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殺人、死体遺棄
事件番号令和1(わ)1017
事件名殺人,死体遺棄
裁判年月日令和元年12月18日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  刑事第5部
裁判日:西暦2019-12-18
情報公開日2020-06-04 22:30:35
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令和元年

第1017号

殺人死体遺棄被告事件
主文
被告人を懲役14年に処する
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
押収してあるダンベルシャフト1本(令和元年押第21号の1)を没収する。理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,平成31年4月4日午前9時15分頃,名古屋市a区b町c丁目d番地
株式会社A不動産事務所(以下本件事務所という。)1階応接室(以下本件応接室という。)において,B(当時54歳)に対し,殺意をもって,その頭部等をダンベルシャフト
(長さ約40.
2センチメートル,
重さ約1.
8キログラム,
令和元年押第21号の1)で複数回殴り,よって,その頃,同所において,同人を外傷性脳障害により死亡させて殺害した。
第2

被告人は,平成31年4月4日午前9時30分頃,本件応接室において,前記
Bの死体に玄関マットをかぶせ,同月8日頃,同死体を本件応接室から本件事務所1階ガレージ内に移動させた上,同所において,同死体を緩衝材等で覆うなどして隠匿し,もって死体を遺棄した。
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為

刑法199条

判示第2の所為

刑法190条

刑種の選択

判示第1の罪について有期懲役刑を選択

併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑
に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条

没収

刑法19条1項2号,2項本文(判示第1の殺人の用に供した
物で被告人以外の者に属しない)
訴訟費用の処理

刑訴法181条1項ただし書(不負担)

(量刑の理由)
被告人は,本件の約1年前から,被害者から持ちかけられた不動産取引案件にもうけを期待して関わるようになり,知人らから資金を調達するなどして,被害者に対して,報酬等の名目で合計数千万円を前払いするなどしたが,結局,いずれの案件も成約しなかった。そのため,被告人は,これらの案件により利益を上げられなかったばかりか,逆に多額の損失を被ることとなり,
知人らへの億単位の借金の返済に窮することになっ
た。被告人は,被害者と新たな不動産取引案件の話を進めるなどする一方,被害者に対して前払い金の返済を催促するなどしたが,約束の日に被害者から返済を受けられず,知人らへの借金返済のあてが外れた。そればかりか,被告人は,被害者から,本件前日には,新たな案件に絡めて,追加の資金提供の要求までされ,それを断ったことで,被害者との間で言い争いになった。被告人は,本件当日午前9時頃,突然被害者に本件事務所を訪問され,前日と同様の要求をされるなどしたため,被害者との間で言い争いになるなどした。そこで,被告人は,被害者に対する怒りの気持ちなどから,突発的に,本件殺人に及んだ。
本件殺人の態様は,硬くて重い金属製のダンベルシャフトを用いて,被害者の頭部を狙って,手加減せずに,頭蓋骨の一部を打ち抜く骨折等を生じさせるような強い力で一方的に複数回殴打した,というもので,生命に対する危険の高いものである(この点について,被告人は,当公判廷において,被害者の頭部を狙っていない旨供述するが,損傷が被害者の頭部に集中していることなどに鑑みると,信用することができない。)。本件は計画的な犯行ではないものの,上記犯行態様等からすると,殴打回数について3回程度であったという被告人の供述を前提としても,
相応に強い殺意があったと認めら
れる
(この点について,
検察官は,損傷の状態,本件応接室内の血痕の付着状況等から,
被告人が床に転倒した状態の被害者の頭部を複数回殴打したことが認められるなどとして,被告人に強固な殺意があった旨主張する。しかし,解剖医の証言等によっても頭蓋底の骨折等が検察官の主張する態様により生じたと断言できないこと,本件応接室内
の血痕が転倒前に生じた傷から流出して付着した可能性が否定できないことなどからすると,被告人が床に転倒した状態の被害者の頭部を殴打したとは認められないので,検察官が主張するほど強固な殺意があったとまではいえない。他方,弁護人は,被告人の殺意が非常に弱いものであった旨主張するが,前記した,被告人による被害者の頭部への攻撃の強さ,回数等からすると,採用することができない。)。また,尊い人命を奪った結果は,重大であり,突然夫を失い,被告人から慰謝の措置を受けていない被害者の妻が被告人に対する最大限の厳しい処罰を求めるのも当然である。
他方,本件犯行の経緯・動機は冒頭に記載したとおりであり,本件当時,被告人が経済的,
精神的に追い詰められたのは,
被害者の行いが大きく影響しているといえるので,
この点は,一定程度,被告人に有利に考慮する必要がある。もっとも,被害者から持ちかけられた案件に対する被告人の見通しにも甘さがあったこと,
被害者から持ちかけら
れた案件が失敗した後も,被告人が被害者から新たな案件を持ちかけられると,その話に乗ろうとするなどして,被害者との関係を続けていたことなどからすると,この点を考慮するにも限度がある。なお,被告人は,当公判廷において,本件直前,被害者からにらみつけられるなどして,被害者から襲われるのではないかと思い,怒り半分,怖さ半分で本件殺人に及んだ旨供述する。しかし,被告人は,本件当日だけでなく,本件当日以前にも被害者から実際に危害を加えられたことはなかったこと,被告人は被害者と
約1年間,付き合いがあったことなどに鑑みると,この点は,特に酌むべき事情にはならない。
そうすると,その他,被告人が公訴事実を認めて反省の態度を示していること,被告人に前科前歴がないこと,被告人の母親や知人が被告人の更生支援を約束していること,
被告人が被害者に対する債権を行使しない意向を示していることなどの被告人にとって酌むべき事情を最大限考慮しても,被告人の刑事責任は重いというほかなく,同種の殺人1件(単独犯,凶器等あり,知人・友人・勤務先関係,前科なし)の量刑傾向を踏まえても,弁護人の主張するような執行猶予を付することができる事案とはいえず,主文の刑期は免れない
(なお,
弁護人は,
被告人に自首する意思があった旨主張するが,
被告人が本件事務所の捜索差押許可状を提示された際,鍵を所持していたのに,鍵をなくしたなどと弁解したことなどからすると,この点は,特に酌むべき事情とはならない。)。
(検察官清水博之,
同吉川剛史,
同河田夏緒里,
同庭野永基,
私選弁護人
同北折大地各出席)
(求刑

懲役18年,主文同旨の没収)

令和元年12月18日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判長裁判官

板津正
裁判官

西脇
真由子

裁判官

新田浩道志
田稔
(主任)


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