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特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)7532
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日令和元年12月16日
裁判所名大阪地方裁判所
権利種別特許権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2019-12-16
情報公開日2020-02-14 18:00:30
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令和元年12月16日判決言渡

同日原本交付

裁判所書記官

平成29年(ワ)第7532号

特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日令和元年10月1日
判原告決
シーシーエス株式会社

同訴訟代理人弁護士

甲悌同雨宮
沙耶花

同訴訟代理人弁理士

西村竜平同上齊藤真大被告二
株式会社レイマック

(旧商号

株式会社イマック)

同訴訟代理人弁護士

原友己同並山恭子同伊加古尊温
同訴訟代理人弁理士

藤河恒生主1文
被告は,別紙被告製品目録記載1~7の各製品を製造,販売又は販売
のための展示をしてはならない。
2
被告は,原告に対し,1000万4068円及びうち726万957
3円に対する平成29年8月11日から,うち273万4495円に対する平成30年10月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4
訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被
告の負担とする。
5
この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実

及び理由
第1請求
1主文第1項と同旨。
2被告は,別紙被告製品目録記載1~7の各製品を廃棄せよ。
3
被告は,原告に対し,1億0307万4986円及びうち7812万999
1円に対する平成29年8月11日から,うち2494万4995円に対する平成30年10月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2事案の概要
1
本件は,発明の名称を光照射装置とする発明に係る特許権(以下本件特許権といい,これに係る特許を本件特許という。)を有する原告が,被告の製造,販売に係る別紙被告製品目録記載1~7の各製品(以下,個別には番号に従って被告製品1などといい,また,これらを併せて被告各製品という。)
が,後記2(2)の再訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下本件再訂正発明という。)の技術的範囲に属するとして,上記各行為につき,被告に対し,以下の各請求をする事案である。

(1)差止請求
本件特許権に基づく被告各製品の製造等の差止請求(特許法100条1項)(2)廃棄請求
本件特許権に基づく被告各製品の廃棄請求(同条2項)
(3)金銭請求

ア不法行為に基づく損害賠償請求
本件特許権侵害(平成24年7月~平成30年9月の間における被告各製品の販売行為)の不法行為に基づく損害賠償金1億0307万4986円及びうち7812万9991円に対する平成29年8月11日(不法行為後の日。訴状送達日の翌日)から,うち2494万4995円に対する平成30年10月1日(不法行為後
の日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求イ不当利得返還請求

本件特許権侵害(平成24年7月~平成26年7月の間における被告各製品の販売行為)に起因する不当利得に基づく利得金102万2415円及びこれに対する平成29年8月11日(利得後の日。訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払請求
なお,上記請求は,上記期間に係る上記アの請求権について消滅時効が成立した場合における予備的主張である。
2
前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,本判
決において書証を掲記する際には,枝番号の全てを含むときはその記載を省略することがある。)
(1)当事者
原告は,光学機器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。被告は,工業用電気機械設備・装置の製作,施工及び販売等を目的とする株式会社である。
(2)本件特許権

ア特許番号等
特許番号第4366431号
発明の名称光照射装置
出願

平成20年7月30日

登録
日日
平成21年8月28日

イ特許請求の範囲(請求項1)及び構成要件の分説
(ア)当初発明
本件特許出願時の願書に添付された特許請求の範囲請求項1は,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件当初発明欄記載のとおりであり,同項に係る発明(以下本件当初発明)を構成要件に分説すると,同表2構成要件の分説の本件当初発明欄記載のとおりである。本件特許の願書に添付された明細書及び図面(以下,これらを併せて本件明細書という。)の記載は,別紙特許公報(甲2)のとおりである。なお,後記本件訂正及び本件再訂正のいずれにおいても,本件明細書は訂正されていない(甲8~11)。
(イ)訂正後の発明
原告は,平成29年12月25日付けで本件特許に係る特許請求の範囲を訂正する旨の訂正審判を請求した。特許庁は,平成30年3月20日,これを認める審決をし,同審決はその後確定した(甲8,10,弁論の全趣旨。以下,この訂正を本件訂正という。)。本件訂正後の特許請求の範囲請求項1は,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件訂正発明欄記載のとおりであり,同項
に係る発明(以下本件訂正発明という。)を構成要件に分説すると,同表2構成要件の分説の本件訂正発明欄記載のとおりである(なお,本件当初発明からの訂正箇所は,一重下線部である。)。
(ウ)本件再訂正発明
原告は,平成30年3月15日付けで本件特許に係る本件訂正後の特許請求の範
囲を訂正する旨の訂正審判を請求した。特許庁は,同年6月15日,これを認める審決をし,同審決はその後確定した(甲9,11,弁論の全趣旨。以下,この訂正を本件再訂正という。)。本件再訂正後の特許請求の範囲請求項1は,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件再訂正発明欄記載のとおりであり,本件再訂正発明を構成要件に分説すると,同表2構成要件の分説の本件再訂正発明欄記載のとおりである(なお,本件訂正発明からの訂正箇所は二重下線部であり,本件当初発明から本件訂正発明への訂正箇所は一重下線部である。)。ウ権利の帰属
原告は,当初,本件特許権を単独で有していたところ,その持分2分の1を三菱化学株式会社(当時。以下三菱化学という。)に譲渡して,平成22年8月2
6日にその旨登録され,三菱化学からその共有持分全部を譲り受け,平成26年11月21日にその旨登録された(甲1,16の1,弁論の全趣旨)。
(3)被告の行為
被告は,業として,被告各製品を製造し,平成24年6月18日以降販売していた(甲3,4,13,14,弁論の全趣旨。なお,被告が現在も被告各製品の製造,販売を継続しているか否かについては,当事者間に争いがある。)。被告各製品の構成は,いずれも別紙被告各製品構成目録記載のとおりであり(弁論の全趣旨),本件再訂正発明の技術的範囲に属する(争いがない)。
3争点
(1)抗弁の成否(争点1)
ア本件再訂正に係る訂正要件違反(争点1-1)

イIDB-11/14R及びIDB-11/14W関係(争点1-2)(ア)進歩性欠如(争点1-2-1)
(イ)先使用権の成否(争点1-2-2)
ウIDB-C11/14R及びIDB-C11/14B関係(争点1-3)(ア)進歩性欠如(争点1-3-1)

(イ)先使用権の成否(争点1-3-2)
エIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS関係(争点1-4)(ア)新規性欠如又は進歩性欠如(争点1-4-1)
(イ)先使用権の成否(争点1-4-2)

IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明基づく先使用権の成否(争点1-
5)

LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明基づく先使用権の成否(争点1-
6)
なお,上記IDB-●●,IDR-●●及びLR-●●は,いずれもライン状の光を照射する光照明装置の型式及び色を示すものである。以下,単に上記のとおり表記する。
(2)被告の過失の有無(争点2)

(3)原告の損害の発生の有無及び額(争点3)
(4)消滅時効の成否(争点4)
(5)被告の不当利得額(争点5)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1-1(本件再訂正に係る訂正要件違反)
(被告の主張)
本件当初発明は,従来技術では順方向電圧が異なるLEDの種類ごとに専用のLED基板を用意する必要があった点を,同じ大きさのLED基板を用いることができるようにして,部品点数及び製造コストの削減を図るというLED基板単体の構成に関す
る発明であった。ところが,本件再訂正発明は,本件当初発明では検査対象物の長さによっては1枚のLED基板だけで対応することができない場合もあった点を,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させるようにして,検査対象物の長さとの関係で要求されるLED基板の長さを確保するというLED基板の用途を限定する発明である。

このようにLED基板の用途発明である本件再訂正発明は,LED基板単体の構成に関する発明,すなわち物の発明である本件当初発明とは全く異なる発明に変質している。したがって,本件再訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものであるから,特許法126条6項に違反する。そうすると,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項8号),原告は,被告に
対し,本件特許権を行使できない(同法104条の3第1項)。
(原告の主張)
本件再訂正のうち,
複数の前記LED基板をとした訂正は,枚数が限定されてい
なかったLED基板の枚数を複数枚に限定するものである。また,本件再訂正のうち,前記ライン方向に沿って直列させてあるとした訂正は,方向が限定されていな
かったLED基板の方向を限定するものである。
このように本件再訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものではないから,
特許法126条6項に違反しない。
2
争点1-2-1(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明に基づく進歩性欠
如)
(被告の主張)
(1)主引用発明の公然実施
被告は,平成17年3月7日にはIDB-11/14Rを,また,平成18年1月20日にはIDB-11/14Wを,それぞれ販売していた。
(2)相違点の存在
IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは,本件再訂正発明の構成のうち,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成以外の構成を備えている。
(3)相違点に係る構成
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成は,本件特許出願の当時,被告が製造,販売していた製品(IDB-L600/20RS,IDB-
L600/20WS等)で採用されていたり,特許公報(乙18)に記載されたりしている周知な構成である。また,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは,被告製造等に係る上記製品及び上記特許公報記載の発明と同じ分野のものである。そうすると,IDB11/14R及びIDB-11/14Wの相違点に係る構成を,周知な構成である複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成に置き換えること
には動機付けがあり,阻害要因はない。
(4)小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く(特許法29条2項)。そうすると,
本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123
条1項2号)
,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)

(1)主引用発明の公然実施について
IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの内部構成は,第三者が知り得ないものであるから,その販売は発明の公然実施には当たらない。
(2)相違点の存在について
本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間に,①複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成を備えている否かという相違点があることは認める。
しかし,本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間には,さらに,②本件再訂正発明がライン状の光を照射するのに対し,IDB-11/14R及びIDB-
11/14Wがライン状の光を照射するか否かが不明であるという相違点,及び③前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としたか否かという相違点がある。(3)相違点に係る構成について
上記①の相違点に係る構成は,周知な構成であるとまではいえない。また,IDB-
11/14R及びIDB-11/14Wには,製造に大きな負担を掛けることなく,ライン状の光の長さをきめ細やかに設定しようとする技術的思想がないことから,上記①の相違点に係る構成を,IDB-L600/20RS,IDB-L600/20WS等が開示する構成に置き換える動機付けがない。
加えて,被告は,上記③の相違点に係る構成を証拠で示していない。また,IDB-
11/14R及びIDB-11/14Wからは,上記③の相違点に係る構成を本件訂正発明のものに置き換えようとする動機付けとなる技術的思想を把握することができない。さらに,上記③の相違点に係る構成は,
LED基板をできるだけ小さくすることに意味はないという固定観念を打破し,LED基板の汎用性を向上させるという格別の効果を奏するものである。

(4)小括
以上によれば,本件再訂正発明は,IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに基づいて容易
に発明をすることができたとはいえないから,進歩性を欠くものではない。3
争点1-2-2(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明に基づく先使用権
の成否)
(被告の主張)
被告は,前記2(被告の主張)(1)のとおり,本件特許出願の前から,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wを製造,販売していた。これらの製品は,本件訂正発明の構成を全て備えている。そうすると,被告は,上記各製品により具現化された発明の範囲内において,本件特許権について先使用に基づく通常実施権を有していたことになる。特許請求の範囲が,本件再訂正により,拡張・変更されているのではなく,減縮
されているのであれば,上記のとおり,本件訂正発明との関係において本件特許権について通常実施権を有していた被告は,本件再訂正発明との関係においても本件特許権について通常実施権を有していることになる。
したがって,被告は,本件再訂正発明との関係において,IDB-11/14R又はIDB11/14Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有する(特許法7
9条)
。そうである以上,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。(原告の主張)
本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間には,前記2(原告の主張)(2)で指摘した相違点がある。したがって,被告は,仮に本件訂正発明との関係ではIDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明の範囲内で本件特許権について通常実
施権を有していたとしても,本件再訂正発明との関係では,IDB-11/14R又はIDB11/14Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有しない。4
争点1-3-1(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく進歩性
欠如)
(被告の主張)
(1)主引用発明の公然実施
被告は,平成19年5月23日にIDB-C11/14Rを,また,同年6月12日には
IDB-C11/14Bを,それぞれ販売していた。
(2)相違点の存在
IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bは,本件再訂正発明の構成のうち,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成以外の構成を備えている。
(3)相違点に係る構成
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成が,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bと同じ分野に属する周知な構成であること,これらの製品の上記相違点に係る構成を上記周知の構成に置き換えることに動機付けがあ
り,阻害要因はないことは,前記2(被告の主張)(3)と同様である。(4)小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから,進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきものであり,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
(1)主引用発明の公然実施について
IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの内部構成は,第三者が知り得ないものであるから,その販売は発明の公然実施には当たらない。
(2)相違点の存在について

