歩性欠如)
(争点6-5)

無効理由6(特開2007-235085号公報(以下乙17公報という。
)を主引例とする進歩性欠如1)
(争点6-6)


無効理由7(乙17公報を主引例とする進歩性欠如2)
(争点6-7)
本件訂正前発明3についての訂正の対抗主張の成否(争点7)


訂正要件の具備(争点7-1)


無効理由の解消の有無
なお,被告は,本件訂正後発明3と乙11公報に記載された発明が同一ではないこと及び本件訂正後発明3と乙16公報に記載された発明が同一ではないことについては争わないと述べ,本件訂正後発明3については,本件
訂正前発明3の無効理由1,
無効理由2-2
(ただし,
進歩性欠如に限る。,

無効理由3,無効理由5,無効理由6,無効理由7を解消していないと主張する。
無効理由1(明確性要件違反,サポート要件違反1)の解消(争点7-2)

無効理由2-2
(乙16公報を主引例とする進歩性欠如)の解消
(争点7
-3)
無効理由3(明確性要件違反,サポート要件違反2)の解消(争点7-4)
無効理由5(乙53公報を主引例とする進歩性欠如)の解消(争点7-
5)
無効理由6(乙17公報を主引例とする進歩性欠如1)の解消(争点7-6)
無効理由7(乙17公報を主引例とする進歩性欠如2)の解消(争点7-7)


本件LEDが本件訂正後発明3の技術的範囲に属するか否か
切り欠き部
(構成要件3A’
,3B’
)の充足性(争点7-8)
光反射性物質として酸化チタンが含有される
(構成要件3A’
)の充
足性(争点7-9)
シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材
(構成
要件3E’
)の充足性(争点7-10)

前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されて(構成要件3F’)の充足性(争点7-11)前記リードは…前記樹脂パッケージの外底面において露出されて
(構
成要件3G’
)の充足性(争点7-12)

損害発生の有無及びその額(争点8)
4争点に関する当事者の主張
本件LEDが本件発明1の技術的範囲に属するか否か(争点1)

白色系
(構成要件1A)の充足性(争点1-1)
(原告の主張)
報告書(以下,甲9号証の報告書を甲9報告書といい,甲10号証の報告書を甲10報告書という。また,甲9報告書と甲10報告書を原告分析結果報告書を総称する。)に掲載されている写真等(図2(1)-5
の写真,図2(1)-22のスペクトル)によれば,本件LEDは現に白色
系に発光している。
また,
イ号LEDの色度点は
(x=0.
274,
y=0.
238)
であり,ロ号LEDの色度点は(x=0.271,y=0.236)であり,本件明細書1の図16に照らし,本件LEDが白色系であることは明らかである。
被告の関連会社(株式会社東芝等)は,平成21年に,液晶テレビレグザシリーズ(なお,被告製品の名称もレグザである。
)について液晶テレビのLEDバックライトは,RGB3色LEDではなく,白色LEDがトレンドになると述べ,バックライトとして白色LEDを使用していると公表していた。
(被告の主張)
原告分析結果報告書にはLEDが白色に見える色で光っている写真が掲載されている。しかし,近時のデジタルカメラにおいては,全ての機種にホワイトバランスを調整する機能が備わっており,
カメラに内蔵されたソフト
ウェアが自動的に色調を調整し,
白色に補正する。
原告分析結果報告書には,
写真の撮影条件に関する記載がないから,
原告分析結果報告書を根拠として
本件LEDが白色系であると判断することはできない。
また,原告が指摘する被告の関連会社の公表は,レグザシリーズに一般的
な意味での白色LEDが使用されることになる旨を公表したにとどまる。イY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む(構成要件1E)
の充足性
(争
点1-2)
(原告の主張)
原告分析結果報告書におけるY2.85Ce0.15Al5O12の比較サンプルは,外部機関(MST)によるXRD分析によればCeが添加されたYAl5O12の結晶性ピークと良好な一致を示しているから,
イットリウム・

3
アルミニウム・ガーネット
(Yttrium

Aluminum

Garn

et:YAG)と称されるガーネット構造の結晶性物質である。
そして,本件LEDの蛍光体はO,Y,Al,Ceを含有し,かつ,上記の比較サンプルとラマンスペクトルが一致しているのであるから,本件LE
Dの蛍光体は,Alを含むCeで付活されたガーネット系蛍光体である。Y,
被告は,
被告が実施したEPMA分析の結果によれば,
イ号LEDの蛍光
体には炭素が含有されていると主張する。
しかし,
EPMA分析では試料表
面に付着した真空ポンプなどの油分子等が電子線照射により炭化されることなどによりコンタミネーションとして炭素が検出されることは技術常識である。
仮に,
コンタミネーションとはいえない量の炭素が含まれていれば
蛍光体の波長に有意な変化が生じるところ,
イ号LEDの波長は550nm
付近をピークとする通常のYAG系蛍光体の波長である。
また,
ガーネット
系蛍光体は現在の白色系LED分野では周知の蛍光体となっているが,その
ような用途に使用される蛍光体として,
炭素を蛍光体の組成として含有する
ガーネット系蛍光体は知られていない。
これらによれば,
イ号LEDの蛍光
体を構成する元素として炭素が含有されているとはいえない。

(被告の主張)
構成要件1Eにおいて,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体に含まれ得る元素として列挙されていない元素は,
原告が意識的に除外した元素で
ある。
したがって,
構成要件1Eに規定されるガーネット系蛍光体とは,
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素以外の元素は含まない蛍光体と解すべきものであり,それがY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素以外の元素を含む組成の場合には,構成要件1Eは充足しない。被告製品1についてのEPMA分析の結果,イ号LEDの蛍光体には,少
なくとも,Y,Al,Ga,Ce,O及びC(炭素)が元素として含有されている。したがって,イ号LEDの蛍光体はY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素以外の元素であるC(炭素)を含んでいるから,イ号LEDは構成要件1Eを充足しない。

本件LEDの製造方法が本件発明2の技術的範囲に属するか否か(争点2)ア光反射性物質を含有する樹脂成形体
(構成要件2B-1)の充足性(争
点2-1)
(原告の主張)
被告LEDの樹脂部に含有された粒子は,Ti,Oを含有し,かつ,酸化チタンの比較サンプルとラマンスペクトルが一致しているのであるから,酸化チタンであることは明らかである。そして,酸化チタンは光反射性物質である。したがって,本件LEDの樹脂部は光反射性物質を含有する。(被告の主張)
原告分析結果報告書の比較サンプルに酸化チタンが含まれていたとしても,当該比較サンプルには他の物質も含まれているはずであり,その物質の
スペクトルが表れている可能性もある。原告は,原告分析結果報告書の比較サンプルに酸化チタンが含有されていることについて客観的根拠を提出していないから,
当該比較サンプルに酸化チタンが含有されていることの証明
はされていない。
イ前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程(構成要件2E)の充足性(争点2-2)
前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるようにの充足性について(争点2-2-1)(原告の主張)

本件発明2における
リード本件明細書2に
は,

本明細書において,個片化された後の発光装置には,リード,樹脂部,樹脂パッケージなる用語を用い,個片化される前の段階では,リードフレーム,樹脂成形体なる用語を用いる。(

【0013】)と記載されているとおり個片化する前にリ
ードフレームであった部材である。

本件LEDについて,原告分析結果報告書の写真(図2(1)-11)の黒色の領域と灰色の領域は,
いずれも個片化する前にリードフレームで
あった部材であるから,
リードに該当する。
(被告の主張)
原告は,原告分析結果報告書の写真(図2(1)-11)における,①上面方向からの透過X線像中に相対的に濃く(黒く)示されている大きな領域として示される箇所(金属の相対的に厚い部分)と,②同図において上記①の領域の外周に相対的に薄く灰色領域として示されている箇所(金属の相対的に薄い部分)
がともに
リード
に該当すると主張しているが,
上記②の部分がリードと認定できる根拠は示されていない。特開2016-136648号公報(乙23)の記載に照らせば,本件
発明2におけるリードとは端子部とされている部分であり,上記
②の部分は端子部とは明らかに異なる部位である連結部に相当する部分であるから,上記②の部分はリードではなく連結部と認定されるべき部分である。特開2014-199871号公報(乙69)の記載に照らしても,個片化する前にリードフレームであった部材であれば,そ
れだけで直ちにリード部に該当するとはいえない。リードフレームは,リード部と,リード部とは異なる部位である連結片を備えているものであると認識されている。
したがって,原告がリードとして主張している部分は,
リードで
はなく連結片(連結部)であり,分離後の本件LEDの外側面において
略同一面を形成しているのは,
連結片(連結部)と樹脂部であって,
リードと樹脂部ではない。したがって,本件LEDの製造方法は構成要件2Eを充足しない。
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程の充足性について(争点2-2-2)
(原告の主張)
樹脂成形体の端面を形成する方法には,切断する方法と金型成型(個別封止)する方法があるところ,切断した場合の端面の形状と金型成形(個別封止)の場合の端面の形状は明らかに異なるものであり,本件LEDの外側面のSEM像には樹脂成形体に含まれるフィラーと考えられる略円形状の陰影があることからすると,それが切断する方法によって形成されたことは明らかである。

(被告の主張)
本件LEDの外側面のSEM像に略円形状の陰影があるとしても,それが樹脂成形体に含まれるフィラーであるといえる根拠は示されていない。本件LEDの略円形状の陰影は,大きさにばらつきがあるから,気体による空洞が外側面にあらわれた可能性もある。

本件LEDが本件訂正前発明3の技術的範囲に属するか否か(争点3)ア
切り欠き部
(構成要件3A,3B)の充足性(争点3-1)
(原告の主張)
甲10報告書(甲10)の写真(図2(1)-9,11)によれば,,本件
LEDにおいて切り欠き部に該当する箇所が認められる。

(被告の主張)
原告分析結果報告書に示された写真(図2(1)-11及び9)では,切り欠き部や樹脂部が埋め込まれている箇所が具体的に示されていないから,本件LEDに切り欠き部が存在しているとは認められない。イ
構成要件3F前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)の充足性(争点3-
2)
(原告の主張)
争点2-2-1(構成要件2E)における原告の主張と同じ。

(被告の主張)
争点2-2-1(構成要件2E)における被告の主張と同じ。

前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている
(構成要件3G)の充足性(争点3-3)
(原告の主張)
外底面において露出とは,発光装置のみを取り出した場合にリードがパッケージの外底面から露出しているという意味であり,本件LEDでは,
リードはパッケージの外面から露出している。
被告は剥離されたような形跡があることを指摘するが,これは本件LEDをテレビから剥離した際に生じたものであり,
本件LEDのみを取り出した
場合に外底面のリードを何らかの部材が覆っていたことを示すものではない。

(被告の主張)
原告分析結果報告書の写真(図2(1)-10)では,本件LEDの裏面に剥離されたような形跡が認められるから,当該部分は剥離前の状態では何らかの部材で覆われていて,
本件LEDの底面にリードと主張される部分は
露出していなかった。したがって,本件LEDは,
前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されているとは認められない。本件発明1に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)

無効理由1(サポート要件違反1)
(争点4-1)
(被告の主張)
本件明細書1の【0010】では,

本願発明は上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。

と記載されており,
高輝度であることも本件発明が解決しようとする課題として挙げら
れている。
本件明細書1の【表1】によれば,一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceにおいて,Gaの含有量が増えるにしたがって輝度が減少することがわかる。本件明細書1の【0054】には,
発光効率と発光波長とを考慮して,Ga:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましいとも記載されている。本件明細書1の実施例において,蛍光体に含まれる元素として,一般式(Al1-bGab)ではAlのみか,又は(Al+Ga)の組み合わせしか記載されておらず,Gaのみの場合は開示されていない。
本件発明1の構成要件1Eでは,
Y+GaGd+Ga及び,(Y+Gd)+Gaの組み合わせの元素を含むガーネット系蛍光体が,本件発明
1に含まれることとなるが,本件明細書1の記載に接した当業者は,AlをGaに100パーセント置換した場合には,輝度が著しく低下するため,本件発明の高輝度という課題を解決することができないと認識する。そうであるにもかかわらず,
本件発明1は,
Y+Ga

Gd+Ga
及び(Y
+Gd)+Gaの組み合わせの元素を含むガーネット系蛍光体を含むもの
であり,本件発明1は,サポート要件違反の無効理由を有する。
原告は,本件明細書1の【0010】の高輝度は,YAG系蛍光体以外の蛍光体とYAG系蛍光体を比較した場合に,他の蛍光体を使用するよりも長時間の使用において高輝度を維持する発光装置が得られることを意味すると主張する。しかし,YAG系蛍光体の変換効率や耐久性などが,YA
G系蛍光体以外の他の蛍光体と比較して優れていることは,
本件特許権1の
第1優先日当時の当業者にとって技術常識であったから,原告の主張は相当でない。
(原告の主張)
本件明細書1の【0010】の高輝度は,被告が主張するようなYA
G系蛍光体同士を比較してより高輝度という意味ではなく,YAG系蛍光体以外の蛍光体とYAG系蛍光体を比較した場合,
YAG系蛍光体の優れ
た変換効率や耐久性などから,他の蛍光体を使用するよりも,長時間の使用において高輝度を維持する発光装置が得られることを意味する。
本件発明1は,そのような目的を踏まえ,GaN系の高輝度発光素子を使用したうえで,
本件明細書1の
【0011】【0045】

に記載のとおり,
YAG系蛍光体が所望の励起光によって効率よく発光する蛍光体であるこ
とのみならず,
発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合でも,
特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れているとの特性を有することに着目し,これを組みわせた発光装置とすることで,長期間の使用においても高輝度を維持できる発光ダイオードを実現したものである。
以上のとおり,本件発明1は,YAG系蛍光体以外の蛍光体とYAG系蛍
光体の比較において,長時間使用しても高輝度な発光を維持できる発光ダイオードを得ることを目的とするものであり,当該目的は,変換効率が高く,他の蛍光体と比べて耐久性・耐熱性に優れたYAG系蛍光体(被告が指摘するY+GaGd+Ga,,(Y+Gd)+Gaを含むもの)を使用することによって達成可能であることは,当業者が当然に理解する。本件
明細書1において,YAG系蛍光体の中からさらに輝度が高いものだけを選択することは記載されていないし,
YとAlを必ず含む蛍光体でなければ上
記特性を有しないとの限定はない。
したがって,
本件発明1がサポート要件違反であるとの被告の主張には理
由がない。


無効理由2-1(乙1公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-2)
(被告の主張)
乙1公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を被告乙1発明という。。)

被告1a1

白色系を発光する光源であって,

被告1b1

当該光源は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,
被告1c1

前記発光層の発光スペクトルのピークが480nmにある

LEDチップと,
被告1d1

当該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,

吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,
被告1e1

赤色及び緑色蛍光顔料,
又は,
黄色及び橙色蛍光染料を含む,

被告1f1

ことを特徴とする光源。

本件発明1と被告乙1発明を対比すると,両者は,
白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する蛍光体とを含むことを特徴とする発光ダイオードという点で一致する。他方,本件発明1では,蛍光体としてY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を用いているのに対し,被告乙1発明では,蛍光体がセリウムで付活されたYAG系蛍光体に限定されていない点で相違する。
上記相違点について,第1優先日(平成8年7月29日)前の昭和47年10月17日に公開された,
発明の名称を
DISPLAYSYSTEM

とする米国特許3699478号公報(以下乙2公報という。
)では,青
色光の

アルゴンイオンレーザを用いて作られる像は,青及び黒色である。

という欠点を解消し,白色光による黒白像を得るために,発光元からの発光スペクトルのピーク波長が488nmである青色光に対して,セリウムで付活されたY3Al5O12のように,Y及びAlの元素を含むセリウムで
付活されたガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)を用いることで,発光元からの青色光の一部と青色光により励起された蛍光体から発光される緑色,黄色,赤色の波長成分を含む光を組み合わせることによって,白色光を得る技術を用いることが開示されている。また,セリウムで付活されたYAG系蛍光体が青色発光を吸収して励起されて発する光のスペクトルが緑色,黄色,赤色にかけて広い波長成分を有すること,青色成分の波長を有する種々の光源に対して,緑色,黄色,赤色にかけての波長を補うためにY3Al5O12:Ceを含む,
セリウムで付活されたYAG系蛍光体を組み合わせて用いるこ
とは,第1優先日前から当業者にとって技術常識であった。
そして,被告乙1発明は,LEDからのピーク発光波長が480nmである青色の光と,
蛍光物質から発光される赤色光と緑色光又は黄色光と橙色光

を組み合わせて白色光を得るものであるところ,赤色光と緑色光が同量混ざると黄色光となり,赤色光成分が多いと橙色光となることからすれば,被告乙1発明における蛍光物資(赤色蛍光顔料及び緑色蛍光顔料又は黄色蛍光染料及び橙色蛍光染料が混合されているもの)が出す光と,セリウムで付活されたYAG系蛍光体が出す光は同じ色調ということになる。

そうすると,被告乙1発明における蛍光体に代えて,乙2公報に記載された青色光で励起されるセリウム付活YAG系蛍光体(例えばY3Al5O12:Ce)を用いることは,480nm付近にピーク波長を持つ青色光により励起されて発光する蛍光体として,同種機能を有する周知の材料の単なる置き換えに過ぎない。セリウム付活YAG系蛍光体は,Y及びAlの元素を含ん
でなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体であるから,前記相違点は,被告乙1発明に乙2公報記載の技術を適用することで,当業者が容易に想到することができたものということになる。
以上によれば,本件発明1は,第1優先日前に,当業者が被告乙1発明に乙2公報記載の技術を適用することで,容易に想到することができたもので
ある。
原告は,本件発明1が白色系を発光する発光ダイオードであり,その発光ダイオードの発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるのに対し,乙1発明は青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系を発光する面状光源(蛍光物質が青色LEDから離して配置されているもの)であり,該面状光源の構成部材の一つである前記青色発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体である点も相違点であると主張する。しかし,蛍光物質を青色LEDチップの近くに配置するか,離して配置するかは当業者が必要に応じて選択し得る設計事項であるし,特許請求の範囲の記載にも本件発明1においてYAG系蛍光体がLEDチップに接している旨の記載はなく,それが本件発明1の技術的特徴とはされていない。また,面状光源は
発光ダイオードと同様に発光装置であるから同一の技術分野に属するものであり,本件明細書1における発光ダイオードという用語は面状発光光源を包含すると解すべきである。したがって,原告が主張する前記相違点は存在しない。
(原告の主張)

乙1公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を原告乙1発明という。。)
原告1a1

青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系

を発光する面状光源であって,
原告1b1
前記青色発光ダイオードは,
発光層が窒化ガリウム系化合物

半導体であり,
原告1c1

前記発光層の発光スペクトルのピークが480nmである

LEDチップを有し,
原告1d1

前記蛍光散乱層は該LEDチップによって発光された光の

一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,原告1e1

赤色蛍光顔料及び緑色蛍光顔料を等量混合した蛍光顔料か,

又は,黄色蛍光染料及び橙色蛍光染料を等量混合した蛍光染料とを含む,
原告1f1

ことを特徴とする面状光源。

本件発明1と原告乙1発明を対比すると,両者は以下の点で相違し,その余の点で一致する。


本件発明1が白色系を発光する発光ダイオードであり該(白色系を発光する)
発光ダイオードの発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるのに対し,
原告乙1発明は青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系を発光する面状光源であり,該面状光源の構成部材の一つである前記青色発光ダイオードは,
発光層が窒化ガリウム系化合物半導体である点。



本件発明1が
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウム付活されたガーネット系蛍光体とを含むのに対し,原告乙1発明の蛍光物質は,
赤色蛍光顔料及び緑色蛍光顔料を等量混合した
蛍光顔料か又は黄色蛍光染料及び橙色蛍光染料を等量混合した蛍光染料
である点。
被告は,上記①の相違点について,面状光源は,発光ダイオードと同様に発光装置であるから,同一技術分野に属するものであり,相違点を構成しないと主張する。しかし,
発光ダイオード(LED)との用語が持つ通常の
意味において面状光源を含まないことは当業者における常識であるといえ
る。上記①の相違点が存在することは明らかである。被告は,同相違点の容易想到性について何ら主張していないから,進歩性欠如の主張は認められない。
また,上記①の相違点について,
乙1発明は,
蛍光物質の劣化を防止する
ために,青色LED(発光ダイオード)と蛍光物質(蛍光散乱層)を離して
別部材として設けることを目的とする発明であることから,光源を青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系を発光する面状光源とし,該面状光源の構成部材の一つである前記青色発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるとしている。このような原告乙1発明において蛍光散乱層や導光板をなくし,
蛍光物質を面状光源の構成要素
である青色発光ダイオードの中に組み込み,
白色系を発光する発光ダイオードとの構成に変更することは,原告乙1発明の基本的構成を根本的に変更するものであり,そのような変更に阻害要因があることは明らかである。また,
乙2公報はバックライト等の面状光源の技術とも発光ダイオードの技術とも技術分野が異なるものであるから,
原告乙1発明に乙2公報を組み合
わせて白色系ダイオードを得ようという発想が生じることはなく,乙2公報
には蛍光体を励起光源の近くに配置する構成も発光ダイオード自体も開示されていないのであるから,原告乙1発明に乙2公報を適用しても,蛍光物質を青色LEDチップの近くに配置し,
蛍光散乱層や導光板をなくして全体
を発光ダイオードとする構成(相違点に係る本件発明1の構成)に至ることはない。

上記②の相違点について,原告乙1発明は,蛍光物質の劣化という課題について,蛍光物質を青色LEDチップと離して設け,発光ダイオードと蛍光散乱層を別の構成とすることで解決しているのであるから,
原告乙1発明に
は,
青色LEDチップと蛍光体を使って照明にも使えるような白色系を発光する1つの発光ダイオードを得るという本件発明1の基本的な技術思想が
なく,
そのような発光ダイオードを得るために蛍光体を組み合わせるという発想が生じない。被告は,YAG系蛍光体は青色光で励起し,緑色,黄色又は赤色にかけて広い波長成分を有することや,
青色成分の波長を有する種々
の光源に対して緑色,黄色,赤色にかけての波長を補うためにYAG系蛍光体を組み合わせて用いることが技術常識であったと主張するが,その根拠と
して被告が挙げる文献はフライングスポット管又は高圧水銀灯に関するものであって発光ダイオードの技術常識を示すものではないし,緑色,黄色又は赤色の波長の光を得る方法としてはそれぞれの波長の発光を示す複数の蛍光体を使用するなど様々な方法があるから,
乙2公報に記載されたYAG
系蛍光体を選択する必然性はない。さらに,原告乙1発明はLEDと蛍光体と導光板などを使用した面状光源に関する発明であるのに対し,
乙2公報は
ディスプレイ装置に関する技術であり,技術分野が全く異なる上に,励起源
が発光ダイオードかガスレーザーかという点でも相違し,その用途がバックライトかディスプレイ装置であるかという点でも相違している。基本的な構成についても,
原告乙1発明が白色光源そのものを得ようとするものである
のであるのに対し,
乙2公報は光源から遠く離れたスクリーン上で白色を発
光させるものである。このように,原告乙1発明と乙2公報は技術分野,用
途,内容が全く異なるから,乙2公報は原告乙1発明とは無関係であり,これを原告乙1発明に組み合わせる動機付けがない。

無効理由2-2(乙3公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-3)
(被告の主張)

乙3公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を乙3発明という。。)
1a3

発光ダイオードであって,

1b3

該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であ

り,
1c3

前記発光層の発光スペクトルのピークが430nmにあるLE

Dチップと,
1d3

該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収し

た光の波長よりも長波長の光を発光する,
1e3
蛍光染料,又は,蛍光顔料を含む,

1f3

ことを特徴とする発光ダイオード。

本件発明1と乙3発明を対比すると,
両者は,
発光ダイオードであって,該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオードという点で一致し,以下の点で相違する。①

本件発明1が白色系の発光ダイオードであるのに対し,乙3発明が白色系の発光ダイオードと特定されていない点。



本件発明1が蛍光体としてY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を用いているのに対し,乙3発明では,蛍光体がこのようセリウムで付活されたYAG系蛍光体に限定されていない点。
青色系の光を出す光源について,出力される光の演色性を向上して白色光を得るという課題や,
当該課題を解決する手法として光源と蛍光体を用いた

上で光源の光と当該蛍光体による黄緑色域及び赤色域の発光とを組み合わせることは第1優先日当時の当業者において周知であった。したがって,当業者であれば,430nm付近に発光波長のピークを有する青色光を発する窒化ガリウム系化合物半導体からなるLEDチップと,そのようなLEDチップの発光により励起されてLEDチップの光よりも長波長の蛍光を発す
る蛍光染料又は蛍光顔料とを組み合わせて青色LEDの色を補正することや,蛍光染料,蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することにした乙3発明において,上記の課題やその解決のために乙3発明のLEDチップからの青色光で励起され,
青色光よりも長波長となる発光をする蛍光染料
又は蛍光顔料として,
黄緑色域および赤色域の発光するものを組み合わせれ

ばよいことは容易に認識する。
乙2公報では,発光元からの発光スペクトルのピーク波長が441.6nmである青色光に対して,
セリウムで付活されたY3Al5O12のように,
Y
及びAlの元素を含むセリウムで付活されたガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)を用いることで,発光元からの青色光の一部と,青色光により励起された蛍光体から発光される緑色,黄色,赤色の波長成分を含む光を組み合わせることによって白色光を得る技術が開示されている。また,Y及びAlの元素を含む,
セリウムで付活されたYAG系蛍光体が青色発光を吸収して
励起されて発する光のスペクトルが緑色,黄色及び赤色にかけて広い波長成分を有することは第1優先日前から当業者にとって技術常識であった。そうであれば,当業者にとって,乙3発明のLEDチップからの青色光で
励起され,黄緑色域及び赤色域の発光をする蛍光染料又は蛍光顔料として,乙2公報に記載された,青色光で励起されるY及びAlの元素を含むセリウム付活YAG系蛍光体(例えば,Y3Al5O12:Ce)を用いることは容易に想到するといえる。
したがって,当業者であれば,乙3発明に乙2公報記載の技術を適用する
ことで,蛍光染料又は蛍光顔料として,Y及びAlの元素を含むセリウム付活YAG系蛍光体
(例えば,3Al5O12:Ce)
Y
を用い
(上記②の相違点)

白色光を発する発光ダイオードとすること(同①の相違点)は容易に想到することができた。
以上より,本件発明1は,当業者が,乙3発明に乙2公報記載の技術を適
用することで,容易に想到することができたものである。
原告は,
青色光源に蛍光体の黄緑色域及び赤色域の光と組み合わせること
で演色性の高い白色光を得ることは発光ダイオードを含めた光源一般に分野において周知であったということはできないし,仮に,演色性の高い白色光を得るという抽象的な願望が発光ダイオードの分野に存在していたとし
ても,
白色系発光ダイオードを得るための選択肢は複数存在していたのであるから,
乙3発明と乙2公報の技術を組み合わせる動機付けはないと主張する。しかし,米国特許第3819974号明細書(以下乙29明細書という。
)では本件特許1の第1優先日よりも20年以上前に青色LEDチップと蛍光体を組み合わせてあらゆる色に変換するという具体的発想が開示されており,乙2公報でもYAG系蛍光体を用いた色変換により白色が得られていることが記載されているのであるから,
上記の課題が発光ダイオード
の分野に存在していたことは明らかである。
原告は,YAG系蛍光体は,明らかに乙3発明の蛍光体としては不向きであるから,
乙3発明に上記蛍光体を組み合わせることには阻害要因があると
主張する。しかし,原告が指摘するように370nm付近の光(紫外線)で
はYAG系蛍光体はほぼ励起されないことを前提とするのであれば,本件発明1で規定している420nm付近の光でも励起されないことになる。実際には,370nm付近の光で相対強度は2ないし3パーセント程度,420nm付近の光で相対強度は10パーセント程度である。原告の主張は,本件明細書1の記載と矛盾する。

(原告の主張)
本件発明1と乙3発明の相違点は被告主張のとおりであるが,当業者は各相違点に係る本件発明1の構成に想到することは容易ではない。
乙3発明の目的は,発光ピークが430nm付近,および370nm付近にある発光素子の色補正ないし波長変換を行い視感度および輝度を向上さ
せることにあるところ,YAG系蛍光体は370nm付近の光(紫外線)ではほぼ励起されないのであるから,
YAG系蛍光体は明らかに乙3発明の蛍
光体として不向きである。むしろ,乙3発明の発光素子のピーク波長である370nm付近の光(紫外線)は人体に有害であるところ,乙3発明でYAG蛍光体を用いると,
このような有害な紫外線が蛍光体に吸収されずに放出

されてしまうのであるから,YAG系蛍光体を採用することは阻害事由がある。
被告は,青色光源に,蛍光体の黄緑色域及び赤色域の光と組み合わせることで演色性の高い白色光を得ることは,
発光ダイオードを含めた光源一般に
分野において周知であったと主張するが,そのようにして白色光を得ることが発光ダイオードを含めた光源一般に分野において周知であったとはいえない。

仮に,
演色性の高い白色光を得るという抽象的な希望が発行ダイオードの分野に存在したと仮定しても,
青色光源と黄緑色域及び赤色域の光を発光す
る蛍光体を組み合わせる必然性や,
そのような蛍光体としてYAG系蛍光体
を選択する必然性はないから,乙3発明に乙2公報の技術を適用する動機付けはない。そもそも,乙2公報の技術と本件発明1や乙3発明は技術分野が
全く異なるものであり,乙2公報の技術は前記①の相違点(白色系発光)及び同②の相違点(YAG系蛍光体)に係る構成について開示も示唆もしていない。

無効理由3(サポート要件違反2)
(争点4-4)
(被告の主張)
構成要件1Eの
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体は,セリウムで付活された1種類のフォトルミネセンス蛍光体を発光ダイオードやLED光源が含
んでいる旨を規定していると解される一方で,セリウムで付活された2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体のうちのいずれかを特定しているにすぎないと解する余地もあるところ,いずれの態様を想定したとしても,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素であるGdのみがYAG系蛍光体のYサイトの全てを占める態様のガーネット系蛍光体を
用いた場合,発光ダイオードの輝度は低いものとならざるを得ないことは明らかである。
フォトルミネセンス蛍光体が1種類である場合について,構成要件1Eの文言上はY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素であるGdのみがYAG系蛍光体のYサイトの全てを占める態様が包含されるところ,
本件明細書1にはYサイトの全てをGdが占める組成のセリウム
で付活されたガーネット系蛍光体を用いた態様の開示はない。なお,本件明細書1の【0120】には実施例8の発光ダイオードは,フォトルミネセンス蛍光体として,一般式Gd3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いたとの記載があり,Yサイトの全てをGdのみが占める組成の蛍光体を開示しているようにも見えるが,
そのようなYを

含まない蛍光体は輝度が低いのであるから本件発明1の課題を解決することができず,当該記載はYを含まないガーネット系蛍光体であっても耐候性に優れている場合があるという知見を開示しているにすぎない。
また,フォトルミネセンス蛍光体が2種類以上の場合についても,上記のとおりYサイトの全てをGdが占める蛍光体を用いた場合は発光ダイオー
ドの輝度は低いものになるから,本件発明1のフォトルミネセンス蛍光体としては不適当であるし,
本件明細書1にはAlサイトの元素が全てGaであ
る蛍光体についても本件発明1の発光ダイオードに用いることができるという開示はされていない。したがって,フォトルミネセンス蛍光体が2種類以上である場合についても,本件発明1においてより高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供するという目的を達成するためには,YとAlを含まないガーネット系蛍光体は好ましいものとはいえない。
以上に加えて,本件発明1は白色系を発光する発光ダイオードであるところ,本件明細書1の【0054】の記載によれば,白色光の発光が可能
な発光ダイオードを構成するためにはY:Gd=4:1~2:3の範囲に設定することが求められており,これよりGdの置換比率を高めた場合には発光ダイオードは電球色に発光してしまうことが明記されているのであるから,
Yを100パーセントGdで置換したガーネット系蛍光体は輝度が低いだけでなく,
そもそも白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成し得
ない。
したがって,
本件発明1は,
文言上,
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素であるGdのみがYサイトの全てを占める態様を包含するところ,本件明細書1の記載を参酌すれば,そのようなガーネット系蛍光体を用いた場合には発光ダイオードの輝度は低いものとならざるを得ないことなどから本件発明1の目的を達し得ないものである。本件発明
1は,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含するものであり,特
許法36条6項1号の規定に反するものである。
(原告の主張)
本件明細書1におけるより高輝度とは,従来の蛍光体と比較して耐久性等に優れたYAG系蛍光体を使用することにより,
発光ダイオードを長時
間使用しても高輝度をより維持することができるという意味である。そして,

本件明細書1の
【0045】
【0086】
などにはガーネット構造の蛍光体は
耐久性等が高く長時間使用で高輝度発光が可能と記載されており,実施例8

【0120】
)には,Gd3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceという100パーセントGd置換の蛍光体が開示されている。
また,本件発明1の白色系に電球色が含まれることは本件明細書の記
載(
【0046】
【0047】など)から明らかである。
したがって,
本件明細書1に接した当業者は100パーセントGd置換蛍
光体もガーネット構造である以上,
耐久性等に優れ,
より高輝度
を実現す
ると理解することができる。

無効理由4(周知技術を理由とする進歩性の欠如)
(争点4-5)
(被告の主張)
乙29明細書は,
発光層が窒化ガリウム系化合物半導体の発光ダイオ
ードを開示しており,その発光ダイオードは,事実上前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップであるとされている。なお,そのような発光ダイオードの発明については昭和47年に公知となった技術論文(乙30)のほか,乙31ないし乙35に係る文献や論文にも開示されている。また,乙29明細書では,LEDの色補正や蛍光体の種類による数々の波長の光への変換が可能であり,全ての基本色を発現させることができるとの教示が認められる。
当該教示に触れた当業者で
あれば,
上記LEDと蛍光体の組み合わせにより白色系を発光する発光ダイ
オードの実現が可能であることを理解する。
本件発明1が備えるLEDチップ(発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,
前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップ)を備えた発光ダイオード(LED光源)そのものは本件特許1の第1優先日以前に既に公知であり,
蛍光体の種類を変更すること

により全ての基本色の光を同一の発光ダイオードで実現できるとの教示やLEDと蛍光体の組み合わせにより白色系を発光する発光ダイオードの実現が可能であるという当業者の理解を前提にすれば,本件発明1の白色系の発光ダイオードは実質的に公知であったといえる。
また,本件明細書1の【0004】や当該段落に記載されている特開平8
-7614号公報(乙38)の記載,その他乙31や乙39に係る文献等の記載によれば,本件特許1の出願当時,既に青色系の発光が可能な発光素子とその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体とを組み合わせた白色系の光が発光可能な発光ダイオードは公知であったといえる。
これらによれば,本件特許1の第1優先日(平成8年7月29日)当時の
技術常識等に照らせば,その当時,
白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオード乃至LED光源は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオード。という構成は,周知ないし公知であ
ったことは明らかである。
そして,
YAG系蛍光体が劣化し難い蛍光体であることは乙24ないし2
8の文献等の記載から明らかなとおり本件特許の第1優先日当時の当業者にとっての技術常識であり,YAG系蛍光体としてのY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体は当業者に周知・慣用の蛍光体であったといえる。本件発明1が特許要件としての進歩性を有するといえるか否かは,構成要
件1Eで特定される蛍光体を,
本件発明1で用いる蛍光体として選択するこ
とが本件特許1の第1優先日前の当業者にとって想到することが容易であ
るか否かによって決まるところ,使用環境による蛍光体の劣化に起因した発光ダイオード特性の劣化という課題に直面した当業者であれば,
エネルギー
照射下において顕著に劣化し難い材料であり,
蛍光体の光励起を利用して白
色を得る光源に用いる好ましい蛍光体として周知であったYAG系蛍光体を選択することは困難ではない。したがって,本件発明1は,周知の技術に
よって容易に想到することができたものである。
(原告の主張)
被告は,
白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオード乃至LED光源は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオード。という構成が周知であると主張していると解されるところ,その根拠として指摘される文献(乙29,30など)には白色系発光の発光ダイオードは開示されていないから,そのような構成が周知であるとはいえない。
また,被告は,上記構成にYAG系蛍光体を組み合わせることが容易であ
ると主張していると解されるところ,その根拠とされる文献(乙24ないし28など)
はいずれも発光ダイオードとは異なる技術分野に関するものであ
るため,
これらに開示された技術を発光ダイオードに組み合わせる動機付けがない。
本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点
5)

無効理由1(サポート要件違反)
(争点5-1)
(被告の主張)
本件明細書2では,
リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く,短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供するという課題を解決するために,リードフレームの切り欠き部として,個片化した際に四隅からリードが露出する構成が開示されているが,それ以外の構成は開示されていない。また,リードフレームにおいて,正負の異なるリード間の短絡を防止するために上記正負のリード間に直線状の切り欠き部が
設けられていることは当然の前提であるとされている。
それにもかかわらず,
本件発明2では,
切り欠き部について,
前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ(構成要件2B-4)と規定され
ているのみである。すなわち,本件発明2には,本件明細書2で本件発明を
解決する手段として実質的に開示されていない,四隅からリードが露出しないような切り欠き部の構成や,正負のリード間の切り欠き部が直線状ではないものも含まれることになる。
したがって,本件発明2は,本件明細書2に開示されていない発明が含まれているからサポート要件に違反し,その特許は無効とされるべきものである。
(原告の主張)
本件明細書2の【0042】では樹脂パッケージの外側面からリードが露出していると記載され,【0050】ではリードフレームの一部が脱落しないように,又は,樹脂パッケージの外側面にリードを露出させるためにリードフレームの一部を連結しておくと記載されており,本件明細書2に
は,
樹脂パッケージの外側面におけるリードの露出箇所を特定の位置に限定しない構成が記載されている。また,本件明細書2の【0022】には,樹脂パッケージは,四隅からリードが露出されていることが好ましいと記載されており,本件発明2に係る発光装置において四隅からリードが露出されている構成が好ましい例にすぎないことも明記されている。したがって,本
件明細書2には,
個片化後の発光装置において四隅からリードが露出する態
様に限定されない発明の構成が開示されているといえる。また,本件発明2の課題を解決するために,
リードの露出位置を発光装置の四隅とすることが
必須の構成でないことは,
発光装置の外側面となる位置であればリードのど
こに切り欠き部を設けた場合においてもリードフレームと樹脂成形体との
剥離を抑制するという作用効果が奏されることからも明らかである。また,正負のリード間の切り欠き部は,リードを正リードと負リードとに分けて,発光素子のアノード(正電極)およびカソード(負電極)への給電が適切に行われるように設けられるものであるところ,
その機能が達成され
る限りにおいて,
正負のリード間の切り欠き部の形状が直線状に限られると

