判例検索β > 平成29年(ワ)第689号
国家賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)689
事件名国家賠償請求事件
裁判年月日令和2年2月26日
裁判所名・部熊本地方裁判所  民事3部
裁判日:西暦2020-02-26
情報公開日2020-03-23 15:28:11
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主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由

第1請求
被告は,原告らに対し,それぞれ10万円及びこれに対する平成29年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,
ハンセン病病歴者である原告らが,
昭和27年に熊本県菊池郡
(当時)

で発生した殺人事件(いわゆる菊池事件)に関し,同事件の被告人(以下本件被告人という。)がハンセン病患者であることを理由に裁判所法69条2項に
基づき裁判所以外のハンセン病療養所等の施設内で審理が行われたことなどについて,
ハンセン病患者であることを理由とする差別であり本件被告人の人格権を侵害するものとして憲法14条1項,13条に違反し,裁判の公開原則を定め
た同法37条1項,82条1項にも違反しているほか,本件被告人に無罪を言い渡すべき証拠があり,これらはいずれも刑事訴訟上の再審事由に当たるところ,検察官が再審請求権限を行使しなかったことがハンセン病病歴者に対する被害回復義務を怠ったものとして原告らとの関係で国家賠償法上違法であると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ10万円及びこれに
対する訴状送達の日の翌日である平成29年9月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1前提事実
(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
当事者

原告らは,ハンセン病療養所の入所者又は入所者であった者らである(争いがない。。

菊池事件の概要及び開廷場所の指定

本件被告人は,熊本県菊池郡内の同じ村に居住する住民(以下Aという。方にダイナマイトを投げ込んだとして,

昭和27年6月9日,
殺人未遂
及び火薬類取締法違反の罪により懲役10年の有罪判決を受け,国立療養所菊池恵楓園(以下菊池恵楓園という。
)内の熊本刑務所代用拘置所に収容

されていたところ,上記事件の控訴審が係属中である同月16日,上記拘置所から脱走した。

同年7月7日,上記村の路上でAが全身に切創,刺創を負って死亡しているのが発見され,同月12日,本件被告人が単純逃走及びAに対する殺人の被疑事実により逮捕された。


本件被告人は,同年8月2日,単純逃走罪により熊本地方裁判所に起訴されたところ,同裁判所は,同年10月1日,最高裁判所に対し,本件被告人がハンセン病に罹患していることを理由として,裁判所法69条2項に基づく開廷場所指定の上申をし,最高裁判所は,同月9日,上記事件の開廷場所を菊池恵楓園として,同上申を認可した。


同月30日,菊池恵楓園において第1回公判が行われ,単純逃走罪のみ審理された。
その後,本件被告人は,Aに対する殺人罪により追起訴され,同年12月15日に行われた第2回公判以降は,単純逃走罪及び殺人罪について審理された(以下,併合審理された両事件を併せて菊池事件という。。



熊本地方裁判所は,昭和28年8月29日,本件被告人を死刑に処するとの判決をし,控訴審及び上告審を経て,昭和32年8月23日,上記判決は確定した。
その後,本件被告人は,上記確定判決に対し,三度にわたり再審請求をし
たが,昭和37年9月13日,第3次再審請求が棄却され,同月14日,本件被告人について死刑が執行された。

菊池事件の開廷場所については,最高裁判所が,熊本地方裁判所及び福岡高等裁判所によるハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申を受けて,前記ウのほかに昭和28年6月5日,同年11月21日,同年12月28日にそれぞれ認可し,
第一審及び控訴審の審理はすべて菊池恵楓園又はこれに隣

接する熊本刑務所菊池医療刑務支所(以下菊池医療刑務支所という。)に
おいて行われた。
最高裁判所による開廷場所指定の状況は別表のとおりであるが,このうち,菊池事件に関するものは,別表番号63番,75番,81番及び82番である。
(以上につき,甲1,3,10,34,35)

菊池事件に関する再審請求の要請等
原告らが所属する全国ハンセン病療養所入所者協議会(以下全療協という。,
)ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会及び国立療養所菊池恵楓園入所者自治会(以下恵楓園自治会という。
)は,平成24年11月7日,最高
検察庁に対し,菊池事件の審理に憲法違反があり,また,本件被告人には無罪を言い渡すべき明らかな証拠があるとして,菊池事件の確定判決に対して刑事訴訟法439条1項1号に基づき再審請求するよう要請した。
また,上記3団体は,平成25年11月6日,最高裁判所に対し,ハンセン病を理由とする開廷場所指定の正当性について,第三者機関を設置した上で検
討し,その成果を公表するよう要請した。
(甲1ないし3)
最高裁判所の調査報告
最高裁判所は,

平成26年5月,
ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査委員会を設置した。同委員会の調査については,広く有識者の意見を聴取し,調査の参考とするために,平成27年9月から平成28年3月まで,6回にわたって,
ハンセン病を理由とする開廷場所指定の調査に関する有識者委員会が開催された。最高裁判所は,
上記調査委員会の調査を踏まえ,
平成28年4月25日,
ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書を公表した(甲3。以下最高裁調査報告という。。同調査報告においては,最高裁判所による)
ハンセン病を理由とする開廷場所の指定につき,指定する場合の開廷場所の特定方法及び開廷場所指定の内部手続に相当でない点があり,また,裁判所外での開廷の必要性の認定判断の運用が,遅くとも昭和35年以降,裁判所法69条2項に違反するものであったとされている。
(甲3,4)
検察庁の対応

熊本地方検察庁は,

平成29年3月31日,菊池事

件について再審請求を行わない旨を明らかにした(甲6)

2争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,①菊池事件について,検察官が再審請求をしなかったことが国家賠償法上違法であるか,②原告らの損害である。争点①について
【原告らの主張】

菊池事件の審理が憲法に違反すること
菊池事件の審理は裁判所法69条2項に基づき菊池恵楓園又は菊池医
療刑務支所内の特別法廷で行われているところ,同項にいう必要と認めるときとは,被告人が極めて長期間の療養を要する伝染病疾病の患者であって,
裁判所に出頭させて審理することが不可能ないし極めて不当
であるなど真にやむを得ない場合に限られると解される。
しかし,ハンセン病がそのような疾病でないことは,菊池事件の審理が
開始された昭和27年当時の医学的知見等から明らかであるから,菊池事件における開廷場所の指定は裁判所法69条2項に違反する。
そして,
ハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申が不認可とされた
例はなく,運用が定型的に行われていたこと,ハンセン病患者の裁判を一般国民から隔離して行う目的で菊池医療刑務支所が設置されたことからすれば,
菊池事件における特別法廷の設置自体がハンセン病に対する強制
隔離政策の一環として憲法14条1項に違反するというべきである。特別法廷がハンセン病患者に対する差別として憲法14条1項に違反することは,
最高裁判所自身が最高裁調査報告を公表するに当たって認めたものである。
また,実際の審理においても,裁判官,検察官及び弁護人は,予防衣を
着用し,証拠物を箸で扱うといった差別的な対応をした。
したがって,菊池事件の審理は,ハンセン病に対する偏見に基づき,本件被告人に対して差別的な取扱いをしたもので,憲法14条1項に違反する。
憲法37条1項,82条1項が定める裁判の公開原則は,裁判に対する
国民の信頼を確保し,一般国民による自由な傍聴を通じて裁判の適正を監視し,
これにより公正な裁判を保障するという重要な意義を有するものである。したがって,裁判の公開とは,一般国民が自由に傍聴できる状態で審理を行うことをいい,菊池事件の審理が公開原則を満たしていたか否かは,裁判の告示がされていたかなどの形式面のみならず,菊池恵楓園や菊
池医療刑務支所がどのような施設であったかという実質面からも検討しなければならない。また,特別法廷の本質がハンセン病患者に対する差別であることを考慮すると,平等原則の視点から,ハンセン病患者以外の被告人の場合と比較して実質的に公開されていたかも検討すべきである。菊池恵楓園はハンセン病患者を隔離するための施設であったところ,菊
池事件の審理は施設内の患者地帯である旧説教所や旧自治会事務所等で審理が行われていたから,
一般国民は自由に立ち入ることができず,
かつ,
ハンセン病が恐ろしい伝染病であるとの恐怖心や偏見・差別から近づくことを忌避する場所であった。入所者に対しても裁判に関する園内放送や掲示などはなく,
たまたま裁判が行われていることを知った入所者が偶然に
傍聴できることがあったにすぎない。
菊池医療刑務支所も,強制隔離政策を行刑の面から完遂させるために設置された,一般国民の出入りを全く想定していない施設であった。そして,前記のとおり,菊池事件についての開廷場所の指定は裁判所法69条2項に違反するものであるが,このことは,そのような法廷で審理することを憲法37条1項,82条1項の例外として認めてはならないこ
とを意味する。
したがって,施設の正面玄関等に裁判の告示がされていたとしても,そのような施設で行われた審理は憲法37条1項,82条1項に違反するというべきである。
憲法37条3項は,被告人が弁護人を選任することを妨害してはならな
いという形式的な保障にとどまらず,実質的な弁護を受けることを保障するものであるところ,菊池事件の第一審の弁護人は,本件被告人が殺人罪の公訴事実を否認して無罪を主張しているにもかかわらず,公訴事実については何も申し上げることはない旨を述べて検察官請求証拠に全部同意したほか,
警察官の証人尋問における反対尋問や現場検証への立会いをせ

ず,無罪の最終弁論を行った形跡もない。このような訴訟活動は,資格を有する弁護人による実質的弁護を受ける権利を侵害するものであり,裁判所も弁護人の訴訟活動に注意を促すなどの訴訟指揮をとらなかった。したがって,菊池事件の審理は,憲法37条3項のみならず同条2項にも違反するものである。

そのほか,本件被告人が,逮捕される際に警察官から拳銃で撃たれ,重傷を負った状態で自白調書を作成されたことは憲法36条(拷問禁止),
38条2項(強制等による自白排除法則)に違反する。
以上のとおり,菊池事件の審理は憲法の各規定に違反するが,これを総体として見ると,ハンセン病に対する偏見・差別に基づき本件被告人の人格権を侵害し,
適正手続及び裁判を受ける権利を侵害するものであるから,
憲法13条,31条,32条にも違反するものである。


手続の憲法違反が刑事訴訟上の再審事由に当たること
憲法が我が国における最高法規であることからすると,これに違反する訴訟手続は効力を有しないとするのが論理的帰結である。
また,
単なる法令違反の場合ですら確定判決の破棄等が認められる非常上告制度(刑事訴訟法454条)があり,明文上の再審事由(同法435条)
にも,事実認定を問題とする実体的再審事由(同条6号)だけでなく,手続違背を問題とするもの(同条1号ないし5号)や,確定判決に関与した裁判官等が職務に関する罪を犯すという裁判の公正確保の観点から設けられたもの(同条7号)がある。さらに,上告理由においては事実誤認よりも憲法違反を是正することが重視されており,諸外国においても憲法違反又は適正
手続違反の少なくともいずれか一方は再審事由とされている。
そうすると,刑事訴訟法上,手続の憲法違反が再審事由として規定されていないのは,
憲法に違反するほどの重大な瑕疵が判決確定までに看過される
という事態が生じることが想定されなかったからにすぎないと解すべきであり,あえて再審事由から除外する趣旨であるとは考えられない。
したがって,
手続の憲法違反は刑事訴訟上の再審事由に当たるというべき
である。

本件被告人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠があること
菊池事件の確定判決の事実認定は,凶器とされた短刀や本件被告人の着衣
からAの血痕が発見されていないこと,短刀の発見経緯に疑問があること,本件被告人の自白を聞いたとする親族らの供述に信用性がないこと,本件被告人が所持していたタオルの血痕はAのものではなく本件被告人のものであること,
本件被告人の自白に信用性がないことを看過してなされたもので
ある。
そして,
凶器とされた短刀によってはAの刺切傷のすべてを説明すること
はできないこと,
短刀を凶器とする鑑定書の鑑定手法には重大な瑕疵がある

こと,
Aの刺傷創の状況から本件被告人の着衣に大量の血痕が付着しないのは極めて不自然であることを内容とする新たな法医学鑑定書がある。したがって,本件被告人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠があるから,刑事訴訟法435条6号の再審事由が認められる。

検察官が再審請求権限を行使しなかったことの違法性
再審制度は,
誤った裁判を是正することにより有罪の言渡しを受けた者
の被害を回復することを第一の目的とするものであり,検察官に再審請求権限が付与された趣旨も,公益の代表者として有罪の言渡しを受けた者の被害を回復することを通じて公益を図ることにあるから,その権限の不行
使は全くの自由裁量ではなく,一定の場合には権限を行使することが職務上の義務となり,その不行使が国家賠償法上違法となり得るものである。前記のとおり,菊池事件の審理には憲法違反があるところ,これは,特別法廷を認可した最高裁判所裁判官及び菊池事件の担当裁判官を行為主体とする国の先行行為である。

国の公権力の行使によって人の生命や身体に対する権利侵害行為がされたか,そのような危険を作出したという先行行為があり,結果の発生を具体的に予見することができ,かつ,作為に出ることにより結果の発生を防止することが可能である場合には,国は,先行行為に基づく条理上の作為義務を負う。本件においては,憲法に違反した審理がされ,有罪の言渡
しを受けた本件被告人に対する不利益を具体的に予見することができ,かつ,
作為に出ることにより本件被告人の基本的人権を保障することが可能であるから,国は,先行行為に基づく作為義務(被害回復義務)を負う。ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(以下ハンセン病問題解決促進法という。において,

国がハンセン病患者であった者らの被害回復
を基本理念としてこれらの者の福祉の増進等を図るための施策を策定し,実施する責務を負うことを定めているのも,国が自らの先行行為による作為義務として先行行為から生じた被害の回復義務を負うことを明らかにしたものである。
そして,本件被告人は既に死亡しており,親族も偏見・差別を恐れて自ら再審請求することはできない状況にあるから,現行法上,再審請求権限
があるのは,国の最高法規である憲法を尊重し,擁護する義務を負う検察官のみである。
したがって,検察官には,先行行為に基づく被害回復義務として,菊池事件について再審請求権限を行使する職務上の注意義務があり,その不行使は国家賠償法上違法となる。

菊池事件の審理は特別法廷で行われた憲法違反の手続であるところ,特別法廷は,強制隔離政策の一環として,ハンセン病患者が偏見・差別を受ける一種の社会構造を形成した主たる要因の1つであるから,原告らハンセン病病歴者の被害回復のためには,特別法廷の違憲性を司法の場で明らかにすることが必要である。このような原告らの被害回復請求権は,憲法
13条,民法723条,ハンセン病問題解決促進法によって認められた法的保護に値する権利である。
したがって,
憲法違反の先行行為に基づく被害回復義務としての検察官
の職務上の注意義務は,強制隔離政策により被害を受けたハンセン病病歴者すべてを名宛人とするものであり,原告らも含まれるというべきである。
仮に,検察官の注意義務の名宛人が本件被告人であるとしても,原告らハンセン病病歴者と本件被告人は,偏見・差別のもと,憲法の埒外での集団生活を送らざるを得なかったという分かち難い共通性・共同性があり,原告らは,民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係を有する。
そして,原告らは,検察官が再審請求をしなかったことについて,本件被告人と同じように身を切られるほどの精神的苦痛を受けたもので,その
甚大さは生命侵害にも比肩する。
したがって,原告らは,民法711条類推適用により損害賠償請求できる地位にあるから,
検察官の再審請求権限の不行使は原告らとの関係でも
違法となる。
【被告の主張】