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間に,①複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成を備えている否かという相違点があることは認める。
しかし,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの場合と同様に,本件再訂正発明とIDBC11/14R及びIDB-C11/14Bとの間には,さらに,②本件再訂正発明がライン状の光を照射するのに対し,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bがライン状の光を照射するか否かが不明であるという相違点,及び③前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としたか否かという相違点がある。
(3)相違点に係る構成について
本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間の相違点につき,上記①及び③の相違点に係る構成の置換えが容易ではないこと,上記③の相違点に係る構成が格別の効果を奏するものであることは,前記2(被告の主張)(3)と同様である。(4)小括
以上によれば,本件再訂正発明は,IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに基づいて容易に発明をすることができたとはいえないから,進歩性を欠くものではない。
5
争点1-3-2(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく先使用
権の成否)
(被告の主張)
前記4(被告の主張)(1)のとおり,被告は,本件特許出願の前から,IDBC11/14R及びIDB-C11/14Bを製造,販売していた。これらの製品は,本件訂正発明の構成を全て備えている。そうすると,被告は,上記各製品により具現化された発明の範囲内においては,本件特許権について通常実施権を有していたことになる。このため,本件再訂正がされても,本件訂正発明との関係において本件特許権について通常実施権を有していた被告が,本件再訂正発明との関係においても本件特許権について通常実施権を有していることは,前記3(被告の主張)と同様である。
したがって,被告は,本件再訂正発明との関係において,IDB-C11/14R又はIDBC11/14Bに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間には,前記4(原告の主
張)(2)で指摘した相違点がある。そうすると,被告は,仮に本件訂正発明との関係ではIDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明の範囲内で本件特許権について通常
実施権を有していたとしても,本件再訂正発明との関係では,IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有しない。6
争点1-4-1(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく
新規性欠如又は進歩性欠如)
(被告の主張)
(1)新規性欠如
ア発明の公然実施
被告は,平成17年12月5日にはIDB-L600/20RSを,また,同年11月28日にはIDB-L600/20WSを,それぞれ販売していた。

イ構成の同一性
IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSは,本件再訂正発明の構成を全て備えている。なお,これらの製品において,LED基板に搭載されるLEDの個数は,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではなく,単に公倍数であるが,単なる公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的意義はなく,最小公倍数
か公倍数かは,実質的に相違点とはならない。
ウ小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明であるから,新規性を欠く(特許法29条1項2号)
。そうすると,本件特許権は,特許無効審判
により無効にされるべきものであるから(同法123条1項2号),原告は,被告に

対し,本件特許権を行使できない。
(2)進歩性欠如
ア相違点に係る構成
仮に,単なる公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的意義があり,最小公倍数か公倍数かが相違点となるとしても,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順
方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とすることは,IDB11/14R,IDB-11/14W,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bにおいて採用されていると
おり,当業者にとって設計事項である。
イ小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く。そうすると,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
(1)新規性欠如
ア発明の公然実施について

IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの内部構成は,第三者が知り得ないものであるから,その販売は発明の公然実施には当たらない。
イ構成の同一性について
本件再訂正発明は,
LED単位数の最小公倍数に設定したLED基板を複数枚並べているのに対し,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSは,LED単位数の,最小
ではない公倍数に設定したLED基板を複数枚並べている。そうすると,IDBL600/20RS及びIDB-L600/20WSは,本件再訂正発明の構成の全てを備えてはいない。ウ小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明ではないから,新規性を欠くものではない。

(2)進歩性欠如
ア相違点に係る構成
前記(1)イの本件再訂正発明における相違点に係る構成は,製造に大きな負担をかけることなく,ライン状の光の長さをきめ細やかに設定できるという課題に気付いて初めてなされたものである。また,この相違点がLED基板を複数枚並べるという
構成と有機的に結合することにより,本件再訂正発明は,LED基板の長さを可及的に短くでき,細やかに長さの異なるライン光照射装置のバリエーションを提供でき
るという極めて顕著な効果を奏し得る。これに対し,IDB-L600/20RS及びIDBL600/20WSのLED基板は,LED搭載個数が348個という大変大きな長いものであり,それを並べて細やかな長さ設定ができるという技術的思想は見られない。仮に,IDB-11/14R及びIDB-11/14WやIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bといった製品に見かけ上最小公倍数と認められる構成があったとしても,その課題や効果にライン状の光の長さをきめ細やかに設定できるという点は認められないから,これをIDBL600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明に適用する動機付けはない。また,本件再訂正発明は,
LED基板をできるだけ小さくすることに意味はない
という固定観念を打破し,LED基板の汎用性を向上させるという格別の効果を奏す
るものである。
イ小括
したがって,本件再訂正発明は,その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,進歩性を欠くものではない。7
争点1-4-2(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく
先使用権の成否)
(被告の主張)
前記6(被告の主張)(1)のとおり,被告は,本件特許出願の前からIDBL600/20RS及びIDB-L600/20WSをそれぞれ製造,販売しており,これらの製品は,いずれも本件再訂正発明の構成を全て備えている。

したがって,被告は,上記各製品に係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上,原告は,被告に対し,本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件再訂正発明とIDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSとの間には,前記6(原
告の主張)(1)イで指摘した相違点がある。したがって,被告は,IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有しな
い。
8
争点1-5(IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の
成否)
(被告の主張)
被告は,本件特許出願の前である平成16年時点で,IDR-F60/32R及びIDRF60/32Wをそれぞれ販売していたところ,これらの製品は,いずれも本件当初発明の構成を全て備えている。そうすると,被告は,本件当初発明との関係においては,上記各製品により具現化された発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有していたことになる。

このような場合,本件当初発明との関係において,上記各製品に係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有していた被告は,本件再訂正発明との関係においても,上記各製品に係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有していることになる。
したがって,被告は,IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本
件特許権について通常実施権を有する。
(原告の主張)
仮に,被告が,本件当初発明との関係において,IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有していたとしても,上記各製品がいずれも本件再訂正発明の構成を備えていない以上,被告は,本件再訂
正発明との関係においては,IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有しない。
9
争点1-6(LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成
否)
(被告の主張)
被告は,本件特許出願の前である平成19年6月には,LR-F60/32R及びLRF60/32Wを製造し,取引先に対して貸出しをしていた。上記各製品は,いずれも本
件当初発明の構成を全て備えている。そうすると,被告は,本件当初発明との関係において,上記各製品により具現化された発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有していたことになる。
このため,本件訂正及び本件再訂正によっても,本件当初発明との関係で本件特許権について通常実施権を有していた被告が,本件再訂正発明との関係においても,上記各製品に係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していることは,前記8(被告の主張)と同様である。
したがって,被告は,LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上,原告は,被告に対し,本件
特許権を行使できない。
(原告の主張)
仮に,被告が,本件当初発明との関係において,LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していたとしても,上記各製品が本件再訂正発明の構成を備えていない以上,被告は,本件再訂正発明との関
係においては,LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で,本件特許権について通常実施権を有しない。
争点2(被告の過失の有無)

(被告の主張)
本件においては,本件訂正及び本件再訂正と,訂正が繰り返されているが,本件特許の出願前から公然実施している製品との関係で,本件再訂正発明は進歩性がないか,あっても公知技術と極めて近いものといわざるを得ないことから,仮に本件特許権侵害行為が認められたとしても,被告に過失はない。
(原告の主張)
争う。

争点3(原告の損害の発生の有無及び額)
(原告の主張)

(1)逸失利益
ア被告各製品の販売利益の額
(ア)

被告各製品の販売利益の額は,以下のとおりである。なお,被告製品7の販
売利益の額は,本件期間4における販売利益の額として計上している。全期間合計(H24.7~H30.9)

●(省略)●円

内訳:H24.7~H26.7(共有者の存在による推定覆滅及び消滅時効が問題となる損害賠償請求対象期間,以下本件期間1という。


●(省略)●円

H26.8~H26.11(共有者の存在による推定覆滅が問題となる損害賠償請求対象期間,以下本件期間2という。


●(省略)●円

H26.12~H29.7(以下本件期間3という。


●(省略)●円

H29.8~H30.9(以下本件期間4という。


●(省略)●円

(イ)被告製品7の販売利益の額
被告製品7の売上額は,●(省略)●円である。
また,被告製品7の販売利益の額を算定するに当たっては,被告製品7の販売に際して実際に要した材料費を控除すべきである。そして,この材料費は,被告製品7の販売に際して実際に要した●(省略)●円と算定すべきである。したがって,被告製品7の販売利益の額は,●(省略)●円である。イ特許法102条2項の適用
被告は,原告が本件再訂正発明の実施品を販売していないことなどを指摘して,
本件においては特許法102条2項の適用が認められないと主張する。しかし,原告は,本件再訂正発明を実施しており,被告の上記主張は,前提を誤るものである。また,同項は,因果関係等の立証の困難性の軽減を図った規定であり,権利者が特許発明の実施品を販売していなくても,侵害品と競合する製品を販売していれば同項が適用されるのであり,少なくとも原告はそのような製品を販売
している。さらに,被告が,本件再訂正発明を実施することにより製造コストを削減し又は維持したままで,原告が販売する製品と競争力を有する価格により多色展
開した製品である被告各製品を市場に投入できたことに鑑みても,被告による被告各製品の販売により,原告には売上げ減少による逸失利益が生じている。したがって,本件においては同項の適用が認められる。
ウ推定覆滅事由の不存在
推定覆滅事由が存在するという被告の主張は争う。具体的には,以下のとおりである。
(ア)本件再訂正発明の顧客吸引力等について
本件再訂正発明を実施することにより,需要者に対し,白色LEDが搭載されたLED基板,赤色LEDが搭載されたLED基板又は青色LEDが搭載されたLED基板を
備えた各種の光照射装置について,それぞれの順方向電圧が異なるにもかかわらず同じサイズのものを選択できるという選択の幅を提示することができ,顧客吸引力につながる。
また,被告各製品は,本件再訂正発明の構成を備えることにより製造コストの削減を図ることができ,原告が販売する製品と同じ価格帯で販売することが可能にな
っていることに鑑みると,競争上優位な立場に立つことができている。(イ)競合品の存在について
照明器具としての性能に変わりがない点と,コストダウンや多色・多サイズ展開していることについての顧客吸引力は別のものであり,被告各製品及び原告が販売する製品は,本件再訂正発明を実施することにより,製造コストの削減を図ること
ができる点や多数のサイズ及び色を展開している点に顧客吸引力がある。そうである以上,被告各製品及び原告が販売する製品の競合品は,多色展開していて,複数のLED基板をライン方向に直列させることで多数のサイズ展開をしている,ライン状の光を照射する光照射装置に限られる。
(ウ)共有特許権者の存在について

a三菱化学が有した損害賠償請求権の譲渡
原告は,三菱化学から本件特許権の共有持分の譲渡を受けた際,同社から,同社
の有する本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を承継した。したがって,原告は,三菱化学に生じた損害分を含めて,本件特許権侵害による損害額全額の請求が可能である。
b三菱化学の損害分の控除の要否
共有に係る特許権の侵害により各共有権者が受けた損害額は,各共有権者間の公平に資するよう,特許権侵害による損害額を各共有権者の受けた損害額に応じて按分すべきである。そうすると,一方の共有者が不実施で他方の共有者のみが実施している場合,不実施の共有者が特許法102条3項により算定される損害額を現に請求していない限り,実施している共有者は,同条2項により算定される損害額全
額について請求可能であるというべきである。
したがって,仮に,原告が三菱化学から本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を承継していなかったとしても,原告は,本件特許権侵害による損害額全額の賠償請求が可能である。
また,仮に,三菱化学に支払うべき損害賠償額が控除されるとしても,三菱化学
が本件再訂正発明を実施しておらず,競合品も販売していなかったことに鑑みると,その額は,同条3項によって算定される損害の額,すなわち本件特許権を共有していた期間(本件期間1及び2)における被告製品1~6の売上高●(省略)●円(本件期間1:●(省略)●円,本件期間2:●(省略)●円)に,実施料率5%(後記13(原告の主張)のとおり)及び共有持分の割合2分の1を乗じた額である
●(省略)●円となる。
(2)弁護士及び弁理士費用
被告の本件特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士及び弁理士費用相当損害額は,逸失利益の額の●(省略)●に相当する●(省略)●円を下らない。(3)遅延損害金の起算日

