判例検索β > 令和1年(行ケ)第10066号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和1(行ケ)10066
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和2年2月28日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2020-02-28
情報公開日2020-03-23 15:30:34
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令和2年2月28日判決言渡
令和元年(行ケ)第10066号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和2年1月24日
判原決告
株式会社ファイブスター

同訴訟代理人弁護士

冨宅恵西村啓
同訴訟代理人弁理士

髙山被告株
同訴訟代理人弁護士


同訴訟代理人弁理士

小主式会嘉社M成TG健林一徳夫文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

特許庁が無効2018-800095号事件について平成31年4月8日にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,進歩性についての判断の誤りの有無である。

1
特許庁における手続の経緯

被告は,平成23年11月16日,発明の名称を美容器とする発明につき,特許出願(特願2011-250915号。以下本件原出願という。)をし,平
成26年9月26日,
同出願の一部を新たな出願
(特願2014-197056号)
とした。この新たな特許出願は,平成27年12月4日,特許第5847904号として特許権の設定登録(請求項の数2)を受けた(甲11,12。以下,この特許を本件特許といい,特許権を本件特許権といい,明細書と図面を併せて本件明細書等という。。

原告は,平成30年7月24日,本件特許の無効審判を請求し,特許庁は,同無効審判請求を無効2018-800095号事件として審理し,平成31年4月8日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)を
し,同審決謄本は,同月18日,原告に送達された。
2
本件特許の特許請求の範囲の記載

本件特許の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を本件発明1と,請求項2に係る発明を本件発明2といい,本件発明1と本件発明2を併せて本件発明という。。

【請求項1】
基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,
前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,
前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,
前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置することを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記軸受け部材は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の美容器。3
本件審決の理由の要点
(1)本件原出願の前に頒布された特開平2-104359号公報(以下甲1文献という。)には,以下の発明(以下引用発明という。
)が記載されている。
把持具13の先端部14に突設した支持金具15と,支持金具15の先端部に取り付けた支持軸16と,前記支持軸16の基端から先端に回転可能に支持されたローラー1とを備え,そのローラー1により身体の素肌に対する洗浄,マッサージ,小ジワのばし,新陳代謝作用等に使用する素肌用ローラー30において,ローラー1は基端側のみ挿入口4を有し,ローラー1は,その内部に支持軸16の先端が位置する非貫通状態で支持軸16に回転ロッド17を介して支持されており,回転ロッド17は,ローラー1の挿入口4とは反対側となる各弾性片22の係合突起24が,支持軸16の先端部19に穿設された環状の係合溝20に係合することにより回転ロッド17の支持軸16に対する抜脱は防止され,回転ロッド17からは,ツバ12が突き出ており,複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料からなるローラー1は内周にツバ12に係合可能な係合孔6の基端側の部分を有し,係合孔6の基端側の部分はツバ12の基端側に係止される,素肌用ローラー30。(2)本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。ア
一致点

基端においてハンドルに固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側のみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,前記軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは,突出部が突き出ており,前記回転体は内周に前記突出部に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記突出部の基端側に係止される,美容器である点イ
相違点
(ア)相違点1

基端においてハンドルに固定される支持軸の
固定
について,
本件発明1では,
抜け止め固定されるのに対して,引用発明では,突設(固定)されているものの,抜け止めされているかは特定されていない点
(イ)相違点2
本件発明1では,
軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の基端側に鍔部を有しており,同係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置するのに対して,引用発明では,回転ロッド17(軸受け部材)は,係止手段としてのツバ12は備えるものの,
ツバ12が弾性変形可能か否かは不明であって,
かつ,
ツバ12は
先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有する係止爪ではなく,回転ロッド17(軸受け部材)は係止爪の基端側
の鍔部も有さず,
回転体は内周に前記係止爪に係合可能ではなく,
係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する段差部も備えない点
(3)相違点2の容易想到性

本件原出願の前に頒布された米国特許出願公開第2010/01911
61号(甲2の1。以下甲2文献という。
)には,以下の事項(以下甲2記載事項という。
)が記載されている。
プラグ200を介して,モジュール140を回転可能に支持するマッサージ器具であって,プラグ200は,外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を含むと共に,ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有しており,突起205は,先端側に向かうほどプラグ200におけるモジュール140の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,モジュール140は,内周に,ラッチアーム204の突起205の基端側に係止される段差部を有し,前記段差部は,前記突起205の基端側に係止されるとともに,前記突起205と前記フランジ201との間に配置される,マッサージ器具イ(ア)a甲2文献のロックピン240は,そのシャフト241がプラグ200に挿入されて,プラグのラッチアーム204がモジュールのラッチ凹部と離脱するのを防止するものであって,本件発明1の回転体に相当するモジュールを回転可能に支持するものではないから,これをもって本件発明1の支持軸に相当する部材ということはできない。
そうすると,甲2文献のプラグ200は,それ自体が二つのモジュールを固定するものであって(段落【0151】【0152】,軸と回転体との間に介在するこ,

とで回転体を軸に対して回転自在に支持する軸受け部材として機能するものではない。
また,甲2文献には,ロックピン240を挿入することで,プラグ200のラッ
チアーム204の突起205がモジュール140の開口のラッチ凹部から離脱するのを防止すること,モジュール140を取り外す際には,ロックピン240を取り外してからラッチアーム204の突起205のラッチ凹部との係合を解除し,モジュール140を取り外す必要があること,モジュール140の先端側には,ロックピン240を挿入するための開口が必要とされることが記載されていることから,ロックピン240が挿入されるプラグ200は,非貫通状態の回転体を支持するために用いることを想定しているとはいえない。
したがって,引用発明の支持軸16とローラー1との間に配置され,軸受け部材として機能する回転ロッド17をプラグ200に置き換える動機付けは存在しない。b
引用発明は,
ローラー1の取り付け時に,
ローラー1が弾性変形し,

これに係止する回転ロッド17のツバ12が変形する必要がないのに対して,甲2記載事項は,モジュール140の取り付け時に,モジュール140が変形せず,これに係止する突起205を含むラッチアーム204が弾性変形可能な構成としたものである。
したがって,
引用発明の弾性変形可能なローラー1に係止するための構成として,甲2記載事項の(変形しないモジュール140に係止するための構成である)突起205を含む弾性変形可能なラッチアーム204の構成を適用する動機付けは存在しない。
c
仮に,引用発明の支持軸16に支持される回転ロッド17をプラグ
200に置き換えた場合,プラグ200の内部に支持軸16が挿入された状態となることで,ロックピンを挿入した場合と同様に,プラグのラッチアームがラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,
ラッチアームの内方への移動が固定されてしまい,
ローラー1を装着する際に,
ラッチアームが意味をなさないこととなる。
このため,
引用発明の回転ロッド17を,あえて,回転ロッド17のツバ12に対して複雑な構成であるラッチアームを有するプラグに置き換える動機付けはない。d
引用発明の回転ロッド17のツバ12に,甲2記載事項の突起205を含むラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を適用すると,以下の問題点が存在し,その適用には阻害要因が存在する。
すなわち,引用発明の回転ロッド17のツバ12に,甲2記載事項の突起205を含むラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を採用すると,ラッチアーム204の弾性はローラー1よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要があるが,引用発明のローラー1は,それ自体が弾性変形可能であり,その弾性は,ローラー1の表面に形成された吸盤用凹部3が素肌に吸着する程度に柔らかいものであるから,このローラー1よりもさらに柔らかい(変形しやすい)ラッチアーム204を引用発明に設けても,ロックピン240が挿入される前においては,ローラー1に抜け方向の荷重が作用した場合には,ラッチアーム204は簡単に弾性変形し,あるいはローラー1自身の段差部(突起205に係止する部分)も弾性変形して,ローラー1は容易に突起205を乗り越えて回転ロッド17から抜けやすくなる。したがって,引用発明の回転ロッド17に突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を設けても,ロックピン240が挿入される前においては係止という機能を果たさないおそれがあることから,係止という機能を果たさないおそれがある構成を当業者が採用することはありえず,阻害要因が存在する。
(イ)軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持する際に,回転体の内面に段差部を設けるとともに,軸受け部材には当該段差部に係止する係合爪を用いる構成は,甲2文献には,示されていない。
仮に,回転ロッド17のツバ12に甲2文献のラッチアームを適用することができたとしても,さらに鍔を甲2文献から適用した上で,ローラー1側にラッチアームと鍔の間との間の段差部を形成するような構成に変更する必要があるから,そのような構成に変更することにより,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者といえども容易なことではない。
(ウ)以上のとおり,引用発明に甲2記載事項を適用することによって,相
違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得ることとはいえない。