検察官が再審請求をしなかったことは国家賠償法上違法とならないこと国家賠償法1条1項の違法は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背した場合に認められるところ,
この違法性判断の前提として,
当該公務員の行為が,

原告らの具体的な権利ないし法的利益を侵害していることが必要であり,反射的にもたらされる事実上の利益を侵害しているだけでは足りない。したがって,
原告らに国家賠償法上の救済を得られる具体的な権利ない
し法的利益を観念できない場合には,国又は公権力の行使に当たる公務員の行為が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したか否
かを検討するまでもなく,当該公務員の行為が国家賠償法上違法となる余地はない。
刑事訴訟法439条1項1号において検察官に再審請求権限が付与されている趣旨は,
検察官が裁判所に法の正当な適用を請求する公益の代表
者であることから,公訴権の行使と同様,その権限の行使によって国家及
び社会の秩序維持という公益を図ることにあるのであって,
有罪の言渡し
を受けた者の被侵害利益の回復を直接の目的とするものではないから,検察官の再審請求権限の行使によって生じる利益は,個別の国民との関係においては,反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護された利益ではない。
したがって,
検察官が再審請求権限を行使することによって生じる利益
は,本件被告人との関係においてですら,反射的にもたらされる事実上の
利益にすぎず,法律上保護された利益ではないのであって,そうである以上,何人であっても,検察官が再審請求権限を行使しなかったことについて,
国家賠償法上の救済が得られる具体的な権利ないし法的利益は存在しない。
さらにいえば,原告らは,本件被告人の相続人等ではなく,再審請求権
者ではないから,菊池事件とは無関係の第三者であって,菊池事件の再審請求がされることによって,反射的にもたらされる事実上の利益を享受し得る立場にもないというべきである。
したがって,菊池事件に関し,検察官が再審請求をしなかったことが国家賠償法上違法となる余地はない。


検察官の職務上の注意義務に関する原告らの主張について
原告らの主張は,
およそハンセン病病歴者との関係で検察官が菊池事件
について再審請求権限を行使すべき職務上の注意義務を負っていると主張するに等しく,このような主張は,個別の国民との関係で注意義務違反
があるかによって判断される国家賠償法上の違法性概念と相反するものであり,失当である。
原告らは,ハンセン病問題解決促進法を根拠として,検察官にはハンセン病病歴者の被害回復をする責務があると主張するが,同法には再審請求に関する規定は存在せず,同法によって刑事訴訟法上の検察官の再審請求
権限の法的性質が変容する余地もないから,原告らの主張は失当である。また,原告らは,ハンセン病問題解決促進法は国が先行行為による作為義務として先行行為から生じた被害の回復義務を負うことを明らかにしたものであると主張するが,このような主張は,国が強制隔離政策の一環としてした特別法廷の認可という先行行為によって本件被告人に生じた被害の回復に努めるべき義務を負うとするものであって,ハンセン病問題解決促進法から直接的に検察官の再審請求義務が生じると主張している
のと異ならないから,失当である。

民法711条類推適用に関する原告らの主張について
検察官が再審請求権限を行使しなかったことは,本件被告人との関係においても国家賠償法上違法とはならないから,原告らの主張は前提を欠いており失当である。

民法711条は,
被害者との間に同条所定の者と実質的に同視し得べき
身分関係が存し,
被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者につい
て限定的に類推適用されるべきものであるところ,原告らは,いずれも差別や偏見にさらされたハンセン病病歴者であるという点において本件被告人と共通することがあるとしても,それはいわば同じ境遇にあったとい
うことであり,
個人間の身分関係とは性質を全く異にするものであるから,
原告らと本件被告人との間には法律上又は事実上の身分関係はない。したがって,原告らに民法711条類推適用の射程範囲は及ばない。エ
刑事訴訟法435条6号所定の再審事由について
菊池事件の事実認定に関する原告らの主張は,本件において認否する必要
性はなく,かつ,認否を行うことは相当でない。
争点②について
【原告らの主張】

原告らは,
いずれもハンセン病と診断されただけで愛する家族と引き離さ
れ,社会から遠く隔絶された療養所に強制隔離された。被告の強制隔離政策及び無らい県運動により,社会内にはハンセン病が恐ろしい伝染病であるという誤った認識が広まり,ハンセン病病歴者及びその家族が大多数の国民から偏見・差別を受ける社会構造が形成され,原告らは,療養所においてプライバシーもない非人間的な生活を強いられ,あらゆる場面でおよそ人として扱われず,
人権など全くない憲法の埒外というほかない状況に置かれ続けて
きた。このような原告らの被害は,人生全般に及ぶ人生被害というべきであ
る。

菊池事件における特別法廷も,
強制隔離政策に基づくものとしてハンセン
病病歴者に対する偏見・差別を助長するものであるところ,原告らそれぞれが菊池事件や本件被告人に関わりがあり,再審請求により審理の過ちを正す
ことが原告らの尊厳・名誉を回復するために不可欠である。
すなわち,原告1は,全患協(全国国立療養所ハンゼン氏病患者協議会。全療協の前身である。
)や恵楓園自治会が取り組んできた本件被告人の支援
活動に携わるようになったことから,本件被告人とも面会や文通を行い,隔離収容された僚友として強い絆があったもので,本件被告人を死に追いやっ
た被告の仕打ちに衝撃を受け,恵楓園自治会長及び全療協代表として,検察官に対して再審請求要請を行った。
原告2は,本件被告人と面識はないが,菊池恵楓園内の広報誌を通じて本件被告人への支援活動を目にし,ハンセン病患者というだけで犯人と決めつけられ,
偏見に満ちた裁判によって死刑とされた菊池事件について他人事で
はないと感じていた。
原告3は,菊池事件の審理を見たことがあるほか,本件被告人とも面会したことがあり,菊池事件の審理はハンセン病患者を他の人と同じように人権を有する一人の人間として扱うという意識が全く欠けていたと受け止めている。

原告4は,
中学生の頃に第一審で死刑判決が言い渡されたとの報に接して
菊池事件を知り,その後,死刑執行に大きな衝撃を受け,全療協の会長として入所者の人間としての尊厳の回復を図るために働いてきた。
原告5は,
高校3年生の時に本件被告人が死刑を執行されたという一報を
聞き,その後,全患協の活動に参加する中で,ハンセン病に対する偏見・差別のために無辜の人間が殺されたことを知った。
原告6は,13歳で菊池恵楓園に入所して9日目に園内放送で本件被告人
の死刑が執行されたことを知って衝撃を受け,自らが特別法廷において裁かれる立場になり得たことから他人事ではなくハンセン病患者全体の問題と感じている。

以上のとおり,菊池事件の特別法廷の違憲性を司法の場で明らかにし,再審請求により審理の過ちを正すことは,本件被告人のみならず原告らを含むすべてのハンセン病病歴者の尊厳・名誉回復のため,また,今なお社会に根強く残る偏見・差別の社会構造を打ち壊すための第一歩として必要不可欠である。しかし,検察庁は,原告らが所属する3団体の要請にもかかわらず,菊池事件について再審請求をしなかった。

これにより,原告らは,金銭では評価し尽くせない多大な精神的苦痛を被ったもので,
その慰謝料がそれぞれ10万円を下らないことは明らかである。
【被告の主張】
否認し,争う。
原告らは,菊池事件の再審請求がされることについて,法律上保護された利
益を有しない。
第3当裁判所の判断
1前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる
(書証については,
特に指定しない限り,
枝番のあるものは枝番全部を含む。。

ハンセン病に関する科学的知見等

ハンセン病に関する科学的知見等については,最高裁調査報告において,以下のとおり報告されている。

ハンセン病は,らい菌によって引き起こされる慢性の細菌感染症で,主として末梢神経と皮膚が侵される疾患であり,慢性に経過する。
ハンセン病は,患者から人に感染し,感染力自体はそれほど弱くないともいわれるが,病型によって排出する菌の量は大きく異なり,排菌量が少ない病型もある。また,多剤併用療法を始めると,らい菌の感染力は数日で失わ
れるので,感染源になる可能性があるのは未治療の患者である。DDS単剤療法でも,らい菌の排出量は急速に減少するとされている。ハンセン病に感染した場合でも,発病するのは感染者のごく一部に過ぎず,感染者の中の有病率は,高い場合でも,通常1パーセントを超えることはないとされる。イ
昭和18年,アメリカ合衆国において,スルフォン剤であるプロミンにハンセン病の治療効果があると発表された。それまでは,根治を期待し得る有効な治療法がなかったため,ハンセン病は,不治の悲惨な病気であるとの見方が一般的であった。
日本においては,昭和22年から,プロミン等による治療が一部の患者に
対して開始され,それ以降,日本らい学会においてプロミンの有効性が次々と報告された。
当初はプロミンを広く普及させるだけの予算措置がとられて
いなかったが,昭和24年4月には,プロミンが正式に予算化された。昭和26年4月の日本らい学会において,再発の可能性を検討するために少なくとも10年の経過を観察する必要があるとしながらも,プロミン等が極めて
優秀な治療薬であると認められた。スルフォン剤の登場は,これまで確実な治療手段のなかったハンセン病を治し得る病気に変える画期的な出来事であったとされている。
その後,ハンセン病の治療薬として,同じスルフォン剤系の経口薬ダプソン(DDS)が昭和28年頃から使用されるようになり,昭和30年代後半
には広く普及するようになった。他に,リファンピシンやクロファジミンが昭和46年頃から使用されるようになり,昭和56年にはこれらの同時使用による多剤併用療法も提唱された。
これらの治療法により,現在では,ハンセン病は,早期発見と早期治療により,障害を残すことなく完治する病気とされている。

らい菌の感染がハンセン病の原因であることは,明治30年の第1回国際らい会議において,国際的に確立され,併せて,ハンセン病の治療が著しく困難であることを前提に,患者の隔離によってハンセン病対策を図るとの考えが示された。
しかし,ハンセン病に関する国際会議等では,早くから,隔離は抑制的に行うべきとの考え方,
隔離は限定的に行うべきとの考え方が存在した。
特に,

伝染性患者と非伝染性患者を区別し,前者のみを隔離対象とすべきとの考え方は,
大正12年の第3回国際らい会議や昭和5年の国際連盟らい委員会において,繰り返し主張された。
その後,
昭和18年にプロミンにハンセン病の治療効果があると発表され,昭和22年頃からは経口薬ダプソン(DDS)もハンセン病治療に使われる
ようになった。そして,昭和21年の第2回汎アメリカらい会議,昭和23年の第5回国際らい会議及び昭和27年のWHO第1回らい専門委員会においても,これらの治療効果が発表され,最終的な評価にはさらに時間を要するとの意見がありつつも,その有用性に関する効果は,次第に確立されていった。もっとも,プロミン等の治療薬の登場によって,隔離政策全般が直
ちに否定されたわけではなく,昭和23年の第5回国際らい会議,昭和27年のWHO第1回らい専門委員会及び昭和28年のMTL国際らい会議においても,
伝染性患者に対して隔離を用いるとの考えは,
未だ残されていた。
しかし,他方で,昭和27年のWHO第1回らい専門委員会においては,隔離には患者を潜伏化させる傾向があり,厳しい隔離政策がかえってその目
的に反する結果をもたらすこともあると指摘されている。また,WHOが昭和29年に発表した近代癩法規の展望においても,隔離政策の正当性・有効性への疑問が提示されていた。
プロミン等に対する国際的な評価はその後も揺るがず,治療実績が積み重ねられていった。これに伴い,昭和31年のローマ会議,昭和33年の第7回国際らい会議,
昭和34年のWHO第2回らい専門委員会及び昭和38年
の第8回国際らい会議といったハンセン病に関する国際会議において,隔離
政策を含むハンセン病に関する特別法の廃止が繰り返し提唱されるようになっていった。

日本におけるハンセン病患者は,明治33年の調査では約3万人とされていたが,50年後の昭和25年の調査では約1万5000人と推定された。(以上につき,甲3)

ハンセン病に対する法制

明治40年,日本においてハンセン病患者に対する強制措置を定めた最初の法律である明治40年法律第11号(癩予防ニ関スル件)が制定された。これによれば,
癩患者ニシテ療養ノ途ヲ有セス且救護者ナキモノハ行政官庁ニ於テ命令ノ定ムル所ニ従ヒ療養所ニ入ラシメ之ヲ救護スヘシ但シ適当ト認ムルトキハ扶養義務者ヲシテ患者ヲ引取ラシムヘシ(3条1項)とさ
れた。
その後,大正5年法律第21号により癩予防ニ関スル件が一部改正され,療養所長の懲戒検束権が明文化された。

昭和6年法律第58号により癩予防ニ関スル件が改正され,癩予防法(以下
旧らい予防法
という。の名称となった。

同法3条1項においては,
行政官庁ハ癩予防上必要ト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ従ヒ癩患者ニシテ病毒伝播ノ虞アルモノヲ国立療養所(中略)ニ入所セシムベシと定められ,前記アの療養ノ途ヲ有セス且救護者ナキモノとの文言が削除され
たため,入所対象者が拡大されることとなった。
同法制定の前後から国が全国で推進した無らい県運動によって,ハンセン病の未収容患者が次々と療養所に入所させられ,昭和5年から昭和10年にかけて入所者数が約3倍に増加した。

昭和28年8月15日,旧らい予防法が廃止され,らい予防法(昭和28年法律第214号)が公布・施行された。
同法には,都道府県知事が,らいを伝染させるおそれがある患者に対して
国立療養所に入所するよう勧奨することができる旨,これに応じないときは入所を命じることができる旨が規定されたほか(6条)
,国立療養所の入所
患者に対し,以下の場合を除いては外出してはならない旨の外出制限(15条1項)及びこれに違反した場合の罰則(28条)が規定された。なお,同

より国立療養所外に出頭を要する場合」に当たるものとして,刑事訴訟法に基づいて出頭を求められた場合が例示された。
親族の危篤,
死亡,
り災その他特別の事情がある場合であって,
所長が,
らい予防上重大な支障を来たすおそれがないと認めて許可したとき。(1
5条1項1号)

法令により国立療養所外に出頭を要する場合であって,所長が,らい予防上重大な支障を来たすおそれがないと認めたとき。
(同項2号)

その後,らい予防法は,平成8年に廃止された。
(以上につき,甲3,32,78)