本件期間1~3(H24.7~H29.7)における原告の逸失利益(●(省略)●円)並びに弁護士及び弁理士費用(●(省略)●円)の合計額(●(省略)●円)につい
ては,遅くとも訴状送達の日の翌日(平成29年8月11日)から遅延損害金が発生する。本件期間4(H29.8~H30.9)における原告の逸失利益(●(省略)●円)については,遅くとも平成30年10月1日から遅延損害金が発生する。(被告の主張)
(1)逸失利益
ア特許法102条2項の不適用
(ア)原告は,本件再訂正発明の実施品を販売していない。
(イ)

本件再訂正発明は,光照射装置の性能を向上させる発明ではなく,順方向電
圧の異なるLEDを用いた光照射装置を製造する場合に部品点数及び製造コストの削減を図る発明にすぎない。ここで,被告各製品のうち,白色LED搭載製品と青色LED搭載製品とは,順方向電圧は同じであるから,LED基板は共通のサイズのものが利用される。このため,本件再訂正発明は,赤色LED搭載製品の製造に際し,赤色LEDに固有のサイズのLED基板を用意しなくてもよいというメリットがあるにとどまる。ところが,赤色LED搭載製品の販売実績は乏しいことから,その製造上の
コストダウンというメリットは零に等しい。
また,本件再訂正発明は,このように製品自体の性能に関わるものでないところ,直列タイプの検査用LED照明において,需要者は,価格との見合いで光の均一性や光量といった性能面を重視して製品選択をするのであって,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさが同一である点に着目して製品選択をする
わけではない。しかも,需要者の立場からは,LED基板の設計において,LED単位数の最小公倍数の単位基板が長さ方向に連設されている製品と,最小公倍数ではない公倍数の単位基板が連設されている製品とで,購入意欲に有意な差異を生じるものではない。それどころか,複数のLED基板が直列させてある点は,基板の接続箇所で不具合が起こる可能性が高いとして,製品としての評価を低下させ得る事情で
ある。
(ウ)

これらの事情に鑑みると,原告に,被告による本件特許権侵害行為がなかっ
たならば利益が得られたであろうという事情は存在しないから,特許法102条2項による推定の前提を欠く。
イ被告各製品の販売利益の額
(ア)
被告各製品の販売利益の額については,被告製品7の販売利益の額を除き,
認める。
(イ)被告製品7の販売利益の額
被告製品7の売上額が●(省略)●円であることは認める。
他方,被告製品7の販売数量は1台であるところ,乙33では,当該1台の材料費が●(省略)●円と算定されている。しかし,当該1台は,試作品を製品として
転用したものであることから,材料費が低く算定されているにすぎない。また,業界の常識として,赤外のLED素子の単価の方が,白色のLED素子と比較して高い。このため,赤外のLED素子を用いている被告製品7の材料費は,白色のLED素子を用いている被告製品4の材料費(●(省略)●円)より高くなると見込まれる。そうすると,被告製品7の材料費は,●(省略)●円と算定すべきである。
したがって,被告製品7の販売利益の額は,●(省略)●円である。ウ推定覆滅事由の存在
(ア)本件再訂正発明の顧客吸引力等
前記ア(ア)及び(イ)で指摘した事情は,本件再訂正発明に顧客吸引力がないことなどを示すものであり,推定覆滅事由として考慮すべきものである。

(イ)市場における競合品の存在
被告各製品の販売価格は,原告の同種製品のそれと同等であり,被告が本件再訂正発明を実施したことにより価格競争上優位に立ったがゆえに販売することができたという事情はない。
また,本件再訂正発明の実施品であるライン光照射装置と実施品ではないライン
光照射装置とは,照明器具としての性能に変わりがないことから,ライン光照射装置であれば全て被告各製品及び原告が販売する製品の競合品となることに鑑みると,
仮に,被告各製品が販売されなかったとしても,被告各製品の販売数量に対応する需要が,別紙競合品(被告主張)一覧表(なお,同表の一番左の欄は,被告各製品の番号及び乙37記載の資料番号である。
)記載の原告が販売する製品以外のライン
光照射装置にも向かったであろうといえる。
(ウ)共有権者の存在
a三菱化学が有した損害賠償請求権の譲渡
否認する。
b三菱化学の損害分の控除について
共有に係る特許権の一方の共有者が不実施で,他方の共有者のみが実施している
場合に,実施している共有者に特許法102条2項により算定された損害額全額の賠償請求を認め,不実施の共有者にも同条3項により算定された損害額の賠償請求を認めると,侵害者は,特許権が単独保有の場合と比較して,負担すべき損害額が過大となり,損害の公平な分担の理念に反する。したがって,原告は,三菱化学と本件特許権を共有していた期間(H24.6.18~H26.11.21)における被告の販売分に係
る損害額については,持分割合(本件においては50%)に応じて案分した額の限度で請求できるにすぎない。
また,原告は,三菱化学が本件再訂正発明を実施していないことについて,立証していない。
(2)弁護士及び弁理士費用

否認ないし争う。
争点4(消滅時効の成否)

(被告の主張)
原告は,遅くとも平成14年頃から被告による商品展開の動向に関心を持っており,被告各製品それぞれの販売直後にその実機を入手して構成を把握し,本件特許権侵害の事実を認識するに至っていた。したがって,本件訴訟を提起した平成29年8月3日から3年前の時点である平成26年8月3日以前の販売分,すなわち本
件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権については,時効により消滅する。そこで,被告は,平成31年1月31日付け準備書面(被告第15)の送付によって,原告に対し,この消滅時効を援用するとの意思表示をする。(原告の主張)
原告が被告各製品による本件特許権侵害の事実を認識するに至ったのは,平成29年1月頃以降である。そうすると,本件訴訟を提起した同年8月3日までに時効期間は完成していない。
したがって,平成26年8月3日以前の販売分,すなわち本件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権は,時効により消滅していない。
争点5(被告の不当利得額)

(原告の主張)
仮に,本件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権が時効により消滅しているとしても,被告は,本件期間1に被告製品1~6を販売して得た利益,すなわち本件再訂正発明の実施に対して受けるべき金銭の額を不当利得として,原告に返還する義務を負う。その額は,以下のとおりである。また,被告は悪意の受益者であるから,その利得に利息を付して原告に返還する義務を負う。(1)被告製品1~6の本件期間1における売上額
被告製品1~6の本件期間1における売上額は,●(省略)●円である。実施料を算定するに当たって実施料率を乗じる対象は,売上高とするのが一般的であり,
削減できたコストの額を基礎とするのは一般的ではない。
(2)実施料率
本件特許が属する技術分野における実施料率別契約件数においては5%が最頻値とされていること,実施に対し受けるべき料率は通常の実施料率よりも高率となるであろうことに鑑みると,本件における実施料率は5%を下らない。
(3)小括
以上によれば,被告が,本件期間1に被告製品1~6を販売して得た不当利得の
額は,●(省略)●円となる。
(被告の主張)

被告製品1~6の本件期間1における売上額が●(省略)●円であることは,
認める。

原告は,本件期間1における被告製品1~6の全売上額に実施料率(5%)
を乗じて不当利得の額を算定している。しかし,前記のとおり,赤色LED搭載製品の販売実績が乏しいことに鑑みると,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品を含めた被告製品1~6の合計売上額に基づいて不当利得の額を算定するのは相当ではない。赤色LED搭載製品を製造するに当たってコストを削減できた価額を基礎として,不当利得の額を算定すべきである。
また,本件再訂正発明の技術的意義や進歩性の程度,被告各製品の販売に対する寄与の程度,本件特許権が共有に係るものであったことに鑑みると,本件における実施料率は,販売額の0.1%が限度である。
第4当裁判所の判断

1本件特許に係る発明の技術的意義
本件明細書の記載によれば,本件特許に係る発明の技術的意義は,次のとおりであったと認められる。
(1)発明の属する技術分野(【0001】)
本件特許に係る発明は,複数のLEDを用い,例えばライン状の光を照射すること
ができる光照射装置に関し,特にワーク(製品)の所定照射領域における傷の有無やマーク読み取り等の検査用として好適に用いられるものに関するものである。(2)背景技術(【0002】~【0005】)
ライン光照明装置等の光照射装置は,複数のLEDを搭載した長尺状のLED基板とこのLED基板を収容する筐体を備えているところ,LED基板に搭載されるLEDの個
数は,電源電圧VEとLEDの順方向電圧Vfとの関係から,直列接続されるLEDの個数が制限される。例えば,電源電圧VEが24Vの場合,赤色LEDを用いる場合は,そ
の順方向電圧Vfが約2.2Vであり,LED基板に搭載される個数は10個である。白色LEDを用いる場合は,その順方向電圧Vfが約3.3Vであり,LED基板に搭載される個数は6個である。赤外LEDを用いる場合は,その順方向電圧Vfが約1.5Vであり,LED基板に搭載される個数は15個である。
このようにLED基板に搭載されるLEDの個数がLEDの種類ごとに異なることから,LEDの種類ごとにLED基板のサイズが異なり,専用のLED基板を用意する必要がある。また,LED基板を収容する筐体もLEDの種類に応じて異なり,それぞれ用意する必要がある。
(3)発明が解決しようとする課題(【0006】)

本件特許に係る発明は,上記(2)の問題点を一挙に解決するためになされたものであり,種類の異なるLEDを用いた光照射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することをその主たる所期課題とするものである。
(4)課題を解決するための手段(【0007】~【0009】)
本件訂正前の請求項1に係る光照射装置は,その構成を採用することにより,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数として,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載される個数を同一にすることができ,順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさを同じにすることができるとともに,順方向電圧の異なるLEDを用いた光照射装
置を製造する場合に,LED基板を収容する筐体として同一のものを用いることができる。このことから,光照射装置の製造において,LED基板及び筐体などの部品を共通化することができ,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減することができる(この点は,本件再訂正発明においても同様である。)。そして,本件訂正前の請求項2に係る光照明装置(光照射装置)は,その構成を
採用することにより,LED基板の大きさを同じにするだけでなく,その大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができる(この点は,本件再訂正発明
においても同様である。)。
(5)発明の効果(【0011】)
本件特許に係る発明によれば,LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減できる。
(6)本件特許に係る発明を実施するための最良の形態