本件原出願の前に頒布された登録実用新案第3036898号公報(以
下甲3文献という。,登録実用新案第3166202号公報及び国際公開第2)
011/004627号を検討しても,引用発明を相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得ることとはいえない。(4)相違点1の容易想到性
甲3文献には,

基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器。

が開示されている。引用発明と甲3文献に開示されたものは,
基端においてハンドルに固定された支持軸と.前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体を用いて身体に対してマッサージする美容器において共通する上,引用発明において支持軸がハンドルから抜けないようにすることは内在的な課題ともいえるから,引用発明に甲3文献に開示された事項を適用して,相違点1における本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
(5)本件発明2は,
本件発明1の発明特定事項を全て含み,
さらに発明特定事項
を付加したものであるから,本件発明1と同様の理由により,当業者が容易に想到し得たものではない。
第3
1
原告主張の審決取消事由
取消事由1(本件発明1の進歩性についての判断の誤り)

(1)本件発明について
本件発明においては,回転体の材質は限定されていないから,本件発明の回転体は,柔らかい素材でできているものも含まれ,したがって,本件発明には,係止爪の突起部分及び回転体の係止部が弾性変形することにより,回転体から軸受け部材を抜き取ることができるものが含まれる。

また,本件発明の回転体の材質が硬質のものに限定されるとしても,係止爪の突起部分が弾性変形することにより,
回転体から軸受け部材を抜き取ることができる。
さらに,本件発明の回転体の材質が硬質のものに限定され,係止爪及び回転体が弾性変形しなくても,以下の長方形状の部位が内側に撓むことで突起部の傾斜部分に沿って係止爪全体が内径方向に入り込み,これにより,回転体から軸受け部材を抜き取ることができる。

したがって,回転体が軸受け部材から着脱可能であるものとして本件発明の要旨を認定すべきである。
(2)甲1文献記載の発明について
甲1文献には,以下の発明(以下原告主張引用発明という。
)が記載されてい
る。本件審決は,甲1文献に記載されている発明について,
回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための取り付け手段の一例であり,ツバ12を突き出しており,ツバ12の先端側は円筒状であることを認定しておらず,
この点で本件審決は,誤っている。
把持具13の先端部14に突設した支持金具15と支持金具15の先端部に取り付けた支持軸16と,前記支持軸16の基端から先端に回転可能に支持されたローラー1とを備え,そのローラー1により身体の素肌に対する洗浄,マッサージ,小ジワのばし,新陳代謝作用等に使用する素肌用ローラー30において,ローラー1は基端側のみ挿入口4を有し,ローラー1は,その内部に支持軸16の先端が位置する非貫通状態で支持軸16に回転ロッド17を介して支持されており,回転ロッド17は,ローラー1の挿入口4とは反対側となる各弾性片22の係合突起24が,支持軸16の先端部19に穿設された環状の係合溝20に係合することにより回転ロッド17の支持軸16に対する抜脱は防止され,回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための取り付け手段の一例であり,ツバ12を突き出しており,ツバ12の先端側は円筒状であり,複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料からなるローラー1は内周にツバ12に係合可能な係合孔6の基端側の部分を有し,係合孔6の基端側の部分はツバ12の基端側に係止される,素肌用ローラー30(3)本件発明1と原告主張引用発明との一致点及び相違点についてア
一致点

本件発明1と原告主張引用発明との一致点は,
以下のとおりであり,
本件審決は,
回転体が軸受け部材から着脱可能であることを認定していない点で誤っている。基端においてハンドルに固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側のみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,かつ,軸受け部材から着脱可能であり,前記軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは,突出部が突き出ており,前記回転体は内周に前記突出部に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記突出部基端側に係止される,美容器イ
本件発明1と原告主張引用発明との相違点は,本件審決の認定したとお
りである。
(4)相違点2の判断の誤り

甲2文献には,以下の事項(以下原告主張甲2記載事項という。
)が

記載されている。本件審決は,ラッチアーム204の先端側に円筒部のないプラグ200に基づいて甲2記載事項を認定し,
また,
モジュール140がプラグ200,
220に着脱可能であることを認定しておらず,
この点で本件審決には誤りがある。
プラグ220を介して,モジュール140を回転かつ着脱可能に支持するマッサージ器具であって,プラグ220は,外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を含むと共に,ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有し,かつラッチアーム204の先端側に円筒部分を有しており,突起205は,先端側に向かうほどプラグ220におけるモジュール140の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,モジュール140は,内周に,ラッチアーム204の突起205の基端側に係止とされる段差部を有し,前記段差部は,前記突起205の基端側に係止されるとともに,前記突起205と前記フランジ201との間に配置される,マッサージ器具イ(ア)動機付けについて
原告主張引用発明において,回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための取り付け手段の一例であり,甲1文献には,その他の取り付け手段を用いてもよい旨が記載されているところ,その他の取り付け手段とは,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための手段である。
そして,
甲1文献には,
回転ロッド17におけるツバ12がなくてもよいとも記載されている(4頁左上欄13行~19行)

一方,原告主張甲2記載事項において,プラグ220は,モジュール140を回転かつ着脱可能に支持するための部材であり,ラッチアーム204とフランジ201とを有している。
このように,甲1文献において,回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための手段の一例として用いられており,その他の着脱可能な取り付け手段を用いてもよいとされているのであるから,原告主張引用発明の回転ロッド17を,原告主張甲2記載事項におけるプラグ220に置き換えてもよいとの動機付けは存在する。
そして,原告主張引用発明においても,係合孔6が存在し,回転ロッド17をプラグ220に置き換えた際に,ラッチアーム204に対応するように,係合孔6の大きさを調整する程度のことは設計事項にすぎず,これにより,フランジ201とラッチアーム204との間に位置する段差部が,ローラー1の内周に存在することになる。
したがって,相違点2に係る構成は,原告主張引用発明に,原告主張甲2記載事項を適用することで,容易に発明することができる。
(イ)阻害要因について
a
原告主張引用発明の美肌ローラー30及び原告主張甲2記載事項に
おけるマッサージ器具は,ローラー1又はマッサージローラに相当するモジュール140を着脱可能とすることを前提としている。
したがって,回転ロッド17を他の取り付け手段に置き換えるためには,置換するための部材が着脱可能な部材でなければならない。
よって,回転ロッド17を別な部材であるプラグ200や220に置換することによって,ローラー1が抜けてしまうということが阻害要因となることはない。b
甲1文献には,ツバ12が存在しなくても,ローラー1の内径と回
転軸11の外径とを略同一にすることで,マッサージ中にローラー1が意図せずに抜けることなく,かつ,必要なときに,ローラー1を取り外すことができると記載されており
(4頁左上欄15行~17行)
,特許請求の範囲(5)においても,ツバ12
は技術的要素とされていない。このように,ツバ12が必要とされないのは,回転ロッド17が円筒状に構成されているため,ローラー1と回転軸11との間の摩擦によって,マッサージ中に,ローラー1が意図せずに抜けてしまうということが防止されるからである。
原告主張甲2記載事項のプラグ220には,回転ロッド17と同様,円筒状の部分が存在する上に,ラッチアーム204が存在するのであるから,回転ロッド17をプラグ220に置き換えたとしても,プラグ220からローラー1が意図せずに抜け落ちてしまうということはなく,回転ロッド17やその他の取り付け手段を用いた場合と同様に,ローラー1を着脱可能にすることができる。
したがって,回転ロッド17をプラグ220に置換しても,作用効果は同じであり,回転ロッド17をプラグ220に置き換えることにつき,阻害要因は存在しない。