ハンセン病患者に対する強制隔離政策及び偏見・差別の状況

国は,
癩予防ニ関スル件が改正されて旧らい予防法に改められた昭和

6年前後から,自宅で生活しているハンセン病患者を積極的にハンセン病療養所に入所させる,いわゆる強制隔離政策を推進するようになった。イ
国が強制隔離政策を推進するに当たっては,
無らい県運動が大きな役

割を担ったとされている。これは,文字通り,すべてのハンセン病患者を隔離して放浪患者や在宅患者が1人もいなくなった県を意味するところ,内務省衛生局は,昭和5年,
癩の根絶策を発表し,その達成のため,各自治体
が競うようにハンセン病患者を探し出し,療養所に入所させるようになった。患者を療養所に入所させるに当たっては,その使用物や住居が徹底的に消毒された。
また,住民も,都道府県衛生部や保健所に対してハンセン病患者の情報を
提供することが奨励され,多くの住民が情報提供を行ったとされる。このようなことから,無らい県運動は,ハンセン病患者を隔離するための官民一体の運動であるとされ,これにより,国民は,ハンセン病が恐ろしい伝染病であるとの不安や恐怖心を強め,ハンセン病患者に対し,地域社会に脅威をもたらす危険な存在であり,ことごとく隔離しなければならないとの
偏見・差別意識を強く持つようになっていったとされている。さらに,このような偏見・差別意識は,ハンセン病患者にとどまらず,その家族にも向けられ,無らい県運動を中心とする強制隔離政策が,現在まで続くハンセン病患者及びその家族が大多数の国民から偏見・差別を受ける一種の社会構造を形成する基礎となったとされている。

無らい県運動は,戦時中はいったん中断されたものの,厚生省は,昭和22年,各都道府県に対し,
無癩方策実施に関する件を通知し,方策実施要
領に沿った施策の実現を求め,昭和24年には厚生省公衆衛生局長通達が発出され,各都道府県に対し,診断技術の向上のための講習会の実施,戦時中に中断していた一斉検診の復活,ハンセン病患者及びその疑いのある者の名
簿の作成,患者の収容,療養所退所者の指導,一時救護の徹底などが求められた。

熊本県においては,昭和15年,多くのハンセン病患者によって形成されていた集落で157名が療養所に入所させられた。

また,昭和26年には,菊池恵楓園の増床工事が完了し,収容能力が増したことから,さらに無らい県運動の機運が高まった。この頃,全国の国立療養所に新たに入所した患者数は,昭和25年に772名であったのが,昭和26年には1156名と大きく増加した。このうち,菊池恵楓園に入所した患者数は,昭和25年に130名,昭和26年に426名であったが,同年の入所者数のうち185名が熊本県内の患者であり,全国で突出して高い数字であった。


無らい県運動によってハンセン病やハンセン病患者及び家族に対する偏
見・差別が助長されたことを背景として,ハンセン病患者やその家族が自殺を図るなどの事件が各地で発生した。
例えば,
昭和25年,
熊本県において,
家族にハンセン病患者がいることが原因で失恋した女性が自殺を図った事件やハンセン病患者の父親を殺害して自身も自殺するという事件が発生し
たほか,昭和26年には,山梨県において,ハンセン病患者を含む一家9人が心中するという事件が発生した。

以上のとおり,国の強制隔離政策及び無らい県運動を通じ,ハンセン病に対する偏見・差別意識が社会内に広まったが,
後記

のとおり,
上記の偏見・

差別は,未だ全面的に解消されたとはいえない状況である。

(以上につき,甲17ないし22,24,25,32,45,原告1本人,原告3本人,原告5本人,原告6本人)
ハンセン病患者の裁判に関する議論の状況等

昭和22年11月6日に行われた衆議院・厚生委員会において,当時の厚生大臣は,
ハンセン病患者の裁判を裁判所で行うとすると感染防止のために
大変な費用を要し,押送を行う看守も非常に忌み嫌う旨,検察官の中には,向かい合って取調べを行うと患者のつばきがかかって感染することを恐れて取調べを嫌がる者がいる旨,ハンセン病患者を送ると病院が困る旨,そのような事情を踏まえ,
国内にハンセン病患者を収容する場所を設置しようと

考えている旨を答弁した。
また,これに関し,厚生省の担当者は,ハンセン病患者に対する特殊の法廷を設置することが望ましいと思っており,既に司法省当局等とも話合いを始めている旨説明した。

昭和22年11月13日に行われた衆議院・厚生委員会において,当時の司法大臣は,
ハンセン病患者の裁判及び執行については,
衛生上の見地から,
無差別に普通の裁判所に出入りを許し,普通の法廷で裁判を行うことは約束
できない実情にある旨,消毒等を簡易に行えるような施設を全国に数か所設置することも考えられるものの,国の財政状態から難しい旨,適当な所に臨時法廷を設け,
ハンセン病患者であるがゆえに不問に付することがないよう
にしたいと考えている旨を答弁した。

昭和25年2月16日に行われた衆議院・予算委員会において,当時の国務大臣は,ハンセン病患者による犯罪について,訴追及び処罰を十分に行わなければならないが,ハンセン病は特殊な非常に重い伝染病であり,普通人と同一に取り扱うことができない旨,外部とは接触させず,療養所の中に特殊な施設を設けて拘禁や刑の執行をし,同時に療養もして療養所内だけで対処することが一番適当であると考えている旨を答弁した。

また,出席委員からは,行刑と療養の2つの観点を調和させるために特別の施設を設ける必要がある旨の意見が述べられ,これに対し,政府委員は,これまで法務当局と厚生当局との協議がなかなかまとまらなかったものの,ハンセン病患者の特別な性質に鑑みると絶対に社会から隔離して療養しなければならないとの考えの下,療養をしながら行刑の目的を達成するため,
療養所の一角に特別な施設を設けて刑の執行をすることで話合いがついたとして,近く予算的措置を講じたい旨説明した。

昭和28年3月10日,ハンセン患者である受刑者や未決拘禁者を収容する刑事収容施設として,菊池医療刑務支所が開庁した。


昭和29年3月25日に行われた衆議院・法務委員会において,最高裁判所事務総局総務局総務課長は,ハンセン病患者に関する事件を裁判所外の療養所の中で開廷することは常時行われている旨,裁判所法69条2項の運用としてはハンセン病を理由とする事件が最も多く,多くの運用は公衆衛生の観点から裁判所の法廷を使用させないという趣旨に立っている旨を答弁した(なお,この答弁は,交通不便の場合に裁判所法69条2項を適用することができるかについて議論された際に,当時の運用状況の紹介として行われ
たものであり,
ハンセン病患者の裁判に関する件が直接協議されたものでは
ない。。


昭和33年に行われた全国刑事裁判官会同において,最高裁判所事務総局刑事局長は,
裁判所外で法廷を開くのは客観性の担保などの点で問題がある
ため,
原則として真にやむを得ない場合にしか許されないものとして非常に
厳格に解されており,
ほとんどハンセン病やこれに類する長期の病気に限ら
れている旨答弁した。
(以上につき,甲3,39ないし42)
開廷場所指定の制度の概要

裁判所法69条1項は,

法廷は,裁判所又は支部でこれを開く。

と規定し,同条2項は,

最高裁判所は,必要と認めるときは,前項の規定にかかわらず,他の場所で法廷を開き,又はその指定する他の場所で下級裁判所に法廷を開かせることができる。

と規定している。法廷は,裁判所が裁判の対審,判決等を公開で行う場所であって(憲法82条1項,34条),重要な職

務を執行する場所であることから,裁判所法69条1項及び2項は,そのような法廷が開かれる場所が,原則として,裁判所本庁又は支部の庁舎の構内でなければならないことを定めるとともに,例外的に,最高裁判所が必要と認めるときに限り,
他の場所で法廷を開くことができることを定めているも
のと一般に解されている。


最高裁判所が裁判所法69条2項に基づいて開廷場所を指定することは,
最高裁判所の司法行政事務である。もっとも,開廷場所の指定の必要性を基礎づける事情については,現に審理に当たる裁判体が最もよく把握している上,
どこで開廷するかは当該裁判体の訴訟指揮とも密接に関連する事項であるから,当該裁判体の意見を尊重する必要があること,裁判所庁舎の現状,開廷候補施設の状況についても,下級裁判所の方が具体的な事情を把握していることが通常であり,その上申を待って判断することが適当であるといった理由から,実際の指定手続の運用としては,最高裁判所が自ら主導して指定するのではなく,
下級裁判所が裁判所法69条2項に基づく開廷場所指定
の上申を行い,
最高裁判所がその上申を認可又は却下することにより行われ
るべきものとされている。
なお,最高裁判所が上申を認可した場合,裁判所庁舎外における開廷が行
われる旨を一般に知らせるため,開廷の場所等に相当の告示を行うことが望ましいと解されている。

裁判所法が施行された昭和22年5月3日から現在に至るまでになされ
た下級裁判所からの開廷場所の指定上申及び最高裁判所による処理の状況は,別表のとおりである。
昭和23年1月30日から平成2年12月13日までの間に,180件の上申があり,
うち113件が認可されている
(認可率63パーセント)同月

14日以降,現在に至るまで,最高裁判所に対する新たな上申はなく,開廷場所の指定もなされていない。

これらの上申のうち,ハンセン病を理由とする上申は,昭和23年から昭和47年までの間に96件であった。うち95件が認可,1件が撤回され,不指定とした事例はない
(認可率99パーセント)開廷場所としては,

菊池
恵楓園等のハンセン病療養所,菊池医療刑務支所等の刑事収容施設などが指定されている。

これに対し,ハンセン病以外の病気及び老衰を理由とする上申は,昭和23年から平成2年までの間に61件であった。うち9件が認可,27件が不指定,25件が撤回されている(認可率15パーセント)

なお,別表のとおり,ハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申は,昭和47年より後は行われておらず,ハンセン病以外を理由とする開廷場所指定の上申も,平成2年より後は行われていないが,その理由は,最高裁調査報告によっても明らかにすることはできなかったとされている。


裁判所外における開廷の必要性の判断及び開廷場所の指定は,最高裁判所の司法行政権の行使として行われるものであるから,裁判官会議の議によるべきものであるが(裁判所法12条1項)
,昭和23年2月13日の最高裁
判所裁判官会議において,
癩患者を被告人とする下級裁判所の刑事事件につき,裁判所以外の場所において法廷を開かせることについては,今後,事務局をして処理せしめ,裁判官会議は,その報告を受けるに止めることとするとの議決がなされた。この点について,最高裁調査報告においては,ハンセン病患者を被告人とする下級裁判所の刑事事件に関する開廷場所の指定については,裁判官会議からいわゆる行政法上の専決権限を付与されて,事務総局限りでの処理が行われていたものと解される旨報告されている。
(以上につき,甲3)
ハンセン病療養所や刑事収容施設における開廷の状況

裁判所法69条2項に基づき開廷場所として指定された場所は,隔離施設であるハンセン病療養所内に仮設された法廷や,菊池恵楓園に併設された菊池医療刑務支所内に設けられた法廷などである。


最高裁調査報告によると,菊池恵楓園において行われた菊池事件以外の裁判に関する状況は,以下のとおりである。
別表番号33番の事件について,昭和25年8月12日の病院日誌に,熊本地方裁判所刑事首席書記官が開廷場所指定の上申に先立ち開廷予定
施設とみられる慰安所を視察した旨の記録が残されている。
同事件については,第1回公判が同年9月13日に開かれたところ,同日付けの病院日誌において,
慰安所に特設法廷が設けられ,
患者300人,
職員・家族150人が傍聴したとの記録が残され,同様の内容が熊本日日新聞及び毎日新聞により法廷内写真とともに報道されている。同法廷内写真では,裁判官席,当事者席が設けられ,多数の者の着席が可能な患者用傍聴席,外部者用傍聴席等が備えられていること,裁判官が法服を着用していること,多数の傍聴人がいたことが確認できる。
別表番号51番の事件について,昭和26年10月19日付け病院日誌において,同日開かれた第1回公判の傍聴人として,被告人家族5名,厚生省事務官,
菊池恵楓園長他職員若干名が傍聴したとの記録が残されてい

る。
別表記載のいずれの事件に関するものであるか特定できないものの,菊池恵楓園の入所者から,以下のようなヒアリング結果が得られたと報告されている。
昭和23年頃から昭和25年頃,菊池恵楓園内の自治会事務所(旧説教
所)前の広場にテントが張られ,その中で裁判手続が行われた。特に傍聴席は設けられておらず,裁判を行うことの掲示もなかった。
その後,時期は不明であるが,菊池恵楓園内の慰安所(旧公会堂)において,入口に白い幕を張り,裁判手続が行われた。扉が開いていて自由に出入りできる状態であり,傍聴は禁止されていなかった。

昭和26年10月か11月頃,自治会事務所(旧説教所)の周囲全てに白黒の幕を張り,その中で裁判手続が行われた。中は全く見える状態ではなく,幕の中に入った入所者は一人もいないと思う。自治会事務所は,70人から80人くらいが入れるような広さがあったが,中の様子は不明である。その際,裁判が行われるという知らせは全くなく,ここで裁判が行
われているという札等もなかった。
昭和27年1月に新しい自治会事務所ができた後,その中の8畳から12畳くらいのタイプライター室で裁判手続が行われた。タイプライター室で裁判手続が行われたということは後で聞いた話である。周囲に黒白の幕が張られており,中を見ることはできず,中に入らせないようにして裁判が開かれていたと思う。このときも,裁判が行われるという知らせはなかった。

その後,慰安所(旧公会堂)において,裁判手続が行われた。玄関の周囲には幕が張られていたが,中に入って裁判を見ることは禁止されておらず,幕を越えて土間まで入り,中を2,3分ほど見たと思う。傍聴席は用意されていなかった。入所者の立ち入りが禁止されている無菌地帯と呼ばれる2階席にだけ人がおり,入所者が立ち入ることのできる有菌地帯と呼ばれる1階の建物のところには誰もいなかった。なお,この建物は,300人から400人くらいが座れる広さがあった。

最高裁調査報告によると,菊池医療刑務支所において行われた菊池事件以外の裁判に関する状況は,以下のとおりである。

菊池医療刑務支所は,12坪の木造平屋建の臨時法廷及び接見施設を備えた刑事収容施設である。昭和30年5月に発行された文献(甲52)には,
同臨時法廷について,
内部の設備も一通り法廷の形態を備えてあって,
公判が開かれる場合は,その正面玄関に当たる外塀に構えられた外扉を開放して公開することになる旨が記載されている。

また,
別表番号130番の事件の公判が昭和35年8月30日に開かれ
ているところ,上記臨時法廷で行われた公判に弁護人として立ち会った者に対するヒアリング結果(甲13)及び同人の手記(甲48)によれば,同臨時法廷は地方にある簡易裁判所と同じくらいの広さであり,傍聴席には3,4列くらいの椅子が並べられており,10人足らずの患者が傍聴し
ていたとのことである。
昭和36年から昭和42年まで菊池医療刑務支所で教誨師を務めていた者に対するヒアリング結果(甲12)及び同人の手記(甲26の2及び3)によれば,4,5回ほど同支所で行われた審理を傍聴したことがあるが,その際,