する理由はなく,この点は当業者に明らかである。
以上によれば,本件発明2が,本件明細書2の発明の詳細な説明に記載された発明ではないという被告の主張には理由がない。

無効理由2(乙11公報の拡大先願との同一)
(争点5-2)
(被告の主張)
乙11公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を被告乙11発明という。。)
2a

リードフレーム及び反射体を有し,上側から見た外形が略四角形で
4つの外側面を有する半導体発光装置の製造方法であって,
2b-1

リードフレームと,反射率の高い白色の材料で形成されており,

エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を充填した,樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,
2b-2

前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設け

られ,
2b-3

前記凹部の底面には前記リードフレームが樹脂の充填された

スリット状の溝によって分割されて露出されており,
2b-4

前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいず

れにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,2b-5

且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リード

フレームが露出している,
2b-6

樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,

2c

前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,

2d

前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,
2e

分離後の各発光装置の外側面において前記リードと前記切り欠き

部に入り込んだ前記反射体とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程と,

2f

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
本件発明2と被告乙11発明を対比すると,被告乙11発明は本件発明2の全ての構成要件を満たすから,
本件発明2と被告乙11発明との間には相
違点がなく,両者は同一の発明である。
したがって,本件発明2は,被告乙11発明と同一の発明であり,特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
(原告の主張)
本件発明2と乙11公報に記載された発明は,
本件発明2が上側には凹部
が複数設けられた樹脂成形体付リードフレームを準備してから,前記凹部の底面に発光素子を載置し,前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する(構成要件2B-1~6,2C,2D)のに対して,乙11公報
に記載された発明が凹部のない樹脂成形体付リードフレームを準備し,その上に発光素子を載置し,発光素子を被覆する封止部材を配置してから,樹脂成形体付リードフレームの上に凹部形成する点において相違する。また,本件発明2が,分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるよ
うに,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程(構成要件2E)を有するのに対し,乙11公報に記載された発明は,
2つの外側面においてリードと樹脂部と反射体とが略
同一面を形成するように切断して複数の発光装置に分離する工程を有するものの,当該工程において他の2つの外側面においてリードが露出せず,リ
ードと樹脂部と反射体とが略同一面を形成しない点においても相違する。これらの相違点は,いずれも実質的なものであるから,本件発明2と乙11公報に記載された発明は同一の発明ではない。

無効理由3(乙47公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-3)
(被告の主張)
乙47公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ
れている(以下,この発明を被告乙47発明という。。

被告2a

リード及び樹脂部を有し,
上側から見た外形が略四角形で4つ

の外側面を有する発光装置の製造方法であって,
被告2b-1
リードフレームと,樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付

リードフレームを準備する工程であって,
被告2b-2

前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数

設けられ,
被告2b-3

前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形

体で分割されて露出されており,
被告2b-4

前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置の

いずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
被告2b-5

且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リ

ードフレームが露出している,
被告2b-6

樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,

被告2c

前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,

被告2d

前記凹部内に,
前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工

程と,
被告2e
分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても

前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断するこ
とにより,複数の発光装置に分離する工程と,
被告2f

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

本件発明2と被告乙47発明は,
本件発明2では樹脂成形体が光反射性物
質を含有する樹脂成形体であるのに対し,
被告乙47発明では樹脂成形体に
光反射性物質を含有させるとはされていない点で相違し,
その余の点は一致
する。
上記相違点について,乙47公報の[0027]には,反射板は樹脂などの絶縁物質で形成されることができること,
スルーホールの壁面が白いコー
ティングを有することが開示されている。また,乙16公報や乙17公報にも,光反射率を高める目的で,樹脂中に白色系の顔料や反射性物質を添加する旨の記載がある。
これらの記載等によれば,反射板がレジン(樹脂)である場合に,白色顔料等の光反射性物質を含有させることは当業者にとって周知慣用の技術であり,当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項である。

したがって,本件発明2は,被告乙47発明に周知慣用の技術を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
原告は,本件発明2の樹脂成形体付リードフレームは,複数の工程で成形されるのではなく,トランスファ・モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,
樹脂成形体とリードフレームが一回の成形工程で一体化され

たものであると主張する。しかし,本件発明2の特許請求の範囲には,凹部側面,凹部底面,切り欠き部に入り込んだ樹脂成形体が1つの部材であるとの限定がなく,また,一回の樹脂成形によってリードフレームと一体化されることも定めていない。原告の上記主張には理由がなく,原告が主張する相違点はいずれも存在しない。

(原告の主張)
乙47公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ
れている(以下,この発明を原告乙47発明という。。

原告2a

リード104及び絶縁体106並びに反射板110を有し,上

側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有するハイパワーLEDパッケージングユニット200の製造方法であって,
原告2b-1

リード104を含む加工された金属板
(以下,
便宜的に
リードフレーム104という。
)と,絶縁体106と,を有する樹脂成
形体付リードフレームであるベース100を準備する工程であって,原告2b-2
原告2b-3
前記ベース100の上側は平面になっており,
前記ベース100の上側の平面は,
絶縁体106とリード

フレーム104で形成され,
かつ前記リードフレーム104が絶縁体
106で分割されており,
原告2b-4

前記リードフレーム104には前記外側面となる4つの

位置のいずれにも前記絶縁体106の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
原告2b-5

且つ前記ベース100の底面の一部が前記リードフレー

ム104で形成されている,
原告2b-6

ベース100を準備する工程と,

原告2b-7

前記ベース100の上部に,
別途形成した貫通孔を有する

板部材210
(反射板110の集合体)
を接着剤160で貼り付けて,
複数のパッケージングユニット200を形成する工程と,
原告2c

前記貫通孔内に露出した前記ベース100の上面にLEDチ

ップ150を載置する工程と,
原告2d

前記貫通孔内に露出した前記ベース100の上面と,
前記貫通

孔とによって画された空間に,前記LEDチップ150を被覆する透光性充填材130を配置する工程と,
原告2e

分離後の各ハイパワーLEDパッケージングユニット200

の前記4つの外側面のいずれにおいても,前記リード104と,前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部106と,
前記反射板110とが
略同一面となるように,前記リードフレーム104と,前記絶縁体106と,前記板部材210とを切断することにより,複数のハイパワーLEDパッケージングユニット200に分離する工程
原告2f

と,
を有することを特徴とするハイパワーLEDパッケージン

グユニットの製造方法。
本件発明2の樹脂成形体付リードフレームは,複数の工程で成形されるのではなく,トランスファ・モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,
樹脂成形体とリードフレームが一回の成形工程で一体化されたもので
ある。そのような構成を有する本件発明2と,原告乙47発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレームを準備する工程に

て準備される樹脂成形体付きリードフレームの樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体である(構成要件2B-1)のに対して,
原告乙47発明では,
ベース100を構成する絶縁体106が光反射性物
質を含有しているか否か不明である点。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレーム
は,
その上側に凹部
が複数設けられているのに対し(構成要件2B-2,2B-3,2C,2D,
2E)原告乙47発明では,

樹脂成形体付リードフレームであるベー

ス100の上側は平面で,
凹部が存在しない点
(構成2b-2,
2b-3,
2c,2d,2e)
。また,原告乙47発明は,ベース100(樹脂成形体
付リードフレーム)の上に,複数の貫通孔を有する板部材201(反射板110の集合体)を接着剤160で貼り付ける工程を有するのに対し(構成2b-7)
,本件発明2はそのような工程を有しない点。

上記②の相違点について,原告乙47発明において,貫通孔(凹部)を有する板部材(反射板の集合台)をベースに貼り合わせる構成に代えて,ベースの一部として1回の樹脂成形で形成する構成を採用することの動機付けはないから,同相違点に係る構成は,原告乙47発明から当業者が容易に想到することができるものではない。


無効理由4(乙48公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-4)
(被告の主張)
乙48公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ
れている(以下,この発明を被告乙48発明という。。

被告2a
リード及び樹脂部を有し,
上側から見た外形が略四角形で4つ

の外側面を有する発光装置の製造方法であって,
被告2b-1

リードフレームと,樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付

リードフレームを準備する工程であって,
被告2b-2

前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数

設けられ,
被告2b-3

前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形

体で分割されて露出されており,
被告2b-4

前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置の

いずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
被告2b-5

且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リ

ードフレームが露出している,
被告2b-6

樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,

被告2c
被告2d
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,
前記凹部内に,
前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工

程と,
被告2e

分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても

前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断するこ
とにより,複数の発光装置に分離する工程と,
被告2f

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

被告乙48発明と本件発明2は,本件発明2では樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体であるのに対し,
被告乙48発明では樹脂成形体に
光反射性物質を含有させるとはされていない点で相違し,
その余の点は一致
する。
上記相違点について,乙48公報には,貫通孔の反射効率を高めることが重要であることや,
絶縁基板15には白色のものを用いることが開示さ
れている。また,乙16公報や乙17公報の記載に照らせば,貫通孔が樹脂である場合に,
白色顔料等の光反射性物質を含有させる程度のことは当業者
にとって周知慣用の技術でしかなく,当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項である。

以上によれば,本件発明2は,被告乙48発明に周知慣用の技術を適用することで容易に想到することができたものである。
無効理由3(前記ウ)の被告の主張のとおり,本件発明2の樹脂成形体付リードフレーム複数の工程で成形されるのではなく,は,
トランスファ・
モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,樹脂成形体とリードフレ
ームが一回の成形工程で一体化されたものに限られないから,乙48公報に記載された発明において,絶縁基板が金属薄板母材の上に接着フィルムで貼り付けたものであって樹脂成形により一回成形で一体化した部材ではないことが,本件発明2の樹脂部に該当しない理由にはならない。したがって,原告が主張する後記②の相違点は存在しない。また,乙48公報の図1
1には実施の形態1を説明する図4~9の樹脂層は図示されておらず,乙48発明においてそのような樹脂層が必須のものであるとはいえないから,原告が主張する後記③の相違点は存在しない。
(原告の主張)
乙48公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ

れている(以下,この発明を原告乙48発明という。。

原告2a

第1金属薄板13bと第2金属薄板13c(以下,便宜的にこ
れらを総称してリードという。,及び樹脂13aと樹脂層25並

びに絶縁基板15を有し,
上側から見た外形が略四角形で4つの外側
面を有するチップ部品型発光素子の製造方法であって,
原告2b-1
金属薄板母材と,
当該金属薄板母材の分離スリットならび

に下面および側面に設けられた樹脂ないし樹脂層である樹脂成形体と,を有する薄型平板13の集合体を準備する工程であって,
原告2b-2

薄型平板13の集合体の上側は平面になっており,

原告2b-3

前記薄型平板13の集合体の上側の平面は,樹脂成形体

(樹脂13a,樹脂層25)と金属薄板母材とで形成されており,かつ前記金属薄板母材が樹脂成形体で分離されており,
原告2b-4

前記金属薄板母材には前記外側面となる4つの位置のい

ずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,原告2b-5

且つ前記薄型平板13の集合体の底面にて前記金属薄板

母材が樹脂層25(樹脂成形体)で覆われている,
原告2b-6

薄型平板13の集合体を準備する工程と,

原告2b-7

前記薄型平板13の集合体の上部に,
別途形成した貫通孔

14を有する絶縁基板15を接着フィルム19により貼り付けて,複数のパッケージを形成する工程と,
原告2c
前記貫通孔14内に露出した前記薄型平板13の第1の金属

薄板13b上にLEDチップ16を載置する工程と,
原告2d

前記貫通孔14内に露出した前記薄型平板13の集合体の上

面と,前記貫通孔14によって画された空間に,前記LEDチップを被覆する透光性樹脂31を充填する工程と,
原告2e
分離後のチップ部品型発光素子の前記4つの外側面のいずれ

においても,リードと,前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部と,前記絶縁基板15とが略同一面となるように,前記金属薄板母材と,前記樹脂成形体と,前記絶縁基板15とを切断することにより,複数のチップ部品型発光素子に分離する工程,
原告2f

と,
を有することを特徴とするチップ部品型発光素子の製造方

法。
本件発明2の樹脂成形体付リードフレームは,複数の工程で成形され
るのではなく,トランスファ・モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,
樹脂成形体とリードフレームが一回の成形工程で一体化されたものである。そのような構成を有する本件発明2と,原告乙48発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレームを準備する工程に
て準備される樹脂成形体付きリードフレームの樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体である(構成要件2B-1)のに対して,原告乙48発明では,
樹脂成形体および絶縁基板が光反射性物質を有して
いるか否か不明である点。



本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレーム
は,
その上側に凹部
が複数設けられているのに対し(構成要件2B-2,2B-3,2C,2D,
2E)原告乙48発明では,

樹脂成形体付リードフレームである薄型
平板13の集合体の上側は平面で,凹部が存在しない点(構成2b-2,2b-3,2c,2d,2e)また,原告乙48発明は,薄型平板13の集合体の上部に,
別途形成した貫通孔14を有する絶縁基板15を接着フ

ィルム19で接着して,
複数のパッケージを形成する工程を有するのに対
し(構成2b-7)
,本件発明2はそのような工程を有しない点。


本件発明2では,
樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出しているのに対し,原告乙48発明では,薄型平板の集
合体の底面にて前記金属薄板母材が樹脂成形体で覆われている点。上記②の相違点について,原告乙48発明の凹部を備えた樹脂成形体を薄型平板に貼り合わせる構成に代えて,樹脂成形体を薄型平板と一体的に形成する動機付けはないから,同相違点に係る構成は原告乙48発明から当業者が容易に想到することができるものではない。

無効理由5(乙49公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-5)
(被告の主張)
乙49公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ
れている(以下,この発明を被告乙49発明という。。

被告2a

リード及び樹脂部を有し,
上側から見た外形が略四角形で4つ

の外側面を有する発光装置の製造方法であって,
被告2b-1

リードフレームと,樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付

リードフレームを準備する工程であって,
被告2b-2

前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数

設けられ,
被告2b-3
前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形

体で分割されて露出されており,
被告2b-4

前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置の

いずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
被告2b-5
且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リ

ードフレームが露出している,
被告2b-6

樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,

被告2c

前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,

被告2d

前記凹部内に,
前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工

程と,
被告2e

分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても

前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断するこ
とにより,複数の発光装置に分離する工程と,
被告2f

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

被告乙49発明と本件発明2は,本件発明2では樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体であるのに対し,
被告乙49発明では樹脂成形体に
光反射性物質を含有させるとはされていない点で相違し,その余の点は一致する。
上記相違点について,乙49公報には凹部の光反射率を高めることが好ましいという技術的思想の開示がある。乙16公報や乙17公報の記載から明
らかなように,凹部を構成する樹脂に,白色顔料等の光反射性物質を含有させて反射率を向上させる程度のことは当業者にとって周知慣用の技術である。したがって,被告乙49発明において,凹部の構成部分でもある樹脂部に,
白色顔料等の光反射性物質を含有させて凹部全体の反射率を向上させる程度のことは,
当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項であるといえ

る。
したがって,本件発明2は,被告乙49発明に周知慣用の技術を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
無効理由3(前記ウ)における被告の主張のとおり,本件発明2の樹脂成形体付リードフレームは,複数の工程で成形されるのではなく,トラン
スファ・モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,樹脂成形体とリードフレームが一回の成形工程で一体化されたものに限られない。また,原告は,
リードフレームは比較的薄い平坦な金属板でロール状に巻き取って使用することができるものであると主張するが,本件明細書2の【0046】のリードフレームは平板状の金属板を用いることができるという記載に
照らせば,
リードフレームは平板状の金属板である必要はないと解するのが
自然であり,
また,
本件発明2の特許請求の範囲には単に
リードフレーム
と記載されているだけであり,その厚み等についての限定はされていない。したがって,
乙49公報に記載された集合メタルコアは発光素子を支持固定
して外部配線との接続をする部品である以上,
その機能においてリードフレ
ームであるといえるから,
原告が主張する後記②及び③の相違点は存在しない。また,乙49公報において切断される前記メタルコア23aと前記スリット123cに入り込んだ前記樹脂成形部4は本件発明2と同様の前記リードフレームと前記樹脂成形体であるといえるから,原告が主張する後記④の相違点も存在しない。
(原告の主張)

乙49公報には,
後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載さ
れている(以下,この発明を原告乙49発明という。。

原告2a

メタルコア23a及び樹脂成形部4を有し,
上側から見た外形

が略四角形で4つの外側面を有する白色発光装置30の製造方法であって,
原告2b-1

マグネシウム合金系のメタルコア材料の射出成形によっ

て形成した集合メタルコア123と,樹脂成形部104と,を有する集合ケース体120を準備する工程であって,
原告2b-2

集合ケース体120の上側には集合メタルコア123で

形成された凹部21cが複数設けられ,
原告2b-3

前記凹部21cの底面には前記メタルコアが前記樹脂成

形部104で分割されて露出されており,
原告2b-4

前記集合ケース体120には前記外側面となる4つの位

置のいずれにも前記樹脂成形部104の一部が入り込んだスリット123cが設けられ,
原告2b-5

且つ前記集合ケース対120の底面にて前記集合メタル

コア123が露出している,
原告2b-6

集合ケース体120を準備する工程と,

原告2c

前記凹部の底面にサブマウントパッケージを載置する工程と,

原告2d

前記凹部内に,被覆部材32を配置する工程と,

原告2e

分離後の各白色発光装置30の前記4つの外側面のいずれに

おいても前記メタルコア23aと前記スリット123cに入り込ん
だ前記樹脂成形部4とが略同一面となるように,
前記集合ケース体を
切断することにより,複数の白色発光装置30に分離する工程
原告2f

と,を有することを特徴とする白色発光装置30の製造方法。

本件発明2の樹脂成形体付リードフレームは,複数の工程で成形されるのではなく,トランスファ・モールドのような金型を用いた樹脂成形によって,
樹脂成形体とリードフレームが一回の成形工程で一体化されたものである。また,原告乙49発明の集合メタルコアは,高価なマグネシウム合金系のメタルコア材料を用い,
金型を使用する射出成形という手の込んだ製法
で形成され,凹部を内面に有する円筒部を備えた極めて特殊な形状をしてい
る部材であって,
このような部材がリードフレームといえないことは明らか
であるから,原告乙49発明はリードフレームを有していない。そのような構成を有する本件発明2と原告乙49発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体が
光反射性物質
を含有するのに対し
(構
成要件2B-1)
,原告乙49発明では,樹脂成形部104が光反射性物

質を含有しているか不明である点。


本件発明2では,発光装置がリード及び樹脂部を有しであるのに対し(構成要件2A)
,原告乙49発明では,発光装置がメタルコア23a及び樹脂成形部4を有しであり,リードではなくメタルコアを有
する点。



本件発明2では,
リードフレーム
を使用した
樹脂成形体付リードフレーム
が準備されるのに対し
(構成要件2B-1ないし6)原告乙49

発明では,
メタルコアと樹脂を組み合わせた集合ケース120が準
備される点。


本件発明2では,切断されるのが前記リードフレームと前記樹脂成形体であるのに対し(構成要件2E),原告乙49発明では,切断されるの


前記メタルコア23aと前記スリット123cに入り込んだ前記樹脂成形部4である点。乙49公報におけるメタルコアと,本件発明2におけるリードフレームとは,発明の思想が根本的に異なっているから,そもそも乙49公報は本件発明2の進歩性を否定する根拠とならない。

また,
上記②ないし④の相違点について,乙49公報の
【0046】樹に脂成形部4は,少なくとも凹部21cの内面並びに下面21bの端子電極となる一部の面は除いて,スリット21g並びにメタルコア3a,3bの周囲をモールドすることにより結束して強固なケース体21を形成していると記載されているとおり,乙49公報に記載の技術は,わざわざ射出成形で
メタルコア自体を凹部を有する複雑な形状とし,
その周囲に樹脂成形部をモ
ールドすることで両者を結束して強固なケース体とすることを実現しているのであって,そこにおいて,集合メタルコアは強固なケース体を形成するための根幹となる部材である。そのような原告乙49発明において,その集合メタルコアをリードフレームに変更する動機付けはない。

したがって,上記①の相違点について検討するまでもなく,本件発明2の進歩性は否定されない。
本件訂正前発明3に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点6)

無効理由1(明確性要件違反,サポート要件違反1)
(争点6-1)
(被告の主張)
本件訂正前発明3は発光装置という物の発明に関するものである。構成要件3Cでは,
前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有しと規定されているにもかかわらず,構成要件3Eでは前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されていることが規定されている。すなわち,本件
訂正前発明3は,構成要件3Cでは内底面のリードが露出している(むき出しになっている)と規定し,構成要件3Eでは凹部内に封止部材が配置されており,上記内底面のリードは露出していないことを規定しており,一つの発光装置に対して矛盾する規定が設けられていることになる。したがって,本件訂正前発明3は,不明確であるから,明確性要件に違
反する。
本件明細書3にはリードフレームの切り欠き部として個片化した際に四隅からリードが露出するという構成が記載されているにもかかわらず,本件訂正前発明3の構成要件3Bでは,
前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成されておりと規定されているのみで,四
隅からリードが露出する構成以外の構成も含まれる。
したがって,本件訂正前発明3は,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから,サポート要件に違反する。
(原告の主張)
争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂
正の再抗弁において,本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張する。

無効理由2-1(乙11公報の拡大先願との同一)
(争点6-2)
(被告の主張)

乙11公報には,前記

(本件発明2の無効理由2)の被告の主張に記

載したとおりの発明が記載されている。上記の発明は本件訂正前発明3の全ての構成要件を満たすから,本件訂正前発明3と上記の発明との間には相違点がなく,両者は同一の発明である。
したがって,本件訂正前発明3は特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
(原告の主張)

争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す
る。

無効理由2-2
(乙16公報を主引例とする新規性・進歩性欠如)
(争点6
-3)
(被告の主張)
乙16公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を乙16発明という。。)
3a16

リードに凹凸の切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部

に反射性物質を含有する熱硬化性樹脂が充填されている樹脂パッケージであって,
3b16

前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成

されており,
3c16
前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,

樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,
3d16

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内

底面に発光素子が配置されており,
3e16

前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されて

おり,
3f16

前記樹脂パッケージの外側面において,リードが前記樹脂部の

外側面から突き出すように形成されており,
3g16

前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出され

ている,
3h16

ことを特徴とする発光装置。

本件訂正前発明3と乙16発明は,本件訂正前発明3では前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されているのに対し,
乙16発明ではリードが外側面から突き出ているという点で
相違し,その余は一致する。
外側面に対してリードの形状を外側面と同一面上に設ける構成とすることも,外側面から突出させたり引っ込めたりする構成とすることも,本件原
出願日(平成20年9月3日)前の当業者が適宜なし得たことにすぎないから,上記相違点は実質的な相違点とはいえない。したがって,本件訂正前発明3は,実質的には乙16公報に記載されているに等しい発明であるから,新規性を有しない。
また,上記相違点が実質的な相違点であったとしても,乙16発明に乙1
7公報に記載された発明,特開2003-218398号公報(以下乙18公報という。)に記載された発明,特開2001-326295号公報
(以下乙19公報という。
)に記載された発明,特開2006-3396
39号公報(以下乙20公報という。
)に記載された発明,特開2003
-174200号公報(以下乙21公報という。
)に記載された発明を適

用して,外側面に対するリードの形状を反射体(樹脂部)と同一平面とすることは単なる設計事項にすぎない。また,外側面に対するリードの形状を反射体(樹脂部)と同一平面とすることにより有利な効果を奏することになるともいえない。したがって,本件訂正前発明3は,乙16発明及び乙17公報ないし乙21公報に記載された発明に基づき,
当業者が容易に発明をする

ことができたものであるから,進歩性を有しない。
以上より,本件訂正前発明3は,乙16発明と同一か,乙16発明から当業者が容易に想到することができたものである。
(原告の主張)
争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す
る。


無効理由3(明確性要件違反,サポート要件違反2)
(争点6-4)
(被告の主張)
本件訂正前発明3は,
前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており,(構成要件3F)との構成を
備えた発光装置であるとされている。
本件明細書3には,
樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが
略同一面に形成された態様が開示されているに過ぎず,樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが同一面に形成された態様は開示されていない。本件明細書3の【0042】では,
この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する
として,
略同一面
という文言の定義付
けがなされているのであるから,
略同一面なる文言には特別な技術的意
味が込められている。
しかも,
本件訂正前発明3は
物の発明
であるから,
構成要件3Fの同一面という文言で特定される面は,同じ切断工程で形成されたか否かを問わず,幾何学的な意味において同一面であれば当該
要件を充足することになる。
本件明細書3には,
樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが
同一面に形成された態様は開示されていないから,本件訂正前発明3は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合しない。また,本件明細書3に開示のない上記態様を明確
に理解し得ないという意味において本件訂正前発明3は特許を受けようとする発明が明確であることの要件に適合しない。仮に,
同一面は略同一面を意味するのであり,そのような態様は本
件明細書3に記載されているというのであれば,当該略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味するのであるから,
物の発明
につい
ての請求項において,実質的に,その物の製造方法が記載されていることになる。そして,本件訂正前発明3について,その出願時に,当該物をその構
造又は特性により直接特定することが不可能である等の事情は存在しない。(原告の主張)
争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す
る。


無効理由5(乙53公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点6-5)
(被告の主張)
前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)
との構成を備えた発光装置は,
本件

明細書3に開示されておらず,また,本件特許3の分割親出願である特願2013-044799の明細書や,
特願2013-044799の分割親出
願である特願2008-225408の明細書にも開示されていない。したがって,本件特許3は,
特許出願人は,次に掲げる場合に限り,二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができると規定する特許法44条1項柱書の規定に適合しない違法な分割
出願であって,同条2項のみなし規定の適用は享受し得ない。そうすると,本件訂正前発明3の新規性及び進歩性の判断時は,特願2008-225408の出願日である平成20年9月3日ではなく,
現実の出願日である平成
26年4月11日となる。

平成22年3月18日に公開された特許公開公報である乙53公報には,構成要件3F以外の本件訂正前発明3の構成要件が全て開示されており,本件訂正前発明3の構成要件3Fに対応する構成として,
前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが略同一面に形成されておりとした場合の発光装置の発明が開示されている。樹脂パッケージの外側面において前記樹脂部と前記リードとが略同一面に形成された発光装置の発明が開示されている乙53公報に触れた当業者
が,樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成された発光装置(構成要件3F)の発明とすることに困難性はない。本件訂正前発明3は,
乙53公報に開示された発明に基づいて当業者が容易
に発明をすることができた。
(原告の主張)

争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す
る。

無効理由6(乙17公報を主引例とする進歩性欠如1)
(争点6-6)
(被告の主張)
乙17公報には,以下の構成を備えた光半導体装置の発明が記載されている(以下,この発明を乙17発明という。)。
3a17

切り欠き部を有するリードと,
前記切り欠き部に埋め込まれた

光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂と,
を備える樹脂パッケージ
を有し,
3c17

前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,

樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,
3d17

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内

底面に発光素子が配置されており,
3e17

前記凹部内に,
前記発光素子を被覆する封止部材が配置されて

おり,
3f17

前記樹脂パッケージの外側面において,
前記樹脂部と前記リー

ドとが同一面に形成されており,
3g17

前記リードは,
前記樹脂パッケージの外底面において露出され

ている
3h17

ことを特徴とする発光装置。

本件訂正前発明3と乙17発明は,本件訂正前発明の発光装置が樹脂パッケージの外側面に沿って形成された切り欠き部を備えているのに対し,乙17発明に係る発光装置は,
前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成された
切り欠き部を備えていない点において相違し,
その余の点において一致する。
乙16公報の【0110】にはこの表面実装型発光装置は,第1のリード21及び第2のリード31に凹凸を設け,第1の樹脂成形体40との接触面積を拡げている。これにより第1の樹脂成形体40から第1のリード21及び第2のリード31が抜脱するのを防止することができると記載されていること,特開平11-191562号公報(以下乙54公報という。)

の【0028】には分割された半導体装置のリード端子34の終端は,図6に示すように,樹脂41表面付近で先細りの形状に形成されるために,リード端子34が樹脂層41の側面から抜け落ちることを防止していると記載されていること,乙21公報の【0057】には前記第1リードの突起部203及び前記第2リードの突起部303は,前記第1リード2及び前記第2リード3が前記絶縁体4から剥離し,抜け落ちるのを防止するために設けられておりと記載されていること,
特開2001-15668号公報
(以
下乙55公報という。
)の【0014】には

リード部2の封止樹脂1と接着する部分に凹状のくぼみ3を設けている。このようにすることによって,トランスファーモールド時に,このくぼみ3に封止樹脂1が入り込み,アンカー効果がでる

と記載されていることなどに照らせば,
リードに設けた
凹凸
状の部位によりリードと樹脂部との密着面積を広げて両者の密着強度を向上させるとの教示は本件特許の出願前の多くの刊行物に記載されている事項であり,また,リードと樹脂部との密着強度を高めることが好ましいこと自体は当業者にとって自明の課題であるといえる。
乙17発明に示された光半導体装置の底面図は,
正負のリードが樹脂部で
分割されている形状であり得ることは当業者に自明である
(乙17公報の図

3等)ところ,そのような装置において正負のリードに凹凸状の部位を設けてリードと樹脂部の密着強度を向上させることには何ら困難性はなく,阻害要因も認められない。また,外側面に切り欠き部を設ける態様のリードフレームは,
乙21公報,
乙54公報,
特開2003-37236号公報
(以
下乙56公報という。
)などにも開示されているように,半導体装置の製

造において一般的に用いられるものである。したがって,乙17発明に触れた当業者が,前記相違点に係る本件訂正前発明3の構成に至ることは容易である。
以上によれば,本件訂正前発明3は,乙17発明及び乙16公報等に記載された発明に基づき,
本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることが

できたものである。
(原告の主張)
争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す
る。


無効理由7(乙17公報を主引例とする進歩性欠如2)
(争点6-7)
(被告の主張)
乙17公報には,上記カにおける被告の主張のとおりの乙17発明が記載されており,本件訂正前発明3と乙17発明は,上記カに記載した点で相違
し,その余の点は一致する。
乙18公報は,
乙17公報の背景技術の項に先行技術文献として記載され
ている公報であるところ,
乙18公報の
【0017】
【0018】
【0021】
ないし【0024】
【0026】
【0027】の記載によれば,乙18公報で
用いられるメタル基板は切り欠き部を設けたリードフレームであり,当該切り欠き部に沿って樹脂基板とリードフレームが切断されてLEDが単個に分離されるのであるから,
乙18公報にはダイシングラインに沿って
リードフレームにあらかじめ切り欠き部を設けておくという技術が開示されている。
乙17発明は,乙18公報に記載された発明では貫通穴を有する樹脂層板を作製する工程,穴を有する接着シートを作製する工程,樹脂層板と接着シートとLED素子を搭載した配線基板を位置合わせして一体化する工程といった複数の工程や複数の部材が必要となるのに対して,従来必要であった複数の工程をトランスファー成型の一つの工程で行うことを可能としたものである(乙17公報の【0006】
【0021】。そうすると,乙1

8公報に開示されているダイシングラインに沿ってスリット(切り欠き部)
があらかじめ設けられているリードフレームを用い,
これに乙17公報に開
示された方法で熱硬化性樹脂層を形成することは,
乙17発明が予定してい
るものといえる。
そして,
乙17発明において上記のようなリードフレームを用いた場合に
は,
ダイシング予定の位置にトランスファー成型によってリフレクターとな
る樹脂部が形成され,スリット(切り欠き部)に沿って樹脂成形体とリードフレームが切断され,
ダイシングの幅は当該スリットの幅よりも狭いことは
明らかであるから(乙18公報の【0022】,それにより製造された発光)
装置が樹脂パッケージの外側面に沿って形成された切り欠き部を備えていることは明らかであり,当業者は,被告乙17相違点に係る本件訂正前発明
2の構成に容易に想到し得る。
したがって,本件訂正前発明3は,乙17発明及び乙18公報に記載された発明に基づいて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
(原告の主張)
争う。原告は,被告が主張する本件訂正前発明3の無効の主張に対し,訂正の再抗弁として,
本件訂正後発明3について無効理由がないことを主張す

る。
本件訂正前発明3についての訂正の対抗主張の成否(争点7)

訂正要件の具備(争点7-1)
(原告の主張)

本件訂正前発明3を本件訂正後発明3のように訂正することは,特許法134条の2第1項ただし書の規定並びに同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものであり,訂正要件を具備する。被告は,
本件明細書3において開示されている発光装置は裏面視で樹脂パ
ッケージの4隅においてリードが露出している態様のものに限られること
を前提として訂正要件を満たさない旨主張するが,本件明細書3の【0022】
【0042】
【0050】の記載によれば,本件明細書3には発光装置に
おいて裏面視で樹脂パッケージの4隅からリードが露出する態様に限定されない構成の発明が開示されているから,被告の主張には理由がない。(被告の主張)

本件明細書3において開示されている発光装置は,
裏面視で樹脂パッケー
ジの4隅においてリードが露出している態様のものに限られるところ,本件訂正後発明3においても,当該発明に係る発光装置が,裏面視で樹脂パッケージの4隅においてリードが露出している旨の限定はされていない。したがって,本件訂正後発明3は,本件明細書3に記載されていない態様
までをも包含することが明らかであり,原告の求めている訂正は,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであるイ
無効理由の解消の有無
無効理由1(明確性要件違反,サポート要件違反1)の解消(争点7-2)

(原告の主張)


本件訂正後発明3の構成要件3C’前記樹脂パッケージは,は,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,というものであり,樹脂パッケージにおけるリードの配置および樹脂部の形状等を規定している。
上記の樹脂パッケージは,発光装置を構成する部材の1つとして

発光素子や封止部材とは独立して把握される部材である。構成要件3C’は,リードと樹脂部からなる部材である樹脂パッケージの構成として,
その凹部の内底面にリードが露出していることを規定しているのであり,
発光装置において発光素子を被覆する封止部材が樹脂パッケージ
の凹部内に配置されていることは,構成要件3C’の規定と何ら矛盾す
るものではない。
したがって,本件訂正後発明3に,明確性要件違反の無効理由は存在しない。

本件訂正後発明3がサポート要件に違反するとの被告の主張は,本件発明2の無効理由1(争点5-1)における被告の主張と実質的に同一であるところ,本件発明2の無効理由1(争点5-1)における原告の主張に述べたところと同様の理由により,被告のサポート要件違反についての主張は理由がない。

(被告の主張)
本件訂正前発明3における無効理由1における被告の主張と同様の理由により,構成要件3B’及び3C’の規定は,明確性要件及びサポート要件に違反する。
無効理由2-2(乙16公報を主引例とする進歩性欠如)の解消(争点7-3)
(原告の主張)
本件訂正後発明3と乙16発明は,以下の点で相違する。



本件訂正後発明3では,リードが有する切り欠き部が,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,
前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,
前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有して」いる
(構成要件3B’のに対し,

乙16発明は,
前記樹脂パッケージの外側
面において互いに分離した,第1ないし第4の切り欠き部を有しない点。②

本件訂正後発明3では,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されている
(構成要件3F’のに対し,

乙16発明では,いずれの外側面においても,樹脂部とリードとが同一面に形成されていない点。

本件訂正後発明3では,リードが前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第3外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第4外側面それぞれに露出した第2リードを有している(構成要件3G’)のに対し,乙16発明では,第1のリー
ド及び第2のリードはそれぞれ一つの外側面においてのみ露出している点。

乙16公報に基づいて上記①の相違点に係る構成が容易に想到し得るというためには,乙16公報に記載されている構成(樹脂パッケージの外側面において互いに分離しておらず連続している切り欠き部)を,互いに分離したものとすることが,
当業者にとって容易想到であった必要がある
ところ,この点についての主張,立証はない。
上記②及び③の相違点について,乙16公報に記載されている構成においてもリードと熱硬化性樹脂との密着性という課題は解決されているから,密着性の向上という観点に基づいて前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成された構成を採用する動機付けはな
く,また,リードを上記③の相違点に係る本件訂正後発明3の構成のように露出させる動機付けもない。
(被告の主張)
本件訂正後発明3と乙16発明は以下の点で相違し,その余の構成で一致する。



本件訂正後発明3では,リードが有する切り欠き部が,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しているのに対し,
乙16発明では,
リードに設けられた凹凸が樹脂パッケージの外側面に沿って形成されたものではない点。

本件訂正後発明3では,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されているのに対し,乙16発明では,いずれの外側面においても,
樹脂部とリードとが同一面に形成されてい
ない点。


本件訂正後発明3では,リードが前記第一外側面,前記第二外側面及び前記第三外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第一外側面,前記第二外側面及び前記第四外側面それぞれに露出した第2リードを有しているのに対し,乙16発明では,第1のリードおよび第2のリードはそれぞれ一つの外側面においてのみ露出している点。

本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられているのに対し,乙16発明では,リードに設けられた凹凸は,上面視で,発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられていない点。
上記①の相違点について,原告は,発光装置のリードについて,一つの
辺の全てが切り取られていたとすれば,
それは発光装置において単にリー
ドの幅が狭くなっていることを意味するのであり,
そのことをもってリー
ドが切り欠き部を有することにはならないと主張するが,
切り欠き部とは切り欠いた部分であるから,乙16公報の図4の構成も切り欠き部に該当するというべきである。原告の主張は前提において誤りがあり,上記①の相違点は存在しない。

上記②の相違点について,本件訂正後発明3が上記②の相違点に係る構成を採用したのは,熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高めるための切り欠き部を第1ないし第4外側面のそれぞれに設けることとした結果にすぎない。熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高めることが好ましいことは当業者にとって自明の課題であるから,
上記②の相違点は,

当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものである。
上記③の相違点につき,上記②の相違点が当業者において適宜なし得る設計事項の範囲のものでしかない以上,
その結果である上記③の相違点も
当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものでしかない。
上記④の相違点につき,乙16公報の図4の構成は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられている切り欠き部を有しているし,そもそも,切り欠き部の長さを発光装置の全包囲周の2分の1以上とすることは単なる設計事項でしかない。以上のとおり,
熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高めることが
好ましいことが当業者にとって自明の課題である以上,
上記の相違点はい
ずれも当業者であれば適宜選択する事項でしかないから,
本件訂正後発明