本件審決について
(ア)本件審決においては,ロックピン240が,本件発明1における支持軸に相当する部材ではないと認定されている。しかし,原告の主張は,引用発明の回転ロッド17をプラグ200(又は,プラグ220)に置き換えることが容易であるとの主張であるから,回転ロッド17とプラグ220との共通性を踏まえて,置き換えが容易であるか否かの判断を行わなければならないところ,甲2文献におけるプラグ220とロックピン240との関係は,甲1文献における回転ロッド17と支持軸16との関係と同じである。甲2文献において,プラグ220の内部に,ロックピン240が挿入されているところ,ロックピン240の第1部分242の直径は,開口の直径よりも僅かに小さいとされていることから,モジュール100に取付けられたモジュール130及び140は,ロックピン240の回りを回転できる構造となっており,また,段落【0166】
にも,
ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。と記載さている。したがって,原告主張甲2記載事項においては,シャフト241を中心として,プラグ200,220及びモジュール130は回転することができる。したがって,ロックピン240が,本件発明1における支持軸に相当する部材ではないとして,相違点2に関する容易性を否定する本件審決の判断には誤りがある。
(イ)本件審決においては,プラグ200は,それ自体が二つのモジュールを固定するものであって,軸受け部材として機能するものではないと認定されている。
しかし,プラグ220は,上記した機能に加えて,モジュール140を着脱可能に取り付けるための手段としても機能している。
したがって,プラグ220は,それ自体が二つのモジュールを固定するものとして機能しているからといって,回転ロッド17をプラグ220に置換することの動機付けが存在しないことの理由とはならないのであって,本件審決の判断には誤りがある。
(ウ)本件審決においては,ロックピン240が,ラッチアーム204がラッチ凹部から離脱するのを防止するために用いられており,非貫通状態の回転体を支持するためのものではないと認定されている。
しかし,相違点2の容易想到性について検討すべきは,回転ロッド17をプラグ220に置き換えることが容易であったか否かであり,プラグ220が,モジュール140を着脱可能に取り付けるための取り付け手段として機能していることから,ロックピン240の機能とは無関係に,置換についての動機付けは存在する上,モジュール140が,モジュール100側からロックピン240が挿入され,非貫通状態の回転体であることから,本件審決の判断には誤りがある。
(エ)本件審決においては,
甲2文献のプラグ200は,
それ自体が二つの
モジュールを固定するものであり,ロックピン240を挿入することで,プラグ200のラッチアーム204の突起205がモジュール140の開口のラッチ凹部から離脱するのを防止するものであって,軸と回転体との間に介在することで,回転体を非貫通状態で軸に対して回転自在に支持する軸受け部材として機能するものではないから,引用発明の支持軸16とローラー1との間に配置され,軸受け部材として機能する回転ロッド17をプラグ200に置き換える動機付けは存在しないと判断されている。
しかし,回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための部材であり,プラグ200(又は220)も,モジュール140を回転かつ着脱可能に取り付けるための部材であり,両者は用途が共通しているから,回転ロッド17をプラグ220に置き換える動機付けは存在し,この置換えによって,プラグ220が軸受け部材として機能することになるから,本件審決の上記判断は誤りである。
(オ)本件審決においては,引用発明における回転ロッド17のツバ12の技術的な意義と,甲2記載事項における突起205を含む弾性的なラッチアーム204の技術的な意義は異なっており,引用発明に甲2記載事項における突起205を含む弾性的なラッチアーム204を適用する動機付けはないと判断されている。しかし,回転ロッド17とプラグ220とは,ローラー1又はモジュール140を着脱可能に取り付けるための部材であることは明らかであり,当業者にとって,二つの技術的意義は共通しているのであり,動機付けの有無を判断するに当たり,本件審決において判断されている微細な技術的差異が問題となることはない。(カ)本件審決においては,引用発明の支持軸16に支持される回転ロッド17をプラグ200に置き換えた場合,プラグ200の内部に支持軸16が挿入された状態となることで,ロックピンを挿入した場合と同様に,プラグのラッチアームがラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,ラッチアームの内方への移動が固定されてしまい,ローラー1を装着する際に,ラッチアームが意味をなさないこととなるから,引用発明の回転ロッド17を,あえて,回転ロッド17のツバ12に対して複雑な構成であるラッチアームを有するプラグに置き換える動機付けはないと判断されている。
しかし,甲1文献には,ロッド本体21は,支持軸16の外径よりも大きい内径を有する中空体であり,支持軸16は回転ロッド17の内径より小径の外径からなることが記載されている(3頁左上欄17行~右上欄9行,第3図)から,回転ロッド17と支持軸16との間には隙間が存在する。
したがって,回転ロッド17をプラグ220に置き換える際に,当該隙間を維持すれば,ラッチアームが内方に移動するだけの隙間が得られるのであるから,ラッチアームが固定されることはなく,
ローラー1を着脱可能にすることが可能である。
また,仮に,ラッチアームが固定されたとしても,ローラー1は,軟質の部材で構成されていることから,ローラー1の着脱は可能である。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
(キ)本件審決においては,引用発明の回転ロッド17のツバ12に,甲2記載事項の突起205を含むラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を採用すると,ラッチアーム204の弾性はローラー1よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要があると判断されている。
しかし,原告主張引用発明の回転ロッド17のツバ12が,
弾性変形しない構成
であったとしても,ローラー1を取り付けることができることから,ラッチアーム204がどのような硬さであったとしても,ローラー1をプラグ220に取り付けることができる。
甲1文献においては,ローラー1が変形してツバ12を乗り越えて,ローラー1が回転ロッド17に取り付けられるのであるから,同じく,ラッチアーム204が硬く構成されていたとしても,ローラー1が変形することで,ラッチアーム204を乗り越えて,ローラー1がプラグ220に取り付けられ,着脱可能にするという目的が達成される。
したがって,ラッチアーム204の弾性がローラー1よりも柔らかく(変形しやすく)する必要があるという点に根拠がない。
プラグ220は樹脂成形品であり,ローラー1はシリコーンなどの弾性材料であるから,技術常識としては,プラグ220のラッチアーム204がローラー1より硬い素材であることは明らかである。
(ク)本件審決においては,引用発明のローラー1は,それ自体が弾性変形可能であり,その弾性は,ローラー1の表面に形成された吸盤用凹部3が素肌に吸着する程度に柔らかいものであるが,これよりもさらに柔らかい(変形しやすい)ラッチアーム204を引用発明に設けても,ロックピン240が挿入される前においては,
ラッチアーム204は簡単に弾性変形し,
又はローラー1自身の段差部
(突
起205に係止とする部分)も弾性変形して,ローラー1は容易に突起205を乗り越えて回転ロッド17から抜けやすくなるから,引用発明の回転ロッド17に突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を設けても,ロックピン240が挿入される前においては係止という機能を果たさないおそれがあり,したがって,係止という機能を果たさないおそれがある構成を当業者が採用することはありえず,阻害要因が存在すると判断されている。
しかし,前記(キ)のとおり,ラッチアーム204が,ローラー1よりも柔らかくなければならないということはないのであるから,ラッチアーム204が柔らかいことを前提として,ローラー1が抜けやすいという判断を行うことは誤りである。仮に,ラッチアーム204に柔らかい材料を用いたとしても,甲1文献では,ツバ12を用いなくても,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けることができるとされており,プラグ220においても,回転ロッド17と同じく,ラッチアーム204の先端側に円筒状の部分が存在するのであるから,当該円筒状の部分とローラー1との間の摩擦によって,ローラー1が通常の使用では抜けないように構成することができる。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
(ケ)本件審決においては,軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持する際に,回転体の内部に段差部を設けるとともに,軸受け部材には当該段差部に係止する係合爪を用いる構成は,甲2文献には示されていないと認定されている。
しかし,甲2文献の回転体であるモジュール140には,段差部が設けられており,プラグ220には,係止爪に相当するラッチアーム204が存在する。プラグ220が軸に対して回転可能であるか否かは,原告主張引用発明の回転ロッド17へのプラグ220の適用を議論するに当たり問題とならない。したがって,本件審決の上記認定は誤りである。
(コ)本件審決においては,回転ロッド17のツバ12に甲2文献のラッチアームを適用することができたとしても,さらに鍔を甲2文献から適用した上で,ローラー1側にラッチアームと鍔の間との間の段差部を形成するような構成に変更する必要があるから,そのような構成に変更することにより,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者といえども容易なことではないと判断されている。
しかし,回転ロッド17をプラグ220に置き換える際に,ラッチアーム204に対応するように,係合孔6の大きさを調整する程度のことは設計事項にすぎず,これにより,フランジ201とラッチアーム4との間に位置する段差部が,ローラー1の内周に存在することになるのであるから,このような構造とすることは,当業者にとって何ら困難なものではない。
(5)相違点1について
被告は,甲3文献のタンピングネジ36にはねじ頭部が存在するため,引用発明の支持金具15に適用すると,支持軸16の径をねじ頭部より大きくしなければならないことを理由に,引用発明への適用の動機付けが存在しないと主張する。しかし,甲3文献には,