の臨時法廷ではなく,菊池医療刑務支所の正門を入っ

てすぐの建物内にあった被服倉庫と備品其他庫の間の戸を外し,
縦約9メートル,横約6メートルの部屋を作り,机,椅子を並べて法廷と
していた,
開廷の告示は外壁に貼付されていたが,
人通りは全くなかった,
傍聴席は作られておらず,一般の傍聴人はおらず,教誨師が傍聴するのみであったとのことである。

そのほか,最高裁調査報告においては,菊池恵楓園及び菊池医療刑務支所以外のハンセン病療養所等で行われた裁判について,開廷の告示がされ,多
数の傍聴人がいた事例が複数確認された旨が報告されている。
もっとも,最高裁調査報告においては,菊池恵楓園及び菊池医療刑務支所において行われた裁判について,ハンセン病療養所の入所者,職員,家族,厚生省職員及び報道関係者以外の一般国民が傍聴したことを示す記載はない。

(以上につき,甲3,12ないし16,24,26,48,52)菊池事件の審理経過等

患していることを理由として,裁判所法69条2項に基づく開廷場所の指定がされており,
最高裁調査報告によると開廷場所指定文書が一部保管されて
いたものの,開廷場所を指定する具体的理由は記載されておらず,最高裁判所において,
開廷場所指定の上申を受けて具体的にどのような検討をしたか
は明らかとなっていない。また,開廷場所指定文書には,菊池恵楓園又は菊池医療刑務支所という施設名が記載されるにとどまり,施設内のどの建物な
いしどの部屋を開廷場所として選定するのか具体的に特定する記載はされていなかった。
いて,菊池恵楓園の医務課長が神経らいであると診断したものの,その後,熊本大学皮膚科の医師がハンセン病と診断する所見はない旨診断したことが記載されており(甲1・16頁)
,平成26年に熊本県無らい県運動検証委員会が作成した報告書にも同旨が記載されている(甲32・96
頁)


昭和27年10月30日,菊池恵楓園において第1回公判が行われ,単純逃走罪のみ審理された。


同年12月15日,菊池恵楓園において第2回公判が行われた。
本件被告人は,殺人罪の公訴事実を否認したが,弁護人は,現段階では別
段述べることはない旨述べた上,殺人罪の罪体立証のために捜査機関が作成した関係者の供述調書等を含む検察官請求証拠について全部同意した。同日,同証拠が採用され,取り調べられた。

昭和28年1月16日,菊池恵楓園において第3回公判が行われた。本件被告人及び弁護人は,検察官が請求した追加証拠について全部同意し,
同日,同証拠が採用され,取り調べられた。これらの証拠には,本件被告人が犯行を告白したのを聞いたという親族の供述調書が含まれていたが,公判において同親族の証人尋問は行われていない。
また,同日,本件被告人が自白した際の供述調書を作成した警察官の証人尋問が行われたが,弁護人は反対尋問をしなかった。


同年2月25日,菊池恵楓園において第4回公判が行われた。


同年4月2日,現場検証が行われたが,本件被告人及び弁護人の立会いはなかった。


同年7月27日,菊池医療刑務支所において第5回公判が行われた。同期日で第一審の審理は結審したが,
弁護人は,
被告人質問をしておらず,
どのような弁論をしたかも明らかでない。また,同期日では警察官の証人尋問が行われたが,弁護人は,本件被告人の弁解録取書の作成状況につき簡単な質問をしたのみであった。

同年8月29日,菊池医療刑務支所において第6回公判が行われ,本件被告人に対し,死刑判決が言い渡された。


本件被告人は,第一審の判決に対して控訴し,全患協の支援を受けて,第一審の弁護人とは別の弁護人を選任した。控訴審の弁護人は,控訴趣意書を提出するとともに,事実の取調べを請求した。
昭和29年1月28日,控訴審の第1回公判が行われ,弁護人請求に基づき事実の取調べがなされた。その後,控訴審においては,判決期日を含めて6回の公判が行われたほか,弁護人立会いの下,逮捕現場における検証が行
われた。なお,控訴審の公判はいずれも菊池医療刑務支所で行われた。福岡高等裁判所は,同年12月13日,本件被告人の控訴を棄却するとの判決をした。

本件被告人は,控訴審判決に対して上告し,さらに弁護人4名を追加選任した。弁護人らは,控訴審判決について,偏見と予断で事実を認定したもので憲法76条3項に違反すること,本件被告人がハンセン病であるために審理がおろそかであり,
公正に裁かれておらず憲法37条1項及び同法76条
1項に違反することなどを記載した上告趣意書を提出した。
昭和31年4月13日,最高裁判所において第1回口頭弁論が開かれ,弁
護人らは,弁論において,第一審及び控訴審の審理について,病院内の狭い部屋で開廷され,
傍聴人も患者や親族らのごく限られた少数で特殊の形態で
行われたとして,
本件被告人がハンセン病患者であることから隔離的な処理
がされたことはやむを得ないことと一般には承認されているようであるが,問題がある旨を指摘した。

昭和32年3月22日,最高裁判所において第2回口頭弁論が開かれ,弁護人らは,事実誤認と審理不尽の主張をしたほか,本件被告人がハンセン病患者であることによる予断と偏見を指摘し,国のハンセン病対策が人権を無視した一方的なものであり,控訴審判決が独断と偏見に満ちたものであるなどと主張した。
同年8月23日,最高裁判所は,本件被告人の上告を棄却する判決をし,第一審判決が確定した。


第一審又は控訴審の審理においては,本件被告人以外の関係者は予防衣を着用し,裁判官及び検察官は,証拠物を扱う際,手にゴム手袋をはめ,箸を用いるなどした。


原告3は,菊池恵楓園で行われた菊池事件の公判の状況について,要旨,
以下のとおり供述又は陳述している。
菊池事件を見に行ったのは2回あり,1回目は昭和27年終わりから昭和28年初め頃のことだったと思う。この頃には皆関心があり,自治会事務所(園内事務支所)まで見に行ったが,白と黒の鯨幕で取り囲んで見えないようにしてあったので,中を見ることはできなかった。2回目は,昭和28年初め頃に慰安所(旧公会堂)で裁判が開かれた時である。他の入所者と散歩をしていたところ,皆が裁判らしきものをやっているというので裁判が行われていると知った。舞台の後ろにある高い観覧席のようなスペースで裁判が行われており,建物の患者地帯側の出入口前には白と黒の縦縞の鯨幕が張ってあった。裁判を見ようと思い,上記鯨幕を手で開けて中を覗いたところ,すぐ追い出された。下方から高い場所を見上げる形になるので,何をしているのか全く分からなかった。20メートル先に人の影は見える状態であった。ス
原告1は,菊池恵楓園で行われた菊池事件の公判の状況について,要旨,
以下のとおり供述又は陳述している。
菊池事件の裁判が菊池恵楓園で行われることについて,恵楓園自治会に連絡はなく,入所者にも知らされておらず,裁判を見た人もほとんどいないが,大部屋で一緒だった者から裁判の様子を聞いたことがある。その者によると,ある入所者が慰安所(旧公会堂)を通りかかった際に中から怒号が聞こえて裁判が行われていることを目撃し,自治会事務所に知らせがあったため,裁判の様子を1回見に行った,入所者出入口に普段は張られていない幕が張ってあり,中を覗くと,警察官の証人尋問が行われており,本件被告人が『なんば言いよっとか。すらごと(嘘のこと)言うな』とすごい迫力で必死に言っており,警察官がしどろもどろであった,慰安所は北側に患者地帯からの入所者出入口,南側に職員地帯からの職員出入口,東側に床から1.5メートルくらいの高さに入所者用舞台,西側に床から1メートルくらいの高さに職員用の観覧席舞台があったところ,西側の観覧席舞台に裁判官が,フロアに関係者が,離れた場所に本件被告人がそれぞれいたとのことである。セ
菊池医療刑務支所で行われた第一審の公判期日(第5回及び6回)については,
最高裁判所事務総局総務局長事務取扱最高裁判所事務総局事務次長が,熊本地方裁判所長に対し,菊池医療刑務支所を開廷場所に指定したことを一
般に知らせるため,
熊本地方裁判所の掲示場及び菊池医療刑務支所の正門等
に相当の告示をするよう指示する内容の昭和28年6月5日付け依命通達を発出し,これを受けて,熊本地方裁判所事務局長は,同裁判所刑事首席書記官に対し,菊池医療刑務支所で開廷できることとなったので,上記の事務次長名義の依命通達によって取り計らうよう指示した記録が残されている。
(以上につき,

甲1,3,12ないし18の1,甲19,23,

24,26,32,33,36,37,45ないし50,52,55,65ないし68,原告1本人,原告3本人)
菊池事件の再審請求

本件被告人は,昭和32年10月12日,菊池事件について第1次再審請求をしたが,昭和34年11月30日,同請求が棄却された。

本件被告人は,昭和35年5月6日,第2次再審請求をしたが,昭和36年3月24日,同請求が棄却された。これに対し,本件被告人は,同年4月に即時抗告を,同年7月に特別抗告をしたが,いずれも棄却された。

本件被告人は,昭和36年11月6日,第3次再審請求をしたが,昭和37年9月13日,同請求が棄却され,同月14日,本件被告人について死刑
が執行された。
その後,
本件被告人の母及び長女が上記棄却決定に対して即時抗告をした
が,
福岡高等裁判所は,
再審請求の棄却決定後に再審請求人が死亡した場合,
その直系親族は,新たに再審請求をすることができるとしても,請求人の地位を承継し,又は独立して即時抗告をすることはできないとして,上記即時
抗告を棄却した(福岡高裁昭和38年3月15日決定・下級裁判所刑事裁判例集5巻3・4号210頁)

,弁論の全趣旨)
その後の状況

平成8年にらい予防法が廃止された後,ハンセン病療養所に入所していた者らが,国を相手方として,熊本地方裁判所に対し,①厚生大臣が策定・遂行したハンセン病の隔離政策の違法,②国会議員がらい予防法を制定した立法行為又は同法を平成8年まで改廃しなかった立法不作為の違法などを主張し,損害賠償を求める国家賠償訴訟を提起した(同裁判所平成10年
764号,第1000号,第1282号,平成11年


第383号)
。熊本地

方裁判所は,平成13年5月11日,同訴訟について判決(以下平成13年熊本地裁判決という。)を言い渡した。
同判決は,①厚生省は,遅くとも昭和35年以降において,隔離政策を抜本的に変換し,ハンセン病患者及び元患者に対する社会内の差別・偏見を除去するための相当な措置等をとる必要があったにもかかわらず,これを怠ったから厚生大臣の職務行為には国家賠償法上の違法性があり,かつ,過失も認められる旨,
②遅くとも昭和40年以降にらい予防法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法上の不作為につき,国家賠償法上の違法性を認めるのが相当であり,かつ,国会議員に過失が認められる旨判示した。イ
平成13年熊本地裁判決を受けて,国会及び内閣において,ハンセン病問題を早期かつ全面的に解決するための協議が行われ,厚生労働省は,財団法
人日弁連法務研究財団に対してハンセン病問題に関する事実検証調査事業の実施を委託し,平成14年10月,ハンセン病問題に関する検証会議が設置された。同検証会議は,平成17年3月,厚生労働省に対し,最終報告書を提出した。同報告書においては,菊池事件についても取り上げられ,憲法的な要求を満たした裁判であったとはいえない旨指摘されている(甲45・
139頁)


平成21年4月1日,ハンセン病問題解決促進法(平成20年6月18日号外法律第82号)が公布・施行された。


平成13年熊本地裁判決後も,平成15年にハンセン病療養所の入所者らが温泉宿への宿泊を拒否された件が報道された際,入所者らを誹謗・中傷する葉書が多数届くなど,ハンセン病に対する偏見・差別とみられる出来事があった。熊本地方裁判所は,ハンセン病病歴者の家族らが国を相手方として提起した国家賠償


判決(令和元年6月28日言渡し)において,ハンセン病に対する偏見・差別に対して抗議の声が多数上がる状況になっており,平成14年以降は,ハンセン病患者に対する偏見・差別を許容せずに,反対の声を挙げる者が多数存在する状況となった旨判示した。
もっとも,現在においても,偏見・差別を恐れて自らや家族がハンセン病病歴者であることを周囲に隠している者がいるほか,
ハンセン病病歴者であ

ることを理由に住居の賃借を断られるなどの差別を受けた者がいる。また,ハンセン病療養所の入所者の遺骨は大半が引き取られていない。
このように,ハンセン病に対する偏見・差別は現在もなお残っており,未だ全面的に解消されたとはいえない状況にある。
(以上につき,甲3,17ないし21,25,32,33,45,69,原告1本人,原告3本人,原告5本人,原告6本人)
2争点①について
菊池事件の審理に憲法違反があるか

原告らは,
検察官が再審請求をしなかったことが国家賠償法上違法である
ことの根拠として,菊池事件の審理に憲法違反があり,それが刑事訴訟上の再審事由に当たること,また,そのような憲法違反の先行行為に基づく被害回復義務として検察官が再審請求義務を負うことを主張の中核としている
ので,まず,菊池事件の審理に憲法違反があるかについて検討する。イ
憲法14条1項違反の有無
原告らは,
菊池事件における開廷場所の指定が裁判所法69条2項に違
反し,
ハンセン病患者に対する差別として憲法14条1項に違反すると主
張する。
そこで検討するに,法廷は,裁判所が裁判の対審,判決等を公開で行う場所であるところ,裁判所法69条1項は,そのような重要な職務を執行する場所である法廷は,原則として裁判所庁舎の構内であるべきとし,同条2項で,例外的に,必要と認めるときは,他の場所を開廷場所として指
定することができるとするものである。このような同条の趣旨に照らせば,法廷を他の場所で開く必要がある場合とは,風水害,火災等のため,その裁判所の庁舎内で法廷を開くことが事実上できなくなった場合や,その裁判所の庁舎の使用は可能であるが,被告人が極めて長期間の療養を要する伝染性疾患の患者であって,裁判所に出頭を求めて審理することが不可能
ないし極めて不相当な場合など真にやむを得ない場合に限られると解すべきである。
そして,疾病を理由とする開廷場所指定の上申がされた場合に,裁判所外における開廷の必要性が認められる真にやむを得ない場合に該当するか否かを検討するに当たっては,
①当事者が,
当時の医療水準に照らして,
当該疾患により,裁判所への出頭に耐えられない病状である,あるいは,他者への伝染可能性が相当程度認められ,かつ,裁判所への道中や裁判所構内において必要な伝染予防の措置をとることが不可能ないし極めて困難であるなど,
当該当事者に裁判所庁舎への出頭を求めて審理することが
不可能ないし極めて不相当と認められる事情の有無,②審理の状況に照らし,合理的期間内において,その病状が改善し,又は伝染可能性が低下す
る見込みの有無,③仮にその見込みがある場合には,病状の改善や伝染可能性の低下を待つことなく,当該当事者に出頭を求めて審理を行うべき真の必要性の有無,④刑事手続においては所在尋問(刑事訴訟法158条)等,他にとり得る手段の有無等を慎重に考慮すべきである。
以上の観点を踏まえ,菊池事件における開廷場所指定についてみると,
本件においては,最高裁判所が,具体的にどのような検討を経て上申を認可するに至ったかは明らかでない。
もっとも,前記認定事実によれば,遅くとも昭和22年以降,国会等において,
ハンセン病患者の裁判のため裁判所庁舎以外の場所に臨時法廷を
設置することの必要性が議論されていたほか,昭和23年2月13日の最
高裁判所裁判官会議において,ハンセン病患者を被告人とする下級裁判所の刑事事件に関する開廷場所の指定については事務総局に処理させる旨の議決がなされており,
そのような状況は菊池事件の第一審及び控訴審の
審理が行われた昭和27年から昭和29年当時も同様であったこと,ハンセン病以外の病気等を理由とする開廷場所指定の上申については上申6
1件のうち9件が認可されたにすぎないのに対し,ハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申については上申96件のうち95件が認可され,1件が撤回されて不指定とされた例はないことが認められる。
また,最高裁調査報告においては,ハンセン病を理由とする開廷場所指定に当たり,最高裁判所事務総局が,当事者を裁判所に出廷させることが不可能ないし極めて不相当といえる程度に感染のおそれが存するか否かといった点について,診断書以外の科学的知見を具体的に検討した形跡はなく,
下級裁判所にそのような検討を指示した形跡もない旨が指摘されている(甲3・45頁)