3は乙16発明から当業者が容易に想到することができたものであり,本件訂正請求によっても無効理由2-2は解消されていない。
無効理由3(明確性要件違反,記載要件違反2)の解消(争点7-4)(原告の主張)
同じ切断工程で樹脂部とリードとが切断された場合,多少の凹凸はある
としても同一面といえる切断面が形成されることは明らかであり,これを本件明細書3では略同一と表現している。
同一面という用語は略同一面という用語に包含されるものであ
るから,
同一
と表記していても,
同じ一度の切断工程で形成される程度
に均一な面であれば,完全に同一面でなくても同一に含まれると理解
される。
したがって,本件訂正後発明3は,発明の詳細な説明に記載されているものである。
(被告の主張)
本件特許3について,本件訂正請求後の請求項1では前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,…前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されて,切断面を構成しており,と記載することにより同一面が切断面であることが特定されていた。
これに対し,請求項1の記載を引用しないものとして独立形式請求項へ改められた本件訂正請求後の請求項2では
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,…前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されており,と記載されていて,同一面切断面

である旨が請求項で特定されていない。すなわち,仮に樹脂部とリードが切断面を構成
しているとしても,
それが
同じ切断工程で形成された
ものか否かは明らかではない。
本件訂正後発明3は,
発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含

するものであるか,
特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない
ことから,本件訂正請求によっても無効理由3は解消されていない。無効理由5(乙53公報を主引例とする進歩性欠如)の解消(争点7-5)
(原告の主張)
における原告の主張のとおり,無効理由3には理

由がないから,それを前提とした無効理由5にも理由がない。
(被告の主張)
無効理由3(

)における被告の主張のとおり,本件訂正請求によ

っても無効理由3は解消されていないから,本件訂正によっても特許法44条2項のみなし規定は適用されないことになり,乙53公報は本件訂正後発明3に係る公知文献になる。本件訂正前発明3の無効理由5(争点6-6)における被告の主張で述べたとおり,乙53公報には同一面という文言以外の訂正後発明3の構成の全ての開示がある。したがって,本件訂正請求によっても無効理由5は解消されていない。

無効理由6(乙17公報を主引例とする進歩性欠如1)の解消(争点7-6)
(原告の主張)
本件訂正後発明3と乙17発明は以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部に埋め込まれるとともに前記リードの上方に一体に形成された,…熱硬化性樹脂からなる樹脂部
を備えるのに対して,乙17発明では,切り欠き部に埋め込まれた熱硬化性樹脂とリードの上方に形成された樹脂が別体である点。


本件訂正後発明3では,
光反射性物質として酸化チタンが含有されるのに対し,乙17発明では,光反射性物質としてアルミナ,酸化マグネシウム,酸化アンチモン,水酸化アルミニウム,硫酸バリウム,炭酸マグネシウム,炭酸バリウム,無機中空粒子が含有される点。③

本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しているのに対し,乙17発明にはそのような切り欠き部が開示されていない点。


本件訂正後発明3では,
前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材が配置されているのに対し,乙17発明では,凹部内に発光素子を被覆するエポキシ樹脂からなる封止部材が配置されている点。


本件訂正後発明3では,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されているのに対し,乙17発明では,二つの外側面においては,リードの上方に形成された樹脂部とリードのみが同一面に形成されている点。


本件訂正後発明3では,
前記リードは,金属板に銀メッキ処理が施されてなり,…前記金属板の少なくとも上面全面に銀メッキ処理が施されているのに対し,乙17発明のリードは,凹部内にのみ銀メッキ処理が施されている点。


本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられているのに対し,乙1
7発明はそのような構成を備えていない点。
切り欠き部に関連した上記③,⑤及び⑦の相違点について,仮に,熱硬化性樹脂とリードとの密着性を高めるという課題が周知であるとしても,
ある課題を解決する手段としては様々な態様があり得るのであるから,
課題の周知性がその課題を解決するための具体的な態様の周知性まで
意味するものでないことは明らかである。したがって,本件訂正後発明3において採用される具体的な構成が周知であることを立証しない限り,当該構成が周知ないし設計的事項になるとはいえない。被告が副引例として主張する乙16公報等には上記③,⑤及び⑦の相違点に係る本件訂正後発明3の構成を充足する態様の切り欠き部が開示されていないから,被
告の主張には理由がない。
本件訂正後発明3は,本件明細書3の【0008】
【0009】の記載の
とおり,
乙17公報に記載された方法で発光装置を製造しようとする場合
には,
リードフレームに樹脂を射出成型した積層体をダイシング等により切断する時に剥離してしまうという課題が存在することを新たに見出し
てなされたものであるから,上記③,⑤及び⑦の相違点に係る構成は単なる設計事項ではない。
以上によれば,少なくとも上記③,⑤及び⑦の相違点に係る構成の容易想到性は否定されないから,
その他の相違点の容易想到性を検討するまで
もなく,
本件訂正後発明3が無効理由6によって無効とされるものではな
い。
(被告の主張)
本件訂正後発明3と乙17発明は,原告の主張に記載の①ないし⑦の点で相違し,その余の構成で一致する。
上記①の相違点について,乙17公報の図2に示される態様は,正負の金属配線105の間に形成された熱硬化性樹脂103が,
その上方に形成された熱硬化性樹脂103と一体であることを前提としつつ,正負の金属配線105の間に形成された熱硬化性樹脂が両金属配線を絶縁分離するものである一方で,
その上方に形成された熱硬化性樹脂が光半導
体素子を収容する凹部を形成するものであり,
両者の役割が異なっている
ために,図面上ではハッチングの方向が逆になっていたり,両者の間に境
界線が引かれていたりするにすぎない。したがって,上記①の相違点は実質的な相違点ではない。
上記②の相違点について,乙17発明の【0007】には一般に使用されているリフレクター材料は,酸化チタンを顔料として用いているため,発光波長が短波長領域になると急激にその反射率が低下してしまうとの
記載があるため,
樹脂部に含有される光反射性物質として酸化チタンを用
いることには阻害要因があるようにも思われるが,上記【0017】は,熱硬化後の光反射用熱硬化性樹脂組成物を波長800nmないし350nmにおける光反射率が80パーセント以上のものとする場合には酸化チタンは顔料として好ましくない旨を記載しているにすぎないのであっ
て,それよりも低い特性(例えば,本件明細書3の実施例1のように波長450nmにおける光反射率が81%程度のもの)でよいのであれば,一般に使用されている酸化チタンは何ら支障なく用いることができるのであるから,上記【0017】の記載をもって,乙17発明で酸化チタンを採用することについての阻害要因があるとはいえない。
上記②の相違点は
当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものである。
上記③の相違点について,
熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高
めることが好ましいことは当業者にとって自明の課題である。
当該切り欠
き部を外側面になるべく多く設ける(すなわち,樹脂成形体とリードの密着性を向上させる領域をなるべく多く設ける)ことによって,熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性が高まることは明らかである。上記③の相違
点は,当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものである。
上記④の相違点について,本件明細書3の【0051】における封止部材の材質は熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂のうち,エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂,アクリレート樹脂,ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種により形成することが好ましく,特にエポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂が好ましいという記載中,特に好ましいとされているエポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂の4種の樹脂のうちの2種(シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂)を選択したものである。したがって,上記④の相違点は実質的な
相違点ではない。
上記⑤の相違点について,
当該相違点は上記③の相違点の結果にすぎな
い。上記③の相違点が,当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものでしかない以上,上記⑤の相違点も当業者が適宜なし得る設計事項の範囲のものでしかない。

上記⑥の相違点について,乙17公報に,凹部の内側にのみ銀メッキを形成した態様が図示されているのは,乙17公報の図2(b)に示された態様の光半導体装置が,まず金属配線を形成し,次いで樹脂組成物からなるリフレクターを形成し,
その後に銀メッキを施すことで製造されたもの
であることから,
リフレクターの形成後に銀メッキ処理が実行されるもの
として図示されているからにすぎない。金属板の少なくとも上面全面に銀メッキ処理が施されたリードを採用することは,
当業者が適宜なし得る設
計事項の範囲のものでしかない。
上記⑦の相違点について,
熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高
めることが好ましいことが当業者にとって自明の課題であり,樹脂成形体とリードの密着性を向上させる領域をなるべく多く設けることによって
熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性が高まることは明らかであるから,切り欠き部を,上面視で,発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けるか否かは,単なる設計事項でしかない。
以上のとおり,
熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性を高めることが
好ましいことが当業者にとって自明の課題である以上,
上記の相違点はい

ずれも当業者であれば適宜選択する程度の事項でしかないから,
本件訂正
請求によっても無効理由6は解消されていない。
原告は,本件訂正後発明3は,リードフレームに樹脂を射出成型した積層体をダイシング等により切断する時に剥離してしまうという課題を新たに見出し,これを解決するために上記の③,⑤及び⑦の相違点に係る構
成を採用したものであるなどと主張するが,上記の課題はリードと樹脂部との密着面積を広げて両者の密着強度を向上させるという課題に等しく,新たに見出されたものではない。そして,そのような課題を解決するためにリードに凹凸状の部位を設ける構成を採用することが当業者に広く認識されていた以上,上記の③,⑤及び⑦の相違点に係る構成を採用する
ことは当業者にとっての設計事項でしかない。
無効理由7(乙17公報を主引例とする進歩性欠如2)の解消(争点7-7)
(原告の主張)
本件訂正後発明と乙17発明との間には,

のとお

り,①ないし⑦の相違点がある。乙18公報には上記①ないし⑦の相違点に係る本件訂正後発明3の構成は記載されていない。

したがって,
上記①ないし⑦の相違点に係る構成の容易想到性についての被告の主張には理由がなく,
これらの相違点に係る容易想到性は否定さ
れないから,
本件訂正後発明3が無効理由7によって無効とされるもので
ない。
(被告の主張)

(本件訂正前発明の無効理由7)の被告の主
張に記載したとおりの技術が開示されている。そして,
6)における被告の主張のとおり,本件訂正後発明3と乙17発明との無効理由6に係る上記①ないし⑦の相違点はいずれも当業者であれば適宜選択する程度の事項であり,乙18公報に記載された発明に基づいて当業
者は容易に本件訂正後発明の構成に想到したから,
本件訂正によっても無
効理由7は解消されていない。

本件LEDが本件訂正後発明3の技術的範囲に属するか否か
切り欠き部
(構成要件3A’
,3B’
)の充足性(争点7-8)

(原告の主張)
争点3-1(
切り欠き部
(構成要件3A,3B)の充足性)における
原告の主張と同様の理由により,本件LEDには,
切り欠き部
(構成要
件3A’
,3B’
)が存在する。
(被告の主張)

争点3-1(
切り欠き部
(構成要件3A,3B)の充足性)における
被告の主張と同様の理由により,本件LEDには切り欠き部(構成要(
件3A’
,3B’
)があるとはいえない。
光反射性物質として酸化チタンが含有される
(構成要件3A’
)の充
足性(争点7-9)
(原告の主張)
争点2-1光反射性物質を含有する樹脂成形体

(構成要件2B-1)
の充足性)における原告の主張と同様の理由により,本件LEDは光反射性物質として酸化チタンが含有される(構成要件3A’
)といえる。
(被告の主張)
争点2-1光反射性物質を含有する樹脂成形体

(構成要件2B-1)

の充足性)における被告の主張と同様の理由により,本件LEDは光反射性物質として酸化チタンが含有される(構成要件3A’とはいえない。

シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材
(構成
要件3E’
)の充足性(争点7-10)
(原告の主張)

本件LEDの封止部材と測定装置に附属するシリコーン樹脂のスペクトルを比較すると,スペクトルのピークがほぼ一致しており(原告分析結果報告書)
,本件LEDの封止部材はシリコーン樹脂である。
スペクトルの比較において,
全体の形状が完全に一致していなくても両
者のピークの位置がほぼ一致しているため,
本件LEDの封止部材がシリ

コーン樹脂であることは明らかである。また,本件LEDの封止部材はシリコーン樹脂の構成元素であるSi,O,Cを含有しているほか,一般的に,LEDの封止部材には,温度安定性等の観点からシリコーン樹脂が使用されており,現に,被告(又は被告関連会社である東芝)自身も多数の特許公報で封止部材としてシリコーン樹脂を使用することを記載してい
る。
(被告の主張)
原告分析結果報告書には,比較サンプルの作製方法や入手方法に関する記載がなく,
比較サンプルがシリコーン樹脂であったことについての客観
的な根拠はない。また,原告分析結果報告書の記載では,本件LEDの封止部材と比較サンプルのスペクトルの波形が全体として大きく異なっているし,
本件LEDの封止部材と比較サンプルのスペクトルのピークの位
置がほぼ一致しているといえるか否かは明らかでなく,また,両者のピークがほぼ一致していれば両者が同じ樹脂であるといえる根拠も明らかでない。
構成要件3F’
前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されての充足性(争点7-11)(原告の主張)
争点2-2-1(
前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように構成要件2E)(
の充足性)争点3-2前,(記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)の充足性における原告の主張と同様
の理由により,
本件LEDは,
構成要件3F’
前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されてを充足する。
(被告の主張)
争点2-2-1(
前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように構成要件2E)(
の充足性)争点3-2前,(記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)
の充足性)
における被告の主張と同様

の理由により,
本件LEDは,
構成要件3F’
前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されてを充足しない。前記リードは…前記樹脂パッケージの外底面において露出されて
(構
成要件3G’
)の充足性(争点7-12)
(原告の主張)
争点3-3(
前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている(構成要件3G)
の充足性)
における原告の主張と同様の理
由により,本件LEDは,構成要件3G‘を充足する。
(被告の主張)
争点3-3(
前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている(構成要件3G)
の充足性)
における被告の主張と同様の理

由により,本件LEDは,構成要件3G’を充足しない。
損害発生の有無及びその額(争点8)
(原告の主張)

テレビの基本的な性能は画質の良さに左右されるところ,
本件LEDは本
件発明1の実施によって長寿命の白色,高発光効率,長時間使用下での輝度
の低下防止を実現し,被告製品の画質の良さに貢献している。このことは被告又はその関連会社である東芝が,ホームページ上で被告製品の主な機能の一つにLEDを挙げていることからも明らかである。また,本件LEDは,R,G,B3色で白色光を得る場合と比較して,テレビの製造コスト低下に貢献している。このような本件LEDの重要性に照らせば,被告製品の
販売額のうち本件LEDが寄与している割合は5パーセントを下らない。イ
本件発明1は,発光層の組成,発光層の発光スペクトルのピーク,蛍光体の組成などを特定することにより,演色性が高く,長時間にわたって高輝度を維持し,発光効率の優れた白色発光を実現したものであり,これにより蛍
光灯に代わり得る白色LEDが初めて実現したといえる。
本件発明1の白色
LEDの代替品は存在せず,多数の本件発明1の侵害品が存在するというだけである。また,本件発明2及び3は,LEDの樹脂部とリードの構成や製造方法に関する技術であり本件LEDの全体にわたって実施されている。原告は,本件発明1ないし3その他LEDに関する特許について,他社が有望な特許権を持っている場合にはクロスライセンス契約を締結することもあるが,基本的には他社にライセンスをすることはない。

これらの事情に照らせば,上記アの被告製品の販売額のうち本件LEDが寄与している割合(5パーセント)を前提とした本件発明1ないし3についての実施料率は,少なくとも10パーセントを下らない。

損害額の算定
特許法102条3項に基づく損害額
1億2466万8436円
(計算式)
147億1230万5518円×0.5%=7356万1528円(イ号LED)

102億2138万1519円×0.5%=5110万6908円(ロ号LED)
弁護士費用
1200万円
消費税相当額

1093万3475円
(計算式)
(1億2466万8436円+1200万円)×0.08=1093万3475円
合計

1億4760万1911円(なお,原告は,このうち1億3200万円を一部請求するものである)
(被告の主張)

テレビのバックライト用白色LEDは,
価格に着目して選択されるコモデ
ィティ商品であるといえるから,その価格を上回る付加価値はない。被告製品1台当たりのバックライト用白色LEDの平均価格は221円
であり,被告製品の平均工場出荷価格は,被告製品1が3万3902円,被告製品2が3万4461円である。上記のとおり,被告製品の販売額のうち本件LEDが寄与している割合は,
上記の平均工場出荷価格に占める被告製
品1台当たりのバックライト用白色LEDの価格であるというべきであるから,最大でも0.65パーセントないし0.64パーセントである。

本件では本件発明1ないし3の存続期間と被告製品の販売期間が一致し
ていないから,
本件発明1ないし3のそれぞれについての実施料率を明らか
にして損害賠償額を算定する必要がある。
本件発明1
本件発明1の原出願日は平成9年7月29日であり,本件発明1の特許権は平成29年7月28日に存続期間を満了している。被告製品の販売期間は平成26年1月から平成28年12月であり,特許の存続期間の末期の時期に販売がされていたにすぎない。どのような技術であっても時間の経過とともに陳腐化し,より新しい優れた技術が登場することは社会常識であり,それは本件発明1についても同様である。被告製品の販売開始時
期である平成26年の時点で,白色系を発光させる蛍光体にはシリケート系蛍光体などの代替技術が存在しており,また,青色LEDと緑色・赤色蛍光体を組み合わせた新規の白色LED(高演色白色LED)も普及していた。
平成22年に公表されたロイヤルティ料率データハンドブックでは
電気の実施料率の平均は2.9パーセントとされている。そして,発明は時間の経過に伴って陳腐化が進むことから,実施料率も低下することが一般的である。したがって,本件発明1の実施料率は,被告製品の販売期間が本件発明1の出願後16年目から19年目であることを考慮すれば,上記2.9パーセントの3分の1程度が妥当というべきであり,1パーセントを上回ることはない。
本件発明2

本件発明2については,無効審判(無効2018-800125号)において審決予告がされたから,このまま無効になるか,又は原告が訂正請求をした結果,本件発明2の技術的範囲が狭まり,被告製品が訂正後の技術的範囲に含まれないことになる可能性が生じる。社会通念上,このような不安定な状態の特許について使用の許諾を受けようとする者は想定で
きないから,本件発明2の実施料率はゼロであると評価すべきである。仮にゼロではないとしても,
その価値は極めて低いことが明白であるから実
施料率は0.1パーセントが相当というべきである。
本件発明3
本件発明3は,LEDの製造コストを低下させるものであるところ,L
EDの製造コストを削減する方法には様々な手段があり,
本件発明3はそ
のうちの一つの技術にすぎない。
バックライト用白色LEDの平均単価が
年々低下していることは,多数のメーカーが様々な代替技術を活用してコストを削減していることを示すものである。これらの事情に照らせば,本件発明3のコスト低減効果は実質的にはないか,
仮にあったとしても有意

なものではないから,本件発明3の実施料率は,
ロイヤルティ料率データハンドブックでは電気の実施料率の平均(2.9パーセント)の3分の1を上回ることはないというべきである。すなわち,本件発明3の実施料率は1パーセントを上回ることはない。

被告製品2に使用されているLEDにおいて,
原告が主張立証するLED
チップとは異なるチップが使用されていることに照らせば,原告が主張立証するロ号LEDが使用されている被告製品2の販売数量は不明であるといわざるを得ないから,被告製品2に関する損害賠償請求は認められない。また,原告は,実施料相当額の全額と弁護士費用に消費税率8パーセントを乗じているが,被告製品1は平成26年1月から販売されているから,同月から同年3月末日までの売上高を明らかにした上で,当該売上高について
は消費税率を5パーセントとして計算すべきである。原告はそのような主張立証をしていないから,消費税相当額についての損害賠償請求は認められない。

以上の検討によれば,別紙被告主張の損害額記載のとおり,損害額は95万6701円を超えることはない。

第3当裁判所の判断
1本件LEDが本件発明1の技術的範囲に属するか否か(争点1)について本件明細書1の記載

技術分野
本願発明は,LEDディスプレイ,バックライト光源,信号機,照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し,特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置及びそれを用いた表示装置に関する。(【0001】)

従来技術とその問題点
発光ダイオードは,小型で,効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で,半導体素子であるため,球切れの心配がなく,初期駆動特性及び耐震性に優れ,さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため,各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また,最近では,超高輝度,高効率なRGB(赤,緑,青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され,これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは,少ない電力で動作させることができ,軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し,今後益々使用されるものと期待される。(【0002】)
さらに,最近では,発光ダイオードを用いて,白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには,発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので,例えば,R,G,Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合,発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また,発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合,各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり,駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに,発光素子が半導体発光素子であるため,個々に温度特性や経時変化が異なり,色調が使用環境によって変化したり,各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち,発光ダイオードは,個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが,発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。(【0003】)
そこで,本出願人は先に発光素子によって発生された光が,蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを,特開平5-152609号公報,特開平7-99345号公報,特開平7-176794号公報,特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは,1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり,以下のように構成される。(【0004】)
上記公報に開示された発光ダイオードは,具体的には,発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し,発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して,吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。(【0005】)
上述の開示された発光ダイオードにおいて,発光素子として,青色系の発光が可能な発光素子を用いて,該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。(
【0006】

しかしながら,従来の発光ダイオードは,蛍光体の劣化によって色調がずれたり,あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。ここで,黒ずむというのは,例えば,(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には,この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり,また,有機系の蛍光体材料を用いた場合には,2重結合が切れる等により着色することをいう。特に,発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い,蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち,半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり,蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し,より多くの光が吸収されるようになる。,又は蛍光)体の使用量を減らした場合(すなわち,相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては,蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので,蛍光体の劣化が著しい。また,発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると,蛍光体の劣化がさらに激しくなる。(
【0007】

また,発光素子の近傍に設けられた蛍光体は,発光素子の温度上昇や外部環境(例えば,屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ,この熱によって劣化する場合がある。(

【0008】)
さらに,蛍光体によっては,外部から侵入する水分や,製造時に内部に含まれた水分と,上記光及び熱とによって,劣化が促進されるものもある。またさらに,イオン性の有機染料を使用すると,チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし,色調が変化する場合がある。(【0009】)

発明が解決しようとする課題

したがって,本願発明は上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。(

【0010】)

課題を解決するための手段
本発明者らは,この目的を達成するために,発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において,(1)発光素子としては,高輝度の発光が可能で,かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること,(2)蛍光体としては,上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて,該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても,特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は,我々の検討によると太陽光に比較して約30倍~40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので,発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程,蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる),(3)発光素子と蛍光体との関係としては,蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること,が必要であると考え,鋭意検討した結果,本発明を完成させた。(【0011】)
すなわち,本発明の発光装置は,白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと,を特徴とする発光ダイオードである。(【0012】。な
お,訂正に係る審決(甲23)による変更後の記載である。


ここで,窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN,ただし,0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては,InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め,種々のものが含まれる。(

【0013】)
また,前記フォトルミネセンス蛍光体としては,Y3Al5O12:Ce,Gd3In5O12:Ceを始め,上述のように定義される種々のものが含まれる。この本願発明の発光装置は,高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので,高輝度の発光をさせることができる。また,該発光装置において,使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は,長時間,強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって,長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき,発光素子からの強い光のみならず,野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき,色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また,この本願発明の発光装置は,使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が,短残光であるため,例えば,120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。(【0014】)

発明の効果
以上説明したように,本発明に係る発光ダイオードは,所望の色を有する光を発光することができ,長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って,一般的な電子機器に限られず,高い信頼性が要求される車載用,航空産業用,港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。(【0139】)
本件発明1の課題等
本件発明1は,LEDディスプレイ,バックライト光源,信号機,照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し,発光素
子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置に関するものである。
従来,白色光を得るための発光ダイオードに係る構成として,R,G,Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色させる構成があったが,
そのような構成では,
①発光素子の色調や輝度等のばらつきにより所望の白色を発生させることができない,②発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合には各発光素子の駆動電力などが異なるため個々に所定の電圧を印加する必要があり,駆動回路が複雑になる,③発光素子が半導体発光素子であるため,個々に温度特性や経時変化が異なり,色調が使用環境によって
変化したり各発光素子によって発生される光を均一に混色させることができず,色むらを生じたりする場合があるなどといった課題があった。また,従来,白色光を得るための発光ダイオードに係る構成として,青色系の発光が可能な発光素子を使用して,当該発光素子を,その発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によりモールドする構成が考えら
れたが,そのような構成では,①蛍光体の劣化によって色調がずれたり蛍光体が黒ずむことによって光の外部取り出し効率が低下したりする場合がある,②蛍光体の変換効率を向上させた場合,又は蛍光体の使用量を減らした場合には蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるため蛍光体の劣化が著しい,
③発光素子の発光強度をさらに高めて長期にわたって使用すると蛍光体
の劣化がさらに激しくなる,④発光素子の温度上昇や外部環境により高温にさらされ,蛍光体が劣化することがある,⑤蛍光体によっては外部から侵入する水分や,製造時に内部に含まれた水分と光及び熱によって劣化が促進される,⑥イオン性の有機染料を使用するとチップ近傍では直流電界により電気泳動を起こして色調が変化するなどといった課題があった。
本件発明1は,上記の課題を解決するため,白色光を得るための発光ダイオードに係る構成として,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420ないし490nmの範囲にあるLEDチップと,当該LEDチップによって発光された光の一部を吸収し,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1
つの元素とを含んでなる,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含むという構成を採用したものである。
これにより,所望の色を有する光を発光することができ,また,長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なく,耐候性に優れた白色系の発光ダイオードを作製することができるようになる。

白色系を発光する発光ダイオードであって
(構成要件1A)の充足性(争
点1-1)

後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。原告が市場から購入した被告製品を分解し,バックライトを直接視認できる状態で点灯させると,バックライトを構成している24個の本件LE
Dは,いずれも白色に発光した。
(甲9,10,47ないし52)
発光スペクトル測定装置(積分球)を用いて本件LEDの色度を測定すると,イ号LEDは色度xが0.274,色度yが0.238であり,ロ号LEDは色度xが0.271,色度yが0.236であった。
(甲61)
本件明細書1の図16では,本件明細書1の表1の蛍光体とピーク波長
465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにより実現できる色再現範囲を示す色度図が示されているところ,上記のLEDの色度は,いずれも,白色領域とされる領域に含まれるとされている。
平成22年1月25日に発行された発光ダイオードという文献には白色LEDの色度座標は,色度x,yともに,いずれも0.2を少し超える程度の位置であることが記載されている。
(甲62)

上記アによれば,イ号LED及びロ号LEDは,いずれも白色系を発光する発光ダイオードであると認められる。
したがって,イ号LED及びロ号LEDは,
白色系を発光する発光ダイオード
(1a-1,1a-2)であると認められ,いずれも構成要件1Aを充足する。
これに対し,被告は,原告分析結果報告書に示された写真には撮影条件に
関する記載がないことを主張するが,これは撮影条件についての抽象的な可能性を指摘するものであり,上記の発光スペクトル測定の結果等に照らし,上記判断を左右するものではない。
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む(構成要件1E)
の充足性
(争点1-
2)について

後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。本件LEDの封止部材に含有された粒子は,青色光を照射すると黄色に
発光する蛍光体であった。
(甲9,10)

を用いて粒子の構成要素を測定したところ,O,Al,Y,Ceが検出された。
なお,EDX分析とは,物質に一次線(X線や電子線・粒子線)を照射し,
原子内で励起された電子がもとの状態に戻る際に出てきたX線を検出し,
そのX線のエネルギーが元素の種類に応じて異なることを利用して元素の種類を特定する分析方法である。
(甲9,10,弁論の全趣旨)

法)を用いてラマンスペクトルを測定したところ,上記粒子のラマンスペクトルのピーク位置と,比較サンプルである,ガーネット構造の結晶性物質であるセリウムで付活されたYAG系蛍光体
(Y2.85Ce0.15Al5O
)のラマンスペクトルのピーク位置は,概ね一致した。

12

なお,ラマン分光分析法とは,試料に光を照射し,試料と相互作用して散乱(反射)された波長が異なる光(ストークスラマン光)を検出し,試料(分子)の結晶構造や分子構造を知る手法である。
(甲9,10,35,
36,弁論の全趣旨)
イ号LEDの蛍光体は,442nm付近の青色光を吸収して,559nm付近の黄色光を発光する。
(甲9)
イ号LEDについて,電子線マイクロアナライザー(EPMA分析)を用いて,封止部材に含まれる蛍光体粒子の定性分析を行ったところ,10
ないし20マイクロメートルの大粒子からはC,O,Al,Ga,Y,Ceが検出され,5マイクロメートル以下の小粒子からはC,O,Al,Si,Ga,Y,Ceが検出されたが,小粒子のSiについては周辺の樹脂を検出したものであると推測されている。
なお,EPMA分析とは,物質に電子線を照射した際に放出されるX線
の波長を測定することにより,
微小領域の元素の種類を分析する手法であ
る。
(乙68,弁論の全趣旨)
このうち,Cについて,大粒子の測定箇所(4箇所)における質量パーセントの割合は4.
7パーセント,
5.
5パーセント,
6.
4パーセント,
7.2パーセントであり,原子パーセントの割合は14.0パーセント,
16.
1パーセント,
18.
6パーセント,
20.
5パーセントであった。
また,小粒子の測定箇所(4箇所)における質量パーセントの割合は7.8パーセント,10.7パーセント,17.3パーセント,32.6パーセントであり,原子パーセントの割合は17.7パーセント,21.5パーセント,27.1パーセント,57.1パーセントであった。
(乙68)
上記アによれば,イ号LED及びロ号LEDの封止部材に含まれる蛍光体は,Y,Alを含む,セリウムで付活されたガーネット蛍光体であると認められる。
被告は,イ号LED及びロ号LEDの蛍光体は,C(炭素)を含んでいることから,構成要件1Eを充足しない旨主張する。
しかし,仮に,Cが蛍光体に含有されている元素であれば,その蛍光体
は通常のYAG系蛍光体とは異なる波長を示すと考えられるところ,上記イ号LEDの蛍光体は442nm付近の青色光を吸収して
559nm付近の黄色光を発光するものであり,これはYAG系蛍光体の一般的な波長である。また,YAG系蛍光体にCが含まれるものは知られていないことがうかがえる。したがって,検出されたCは,蛍光体に含有
されている元素ではなかったことがうかがわれる。また,技術常識によれば,EPMA分析では試料表面に付着した真空ポンプなどの油分子等が電子線照射により炭化されることなどによりコンタミネーションとして炭素が検出されることがあるところ,上記のEPMA分析により検出されたCの含有量には一定のばらつきがあり,他に,EPMA分析によりCが検
出された原因を示す事情は見当たらないことから,イ号LEDの蛍光体から炭素が検出された原因は,EPMA分析の際に生じたコンタミネーションであると認められる。
そうすると,イ号LEDの蛍光体にC(炭素)が含まれているとは認められないから,被告の上記主張は採用することができない。

以上によれば,イ号LED及びロ号LEDは,いずれも,
YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むという構成(1e-1,1e-2)をそれぞれ有していると認められるから,イ号LED及びロ号LEDはいずれも構成要件1Eを充足する。
本件発明の1A及び1E以外の構成要件について,原告は,イ号LEDについては甲9報告書,ロ号LEDについては甲10報告書に基づき,それぞれの構成要件を充足すると主張する。これに対し,被告は,これらの報告書は原告の従業員が作成したものにすぎないなどと主張し,それぞれの報告書の信用性を争うほか,
そこで分析等されているLEDが被告製品に搭載されていたこと
が認められないと主張する。
しかし,証拠(甲47ないし52)及び弁論の全趣旨によれば,原告が被告
製品を市場において購入し,それを分解し,本件LEDを取り出した上で,その本件LEDについて原告分析結果報告書に記載された分析をしたと認められる。また,被告は,LEDチップの形状について,原告分析結果報告書において被告製品2に搭載されていたとされるものの形状と被告が市場において購入した被告製品2に搭載されていたものの形状が異なる旨主張する。しかし,
原告分析結果報告書において分析されたLEDは,上記のとおり,被告製品2に搭載されていたものであると認められる。被告は,被告が購入した製品に搭載されていたというLEDが本件発明1の構成要件の充足性にどのように影響するかについては明らかにはしていない。同じ製品に用いられる白色系発光のLEDの構成部材であるLEDチップの形状が異なったとしても白色系発
光のLEDとしては同一の仕様となっているのが自然であると考えられることからも,上記被告の主張によって,原告分析結果報告書の結論が左右されるとは認められない。
そして,甲9報告書によれば,イ号LEDは,(1b-1)該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,(1c-1)前記発光層の発光スペクトルのピークが約442nmであるLEDチップと,(1d-1)該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長である発光スペクトルのピークが約559nmの光を発光する,(1f-1)ことを特徴とする発光ダイオード。であると認められ,構成要件
1B,1C,1Dを充足する。
また,甲10報告書によれば,ロ号LEDは,(1b-2)該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,(1c-2)前記発光層の発光スペクトルのピークが約447nmであるLEDチップと,(1d-2)該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長である発光スペクトルのピークが約555nmの光を発光する,(1f-2)ことを特徴とする発光ダイオード。であると認められ,構成要件
1B,1C,1Dを充足する。

発明1の技術的範囲に属する。
2
本件LEDの製造方法が本件発明2の技術的範囲に属するか否か(争点2)に
ついて
本件明細書2の記載


技術分野

本発明は,照明器具,ディスプレイ,携帯電話のバックライト,動画照明補助光源,その他の一般的民生用光源などに用いられる発光装置及び発光装置の製造方法などに関する。(

【0001】)


背景技術
発光素子を用いた発光装置は,小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また,この発光素子は半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ,振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため,発光ダイオード(LED),レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いる発光装置は,各種の光源として利用されている。(【0002】)
従来,発光装置を製造する方法として,リードフレームを非透光性で光反射性を有する白色樹脂でインサート成形し,リードフレームを介して所定の間隔で凹部形状のカップを有する樹脂成形体を成形する方法が開示されている(例えば,特許文献1参照)ここでは白色樹脂の材質が明示されてい。ないが,インサート成形することや図面から,一般的な熱可塑性樹脂が用いられる。一般的な熱可塑性樹脂として,例えば,液晶ポリマー,PPS(ポリフェニレンサルファイド),ナイロン等の熱可塑性樹脂を遮光性の樹脂成形体として用いられることが多い(例えば,特許文献2参照)。【0004】


しかしながら,熱可塑性樹脂はリードフレームとの密着性に乏しく,樹脂部とリードフレームとの剥離を生じやすい。また,熱硬化性樹脂は樹脂の流動性が低いため複雑な形状の樹脂成形体を成形するには不適切であり,耐光性にも乏しい。特に近年の発光素子の出力向上はめざましく,発光素子の高出力化が図られるにつれ,熱可塑性樹脂からなるパッケージの光劣化は顕著となってきている。(【0005】)

これらの問題点を解決するため,樹脂成形体の材料に熱硬化性樹脂を用いる発光装置が開示されている(例えば,特許文献3参照)。図17は,従来の発光装置を示す斜視図及び断面図である。図18は,従来の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。この発光装置は,金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線を形成し,ついで,金属配線を所定形状の金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入し,トランスファ・モールドすることが開示されている。(【0006】)

しかし,この製造方法は,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難である。また,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題がある。(

【0007】)

異なる発光装置及びその製造方法として,配線基板状に光反射用熱硬化性樹脂組成物層を有する光半導体素子搭載用パッケージ基板及びその製造方法が開示されている(例えば,特許文献4参照)。図19は,従来の発光装置の製造工程を示す概略図である。この光半導体素子搭載用パッケージ基板は,平板状のプリント配線板を金型に取り付け,光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファー成型機により加熱加圧成型し,複数の凹部を有する,マトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製している。また,プリント配線板の代わりにリードフレームを用いることも記載されている。(【0008】)
しかし,これらの配線板及びリードフレームは平板状であり,平板状の上に熱硬化性樹脂組成物が配置されており,密着面積が小さいため,ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題がある。(【0009】)

発明が解決しようとする課題

本発明は上述した問題に鑑みて,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く,短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供することを目的とする。(

【0011】)


発明の効果
本発明にかかる発光装置及びその製造方法によれば,リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができる。また,短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。(【0030】)
本件発明2の課題等
本件発明2は,照明器具,ディスプレイ,携帯電話のバックライト,動画照明補助光源,
その他の一般的民生用光源などに用いられる発光装置の製造方法

に関するものである。
従来,発光装置を製造する方法として,リードフレームを非透光性で光反射性を有する白色樹脂でインサート成形し,
リードフレームを介して所定の間隔
で凹部形状のカップを有する樹脂成形体を成形する方法があった。このような方法では一般的な熱可塑性樹脂が用いられているが,その場合には,①リードフレームとの密着性に乏しく樹脂部とリードフレームとの剥離を生じやすい,②発光素子の高出力化が図られるにつれて,熱可塑性樹脂からなるパッケージの光劣化が顕著となるという問題点があった。また,上記方法で熱可塑性樹脂が用いられる場合には,
樹脂の流動性が低いため複雑な形状の樹脂成形体を成
形するには不適切であり,耐光性にも乏しいという問題点があった。そこで,上記の問題点を解決するため,樹脂成形体の材料に熱硬化性樹脂を
用いる製造方法,
具体的には金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法
により金属配線を形成し,金属配線を所定形状の金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入し,トランスファ・モールドするという製造方法が開示された。しかし,このような製造方法は,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難であり,
発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の

樹脂が大量になるという問題点があった。
また,上記と異なる発光装置の製造方法として,平板状のプリント配線板を金型に取り付け,光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファー成型機により加熱加圧成型し,
複数の凹部を有するマトリックス状の光半導体素子
搭載用パッケージ基板を作製する方法や,プリント配線板の代わりにリードフ
レームを用いる方法が開示されている。しかし,これらの配線板及びリードフレームは平板状であり,平板状の上に熱硬化性樹脂組成物が配置されており,密着面積が小さいため,
ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂
組成物とが剥離し易いという問題点があった。
本件発明2の構成を採用することにより,上記のような問題点を解決し,①
リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができ,②短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができ,③廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができるようになる。
光反射性物質を含有する樹脂成形体
(構成要件2B-1)の充足性(争点
2-1)について