光照射装置の光照射態様並びにLED基板の枚数及び並び方向等について
(【0014】~【0017】,【0019】,【0038】,【0041】,【0044】,図1,図2)
(ア)実施形態
実施形態に係る光照射装置1は,例えば検査物(ワーク)の所定照射領域にライン状の光を照射するものであり,具体的には,図1及び図2に示すように,LED基板2,筐体3,伝熱部材4,押圧部材5を備えている。
LED基板2は,複数の同一のLED21を搭載した長尺状の基板である。筐体3は,図1及び図2に示すように,LED基板2を収容する基板収容空間を形
成する収容凹部301を有するものであるところ,本実施形態の収容凹部301は,2つのLED基板2を長手方向に連続して収容する。
押圧部材5は,図2に示すように,複数のLED21ごとに対応する複数のレンズ部501を有し,LED基板2の長辺側端部201を筐体3の収容凹部301の底面に向かって押圧するものである。本実施形態では,押圧部材5は,各LED基板2に
対応するように,直列に連続させて設けられている(図1参照)。
(図1)

(図2)
(イ)他の実施形態
前記実施形態の光照射装置は,概略直方体形状をなすものであってLED基板が長尺状をなすものであったが,これに限られない。例えば,光照射装置が概略円環状をなすものである場合などにおいては,LED基板が部分円環状をなすものであっても良い。
また,LED基板と押圧部材とを対応させて,それらLED基板及び押圧部材の直列させる数を変更して,光照射装置の長さを変更するようにして良い。

LED基板に搭載されるLEDの個数(【0023】~【0031】,【003
4】~【0036】)
(ア)実施形態
LED単位数とは,電源電圧VEとLED21を直列に接続したときの順方向電圧
Vfの合計(Vf×N)との差(VE-Vf×N)が,所定の許容範囲となるLED21の個数であり,電源電圧VEに対して直列接続されるLED21の個数である。本実施形態の順方向電圧Vfは,パッケージ化されたLED21ごとの順方向電圧である。また,所定の許容範囲とは,種類の異なるLED21ごとに定まるLED単位数の公倍数によりLED基板2にLED21を搭載した場合に,所望の照射領域を1つ又は複数のLED基板2により実現できる条件(より具体的には,種類の異なるLED21ごとに定まるLED単位数の最小公倍数を可及的に小さくする条件),及び種類の異なるLED21ごとにそのLED単位数を可及的に大きくする条件により決まる。実施形態のLED基板2に搭載されるLED21の個数は,種類の異なるLED21ごとに定まるLED単
位数の最小公倍数としている。
例えば,光照射装置1をFA(産業用自動機器)に組み込んで用いる場合,つまり,電源電圧VEが24Vの直流電圧である場合について,赤色LED21,白色LED21及び赤外LED21の3種類の光照射装置1を製造する場合について説明すると,赤色LED21の順方向電圧Vfは約2.2Vであり,当該赤色LED21を電源電圧VEに
対して直列接続できる個数は10個,すなわち赤色LED21のLED単位数は10個である。また,白色LED21の順方向電圧Vfは約3.3Vであり,当該白色LED21を電源電圧VEに対して直列接続できる個数は6個,すなわち白色LED21のLED単位数は6個である(なお,白色LED21を直列接続できる個数は,7個も考えられるが,他の種類のLED21のLED単位数との関係で,可及的に最小公倍数を小さ
くする値にしている。)。さらに,赤外LED21の順方向電圧Vfは約1.5Vであり,当該赤外LED21を電源電圧VEに対して直列接続できる個数は15個,すなわち,赤外LED21のLED単位数は15個である。そして,赤色LED21のLED単位数(10個),白色LED21のLED単位数(6個),及び赤外LED21のLED単位数(15個)の最小公倍数である30個を,各色LED基板2に搭載するLED21の
個数としている。
回路上における各LED21の接続方法としては,LED単位数に対応する個数の
LED21を直列接続し,その直列接続されたLED群を最小公倍数となるように並列接続する。つまり,赤色LED21の場合には,図4に示すように,10個の赤色LED21を直列接続して赤色LED群とし,赤色LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,赤色LED群を3列に)並列接続する。また,白色LED21の場合には,図5に示すように,6個の白色LED21を直列接続して白色LED群とし,白色LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,白色LED群を5列に)並列接続する。さらに,赤外LED21の場合には,図6に示すように,15個の赤外LED21を直列接続して赤外LED群とし,赤外LED21の個数が全体として30個となるように(つまり,赤外LED群を2列に)並列接続する。
(図4)

(図5)

(図6)
このように構成した実施形態に係る光照射装置1によれば,LED基板2に搭載されるLED21の個数を,種類の異なるLED21のLED単位数の最小公倍数として,種類の異なるLED21であっても同じにしているので,種類の異なるLED21が搭載されたLED基板2同士の大きさを同じすることができる。また,種類の異なるLED21を用いた光照射装置1を製造する場合に,LED基板2を収容する筐体3として同一のものを用いることができる。このようなことから,光照射装置1の製造において,LED基板2及び筐体3などの部品を共通化することができ,部品点数を削減することができるとともに,製造コストを削減することができる。また,LED
基板2の大きさを同じにできるだけでなく,LED個数が同じであるので,LED基板2上におけるLED21の位置を,各色LED21それぞれ同じにすることができ,LED21の前方にレンズ部材(押圧部材5)を設ける場合であっても,LED21の種類に関係なく,同じレンズ部材(押圧部材5)を用いることができ,レンズ部材(押圧部材5)に汎用性を持たせることができ,部品点数を削減でき,製造コスト
を削減することができる。さらに,LED基板2に搭載されるLED21の個数を,種類の異なるLED21のLED単位数の最小公倍数としているので,LED基板2の大き
さを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができる。
(イ)他の実施形態
前記実施形態では,LED基板に搭載されるLEDの個数を最小公倍数としているが,その他に公倍数であっても良い。
2争点1-1(本件再訂正に係る訂正要件違反)について
(1)

特許法は,特許権の設定登録後に,願書に添付した明細書,特許請求の範囲
又は図面を訂正するために訂正審判を請求することを認める一方(126条1項本文),訂正の目的を限定するとともに(同項ただし書),実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならないとしている(同条6項)。これは,訂正を認める旨の審決が確定したときは,訂正の効果は特許出願の時点まで遡って生じ(同法128条),しかも,訂正された明細書,特許請求の範囲又は図面に基づく特許権の効力は不特定多数の第三者に及ぶものであることに鑑み,特許請求の範囲の記載に対する第三者の信頼を保護することを目的とし,特に,同法126条6項の規定は,訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請
求の範囲に含まれることとなると,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため,そうした事態が生じないことを担保する趣旨と解される。そうすると,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かの判断は,訂正の前後の特許請求の範囲の記載を基準として,訂正により第三者に不測の不利益を与えることになるかどうかの観点から決するのが相当である。
(2)検討

本件再訂正発明に係る特許請求の範囲と本件訂正発明に係る特許請求の範囲
の各記載を照らし合わせると,本件再訂正は,本件訂正発明の光照射装置が備えるLED基板について,本件訂正発明ではその枚数及び並び方向が特定されていないものから,枚数を複数のものに,並び方向をライン方向に沿って直列させてあるものにするものである。このように,本件再訂正は,その形式上,請求項記載の発明の構成に更に構成を付加することにより特許請求の範囲を減縮するものであ
るところ,本件明細書は本件再訂正により何ら訂正されていないことを併せ考えると,本件再訂正発明の技術的範囲に本件訂正発明の技術的範囲を超える部分があるとは考え難い。

更に遡って本件当初発明からの変遷を順を追って見ていくと,本件当初発明
の特許請求の範囲は,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件当初発明欄記載のとおり,LED基板の発明ではなく,LED基板を備えた光照射装置の発明であり,当該LED基板に関して,搭載されるLEDの個数については,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数という以上に限定するものではなく,また,その枚数及び並び方向も何ら限定するものではない上,光照射装置の光
照射態様についても,何ら限定するものではなかった。他方,本件明細書の記載を見ると,LED基板の枚数及び並び方向については,LED基板の直列させる数を変更しても構わないとされる(【0041】)だけでなく,光照射装置の光照射態様についても,実施形態の概略直方体形状をなすものに限られないとされていた(【0044】)。さらに,発明の作用効果を見ても,LED基板に搭載されるLEDの個数
を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数とすることによりLED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製造コストを削減するという作用効果(前記1(2)~(5))は,LED基板の枚数が1枚であれ複数であれ奏せられるものである。また,LED基板の大きさを可及的に小さくして汎用性を向上させるという作用効果(前記1(2)~(4))においては,前提として,LED基板の枚数が複数の場合が
あることが想定されている。このように,本件当初発明は,LED基板の発明やその用途発明ではなく,LED基板を備えた光照射装置の発明であり,当該LED基板の枚数も,1枚に限定した発明ではなく,複数枚であるものも含めた発明であったことが認められる。
次に,本件訂正発明の特許請求の範囲は,本件訂正の結果,別紙本件クレーム対
比表1特許請求の範囲の本件訂正発明欄記載のとおり,LED基板に搭載されるLEDの個数については,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最
小公倍数に限定され,光照射装置の光照射態様についても,ライン状の光を照射する態様のものに限定された。他方,LED基板の枚数及び並び方向については,本件訂正においては何ら限定されなかった。また,本件訂正において,本件明細書は,何ら訂正されなかった。したがって,本件訂正発明は,LED基板に搭載されるLEDの個数や光照射装置の光照射態様については,本件当初発明から限定されるものであったが,LED基板の発明やその用途発明ではなく,LED基板を備えた光照射装置の発明であるという点に変更はなく,また,当該LED基板の枚数が,1枚に限定した発明ではなく,複数枚であるものも含めた発明であるという点にも変更はなかったことが認められる。

続いて,本件再訂正発明の特許請求の範囲は,本件再訂正の結果,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件再訂正発明欄記載のとおり,LED基板の枚数及び並び方向のうち,枚数については複数枚のものに,並び方向についてはライン方向に沿って直列に接続されているものに限定された。他方,本件再訂正においても,本件明細書は何ら訂正されなかった。したがって,本件再訂正発明は,
LED基板の枚数及び並び方向については,本件訂正発明から限定されるものであったが,LED基板の発明やその用途発明ではなく,LED基板を備えた光照射装置の発明であるという点に変更はなかったことが認められる。
こうした本件訂正及び本件再訂正の経過を踏まえても,本件再訂正は,本件当初発明の技術的範囲から限定された本件訂正発明の技術的範囲を更に限定するもので
あり,本件再訂正発明の技術的範囲には,本件当初発明ないし本件訂正発明の技術的範囲を超える部分はないと認められる。

以上より,本件再訂正は,第三者に不測の不利益を与える可能性はないから,
実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。したがって,本件再訂正は,特許法126条6項に違反するものとはいえない。
(3)

これに対し,被告は,本件再訂正により,本件特許に係る発明が,LED基板
単体の構成に関する発明からLED基板の用途発明に変質しており,本件再訂正は,
実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張する。
しかし,前記(2)のとおり,本件当初発明及び本件訂正発明は,光照射装置に備えたLED基板の枚数が1枚であることを前提とする発明ではないし,本件再訂正発明は,本件当初発明及び本件訂正発明から一貫して,LED基板の発明やその用途発明ではなく,LED基板を備えた光照射装置の発明である。
したがって,被告の上記主張はその前提を誤るものであるから,この点に関する被告の主張は採用できない。
2
争点1-2-1(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明に基づく進歩性欠
如)について
(1)IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの公然実施証拠(乙9)によれば,被告は,IDB-11/14Rについては平成17年3月7日に,IDB-11/14Wについては平成18年1月20日に,それぞれ販売したことが認められる。これらの日付は,いずれも本件特許の出願前である。また,証拠(乙9)及び弁論の全趣旨によれば,上記各製品の構成は,いずれも,これを入手した当業者が
通常の方法で分解,分析することによって知ることができたことが認められる。したがって,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wに係る発明は,本件特許の出願前に公然実施をされた発明であると認められる。これに反する原告の主張は採用できない。(2)IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成
証拠(乙8,9,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,IDB-11/14R及びIDB-
11/14Wの構成は,それぞれ,以下のとおりであると認められる。なお,認定に当たっては,本件再訂正発明の構成要件等との対比を念頭に置いたものとする(被告主張の抗弁に係る各製品の構成の認定につき,以下同じ。)。
アIDB-11/14Rの構成
a1-1