そうすると,
ような観点を踏まえた具体的な検討をすることなく,当事者がハンセン病
に罹患しているとの事実のみから,定型的に開廷場所の指定を行っていたと認められ,菊池事件についても同様であったと認められる。
したがって,菊池事件における開廷場所の指定は,本件被告人に裁判所への出頭を求めて審理することが不可能ないし極めて不相当な場合など真にやむを得ない場合に当たるかを具体的に検討することなく行われた
ものであるから,当時のハンセン病に関する科学的知見等を検討するまでもなく,裁判所法69条2項に違反するものである。
さらに,本件被告人の病状やハンセン病に関する科学的知見を踏まえて検討しても,前記認定事実によれば,そもそも本件被告人はハンセン病に罹患していたのか,
罹患していたとして病型や具体的な症状も明らかでな

い。また,昭和24年以降,プロミンが国内の療養所で広く普及するようになり,
ハンセン病について不治の病であるとの観念はもはや妥当しなく
なっていたこと,昭和23年の国際らい会議などで,プロミンと同じスルフォン剤であり経口投与可能なDDSの治療効果が発表され,国内でも昭和28年頃から使用されるようになったこと,これらのスルフォン剤によ
る治療実績が積み重ねられ,スルフォン剤の評価が確実なものとなっていき,現実にも患者数が大きく減少していったことが認められる。そうすると,本件被告人の病状や,菊池事件について最初に開廷場所指定がされた昭和27年10月当時のハンセン病に関する科学的知見を踏まえて検討しても,
本件被告人が極めて長期間の療養を要する伝染性疾患の患者であ
って,
裁判所に出頭を求めて審理することが不可能ないし極めて不相当な場合など真にやむを得ない場合に当たるとは認められない(なお,控訴審について開廷場所指定がされた昭和28年11月当時は,らい予防法上,裁判手続に出頭する場合に国立療養所から外出することも想定されていたと認められるから,この頃には,開廷場所指定の必要性はいっそう低下していたといえる。。


したがって,菊池事件の審理が開始された昭和27年当時,当事者がハンセン病に罹患しているという事実のみから開廷場所指定を行うことについて合理性はなく,菊池事件における開廷場所指定は裁判所法69条2項に違反するというべきである。
そして,

ハンセン病を理由とする場合とそれ以外の病

気を理由とする場合とで開廷場所指定の上申に対する認可率が大きく異なることや,ハンセン病患者の裁判に関する国会等の議論の状況及び最高裁判所裁判官会議の議決に照らせば,前記の定型的かつ不合理な取扱いは,ハンセン病患者に対してのみ行われていたと認められる。
したがって,菊池事件における開廷場所指定は,本件被告人がハンセン
病患者であることを理由として行われた合理性を欠く差別であり,憲法14条1項に違反すると認められ,このような違法・違憲の開廷場所指定に基づき行われた第一審及び控訴審の審理もまた,憲法14条1項に違反するというべきである。
また,第一審又は控訴審の審理において,本件被告人以外の関係者は予
防衣を着用し,裁判官及び検察官は,証拠物を扱う際,手にゴム手袋をはめ,箸を用いるなどしたことが認められ,これは,ハンセン病に感染することを恐れたことによるものと考えられるところ,
当時のハンセン病に関
する科学的知見に照らせば,この点も,本件被告人がハンセン病患者であることを理由として行われた合理性を欠く差別であり,憲法14条1項に違反する。

憲法37条1項,82条1項違反の有無
原告らは,
菊池事件における開廷場所指定が裁判所法69条2項に違反
し,そのような法廷で行われた審理は公開原則を定めた憲法37条1項,82条1項に違反すると主張する。
憲法82条1項において裁判の対審及び判決を公開の法廷で行うこと
が規定された趣旨は,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,
ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとする
ことにあり(最高裁平成元年3月8日大法廷判決・民集43巻2号89頁参照)
,同法37条1項は,そのような公開の法廷で公平かつ迅速な裁判を受けることについて,特に刑事被告人の権利を明確にしたものである。を踏ま

えると,開廷場所は,傍聴人が入るのに十分な場所的余裕があり,開廷の告示をするなどの方法によりその場所で訴訟手続が行われていることを一般国民が認識することが可能で,かつ,一般国民が傍聴のために入室することが可能な場所であることが必要であり,その選定に当たっては,訴訟手続が秩序正しく行われることが可能なだけの物的設備を備え,かつ,公開の要請をも満たすことのできる開廷場所としてふさわしい場所であるかどうかについて,法廷が開かれる部屋の広さ,具体的形状,物的設備の状況等を踏まえて検討されなければならないというべきである。本件についてこれをみると,
菊池恵楓園で行われた菊池事件以外の裁判

について,
熊本地方裁判所刑事首席書記官が開廷場所指定の上申に先立ち
開廷予定施設とみられる慰安所を視察したことが認められるものの(前記菊池恵楓園又は菊池医療刑務支所を開
廷場所に指定するに当たり,どのような検討がされたか明らかでなく,一部保管されていた開廷場所指定文書にも開廷場所を指定する具体的理由は記載されていない。また,開廷場所指定の方法としても,開廷場所指定文書に菊池恵楓園又は菊池医療刑務支所という施設名を記載するにとどまり,
施設内のどの建物ないしどの部屋を開廷場所として選定するのか具体的に特定する記載をしていなかったことが認められる。
このような指定の仕方自体,相当でないというべきであるが,菊池事件の審理が行われた法廷の具体的形状等については,客観的な資料が乏しい
状況にある。
この点,菊池恵楓園で審理が行われた法廷の具体的な場所については,菊池事件を2回見に行ったことがあるという原告3が,
1回目は自治会事
務所(園内事務支所)で,2回目は慰安所(旧公会堂)で行われていた旨を供述又は陳述しているところ,その内容は,菊池恵楓園で行われた菊池
事件以外の裁判に関する入所者
おむね整合するものであり,これらの建物自体は,上記ヒアリング結果や建物の写真(甲24・7,8頁)から判断する限り,傍聴人が入るのに十分な場所的余裕を備えていたことがうかがわれ,部屋の広さや具体的形状,物的設備の状況等から見て,
開廷場所としてふさわしい場所でなかったと

はいえない。また,原告3は,1回目は建物の中を見ることはできず,2回目も出入口前に張ってあった鯨幕を開けて中を覗いたがすぐに追い出された旨を供述しており,法廷内の状況を詳細に確認できなかったことがうかがわれる。なお,原告3は,最高裁判所に設置された調査委員会によるヒアリングの際,
菊池事件の審理が自治会事務所内のタイプライター室

で行われたとも述べているが
(甲16・10頁以下)これも実際に法廷内

の状況を見たことを前提とするものではない。
また,原告1は,別の入所者から聞いた話として,慰安所(旧公会堂)で行われた菊池事件の審理の状況を供述又は陳述するが,伝聞である上,平成16年に行われたハンセン病問題検証会議の際には,当該入所者が傍聴したのはダイナマイト事件
述べている(甲33・6頁)

そのほかの入所者や当時の状況を知る者のヒアリング結果等を踏まえて検討しても,菊池恵楓園で開かれた法廷について,物的設備の状況等を詳細に認定することは困難であるといわざるを得ない。
また,菊池医療刑務支所については,臨時法廷を備えた施設であり,内
部の設備も一通り法廷の形態を備えていたことが認められ,同支所で行われた菊池事件の審理の場所が上記臨時法廷以外の部屋であったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,菊池事件の審理が行われた場所が,法廷が開かれる部屋の広さ,具体的形状,物的設備の状況等といった観点から開廷場所としてふ
さわしい場所でなかったとは認められず,この点で公開原則違反があったとは認められない。
次に,一般国民の傍聴の観点から検討する。
ハンセン病療養所である菊池恵楓園や刑事収容施設である菊池医療刑務支所は,
いずれもその場所で訴訟手続が行われていることを広く国民が

認識することが容易ではないという点で,裁判所庁舎と比較すると,広く国民が傍聴するのに適した場所とはいえないものの,一般論として,被告人が長期間の療養を要する伝染性疾患の患者である場合など,伝染予防の観点から,
必ずしも国民の傍聴に適した場所とはいえない病院や療養所等
を開廷場所とすべき場合もあり得るのであって,裁判所法69条2項は,
このような事態も許容しているものと解される。また,原告らは,菊池事件についての開廷場所の指定が裁判所法69条2項に違反することから直ちに憲法37条1項,82条1項に違反するかのような主張をするが,裁判所外における開廷の必要性の問題と開廷場所における裁判の公開の問題とは別の事柄であり,菊池事件についての開廷場所の指定が裁判所法69条2項に違反するものであったからといって,直ちに憲法37条1項,82条1項の定める公開原則違反となるものではない。
しかしながら,
裁判所法69条2項が必ずしも国民の傍聴に適した場所
とはいえない病院や療養所等を開廷場所とすることを許容しているのは,あくまで同項に基づき適法な開廷場所指定がされることを前提とするものであり,
裁判所外における開廷の必要性の問題と開廷場所における裁判

の公開の問題が別の事柄であるとしても,法廷は公開の要請と密接不可分の関係にある。こうした点や,裁判所法69条2項が,法廷を原則として裁判所庁舎で開くこととした同条1項の例外的規定であることからすると,
裁判所庁舎に出頭を求めて審理することが不可能ないし極めて不相当な場合など真にやむを得ない場合であるという必要性の要件を満たさず,
同条2項に違反する開廷場所指定がされた場合には,原則に立ち返り,裁判所庁舎と同程度に国民の傍聴に適した場所で開廷し,かつ,相当の告示が行われない限り,公開の要請を満たさないから,憲法37条1項,82条1項違反の問題が生ずると解するのが相当である。
以上の観点を踏まえて検討すると,菊池医療刑務支所で行われた審理
(第一審第5回公判以降)については,同支所の正門等及び熊本地方裁判所の掲示場に開廷の告示がされていたことが認められ,菊池恵楓園で行われた審理についても,告示に関する文書は残されていないものの,開廷場所指定制度の運用として開廷の場所等に相当の告示を行うことが望ましいと解されていることや,実際に他のハンセン病療養所等で行われた裁判
について開廷の告示がされた事例が複数確認されていることからすると,菊池医療刑務支所と同様の告示がされていたものと認められる(前記認定事実)

しかしながら,菊池恵楓園において菊池事件の審理が行われた場所のうち,慰安所(旧公会堂)は患者地帯と職員地帯の境界線上に建てられており,園外からの立入りが可能なエリアに接していたものの,自治会事務所(園内事務支所)は患者地帯に建てられており,園外から許可なく立ち入ることができない場所であったことが認められる(甲24,37)。
また,前記のとおり,開廷場所指定文書には菊池恵楓園という施設名が記載されるにとどまり,施設内のどの建物ないしどの部屋を開廷場所として選定するのか具体的に特定する記載がされていなかったところ,菊池医
療刑務支所がハンセン病患者の裁判を行うことも予定して臨時法廷を備える施設として開庁したのに対し,菊池恵楓園は,ハンセン病療養所であり,当初は裁判を行う場所として想定されていなかった上,広大な敷地に多数の建物を有し,
昭和27年当時1500名以上のハンセン病患者が入
所していた大規模な施設であったことが認められる
(甲24,
35)さら


に,
審理が行われた自治会事務所
(園内事務支所)
及び慰安所
(旧公会堂)
周辺には開廷の告示がされていなかったことが認められる。
そうすると,開廷の告示として開廷場所指定文書と同程度の記載しかされておらず,
掲示場所も熊本地方裁判所の掲示場及び菊池恵楓園の正門等
にとどまっていた可能性が高く,そのような告示の仕方は相当性を欠くの
ではないかという疑問が生ずる。
そして,
より強まるものといわざるを得ない。
すなわち,前記

菊池恵楓園で審理が行われた昭和27年

から昭和28年当時は,
国がハンセン病患者に対する強制隔離政策を推進
し,特に熊本県においては,昭和26年に菊池恵楓園の増床工事が完了して無らい県運動の機運が他の地域と比較しても高まっていた時期であり,国民は,このような国や自治体の施策を通じ,ハンセン病が恐ろしい伝染病であるとの不安や恐怖心を強め,ハンセン病患者に対する偏見・差別意識を強く持つようになり,そのような患者が入所するハンセン病療養所についても忌避すべき場所であると認識するようになったものである。こうした状況において,国会等ではハンセン病患者の裁判のため臨時法廷を設置することの必要性が議論され,その結果,昭和28年に菊池医療刑務支所が開庁したこと,昭和23年の最高裁判所裁判官会議により,ハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申については事務総局が定型的に処理することとされ,他の病気等を理由とする場合と比較して極めて高
い認可率であったことが認められる。
これらの事実を総合すると,
ハンセン病を理由とする開廷場所指定それ
自体が,
裁判の場においてハンセン病患者とそれ以外の者とを接触させな
いことを目的とする点で国の強制隔離政策の一環ともいうべき実態であったと考えられ,最高裁判所は,菊池事件についての開廷場所指定に当た
り,
上記のようなハンセン病患者やハンセン病療養所に対する国民一般の意識を踏まえ,
一般の傍聴希望者が来園することは現実には想定し難いこ
とを認識した上で,開廷場所指定を行っていた疑いがあり,開廷の告示を行った熊本地方裁判所においても同様の疑いがある。そして,菊池事件を含め,菊池恵楓園で行われた裁判について,ハンセン病療養所の入所者,
職員,家族,厚生省職員及び報道関係者以外の一般国民が傍聴したことを示す記録がないことも,このことを裏付けているように思われる。そうすると,菊池事件について,少なくとも菊池恵楓園で行われた審理は,
その場所で訴訟手続が行われていることを広く国民が認識することが容易ではないというにとどまらず,当時の社会状況に照らし,一般国民に
おいて訪問することが事実上不可能な場所を開廷場所に指定し,
一般国民
の傍聴を拒否したに等しいとも考えられる。
以上によれば,本件においては,菊池事件の審理が行われた場所が法廷の具体的形状等の観点から開廷場所としてふさわしい場所でなかったとは認められず,開廷の告示に関する詳細な状況も明らかでないため,実際に公開の要請を満たさないような審理が行われ,公開原則違反であると断定することには躊躇があるものの,少なくとも菊池恵楓園で行われた審理
については,裁判所庁舎と同程度に国民の傍聴に適した場所で開廷したものではなく,相当の告示も行われなかったものとして,憲法37条1項,82条1項に違反する疑いがあるといわざるを得ない。