後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。本件LEDのパッケージ部材に含有された粒子について,エネルギー分散型X線分析装置(EDX分析)を用いて粒子の構成要素を測定したところ,Ti,O,Al,Siが検出された。
(甲9,10)

法)を用いてラマンスペクトルを測定したところ,上記粒子のラマンスペ
クトルのピーク位置と,比較サンプルである酸化チタン(ルチル型)のラマンスペクトルのピーク位置は,概ね一致した。
(甲9,10,36)

上記認定事実によれば,イ号LED及びロ号LEDのパッケージ部材に含有された粒子は,酸化チタンを含有すると認められる。そして,酸化チタン
は,光反射性物質であることは技術常識であるといえる(本件明細書2【0104】。

したがって,イ号LED及びロ号LEDの製造方法は,
リードフレームと,光反射性物質である酸化チタンを含有する樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,という構成(2b-1
-1,2b-1-2)をそれぞれ有すると認められるから,イ号LEDとロ号LEDの製造方法は,いずれも構成要件2B-1を充足する。
被告は,
上記のラマン分光分析法に用いられた比較サンプルに酸化チタン
が含有されていることは証明されていないなどと主張するが,上記に照らし採用することはできない。

前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程(構成要件2E)の充足性(争点2-2)について
ア前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるようにの充足性について(争点2-2-1)本件明細書2には,
リードに関連して,以下の記載がある。

本明細書において,個片化された後の発光装置には,リード,樹脂部,樹脂パッケージなる用語を用い,個片化される前の段階では,リードフレーム,樹脂成形体なる用語を用いる。(

【0013】)
切り欠き部は,樹脂成形体を個片化して樹脂パッケージとした際,リードが正負一対となるように形成されている。また,切り欠き部は,樹脂成形体を切断する際に,リードを切断する面積を少なくするように形成されている。例えば,正負一対のリードとなるように横方向に切り欠き部を設け,また,樹脂成形体を個片化する際の切り出し部分に相当する位置に切り欠き部を設ける。ただし,リードフレームの一部が脱落しないように,又は,樹脂パッケージの外側面にリードを露出させるためにリードフレームの一部を連結しておく。ダイシングソーを用いて樹脂成形体をダイシングするため,切り欠き部は,縦及び横若しくは斜めに直線的に形成されていることが好ましい。(【0050】)

化される前の段階ではリードフレームという用語を用い,個片化された後の段階ではリードという用語を用い,また,リードフレームの一部を連結して,個片化後,それが樹脂パッケージの外側面に露出してリードが樹脂パッケージの外側面に露出されることになることが記載されているといえる。
証拠(甲9,10,13)によれば,本件LEDの樹脂パッケージの外
側面に露出している部分は,いずれも個片化する前においてはリードフレームであった部材であると認められるところ,本件明細書2の上記各記載に照らせば,当該部分は構成要件2Eのリードに該当するものと認められる。また,原告分析結果報告書の写真(図2(1)-9,11)によれば,本件LEDにおいて,上記リードに該当する部分と切り欠き部に入り込んだ樹脂部とが略同一面となっていることが認められる。
したがって,イ号LED及びロ号LEDの製造方法は,
分離後の各発光装置の外側面において前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるようにという構成をそれぞれ有していると認められる。
被告は,本件LEDの外側面に露出している部分はリードではなく連結片(連結部)というべきものであるから,本件LEDにおいてリードと切り欠き部に入り込んだ樹脂部とが略同一面になっているとはいえないなどと主張するが,上記説示に照らして採用することができない。イ
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程の充足性について(争点2-2-2)後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


本件LEDの外側面について,走査型電子顕微鏡を用いて観察(SEM分析)したところ,本件LEDのSEM像には濃度や大きさが異なる略円形状の陰影が複数写っていた。
(甲13,弁論の全趣旨)


金型を用いて個別のLEDごとに成形する方法(個別封止)により製造されたLEDの外側面について,上記①と同様に,SEM分析をしたところ,上記のLEDのSEM像には,略円形状の陰影は写っていなかった。
(甲13)

樹脂の端面を形成する方法としては,
樹脂を切断する方法と金型成型
(個
別封止)をする方法のいずれかの方法によることが一般的であると認められるところ
(弁論の全趣旨)上記認定事実のとおり,

金型成型
(個別封止)
の方法による場合にはその端面のSEM分析をしても略円形状の陰影が写っていなかったのに対し,本件LEDの外側面には略円形上の陰影が写っていた。
このことからすると,
本件LEDは,
樹脂を金型成型
(個別封止)
したものではなく,リードフレームと樹脂成形体を切断したものであり,本件LEDの略円形状の陰影は,樹脂成形体に含まれるフィラー(強度,耐熱性などを向上させる等の目的により樹脂に含有される物質をいう。が)

樹脂成形体を切断した際に脱落した跡か,又は切断されたフィラーの断面であると推測することができる。そして,本件LEDのリードフレームと樹脂成形体が切断されているのであれば,切断される前の状態は本件LEDのリードフレームと樹脂成形体が一体であったといえるから,イ号LED及びロ号LEDの製造方法は複数の発光装置に分離する工程を有してい
るといえる。
したがって,イ号LED及びロ号LEDの製造方法は,
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程という構成をそれぞれ有していると認められる。被告は,本件LEDの外側面のSEM像に略円形状の陰影は,気体によ
る空洞が外側面にあらわれた可能性があるなどと主張するが,上記主張は本件LEDのSEM像には濃度が異なる略円形状の陰影が複数写っていた事実と整合しないから採用することができない。

以上によれば,イ号LED及びロ号LEDの製造方法は,いずれも分離後の各発光装置の外側面において前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程(2e-1,
2e-2)を有していると認められるから,イ号LED及びロ号LEDの製造方法はいずれも構成要件2Eを充足する。

本件発明2の構成要件2B-1,2E以外の構成要件について,原告は,原告分析結果報告書のほか,イ号LEDについては証拠(甲11)
,ロ号LED
については証拠(甲12)に基づき,それぞれの構成要件を充足すると主張する。
あって客観性や中立性がなく信用できず,
そこで分析等されているLEDが被
告製品に搭載されていたことが認められないなどと主張して,
それぞれの報告
書の信用性を争う。

く,それぞれの報告書は信用することができる。
そして,証拠(甲11)によれば,イ号LEDの製造方法について,(2a-1)リード及び樹脂部を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって,(2b-2-1)前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ,(2b-3-1)前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており,(2b-4-1)前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,(2b-5-1)且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している,(2b-6-1)樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,(2c-1)前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,(2d-1)前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,(2f-1)を有することを特徴とする発光装置の製造方法。の構成を有すると認められ
る。そして,上記の2a-1,2b-2-1,2b-3-1,2b-4-1,2b-5-1,2b-6-1,2c-1,2d-1,2f-1は,それぞれ構成要件2A,2B-2,2B-3,2B-4,2B-5,2B-6,2C,2D,2Fを充足すると認められる。
また,証拠(甲12)によれば,ロ号LEDの製造方法について,(2a-2)リード及び樹脂部を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって,(2b-2-2)前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ,(2b-3-2)前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており,(2b-4-2)前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,(2b-5-2)且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している,(2b-6-2)樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,(2c-2)前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と,(2d-2)前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,(2f-2)を有することを特徴とする発光装置の製造方法。の構成を有すると認められる。
そして,上記の2a-2,2b-2-2,2b-3-2,2b-4-2,2b-5-2,2b-6-2,2c-2,2d-2,2f-2は,それぞれ構成要件2A,2B-2,2B-3,2B-4,2B-5,2B-6,2C,2D,2Fを充足すると認められる。

法は,本件発明2の技術的範囲に属する。
3本件LEDが本件訂正前発明3の技術的範囲に属するか否か(争点3)本件明細書3の記載

技術分野

本発明は,照明器具,ディスプレイ,携帯電話のバックライト,動画照明補助光源,その他の一般的民生用光源などに用いられる発光装置及び発光装置の製造方法などに関する。(

【0001】)

背景技術
発光素子を用いた発光装置は,小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また,この発光素子は半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ,振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため,発光ダイオード(LED),レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いる発光装置は,各種の光源として利用されている。(【0002】)
従来,発光装置を製造する方法として,リードフレームを非透光性で光反射性を有する白色樹脂でインサート成形し,リードフレームを介して所定の間隔で凹部形状のカップを有する樹脂成形体を成形する方法が開示されている(例えば,特許文献1参照)ここでは白色樹脂の材質が明示されてい。ないが,インサート成形することや図面から,一般的な熱可塑性樹脂が用いられる。一般的な熱可塑性樹脂として,例えば,液晶ポリマー,PPS(ポリフェニレンサルファイド),ナイロン等の熱可塑性樹脂を遮光性の樹脂成形体として用いられることが多い(例えば,特許文献2参照)。【0004】


しかしながら,熱可塑性樹脂はリードフレームとの密着性に乏しく,樹脂部とリードフレームとの剥離を生じやすい。また,熱硬化性樹脂は樹脂の流動性が低いため複雑な形状の樹脂成形体を成形するには不適切であり,耐光性にも乏しい。特に近年の発光素子の出力向上はめざましく,発光素子の高出力化が図られるにつれ,熱可塑性樹脂からなるパッケージの光劣化は顕著となってきている。(【0005】)
これらの問題点を解決するため,樹脂成形体の材料に熱硬化性樹脂を用いる発光装置が開示されている(例えば,特許文献3参照)。図17は,従来の発光装置を示す斜視図及び断面図である。図18は,従来の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。この発光装置は,金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線を形成し,ついで,金属配線を所定形状の金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入し,トランスファ・モールドすることが開示されている。(【0006】)

しかし,この製造方法は,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難である。また,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題がある。(

【0007】)
異なる発光装置及びその製造方法として,配線基板状に光反射用熱硬化性樹脂組成物層を有する光半導体素子搭載用パッケージ基板及びその製造方法が開示されている(例えば,特許文献4参照)。図19は,従来の発光装置の製造工程を示す概略図である。この光半導体素子搭載用パッケージ基板は,平板状のプリント配線板を金型に取り付け,光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファー成型機により加熱加圧成型し,複数の凹部を有する,マトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製している。また,プリント配線板の代わりにリードフレームを用いることも記載されている。(【0008】)
しかし,これらの配線板及びリードフレームは平板状であり,平板状の上に熱硬化性樹脂組成物が配置されており,密着面積が小さいため,ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題がある。(【0009】)

発明が解決しようとする課題

本発明は上述した問題に鑑みて,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く,短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供することを目的とする。(

【0011】)

発明の効果
本発明にかかる発光装置及びその製造方法によれば,リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができる。また,短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。(【0030】)
本件訂正前発明3の課題等

本件訂正前発明3は,照明器具,ディスプレイ,携帯電話のバックライト,動画照明補助光源,
その他の一般的民生用光源などに用いられる発光装置に関
するものである。
そして,従来技術には,本件発明2における従来技術における課題(前記2
って,本件発明2と同様,従来技術の上記問題点を解決し,①リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができ,②短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができ,③廃棄されるランナーを低減することができ,
安価な発光装置を提供すること
ができるようになる。
切り欠き部
(構成要件3A,3B)の充足性(争点3-1)について

被告は,原告の主張では切り欠き部である箇所が具体的に示されていないなどと主張して,構成要件3A,3Bの充足性を争う。
しかし,本件LEDにつき,甲9報告書(図2(1)-9,11,12),甲
10報告書(
(図2(1)-9,11,12)によれば,本件LEDには,樹脂パッケージの外側面に接し,黒色で示されるリードに挟まれた部分である切り欠き部が存在すると認められる。
ある酸化チタンが含まれていると認められ,証拠(甲19,20の1)によれば本件LEDの樹脂パッケージは熱硬化性樹脂であることが認められる。したがって,
本件LEDの製造方法は,
切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれた光反射性物質である酸化チタンが含有される熱硬化性樹脂と,を備える樹脂パッケージを有し(3a-1,2)前記切り欠き,部は,前記樹脂パッケージの外側面に沿って形成されている(3b-1,
2)
という構成を有すると認められるから,本件LEDはいずれも構成要件3A,3Bを充足する。

前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており(構成要件3F)の充足性(争点3-2)について
本件明細書3には,本件明細書2の【0013】
【0050】の記載(前記2

本件訂正前発明3について,本件明細書3では,個片化される前の段階ではリードフレームという用語を用い,個片化された後の段階ではリードという用語を用い,また,リードフレームの一部を連結して,個片化後,それが樹脂パッケージの外側面に露出してリードが樹脂パッケージの外側面に露出されることになることが記載されているといえる。
証拠(甲9,10,13)によれば,本件LEDの樹脂パッケージの外側面に露出している部分は,いずれも個片化する前においてはリードフレームであ
った部材であると認められるところ,本件明細書3の上記各記載に照らせば,当該部分は構成要件3Fのリードに該当するものと認められる。また,原告分析結果報告書の写真(図2(1)-9,11)によれば,本件LEDにおいて,上記リードに該当する部分と樹脂部とが略同一面となっていることが認められる。

そうすると,本件LEDは前記樹脂パッケージの外側面において,前記樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており,(3f-1,2)という構成を有すると認められるから,
本件LEDは,
いずれも構成要件3Fを充足する。
前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている(構
成要件3G)の充足性(争点3-3)について

本件訂正前発明3は発光装置の発明であるから,構成要件3Gは発光装置の樹脂パッケージの外底面にリードが露出していることを意味し,発光装置がそれを用いる製品に取り付けられているときには,その製品から発光装置を取り出した場合にリードが樹脂パッケージの外底面から露出しているのであれば,構成要件3Gを充足する。甲9報告書及び甲10報告書によれば,本件LED
(イ号LED,ロ号LED)の裏面(外底面)には,リードが露出していることが認められる。したがって,本件LEDは,
前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出されている(3g-1,
2)
という構成を有すると
認められるから,本件LEDは,構成要件3Gを充足する。
被告は,本件LEDの裏面には剥離されたような形跡が認められるから,剥離前の状態では何らかの部材で覆われており,
本件LEDの底面にリードは露
出していなかったなどと主張するが,証拠(甲9,10,36)によれば,被告が指摘する剥離の形跡は本件LEDを被告製品から剥離した際に生じたものであると認めるのが相当であるから,被告の上記主張には理由がない。本件訂正前発明3の構成要件3A,3B,3F,3G以外の構成要件について,原告は,原告分析結果報告書のほか,イ号LEDについては証拠(甲9,
19,20の1ないし7)に基づき,ロ号LEDについては証拠(甲10,19,
20の1ないし7)
に基づき,
それぞれの構成要件を充足すると主張する。
これに対し,
て客観性や中立性がなく信用できない,
そこで分析等されているLEDが被告
製品に搭載されていたことが認められないなどと主張して,
それぞれの報告書

の信用性を争う。

く,それぞれの報告書は信用することができる。
そして,前掲各証拠によれば,イ号LEDは,(3c-1)前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,(3d-1)前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,(3e-1)前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されている,(3h-1)ことを特徴とする発光装置。であると認められる。そして,
3c-1,
3d-1,
3e-1,
3h-1は,それぞれ構成要件3C,3D,3E,3Hを充足すると認められ
る。
また,前掲各証拠によれば,ロ号LEDは,(3c-2)前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,(3d-2)前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,(3e-2)前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置されている,(3h-2)ことを特徴とする発光装置。であると認められる。そして,3c-2,3d-2,3e-2,3h-2は,それぞれ構成要件3C,3D,3E,3Hを充足すると認められる。

訂正前発明3の技術的範囲に属する。
4本件発明1に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)無効理由1(サポート要件違反1)
(争点4-1)及び無効理由3(サポート
要件違反2)
(争点4-4)について

被告は,
本件発明1は,
より高輝度
という課題を解決することができな
いY+GaGd+Ga及び,(Y+Gd)+Gaの組み合わせの元素を含むガーネット系蛍光体がクレーム文言上包含されるから,サポート要
件違反の無効理由を有すると主張する(無効理由1)

また,被告は,本件発明1は,
より高輝度という課題を解決し,
白色光の発光をすることができないGdのみがYAG系蛍光体のYサイトの全てを占める態様のガーネット系蛍光体がクレーム文言上包含されるから,サポート要件違反の無効理由を有すると主張する(無効理由3)。



本発明の発光装置においては,前記フォトルミネセンス蛍光体として,一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,Y,Gdから選択される少なくとも一種である。,)イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。(【0016】

また,本発明の発光装置では,発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために,前記フォトルミネセンス蛍光体として,一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3(Al1-sGas)5O12で表される蛍光体(ただし,0≦p≦0.8,0.003≦q≦0.2,0.0003≦r≦0.08,0≦s≦1)を用いることが好ましい。(【0017】

また,本発明の発光装置において,前記フォトルミネッセンス蛍光体は,それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の,セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって,発光素子の特性(発光波長)に対応して,フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して,所望の発光色の発光をさせることができる。(【0018】)
さらに,本発明の発光装置では,発光装置の発光波長を所定の値に設定するために,前記フォトルミネッセンス蛍光体は,それぞれ一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce(ただし,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,Y,Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され,互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。(【0019】


また,本発明の発光装置においては,発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は,一般式Y3(Al1-sGas)5O12:Ceで表される第1の蛍光体と,一般式Re3Al5O12:Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。但し,0≦s≦1,Reは,Y,Ga,Laから選択される少なくとも一種である。また,本発明の発光装置においては,発光波長を調整するために,前記フォトルミネセンス蛍光体は,それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において,イットリウムの一部がガドリニウムに置換され,互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。(【0020】)
またさらに,前記発光素子において,該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム半導体を含んでなり,前記フォトルミネセンス蛍光体が,イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において,Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは,発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し,変換効率(発光効率)を良くできる。また,該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は,演色性のよい良質な白色となり,その点で極めて優れた発光装置を提供できる。(【0022】)
本発明の発光ダイオードにおいては,前記フォトルミネッセンス蛍光体が,YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく,また,本発明の発光ダイオードでは,前記フォトルミネッセンス蛍光体として,一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)O12:Ceで表される蛍光体(ただし,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,5Y,Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。また,本発明の発光ダイオードでは,前記フォトルミネッセンス蛍光体として,一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3(Al1-sGas)5O12で表される(ただし,0≦p≦0.8,0.003≦q≦0.2,0.0003≦r≦0.08,0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。(【0027】


本発明の発光ダイオードにおいては,発光波長を所望の波長に調整するために,前記フォトルミネッセンス蛍光体は,それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。(【0028】

本発明の発光ダイオードでは同様に,発光波長を所望の波長に調整するために,前記フォトルミネッセンス蛍光体として,それぞれ一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表され(ただし,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,Gdから選択される少なくとも一種である。,Y,)互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。(【0029】)
本発明の発光ダイオードでは同様に,発光波長を所望の波長に調整するために,前記フォトルミネッセンス蛍光体として,一般式Y3(Al1-sGas)5O12:Ceで表される第1の蛍光体と,一般式Re3Al5O12:Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで,0≦s≦1,Reは,Y,Ga,Laから選択される少なくとも一種である。(【0030】)
本発明の発光ダイオードでは同様に,発光波長を所望の波長に調整するために,前記フォトルミネッセンス蛍光体は,それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において,それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり,互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。(【0031】)
以下,本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。(フォトルミネセンス蛍光体)本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は,半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて,励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では,該蛍光体として,YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体,又は,一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)O12:Ce(但し,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,Y,Gdから選択5される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と,ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合,LED光と,蛍光光とを混色して出力することにより,全体として白色系の光を出力することができる。(【0046】)
また,実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は,ガーネット構造を有するので,熱,光及び水分に強く,図3(A)に示すように,励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また,発光ピークも図3(B)に示すように,580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また,実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は,結晶中にGdを含有することにより,460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により,発光ピーク波長が,長波長に移動し,全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち,赤みの強い発光色が必要な場合,Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。一方,Gdが増加するするとともに,青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。(【0050】)

表1に一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。(

【0052】)
【表1】表1に示した各特性は,460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は一の材料を100として相対値で示している。AlをGaによって置換する場合,発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に,Yの一部をGdで置換する場合は,Y:Gd=9:1~1:9の範囲の比率に設定することが好ましく,4:1~2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では,緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり,Gdの置換量が6割以上になると,赤み成分を増やすことができるが,輝度が急激に低下する。特に,発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を,Y:Gd=4:1~2:3の範囲に設定することにより,1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また,YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を,Y:Gd=2:3~1:4の範囲に設定すると,輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。尚,Ceの含有量(置換量)は,0.003~0.2の範囲に設定することにより,発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では,Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し,逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。(【0054】)
一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は,結晶中にGdを含有することにより,特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また,ガドリニウムの含有量を増加させることにより,発光ピーク波長を,530nmから570nmまで長波長に移動させ,全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合,Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方,Gdが増加すると共に,青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって,pは0.8以下であることが好ましく,0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。(【0059】)
本願発明の発光ダイオードにおいては,Al,Ga,Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって,蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ,これに,例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。(【0064】)
発明の実施2.本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは,発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い,フォトルミネセンス蛍光体として,互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体,好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは,発光素子によって発光されるLED光の発光波長が,製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも,2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。この場合,発光波長が比較的短い発光素子に対しては,発光波長が比較的短い蛍光体を用い,発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。蛍光体に関して言うと,フォトルミネセンス蛍光体として,一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し,0<r≦1,0≦s≦1,Reは,Y,Gd,Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので,発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく,かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。(【0079】)

(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては,上述したように,フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は,実施の形態1と同様に構成され,蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。(【0080】)
実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は,実施形態1と同様,ガーネット構造を有するので,光及び水分に強い。・(途中省略)・熱,・・・・ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内,Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトし,また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで,発光波長が長波長側へシフトする。AlのGaへの置換は,発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6が好ましい。同様に,Yの一部をGd及び/又はLaで置換することは,Y:Gd及び/又はLa=9:1から1:9であり,より好ましくは,Y:Gd及び/又はLa=4:1から2:3である。置換が2割未満では,緑色成分が大きく赤色成分が少なくなる。また,6割以上では,赤み成分が増えるものの輝が急激に低下する。(【0083】)
(比較例1)フォトルミネセンス蛍光体を(Y0.8Gd0.2)3Al5O:Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu,Alとした以外は,実施例112と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後,実施例1と同様,白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また,寿命試験においては,約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果,蛍光体が黒化していた。(【0109】

(実施例5)実施例5の発光ダイオードは,フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表される蛍光体を用いた以外は,実施例1と同様にして作製した。この実施例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。その結果,色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり,電球色の光を発光することができた。(【0116】)

実施例5の発光ダイオードは,実施例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが,寿命試験においては,実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。(

【0117】)

実施例7の発光ダイオードは,輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ,寿命試験においては,実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。(

【0119】)
(実施例8)実施例8の発光ダイオードは,フォトルミネセンス蛍光体として,一般式Gd3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は,実施例1と同様にして作製した。この実施例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。その結果,実施例8の発光ダイオードは,輝度は低いが,寿命試験においては,実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。(【0120】)
(比較例2)実施例9の一般式Y3(Al0.6Ga0.4)5O12:Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体,及び一般式(Y0.4Gd0.)3Al5O12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からな6るフォトルミネセンス蛍光体に代えて,それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は,実施例9と同様にして発光ダイオードを作製して実施例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は,(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として,カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また,信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を実施例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなように,いずれの試験においても,実施例9は,比較例2より劣化が少ない。(【0126】)
実施例9の発光ダイオードは,輝度は低いが寿命試験において実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。【0138】()ウ本件明細書1には,実施例ないし比較例として,後記の組成の蛍光体が開示されている。実施例1(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce(【0105】)比較例1(ZnCd)S:Cu,Al(【0109】)実施例2(Y0.6Gd0.4)3Al5O12:Ce(【0111】)実施例3(Y0.39Gd0.57Ce0.03Sm0.01)3Al5O12(【0113】)実施例1に同じ(【0114】)(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ce(【0116】)実施例6Y3Al5O12:Ce(【0118】)実施例7Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ce(【0119】)実施例8実施例4実施例5Gd3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ce(【0120】)実施例9第1蛍光体:Y3(Al0.6Ga0.4)5O12:Ce第2蛍光体:(Y0.4Gd0.6)3Al5O12:Ce(【0125】)比較例2第1蛍光体:緑色有機蛍光顔料第2蛍光体:赤色有機蛍光顔料(【0126】)実施例10第1蛍光体:Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ce第2蛍光体:(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ce(【0128】)実施例11第1蛍光体:(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce第2蛍光体:(Y0.4Gd0.6)3Al5O12:Ce(【0135】)実施例12Y3In5O12:Ce(【0138】)昭和62年12月25日に刊行された「蛍光体ハンドブック(乙24)
の記載
蛍光体の輝度低下はイオン焼け,発生した熱による,蛍光体の組成変化,カラーセンターの形成などが考えられるが,確かなことはわかっていないが,いずれにしても,投入パワー(ビームスポット径も関係してくる)および投写管の放熱状態などにより変化するものの,蛍光体の強度の評価結果によれば,YAG系のものは,最も劣化し難い蛍光体である。
昭和62年2月に頒布された学術雑誌J.Electrochem.Soc.に掲載された論文PreparationO12BasedPhosphorofY3Al5Powders(乙25)の記


投影CRT用途には,高い発光強度と長い寿命ゆえに,セリウムをドープしたY3Al5O12ベースの蛍光物質が選択された。

昭和49年9月25日発行の三菱電機技報48巻9号に掲載された論文PYGけい光面とその応用
(乙26)の記載
ここに述べるPYGけい光体はY3(Al,Ga)5O12:Ceであらわされ次のような特長を有している。発光スペクトルが450~650nmと幅広く約500nmにそのピークがあり発光色は緑黄色である。残光特性はP46同様従来知られているもののうち最も速い部類に属し,電子線衝撃に対する安定性も非常にすぐれている。PYGけい光体は非常に劣化の少ないことが大きな特長の一つでもある。図8はけい光面ライフデータの一例であるが,これは陽極電圧20kVで電流密度2μA/cm2の条件で行ったもので,初期の250時間くらいまで数%の劣化が認められるが,それ以後はほとんど劣化は認められず,わずかに2~3,000時間を超えるころからフェースガラスの電子線焼けの影響で透過率が落ちるために,ブラウン管としての輝度劣化が若干ある程度である。

PYGけい光面の応用面としては,このけい光体が明るく,しかもきわめて劣化が少なく発光波長帯域も比較的広いことから,その用途は多岐にわたっている。

特開平6-73376号公報(乙27)の記載

しかしながら,CdS:Ag蛍光体は,長時間の電子線励起によって劣化し,輝度低下を発生しやすいという欠点がある。また,電流密度の増加に従い,その発光波長が変化するという欠点がある。(以下省略)・・・


【0007】

さらに,環境汚染の見地から,CdS:Ag蛍光体に含まれるカドミウムは有害な物質であることから,この蛍光体の使用は,好ましくない。また,近年LCLVの書き込み源として,YAG:Eu,Cr蛍光体(Eu1~5%,Cr0.1~1%)を用いる陰極線管が提案されているが,この蛍光体の発光スペクトルは,700及び705nm付近に2つのピークを有するもので,シリコンアモルファスの感度曲線に十分に相応するものではない。このため,シリコンアモルファスの感度に対して十分な発光輝度が得られない。また,全体的な発光輝度及び740nm付近の発光輝度も十分ではない。(【0008】)

本発明は,このような事情を鑑みてなされたものであり,電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても,発光波長の変化がないと共に,劣化しにくく,また有害な物質を含まない,650nm以上の帯域に発光する蛍光体及びこれを用いた表示装置を提供することを目的とする。(【0009】


本発明者らは,650nm以上の主発光波長を有し,有害なカドミウムを含まないmatrixを含有する蛍光体について,数々の実験を重ねた。その結果,蛍光体として,イットリウム及びガドリニウムのうち少なくとも1つを含むガーネットタイプ組成物を使用し,この組成物中のイットリウムまたはガドリニウムを,特定量のクロムで置換することによって従来技術の欠点を克服できることを新規に見いだし,本発明をなすに至った。(【0010】)
図1に(Y1-xCrx)3Al5O12蛍光体(x=0.0065)の発光スペクトルを示す。この蛍光体は,約707nm主発光ピ―クを有し,約650nmないし800nmの波長に亘って発光し,その半値幅は約35nmであった。このような発光特性は,例えばシリコンアモルファスを用いたフォトコンダクタ等に適する。この蛍光体は,電流密度を上げて蛍光体を励起しても,CdS:Ag蛍光体と異なり,劣化により発光ピ―クがずれることがない。また,上記範囲内でYをCrで置換しても同じく劣化により発光ピ―クがずれることがない。しかし,この蛍光体がYAG単一相となっていない場合,例えばペロブスカイト構造であるYAPを含む場合,750nm付近にも発光ピ―クが現れる。(【0016】)
また,これらの蛍光体のX値と蛍光体の輝度との関係は,図2のグラフとほぼ同様である。このように,本発明の蛍光体は,電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても,発光波長の変化がないと共に,劣化しにくく,また650~800nmの波長域で十分に発光する。また,発光スペクトルの主発光ピークの半値幅は,35nm以上好ましくは35~110nmである。(【0020】)
また,本発明の蛍光体においては,Y及び/またはGdと,Alとの比を変化させるか,あるいはY及び/またはGdと,Crとの比を変化させることにより,蛍光体の残光を調整することができる。例えば,Y及び/またはGdとAlとの比においてAlを量を多くすることにより残光を長くすることができ,Y及び/またはGdと,Crとの比においてCrの量を多くすることにより同じく残光を長くすることができる。このようにして,本発明の蛍光体によれば,所望の残光時間をそれらの組成比で調整できるという利点を有する。(【0028】)

以上説明したように,本発明の蛍光体は高電流密度域で励起しても,発光ピ―クがずれることはなく,また電流密度の増加に対し,輝度が向上する。このような蛍光体をプロジェクション用の陰極線管に使用すると,優れた寿命,輝度を達成することが出きる。また,従来のCdS:Ag蛍光体を用いた陰極線管よりも,はるかに劣化しにくく,長時間,特性を維持することができる。(【0029】)

この陰極線管では,その蛍光面に使用されている蛍光体が,高い発光効率を有し,長時間の使用によっても劣化しにくく,かつ電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても,蛍光体の発光波長が変化しない。(

【0032】

本発明の蛍光体は,電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても,発光波長の変化がないと共に,劣化しにくく,また650~800nmの波長域で十分に発光する。(

【0040】)
また,このような蛍光体を用いた陰極線管は,使用されている蛍光体が,電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても,発光波長の変化がないと共に,劣化しにくく,また650~800nmの波長域で十分に発光するので,経時変化のない良好な画像がえられる。(【0041】)
特開平8-170077号公報(乙28)の記載
高密度電子線による励起下で用いられる陰極線管として投射型ブラウン管がよく知られている。このような投射型ブラウン管の発光スクリーンには,まず発光効率が高いこと,輝度が所望の範囲で励起強度に忠実に比例すること,つまり輝度飽和がないこと,蛍光膜の温度上昇に伴う発光効率の低下がないこと,発光効率の経時変化が少ないこと,つまり輝度寿命に優れていること等の特性が強く求められる。特に最近は高画質にするために,電子ビーム径をより小さくしてさらに励起強度を上げ,また動画だけでなく静止画像をも映し出すといった使われ方をするようになり,なかでも輝度寿命改善が大きな技術課題となっている。そして,投射型テレビにおいては,白色輝度の大半は緑色成分が受け持つので,上記特性は緑色材料において重要である。(【0002】)
現在,投射型テレビには,赤色蛍光体としてはユーロピウム付活酸化イットリウム(Y2O3:Eu)が,また青色蛍光体として銀及びアルミニウム付活硫化亜鉛(ZnS:Ag,Al)が用いられている。一方,緑色蛍光体に関しては,「第217回蛍光体同学会講演予稿集,p.19~26(1987);投射管用蛍光体に見られるように,
現在でも種々の材料の
改良が行われ用いられている状況にある。その中でとりわけ有望な2種類の材料として,Y3(Al,Ga)5O12:Tb系及びY2SiO5:Tb系が挙げられる。
前者に関する技術は特開昭60-101175に示され
ており,また後者に関しては,特公昭57-105948,米国特許3,
758,413等に開示されている。(
」【0003】

なお,上記各実施例は,1-xTbx)3(Al1-yGay)5O12の組(Y成の系の蛍光体について記載したが,発光センタのTbに代えて,Eu又はTmを発光センタとした蛍光体についてもほぼ同様の効果が認められた。(【0053】)

本発明で得られた蛍光体は,同一組成の従来の蛍光体に比べて,高密度励起による輝度寿命が向上し,また,発光効率が高くなった。また,本発明の蛍光体の製造方法によれば,このような蛍光体を容易に製造することができた。さらに,本発明の発光スクリーンは,高輝度,かつ,輝度寿命が向上した。そのため,蛍光膜が高い励起強度で使用される投射型ブラウン管等の陰極線管にこの材料を適用すると,製品の寿命を延ばすことができると共に,画像の高画質化に大きく貢献できた。(【0054】)

本願発明は上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とするとの記載があり,【0011】によれば,上記の課題を解決するための手
段として,①発光素子としては,高輝度の発光が可能で,かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること,②蛍光体としては,上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて,該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても,
特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優
れていること,③発光素子と蛍光体との関係としては,蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であることが必要であると考えた結果,本件発明1の構成に至ったとの記載がある。また,
【0014】にはこの本願発明の発光装置は,高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので,高輝度の発光をさせることができるとの記載がある。
これらの記載に照らせば,本件発明1は,高輝度な発光素子を使用することを前提に,
そのような高輝度な発光素子に対する耐光性や耐熱性を有する
蛍光体を使用するものであり,その蛍光体は発光素子からの光を効率よく吸
収し,
異なる発光波長を発光可能とする性質を有するというものであるから,【0010】のより高輝度は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体などからなる発光素子を用いることにより,従来の発光素子と比較して高輝度の発光が得られることをいうものと解され,蛍光体の組成や,発光素子と蛍光体の関係に関する記載ではないといえる。また,
【0002】から【000

9】には,従来技術の問題点として,駆動回路が複雑になることや蛍光体が劣化することによって色調がずれたり,蛍光体が黒ずんで光の外部取出し効率が低下したりする場合があることが記載されているが,本件明細書1には従来技術において輝度が低いという問題点があったことをうかがわせる記載はない。
【0004】
には,
従来技術として窒化物化合物半導体からなる発

光素子を用いた発光ダイオードが開示された特許公開公報の例示(乙3)があることに照らせば,
従来の発光素子と比較して高輝度の発光が得られる発
光素子を用いることは,本件発明1の課題ではなく,本件発明1の課題の前提となっている事情であるといえる。
さらに,
【0120】
【0138】
には,
輝度は低いが対候性を有するものが実施例として挙げられている。上記によれば,本件発明1の課題は,従来の発光素子と比較して高輝度の発光が得られる発光素子の使用を前提として,そのような発光素子と蛍光体とを組み合わせて用いたとしても,長時間の使用環境下においても発光光度や発光効率の低下がなく,色ずれが少ない発光装置を提供することにあるというべきである。
次に,上記の本件発明1の課題を前提として,本件発明1が発明の詳細な
説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえるか否かについて検討すると,本件発明1の構成要件1Eは,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むというものである。そして,本
件明細書1には,
【0050】
【0083】ガーネット構造を有するので,に熱,光及び水分に強くとの記載があり,また,上記イ及びウのとおり本件発明1の実施例としてYをGdに0パーセント,20パーセント,40パーセント,60パーセント,80パーセント,100パーセント置換したものや,AlをGaに0パーセント,40パーセント,50パーセント置換した
ものが記載されており,
それらはいずれも優れた耐候性を有することが示さ
れている。そして,YとGd,AlとGaがそれぞれ類似した化学的性質を有することは技術常識であるといえる。そうすると,本件明細書1の各実施例からYとGd,AlとGaの置換割合を変化させたとしても,本件発明1の蛍光体がガーネット系の蛍光体である以上,
より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光効率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することという課題を解決できることは,当業者が認識できる範囲のものであるといえる。
したがって,本件発明1は,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえるから,特許法36条6項1号の要件(サポート要件)を充足する。
これに対し,
被告は,
上記アのとおり,
YAG系蛍光体同士を比較して
より高輝度
な発光を実現することが本件発明1の課題であることを前提とし
て,
本件明細書1にはそのような高輝度が実現できない態様のものまで記載されているから,本件発明1は特許法36条6項1号(サポート要件)に違反する旨の主張をする。しかし,本件発明1の課題は上記のとおりであり,
被告の主張はその前提に誤りがあるから理由がない。
また,被告は,YAG系蛍光体の変換効率や耐久性などがYAG系蛍光体以外の他の蛍光体と比較して優れていることは,上記エに記載した文献等に照らして本件特許権1の第1優先日当時の当業者にとって技術常識であったから,
YAG系蛍光体以外の蛍光体とYAG系蛍光体とを比較して高輝度
を維持することは本件発明1の課題ではないと主張する。しかし,上記説示のとおり,本件発明1は,従来の発光素子と比較して高輝度の発光が得られる発光素子を用いることを課題の前提とするものであり,発光装置の輝度の高低そのものを本件発明1の課題とするものではないから,被告の主張は上記認定を左右するものではない。

さらに,被告は,無効理由3において,本件明細書1の記載によれば白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成するためにはY:Gd=4:1~2:3の範囲に設定することが求められており,これよりもGdの置換比率を高めた場合には電球色に発光してしまうからサポート要件に違反すると主張する。しかし,本件明細書1の【0116】によれば白色系に電
球色が含まれることは明らかであり,また,一般的にも電球色は白色光の一種とされている(甲65)から,被告の主張には理由がない。

小括
以上によれば,本件発明1は,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するものではないから,無効理由1及び3は認められない。
無効理由2-1
(乙1公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-2)
につい

てア
乙1公報は,発明の名称を面状光源とする公開特許公報であり,その特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明には,
以下の記載がある。
(乙
1)
特許請求の範囲(請求項1)

透明な導光板の端面の少なくとも一箇所に青色発光ダイオードが光学的に接続されており,さらに前記導光板の主面のいずれか一方に,前記青色発光ダイオードの発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質と,蛍光を散乱させる白色粉末とが混合された状態で塗布された蛍光散乱層を有し,前記青色発光ダイオードの発光が前記蛍光散乱層で波長変換され,前記蛍光散乱層と反対側の導光板の主面側から観測されることを特徴とする面状光源。発明の詳細な説明