複数の赤色LEDを搭載したLED基板と,

b1-1

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c1-1

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d1-1

電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である6個をLED単位数とし,e1-1

前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色
LEDのLED単位数である3個との最小公倍数である6個とし,f1-1

前記LED基板が1枚である

g1-1

光照射装置。

イIDB-11/14Wの構成
a1-2
b1-2

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c1-2

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d1-2

複数の白色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と白色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である3個をLED単位数とし,e1-2

前記LED基板に搭載される白色LEDの個数を,順方向電圧の異なる赤色
LEDのLED単位数である6個との最小公倍数である6個とし,f1-2

前記LED基板が1枚である

g1-2

光照射装置。

(3)本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの対比ア一致点(IDB-11/14R及びIDB-11/14Wとも)複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,ライン状の光を照射する光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とする,光照射装置である点。イ本件再訂正発明とIDB-11/14Rとの相違点

(ア)

本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させ
てあるのに対し,IDB-11/14Rは,前記LED基板が1枚である(相違点1-1)。
(イ)

これに対し,原告は,さらに,相違点1-1-2(本件再訂正発明は,ライン状の光を照射するのに対し,IDB-11/14Rは,ライン状の光を照射するか否かが不明である。)及び相違点1-1-3(本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としたのに対し,IDB-11/14Rは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としない。)がそれぞれ存在すると主張する。
しかし,証拠(乙8)によれば,IDB-11/14Rが横長の光を照射する光照射装置であることが認められる。そうすると,IDB-11/14Rもライン状の光を照射する光
照射装置であるといえるから,相違点1-1-2は認められない。他方,相違点1-1-3については,前記(2)アのとおり,IDB-11/14Rは,前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色LEDのLED単位数である3個との最小公倍数である6個とする構成を客観的に備えており,原告もこのこと自体は争っていない。その上で,原告は,IDB-11/14Rからは,前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色LEDのLED単位数である3個との最小公倍数である6個とする技術的思想を認識できないことから,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とするか否かについては,実質的には相違点であるとするものである。

しかし,本件再訂正発明は,方法の発明ではなく物の発明であるから,IDB11/14Rから,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とするという技術的思想を認識し得る必要はなく,前記LED基板に搭載されるLEDの個数が,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数となっているという技術的思想を認識で
きれば足りる。そして,証拠(乙9,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,当業者は,IDB-11/14Rの構成を見れば,前記LED基板に搭載されるLEDの個数が,
順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数となっていることを認識することができると認められる。そうすると,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とすることは,本件再訂正発明とIDB-11/14Rとの一致点である。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ本件再訂正発明とIDB-11/14Wとの相違点
(ア)

本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させ
てあるのに対し,IDB-11/14Wは,前記LED基板が1枚である(相違点1-2)。(イ)
これに対し,原告は,さらに,相違点1-1-2及び相違点1-1-3と同
様の相違点がそれぞれ存在すると主張する。しかし,相違点1-1-2及び相違点1-1-3が認められないのと同様の理由から,この点に関する原告の主張は採用できない。
(4)相違点に係る容易想到性
ア相違点1-1について

(ア)

証拠(乙12,13)によれば,被告が本件特許の出願前から製造,販売し
ていたIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSが,相違点1-1に係る構成である複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成を備えていたことが認められる。また,証拠(乙18)によれば,本件特許の出願前に発行された特許公報(特許第3481599号)には,その実施例として,相違点1-1に係る構成である複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成を備えた線状照明装置が開示されていたことが認められる(【0041】~【0048】)。
しかし,2004年~LED照明総合カタログ(乙8)によれば,IDB-11/14R
は,ダイレクトバー照明/IDBのうちの一製品に位置付けられているところ,そのダイレクトバー照明/IDBには,非常に多くのサイズバリエーションがあるとされている。また,当該カタログ上ラインナップされている型式ごとの製
品の寸法とLED数の関係を見ると,同じ色のLEDが使用されている製品であっても,寸法が長くなるとそれに応じてLED数が増えていることに照らせば,IDB-11/14Rを始めとするダイレクトバー/IDBの製品には,検査物ごとに所定照射領域が異なるという課題に対しては,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させて対応するのではなく,当該所定照射領域の長さに応じたLED基板を用意して対応するという技術的思想があることが読み取れる。
そうすると,IDB-11/14RとIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS並びに乙18記載の線状照明装置は,同じライン状の光を照射する光照射装置に係る発明であるとはいえ,異なる長さの所定照射領域への対応の仕方に係る技術的思想はおよそ異な
るものというべきである。そうである以上,IDB-11/14Rの構成を,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成に置き換える動機付けは見いだし難い。
また,証拠(乙17)及び弁論の全趣旨によれば,

LED基板の設計においては,当業者は,故障を防ぎ,品質を保持し,作業を効率化するために,『LED基板間の配線及び半田付けを極力減らす』ようにするのが常である。

という技術常識の存在が認められる。そうすると,相違点1-1に係るIDB-11/14Rの構成を,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成に置き換えることには,阻害要因があるといえる。
以上より,本件特許出願時に,IDB-11/14Rに係る発明に基づき,当業者が相違点
1-1に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。(イ)

これに対し,被告は,相違点1-1に係る上記構成は周知であるから,この
構成に置き換えることには動機付けがあり,阻害要因はないと主張する。しかし,仮に相違点1-1に係る上記構成が周知であったとしても,IDB-11/14Rの構成に複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成を組み合わせることについて動機付けを欠くとともに阻害要因があることは,上記(ア)のとおりである。

したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
イ相違点1-2について
相違点1-2は,前記(3)イ,ウのとおり,相違点1-1と同様のものである。また,証拠(乙8)によれば,IDB-11/14Wは,IDB-11/14Rと同じくダイレクトバー照明/IDBのうちの一製品に位置付けられるものである。そうすると,上記アと同様の理由により,本件特許出願時に,IDB-11/14Wに係る発明に基づき,当業者が相違点1-2に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。
また,上記アと同様の理由から,この点に関する被告の主張は採用できない。
3争点1-2-2(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに基づく先使用権の成否)(1)

特許法は,先願主義(同法39条1項)の例外として,同法79条所定の要
件を満たす場合に先使用による法定通常実施権(先使用権)の成立を認める。ここで,先使用権が認められる者は,特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし,…特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者とされているところ,その発明とは,いずれも特許出願に係る発明を指すと解するのが自然な文理解釈である。また,上記のとおり,先使用権が特許発明の通常実施権であることに鑑みると,先使用権に係る発明は,特許発明と同一のもの又は少なくともその一部であるものをいうと解される。

したがって,先使用権が成立するためには,先使用に係る発明が特許発明の技術的範囲に属する必要があると解される。
(2)

IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成は,前記2(3)のとおり,それぞれ,本件
再訂正発明と対比すると相違点1-1ないし相違点1-2が存在するから,本件再訂正発明の技術的範囲に属しない。したがって,被告は,本件特許の出願前にIDB25
11/14R及びIDB-11/14Wを販売していたことを理由として,本件特許権について通常実施権を有するとは認められない。

(3)

これに対し,被告は,IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成がいずれも本件訂
正発明の技術的範囲に属していたことを根拠に先使用権の成立を主張する。しかし,本件再訂正に係る審決の確定により,本件特許については,本件再訂正後における特許請求の範囲により特許出願,特許権の設定登録等がされたものとみなされるから(特許法128条),本件における特許出願に係る発明及び特許出願に係る特許権に係る特許請求の範囲の記載は,別紙本件クレーム対比表1特許請求の範囲の本件再訂正発明欄記載のとおりのものとなる。そうすると,仮にIDB-11/14R及びIDB-11/14Wの構成がいずれも本件訂正発明の技術的範囲に属していたとしても,そのことは,上記(2)の結論を左右しない。また,このよう
に解したとしても,訂正の結果,特許権者は訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく特許発明の技術的範囲の限度で権利が認められるにとどまることを考えると,特許権者と先行して特許発明を実施していた者との公平を図るという先使用権の制度趣旨に反するものとはいえない。
以上より,この点に関する被告の主張は採用できない。

4
争点1-3-1(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく進歩性
欠如)
(1)IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明の公然実施証拠(乙11)によれば,被告は,IDB-C11/14Rについては平成19年5月23日に,IDB-C11/14Bについては同年6月12日に,それぞれ販売したことが認められる。これらの日付は,いずれも本件特許出願の前である。また,証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば,上記各製品の構成は,いずれも,これを入手した当業者が通常の方法で分解,分析することによって知ることができたことが認められる。したがって,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bに係る発明は,いずれも,本件特許の出願前に公然実施された発明であると認められる。これに反する原告の主張は採
用できない。
(2)IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの構成
証拠(乙10,11,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,IDB-C11/14R及びEDB-C11/14Bの構成は,それぞれ,以下のとおりであると認められる。アIDB-C11/14Rの構成
a2-1
b2-1

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c2-1

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d2-1

複数の赤色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である6個をLED単位数とし,e2-1
前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる青色
LEDのLED単位数である3個との最小公倍数である6個とし,f2-1

前記LED基板が1枚である

g2-1

光照射装置。

イIDB-C11/14Bの構成
a2-2
b2-2

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c2-2

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d2-2

複数の青色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と青色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である3個をLED単位数とし,e2-2
前記LED基板に搭載される青色LEDの個数を,順方向電圧の異なる赤色
LEDのLED単位数である6個との最小公倍数である6個とし,f2-2

前記LED基板が1枚である

g2-2

光照射装置。

(3)本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの対比ア一致点(IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとも)複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,ライン状の光を照射する光照射装置であって,電源電
圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とする,光照射装置である点。イ本件再訂正発明とIDB-C11/14Rとの相違点
(ア)

本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させ
てあるのに対し,IDB-C11/14Rは,前記LED基板が1枚である(相違点2-1)。(イ)

これに対し,原告は,さらに,相違点1-1-2及び相違点1-1-3と同
様の相違点が存在すると主張する。
しかし,IDB-C11/14Rの構成は,本件再訂正発明と対比する上ではIDB-11/14Rの構成と基本的に異ならないことに鑑みると,相違点1-1-2及び相違点1-1-3と同様の理由により,この点に関する原告の主張は採用できない。ウ本件再訂正発明とIDB-C11/14Bとの相違点
(ア)

本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させ
てあるのに対し,IDB-C11/14Bは,前記LED基板が1枚である(相違点2-2)。(イ)

これに対し,原告は,さらに,相違点1-2-2及び相違点1-2-3と同
様の相違点が存在すると主張する。しかし,IDB-C11/14Bの構成は,本件再訂正発明と対比する上ではIDB-11/14Wの構成と基本的に異ならないことに鑑みると,相違点1-2-2及び相違点1-2-3と同様の理由により,この点に関する原告の主張は採用できない。
(4)相違点に係る容易想到性
ア相違点2-1について
(ア)

2005年~LED照明総合カタログ(乙10)によれば,IDB-C11/14Rは,
ダイレクトバー照明/IDBのうちの一製品に位置付けられている。当該カタログ上ラインナップされている型式ごとの製品の寸法とLED数の関係を見ると,寸法が長くなるとそれに応じてLED数が増えていることに照らせば,IDB-C11/14Rを始めとするダイレクトバー/IDBの製品には,検査物ごとに所定照射領域が異な
るという課題について,複数のLED基板をライン方向に沿って直列させて対応するのではなく,当該所定照射領域の長さに応じたLED基板を用意して対応するという技術的思想があることが読み取れる。そうすると,IDB-C11/14Rと,前記2(4)ア(ア)で認定したIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS並びに乙18記載の線状照明装置は,同じライン状の光を照射する光照射装置に係る発明であるとはいえ,異なる長さの所定照射領域への対応の仕方に係る技術的思想はおよそ異なるものというべきである。したがって,IDB-C11/14Rの構成を,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成に置き換える動機付けは見いだし難い。また,前記2(4)ア(ア)で認定した技術常識に鑑みると,IDB-C11/14Rの構成を,
複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるという構成に置き換えることには阻害要因がある。
以上より,本件特許出願時に,IDB-C11/14Rに係る発明に基づき,当業者が相違点2-1に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。(イ)