憲法37条2項,3項違反の有無
原告らは,菊池事件の審理が憲法37条2項,3項に違反すると主張するので検討する。
憲法37条3項が定める弁護人選任権は,単に弁護人の選任を禁ずることができないということにとどまらず,弁護人から弁護を受けることを実質的に保障するものである(憲法34条前段に関する最高裁平成11年3
月24日大法廷判決・民集53巻3号514頁参照)したがって,。
弁護人
は,被告人の利益のために訴訟活動を行うべき誠実義務を負っており,正当な理由なく被告人の主張と相反する答弁をしたり,被告人の主張を無にするような訴訟活動をしたりした場合には,誠実義務に違反し,被告人の実質的な意味での弁護人選任権を侵害することになると解され,また,裁
判所がそれを放置して結審した場合には,訴訟手続が違法となり,その程度によっては,
審理自体が弁護人選任権を侵害するものとして憲法37条
3項に違反することになると解すべきである。
本件についてこれをみると,外形的な公判の経過から,以下のような事実を指摘することができる(前記認定事実)


すなわち,第一審の弁護人は,殺人罪が追起訴された後の最初の期日である第2回公判において,本件被告人が公訴事実を否認しているにもかかわらず,現段階では別段述べることはない旨述べたにとどまり,殺人罪の罪体立証のために捜査機関が作成した関係者の供述調書等を含む検察官請求証拠について全部同意し,その後は結審に至るまで,弁護人として殺人罪を争うとの主張をしたり,本件被告人に有利な証拠を請求したりした形跡はなく,被告人質問も行わなかったこと,第3回公判においては,検察官が請求した追加証拠について全部同意したところ,これには本件被告人が犯行を告白したのを聞いたという親族の供述調書が含まれており,公判において同親族の証人尋問は行われなかったこと,本件被告人が自白した際の供述調書を作成した警察官の証人尋問において反対尋問をしなか
ったこと,公判外で行われた現場検証に立ち会わなかったこと,第5回公判において,警察官の証人尋問の際,本件被告人の弁解録取書の作成状況につき簡単な質問をしたのみであったことが認められる。
このような弁護人の訴訟活動は,積極的に本件被告人の主張と矛盾した主張をするものではないが,殺人罪を全面的に争う本件被告人の主張を無
にするものであって,第一審の弁護人は,本件被告人の利益のための実質的な弁護を何ら行っていないといわざるを得ない。したがって,第一審の弁護人は,
本件被告人の利益のために訴訟活動を行うべき誠実義務に違反
しており,本件被告人は,第一審の審理において,実質的な意味で弁護人から弁護を受けられなかった疑いがある。

そして,第一審の熊本地方裁判所は,第3回公判において検察官から請求された証拠については本件被告人にも意見を確認したことが認められるものの,
第2回公判における検察官請求証拠について本件被告人の意見
を確認した形跡はなく,弁護人に対し,現場検証への立会い,警察官の証人尋問における反対尋問,被告人質問及び弁論を積極的に促した形跡もな
い。そうすると,裁判所は,弁護人の違法・違憲の訴訟活動を放置して結審したものとして,その訴訟手続自体,本件被告人の実質的な意味での弁護人選任権を侵害した疑いがあるといわざるを得ない。
しかしながら,第一審の審理について,上記のような事実が指摘できるとしても,
これらの事実に係る弁護人の訴訟活動や裁判所の訴訟指揮を含
む審理の違法性の問題は,刑事事件全体の証拠構造のほか,検察官及び弁護人の争い方を含む事実認定の問題と密接に関わるものであるから,検察
官や弁護人が関与しておらず,刑事事件の証拠全部を取り調べていない本件において,
直ちに憲法37条3項に違反すると断定することまではでき
ない。
さらに,控訴審及び上告審においては,全患協の支援を受けて,本件被告人自ら第一審の弁護人とは別の弁護人を複数選任し,弁護人らにおいて,
本件被告人の主張に沿う弁論をしたところ,その中で,本件被告人がハンセン病患者であることを理由とする差別的取扱いを受けたことにつき憲法37条1項に違反するなどの指摘をしたほか,弁護人の請求に基づく事実の取調べがされたことが認められ,第一審とは異なり,本件被告人が実質的な弁護を受けたことが認められるから,第一審の訴訟手続の瑕疵は一
定程度治癒されたとみる余地もあり,菊池事件の審理を全体としてみれば,本件被告人について,実質的な意味での弁護人選任権が侵害されたといえるかは疑問がある。
そうすると,
菊池事件の審理が憲法37条3項に違反するとまでは認め
難い。

なお,本件全証拠によっても,本件被告人が証人に審問する機会を与えられなかったとは認められず,警察官の証人尋問で弁護人の反対尋問が不十分であった点は憲法37条3項の問題として捉えることが相当であるから,菊池事件の審理が憲法37条2項に違反するとは認められない。オ
憲法36条(拷問禁止)及び38条2項(強制等による自白排除法則)違反の有無
原告らは,本件被告人が,逮捕される際に警察官から拳銃で撃たれ,重傷を負った状態で自白調書を作成されたことは,憲法36条及び38条2項に違反すると主張するところ,逮捕時の状況や自白調書作成時の状況を認定できる証拠はないから,これらの手続違反があったと認めることはできない。カ
小括
以上によれば,菊池事件の審理は,本件被告人がハンセン病患者であることを理由に合理性を欠く差別をしたものとして憲法14条1項に違反し,また,菊池事件における開廷場所指定及び審理を総体として見ると,ハンセン病に対する偏見・差別に基づき本件被告人の人格権を侵害したものとして,憲法13条にも違反することが認められ,公開の原則を定めた憲法37条1
項及び82条1項に違反する疑いがある。
菊池事件について,再審事由があるか

手続の憲法違反が刑事訴訟上の再審事由に当たるか
再審は,確定判決に重大な事実誤認又はその疑いがある場合に,事実認定
の不当を是正するとともに,有罪の言渡しを受けた者を救済するため,さらに当該確定判決を経た事件について審判する非常の訴訟手続である。そのため,現行の再審制度は実体的な事実誤認の是正を中核とするものであって,
手続に憲法違反があることは刑事訴訟法435条所定の再審事由に掲げられておらず,実際の運用としても,事実誤認を問題とする同条6号を
再審事由として請求される事例がほとんどである(甲8参照)

しかしながら,同条には,確定判決に関与した裁判官等が被告事件について職務に関する罪を犯したことが再審事由として規定されているところ(7
号)
,これも確定判決の事実認定に誤りがあることが推測される一類型ではあるものの,事実誤認の是正に直ちに結びつくものではない。したがって,
刑事訴訟法は,事実誤認の是正のみならず,公正の観点から確定判決を是正すべき場合があり得ることを予定しているともいえ,
再審が事実誤認の是正
のみを目的とする制度ではないと解する余地もあると考えられる。憲法が国
の最高法規であることからすると,
これに違反するような重大な瑕疵があり,
被告人の権利が侵害されている場合について,
後記のとおり有罪の言渡しを
受けた者の被害回復を直接の目的とする再審制度の対象からあえて除外されたとは考え難く,憲法違反があることが上告理由とされていること(刑事
訴訟法405条1号)
,判決確定後に当該事件の審判が法令に違反したこと
を発見した場合に非常上告手続があることとの均衡からも,
手続に憲法違反
があることが再審事由に当たると解することにも相当の理由があるというべきである。
もっとも,再審が確定判決の効力を失わせる非常特別の手続であることか
らすると,再審事由は厳格に解釈されるべきであり,明文にない再審事由を認めることには慎重でなければならない。また,手続の憲法違反が再審事由に当たるとする見解も,そのことのみで再審事由を認めるのではなく,憲法が定める手続の適正に違反する事態が生じ,かつ,それが有罪判決に影響を及ぼすことを前提としているものと解される(甲53)


そうすると,手続に憲法違反がある場合に再審により救済すべき場合があり得るとしても,特定の事件について再審事由があるか否かは,当該憲法違反が有罪判決に影響を及ぼすか否かという観点から慎重に検討されなければならないところ,菊池事件の審理が憲法14条1項に違反し,82条1項に違反する疑いがあるとしても,
これらの憲法違反は直ちに刑事裁判におけ

る事実認定に影響を及ぼす手続違反ということはできないから,
これらの憲
法違反があることのみで再審事由があると認めることはできない。イ
本件被告人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠があるか
原告らは,本件被告人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠があるから,刑
事訴訟法435条6号の再審事由があると主張するところ,
同号該当事由が
あるか否かは,刑事裁判における事実認定の問題であり,本来,刑事手続である再審請求審において,検察官及び弁護人が関与した上で審理・判断されるべき事柄であるから,少なくとも再審が開始されていない状況で,検察官及び弁護人が関与していない民事訴訟において先行して判断することは相当でない。

小括
以上によれば,本件訴訟においては,菊池事件につき再審事由があると認めることは困難である。
菊池事件について,
検察官の再審請求権限不行使が原告らとの関係で国家賠

償法上違法であるか

総論
国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がその損害を賠償する責任を負うことを規定するものである(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)


したがって,国家賠償法1条1項の違法性を肯定するためには,国民の権利又は法律上保護される利益が侵害されたことが必要であって,賠償を求める国民の事実上の利益が侵害されたというだけでは不十分である。もっとも,当該国民の主張する利益がいかなる場合に国民の権利又は法律上保護される利益といえるかについては,国又は公共団体が行使する公権力の趣旨及び
目的と関連するから,
これを踏まえて個別具体的に判断されるべきものであ
り,本件においては,検察官の再審請求権限の趣旨及び目的を踏まえて検討する必要がある。

検察官の再審請求権限の趣旨及び目的
前記のとおり,再審制度は,有罪の言渡しを受けた者を救済するための非常の訴訟手続であるところ,このような再審制度の趣旨や,現行法上,再審が有罪の言渡しを受けた者の利益のために行われることとされていること(刑事訴訟法435条柱書)からすると,同法439条1項1号において検察官に再審請求権限が付与されている趣旨は,公益の代表者として有罪の言渡しを受けた者の正当な利益を擁護すべき地位にあることによるものであり,したがって,検察官の再審請求権限は,直接的には有罪
の言渡しを受けた者の被害回復を目的として行使されるべきものであって,
これを通じて国家及び社会の秩序維持という公益が図られることになるものと解するのが相当である。
この点,
被告は,
検察官に再審請求権限が付与されている趣旨について,
公訴権の行使と同様,その権限の行使によって国家及び社会の秩序維持と
いう公益を図ることにあり,有罪の言渡しを受けた者の被侵害利益の回復を直接の目的とするものではないと主張する。
しかし,公訴権については,現行法上,起訴独占主義(刑事訴訟法247条)及び起訴便宜主義(同法248条)が採用されており,専ら公益を図るために行使されるものとして検察官の専権とされているから,犯罪被
害者や告訴人等が受ける利益は事実上のものと解するほかはないのに対し,再審については上記のような規定はなく,検察官以外にも,有罪の言渡しを受けた者や一定の範囲の親族等にも再審請求権が認められていること
(同法439条1項)前記のとおり,

再審制度そのものが有罪の言渡
しを受けた者の利益のためのものであることに照らせば,検察官の再審請
求権限の趣旨及び目的を,公訴権の行使と同様に解することはできない。したがって,この点に関する被告の主張は採用することができない。ウ
本件被告人との関係
検察官の再審請求権限の趣旨及び目的を前記のように解すると,菊池事
件について有罪の言渡しを受けた者である本件被告人は,検察官の再審請求権限の行使により事実上の利益を受けるにとどまらず,確定判決が是正されることについて法律上保護される利益を有することとなるが,そうであるとしても,菊池事件について,検察官において再審請求権限を行使しなかったことが,直ちに国家賠償法上違法と評価されるわけではない。すなわち,
検察官が再審請求権限を行使するか否かについては一定の裁
量が認められるというべきであり,
その権限を定めた法令の趣旨,
目的や,
その権限の性質等に照らし,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときでない限り,その権限の不行使は,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受けるものではない(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁,同平成
7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁,同平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁等参照)。
そして,刑事訴訟法435条において手続の憲法違反は再審事由として規定されておらず,
前記のとおり菊池事件の審理が憲法14条1項に違反
し,同法82条1項に違反する疑いがあるとしても,本件訴訟においては
菊池事件について再審事由があると認めることができないことに加え,刑事手続上の憲法違反が再審事由に当たるか否かについては,人権の擁護と適正手続の保障を貫徹する立場から,立法論としても解釈論としても再審事由を拡張する見解や手続の憲法違反が再審事由に当たるとする見解が存する一方で
(甲8,
53)再審が裁判の存在根拠としての裁判の確定力


を失わせる非常特別の救済措置であることに鑑み,その運用は慎重であるべきであり,
特に再審事由の解釈は明瞭厳格でなければならないとする伝
統的な見解(例えば,最高裁昭和25年4月21日大法廷決定・刑集4巻4号666頁)や,訴訟法的事実の誤認は再審の問題ではないとしてあくまで実体的な事実誤認を中心として再審制度を理解していると解される
司法判断(最高裁昭和43年7月4日第一小法廷決定・刑集22巻7号5
事手続上の憲法違反が再審事由に当たるとする見解が大勢を占める状況にあったとは認められない。
また,全療協らが再審請求の要請をした当時,手続に憲法違反がある場合に,
それが再審事由に当たることを前提として検察官の再審請求権限の不行使につき国家賠償法上違法の問題が生ずることを示した司法判断はなく,反対に,検察官の再審請求権限の行使は国家及び社会の秩序維持という公益を図る目的で行われるものであり,有罪の言渡しを受けた者の被侵害利益の回復を直接の目的とするものではないとして,検察官が再審請求をしないというだけで有罪の言渡しを受けた者の法的保護に値する利
益が侵害されるとは評価できないとした司法判断(東京高裁平成20年2月20日判決・判例タイムズ1301号201頁)があったことなどに照らせば,菊池事件の審理が憲法14条1項に違反し,同法82条1項に違反する疑いがあるとしても,そのことから直ちに,検察官の再審請求権限の不行使が著しく合理性を欠くといえるかについては疑問がある。
さらに,検察官の再審請求権限は,特定の刑事事件において有罪の言渡しを受けた個人の救済を直接の目的とするものであるから,これを行使するか否かにつきさほど広い裁量が認められる性質のものではないと解されるものの,他方で,有罪の言渡しを受けた者自身が再審請求権を有する点で,二次的に機能することが予定されている権限であるところ,本件に
おいては,
本件被告人自身が三度にわたって再審請求をしていずれも棄却
されていること,
本件被告人には再審請求権を有する親族で存命の者がお
り,
このうち長女は母とともに第3次再審請求の棄却決定に対して即時抗ことが認め
られる。