【産業上の利用分野】本発明はディスプレイのバックライト,照光式操作スイッチ等に使用される面状の光源に係り,特に液晶ディスプレイのバックライトとして好適に用いることができる面状光源に関する。(

【0001】

また白色発光,あるいはモノクロの光源として,一部では青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みもあるが,チップ周辺は太陽光よりも強い放射強度の光線にさらされるため,蛍光物質の劣化が問題となり,特に有機蛍光顔料で顕著である。更にイオン性の有機染料はチップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし,色調が変化する可能性がある。また従来の青色LEDは蛍光物質で色変換するには十分な出力を有しておらず,たとえ色変換したとしても実用できるものではなかった。(【0004】)
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような欠点を解決するために成されたもので,その目的とするところは,LEDを用い,主としてバックライトとして利用できる白色発光可能な面状光源を実現すると共に,均一な白色発光を観測できる面状光源を提供することにあり,さらには白色以外の任意色の発光が可能な面状光源を提供し,信頼性に優れたLEDの特性を利用し,各種操作スイッチ等に利用することにある。【0(

005】

【課題を解決するための手段】本発明の面状光源は,透明な導光板の端面の少なくとも一箇所に青色LEDが光学的に接続されており,さらに前記導光板の主面のいずれか一方に,前記青色発光ダイオードの発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質と,光を散乱させる白色粉末とが混合された状態で塗布された蛍光散乱層(以下,蛍光散乱層側の主面を第二の主面という。)を有し,前記青色発光ダイオードの発光の一部が前記蛍光散乱層で波長変換され,前記蛍光散乱層と反対側の導光板の主面(以下発光観測側の主面を第一の主面という。)側から観測されることを特徴とする。(【0006】)

まず図2の矢印で示すように,青色LED1から出た光は,チップ近傍で一部導光板以外の外部に放射されるが,大部分の光は導光板2の中を全反射を繰り返しながら,導光板の端面に達する。端面に達した光は端面全てに形成された反射膜4に反射されて,全反射を繰り返す。この時,導光板2の第二の主面側に設けられた蛍光散乱層3により一部の光は散乱され,また一部の光は蛍光物質により吸収され同時に波長変換されて放射され,導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できる。例えば橙色の蛍光顔料と白色顔料からなる蛍光散乱層3を設けた面状光源では,先に述べた作用により,青色LEDからの発光色が白色となって観測できる。例えば橙色の蛍光顔料と白色顔料からなる蛍光散乱層3を設けた面状光源では,先に述べた作用により,青色LEDからの発光色が白色となって観測できる。また色調は蛍光物質の種類と白色顔料の混合比により任意に調整できる。特に本発明では一つの青色LEDの発光波長はその主発光ピークが500nmよりも短く,その発光出力は200μW以上,更に好ましくは300μW以上の出力が必要である。(
【0010】


【実施例】[実施例1]厚さ約2mmのアクリル板の片面に,図1に示すドット状のパターンで,蛍光散乱層3をスクリーン印刷により形成した。蛍光散乱層3は,赤色蛍光顔料であるシンロイヒ化学製FA-001と緑色蛍光顔料である同社製FA-005とを等量に混合した蛍光顔料と,白色粉末としてチタン酸バリウムとを重量比で1:5の割合で混合し,それをアクリル系バインダー中に分散したものを印刷して形成した。(【0011】

次に上記のようにして蛍光散乱層が形成されたアクリル板を,所望のパターンに従って切断し,アクリル板の端面(切断面)を全て研磨した後,研磨面にAlよりなる反射層4を形成することにより,蛍光散乱層3が形成された導光板2を得た。(【0012】)
前記導光板2の端面に二箇所,穴を設け,その穴に発光波長480nm。発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LEDをそれぞれ1個づつ埋め込むことにより,本発明の面状光源を得た。この面状光源の青色LEDを同時に点灯させたところ,導光板2の発光観測面側からはやや黄色みを帯びた白色のほぼ均一な面状発光が得られた。(【0013】)
[実施例2]蛍光散乱層3を,黄色蛍光染料としてBASF社のLumogenFYellow-083と橙色蛍光染料として同社製Orenge-240とをほぼ等量混合し,それらをブチルカルビトールアセテートに溶解した蛍光染料と,白色物質としてチタン酸バリウムとを重量比で1(染料):200の割合で混合したものを用いて形成する他は,実施例1と同様にして本発明の面状光源を得たところ,ほぼ均一な面状発光が観測された。さらに同様にしてバックライト用光源としたところ,完全に均一な面状発光が観測された。(【0014】)

昭和47年10月17日に公開された発明の名称をDISPLAYSYSTEMとする特許公報(以下乙2公報という。)の記載
乙2公報には,以下の記載がある。
1.発明の分野本発明は投射ディスプレイ装置に関し,主に黒と白の像を作る装置に関する。2.従来技術レーザ・ディスプレイ装置の利点は,スクリーンの大きさが本質的に制限されないことである。そのような装置に必要な多くの要素は,現在入手可能である。可視のスペクトルの中の種々の周波数における高強度のレーザは,多くの投射法に用いられる十分な変調及び走査手法を有する。一つの一般的なアプローチである,可視光の発光による直接反射による像の形成には,二つの欠点がある。その第1は,像は特殊な一定の波長の単色であり,例えばアルゴンイオンレーザを用いて作られる像は,青及び黒色である。第2は,取り出されたコヒーレントなレーザの反射により,散乱されたビームの周期的強化による斑点を有する像を生ずることである。…。【発明の概要】レーザ・ディスプレイ装置によって,斑点形成を排除した黒白像が得られる。目に見えるこの蛍光性物質からの発光は帯黄色である特性であり,レーザ発光の一部をわざと反射させることによってより白色に近いように調整される。構成的な観点から,本発明の一具体例は,4880Åに発光するように配置されたアルゴンイオンレーザによって励起されたセリウムドープのイットリウムアルミニウム・ガーネット(YAG)で被膜されたスクリーンを用いる。セリウム-活性化蛍光物質は約5500Åに中心を持つ広い波長領域にわたって発光する。変更例としては,4416Åに発光できるカドミウムイオンレーザのような他のレーザ源を,蛍光物質の組成分の変更と同じように包含する。そのようなすべての組成物はセリウム活性化されて,ガーネット構造(即ちY3Al5O12の構造)のホストを利用する。これは適当な色と輝度の再発光を与えることが知られている結合だからである。蛍光物質の吸収ピークは特殊な励起エネルギー源によりよく順応するように移動させることができる。そしてこの目的のために,アルミニウムの一部をガリウムで置換して吸収波長をより短い方へ移動させることができる。またはイットリウムの全部又は一部をガドリウムで置換しより長い波長へ吸収ピークを移動させることもできる。吸収ピークの移動は同方向での相当する発光変化を起こし,レーザ・ビームの一部の反射による色修正(例えば,白色像を作るため)が容易に続けられる。セリウムドープ・ガーネット中の励起スペクトルは上記のレーザに適応するように,又は他のレーザ源をより効率よく利用するようにシフトしても良い。この目的のため,原型組成Y3Al5O12はアルミニウムに対して一部又は全部ガリウムで置換し,及び/又はイットリウムに対してガドリニウムで置換することにより改変できる。前者は励起ピークを短い波長にシフトさせる効果があり,後者は逆の効果がある。このような方法で励起スペクトルのピークは,約0.33ミクロンから約0.48ミクロンの範囲内で,任意に調整することができる。しかしながら,有用な励起は約0.30ミクロン~0.53ミクロンの広い範囲にわたりなされるものである。励起スペクトルのシフトは,約0.51~約0.61ミクロンの範囲にある発光範囲内の発光スペクトルのシフトを生じる。白色又は近白色像を得るための好適な設計として具体例には,発光ピークは約0.52ミクロン(アルミニウムを約45原子パーセントガリウムで置換して変えたYAG成分によって得られる約0.43ミクロンの励起ピークに相当する)以下の波長にすべきではない。この好適な設計として具体例には,発光ピークは約0.52ミクロン(アルミニウムを約45原子パーセントガリウムで置換して変えたYAG成分によって得られる約0.43ミクロンの励起ピークに相当する)以下の波長にすべきではない。この好適な具体例と同じ観点から蛍光体は約0.58μ以上の波長の励起ピークを得るように変更されるべきでない(より適当な励起エネルギーでも,その限度を越えられない。)その理由は効果的でない変換のためであり,また少し長い波長の光となり,そのため反射発光に黄色味を帯びさすためである。有色または灰白色の像を生成することが望まれる場合があるが,本発明のより重要な態様は,白色又はほぼ白色の像に関する。アルゴン又はカドミウムレーザを使用する非改変のYAG:Ce系では,第2次黄色発光をレーザ発光のより短波長の一部反射によって補うことにより白色像が得られる。このような状況で,全部の吸収にならないように,層の厚さ及び成分を設計し,又は一部反射が起こるようにすることが望ましい。上記記載によれば,乙2公報には,
白色系を発光するレーザーディスプレイ装置であって,当該レーザーディスプレイ装置の発光元は,アルゴン又はカドミウムイオンレーザであり,前記発光元の発光スペクトルのピークは488nm又は441.6nmであるレーザと,当該レーザによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,Y及びAlの元素を含むセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む,ことを特徴とするレーザーディスプレイ装置。との発明が記載されている。


上記アの記載に照らせば,乙1公報には,以下の発明が記載されているといえる(以下乙1発明という。原告乙1発明と同じ。。

1a1

青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系を発

光する面状光源であって,
1b1

前記青色発光ダイオードは,
発光層が窒化ガリウム系化合物半導

体であり,

1c1

前記発光層の発光スペクトルのピークが480nmであるLE

Dチップを有し,
1d1

前記蛍光散乱層は該LEDチップによって発光された光の一部

を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,
1e1

赤色蛍光顔料及び緑色蛍光顔料を等量混合した蛍光顔料か,
又は,

黄色蛍光染料及び橙色蛍光染料を等量混合した蛍光染料とを含む,1f1

ことを特徴とする面状光源。

これに対し,
被告は,
乙1発明の構成
(1a1)
に相当する構成について,
白色系を発光する光源であって
と認定すべきであると主張する。
しかし,
上記乙1公報の記載及び証拠(甲66ないし70)に照らせば,乙1発明は
面状光源を提供することを目的としており,面状光源以外の光源についてのものではなく,一般的にも面状光源(面照明装置)が光源の全てを含む概念であるとはいえないから,上記のとおり認定することとする。エ
本件発明1と乙1発明を対比すると,両者の相違点は,以下のとおりであり,その余の構成で一致する。


本件発明1が白色系を発光する発光ダイオードであり,その発光ダイオードの発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるのに対し,乙1発明は青色発光ダイオードと蛍光散乱層と導光板からなる白色系を発光する面状光源であり,その面状光源の構成部材の一つである前記青色発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体である点。



本件発明1が
Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウム付活されたガーネット系蛍光体とを含むのに対し,乙1発明の蛍光物質は,赤色蛍光顔料及び緑色蛍光顔料を等量混合した蛍光顔料か又は黄色蛍光染料及び橙色蛍光染料を等量混合した蛍光染料である点。

これに対し,被告は,蛍光物質を青色LEDチップの近くに配置するか離して配置するかは当業者が適宜選択し得る設計事項であるし,
面状光源
は発光ダイオードと同一の技術分野に属するものであるから,
本件明細書
1における発光ダイオードという用語は面状発光光源を包含する
ものであり,上記①の相違点は存在しないと主張する。
しかし,証拠(甲66ないし70)によれば,
発光ダイオード(LED)との用語は,通常の意味において面状光源を含まないことは当業者における常識であるといえる。
なお,
本件明細書1の
【0089】
には
面状発光の発光ダイオードとの記載があるものの,上記記載は単なる誤記であるか,
又は,
【0087】
が説明する図7の面状発光光源の構成に照ら

して面状発光の発光ダイオードと表現していると理解し得るから,当該記載を根拠として発光ダイオードが面状発光光源を包含すると
はいえない。
したがって,
上記①の相違点が存在しないという被告の上記主張には理由がない。


上記①の相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たことについ
ての被告の主張,立証はない。
また,上記のとおり,乙2公報は,乙1発明の面状光源の技術と技術分野が異なるものであるから,当業者は乙1発明に乙2公報を組み合わせようとは通常考えない。また,乙1発明は,蛍光物質の劣化を防止するため,青色LED(発光ダイオード)と蛍光物質(蛍光散乱層)を離して別部材として設けることを目的とする発明であるところ,そのような乙1発明において蛍光散乱層や導光板をなくし,
蛍光物質を面状光源の構成要素である青色発光
ダイオードの中に組み込み,
白色系を発光する発光ダイオードとの構成
に変更することは,その基本構成を根本的に変更するものである。乙1公報にそのような根本的な変更を示唆する記載はない。

したがって,上記①の相違点に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

以上によれば,その余の相違点を検討するまでもなく,本件発明1は,乙1発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえないから,本件発明1の無効理由2-1は認められない。

無効理由2-2
(乙3公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点4-3)
につい
てア
乙3公報は,
発明の名称を
発光ダイオード
とする公開特許公報であり,
その特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
特許請求の範囲
【請求項1】ステム上に発光素子を有し,それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて,前記発光素子が,一般式GaXAl1-XN(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり,さらに前記樹脂モールド中に,前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料,または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。発明の詳細な説明
ところで,現在,LEDとして実用化されているのは,赤外,赤,黄色,緑色発光のLEDであり,青色または紫外のLEDは未だ実用化されていない。青色,紫外発光の発光素子はII-VI族のZnSe,IV-IV族のSiC,III-V族のGaN等の半導体材料を用いて研究が進められ,最近,その中でも一般式がGaXAl1-XN(但しXは0≦X≦1である。で表される窒化ガリウム系化合物半導体が,)常温で,比較的優れた発光を示すことが発表され注目されている。また,窒化ガリウム系化合物半導体を用いて,初めてpn接合を実現したLEDが発表されている(応用物理,60巻,2号,p163~p166,1991)。それによるとpn接合の窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDの発光波長は,主として430nm付近にあり,さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有している。その波長は上記半導体材料の中で最も短い波長である。しかし,そのLEDは発光波長が示すように紫色に近い発光色を有しているため視感度が悪いという欠点がある。(【0005】)

【発明の効果】蛍光染料,蛍光顔料は,一般に短波長の光によって励起され,励起波長よりも長波長光を発光する。逆に長波長の光によって励起されて短波長の光を発光する蛍光顔料もあるが,それはエネルギー効率が非常に悪く微弱にしか発光しない。前記したように窒化ガリウム系化合物半導体はLEDに使用される半導体材料中で最も短波長側にその発光ピークを有するものであり,しかも紫外域にも発光ピークを有している。そのためそれを発光素子の材料として使用した場合,その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料,蛍光顔料を添加することにより,最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず,蛍光染料,蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。さらに,短波長の光を長波長に変え,エネルギー効率がよい為,添加する蛍光染料,蛍光顔料が微量で済み,輝度の低下の点からも非常に好都合である。(【0009】)

昭和28年ないし29年に発刊されたテレビジョン学会雑誌に掲載され
たテレビジヨン用-成分白色蛍光体
(以下乙4文献という。
)の記載
乙4文献には,以下の記載がある。
蛍光体の此の性質は天然色テレビジヨンの受像の場合には著しい特徴の一つとなり得るが之と反対に普通の単色テレビジヨン用として白色に発光する能率の良い蛍光体が容易に得られない原因ともなる。現在は受像管蛍光面としては普通二種類の蛍光体を混合した混合白色蛍光体が用いられており,成分蛍光体としては互に補色関係にある青と黄に発光する蛍光体が用いられている。青色蛍光体としてはZnS:AgとCdMgSilicate:tiが,黄色蛍光体としては(Zn(d)S:AgとZnBeSilicate:Mnが最も優れていることが確められた。

混合蛍光体の発光が白色であるためにはCTE色度図上で各成分蛍光体の色をあらわす色点を結ぶ線が第一図の白色許容領域を通過しなければならない。

上記の記載によれば,乙4文献には,白黒テレビでは,互いに補色関係にある青と黄を発光する蛍光体を用いることで,白色光を作り出していたという技術が開示されている。

特開昭51-4085号公報(以下乙5公報という。
)の記載
乙5公報には,以下の記載がある。
本発明は白黒テレビジョン用白色発光蛍光体に関するものである。従来実用の白黒テレビジョン用白色発光蛍光体は単一の蛍光体ではなく,発光色が補色の関係にある黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体とを,電子線励起によって実質的に白色に発光するように適当な割合で混合したものである。しかして従来実用の白黒テレビジョン用蛍光体を構成する黄色発光蛍光体として銀付活硫化亜鉛カドミウム蛍光体〔(Zn,Cd)s:Ag〕,又は銅及びアルミニウム付活硫化亜鉛カドミウム蛍光体〔(Zn,Cd)S:Cu:Al〕が,青色発光蛍光体として銀付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Ag)が用いられていた。上記の記載によれば,乙5公報には,白黒テレビにおいて,発光色が補色の関係にある黄色発光蛍光体と青色蛍光発光体とを,電子線で励起することによって白色を発光させていたという技術が開示されている。エ
特開昭53-144660号公報(以下乙6公報という。
)の記載
乙6公報には,以下の記載がある。

従来の長残光性形陰極線管は蛍光面に長残光性を有する黄色発光成分の銅付活硫化カドミウム亜鉛(ZnCds:Cu)と,青色発光成分の銀付活硫化亜鉛蛍光体(Zns:Ag)を層状に形成し,電子銃に近い側にある青色発光蛍光体をまず電子ビームにて発光せしめ,その青色光で2次的にフエースプレート側の長残光性を有する黄色発光蛍光体を発光させていた。このように青色光によって2次的に発光させるのは,電子ビームで直接刺激するより残光性がより長くなるためであり,この方式が古くから用いられてきている。上記の記載によれば,電子銃に近い側にある青色発光蛍光体をまず電子ビームにて発光させて,その青色光で2次的にフエースプレート側の黄色
発光蛍光体を発光させるような陰極線管が古くから存在していたという技術が開示されている。

特開昭51-48269号公報(以下乙7公報という。
)の記載
乙7公報には,以下の記載がある。

この発明はフライングスポット走査用陰極線管に関するもので,特に可視スペクトルの全域に亘る光成分を含んだ発光を行なう蛍光物質層を備えたフライングスポット走査用陰極線管の改良に関するものである。

しかし一種類の物質で上記のように可視スペクトルの全域に亘る光成分を含んだ発光を行ない得る蛍光物質は未だ見出されておらず,このため可視スペクトルの全域に亘る光成分を含んだ発光を行なわせる場合に,2種類の蛍光体を混合して使用することが提案されており,青色光成分を含んだ発光を行なわせるためのセリウム付活珪酸イットリウム〔Y2SiO:Ceで表わされる〕蛍光体と,緑および赤色の光成分を含んだ発光を5行なわせるためのセリウム付活酸化アルミニウムイットリウム〔Y3AlO12:Ceで表わされる〕蛍光体とを混合することが知られている。
5
加えて,緑色または赤色の光成分を含んだ発光を行なうセリウム付活酸化アルミニウムイットリウム蛍光体は,黄緑色の体色を有することからわかるように,450ナノメータの波長(青色の波長)付近にピークを有する励起帯を持っており,セリウム付活珪酸イットリウム蛍光体からの青色光を吸収する性質がある。上記の記載によれば,セリウム付活YAG蛍光体が,緑及び赤色の光成
分を含んだ発光を行うことや,450ナノメータの波長(青色の波長)付近にピークを有する励起帯を持っていることが開示されている。

昭和51年に発刊された雑誌テレビジョン第30巻第4号
(以下乙8文献という。
)の記載
乙8文献には,以下の記載がある。

発光中心内での遷移確率についての考察から,この要求を満たすことができるのはセリウムイオン(Ce3+)で付活された蛍光体だけであることが結論される。受光器(フォトマル)の分光感度を考慮して,青色発光のケイ酸イットリウム(Y2SiO5:Ce)(P47)が用いられる。天然色画像の再生には可視部全域にわたる発光が必要なので,Y2SiO5:Ceと黄色発光のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)(YAl5O12:Ce)(P46)との混合物(P48)が用いられる。
3
上記の記載によれば,乙8文献には,フライングスポット管の蛍光体として,可視部全域にわたる発光を可能とするため,青色発光をするY2SiO5:Ceに加えて,黄色発光をするセリウムで付活されたイットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(Y3Al5O12:Ce)が用いられていたことが開示されている。

特開昭62-208539号公報(以下乙9公報という。
)の記載
乙9公報には,以下の記載がある。
このように高圧水銀灯の演色性改善が充分になされない理由の一つは,発光管から放出されている405nmおよび436nmの水銀輝線出力が強すぎるためであることが知られている。この水銀輝線出力に関しては例えば,405nm出力については酸化チタン被膜を利用するなどして抑制することが出来るものであるが,このように単に水銀輝線を抑制することはランプ効率の低下を伴うために不適当と考えられていた。すなわち,従来の演色改善形高圧水銀灯では,前記短波長青色域の水銀輝線を抑制することなく演色性の改善をはかっているため,その改善も十分ではなく屋内照明に広く普及させていくためには,なお一層の改善が望まれていた。このような事情に基づいて,近年短波長青色域に吸収を有する蛍光体が開発され前記短波長青色域の水銀輝線を抑制することによって生じるランプ効率の低下を防止する検討がなされている。例えば,上記短波長青色域に吸収を有する蛍光体としてY3Al5O12:Ce(以下,一般式としてYAG:Ceと略記する)を用い,赤色蛍光体とともに高圧水銀灯に適用して演色性の改善を試みた例が,米国特許第4034257号明細書に開示されているが,そのランプのRaは51程度であり満足なものではなかった。本発明は,短波長青色域の水銀輝線を抑制した高圧水銀灯に係り,とくにその演色性を大幅に改善した蛍光高圧水銀灯を提供するものである。

作用発光管から放出される短波長青色域の水銀輝線を吸収するとともに,青緑色域,黄緑色域および赤色域に同時に発光を付加することにより,その演色性を大幅に改善することができる。

発明の効果以上説明したように,本発明は外管内面に被着形成する蛍光体被膜として3価のセリウム付活イットリウムアルミネート蛍光体である第1の蛍光体と,・・・第2の蛍光体と,・・・第3の蛍光体とから成るものを用いることにより,演色性を大幅に改善した蛍光高圧水銀灯を提供することが出来るものである。上記の記載によれば,乙9公報には,セリウム付活YAG系蛍光体が,
高圧水銀灯の放射光の436nm等の青色の光を吸収して,黄緑色域および赤色域に発光する蛍光体として用いられており,これにより高圧水銀灯の放射光の演色性を改善できるという技術が記載されている。

上記アの記載に照らせば,乙3公報には,以下の乙3発明が記載されている。

1a3

発光ダイオードであって,

1b3

該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であ

り,
1c3

前記発光層の発光スペクトルのピークが430nmにあるLE

Dチップと,

1d3

該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収し

た光の波長よりも長波長の光を発光する,
1e3
1f3
ことを特徴とする発光ダイオード。


蛍光染料,又は,蛍光顔料を含む,

本件発明1と乙3発明を対比すると,両者の相違点は,以下のとおりであり,その余の構成で一致する。


本件発明1が白色系の発光ダイオードであるのに対し,乙3発明が白色系の発光ダイオードと特定されていない点。


本件発明1が蛍光体としてY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を用いているのに対し,乙3発明では,蛍光体がこのようセリウムで付活されたYAG系蛍光体に限定されていない点。

乙3発明は,上記アの記載に照らせば,発光ピークが430nm付近ないし370nm付近にある発光素子の色補正ないし波長変換を行い,視感度および輝度を向上させるものであるといえるところ,そのような乙3発明の構
成において乙2公報に記載されたYAG蛍光体を用いると,YAG系蛍光体は370nm付近の光(紫外線)ではほぼ励起されないため,人体に有害な紫外線が蛍光体に吸収されずに放出されてしまうことになる(甲23・16ないし17頁,弁論の全趣旨)から,当業者は乙3発明に乙2公報を組み合わせようとは通常考えず,それらを組み合わせることには阻害事由があると
いえる。
また,被告は,上記イないしキの発明や技術に照らし,青色系の光を出す光源について出力される光の演色性を向上して白色光を得るという課題や当該課題を解決する手法として光源と蛍光体を用いた上で光源の光と当該蛍光体による黄緑色域及び赤色域の発光とを組み合わせることは,本件発明
1の第1優先日当時の当業者において周知であったと主張する。しかし,上記イないしキに記載した発明や技術に照らしても,本件発明1や乙3発明に係る発光ダイオードの分野においてそのような課題等があったことを認めるには足りない。したがって,上記第1優先日当時,乙3発明の構成に代えて,
上記②の相違点に係る本件発明1の構成を採用することについての課題
が当業者に認識されていたとは認められない。
そうすると,上記第1優先日当時,上記②の相違点に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。また,同様の理由から,上記①の相違点に係る本件発明1の構成についても,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。


以上によれば,本件発明1は,乙3発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえないから,本件発明1の無効理由2-1は認められない。
無効理由4(周知技術を理由とする進歩性欠如)
(争点4-5)について

被告は,本件特許権1の第1優先日(平成8年7月29日)当時,後記イの文献等に照らして白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオード乃至LED光源は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオード。という構成は,周知ないし公知であったと主張
する。
また,被告は,本件特許権1の第1優先日当時,後記ウの文献等に照らして,YAG系蛍光体は,蛍光体の光励起を利用して白色を得るディスプレイや白色ランプ等に用いる好ましい蛍光体として周知であったと主張する。さらに,被告は,後記エの文献に照らして,本件発明1の属する技術分野
は,ブラウン管用蛍光体やPYG蛍光体,液晶ライトバルブCRT,発光スクリーン等の蛍光体関連の技術分野と異なるものではないと主張する。乙29明細書の記載

本発明は一般に発光ダイオードに関し,より詳細には,紫色の発光ダイオードに関する。


基板11としては,火炎溶融法で育成されたサファイア単結晶のウェーハまたは切片を用いることができる。ウェーハ11の片面に,高n型窒化ガリウム12の層を形成する···途中省略)(···領域12を成長させた後,マグネシウムをドープした窒化ガリウム層13を形成するために,金属マグネシウムを導入して雰囲気をドープする。ドーパント原子は,通常のn型を補償して,実質的に真性のGaN:Mg層を形成する。層13は,層12と,i-n接合14を形成する。この真性層13,i層,の厚さは,典型的には10μであり,可能な範囲は5~20μである。そして,層中のマグネシウム濃度は,電子マイクロプローブ分析による測定で,典型的には0.15重量%(1020原子cm-3)であり,可能な範囲は5×1019~1021原子cm-3である。

種々のサンプルにおいて,順バイアス下でのエレクトロルミネセンスの発光は,2.86~2.98電子ボルトの範囲にピークがあった。

この装置は,そのスペクトル範囲が適切であるために,紫色光の光源としての利用に用いることができる。この光は,有機および無機蛍光体を用いて,良好な変換効率で,より低い周波数(より低いエネルギー)に変換することが可能である。このような変換は,審美的目的のために異なる色を発色するだけでなく,人間の目にとってより高い感度のスペクトル範囲の光を生成するのにも適している。異なる蛍光体を使用することにより,すべての基本色を,この同じ基本デバイスから発現させることができる。
昭和47年に公知となった技術論文Mat.Res.Bull.Vol.7.pp.777-782(乙30)の記載
紫色のエレクトロルミネセンスを示すMgドープGaNダイオードが製造されており,その射出される放射は4250Åにピークを示す。私たちが知る限り,これは,この波長での可視エレクトロルミネセンスについての初めての報告である。これらのGaNデバイスの作成方法について概説する。

Mgドープ層は,図2に示すように,4250Å(2.92eV)にピークを有する紫色発光を射出した。短波長における,可視の,エレクトロルミネッセンスの初めての報告である。


平成6年2月に刊行された日経エレクトロニクス第602号p93-102(乙31)には,

日亜化学工業が光度1cdのGaN青色発光ダイオードを開発した。発光波長は450nm,光出力は1.2mW,寿命は数万時間である。

との記載がある。平成6年3月に公開された
Appl.Phys.Lett.64(13)28March1994p1687-1689(乙32)は,
カンデラ級のInGaN/AlGaNダブルへテロ構造の高輝度青色発光ダイオード)に関する報告である。平成5年3月に公開された
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)pp.L338-L341(乙33)は,
GaN膜上に成長したCdドープのInGaN膜に関する報告であり,室温でのフォトルミネッセンス(PL)は,ピーク波長が424nmと495nmの範囲にある,強い青色発光を示したとの記載がある。平成5年9月に刊行された電子情報通信学会誌Vol.769No.pp.913-917(乙34)には,
InGaN青色発光ダイオードに関する報告であり,

この発光出力はホモ接合LEDの約3倍である。

との記載がある。平成6年6月に刊行されたエレクトロニクス1994年6月号p34-37に掲載された
青色LEDも1cd時代
と題する論文
(乙35)
には,

従来のSiC青色LEDの100倍の輝度を有する世界最高輝度の青色LEDを開発製品化した。

という記載がある。
乙3公報の記載

【産業上の利用分野】本考案は発光素子を樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオード(以下LEDという)に係り,特に一種類の発光素子で多種類の発光ができ,さらに高輝度な波長変換発光ダイオードに関する。


【0001】


【発明の効果】蛍光染料,蛍光顔料は,一般に短波長の光によって励起され,励起波長よりも長波長光を発光する。逆に長波長の光によって励起されて短波長の光を発光する蛍光顔料もあるが,それはエネルギー効率が非常に悪く微弱にしか発光しない。前記したように窒化ガリウム系化合物半導体はLEDに使用される半導体材料中で最も短波長側にその発光ピークを有するものであり,しかも紫外域にも発光ピークを有している。そのためそれを発光素子の材料として使用した場合,その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料,蛍光顔料を添加することにより,最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず,蛍光染料,蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。さらに,短波長の光を長波長に変え,エネルギー効率がよい為,添加する蛍光染料,蛍光顔料が微量で済み,輝度の低下の点からも非常に好都合である。(【0009】)
特開平8-7614号公報(乙38)の記載
【作用】図2は本発明の面状光源を例えば液晶パネルのバックライトとして実装した場合の模式断面図である。これは図1に示す面状光源の第二の主面側に,例えばチタン酸バリウム,酸化チタン,酸化アルミニウム等よりなる散乱反射層7と,例えばAlよりなるベース8とが積層された反射板を設置し,第一の主面側には表面に微細な凹凸が施された透明なフィルム6が設置され,このフィルム6の凹凸が施された表面上には青色LED1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が塗布されている。

【0009】

まず図2の矢印で示すように,青色LED1から出た光は,チップ近傍で一部導光板2以外の外部に放射されるが,大部分の光は導光板2の中を全反射を繰り返しながら,導光板2の端面に達する。端面に達した光は端面全てに形成された反射膜4に反射されて,全反射を繰り返す。この時,導光板2の第二の主面側に設けられた散乱層3により光は散乱され,散乱された光の一部は蛍光層5により吸収され同時に波長変換されて放射され,導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できる。例えば橙色の蛍光顔料からなる蛍光層5を設けた面状光源では,先に述べた作用により,青色LED1からの発光色が白色となって観測できる。(【0010】)
上記公報に開示された発光ダイオードは,具体的には,発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し,発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して,吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。(【0005】)

上述の開示された発光ダイオードにおいて,発光素子として,青色系の発光が可能な発光素子を用いて,該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。(【0006】)
青色発光ダイオード,ダブルヘテロ構造で

1cd実現」という記事であり,ピーク波長が440nm,半減幅は20nmである青色発光ダイオードの発光スペクトルが示されている。(乙3
1)
平成8年7月に刊行された電子技術(第38巻第7号)(乙39)には,
カーオーディオのLED用高輝度白色バックライトという記事が
掲載されており,
青色のもつ波長帯で励起発光する蛍光体・・・の原理を応用して,色変換材を混合し,白色発光が可能な色変換シート(CCS)を開発して,これを用いた高輝度白色バックライトを採用した機器が平成8年4月には発売されていた旨が記載されている。

原告は,
遅くとも平成7年5月16日時点で,
当業者に対し,
NP-204とされるCe付活YAG蛍光体(Y3Al5O12:Ce)を販売していた。
(乙40の1,2)
特公昭49-1221号公報(乙41)の記載
可視或は紫外領域でのレーザ・ビームの走査及び,可視領域に発光する光ルミネツセンス・スクリーンを用いる投射法によつて単色デイスプレイが作られる。燐光の結合によつて白色或は所望の色を出すことができる。(第1頁第2欄)レーザ・デイスプレイ装置によつて,斑点形成を排除した黒白画像が得られる。本発明の装置はスクリーンからの発光光よりいくらか短い波長での可視領域で発光するレーザによりエネルギーを付与されたセリウム活性化ガーネットの燐光体スクリーンを用いることによる。一つの構成には,セリウムを含有するイットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いる。肉眼には,この燐光性物質からの発光は帯黄色である特性であり,レーザ発光の一部を故意に反射させることによつてより白色に近いように修正される。構成分に関する観点から,本発明の一具体例は,4880Åに発光するように配置されたアルゴン・イオン・レーザによつてエネルギー付与されたセリウム・ドープのイツトリウムアルミニウム・ガーネット(YAG)で被膜されたスクリーンを用いる。(第1頁第2欄)変更例は,4416Åに発光できるカドミウム-イオンレーザのような他のレーザ源を,燐光物質の組成分の変更と同じように包含する。そのようなすべての組成物はセリウム活性化されて,ガーネット構造(即ちYAl5O12の構造)のホストを利用する。これは適当な色と輝度の再発光3を与えると知られている結合であるからである。燐光物質の吸収ピークは特殊なエネルギー付与源によりよく順応するように移動させることができる。そしてこの目的の為に,アルミニウムの一部をガリウムで置換して吸収波長をより短い方へ移動させる。或るいはイツトリウムの全部又は一部をガドリウムで置換しより長い波長へ吸収ピークを移動させる。吸収ピークの移動は同方向での相当する発光変化を起こし,レーザ・ビームの一部の反射による色修正(例えば,白色像を作るため)が容易に続けられる。(第2頁第3欄)
YAG-セリウム燐発光デイスプレイでは,燐光物質の吸収帯が一般的に広く,発光ピークはエネルギー付与波長の変化には比較的に鈍感である。この現象は見かけ発光色の著しい変化がなく,レーザ源の置換を可能にするために非常に有用である。(第2頁第4欄)

アルゴン或はカドミウム・レーザを用いる非変更YAG:Ce系では,第2次黄色発光を,レーザ発光のより短波長の一部反射によつて補償することにより白色像が得られる。(第7頁第13欄)

特開昭62-20237号公報(乙42)の記載
・・この第3のスペクトル範囲において必要とする放射,・すなわち,430~490nmの範囲は,多くの場合青に発光する材料によって供給される。・・・これらの放電灯は,与えられた一定の色温度において白色光を放出する。すなわち,・・・(第2頁第5欄)
前記ガーネットは,(例えば,雑誌J.O.S.A.59巻,第1号,第60頁,1969年の)既知の発光材料であり,これは,短波紫外放射のほかに,又特に約400~480nmの波長を有する放射をも吸収し,それを,約560nmにおいて最大値を有する広い放出帯域(約110nmの半値幅)の放射に変換する。(第3頁第9欄)本発明によるそのような放電灯は,好ましくは,このガーネットにおいて,Lnがイットリウム(Y)であることと,このガーネットがGa及びSc(p=q=0)を含まないことを特徴とする。そのような材料は事実,最も好都合な吸収性を有し,最高の発光束を供給する。(第4頁第1
1欄)
特開平6-208845号公報(乙43)の記載
本発明は,とりわけ,放射光が白色であり,演色が極めて優れた低圧水銀放電ランプを提供することを目的とするものであり,同時に低圧水銀放電ランプの発光効率が比較的高く,低圧水銀放電ランプの稼働寿命中はこの発光効率のデグラデーションの割合が比較的小さな低圧水銀放電ランプを提供することを目的とするものである。(【0005】)
本発明によれば,冒頭に記載したような低圧水銀放電ランプにおいて,この目的を達成するために,発光層が,更に,最大値が430nmと490nmの間にあるバンドエミッションを有する第3の発光材料と,主に520nmと565nmの間で放出する第4の発光材料と,主に590nmと630nmの間で放出する第5の発光材料とを含むことを特徴とするものである。(【0006】)
低圧水素ランプによって放射される光の色温度が比較的低いことを所望する場合は,発光層が,3価のセリウムで活性化された蛍光イットリウム-アルミニウムガーネットを含んでいることによってこれを実現できる。このアルミン酸塩(以下YAGという),式Y3-xCexAl5O12によって規定される。ここで,xは,0.01≦x≦0.15である。イットリウム(Y)を,ガドリニウム(Gd),ランタン(La),及びルテニウム(Lu)のような他の希土酸化物で置き換えてもよく,アルミニウム(Al)の一部を,例えば,ガリウム(Ga)及び/又はスカンジウム(Sc)で置き換えるようにしてもよい。これらの発光ガーネット(例えば,アプライドフィジクスレターズ;Appl.Phys.Letters.11.53.1967参照)は,短波長紫外線のみならず,可視深青線をも吸収し,最大約560nmの広いバンド(半値幅約110nm)で放出する。(【0016】)

特開平7-183005号公報(乙44)には,蛍光体の劣化に起因する蛍光ランプの特性劣化という問題を解決課題とする発明が開示されていた。
特開平5-156246号公報(乙45)には,

この技術において,イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)蛍光体はよく知られている。,

本発明によれば,イットリウムアルミニウムガーネット結晶構造を有する新種の蛍光体が提供される。本発明の蛍光体の一般式は,Y3-yGdyAl5-xGaxO12:Aであり・・・

などの記載がある。エ
平成6年春に出版された一般的なテキストであるLuminescentMaterials(乙46)
には,
第6章には蛍光体のランプへの応

用が,第7章には蛍光体の陰極線(管)への応用が,第8~9章には蛍光体のX線スクリーンやシンチレーターへの応用の解説がなされるとともに,第
10章ではその他の応用としてエレクトロルミネッセンスの項が設けられ,そのうちのひとつとしてLEDおよび半導体レーザーの解説がなされている。