基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器。が開示されており,

引用発明
においても,支持軸がハンドルから抜けないようにすることは内在的課題といえるから,当該構成を,引用発明に適用して,相違点1における本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
したがって,
本件審決の相違点1に関する容易想到性の判断に誤りは存在しない。2
取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)

本件発明2は,本件発明1の軸受け部材が合成樹脂製であることを特定するものであるから,本件発明2と引用発明との一致点及び相違点は,本件発明1と原告主張引用発明との一致点及び相違点と同一である。
そして,原告主張引用発明の回転ロッド17を原告主張甲2記載事項のプラグ220に置き換えた場合,プラグ220が合成樹脂性であることから(甲2文献の段落【0151】,本件発明2は,本件発明1と同一の理由により,進歩性を欠く発)
明である。
したがって,本件審決の本件発明2の進歩性についての判断も誤りである。第4
1
被告の主張
取消事由1について

(1)本件発明について
原告は,本件発明について,回転体が軸受け部材から着脱可能であるものとして認定すべきであると主張するが,特許請求の範囲の記載に基づいて本件発明を認定すべきであり,そうすると,回転体が軸受け部材から着脱可能であることを認定する必要はない。本件審決の本件発明の認定に誤りはない。
(2)原告主張引用発明について
原告は,甲1文献に記載された発明について,
回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための取り付け手段の一例であり,ツバ12を突き出しており,ツバ12の先端側は円筒状でありとの構成を含めて認定すべきであると主張するが,そのように認定する理由はなく,甲1文献には引用発明が記載されているとした本件審決の認定に誤りはない。
(3)相違点2の容易想到性について

原告は,
甲2文献に記載された事項について,プラグ200」
ではなく,「プラグ220に関する技術的事項が用いられるとした上で,モジュール140が着脱可能であること,及びラッチアーム204の先端側に円筒部分を有していることを含めて認定すべき旨主張するが,そのように認定する理由はなく,甲2文献には甲2記載事項が記載されているとした本件審決の認定に誤りはない。イ
原告は,引用発明の回転ロッド17と甲2記載事項のプラグ200の両
部材の共通性を踏まえて,これらの置き換えが容易であるか否かの判断を行わなければならないところ,甲2記載事項のプラグ200内部にロックピン240が挿入された構造が,引用発明の回転ロッド17と支持軸16の関係と同じであると主張するが,関係が同じという漠然とした理由のみをもって,甲2記載事項のロックピン240が本件発明1の支持軸に相当するとの主張は短絡的であり,論理に飛躍がある。

原告は,①プラグ200はモジュール140を着脱可能に取り付けるた
めの手段としても機能しているから,プラグ200それ自体が二つのモジュール140を固定するものとして機能しているからといって,回転ロッド17をプラグ200に置換する動機付けが存在しないことの理由とはならない,②引用発明の回転ロッド17はローラー1を回転かつ着脱可能に取り付ける部材であり,プラグ200もモジュール140を回転かつ着脱可能に取り付ける部材であるから,両者は用途や技術的意義が共通し,置換の動機付けが存在するなどと主張する。しかし,原告の上記主張は,甲2記載事項として認定されていない着脱可能を構成として挙げ,かつ動機付けの理由とする点で失当である。
また,プラグ200はモジュール140を回転かつ着脱可能に取り付けるとしても,それはロックピン240を挿入していない状態であり,ロックピン240を挿入した状態ではプラグ200のラッチアーム204の突起205がモジュール140の開口のラッチ凹部からの離脱を防止するため,モジュール140は着脱可能ではない。このため,甲2記載事項のプラグ200は,軸と回転体との間に介在することで,回転体を非貫通状態で軸に対して回転自在に支持する軸受け部材として機能するものではないから,同プラグ200を,引用発明における支持軸16とローラー1との間に配置され,軸受け部材として機能する回転ロッド17に置換する動機付けはない。
さらに,引用発明では,ローラー1が弾性材料からなるため,これを回転ロッド17のツバ12に係止する際にはローラー1を変形させればよく,ツバ12が変形する必要がないのに対して,甲2記載事項では,モジュール140は変形しないため,プラグ200のラッチアーム204を変形可能としたものである。弾性変形可能なローラー1に係止する回転ロッド17の係止構成として,弾性変形可能な構成(甲2文献のラッチアーム204)を採用する技術的理由はない。エ
原告は,甲1文献には,ロッド本体21は支持軸16の外径よりも大き
い内径を有する中空体であることが記載されているから,回転ロッド17と支持軸16との間には隙間が存在し,置換の際にその隙間を維持すればラッチアーム204が内方に移動するだけの隙間が得られ,ラッチアーム204が固定されることなくローラー1を着脱可能とすることができると主張する。
しかし,原告の主張する上記の隙間は審決認定及び原告主張のいずれの引用発明としても認定されていない構成であり,また,同隙間が甲2記載事項のプラグ200を適用した場合にラッチアーム204を径方向に移動させてローラー1を着脱可能であるとの記載も甲1文献にはない。
仮に,引用発明の回転ロッド17と支持軸16との間に隙間があり,その隙間が甲2記載事項のプラグ200を適用して支持軸16に挿入した状態でラッチアーム204が径方向内方に移動可能な程度であれば,ラッチアーム204の突起205はローラー1の離脱防止として機能しなくなるのであるから,ラッチアーム204の突起205が意味のないものとなってしまい,そのような構成を採用する動機付けはない。
また,原告は,ラッチアーム204が固定されても,ローラー1は軟質部材で構成されていることからローラー1の着脱は可能である旨主張する。しかし,プラグ200のラッチアーム204が固定されても,ローラー1の着脱が可能なのであれば,そもそもプラグ200に弾性的なラッチアーム204を適用する必要すらなくなり,甲2記載事項を適用する動機付けは存在しない。プラグ200のラッチアーム204が固定された場合,同ラッチアーム204は,相違点2に係る本件発明1の弾性変形可能な係止爪に相当しないこととなるため,ラッチアーム204を組み合わせても,相違点2は解消しない。