これに対し,被告は,相違点2-1に係る構成は周知であるから,この構成
に置き換えることには動機付けがあり,阻害要因はないと主張する。しかし,前記2(4)ア(イ)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。イ相違点2-2について
相違点2-2は,前記(3)のとおり,相違点2-1と同様のものである。また,証拠(乙10)によれば,IDB-C11/14Bは,IDB-C11/14Rと同様に,ダイレクトバー照明/IDBのうちの一製品に位置付けられるものである。そうすると,上記ア(ア)と同様の理由により,本件特許出願時に,IDB-C11/14Bに係る発明に基づき,当業者が相違点2-2に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。
これに対する被告の主張及びこれを採用できない理由も,上記アと同様である。
5
争点1-3-2(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく先使用
権の成否)

IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの構成は,前記4(3)のとおり,それぞれ,本件再訂正発明と対比すると相違点2-1ないし相違点2-2が存在するから,本件再訂正発明の技術的範囲に属しない。したがって,被告は,IDB-C11/14R及びIDBC11/14Bに係る発明を実施していたことを理由として,本件特許権について通常実施権を有するとは認められない。
これに対し,被告は,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの構成がいずれも本件訂正発明の技術的範囲に属していたことを根拠に先使用権の成立を主張する。しかし,前記3(3)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。6
争点1-4-1(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく
新規性又は進歩性の欠如)
(1)IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明の公然実施証拠(乙13)によれば,被告は,IDB-L600/20RSについては平成17年12月5日に,IDB-L600/20WSについては同年11月28日に,それぞれ販売したことが認められる。これらの日付は,いずれも本件特許出願の前である。また,証拠
(乙13)及び弁論の全趣旨によれば,上記各製品の構成は,いずれも,これを入手した当業者が通常の方法で分解,分析することによって知ることができたことが認められる。
したがって,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明は,本件特許の出願前に公然実施された発明であると認められる。これに反する原告の主張は採用で
きない。
(2)IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの構成証拠(乙12,13,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの構成は,それぞれ,以下のとおりであると認められる。アIDB-L600/20RSの構成

a3-1

複数の赤色LEDを搭載したLED基板と,

b3-1

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c3-1

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d3-1

電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である6個をLED単位数とし,e3-1
前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色
LEDのLED単位数である3個との公倍数である174個とし,f3-1

2枚の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある

g3-1

光照射装置。

イIDB-L600/20WSの構成
a3-2
b3-2

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c3-2

ライン状の光を照射する光照射装置であって,

d3-2

複数の白色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と白色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である3個をLED単位数とし,e3-2
前記LED基板に搭載される白色LEDの個数を,順方向電圧の異なる赤色
LEDのLED単位数である6個との公倍数である174個とし,f3-2

2枚の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある

g3-2

光照射装置。

(3)本件再訂正発明とIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSとの対比ア一致点(IDB-L600/20RS及びIDB-L600-20WSとも)複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,ライン状の光を照射する光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数とし,複数の前記LED基板を前記
ライン方向に沿って直列させてある,光照射装置である点。
イ本件再訂正発明とIDB-L600/20RSとの相違点(新規性の有無)
(ア)

本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の
異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,IDB-L600/20RSは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする(相違点3-1)。このように相違点が存在する以上,IDB-L600/20RSに係る発明は,本件再訂正発明と同一ではない。したがって,本件再訂正発明は,新規性を欠くとはいえない。(イ)

これに対し,被告は,単なる公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的
意義はなく,最小公倍数か公倍数かは実質的に相違点とはならないと主張する。しかし,公倍数であることは,必ずしも最小公倍数であることを意味しない。しかも,本件特許に係る発明において,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数の中でも最小公倍数とすることは,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させるという技術的意義を有するものとされている。そうすると,最小公倍数か公倍数かは,実質的な相違というべきである。

したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
ウ本件再訂正発明とIDB-L600/20WSとの相違点(新規性の有無)本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,IDB-L600/20WSは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まる
LED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする(相違点3-2)。このように相違点が存在する以上,IDB-L600/20WSに係る発明は,本件再訂正発明と同一ではない。したがって,本件再訂正発明は,新規性を欠くとはいえない。これに対し,被告は,上記イ(イ)と同様の主張をする。しかし,上記イ(イ)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。

(4)相違点に係る容易想到性
ア相違点3-1について

(ア)

IDB-L600/20RSにおける相違点3-1に係る構成についてみると,前記LED
基板に搭載される赤色LEDの個数は,順方向電圧の異なる白色LEDのLED単位数である3個との公倍数である174個となっており,また,電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数である6個がLED単位数となっている。このため,IDB-L600/20RSにおいて,赤色LEDは,1枚の基板に,1列6個に直列接続された上で,これが並列に29列接続された形で搭載されている。これを本件再訂正発明の構成に置き換える,すなわち,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするには,赤色LEDを,1枚の基板には1列6個の直列
接続された分だけ搭載した上で,このような基板を29枚並列に接続することになる。しかるに,あえてこのような置換えを行う動機付けの存在をうかがわせる記載は,IDB-L600/20RSが掲載されているカタログ(乙12)を見ても,明示的にはもとよりその示唆もない。また,証拠(乙8~11)によれば,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数と
することは,IDB-11/14R,IDB-11/14W,IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bにおいて採用されている構成であるが,これらの製品が掲載されているカタログ(乙8,10)にも,このような置換えを行う動機付けの存在をうかがわせる記載は,明示的にはもとよりその示唆もない。しかも,前記2(4)ア(ア)で認定した技術常識に鑑みると,IDB-L600/20RSの構成を,上記のとおり1枚の基板から多数の基板に置き換え
て,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とすることには,阻害要因があるといえる。さらに,仮に,1枚の基板について前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とすること自体は周知な構成であったとしても,上記阻害要因に鑑みると,所定照射領域に必要なLED
を基板に搭載するに当たって,1枚の基板に多数のLEDを搭載するか,少数のLEDを搭載した基板を複数枚接続するかは,適宜選択可能な設計事項とはいえない。
以上より,本件特許出願時に,IDB-L600/20RSに係る発明に基づき,当業者が相違点3-1に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。(イ)

これに対し,被告は,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異
なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とすることは設計事項であると主張する。しかし,上記(ア)のとおり,この点に関する被告の主張は採用できない。イ相違点3-2について
相違点3-2は,前記(3)のとおり,相違点3-1と同様のものである。また,証拠(乙12)によれば,IDB-L600/20WSは,IDB-L600/20RSと同じく,ラインセンサー照明/IDB-LIDB-L/Hのうちの一製品に位置付けられるものと認められ
る。
そうすると,上記ア(ア)と同様の理由により,本件特許出願時に,IDB ̄L600/20WSに係る発明に基づき,当業者が相違点3-2に係る本件再訂正発明の構成を容易に想到できたということはできない。
これに対し,被告は,LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なる
LEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とすることは設計事項であると主張する。しかし,上記ア(イ)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。7
争点1-4-2(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく
先使用権の成否)
IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの構成は,前記6(3)のとおり,それぞれ,本件再訂正発明と対比すると相違点3-1ないし相違点3-2が存在するから,本件再訂正発明の技術的範囲に属しない。したがって,被告は,IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明を実施していたことを理由として,本件特許権について通常実施権を有するとは認められない。この点に関する被告の主張は採用できない。8
争点1-5(IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の
成否)
(1)IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明の実施
証拠(乙3,4)によれば,被告は,遅くとも本件特許の出願前である平成16年頃には,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wを製造,販売していたことが認められる。したがって,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wに係る発明は,本件特許出願の前に実施された発明であると認められる。
(2)IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wの構成証拠(乙3,4)及び弁論の全趣旨によれば,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wの構成は,それぞれ,以下のとおりであると認められる。
アIDR-F60/32Rの構成
a4-1
b4-1

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c4-1

リング状の光を照射する光照射装置であって,

d4-1

複数の赤色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である6個をLED単位数とし,e4-1
前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色
LEDのLED単位数である3個との公倍数である60個とし,
f4-1

前記LED基板が1枚である

g4-1

光照射装置。

イIDR-F60/32Wの構成
a4-2
b4-2

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,
c4-2

リング状の光を照射する光照射装置であって,

d4-2

複数の白色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と白色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である3個をLED単位数とし,e4-2
前記LED基板に搭載される白色LEDの個数を,順方向電圧の異なる赤色
LEDのLED単位数である6個との公倍数である60個とし,
f4-2

前記LED基板が1枚である

g4-2

光照射装置。

(3)本件再訂正発明とIDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wとの対比ア一致点(IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wとも)複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の公倍数とする光照射装置である点。
イ本件再訂正発明とIDR-F60/32Rとの相違点

(ア)相違点4-1-1
本件再訂正発明は,ライン状の光を照射する光照射装置であるのに対し,IDRF60/32Rは,リング状の光を照射する光照射装置である。(イ)相違点4-1-2
本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異な
るLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,IDR-F60/32Rは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする。
(ウ)相違点4-1-3
本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあ
るのに対し,IDR-F60/32Rは,前記LED基板が1枚である。ウ本件再訂正発明とIDR-F60/32Wとの相違点
(ア)相違点4-2-1
本件再訂正発明は,ライン状の光を照射する光照射装置であるのに対し,IDRF60/32Wは,リング状の光を照射する光照射装置である。
(イ)相違点4-2-2
本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異な
るLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,IDR-F60/32Wは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする。
(ウ)相違点4-2-3
本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるのに対し,IDR-F60/32Wは,前記LED基板が1枚である。(4)先使用権の成否
IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wの構成は,上記(3)のとおり,それぞれ,本件再訂正発明と対比すると相違点4-1-1~4-1-3ないし相違点4-2-1~4-
2-3が存在するから,本件再訂正発明の技術的範囲に属しない。そうである以上,被告は,IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wを製造,販売していたことを理由として,本件特許権について通常実施権を有するとは認められない。
これに対し,被告は,IDR-F60/32R及びIDR-F60/32Wの構成がいずれも本件当初発明の技術的範囲に属していたことを根拠に先使用権の成立を主張する。しかし,
前記3(3)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。9
争点1-6(LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成
否)
(1)LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明の実施証拠(乙5)によれば,被告は,遅くとも本件特許出願の前である平成19年6月にはLR-F60/32R及びLR-F60/32Wを製造し,これを貸し渡していたことが認められる。したがって,LR-F60/32R及びLR-F60/32Wに係る発明は,本件特許出願の前に実施された発明であると認められる。
(2)LR-F60/32R及びLR-F60/32Wの構成
証拠(乙5)及び弁論の全趣旨によれば,LR-F60/32R及びLR-F60/32Wの構成は,
以下のとおりであると認められる。
アLR-F60/32Rの構成

a5-1
b5-1

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた
c5-1

リング状の光を照射する光照射装置であって,

d5-1
複数の赤色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と赤色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である6個をLED単位数とし,e5-1

前記LED基板に搭載される赤色LEDの個数を,順方向電圧の異なる白色
LEDのLED単位数である3個との公倍数である60個とし,
f5-1
g5-1
前記LED基板が1枚である
光照射装置。

イLR-F60/32Wの構成
a5-2
b5-2

前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた
c5-2

リング状の光を照射する光照射装置であって,

d5-2
複数の白色LEDを搭載したLED基板と,

電源電圧と白色LEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所
定の許容範囲となるLEDの個数である3個をLED単位数とし,e5-2