これらの事情を総合考慮すると,検察官が再審請求権限を行使しなかったことが,
本件被告人との関係において許容される限度を逸脱して著しく
合理性を欠くと認めることはできない。
以上によれば,
検察官が菊池事件について再審請求権限を行使しなかっ
たことが,本件被告人との関係で,国家賠償法上違法であるということはできない。

原告らとの関係
前記のとおり,再審制度の趣旨は,直接的には有罪の言渡しを受けた者の救済を図ることにあるところ,原告らは,菊池事件について有罪の言渡しを受けた者ではないし,本件被告人の親族等ではなく,菊池事件について再審請求権を有する者ではない。したがって,菊池事件の再審請求がさ
れることについて,
原告らに権利又は法律上保護される利益があるとは認
められない。
また,前記のとおり,検察官の再審請求権限の不行使が本件被告人との関係において国家賠償法上違法とはいえない以上,原告らとの関係で違法となる余地はないというべきである。

これに対し,原告らは,①菊池事件の審理に憲法違反があり,国にはこのような憲法違反の先行行為に基づく被害回復義務として再審請求権限を行使する義務があるところ,その義務の名宛人は原告らハンセン病病歴者すべてであり,原告らの被害回復請求権は憲法13条,民法723条,ハンセン病問題解決促進法によって認められた法的保護に値する権利で
ある,②検察官の注意義務の名宛人が本件被告人であるとしても,原告らは本件被告人との間で民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係を有するから,同条類推適用により損害賠償請求できる地位にあり,検察官の再審請求権限の不行使は原告らとの関係で違法になると主張する。

しかしながら,上記①について,原告らの主張のうち再審請求義務の名宛人をハンセン病病歴者すべてであるとする点は,有罪の言渡しを受けた者の被害回復を直接の目的とする再審制度の趣旨と整合せず,また,およそすべてのハンセン病病歴者が菊池事件について再審請求権を有すると解するに等しいこととなり,刑事訴訟法439条1項が再審請求権者を限定していることにも反するから,相当でない。
また,
憲法違反の先行行為に基づく被害回復義務として検察官が再審請
求義務を負うという点については,国家賠償法1条1項にいう公権力の行使には不作為も含まれ,その前提となる作為義務が一定の要件の下で発生する場合もあるとは考えられるものの,法令により公権力を行使することが義務として定められている場合を除き,権限の行使主体には一定の
裁量が認められるのが通常であることからすると,上記のような作為義務が発生する場合があるとしても,国民の生命,身体等の重要な権利に対する危険が切迫している場合などの緊急の状況下に限られるものと解される。本件においては,既に本件被告人の死刑が執行されていることから,作為義務を発生させるだけの危険の切迫性が認められるかは疑問がある。
この点,原告らは,菊池事件につき再審請求権限を行使することが本件被告人や原告らハンセン病病歴者に対する偏見・差別による被害の回復のために必要である旨主張しており,これを作為義務の発生根拠たる危険の切迫性に関する事情とみる余地もある。しかしながら,原告らハンセン病病歴者やその家族について,ハンセン病に対する偏見・差別による人格権
侵害というべき事態が現に存在しており,菊池事件を特別法廷で審理したことも,そのようなハンセン病に対する偏見・差別が現れた出来事の1つであるとしても,原告らを含むハンセン病病歴者の被害は,国の強制隔離政策等によってハンセン病病歴者及びその家族が大多数の国民から偏見・差別を受ける一種の社会構造が形成されたことによって生じたものであ
って,菊池事件それ自体によって生じたものではない。したがって,上記のような事態は,
菊池事件という個別の刑事事件について再審請求権限を
行使することで除去し得る危険ということはできない。
原告らハンセン病病歴者がハンセン病に対する偏見・差別により受けてきた被害につき救済を受ける権利は,憲法13条等により保障されるというべきであるところ,本件を含めハンセン病に対する偏見・差別を問題とると,

検察官が菊池事件について再審請求をした場合,これによる社会的な影響は相当大きいと考えられ,ハンセン病病歴者やその家族らが受けてきた偏見・差別の救済という観点からもその意義は小さくないと考えられる。しかしながら,
検察官の再審請求が上記のような社会的影響を及ぼし得る
ものであるとしても,それは,ハンセン病に対する偏見・差別の問題がそれだけ根深く,大きなものであるからであって,原告らの権利が現に菊池事件の審理によって侵害されたからではない。
菊池事件についての再審請求の社会的意義を踏まえても,原告らが,再審制度が被害回復の対象として予定する有罪の言渡しを受けた者でない
以上,その主張は前提を欠くといわざるを得ない。
また,
原告らが主張の根拠として指摘するハンセン病問題解決促進法も,その趣旨について,
この法律は,国によるハンセン病の患者に対する隔離政策に起因して生じた問題であって,ハンセン病の患者であった者等及びその家族の福祉の増進,名誉の回復等に関し現在もなお存在するもの(ハンセン病問題)の解決の促進に関し,基本理念を定め,並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに,ハンセン病問題の解決の促進に関し必要な事項を定めるものとする。(1条)と規定し,基本理念について,
ハンセン病問題に関する施策は,国によるハンセン病の患者に対する隔離政策によりハンセン病の患者であった者等及びその家族が受けた身体及び財産に係る被害その他の社会生活全般にわたる被害に照らし,その被害を可能な限り回復することを旨として行われなければならない。(3条1項)と規定しているとおり,原告らハンセン病病歴者の被害が社会生活全般にわたるものであることを前提としており,個々の差別事例について法的措置をとることを想定したものではない。そして,これを踏まえ,
国の責務については,

基本理念にのっとり,ハンセン病の患者であった者等及びその家族の福祉の増進等を図るための施策を策定し,及び実施する責務を有する。(4条)と規定しているとおり,国の責務として

想定されているのはハンセン病病歴者らの福祉の増進等を図るための施策を策定し,実施することであって,個別の刑事事件である菊池事件について再審請求権限を行使することが上記施策に含まれるものではない。
したがって,
ハンセン病問題解決促進法を根拠とする被害回復請求権に
基づいて,検察官に再審請求権限の行使を求めることはできず,原告らハンセン病病歴者すべてとの関係で検察官が菊池事件について再審請求権限を行使する義務があると認めることはできない。
次に,前記②の主張について検討するに,民法711条は,損害賠償責
任を負うのは違法行為の相手方に対してのみであるという法の原則に対し,生命侵害の場合に,被害者の父母,配偶者及び子という一定の身分関係がある者について,損害賠償請求権を有することを定めた例外的な規定である。その上で,同条所定の者以外の者については,被害者との間に同条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存し,被害者の死亡により
甚大な精神的苦痛を受けた者に限って,同条の類推適用により,加害者に対して直接に固有の慰謝料を請求することができるものと解されている(最高裁昭和49年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2040頁参照)

本件についてこれをみると,原告らは,ハンセン病病歴者と本件被告人
が,偏見・差別の下,憲法の埒外での集団生活を送らざるを得なかったという分かち難い共通性・共同性があるから,民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係を有する旨主張し,また,検察官が再審請求をしなかったことについて,原告らは本件被告人と同じように身を切られるほどの精神的苦痛を受け,その甚大さは生命侵害にも比肩する旨主張する。しかしながら,原告らの上記主張の前段について,ハンセン病療養所において家族同然の関係を築いた者らがいることは認められるものの(甲17ないし21,37,73ないし77,原告1本人,原告3本人,原告5本人,
原告6本人)本件全証拠によっても,

原告らと本件被告人とがその
ような関係にあったとは認められない。原告らの主張は,国の強制隔離政策及びハンセン病に対する偏見・差別によりハンセン病療養所での集団生
活を余儀なくされたというものであるところ,その本質は,強制収容の背景にあるハンセン病病歴者らが一般の社会生活から排除される一種の社会構造の強固さをいうものであり,実質的には差別被害による精神的苦痛の実態をいうものであるから,それがいかに甚大なものであったとしても,本件被告人との身分関係を基礎付ける事情とはなり得ないというべきで
ある。
そのほか,原告らは,民法711条の適用ないし類推適用が広く認められたものとして裁判例を多数引用するが,いずれも同条ではなく民法709条,
710条に基づく損害賠償請求が認められたにすぎない事案であるか,本件とは事案を異にするものである。

したがって,原告らの主張は採用することができない。
先に説示したとおり,菊池事件を特別法廷において審理したことは,ハンセン病に対する偏見・差別が現れた出来事の1つであるといえるものの,原告らハンセン病病歴者が受けた被害は,このような個別の出来事それ自体によって生じたものではなく,国の強制隔離政策等によって形成された
社会構造全体により生じたものとして一体的に捉えるべきである。したがって,原告らは,国の強制隔離政策により被害を受けたことを主張して,国家賠償法に基づき損害賠償請求をすることができる立場にあると考えられ,実際,原告らの中には,平成13年熊本地裁判決における当事者であった者もいることが認められる。
他方,原告らが,国の強制隔離政策の一環として行われた菊池事件の審理手続の瑕疵を取り上げて,個別に損害賠償を請求することは,国家賠償
法1条1項の規定及び解釈上,認める余地がないといわざるを得ない。オ
小括
したがって,菊池事件について,検察官の再審請求権限不行使が原告らとの関係で国家賠償法上違法であるとは認められない。

3結論
以上のとおりであるから,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
熊本地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官


裁判官

裁判官

野寺優子永田雄一吉永大介
(別表)

番号

ハンセン
番号
2468101214
24

上申
理由
庁名
年月日民事
横浜地裁
S23.1.30
ハンセン病
仙台高裁
S23.2.13
ハンセン病
東京地裁
S23.4.5
腰椎カリエス
千葉地裁
S23.6.10
結核
横浜地裁
S23.6.23
ハンセン病
東京地裁
S23.7.13
神経痛等
広島高裁
S23.8.28
ハンセン病
新潟地裁
S23.9.18
老衰
東京高裁
S23.10.4
腰椎カリエス
広島高裁
S23.10.14
胃潰瘍
札幌高裁函館支部S23.10.18
ハンセン病
東京地裁
S23.11.1
結核
東京地裁
S23.11.1
坐骨神経痛
松江地裁浜田支部S23.11.22
関節ロイマチス

開廷する
裁判所

処理
結 果
年月日
横浜刑務所
S23.1.30認可
盛岡少年刑務所
S23.2.13認可
東京拘置所
S23.4.7認可
松戸療養所
S23.6.10認可
文京区山の内病院S23.6.26
撤回
東京拘置所
S23.7.29認可
岡山地方裁判所
S23.9.15認可
柏崎簡易裁判所
S23.10.26
撤回
東京拘置所
S23.10.15認可
広島刑務所
S23.12.9
撤回
青森県松丘保養園S23.10.28認可
東京拘置所
S23.11.1
撤回
東京拘置所
S23.11.1
撤回
島根県大森町巡査駐在所
S24.1.16
撤回
開廷場所

盛岡地裁

S23.11.24

漁期の関係
17192123252729313335373941
東京地裁
名古屋地裁
名古屋高裁
大阪地裁
東京高裁
東京高裁
東京高裁
登米簡裁
前橋地裁太田支部
横浜地裁
静岡地裁
前橋地裁高崎支部
神戸地裁
東京地裁
東京高裁
東京地裁
東京高裁
熊本地裁
神戸地裁
神戸地裁
東京高裁
佐賀地裁
大阪地裁
東京地裁
奈良地裁
秋田地裁横手支部
岐阜地裁

S24.1.17
S24.3.1
S24.3.31
S24.9.7
S24.9.28
S24.9.28
S24.12.14
S25.1.5
S25.3.16
S25.3.17
S25.4.28
S25.5.1
S25.6.8
S25.6.14
S25.6.27
S25.7.7
S25.7.17
S25.8.14
S25.8.15
S25.10.6
S25.11.9
S25.12.13
S25.12.18
S25.12.19
S25.12.23
S26.2.28
S26.4.13

十二指腸潰瘍
被告人の居宅
ハンセン病
長島愛生園
ハンセン病
長島愛生園
糖尿病
大阪拘置所
腎臓炎
東京拘置所
老衰
東京拘置所
老衰,左座骨神経痛
東京拘置所
ハンセン病
東北新生園
脊髄損傷
病院
ハンセン病
横浜刑務所
熱海市火災のため
ハンセン病
栗生楽泉園
ハンセン病
神戸拘置所
ハンセン病
東京拘置所
老衰
東京拘置所
ハンセン病
東京拘置所
高血圧症
東京拘置所
ハンセン病
菊池恵楓園
ハンセン病
神戸拘置所
ハンセン病
神戸拘置所
ハンセン病
栗生楽泉園
胃潰瘍
佐賀少年刑務所
ハンセン病
大阪拘置所
糖尿病
病院
多発性リウマチス
吹田簡易裁判所
消化器病
被告人の居宅
ハンセン病
邑久光明園
突発性脱疽
病院
老衰
東京拘置所
肺結核
病院
慢性胆管炎
京都地裁峯山支部
法廷狭隘
甲府警察署
結核
小倉簡易裁判所
胃潰瘍
中津簡易裁判所
心臓弁膜症
中津簡易裁判所
肺浸潤
徳島地方裁判所
動脈硬化症
被告人の居宅
ハンセン病
神戸拘置所
ハンセン病
菊池恵楓園
脊椎カリエス
病院
肺結核
飾簡易裁判所
ハンセン病
浜松支部神山復生病院
ハンセン病
菊池恵楓園
被告人多数
呉支部

ハンセン病
下妻支部多磨全生園
ハンセン病
太田拘置支所
7
911131517
東京高裁

S26.4.13
45
東京地裁
京都地裁
甲府地裁

S26.5.1
S26.5.22
S26.5.23

福岡高裁

S26.6.1
4951535557
大阪地裁
S26.6.18
氷見簡裁
S26.6.19
神戸地裁
S26.9.4
熊本地裁
S26.9.19
神戸地裁豊岡支部S26.10.5
名古屋高裁
S26.10.17
静岡地裁
S26.10.20
熊本地裁
S26.11.15
広島地裁
S26.12.1
水戸地裁
S27.1.25
前橋地裁太田支部S27.2.21
212325