原告は,ラッチアーム204の弾性をローラー1よりも柔らかくしなけ
ればならないとの本件審決の判断に誤りがあると主張する。
しかし,甲2記載事項の突起205を含むラッチアーム204を弾性変形可能とした構成の技術的な意義は,係止対象物(モジュール140)への取り付け時の干渉防止,すなわち,係止対象物と接触した場合に,ラッチアーム204が積極的に変形して干渉を防止するためである。
そして,ラッチアーム204がローラー1より硬い(変形しにくい)場合,すなわち,ラッチアーム204とローラー1とが接触した場合にローラー1が変形する場合には,ラッチアーム204は変形しなくともローラー1に取り付けることができるため,ラッチアーム204を弾性変形可能とする必要はなく,そもそも組み合わせの動機付けがないこととなる。
したがって,引用発明に,あえて弾性的なラッチアーム204を適用する場合を仮定すると,それは引用発明のローラー1に対してラッチアーム204が変形する(柔らかい)場合である。

原告は,ラッチアーム204先端の円筒状の部分とローラー1との摩擦
によりローラー1が抜けないように構成することができると主張する。しかし,ラッチアーム204が着脱可能であること,プラグ220の円筒状の部分は,甲2記載事項として認定されるものではないから,原告の上記主張は,甲2記載事項に基づかない主張であり,失当である。
また,原告の上記主張によると,引用発明において回転ロッド17にローラー1係止用の構成(ツバ12等)がなくてもローラー1が係止可能なのであるから,甲2記載事項のプラグ200を適用するに当たっても係止用の構成は不要となり,突起205を有するラッチアーム204それ自体を採用する動機付けがないこととなる。

原告は,甲2文献のモジュール140は段差部があり,プラグ220に
は係止爪に相当するラッチアーム204があり,プラグ220が軸に対して回転可能か否かは,引用発明の回転ロッド17へのプラグ220の適用を議論するに当たり問題とならないと主張する。
しかし,甲2文献のロックピン240が挿入されたプラグ200は,軸受け部材として機能しないから,軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持するものではない。

原告は,回転ロッド17をプラグ200に置換する際に,ラッチアーム
204に対応するよう係合孔6の大きさを調整する程度のことは設計事項にすぎないと主張するが,本件審決は,ラッチアーム204に対応するよう係合孔6の大きさを調整することが困難と判断しているのではない。
(4)相違点1の容易想到性について
甲3文献において支持軸とされるタッピングねじ36は,その名のとおりねじであり,甲3文献の図2に図示されているように,先端にねじの頭部(拡径した扁平な部分)
,その下に円筒部(ねじ溝が切られていない部分)
,さらにその下にね
じ部(ネジ溝が切られた部分)を有する構造である。
このようなタッピングねじ36は,先端に拡径したねじ頭部があるため,これを引用発明の支持金具15に適用すると,先端の拡径部分により支持軸16と結合するためには,支持軸16の径をねじ頭部より大きくしなければならない。そうすると,支持軸16が必要以上に大きくなってしまうことは明らかであり,そのような構成を引用発明に適用する動機付けはない。
したがって,引用発明に甲3文献に開示された事項を適用して,相違点1における本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことであるとの本件審決の判断は誤りである。
2
取消事由2について

本件発明2は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに,発明特定事項を付加した発明であるから,本件発明2も当業者が容易に発明することができたものではない。
第5
1
当裁判所の判断
本件発明
(1)本件明細書等には,以下の記載がある(甲12)


【技術分野】
【0001】この発明は,回転体を身体上で転動させることにより,使用者に対して美肌効果等の美容的作用を付与するようにした美容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】従来,この種の美容器としては,例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成の美容器においては,ハンドルの先端に二叉部が設けられている。二叉部の先端には回転体が支持されている。そして,各回転体を身体の皮膚に押し付けて回転させることにより,身体に対して美肌効果等の美容的作用が付与されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-1425
09号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】前記特許文献1にお
いては,回転体を支持するための軸等の支持構造は開示されていない。この発明の目的は,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができる美容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】上記の目的を達成するために,この発
明は,基端において抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器である。
【0006】また,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する。【発明の効果】
【0008】以上のように,この発明によれば,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができることができるという効果を発揮する。【発明を実施するための形態】
・・・
【0015】図4に示すように,前記各支持
軸20の突出端部には,合成樹脂よりなる円筒状の軸受け部材25が嵌合されて,ストップリング26により抜け止め固定されている。この軸受け部材25の表裏両面を含む外側前面には金属メッキが施され,軸受け部材25と支持軸20との間の導電が確保されている。また,金属メッキに代えて,軸受け部材25を導電性樹脂によって構成することにより前記導電を確保してもよい。図4及び図8に示すように,各軸受け部材25の外周には,一対の弾性変形可能な係止爪25aが突設されている。各支持軸20上の軸受け部材25には,ほぼ球体状をなす一対の回転体27が回転可能に嵌挿支持されている。そして,前記各回転体27は,合成樹脂よりなる芯材28と,その芯材28の先端内周に嵌着された合成樹脂よりなるキャップ材29と,芯材28及びキャップ材29の外周に被覆成形された合成樹脂よりなる外被材30とより構成されている。外被材30の外表面には,導電部としての導電金属メッキが施され,軸受け部材25との間の導電が確保されている。芯材28の内周には,前記軸受け部材25の係止爪25aに係合可能な段差部28aが形成されている。そして,回転体27が軸受け部材25に嵌挿された状態で,係止爪25aが段差部28aに係合され,回転体27が軸受け部材25に対して抜け止め保持されている。
【0019】従って,この実施形態によれば,以下のような効果を得ることができる。
(1)この美容器においては,ハンドル12の先端部に交差軸線L1,L2上に位置する一対の支持軸20が設けられている。各支持軸20の先端側には回転体27が回転可能に支持され,それらの回転体27により身体に対して美容的作用が付与されるようになっている。
・・・
【図1】
【図4】

【図8】

(2)前記第2の2の特許請求の範囲の記載及び上記(1)の本件明細書等の記載によると,本件発明の要旨は,前記第2の2の特許請求の範囲のとおりであると認められる。
なお,この点に関する原告の主張(前記第3の1(1))については,後記3(2)ウ(イ)dのとおりである。
2
甲1文献
(1)甲1文献には,以下のとおりの記載がある(甲1)