前記LED基板に搭載される白色LEDの個数を,順方向電圧の異なる赤色
LEDのLED単位数である6個との公倍数である60個とし,
f5-2
g5-2
前記LED基板が1枚である
光照射装置。

(3)本件再訂正発明とLR-F60/32R及びLR-F60/32Wとの対比ア一致点
複数の同一のLEDを搭載したLED基板と,前記LED基板を収容する基板収容空間を有する筐体と,を備えた,光照射装置であって,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数
とし,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数とする光照射装置である点。

イ本件訂正発明とLR-F60/32Rとの相違点
(ア)相違点5-1-1
本件再訂正発明は,ライン状の光を照射する光照射装置であるのに対し,LRF60/32Rは,リング状の光を照射する光照射装置である。(イ)相違点5-1-2
本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,LR-F60/32Rは,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする。

(ウ)相違点5-1-3
本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるのに対し,LR-F60/32Rは,前記LED基板が1枚である。ウ本件再訂正発明とLR-F60/32Wとの相違点
(ア)相違点5-2-1

本件再訂正発明は,ライン状の光を照射する光照射装置であるのに対し,LRF60/32Wは,リング状の光を照射する光照射装置である。(イ)相違点5-2-2
本件再訂正発明は,前記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とするのに対し,LR-F60/32Wは,前
記LED基板に搭載されるLEDの個数を,順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではない公倍数とする。
(ウ)相違点5-2-3
本件再訂正発明は,複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてあるのに対し,LR-F60/32Rは,前記LED基板が1枚である。
(4)先使用権の成否
LR-F60/32R及びLR-F60/32Wの構成は,上記(3)のとおり,それぞれ,本件再訂正
発明と対比すると相違点5-1-1~5-1-3ないし相違点5-2-1~5-2-3が存在するから,本件再訂正発明の技術的範囲に属しない。そうである以上,被告は,LR-F60/32R又はLR-F60/32Wを製造,貸渡ししていたことを理由として,本件特許権について通常実施権を有するとは認められない。
これに対し,被告は,LR-F60/32R及びLR-F60/32Wの構成がいずれも,本件当初発明の技術的範囲に属していたことを根拠に先使用権の成立を主張する。しかし,前記3(3)と同様の理由により,この点に関する被告の主張は採用できない。(1)
差止請求・廃棄請求の可否
以上のとおり,被告各製品の製造,販売等は,本件再訂正発明に係る本件特
許権の侵害行為を構成する。
(2)差止請求について
被告各製品の製造,販売等の差止めについては,被告の応訴態度に鑑み,被告が被告各製品を製造,販売等するおそれは依然として残っているというべきである。そうすると,被告各製品の製造,販売等の差止めはなおその必要性が認められる。
(3)廃棄請求について
証拠(乙21~24)及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品は受注生産品であるところ,被告が平成30年9月27日をもって被告製品2の受注を中止したこと及び同日時点でその仕掛品も存在しなかったこと,同年11月30日をもって被告製品1,3~7の受注を中止したこと及び同日時点でそれらに係る仕掛品も存在し
なかったことが認められる。また,本件口頭弁論終結日の時点で被告各製品の在庫が存在したとは認められない。そうすると,被告各製品の廃棄については,もはやその必要性が認められない。
(4)

したがって,被告各製品の製造,販売等の差止請求は理由があるものの,そ
の廃棄請求は理由がない。
争点2(被告の過失の有無)

(1)

前記のとおり,被告各製品の販売は,本件再訂正発明に係る本件特許権の侵
害行為を構成するものであるから,被告は,これについて過失があったものと推定される(特許法103条)。
(2)

これに対し,被告は,本件訂正及び本件再訂正がされたことを指摘して,被
告には過失がないと主張する。
しかし,侵害者の過失を推定する上記規定は,特許庁での実体審査を経て特許が登録された場合,特許公報により特許権の登録の存在及びその内容が公示されることから,当該特許発明を業として実施する事業者に特許権の存否及び内容に関する調査義務を負わせても不合理ではないことを基礎とする。他方,特許権者は,特許権の設定登録後も,願書に添付した特許請求の範囲等の訂正をすることについて訂
正審判請求等をすることができ(特許法126条,134条の2),訂正をすべき旨の審決が確定したときは,その訂正後における特許請求の範囲等により特許権の設定の登録等がされたものとみなされる(同法128条,134条の2第9項)。このため,仮に,訂正前の特許請求の範囲等を前提とすれば,当該特許に無効理由が存在したり,特許権者以外の者が当該特許権について先使用権を有したりするこ
とになるとしても,適法な訂正が行われる限り,その無効理由や先使用権の成立が回避される可能性があり,特許無効審判における訂正の請求(同法134条の2)は,訂正がそのような機能を持つことを前提とした制度ともいえる。そうすると,訂正前には訂正後の特許請求の範囲等は明示的には公示されていないものの,当該特許発明を業として実施する事業者には,公示されている訂正前の特許請求の範囲
等の内容を調査・検討するに当たり,訂正の可能性及びその訂正内容をも考慮に入れることが合理的に期待されるというべきである。
したがって,訂正前の特許請求の範囲等を前提とすれば特許権侵害と評価される行為をした後にその訂正がされたからといって,その事実のみをもって過失の推定(同法103条)が覆ると解することはできない。この点に関する被告の主張は採
用できない。
争点3(原告の損害の発生の有無及び額)

(1)逸失利益について
ア特許法102条2項の適用の有無
(ア)

特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者
が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。そして,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利
益が得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められると解すべきである。
証拠(乙27,37)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件での被告の本件特許権侵害行為の始期である平成24年より前から,別紙競合品(被告主張)一覧表の番号12に対応するライン状の光を照射する光照射装置(以下,これらの製品
を原告各製品と総称する。)を製造,販売していることが認められる。そうすると,原告各製品とライン状の光を照射する光照射装置である被告各製品の需要者は共通するものといえるから,本件においては,原告に,被告による本件特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在することが認められ,特許法102条2項の適用が認められる。なお,原告は,本件再訂正発明を
実施している旨主張するけれども,原告各製品の具体的な構成は本件再訂正発明との対比が可能な程度には明らかでなく,その他原告が本件再訂正発明を実施していることを認めるに足りる証拠はないから,これを認めることはできない。(イ)

これに対し,被告は,原告各製品が本件再訂正発明の実施品ではないことや,
本件再訂正発明の作用効果が実際上乏しく,また,顧客吸引力に直結するものでないことなどを指摘して,原告には,被告による本件特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情は存在せず,同項の適用は認められないと主
張する。
しかし,上記(ア)のとおり,同項の適用に当たっては,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められるのであって,特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項の適用に当たり必ずしも不可欠の事情ではない。上記の事情が存在する場合であるにもかかわらず特許権者が利益を得られなかったことを基礎付ける事情は,推定された損害額を覆滅する事情として考慮されると解するのが相当である。
したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。

イ被告各製品の利益の額
侵害者がその侵害の行為により受けた利益の額
(特許法102条2項)は,侵
害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあると解される。

(ア)本件期間1~3(平成24年7月~平成29年7月)
被告各製品の本件期間1~3における利益の額が合計●(省略)●円であることについては,当事者間に争いがない。
本件期間1(H24.7~H26.7)
本件期間2(H26.8~H26.11)

●(省略)●円
●(省略)●円

本件期間3(H26.12~H29.7)

●(省略)●円

(イ)本件期間4(平成29年8月~平成30年9月)
a
被告各製品の本件期間4における利益の額については,被告製品7に係
る利益の額を除き,当事者間に争いがない。
被告製品7について,その売上額(●(省略)●円)は,当事者間に争いがなく,争いがあるのはその販売経費たる材料費である。原告は,その材料費が●(省略)●円であると主張するところ,証拠(乙33,34)によれば,販売に供された被
告製品7の材料費は,●(省略)●円であったことが認められる。そうすると,材料費●(省略)●円が,被告製品7の売上額から控除すべき経費に当たることになる。
これを前提とすると,被告各製品の本件期間4における利益の額は,原告主張額のとおり●(省略)●円と認められる。
b
これに対し,被告は,被告製品7は,試作品を製品として転用したという経
緯から材料費が低く算定されていることなどから,控除すべき材料費としては,●(省略)●円とすべきであると主張する。
しかし,被告の上記主張を前提としても,販売に供された被告製品7の材料費として実際に要した金額が●(省略)●円を超えない以上,被告において当該製品を製造販売するに当たりこれと直接関連して追加的に必要となった材料費につき,同額を超えて認めることはできない。この点に関する被告の主張は採用できない。(ウ)小括
以上より,被告の本件特許権侵害行為により原告が被った逸失利益の額は,別紙
損害額算定表の②欄のとおり,合計●(省略)●円と推定される。ウ推定の覆滅について
(ア)

本件再訂正発明の技術的意義は,LED基板のサイズを同一にして,部品点数
及び製造コストを削減できるとともに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を向上させることができる点にある。このような技術的意義は,光照射装置としての性能の向上に必ずしも直結するものではないといえるものの,ライン状の光を照射する光照射装置の製造者にとっては,これにより製品の販売価格をより廉価とし得ることで競合品との価格競争力を高め得ることその他のメリットを期待し得る。他方,そのような製品の使用者(需要者)にとっては,販売価格のより廉価な製品を購入し得るというメリットはあるものの,それ以外には,メリットがある
としても乏しいものと思われる。このため,本件再訂正発明の実施により他の競合品の価格より競争力がある程度に廉価な製品を製造,販売しているのでなければ,
本件再訂正発明の実施による顧客吸引力は乏しいと評価すべきことになる。しかるに,証拠(乙37)及び弁論の全趣旨によれば,原告各製品及び被告各製品を含むライン状の光を照射する光照射装置(別紙競合品(被告主張)一覧表記載の各製品)の市場における実勢価格は,おおむね同程度であり,また,当該市場において原告及び被告の各シェアは,いずれもトップにはないと認められる。被告各製品のカタログ(甲3)及びウェブページ(甲4,13)においても,本件再訂正発明の実施により,光照射装置としての性能が向上していること,部品点数及び製造コストの削減を図ることができていること又はこれを前提として他社製品より廉価で販売可能であることなどをうかがわせる宣伝文句は見られず,他方で,業界最高クラスの光量を実現驚異の明るさを実現と,被告各製品の機能を宣伝文句,
としており,被告各製品に対する需要は,販売価格というよりもむしろ光量の大きさといった機能によって喚起されたことがうかがわれる。
しかも,上記のような市場の状況にあるにもかかわらず,前記認定のとおり,原告は,本件再訂正発明を実施しているとは認められない。

そうすると,本件再訂正発明は,その実施により光照射装置の性能を必ずしも向上するというものではなく,また,販売価格の面でも,実施によるコスト削減に伴い他社製品との価格競争上同程度の地位に立つことを可能にすることはあり得るとしても,価格競争上他社より優位に立ち得る程度のメリットをもたらすものとまではいえないと見られる。これを需要者の側から見ると,本件再訂正発明の実施品で
あることは,そのこと自体により直ちに需要者の購買意欲を高めるものとはいえないことになる。すなわち,本件再訂正発明は,その性質上,顧客吸引力は必ずしも高くないものと評価すべきである。
(イ)

もっとも,被告が約5年間にわたって本件再訂正発明を実施していたことに
鑑みると,本件再訂正発明を実施することに経済的な意義がないとは考え難く,少なくとも,被告各製品の販売価格が,ライン状の光を照射する光照射装置の市場において,他社製品に後れを取ることがない程度となることに本件再訂正発明の作用
効果が影響していると考えることには合理性がある。
(ウ)