盛簡易裁判所

S23.12.13認可
S24.1.20
S24.3.17
S24.4.12
S24.11.8
S24.10.14
S24.10.14
S25.4.24
S25.1.25
S25.5.9
S25.4.6
S25.5.11
S25.5.26
S25.6.13
S25.6.22
S25.11.28
S25.7.15
S25.11.18
S25.8.23
S25.8.23
S25.10.17
S25.11.21
S26.3.14
S25.12.19
S26.3.17
S28.10.10
S26.3.22
S26.5.4

不指定

認可
認可
撤回
撤回
撤回
認可
認可
不指定

認可
認可
認可
認可
認可
撤回
認可
撤回
認可
認可
認可
認可
撤回
認可
撤回
撤回
撤回
認可

S26.6.27

不指定

S26.6.19
S26.6.9
S26.6.20

不指定

S26.6.28

不指定

S26.9.18
S26.7.16
S26.10.5
S26.10.3
S26.11.7
S26.12.24
S26.11.9
S26.12.4
S27.3.22
S27.2.9
S27.3.24

不指定
不指定

撤回
不指定

認可
認可
撤回
不指定

認可
認可
撤回
認可
認可

番号606264666870
ハンセン
番号
2729317476788082
868890929496
36384345474951
98
上申
開廷する
理由
裁判所
庁名
年月日民事
前橋地裁太田支部S27.2.21
対質・併合審理
熊本地裁
S27.3.18
ハンセン病
宮崎地裁
S27.4.7
肺浸潤
津地裁
S27.5.6
心臓喘息等
熊本地裁
S27.10.1
ハンセン病
福岡高裁
S27.11.8
ハンセン病
大阪地裁
S27.11.21
結核
福岡家裁
S27.12.16
心臓性喘息
熊本地裁
S28.1.14
ハンセン病
熊本簡裁
大阪地裁
S28.1.16
胃潰瘍
熊本地裁
S28.1.26
ハンセン病
熊本簡裁
東京地裁
S28.2.7
ハンセン病
東京地裁
S28.2.11
ハンセン病
ハンセン病
熊本簡裁
熊本地裁
S28.3.31
ハンセン病
熊本簡裁
熊本地裁
S28.5.6
ハンセン病
札幌地裁
S28.5.11
肋膜炎
熊本地裁
S28.5.23
ハンセン病
熊本地裁
S28.6.25
ハンセン病
熊本簡裁
門司簡裁水害のため
福岡地裁
S28.7.2
鈴鹿簡裁火災のため
津地裁
S28.7.18
岡山地裁
S28.8.12
ハンセン病
奈良地裁
S28.8.21
多発性関節レウマチス
福岡高裁
S28.11.2
ハンセン病
福岡高裁
S28.12.21
ハンセン病
ハンセン病
牛窓簡裁
岡山地裁
S29.1.18
ハンセン病
牛窓簡裁
ハンセン病
牛窓簡裁
ハンセン病
岡山地裁
S29.1.25
ハンセン病
ハンセン病
長崎地裁
S29.2.3
結核
福岡高裁
S29.3.24
ハンセン病
岡山地裁
S29.4.28
ハンセン病
津地裁四日市支部S29.4.30
第一腰椎脱臼骨折
岡山地裁
S29.9.6
ハンセン病
牛窓簡裁
前橋地裁高崎支部S29.9.30
ハンセン病
福岡簡裁
S29.11.22
ハンセン病
名古屋地裁
S29.11.29
ハンセン病
神戸地裁
S29.11.30
ハンセン病
神戸簡裁
岡山地裁
S30.1.19
ハンセン病
大阪地裁
S30.1.27
ハンセン病
大阪簡裁
熊本地裁
S30.1.28
ハンセン病
熊本簡裁
脊椎骨折
福岡簡裁
福岡地裁
S30.5.9
膀胱尿道瘻
福岡簡裁
東京地裁
S30.8.31
ハンセン病
鹿児島地裁

S30.9.14
101103105107

53中之条簡裁
S30.10.1
渋谷簡裁
S30.12.14
名古屋地裁
S30.12.20
宮崎地裁延岡支部
S31.2.9
大分家裁
S31.3.28
青森地裁
S31.4.10
名古屋地裁
S31.8.14
54東京地裁
S31.8.16

55岡山地裁

S31.10.24
110
56東京地裁
57大阪地裁
58東京地裁

S31.11.13
S32.2.2
S32.2.4

59仙台地裁

S32.3.13
114
長野地裁
60大阪地裁
61東京地裁

S32.4.5
S32.4.27
S32.6.11



開廷場所
太田拘置支所
菊池恵楓園
病院
被告人の居宅
菊池恵楓園
菊池恵楓園
東京地方裁判所
被告人の居宅
菊池恵楓園
四条拘禁所
菊池恵楓園
東京拘置所
東京拘置所
菊池医療刑務支所

S28.4.11認可

菊池医療刑務支所
S28.6.5認可
不指定
東京地方裁判所
S28.5.26
菊池医療刑務支所
S28.6.5認可
菊池医療刑務支所S28.7.13認可
小倉簡易裁判所
S28.7.6認可
津簡易裁判所
S28.7.23認可
岡山刑務所
S28.8.25認可
吹田簡易裁判所
S28.10.10
撤回
菊池恵楓園
S28.11.21認可
菊池医療刑務支所S28.12.28認可
長島愛生園

S29.1.27認可

邑久光明園

S29.2.2認可

不指定
浦上刑務支所
S29.2.12
菊池医療刑務支所
S29.4.6認可
岡山刑務所
S29.5.8認可
不指定
病院
S29.7.8
長島愛生園
S29.9.20認可
栗生楽泉園
S29.10.23認可
菊池医療刑務支所S29.12.20認可
名古屋拘置所
S29.12.23認可
神戸拘置所
S29.12.7認可
岡山刑務所
S30.1.24認可
大阪拘置所
S30.2.1認可
菊池医療刑務支所S30.2.11認可

篠栗町役場勢門支所

篠栗町役場
東京拘置所
旧古仁屋治安裁判
交通不便
名瀬支部
所庁舎
ハンセン病
栗生楽泉園
多発性関節炎
東京拘置所
高血圧等
一宮支部江南市庁舎
慢性関節炎
被告人の居宅
高血圧,両眼白内障
国東簡易裁判所
五所川原支部庁舎新営のため
名古屋簡裁交通部設置
区検分室
ハンセン病
東京拘置所
ハンセン病
岡山刑務所
ハンセン病
八王子支部八王子医療刑務所
ハンセン病
ハンセン病
大阪簡裁大阪拘置所
ハンセン病
東京拘置所
ハンセン病
登米簡裁
東北新生園
ハンセン病
登米簡裁
高血圧等
諏訪支部大子簡易裁判所
ハンセン病
大阪簡裁大阪拘置所
ハンセン病
多磨全生園

処理
結 果
年月日
不指定
S27.3.24
S27.3.27認可
S27.5.7
撤回
不指定
S27.5.27
S27.10.9認可
S27.11.26認可
不指定
S27.12.26
不指定
S28.1.8
S28.2.4認可
不指定
S28.2.3
S28.2.19認可
S28.2.17認可
S28.2.17認可

S30.5.20

不指定

S30.9.7認可
S30.10.28

不指定

S30.10.14認可
不指定
S30.12.24
不指定
S31.1.16
不指定
S31.2.21
不指定
S31.4.25
S31.5.24
撤回
S31.9.4認可
S31.9.4認可
S31.11.1認可
S31.11.16認可
S32.2.11認可
S32.2.11認可
S32.3.22認可
不指定
S32.5.1
S32.5.7認可
S32.6.24認可

番号117119121123125127129131133135137139141143145147149151153155157159161
ハンセン
番号

上申

理由
年月日民事S32.6.19
ハンセン病S32.9.18
ハンセン病S32.9.24
ハンセン病
S32.12.5
慢性中耳炎S32.12.26
ハンセン病S33.3.18
ハンセン病
ハンセン病
67熊本地裁
S33.10.28
ハンセン病
福岡地裁
S34.3.13
肺浸潤等
68岡山地裁
S34.4.8
ハンセン病
69熊本地裁
S34.11.2
ハンセン病
肺結核
和歌山地裁
S35.1.27
高血圧症
交通不便
70熊本地裁
S35.1.30
ハンセン病
71東京地裁
S35.3.15
ハンセン病
ハンセン病
72熊本地裁
S35.5.6
ハンセン病
ハンセン病
73福岡高裁
S35.7.6
ハンセン病
74東京地裁
S35.10.27
ハンセン病
75熊本地裁
S35.11.11
ハンセン病
76熊本地裁
S35.12.22
ハンセン病
77熊本地裁
S36.3.9
ハンセン病
78熊本地裁
S36.3.17
ハンセン病
79福岡高裁
S36.4.18
ハンセン病
80熊本地裁
S36.5.25
ハンセン病
ハンセン病
81東京地裁
S36.6.5
ハンセン病
多発性関節リウマチス
東京家裁
S36.6.7
82東京高裁
S36.6.30
ハンセン病
大分地裁
S36.7.29
脊髄癆
東京地裁
S36.9.18○死刑確定者のため
東京地裁
S36.11.13○死刑確定者のため
83東京地裁
S36.12.15
ハンセン病
千葉地裁
S37.1.30○戒護上至難
松山地裁西条支部S37.7.10○関係人多数
84熊本地裁
S37.11.12
ハンセン病
大阪地裁
S37.11.21
肺結核
東京地裁
S38.10.21○死刑確定者のため
85岡山地裁
S39.1.16
ハンセン病
千葉地裁
S39.2.7
膀胱炎
86福岡地裁
S39.4.23
ハンセン病
87岡山地裁
S39.7.20
ハンセン病
88神戸地裁
S39.7.31
ハンセン病
89熊本地裁
S40.6.21
ハンセン病
90横浜地裁
S40.8.23
ハンセン病
91岡山地裁
S41.1.14
ハンセン病
福岡地裁
S42.2.27○死刑確定者のため
92大阪地裁
S42.3.9
ハンセン病
93大阪地裁
S42.6.26
ハンセン病
原被告いずれもハン
94鹿児島地裁
S43.3.12○
セン病
庁名
徳島地裁
岡山地裁
熊本地裁
長崎地裁
熊本地裁
岡山地裁

青森地裁

S43.11.8
164

大阪地裁
大津地裁

S45.6.16
S45.10.17

鹿児島地裁

S45.11.18

開廷する
開廷場所
裁判所
徳島簡裁長島愛生園
岡山刑務所
熊本簡裁菊池医療刑務支所
病院
菊池医療刑務支所
牛窓簡裁長島愛生園

処理
結 果
年月日
S32.7.5認可
S32.10.1認可
S32.10.9認可
S33.1.18認可
S33.1.14認可
S33.3.27認可

熊本簡裁菊池医療刑務支所

S33.11.7認可

不指定
小倉支部小倉拘置所
S34.3.31
岡山刑務所
S34.4.20認可
熊本簡裁菊池医療刑務支所S34.11.21認可
新宮支部
不指定
新宮支部阿倍野簡易裁判所S35.4.12
新宮支部
菊池医療刑務支所S35.2.16認可
八王子支部八王子医療刑務所S35.3.29認可

菊池医療刑務支所

菊池医療刑務支所S35.7.16認可
八王子医療刑務所S35.11.11認可
菊池医療刑務支所S35.11.22認可
菊池医療刑務支所
S36.1.7認可
菊池医療刑務支所S36.3.18認可
熊本簡裁菊池医療刑務支所S36.3.23認可
菊池医療刑務支所
S36.5.2認可
熊本簡裁菊池医療刑務支所S36.6.10認可
八王子医療刑務所

熊本簡裁
牛窓簡裁
松戸支部
小倉支部
牛窓簡裁
姫路支部

小倉支部
大阪簡裁

S36.6.12認可

養老院
S36.7.1
撤回
八王子医療刑務所
S36.7.7認可
大分刑務所
S36.9.2
撤回
東京拘置所
S36.10.13認可
東京拘置所
S36.11.16認可
八王子医療刑務所S36.12.25認可
千葉刑務所
S37.3.8
撤回
西条市下町西条市立体育館
S37.7.18
撤回
菊池医療刑務支所S37.11.26認可
不指定
東京地方裁判所
S37.12.15
不指定
宮城刑務所
S39.1.24
長島愛生園
S39.1.29認可
不指定
千葉刑務所
S39.2.24
小倉拘置所
S39.5.11認可
長島愛生園
S39.8.3認可
菊池医療刑務支所S39.8.14認可
菊池医療刑務支所
S40.7.7認可
横浜刑務所
S40.8.24認可
岡山刑務所
S41.1.27認可
土手町拘置支所
S42.3.15
撤回
菊池医療刑務支所S42.3.14認可
菊池医療刑務支所S42.6.30認可

名瀬簡裁奄美和光園

S43.3.26認可

福島刑務所を病院に
S43.12.10
変更

肺結核
肺結核
脳動脈硬化症,外傷性てんかん



S35.5.13認可

交通不便
(名瀬~徳之島間)

八王子医療刑務所
滋賀刑務所

S45.7.1
S45.11.5

徳之島簡易裁判所

S46.1.25

札幌高裁

S46.7.17

札幌高裁函館支部廃止のため

函館地方裁判所
168170
札幌高裁
95岡山地裁
96岡山地裁
前橋地裁
姫路簡裁

S46.8.2
S46.12.24
S47.2.23
S47.12.4
S48.7.9

札幌高裁函館支部廃止のため
ハンセン病
ハンセン病
骨折,骨髄炎等
開放性肺結核

函館地方裁判所
岡山刑務所
長島愛生園
病院
姫路少年刑務所

不指定

S46.7.22
S46.8.18
S46.8.18
S47.1.12
S47.2.29
S48.2.21
S48.9.12

撤回
不指定
不指定
一部認可
一部不指定

認可
認可
認可
認可
認可

番号

ハンセン
番号

上申
173175
庁名
神戸地裁
大阪地裁
札幌家裁
札幌家裁
札幌家裁

上申人(被告人)

名古屋地裁

福井地裁

仙台地裁

開廷する
理由
裁判所
年月日民事
S48.12.10
腰椎圧迫骨折等
S49.5.20
肺結核
庁舎増・改築工事のため
S51.6.22
S51.7.16
庁舎の増改修工事
S51.7.20
庁舎の増改修工事
S52.5.7
S52.7.13
S53.5.1
H2.12.3

裁判所の施設狭隘・被告
人の身辺警護上不安

処理
結 果
年月日
津地裁四日市支部
S49.7.2
撤回
東京地裁
S49.9.10
撤回
札幌高地簡裁合同庁舎S51.7.31
撤回
札幌地裁
S51.7.31
撤回
札幌地裁
S51.7.31
撤回
開廷場所

渋谷簡裁東京地裁

S52.5.19

不指定

頸髄横断麻痺等
第七頸椎脱臼骨
折,頸髄横断麻痺

病院

S52.8.17認可

障害者支援施設

S53.9.14

撤回

肝硬変,肝不全,食道静
脈瘤等

宮城刑務所

H2.12.13

撤回

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