【特許請求の範囲】
(1)複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする素肌用ローラー。(5)複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転かつ着脱自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする素肌用ローラー。【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕本発明は素肌の洗浄,マッサージ等に使用する素肌用ローラーに関するものである。
〔発明が解決しようとする課題〕従って,現在化粧料の作用効果に頼られている素肌美容の要望に答えるべく,本願発明に於いては,マツサージ効果に加えて,化粧料と併用使用により素肌に対する積極的な洗浄並びに活性作用を促すとともに小ジワのばし等の効果が得られ,さらに使用感の好適なる器具としての素肌用ローラーの提供を目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕本発明素肌用ローラーは,複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする,また,かかる構成に於けるローラーの取り付け構造を回転かつ着脱自在に構成したことを特徴とするのが,
その第2発明であり,
さらに,
ジメチルポリシロキサン,その他のシリコーンから成るローラー本体の外周面に複数の吸盤用凹部を配設した左右一対のローラーとこの左右一対のローラーを回転自在に支持する左右一対の回転軸を備える把持部とから構成したことを特徴とする第3発明に加えて,かかる第3発明の構成に於ける一対のローラーを把持部の左右一対の回転軸に対して回転かつ着脱自在に支持することにより構成したことを特徴とする第4発明とから成るものである。
〔作用〕本願発明の素肌用ローラーの構成に備える複数の吸盤用凹部が,かかる吸盤用凹部を備えるローラーの回転に伴って素肌に吸着しつつ取れにくかった古い角質や,汚れを浮き上がらせ,素肌の洗浄作用を発揮し,同時に,素肌に適度な刺激を与えて血液循環を促し,素肌に血液中の栄養分やエネルギーを行き渡らせて,新陳代謝作用を発揮する。
〔実施例〕
・・・
(第1実施例)
・・・
第1図において1は楕円球状のローラー本体2の外周面に複数の半球状の吸盤用凹部3を配設することにより形成したローラーで,このローラー1は把持部10の回転軸11に回転かつ着脱自在に装着されている。
また,第2図に示すようにローラー1のローラー本体2は側部中央部に回転軸11の挿入口4を開口するとともにローラー本体2の中心部に,前記挿入口4に連通する回転軸11の装入孔5を設けることによりシリコーンであるジメチルポリシロキサンにて一体に形成されている。
そして,前記回転軸11の装入孔5には回転軸11のツバ12を係合する環状の係合孔6を連通して設けてある。
さらに,前記把持部10は平板状の把持具13の先端部14に支持金具15を突設し,当該支持金具15に回転軸11を設けることにより構成されている。そして,前記回転軸11は第3図に示すように支持金具15に支持軸16を取付けるとともにこの支持軸16に中空状の回転ロッド17を回転自在に装着することにより形成されている。
また,前記支持軸16は回転ロッド17の内径より小径の外径から成る軸本体18の先端部19に環状の係合溝20を穿設することにより一体に形成されるとともに前記回転ロッド17は,支持軸16の外径より大径の内径を有する中空状のロッド本体21とこのロッド本体21の先端部側に,外周方向間を三等分する位置に3本の長溝23(第3図においては1本の長溝のみを示す)をツバ12を突設した後端部側に向かって穿設することにより3枚の弾性片22を設け,さらに,各弾性片22の先端内周に支持軸16の係合溝20に係合する係合突起24を突設することにより形成されている。
尚,前記係合突起24の突設部分間の内径は支持軸16の外径より小径でかつ係合溝20の外径より若干大径である。
従って,前記回転ロッド17は,ロッド本体21のツバ12側の開口より支持軸16の先端部19を介して支持軸16に装入するとともに各弾性片22の係合突起24を支持軸16の先端部19を,
弾性片22の弾性を利用して乗り越えさせた後,
これを支持軸16の環状の係合溝20に係合することにより支持軸16に対して回転自在に装着することができ,かつその抜脱は,各弾性片22の係合突起24の係合溝20への係合により防止され,当該構成により回転軸11が構成されている。そして,前記構成から成る把持部10の回転軸11をローラー1の挿入口4より装入孔5中に装入し,かつツバ12を装入孔5の係合孔6内に係合することによりローラー1を把持部10に対して回転かつ着脱自在に装着し,素肌用ローラー30を構成することができる。
尚,ローラー1の装入孔5の内径は回転軸11の回転ロッド17の外径より若干小径に形成されているがツバ12の外径は装入孔5の内径より大径であって,前記回転ロッド17の装入時にはツバ12の係合孔6への係合は,ローラーlの弾性を利用して挿入口4を強制的に拡開しつつ装入することができる。
また,上述してきた素肌用ローラー30の構成中,ローラーlはジメチルシロキサンにて一体に形成したが,ジメチルシロキサン以外のシリコーン,例えば一部にジフェニルシロキサンを共重合したりビニルメチルシロキサンを共重合したもの等のシリコーンにより一体に形成するか,その他の弾性を有する合成樹脂,合成ゴム等の弾性材料にて一体に形成することも可能である。
又,前記支持軸16,回転ロッド17の成形材料についてはテフロン樹脂,硬質ポリエチレン等の合成樹脂によりそれぞれ一体に成形することができる。ローラー1の形状については,図示の楕円球状以外に円柱状,円錐状あるいはこれらに近似する形状等により形成することが可能であるとともに外周面に配設した吸盤用凹部3の形状については,図示の半球状以外に,半楕円球状,これらに近似する形状の凹部あるいは断面が多角形状等の任意の形状の凹部により形成して実施することが可能である。
さらに,把持部10の構成についても,回転軸11の前記構成に限定されず,ローラー1を回転自在に支持し得るに足る他の公知の構成を採用しつつ実施できるとともに把持具13には第1図に示す如く,先端部14の中央部に手指の係合用凹部26を設けることに加えて,把持具13の形状を,第5図a,bに示す如く,断面において楕円状の柱状体とするか,あるいは第6図a,bに示す如く,先端部14に至る程,細径にした丸棒状体とする等の構成を以て実施することが可能である。また,把持部10に対してローラー1を回転かつ着脱自在に支持する構成については,図示の構成に限定されず,しかもローラー1は所期作用効果を得るにはこれを回転自在に支持することによっても実施可能である。
すなわち,ローラー1の装入孔5に係合孔6を設けるとともに回転軸11にツバ12を突設する構成に換えて,回転軸11のツバ12を突設せず,かつローラー1の装入孔5の内径を回転軸11の外径と略同一とし,装入孔5に対して回転軸11をローラー1の弾性作用を利用して強制的に装入することによりローラー1を回転軸11に装着するか,あるいはローラー1を回転軸11に対して接着剤等の固着手段によって固着したり,さらには,その他の取り付け手段を介してローラー1を回転軸11に取り付ける等の構成を挙げることができる。
以上の構成から成る素肌用ローラー30を使用する場合には,把持具13を手にて把持した後,身体の素肌部分,例えば顔面にローラー1を回転せしめつつ押圧して使用するものである。
しかして,ローラー1を回転せしめつつ吸盤用凹部3を配設された外周面が素肌に押圧されると各吸盤用凹部3が素肌に吸着しつつ回転することとなり,各吸盤用凹部3が素肌に吸着すると素肌の毛穴につまった皮脂や汚れを引き出したり,あるいは,古い角質や角質間の汚れを浮かせたり,肌表面に付着する汚れを浮かせて除去し易くし,前記ローラー1の使用に先き立って素肌にローションをつけてから使用することにより,洗浄をより効果的に行うことができるとともにローションの素肌への密着性が高まり保湿性がよく,マッサージ効果の向上を計ることができる。また,前記使用を入浴中等に行うことにより,血管を刺激して,新陳代謝の働きをよくし,血行を促し,皮フ細胞に栄養を与えるとともに皮脂腺の働きをスムーズにし,皮脂腺の状態をコントロールする等の効果が得られ,さらには素肌に対するマッサージにより,単なるマッサージ効果に加えて小ジワのばし効果等を得ることができるものである。
特に,ローラー1をジメチルポリシロキサン,その他のシリコーンにより形成した場合には,耐薬品性,耐水性,耐久性に冨むとともに素肌に対して極めて怒触が良く,前記作用効果を,他の弾性材料に比較して効果的に得られるものである。・・・
(第2実施例)
・・・
第2実施例の素肌用ローラー40は,第7,8図に示される通り,把持部100に対して左右一対のローラー101,102をそれぞれ回転かつ着脱自在に支持した構成と把持部100の支持金具150に対して連結部151を介して左右一対の回転軸110,111を設けるとともに前記左右一対のローラー101,102のローラー本体103,104の形状をそれぞれ円錐状に形成した構成を前記第1実施例と異にするものである。
しかして,把持部100の支持金具150は1本のピンを把持具13の先端部14に突設して成り,連結部151は円盤状の板体152から成りかつこの板体152の左右両側部に左右一対の回転軸110,111を構成する支持軸160,161を突設して一体に形成し,さらに前記連結部151の板体152を支持金具150の先端部に一体的に固着することにより構成されている。
また,左右一対のローラー101,102のローラー本体103,104の外周面には複数の半球状の吸盤用凹部3を配設するとともにローラー本体103,104の大径部側には,中央部に回転軸110,111の挿入口4を開口するとともにローラー本体103,104の中心部に,前記挿入口4に連通する回転軸110,111の装入孔5を設けることによりジメチルポリシロキサンにて一体に形成され,かつ前記回転軸110,111の装入孔5には回転軸11のツバ12を係合する環状の係合孔6を連通して設けてある構成,並びに前記回転軸110,111を構成する支持軸160,161およびこれに回転自在に装着する回転ロッド17の構成については第1実施例と同様の構成から成るもので,同一構成部分については同一番号を付して,その構成の説明を省略する。
そこで,第7図示の各部分によって素肌用ローラー40を組み立てる場合には,回転ロッド17を第1実施例と同様の方法により,把持部100の支持軸160,161に回転自在に装着して,回転軸110,111を構成した後,かかる回転軸110,111に対して左右ローラ101,102を第1実施例と同様の方法により挿入口4より装入孔5に装入するとともにツバ12を係合孔6に係合して回転かつ着脱自在に装着することにより第8図示の素肌用ローラー40を構成することができる。(2)上記(1)で認定した甲1文献の記載によると,
甲1文献には,
引用発明が記
載されていることが認められる。
なお,この点に関する原告の主張(前記第3の1(2))については,後記3(2)ウ(イ)dのとおりである。
3
取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
(1)本件発明1と引用発明を比較すると,以下のとおりの一致点及び相違点があると認められる。