被告は,上記アのとおり,上記イの文献等に照らして白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオード乃至LED光源は,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する,蛍光体とを含む,ことを特徴とする発光ダイオード。が周知ないし公
知技術であると主張する。
しかし,上記イの文献等の記載は上記のとおりであり,被告が上記で主張するような発光ダイオードの構成は記載されていない。したがって,被告が主張する構成が周知ないし公知技術であるとはいえない。
また,被告は,上記ウの文献等に照らして,YAG系蛍光体は,蛍光体の
光励起を利用して白色を得るディスプレイや白色ランプ等に用いる好ましい蛍光体として周知であったと主張する。
しかし,上記ウの文献等に記載された技術等は,本件発明1に係る発光ダイオードとは異なる技術分野についてのものであるから(被告は上記エの文献により,
上記ウの文献等の記載は発光ダイオードと同一の技術分野に属す
ると主張するが採用できない。,当業者が上記ウの文献等に記載された技術)
等を発光ダイオードに組み合わせようとは通常考えない。

以上によれば,
本件発明1が周知の技術によって容易に想到することがで
きたとはいえないから本件発明1の無効理由4は認められない。
結論
本件発明1についての無効理由1ないし4はいずれも認められないから,本件発明1に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。
5本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点5)無効理由1(サポート要件違反)
(争点5-1)について

被告は,本件発明2には,本件明細書2に開示されていない四隅からリードが露出しないような切り欠き部の構成や正負のリード間の切り欠き部が
直線状でないものも文言上含まれるから,サポート要件違反の無効理由を有すると主張する。

樹脂パッケージは,四隅からリードが露出されていることが好ましい。樹脂パッケージの一側面全体にリードを設けるよりも,リードの露出部分を低減するができるため,樹脂部とリードとの密着性の向上を図ることができる。また,正負の異なるリード間に絶縁性の樹脂部が設けられているため短絡を防止することができる。(【0022】)
樹脂パッケージは,外底面と外側面と外上面とを有する。樹脂パッケージの外側面からリードが露出している。樹脂部とリードとは略同一面に形成されている。この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する。(
【0042】

切り欠き部は,樹脂成形体を個片化して樹脂パッケージとした際,リードが正負一対となるように形成されている。また,切り欠き部は,樹脂成形体を切断する際に,リードを切断する面積を少なくするように形成されている。例えば,正負一対のリードとなるように横方向に切り欠き部を設け,また,樹脂成形体を個片化する際の切り出し部分に相当する位置に切り欠き部を設ける。ただし,リードフレームの一部が脱落しないように,又は,樹脂パッケージの外側面にリードを露出させるためにリードフレームの一部を連結しておく。ダイシングソーを用いて樹脂成形体をダイシングするため,切り欠き部は,縦及び横若しくは斜めに直線的に形成されていることが好ましい。(【0050】)
次に,切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する。複数の凹部27が形成された樹脂成形体24は,隣接する凹部27の間にある側壁を略中央で分離されるように長手方向及び短手方向に切断する。切断方法はダイシングソーを用いて樹脂成形体24側からダイシングする。これにより切断面は樹脂成形体24とリードフレーム21とが略同一面となっており,リードフレーム21が樹脂成形体24から露出している。このように切り欠き部21aを設けることにより,切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また,リードフレーム21の上面だけでなく,切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため,リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する。(【0078】)

本件明細書2の【0042】では樹脂パッケージの外側面からリードが露出していると記載され,【0050】ではリードフレームの一部が脱落しないように,又は,樹脂パッケージの外側面にリードを露出させるためにリードフレームの一部を連結しておくと記載されているとおり,本件明細書2には,
樹脂パッケージの外側面におけるリードの露出箇所を特定の位置
に限定しない構成が記載されている。また,本件明細書2の【0022】には,
樹脂パッケージは,四隅からリードが露出されていることが好ましいと記載されており,
本件発明2に係る発光装置において四隅からリードが露
出されている構成が好ましい例にすぎないことも明記されている。これらの
記載に照らせば,本件明細書2には,個片化後の発光装置において四隅からリードが露出する態様に限定されない発明の構成が開示されているといえる。
また,本件発明2において,正負のリード間の切り欠き部の形状が直線状のものに限られる理由はなく,この点は本件明細書2に接した当業者にも明
らかである。
したがって,本件発明2は,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえるから,特許法36条6項1号の要件(サポート要件)を充足する。

以上によれば,本件発明2は,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するものではないから,無効理由1は認められない。
無効理由2(乙11公報の拡大先願との同一)
(争点5-2)


乙11公報は,発明の名称を半導体発光装置,半導体発光装置用多連リードフレームとする公開特許公報であり,その明細書の発明の詳細な説明
には,以下の記載がある。
また,リードフレームの主表面における少なくとも半導体発光素子搭載部において,凹部が形成されており,半導体発光素子は,凹部の底面に搭載されていることが望ましい。この場合は,凹部の底面に半導体発光素子を設けることによって,封止樹脂の形状だけでは制御することができない光学特性,特に凹部を持たない半導体発光装置よりも高指向特性の半導体発光装置を得ることができる。(【0013】)
また,主表面上に,封止樹脂と接触しないように設けられた反射体をさらに備えることが望ましい。または,絶縁体の周縁よりも半導体発光素子から離れる側に設けられた反射体をさらに備えることが望ましい。このように構成された半導体発光装置によれば,半導体発光素子を封止している封止樹脂の形状だけでは制御できないような光学特性を得ることができる。同時に,半導体発光素子が発生した光を,より効率よく外部へ取り出すことが可能となる。(【0016】)
この発明に係る他の半導体発光装置用多連リードフレームは,半導体発光装置を構成するリードフレームが複数個連なったリードフレーム基材を含む。また,リードフレームを取り囲むようにリードフレーム基材に形成された隙間に充填された,半導体発光装置を構成する絶縁体となるべき絶縁体基材を含む。半導体発光装置用多連リードフレームは,基板状に成形されている。そして,上記隙間の一部に,絶縁体基材が充填されていない溝構造が形成されている。この場合は,半導体発光装置用多連リードフレームの切断に際し,切断金型による切断を行なうことができる。半導体発光装置用多連リードフレームの金属部分は金型により切断し,絶縁体としての樹脂部分をダイシングにより切断すれば,金属と樹脂とを同時にダイシングカットする際に発生するバリなどのカット不良の発生を防止することができる。また,半導体発光装置の特性検査を,個辺化された半導体発光装置単位に限らず,多連リードフレーム単位で実施することができるので,生産効率の向上を図ることができる。(【0018】)
また,絶縁体基材は,個々の絶縁体の複数個を連ねていることが望ましい。この場合は,複数個の絶縁体を一度に成形することができる。絶縁体が樹脂であるとき,絶縁体基材はダイシングによって容易に切断,分離することができる。(【0019】)
また,リードフレーム基材は,絶縁体基材の脱落防止用の鍵構造を有することが望ましい。この場合は,リードフレーム基材と絶縁体基材との接合力を向上することができるので,リードフレーム基材を金型により切断したときも絶縁体基材がリードフレームから分離し脱落することを防止することができる。(【0020】)
この発明に係るさらに他の半導体発光装置用多連リードフレームは,半導体発光装置を構成するリードフレームが複数個連なったリードフレーム基材を含む。また,リードフレームを取り囲むようにリードフレーム基材に形成された隙間に充填された,半導体発光装置を構成する絶縁体となるべき絶縁体基材を含む。半導体発光装置用多連リードフレームは,基板状に成形されている。そして,リードフレーム基材は,桟フレームを有し,絶縁体基材は,桟フレームによって,リードフレームを取り囲む個々の絶縁体ごとに仕切られている。この場合は,半導体発光装置用多連リードフレームを切断金型により切断することによって半導体発光装置を個辺化することができるので,ダイシングによる切断を行なう必要がなく,生産効率のさらなる向上を図ることができる。(【0021】)
半導体発光素子搭載部1cおよび金属線接続部1dは,板形状を有し,所定のパターンニング加工が施されることで離間している。離間している半導体発光素子搭載部1cと金属線接続部1dとの間に,主表面1aから,主表面1aと反対側の面である裏面1bにまで達する,スリット状の溝1mが形成されている。半導体発光素子搭載部1cと金属線接続部1dとは,樹脂部2と同じ絶縁体である樹脂素材が充填されているスリット状の溝1mによって,電気的に絶縁されている。つまり,後述するように,スリット状の溝1mには,樹脂部2に樹脂を充填するときに,樹脂部2に充填される樹脂材料と同じ樹脂材料が充填される。(【0026】)

樹脂部2は,図2に示すように,リードフレーム1(半導体発光素子搭載部1cおよび金属線搭載部1d)を取り囲む構造に成型されている。かつ樹脂部2は,リードフレーム1の主表面1aおよび裏面1b上に突起しないように,リードフレーム1の厚み以下の厚みを有するように,成形されている。また,リードフレーム1に接触する樹脂部2の表面積を大きくしかつ楔効果を持たせるために,リードフレーム1の主表面1aおよび裏面1bの適切な場所を加工し,樹脂を挿入して樹脂部2を成形することにより,リードフレーム1から樹脂部2が剥離,脱落することを防止し,製品強度を向上させることができる。また,厚みの異なる銅または銅合金条を金型加工して作製した異形条の(すなわち,厚みが一定でない)リードフレーム1を使用し,樹脂部2でリードフレーム1全体を取り囲むように成型させることでも,製品強度を向上させることができる。リードフレーム1の裏面1bには,半導体発光装置を実装基板などに接続するための端子部が設けられている。(
【0033】

樹脂部2に充填される絶縁体としては,製造時におけるリフロー工程を考慮して,耐熱性に優れた材料が使用される。また,LEDチップ4から発生する光を反射するために,反射率が高い白色の材料で形成されることが望ましい。さらに,LEDチップ4からの光で劣化しない,熱膨張係数がリードフレーム1と近い材料を用いることが望ましい。上記条件を満たす具体的な材料としては,液晶ポリマーやポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。また,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂も,樹脂部2を形成する材料として使用できる。さらに,アルミナなどのセラミックについても,樹脂部2を形成する材料として使用することができる。【0034】(

図1に示すように,LEDチップ4および金属線5を封止する封止樹脂としての熱硬化性樹脂3は,ドーム形状に成形されており,かつその形状安定性を確保するために,金型成型により成形されている。金型成型としては射出成型(たとえば,トランスファー成型など)および圧縮成型などが考えられ,最も成型性のよい金型成型法を選択できる。この実施の形態では,トランスファー成型法にて封止を行っている。なお,トランスファー成型により成形された熱硬化性樹脂3では,成形した形状の周辺にランナー痕が残る。また,圧縮成型により成形された熱硬化性樹脂3では,成形した形状の周辺に樹脂オーバーフロー痕が残る。また,熱硬化性樹脂3が金型成型により成形された半導体発光装置では,個辺化された各々の半導体発光装置において,熱硬化性樹脂3が均一な成形形状を有している。(【0035】)
LEDチップ4および金属線5を封止する封止樹脂としては,熱硬化性樹脂(たとえばエポキシ樹脂,シリコーン樹脂など)を用いることができる。この熱硬化性樹脂3の形状により,LEDチップ4が発生する光に目的とする光学特性を持たせることができる。また,封止樹脂に高屈折率の樹脂を使用することにより,半導体発光装置によっては,従来の半導体発光装置の外周部に設けられていた反射板を取り除くことも可能となる。具体的には,図1に示すように封止樹脂の形状をドーム形状にすることにより,LEDチップ4から発せられる光の指向角は小さくなる(つまり,光の広がりが抑えられる)逆に,。指向特性が必要ない製品に対しては,封止樹脂を円柱形状として,封止を行なうことができる。さらに,封止樹脂は,外部からの物理的または電気的な接触に対して,LEDチップ4および金属線5を保護する役割を果たしている。(【0038】)
次に,図1に示す半導体発光装置の製造方法について説明する。図3は,実施の形態1における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。図4は,実施の形態1の半導体発光装置に用いられる,多連リードフレームの模式図である。図3に示すように,まず工程(S1)において,金属の板材を,たとえば打ち抜きプレス加工やエッチング加工などの適当な加工手段によって,所定形状にパターンニングして,リードフレーム基材が加工される。図4に示すリードフレーム基材201は,半導体発光装置を構成するリードフレーム1が複数個連なったものであって,リードフレーム基材201の両端のサポートフレーム202と,サポートフレーム202間に架橋するように渡され骨組み状となっている複数の桟フレーム203とを含む。図1に示す半導体発光装置において半導体発光素子搭載部1cを構成する部分と,半導体発光装置において金属線接続部1dを構成する部分とは,リードフレーム基材201では分離されており,隣接する桟フレーム203によって吊られるように保持される。(【0039】)
次に工程(S2)において,半導体発光装置を構成する絶縁体としての樹脂部2となるべき,樹脂基材207を形成する。樹脂基材207は,リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間の全てに,樹脂が充填されて形成される。たとえばインサート成型によって,樹脂基材207を形成することができる。このとき,半導体発光装置において半導体発光素子搭載部1cを構成する部分と金属線接続部1dを構成する部分との間の隙間(つまり,半導体発光装置においてスリット状の溝1mに相当する部分)にも,樹脂が充填されるので,図1に示す半導体発光装置において,樹脂部2とスリット状の溝1mには,同じ樹脂が充填されていることになる。樹脂基材207は,リードフレーム基材201の厚み以下の厚みを有するように成形される。工程(S2)が終了した時点で,リードフレーム基材201と樹脂基材207とは,1枚の基板状になるように成形されている。(【0041】)

次に工程(S3)において,熱硬化性の銀ペースト6などの導電性ペーストを,リードフレーム基材201の,半導体発光装置において半導体発光素子搭載部1cを構成する部分の主表面1aに相当する表面に塗布する。そして,導電性ペーストを介在させて半導体発光素子としてのLEDチップ4を主表面1aに実装する,ダイボンドが行なわれる。次に工程(S4)において,実装されたLEDチップ4の電極と,半導体発光装置において金属線接続部1dを構成する部分の主表面1aに相当する表面とを,たとえば直径20~30μmの金(Au)からなる金属線5によって電気的に接続する,ワイヤーボンドが行なわれる。これにより,半導体発光装置としての回路が形成される。(【0042】)
次に工程(S5)において,LEDチップ4と金属線5とを完全に覆うように,樹脂による封止を行ない,半導体発光装置としての回路は外気から遮断されて保護される。封止材として使用される樹脂は,熱硬化性樹脂であって,エポキシ系,シリコーン系などの透明樹脂を用いることができる。半導体発光装置が白色照明の場合は,封止樹脂として,ガドリニウムおよびセリウムが添加されたYAG系(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの蛍光体を含有させた樹脂を使用することができる。このとき,封止樹脂は,液状や固形の樹脂を使用した金型成型によって成形されるので,たとえば図1に示すドーム形状などの,LEDチップ4が発生する光に関して目的とされる光学特性に基づいた形状に成形することが容易に可能であり,かつその形状安定性を確保することができる。金型内で樹脂硬化を行なうため,従来の液状樹脂封止の課題となっていた粘度変化などに起因する滴下量バラツキ,硬化時の揮発成分の蒸発や硬化収縮による封止形状バラツキを抑えることができる。(【0043】)
(実施の形態4)図9は,実施の形態4の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図10は,図9に示す実施の形態4の半導体発光装置の平面図である。図9および図10に示すように,実施の形態4の半導体発光装置は,図1および図2に示す実施の形態1の半導体発光装置と比較して,絶縁体としての樹脂部2の周縁から,半導体発光素子としてのLEDチップ4から離れる側に突出した,リード端子7を備える点において異なっている。図9では,射出成型法により封止樹脂としての熱硬化性樹脂3を形成するために,スリット状の溝1mの内部に配置された樹脂の主表面1a側の表面に,ランナー/エアベント用の窪み1eが形成されている。ダムシート成型によって封止する場合には,実施の形態2において説明したように,窪み1eを形成する必要はない。(【0055】)
実施の形態4では,リードフレーム1を取り囲むように形成されている樹脂部2は,半導体発光装置の製品強度が十分に保てる最低限度の樹脂量のみで限定的にリードフレーム1を取り囲み,実装基板などと接続するためのリード端子7の端部は樹脂部2で囲われていない。また,このリード端子7の太さは,半導体発光装置の製造工程における金型による切断を考慮し,リードフレーム1の強度が十分に保てる範囲で,できるだけ細く形成されている。(【0056】)

このように構成された半導体発光装置によれば,実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ,加えて,リード端子7が樹脂部2から突出しているため,従来のダイシング方法に加え,金型による切断が可能となる。また,リード端子が樹脂部2によって囲われている実施の形態1~4では,リード端子の切断面は金属が剥き出しとなり,この金属が酸化することにより半田に対する濡れ性が低下する。実施の形態4の半導体発光装置では,リード端子7が外部へ(すなわち,LEDチップ4から離れる側に)突出しているため,リード端子7の切断面だけでなく側面においても半田のりしろを確保でき,半田濡れ性の低下を防ぐことができる。よって,半導体発光装置を基板などに実装する際に,リード端子7に良好な半田付けを行なうことができる。実施の形態4における半導体発光装置のその他の構成については,実施の形態1において説明した通りであるので,その説明は繰り返さない。(【0057】)
次に,実施の形態4の半導体発光装置の製造方法について説明する。図11は,実施の形態4における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。図12は,実施の形態4の半導体発光装置に用いられる,多連リードフレームの模式図である。工程(S101)~(S106)は,図3に示す実施の形態1の(S1)~(S6)と同様の工程であって,工程(S101)において,リードフレーム基材201の両端のサポートフレーム(クレードル)202には,鍵構造205が形成される。鍵構造205は,リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂が充填されて樹脂基材207が形成されたとき,リードフレーム基材201と樹脂基材207との接続力を向上させるために設けられたものである。(【0058】)
続く工程(S102)において,樹脂基材207は,リードフレーム基材201においてリードフレーム1を構成する部分を取り囲むように形成された隙間に樹脂が充填されて形成される。ここで,図12に示す実施の形態4の多連リードフレーム200では,樹脂基材207と桟フレーム203との間に樹脂が充填されていない溝構造204が形成されており,上記隙間の全てに樹脂が充填された構造をもつ実施の形態1とは構造が異なる。たとえば,圧縮成形法によって樹脂を充填するとき,樹脂流入を防ぐためのマスクを設置すれば,溝構造204を形成することができる。(【0059】)
このように構成された,実施の形態4の半導体発光装置用多連リードフレーム,および半導体発光装置の製造方法によれば,リード端子7は金型による切断を行い,ダイシングする部分は樹脂基材207のみのため,金属と樹脂とを同時にダイシングカットする際に発生するバリなどのカット不良を解決することができる。多連リードフレーム200に溝構造204が形成されているので,金型切断時に必要となる力を低減させることができ,金型の簡素化およびプレス機の小型化を図ることができる。または,同じ能力のプレス機によってより多量の半導体発光装置を切断することができる。また,前述のように,これまで半導体発光装置を個辺化して実施していた特性検査を,多連リードフレーム単位で実施できる。したがって,半導体発光装置の生産効率向上を図ることができる。(【0063】)
反射体10は,LEDチップ4で発せられ,熱可塑性樹脂3を透過してきた光を効率よく反射するために,反射率が高い白色の樹脂で形成することができる。また,樹脂部2と同様,製造時におけるリフロー工程を考慮して,耐熱性に優れた樹脂で形成することができる。また,光をより効率よく反射するために,反射体10のLEDチップ4と対向する表面である内周面を,たとえば銀メッキ,ニッケルメッキ,ニッケル-クロムメッキなどのメッキ処理してもよい。また反射体10は,Al,Cu,Fe,Mgなどの熱伝導率の高い金属製であってもよい。また,反射体10は,リードフレーム1および樹脂部2で形成されたパッケージを搭載する基板12に,エポキシ系樹脂などの透明樹脂からなる接着剤11により接続されていてもよく,接着シートによって基板12に接合されていてもよい。反射体10の内周面の形状は,光を効率よく放出できるように,円錐面,楕円錐面,球面または放物面の一部としてもよい。(【0068】)
(実施の形態7)図19は,実施の形態7の半導体発光装置の断面を示す模式図である。図19に示すように,実施の形態7の半導体発光装置は,図16に示す実施の形態6の半導体発光装置と比較して,反射体10は主表面1a上に,封止樹脂としての熱硬化性樹脂3と接触しないように設けられている点において異なっている。反射体10は,接着剤11によってリードフレーム1の主表面1a上に固定されてもよく,接着シートによって固定されてもよいが,接着剤11が用いられる場合,接着剤11の厚みは接着強度を保つ範囲で十分に薄いほうが望ましい。これは,接着剤11の厚みが大きい場合,透明樹脂である接着剤11から光漏れが発生し,光取り出し効率が低下するためである。(【0071】)
図20は,実施の形態7における半導体発光装置の製造方法を示す流れ図である。この場合,多連リードフレームには,図12に示した形状を用いている。図11に示す流れ図と比較して,工程(S307)において金型切断後,工程(S308)において,リードフレーム1の主表面1a上に接着剤11によって図17に示す反射体10のパッケージを貼付し,その後工程(S309)において樹脂基材207および反射体10をダイシングによって切断する点で異なっている。(【0072】)
このように構成された半導体発光装置によれば,実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ,加えて,封止樹脂の封止形状だけでは実現できなかった光学特性を得ることができると同時に,反射体10の内周面とLEDチップ4との距離が短くなるためより効率よく光を外部へ放出することができ,光取り出し効率も向上する。さらに,主表面1a上に反射体10を貼付することにより,樹脂部2に加え反射体10にも半導体発光装置の外形を保持させることができるため,半導体発光装置の製品強度が向上する。これにより,リードフレーム1の厚みを小さくし,スリット状の溝1mの間隔を狭くすることにより,半導体発光装置のサイズを小さく保ちつつ,マルチチップ化(実装基板上に複数個の半導体発光装置を搭載)することが可能となる。なお,実施の形態7における半導体発光装置のその他の構成および製造工程については,実施の形態1および4において説明した通りであるので,その説明は繰り返さない。(【0073】)
【図2】
【図20】

昭和38年頃に公開された酸化チタン顔料について
(日本ゴム協会誌
36巻3号)
(乙12)の記載

酸化チタン顔料は高い被覆力とすぐれた化学的・物理的安定性によって近年とみに発展し,今や白色顔料として不動の地位をしめるに到った。


酸化チタン顔料の物性研究の進歩と共に,塗料・ゴム・プラスチックス・紙・印刷インキ・床材・窯業などの広汎な用途が開発され,特にルチル型酸化チタン顔料の出現により,ますます白色顔料として需要は増加の一途をたどり,今や国内のみで年間40,000トンに近く,生産量も60,000トンにおよぼうとしている。

特開平11-145523号公報(乙13)の記載
本発明では,発光素子1及び接続座2b,2cを含むマウント部の反射カップ2aの上面に被さらないように且つギャップ2dには発光素子1の下方を含めて全てに酸化チタン等の白色顔料をフィラーとして含む補助反射部4によっ被覆しているので,発光素子1からギャップ2dに漏れ出る光をこの補助反射部4から光取出し面側に反射させることができる。(【0029】


特開2003-152296号公報(乙14)の記載
上記のように,絶縁基板を構成するガラス繊維シート状基材の一部乃至全部をガラス不織布としたことにより,LEDを収容するための貫通穴又は凹陥部の加工が容易になり,その壁面はきれいに仕上がる。その結果,LED光の壁面での乱反射が低減され光放散性が均一となる。絶縁基板中に酸化チタンを含有させると,その光隠蔽力と白色性によりLED光反射力を高めることができる。(【0006】)
上述したように,本発明に係るLED搭載プリント配線板は,LEDの光放散性異常箇所の発生が少ない。絶縁基板に二酸化チタンを含有させると,LEDの光反射率を高めることができ高輝度用途への展開も可能である。(
【0017】


特開2007-180-591号公報(乙15)の記載

また,発光素子チップからの光を効率よく反射させるために,パッケージ成形部材中に酸化チタンなどの白色顔料などを混合させることができる。



【0036】


上記アの記載に照らせば,乙11公報には,以下の発明が記載されているといえる(以下,この発明を乙11発明という。。

2a

リードフレーム及び反射体を有し,上側から見た外形が略四角形で
4つの外側面を有する半導体発光装置の製造方法であって,
2b

リードフレームと,反射率の高い白色の材料で形成されており,エ
ポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を充填した,樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフ
レームが露出している,樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と,2c

平面のリードフレーム上に発光素子を載置する工程と,

2d

該発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と,

2e

平面のリードフレームの上側に該封止部材と接触しないように反

射体を固定する工程であって,該リードフレームの表面と該反射体により発光素子が載置される凹部が複数形成され,前記凹部の底面には前記
リードフレームが樹脂の充填されたスリット状の溝によって分割されて露出される工程と,
2f

分離後の各発光装置の2つの外側面のみにおいて前記リードと前

記切り欠き部に入り込んだ前記反射体とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光
装置に分離する工程と,
2g

を有することを特徴とする発光装置の製造方法。

これに対し,被告は,乙11発明の構成として,リードフレーム上に発光素子を載置する工程と発光素子を被覆する封止部材を配置する工程が,凹部が複数設けられた樹脂成形体付リードフレームを準備する工程の後に行わ
れるという構成を認定できると主張する。
しかし,
乙11公報の
【0072】
の記載や【図20】に照らし,被告の主張は採用できない。
また,
被告は,
乙11発明について,
分離後の各発光装置の外側面において前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記反射体とが略同一面となるように,という構成を認定できると主張する。しかし,乙11公報の【図
2】に照らし,被告の主張は採用できない。

上記イないしオによれば,LEDを用いた発光装置において酸化チタンを反射性の白色顔料として用いることは本件原出願日(平成20年9月3日)の前から当業者にとって周知慣用技術であるから,
乙11発明の
(2b)
反射性が高い白色の材料について,光反射性物質である白色顔料として酸化チタンを含ませることは単なる周知慣用技術といえる。したがって,構成要件2B-1光反射性物質を含有すると乙11発明の(2b)
反射性が高い白色の材料とは,実質的に同一であるともいえる。
他方,本件発明2と乙11発明は,本件発明2が上側に凹部が複数設けられた樹脂成形体付リードフレームを準備してから,前記凹部の底面に発光素子を載置し,
前記凹部内に,
前記発光素子を被覆する封止部材を配置する
(構

成要件2B-1~6,2C,2D)のに対して,乙11発明が凹部のない樹脂成形体付リードフレームを準備し,その上に発光素子を載置し,発光素子を被覆する封止部材を配置してから,樹脂成形体付リードフレームの上に凹部形成する点(2b~2e)において相違する。また,本件発明2と乙11発明は,
本件発明2が分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにお
いても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,
前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することによ
り,複数の発光装置に分離する工程(構成要件2E)を有するのに対し,乙11発明が2つの外側面においてリードと樹脂部と反射体とが略同一面を形成するように切断して複数の発光装置に分離する工程を有するものの(2
f)
,他の2つの外側面においてリードが露出せず,リードと樹脂部と反射体とが略同一面を形成しない点において相違する。
これらの相違点は,
いずれも当業者が適宜なし得る設計事項といえるもの
ではなく,実質的な相違点であるといえるから,本件発明2と乙11発明は同一のものであるとはいえない。


以上によれば,本件発明2は,乙11発明に基づき特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえないから,無効理由2は認められない。
無効理由3(乙47公報を主引例とする進歩性欠如)


乙47公報は,
ハイパワーLEDチップパッケージング構造およびその製造方法についての発明を開示する公報であり,以下の記載がある。[0025]図2a及び2bは,本発明の第1の実施形態によるパッケージング構造の概略断面図及び拡大図である。図示されるように,本実施形態によって提供されるパッケージング構造は,少なくとも,ベース100と,反射板110と,パッケージングされたLEDチップ150と,複数のボンディングワイヤ120と,透明なフィルター130とを含む。平坦な形状の要素を備えたベース100は,ヒートシンクシート102と,複数の電極104と,絶縁体106とで構成されており,単一の固体物として一体化されている。ヒートシンクシート102および電極104は,高い電気伝導率および熱伝導率を有する金属材料で作られている。一方,絶縁体106は,樹脂等の絶縁材料で形成されている。[0027]反射板110はまた,中央の適切な位置に垂直のスルーホール(符番なし)を有する平坦形状を有する。反射板110は,反射率の高い金属材料(例えば,アルミニウム)で形成されるか,または樹脂などの絶縁物質で形成されることができるが,スルーホールの壁面が白いコーティングを有するか,銀のような反射性の高い材料からなる。反射板110は,金属材料からなる場合,反射板110とベース110の備えるヒートシンクシート102および電極104の間の絶縁も提供する。スルーホールの位置および開口は,反射板110がベース100に接合された後,ヒートシンク102の上面と,電極104の少なくとも一部が,LEDチップ150の固定およびボンディングワイヤ120の接続のために露出される。このように,LEDチップ150が放熱シート102の露出した上面に固定されると,LEDチップ150から放射された光は,スルーホールを介してパッケージ構造から放射することができる。本実施形態の貫通孔は円形の開口部を有し,開口部の直径は上部に行くほど大きくなる。ここでのスルーホールの幾何学的特性は単なる例示であることに留意されたい。

[0030]図3a及び図3bは,それぞれ,2つ又は3つのLEDチップをパッケージングする際に本発明がどのように適用されるのかを,ベースおよびパッケージング構造を示すことにより例示する。

[0031]図4a~4gは,本発明の一実施形態による製造方法の処理ステップの結果を示す。最初に,図4aに示すように,高い電気伝導率および熱伝導率を有する大きな金属板190が準備される。金属プレート190は,複数のパッケージングユニット200のベース100を順次形成するのに同時使用される。パッケージングユニット200のベース100は,互いに隣接して,または金属板190のボーダー180にアレイ状に配置される。ベース100は,主にエッチングおよび機械加工に適切な手段によって形成され,後の絶縁体106の充填のために,ベース100の一部を除去する。その後,図4bに示すように,ヒートシンク102とベース100の電極104とが残される。次に,エッチングされたベース100の一部が絶縁体106で充填され,その結果が図4cに示されている。[0032]ヒートシンクシート102および電極104の形状の複雑さに依存して,前述のエッチングおよび機械加工プロセスを,金属プレート190の2つの主表面に同時に行うことができ,全てのパッケージングユニット200用のヒートシンクシート102と電極104のパターン形成は,単一のランで行う。続いて,絶縁体106の充填が行われる。しかし,ヒートシンク102と電極104の形状が複雑であれば,最初のランで金属板190の主面にエッチングと絶縁体106の充填を行い,その後に,2回目のランで他の主面を処理することができる。このようにして,全てのパッケージングユニット200のベース100の形成が完了する。[0033]次に,図4dに示すように,予め用意された複数の反射板110からなる板部材210を,適切な接着剤によって,図4cの被加工金属板190に貼り付ける。そして,パッケージングユニット200毎に,LEDチップ150の固定及びワイヤボンディングが行われ,その結果が図4eに示されている。次に,図4fに示すように,反射板110の貫通孔に透光性充填材130を注入してパッケージング部200を密封する。最後に,図4gに示すように,パッケージングユニット200は切断によって分離される。イ
上記アの記載に照らせば,乙47公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を乙47発明という。原告乙47発明と同じ。。)
2a

リード104及び絶縁体106並びに反射板110を有し,上側か
ら見た外形が略四角形で4つの外側面を有するハイパワーLEDパッケージングユニット200の製造方法であって,
2b-1

リード104を含む加工された金属板(リードフレーム104)

と,絶縁体106と,を有する樹脂成形体付リードフレームであるベース100を準備する工程であって,
2b-2
2b-3
前記ベース100の上側は平面になっており,
前記ベース100の上側の平面は,絶縁体106とリードフレ

ーム104で形成され,かつ前記リードフレーム104が絶縁体106で分割されており,
2b-4

前記リードフレーム104には前記外側面となる4つの位置

のいずれにも前記絶縁体106の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
2b-5

且つ前記ベース100の底面の一部が前記リードフレーム1

04で形成されている,
2b-6

ベース100を準備する工程と,

2b-7

前記ベース100の上部に,別途形成した貫通孔を有する板部

材210(反射板110の集合体)を接着剤160で貼り付けて,複数のパッケージングユニット200を形成する工程と,
2c

前記貫通孔内に露出した前記ベース100の上面にLEDチップ
150を載置する工程と,
2d

前記貫通孔内に露出した前記ベース100の上面と,前記貫通孔と
によって画された空間に,前記LEDチップ150を被覆する透光性充填材130を配置する工程と,
2e

分離後の各ハイパワーLEDパッケージングユニット200の前

記4つの外側面のいずれにおいても,前記リード104と,前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部106と,前記反射板110とが略同一面となるように,前記リードフレーム104と,前記絶縁体106と,前記板部材210とを切断することにより,複数のハイパワーLEDパッケージングユニット200に分離する工程

2f

と,
を有することを特徴とするハイパワーLEDパッケージングユ

ニットの製造方法。

上記イの乙47発明についての補足説明
乙47公報の反射板110は,ベース100の上に接着剤160で板部材201を貼り付け,これらを切断してできた部材であり,ベース100
の一部として一回工程で形成されたものではないから,本件発明2の樹脂部とはいえない。乙47公報のベース100は,リードフレーム104に絶縁体106を充填し,一回成形で一体化した部材であるから,本件発明2における樹脂成形体付リードフレームに対応する部材ともいえる。また,ベース1
00(樹脂成形体付リードフレーム)の上側は平面で凹部は設けられていない。乙47公報の複数の貫通孔を有する板部材201(反射板110の集合体)は,ベース100とは別に,それ自体を形成し,ベース100の上に接着剤160で貼り付けたものであるから,当該部材は本件発明2の樹脂成形体付リードフレームには該当しない。


本件発明2と,乙47発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレームを準備する工程に

て準備される樹脂成形体付きリードフレームの樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体である(構成要件2B-1)のに対して,原告乙47発明では,ベース100を構成する絶縁体106が光反射性物
質を含有しているか否か不明である点。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレーム
は,
その上側に凹部
が複数設けられているのに対し(構成要件2B-2,2B-3,2C,2D,
2E)乙47発明では,

樹脂成形体付リードフレームであるベース1

00の上側は平面で,凹部が存在しない点(構成2b-2,2b-3,2c,2d,2e)
。また,乙47発明は,ベース100(樹脂成形体付リー
ドフレーム)の上に,複数の貫通孔を有する板部材201(反射板110の集合体)を接着剤160で貼り付ける工程を有するのに対し(構成2b-7)
,本件発明2はそのような工程を有しない点。

被告は,本件発明2の特許請求の範囲では凹部側面,凹部底面,切り欠き部に入り込んだ樹脂成形体が1つの部材であるとの限定がされておらず,一回の樹脂成形によってリードフレームと一体化されることについての規定もされていないから,上記②の相違点は存在しない旨主張する。しかし,本件明細書2の【0008】
【0009】
【0014】には,従来

技術として,平板状のプリント配線板又はリードフレームを金型に取り付け,熱硬化性樹脂組成物を注入し加熱加圧成形する製造方法が記載されており,そのような従来技術の製造方法では平板状の配線板及びリードフレームの上に熱硬化性樹脂組成物が配置されており,密着面積が小さいためにダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いとい
う問題があることが記載され,そのような課題を解決するための手段として,切り欠き部を設けたリードフレームを用いることにより,切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため,
リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が
大きくなり,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上させることができることが記載されている。このような記載に照らせば,本件発明2は,リードフレームを金型に取り付け,一回の成形工程で樹脂成形体とリードフレームとを一体化させることを前提として,従来技術におけるリードフレー
ムの上面で熱硬化性樹脂と密着させることに加え,切り欠き部に熱硬化性樹脂を充填させることによって切り欠き部の側面でも密着させるようにして,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上させるものであると認めることが相当である。
本件発明2が上記のような発明であることに照らせば
樹脂成形体付リードフレームとは,リードフレームを金型に取り付け,
一回の成形工程で樹脂成形体とリードフレームとを一体化して成形したものを意味すると解すべきである。
したがって,本件発明2と乙47発明には上記②の相違点があり,被告の上記主張は採用できない。

上記イのとおり,乙47発明は,ベース100の上部に別途形成した貫通孔を有する板部材210(反射板110の集合体)を接着剤160で貼り付けて,複数のパッケージングユニット200を形成する工程を有する(2b-7)ものである。乙47公報に,このような乙47発明の構成とは基本的思想を異にするといえる上記②の相違点に係る本件発明2の構成を採用することについての示唆はないから,上記相違点に係る本件発明2の構成は,
当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

以上によれば,上記①の相違点について検討するまでもなく,本件発明2は,乙47発明に基づき容易に想到することができたとはいえないから,本件発明2の無効理由3は認められない。
無効理由4
(乙48公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-4)
について


乙48公報は,発明の名称をチップ部品型発光素子とその製造方法とする公開特許公報であり,その明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
詳細に説明すると,絶縁基板15は,例えば厚さが0.06mm~2.0mmの樹脂積層品等からなり,中央部に厚さ方向に貫通する貫通孔14を有する。ここで,貫通孔14の横断面形状は図1に示すように楕円であってもよいし,また楕円以外の円形又は方形でもよい。すなわち,本発明は貫通孔14の横断面形状によって限定されるものではなく,種々の形状の中から任意に選定することができる。また,貫通孔14においては,貫通孔14の開口径が絶縁基板15の一方の面(薄型平板と接合される面)から他方の面に向かって大きくなるように貫通孔の側面を傾斜させることが好ましい。このように貫通孔14の側面を傾斜させると,LEDチップ16から貫通孔14の側面に向かって出射された光を側面で反射させて上方に出力することができるので,LEDチップ16から出射された光を効率良く発光素子からとりだすことができる。(【0022】)

次に,図2~図10を参照して,本実施の形態1のチップ部品型発光素子の製造方法について説明する。尚,以下の製造方法の説明では,1つのチップ部品型発光素子に対応する各構成要素を図示して示すが,実際の製造工程においては,複数の構成要素が集合された状態で各工程は行われる。【0(
029】