証拠(甲3,4,13,乙37)によれば,原告各製品及び被告各製品を含
むライン状の光を照射する光照射装置の製品としての特徴は,別紙競合品(被告主張)一覧表記載のとおりと認められる。本件においては,原告各製品と被告各製品とが市場において競合関係に立つ製品であることが前提となるところ,これを踏まえて上記製品のうち被告各製品及び原告各製品以外のものを見ると,いずれも原告各製品及び被告各製品と用途例が共通しており(同一覧表の用途欄において,具体的な用途が不明とされているものも,少なくとも原告各製品及び被告各製品と同様の用途に用い得るとうかがわれる。),長さ寸法及び発光色も対応してい
る。前記認定のとおり,これらの製品の価格帯もおおむね同程度である。他方,これらの製品の冷却方式は様々であるものの,被告各製品はいずれも自然空冷である一方,原告各製品には自然空冷だけでなくファン空冷のものもあることに照らせば,その違いは競合関係を否定する事情とまではいえない。また,前記のとおり,本件再訂正発明の実施によって光照射装置としての性能が向上するとはいえない。色及
びサイズ展開の点も,機能面で大きな差異を生じるのでなければ,需要者にとっては必要とする特定の色及びサイズに対応した製品であれば足り,製品ラインナップとして多色展開していることや,希望サイズに対応するためにLED基板を複数とするか1枚の基板で対応するかといったことは,需要者にとっては必ずしも重要でないと思われる。

これらの事情に鑑みると,これらの製品は,原告製品及び被告各製品と市場において競合関係に立つ製品であると認められる。
そうすると,原告各製品及び被告各製品の競合品としては,ライン状の光を照射する光照射装置を想定するのが相当であり,多色展開していて,複数のLED基板をライン方向に直列させることで多数のサイズ展開をしているライン状の光を照射す
る光照射装置に限られないというべきである。
(エ)

以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,被告各製品の販売がな
かった場合に,これに対応する需要が全て原告各製品に向かったであろうと見ることに合理性はなく,むしろ,本件再訂正発明の実施品ではない原告各製品に向かう部分はごく限られると考える。そうすると,本件では,●(省略)●の限度で特許法102条2項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。これに対し,原告は,本件再訂正発明の顧客吸引力は大きいと主張するとともに,競合品は,多色展開していて,複数のLED基板をライン方向に直列させることで多数のサイズ展開をしているライン光照射装置に限られるなどと主張する。しかし,上記のとおり,この点に関する原告の主張は採用できない。
(オ)

そうすると,被告が本件特許権侵害行為によって得た利益の額は,別紙損害額算定表の③欄のとおりであり,937万0447円であると認められる。これに反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない。
(カ)共有者の存在について
a
前記のとおり,本件特許権は,被告による特許権侵害行為の継続した期間の
うち,その始期である平成24年7月から平成26年11月21日までの間,原告と三菱化学との共有に係るものであった。
特許権の共有者は,それぞれ,原則として他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができるが(特許法73条2項),その価値の全てを独占するものではないことに鑑みると,同法102条2項に基づく損害額の推定を受けるに当たり,共有者は,原則としてその実施の程度に応じてその逸失利益額を推定さ
れると解するのが相当であり,共有者各自の逸失利益額と相関関係にない持分権の割合を基準とすることは合理的でない。
もっとも,特許発明の実施品又は侵害品と競合する特許権者の製品に係る販売利益の減少等による特許権者の逸失利益と,侵害者から得べかりし実施料の喪失による逸失利益とは,類型的にその性質を異にするものである。また,共有者の一部が
当該特許発明を実施したり,侵害品と競合する製品の製造等を行ったりしていなかったとしても,共有に係る特許権の侵害による侵害者の利益は,特許権の共有者の
一方の持分権の侵害のみならず他方の持分権の侵害にもよるものである以上,実施料相当額の逸失利益を観念することは可能であり,同法102条3項もこのことを前提とするものと理解される。そうである以上,同条2項による損害額の推定に基づき侵害者に対し特許権の共有者の一部が損害賠償請求権を行使するに当たっては,同条2項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他の共有者の持分割合による同条3項に基づく特許発明の実施に対し受けるべき金銭相当額の限度で一部覆滅されるとするのが合理的である。
これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。
b
なお,原告は,三菱化学から,その共有に係る特許権に基づく被告に対する
損害賠償請求権を譲渡されたと主張する。しかし,証拠(甲16)及び弁論の全趣旨を総合しても,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。この点に関する原告の主張は採用できない。
c
そこで,三菱化学の賠償請求し得る損害額を特許法102条3項に基づき算
定する必要があるところ,同項による損害額は,原則として,侵害品の売上高を基準とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。実施に対し受けるべき料率を定めるに当たっては,当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益へ
の貢献や侵害の態様,特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合的に考慮して,合理的な料率を定めるべきである。まず,料率について,実施料率〔第5版〕(甲17)によれば,民生用電気機械・電球・照明器具(イニシャル無)の技術分野における平成4年度~平成10年度の実施料率の平均値は4.6%であり,昭和63年度~平成3年度に比較
してほぼ横ばいとなっている。また,平成4年度~平成10年度の実施料率の最頻値及び中央値はいずれも4%である。なお,上記技術分野は,民生用電気機械器具
製造技術及び電球・電気照明器具製造技術であり,具体的には,電球,蛍光灯,ネオンランプ等の電球ないし電気照明器具のほか,電気アイロン,暖房用電熱器,扇風機,電気洗濯機,電気冷蔵庫等を含む。
次に,本件再訂正発明の価値及び他のものによる代替可能性については,推定覆滅に関する前記事情に鑑みると,価値的には必ずしも高いとはいえず,また,競合品による代替の余地は大きく,売上げに対する貢献の程度も同様である。さらに,証拠(乙27)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,長年にわたって競業関係にあることが認められる。
これらの各事情を斟酌すると,本件において,本件特許権の実施に対し受けるべ
き料率は,●(省略)●とするのが相当である。これに反する原告及び被告の主張は,いずれも採用できない。
他方,本件特許権が共有されていた期間(本件期間1及び本件期間2)における被告製品1~6の売上高が●(省略)●円(本件期間1:●(省略)●円,本件期間2:●(省略)●円)であることは,当事者間に争いがない

d
なお,被告は,被告製品1~6の売上高を基礎として実施に対し受けるべき
料率を算定することが不合理であると主張する。しかし,前記のとおり,被告製品1~6が本件再訂正発明の作用効果を全く奏していないとはいえないし,その程度が乏しいとしても,その点は実施に対し受けるべき料率の算定に当たって斟酌すれば足りるのであって,被告製品1~6の売上高を基礎として実施に対し受けるべき料率を算定することが不合理であるとまではいえない。したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
e
以上より,三菱化学に生じた損害の額は,別紙損害額算定表の④欄のと
おり,合計26万6379円であると認められる。
エ原告が請求可能な逸失利益の額
以上によれば,原告の逸失利益の額は,別紙損害額算定表の⑤欄のとおり,合計910万4068円と認められる。

(2)弁護士及び弁理士費用について
上記(1)の逸失利益の額を始めとする本件に現れた一切の事情を考慮すると,別紙損害額算定表の⑥欄のとおり,本件期間1~3における被告の本件特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士及び弁理士費用相当損害額は66万円,本件期間4における被告の本件特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士及び弁理士費用相当損害額は24万円と認めるのが相当である。これに反する被告の主張は採用できない。
(3)遅延損害金の起算日
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金の起算日は,不法行為の日以後でな
ければならないところ,まず,本件期間1~3(H24.7~H29.7)における本件特許権侵害行為は,遅くとも平成29年7月31日までに行われている。したがって,当該期間における本件特許権侵害行為に基づく損害賠償債務(660万9573円)並びにこれに対応する弁護士及び弁理士費用相当損害額の賠償債務(66万円)の遅延損害金の起算日については,原告が主張するとおり,訴状送達の日の翌
日すなわち平成29年8月11日とするのが相当である。
これに対し,本件期間4(H29.8~H30.9)における本件特許権侵害行為は,遅くとも平成30年9月30日までに行われている。したがって,本件期間4における本件特許権侵害行為に基づく損害賠償債務(249万4495円)の遅延損害金の起算日については,原告が主張するとおり,平成30年10月1日とするのが相当
である。他方,同債務に対応する弁護士及び弁理士費用相当損害額の賠償債務(24万円)の遅延損害金の起算日について,原告は,平成29年8月11日(訴状送達の日の翌日)を起算日として主張している。しかし,この点については,対応する本件期間4に係る逸失利益の損害賠償債務と同じく平成30年10月1日とするのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。

争点4(消滅時効の成否)について

被告は,消滅時効の主張において,原告が被告各製品それぞれの販売直後にその
実機を入手して構成を把握し,本件特許権侵害の事実を認識するに至っていたとし,その根拠として,原告が販売する製品のカタログに,類似品に注意することの注意喚起を必ずしていること,及び,平成22年12月に開催された展示会(以下本件展示会という。)において,原告の従業員が被告の出展ブースを代わる代わる訪
れていたことを指摘する。
まず,原告のカタログについてみると,証拠(乙27)によれば,原告が平成14年以降毎年出していた製品カタログには,
類似品にご注意下さいという記載が
されていることが認められる。このことからは,特許権を始めとする知的財産権保護に関する原告の関心の高さがうかがわれるものの,あくまで一般的な注意喚起の
程度にとどまり,こうしたカタログの記載のみをもって,被告各製品それぞれの販売直後にその実機を入手して構成を把握し,本件特許権侵害の事実を認識するに至っていたとまで認めることはできない。
次に,本件展示会に関しては,証拠(乙27)によれば,本件展示会に際し,原告の従業員が被告の出展ブースを代わる代わる訪れていたことは一応認められる。
もっとも,そこで出展され,原告従業員の関心が示されていた被告の製品はマジックドームなる製品であって,被告各製品ではない。また,こうした原告の従業員の行動は,原告が被告による商品展開の動向に関心を持っていたことをうかがわせるものの,そのことから直ちに,被告各製品それぞれの販売直後にその実機を入手して構成を把握し,本件特許権侵害の事実を認識するに至っていたことを認める
ことはできない。上記原告の知的財産権保護に関する関心の高さを併せ考慮しても,このことは変わらない。
そうすると,原告が,遅くとも本件訴訟を提起した平成29年8月3日から3年前の時点で既に,被告各製品それぞれの販売直後にその実機を入手して構成を把握し,本件特許権侵害の事実を認識するに至っていたことを認めることはできない。
したがって,消滅時効に係る被告の主張は採用できない。
争点4(不当利得の額)

原告は,被告による本件期間1における被告製品1~6の販売に関して,主位的に不法行為に基づく損害賠償請求をし,予備的に不当利得返還請求をしているところ,後者は,前記(第2の1(3)イ)のとおり,主位的請求に係る請求権である不法行為に基づく損害賠償請求権につき消滅時効が成立した場合におけるものである。本件では,前記のとおり消滅時効は認められないから,この点についての判断はしない。
第5結論
以上より,原告の請求は,主文第1項の被告各製品の製造等の差止め及び主文第2項の額の限度での損害賠償請求につき理由があるから,その限度で認容すること
とし,その余の請求はいずれも理由がないから,いずれも棄却することとする。また,主文第1項については,仮執行宣言を付するのは相当でないから,これを付さないこととする。
大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官

杉浦正樹野上誠一
裁判官
裁判官

大門
別紙特許公報

省略

宏一郎
(別紙)
被告製品目録

以下の光照射装置

商品名

ライン照明

60万lxブライマックスライン照明Ⅱ

型式
1
IDBB-LSR●●●●W

2
IDBB-LSR●●●●R

3
IDBB-LSR●●●●B

4
IDBB-LSR●●●●W-S

5
IDBB-LSR●●●●R-S

6
IDBB-LSR●●●●B-S

7
IDBB-LSR●●●●IR-860-S
(上記の●には200~3000の100ごとの数字が入る)
以上
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