一致点

基端においてハンドルに取り付けられた支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,前記回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は,基端側のみ穴を有し,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,前記軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で前記支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは,突出部が突き出ており,前記回転体は内周に前記突出部に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記突出部の基端側に係止されることを特徴とする美容器である点イ
相違点
(ア)相違点1

基端においてハンドルに固定される支持軸の
固定
について,
本件発明1では,
抜け止め固定されるのに対して,引用発明では,突設(固定)されているものの,抜け止めされているかは特定されていない点
(イ)相違点2
本件発明1では,
軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の基端側に鍔部を有しており,同係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置するのに対して,引用発明では,回転ロッド17(軸受け部材)は,係止手段としてのツバ12は備えるものの,
ツバ12が弾性変形可能か否かは不明であって,
かつ,
ツバ12は
先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有する係止爪ではなく,回転ロッド17(軸受け部材)は係止爪の基端側の鍔部も有さず,
回転体は内周に前記係止爪に係合可能ではなく,
係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する段差部も備えない点
(2)相違点2の容易想到性

甲2文献には,以下のとおりの記載がある(甲2の1・2)


【0018】本発明によるエクササイズ器具は,任意の好適なタイプのエクササイズ器具として構成することができる。例えば,器具は,例えばマッサージ器具等の筋骨格処置器具として構成することができ,
・・・
【0020】エクササイズ器具が構成される器具の特定のタイプに関係なく,器具は,それらの特定の必要性及び要件に合うようにユーザによって構成することができる。例えば,エクササイズ器具がマッサージ器具として構成される場合,マッサージ器具は,様々な人々に合うように,又は,人の身体の特定の部分をマッサージするために使用することができるように,複数の様々な方法で構成することができる。
【0068】
【図12】
自身の上部胸椎並びに自身の上部僧帽筋及び肩甲挙筋を同時
にマッサージするように,本発明の第1の好ましい実施形態によるエクササイズ器具を使用する人を示す図である。
【0116】図17を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態によるエクササイズ器具のロッドモジュール100が実質的に円筒形の形状である。【0119】複数の等間隔に離間した平行な円形開口106が,ロッドモジュール100を通って横方向に延びる。開口106は,モジュール100を通って延びる開口105に対して垂直である。また,開口106は開口105に交差する。【0123】図18は,本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具の大きい球状のボールモジュール120を示している。
【0124】大きいボールモジュール120は,およそ90mmの直径を有し,およそソフトボールのサイズである。
【0128】本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具の小さい球状のボールモジュール130が,図19及び図20に示されている。【0129】小さいボールモジュール130は,およそ65mmの直径を有し,およそゴルフボールのサイズである。
【0133】本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具の中間の球状のボールモジュール140が,図21及び図22に示されている。【0134】中間のボールモジュール140は,およそ65mmの直径を有し,およそテニスボールサイズである。
【0151】図29は,モジュール100,120,130,140のうちの2つを任意の組み合わせで一緒に固定するために使用することができるプラグ200を示している。プラグ200は,プラスチックから製造され,2つの円筒部分202間に位置付けられる円形のフランジ201を含む。それぞれのより幅狭の円筒部分203が,円筒部分202のそれぞれから延びる。より幅狭の部分203のそれぞれは,1対の直径方向に対向する弾性的なラッチアーム204を含む。各ラッチアーム204は,アーム204の端に位置付けられ,プラグ200から外方に延びる突起205を含む。円形開口206が,プラグ200の一端からプラグ200の他端まで延びる。
【0152】2つのモジュール100,120,130,140を,プラグ200の各端を各モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって,プラグ200と一緒に着脱可能に固定することができる。プラグ200が開口に挿入されると,プラグ200のより幅狭の部分203は,開口のより幅狭の部分によって受け入れられ,プラグ200のより幅広の部分202は,開口のより幅広の部分によって受け入れられる。
【0153】プラグ200が開口に挿入されると,開口のより幅狭の部分が各ラッチアーム204の突起205に対して押圧されることで,弾性的なラッチアーム204が互いに向かって移動する。プラグ200が開口に完全に挿入されると,突起205は,ラッチアーム204がそれらの元の位置に跳ねてラッチ凹部と噛み合うように開口のラッチ凹部によって受け入れられる。ラッチアーム204及びラッチ凹部はしたがって,プラグ200がモジュールの開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能である。
【0155】ラッチアーム204及びラッチ凹部は,プラグ200が開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能であるが,プラグ200は,それにもかかわらず,ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。
・・・
【0160】
図31は,
プラグ200と同様のプラグ220を示している。
便宜上,
プラグ200,220の同様の特徴は,同様の参照符号を用いて言及されている。【0161】プラグ220は,そのより幅狭の円筒部分203がプラグ200のより幅狭の円筒部分よりも長いという点でプラグ200とは異なる。また,プラグ220の円筒部分203は複数の溝204をそれぞれ含む。
【0162】プラグ200の円筒部分203とは異なり,プラグ220の円筒部分203は,モジュール100,120,130,140のうちの1つの開口に挿入されるときに,その開口に交差するモジュールの他の開口を塞ぐことが可能であるように十分に長い。さらに,プラグ220の付加的な長さは,プラグ200と比較して,一部を形成する器具を補強することがより良く可能であることを意味する。【0165】図33を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具のロックピン240が,細長い円筒シャフト241を含む。シャフト241は,
第1の部分242,
第2の部分243及び第3の部分244を含む。
実質的に平坦なプラスチックヘッド245が,シャフト241の第3の部分244とオーバーモールドされる。
【0166】ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。
【0168】ロックピン240のシャフト241が,モジュール100,120,130,
140のうちの1つの開口にそれ自体が挿入されたプラグ154,200,
210,220又は230に挿入されると,シャフト241は,プラグのラッチアームがモジュールの開口のラッチ凹部と離脱することを防止することが可能である。ロックピン240は,ラッチアームがラッチ凹部と離脱することを防止することによって,プラグが開口から意図せず取り外されることを防止するか又は少なくとも更に阻止することが可能である。ロックピンはしたがって,プラグがモジュールの開口から意図せず引き出されることにつながり得るラッチ凹部からのラッチアームの意図しない離脱のリスクを高める可能性がある比較的高い捩り荷重に器具が晒される使用に特に好適である。
【0169】図34は,ロックピン240のシャフト241が,開口141の一端を通して中間のボールモジュール140に,及び,モジュール140に対して固定されるようにそれ自体が開口141の他端に挿入されているプラグ200の開口206に挿入されているときのロックピン240を示している。
【0170】開口141によって受け入れられるプラグ200のラッチアーム204の突起205は,開口141内に位置付けられるラッチ凹部250によってそれぞれ受け入れられるため,プラグ200はそれによって,開口141から引き出されることが阻止される。ロックピン240のシャフト241は,ラッチアーム204が互いに向かって押されて突起205をラッチ凹部250から取り外すことを防止する。ラッチアーム204は,ロックピン240がプラグ200から取り外されると,上述したように専ら移動することができる。
【図12】