(第1の工程)第1の工程では,図2に示すように,パッケージ1の上部要素となる樹脂積層品からなる絶縁基板15の下面に,エポキシ系の接着フィルム19を熱圧着して貼り付け,ドリル等を用いた機械加工あるいはレーザ光によるレーザ加工により貫通孔14を形成する。この時,特殊形状ドリル等を用いて貫通孔14の側面を傾斜させることにより,上述したように反射効率を高めることができる。また,絶縁基板15には白色のものを用い,かつ基板15の上面を黒インク等で黒くすることが好ましい。このようにすると,発光側の上面が黒色で光反射面が白色となるので,フルカラーディスプレイ等に用いる時に重要な要素となる画像の明暗の差を大きく,すなわちコントラストを向上できる。(【0030】)
(第2の工程)第2の工程では,パッケージ1の薄型平板13となる複数の領域を有する金属薄母材の上記各領域において,第1の金属薄板13bと第2の金属薄板13cとを絶縁分離するための分離スリット24aを形成する。尚,図3には1つの領域を示しているが,分離スリット24aが形成された後の金属薄板簿材の平面図は,図10に示すようになる。詳細には,・・・(以下省略)(【0031】)

(第3の工程)第3の工程では,分離スリット24aに,第1の金属薄板13bと第2の金属薄板13cとを絶縁して保持する樹脂13aを設ける。・・・(以下省略)(

【0032】)
(第6の工程)第6の工程では,図7に示すように,貫通孔14内に位置する第1の金属薄板13b上にLEDチップを搭載し,LEDチップ16の正電極及び負電極のうちの一方の電極を第1の金属薄板13bに接続し,上記LEDチップの他方の電極を第2の金属薄板13cに接続する。・・・(以下省略)(【0035】)
(第7の工程)第7の工程では,貫通孔14の内部に透光性樹脂31を充填することにより,LEDチップ16を透光性樹脂31で封止する。この時,パッケージ1の絶縁基板15の上面から透光性樹脂31が突出するように凸レンズ形状に形成し,集光力を高めるようにしてもよい。【0036】(

(第9の工程)第9の工程では,ダイヤンドカッター等によりチップ部品型発光素子の個片に分割する。以上のような工程により,図1に示す構造の実施の形態1のチップ部品型発光素子が製造される。・・・(以下省略)

【0038】

実施の形態2.次に本発明に係る実施の形態2のチップ部品型発光素子について説明する。本実施の形態2のチップ部品型発光素子は,実施の形態1と同様の考え方に基づいて作製されているが,実施の形態2では,図11に示すように,例えば,青色,緑色,赤色の3つのLEDチップ36を搭載できるパッケージ30を用いていることを特徴としている。(【0039】)
すなわち,実施の形態2のチップ部品型発光素子は,厚さ方向に貫通する貫通孔34を有する絶縁基板35と該貫通孔34を塞ぐように上記絶縁基板35の一方の面に接合された薄型平板33とからなるパッケージ30の内部に,3つのLEDチップ36が樹脂封止されることにより構成されている。ここで,貫通孔34の横断面形状は図11に示すように楕円であってもよいし,また楕円以外の円形又は方形でもよく,種々の形状の中から任意に選定することができる。また,貫通孔34においては,LEDチップ36から出射された光を効率良くとりだすために,実施の形態1と同様に貫通孔34の側面を傾斜させることが好ましい。(【0040】)
また,薄型平板33は絶縁分離部44によって互いに分離された第1の金属薄板33aと3つの第2の金属薄板33b,33c,33dとが絶縁性樹脂33eで接合されることにより一体化されて構成される。ここで,本実施の形態2の薄型平板33においては,1の金属薄板33aと第2の金属薄板33b,33c,33dにそれぞれ,バンプ37が形成されている。尚,第1の金属薄板33aと第2の金属薄板33b,33c,33dの各下面(チップ部品型発光素子において外側に面する表面)は,バンプ37の部分を除いて,樹脂層で絶縁されていることが好ましい。(【0041】)
そして,本実施の形態2において,パッケージ30は,図11に示すように,少なくとも,第2の金属薄板33bの一部,第2の金属薄板33cの一部,第2の金属薄板33dの一部及び第1の金属薄板33aの一部が貫通孔34の内側に位置するように,薄型平板33と絶縁基板35とを接合して構成する。このように構成されたパッケージ30の貫通孔34の内部において,LEDチップ36を,第1の金属薄板33a上に接合し,LEDチップ36の正電極及び負電極のうちの一方の電極を第1の金属薄板33aに接続し,LEDチップ36の他方の電極をそれぞれ,第2の金属薄板33b,33c,33dに接続する。尚,第1の金属薄板33a及び第2の金属薄板33b,33c,33dの配置を工夫して3つのLEDチップの各電極をフリップチップ法で接続するようにしてもよい。(【0042】)

また,実施の形態2のチップ部品型発光素子は,実施の形態1と同様,貫通孔34に透光性樹脂が充填されてLEDチップ36が封止されている。


【0043】


上記アの記載に照らせば,乙48公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を乙48発明という。原告乙48発明と同じ。。)
2a

第1金属薄板13bと第2金属薄板13c(以下,便宜的にこれら
を総称してリードという。,及び樹脂13aと樹脂層25並びに絶)
縁基板15を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有するチップ部品型発光素子の製造方法であって,
2b-1

金属薄板母材と,
当該金属薄板母材の分離スリットならびに下

面および側面に設けられた樹脂ないし樹脂層である樹脂成形体と,を有
する薄型平板13の集合体を準備する工程であって,
2b-2
薄型平板13の集合体の上側は平面になっており,

2b-3

前記薄型平板13の集合体の上側の平面は,樹脂成形体(樹脂

13a,樹脂層25)と金属薄板母材とで形成されており,かつ前記金属薄板母材が樹脂成形体で分離されており,
2b-4

前記金属薄板母材には前記外側面となる4つの位置のいずれ

にも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,
2b-5

薄型平板13の集合体を準備する工程と,

2b-6

前記薄型平板13の集合体の上部に,別途形成した貫通孔14
を有する絶縁基板15を接着フィルム19により貼り付けて,複数のパッケージを形成する工程と,
2c

前記貫通孔14内に露出した前記薄型平板13の第1の金属薄板

13b上にLEDチップ16を載置する工程と,
2d

前記貫通孔14内に露出した前記薄型平板13の集合体の上面と,
前記貫通孔14によって画された空間に,前記LEDチップを被覆する透光性樹脂31を充填する工程と,
2e

分離後のチップ部品型発光素子の前記4つの外側面のいずれにお

いても,リードと,前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部と,前記絶縁基板15とが略同一面となるように,前記金属薄板母材と,前記樹脂
成形体と,前記絶縁基板15とを切断することにより,複数のチップ部品型発光素子に分離する工程,
2f

と,を有することを特徴とするチップ部品型発光素子の製造方法。
上記イの乙48発明についての補足説明
乙48公報の第1金属薄板13bと第2金属薄板13cがリードに当たり,樹脂13aと樹脂層25が樹脂部に当たる。他方,貫通孔14を有する絶縁基板15は,後述のとおり,金属薄板母材の上に接着フィルム19で貼り付けたものであり,金属薄板母材の一部として一回工程で形成されていないから,
樹脂部に該当しない。

乙48公報の薄型平板13の集合体は,リードフレームに相当する金属薄板母材と樹脂成形体(樹脂13a,樹脂層25)を,樹脂成形により一回成形で一体化した部材であるから,本件発明2の樹脂成形体付リードフレームに対応する。薄型平板13の集合体(樹脂成形体付リードフレーム)の上側は平面で凹部は設けられていない。これに対し,貫通孔14
を有する絶縁体15は,別途それ自体を形成し,金属薄板母材と樹脂成形体(樹脂13a,樹脂層25)の上に,接着フィルム19で貼り付けたものであるから,
樹脂成形体付リードフレーム
に対応するものではない。

本件発明2と乙48発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレームを準備する工程に
て準備される樹脂成形体付きリードフレームの樹脂成形体が光反射性物質を含有する樹脂成形体である(構成要件2B-1)のに対して,乙48発明では,
樹脂成形体および絶縁基板が光反射性物質を有している
か否か不明である点。


本件発明2では,
樹脂成形体付きリードフレーム
は,
その上側に凹部
が複数設けられているのに対し(構成要件2B-2,2B-3,2C,2
D,
2E)乙48発明では,

樹脂成形体付リードフレームである薄型平板
13の集合体の上側は平面で,凹部が存在しない点(構成2b-2,2b-3,2c,2d,2e)また,乙48発明は,薄型平板13の集合体の上部に,
別途形成した貫通孔14を有する絶縁基板15を接着フィルム1
9で接着して,複数のパッケージを形成する工程を有するのに対し(構成
2b-7)
,本件発明2はそのような工程を有しない点。


本件発明2では,
樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している(2B-5)のに対し,乙48発明では,薄型平
板の集合体の底面にて前記金属薄板母材が樹脂成形体で覆われているか
否か不明である点。
これに対し,被告は,無効理由3における主張と同様,本件発明2の特許請求の範囲では凹部側面,凹部底面,切り欠き部に入り込んだ樹脂成形体が1つの部材であるとの限定がされておらず,一回の樹脂成形によってリードフレームと一体化されることについての規定もされていないから,
上記②の相違点は存在しない旨主張する。しかし,無効理由3において述べたとおり,
樹脂成形体付リードフレーム
とは,
リードフレームを金型
に取り付け,
一回の成形工程で樹脂成形体とリードフレームとを一体化し
て成形したものを意味すると解すべきであるから,上記主張には理由がない。

上記イのとおり,乙48発明は,前記薄型平板13の集合体の上部に,別途形成した貫通孔14を有する絶縁基板15を接着フィルム19により貼
り付けて,複数のパッケージを形成する工程を有する(2b-7)ものである。乙48公報に,このような乙48発明の構成とは基本的思想を異にするといえる上記②の相違点に係る本件発明2の構成を採用することについての示唆はないから,上記②の相違点に係る本件発明2の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。


以上によれば,上記①及び③の相違点について検討するまでもなく,本件発明2は,乙48発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえないから,本件発明2の無効理由4は認められない。
無効理由5
(乙49公報を主引例とする進歩性欠如)
(争点5-5)
について


乙49公報は,
発明の名称を
白色発光装置
とする公開特許公報であり,
その明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
次に,本発明の第三の実施の形態である白色発光装置の構成について説明する。図6は本発明の第三の実施の形態である白色発光装置の上面側から見た斜視図,図7は同じく下面側から見た斜視図である。図8は図6のB-B断面を示す断面図である。図6~図8において,30は外形が略立方体形状を成す表面実装型の白色発光装置である。21は白色発光装置30のケース体であり,ケース体21の発光面側である上面21aには,発光方向に向いて光を反射する傾斜面21kを有するカップ形状の凹部21cが形成されている。32は凹部21cを覆うようにケース体21に装着された被覆部材である。(【0045】)
更に,各構成要素の細部について説明する。まず,ケース体21であるが,23a,23bは射出成形が可能な熱伝導性の高いMg合金系のメタルコア材料から成る一対のメタルコアであり,スリット21gを挟んで対向するように配設されている。4は一対のメタルコア3a,3bをアウトサートモールドすることによりケース体21を構成しているリフロー耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなる樹脂成形部である。樹脂成形部4は,少なくとも凹部21cの内面並びに下面21bの端子電極となる一部の面は除いて,スリット21g並びにメタルコア3a,3bの周囲をモールドすることにより結束して強固なケース体21を形成している。(【0046】)
ケース体21の下面21b側のメタルコア23a,23bは,白色発光装置30を実装する配線基板へ接続するための少なくとも一対の端子電極を成している。凹部21の上端近傍の傾斜面21kには垂直な壁面21mを有する段部21eが形成され,被覆部材32の保持部となっている。ケース体21の表面のメタルコア23a,23bの各露出面には,腐食防止及び光の反射率向上のために光沢仕上げのAgメッキが施されている。その他の構成は第一の実施の形態と同様なので,同じ構成要素には同じ符号と名称とを用いて,詳細な説明を省略する。(【0047】)
次に,白色発光装置30の製造方法を図面を用いて説明する。この方法は白色発光装置30を多数個同時に加工することができる集合基板を用いた製造方法である。図9は白色発光装置の主要な製造工程を示す工程表であり,本実施の形態以外の他の各実施の形態にも共通するものである。図10乃至図18は各工程の内容を示す斜視図である。図19は青色発光素子と被覆部材との組合せ方法を説明する説明図である。(【0048】)
図9のS5~S10の工程は同じく集合基板方式による白色発光装置の形成工程である。まず,集合メタルコア形成工程S5を図14により説明する。123は射出成形によって形成された集合メタルコアである。集合メタルコア123の外枠123aの内側には,凹部21cを内面に有する円筒部123bが縦横に多数個(ここでも説明の便宜上9個としてある)形成されている。また,円筒部123bを縦断するスリット123g並びに円筒部123b下面側でスリット123gと直角に交差する溝部123cも同時に形成される。ここで,集合メタルコア123にはメッキ処理を施す。次に,図15により集合ケース体形成工程S6を説明する。104は樹脂成形部であり,集合メタルコア123の外枠123aの内側の凹部21c及び下面側の電極面となる図示しないメタルコア露出部を除いた円筒部123bの周囲及びスリット123g,溝部123cの中へ絶縁部材となる樹脂を充填して硬化させる。121はこうして形成された集合ケース体である。(【0051】


次に,図16により,サブマウントパッケージ実装工程S7について説明する。ここでは予めクラス分けしてある同じクラスのサブマウントパッケージ5の下面の電極面を集合ケース体121の凹部21c底面21dに,半田ペーストを介して載置しリフローする。次に,図17により,被覆部材取付工程S8について説明する。予め特性を測定選別済みであり,青色発光素子6の特性に対応する被覆部材32を凹部21cに装着する。130はこうして形成された白色発光装置の集合体である集合発光装置である。次に,図18により,ダイシング工程S9について説明する。集合発光装置130をダイシングラインDLに沿って切断分離して,個片の白色発光装置30を得る。この後,メタル切断面には必要に応じてメッキを施す。最後に完成検査工程S10を経て,白色発光装置30はテーピング包装され出荷される。(
【0052】


上記アによれば,乙49公報には,後記の構成を備える発光装置の製造方法の発明が記載されている(以下,この発明を乙49発明という。原告
乙49発明と同じ。。

2a

メタルコア23a及び樹脂成形部4を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する白色発光装置30の製造方法であって,2b-1

マグネシウム合金系のメタルコア材料の射出成形によって形

成した集合メタルコア123と,樹脂成形部104と,を有する集合ケース体120を準備する工程であって,
2b-2

集合ケース体120の上側には集合メタルコア123で形成

された凹部21cが複数設けられ,
2b-3

前記凹部21cの底面には前記メタルコアが前記樹脂成形部

104で分割されて露出されており,
2b-4

前記集合ケース体120には前記外側面となる4つの位置の

いずれにも前記樹脂成形部104の一部が入り込んだスリット123
cが設けられ,
2b-5

且つ前記集合ケース対120の底面にて前記集合メタルコア

123が露出している,
2b-6

集合ケース体120を準備する工程と,

2c

前記凹部の底面にサブマウントパッケージを載置する工程と,

2d

前記凹部内に,被覆部材32を配置する工程と,

2e

分離後の各白色発光装置30の前記4つの外側面のいずれにおい

ても前記メタルコア23aと前記スリット123cに入り込んだ前記樹脂成形部4とが略同一面となるように,前記集合ケース体を切断することにより,複数の白色発光装置30に分離する工程

2f

と,を有することを特徴とする白色発光装置30の製造方法。

上記イの乙49発明についての補足説明
本件明細書2の【0046】
【0047】
【0051】
【0140】の記載及
び証拠(甲59,60)によれば,リードフレームは,ロール状に巻き取れ
るほど薄く平坦な金属板であり,打ち抜き加工やエッチング加工等の簡易単純な方法で製造され,鉄,リン青銅,銅合金等の安価な材料で形成され,安価な発光装置の大量生産のために頻用される部材であると認められる。これに対し,乙49発明の集合メタルコア123は,高価なマグネシウム合金系のメタルコア材料を用い,金型を使用する射出成形で形成され,凹部21cを内面に有する円筒部123bを備えた極めて特殊な形状をしている部材である。したがって,乙49公報の集合メタルコアは,本件発明2のリード
フレームには当たらないというべきである。

本件発明2と乙49発明とを対比すると,以下の点で相違し,その余の構成で一致する。


本件発明2では,
樹脂成形体が
光反射性物質
を含有するのに対し
(構
成要件2B-1)
,乙49発明では,樹脂成形部104が光反射性物質を

含有しているか不明である点。


本件発明2では,発光装置がリード及び樹脂部を有しであるのに対し(構成要件2A)
,乙49発明では,発光装置がメタルコア23a及び樹脂成形部4を有しであり,リードではなくメタルコアを有する
点。



本件発明2では,
リードフレーム
を使用した
樹脂成形体付リードフレーム
が準備されるのに対し
(構成要件2B-1ないし6)乙49発明

では,
メタルコアと樹脂を組み合わせた集合ケース120が準備さ
れる点。



本件発明2では,切断されるのが前記リードフレームと前記樹脂成形体であるのに対し(構成要件2E),乙49発明では,切断されるのが
前記メタルコア23aと前記スリット123cに入り込んだ前記樹脂成形部4である点。これに対し,被告は,本件発明2の特許請求の範囲にはリードフレームと
記載されているのみであり,その厚み等についての限定はされておらず,乙49公報に記載された集合メタルコアはその機能においてリードフレームであるといえるから,
上記②ないし④の相違点はいずれも存在しないと主張する。しかし,上記ウのとおり,集合メタルコアはリードフレームに当たらないから,被告の上記主張は採用できない。

上記イのとおり,乙49発明は,マグネシウム合金系のメタルコア材料の射出成形によって形成した集合メタルコア123と,樹脂成形部104と,
を有する集合ケース体120を準備する工程を有する(2b-1)ものである。このような構成を有する乙49公報に,このような乙49発明の構成とは基本的思想を異にするといえる上記②ないし④の相違点に係る本件発明2の構成を採用することについての示唆はないから,上記各相違点に係る本件発明2の構成は,
いずれも当業者が容易に想到できたものであるとはいえ

ない。

以上によれば,上記①の相違点について検討するまでもなく,本件発明2は,乙49発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえないから,本件発明2の無効理由5は認められない。

結論
本件発明2についての無効理由1ないし5はいずれも認められないから,本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。
6本件訂正前発明3についての訂正の対抗主張の成否(争点7)

事案に鑑み,本件訂正前発明3については,まず争点7について判断する。訂正要件の具備
本件訂正請求は,
訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用
する記載であったものを請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるとともに,特定事項を追加して特許請求の範囲を減縮するか,明瞭でない
記載の釈明をするものであり,本件訂正請求の内容に照らせば,訂正要件を具備するものであると認められる。
これに対し,被告は,本件明細書3において開示されている発光装置は,裏面視で樹脂パッケージの四隅においてリードが露出している態様のものに限られるところ,本件訂正後発明3では,当該発明に係る発光装置が裏面視で樹脂パッケージの四隅においてリードが露出している旨の限定はされていないから,本件訂正請求は,特許法134条の2第9項で準用する特許法126条5項の規定に違反すると主張する。
しかし,本件明細書3の【0042】
【0050】には樹脂パッケージの外側
面におけるリードの露出箇所を特定の位置に限定しない構成が記載され,【0
022】
には発光装置において四隅からリードが露出されている構成が好まし
い例にすぎないことも明記されている。そうすると,本件明細書3には,個片化後の発光装置において四隅からリードが露出する態様に限定されない発明の構成が開示されているといえるから,被告の主張は採用することができない。無効理由の解消の有無

無効理由1(明確性要件違反,サポート要件違反1)の解消について被告は,構成要件3C’では,
前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有しと規定されているにもかかわらず,構成要件3E’では前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材が配置された発光装置であってと規定されており,内底面のリード
が露出しているか否かで矛盾する規定が設けられていることになるから,本件訂正後発明3は明確性要件に違反すると主張する。
しかし,構成要件3C’は,樹脂パッケージにおけるリードの配置及び樹脂部の形状等を規定しているところ,樹脂パッケージは,発光装置を構成する部材の1つとして,
発光素子や封止部材とは独立して把握される部材であ

るから,構成要件3E’において発光素子を被覆する封止部材が樹脂パッケージの凹部内に配置されるとされることは,構成要件3C’の規定と矛盾するものではない。
したがって,本件訂正後発明3は,明確性要件に違反するものであるとはいえない。
また,被告は,本件明細書3において開示されている発光装置は,裏面視で樹脂パッケージの四隅においてリードが露出している態様のものに限ら
れるところ,本件訂正後発明3では,当該発明に係る発光装置が裏面視で樹脂パッケージの四隅においてリードが露出している旨の限定はされていないから,
と同様の理由により,被告の主張には理由がない。
以上によれば,本件訂正後発明3において無効理由1は存在せず,少なく
とも解消しているといえる。

無効理由2-2(乙16公報を主引例とする進歩性欠如)の解消について乙16公報は,発明の名称を樹脂成形体及び表面実装型発光装置並びにそれらの製造方法とする公開特許公報であり,その特許請求の範囲及
び明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
【請求項1】発光素子と,発光素子を載置するための第1のリードと発光素子と電気的に接続される第2のリードとを一体成形してなる第1の樹脂成形体と,発光素子を被覆する第2の樹脂成形体と,を有する表面実装型発光装置であって,第1の樹脂成形体は,底面と側面とを持つ凹部が形成されており,第1の樹脂成形体の凹部の底面から第1のリードが露出されており,その露出部分に発光素子が載置されており,第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体とは熱硬化性樹脂であることを特徴とする表面実装型発光装置。

【請求項4】発光素子が載置されている主面側と反対の第1のリード及び第2のリードの裏面側は,第1の樹脂成形体から露出されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の表面実装型発光装置。

【請求項8】第1の樹脂成形体は,エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂,アクリレート樹脂,ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種により形成されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の表面実装型発光装置。【請求項9】第1の樹脂成形体は,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の表面実装型発光装置。【請求項10】第2の樹脂成形体は,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の表面実装型発光装置。
本発明は,第1のリードと第2のリードとを一体成形してなる樹脂成形体であって,第1のリードは第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有しており,第1のインナーリード部は樹脂成形体中に配置されており,第1のアウターリード部は樹脂成形体から露出されており,第2のリードは第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有しており,第2のインナーリード部は樹脂成形体中に配置されており,第2のアウターリード部は樹脂成形体から露出されており,樹脂成形体は,底面と側面とを持つ凹部が形成されており,樹脂成形体の凹部の底面から第1のインナーリード部及び第2のインナーリード部が露出されており,樹脂成形体は,熱硬化性樹脂である樹脂成形体に関する。(【0019】)

また,第1の樹脂成形体を熱硬化性樹脂にすることにより第2の樹脂成形体との界面の剥離を防止することができる。これは熱可塑性樹脂と異なり,熱硬化性樹脂が表面に多数の反応性官能基を有しているので第2の樹脂成形体と強固な接着界面を形成することができるからである。そして第2の樹脂成形体を熱硬化性樹脂とすることにより第1の樹脂成形体と同様な等方性の熱膨張・収縮挙動を得ることができるため,温度変化による接着界面の熱応力を更に低減することができる。ついで第2の樹脂成形体を第1の樹脂成形体と同種の熱硬化性樹脂とすることにより界面張力の低減による接着力の改善だけでなく,界面にて硬化反応が進行し極めて強固な密着性を得ることが可能となる。耐光性については3次元架橋している熱硬化性樹脂が耐熱性を損なうことなく容易に組成を変更できるため耐光性の劣悪な芳香族成分を簡単に排除できる。かたや熱可塑性樹脂では耐熱性と芳香族成分は事実上同義語であり,芳香族成分なくしてリフロー半田熱に耐えうる成形体を得ることができない。従って,第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体を熱硬化性樹脂にすることにより本来強固な接着界面を有し,かつ光劣化の少ない耐剥離性に優れ,また経年変化の少ない表面実装型発光装置を得ることができる。(【0030】)
第2の樹脂成形体は,発光素子が載置された凹部内に配置される。これにより容易に発光素子を被覆することができる。また,発光素子の屈折率と空気中の屈折率とは大きく異なるため,発光素子から出射された光は効率よく外部に出力されてこないのに対し,第2の樹脂成形体で発光素子を被覆することにより,発光素子から出射された光を効率よく外部に出力することができる。また,発光素子から出射された光は凹部の底面及び側面に照射され,反射して,発光素子が載置されている主面側に出射される。これにより主面側の発光出力の向上を図ることができる。さらに,第1の樹脂成形体で凹部底面を覆うよりも,第1のリードは金属であるため発光素子からの光の反射効率を高めることができる。(【0031】)
本発明は,発光素子と,発光素子を載置するための第1のリードと発光素子と電気的に接続される第2のリードとを一体成形してなる第1の樹脂成形体と,発光素子を被覆する第2の樹脂成形体と,を有する表面実装型発光装置であって,第1のリードは第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有しており,第1のインナーリード部は発光素子が載置されており,かつ,発光素子が持つ第1の電極と電気的に接続されており,並びに第1のアウターリード部は第1の樹脂成形体から露出されており,第2のリードは第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有しており,第2のインナーリード部は発光素子が持つ第2の電極と電気的に接続されており,並びに第2のアウターリード部は第1の樹脂成形体から露出されており,第1の樹脂成形体は,底面と側面とを持つ凹部が形成されており,第1の樹脂成形体の凹部の底面から第1のインナーリード部が露出されており,その露出部分に発光素子が載置されており,第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体とは熱硬化性樹脂である表面実装型発光装置に関する。これにより耐熱性,耐候光性,密着性に優れた表面実装型発光装置を提供することができる。また,熱硬化性樹脂を用いて第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体とを成形するため,第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体との界面の剥離を防止することができる。さらに,所定の長さを有する第1のリードと第2のリードを折り曲げ等して用いるため,外部電極と電気的に接続し易く,既存の照明器具等に実装してそのまま使用することができる。(【0033】)
発光素子が載置されている主面側と反対の第1のリードの裏面側は,第1の樹脂成形体から露出されていることが好ましい。表面実装型発光装置に電流を投入すると発光するとともに発光素子は発熱する。本構成にすることにより,この熱を効率よく外部に放出することができる。特に,発光素子からの熱を最短距離で外部に放熱できるため,極めて効率よく放熱することができる。(【0034】)
発光素子が載置されている主面側と反対の第1のリード及び第2のリードの裏面側は,第1の樹脂成形体から露出されていてもよい。これにより,発光素子から発生する熱を効率よく外部に放熱することができる。また,第1のリード及び第2のリードは電極として機能しているため,外部電極と極めて容易に接続することができる。特に厚肉の第1のリード及び第2のリードを用いた場合,これらのリードの折り曲げが容易でないものであっても,実装容易な形態である。また,製造工程において,第1のリード及び第2のリードを所定の金型で挟み込むため,バリの発生を低減することができ,量産性を向上させることができる。ただし,第1のリード及び第2のリードの裏面側の全面が露出している必要はなく,バリ発生を抑制したい部位のみの露出でもよい。(【0035】)
第1のリードの裏面側の露出部分と第2のリードの裏面側の露出部分とは,実質的に同一平面上にあることが好ましい。これにより,表面実装型発光装置の実装時の安定性を向上することができる。また,露出部分が同一平面上にあることから,平板上の外部電極に半田を用いて表面実装型発光装置を載置して実装すればよく,表面実装型発光装置の実装性を向上させることができる。さらに,金型による成形が極めて容易となる。(
【0036】

第1のインナーリード部の裏面側の露出部分は,放熱部材が接触するように配置されていてもよい。表面実装型発光装置と別に,放熱部材を外部の部材として配置することができる他,表面実装型発光装置と一体に放熱部材を取り付けることもできる。これにより,発光素子から発生した熱が放熱部材を伝って外部に放熱されるため,さらに放熱性を向上させることができる。また,放熱部材を外部の部材として配置する場合は,表面実装型発光装置の実装位置を容易に決めることができる。(【0037】)
第1の樹脂成形体は,トランスファ・モールドにより成形されている。射出成形では複雑な形状を形成することができないのに対し,トランスファ・モールドでは複雑な形状の成形体を成形することができる。特に凹部を持つ第1の樹脂成形体を容易に成形することができる。(【0038】)
第1の樹脂成形体は,エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂,アクリレート樹脂,ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種により形成されてなることが好ましい。このうちエポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂が好ましく,特にエポキシ樹脂が好ましい。これにより耐熱性,耐光性,密着性,量産性に優れた表面実装型発光装置を提供することができる。また,第1の樹脂成形体に熱可塑性樹脂を用いる場合よりも,第1の樹脂成形体に熱硬化性樹脂を用いる方が,第1の樹脂成形体の劣化を低減することができるため,表面実装型発光装置の寿命を延ばすことができる。(【0039】)
第1の樹脂成形体は,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されていてもよい。第1の樹脂成形体の要求に応じて種々の物質を添加する。例えば,透光性の高い樹脂を第1の樹脂成形体に用い,第1の樹脂成形体に蛍光物質を混合する場合である。これにより発光素子の側面若しくは底面側に出射された光を蛍光物質が吸収して波長変換して出射するため,表面実装型発光装置全体として所望の発光色を実現することができる。例えば,出射された光を均一に分散するために,発光素子の側面若しくは底面側にフィラーや拡散剤,反射性物質等を添加しておいてもよい。例えば,表面実装型発光装置の裏面側から出力される光を低減するために,遮光性樹脂を混合しておいてもよい。特に,第1の樹脂成形体はエポキシ樹脂中に酸化チタン及びシリカ,アルミナを混合しているものが好ましい。これにより耐熱性に優れた表面実装型発光装置を提供することができる。(【0040】

第2の樹脂成形体は,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されていてもよい。第2の樹脂成形体の要求に応じて種々の物質を添加する。例えば,第2の樹脂成形体に蛍光物質を混合することにより,発光素子から射出される発光色と異なる発光色を実現することができる。例えば,青色に発光する発光素子と,黄色に発光する蛍光物質とを用いることにより,白色光を実現することができる。また,光を均一に出射するために,フィラーや拡散剤などを混合しておくこともできる。(【0041】)
本発明は,第1のリードと第2のリードとを一体成形してなる樹脂成形体であって,第1のリードは第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有しており,第1のインナーリード部は樹脂成形体中に配置されており,第1のアウターリード部は樹脂成形体から露出されており,第2のリードは第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有しており,第2のインナーリード部は樹脂成形体に配置されており,第2のアウターリード部は樹脂成形体から外部に露出しており,樹脂成形体は,底面と側面とを持つ凹部が形成されており,樹脂成形体の凹部の底面から第1のインナーリード部及び第2のインナーリード部が露出されており,凹部が形成されている主面側と反対の第1のインナーリード部の裏面側は樹脂成形体から露出されており,樹脂成形体は,熱硬化性樹脂である樹脂成形体に関する。これにより熱可塑性樹脂を用いて樹脂成形体を成形した場合よりも,耐熱性,耐光性,密着性等に優れた樹脂成形体を提供することができる。また,発光素子を載置しやすい構造とすることができる。また,樹脂成形体から延びる第1のアウターリード部を露出することによって,発光素子から発生する熱を外部に放熱することができる。【0(

043】

<第2の実施の形態>第2の実施の形態に係る表面実装型発光装置について説明する。第1の実施の形態に係る表面実装型発光装置と同様な構成を採る部分については説明を省略する。図4は,第2の実施の形態に係る表面実装型発光装置を示す概略平面図である。(【0109】)
この表面実装型発光装置は,第1のリード21及び第2のリード31に凹凸を設け,第1の樹脂成形体40との接触面積を拡げている。これにより第1の樹脂成形体40から第1のリード21及び第2のリード31が抜脱するのを防止することができる。(【0110】)
乙17公報は,発明の名称を光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法およびこれを用いた光半導体装置の製造方法とする公開特許公報
であり,その【図2】では,発光装置において,リード(金属配線)が,リフレクターの外側面と同一平面上に設けられている。
乙18公報は,発明の名称を半導体装置および半導体装置製造用フレームとする公開特許公報であり,その【図1】及び【図2】記載の発光装置ではメタル基板(2)が,樹脂基板(4)の外側面と同一面上に設け
られている。
乙19公報は,発明の名称を半導体装置および半導体装置製造用フレームとする公開特許公報であり,その【図10】及び【図2】には,半導体装置用の樹脂パッケージにおいて,導体(リード)が樹脂パッケージ(92)の外側面と同一面上にあることが記載されている。

乙20公報は,発明の名称を高出力LEDパッケージおよびその製造方法とする公開特許公報であり,その【図8】によれば,乙20公報の高出力LEDパッケージでは,第1リード(133)及び第2リード(136)が,モールド部(140)の外側面と同一面上に設けられている。乙21公報は,発明の名称を発光装置及びその製造方法,ならびに発光装置の製造に用いるリードフレームとする公開特許公報であり,その図1では第1のリード及び第2のリードは,封止用の絶縁体の外側面と同一面上に設けられているのに対し,その図13では,第1のリード及び第2のリードは,
封止用の絶縁体の外側面上から突き出して設けられている。
特開昭60-262476号公報(乙22)は,発明の名称を発光素子とする公開特許公報であり,特許請求の範囲には

印刷配線基板と枠上絶縁基板とを積層し,その枠内部の前記印刷配線基板上に発光素子を組み込んだ構造の発光素子。との記載があり,

電極部6は,
枠上のセラミッ
ク基板の外側面から,丸く引っ込んだ形で設けられている。
記載に照らせば,乙16公報には,以下の乙16発明が記載さ
れている。

3a16

リードに凹凸の切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き

部に反射性物質を含有する熱硬化性樹脂が充填されている樹脂パ
ッケージであって,
3b16

前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面に沿って形

成されており,
3c16

前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面

と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,
3d16

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記

内底面に発光素子が配置されており,
3e16
前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置され

ており,
3f16

前記樹脂パッケージの外側面において,リードが前記樹脂部

の外側面から突き出すように形成されており,
3g16

前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出さ

れている,
3h16

ことを特徴とする発光装置。

本件訂正後発明3と乙16発明は,以下の点で相違し,その余の点は一致する。


本件訂正後発明3では,リードが有する切り欠き部が,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,
前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,

前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有して」いる(構成要件3B’のに対し,

乙16発明は,
前記樹脂パッケージの外側
面において互いに分離した,第1ないし第4の切り欠き部を有しない点。②

本件訂正後発明3では,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されている
(構成要件3F’のに対し,

乙16発明では,いずれの外側面においても,樹脂部とリードとが同一面に形成されていない点。


本件訂正後発明3では,リードが前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第3外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第4外側面それぞれに露出した第2リードを有している(構成要件3G’)のに対し,乙16発明では,第1のリー
ド及び第2のリードはそれぞれ一つの外側面においてのみ露出してい
る点。
これに対し,被告は,本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられているのに対し,乙16発明では,リードに設けられた凹凸は,上面視で,発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられていない点も相違点
である旨主張する。しかし,乙16公報の樹脂成形体が形成されている部分の当該構成を乙16発明における切り欠き部とすることが相当であり(準備書面(原告その2)35頁の下図,被告準備書面(10)100頁の図4)
,乙16発明は,上面視で発光装置の全包囲周の2分の1以上
にわたって設けられている切り欠き部を有しているといえる。被告の上記主張は採用することできない。
乙16公報によれば,乙16発明の発光装置は,各発光装置を個別に成形するもの(単体成形)であり,複数の発光装置をまとめて成形した後に個別に切断するもの(複数成形,ダイシングタイプ)ではないことが認められる(
【0121】ないし【0134】。そうすると,乙16発明の発光)
装置を作製する過程で,リードフレームにおける隣接する発光装置の接続
部分を切断して,
切断面にリードの端面を露出させることは想定されてい
ないといえるし,
あえて外側面にリードの端面を露出させる必要もないと
いえる。したがって,乙16発明において上記②の相違点に係る本件訂正後発明3の構成を採用することの動機付けはなく,乙16公報にその示唆もない。

また,
乙16発明における第1のリード及び第2のリードに設けられた
凹凸部分は,第1の樹脂成形体との接触面積を拡げることにより,第1の樹脂成形体から第1のリード及び第2のリードが抜脱することを防止するものであると認められる【0110】。

)そうすると,
抜脱防止のために
第1のリード及び第2のリードの凹凸の凸部を第1の樹脂成形体の側面
にあえて露出させる必要はないといえるし,むしろ,凸部を樹脂成形体の外側面に露出させると接触面積が減少する可能性もあるといえる。したがって,
乙16発明において上記②の相違点に係る本件訂正後発明3の構成を採用することについての動機付けはなく,乙16公報にその示唆もない。
外側面と同一平面に設けることは当業者が適宜なし得たことであるなどと主張する。しかし,乙17公報,乙18公報,乙20公報及び乙21公報に記載された構成は,いずれも反射体(樹脂部)四つの外側面それぞれにおいてリードが露出する構成ではない。乙19公報に記載されているのは半導体装置に関する発明であって発光装置とは技術分野が異なる。そうすると,乙16発明に対して,
相違点に係る本件訂正後発明3の構成を採用することを容易に想到する
ことができるとはいえない。
以上によれば,上記相違点に係る本件訂正後発明3の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
そうすると,その余の相違点を判断するまでもなく,本件訂正後発明3は,乙16発明に基づき容易に想到することができたとはいえないから,
無効理由2-2は存在せず,少なくとも解消しているといえる。