【図17】
【図18】

【図19】
【図21】

【図29】
【図31】

【図33】

【図34】


上記アで認定した甲2文献の記載からすると,甲2文献には,以下のとおりの技術が記載されているものと認められる。
プラグ200,220を介して,モジュール140を回転可能に支持するマッサージ器具であって,プラグ200,220は,外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を有しているとともに,ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有しており,突起205は,先端側に向かうほどプラグ200,220におけるモジュール140の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,モジュール140は,内周に,ラッチアーム204の突起205の基端側に係止される段差部を有し,段差部は,突起205の基端側に係止されるとともに,突起205とフランジ201との間に配置されるマッサージ器具なお,この点に関する原告の主張(前記第3の1(4)ア)のうち,モジュール140がプラグ200,220に着脱可能であることを認定すべきである旨の主張については,後記ウ(イ)dのとおりである。

引用発明に甲2文献に記載された技術を適用することの容易想到性(ア)引用発明の内容は前記第2の3(1)のとおりであり,回転ロッド17
は,引用発明において,軸受け部材として機能しているものと認められる。一方,前記アのとおり,甲2文献の段落【0151】【0152】には,プラグ,
200は,モジュール100,120,130,140のうちの二つを任意の組合せで固定するために使用できること,プラグ200の各端を各モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって,これらをプラグ200と一緒に固定することができることが記載されており,段落【0160】には,プラグ220はプラグ200と同様のものであると記載されている。
これらの記載からすると,
プラグ200,
220は,二つのモジュール100,120,130,140を繋げて固定するための部材であることが認められる。
また,甲2文献の段落【0168】には,ロックピン240のシャフト241がモジュール140に挿入されたプラグ200,220に挿入されると,シャフト241は,プラグ200,220のラッチアーム204がモジュール140の開口のラッチ凹部と離脱することを防止するから,ロックピン240は,ラッチアーム204がラッチ凹部と離脱する危険の高い場合の使用に特に好適であることが記載されており,段落【0170】には,シャフト241は,突起をラッチ凹部から取り外すことを防止し,ラッチアーム204は,ロックピン240がプラグ200から取り外されると,移動することができることが記載されているところ,プラグ220についても同様であると解される。これらの記載からすると,ロックピン240は,プラグ200,220がモジュール140から離脱することを防止することを目的として使用されるものであることが認められる。
したがって,プラグ200,220は,モジュール140を繋げて固定するための部材として使用されるものであり,ロックピン240とモジュール140との間に介在し,モジュール140がロックピン240に回転可能に支持されるための軸受として用いられているということはできない。
以上より,甲2文献に記載されたプラグ200,220を,引用発明における軸受け部材として機能する回転ロッド17と置き換える動機付けはないというべきである。
(イ)原告の主張について
a
原告は,甲1文献において,回転ロッド17は,ローラー1を回転
かつ着脱可能に取り付けるための手段の一例として用いられており,その他の着脱可能な取り付け手段を用いてもよいとされているのであるから,引用発明の回転ロッド17を,原告主張甲2記載事項におけるプラグ220に置き換えてもよいとの動機付けは存在すると主張する。
しかし,回転ロッド17について,他の軸受け部材に置換することが可能であるとしても,前記イのとおり,甲2文献に記載されたプラグ220は軸受け部材ではないから,回転ロッド17を甲2文献記載のプラグ220に置換し,同プラグの突起及びフランジの構造を採用する動機付けはないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。
b
原告は,甲2文献の段落【0166】には,
ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。と記載されており,甲2文献のロックピン240の第1部
分242の直径は,開口の直径よりも僅かに小さいとされていることから,モジュール100に取付けられたモジュール130及び140は,ロックピン240の回りを回転できる構造となっており,したがって,シャフト241を中心として,プラグ200,220及びモジュール130は回転することができ,甲2文献におけるプラグ220とロックピン240との関係は,甲1文献における回転ロッド17と支持軸16との関係と同じであると主張する。
しかし,甲2文献の段落【0166】は,シャフトの直径は,モジュールとプラグを通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,それらの開口を通して挿入されることが可能であると記載しているにすぎず,プラグが軸受け部材として機能することを記載しているのではない。前記(ア)のとおり,甲2文献のプラグ200,220は,二つのモジュールを繋げて固定する部材であって,軸受けとして用いられているものではない。
したがって,甲2文献のプラグは,軸受け部材として機能するものではなく,これを引用発明の回転ロッド17と置換することはできない。
c
原告は,①プラグ220は,二つのモジュールを固定する機能に加
えて,モジュール140を回転かつ着脱可能に取り付けるための手段としても機能しているから,回転ロッド17をプラグ220に置換することの動機付けは存在する,②円筒状に形成されている回転ロッド17をプラグ220に置き換えたとしても,プラグ220の円筒部分とローラー1との間に摩擦が生じることなどから,プラグ220からローラー1が意図せずに抜け落ちてしまうことはなく,したがって,
回転ロッド17をプラグ220に置き換えることにつき,阻害要因は存在しないと主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,プラグ200,220は,軸受け部材としての機能を有していないのであるから,これを,引用発明において軸受け部材として機能する回転ロッド17と置き換える動機付けはなく,このことは,回転ロッド17とプラグ200,220が,ローラー1やモジュール140を回転可能かつ着脱可能に取り付けるための部材であるという点で共通し,また,回転ロッド17をプラグ220に置き換えても,プラグ220からローラー1が意図せずに抜け落ちてしまうことはないとしても,左右されないというべきである。
したがって,原告の上記主張はいずれも理由がない。
d
なお,原告は,本件発明,引用発明及び甲2文献に記載された事項と
して,回転体,ローラー1及びモジュール140が,それぞれ軸受け部材,回転ロッド17及びプラグ220と着脱可能であることを認定すべきであると主張する。しかし,前記cのとおり,引用発明の回転ロッド17を甲2文献に記載された事項のプラグ200,220に置換することの動機付けは認められず,このことは,回転体,ローラー1及びモジュール140が,それぞれ軸受け部材,回転ロッド17及びプラグ220と着脱可能であることに左右されないのであり,上記各部材が着脱可能であるか否かは,上記の動機付けの有無の判断においては意味を有しないというべきであるから,上記各部材が着脱可能であることを本件発明,引用発明及び甲2文献に記載された事項として認定する理由はないというべきである。また,原告は,引用発明について,
回転ロッド17は,ローラー1を回転かつ着脱可能に取り付けるための取り付け手段の一例であり,ツバ12を突き出しており,ツバ12の先端側は円筒状であることを認定すべきであると主張するが,このうち,着脱可能の点を認定する必要がないことは,上記のとおりであり,その余の点についても,これらが本件発明1についての引用発明に基づく相違点の判断を左右するものでないことは,前記a及びcで判示したところから明らかであるから,これらについても引用発明の内容として認定する理由はない。
(3)以上より,取消事由1は理由がない。
4
取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)について
本件発明2は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに発明特定事項を付加した発明であるから,本件発明1と同様の理由により,当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって,取消事由2は理由がない。
第6

結論

よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野熊谷信
裁判官
大輔
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