無効理由3(明確性要件違反,サポート要件違反2)の解消について本件明細書

記載のほか,以下の記載がある。

第1の実施の形態に係る発光装置100は,熱硬化後の,波長350nm~800nmにおける光反射率が70%以上であり,外側面20bにおいて樹脂部25とリード22とを略同一面に形成する樹脂パッケージ20を有する。リード22は底面(樹脂パッケージ20の外底面20a)及び上面(凹部27の内底面27a)の少なくともいずれか一面にメッキ処理を施している。一方,リード22の側面(樹脂パッケージ20の外側面20b)はメッキ処理が施されていない。樹脂パッケージ20の外側面20bは,樹脂部25が大面積を占めており,リード22が隅部から露出している。(【0033】)
樹脂パッケージは,外底面と外側面と外上面とを有する。樹脂パッケージの外側面からリードが露出している。樹脂部とリードとは略同一面に形成されている。この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する。(【0042】)
次に,切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する。複数の凹部27が形成された樹脂成形体24は,隣接する凹部27の間にある側壁を略中央で分離されるように長手方向及び短手方向に切断する。切断方法はダイシングソーを用いて樹脂成形体24側からダイシングする。これにより切断面は樹脂成形体24とリードフレーム21とが略同一面となっており,リードフレーム21が樹脂成形体24から露出している。このように切り欠き部21aを設けることにより,切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また,リードフレーム21の上面だけでなく,切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため,リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する。<第2の実施の形態>第2の実施の形態に係る発光装置について説明する。図6は,第2の実施の形態に係る発光装置を示す斜視図である。図7は,第2の実施の形態に用いられるリードフレームを示す平面図である。図8は,第2の実施の形態に係る樹脂成形体を示す平面図である。第1の実施の形態に係る発光装置とほぼ同様の構成を採るところは説明を省略することもある。(【0078】)
本件明細書3の【図1】には,樹脂パッケージの外側面が,樹脂部とリ
ードとが均一な状態の面として形成された態様が記載されている。
樹脂パッケージの外側面において,樹脂部とリードとが略同一面に形成されることが記載されており,
【図1】には,樹脂パッケージの外側面が,樹
脂部とリードとが均一な状態の面として形成された態様が記載されている。また,本件明細書の【0042】及び【0078】には,樹脂形成体とリードフレームが同じ切断工程で形成されることによって,樹脂部とリードが略同一面に形成されることが記載されている。
発光装置について,同じ切断工程によって樹脂部とリードの切断面が形成された場合,均一な状態の面である同一面といえる外側面が形成されることになるから,構成要件3F’の同一面は,本件明細書3に開示されたものであるといえ,特許法36条6項1号の要件(サポート
要件)を充足する。また,構成要件3F’の同一面は,同じ切断工程で形成されるような均一な状態の面を意味するものであると通常理解し得るものであるから,同項2号の要件(明確性要件)を充足する。また,被告は,本件訂正請求後の請求項2では前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,…前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されており,と記載され,同一面が切断面である旨が請求項で特定されていないから,本件訂正後発明3は新たな無効理由3が存在するとも主張する。しかし,本件明細書3には,上記記載に照らせば,切り欠き部に埋め込まれた樹脂部と,リードの上方に形成された樹脂部と,樹脂部から露出したリードが,同一面に形成されたも
のであることが記載されているといえる。被告の上記主張には理由がない。以上によれば,
本件訂正後発明3は特許法36条6項1号ないし2号に
違反するものではないから,無効理由3は存在せず,少なくとも解消しているといえる。

無効理由5(乙53公報を主引例とする進歩性欠如)の解消について被告は,本件訂正請求によっても,上記ウの無効理由3は解消されておらず,
本件特許権3は特許法44条1項柱書の規定に適合しない違法な分割出願であって,本件訂正後発明3の新規性及び進歩性の判断時は,現実の出願日である平成26年4月11日となるとして,本件訂正後発明3について平
成22年3月18日に公開された乙53公報を主引例とする進歩性欠如を主張する。
しかし,上記ウで検討したとおり無効理由3は認められないから,本件特許権3が違法な分割出願であるとはいえず,特許法第44条2項のみなし規定が適用されることになる。そうすると,本件訂正後発明3の進歩性の判断時は平成20年9月3日であり,平成22年3月18日に公開された乙53公報は,本件訂正後発明3についての公知文献にはならない。

したがって,その余を判断するまでもなく,本件訂正後発明3は,乙53公報に基づき進歩性が欠如しているとはいえないから,無効理由5は少なくとも解消しているといえる。

無効理由6(乙17公報を主引例とする進歩性欠如1)の解消について乙17公報は,発明の名称をリードタイムの短縮,使用する部材や工程の低減による生産性の向上,低コスト化が可能な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法およびこれを用いた光半導体装置の製造方法とする公開特許公報であり,その特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
(乙17)

【請求項1】光半導体素子搭載領域となる凹部が2つ以上形成された光反射用熱硬化性樹脂組成物層を配線基板上に有する光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法であって,前記光反射用熱硬化性樹脂組成物層をトランスファー成型により形成することを特徴とする,光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項2】前記光反射用熱硬化性樹脂組成物が,(A)エポキシ樹脂,(B)硬化剤,(C)硬化促進剤,(D)無機充填剤,(E)白色顔料及び(F)カップリング剤を必須成分として含み,熱硬化後の,波長800nm~350nmにおける光反射率が80%以上であり,熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能なものであることを特徴とする,請求項1に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。【請求項7】前記配線基板が,リードフレーム,プリント配線板,フレキシブル配線板,およびメタルベース配線板のいずれかであることを特徴とする,請求項1~6のいずれか1項に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。

【請求項9】前記樹脂封止工程後,前記光半導体素子を1つ有する光半導体装置単体に分割する工程,をさらに有することを特徴とする,請求項8に記載の光半導体装置の製造方法。

【請求項10】前記分割する工程が,ダイシングにより行われることを特徴とする,請求項9に記載の光半導体装置の製造方法。

近年,電子機器の小型化,軽量化,高性能化,多機能化に伴い,電子部品を基板上に高密度に実装することが行われている。高密度に実装するための電子部品としては,例えば,基板上の配線パターンにリフロー半田付け等により接続することが可能なSMD(Surfaceedmountdevice)が広く用いられている(例えば,特許文献1参照)。


【0002】

SMD型LEDのパッケージ基板について,図面に基づいてその概要を説明する。図4は一般的なSMD型LEDの斜視図である。図4において,1はLED素子搭載用パッケージ基板であり,配線基板2,樹脂層4およびこれらを固着させるための接着シート5からなる。配線基板2の上面には搭載されるLED素子10を接続するための一対の接続端子が形成されており,各端子には銀めっき等の表面処理が施されている。また,樹脂層4には,LED素子10の搭載領域となるカップ形状の貫通穴4d(上部開口4a,下部開口4bおよび側面4cからなる凹部)が形成されており,当該穴の内周面は,その底面に搭載されたLED素子10が発する光を反射させ上方へ導くリフレクターとしての役割を果たす。また,接着シート5は上記貫通穴4dの下部開口4bに対応する部分が取り除かれている。(【0004】)
しかしながら,上記した従来のSMD型LEDの製造方法では,貫通穴を有する樹脂層板を作製する工程,穴を有する接着シートを作製する工程,樹脂層板と接着シートとLED素子を搭載した配線基板を位置合わせして一体化する工程といった複数の工程やこれに伴う複数の部材が必要となる。(【0006】)
また,LED用パッケージ基板における樹脂層板を,耐熱性の高い熱可塑性樹脂を用い,射出成型により製造することが,例えば,特許文献2~4に開示されているが,400mm2のマトリックス状の大型の樹脂層板を一括成型した場合,線膨張率の違いによる応力で反りが発生し易く,その後の実装工程を進めることが困難となる場合がある等の課題があった。また,一般に使用されているリフレクター材料は,酸化チタンを顔料として用いているため,発光波長が短波長領域になると急激にその反射率が低下してしまう。また,紫外線による劣化が原因で可視領域の光に対しても反射率の低下が起こることが課題となっている。(【0007】)

上記を鑑みて,本発明は,リードタイムの短縮,使用する部材や工程の低減による生産性の向上,低コスト化が可能な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法およびこれを用いた光半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。(【0008】)
本発明によれば,従来必要であった複数の工程をトランスファー成型の一つの工程で行うことが可能となるため,リードタイムの短縮,使用する部材や工程の低減による生産性の向上,低コスト化が可能な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法および半導体装置の製造方法を提供することが可能となり,また,反りが少ない光半導体素子搭載用パッケージ基板や半導体装置を提供することが可能となる。(【0021】)

本発明は,配線基板と,当該配線基板上に形成され,光半導体素子搭載領域となる凹部(貫通孔)が所定位置に2つ以上形成されている光反射用熱硬化性樹脂組成物層とを有する光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法であって,上記光反射用熱硬化性樹脂組成物層をトランスファー成型により一括形成することをその特徴とするものである。(【0023】

上記トランスファー成型による形成について,より具体的には,例えば,上記配線基板として,図1(a)に示すような,金属配線401を有するプリント配線板400を用い,これを図1(b)に示すように,所定形状の金型411内に配置し,金型411の樹脂注入口410から光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入する。ついで,注入した光反射用熱硬化性樹脂組成物を好ましくは,金型温度170℃~190℃で60秒~120秒,アフターキュア温度120℃~180℃で1時間~3時間の条件で熱硬化させた後,金型411を外すことで,凹部(光半導体素子搭載領域)420が2つ以上形成された光反射用熱硬化性樹脂組成物層(リフレクター)421を配線基板上に有する光半導体素子搭載用パッケージ基板430を得ることができる(図1(c)(d)。また,凹部底面の,光半導体素,)子が接続される端子表面に電気めっき等によりNi/Agめっき104を施すこともできる。また,凹部の形状は,特に限定されないが,搭載されたLED素子10が発する光を反射させて上方へ導くようなカップ形状(円錐台形状)であることが望ましい。(【0024】)

上記光反射用熱硬化性樹脂組成物としては,公知のものを使用することも可能であるが,好ましくは,熱硬化後の,波長800nm~350nmにおける光反射率が80%以上であり,熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物を用い,より好ましくは,(A)エポキシ樹脂,(B)硬化剤,(C)硬化促進剤,(D)無機充填剤,(E)白色顔料及び(F)カップリング剤を必須成分として含み,かつ熱硬化後の,波長800nm~350nmにおける光反射率が80%上であり,熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いる。・・・(以下省略)(【0025】)
また,本発明において用いる上記配線基板としては,公知のものを使用することができ,特に限定されないが,例えば,上記プリント配線のほかに,リードフレーム,フレキシブル配線板,メタルベース配線板等を用いることができる。(【0034】)
本発明の光半導体装置の製造方法は,上記本発明の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法により得られた光半導体素子搭載用パッケージ基板に形成された2つ以上の凹部の各底面に,光半導体素子を搭載する工程,および当該光半導体素子を透明な封止樹脂により覆う工程,を有することをその特徴とするものである。(【0036】)
より具体的には,例えば,図1(c)および(d)に示す光半導体素子搭載用パッケージ基板430の凹部420の各底面の所定位置に,例えば,図2および図3に示すように,光半導体素子100を搭載し,該光半導体素子100と金属配線105とをボンディングワイヤ102,はんだバンプ107等の公知の方法で電気的に接続した後,公知の蛍光体106を含む透明な封止樹脂101により該光半導体素子100を覆うことで本発明の光半導体装置を製造する。なお,図1(c)および(d)には,光半導体素子を搭載する凹部が9箇所形成された場合について示されているが,本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。(【0037】

また,上記樹脂封止工程後に,マトリックス状である上記光半導体装置を,ダイシング,レーザ加工,ウォータージェット加工,金型加工等の公知の方法により分割することで,光半導体素子を1つ有する光半導体装置単体(SMD型光半導体装置)を得ることができる。好ましくは,図6に示すような,マトリックス状の光半導体装置にダンシングラインを形成し,これに沿ってダイシングする。(【0038】)

<光反射用熱硬化性樹脂組成物>下記組成の材料を混練温度20~30℃,混練時間10分の条件でロール混練を行い,光反射用熱硬化性樹脂組成物を作製した。(

【0040】)
(A)エポキシ樹脂:トリグリシジルイソシアヌレート100重量部(エポキシ当量100)・・・(以下省略)(【0041】)
<光半導体素子搭載用パッケージ基板の成型>上記で得たプリント配線板を図1(b)に示すような形状の金型に位置あわせして取り付け,上記で得た光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入した後,金型温度180℃,90秒間,6.9MPaの条件でトランスファー成型機(藤和精機(株)製,TEP150)により加熱加圧成型し,複数の凹部を有する,1600mm2のマトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製した。(【0042】)

<光半導体装置の製造>上記で得た光半導体素子搭載用パッケージ基板に形成された各凹部底面の回路上に,LED素子をダイボンド材(日立化成工業(株)製,EN4620K)にて固定し,150℃で1時間加熱することによりLED素子を端子上に固着させた。ついで,金線でLED素子と端子を電気的に接続した後,下記組成の透明封止樹脂をポッティングにより各凹部に流し込み,150℃で2時間加熱硬化し,LED素子を樹脂封止した。(【0043】)
(透明封止樹脂組成)・水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂:デナコールEX252(ナガセケムテックス社製)90重量部・脂環式エポキシ樹脂:CEL-2021P(ダイセル化学社製)10重量部・・・(以下省略)【0044】(


<ダイシング>上記透明封止樹脂を硬化させた後,マトリックス状の光半導体装置をダイシング装置((株)ディスコ製,DAD381)により個片化し,LED素子を1つ有する単体の光半導体装置(SMD型LED)を複数製造した。(【0045】)

(実施例2)プリント配線板の代わりにリードフレームを用いた以外は,実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。(

【0046】)
乙54公報は,公開特許公報であり,その【0028】には

分割された半導体装置のリード端子34の終端は,図6に示すように,樹脂41表面付近で先細りの形状に形成されるために,リード端子34が樹脂層41の側面から抜け落ちることを防止している。

との記載がある。乙21公報の【0057】には前記第1リードの突起部203及び前記第2リードの突起部303は,前記第1リード2及び前記第2リード3が前記絶縁体4から剥離し,抜け落ちるのを防止するために設けられておりとの記載がある。
乙55公報の【0014】には

リード部2の封止樹脂1と接着する部分に凹状のくぼみ3を設けている。このようにすることによって,トランスファーモールド時に,このくぼみ3に封止樹脂1が入り込み,アンカー効果がでる

との記載がある。乙21公報,乙54公報,乙56公報には,正負のリードに凹凸状
の部位を設けてリードと樹脂部の密着強度を向上させるため,製造に用いるリードフレームに所望の
切り欠き部
(スリット)
を設ける態様のリー
ドフレームが記載されている。
には,以下の発明が記載されている
(以下,この発明を乙17発明aという。。


3a17

切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれ

た光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂と,を備える樹脂パッケージを有し,
3b17

前記切り欠き部は,リードの外側面と,該外側面に対向する

外側面との間に,直線状に設けられており,
3c17

前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面

と,樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,

3d17

前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記

内底面に発光素子が配置されており,
3e17

前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材が配置され

ており,
3f17

前記樹脂パッケージの対面する2つの外側面において,前記

樹脂部と前記リードとが同一面に形成されており,
3g17

前記リードは,前記樹脂パッケージの外底面において露出さ

れている
3h17

ことを特徴とする発光装置。

本件訂正後発明3と,乙17発明aを対比すると,以下の点で相違し,
その余の点は一致する。


本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部に埋め込まれるとともに前記リードの上方に一体に形成された,…熱硬化性樹脂からなる樹脂部を備えるのに対して,乙17発明aでは,切り欠き部に埋め込まれた熱硬化性樹脂とリードの上方に形成された樹脂が一体であるか明らかで
ない点。


本件訂正後発明3では,
光反射性物質として酸化チタンが含有されるのに対し,乙17発明aでは,光反射性物質としてアルミナ,酸化マグネシウム,酸化アンチモン,水酸化アルミニウム,硫酸バリウム,炭酸マグネシウム,炭酸バリウム,無機中空粒子が含有される点。


本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しているのに対し,乙17発明aは,そのような構成を有していない点。


本件訂正後発明3では,
前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材が配置されているのに対し,乙17発明aでは,凹部内に発光素子を被覆するエポ
キシ樹脂からなる封止部材が配置されている点。


本件訂正後発明3では,
前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されているのに対し,
乙17発明aでは,

二つの外側面においては,リードの上方に形成された樹脂部とリードのみが同一面に形成されている点。


本件訂正後発明3では,
前記リードは,金属板に銀メッキ処理が施されてなり,…前記金属板の少なくとも上面全面に銀メッキ処理が施されているのに対し,乙17発明aのリードは,凹部内にのみ銀メッキ
処理が施されている点。


本件訂正後発明3では,
前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられているのに対し,乙17発明aはそのような構成を備えていない点。
リードに直線状の切り欠き部を設け

ることにより,
対面する2つの外側面に切り欠き部を生じさせるという構
成を有する。
乙16公報に記載された構成は,第1のリード及び第2のリードに設けられた凹凸が,第1の樹脂成形体との接触面積を拡げることにより,第1の樹脂成形体から第1のリード及び第2のリードが抜脱するのを防止するものであるところ,上記の凹凸は,リードの樹脂成形体との境界部に設けることによってリードと樹脂成形体の接触面積を広げるものであるといえる。そうすると,上記の乙17発明aの構成に,乙16公報に記載された構成を組み合わせたとしても,金属配線(リード)に挟まれたリフレクター(樹脂部)と,その両側の金属配線(リード)との境界部に凹凸が
形成された構成とすることが自然であり,当業者は光半導体素子(発光装置)
の外側面に沿って新たに樹脂部を設けようとは通常考えないというべきである。したがって,乙17発明aに乙16公報に記載された構成を組み合わせても上記③の相違点に係る本件訂正後発明3の構成に至ることはない。乙21公報や乙55公報に記載された構成も,リードと樹脂成形
体との境界部に凹凸部や突起部を設けることによりリードが抜脱することを防止するものであるといえるから,上記と同様の理由により,乙17発明aにそれらの構成を組み合わせても,上記③の相違点に係る本件訂正後発明3の構成に至ることはない。
また,乙54公報の図6には,樹脂成形体の4つの外側面において,リ
ードの端子又は突起部と樹脂切断面とが同一面に存在している構成が記載されているものの,同工法に記載されているのは半導体チップを実装した半導体装置に関するものであり,発光装置に係る乙17発明aとは技術分野が異なるものであるから,乙17発明aに上記構成を組み合わせることが容易とはいえない。

そして,
樹脂成形体の4つの外側面に沿って互いに分離した4つの切り
欠き部を設けることによってそれぞれの切り欠き部に沿ってダイシング等により切断する際に剥離しにくくなるという新たな作用効果が奏されるものであって,上記③の相違点に係る本件訂正後発明3の構成が,当業者が適宜なし得る設計事項であるとか,単なる周知技術にすぎないとはいえない。
以上によれば,上記③の相違点に係る本件訂正後発明3の構成は,当業
者が容易に想到できたものであるとはいえない。
そうすると,その余の相違点を検討するまでもなく,本件訂正後発明3は,
乙17発明a及び乙16公報等に記載された技術に基づいて容易に想到できたとはいえないから,無効理由6は少なくとも解消しているといえる。


無効理由7(乙17公報を主引例とする進歩性欠如2)
乙18公報の記載
図1,図2において,10は光の媒質を空気とする表面実装型LEDである。1はパッケージであり,2はこのパッケージ1を構成する,50W/(m・K)以上の熱伝導性の高いMg系,Al系,Cu系等のメタルコア材料から成るメタル基板である。メタル基板2の全面に金メッキ又はぜが施されている。メタル基板2の上面2aから下面2bにかけて,メタル基板2を縦に2分するスリット2cが形成されている。(【0017】)
3はスリット2cに充填されて両側を接合しているエポキシ樹脂又は耐熱性ポリマー等の樹脂接着剤である絶縁部材である。メタル基板2は,このように絶縁部材3によって電気的に2分割されて一対の電極を構成している。スリット2cを除くメタル基板2の全面に,金メッキ等の表面処理が施されている。4は,パッケージ1を構成する樹脂基板であり,メタル基板2の上面2aに,後述の接着シートを介して接合されている。樹脂基板4には,円形の上部開口4a及び下部開口4b並びにこれらを接続する鍋状の側面4cを有する貫通穴4dが形成されている。側面4cは円錐面の一部,放物面の一部,又は球面の一部を成す形状をしている。樹脂基板4の全面は,光沢銀メッキ等で被覆されて貫通穴4d内面は光反射面となっている。(【0018】)
次に,このLED10の製造方法について説明する。この方法は表面実装型LED10を多数個同時に加工することができる集合基板を用いた製造方法である。まず,図3に示すように,メタルコア材料から平板状に成形した集合基板状態のメタル基板12を用意し,これにレーザー若しくはプレス抜き加工によって,板厚を貫通するスリット12a,12bを,それぞれ所定の間隔で互いに平行に,両端はメタル基板12の外周までには達しないように加工する。(【0021】)
スリット12aは,完成LED10のスリット2cになる部分であり,スリット12bは,完成LED10の外周にあたる部分である。その後,全面を金メッキ又は銀メッキ処理をする。次に,スリット12a内に絶縁部材3である樹脂接着剤を充填・硬化させる。(【0022】)

次に,図4に示すように,予備加熱したメタル基板12のスリット12aに沿って所定間隔に,バンプがスリット12aを跨ぐように,金バンプ付きLED素子6を超音波振動を加えながら搭載して半田接合し,更にアンダーフィル樹脂7を供給して加熱硬化させ,フリップチップ実装をする。(【0023】)

一方,図5に示すように,貫通穴4dが所定の配列になるように,射出成形又はプレス成形などにより形成した集合基板状態の成形樹脂である樹脂基板14を用意する。樹脂基板14の面形状はメタル基板12と同じである。次に,樹脂基板14に,板厚を貫通するスリット14bを,1方向のみのダイシング加工により形成する。スリット14bは完成LED10の外周にあたる部分である。次に,樹脂基板14全体に光沢銀メッキ処理をする。(【0024】)
次に,図7に示すように,パッケージ基板11と同じ面形状を持つ集合状態のカバー板18を用意して,図8に示すように,カバー基板18をパッケージ基板11上に集合状態の接着シート19を介して接合する。接着シート19には,予め所定の配列で,上部開口4aに合致する穴19aが形成されている。(【0026】)
最後に,図9に示すように,2方向のダイシングラインに沿って,LED10を単個に分離して,図2に示す表面実装型LED10を得る。なお,以上の説明に使用した各図面において,LEDの取り個数を9個としてあるが,取り個数,集合基板の大きさはこれに限定されず,適宜選択できることは勿論である。また。樹脂基板14は,一旦部品として完成させてからメタル基板14上に接合しているが,これをメタル基板上に,直接樹脂モールドすることによって形成してもよい【0027】(


後発明3と乙17発明
いし⑦の相違点が存在する。被告は,乙17公報を主引例として,乙18公報に記載された発明を組み合わせれば,本件訂正後発明3の構成を容易に想到することができた旨主張する。
乙17発明aは,リードに直線状の切り欠き部を設けることにより,対面する2つの外側面に切り欠き部を生じさせるという構成を有する。
レームにあらかじめ切り欠き部を設けておく技術が開示されている。そうすると,
上記の乙17発明aの構成に乙18公報に記載された構成を組み
合わせた場合には,
ダイシングラインに沿って生じた切り欠き部に樹脂部
が形成され,
二つの外側面についてはその全てが樹脂部で形成されること
になることから,当該二つの外側面にはリードが露出しないことになる。したがって,
乙17発明aの構成に乙18公報に記載された構成を組み合
わせたとしても,
前記⑤の相違点に係る本件訂正後発明3の構成に至ることはない。
また,
本件訂正後発明3では樹脂成形体の4つの外側面に沿って互いに
分離した4つの切り欠き部を設けることによってそれぞれの切り欠き部に沿ってダイシング等により切断する際に剥離しにくくなるというとこ
ろ,
このような作用効果は乙17発明aや乙18公報に記載された構成で奏されるものではなく,本件訂正後発明3の上記構成が当業者が適宜なし得る設計事項であるとか,単なる周知技術にすぎないとはいえない。以上によれば,前記⑤の相違点に係る本件訂正後発明3の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

そうすると,その余の相違点を判断するまでもなく,本件訂正後発明3は,
乙17発明a及び乙18公報に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到できたとはいえないから,無効理由7は少なくとも解消しているといえる。
本件LEDが本件訂正後発明3の技術的範囲に属するか否か


構成要件3A’
,3B’
切り欠き部の充足性

同様の理由から,本件LEDは構成要件3A’
,3B’
切り欠き部を充足
する。

構成要件3A’
光反射性物質として酸化チタンが含有されるの充足性

様の理由から,本件LEDは構成要件3A’の光反射性物質として酸化チタンが含有されるを充足する。上記に加え,上記ア及び証拠(甲9,10,13)によれば,イ号LED及びロ号LEDは,いずれも(3a’-1,2)切り欠き部を有するリードと,前記切り欠き部に埋め込まれるとともに前記リードの上方に一体に形成された,光反射性物質として酸化チタンが含有される熱硬化性樹脂からなる樹脂部と,を備え,互いに対向する位置にある第1外側面及び第2外側面と,互いに対向する位置にある第3外側面及び第4外側面とを有する,上面視で矩形の樹脂パッケージを有し,(3b’-1,2)前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれに沿って形成されており,さらに,前記切り欠き部は,前記樹脂パッケージの外側面において互いに分離した,前記第1外側面に沿って形成された第1の切り欠き部と,前記第2外側面に沿って形成された第2の切り欠き部と,前記第3外側面に沿って形成された第3の切り欠き部と,前記第4外側面に沿って形成された第4の切り欠き部とを有しており,という構成を有していると認められ,上記3a’
-1,2は構成要件3A’を充足し,3b’-1,2は構成要件3B’を充足する。

構成要件3E’
シリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材の充足性後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


本件LEDの封止部材について,フーリエ変換型赤外分光法(FT-IR)による分析を行ったところ,当該封止部材の赤外吸収スペクトルと,シリコーン樹脂の赤外吸収スペクトルは,ピークが生じる位置が概ね一致した。なお,フーリエ変換型赤外分光法とは,測定対象の物質に赤外線を照射し,赤外線吸収スペクトルを利用して化合物を定性・定量
する赤外分光法の⼀種であり,
対象物の分子構造や状態を知るために使
用されるものである。
(甲9,10,弁論の全趣旨)


本件LEDの封止部材について,SEM分析及びEDX分析をしたところ,当該封止部材からSi,O,Cが主成分として検出された。(甲3
8,39)



シリコーン樹脂はシロキサン結合Si-O-Siを骨格とすると
ころ,
Si-O-Si
は,
フーリエ変換型赤外分光法において100
0/cm-1を超えた領域に強い赤外線吸収を有する。
(甲71)


発光ダイオードの封止部材について,一般的なものとしてエポキシ樹脂があるが,
120度以上の温度で長時間保持すると変色してしまうこ

とから,そのようなエポキシの温度安定性の限界を克服するため,2000年代の初めころからシリコーンが広く用いられている。
(甲40な
いし43)
上記認定事実によれば,本件LEDの封止部材はシリコーン樹脂からなると認められる。したがって,本件LEDは構成要件3E’のシリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂からなる封止部材を充足する。被告は,原告分析結果報告書の記載では,本件LEDの封止部材と比較サンプルのスペクトルの波形が全体として大きく異なっているから,本件LEDの封止部材にシリコーン樹脂が含まれていることの立証はされていないと主張する。しかし,シリコーンはシロキサン結合を骨格とし,ケ
イ素原子に有機基が結合した化合物であるオルガノシロキサン及びこれに各種の添加剤を配合加工したものの総称であるところ(甲71),結合
した有機基の種類や数によって分子構造の異なる様々な種類のシリコーン樹脂が存在することになるから,比較サンプルのシリコーン樹脂と比べて赤外線吸収スペクトルに異なる部分があることをもって,直ちに本件L
EDの封止部材がシリコーン樹脂でないとはいえない。また,測定方法の相違によってもスペクトルの差が生じ得る
(甲72)したがって,

被告の
上記主張によって上記認定は左右されない。

Dは,いずれも(3e’-1,2)前記凹部内に,前記発光素子を被覆する,シリコーン樹脂からなる封止部材が配置された発光装置であってという構成を有していると認められ,上記3e’-1,2はいずれも構成要件3E’を充足する。
エ前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されて(構成要件3F’
)の充足性
争点3-2(構成要件3F)

と同様の

理由から,
本件LEDは,
構成要件3F’
前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されてを充足する。上記に加え,証拠(甲13)によれば,イ号LED及びロ号LEDは,いずれも(3f’-1,2)前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて,前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と,前記リードの上方に形成された前記樹脂部と,前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されており,という構成を有していると認められ,上記3f’
-1,2はいずれも構成要件3F’を充足する。

前記リードは…前記樹脂パッケージの外底面において露出されて
(構
成要件3G’
)の充足性

理由から,
本件LEDは,
構成要件3G’
前記リードは…前記樹脂パッケージの外底面において露出されてを充足する。上記に加え,証拠(甲13,21,22)によれば,イ号LED及びロ号LEDは,いずれも(3g’-1,2)前記リードは,金属板に銀メッキ処理が施されてなり,前記樹脂パッケージの外底面において露出されて,前記金属板の少なくとも上面全面に銀メッキ処理が施されている一方,前記樹脂パッケージの外側面において前記金属板が露出しており,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第3外側面それぞれに露出した第1リードと,前記第1外側面,前記第2外側面及び前記第4外側面それぞれに露出した第2リードを有し,という構成を有していると認められ,上記3g’-1,2はいずれも構成要件3G’を充足する。

本件訂正後発明3の構成要件3A’
,3B’
,3E’
,3F’
,3G’以外の
構成要件について,
証拠(甲9,19,20の1ないし7,21)によれば,イ号LEDは,
(3c’-1)前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,(3d’-1)前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,(3h’-1)前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられている(3i’-1)ことを特徴とする発光装置。という構成を有していると認められ,上記3c’-1,3d’-1,3h’-1はそれぞれ構成要件3C’
,3D’
,3H’を充
足すると認められる。
また,証拠(甲10,19,20の1ないし7,22)によれば,ロ号LEDは,(3c’-2)前記樹脂パッケージは,前記リードが露出されてなる内底面と,前記樹脂部からなる内側面とを備える凹部を有し,(3d’-2)前記内底面は,前記リードおよび前記樹脂部からなり,前記内底面に発光素子が配置されており,(3h’-2)前記切り欠き部は,上面視で,前記発光装置の全包囲周の2分の1以上にわたって設けられている(3i’-2)ことを特徴とする発光装置。という構成を有していると認められ,上記3
c’-2,3d’-2,3h’-2はそれぞれ構成要件3C’
,3D’
,3H’
を充足すると認められる。

前記アないしカによれば,本件LED(イ号LED,ロ号LED)は,本件訂正後発明3の技術的範囲に属する。

以上によれば,本件訂正請求は訂正要件を具備しており,本件訂正後発明3には被告主張の無効理由はいずれも存在せず,少なくとも無効理由は解消しており,また,本件LEDは,本件訂正後発明3の技術的範囲に属する。そうすると,
争点6について検討するまでもなく,
被告が本件LEDを製造,
販売等する行為は本件特許権3を侵害するといえる。
7損害発生の有無及びその額(争点8)
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

被告製品1の販売期間は平成26年1月から平成28年3月であり,上記期間における総販売台数は43万3971台であった。その総売上高は147億1230万5518円であり,そのうち,平成26年1月から平成27年10月の売上高は147億0698万4087円であり,平成27年11月から平成28年3月までの売上高は,532万1431円であった。
被告製品2の販売期間は平成27年5月から平成28年12月であり,上記期間における総販売台数は29万6608台であった。総売上高は102億2138万1519円であり,そのうち平成27年5月から平成27年10月までの売上高は33億4704万1430円であり,平成27年11月から平成28年12月までの売上高は68億7434万0089円であっ
た。
(以上につき,乙87)
上記によれば,被告製品1及び2を通じた製品1台当たりの単価は,約3万4129円となる(
(147億1230万5518円+102億2138
万1519円)÷(43万3971台+29万6608台)≒3万4129円(小数点以下は四捨五入)。


被告製品は,いずれもデジタルハイビジョン液晶テレビであり,被告製品1及び2には,
いずれも1台につき24個のイ号LED又はロ号LEDが搭
載されていた。

液晶テレビのバックライト用途のLEDの世界的な平均価格は,平成26年は0.1ドル,平成27年は0.08ドル,平成28年は0.068ドルであった。また,年間平均為替レート(TTSレート)は,平成26年は106.85円/1ドル,平成27年は122.05円/1ドル,平成28年は109.84円/1ドルであった。
(乙85(枝番を含む。,90)

上記によれば,被告製品が製造,販売されていた平成26年から平成28年までの間の液晶テレビのバックライト用途のLEDの1個当たりの平均価格は,0.083ドルとなる。これに,平成26年から平成28年の為替
レートの平均である113円(106.

85円+122.
05円+109.
84円)
÷3≒113円
(小数点以下は四捨五入)を用いて円に換算すると

1個当たり9円となり,これに1台の被告製品に搭載されていた個数である24を乗じると216円となる。

原告は,白色LEDの製造,販売をしている。
総合技研株式会社発行の2017年版白色LED・応用市場の現状と将来性(乙86)には,原告が,白色LEDに関して,平成14年から平成19年にかけて合計3社にライセンスを供与したと記載されている。ただし,白色LEDを用いて製作される製品について,原告がライセンス契約を締結したことやそのライセンス料を認めるに足りる証拠はない。なお,
原告は,
他社が有望な特許権等を持っている場合にはクロスライセンス契約を締結することはあるものの,基本的に他社にライセンスをすることはないという方針であった旨述べている。

平成15年9月30日に発行された社団法人発明協会実施料率第5版によれば,昭和43年から平成10年までの間における,
電子・通信用部品分野の実施料率(イニシャルペイメントがない場合)は,1ないし30パーセントの間で分布しているところ,そのほとんどが1ないし5パーセントの範囲内に分布し,その中で2パーセント台が最も多くなっている。(以
上につき,甲79)

平成22年8月31日に発行されたロイヤルティ料率データハンドブック~特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ~によれば,本件発明1ないし3に関連する電気の分野の実施料率の平均は2.9パーセント,最大値は9.5パーセント,最小値は0.5パーセントであった。(乙
89)

上記ウの2017年版白色LED・応用市場の現状と将来性
(乙8

6)によれば,白色LEDを製造して他社に販売している企業は,原告のほかに合計10社以上あった。原告の市場における市場占有率は,平成26年度は25.4パーセント,平成27年度は19.6パーセント,平成28年度は19.1パーセントであった。
(乙86・56頁)

な価格の24個分の価格は216円である。本件では,本件LED又はその製造方法が特許発明の技術的範囲に属するということだけでなく,白色LEDはそれのみで販売の対象となるものであり,原告は白色LEDの製造,販売を行っていることなどから,特許法102条3項の金額の算定に当たって,まず,上記の平均的な価格の24個分の価格に,主として本件特許権1の侵害が問題
となる平成27年10月までの期間については5パーセントを乗じ,本件特許権1に加えて本件特許権3(登録日平成27年10月23日)の侵害も問題となる平成27年11月以降の期間(なお,本件発明2と本件訂正後発明3の内容に照らし,損害の算定に当たり本件特許権2(登録日平成28年12月16日)の侵害については特に期間を分けて考慮することをしない。
)については

8パーセントを乗じると,
それぞれ,
10.
80円及び17.
28円となる
(2
16円×5パーセント=10.80円

216円×8パーセント=17.28

円)

そして,
本件で特許権の侵害となるのは本件LEDを使用した被告製品の販売であること,
本件LEDはデジタルハイビジョンテレビである被告製品にと
り不可欠のものであり,その機能,性能において重要な役割を果たしているといえること,原告の白色LEDの市場におけるシェア,原告が主張するライセンスについての方針,その他本件に現れた諸事情を考慮し,本件において,被告製品1及び2を通じ,
特許法102条3項の実施に対し受けるべき金銭の額
は,被告製品1台当たり,消費税相当額を含めて,平成27年10月までの期間については,20円をもって相当であると認め,平成27年11月以降の期間については,30円をもって相当であると認める。
以上のとおり,本件において,原告が実施に対し受けるべき実施料として被告製品1台当たり,
20円又は30円とするのが相当であるところ,
これらは,
それぞれ,被告製品の平均的な販売価格の0.058パーセント又は0.087パーセントである(20円÷3万4129円≒0.00058

30円÷3

万4129円≒0.
00087)これらに基づき,

特許法102条3項に基づ
く損害額は,以下のとおり,1645万6641円とするのが相当と認める。ア
平成26年1月~平成27年10月まで(小数点以下四捨五入)
1047万1335円
(計算式)
(147億0698万4087円+33億4704万1430円)×0.
00058≒1047万1335円

平成27年11月~平成28年12月まで(小数点以下四捨五入)598万5306円
(計算式)

(532万1431円+68億7434万0089円)×0.00087≒598万5306円
また,本件にあらわれた一切の事情に照らせば,本件訴訟における弁護士費用としては150万円をもって相当であると認める。
したがって,本件の損害額は,1795万6641円であると認められる。
被告は,
原告が主張立証するロ号LEDが使用されている被告製品2の販売数量は不明であるから被告製品2に関する損害賠償請求は認められないと主チップの形状の相違が本件特許権の侵害の範囲と関係するものとは認められず,被告の上記主張は採用できない。
8差止請求及び廃棄請求について
上記認定事実のとおり,被告製品1の販売期間は平成26年1月から平成28年3月であり,
被告製品2の販売期間は平成27年5月から平成28年12月で
あって,被告製品の販売は,本件口頭弁論終結日の3年程度前に終了している。そして,
今後被告がそのような被告製品の販売等を再開する可能性があることをうかがわせる事情は見当たらない。そうすると,原告の差止請求及び廃棄請求を
認める必要性は認められない。
第4結論
よって,原告の請求は主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官

柴田義
裁判官

安岡美
裁判官

佐藤雅明香子浩
(別紙)
物件目録

1商品名:液晶テレビレグザ(形名:32S8)
2商品名:液晶テレビレグザ(形名:32S10)

以上

(別紙)
被告主張の損害額
(単位:円)
H26.1~H27.9

イ号製品の売上高
ロ号製品の売上高
本件発明1の
相当実施料率
本件発明2の
相当実施料率
本件発明3の
相当実施料率

14,704,047,272
H27.10

H29.1~7

5,321,431

0.05%※1

2,936,815

0.1%
1%
-

-

0.29%※2

1%

イ号製品における本件
発明1~3の寄与率
ロ号製品における本件
発明1~3の寄与率

0.65%
0.64%

イ号製品の損害賠償額
ロ号製品の損害賠償額

H28.12

H27.11~H28.11

955,763
956,701

損害額合計

956,701

※1本件発明2の特許権は平成28年12月16日に成立しているので,平成28年12月の実施料率は日割計算により0.05%として計算した。
※2本件発明3の特許権は平成27年10月23日に成立しているので,平成27年10月の実施料率は日割計算により0.29%として計算した。

以上

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